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特許7406727容器殺菌方法、容器殺菌装置および内容物充填システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】容器殺菌方法、容器殺菌装置および内容物充填システム
(51)【国際特許分類】
   B65B 55/10 20060101AFI20231221BHJP
   B65B 55/04 20060101ALN20231221BHJP
【FI】
B65B55/10 F
B65B55/10 A
B65B55/10 B
B65B55/10 C
B65B55/10 E
B65B55/04 C
B65B55/04 K
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020209457
(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公開番号】P2022096386
(43)【公開日】2022-06-29
【審査請求日】2021-11-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202304
【弁理士】
【氏名又は名称】塙 和也
(72)【発明者】
【氏名】早川 睦
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-134003(JP,U)
【文献】特開2008-133049(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016125721(DE,A1)
【文献】国際公開第2018/151306(WO,A1)
【文献】特開2006-124038(JP,A)
【文献】特開2016-107998(JP,A)
【文献】特開昭59-074029(JP,A)
【文献】特開2015-074452(JP,A)
【文献】特開2006-206158(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02008667(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が充填される口部を有する容器を搬送する搬送工程と、
搬送されている前記容器内に、殺菌剤を噴霧するためのノズルを挿入するノズル挿入工程と、
前記ノズルが挿入された前記容器に対して前記殺菌剤を供給する殺菌剤供給工程とを備え、
前記ノズル挿入工程において、前記殺菌剤をノズルから噴霧させた状態で前記ノズルを前記容器内に挿入することにより、前記容器内を微陽圧にし、
前記殺菌剤供給工程において、前記ノズルから噴霧された前記殺菌剤を前記容器の前記口部から外部に吹き出させ
前記ノズルの先端と前記ノズルの外面との間に、テーパー面が形成されており、
前記容器の前記口部は、ネジ部と、前記ネジ部下方に設けられ、前記口部のうち、最も大きい外径を有するサポートリングとを含み、
前記ノズルを前記容器内に挿入した際に、前記サポートリングは、垂直断面において、前記ノズルの前記先端から水平方向に沿って径方向外方に延びる第1仮想線と、前記ノズルの前記先端から前記テーパー面に沿って径方向外方に延びる第2仮想線との間に配置される、容器殺菌方法。
【請求項2】
前記ノズル挿入工程において、前記ノズルを前記容器内に挿入することにより、前記容器内の圧力は、1kPa以上20kPa以下に保持される、請求項1に記載の容器殺菌方法。
【請求項3】
前記ノズルは、前記ノズルの先端を構成する小径部と、前記小径部よりも前記殺菌剤の流れ方向上流側に位置し、前記小径部よりも内径が大きい大径部と、前記大径部と前記小径部との間に位置し、前記殺菌剤の流れ方向下流側に向かうにつれて内径が徐々に小さくなる縮径部とを含む、請求項1または2に記載の容器殺菌方法。
【請求項4】
前記口部の内径をd1とし、前記ノズルの外径をD1とした場合に、
2mm≦d1-D1≦25mm
という関係を満たす、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の容器殺菌方法。
【請求項5】
前記ノズルには、前記ノズルから径方向に突出するフランジ部と、前記フランジ部の周縁から前記ノズルの先端側に突出する環状の壁部とが設けられており、前記ノズルを前記容器内に挿入した際に、前記壁部は、前記口部の外面の少なくとも一部を覆う、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の容器殺菌方法。
【請求項6】
前記壁部の内径をd2とし、前記口部の上端における前記口部の外径をD2とした場合に、
5mm≦d2-D2≦30mm
という関係を満たす、請求項5に記載の容器殺菌方法。
【請求項7】
前記殺菌剤供給工程において、前記サポートリングが下方から保持された状態で、前記容器に対して前記殺菌剤が供給される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の容器殺菌方法。
【請求項8】
前記ノズル挿入工程の前および前記殺菌剤供給工程の後のうちの少なくとも一方に、前記容器の前記口部の天面に対して、前記ノズルから前記殺菌剤を噴霧する天面殺菌工程を更に備える、請求項1乃至のいずれか一項に記載の容器殺菌方法。
【請求項9】
前記天面殺菌工程において、前記口部の前記天面と前記ノズルの先端との間の距離は、2mm以上100mm以下である、請求項に記載の容器殺菌方法。
【請求項10】
前記天面殺菌工程において、前記ノズルから前記殺菌剤を噴霧する時間は、0.1秒以上5.0秒以下である、請求項またはに記載の容器殺菌方法。
【請求項11】
前記ノズル挿入工程と前記殺菌剤供給工程との間に、前記容器を加熱する予備加熱工程を更に備える、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の容器殺菌方法。
【請求項12】
前記予備加熱工程において、前記容器は熱風または赤外線によって加熱される、請求項11に記載の容器殺菌方法。
【請求項13】
内容物が充填される口部を有する容器を搬送する搬送機構と、
前記搬送機構によって搬送されている前記容器に対して殺菌剤を供給する供給部とを備え、
前記供給部は、前記殺菌剤を噴霧するためのノズルを有し、
前記ノズルは、前記殺菌剤を噴霧した状態で前記容器内に挿入されることにより、前記容器内を微陽圧にし、
前記容器内に挿入された前記ノズルから前記容器に対して前記殺菌剤を供給することにより、前記ノズルから噴霧された前記殺菌剤を前記容器の前記口部から外部に吹き出させ
前記ノズルの先端と前記ノズルの外面との間に、テーパー面が形成されており、
前記容器の前記口部は、ネジ部と、前記ネジ部下方に設けられ、前記口部のうち、最も大きい外径を有するサポートリングとを含み、
前記ノズルを前記容器内に挿入した際に、前記サポートリングは、垂直断面において、前記ノズルの前記先端から水平方向に沿って径方向外方に延びる第1仮想線と、前記ノズルの前記先端から前記テーパー面に沿って径方向外方に延びる第2仮想線との間に配置される、容器殺菌装置。
【請求項14】
前記ノズルは、前記容器内の圧力を1kPa以上20kPa以下に保持する、請求項13に記載の容器殺菌装置。
【請求項15】
前記ノズルは、前記ノズルの先端を構成する小径部と、前記小径部よりも前記殺菌剤の流れ方向上流側に位置し、前記小径部よりも内径が大きい大径部と、前記大径部と前記小径部との間に位置し、前記殺菌剤の流れ方向下流側に向かうにつれて内径が徐々に小さくなる縮径部とを含む、請求項13または14に記載の容器殺菌装置。
【請求項16】
前記口部の内径をd1とし、前記ノズルの外径をD1とした場合に、
2mm≦d1-D1≦25mm
という関係を満たす、請求項13乃至15のいずれか一項に記載の容器殺菌装置。
【請求項17】
前記ノズルには、前記ノズルから径方向に突出するフランジ部と、前記フランジ部の周縁から前記ノズルの先端側に突出する環状の壁部とが設けられており、前記ノズルを前記容器内に挿入した際に、前記壁部は、前記口部の外面の少なくとも一部を覆う、請求項13乃至16のいずれか一項に記載の容器殺菌装置。
【請求項18】
前記壁部の内径をd2とし、前記口部の上端における前記口部の外径をD2とした場合に、
5mm≦d2-D2≦30mm
という関係を満たす、請求項17に記載の容器殺菌装置。
【請求項19】
前記搬送機構は、前記容器を保持する保持部材を有し、前記保持部材は、前記サポートリングを下方から保持する、請求項13乃至18のいずれか一項に記載の容器殺菌装置。
【請求項20】
前記ノズルは、前記容器内に挿入された状態で前記容器に対して前記殺菌剤を供給するとともに、前記容器内に挿入されていない状態で前記容器の前記口部の天面に対して前記殺菌剤を噴霧する、請求項13乃至19のいずれか一項に記載の容器殺菌装置。
【請求項21】
前記ノズルが前記天面に対して前記殺菌剤を噴霧する際、前記口部の前記天面と前記ノズルの先端との間の距離は、2mm以上100mm以下である、請求項20に記載の容器殺菌装置。
【請求項22】
前記ノズルが前記天面に対して前記殺菌剤を噴霧する時間は、0.1秒以上5.0秒以下である、請求項20または21に記載の容器殺菌装置。
【請求項23】
前記供給部は、前記容器に対して前記殺菌剤を供給する前に、前記容器を加熱する、請求項13乃至22のいずれか一項に記載の容器殺菌装置。
【請求項24】
前記供給部は、熱風または赤外線によって前記容器を加熱する、請求項23に記載の容器殺菌装置。
【請求項25】
請求項13乃至24のいずれか一項に記載の容器殺菌装置と、
前記容器内に内容物を充填する充填装置と、
前記容器をキャップにより閉栓するキャップ装着装置とを備える、内容物充填システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、容器殺菌方法、容器殺菌装置および内容物充填システムに関する。
【背景技術】
【0002】
殺菌された容器(PETボトル)に殺菌された内容物を無菌環境下で充填し、その後、容器をキャップによって閉栓する無菌充填システム(アセプティック充填システム)が知られている。
【0003】
