(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】情報記録装置
(51)【国際特許分類】
A61J 7/04 20060101AFI20231221BHJP
B65D 25/02 20060101ALI20231221BHJP
B65D 25/20 20060101ALI20231221BHJP
A61J 1/03 20230101ALI20231221BHJP
G06F 3/02 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
A61J7/04 Z
B65D25/02 Z
B65D25/20 K
A61J1/03 370
G06F3/02 Z
(21)【出願番号】P 2019233214
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202304
【氏名又は名称】塙 和也
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 文
(72)【発明者】
【氏名】高森 寛子
(72)【発明者】
【氏名】亀田 克巳
(72)【発明者】
【氏名】宮前 哲也
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/182069(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 7/04
B65D 25/02
B65D 25/20
A61J 1/03
G06F 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、導電回路が設けられた第2基板とを含む基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に介在され、錠剤が収納された複数の収納部を含む錠剤用の成形シートとを有し、前記第1基板に前記収納部が突出する開口が設けられ、前記第2基板のうち各々の前記収納部に対応する領域に、つなぎと前記つなぎ間の切欠きとにより囲まれた破断領域がそれぞれ設けられ、前記導電回路は一部が、各々の前記破断領域においてそれぞれ破断可能になっている成形シート収容基板と、
前記つなぎおよび前記導電回路を破断することによって前記錠剤を前記収納部から取り出した後に、破断された前記導電回路を覆う被覆部材と、
前記導電回路に接続された通信モジュールとを備え、
前記通信モジュールはICチップを有し、
前記ICチップは、
前記導電回路の破断した位置情報と、破断した時刻とを時系列で記録する記憶部と、
前記記憶部を制御する制御部と、
外部のホスト装置との間で近接通信を行う無線通信部とを含む、情報記録装置。
【請求項2】
前記被覆部材は、前記第2基板に対して着脱自在に貼り付けられている、請求項1に記載の情報記録装置。
【請求項3】
前記被覆部材は、基材層と、前記基材層上に設けられた粘着層とを含む粘着テープである、請求項1または2に記載の情報記録装置。
【請求項4】
前記基材層は、合成樹脂製フィルムを含む、請求項3に記載の情報記録装置。
【請求項5】
前記基材層は、紙を含む、請求項3に記載の情報記録装置。
【請求項6】
前記被覆部材は、各々の前記破断領域の全体を覆う、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の情報記録装置。
【請求項7】
前記第2基板は、前記第2基板の幅方向に延びる折曲線により、複数の部分に区画されており、一の前記部分の各々の破断領域は、単一の前記被覆部材によって覆われる、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の情報記録装置。
【請求項8】
前記第2基板は、前記第2基板の幅方向に延びる折曲線により、複数の部分に区画されており、一の前記部分において、前記被覆部材は、複数設けられ、各々の前記被覆部材は、それぞれ、互いに異なる前記破断領域において破断された前記導電回路を覆う、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の情報記録装置。
【請求項9】
前記基板は、前記第1基板と前記第2基板との間に介在する第3基板を更に有し、前記成形シートは、前記第1基板と前記第3基板との間に介在する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の情報記録装置。
【請求項10】
前記通信モジュールは、前記ICチップに電源電圧を供給するボタン電池を更に有する、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の情報記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一般にプレススルーパック(PTP)ともいわれる錠剤収納用の成形シートを使用して、患者が錠剤を取り出した時刻を記録する装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に示す装置では、2つのシート間に介在されたパッケージ(成形シート)から錠剤を取り出した際に、一方のシートに設けられたカバーが切り取られるように構成されている。そして、カバーが切り取られることにより、カバーを貫通する導電ループの一部が破壊され、電子装置に錠剤を取り出したことが登録されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示す装置では、パッケージから錠剤を取り出した後に、破壊された導電ループの一部が、カバーが切り取られたシートから露出してしまうという問題がある。このため、装置の防湿性や破壊された導電ループの絶縁性を保つことは困難である。とりわけ、このような装置を低湿度雰囲気下で使用する場合、装置に静電気が発生する可能性がある。そして、発生した静電気が放電すると、破壊された導電ループに電流が流れ、装置の電子装置に過電圧が印加されるおそれがある。この場合、電子装置に過電圧が印加されて電子装置が損傷を受けると、電子装置に登録された情報が消去されてしまう可能性がある。
【0006】
本開示は、このような点を考慮してなされたものであり、情報記録装置に静電気が発生した場合であっても、静電気による悪影響を抑制することが可能な、情報記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施の形態による情報記録装置は、第1基板と、導電回路が設けられた第2基板とを含む基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に介在され、錠剤が収納された複数の収納部を含む錠剤用の成形シートとを有し、前記第1基板に前記収納部が突出する開口が設けられ、前記第2基板のうち各々の前記収納部に対応する領域に、つなぎと前記つなぎ間の切欠きとにより囲まれた破断領域がそれぞれ設けられ、前記導電回路は一部が、各々の前記破断領域においてそれぞれ破断可能になっている成形シート収容基板と、前記つなぎおよび前記導電回路を破断することによって前記錠剤を前記収納部から取り出した後に、破断された前記導電回路を覆う被覆部材と、前記導電回路に接続された通信モジュールとを備え、前記通信モジュールはICチップを有し、前記ICチップは、前記導電回路の破断した位置情報と、破断した時刻とを時系列で記録する記憶部と、前記記憶部を制御する制御部と、外部のホスト装置との間で近接通信を行う無線通信部とを含む、情報記録装置である。
