(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】多層プリフォームの製造方法、多層容器の製造方法および多層プリフォーム
(51)【国際特許分類】
B29C 45/16 20060101AFI20231221BHJP
B29C 49/22 20060101ALI20231221BHJP
B29C 49/06 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B29C45/16
B29C49/22
B29C49/06
(21)【出願番号】P 2020007490
(22)【出願日】2020-01-21
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202304
【氏名又は名称】塙 和也
(72)【発明者】
【氏名】江口 誠
(72)【発明者】
【氏名】関根 章智
(72)【発明者】
【氏名】森 貴昭
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-166027(JP,A)
【文献】国際公開第95/00325(WO,A1)
【文献】特開平10-337770(JP,A)
【文献】特表2004-511358(JP,A)
【文献】特開2002-103429(JP,A)
【文献】特開2001-225348(JP,A)
【文献】特開2005-111820(JP,A)
【文献】特開昭57-174221(JP,A)
【文献】特開昭48-073469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/16
B29C 49/06
B29C 49/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部と、底部とを備える多層プリフォームの製造方法において、
キャビティ側金型と、コアを含むコア側金型とを有する金型組合体を準備する工程と、
前記キャビティ側金型内に前記コアを挿入する工程と、
前記キャビティ側金型と前記コアとの間の空間に第1射出樹脂を射出することにより、多層プリフォーム中間体を形成する工程と、
前記キャビティ側金型に対して、前記コアと共に前記多層プリフォーム中間体を移動させることにより、前記キャビティ側金型と前記多層プリフォーム中間体との間に空間を形成する工程と、
前記キャビティ側金型と前記多層プリフォーム中間体との間の空間に第2射出樹脂を射出することにより、前記多層プリフォーム中間体により構成された内層と、前記内層の外側に配置され、前記内層と一体に形成された外層とを有する多層プリフォームを形成する工程とを備え、
前記内層は、バージンポリエステルにより構成され、
前記外層は、リサイクルポリエステルにより構成される、多層プリフォームの製造方法。
【請求項2】
前記胴部において、前記外層の厚みは、前記内層の厚みよりも厚くなっている、請求項1に記載の多層プリフォームの製造方法。
【請求項3】
前記胴部において、前記外層の厚みは、前記内層の厚みの0.3倍以上25倍以下である、請求項1に記載の多層プリフォームの製造方法。
【請求項4】
前記胴部において、前記内層の厚みは、0.1mm以上2.9mm以下である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の多層プリフォームの製造方法。
【請求項5】
前記外層の内面は、全体にわたって前記内層に覆われている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の多層プリフォームの製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の多層プリフォームの製造方法により多層プリフォームを作製する工程と、
前記多層プリフォームに対してブロー成形を施す工程と、を備える、多層容器の製造方法。
【請求項7】
胴部と、底部とを備える多層プリフォームであって、
内層と、
前記内層の外側に配置され、前記内層と一体に形成された外層とを備え、
前記内層は、バージンポリエステルにより構成され、
前記外層は、リサイクルポリエステルにより構成され、
前記胴部において、前記内層の外面および前記外層の外面は、それぞれ多層プリフォームの中心軸線に対して傾斜しており、
前記胴部において、前記中心軸線に対する前記内層の外面の傾斜角度と、前記中心軸線に対する前記外層の外面の傾斜角度とが、互いに等しい、多層プリフォーム。
【請求項8】
前記胴部において、前記中心軸線に対する前記内層の外面の傾斜角度は、1°以上20°以下である、請求項7に記載の多層プリフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多層プリフォームの製造方法、多層容器の製造方法および多層プリフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルは、機械的特性、化学的安定性、耐熱性、ガスバリア性および透明性などに優れ、かつ安価であることから、飲料品などを充填する容器などの製造に広く使用されている。このような容器は、ポリエステル製のプリフォームを準備し、このプリフォームを用いてブロー成形することにより得られる。
【0003】
近年、環境負荷の低減を目的として、種々の方法によりリサイクルしたポリエステルが容器の製造に使用されている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、中間層材料として、再生ポリエステルを用いる予備成形体が開示されている。
【0004】
ところで、コストの面から、市場におけるポリエステルの多くはアンチモン触媒により重合されたもの(以下、アンチモン触媒ポリエステルという)であり、また、リサイクルの原料となるポリエステルの多くもアンチモン触媒ポリエステルである。
【0005】