具体的には、無菌充填システムにおいて、成形した容器を無菌充填システムに供給し、無菌充填システム内で、容器に殺菌剤としての過酸化水素水溶液をスプレーする。その後、これを乾燥して容器を殺菌し、次いで、容器に内容物を無菌充填する。容器を殺菌する殺菌方法としては、例えば、ノズルをPET製ボトル内に挿入したうえで、PET製ボトルを殺菌する殺菌方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
ところで、容器を殺菌する際には、短時間で効率よく殺菌することが求められている。この場合、短時間で効率よく容器の温度を向上させることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4012653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示はこのような点を考慮してなされたものであり、容器の温度を効率よく向上させることにより、容器を効率良く殺菌することが可能な、容器殺菌方法、容器殺菌装置および内容物充填システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施の形態による容器殺菌方法は、内容物が充填される口部を有する容器を搬送する搬送工程と、搬送されている前記容器内に、殺菌剤を噴霧するためのノズルを挿入するノズル挿入工程と、前記ノズルが挿入された前記容器に対して前記殺菌剤を供給する殺菌剤供給工程とを備え、前記ノズル挿入工程において、前記ノズルを前記容器内に挿入することにより、前記容器内を微陽圧にする、容器殺菌方法である。
【0008】
本開示の一実施の形態による容器殺菌方法において、前記ノズル挿入工程において、前記ノズルを前記容器内に挿入することにより、前記容器内の圧力は、1kPa以上20kPa以下に保持されてもよい。
【0009】
本開示の一実施の形態による容器殺菌方法において、前記ノズル挿入工程において、前記ノズルを前記容器内に挿入することにより、前記ノズル内の圧力を0.01kPa以上2.0kPa以下上昇させてもよい。
【0010】
本開示の一実施の形態による容器殺菌方法において、前記ノズルは、前記ノズルの先端を構成する小径部と、前記小径部よりも前記殺菌剤の流れ方向上流側に位置し、前記小径部よりも内径が大きい大径部と、前記大径部と前記小径部との間に位置し、前記殺菌剤の流れ方向下流側に向かうにつれて内径が徐々に小さくなる縮径部とを含んでいてもよい。
【0011】
本開示の一実施の形態による容器殺菌方法において、前記口部の内径をd1とし、前記ノズルの外径をD1とした場合に、
2mm≦d1-D1≦25mm
という関係を満たしていてもよい。
【0012】
本開示の一実施の形態による容器殺菌方法において、前記ノズルには、前記ノズルから径方向に突出するフランジ部と、前記フランジ部の周縁から前記ノズルの先端側に突出する環状の壁部とが設けられており、前記ノズルを前記容器内に挿入した際に、前記壁部は、前記口部の外面の少なくとも一部を覆っていてもよい。
【0013】
本開示の一実施の形態による容器殺菌方法において、前記壁部の内径をd2とし、前記口部の上端における前記口部の外径をD2とした場合に、
5mm≦d2-D2≦30mm
という関係を満たしていてもよい。
【0014】
本開示の一実施の形態による容器殺菌方法において、前記ノズルの先端と前記ノズルの外面との間に、テーパー面が形成されていてもよい。
【0015】
本開示の一実施の形態による容器殺菌方法において、前記容器の前記口部は、ネジ部と、ネジ部下方に設けられたサポートリングとを含み、前記ノズルを前記容器内に挿入した際に、前記サポートリングは、垂直断面において、前記ノズルの先端から水平方向に沿って径方向外方に延びる第1仮想線と、前記ノズルの先端から前記テーパー面に沿って径方向外方に延びる第2仮想線との間に配置されてもよい。
【0016】
本開示の一実施の形態による容器殺菌方法において、前記殺菌剤供給工程において、前記サポートリングが下方から保持された状態で、前記容器に対して前記殺菌剤が供給されてもよい。
【0017】
本開示の一実施の形態による容器殺菌方法において、前記ノズル挿入工程の前および前記殺菌剤供給工程の後のうちの少なくとも一方に、前記容器の前記口部の天面に対して、前記ノズルから前記殺菌剤を噴霧する天面殺菌工程を更に備えていてもよい。
【0018】
本開示の一実施の形態による容器殺菌方法において、前記天面殺菌工程において、前記口部の前記天面と前記ノズルの先端との間の距離は、2mm以上100mm以下であってもよい。
【0019】
本開示の一実施の形態による容器殺菌方法において、前記天面殺菌工程において、前記ノズルから前記殺菌剤を噴霧する時間は、0.1秒以上5.0秒以下であってもよい。
【0020】
本開示の一実施の形態による容器殺菌方法において、前記ノズル挿入工程と前記殺菌剤供給工程との間に、前記容器を加熱する予備加熱工程を更に備えていてもよい。
【0021】
本開示の一実施の形態による容器殺菌方法において、前記予備加熱工程において、前記容器は熱風または赤外線によって加熱されてもよい。
【0022】
本開示の一実施の形態による容器殺菌装置は、内容物が充填される口部を有する容器を搬送する搬送機構と、前記搬送機構によって搬送されている前記容器に対して殺菌剤を供給する供給部とを備え、前記供給部は、前記殺菌剤を噴霧するためのノズルを有し、前記ノズルは、前記容器内に挿入されることにより、前記容器内を微陽圧にする、容器殺菌装置である。
【0023】
本開示の一実施の形態による容器殺菌装置において、前記ノズルは、前記容器内の圧力を1kPa以上20kPa以下に保持してもよい。
【0024】
本開示の一実施の形態による容器殺菌装置において、前記ノズルを前記容器内に挿入することにより、前記ノズル内の圧力を0.01kPa以上2.0kPa以下上昇させてもよい。
【0025】
本開示の一実施の形態による容器殺菌装置において、前記ノズルは、前記ノズルの先端を構成する小径部と、前記小径部よりも前記殺菌剤の流れ方向上流側に位置し、前記小径部よりも内径が大きい大径部と、前記大径部と前記小径部との間に位置し、前記殺菌剤の流れ方向下流側に向かうにつれて内径が徐々に小さくなる縮径部とを含んでいてもよい。
【0026】
本開示の一実施の形態による容器殺菌装置において、前記口部の内径をd1とし、前記ノズルの外径をD1とした場合に、
2mm≦d1-D1≦25mm
という関係を満たしていてもよい。
【0027】
本開示の一実施の形態による容器殺菌装置において、前記ノズルには、前記ノズルから径方向に突出するフランジ部と、前記フランジ部の周縁から前記ノズルの先端側に突出する環状の壁部とが設けられており、前記ノズルを前記容器内に挿入した際に、前記壁部は、前記口部の外面の少なくとも一部を覆っていてもよい。
【0028】
本開示の一実施の形態による容器殺菌装置において、前記壁部の内径をd2とし、前記口部の上端における前記口部の外径をD2とした場合に、
5mm≦d2-D2≦30mm
という関係を満たしていてもよい。
【0029】
本開示の一実施の形態による容器殺菌装置において、前記ノズルの先端と前記ノズルの外面との間に、テーパー面が形成されていてもよい。
【0030】
本開示の一実施の形態による容器殺菌装置において、前記容器の前記口部は、ネジ部と、ネジ部下方に設けられたサポートリングとを含み、前記ノズルを前記容器内に挿入した際に、前記サポートリングは、垂直断面において、前記ノズルの先端から水平方向に沿って径方向外方に延びる第1仮想線と、前記ノズルの先端から前記テーパー面に沿って径方向外方に延びる第2仮想線との間に配置されてもよい。
【0031】
本開示の一実施の形態による容器殺菌装置において、前記搬送機構は、前記容器を保持する保持部材を有し、前記保持部材は、前記サポートリングを下方から保持してもよい。
【0032】
本開示の一実施の形態による容器殺菌装置において、前記ノズルは、前記容器内に挿入された状態で前記容器に対して前記殺菌剤を供給するとともに、前記容器内に挿入されていない状態で前記容器の前記口部の天面に対して前記殺菌剤を噴霧してもよい。
【0033】
本開示の一実施の形態による容器殺菌装置において、前記ノズルが前記天面に対して前記殺菌剤を噴霧する際、前記口部の前記天面と前記ノズルの先端との間の距離は、2mm以上100mm以下であってもよい。
【0034】
本開示の一実施の形態による容器殺菌装置において、前記ノズルが前記天面に対して前記殺菌剤を噴霧する時間は、0.1秒以上5.0秒以下であってもよい。
【0035】
本開示の一実施の形態による容器殺菌装置において、前記供給部は、前記容器に対して前記殺菌剤を供給する前に、前記容器を加熱してもよい。
【0036】
本開示の一実施の形態による容器殺菌装置において、前記供給部は、熱風または赤外線によって前記容器を加熱してもよい。
【0037】
本開示の一実施の形態による内容物充填システムは、一実施の形態による容器殺菌装置と、前記容器内に内容物を充填する充填装置と、前記容器をキャップにより閉栓するキャップ装着装置とを備える、内容物充填システムである。
【発明の効果】
【0038】
本開示によれば、容器の温度を効率よく向上させることにより、容器を効率良く殺菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、本実施の形態による内容物充填システムを示す概略平面図である。
図2図2は、本実施の形態による容器殺菌装置を示す概略断面図である。
図3図3は、本実施の形態による容器殺菌装置を示す概略平面図である。
図4図4は、本実施の形態による容器殺菌装置のノズルを拡大して示す概略正面図である。
図5図5は、本実施の形態による容器殺菌装置のノズルとボトルとの関係を説明する断面図である。
図6図6は、本実施の形態による内容物充填システムを用いた内容物充填方法を示すフローチャートである。
図7図7は、本実施の形態による内容物充填システムを用いた内容物充填方法を示す概略正面図である。
図8図8は、本実施の形態による内容物充填システムを用いた内容物充填方法の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図7は本発明の一実施の形態を示す図である。
【0041】
(内容物充填システム)
まず、図1により、実施の形態による内容物充填システム(無菌充填システム、アセプティック充填システム)について説明する。
【0042】
