(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】画像形成装置、画像形成方法及び画像形成プログラム
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20231221BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20231221BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G21/00 510
G03G21/00 390
G03G15/20 510
(21)【出願番号】P 2020028588
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115831
【氏名又は名称】藤岡 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 優
(72)【発明者】
【氏名】中岩 雄基
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-286460(JP,A)
【文献】特開平05-197245(JP,A)
【文献】特開平01-291263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/01
13/20
13/34
15/00-15/01
15/20
15/36
21/00-21/02
21/14
21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体を有する現像部と、
複数の搬送速度で前記感光体からトナーが転写され、前記転写されたトナーを画像形成媒体上に転写する中間転写ベルトと、
前記中間転写ベルトに転写されたトナーの濃度を計測する濃度センサと、
前記複数の搬送速度のうちの一の線速である基準線速の選択を受け付ける操作表示部と、
前記操作表示部を介して選択された基準線速の校正設定値である基準設定値と、前記基準線速を使用して前記複数の搬送速度のうちの前記基準線速以外の少なくとも1つの線速の校正設定値を前記基準設定値から変換して生成するための変換値とを記憶する記憶部と、
前記基準線速で画像を形成する場合には、前記基準設定値を使用して前記現像部を調整し、前記基準線速以外の線速で画像を形成する場合には、前記基準設定値と前記変換値とを使用して前記現像部を調整する校正処理部と、
を備え、
前記校正処理部は、前記基準線速の選択の受け付けに応じて、前記選択が基準線速の変更となるか否かを判断し、前記基準線速の変更であると判断した場合には、前記基準線速における前記トナーの濃度の計測を実行し、前記計測に基づいて前記基準設定値を更新する画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置であって、
前記操作表示部は、前記基準線速の選択を変更するためのパスワードの登録を受け付け、前記登録後においては、前記登録されたパスワードと合致するパスワードの入力に応じて前記基準線速の選択を受け付ける画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置であって、
前記校正処理部は、前回の校正からの環境変化が第1の閾値を超えた場合には、前記基準線速における前記トナーの濃度の計測を実行し、前記計測に基づいて前記基準設定値を更新し、画像形成の後に前記環境変化が前記第1の閾値よりも大きな第2の閾値を超えた場合には、前記基準線速以外の線速における前記トナーの濃度の計測を実行し、前記計測に基づいて前記変換値を生成し、前記更新された基準設定値と、前記生成された変換値とを前記記憶部に記憶する画像形成装置。
【請求項4】
請求項3記載の画像形成装置であって、
前記校正処理部は、前記画像形成の前において前記環境変化が前記第1の閾値を超えた場合には、前記画像形成の前に前記基準設定値を更新する画像形成装置。
【請求項5】
請求項4記載の画像形成装置であって、さらに、
前記中間転写ベルトから転写されたトナーを画像形成媒体に定着させるための定着プロセスを実行する定着部を有し、
前記画像形成装置は、前記定着プロセスに必要な温度よりも低い温度に前記定着部の温度を制御するスリープ状態とすることが可能であり、
前記校正処理部は、前記画像形成の前において前記環境変化が前記第1の閾値を超えた場合には、前記スリープ状態から復帰する際に前記基準設定値を更新する画像形成装置。
【請求項6】
感光体を有する現像部と、複数の搬送速度で前記感光体からトナーが転写され、前記転写されたトナーを画像形成媒体上に転写する中間転写ベルトとを用いる画像形成方法であって、
前記中間転写ベルトに転写されたトナーの濃度を計測する濃度計測工程と、
前記複数の搬送速度のうちの一の線速である基準線速の選択を受け付ける操作表示工程と、
前記操作表示工程を介して選択された基準線速の校正設定値である基準設定値と、前記基準線速を使用して前記複数の搬送速度のうちの前記基準線速以外の少なくとも1つの線速の校正設定値を前記基準設定値から変換して生成するための変換値とを記憶する記憶工程と、
前記基準線速で画像を形成する場合には、前記基準設定値を使用して前記現像部を調整し、前記基準線速以外の線速で画像を形成する場合には、前記基準設定値と前記変換値とを使用して前記現像部を調整する校正処理工程と、
を備え、
前記校正処理工程は、前記基準線速の選択の受け付けに応じて、前記選択が基準線速の変更となるか否かを判断し、前記基準線速の変更であると判断した場合には、前記基準線速における前記トナーの濃度の計測を実行し、前記計測に基づいて前記基準設定値を更新する画像形成方法。
【請求項7】
感光体を有する現像部と、複数の搬送速度で前記感光体からトナーが転写され、前記転写されたトナーを画像形成媒体上に転写する中間転写ベルトと、前記中間転写ベルトに転写されたトナーの濃度を計測する濃度センサとを有する画像形成装置を制御するための画像形成プログラムであって、
前記複数の搬送速度のうちの一の線速である基準線速の選択を受け付ける操作表示部と、