しかしながら、リサイクルを繰り返した場合、除去されず蓄積された不純物やアンチモン触媒の内容物への溶出が懸念される。また、コンビニエンスストアなどにおいては、内容物が充填された容器を正立させ、ホットウォーマー内で加温し販売することが行われているが、このような加温状態の場合に上記アンチモン溶出は特に懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示はこのような点を考慮してなされたものであり、多層容器の衛生性を高めるとともに、多層容器の環境負荷を低減することが可能な、多層プリフォームの製造方法、多層容器の製造方法および多層プリフォームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施の形態による多層プリフォームの製造方法は、胴部と、底部とを備える多層プリフォームの製造方法において、キャビティ側金型と、コアを含むコア側金型とを有する金型組合体を準備する工程と、前記キャビティ側金型内に前記コアを挿入する工程と、前記キャビティ側金型と前記コアとの間の空間に第1射出樹脂を射出することにより、多層プリフォーム中間体を形成する工程と、前記キャビティ側金型に対して、前記コアと共に前記多層プリフォーム中間体を移動させることにより、前記キャビティ側金型と前記多層プリフォーム中間体との間に空間を形成する工程と、前記キャビティ側金型と前記多層プリフォーム中間体との間の空間に第2射出樹脂を射出することにより、前記多層プリフォーム中間体により構成された内層と、前記内層の外側に配置され、前記内層と一体に形成された外層とを有する多層プリフォームを形成する工程とを備え、前記内層は、バージンポリエステルにより構成され、前記外層は、リサイクルポリエステルにより構成される、多層プリフォームの製造方法である。
【0009】
一実施の形態による多層プリフォームの製造方法において、前記胴部において、前記外層の厚みは、前記内層の厚みよりも厚くなっていてもよい。
【0010】
一実施の形態による多層プリフォームの製造方法において、前記胴部において、前記外層の厚みは、前記内層の厚みの0.3倍以上25倍以下であってもよい。
【0011】
一実施の形態による多層プリフォームの製造方法において、前記胴部において、前記内層の厚みは、0.1mm以上2.9mm以下であってもよい。
【0012】
一実施の形態による多層プリフォームの製造方法において、前記外層の内面は、全体にわたって前記内層に覆われていてもよい。
【0013】
一実施の形態による多層容器の製造方法は、本開示による多層プリフォームの製造方法により多層プリフォームを作製する工程と、前記多層プリフォームに対してブロー成形を施す工程と、を備える、多層容器の製造方法である。
【0014】
一実施の形態による多層プリフォームは、胴部と、底部とを備える多層プリフォームであって、内層と、前記内層の外側に配置され、前記内層と一体に形成された外層とを備え、前記内層は、バージンポリエステルにより構成され、前記外層は、リサイクルポリエステルにより構成され、前記胴部において、前記内層の外面および前記外層の外面は、それぞれ多層プリフォームの中心軸線に対して傾斜しており、前記胴部において、前記中心軸線に対する前記内層の外面の傾斜角度と、前記中心軸線に対する前記外層の外面の傾斜角度とが、互いに等しい、多層プリフォームである。
【0015】
一実施の形態による多層プリフォームにおいて、前記胴部において、前記中心軸線に対する前記内層の外面の傾斜角度は、1°以上20°以下であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、多層容器の衛生性を高めるとともに、多層容器の環境負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、一実施の形態による多層容器を示す部分垂直断面図である。
【
図2】
図2は、一実施の形態による多層プリフォームを示す垂直断面図である。
【
図3】
図3は、一実施の形態による多層プリフォームの製造方法を示す図である。
【
図4】
図4は、一実施の形態による多層プリフォームの製造方法を示す図である。
【
図5】
図5は、一実施の形態による多層プリフォームの製造方法を示す図である。
【
図6】
図6は、一実施の形態による多層プリフォームの製造方法を示す図である。
【
図7】
図7は、一実施の形態による多層プリフォームの製造方法を示す図である。
【
図8】
図8は、一実施の形態による多層プリフォームの変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して一実施の形態について説明する。
図1乃至
図7は一実施の形態を示す図である。以下に示す各図は、模式的に示したものである。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、技術思想を逸脱しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。なお、以下に示す各図において、同一部分には同一の符号を付しており、一部詳細な説明を省略する場合がある。また、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値および材料名は、実施の形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行や直交、垂直等の用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含むものとする。
【0019】
<多層容器と多層プリフォーム>
まず、
図1および
図2により、本実施の形態による多層プリフォーム23から製造される多層容器10および本実施の形態による多層プリフォーム23について説明する。なお、本明細書中、「上」および「下」とは、それぞれ多層容器10および多層プリフォーム23を正立させた状態(
図1および
図2)における上方および下方のことをいう。
【0020】
(多層容器)
まず、
図1により、多層容器10の概要について説明する。多層容器10は、多層プリフォーム23に対してブロー成形を施すことにより得られるものである。
【0021】
図1に示すように、多層容器10は、内層11と、外層12とを備えている。なお、本開示による多層容器10は、内層11の内面に位置する蒸着膜(図示せず)を更に備えていてもよい。
【0022】
本実施の形態において、多層容器10は、口部13と、肩部14と、胴部15と、底部16とを備えている。このうち口部13は、図示しないキャップが螺着されるネジ部17と、ネジ部17下に設けられたカブラ18と、カブラ18下に設けられたサポートリング19とを有している。
【0023】
肩部14は、口部13と胴部15との間に設けられ、下方に向けて外径が徐々に拡大する形状を有している。
【0024】
胴部15は、パネル部22を有している。このような構成とすることにより、多層容器10内に加熱された内容物を充填したときや、充填後に内容物を加熱したときにおける内圧の増減による容器の変形を防止することができる。
【0025】
底部16は、中央に位置する陥没部20と、陥没部20の周囲に設けられた接地部21とを有している。このような構成とすることにより、多層容器10内に加熱された内容物を充填したときや、充填後に内容物を加熱したときにおける内圧の増減による容器の変形を防止することができる。
【0026】