図1に示す内容物充填システム10は、内容物が充填される口部110(図4参照)を有するボトル(容器)100に対して飲料等の内容物を充填するシステムである。ボトル100は、合成樹脂材料を射出成形して製作したプリフォームを二軸延伸ブロー成形することにより作製することができる。なお、ボトル100は、ダイレクトブロー成形により作製されてもよい。ボトル100の材料としては、熱可塑性樹脂、特にPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、又はPEN(ポリエチレンナフタレート)を使用することが好ましい。このほか、容器としては、ガラス、缶、紙、パウチ、またはこれらの複合容器であっても良い。本実施の形態においては、容器としてボトルを用いる場合を例にとって説明する。
【0043】
図1に示すように、内容物充填システム10は、ボトル成形部30と、殺菌装置(容器殺菌装置)11と、エアリンス装置14と、無菌水リンス装置15と、充填装置(フィラー)20と、キャップ装着装置(キャッパー、巻締及び打栓機)16と、製品ボトル搬出部22とを備えている。これらボトル成形部30、殺菌装置11、エアリンス装置14、無菌水リンス装置15、充填装置20、キャップ装着装置16および製品ボトル搬出部22は、ボトル100の搬送方向に沿って、上流側から下流側に向けてこの順に配設されている。また、後述する調整搬送部5、殺菌装置11、エアリンス装置14、無菌水リンス装置15、充填装置20およびキャップ装着装置16の間には、これらの装置間でボトル100を搬送する複数の搬送ホイール12が設けられている。
【0044】
ボトル成形部30は、外部からプリフォーム100aを順次受け入れ、ボトル100の成形を経て、成形されたボトル100を殺菌装置11へ向けて搬送して供給するものである。このように、ボトル成形部30が、プリフォーム100aを受け入れるとともにボトル100の成形を行うように構成されていることにより、内容物充填システム10において、プリフォーム100aの供給からボトル100の成形を経て、ボトル100への内容物の充填および閉栓に至る工程を連続して行うようにすることができる。この場合、外部から内容物充填システム10まで、容積の大きいボトル100の形態ではなく容積の小さいプリフォーム100aの形態で運搬することができるので、運送費を低減することができる。
【0045】
ボトル成形部30は、プリフォーム100aを搬送するプリフォーム搬送部31と、プリフォーム100aに対してブロー成形を施すことによりボトル100を成形するブロー成形部32と、成形されたボトル100を搬送するボトル搬送部33と、を有している。
【0046】
このうち、プリフォーム搬送部31は、プリフォーム供給装置1からプリフォーム供給コンベア2を介して供給されるプリフォーム100aを受け取る受取部34と、受取部34からプリフォーム100aを受け取り、搬送しながらプリフォーム100aを加熱する加熱部35と、加熱部35により加熱されたプリフォーム100aを受け取り、ブロー成形部32に受け渡す受渡部36と、を含んでいる。このうち、受取部34には、プリフォーム100aを殺菌するためのプリフォーム殺菌装置34aが設けられている。このプリフォーム殺菌装置34aにより、過酸化水素水溶液のミスト又はガスがプリフォーム100aに吹き付けられ、プリフォーム100aが殺菌されるようになっている(予備殺菌)。
【0047】
プリフォーム100aを殺菌するための殺菌剤としては、微生物を不活性化させる性質を有していればよく、例えば過酸化水素のほか、過酢酸、酢酸、過硝酸、硝酸、塩素系薬剤、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、二酸化塩素、オゾン水、酸性水、界面活性剤を単体で用いても良く、これらのうち2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0048】
加熱部35には、プリフォーム100aを加熱するヒーター35aが設けられている。このヒーター35aは、例えば赤外線ヒーターであっても良い。このヒーター35aにより、プリフォーム100aは、例えば90℃以上130℃以下程度に加熱される。なお、プリフォーム100aの口部の温度は、変形等を防止するため70℃以下の温度に抑えられる。
【0049】
ブロー成形部32は、図示しない金型を含んでおり、この金型を用いてプリフォーム100aに対してブロー成形を施すことにより、ボトル100が成形される。
【0050】
また、ボトル成形部30と、殺菌装置11との間に、ボトル成形部30のボトル搬送部33からボトル100を受け取り、殺菌装置11へボトル100を受け渡す調整搬送部5が設けられている。この調整搬送部5の少なくとも一部は、後述する雰囲気遮断チャンバ70bの内部に収容されている。図示された例においては、調整搬送部5は、後述する成形部チャンバ70aと後述する雰囲気遮断チャンバ70bとに跨がるように配置されている。このように、調整搬送部5の少なくとも一部が内部に収容される雰囲気遮断チャンバ70bが設けられていることにより、後述する殺菌剤噴霧チャンバ70c内で発生する殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物が、ボトル成形部30を収容する後述する成形部チャンバ70aに流入する不具合を抑制することができる。
【0051】
ここで、図示された例においては、調整搬送部5とボトル成形部30のボトル搬送部33との間には、単一の搬送ホイール12が設けられている。すなわち、ボトル成形部30のブロー成形部32と殺菌装置11との間には、ボトル成形部30のボトル搬送部33、単一の搬送ホイール12および調整搬送部5が設けられている。これにより、調整搬送部5とボトル成形部30のボトル搬送部33との間に、複数の搬送ホイール12が設けられている場合と比較して、内容物充填システム10をコンパクトにすることができる。なお、図示はしないが、ボトル成形部30のブロー成形部32と殺菌装置11との間に、調整搬送部5のみが設けられていてもよい。この場合、内容物充填システム10を更にコンパクトにすることができる。
【0052】
殺菌装置11は、殺菌剤をボトル100に噴射することにより、ボトル100内を殺菌するものである。これにより、内容物の充填前に殺菌剤によってボトル100が殺菌される。殺菌剤としては、例えば過酸化水素水溶液が用いられる。殺菌装置11においては、過酸化水素水溶液のミスト又はガスが生成され、ミスト又はガスがボトル100の内外面に噴霧される。このようにボトル100が過酸化水素水溶液のミスト又はガスで殺菌されるので、ボトル100の内外面がムラなく殺菌される。
【0053】
エアリンス装置14は、ボトル100に無菌の加熱エア又は常温エアを供給することにより、過酸化水素の活性化を行いつつ、ボトル100内から異物、過酸化水素等を除去するものである。また、必要に応じて、常温の無菌化されたエアに、低濃度の過酸化水素の凝結ミストを混ぜて過酸化水素をガス化させて、ボトル100に供給しても良い。なお、エアリンス装置14の構成は、後述するような図2に示す殺菌装置11と略同一の構成としても良い。
【0054】
無菌水リンス装置15は、殺菌剤である過酸化水素により殺菌されたボトル100に対して、無菌の15℃~85℃の水による洗浄を行うものである。これによりボトル100に付着した過酸化水素を洗い流し、且つ異物が除去される。
【0055】
充填装置20は、ボトル100の口部110からボトル100内へ、予め殺菌処理された内容物を充填するものである。この充填装置20において、空の状態のボトル100に対して内容物が充填される。この充填装置20において、複数のボトル100が回転搬送されながら、ボトル100の内部へ内容物が充填される。
【0056】
キャップ装着装置16は、ボトル100の口部110にキャップ80を装着することにより、ボトル100を閉栓するものである。キャップ装着装置16において、ボトル100の口部110はキャップ80により閉じられ、ボトル100内に外部の空気や微生物が侵入しないように密封される。キャップ装着装置16において、内容物が充填された複数のボトル100が回転(公転)しながらその口部110にキャップ80が装着される。このようにして、ボトル100の口部110にキャップ80を装着することにより、製品ボトル101が得られる。
【0057】
キャップ80は、予めキャップ殺菌装置18によって殺菌される。キャップ殺菌装置18は、例えば無菌チャンバ70f(後述)の外側であってキャップ装着装置16の近傍に配置されている。キャップ殺菌装置18において、内容物充填システム10の外部から搬入されたキャップ80は、予め多数集められ、キャップ装着装置16に向かって列になって搬送される。キャップ80がキャップ装着装置16に向かう途中で、過酸化水素のミスト又はガスがキャップ80の内外面に向かって吹き付けられた後、ホットエアで乾燥し、殺菌処理される。
【0058】
製品ボトル搬出部22は、キャップ装着装置16でキャップ80を装着された製品ボトル101を、内容物充填システム10の外部へ向けて連続的に搬出するものである。
【0059】
なお、内容物充填システム10は、成形部チャンバ70aと、雰囲気遮断チャンバ70bと、殺菌剤噴霧チャンバ70cと、第1殺菌剤除去チャンバ70dと、第2殺菌剤除去チャンバ70eと、無菌チャンバ70fと、出口チャンバ70gとを有している。このうち成形部チャンバ70aの内部に、ボトル成形部30のブロー成形部32が収容され、雰囲気遮断チャンバ70bの内部に、調整搬送部5の少なくとも一部が収容されている。
【0060】
ここで、雰囲気遮断チャンバ70bの内部に、カメラが設けられていてもよい。そして、カメラを用いることにより、ボトル100が成形上問題ないかどうかを検査しても良い。また、雰囲気遮断チャンバ70bの内部に、温度計が設けられていてもよい。そして、この温度計によって、殺菌前のボトル100の温度が測定されても良い。ここで、ボトル100の温度は、ボトル100の殺菌効率を左右する重要な要素の1つである。すなわち、ボトル100の温度を適切な温度に保つことにより、ボトル100の殺菌効率を向上させることができる。このため、温度計によって、殺菌前のボトル100の温度を測定することにより、殺菌時のボトル100の温度を適切な温度に保つことができ、ボトル100の殺菌効率を向上させることができる。
【0061】
また、殺菌剤噴霧チャンバ70cの内部に殺菌装置11が収容され、第1殺菌剤除去チャンバ70dの内部にエアリンス装置14が収容され、第2殺菌剤除去チャンバ70eの内部に無菌水リンス装置15が収容されている。このうち殺菌剤噴霧チャンバ70cには、殺菌剤噴霧チャンバ70c内の圧力を測定する圧力計71(図2参照)が取り付けられている。