【0008】
本実施の形態による情報記録装置において、前記被覆部材は、前記第2基板に対して着脱自在に貼り付けられていてもよい。
【0009】
本実施の形態による情報記録装置において、前記被覆部材は、基材層と、前記基材層上に設けられた粘着層とを含む粘着テープであってもよい。
【0010】
本実施の形態による情報記録装置において、前記基材層は、合成樹脂製フィルムを含んでいてもよい。
【0011】
本実施の形態による情報記録装置において、前記基材層は、紙を含んでいてもよい。
【0012】
本実施の形態による情報記録装置において、前記被覆部材は、各々の前記破断領域の全体を覆ってもよい。
【0013】
本実施の形態による情報記録装置において、前記第2基板は、前記第2基板の幅方向に延びる折曲線により、複数の部分に区画されており、一の前記部分の各々の破断領域は、単一の前記被覆部材によって覆われてもよい。
【0014】
本実施の形態による情報記録装置において、前記第2基板は、前記第2基板の幅方向に延びる折曲線により、複数の部分に区画されており、一の前記部分において、前記被覆部材は、複数設けられ、各々の前記被覆部材は、それぞれ、互いに異なる前記破断領域において破断された前記導電回路を覆ってもよい。
【0015】
本実施の形態による情報記録装置において、前記基板は、前記第1基板と前記第2基板との間に介在する第3基板を更に有し、前記成形シートは、前記第1基板と前記第3基板との間に介在していてもよい。
【0016】
本実施の形態による情報記録装置において、前記通信モジュールは、前記ICチップに電源電圧を供給するボタン電池を更に有していてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、情報記録装置に静電気が発生した場合であっても、静電気による悪影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本実施の形態による情報記録装置を示す外観図である。
【
図2】
図2は、本実施の形態による情報記録装置を示す展開図である。
【
図3】
図3は、本実施の形態による情報記録装置の紙基板を示す展開図であって、紙基板を下層基板の表面側から見た展開図である。
【
図4】
図4は、本実施の形態による情報記録装置の紙基板を示す展開図であって、紙基板を下層基板の裏面側から見た展開図である。
【
図5】
図5は、本実施の形態による情報記録装置を示す断面図(
図2のV-V線断面図)である。
【
図6】
図6は、本実施の形態による情報記録装置の紙基板に設けられた破断領域を示す平面図である。
【
図7】
図7は、本実施の形態による情報記録装置の紙基板に設けられた破断領域と、成形シートの収納部との関係を示す図である。
【
図8】
図8は、本実施の形態による情報記録装置の錠剤用の成形シートを示す斜視図である。
【
図9】
図9は、本実施の形態による情報記録装置の通信モジュールの概略構成を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、本実施の形態による情報記録装置の通信モジュールのASICの内部構成を示すブロック図である。
【
図11】
図11(a)-(d)は、本実施の形態による情報記録装置の使用方法を示す断面図である。
【
図12】
図12は、
図4に対応する図であって、本実施の形態による情報記録装置の変形例を示す展開図である。
【
図13】
図13は、
図4に対応する図であって、本実施の形態による情報記録装置の変形例を示す展開図である。
【
図14】
図14は、
図4に対応する図であって、本実施の形態による情報記録装置の変形例を示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して一実施の形態について説明する。
図1乃至
図11は一実施の形態を示す図である。以下に示す各図は、模式的に示したものである。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、技術思想を逸脱しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。なお、以下に示す各図において、同一部分には同一の符号を付しており、一部詳細な説明を省略する場合がある。また、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値および材料名は、実施の形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行や直交、垂直等の用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含むものとする。また、本明細書中、「X方向」とは、紙基板の下層基板の長手方向のことをいう。また、本明細書中、「Y方向」とは、下層基板の幅方向のことをいう。
【0020】
本実施の形態による情報記録装置1は、例えば、患者が病院での診察を終えて、処方箋に基づいて薬の調合が終わった段階で患者に渡されるものであり、患者が薬(錠剤)を服用した日時を記録するためのものである。
図1は情報記録装置1の外観を示している。
図1に示す情報記録装置1は、シート状の服薬記録カードからなり、折り畳み式になっていて、展開すると
図2のような操作面2が現れる。この情報記録装置1では、患者が錠剤を服用した際に、錠剤用の成形シート8の各収納部5aのうち、患者が押圧した収納部5aの位置情報と、時刻とを記録できるようにしている。
【0021】
図2の情報記録装置1の操作面2は、第1面2a、第2面2bおよび第3面2cからなる3面構成である。本実施の形態では、第1面2aには処方された薬の情報や患者が薬を服用するタイミング等の情報が記載されている。第2面2bおよび第3面2cには、患者が服用すべき錠剤を収納する収納部5aが配置されている。第1面2aの裏面側が、
図1において「服薬記録カード」と記載された面である。
【0022】
患者は、第2面2bまたは第3面2cに配置された錠剤の収納部5aを指で押し込んで、第2面2bまたは第3面2cの裏面側から錠剤を取り出して服用する。そして、患者が押圧した錠剤の各収納部5aの情報は、情報記録装置1内に内蔵された後述する通信モジュール10(
図3参照)に自動的に記憶される仕組みになっている。
【0023】
次に、本実施形態に係る情報記録装置1の構造について更に説明する。
図3乃至
図5に示すように、情報記録装置1は、導電回路18Aが設けられた紙基板(基板)30と、錠剤5(
図5参照)が収納された複数の収納部5aを含む錠剤用の成形シート8とを有する成形シート収容基板30Aと、導電回路18Aを破断しながら錠剤5を収納部5aから取り出した後に、破断された導電回路18Aを覆う被覆部材40(
