(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】バックドア構造
(51)【国際特許分類】
B60J 5/10 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
B60J5/10 Z
B60J5/10 H
(21)【出願番号】P 2020064315
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】祖父江 知紀
(72)【発明者】
【氏名】中村 満
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-210529(JP,A)
【文献】特開2003-127668(JP,A)
【文献】特開平09-136544(JP,A)
【文献】特開2002-175736(JP,A)
【文献】特開2007-039920(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102011053236(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックドアと対応した形状を有するフレーム部材と、該フレーム部材の外側面に接合されるパネル部材と、該パネル部材に設けられるハンドル部とを備え、該ハンドル部を用いて前記バックドアが開閉されるバックドア構造において、
前記パネル部材は、車両外側に位置し車両上下方向に延びている外側縦壁部と、車両内側に位置し車両上下方向に延びている内側縦壁部と、前記外側縦壁部の下端部と前記内側縦壁部の上端部との間を接続している接続部と、を有し、
前記接続部は、車両幅方向に延びている平面部を含み、
前記平面部は、前記ハンドル部に対応する位置に開口部を有し、
前記平面部の上側には、前記開口部に対応する位置に車両上方に凹んだ把持部を有するハンドルブラケットが固定されて
おり、
前記ハンドルブラケットは、少なくとも、スイッチ部材と、ライセンスランプ部材と、後方確認用装置とを装着するための装着部を有し、前記把持部及び前記装着部が一体の部材で形成され、前記平面部の上側における車幅方向範囲の半分以上を覆って設けられており、
前記パネル部材の前記開口部は、前記ハンドル部に対応する位置に加えて、前記ライセンスランプ部材に対応する位置と、前記後方確認用装置に対応する位置とに設けられており、
前記スイッチ部材、前記ライセンスランプ部材、及び前記後方確認用装置は、前記パネル部材の前記開口部を介して車外側に露出するように、前記ハンドルブラケットの前記装着部に装着されていることを特徴とするバックドア構造。
【請求項2】
前記パネル部材は、前記内側縦壁部と前記接続部とによって構成される内側角部から車両前方に突出して形成されている内側ブラケット固定部
と、前記外側縦壁部と前記接続部とによって構成される外側角部から車両上方に突出して形成されている外側ブラケット固定部と、を有し、
前記ハンドルブラケットは、前記内側ブラケット固定部
及び前記外側ブラケット固定部に固定され
、
前記内側ブラケット固定部及び前記外側ブラケット固定部の少なくとも一方は、車両幅方向で、前記パネル部材における前記開口部の両側部に対応する位置と、前記ハンドルブラケットの両側部に対応する位置とに複数の固定点を有していることを特徴とする請求項1に記載のバックドア構造。
【請求項3】
前記ハンドルブラケットは、前記パネル部材における前記開口部の周縁のうちの少なくとも車両後側部分に沿って延びているリブ形状部を有し、
前記ハンドルブラケットが前記平面部の上側に固定された状態で、前記リブ形状部の先端部分が前記平面部よりも車両下方に突出していることを特徴とする請求項1
又は2に記載のバックドア構造。
【請求項4】
前記ハンドルブラケットは、前記パネル部材における前記開口部の周縁部と重なる位置に止水部材を有することを特徴とする請求項1~
3のいずれか1つに記載のバックドア構造。
【請求項5】
前記ハンドルブラケットの前記把持部には、ドア開放用スイッチ部材とロック開閉用スイッチ部材とが車外側から操作可能に設けられていることを特徴とする請求項1~
4のいずれか1つに記載のバックドア構造。
【請求項6】