このような多層容器10は、容量/重量が、5mL/g以上、50mL/g以下であることが好ましく、8mL/g以上、45mL/g以下であることがより好ましい。多層容器10の容量/重量が5mL/g以上であることにより、多層容器10のブロー成形性を向上させることができる。また、多層容器10の容量/重量が、50mL/g以下であることにより、多層容器10の耐熱性および強度を向上させることができる。
【0027】
また、多層容器10の外層12は、後述するようにリサイクルポリエステルにより構成されるが、このリサイクルポリエステルの含有量は、多層容器10に含まれる樹脂材料の総量100質量部に対し、40質量部以上95質量部以下であることが好ましく、60質量部以上80質量部以下であることがより好ましい。リサイクルポリエステルの含有量が、多層容器10に含まれる樹脂材料の総量100質量部に対し、40質量部以上であることにより、多層容器10の環境負荷低減性をより向上させることができる。リサイクルポリエステルの含有量が、多層容器10に含まれる樹脂材料の総量100質量部に対し、95質量部以下であることにより、多層容器10において外層12を構成するリサイクルポリエステルが内層11の内面から露出してしまうことを防止することができる。
【0028】
さらに、多層容器10の溶出アンチモン濃度は、6ppb未満であることが好ましく、3ppb未満であることがより好ましい。溶出アンチモン濃度が6ppb未満であることにより、アメリカ食品医薬品局(FDA)の21CFR(連邦法第21章)において推奨される値が満たされることとなるため好ましい。また、多層容器10に充填する内容物の種類によっては、既に微量のアンチモンを含んでいる場合がある。多層容器10の溶出アンチモン濃度が3ppb未満であることにより、内容物へ最終的に溶存するアンチモンを低減できる。なお、本実施の形態において、「多層容器の溶出アンチモン濃度」とは、多層容器10内に23℃の超純水を充填し、水が充填された多層容器10を横に倒した状態で、70℃の環境下において14日間静置した後、多層容器10から取り出した水に含まれるアンチモンの濃度を意味する。
【0029】
このような多層容器10は、多層容器10内に高温の内容物を充填した場合や、内容物充填後に内容物を加温した場合であっても、内容物にアンチモンなどが溶出してしまうことを防止することができる。このように、多層容器10は高い衛生性を有するものであるため、加温用容器として好適に用いることができる。
【0030】
(多層容器の内層)
次に、多層容器10の内層11について説明する。内層11は、マンガン触媒ポリエステル、チタン触媒ポリエステル、アルミニウム触媒ポリエステル、リチウム触媒ポリエステルおよびゲルマニウム触媒ポリエステルから選択される、バージンポリエステルにより構成されることを特徴とする。このような構成とすることにより、外層12にリサイクルポリエステルを使用した場合であっても、内容物へのアンチモン溶出を防止することができる。なお、上述したように多層容器10の内層11は、バージンポリエステルにより構成されるが、このバージンポリエステルの含有量は、内層11に含まれる樹脂材料の総量100質量部に対し、20質量部以上100質量部以下であることが好ましく、60質量部以上90質量部以下であることがより好ましい。バージンポリエステルの含有量が20質量部以上であることにより、後述するようにリサイクルポリエステルにより構成される外層12との密着性を向上させることができ、内層11と外層12との間のデラミネーションを抑制することができる。また、バージンポリエステルの含有量が60質量部以上であることにより、リサイクルポリエステルにより構成される外層12との密着性をより向上させることができ、内層11と外層12との間のデラミネーションをより効果的に抑制することができる。さらに、バージンポリエステルの含有量が90質量部以下であることにより、例えばバリア性等の機能を有する樹脂をバージンポリエステルとブレンドした際に、内層11内における当該樹脂の分散効率を向上させることができる。なお、内層11には、後述するメカニカルポリエステルが含まれていないことが好ましい。これにより、多層容器10の衛生性を高めることができる。
【0031】
なお、本開示において、「バージンポリエステル」とは、下記するリサイクル処理が施されていないポリエステル、すなわち、未使用のポリエステルを指す。
【0032】
マンガン触媒としては、例えば、酢酸マンガンなどの脂肪酸マンガン塩、炭酸マンガン、塩化マンガン、マンガンのアセチルアセトナート塩、水酸化マンガンなどが挙げられる。
【0033】
チタン触媒としては、例えば、テトラ-n-プロピルチタネート、テトラ-i-プロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネートテトラマー、テトラ-t-ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネート等のチタンアルコキシド、チタンアルコキシドの加水分解により得られるチタン酸化物、酢酸チタン、シュウ酸チタン、シュウ酸チタンカリウム、シュウ酸チタンナトリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸-水酸化アルミニウム混合物、塩化チタン、塩化チタン-塩化アルミニウム混合物、臭化チタン、フッ化チタン、六フッ化チタン酸カリウム、六フッ化チタン酸コバルト、六フッ化チタン酸マンガン、六フッ化チタン酸アンモニウムおよびチタンアセチルアセトナートなどが挙げられる。
【0034】
アルミニウム触媒としては、例えば、アルミニウムトリスアセチルアセテート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)およびエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートなどが挙げられる。
【0035】
リチウム触媒としては、例えば、エチルリチウム、プロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウムおよびフェニルリチウムなどが挙げられる。
【0036】
ゲルマニウム触媒としては、例えば、二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラメトキシド、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラプロポキシド、ゲルマニウムテトラブトキシド、ゲルマニウムテトラペンタキシドおよびゲルマニウムテトラヘキソキシドなどが挙げられる。
【0037】
本実施の形態において、「ポリエステル」とは、ジカルボン酸化合物とジオール化合物との共重合体を意味する。
【0038】