【0062】
さらに、無菌チャンバ70fの内部に、上述した充填装置20およびキャップ装着装置16が収容され、出口チャンバ70gの内部に、製品ボトル搬出部22が収容されている。このうち、少なくとも無菌チャンバ70fの内部には、充填環境の内圧を測定する圧力計(図示せず)が取り付けられている。なお、成形部チャンバ70a、雰囲気遮断チャンバ70b、第1殺菌剤除去チャンバ70d、第2殺菌剤除去チャンバ70eおよび/または出口チャンバ70gにも、内圧を測定する圧力計が取り付けられていても良い。
【0063】
このような内容物充填システム10は、例えば無菌充填システムからなっていても良い。この場合、殺菌剤噴霧チャンバ70c、第1殺菌剤除去チャンバ70d、第2殺菌剤除去チャンバ70e、無菌チャンバ70fおよび出口チャンバ70gの内部は無菌状態に保持される。なお、図示された例においては、殺菌装置11とエアリンス装置14との間に設けられた搬送ホイール12、およびエアリンス装置14と無菌水リンス装置15との間に設けられた搬送ホイール12は、それぞれチャンバ壁12aに囲まれた無菌状態の空間内に配置されていてもよい。また、出口チャンバ70gの下流側に、無菌状態の無菌ゾーンと、非無菌状態の非無菌ゾーンとを連結するチャンバ(図示せず)が設けられていてもよい。
【0064】
次に、図2により、本実施の形態による殺菌装置(容器殺菌装置)11について、詳細に説明する。図2は、殺菌装置11を示す概略断面図である。図2に示すように、殺菌装置11は、ボトル100を搬送する搬送機構40と、搬送機構40によって搬送されているボトル100に対して殺菌剤を供給する供給部50とを備えている。本実施の形態では、搬送機構40は、回転可能なホイール41と、ホイール41に連結され、ボトル100を保持しながら搬送するグリッパ(保持部材)42と、を有している。
【0065】
このうちホイール41は、所定の駆動源からの動力で回転するように構成されており、機台43上に起立する旋回軸44に水平に取り付けられている。ホイール41の盤面からは支柱45が上方に伸びており、支柱45の上端に、供給部50の後述するマニホルド52が連結されている。
【0066】
また、ホイール41の盤面からは他の支柱48が上方に伸び、この支柱48の上部にボトル100のグリッパ42が取り付けられている。支柱48及びグリッパ42は所定のピッチでホイール41の回りに多数配置される。多数のグリッパ42は支柱48を介してホイール41に連結され、ホイール41の回転と共に回転する。また、ホイール41の周囲には、グリッパ42に保持されたボトル100の通り道を囲むようにトンネル49が設けられる。このトンネル49内には、後述するノズル90から噴霧された殺菌剤が滞留しており、トンネル49内をボトル100が通過することにより、ボトル100の外面が満遍なく殺菌されるようになっている。
【0067】
なお、トンネル49を設けることにより、効率的にボトル100の外面を殺菌することが可能であるが、トンネル49が設けられていなくてもよい。例えば、ホイール41と、当該ホイール41の両隣に配置されたホイール(図1に示す例においては、殺菌装置11の両隣に配置された搬送ホイール12)との間にチャンバ壁を設け、チャンバ壁によって、容積がコンパクトな空間を形成することにより、ボトル100の外面を効率的に殺菌することも可能である。
【0068】
次に、殺菌装置11の供給部50について説明する。供給部50は、ボトル100の少なくとも内面に対して殺菌剤を供給するものである。なお、供給部50は、ボトル100の内外面に対して殺菌剤を供給してもよい。この供給部50は、殺菌剤を噴霧するためのノズル90を有している。このノズル90は、ノズル90は上下方向に移動可能な態様で上記支柱48に取り付けられ、その先端90a(図4および図5参照)の開口がグリッパ42に保持されたボトル100の口部110(図4および図5参照)に正対する。そして、ノズル90は、上下方向に移動することにより、ボトル100内に挿入されるように構成されている。このような構成により、ホイール41が回転すると、ノズル90はグリッパ42に保持されたボトル100と共に旋回軸44の回りを旋回し、搬送機構40のグリッパ42によって搬送されているボトル100と同期して移動しながら殺菌剤(過酸化水素ガス)をボトル100に吹き付けるようになっている。
【0069】
ところで、グリッパ(保持部材)42は、ボトル100のサポートリング112を下方から保持することが好ましい。すなわち、グリッパ42は、サポートリング112よりも下方に位置する部分を把持することが好ましい。ここで、ノズル90が降下し、ボトル100内に殺菌剤が吹き込まれた際、殺菌剤の風圧によりボトル100が下方に押圧される。このため、グリッパ42がサポートリング112よりも下方の部分を把持することにより、殺菌剤の供給風量を上げることによって、ボトル100の内圧を高めた場合であっても、ボトル100の水平位置が下方にずれてしまうことを抑制することができる。このため、ボトル100を問題なく次のホイールへ受け渡すことが可能になる。
【0070】
また、供給部50は、過酸化水素ガスが流入するマニホルド52を有している。マニホルド52の上部中央からは旋回軸44の軸心の延長線上で導管53が上方に伸び、この導管53が機台43に連結される殺菌剤噴霧チャンバ70cのフレーム部材にベアリング54を介して保持される。これにより、マニホルド52はホイール41と一体で旋回軸44の回りを回転可能である。
【0071】
マニホルド52の回りからは各グリッパ42に向って過酸化水素ガスの供給管55がそれぞれ伸び、各供給管55の先端に上述したノズル90が取り付けられている。
【0072】
マニホルド52の導管53の上端には、シール部材56を介して導管57が接続されている。導管53はマニホルド52と一体で導管57に対して回転し、シール部材56が両管53、57の接続部からの過酸化水素ガスの漏れを防止する。導管57には、導管57内の過酸化水素ガスの通過を制御するバルブ58aが取り付けられている。また、導管57には、ノズル90内の圧力を測定するための圧力計P、過酸化水素ガスの濃度を測定する濃度計C、過酸化水素ガスの温度を測定する温度計Tおよび過酸化水素ガスの風量を測定する風量計Fが取り付けられている。
【0073】
導管57の上流側にはブロア60、HEPA(High Efficiency Particulate Air Filter)フィルタ61及び電熱器62で構成されるガス供給装置が設けられる。電熱器62の前後の一方又は両方には、過酸化水素添加装置63が組み込まれている。過酸化水素添加装置63が電熱器62よりも下流側に設置される場合は、過酸化水素添加装置63は、過酸化水素をガスの状態で配管に添加すると良い。配管に添加される過酸化水素がガス状態でないと、過酸化水素のボトル100における残留値が増加する傾向にある。一方、過酸化水素添加装置63が電熱器62よりも上流側に設置される場合は、過酸化水素転科装置3は、過酸化水素をスプレー等の液状で配管内に添加しても良い。その場合、電熱器62の設定温度は、供給する殺菌剤の沸点以上にすることが好ましいが、ボトル100の殺菌強度に応じて100℃以上(好ましくは130℃以上)にしても良い。また、過酸化水素添加装置63の更に上流側に別の電熱器を設け、無菌のホットエア(80℃以上)に対して液状の過酸化水素をスプレーしても良い。または、過酸化水素添加装置63は、電熱器62の前後両方に組み込んでも良い。
【0074】
ここで、ボトル100の材質がPET(ポリエチレンテレフタレート)の場合、過酸化水素が吸着しやすく残留値が増加しやすいが、材質がHDPE(高密度ポリエチレン)の場合、過酸化水素の吸着量は1/5~1/20と極めて少ない。そのため、ボトル100の材質がHDPE(高密度ポリエチレン)の場合、過酸化水素水をガス化させ無菌エアに添加する方式だけでなく、過酸化水素水をスプレーし、混気する方式を採用しても良い。この過酸化水素ガスは、導管57を通ってマニホルド52内に供給され、供給管55を介してノズル90からボトル100へと吹き出し、ボトル100を殺菌する。殺菌剤は過酸化水素を1%以上含むものであっても良い。35%の過酸化水素水をエタノールで希釈したものを用いても良い。
【0075】
なお、殺菌剤として、過酸化水素を使用した場合、過酸化水素成分中に含まれる安定剤が導管57内に蓄積する。このため、導管57内に蓄積した安定剤によるノズル90の詰まりを防止するために、供給部50に水、アルカリ、酸等の洗浄液を流し、供給部50をCIP(Cleaning In Place)できる構造にすると良い。図示された例においては、バルブ58aの上流側にCIP用の導管64と、導管64内の洗浄液の通過を制御するバルブ58bが取り付けられている。なお、CIP用の導管64は、過酸化水素添加装置63の前後の一方又は両方に取り付けられていてもよく、あるいは、CIP用の導管64は過酸化水素添加装置63に直接取り付けられていても良い。一方、CIPで用いる薬液がブロア60、HEPAフィルタ61及び電熱器62と接触することを抑制するために、当該薬液が上流側へ流れないようにすることが好ましい。例えば、この場合、ブロア60等の機器と、CIP用の導管64との間にバルブを設けると良い。
【0076】
次に、供給部50のノズル90についてより詳細に説明する。本実施の形態によるノズル90は、ボトル100内に挿入されることにより、ボトル100内を微陽圧にするように構成されている。この場合、ノズル90をボトル100内に挿入することにより、ノズル90に連結された導管57内の静圧と、ボトル100内の圧力とがほぼ同一になる。このため、ノズル90をボトル100内に挿入することによってボトル100内を微陽圧にした場合、導管57内の静圧が高まり、ノズル90から噴霧された殺菌剤がボトル100の口部110から外部に吹き出す際の流速を速くすることができる。これにより、ノズル90から殺菌剤をボトル100内に噴霧した場合に、ボトル100の温度を効率よく向上させることができる。なお、上述したように、ボトル100内の圧力は、導管57内の静圧とほぼ同一になる。このため、導管57に取り付けられた圧力計Pにより、ボトル100内の圧力を測定することができる。
【0077】