前記ハンドルブラケットは、ハーネスを保持するためのハーネス保持部を有することを特徴とする請求項1~
5のいずれか1つに記載のバックドア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のバックドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のバックドアにはドア開閉用のハンドル部が設けられている。例えば、特許文献1に開示されている車両のドア開閉構造では、ロック解除スイッチを覆うようにバックドアパネルに結合されているリアガーニッシュがハンドル部として使用されている。このリアガーニッシュには、ロック解除スイッチとリアガーニッシュの下端部との間に配置された指掛け部を有するブラケットが取り付けられている。また、指掛け部には荷重付与用リブが設けられ、リアガーニッシュには荷重受け用リブが設けられている。このような特許文献1のドア開閉構造では、ロック解除スイッチを操作する際に指掛け部に指が掛かると、荷重付与用リブと荷重受け用リブとが係合し、指掛け部に生じる荷重がリアガーニッシュで受け止められることで、指掛け部の剛性が確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来の構造では、リアガーニッシュとブラケット(指掛け部)との組合せによりハンドル部が構成され、該ハンドル部を補強するための構造(荷重付与用リブ、荷重受け用リブ)が必要であるので、部品点数の増加、及び構造の複雑化が避けられなかった。このため、従来の構造は、バックドアの組付け性を低下させるとともにコストを上昇させる要因にもなっており、改善の余地があった。
【0005】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、簡略な構造で剛性を確保可能なハンドル部を実現することで組付け性の向上と低コスト化が可能なバックドア構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、バックドアと対応した形状を有するフレーム部材と、該フレーム部材の外側面に接合されるパネル部材と、該パネル部材に設けられるハンドル部とを備え、該ハンドル部を用いて前記バックドアが開閉されるバックドア構造において、前記パネル部材は、車両外側に位置し車両上下方向に延びている外側縦壁部と、車両内側に位置し車両上下方向に延びている内側縦壁部と、前記外側縦壁部の下端部と前記内側縦壁部の上端部との間を接続している接続部と、を有し、前記接続部は、車両幅方向に延びている平面部を含み、前記平面部は、前記ハンドル部に対応する位置に開口部を有し、前記平面部の上側には、前記開口部に対応する位置に車両上方に凹んだ把持部を有するハンドルブラケットが固定されている。前記ハンドルブラケットは、少なくとも、スイッチ部材と、ライセンスランプ部材と、後方確認用装置とを装着するための装着部を有し、前記把持部及び前記装着部が一体の部材で形成され、前記平面部の上側における車幅方向範囲の半分以上を覆って設けられており、前記パネル部材の前記開口部は、前記ハンドル部に対応する位置に加えて、前記ライセンスランプ部材に対応する位置と、前記後方確認用装置に対応する位置とに設けられており、前記スイッチ部材、前記ライセンスランプ部材、及び前記後方確認用装置は、前記パネル部材の前記開口部を介して車外側に露出するように、前記ハンドルブラケットの前記装着部に装着されている。
【発明の効果】
【0007】
上記のような本発明に係るバックドア構造では、パネル部材の接続部に含まれる平面部におけるハンドル部に対応する位置に開口部が形成されており、そのパネル部材の平面部の上側にハンドルブラケットが固定されている。ハンドルブラケットには、パネル部材の開口部に対応する位置に把持部が設けられているとともに、少なくともスイッチ部材、ライセンスランプ部材、及び後方確認用装置を装着するための装着部が把持部と一体で設けられており、パネル部材の開口部及びハンドルブラケットの把持部がハンドル部としてバックドアの開閉時に用いられる。
【0008】