ジカルボン酸化合物としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸およびエチルマロン酸、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9’-ビス(4-カルボキシフェニル)フルオレン酸およびこれらのエステル誘導体などが挙げられる。
【0039】
ジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノール、デカヒドロナフタレンジメタノール、デカヒドロナフタレンジエタノール、ノルボルナンジメタノール、ノルボルナンジエタノール、トリシクロデカンジメタノール、トリシクロデカンエタノール、テトラシクロドデカンジメタノール、テトラシクロドデカンジエタノール、デカリンジメタノール、デカリンジエタノール、5-メチロール-5-エチル-2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-1,3-ジオキサン、シクロヘキサンジオール、ビシクロヘキシル-4,4’-ジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシルプロパン)、2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル)プロパン、シクロペンタンジオール、3-メチル-1,2-シクロペンタジオール、4-シクロペンテン-1,3-ジオール、アダマンジオール、パラキシレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS,スチレングリコール、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0040】
ポリエステルの中でも、テレフタル酸と、エチレングリコールとの共重合体であるポリエチレンテレフタレート、またはこれに共重合モノマーが添加された改質ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0041】
本実施の形態の特性を損なわない範囲において、ポリエステルは、ジカルボン酸化合物およびジオール化合物以外のモノマーを含んでいてもよいが、その含有量は、全構成単位に対し、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、3モル%以下であることがさらに好ましい。
【0042】
本実施の形態の特性を損なわない範囲において、内層11は、添加剤を含んでいてもよく、例えば、酸素吸収剤、ガスバリア性樹脂(ナイロン6、ナイロン6,6およびポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)などのポリアミド)、可塑剤、紫外線安定化剤、酸化防止剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、アセトアルデヒド吸収剤(例えば、Color Matrix社製のAA Scavengers)および着色剤などが挙げられる。
【0043】
本実施の形態の多層容器10において、内層11は、
図1に示すように、口部13の上端から、底部16にかけて設けられており、外層12の内面を全体にわたって覆っている。このような構成とすることにより、外層12にリサイクルポリエステルを使用し、自動販売機などの中において横に倒した状態で、加温保管した場合であっても、内容物へのアンチモン溶出を効果的に防止することができる。
【0044】
多層容器10の胴部15の任意の領域において、内層11の厚み(径方向距離)は、0.01mm以上0.33mm以下であることが好ましく、0.025mm以上0.3mm以下であることがより好ましい。内層11の厚みが0.01mm以上であることにより、外層12にリサイクルポリエステルを使用した場合であっても、外層12を構成するリサイクルポリエステルが内層11の内面から露出してしまうことを防止することができる。このため、多層容器10において、内容物へのアンチモン溶出を効果的に防止することができる。また、内層11の厚みが0.33mm以下であることにより、多層容器10における外層12の割合を増やすことができ、多層容器10の環境負荷低減性をより向上させることができる。
【0045】
(多層容器の外層)
次に、多層容器10の外層12について説明する。外層12は、リサイクルポリエステルにより構成される。このような構成とすることにより、本実施の形態の多層容器10の環境負荷低減性を向上させることができる。なお、上述したように多層容器10の外層12は、リサイクルポリエステルにより構成されるが、このリサイクルポリエステルの含有量は、外層12に含まれる樹脂材料の総量100質量部に対し、20質量部以上100質量部以下であることが好ましく、60質量部以上90質量部以下であることがより好ましい。リサイクルポリエステルの含有量が20質量部以上であることにより、多層容器10の環境負荷低減性をより向上させることができる。また、リサイクルポリエステルの含有量が60質量部以上であることにより、多層容器10の環境負荷低減性を更に向上させることができる。さらに、リサイクルポリエステルの含有量が90質量部以下であることにより、例えばバリア性等の機能を有する樹脂をリサイクルポリエステルとブレンドした際に、外層12内における当該樹脂の分散効率を向上させることができる。
【0046】
本実施の形態において、「リサイクルポリエステル」とは、ケミカルリサイクルポリエステルまたはメカニカルリサイクルポリエステルを指す。
【0047】
ケミカルリサイクルポリエステルとは、ポリエステル容器をモノマーレベルまで分解して、再度重合することにより得られたポリエステルを指す。
【0048】
メカニカルリサイクルポリエステルとは、ポリエステル容器を選別・粉砕・洗浄して汚染物質や異物を除去し、フレークを得て、フレークを更に高温・減圧下等で一定時間処理して樹脂内部の汚染物質を除去することにより得られたポリエステルを指す。
【0049】
本実施の形態の特性を損なわない範囲において、外層12は、添加剤を含んでいてもよく、例えば、酸素吸収剤、ガスバリア性樹脂(ナイロン6、ナイロン6,6およびポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)などのポリアミド)、可塑剤、紫外線安定化剤、酸化防止剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、アセトアルデヒド吸収剤(例えば、Color Matrix社製のAA Scavengers)および着色剤などが挙げられる。
【0050】
本実施の形態の多層容器10において、外層12は、