図4および
図5参照)と、導電回路18Aに接続された通信モジュール10(
図3参照)とを備えている。
【0024】
まず、成形シート収容基板30Aの紙基板30について説明する。
図3および
図4は、紙基板30を展開した図である。ここで、
図2に示す情報記録装置1の構造は、
図3および
図4に示す1枚の紙基板30を横方向(Y方向)に三つ折りにして折り畳んだ三層構造であり、その表面に操作面2(
図2参照)が現れるようにしている。これを更に、
図2に示す折曲線64に沿って縦方向(X方向)に三つ折りにして折り畳むと
図1に示す構造になる。
【0025】
図3および
図4に示すように、紙基板30は、上層基板(第1基板)30aと、導電回路18Aが設けられた下層基板(第2基板)30bと、中間層基板(第3基板)30cとを有している。
【0026】
下層基板(第2基板)30bは、紙基板30を展開した状態で、横方向(Y方向)において紙基板30の中央に位置しており、1枚の紙基板30を横方向(Y方向)に三つ折りにして折り畳んだ際に、最下層に配置される。この下層基板30bには、導電パターン18が形成されている。また、下層基板30bは、下層基板30bの幅方向に延びる折曲線64により、複数の部分に区画されている。すなわち、下層基板30bは、横方向(Y方向)に延びる2本の折曲線64により、第1部分91と第2部分92と第3部分95とに区画されている。さらに、下層基板30bは、折曲線64を介して縦方向(X方向)に三つ折りに折り畳まれるように構成されている。
図3および
図4において、便宜上、下層基板30bには2本の単一の折曲線64が設けられているが、単一の折曲線64の代わりに一対の平行する折曲線64を設けてもよい(
図1参照)。
【0027】
下層基板30bの第1部分91には、通信モジュール10が接合されている。また、
図3において第1部分91の右側(Y方向プラス側)には、上層部分97が設けられ、第1部分91の左側(Y方向マイナス側)には、切り欠き62を有する中間層部分98が設けられている。なお、これら第1部分91、上層部分97および中間層部分98は、折り目61で折り曲げ可能とされており、物理的に切り離されるものではない。
【0028】
情報記録装置1を
図2に示す構造にする際には、まず、下層基板30bの第1部分91上に中間層部分98が折り畳まれる。次に、第1部分91と中間層部分98とが熱圧着される。次いで、下層基板30bの第1部分91のうち、中間層部分98の切り欠き62から露出する領域に、通信モジュール10が接合される。次に、中間層部分98上に上層部分97が折り畳まれる。そして、上層部分97が中間層部分98に熱圧着される。これにより、通信モジュール10は、下層基板30bの第1部分91と上層部分97との間に挟み込まれる。このため、通信モジュール10と、下層基板30bの第1部分91の表面に形成された導電パターン18とは、情報記録装置1の完成状態では、外見に現れない。なお、上層部分97の裏面(
図4に示す面)が、
図2に示す操作面2の第1面2aになる。
【0029】
次に、下層基板30bの第2部分92および第3部分95について説明する。下層基板30bの第2部分92および第3部分95のうち、成形シート8の各々の収納部5aに対応する領域には、破断領域83がそれぞれ設けられている。この破断領域83は、患者が成形シート8の収納部5aを指で押圧して錠剤5を取り出す際に破断するように構成されている。本実施の形態では、第2部分92および第3部分95には、破断領域83がそれぞれ10個ずつ設けられている。具体的には、第2部分92および第3部分95には、Y方向に沿って5個の破断領域83が設けられた列が2列ずつX方向に沿って設けられている。なお、破断領域83の配置数はこれに限られるものではなく、成形シート8の各々の収納部5aに対応するように、任意の位置に設けられ得る。
【0030】
図6に示すように、破断領域83は、つなぎ83aとつなぎ83a間の切欠き83bとにより囲まれている。本実施の形態では、破断領域83は、一対の円弧状の切欠き83bと、切欠き83b間に形成された一対のつなぎ83aとにより画定されており、円形形状をもっている。そして、成形シート8の収納部5aを押圧することにより、収納部5a内の錠剤5によって、つなぎ83aが容易に破断されるようになっている。なお、破断領域83の形状は、例えば楕円形状であってもよい。
【0031】
また、下層基板30bと、成形シート8とを平面視において重ね合わせた場合、
図7に示すように、破断領域83内に、成形シート8の収納部5aの全体が収まるように構成されている。すなわち、破断領域83の面積は、収納部5aの面積よりも大きくなっている。このため、破断領域83が破断した際に、収納部5aに収納された錠剤5を確実に取り出すことができるようになっている。この場合、破断領域83は、例えば直径12mmの円形形状をもっていてもよく、成形シート8の収納部5aの外形形状は、例えば直径8mmの円形形状をもっていてもよい。
【0032】
また、下層基板30bと、成形シート8とを平面視において重ね合わせた場合、収納部5aの中心P1は破断領域83の中心P2に対して偏心していてもよい。このように収納部5aの中心P1と破断領域83の中心P2とが偏心することにより、収納部5aを押圧して成形シート8から排出された錠剤5により、破断領域83を容易に破断することができる。すなわち、収納部5aの中心P1と破断領域83の中心P2が偏心している場合、収納部5aを押圧して錠剤5を取り出す際、錠剤5からの力が破断領域83の中心P2に加わることはなく、錠剤5からの力が破断領域83に偏心して加わることになり、破断領域83に加わる力に近接するつなぎ83aがまず破断し、残りのつなぎ83aも順次破断する。このため、収納部5aの中心P1と破断領域83の中心P2を偏心させることにより、破断領域83を容易かつ簡単に下層基板30bから破断することができる。
【0033】
再度
図3を参照すると、第2部分92および第3部分95の右側には、それぞれ上層基板(第1基板)30aが設けられ、第2部分92および第3部分95の左側には、それぞれ中間層基板(第3基板)30cが設けられている。なお、第2部分92、上層基板30aおよび中間層基板30cは、折り目61で折り曲げ可能とされており、物理的に切り離されるものではない。同様に、第3部分95、上層基板30aおよび中間層基板30cは、折り目61で折り曲げ可能とされており、物理的に切り離されるものではない。
【0034】
各々の上層基板(第1基板)30aは、1枚の紙基板30を横方向(Y方向)に三つ折りにして折り畳んだ際に、最上層に配置される。これらの上層基板30aには、それぞれ、成形シート8の収納部5aが突出する開口81が設けられている。この開口81は、成形シート8の各々の収納部5aに対応する領域に設けられている。開口81の形状は、成形シート8の収納部5aの形状と略同一になっている。これにより、上層基板30aの開口81によって、成形シート8を精度良く位置決めすることができる。本実施の形態では、開口81は、円形形状をもっている。例えば、上述した成形シート8の収納部5aの外形形状が直径8mmの円形形状である場合、上層基板30aの開口81の外形形状は直径8mmの円形形状であってもよい。