前記操作表示部を介して選択された基準線速の校正設定値である基準設定値と、前記基準線速を使用して前記複数の搬送速度のうちの前記基準線速以外の少なくとも1つの線速の校正設定値を前記基準設定値から変換して生成するための変換値とを記憶する記憶部、及び
前記基準線速で画像を形成する場合には、前記基準設定値を使用して前記現像部を調整し、前記基準線速以外の線速で画像を形成する場合には、前記基準設定値と前記変換値とを使用して前記現像部を調整する校正処理部として前記画像形成装置を機能させ、
前記校正処理部は、前記基準線速の選択の受け付けに応じて、前記選択が基準線速の変更となるか否かを判断し、前記基準線速の変更であると判断した場合には、前記基準線速における前記トナーの濃度の計測を実行し、前記計測に基づいて前記基準設定値を更新する画像形成装置。画像形成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成方法及び画像形成プログラムに関し、特に校正処理に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを用いた画像形成装置において、中間転写ベルトにパッチを形成して、そのパッチの濃度を実測することによって露光量や現像バイアスが校正される方法が提案されている。このような校正処理において、特許文献1は、複数のプロセス速度で形成される画像の補正を行なう画像補正方法において、中速での画像形成の前に中速VMで作成された基準パターンを使用して中速VMの濃度補正テーブルTBMを作成し、中速VMの濃度補正テーブルTBMから換算テーブルTB0を使用して高速VHの濃度補正テーブルTBMを作成する技術を開示している。特許文献1は、さらに、高速VHから換算テーブルTB0を使用して中速VMの濃度補正テーブルTBMを作成することも可能としている。これにより、特許文献1は、複数のプロセス速度で形成される画像の補正において、各プロセス速度が変更される毎にプロセス速度に対応したプロセスコントロール(画質調整)に掛かる時間を削減するとともに、像担持体の空転を無くして該像担持体の表面の摩耗(膜べり)を抑制することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術は、たとえば中速VMでのプロセスコントロールのみが続いた場合には、中速VMから換算テーブルTB0を使用して作成される高速VHの濃度補正テーブルTBMの信頼性の低下が懸念される。一方、画像形成の前に濃度補正テーブルTBMが作成されるので、画像形成の完了までの時間が長くなって生産性が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、生産性の低下を抑制しつつ校正の信頼性を高める技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像形成装置は、感光体を有する現像部と、複数の搬送速度で前記感光体からトナーが転写され、前記転写されたトナーを画像形成媒体上に転写する中間転写ベルトと、前記中間転写ベルトに転写されたトナーの濃度を計測する濃度センサと、前記複数の搬送速度のうちの一の線速である基準線速の選択を受け付ける操作表示部と、前記操作表示部を介して選択された基準線速の校正設定値である基準設定値と、前記基準線速を使用して前記複数の搬送速度のうちの前記基準線速以外の少なくとも1つの線速の校正設定値を前記基準設定値から変換して生成するための変換値とを記憶する記憶部と、前記基準線速で画像を形成する場合には、前記基準設定値を使用して前記現像部を調整し、前記基準線速以外の線速で画像を形成する場合には、前記基準設定値と前記変換値とを使用して前記現像部を調整する校正処理部とを備え、前記校正処理部は、前記基準線速の選択の受け付けに応じて、前記選択が基準線速の変更となるか否かを判断し、前記基準線速の変更であると判断した場合には、前記基準線速における前記トナーの濃度の計測を実行し、前記計測に基づいて前記基準設定値を更新する。
【0007】
本発明は、感光体を有する現像部と、複数の搬送速度で前記感光体からトナーが転写され、前記転写されたトナーを画像形成媒体上に転写する中間転写ベルトとを用いる画像形成方法を提供する。前記画像形成方法は、前記中間転写ベルトに転写されたトナーの濃度を計測する濃度計測工程と、前記複数の搬送速度のうちの一の線速である基準線速の選択を受け付ける操作表示工程と、前記操作表示工程を介して選択された基準線速の校正設定値である基準設定値と、前記基準線速を使用して前記複数の搬送速度のうちの前記基準線速以外の少なくとも1つの線速の校正設定値を前記基準設定値から変換して生成するための変換値とを記憶する記憶工程と、前記基準線速で画像を形成する場合には、前記基準設定値を使用して前記現像部を調整し、前記基準線速以外の線速で画像を形成する場合には、前記基準設定値と前記変換値とを使用して前記現像部を調整する校正処理工程とを備え、前記校正処理工程は、前記基準線速の選択の受け付けに応じて、前記選択が基準線速の変更となるか否かを判断し、前記基準線速の変更であると判断した場合には、前記基準線速における前記トナーの濃度の計測を実行し、前記計測に基づいて前記基準設定値を更新する。
【0008】
本発明は、感光体を有する現像部と、複数の搬送速度で前記感光体からトナーが転写され、前記転写されたトナーを画像形成媒体上に転写する中間転写ベルトと、前記中間転写ベルトに転写されたトナーの濃度を計測する濃度センサとを有する画像形成装置を制御するための画像形成プログラムを提供する。前記画像形成プログラムは、前記複数の搬送速度のうちの一の線速である基準線速の選択を受け付ける操作表示部と、前記操作表示部を介して選択された基準線速の校正設定値である基準設定値と、前記基準線速を使用して前記複数の搬送速度のうちの前記基準線速以外の少なくとも1つの線速の校正設定値を前記基準設定値から変換して生成するための変換値とを記憶する記憶部、及び前記基準線速で画像を形成する場合には、前記基準設定値を使用して前記現像部を調整し、前記基準線速以外の線速で画像を形成する場合には、前記基準設定値と前記変換値とを使用して前記現像部を調整する校正処理部として前記画像形成装置を機能させ、前記校正処理部は、前記基準線速の選択の受け付けに応じて、前記選択が基準線速の変更となるか否かを判断し、前記基準線速の変更であると判断した場合には、前記基準線速における前記トナーの濃度の計測を実行し、前記計測に基づいて前記基準設定値を更新する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、生産性の低下を抑制しつつ校正の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置1の機能構成を示すブロックダイアグラムである。