図1に示すように、サポートリング19の略上下方向中央部から、底部16にかけて設けられている。このため、多層容器10のサポートリング19よりも上方の部分は、内層11のみから構成され、サポートリング19よりも下方の部分は、内層11と外層12とによって構成されている。
【0051】
多層容器10の胴部15の任意の領域において、外層12の厚み(径方向距離)は、0.04mm以上0.52mm以下であることが好ましく、0.1mm以上0.4mm以下であることがより好ましい。外層12の厚みが0.04mm以上であることにより、多層容器10における外層12の割合を増やすことができ、多層容器10の環境負荷低減性をより向上させることができる。また、外層12の厚みが0.52mm以下であることにより、多層容器10を薄肉化することができる。
【0052】
(蒸着膜)
上述したように、多層容器10は、内層11の内面に位置する蒸着膜を更に備えていてもよい。これにより、多層容器10のガスバリア性を向上することができる。
【0053】
蒸着膜としては、例えば、アルミニウムなどの金属、並びに酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウムなどの無機酸化物、ヘキサメチルジシロキサンなどの有機珪素化合物、DLC(Diamond Like Carbon)膜などの硬質炭素膜から構成される、蒸着膜を挙げることができる。
【0054】
なお、DLC膜からなる硬質炭素膜とは、iカーボン膜または水素化アモルファスカーボン膜(a-C:H)とも呼ばれる硬質炭素膜のことで、SP3結合を主体にしたアモルファスな炭素膜のことである。
【0055】
また、蒸着膜の厚みは、特に限定されるものではなく、例えば、1nm以上150nm以下とすることができる。
【0056】
蒸着膜の形成は、従来公知の方法を用いて行うことができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法およびイオンプレーティング法などの物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、並びにプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法および光化学気相成長法などの化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)などを挙げることができる。
【0057】
(多層プリフォーム)
次に、本実施の形態による多層プリフォーム23について述べる。多層プリフォーム23は、上記多層容器10を製造するために用いるものである。
図2に示すように、多層プリフォーム23は、内層24と、内層24の外側に配置され、内層24と一体に形成された外層25とを備えている。内層24は、多層プリフォーム23の最内層であり、外層25は、多層プリフォーム23の最外層である。
【0058】
本実施の形態において、多層プリフォーム23は、
図2に示すように、口部26と、胴部27と、底部28とを備えている。このうち口部26は、上述した多層容器10の口部13に対応するものであり、口部13と略同一の形状を有している。すなわち、口部26は、多層容器10のネジ部17に対応するネジ部26aと、多層容器10のカブラ18に対応するカブラ26bと、多層容器10のサポートリング19に対応するサポートリング26cとを有している。
【0059】
また、胴部27は、上述した多層容器10の肩部14および胴部15に対応するものである。この胴部27は、略一定の割合で、下方に向けて外径が徐々に縮小する形状を有する。
【0060】
底部28は、上述した多層容器10の底部16に対応するものであり、略半球形状を有している。
【0061】
(多層プリフォームの内層)
次に、多層プリフォーム23の内層24について説明する。多層プリフォーム23の内層24を構成する材料については、多層容器10の内層11の材料と同一である。すなわち、多層プリフォーム23の内層24は、バージンポリエステルにより構成されている。このバージンポリエステルの含有量は、内層24に含まれる樹脂材料の総量100質量部に対し、20質量部以上100質量部以下であることが好ましく、60質量部以上90質量部以下であることがより好ましい。バージンポリエステルの含有量が20質量部以上であることにより、後述するようにリサイクルポリエステルにより構成される外層25との密着性を向上させることができ、内層24と外層25との間のデラミネーションを抑制することができる。また、バージンポリエステルの含有量が60質量部以上であることにより、リサイクルポリエステルにより構成される外層25との密着性をより向上させることができ、内層24と外層25との間のデラミネーションをより効果的に抑制することができる。さらに、バージンポリエステルの含有量が90質量部以下であることにより、例えばバリア性等の機能を有する樹脂をバージンポリエステルとブレンドした際に、内層24内における当該樹脂の分散効率を向上させることができる。なお、内層24には、メカニカルポリエステルが含まれていないことが好ましい。これにより、多層プリフォーム23から作製される多層容器10の衛生性を高めることができる。
【0062】
図2に示すように、内層24は、口部26の上端から、底部28にかけて設けられている。この場合、内層24が、多層プリフォーム23の外層25の内面25b全体を覆うことができるため、多層プリフォーム23から作製される多層容器10においても、内層11が外層12の内面全体を覆うことができる。このため、多層容器10の衛生性を高めることができる。
【0063】
また、多層プリフォーム23の胴部27において、内層24の外面24aは、後述する金型組合体70のキャビティ側金型71の内面に対応する形状を有している。本実施の形態では、多層プリフォーム23の胴部27において、内層24の外面24aは、多層プリフォーム23の中心軸線に対して傾斜している。胴部27において、中心軸線に対する内層24の外面24aの傾斜角度α1は、1°以上20°以下であってもよい。傾斜角度α1が1°以上であることにより、後述する
図6を用いて説明するように、キャビティ側金型71に対して、コア72と共に多層プリフォーム中間体23Aを移動させた際に、キャビティ側金型71と多層プリフォーム中間体23Aとの間に形成される空間G2を大きくすることができる。このため、外層25を容易に形成することができる。また、傾斜角度α1が20°以下であることにより、多層プリフォーム23の高さ(上下方向距離)が低くなり過ぎることを抑制することができる。これにより、多層容器10をブロー成形した際に、胴部15のうち底部16近傍に位置する部分の延伸倍率が高くなり過ぎることを抑制することができる。このため、底部16の厚みが薄くなり過ぎることを抑制することができ、いわゆる白化と呼ばれる不具合が生じることを抑制することができる。なお、本明細書中、傾斜角度α1とは、胴部27の高さ方向中央に位置する点における外面24aの接線の傾斜角度をいう。