【0035】
また、各々の上層基板30aおよび上述した上層部分97間には、縦方向(X方向)において隙間が設けられている。これにより、紙基板30を横方向(Y方向)に沿って三つ折りにして折り畳んだ際に、上層部分97および各々の上層基板30aが互いに重なり合ってしまうことを抑制することができる。このため、情報記録装置1を
図1に示す構造にする際に、紙基板30を折曲線64に沿って縦方向(X方向)に折り畳みやすくすることができる。また、本実施の形態では、2つの上層基板30aのうち、紙基板30を展開した状態で縦方向(X方向)において紙基板30の中央に位置する上層基板300aは、横方向(Y方向)に沿って折り目61に近づくにつれて縦方向(X方向)に広がる2つの基部31aを含んでいる。このため、上層基板300aにおいて、折り目61近傍に局所的に大きな力が加わることを抑制することができ、上層基板300aが折り目61に沿って破断してしまうことを抑制することができる。また、2つの基部31aにはそれぞれ切り欠き32aが形成されている。これにより、上層基板300aを折り目61に沿って横方向(Y方向)に折り畳みやすくすることができる。
【0036】
各々の中間層基板(第3基板)30cは、1枚の紙基板30を横方向(Y方向)に三つ折りにして折り畳んだ際に、上層基板(第1基板)30aと下層基板(第2基板)30bとの間に介在する。これらの中間層基板30cには、それぞれ、円形状の複数のミシン目63が設けられている。各々のミシン目63は、それぞれ、下層基板30bの第2部分92および第3部分95に設けられた破断領域83に対応する領域に設けられている。このミシン目63は、患者が成形シート8の収納部5aを指で押圧して錠剤5を取り出す際に破断するようになっている。また、
図5に示すように、中間層基板30cのミシン目63の形状は、成形シート8の収納部5aの形状より大きく、かつ破断領域83の形状よりも小さくなっている。これにより、ミシン目63および破断領域83が破断した際に、収納部5aに収納された錠剤5を確実に取り出すことができるようになっている。さらに、図示はしないが、中間層基板30cと、成形シート8とを平面視において重ね合わせた場合、ミシン目63の形状の範囲内に、収納部5aが収まるように構成されている。なお、ミシン目63の代わりに、中間層基板30cに錠剤5が通過する開口を設けてもよい。
【0037】
また、上述した中間層部分98および各々の中間層基板30c間には、縦方向(X方向)において隙間が設けられている。これにより、紙基板30を横方向(Y方向)に沿って三つ折りにして折り畳んだ際に、中間層部分98および各々の中間層基板30cが互いに重なり合ってしまうことを抑制することができる。このため、情報記録装置1を
図1に示す構造にする際に、紙基板30を折曲線64に沿って縦方向(X方向)に折り畳みやすくすることができる。また、本実施の形態では、2つの中間層基板30cのうち、紙基板30を展開した状態で縦方向(X方向)において紙基板30の中央に位置する中間層基板300cは、横方向(Y方向)に沿って折り目61に近づくにつれて縦方向(X方向)に広がる2つの基部31cを含んでいる。このため、中間層基板300cにおいて、折り目61近傍に局所的に大きな力が加わることを抑制することができ、中間層基板300cが折り目61に沿って破断してしまうことを抑制することができる。また、2つの基部31cにはそれぞれ切り欠き32cが形成されている。これにより、中間層基板300cを折り目61に沿って横方向(Y方向)に折り畳みやすくすることができる。
【0038】
情報記録装置1を
図2に示す構造にする際には、まず、下層基板30bの第2部分92および第3部分95上に、中間層基板30cがそれぞれ折り畳まれる。次に、第2部分92および第3部分95と、中間層基板30cとが熱圧着される。次いで、各々の中間層基板30c上に、錠剤5が収納された収納部5aを含む成形シート8がそれぞれ載置される。次に、各々の成形シート8上に、それぞれ上層基板30aが折り畳まれる。そして、各々の上層基板30aがそれぞれ中間層基板30cに熱圧着される。これにより、
図2の構造が得られる。なお、上層基板30aの裏面(
図4に示す面)が、
図2に示す操作面2の第2面2bおよび第3面2cになる。
【0039】
なお、上記実施の形態において、下層基板30b上に中間層基板30cを重ね合わせ、中間層基板30c上に成形シート8を載置した後、成形シート8上に上層基板30aを重ね合わせた例を示したが、中間層基板30cを設けることなく、下層基板30b上に成形シート8を載置するとともに、この成形シート8上に上層基板30aを重ね合わせてもよい。
【0040】
次に、下層基板30bの表面に形成された導電パターン18について、
図3を用いて説明する。
図3に示す導電パターン18は、
図2に示す第1面2a、第2面2bおよび第3面2cからなる操作面2に対応した第1パターン30b1、第2パターン30b2および第3パターン30b3を含んでいる。
【0041】
第1パターン30b1は、端子39aを含む端子部39を含んでいる。第2パターン30b2および第3パターン30b3は、それぞれ錠剤5の各収納部5aに対応したスイッチ接点33を含んでいる。すなわち、各々のスイッチ接点33は、平面視において、下層基板30bの第2部分92および第3部分95に形成された各々の破断領域83にそれぞれ重なるように設けられている。本実施の形態では、第2パターン30b2および第3パターン30b3は、スイッチ接点33をそれぞれ10個ずつ含んでおり、導電パターン18は、計20個のスイッチ接点33を含んでいる。錠剤5の各収納部5aに対応した計20個のスイッチ接点33は初期状態で導通している。これらのスイッチ接点33は、各々の破断領域83においてそれぞれ破断可能になっている。このため、スイッチ接点33は、収納部5aを押圧して錠剤5を取り出す際に物理的に破断されて、電気的導通が遮断されるように構成されている。
【0042】
図3に示す各スイッチ接点33の一端は、導電パターン18を介して第1パターン30b1上の端子部39の対応する端子39aに接続され、他端はいずれも導電パターン18を介して接地端子18aに接続されている。端子部39には、スイッチ接点33の総数分以上の端子39aが設けられ、これに加えて、端子部39の横方向(Y方向)における両端側には接地端子18aが設けられている。接地端子18aからは、接地パターン18bが延びている。この接地パターン18bは、第1パターン30b1、第2パターン30b2および第3パターン30b3の外縁に沿って延びており、他の導電パターン18と共にスイッチ接点33を取り囲むように形成されている。上述した導電回路18Aは、導電パターン18と接地パターン18bとにより構成されている。なお、接地パターン18bは、他の導電パターン18よりも太く形成されていてもよい。
【0043】