【
図2】第1実施形態に係る画像形成装置1の全体構成を示す断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る現像部100kの構造を示した側面断面図である。
【
図4】第1実施形態に係る現像工程において後端溜まりが発生する様子を示す概念図である。
【
図5】第1実施形態に係る画像形成装置制御処理の内容を示すフローチャートである。
【
図6】第1実施形態に係る光量校正処理の内容を示す説明図である。
【
図7】第1実施形態に係る印刷校正処理の内容を示すフローチャートである。
【
図8】第1実施形態に係る画像形成装置1で使用される光量校正用パッチ及びバイアス電圧設定用パッチを示す説明図である。
【
図9】第1実施形態に係る現像バイアス正処理の内容を示す説明図である。
【
図10】第1実施形態に係るドット面積率調整処理の内容を示すフローチャートである。
【
図11】第1実施形態に係るガンマ校正処理で使用されるガンマ調整用パッチを示す説明図である。
【
図12】第2実施形態に係る光量校正処理の内容を示す説明図である。
【
図13】第3実施形態に係る画像形成装置制御処理の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、図面を参照して説明する。
A.第1実施形態:
B.第2実施形態:
C.第3実施形態:
D.変形例:
【0012】
A.第1実施形態:
図1は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置1の機能構成を示すブロックダイアグラムである。画像形成装置1は、制御部10と、画像形成部20と、記憶部40と、画像読取部50と、定着部80と、操作表示部90とを備えている。画像読取部50は、原稿から画像を読み取ってRGBのデジタルデータである画像データIDを生成する。操作表示部90は、タッチパネルとして機能し、様々なメニューを入力画面として表示し、顧客の操作入力を受け付ける。
【0013】
画像形成部20は、色変換処理部21と、ハーフトーン処理部22と、校正用濃度センサ28と、露光部29と、アモルファスシリコン感光体である感光体ドラム(像担持体)30c~30kと、現像部100c~100k、帯電部25c~25kとを有している。色変換処理部21は、RGBデータである画像データIDをCMYKデータに色変換する。色変換処理部21は、ガンマ補正部としても機能し、入出力ガンマ補正値を使用してガンマ補正を実行する。ハーフトーン処理部22は、CMYKデータにハーフトーン処理を実行してCMYKのハーフトーンデータを含む印刷データPDを生成する。ハーフトーンデータは、CMYKの各トナーによって形成されるドットの形成状態を表し、ドットデータとも呼ばれる。校正用濃度センサ28は、単に濃度センサとも呼ばれる。
【0014】
制御部10は、RAMやROM等の主記憶手段、及びMPU(Micro Processing Unit)やCPU(Central Processing Unit)等の制御手段を備えている。また、制御部10は、各種I/O、USB(ユニバーサル・シリアル・バス)、バス、その他ハードウェア等のインターフェイスに関連するコントローラ機能を備え、画像形成装置1全体を制御する。制御部10は、校正処理部11を備えている。校正処理部11の機能については後述する。
【0015】
記憶部40は、非一時的な記録媒体であるハードディスクドライブやフラッシュメモリー等からなる記憶装置で、制御部10が実行する処理の制御プログラムやデータを記憶する。記憶部40は、本実施形態では、さらに校正用データ記憶領域41を有している。
【0016】
図2は、第1実施形態に係る画像形成装置1の全体構成を示す断面図である。本実施形態の画像形成装置1は、タンデム型のカラープリンターである。画像形成装置1は、その筐体70内に、マゼンタ、シアン、イエロー、及びブラックの各色に対応させて感光体ドラム(像担持体)30m、30c、30y及び30kが一列に配置されている。感光体ドラム30m、30c、30y及び30kのそれぞれに隣接して、現像部100m、100c、100y及び100kが配置されている。
【0017】
感光体ドラム30m、30c、30y及び30kには、露光部29から各色用のレーザー光Lm、Lc、Ly及びLkが照射(露光)される。この照射によって、感光体ドラム30m、30c、30y及び30kに静電潜像が形成される。現像部100m、100c、100y及び100kは、トナーを攪拌しながら、感光体ドラム30m、30c、30y及び30kの表面に形成された静電潜像にトナーを付着させる。これにより、現像工程が完了し、感光体ドラム30c~30kの表面に各色のトナー像が形成される。
【0018】
画像形成装置1は、無端状の中間転写ベルト27を有している。中間転写ベルト27は、テンションローラ24、駆動ローラ26a及び従動ローラ26bに張架されている。中間転写ベルト27は、駆動ローラ26aの回転によって所定の搬送速度(線速とも呼ばれる。)で循環駆動させられる。
【0019】
感光体ドラム30kの上流位置において、中間転写ベルト27を挟んで従動ローラ26bに対抗する位置にクリーニング装置200が配置されている。クリーニング装置200は、微細な繊維が植えられ、高速回転するファーブラシ210を有している。ファーブラシ210は、ブラシ先端の掻き取り力で中間転写ベルト27上のトナーを機械的に除去することができる。このように、画像形成装置1は、中間転写ベルト27に当接するファーブラシ210を使用するブラシクリーニング方式を採用し、使用済みのトナーを掻き取って廃棄している。
【0020】