このような本発明のバックドア構造においては、ハンドルブラケットの把持部がパネル部材の内側に設置されることになるので、前述した従来の構造においてハンドル部として使用されていたリアガーニッシュなどのようなスイッチを覆い隠すための部材が不要になる。また、本発明のバックドア構造では、把持部の剛性がハンドルブラケットによって確保されるので、従来のようなハンドル部を補強するための構造も不要になる。さらに、本発明におけるハンドルブラケットの把持部は、パネル部材の開口部越しに車両下方に向けて開口しており、把持部内に雨水等が浸入し難い構造になっている。加えて、ハンドルブラケットの把持部及び装着部が一体の部材で形成されていることにより、バックドアに設置される多数の部材や装置が1つのハンドルブラケットに纏められてモジュール化されるため、生産ラインでの組み付け作業を容易に行うことができるとともに、組み付け作業の工数を削減することができる。
【0009】
したがって、本発明のバックドア構造によれば、簡略な構造で剛性を確保可能なハンドル部を実現することができ、バックドアの組付け性の向上と低コスト化を図ることが可能であるとともに、使用者の利便性を向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るバックドア構造が適用される車両のバックドアを車両後方側から見た正面図である。
【
図2】
図1におけるA部を拡大して車両後方側から見た透視図である。
【
図3】
図1におけるA部を拡大して車両後方側の下方から見た斜視図である。
【
図4】
図1におけるA部を拡大して車両後方側の下方から見た透視図である。
【
図5】
図1のバックドアにおけるハンドルブラケット付近を拡大して車両前方側の上方から見た斜視図である。
【
図6】
図5においてハンドルブラケットを取り除いた状態を示す斜視図である。
【
図8】
図7におけるC部を拡大して示す断面図である。
【
図9】
図5においてハンドルブラケットにバックドアハーネスを固定した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1~
図9は本発明の実施形態に係るバックドア構造を示すものである。なお、図において、矢印O方向は車両(バックドア)の幅方向外側を示し、矢印U方向は車両上方側を示し、矢印X方向は車両幅方向を示し、矢印F方向は車両前後方向で前側を示している。
【0012】
図1は、本実施形態のバックドア構造が適用される車両のバックドア1を示している。
図1において、バックドア1は、車体後部に開閉ヒンジ(図示せず)を介して回動可能に取付けられている。本実施形態のバックドア構造は、バックドア1と対応した形状を有するフレーム部材2と、フレーム部材2の外側面に接合されるパネル部材3と、パネル部材3に設けられるハンドル部Hとを備えている。フレーム部材2は、金属製(板金製)部材を用いて形成されており、パネル部材3は樹脂製部材を用いて形成されている。
【0013】
具体的に、本実施形態におけるバックドア1は、フレーム部材2の上半部にガラス部材5が設置され、フレーム部材2の下半部にパネル部材3が設置されている。パネル部材3の車両幅方向の中間部には、車両前後方向の前側(車両内側)に凹んだ凹部3aが設けられている。この凹部3aの底壁部分の略中央にはライセンスプレート6が取り付けられている。パネル部材3の凹部3aの車両上方で車両幅方向の中央部には、バックドア1の開閉時に用いられるハンドル部Hが設けられている。ハンドル部Hの詳細については後述する。ガラス部材5の下部で車両幅方向の中央部には、リアワイパー7が取り付けられている。ガラス部材5とパネル部材3との間の位置には、テールランプ8が左右両側に取り付けられている。
【0014】
以下、上記バックドア1におけるハンドル部H周辺(
図1の一点鎖線で囲んだA部)の構造について詳しく説明する。
図1におけるA部を拡大した
図2~
図7に示すように、本実施形態におけるパネル部材3は、車両外側に位置し車両上下方向に延びている外側縦壁部3bと、車両内側に位置し車両上下方向に延びている内側縦壁部3cと、外側縦壁部3bの下端部と内側縦壁部3cの上端部との間を接続している接続部3dとを含んでいる。また、パネル部材3の接続部3dは、車両幅方向に延びている平面部3eを含んでいる。パネル部材3の前述した凹部3aは、外側縦壁部3bの下端部に隣接しており、凹部3aの車両上側に位置する側壁部分がパネル部材3の接続部3d(平面部3e)によって形成されているとともに、凹部3aの底壁部分がパネル部材3の内側縦壁部3cによって形成されている。