このように、すべてのスイッチ接点33が、対応する端子39aと接地パターン18bとの間に接続されている。したがって、いずれかのスイッチ接点33の状態が変化すると、その変化した情報が、対応する端子39aを介して通信モジュール10に伝達されることになる。通信モジュール10内の後述する記憶部21は、状態が変化したスイッチ接点33を特定する情報、すなわち破断位置を特定する情報と、スイッチ接点33の状態が変化した時刻とを記憶する。
【0044】
ところで、上述のように下層基板30bは、横方向(Y方向)に延びる各々の折曲線64を介して三つ折りに折り畳まれる。また、下層基板30bには、導電パターン18と接地パターン18bとからなる導電回路18Aが設けられている。このため、下層基板30bの折曲線64近傍には、折曲線64を介して下層基板30bを繰り返し折り曲げた場合でも、導電回路18Aが破断したり破損することを防止するため、フレキシブル回路コネクタ80A,80Bが設けられている。具体的には、下層基板30bの第1部分91と第2部分92との間に折曲線64を跨いでフレキシブル回路コネクタ80Aが設けられ、第2部分92と第3部分95との間に折曲線64を跨いでフレキシブル回路コネクタ80Bが設けられている。
【0045】
フレキシブル回路コネクタ80Aは、第1部分91上の第1パターン30b1と、第2部分92上の第2パターン30b2とを接続している。この場合、フレキシブル回路コネクタ80Aは、折曲線64上において第1パターン30b1と第2パターン30b2とが切断した際のバックアップ回路として機能する。なお、第1部分91上の第1パターン30b1と第2部分92上の第2パターン30b2とを互いに離間させて、フレキシブル回路コネクタ80Aを設けることにより、初めて導通するようにしてもよい。
【0046】
同様に、フレキシブル回路コネクタ80Bは、第2部分92上の第2パターン30b2と、第3部分95上の第3パターン30b3とを接続している。この場合、フレキシブル回路コネクタ80Bは、折曲線64上において第2パターン30b2と第3パターン30b3とが切断した際のバックアップ回路として機能する。なお、第2部分92上の第2パターン30b2と第3部分95上の第3パターン30b3とを互いに離間させて、フレキシブル回路コネクタ80Bを設けることにより、初めて導通するようにしてもよい。
【0047】
次に、
図8により、錠剤用の成形シート8について説明する。
【0048】
図8に示すように、錠剤用の成形シート8は、錠剤5が収納された複数の収納部5aを含んでいる。この成形シート8は、例えばアルミニウム製またはプラスチック製の基材8aと、基材8aに接合された透明プラスチック製の収納体8bとを含んでいる。なお、上述した紙基板30が中間層基板(第3基板)30cを有していない場合、破断された導電回路18Aと基材8aとが導通してしまうことを抑制するために、基材8aは、絶縁性を有するプラスチック製であることが好ましい。また、図示はしないが、基材8aがプラスチック製である場合、収納部5aから錠剤5を取り出す際にプラスチック製の基材8aを破断させやすくするためのハーフカット線等の切り込みが、所定の場所に設けられていることが好ましい。
【0049】
上述した収納部5aは、プラスチック製の収納体8bによって画定されている。本実施の形態では、プラスチック製の収納体8bによって、10個の収納部5aが画定されている。具体的には、収納体8bは、Y方向に沿って5個の収納部5aを画定する列を2列ずつ含み、これらの列がX方向に沿って配置されている。なお、収納部5aの配置数はこれに限られるものではない。
【0050】
収納部5aの外形形状は、例えば円形形状をもっていてもよく、楕円形状をもっていてもよい。この場合、収納部5aの外形形状は、直径8mmの円形形状をもっていてもよい。また、このとき、例えば収納部5aに収納された錠剤5の外形形状は、直径6mmの円形形状をもっていてもよい。
【0051】
このような錠剤用の成形シート8は、プレススルーパック(PTP)ともいわれている。そして成形シート8の収納部5aを指で押圧することにより、収納部5a内の錠剤5によって基材8aの一部が破断し、錠剤5を取り出すことができるようになっている。
【0052】
また、成形シート8は、情報記録装置1において、紙基板30に保持されており、上層基板30aと中間層基板30cとの間に介在されている(
図5参照)。このとき、成形シート8の錠剤5を収納した収納部5aは、上層基板30aに設けられた開口81から外方へ突出している。このため、患者が、操作面2(
図2参照)の第2面2bまたは第3面2cに配置された錠剤の収納部5aを指で押し込みやすくなっている。
【0053】
次に、
図4および
図5により、被覆部材40について説明する。
【0054】
被覆部材40は、下層基板30bの第2部分92および第3部分95に設けられた破断領域83のつなぎ83aおよび導電回路18Aを破断することによって錠剤5を収納部5aから取り出した後に、破断された導電回路18Aを覆うものである。
【0055】
図4および
図5に示すように、被覆部材40は、下層基板30bの第2部分92および第3部分95の裏面(
図4に示す面)側に設けられている。図示された例において、被覆部材40は、長方形形状をもっている。なお、被覆部材40の形状は、例えば、正方形、角丸四角形、円形、楕円形、三角形、台形であってもよい。
【0056】
被覆部材40は、下層基板30bに対して着脱自在に貼り付けられている。この場合、患者は、錠剤5を収納部5aから取り出す際には、被覆部材40のうち、患者が押圧する収納部5aに対応する破断領域83を覆う部分を、下層基板30bから剥離する。そして、患者は、錠剤5を収納部5aから取り出した後に、被覆部材40のうち、下層基板30bから剥離された部分を、下層基板30bに再び貼り付ける。このように、患者は、錠剤5を収納部5aから取り出す前に、被覆部材40の一部を下層基板30bから剥離するといった作業を行う必要がある。これにより、患者に対して被覆部材40の存在を意識させることができる。このため、患者が、錠剤5を収納部5aから取り出した後に、破断された導電回路18Aを被覆部材40によって覆い忘れることを抑制することができる。
【0057】
また、被覆部材40は、各々の破断領域83の全体を覆っている。これにより、情報記録装置1に静電気が発生した場合であっても、静電気に起因する電流が、破断された導電回路18Aに流れることを効果的に抑制することができる。すなわち、患者が錠剤5を収納部5aから取り出すたびに、破断された導電回路18Aの数が増加する。これに対して、被覆部材40が各々の破断領域83の全体を覆っていることにより、被覆部材40が、破断された導電回路18Aの全てを覆うことができる。このため、静電気に起因する電流が、破断された導電回路18Aに流れることを効果的に抑制することができる。
【0058】