たとえば感光体ドラム30k上のブラックのトナー像は、感光体ドラム30kと1次転写ローラ23kとで中間転写ベルト27を挟み、中間転写ベルト27が循環駆動させられることによって中間転写ベルト27に1次転写される。この点は、シアン、イエロー、マゼンタの3色についても同様である。
【0021】
中間転写ベルト27の表面には、所定のタイミングで相互に重ね合わせられるように1次転写が行われることによってフルカラートナー像が形成される。校正用濃度センサ28は、1次転写が完了し、2次転写の前のトナー像の濃度が計測できる位置に配置されている。
【0022】
フルカラートナー像は、その後、給紙カセット60から供給された印刷用紙Pに2次転写され、定着部80の定着ローラ対81によって印刷用紙Pに定着される。クリーニング装置200は、校正パッチについても中間転写ベルト27に残留する残留トナーを中間転写ベルト27から除去することができる。印刷媒体は、画像形成媒体とも呼ばれる。定着部80は、定着ローラ対81の一方を加熱する誘導加熱部(図示略)とを備えている。
【0023】
図3は、第1実施形態に係る現像部100kの構造を示した側面断面図である。現像部100m、100c及び100yは、現像部100kと同一の構成を有し、これらは単に現像部100とも呼ばれる。現像部100は、2本の攪拌搬送部材141,142と、磁気ローラ143と、現像ローラ(現像剤担持体)144と、現像容器145と、規制ブレード146とを備えている。
【0024】
現像容器145は、現像部100の外郭を構成している。現像容器145の下部には、仕切り部145bが設けられている。仕切り部145bは、現像容器145の内部を第1搬送室145aと第2搬送室145cとに仕切っている。第1搬送室145a及び第2搬送室145cは、
図3に垂直な方向に柱状に延びており、磁性キャリアとブラックトナーからなる2成分現像剤(単に現像剤とも呼ばれる。)を収容する。
【0025】
現像容器145は、さらに磁気ローラ143及び現像ローラ144を保持している。現像容器145には、現像ローラ144を感光体ドラム30(30k)に向けて露出させる開口147が形成されている。
【0026】
2本の攪拌搬送部材141,142は、それぞれ第1搬送室145a及び第2搬送室145cの内部で現像剤を攪拌しつつ循環的に移動させている。攪拌搬送部材142は、磁気ブラシとして、正に帯電した現像剤を磁気ローラ143に供給する。磁気ローラ143は、非磁性の回転スリーブ143aと、回転スリーブ143aの内部に固定されている固定マグネット体143bとを有している。磁気ローラ143と現像ローラ144とは、所定のクリアランスで対向している。規制ブレード146は、磁気ブラシを予め設定されている所定の高さに調整する。
【0027】
現像ローラ144は、回転可能な非磁性の現像スリーブ144aと、現像スリーブ144aの内部で固定されている現像ローラ側磁極144bとを有している。磁気ローラ143には、磁気ローラ電位Vmagが印加されている。現像ローラ144には、現像バイアス電位Vslvが印加されている。
【0028】
本実施形態において、感光体ドラム30では、表面電位が20Vに設定され、現像ローラ144との間に現像電界を形成している。一方、現像ローラ144には、現像バイアス電位Vslvとしての直流電位20~80Vと、周波数2kHzのピークツーピーク値2000Vの正弦波電位とが重畳された交番バイアスが印加されている。磁気ローラ143には、現像時において、磁気ローラ電位Vmagとして直流電位200Vが印加され、非現像時において、直流電位-200Vが印加される。
【0029】
これにより、現像時においては、現像バイアス電位Vslv<磁気ローラ電位Vmag(トナーが現像ローラ144に供給される電位状態)の時間が長くなってトナーが現像ローラ144に供給される時間が長くなり、非現像時においては、現像バイアス電位Vslv>磁気ローラ電位Vmag(トナーが現像ローラ144から回収される電位状態)の時間が長くなってトナーが現像ローラ144から回収される時間が長くなる。
【0030】
さらに、磁気ローラ143に現像時と非現像時に印加される磁気ローラ電位Vmagを調整することによって、現像バイアス電位Vslvと磁気ローラ電位Vmagとの間の現像時のトナー層形成電位差ΔVを変化させることができる。これにより、現像ローラ144には、現像バイアス電位Vslvと磁気ローラ電位Vmagとの間のトナー層形成電位差ΔVに応じた厚さD(後述の
図4(a)参照)のトナー薄層(単にトナー層とも呼ばれる。)が形成される。
【0031】
現像ローラ144は、感光体ドラム30との間に所定のクリアランスを有する対向部分(現像ニップ)を介して感光体ドラム30にトナーを付着させて、トナー像を感光体ドラム30の表面に形成する。トナー像は、感光体ドラム30の表面における静電潜像の電位と現像ローラ144に印加される現像バイアス電位Vslvの電位差に基づいて形成される。
【0032】
アモルファスシリコン感光体は、有機感光体(OPC)に比べ比誘電率が3倍程度高く、現像コントラスト電位に対して、感光体が保持できるトナー量が多いという特徴を有している。このため、アモルファスシリコン感光体は、通常使用するベタ濃度よりも多くのトナーを保持することが可能である。したがって、アモルファスシリコン感光体は、飽和状態で使用すると、ベタ濃度に必要な量を超えて保持してしまうことになる。よって、本実施形態では、アモルファスシリコン感光体は、ベタ濃度においても非飽和状態において使用され、現像ローラ144上に形成されたトナーがほぼすべて感光体に現像されて現像が終了することでベタ濃度が決定されるように使用される。
【0033】
図4は、第1実施形態に係る現像工程において後端溜まりが発生する様子を示す概念図である。
図4(a)は、画像の先端部と中央部において画像を形成している様子を示している。
図4(b)は、画像の後端部において画像を形成している様子を示している。本明細書では、先端部、中央部及び後端部は、感光体ドラム30の進行方向を基準にして、進行方向から順に先端部、中央部及び後端部と定義されている。
【0034】
本実施形態では、