ノズル90は、ボトル100内の圧力を1kPa以上20kPa以下に保持する。ノズル90がボトル100内の圧力を1kPa以上に保持することにより、ノズル90から噴霧された殺菌剤がボトル100の口部110から外部に吹き出す際の流速をより速くすることができ、ボトル100の温度をより効果的に向上させることができる。また、ノズル90がボトル100内の圧力を20kPa以下に保持することにより、ボトル100を薄肉化した場合であっても、ボトル100が変形してしまうことを抑制することができる。
【0078】
また、この際、ノズル90をボトル100内に挿入することにより、ノズル90内の圧力を0.01kPa以上2.0kPa以下(好ましくは、0.05kPa以上1.5kPa以下)上昇させる。すなわち、ノズル90をボトル100内に挿入することにより、導管57内の静圧を0.01kPa以上2.0kPa以下(好ましくは、0.05kPa以上1.5kPa以下)上昇させる。ノズル90内の圧力を0.01kPa以上上昇させることにより、ノズル90から噴霧された殺菌剤がボトル100の口部110から外部に吹き出す際の流速をより速くすることができ、ボトル100の温度をより効果的に向上させることができる。また、ノズル90内の圧力の上昇を2.0kPa以下とすることにより、ノズル90から殺菌剤を噴霧した際に、ボトル100が変形してしまうことを抑制することができる。
【0079】
ここで、殺菌装置11において、複数のノズル90のうち、ボトル100の内部に挿入されているノズル90の割合は、56%以上86%以下であってもよい。言い換えれば、図3に示すように、搬送機構40によって搬送されるボトル100のうち、ノズル90が内部に挿入されているボトル100の軌跡が円弧を形成する扇形(梨地で示す領域)の中心角(言い換えれば、一のノズル90がボトル100の内部に挿入した状態で回転する回転角度)θ1は、200°以上310°以下であることが好ましい。中心角θ1が200°以上であることにより、ボトル100内に挿入されるノズル90の個数を多くすることができる。これにより、導管57内の静圧を効果的に上昇させることができる。また、中心角θ1が、310°以下であることにより、殺菌装置11にボトル100を受け渡す搬送ホイール12と、殺菌装置11からボトル100を受け取る搬送ホイール12とが干渉したり、いわゆる容器振れによる受け渡し不良を無くすことができる。なお、本明細書中「容器振れ」とは、ノズル90から吹き付けられる殺菌剤によって、ボトル100が振れてしまうことを意味する。
【0080】
また、図4に示すように、ノズル90は、ノズル90の先端90aを構成する小径部91と、小径部91よりも殺菌剤の流れ方向上流側に位置し、小径部91よりも内径が大きい大径部92と、大径部92と小径部91との間に位置し、殺菌剤の流れ方向下流側に向かうにつれて内径が徐々に小さくなる縮径部93とを含んでいる。これにより、ノズル90から吹き付けられる殺菌剤の流速を速くすることができる。
【0081】
ここで、小径部91の内径dn1は、例えば、2mm以上15mm以下であってもよく、好ましくは3mm以上10mm以下であってもよい。小径部91の内径dn1が2mm以上であることにより、ノズル90から噴霧された殺菌剤をボトル100の内面のみならず外面に対しても効率的に付着させることができる。このため、ボトル100の内面のみならず、ボトル100の外面も殺菌することができる。また、小径部91の内径dn1が15mm以下であることにより、殺菌剤をボトル100の内面に対して効果的に吹き付けることができ、後述するように、ボトル100を所望の温度に加熱しながら殺菌することができる。また、大径部92の内径dn2は、例えば、5mm以上30mm以下であってもよい。
【0082】
また、ノズル90の小径部91の長さは5mm以上400mm以下であることが好ましい。小径部91の長さが5mm以上であることにより、殺菌剤ガスの推進力を良好に保つことができる。また、小径部91の長さが400mm以下であることにより、ノズル90の長さが長くなり過ぎることを抑制することができ、ノズル90の昇降時間を短縮することが可能となる。このため、ノズル90が下がりきった状態を少しでも長く維持することが可能となる。ここで、ボトル100の内圧と、ノズル90に連結された導管57内の静圧とは、ノズル90が下がりきった状態で、それぞれ最大になる。このため、小径部91の長さが400mm以下であることにより、ボトル100の内圧と、ノズル90に連結された導管57内の静圧とが最大になる状態を少しでも長く維持することが可能となる。
【0083】
また、ノズル90には、ノズル90から径方向に突出するフランジ部95と、フランジ部95の周縁からノズル90の先端90a側に突出する環状の壁部96とが設けられている。このような傘状のノズル90の場合、ボトル100内に供給された熱風のうち、ボトル100の口部110からボトル100の外部に吹き出す熱風を口部110の外周側に導くことができる。これにより、口部110の予備加熱及び殺菌を効果的に行うことができる。このため、ボトル100の外面と内面との境界部分(口部110の天面115(図5参照)等)を効率良くかつ確実に殺菌することができる。
【0084】
ここで、図5に示すように、フランジ部95のうち、ノズル90をボトル100に挿入した際に、ボトル100の口部110に対向する対向面95aは、口部110から離間する側に窪む湾曲面95bを含んでいる。これにより、ボトル100の口部110からボトル100の外部に吹き出す熱風を口部110の外周側に効果的に導くことができる。この湾曲面95bの曲率半径Rは、1mm以上5mm以下であってもよい。
【0085】
次に、ノズル90とボトル100の口部110との関係についてより詳細に説明する。ここで、ボトル100の口部110は、キャップ80に螺着されるネジ部111と、ネジ部111下方に設けられたサポートリング112とを含んでいる。
【0086】
上述したように、ノズル90は、ボトル100内に挿入されるように構成されている。図5に示すように、ノズル90をボトル100内に挿入した際に、上下方向(ボトル100の中心軸線に沿った方向)におけるノズル90のボトル100内への挿入量L1は、例えば、5mm以上50mm以下であってもよい。挿入量L1が5mm以上であることにより、ノズル90をボトル100内に挿入した際に、ボトル100内の圧力を効果的に向上させることができる。また、挿入量L1が50mm以下であることにより、ノズル90の上下方向に沿った移動距離を短くすることができ、殺菌剤を供給する作業時間を短縮させることができる。また、挿入量L1が50mm以下であることにより、ボトル100の底部に対して高温の殺菌剤が吹き付けられてしまうことを抑制することができるため、ボトル100の底部が変形することを抑制することができる。
【0087】
また、ボトル100の口部110の内径をd1とし、ノズル90の外径をD1とした場合に、
2mm≦d1-D1≦25mm
という関係を満たしていることが好ましい。
これにより、ノズル90をボトル100内に挿入した際に、ボトル100内の圧力を効果的に高めることができる。また、ノズル90から噴霧された殺菌剤がボトル100の口部110から外部に吹き出す際の流速をより速くすることができ、ボトル100の温度をより効果的に向上させることができる。また、ノズル90から殺菌剤を噴霧した際に、ボトル100が変形してしまうことを抑制することができる。ここで、本明細書中、「ノズルの外径D1」とは、ノズル90の外径のうち、ノズル90をボトル100内に挿入した際に、ボトル100内に位置する部分の外径をいう。
【0088】
また、ノズル90をボトル100内に挿入した際に、壁部96は、口部110の外面の少なくとも一部を覆うように構成されている。これにより、ボトル100内に供給された熱風のうち、ボトル100の口部110からボトル100の外部に吹き出す熱風を口部110の外周側により確実に導くことができる。これにより、口部110の予備加熱及び殺菌を更に効果的に行うことができる。
【0089】
この場合、上下方向(ボトル100の中心軸線に沿った方向)において、壁部96と口部110との重なり量L2は、例えば、1mm以上25mm以下であってもよい。重なり量L2が1mm以上であることにより、口部110の外周側に導かれる熱風の流量を大きくすることができる。このため、複雑な形状を有するネジ部111に殺菌剤ガスを付着させ、殺菌することができる。また、重なり量L2が25mm以下であることにより、ノズル90から殺菌剤をボトル100内に噴霧した際に、ボトル100内の圧力が高くなり過ぎることを抑制することができる。このため、ボトル100を薄肉化した場合であっても、ボトル100が変形してしまうことを抑制することができる。また、重なり量L2が25mm以下であることにより、ノズル90の上下方向に沿った移動距離を短くすることができ、殺菌剤を供給する作業時間を短縮させることができる。また、壁部96がサポートリング112に近づきすぎると、ボトル100の内圧が上昇し、ボトル100が変形する恐れがあるため、壁部96は、少なくともサポートリング112よりも上方に位置していることが好ましい。
【0090】
壁部96は、ボトル100の内圧を高めるために、グリッパ42へ近づけても良い。この場合、上下方向において、壁部96とグリッパ42との間の距離L3は、1mm以上25mm以下であることが好ましい。壁部96とグリッパ42との間の距離L3が1mm以上であることにより、ボトル100内の圧力が高くなり過ぎることを抑制することができる。また、壁部96とグリッパ42との間の距離L3が25mm以下であることにより、殺菌に必要な内圧を十分に確保することができる。また、壁部96とグリッパ42との間の距離L3が25mm以下であることにより、口部110の外周側に導かれる熱風の流量を大きくすることができる。このため、複雑な形状を有するネジ部111に殺菌剤ガスを付着させ、殺菌することができる。
【0091】
また、壁部96の内径をd2とし、口部110の上端における口部110の外径をD2とした場合に、
5mm≦d2-D2≦30mm
という関係を満たしていることが好ましい。
これにより、口部110の外周側に導かれる熱風の流量を効果的に大きくすることができる。また、ノズル90から殺菌剤をボトル100内に噴霧した際に、ボトル100内の圧力が高くなり過ぎることを効果的に抑制することができ、ボトル100を薄肉化した場合であっても、ボトル100が変形してしまうことを抑制することができる。
【0092】