【0015】
パネル部材3の平面部3eには、
図3及び
図6等に示すように、車両上下方向に貫通した複数の開口部3f,3g,3h,3iが形成されている。平面部3eの車両幅方向で略中央に配置されている開口部3fは、ハンドル部Hに対応する位置に形成されている。この開口部3fは、ここでは車両幅方向に伸びる略長方形の形状に形成されており、使用者の手(指先)が開口部3f内に挿入可能な大きさに設計されている。また、開口部3fの左右両側に配置されている開口部3g,3hは、左右のライセンスランプ部材11にそれぞれ対応する位置に形成されている。さらに、車両前方に向かって左側の開口部3gよりも左側に配置されている開口部3iは、後方確認用装置12に対応する位置に形成されている。パネル部材3の平面部3eの上側には、車両幅方向に延びているハンドルブラケット4が固定されている。
【0016】
また、本実施形態におけるパネル部材3は、
図5及び
図6等に示すように、内側縦壁部3cと接続部3dとによって構成される内側角部3jから車両前方(車両内側)に突出して形成されている複数の内側ブラケット固定部3mを有している。内側ブラケット固定部3mは、車両幅方向で、平面部3eの略中央に配置されている開口部3fの両側部に対応する位置と、ハンドルブラケット4の両側部に対応する位置とに配置されている。つまり、パネル部材3は、内側ブラケット固定部3mとして4つの固定点を有している。さらに、パネル部材3は、外側縦壁部3bと接続部3dとによって構成される外側角部3kから車両上方に突出して形成されている複数の外側ブラケット固定部3nを有している(
図6を参照)。外側ブラケット固定部3nも内側ブラケット固定部3mと同様に、車両幅方向で、開口部3fの両側部に対応する位置と、ハンドルブラケット4の両側部に対応する位置とに配置されており、パネル部材3は外側ブラケット固定部3nとして4つの固定点を有している。
【0017】
ハンドルブラケット4は、
図2~
図5に示すように、パネル部材3の開口部3fに対応する位置に、車両上方に凹んだ把持部4aを有している。この把持部4aは、パネル部材3の開口部3fの形状に略一致した開口端部を有し、その開口端部から車両上方に延びる側壁部及び頂部を有する凹形状に形成されている。本実施形態においては、バックドア1の開閉時に用いられるハンドル部Hが、パネル部材3の開口部3fとハンドルブラケット4の把持部4aとから構成されることになる。
【0018】
また、上記ハンドルブラケット4は、スイッチ部材10、ライセンスランプ部材11、及び後方確認用装置12をそれぞれ装着するための装着部4b,4c,4d,4eを有している。スイッチ部材10用の装着部4bは、把持部4aの頂部に設けられており、ここではドア開放用スイッチ部材10a及びロック開閉用スイッチ部材10bが車外側から操作可能に装着されている。ライセンスランプ部材11用の装着部4c,4dは、パネル部材3の開口部3g,3hに対応する位置に設けられている。後方確認用装置12用の装着部4eは、パネル部材3の開口部3iに対応する位置に設けられている。なお、
図2及び
図4に示した二点鎖線は、パネル部材3の想像線を表している。
【0019】
さらに、上記ハンドルブラケット4は、パネル部材3の内側ブラケット固定部3mに対応した内側ブラケット被固定部4fと、パネル部材3の外側ブラケット固定部3nに対応した外側ブラケット被固定部4gとを有している。パネル部材3の内側ブラケット固定部3m及び外側ブラケット固定部3nとハンドルブラケット4の内側ブラケット被固定部4f及び外側ブラケット被固定部4gとが互いに固定されることで、ハンドルブラケット4は、パネル部材3の平面部3e上側の所定位置に固定されるようになる。これにより、装着部4c,4d及び装着部4eに装着されたライセンスランプ部材11及び後方確認用装置12が、パネル部材3の開口部3g,3h及び開口部3iを介して車外側に露出した状態で設置される。
【0020】
加えて、上記ハンドルブラケット4は、パネル部材3の開口部3fの周縁に沿って延びているリブ形状部4hを有している(
図3参照)。このリブ形状部4hは、
図7及び