図4(a)に示されるように、感光体ドラム30は、潜像画像の電位を中和しつつ、現像ローラ144の現像スリーブ144aからトナーの供給を受けている。この際、現像工程は、電位の飽和ではなく、非飽和状態において現像スリーブ144a上に形成されたトナー薄層が消費尽くされることによって完了するように構成されている。トナー薄層の厚さDは、画像形成におけるベタ現像時の最高濃度を達成するための厚さT1を有するように設定されている。
【0035】
図4(b)に示されるように、現像スリーブ144aは、周速Vsを有し、周速Vdの感光体ドラム30を追い越しながら画像を形成するように構成されている。このため、ベタ現像時にベタの後端部の近傍には、トナーが未消費の現像スリーブ144aの表面が存在することになる。このトナーが未消費の表面は、アモルファスシリコン感光体30におけるベタの潜像画像の後端部を追い越していくことになる。
【0036】
この際、アモルファスシリコン感光体としての感光体ドラム30が非飽和状態なので、トナーが未消費の現像スリーブ144aの表面から、さらにトナーが現像されてしまうことになる。この現像によって、予め想定されている濃度よりも高いベタ濃度としての後端溜まり(厚さT2)が顕在化することになる。
【0037】
図4(c)は、一例としてベタ画像TPの画像形成時におけるトナーの付着状態(積層状態)を示している。ベタ画像TPでは、画像形成時において後端部においてトナー層が盛り上がっている。このトナー層の盛り上がりは、後端溜まりと呼ばれる。
【0038】
このような後端溜まりの問題は、ドット面積率を低下させたパッチ画像であるハーフパッチでベタを表現することによって抑制することができる。この例では、画像形成装置1は、70%乃至90%のドット面積率のハーフパッチでベタ濃度を表現するものとする。本実施形態では、ハーフパッチによるベタ濃度は、現像部100m、100c、100y及び100kの印加電位である現像バイアス電位Vslvやドット面積率の調整によって校正される。
【0039】
このように、後端溜まりの問題は、ドット面積率の低下に起因するジャギーの発生と後端溜まりの発生との間のトレードオフの結果として予め設定されているドット面積率でベタ濃度を表現することよって実現されている。
【0040】
図5は、第1実施形態に係る画像形成装置制御処理の内容を示すフローチャートである。画像形成装置制御処理には、印刷ジョブ待ちの待機状態の一形態としてスリープ状態も含まれる。スリープ状態では、定着部80は、省エネルギーの観点から定着プロセスに必要な温度よりも低い温度に定着ローラ対81の温度を制御している。印刷ジョブは、画像形成ジョブとも呼ばれる。
【0041】
ステップS100では、画像形成装置1は、電源オンに応じて制御部10が起動し、画像形成装置1において印刷可能な状態とするための処理を開始する。ステップS200では、制御部10の校正処理部11は、制御部10の起動完了に応じて全体校正処理を実行する。
【0042】
図6は、第1実施形態に係る光量校正処理の内容を示す説明図である。全体校正処理では、校正処理部11は、中間転写ベルト27の4つの搬送速度、すなわち4つの線速のための校正処理を全て実行する。
図6(a)に示されるように、4つの線速には、高線速、標準線速、中間線速及び半線速が含まれている。全体校正処理では、校正処理部11は、高線速、標準線速、中間線速及び半線速の校正実測値を計測して更新する。この例では、校正実測値は、全体校正処理で設定された校正値を意味する。
【0043】
高線速は、標準紙にモノクロで印刷する印字モードの際の搬送速度である。標準線速は、標準紙にフルカラーで印刷する印字モードの際の搬送速度である。中間線速は、厚紙1にフルカラーで印刷する印字モードの際の搬送速度である。半線速は、厚紙1よりも厚い厚紙2にフルカラーで印刷する印字モードの際の搬送速度である。第1実施形態では、標準線速は、モノクロ印刷で使用されるKの色材を含むCMYKの全ての色材を使用するフルカラー印刷であり、最も使用頻度が高い線速として変換テーブルの基準となる線速である基準線速に自動的に選択される。
【0044】
ステップS300では、校正処理部11は、変換テーブル生成処理を実行する。変換テーブル生成処理では、校正処理部11は、この例では、標準線速(A)に対する高線速(D)、中間線速(B)及び半線速(C)の比(変換値の一例であり、それぞれD/A,B/A及びC/A)を算出して変換テーブルを生成する。変換テーブルは、基準となる標準線速の校正設定値を高線速、中間線速及び半線速の校正設定値に変換するためのテーブルである。この例では、校正設定値は、変換テーブルを使用して標準線速の校正実測値を変換することによって生成された高線速、中間線速及び半線速の校正設定値と、標準線速の校正実測値とを意味している。
【0045】
これにより、画像形成装置1は、印刷ジョブの受領、たとえば画像読取部50を使用する複写処理や画像形成装置1の外部からの印刷ジョブの受信に応じて、校正実測値を校正設定値として使用して、直ちに画像形成処理、すなわち印刷媒体(たとえば標準紙)の上に画像を形成することができる。一方、印刷ジョブの受領まで所定の時間(たとえば画像形成装置10分間)が経過した場合には、画像形成装置1は、スリープ状態となる。画像形成装置1は、印刷ジョブの受領に応じてスリープ状態から復帰する(ステップS400)。
【0046】
ステップS500では、校正処理部11は、印刷前の校正の要否を判定する。この判定は、環境変化、すなわち画像形成装置1内の温度や湿度の変化に基づいて行われる。この例では、校正処理部11は、標準線速の前回の校正処理時と比較して温度と湿度の少なくとも一方が所定の閾値(たとえば温度5度及び湿度5%)を超えた場合に印刷前の校正が必要であると判定する。
【0047】
校正処理部11は、印刷前の校正を必要ありと判定した場合には、処理をステップS600に進め、印刷前の校正を必要なしと判定した場合には、処理をステップS700に進める。一方、制御部10は、定着ローラ対81の温度の目標値を画像形成可能な温度に変更し、定着ローラ対81の昇温を開始する。この例では、画像形成装置1は、高線速の印刷、すなわち標準紙へのモノクロ印刷のジョブを受信したものとする。
【0048】