本実施の形態では、下層基板30bの一の部分(第2部分92または第3部分95)の各々の破断領域83は、単一の被覆部材40によって覆われている。すなわち、被覆部材40は、下層基板30bの第2部分92および第3部分95に、それぞれ1枚ずつ設けられている。そして、各々の被覆部材40は、それぞれ第2部分92および第3部分95の各々の破断領域83の全体を覆っている。この場合、下層基板30bの第2部分92および第3部分95に、それぞれ複数枚ずつ被覆部材40を設けることにより、第2部分92および第3部分95の各々の破断領域83の全体を覆う場合と比較して、被覆部材40の大きさを大きくすることができる。このため、患者が被覆部材40を取り扱う際の取り扱い性を向上させることができる。
【0059】
また、
図4に示すように、被覆部材40には、摘まみ片40aが設けられている。この摘まみ片40aは、下層基板30bには貼り付けられていない。このため、患者が摘まみ片40aを摘まむことにより、患者が、被覆部材40を下層基板30bから容易に剥離することができるようになっている。図示された例において、摘まみ片40aは、被覆部材40の横方向(Y方向)における一方の端部に設けられているが、摘まみ片40aは、任意の場所に設けられていてもよい。
【0060】
図5に示すように、被覆部材40は、基材層41と、基材層41上に設けられた粘着層42とを含む粘着テープからなっている。基材層41は、被覆部材40を構成する基本素材となる層である。基材層41としては、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、塩化ビニルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、セロファンフィルム等の合成樹脂製フィルムや、その他の絶縁性を有するフィルム等を用いることができる。また、基材層41は、紙を含んでいてもよい。この場合、例えば、坪量が40g/m
2以上120g/m
2以下程度の上質紙、コート紙等を所定の形状に打ち抜くことにより、基材層41が形成されてもよい。基材層41の厚みは、基本素材としての強度や剛性などの特性が必要最低限に得られる程度の厚みであればよい。基材層41の厚みは、例えば、50μm以上150μm以下程度とすることができる。
【0061】
粘着層42は、被覆部材40を下層基板30bの第2部分92および第3部分95に粘着させるための層である。粘着層42を構成する材料としては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、水溶性エマルジョン系粘着剤等を用いることができる。粘着層42の厚みは、例えば、10μm以上100μm以下程度とすることができる。
【0062】
次に、
図9および
図10により通信モジュール10について説明する。この通信モジュール10は、無線通信可能であり、回路コネクタ90(
図3参照)を介して導電回路18Aに接続されている。なお、回路コネクタ90は必ずしも設ける必要はなく、また回路コネクタ90はフレキシブルなコネクタでも堅固なコネクタであってもよい。
【0063】
図9に示すように、通信モジュール10は、樹脂基板11の上に実装されたICチップとしてのASIC(Application Specific Integrated Circuit)12と、水晶振動子13と、ボタン電池14と、スピーカ15と、樹脂基板11の長辺に沿って形成される複数のパッド16と、樹脂基板11の外縁部に沿って形成されるアンテナパターン17aと、樹脂基板11上に形成される導電パターン17bとを有している。なお、
図9は、通信モジュール10の内部構成を機能化したブロック図であり、実際の各回路部品やパターンの配置やサイズ、形状、個数は任意に変更可能である。
【0064】
図10に示すように、通信モジュール10のASIC12は、患者が押圧した錠剤5の各収納部5aの位置情報と、上述した導電回路18Aが破断した時刻とを時系列で記憶する記憶部21と、記憶部21に押圧情報を記憶する制御を行う制御部22と、不図示のホストコンピュータとの間で無線通信を行う無線通信部23とを含んでいる。
【0065】
記憶部21は、患者が押圧した錠剤5の各収納部5aを特定する情報と、押圧された時刻とを組にして記憶する。
【0066】
無線通信部23は、ホストコンピュータとの間で、いわゆるNFC(Near Field Communication、近接無線通信)を行って、情報の送受を行う。無線通信部23が無線通信に用いる方式や周波数帯域は特に制限されるものではなく、例えば13.56MHzの帯域でISO14443に準拠した無線方式で無線通信を行う。
【0067】
NFCでは、規格上電力の送受もできるため、電池なしで通信モジュール10を駆動することも原理的には可能である。ただし、本実施形態の通信モジュール10は、スピーカ15も備えており、電力の消費量が比較的大きいため、ボタン電池14を搭載していることが好ましい。
【0068】
次に、本実施の形態による情報記録装置1の使用方法について、
図11(a)-(d)を用いて説明する。
【0069】
まず、
図11(a)に示すように、情報記録装置1を準備する。この場合、被覆部材40は、下層基板30bに貼り付けられている。
【0070】
次に、患者が、錠剤5の収納部5aを指で押圧することにより、収納部5aから錠剤5を取り出して服用する。この際、まず、
図11(b)に示すように、被覆部材40のうち、患者が押圧する収納部5aに対応する破断領域83を覆う部分を、下層基板30bから剥離する。次に、患者が、錠剤の収納部5aを指で押圧する。これにより、
図11(c)に示すように、成形シート8の基材8a、中間層基板30cのミシン目63および破断領域83のつなぎ83aがそれぞれ破断されて、収納部5aから錠剤5が取り出される。そして、患者が、収納部5aから取り出された錠剤5を服用する。ここで、破断領域83が破断される際、下層基板30bに設けられた導電回路18Aのスイッチ接点33のうち、破断される破断領域83に対応するスイッチ接点33が破断され、電気的導通が遮断される。そして、電気的導通が遮断されたスイッチ接点33の位置と、電気的導通が遮断された時刻とが、通信モジュール10の記憶部21に記憶される。
【0071】
次いで、
図11(d)に示すように、被覆部材40のうち、下層基板30bから剥離された部分を、下層基板30bに再び貼り付ける。これにより、破断された導電回路18Aが被覆部材40によって覆われる。
【0072】
ところで、低湿度雰囲気下で情報記録装置1を使用する場合、情報記録装置1に静電気が発生する可能性がある。また、発生した静電気が放電すると、破断された導電回路18Aに電流が流れ、通信モジュール10に過電圧が印加されるおそれがある。そして、通信モジュール10に過電圧が印加されて通信モジュール10が損傷を受けると、通信モジュール10の記憶部21に記憶されたスイッチ接点33の位置情報と、電気的導通が遮断された時刻とが消去されてしまう可能性がある。
【0073】
これに対して本実施の形態では、破断された導電回路18Aが被覆部材40によって覆われている。これにより、情報記録装置1に静電気が発生した場合であっても、静電気に起因する電流が、破断された導電回路18Aに流れることを抑制することができる。このため、通信モジュール10に過電圧が印加されることを抑制することができ、通信モジュール10が損傷を受けることを抑制することができる。
【0074】