【0064】
多層プリフォーム23の胴部27における内層24の厚み(内層24の面に対して垂直な方向に測定された厚み)T1は、多層プリフォーム23の胴部27の任意の領域において、0.1mm以上2.9mm以下であることが好ましく、0.2mm以上2.0mm以下であることがより好ましい。内層24の厚みT1が0.1mm以上であることにより、外層25にリサイクルポリエステルを使用した場合であっても、多層プリフォーム23から作製される多層容器10において、外層12を構成するリサイクルポリエステルが内層11の内面から露出してしまうことを防止することができる。このため、多層容器10において、内容物へのアンチモン溶出を効果的に防止することができる。内層24の厚みT1が2.9mm以下であることにより、多層プリフォーム23から作製される多層容器10における外層12の割合を増やすことができ、多層容器10の環境負荷低減性をより向上させることができる。
【0065】
なお、上述したように、多層容器10は、多層プリフォーム23に対してブロー成形を施すことにより得られる。この場合、多層容器10の肩部14、胴部15および底部16は、多層プリフォーム23の胴部27および底部28が延伸されることにより形成される。このため、延伸倍率が高い多層プリフォーム23の胴部27や底部28において、内層24の厚みを口部26よりも厚くしてもよい。これにより、ブロー成形後の多層容器10において、外層12が内層11の内面から露出することを効果的に抑制することができる。
【0066】
(多層プリフォームの外層)
次に、多層プリフォーム23の外層25について説明する。多層プリフォーム23の外層25を構成する材料については、多層容器10の外層12の材料と同一である。すなわち、多層プリフォーム23の外層25は、リサイクルポリエステルにより構成されている。この場合、リサイクルポリエステルの含有量は、外層25に含まれる樹脂材料の総量100質量部に対し、20質量部以上100質量部以下であることが好ましく、60質量部以上90質量部以下であることがより好ましい。リサイクルポリエステルの含有量が20質量部以上であることにより、多層プリフォーム23から作製される多層容器10の環境負荷低減性をより向上させることができる。また、リサイクルポリエステルの含有量が60質量部以上であることにより、多層プリフォーム23から作製される多層容器10の環境負荷低減性を更に向上させることができる。さらに、リサイクルポリエステルの含有量が90質量部以下であることにより、例えばバリア性等の機能を有する樹脂をリサイクルポリエステルとブレンドした際に、外層25内における当該樹脂の分散効率を向上させることができる。
【0067】
本実施の形態の多層プリフォーム23において、外層25は、
図2に示すように、サポートリング26cの略上下方向中央部から、底部28にかけて設けられている。このため、多層プリフォーム23のサポートリング26cよりも上方の部分は、内層24のみから構成され、サポートリング26cよりも下方の部分は、内層24と外層25とによって構成されている。
【0068】
また、多層プリフォーム23の胴部27において、外層25の外面25aは、後述する金型組合体70のキャビティ側金型71の内面に対応する形状を有している。本実施の形態では、多層プリフォーム23の胴部27において、外層25の外面25aは、多層プリフォーム23の中心軸線に対して傾斜している。この場合、胴部27において、中心軸線に対する外層25の外面25aの傾斜角度α2は、上述した、中心軸線に対する内層24の外面24aの傾斜角度α1と等しくなっている。なお、本明細書中、傾斜角度α2とは、胴部27の高さ方向中央に位置する点における外面25aの接線の傾斜角度をいう。また、傾斜角度α1と傾斜角度α2とが互いに等しいとは、傾斜角度α1、α2が互いに等しい場合のほか、設計上は等しいが、製造上不可避的に生じる誤差や、多層プリフォーム23の製造後に、これらに熱や圧力等による変形が生じている場合も含む。
【0069】
この外層25は、後述する多層プリフォーム中間体23Aの外面上に射出樹脂(後述する第2射出樹脂R2)を射出することにより得られたものである。このような多層プリフォーム23の外層25の厚みは、多層プリフォーム23の任意の領域において、内層24の厚みよりも厚くなっていることが好ましい。これにより、多層プリフォーム23において、バージンポリエステルの使用量に対するリサイクルポリエステルの使用量を多くすることができる。このため、多層プリフォーム23から作製される多層容器10の環境負荷低減性をより向上させることができる。
【0070】
多層プリフォーム23の胴部27における外層25の厚み(外層25の面に対して垂直な方向に測定された厚み)T2は、多層プリフォーム23の胴部27の任意の領域において、内層24の厚みT1の0.3倍以上25倍以下であってもよい。外層25の厚みT2が内層24の厚みT1の0.3倍以上であることにより、多層プリフォーム23において、リサイクルポリエステルの使用量を多くすることができる。このため、多層プリフォーム23から作製される多層容器10の環境負荷低減性を向上させることができる。外層25の厚みT2が内層24の厚みT1の25倍以下であることにより、多層プリフォーム23から作製される多層容器10において、外層12を構成するリサイクルポリエステルが内層11の内面から露出してしまうことを防止することができる。
【0071】
多層プリフォーム23の胴部27における外層25の厚みT2は、多層プリフォーム23の胴部27の任意の領域において、0.5mm以上4.5mm以下であることが好ましく、1.9mm以上4.0mm以下であることがより好ましい。外層25の厚みT2が0.5mm以上であることにより、多層プリフォーム23から作製される多層容器10の環境負荷低減性をより向上させることができる。外層25の厚みT2が4.5mm以下であることにより、多層プリフォーム23から作製される多層容器10を薄肉化することができる。
【0072】