印刷前校正処理を経由しない画像形成処理(ステップS700)では、校正処理部11は、高線速の校正設定値D’を校正値として使用して校正処理を実行し、画像形成部20は、定着ローラ対81の昇温完了に応じて標準紙へのモノクロ印刷を開始する。校正設定値D’は、校正実測値Aを使用して算出された校正値である。
【0049】
印刷前校正処理を経由する場合には、ステップS600では、校正処理部11は、定着ローラ対81の昇温と並行して印刷前校正処理を実行する。印刷前校正処理では、校正処理部11は、高線速について校正処理を実行し、高線速の校正実測値Dを計測して更新する。
【0050】
印刷前校正処理後の画像形成処理(ステップS700)では、校正処理部11は、高線速の校正実測値Dを校正値として使用して校正処理を実行し、画像形成部20は、定着ローラ対81の昇温及び印刷前校正処理の双方の完了に応じて標準紙へのモノクロ印刷を開始する。
【0051】
ステップS800では、校正処理部11は、印刷後の校正の要否を判定する。この判定は、環境変化、すなわち画像形成装置1内の温度、湿度及び前回の校正からの印刷枚数の変化に基づいて行われる。この例では、校正処理部11は、標準線速の前回の校正処理時と比較して温度と湿度の少なくとも一方が所定の閾値を超えた場合と標準線速の前回の校正処理時からの印刷枚数が所定の閾値を超えた場合の少なくとも一方に該当する場合に印刷後の校正が必要であると判定する。なお、印刷後、すなわち画像形成後とは、一の印刷ジョブが完了し、待機中の印刷ジョブが存在しない状態を意味している。
【0052】
具体的には、校正処理部11は、たとえば標準線速の前回の校正処理時と比較して温度と湿度の少なくとも一方が所定の第1の閾値(たとえば温度5度及び湿度5%)を超えた場合と標準線速の前回の校正処理時からの印刷枚数が所定の第1の閾値(たとえば100枚)を超えた場合の少なくとも一方に該当する場合に「変換テーブルの基準となる標準線速」の校正が必要であると判定する。
【0053】
さらに、校正処理部11は、たとえば標準線速の前回の校正処理時と比較して温度と湿度の少なくとも一方が所定の第2の閾値(第1の閾値よりも大きな閾値であり、たとえば温度10度及び湿度10%)を超えた場合と標準線速の前回の校正処理時からの印刷枚数が所定の第2の閾値(たとえば500枚)を超えた場合の少なくとも一方に該当する場合に「4つの線速の全て」の校正が必要であると判定する。すなわち、校正処理部11は、第2の閾値を超えた場合には、変換テーブル(この例では、変換値)の信頼性が失われた可能性があると判定する。
【0054】
ステップS900では、校正処理部11は、上述の決定に基づいて「標準線速」又は「4つの線速の全て」の校正を実行する。画像形成装置1は、待機中の印刷ジョブが無ければ所定時間経過後に再びスリープ状態となる。画像形成装置1は、このような処理を電源オフとなるまで継続する(ステップS950)。
【0055】
このように、第1実施形態に係る画像形成装置1は、環境変化が小さければ改めて校正処理を実行することなく直ちに画像形成処理を開始することができるので生産性の低下を抑制することができる。さらに、画像形成装置1は、環境変化が大きくてもスリープ状態から復帰する際の定着ローラ対81の昇温時間を有効使用して印刷ジョブに必要な線速のみの校正を実行するので、生産性の低下を抑制することができる。一方、顕著に大きな環境変化(顕著に多量の印刷枚数の処理を含む)に対しては、印刷ジョブの完了後(待機中の印刷ジョブなし)に「4つの線速の全て」の校正が実行されるので、生産性の低下を抑制しつつ変換値を使用する校正の信頼性を維持することができる。
【0056】
図7は、第1実施形態に係る印刷校正処理(ステップS600)の内容を示すフローチャートである。
図8は、第1実施形態に係る画像形成装置1で使用される光量校正用パッチ及びバイアス電圧設定用パッチを示す説明図である。光量校正用パッチは、光量校正処理(ステップS610)で使用されるパッチである。バイアス電圧設定用パッチは、現像バイアス校正処理(ステップS620)で使用されるパッチである。この例では、現像バイアス校正処理用パッチとして、ハーフパッチP80が使用される。
【0057】
ステップS610では、校正処理部11は、光量校正処理を実行する。光量校正処理では、校正処理部11は、予め設定されている複数の段階で段階的に変更した複数の光量のレーザー光で露光部29に露光させて複数の光量校正用パッチPLを有するチャートを中間転写ベルト27に形成する。光量校正用パッチPLを表す画像データは、記憶部40の校正用データ記憶領域41に格納されている。
【0058】
校正処理部11は、複数の相違する光量のレーザー光で光量校正用パッチPLを形成するように感光体ドラム30c~30kを露光する。この例では、光量校正用パッチPLは、光量校正に適切なドット面積率として25%のドット面積率を有している。複数の相違する光量は、80%、100%、120%及び140%である(
図6(b)参照)。
【0059】
校正処理部11は、校正用濃度センサ28を使用して各色(たとえばブラック(K))のパッチの濃度を計測する。校正処理部11は、複数の相違する光量のレーザー光で露光された複数の光量校正用パッチPLの反射光を使用して、たとえば内挿計算を実行して予め設定された目標濃度となるような光量である校正光量(露光量の設定値)として校正実測値を計測して更新する。
【0060】
図6(b)は、全体校正処理(ステップS200)の内容を示している。校正処理部11は、校正実測値として目標濃度(狙いの濃度0.6)となる値を取得する。具体的には、校正処理部11は、高線速の校正実測値D(120)、標準線速の校正実測値A(110)、中間線速の校正実測値B(100)及び半線速の校正実測値C(93)を計測して更新する。校正処理部11は、校正光量を記憶部40の校正用データ記憶領域41に記憶する。
【0061】
本実施形態では、校正用濃度センサ28は、たとえばLED(図示せず)から赤外光を出射し、P波のみを透過させる偏光フィルタを透過させて赤外光のP波をパッチに照射し、受光素子で検出した反射光のP波とS波の比率に基づいて濃度を検出する。なお、校正用濃度センサ28には、パッチからの正反射光を検出する正反射方式やパッチからの拡散反射光を検出する拡散反射方式もある。