以上のように本実施の形態によれば、情報記録装置1が、上層基板30aと、導電回路18Aが設けられた下層基板30bとを含む紙基板30と、錠剤5が収納された複数の収納部5aを含む錠剤用の成形シート8とを有する成形シート収容基板30Aと、つなぎ83aおよび導電回路18Aを破断することによって錠剤5を収納部5aから取り出した後に、破断された導電回路18Aを覆う被覆部材40と、導電回路18Aに接続された通信モジュール10とを備えている。これにより、情報記録装置1に静電気が発生した場合であっても、静電気に起因する電流が、破断された導電回路18Aに流れることを抑制することができる。このため、通信モジュール10に過電圧が印加されることを抑制することができ、通信モジュール10が損傷を受けることを抑制することができる。この結果、通信モジュール10の記憶部21に記憶されたスイッチ接点33の位置情報と、電気的導通が遮断された時刻とが消去されてしまう不具合を抑制することができる。なお、情報記録装置1が被覆部材40を備えることにより、通信モジュール10の記憶部21に記憶されたスイッチ接点33の位置情報と、電気的導通が遮断された時刻とが消去されてしまう不具合を抑制することができることは、後述する実施例により説明する。
【0075】
また、本実施の形態によれば、被覆部材40が、下層基板30bに対して着脱自在に貼り付けられている。この場合、患者は、錠剤5を収納部5aから取り出す際には、被覆部材40のうち、患者が押圧する収納部5aに対応する破断領域83を覆う部分を、下層基板30bから剥離する。そして、患者は、錠剤5を収納部5aから取り出した後に、被覆部材40のうち、下層基板30bから剥離された部分を、下層基板30bに再び貼り付ける。このように、患者は、錠剤5を収納部5aから取り出す前に、被覆部材40の一部を下層基板30bから剥離するといった作業を行う必要がある。これにより、患者に対して被覆部材40の存在を意識させることができる。このため、患者が、錠剤5を収納部5aから取り出した後に、破断された導電回路18Aを被覆部材40によって覆い忘れることを抑制することができる。
【0076】
また、本実施の形態によれば、被覆部材40が、基材層41と、基材層41上に設けられた粘着層42とを含む粘着テープである。これにより、被覆部材40を下層基板30bに対して容易に着脱することができる。また、被覆部材40が粘着テープであることにより、被覆部材40を安価に入手することができる。このため、情報記録装置1の製造コストを低減することができる。
【0077】
また、本実施の形態によれば、基材層41が、合成樹脂製フィルムを含んでいる。これにより、情報記録装置1に静電気が発生した場合であっても、静電気に起因する電流が、破断された導電回路18Aに流れることをより効果的に抑制することができる。
【0078】
また、本実施の形態によれば、基材層41が、紙を含んでいる。これにより、被覆部材40の剥離及び貼付が容易となる。
【0079】
また、本実施の形態によれば、被覆部材40が、各々の破断領域83の全体を覆っている。これにより、情報記録装置1に静電気が発生した場合であっても、静電気に起因する電流が、破断された導電回路18Aに流れることを効果的に抑制することができる。すなわち、患者が錠剤5を収納部5aから取り出すたびに、破断された導電回路18Aの数が増加する。これに対して、被覆部材40が各々の破断領域83の全体を覆っていることにより、被覆部材40が、破断された導電回路18Aの全てを覆うことができる。このため、静電気に起因する電流が、破断された導電回路18Aに流れることを効果的に抑制することができる。
【0080】
また、本実施の形態によれば、下層基板30bが、折曲線64により、複数の部分(第2部分92または第3部分95)に区画されており、一の部分(第2部分92または第3部分95)の各々破断領域83が、単一の被覆部材40によって覆われている。これにより、下層基板30bの第2部分92および第3部分95に、それぞれ複数枚ずつ被覆部材40を設けることにより、第2部分92および第3部分95の各々の破断領域83を覆う場合と比較して、被覆部材40の大きさを大きくすることができる。このため、患者が被覆部材40を取り扱う際の取り扱い性を向上させることができる。
【0081】
また、本実施の形態によれば、紙基板30が、上層基板30aと下層基板30bとの間に介在する中間層基板30cを更に有し、成形シート8が、上層基板30aと中間層基板30cとの間に介在している。これにより、成形シート8の基材8aが例えばアルミニウム製であっても、破断された導電回路18Aと基材8aとが導通してしまうことを抑制することができる。
【0082】
また、本実施の形態によれば、通信モジュール10が、ASIC(ICチップ)12に電源電圧を供給するボタン電池14を更に有している。これにより、電力の消費量が比較的大きい情報記録装置1を安定して駆動することができる。
【0083】
なお、上述した本実施の形態において、一の部分(第2部分92または第3部分95)の各々の破断領域83が、単一の被覆部材40によって覆われている例について説明した。この場合、
図12に示すように、被覆部材40に破断可能なミシン目43が設けられていてもよい。この場合、被覆部材40は、ミシン目43によって、各々の破断領域83に対応する複数の領域に区画されていてもよい。この場合、患者が錠剤5を収納部5aから取り出す際に、既に破断された破断領域83を覆う被覆部材40を下層基板30bから剥離することなく、患者が押圧する収納部5aに対応する破断領域83を覆う被覆部材40のみを、下層基板30bから剥離することができる。このため、破断された導電回路18A近傍において、被覆部材40を下層基板30bから剥離することによって発生し得る剥離帯電を防止することができる。なお、図示はしないが、各々の被覆部材40に摘まみ片40aが設けられていてもよい。
【0084】
また、上述した本実施の形態において、一の部分(第2部分92または第3部分95)の各々の破断領域83が、単一の被覆部材40によって覆われている例について説明したが、これに限られない。例えば、
図13および
図14に示すように、一の部分(第2部分92または第3部分95)において、被覆部材40が、複数設けられ、各々の被覆部材40が、それぞれ、互いに異なる破断領域83において破断された導電回路18Aを覆ってもよい。
【0085】
図13に示す例においては、第2部分92および第3部分95において、それぞれ、Y方向に沿った5個の破断領域83を覆う被覆部材40が2つずつX方向に沿って設けられている。
図14に示す例においては、第2部分92および第3部分95において、それぞれ、X方向に沿った2個の破断領域83を覆う被覆部材40が5つずつY方向に沿って設けられている。なお、図示はしないが、各々の破断領域83が互いに異なる被覆部材40によって覆われていてもよい。すなわち、1つの破断領域83ごとに1つの被覆部材40が設けられていてもよい。これらの場合、患者が錠剤5を収納部5aから取り出す際に、既に破断された破断領域83を覆う被覆部材40を、下層基板30bから剥離する回数を低減することができる。このため、破断された導電回路18A近傍において、被覆部材40を下層基板30bから剥離することによって発生し得る剥離帯電を抑制することができる。なお、図示はしないが、各々の被覆部材40に摘まみ片40aが設けられていてもよい。