また、任意の位置における外層25の上下方向に沿った長さ(上下方向に測定された厚み)Lは、多層プリフォーム23の全領域において、一定になっている。すなわち、上述したように、外層25は、後述する多層プリフォーム中間体23Aの外面上に第2射出樹脂R2を射出することにより得られたものである。また、後述するように、多層プリフォーム中間体23Aの外面上に第2射出樹脂R2を射出する際には、コア側金型73とキャビティ側金型71とが互いに離間するように、コア側金型73をキャビティ側金型71に対して移動させている。そして、コア側金型73の移動により、キャビティ側金型71と多層プリフォーム中間体23Aとの間に第2射出樹脂R2が射出される空間を形成し、当該空間に第2射出樹脂R2を射出している。このため、外層25の上下方向に沿った長さLは、コア側金型73の移動量となり、多層プリフォーム23の全領域において、一定になる。この長さLは、例えば1mm以上5mm以下であってもよい。なお、外層25の長さLが多層プリフォーム23の全領域において一定になっているとは、長さLが多層プリフォーム23の全領域において一定になっている場合のほか、設計上は一定になっているが、製造上不可避的に生じる誤差や、多層プリフォーム23の製造後に、これらに熱や圧力等による変形が生じている場合も含む。
【0073】
本実施の形態では、
図2に示すように、外層25の内面25bは、全体にわたって内層24に覆われている。これにより、多層プリフォーム23から作製される多層容器10において、外層12を構成するリサイクルポリエステルが内層11の内面から露出してしまうことを防止することができる。このため、多層容器10の衛生性を高めることができる。
【0074】
次に、
図3乃至
図7により、このような構成からなる本実施の形態の作用、すなわち多層プリフォーム23の製造方法および多層容器10の製造方法について説明する。
【0075】
まず、
図3に示すようにキャビティ側金型71と、コア72を含むコア側金型73と、分割可能なリップ型74とを有する金型組合体70を準備する。このうち、キャビティ側金型71のうち、多層プリフォーム23の底部28に対応する位置には、第1射出樹脂(例えば、バージンポリエステルにより構成された射出樹脂)R1を射出する第1ゲート(注入口)75aと、第2射出樹脂(例えば、リサイクルポリエステルにより構成された射出樹脂)R2を射出する第2ゲート(注入口)75bとが形成されている。また、キャビティ側金型71の内面のうち多層プリフォーム23の胴部27に対応する内面は、多層プリフォーム23の内層24の外面24aおよび外層25の外面25aに対応する形状を有している。すなわち、キャビティ側金型71の内面うち多層プリフォーム23の胴部27に対応する内面は、作製する多層プリフォーム23の中心軸線に対して傾斜している。さらに、コア側金型73のコア72は、多層プリフォーム23の内層24の内面24bに対応する形状を有している。
【0076】
次に、
図4に示すように、キャビティ側金型71内に、コア72を挿入する。この際、まず、コア側金型73にリップ型74を装着する。次に、キャビティ側金型71に対してコア72を接近させ、キャビティ側金型71内にコア72を挿着する。このようにして、キャビティ側金型71とコア側金型73とリップ型74とを型締めする。
【0077】
次いで、
図5に示すように、キャビティ側金型71とコア72との間の空間G1に第1射出樹脂R1を射出する。この際、キャビティ側金型71とコア側金型73とリップ型74とを型締めした状態で、キャビティ側金型71およびリップ型74と、コア72との間の空間に、キャビティ側金型71に設けられた第1射出樹脂R1用の第1ゲート75aから、バージンポリエステルにより構成された第1射出樹脂R1を射出する。第1ゲート75aから射出された第1射出樹脂R1は、キャビティ側金型71およびリップ型74と、コア72との間に進入する。これにより、多層プリフォーム中間体23Aが形成される。この多層プリフォーム中間体23Aは、後述するように、多層プリフォーム23の内層24を構成するものである。なお、第1ゲート75aから第1射出樹脂R1を射出する際、図示しない閉鎖部材により第2ゲート75bが閉じられていてもよい。これにより、第1ゲート75aから射出された第1射出樹脂R1が、第2ゲート75bに逆流してしまうことを抑制することができる。
【0078】
次に、
図6に示すように、キャビティ側金型71に対して、コア72と共に多層プリフォーム中間体23Aを移動させる。この際、多層プリフォーム中間体23Aおよびリップ型74がコア側金型73に取り付けられた状態で、コア側金型73とキャビティ側金型71とが互いに離間するように、コア側金型73をキャビティ側金型71に対して移動させる。これにより、キャビティ側金型71と多層プリフォーム中間体23Aとの間に空間G2が形成される。なお、キャビティ側金型71とリップ型74との間の隙間(コア側金型73の移動量)は、1mm以上5mm以下としてもよい。
【0079】
ここで、上述したように、キャビティ側金型71の内面うち多層プリフォーム23の胴部27に対応する内面は、作製する多層プリフォーム23の中心軸線に対して傾斜している。このため、コア側金型73をキャビティ側金型71に対して移動させることにより、多層プリフォーム中間体23Aと、キャビティ側金型71の内面うち多層プリフォーム23の底部28に対応する内面との間だけでなく、多層プリフォーム中間体23Aと、キャビティ側金型71の内面うち多層プリフォーム23の胴部27に対応する内面との間にも空間G2が形成される。
【0080】
次いで、
図7に示すように、キャビティ側金型71と多層プリフォーム中間体23Aとの間の空間G2に第2射出樹脂R2を射出する。すなわち、多層プリフォーム中間体23Aの外面(内層24の外面24a)上に第2射出樹脂R2を射出する。この際、キャビティ側金型71と多層プリフォーム中間体23Aとの間の空間G2に、キャビティ側金型71に設けられた第2射出樹脂R2用の第2ゲート75bから、リサイクルポリエステルにより構成された第2射出樹脂R2を射出する。第2ゲート75bから射出された第2射出樹脂R2は、キャビティ側金型71と多層プリフォーム中間体23Aとの間に進入する。これにより、多層プリフォーム中間体23Aにより構成された内層24と、内層24の外側に配置され、内層24と一体に形成された外層25とを有する多層プリフォーム23が形成される。この際、内層24は、バージンポリエステルにより構成され、外層25は、リサイクルポリエステルにより構成される。
【0081】
そして、得られた多層プリフォーム23が、金型組合体70から外方へ取出される。
【0082】
次に、多層容器10の製造方法について説明する。
【0083】
まず、例えば、
図3乃至
図7に示す方法により、多層プリフォーム23を作製する。そして、多層プリフォーム23に対してブロー成形を施すことにより、多層容器10を製造することができる。
【0084】