図8の断面図に示すように、ハンドルブラケット4がパネル部材3の平面部3eの上側に固定された状態で、リブ形状部4hの先端部分が平面部3eよりも車両下方に突出している。具体的に、リブ形状部4hは、ハンドルブラケット4の把持部4aの開口端部を基端として車両下方に突出しており、リブ形状部4hの外周側面がパネル部材3の開口部3fのエッジ部分を覆い、リブ形状部4hの先端部分がパネル部材3の平面部3eよりも車両下側(車外側)に位置している。なお、本実施形態では、パネル部材3の開口部3fの周縁全体に沿ってリブ形状部4hを形成する一例を示したが、リブ形状部4hは、開口部の周縁のうちの少なくとも車両後側部分に沿って延びていればよい。
【0021】
また、上記ハンドルブラケット4は、パネル部材3に形成されている各開口部3f~3iの周縁部と重なる位置に略矩形環状の止水部材9を有している(
図4を参照)。各々の止水部材9は、パネル部材3の平面部3eとハンドルブラケット4との間に挟み込まれた状態で固定されている。
図8の拡大断面図には、パネル部材3の開口部3fの周縁部と重なる位置に設けられた止水部材9の固定状態が示されている。
【0022】
さらに、上記ハンドルブラケット4は、
図5及び
図9に示すように、バックドアハーネス13を保持するためのハーネス保持部4iを有している。バックドアハーネス13は、車両後部に設置される各種装置の電源供給や信号通信に用いられる複数の電線を束にして集合部品としたものである。バックドアハーネス13には複数のハーネスクリップ13aが取り付けられており、各ハーネスクリップ13aがハンドルブラケット4のハーネス保持部4iに固定される。ハーネス保持部4iは、ここではハンドルブラケット4上の左右両側部と把持部4a脇の3箇所に設けられている。ただし、ハンドルブラケット4上でのハーネス保持部4iの配置はこれに限定されない。
【0023】
次に、本実施形態によるバックドア構造の作用について詳しく説明する。
上述したような構造が適用されたバックドア1では、パネル部材3の平面部3eにおけるハンドル部Hに対応する位置に開口部3fが形成されており、その開口部3fに対応する位置に把持部4aを有するハンドルブラケット4が、パネル部材3の平面部3eの上側に固定されている。そして、バックドア1の開閉時には、パネル部材3の開口部3f及びハンドルブラケット4の把持部4aがハンドル部Hとして使用される。
【0024】
このようなバックドア構造においては、ハンドルブラケット4の把持部4aがパネル部材3の内側に設置されることになるので、従来の構造においてハンドル部として使用されていたリアガーニッシュなどのようなスイッチを覆い隠すための部材が不要になる。また、本実施形態のバックドア構造では、把持部4aの剛性がハンドルブラケット4によって確保されるので、従来のようなハンドル部を補強するための構造も不要になる。したがって、本実施形態のバックドア構造によれば、簡略な構造で剛性を確保可能なハンドル部Hを実現することができ、バックドア1の組付け性の向上と低コスト化を図ることができる。さらに、本実施形態のバックドア構造では、ハンドルブラケット4の把持部4aがパネル部材3の開口部3f越しに車両下方に向けて開口しており、把持部4a内に雨水等が浸入し難い構造になっているので、使用者の利便性を向上させることもできる。
【0025】
また、本実施形態のバックドア構造では、パネル部材3の内側角部3jから車両前方(内側)に突出して内側ブラケット固定部3mが形成されている。これにより、パネル部材3の車外側に位置する意匠面にヒケ等の不具合を発生させることなく、ハンドルブラケット4の固定構造をパネル部材3に設けることができる。
【0026】
さらに、本実施形態のバックドア構造では、パネル部材3の外側角部3kから車両上方に突出して外側ブラケット固定部3nが形成されている。外側ブラケット固定部3nはパネル部材3の平面部3e上に位置しており、パネル部材3の平面部3eは車外側から見て車両下方を向いているので、外側ブラケット固定部3nを形成したことによってパネル部材3の表面に発生し得る成形の不具合が目立ち難くなり、見栄えの良いバックドア1を実現することができる。また、外側ブラケット固定部3nが外側角部3k(外側縦壁部3bと接続部3d)の内側に形成されていることで、パネル部材3の外側角部3k周辺の強度を高めることも可能である。
【0027】