【0086】
また、上述した本実施の形態において、患者が錠剤5を収納部5aから取り出す前に、被覆部材40が、下層基板30bに貼り付けられている例について説明したが、これに限られない。図示はしないが、患者が錠剤5を収納部5aから取り出す前に、被覆部材40が、例えば上層基板30aに貼り付けられていてもよい。そして、患者が錠剤5を収納部5aから取り出した後に、被覆部材40を上層基板30aから剥離して、下層基板30bに貼り付けることによって、破断された導電回路18Aが被覆部材40に覆われてもよい。
【0087】
また、上述した本実施の形態において、被覆部材40が粘着テープである例について説明したが、これに限られない。例えば、被覆部材40が紙ラベルや合成樹脂製ラベル(以下、単にラベルと記す)であってもよい。この場合、例えば、ラベルをテープ等によって上層基板30aに貼り付けておき、患者が錠剤5を収納部5aから取り出した後に、ラベルを接着剤によって下層基板30bに貼り付けることによって、破断された導電回路18Aが被覆部材40に覆われてもよい。
【0088】
また、上述した本実施の形態において、操作面2の第2面2bおよび第3面2cに、患者が服用すべき錠剤を収納する収納部5aが配置されている例について説明したが、これに限られない。例えば、図示はしないが、第2面2bまたは第3面2cに、錠剤を服用後の体の具合等を入力するための選択ボタン等が配置されていてもよい。
【0089】
また、上述した本実施の形態において、上層部分97および各々の上層基板30a間に、縦方向(X方向)において隙間が設けられている例について説明したが、これに限られない。例えば、図示はしないが、上層部分97および各々の上層基板30a間に、縦方向(X方向)において隙間が設けられていなくてもよい。この場合、上層部分97および各々の上層基板30aは、単一の部材から構成されていてもよい。また、上層部分97および各々の上層基板30aが単一の部材から構成されている場合、上層部分97および各々の上層基板30aが横方向(Y方向)に延びる折曲線により、互いに区画されていてもよく、上層部分97および各々の上層基板30aが、当該折曲線を介して縦方向(X方向)に三つ折りに折り畳まれるように構成されていてもよい。
【0090】
さらに、上述した本実施の形態において、中間層部分98および各々の中間層基板30c間に、縦方向(X方向)において隙間が設けられている例について説明したが、これに限られない。例えば、図示はしないが、中間層部分98および各々の中間層基板30c間に、縦方向(X方向)において隙間が設けられていなくてもよい。この場合、中間層部分98および各々の中間層基板30cは、単一の部材から構成されていてもよい。また、中間層部分98および各々の中間層基板30cが単一の部材から構成されている場合、中間層部分98および各々の中間層基板30cが横方向(Y方向)に延びる折曲線により、互いに区画されていてもよく、中間層部分98および各々の中間層基板30cが、当該折曲線を介して縦方向(X方向)に三つ折りに折り畳まれるように構成されていてもよい。
【0091】
[実施例]
次に本発明の具体的実施例について説明する。
【0092】
(実施例1)
まず、
図1乃至
図4に示す情報記録装置1を作製した。この場合、収納部5aは、直径8mmの円形形状をもち、収納部5a内に直径6mmの円形形状をもつ錠剤5を収納した。また、破断領域83は、直径12mmの円形形状をもち、開口81は、直径8mmの円形形状をもつよう形成した。
【0093】
次に、被覆部材40のうち、押圧する収納部5aに対応する破断領域83を覆う部分を、下層基板30bから剥離した。そして、この状態で収納部5aを押圧し、収納部5a内の錠剤5によって、下層基板30bの破断領域83を破断した。
【0094】
その後、破断された導電回路18Aを被覆部材40によって覆った。被覆部材40は、基材層41として二軸延伸ポリプロピレンフィルムを使用した。また、粘着層42として、アクリル系樹脂を用いた。また、被覆部材40のサイズは、100mm×50mmであり、被覆部材40の厚みは、120μmであった。
【0095】
<放電試験>
次に、IEC610004-2に準拠して、放電試験を行った。試験機としては、ノイズ研究所社製の静電気試験機ESS2000を用いた。具体的には、まず、試験機を放電状態にしながら、下層基板30bの裏面側から破断された導電回路18Aに徐々に近づけた(以下、気中放電と記す)。次に、静電気の放電後、通信モジュール10の記憶部21に記憶された情報が消去されているか否かについて確認した。そして、通信モジュール10の記憶部21に記憶された情報が消去されていない場合、放電電圧を高くして、再度気中放電を行った。このようにして、通信モジュール10の記憶部21に記憶された情報が消去されるまで、あるいは放電電圧が所定の電圧になるまで、放電電圧を高くしながら気中放電を行った。
【0096】
(実施例2)
基材層41として、塩化ビニルフィルムを使用したこと、以外は実施例1と同様にして、放電試験を行った。
【0097】
(実施例3)
基材層41として、坪量が70g/m2のコート紙を使用したこと、以外は実施例1と同様にして、放電試験を行った。
【0098】
(比較例)
被覆部材40を設けなかったこと、以外は実施例1と同様にして、放電試験を行った。
【0099】
以上の結果を表1および表2に示す。
【0100】
【0101】
表1に示すように、比較例の情報記録装置1においては、5kVの電圧を放電した際に、記憶部に記憶された情報が消去されていた。一方、表1に示すように、実施例3の情報記録装置1においては、8kVの電圧を放電した際に、記憶部21に記憶された情報が消去されていた。また、実施例2の情報記録装置1においては、12kVの電圧を放電した際に、記憶部21に記憶された情報が消去されていた。さらに、実施例1の情報記録装置1においては、14kVの電圧を放電した場合であっても、記憶部21に記憶された情報が消去されなかった。このように、実施例1乃至実施例3による情報記録装置1は、比較例による情報記録装置と比べて、通信モジュール10が損傷を受けることを抑制することができる。
【0102】
上記実施の形態および変形例に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組合せることも可能である。あるいは、上記実施の形態および変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0103】
1 情報記録装置
5 錠剤
5a 収納部
8 成形シート
8a 基材
8b 収納体
10 通信モジュール
12 ASIC
14 ボタン電池
18A 導電回路
21 記憶部
22 制御部
23 無線通信部
30 紙基板
30A 成形シート収容基板
30a 上層基板
30b 下層基板
30c 中間層基板
40 被覆部材
81 開口
83 破断領域
83a つなぎ
83b 切欠き