以上のように本実施の形態によれば、多層プリフォーム23の製造方法が、キャビティ側金型71とコア72との間の空間G1に第1射出樹脂R1を射出することにより、多層プリフォーム中間体23A(内層24)を形成する工程と、キャビティ側金型71に対して、コア72と共に多層プリフォーム中間体23Aを移動させることにより、キャビティ側金型71と多層プリフォーム中間体23Aとの間に空間G2を形成する工程と、キャビティ側金型71と多層プリフォーム中間体23Aとの間の空間G2に第2射出樹脂R2を射出することにより、多層プリフォーム中間体23Aにより構成された内層24と、内層24の外側に配置され、内層24と一体に形成された外層25とを有する多層プリフォーム23を形成する工程とを備えている。また、内層24が、バージンポリエステルにより構成され、外層25が、リサイクルポリエステルにより構成されている。これにより、多層プリフォーム23から作製される多層容器10の衛生性を高めるとともに、多層容器10の環境負荷を低減することができる。
【0085】
また、外層25を形成する際に、キャビティ側金型71と多層プリフォーム中間体23Aとの間の空間G2に第2射出樹脂R2を射出している。すなわち、外層25は、内層24(多層プリフォーム中間体23A)の外面24a上に第2射出樹脂R2を射出することにより形成されている。また、内層24がバージンポリエステルにより構成され、外層25がリサイクルポリエステルにより構成されている。このように、内層24および外層25にポリエステルを使用することにより、内層24の外面24a上に外層25を射出成形する際に、内層24と外層25との密着性を向上させることができる。また、内層24および外層25にポリエステルを使用することにより、多層容器10のリサイクル性を向上させることができる。
【0086】
また、上述したように、外層25が内層24(多層プリフォーム中間体23A)の外面24a上に第2射出樹脂R2を射出することにより形成されている。これにより、外層25を形成する際に、第2射出樹脂R2が多層プリフォーム中間体23Aの内面(内層24の内面24b)から露出してしまうことを確実に防止することができる。これにより、多層プリフォーム23において、外層25が内層24の内面24bから露出してしまうことを確実に防止することができる。このため、例えば共射出成形によって内層と外層とを備える多層プリフォームを作製する場合と比較して、衛生面において、多層プリフォーム23の信頼性を向上させることができる。
【0087】
さらに、外層25を形成する際に、キャビティ側金型71と多層プリフォーム中間体23Aとの間の空間G2に第2射出樹脂R2を射出することにより、バージンポリエステルにより構成された内層24と、リサイクルポリエステルにより構成された外層25とを備える多層プリフォーム23を容易に作製することができる。すなわち、この場合、単一の金型組合体70を用いて内層24と外層25とを備える多層プリフォーム23を容易に作製することができる。このため、内層24を形成するための射出成形金型および外層25を形成するための射出成形金型の2種類の射出成形金型を準備して、射出成形工程を2回に分けて行う必要がない。このため、多層プリフォーム23を容易に作製することができ、多層プリフォーム23の生産性を向上させることができる。
【0088】
また、本実施の形態によれば、外層25の厚みが、内層24の厚みよりも厚くなっている。これにより、多層プリフォーム23において、バージンポリエステルの使用量に対するリサイクルポリエステルの使用量を多くすることができる。このため、多層プリフォーム23から作製される多層容器10の環境負荷低減性をより向上させることができる。
【0089】
また、本実施の形態によれば、外層25の内面25bが、全体にわたって内層24に覆われている。これにより、多層プリフォーム23から作製される多層容器10において、外層12を構成するリサイクルポリエステルが内層11の全内面から露出してしまうことを防止することができる。このため、多層容器10の衛生性を高めることができる。
【0090】
さらに、本実施の形態によれば、多層プリフォーム23が内層24と外層25とを備え、多層プリフォーム23の内層24がバージンポリエステルにより構成され、外層25がリサイクルポリエステルにより構成されている。これにより、多層プリフォーム23から作製される多層容器10の衛生性を高めるとともに、多層容器10の環境負荷を低減することができる。また、胴部27において、内層24の外面24aおよび外層25の外面25aは、それぞれ多層プリフォーム23の中心軸線に対して傾斜しており、胴部27において、中心軸線に対する内層24の外面24aの傾斜角度α1と、中心軸線に対する外層25の外面25aの傾斜角度α2とが、互いに等しくなっている。すなわち、単一の金型組合体70を用いて内層24および外層25が形成されている。このため、内層24と外層25とを備える多層プリフォーム23を容易に作製することができる。また、内層24を形成するための射出成形金型および外層25を形成するための射出成形金型の2種類の射出成形金型を準備して、射出成形工程を2回に分けて行う必要がない。このため、多層プリフォーム23の生産性を向上させることができる。
【0091】
なお、上述した実施の形態において、多層プリフォーム23の胴部27が、略一定の割合で、下方に向けて外径が徐々に縮小する形状を有する例について説明したが、これに限られない。例えば、
図8に示すように、多層プリフォーム23の胴部27が、サポートリング26cの下方に設けられた第1縮径部27aと、第1縮径部27aの下方に設けられた第2縮径部27bと、第2縮径部27bの下方に設けられた第3縮径部27cとを有していてもよい。第1縮径部27a、第2縮径部27bおよび第3縮径部27cは、それぞれ下方に向けて外径が徐々に縮小する形状を有している。また、この場合、中心軸線に対する第1縮径部27aの外面の傾斜角度αaは、中心軸線に対する第2縮径部27bの外面の傾斜角度αbよりも小さくなっていてもよい。また、中心軸線に対する第2縮径部27bの外面の傾斜角度αbは、中心軸線に対する第3縮径部27cの外面の傾斜角度αcよりも大きくなっていてもよい。さらに、中心軸線に対する第3縮径部27cの外面の傾斜角度αcは、中心軸線に対する第1縮径部27aの外面の傾斜角度αaよりも小さくなっていてもよい。
【0092】
上記実施の形態に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組合せることも可能である。あるいは、上記実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0093】
10 多層容器
23 多層プリフォーム
23A 多層プリフォーム中間体
24 内層
24a 外面
25 外層
25a 外面
25b 内面
27 胴部
28 底部
70 金型組合体
71 キャビティ側金型
72 コア
73 コア側金型
R1 第1射出樹脂
R2 第2射出樹脂