【0062】
ステップS620では、校正処理部11は、現像バイアス校正処理を実行する。現像バイアス校正処理では、校正処理部11は、ハーフパッチP80を使用し、現像バイアス電位Vslvを予め設定されている複数の段階で段階的に変更した複数のパッチ画像を有するチャートを中間転写ベルト27に形成する。ハーフパッチP80は、たとえばドット面積率の低下に起因するジャギーの発生と後端溜まりの発生との間のトレードオフの結果として予め設定されている80%のドット面積率を有するパッチである。
【0063】
図9は、第1実施形態に係る現像バイアス正処理の内容を示す説明図である。現像バイアス電位Vslvを段階的に変更した複数のパッチ画像を使用するのは、トナー像は、感光体ドラム30の表面の静電潜像の電位と現像ローラ144に印加される現像バイアス電位Vslvの電位差に基づいて形成されるからである。複数のハーフパッチは、CMYKのそれぞれについて形成される。以下では、シアン(C)のハーフパッチを例として説明する。
【0064】
具体的には、校正処理部11は、現像バイアス電位Vslvが100V、200V、300V及び400Vの4段階に変更されている複数のシアン(C)のハーフパッチを使用して、たとえば内挿計算を実行して予め設定された目標濃度となるようなバイアス電位である校正バイアス電位(バイアス電位の設定値)として校正実測値を計測して更新する。
【0065】
図9(b)は、全体校正処理(ステップS620)の内容を示している。校正処理部11は、校正実測値として目標濃度(狙いの濃度)となる値を計測して更新する。具体的には、校正処理部11は、高線速の校正実測値D(300)、標準線速の校正実測値A(250)、中間線速の校正実測値B(200)及び半線速の校正実測値C(167)を計測して更新する。校正処理部11は、校正現像バイアス電位を記憶部40の校正用データ記憶領域41に記憶する。
【0066】
ステップS630では、校正処理部11は、ハーフパッチの校正が現像バイアスの調整範囲内で可能である場合には、処理をステップS650に進め、ハーフパッチの校正が現像バイアス電位Vslvの調整範囲内で可能でない場合には、処理をステップS640に進める。
【0067】
ハーフパッチの校正が現像バイアスの調整範囲内で可能でない場合とは、複数のシアン(C)のパッチの中から予め設定されているベタ画像目標濃度に達しているパッチが存在しないことを意味している。通例では、複数のハーフパッチのいずれかがベタ画像目標濃度に達するが、たとえば環境変動などによってトナー帯電量が増加している状態においてベタ画像目標濃度に到達しないこともある。
【0068】
図10は、第1実施形態に係るドット面積率調整処理(ステップS640)の内容を示すフローチャートである。ステップS641では、校正処理部11は、現像バイアス電位Vslvを最大値に設定し、ドット面積率を調整して校正する処理を開始する。現像バイアス電位Vslvの最大値は、電位制限値とも呼ばれ、たとえば現像バイアスの出力限界や画像への悪影響(かぶりなど)の観点から設定(たとえば400V)される。
【0069】
ステップS642では、校正処理部11は、ドット面積率を段階的に変更した複数のハーフパッチ画像を有するチャートを中間転写ベルト27に形成する。
【0070】
ステップS643では、校正処理部11は、濃度計測処理を実行する。濃度計測処理では、校正処理部11は、調整データを使用して校正用濃度センサ28でシアン(C)のパッチ画像の濃度を計測する。校正用濃度センサ28は、P波とS波の比率を検出する。MYKについても同様に処理が行われる。
【0071】
ステップS644では、校正処理部11は、ドット面積率設定処理を実行する。具体的には、校正処理部11は、P波とS波の比率が予め設定されている閾値以下のハーフパッチが存在する場合には、そのハーフパッチの中で最も低いドット面積率のハーフパッチのドット面積率を校正用データとして取得する。
【0072】
ステップS650(
図7参照)では、校正処理部11は、ガンマ調整用パッチを使用してガンマ設定処理を実行する。これにより、校正処理部11は、0乃至255(濃度0%~100%)の入力階調値に対してリニアに0乃至255(濃度0%~100%)の画像濃度としての出力階調値を実現するための入出力ガンマを設定することができる。
【0073】
図11は、第1実施形態に係るガンマ校正処理で使用されるガンマ調整用パッチを示す説明図である。ガンマ調整用パッチは、ドット面積20%のハーフパッチP20、ドット面積40%のハーフパッチP40、ドット面積60%のハーフパッチP60、ドット面積80%のハーフパッチP80及びドット面積100%のソリッドパッチP100を有している。本実施形態は、濃度計測値がハーフパッチP80において255階調のベタ(ベタ画像目標濃度)に飽和するように構成されているので、ハーフパッチP20乃至ハーフパッチP80を使用してガンマ校正処理が実行されることになる。
【0074】
ステップS660では、校正処理部11は、調整後のドット面積率及び現像バイアス電位Vslvの最大値として校正用データを取得し、記憶部40の校正用データ記憶領域41に記憶する。
【0075】
このように、第1実施形態に係る画像形成装置1は、環境変化が小さければ改めて校正処理を実行することなく直ちに画像形成処理を開始することができるので生産性の低下を抑制することができる。さらに、画像形成装置1は、環境変化が大きくてもスリープ状態から復帰する際の定着ローラ対81の昇温時間を有効使用して印刷ジョブに必要な線速のみの校正を実行するので、生産性の低下を抑制することができる。
【0076】
さらに、第1の閾値を超えるような比較的に大きな環境変化があっても「4つの線速のうちの一の線速」の校正が実行し、変換値を使用して「4つの線速のうちの3つの線速」の校正が可能となるので、生産性の低下を抑制しつつ画質を維持することができる。一方、第1の閾値よりも大きな第2の閾値を超えるような顕著に大きな環境変化(顕著に多量の印刷枚数の処理を含む)に対しては、印刷ジョブの完了後(待機中の印刷ジョブなし)に「4つの線速の全て」の校正が実行されるので、生産性の低下を抑制しつつ変換値を使用する校正の信頼性を維持することができる。