また、ノズル90の先端90aとノズル90の外面90bとの間に、テーパー面90cが形成されている。これにより、ボトル100内に吹き込まれた熱風がボトル100の口部110から外部に吹き出す際に、当該熱風のうちテーパー面90cに吹き付けられた熱風の進行方向が変化し、熱風がボトル100の口部110のサポートリング112に吹き付けられる。ここで、サポートリング112は、他の部位よりも肉厚になっており、薄肉である他の部位に比べて昇温に時間を要する。これに対して、ボトル100内に吹き込まれた熱風をサポートリング112に吹き付けることにより、他の部分よりも肉厚なサポートリング112を効果的に昇温させることができる。これにより、ボトル100の口部110を効率的に昇温することができる。
【0093】
ここで、ノズル90をボトル100内に挿入した際に、サポートリング112は、垂直断面において、ノズル90の先端90aから水平方向に沿って径方向外方に延びる第1仮想線IL1と、ノズル90の先端90aからテーパー面90cに沿って径方向外方に延びる第2仮想線IL2との間に配置されることが好ましい。これにより、サポートリング112に吹き付けられる熱風の風量を多くすることができる。このため、他の部分よりも肉厚なサポートリング112をより効果的に昇温させることができる。この場合、垂直断面において、第1仮想線IL1と第2仮想線IL2とがなす角度θ2は、5°以上80°以下であってもよく、一例として45°であってもよい。
【0094】
また、ノズル90は、ボトル100内に挿入された状態でボトル100に対して殺菌剤を供給するとともに、ボトル100内に挿入されていない状態でボトル100の口部110の天面115に対して殺菌剤を噴霧するように構成されている。これにより、口部110の天面115の殺菌効率を向上させることができる。
【0095】
ノズル90が口部110の天面115に対して殺菌剤を噴霧する際、口部110の天面115とノズル90の先端90aとの間の距離L4(上下方向距離、図7参照)は、2mm以上100mm以下であることが好ましい。これにより、口部110の天面115全体に殺菌剤を付着させることができる。
【0096】
また、ノズル90が口部110の天面115に対して殺菌剤を噴霧する時間は、0.1秒以上5.0秒以下であることが好ましい。ノズル90から殺菌剤を噴霧する時間が0.1秒以上であることにより、十分な補完効果を得ることができる。また、ノズル90から殺菌剤を噴霧する時間が、5.0秒以下であることにより、口部110が変形するリスクを低減することができる。
【0097】
(内容物充填方法)
次に、上述した内容物充填システム10(図1)を用いた内容物充填方法について、図6および図7により説明する。
【0098】
まず、プリフォーム供給装置1により、プリフォーム供給コンベア2を介して、複数のプリフォーム100aが、プリフォーム搬送部31の受取部34に順次供給される(プリフォーム供給工程、図6の符号S1)。この際、プリフォーム100aは、プリフォーム殺菌装置34aにおいて、過酸化水素のミスト又はガスが吹き付けられて殺菌処理された後、ホットエアで乾燥される。
【0099】
次に、プリフォーム100aが加熱部35に送られ、ヒーター35aにより、例えば90℃以上130℃以下程度に加熱される。次いで、加熱部35により加熱されたプリフォーム100aが受渡部36に送られる。そして、プリフォーム100aは、受渡部36からブロー成形部32に送られる。
【0100】
次いで、ブロー成形部32に送られたプリフォーム100aに対して、図示しない金型を用いてブロー成形を施すことにより、ボトル100がブロー成形される(ボトル成形工程、図6の符号S2)。そして、ブロー成形されたボトル100がボトル搬送部33に送られる。
【0101】
次に、殺菌装置11において、ボトル100に対して殺菌剤である過酸化水素水溶液を用いて殺菌処理が行われる(容器殺菌工程、図6の符号S3)。このとき、過酸化水素水溶液は、一旦沸点以上で気化させたガス又はミストであり、ボトル100に向かって供給される。過酸化水素水溶液のミストは、ボトル100の内面および外面に付着し、ボトル100の内外面を殺菌する。
【0102】
この際、まず、搬送機構40によって、ボトル100が搬送される(搬送工程、図6の符号S31)。本実施の形態では、ホイール41に連結されたグリッパ42(図2参照)によって、ボトル100が搬送される。この際、ボトル100は、サポートリング112がグリッパ42によって下方から保持された状態(図5参照)で、搬送される。そして、ボトル100は、図3に示すA点からB点まで移動する。また、この際、図7に示すように、ボトル100は、上下方向において、ノズル90との間に所定の間隔を空けた状態で搬送される。なお、図7において、A点乃至F点は、図3のA点乃至F点にそれぞれ対応している。
【0103】
また、この際、ボトル100の口部110の天面115に対して、ノズル90から殺菌剤を噴霧する(天面殺菌工程、図6の符号S32)。この場合、まず、殺菌剤は、導管57を通過して、ノズル90に供給される。そして、ノズル90に供給された殺菌剤が、ボトル100に供給される。ところで、後述するように、ボトル100内にノズル90が挿入された後、ボトル100を昇温しながら殺菌を行う。一方、この天面殺菌工程で、ボトル100の上方からボトル100に対して殺菌剤を噴霧することで、ボトル100の口部110に対する殺菌を補完することが可能である。なお、上述した搬送工程において、ボトル100がグリッパ42に受け渡されると同時に、ノズル90から殺菌剤がボトル100の口部110の天面115に吹き付けられていてもよい。
【0104】
ここで、図7に示すように、ノズル90から口部110の天面115に対して殺菌剤を噴霧する際(ボトル100がA点からB点まで移動する際)、ノズル90のボトル100に対する上下方向位置は変化しない。すなわち、殺菌剤は、ノズル90とボトル100とが上下方向において所定の間隔を空けた状態で、ノズル90からボトル100に吹き付けられる。この際、口部110の天面115とノズル90の先端90aとの間の距離L4は、2mm以上100mm以下であることが好ましい。これにより、口部110の天面115全体に殺菌剤を付着させることができる。
【0105】
また、この際、ノズル90から殺菌剤を噴霧する時間は、0.1秒以上5.0秒以下であることが好ましい。ノズル90から殺菌剤を噴霧する時間が0.1秒以上であることにより、十分な補完効果を得ることができる。また、ノズル90から殺菌剤を噴霧する時間が、5.0秒以下であることにより、口部110が変形するリスクを低減することができる。
【0106】
次に、搬送されているボトル100内に、殺菌剤を噴霧するためのノズル90が挿入される(ノズル挿入工程、図6の符号S33)。この際、ボトル100は、図3に示すB点からC点まで移動する。また、この際、図7に示すように、ノズル90が下方に移動することにより、ノズル90がボトル100内に挿入される。そして、ノズル90をボトル100内に挿入することにより、ボトル100内を微陽圧にする。ここで、ノズル90からは、殺菌剤が噴霧され続けている。このため、ノズル90をボトル100内に挿入することにより、ボトル100内に噴霧された殺菌剤によって、ボトル100内の圧力が上昇する。また、ノズル90をボトル100内に挿入することにより、ノズル90の体積によって、ボトル100内の圧力が上昇する。このため、ノズル90をボトル100内に挿入することにより、ボトル100内が微陽圧になる。
【0107】
また、ノズル90をボトル100内に挿入することにより、ノズル90に連結された導管57内の静圧と、ボトル100内の圧力とがほぼ同一になる。このため、ノズル90をボトル100内に挿入することによってボトル100内を微陽圧にした場合、導管57内の静圧が高まり、ノズル90から噴霧された殺菌剤がボトル100の口部110から外部に吹き出す際の流速を速くすることができる。これにより、ノズル90から殺菌剤をボトル100内に噴霧した場合に、ボトル100の温度を効果的に向上させることができる。
【0108】
また、この場合、ノズル90をボトル100内に挿入することにより、ボトル100内の圧力は、1kPa以上20kPa以下に保持されることが好ましい。また、ノズル90をボトル100内に挿入することにより、ノズル90内の圧力を0.01kPa以上2.0kPa以下上昇させることが好ましい。
【0109】
次いで、ノズル90が挿入されたボトル100に対して殺菌剤が供給される(殺菌剤供給工程、図6の符号S34)。本実施の形態では、ノズル90からは、殺菌剤が噴霧され続けている。このため、ノズル90をボトル100内に挿入することにより、ボトル100に対して更に殺菌剤が供給される。この際、ボトル100は、図3に示すC点からD点まで移動する。また、この際、図7に示すように、ノズル90のボトル100に対する上下方向位置は変化しない。なお、上述した天面殺菌工程(図6の符号S32)の後、ノズル90からの殺菌剤の噴霧を停止し、上述したノズル挿入工程(図6の符号S33)の後、ノズル90から再び殺菌剤が噴霧されるように構成されていてもよい。この場合、例えば、ノズル90に図示しないバルブを設け、所定のタイミングに合わせて必要な時間のみバルブが開かれるようにしても良い。これにより、殺菌剤の使用量を低減することができる。
【0110】
ここで、ボトル100は、サポートリング112がグリッパ42によって下方から保持された状態で、搬送されている。このため、サポートリング112がグリッパ42によって下方から保持された状態で、ボトル100に対して殺菌剤が供給される。これにより、殺菌剤の風圧によりボトル100が下方に押圧された場合であっても、ボトル100の水平位置が下方にずれてしまうことを抑制することができる。
【0111】
また、ノズル90は、搬送機構40のグリッパ42によって搬送されているボトル100と同期して移動しながら、ボトル100に対して殺菌剤を供給する。さらに、殺菌剤は、ボトル100内が微陽圧に保持された状態でボトル100に供給される。これにより、ボトル100を所望の温度に加熱することができる。
【0112】
また、ノズル90が搬送機構40のグリッパ42によって搬送されているボトル100と同期して移動することにより、ノズル90がボトル100に追従しながら殺菌剤をボトル100に対して供給することができる。これにより、殺菌剤をボトル100の内面に対して効率良く供給することができ、殺菌剤の使用量を低減することができる。また、殺菌剤がボトル100の内面に対して効率良く供給されることにより、殺菌剤の熱によってボトル100を所望の温度に加熱することもできる。