加えて、本実施形態のバックドア構造では、パネル部材3の内側ブラケット固定部3m及び外側ブラケット固定部3nが、車両幅方向で、開口部3fの両側部に対応する位置と、ハンドルブラケット4の両側部に対応する位置とに複数の固定点を有している。これらの内側ブラケット固定部3m及び外側ブラケット固定部3nにハンドルブラケット4が固定されることで、パネル部材3の平面部3eがハンドルブラケット4によって効果的に補強されるようになる。これにより、ハンドル部H(開口部3f及び把持部4a)の剛性を更に向上させることができるとともに、パネル部材3とハンドルブラケット4との間に隙間が発生するのを効果的に抑えることもできる。
【0028】
また、本実施形態のバックドア構造では、スイッチ部材10(ドア開放用スイッチ部材10a及びロック開閉用スイッチ部材10b)と、ライセンスランプ部材11と、後方確認用装置12とにそれぞれ対応した装着部4b~4eがハンドルブラケット4に設けられている。これにより、バックドア1に設置される多数の部材や装置が1つのハンドルブラケット4に纏められてモジュール化されるため、生産ラインでの組み付け作業を容易に行うことができるとともに、組み付け作業の工数を削減することができる。
【0029】
さらに、本実施形態のバックドア構造では、パネル部材3の開口部3fの周縁に沿って延びるリブ形状部4hがハンドルブラケット4に設けられており、このリブ形状部4hによってパネル部材3の開口部3fのエッジ部分が覆われるようになる。これにより、バックドア1の開閉時に使用者の爪等が挟まってしまうような隙間がパネル部材3とハンドルブラケット4との間に生じることが回避されるため、使用者はバックドア1を安全に開閉することができる。
【0030】
加えて、本実施形態のバックドア構造では、パネル部材3の各開口部3f~3iの周縁部と重なる位置に止水部材9が設けられており、各々の止水部材9がパネル部材3の平面部3eとハンドルブラケット4との間に挟み込まれた状態で固定されている。これにより、パネル部材3の各開口部3f~3iの周縁部に対して、各々の止水部材9が均一な力で押し当てられるようになるので、パネル部材3の内側への雨水等の浸入を確実に防止することができる。
【0031】
また、本実施形態のバックドア構造では、ドア開放用スイッチ部材10aとロック開閉用スイッチ部材10bとが車外側から操作可能な状態でハンドルブラケット4の把持部4aに設けられている。これにより、ドア開放用スイッチ部材10a及びロック開閉用スイッチ部材10bに雨水や泥などが付着し難くなるので、使用者の利便性を一層向上させることができる。
【0032】
さらに、本実施形態のバックドア構造によれば、ハンドルブラケット4にハーネス保持部4iが設けられているので、意匠面となるパネル部材3に影響を及ぼすことなく、バックドアハーネス13の配線を行うことが可能になり、生産ラインでの作業性の向上を図ることができる。
【0033】
以上、本発明の実施の形態について述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。例えば、既述の実施の形態では、パネル部材3に内側ブラケット固定部3m及び外側ブラケット固定部3nの双方を設ける一例を示したが、いずれか一方をパネル部材3に設けてハンドルブラケット4の固定を行うようにしてもよい。また、スイッチ部材10、ライセンスランプ部材11、及び後方確認用装置12がハンドルブラケット4に装着される一例を示したが、これら以外の部材や装置をハンドルブラケット4に装着することも勿論可能である。
【符号の説明】
【0034】
1…バックドア
2…フレーム部材
3…パネル部材
3a…凹部
3b…外側縦壁部
3c…内側縦壁部
3d…接続部
3e…平面部
3f,3g,3h,3i…開口部
3j…内側角部
3k…外側角部
3m…内側ブラケット固定部
3n…外側ブラケット固定部
4…ハンドルブラケット
4a…把持部
4b,4c,4d,4e…装着部
4f…内側ブラケット被固定部
4g…外側ブラケット被固定部
4h…リブ形状部
4i…ハーネス保持部
9…止水部材
10…スイッチ部材
10a…ドア開放用スイッチ部材
10b…ロック開閉用スイッチ部材
11…ライセンスランプ部材
12…後方確認用装置
13…バックドアハーネス
H…ハンドル部