【0077】
なお、スリープ状態ではない状態で印刷ジョブを受領した場合には、前回の印刷ジョブの完了から長い時間が経過しておらず大きな環境変化が発生していることは現実的に極めて少ないと考えられる。よって、第1実施形態に係る画像形成装置1は、スリープ状態からの復帰に要する時間を有効利用して最小限の校正処理を実行するので効果的な校正処理と印刷処理のシーケンスを実現していることになる。
【0078】
B.第2実施形態:
図12は、第2実施形態に係る光量校正処理の内容を示す説明図である。第2実施形態に係る画像形成装置1は、第1実施形態が標準線速を自動的に基準線速に設定するのに対し、ユーザー設定で基準線速を自由に選択できる点で第1実施形態と相違している。
図12(a)は、第2実施形態における光量校正値の一例として半線速を基準線速とする例を示している。
図12(b)は、第2実施形態におけるバイアス電位校正値の一例として半線速を基準線速とする例を示している。第2実施形態に係る画像形成装置1は、操作表示部90を介して基準線速の選択を受け付ける。
【0079】
第2実施形態は、予め特定の線速で画像形成装置1を主として使用することが想定されている場合に特に適している。この例では、ユーザーは、厚紙2にフルカラーで印刷してポスターを作成するために画像形成装置1を設置し、その他の用途(線速)も必要に応じて利用可能としているものとする。ユーザーは、画像形成装置1の操作表示部90を使用して半線速を基準線速に選択することができる。
【0080】
さらに、ユーザーは、必要に応じてパスワードを設定することもできる。具体的には、操作表示部90は、基準線速の選択を変更するためのパスワードの登録を受け付け、その登録後においては、登録されたパスワードと合致するパスワードの入力に応じて基準線速の選択を受け付けることができる。これにより、基準線速の選択がユーザーの意図に反して変更されるといった事態を予防することができる。
【0081】
校正処理部11は、基準線速の選択の受け付けに応じて、その選択が基準線速の変更となるか否かを判断する。校正処理部11は、基準線速の変更であると判断した場合には、操作表示部90に変更後の基準線速の校正実行の許可を受け付けるスクリーン(図示略)を表示させる。校正処理部11は、校正実行の許可を受け付けると、直ちに基準線速の校正を実行する。なお、ユーザー入力に応じて、基準線速の校正に併せて他の線速の校正を実行して変換値を生成するようにしてもよいし、変更後の基準線速からの変換値を既存の変換値から算出するようにしてもよい。
【0082】
この例では、第2実施形態に係る画像形成装置1は、半線速の校正を優先的に実行することができる。これにより、本画像形成装置1は、上述のポスターの印刷の画質と生産性を最優先として効率的な印刷処理を実現する一方、校正処理を抑制しつつ他の線速での印刷を許容することができる。このように、第2実施形態に係る画像形成装置1は、ユーザー設定に応じて特定の線速の印刷の画質を向上させつつ校正処理を抑制することができる。
【0083】
C.第3実施形態:
図13は、第3実施形態に係る画像形成装置制御処理の内容を示すフローチャートである。第3実施形態に係る画像形成装置1は、第1実施形態の印刷前校正要否判定(ステップS500)の内容が変更され、その前に印刷ジョブ解析処理(ステップS450)が追加されている点で第1実施形態と相違し、他の構成で共通している。
【0084】
印刷ジョブ解析処理(ステップS450)では、制御部10は、ジョブ解析部として機能し、印刷ジョブの内容を解析する。具体的には、校正処理部11は、印刷枚数と画質設定の内容を解析して特定し、印刷枚数が予め設定されている閾値枚数を超えるか否かと、画質設定が最高画質に設定されているか否かを判定する。
【0085】
印刷前校正要否判定(ステップS500a)では、印刷ジョブの実行で使用される線速を特定し、印刷枚数が予め設定されている枚数を超えるとの判定と画質設定が複数の画質設定の中で最も高い画質に設定されているとの判定の少なくとも一方の判定がなされている場合には、印刷ジョブの実行で使用される線速の校正を印刷ジョブの実行前に実行する旨の判定を行う。
【0086】
第3実施形態に係る画像形成装置1は、操作表示部90を介して線速毎の閾値枚数の選択を受け付けるように構成されていることが好ましい。これにより、ユーザーは、たとえばモノクロ印刷(高線速)では1000枚、フルカラー印刷(標準紙)では、100枚、フルカラー印刷(厚紙1及び厚紙2)では、50枚というように線速毎に閾値枚数を設定することができる。このように、第3実施形態に係る画像形成装置1は、印刷ジョブの内容に応じて個別具体的に特定の線速の印刷の画質を向上させつつ校正処理を抑制することができる。
【0087】
D.変形例:
本発明は、上記実施形態だけでなく、以下のような変形例でも実施することができる。
【0088】
変形例1:上記実施形態では、4つの線速のうちの一の線速を基準線速とし、基準線速の校正値から他の全て(3つ)の線速の校正値を、変換値を使用して生成しているが、必ずしも他の全ての線速の校正を、変換値を使用して実行できるようにする必要はなく、少なくとも1つの線速の校正設定値を基準設定値から変換できるものであればよい。
【0089】
画像形成装置1は、他の全ての線速のうち使用頻度に応じて変換可能な線速を自動的に設定できるようにしてもよい。具体的には、たとえば最も使用頻度が高い線速を基準線速に設定し、予め設定されている頻度以上(たとえば印刷枚数が5%以上)で使用される線速の校正を、変換値を使用して実行できるようにしてもよい。
【0090】
変形例2:上記実施形態では、アモルファスシリコン感光体が使用されているが、本発明は、アモルファスシリコン感光体の使用に限定されない。本発明は、有機感光体(OPC:Organic Photoconductor)を使用する画像形成装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 画像形成装置
10 制御部
11 校正処理部
20 画像形成部
21 色変換処理部
28 校正用濃度センサ
29 露光部
40 記憶部
50 画像読取部
60 給紙カセット
70 筐体