【0113】
この場合、ボトル100内に供給する殺菌剤が過酸化水素ガスの場合、過酸化水素ガスの濃度は、例えば5mg/L以上、600mg/L以下であっても良い。過酸化水素ガスの濃度が5mg/L以上であることにより、殺菌効果を十分に発現させることができる。また、過酸化水素ガスの濃度が600mg/L以下であることにより、残留した過酸化水素を除去するためのホットエアの供給時間が長くなることを抑制することができ、これにより、殺菌装置11および内容物充填システム10の小型化を図ることができる。また、殺菌剤が、過酸化水素のミストの場合、過酸化水素のミストの量は、35重量%換算で、例えば5μL/ボトル以上100μL/ボトル以下であっても良い。過酸化水素のミストの量が5μL/ボトル以上であることにより、殺菌効果を十分に発現させることができる。また、過酸化水素のミストの量が100μL/ボトル以下であることにより、残留した過酸化水素を除去するためのホットエアの供給時間が長くなることを抑制することができ、これにより、殺菌装置11および内容物充填システム10の小型化を図ることができる。
【0114】
また、殺菌剤が35重量%の過酸化水素の場合、ノズル90の1本あたりの殺菌剤の流量は、30L/min以上400L/min以下であっても良く、好ましくは、50L/min以下300L/min以下であっても良い。殺菌剤の流量が30L/min以上であることにより、ボトル100の殺菌効率を向上させることができる。また、殺菌剤の流量が400L/min以下であることにより、ボトル100の殺菌効率を維持しつつ低コスト化を図ることができる。
【0115】
また、殺菌剤の温度は、70℃以上200℃以下であっても良い。殺菌剤の温度が70℃以上であることにより、ボトル100の殺菌効率を向上させることができる。また、殺菌剤の温度が200℃以下であることにより、薄肉化されたボトル100であっても、殺菌剤の熱によってボトル100が変形してしまうことを抑制することができる。
【0116】
さらに、ノズル90が挿入されたボトル100に対して殺菌剤を供給する時間は、0.1秒以上10秒以下であっても良く、好ましくは0.5秒以上10秒以下であってもよい。殺菌剤を供給する時間が0.1秒以上であることにより、ボトル100の殺菌効率を向上させることができる。また、殺菌剤を供給する時間が0.5秒以上であることにより、殺菌剤の熱によってボトル100を効果的に温めることができる。また、殺菌剤を供給する時間が10秒以下であることにより、ボトル100の殺菌効率を維持しつつ殺菌剤を供給する作業時間を短縮させることができる。
【0117】
次に、ボトル100は、図3に示すD点からE点まで移動する。また、この際、図7に示すように、ノズル90が上方に移動することにより、ノズル90がボトル100から取り出される。
【0118】
その後、ボトル100は、図3に示すE点からF点まで移動する。また、この際、図7に示すように、ボトル100は、上下方向において、ノズル90との間に所定の間隔を空けた状態で搬送される。なお、ボトル100が図3に示すD点からF点まで移動する際、上述したように、ノズル90から口部110の天面115に対して殺菌剤を噴霧してもよい(天面殺菌工程、図6の符号S35)。これにより、ボトル100の口部110の殺菌効果を向上させることができる。なお、上述した天面殺菌工程は、ノズル90がボトル100内に挿入される前(上述したノズル挿入工程の前)にのみ行われてもよく、ノズル90をボトル100内から取り出した後(上述した殺菌剤供給工程の後)にのみ行われてもよい。
【0119】
続いて、ボトル100は、エアリンス装置14に送られ、エアリンス装置14において、無菌の加熱エア又は常温エアを供給することにより、過酸化水素の活性化を行いつつ、ボトル100から異物、過酸化水素等が除去される(エアリンス工程、図6の符号S4)。エアリンス工程において、ボトル100内に向かって無菌化された熱風が送り込まれる場合、熱風によりボトル100は内面から加熱され、殺菌剤ミストによる殺菌効果が高まる。また、過酸化水素のボトル100への吸着や浸透が抑制されて過酸化水素がボトル100の内面に浮かび易くなる。さらに、ボトル100の内部に漂っているミストが熱風によりボトル100外へ排出される。この時点では、ボトル100の内面に付着した殺菌剤ミストにより既に殺菌が十分に行われているので、ボトル100の内部空間に漂っているミストを排出しても殺菌効果は損なわれず、むしろ余分なミストを早期に排出することにより、ボトル100の内面への過酸化水素の過剰な吸着や浸透を抑えることができる。なお、必要に応じて、無菌の加熱エア又は常温の無菌化されたエアに、低濃度の過酸化水素の凝結ミストを混ぜて過酸化水素をガス化させて、ボトル100に供給しても良い。
【0120】
無菌の加熱エアに、過酸化水素の凝結ミストを混ぜて過酸化水素をガス化させて、ボトル100に供給する場合、ボトル100内に供給される熱風に含まれる過酸化水素の量は、熱風1Lにつき1mg以上10mg以下であることが好ましく、2mg以上8mg以下であることがより好ましい。また、当該加熱エアをボトル100に供給する時間は、ボトル100の内部に漂っている殺菌剤をすべて排出でき、かつ殺菌剤による殺菌不良を補うことができる範囲で行えばよい。熱風の温度は、ボトル100内の過酸化水素を除去する観点からはボトル100が変形しない範囲でなるべく高温に設定することが望ましい。例えば、ボトル100がPETボトルの場合、エアリンスに使用される熱風の温度は50℃以上150℃未満の範囲に、好ましくは75℃以上120℃未満の範囲に設定することが好ましい。また、ボトル100がHDPEボトルの場合、エアリンスに使用される熱風の温度は100℃以上200℃未満の範囲に、好ましくは110℃以上180℃未満の範囲に設定することが好ましい。熱風と過酸化水素のガスの温度がボトル100の耐熱温度以上である場合、その吹き込み時間があまり長いとボトル100が耐熱温度を超えて加熱され、変形等を生じることがあるので注意を要する。熱風と過酸化水素のガスの吹き込み時間は例えば2秒以上5秒以下に設定される。また、本実施形態において、殺菌剤ミストの導入を停止した後、熱風の吹き込みを開始するまでの時間は短いほど望ましい。その時間は長くても10秒以内、望ましくは5秒以内に設定することが望ましい。
【0121】
次いで、ボトル100は、無菌水リンス装置15に搬送される。この無菌水リンス装置15において、無菌の15℃以上85℃以下程度の水による洗浄(リンス)が施される(無菌水リンス工程、図6の符号S5)。具体的には、無菌の15℃以上85℃以下程度の水が、5L/min以上かつ15L/min以下の流量でボトル100内に供給される。その際、好ましくは、ボトル100は倒立状態とされ、下向きになった口部110からボトル100内へ無菌水が供給され、この無菌水は口部110からボトル100の外方に流出する。この温水によって、ボトル100に付着した過酸化水素を洗い流し、且つ異物が除去される。なお、無菌水によるボトル100の洗浄は、無菌水を流しつつ行うものに限定されない。また、無菌水リンス工程における無菌水の残水を除去するために、無菌水でボトル100をリンスした後に、ボトル100に無菌エアを供給してもよい。この場合、例えば、図示しない無菌エア供給装置から無菌エアを0.1MPa以上の圧力でボトル100に供給し、0.5秒以上ブローすることで残水を除去しても良い。また、この無菌エアを無菌窒素に置き換えることで、ボトル100内の酸素濃度を低減することも可能である。
【0122】
続いて、ボトル100は、充填装置20に搬送される。この充填装置20において、ボトル100は回転(公転)されながら、その口部110からボトル100内へ内容物が充填される(充填工程、図6の符号S6)。
【0123】
この充填装置20でボトル100に充填される前に、予め内容物が調合され、加熱殺菌処理が行われる。加熱温度は、一般的に内容物の酸性度がpH4.0未満の場合は60℃以上かつ120℃以下程度、pH4.0以上の場合は115℃以上かつ150℃以下程度とされる。これにより、充填前の内容物中の製品ボトル101内で発育しうる微生物が全て殺菌される。加熱殺菌処理された内容物は、3℃以上かつ40℃以下程度の温度まで冷却される。
【0124】
充填装置20においては、殺菌されたボトル100に、上記殺菌処理され常温まで冷やされた内容物が常温で充填される。充填時の内容物の温度は、例えば3℃以上かつ40℃以下程度である。
【0125】
続いて、内容物が充填されたボトル100は、搬送ホイール12によってキャップ装着装置16に搬送される。
【0126】
一方、キャップ80は、予めキャップ殺菌装置18によって殺菌処理される(キャップ殺菌工程、図6の符号S7)。この間、まずキャップ80は、内容物充填システム10の外部からキャップ殺菌装置18に搬入される。続いて、キャップ80は、キャップ殺菌装置18において、過酸化水素のミスト又はガスが吹き付けられて、その内外面が殺菌処理された後、ホットエアで乾燥し、キャップ装着装置16に送られる。
【0127】
次いで、キャップ装着装置16において、充填装置20から搬送されてきたボトル100の口部110に殺菌済みのキャップ80を装着することにより、ボトル100が閉栓され製品ボトル101が得られる(閉栓工程、図6の符号S8)。
【0128】
その後、製品ボトル101は、キャップ装着装置16から製品ボトル搬出部22へ搬送され、内容物充填システム10の外部へ向けて搬出される(ボトル排出工程、図6の符号S9)。そして、製品ボトル101は、図示しない包装ラインへと運ばれ、包装される。
【0129】
なお、上記容器殺菌工程からボトル排出工程に至る各工程は、殺菌剤噴霧チャンバ70c、第1殺菌剤除去チャンバ70d、第2殺菌剤除去チャンバ70e、無菌チャンバ70fまたは出口チャンバ70gで囲まれた無菌の雰囲気内すなわち無菌の環境下で行われる。この殺菌剤噴霧チャンバ70c、第1殺菌剤除去チャンバ70d、第2殺菌剤除去チャンバ70e、無菌チャンバ70fおよび出口チャンバ70g内は、予め過酸化水素、過酢酸の噴霧、温水の放水等により、殺菌処理されている。そして、殺菌処理後は無菌エアが常時殺菌剤噴霧チャンバ70c、第1殺菌剤除去チャンバ70d、第2殺菌剤除去チャンバ70e、無菌チャンバ70fおよび出口チャンバ70g外に向かって吹き出るように、殺菌剤噴霧チャンバ70c、第1殺菌剤除去チャンバ70d、第2殺菌剤除去チャンバ70e、無菌チャンバ70fおよび出口チャンバ70g内に陽圧の無菌エアが供給される。この場合、雰囲気遮断チャンバ70b、殺菌剤噴霧チャンバ70c、及び出口チャンバ70gで、各チャンバ内の無菌エアとボトル殺菌で使用された殺菌剤とを排気する。その際、第1殺菌剤除去チャンバ70d、第2殺菌剤除去チャンバ70eおよび無菌チャンバ70fが、それぞれ1Pa以上、好ましくは10Pa以上の陽圧になるように調整する。なお、この際、第1殺菌剤除去チャンバ70d等と同様に、出口チャンバ70gが、1Pa以上、好ましくは10Pa以上の陽圧になるように調整されてもよい。
【0130】
なお、内容物充填システム10におけるボトル100の生産(搬送)速度は、100bpm以上かつ1500bpm以下とすることが好ましい。ここでbpm(bottle per minute)とは、1分間当たりのボトル100の搬送速度をいう。
【0131】
以上のように本実施の形態によれば、供給部50は、殺菌剤を噴霧するためのノズル90を有し、ノズル90は、ボトル100内に挿入されることにより、ボトル100内を微陽圧にする。この場合、ノズル90をボトル100内に挿入することにより、ノズル90に連結された導管57内の静圧と、ボトル100内の圧力とがほぼ同一になる。このため、ノズル90をボトル100内に挿入することによってボトル100内を微陽圧にした場合、導管57内の静圧が高まり、ノズル90から噴霧された殺菌剤がボトル100の口部110から外部に吹き出す際の流速を速くすることができる。これにより、ノズル90から殺菌剤をボトル100内に噴霧した場合に、ボトル100の温度を効率よく向上させることができる。この結果、ボトル100の殺菌効率を向上させることができる。
【0132】
また、本実施の形態によれば、ノズル90が、ノズル90の先端90aを構成する小径部91と、小径部91よりも殺菌剤の流れ方向上流側に位置し、小径部91よりも内径が大きい大径部92と、大径部92と小径部91との間に位置し、殺菌剤の流れ方向下流側に向かうにつれて内径が徐々に小さくなる縮径部93とを含んでいる。これにより、ノズル90から吹き付けられる殺菌剤の流速を速くすることができる。このため、ノズル90から殺菌剤をボトル100内に噴霧した場合に、ボトル100の温度を更に効果的に向上させることができる。
【0133】
また、本実施の形態によれば、ノズル90には、ノズル90から径方向に突出するフランジ部95と、フランジ部95の周縁からノズル90の先端90a側に突出する環状の壁部96とが設けられている。このような傘状のノズル90の場合、ボトル100内に供給された熱風のうち、ボトル100の口部110からボトル100の外部に吹き出す熱風を口部110の外周側に導くことができる。これにより、口部110の予備加熱及び殺菌を効果的に行うことができる。このため、ボトル100の外面と内面との境界部分を効率良くかつ確実に殺菌することができる。
【0134】
また、本実施の形態によれば、ノズル90の先端90aとノズル90の外面90bとの間に、テーパー面90cが形成されている。これにより、ボトル100内に吹き込まれた熱風を、ボトル100の口部110のサポートリング112に吹き付けることができる。このため、他の部分よりも肉厚なサポートリング112を効果的に昇温させることができる。これにより、ボトル100の口部110を効率的に昇温することができる。
【0135】
また、本実施の形態によれば、ノズル90をボトル100内に挿入した際に、サポートリング112は、垂直断面において、ノズル90の先端90aから水平方向に沿って径方向外方に延びる第1仮想線IL1と、ノズル90の先端90aからテーパー面90cに沿って径方向外方に延びる第2仮想線IL2との間に配置される。これにより、サポートリング112に吹き付けられる熱風の風量を多くすることができる。このため、他の部分よりも肉厚なサポートリング112をより効果的に昇温させることができる。
【0136】
また、本実施の形態によれば、グリッパ42が、サポートリング112を下方から保持する。このため、サポートリング112がグリッパ42によって下方から保持された状態で、ボトル100に対して殺菌剤が供給される。これにより、殺菌剤の風圧によりボトル100が下方に押圧された場合であっても、ボトル100の水平位置が下方にずれてしまうことを抑制することができる。
【0137】
さらに、本実施の形態によれば、ノズル90は、ボトル100内に挿入された状態でボトル100に対して殺菌剤を供給するとともに、ボトル100内に挿入されていない状態でボトル100の口部110の天面115に対して殺菌剤を噴霧する。これにより、口部110の天面115の殺菌効率を向上させることができる。
【0138】
なお、上述した実施の形態において、ノズル挿入工程の後に、殺菌剤供給工程が行われる例について説明したが、供給部50は、ボトル100に対して殺菌剤を供給する前に、ボトル100を加熱してもよい。これにより、ボトル100の温度を所望の温度まで容易に向上させることができる。この結果、ボトル100の殺菌効率を更に向上させることができる。
【0139】
この場合、供給部50は、熱風によってボトル100を加熱してもよい。例えば、供給部50は、ノズル90から熱風をボトル100内に供給することにより、ボトル100を加熱してもよく、図示しない加熱機構により、ボトル100を加熱してもよい。あるいは、供給部50は、赤外線によってボトル100を加熱してもよい。
【0140】
本変形例では、内容物を充填する際、例えば、図6の符号S1~符号S2と同様に、プリフォーム供給工程(図8の符号S11)、ボトル成形工程(図8の符号S12)を順に行う。
【0141】
次に、殺菌装置11において、ボトル100に対して殺菌剤である過酸化水素水溶液を用いて殺菌処理が行われる(容器殺菌工程、図8の符号S13)。
【0142】
この際、まず、図6の符号S31~符号S33と同様に、搬送工程(図8の符号S131)、天面殺菌工程(図8の符号S132)、ノズル挿入工程(図8の符号S133)を順に行う。
【0143】
次に、ボトル100を加熱する(予備加熱工程、図8の符号S134)。この際、ボトル100は、例えば、熱風によって加熱される。このように、ボトル100に殺菌剤を供給する前に、ボトル100を加熱することにより、ボトル100の温度を所望の温度まで容易に向上させることができる。この結果、ボトル100の殺菌効率を更に向上させることができる。ボトル100の予備加熱工程は、上述した図5のように、ボトル100にノズル90を追従させながら、ノズル90をボトル100内に挿入して行っても良い。この場合、ボトル100全体を昇温することが可能である。あるいは、ノズル90をボトル100内に挿入することなく、非挿入の状態のままノズル90をボトル100に追従させる方法でも良い。この場合、ボトル100の成形後の温度が低くなり得る口部110を積極的に昇温することができる。
【0144】
次いで、図6の符号S34~S35と同様に、殺菌剤供給工程(図8の符号S135)、天面殺菌工程(図8の符号S136)を順に行う。
【0145】
その後、図6の符号S4~符号S9と同様に、エアリンス工程(図8の符号S14)、無菌水リンス工程(図8の符号S15)、充填工程(図8の符号S16)、キャップ殺菌工程(図8の符号S17)、閉栓工程(図8の符号S18)、ボトル排出工程(図8の符号S19)を順に行う。このようにして、ボトル100が閉栓され製品ボトル101が得られる。
【0146】
本変形例によれば、ボトル100に殺菌剤を供給する前に、ボトル100を加熱することにより、ボトル100の温度を所望の温度まで容易に向上させることができる。このため、ボトル100の殺菌効率を更に向上させることができる。
【0147】
また、上述した実施の形態において、容器の殺菌装置としては過酸化水素殺菌および温水殺菌を行う殺菌装置を用いる場合について説明したが、これに限らない。例えば、容器の殺菌装置が、ボトルの内外面を過酢酸溶液(またはガス、ミスト若しくはこれらの混合物)で殺菌した後、内外面を無菌水リンスする過酢酸殺菌方式を行う殺菌装置であっても良い。あるいは、容器の殺菌装置が、殺菌剤として過酸化水素やエタノール以外に、過酢酸、酢酸、過硝酸、硝酸、次亜塩素酸ナトリウム、塩素、苛性ソーダ等を単体で用いる殺菌装置であっても良く、またこれらのうち2種以上を組み合わせた殺菌剤を用いる殺菌装置であっても良い。また、殺菌装置は、ボトルを殺菌するだけでなくプリフォームやカップ、パウチ、紙容器、或いはこれらの複合体の殺菌で用いられても良い。
【0148】
また、上述した実施の形態において、搬送機構40が、回転可能なホイール41と、ホイール41に連結され、ボトル100を保持しながら搬送するグリッパ42と、を有している例について説明したが、これに限られない。例えば、搬送機構40として、スターホイール(保持部材)やコンベアが採用されても良い。
【0149】
さらに、上述した実施の形態において、内容物充填システム10がボトル成形部30を備えている場合について説明したが、これに限られない。例えば、内容物充填システムが、成形された空のボトル100を外部からエア搬送等で順次受け入れ、受け入れたボトル100を殺菌装置11へ向けて搬送するように構成されていても良い。この場合においても、上述した効果を得ることができる。とりわけ、内容物充填システム10が、成形された空のボトル100を外部から順次受け入れる場合、殺菌装置11により殺菌されるボトル100は、ブロー成形による熱が冷めている場合がある。この場合においても、殺菌剤の熱によってボトル100を所望の温度に加熱することができるため、ブロー成形部32の下流側に温調設備を設けることなく、ボトル100の殺菌効率を向上させることができる。
【0150】
上記実施の形態および変形例に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組合せることも可能である。あるいは、上記実施の形態および変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0151】
10 内容物充填システム
11 容器殺菌装置
16 キャップ装着装置
20 充填装置
40 搬送機構
42 グリッパ
50 供給部
80 キャップ
90 ノズル
90a 先端
90b 外面
90c テーパー面
91 小径部
92 大径部
93 縮径部
95 フランジ部
96 壁部
100 ボトル
110 口部
115 天面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8