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特許7406735加飾フィルム、加飾成形品、加飾表示部品、加飾表示システム、加飾表示部品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】加飾フィルム、加飾成形品、加飾表示部品、加飾表示システム、加飾表示部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20231221BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20231221BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20231221BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/30 A
B32B27/00 104
B32B27/30 B
B32B3/30
B29C45/14
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023534827
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(86)【国際出願番号】 JP2022027475
(87)【国際公開番号】W WO2023286790
(87)【国際公開日】2023-01-19
【審査請求日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2021115151
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】石黒 将平
(72)【発明者】
【氏名】阿竹 浩之
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-055151(JP,A)
【文献】米国特許第06277312(US,B1)
【文献】特開平11-116826(JP,A)
【文献】特開2004-142130(JP,A)
【文献】特開2000-141402(JP,A)
【文献】特開2003-071956(JP,A)
【文献】特開2019-202705(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10155906(DE,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0107159(KR,A)
【文献】特開2008-197346(JP,A)
【文献】特開2018-069650(JP,A)
【文献】特開平04-066992(JP,A)
【文献】米国特許第04172169(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 3/30
B32B 27/00
B32B 27/30
B29C 45/00
B29C 45/14
G09F 13/00-13/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザーエッチングを施される加飾フィルムであって、
電離放射線硬化性樹脂の硬化物を含む第1トップ層と、
前記第1トップ層と積層された透明な第2トップ層と、
前記第1トップ層および前記第2トップ層との間に位置する意匠層と、を備え、
前記第1トップ層と前記第2トップ層とが互いに接触しておらず、
前記第2トップ層の厚みは、1μm以上500μm以下であり、
前記第2トップ層は、ポリメタクリル酸メチルのフィルムである、加飾フィルム。
【請求項2】
前記第2トップ層は、前記レーザーエッチングによって前記第1トップ層および前記意匠層を部分的に除去した後に、前記第1トップ層とともに表面を形成する、請求項1に記載の加飾フィルム。
【請求項3】
前記第2トップ層と積層され、熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂層を更に備え、
前記第2トップ層は、前記意匠層と前記熱可塑性樹脂層との間に位置する、請求項1又は2に記載の加飾フィルム。
【請求項4】
レーザーエッチングを施される加飾フィルムであって、
電離放射線硬化性樹脂の硬化物を含む第1トップ層と、
前記第1トップ層と積層された透明な第2トップ層と、
前記第1トップ層および前記第2トップ層との間に位置する意匠層と、を備え、
前記第1トップ層と前記第2トップ層とが互いに接触しておらず、
前記第2トップ層は、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体を含むベース層と、前記ベース層を被覆した被覆層と、を有し、
前記被覆層は、前記ベース層と前記意匠層との間に位置する、加飾フィルム。
【請求項5】
電離放射線硬化性樹脂の硬化物を含む第1トップ層と、
前記第1トップ層と積層された透明な第2トップ層と、
前記第1トップ層および前記第2トップ層との間に位置する意匠層と、
前記第2トップ層と積層され、熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂層と、を備え、
前記第2トップ層は、前記意匠層と前記熱可塑性樹脂層との間に位置し、
前記第1トップ層と前記第2トップ層とが互いに接触しておらず、
前記第2トップ層は、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体を含むベース層と、前記ベース層を被覆した被覆層と、を有し、
前記被覆層は、前記ベース層と前記意匠層との間に位置する、加飾フィルム。
【請求項6】
レーザーエッチングを施される加飾フィルムであって、
電離放射線硬化性樹脂の硬化物を含む第1トップ層と、
前記第1トップ層と積層された透明な第2トップ層と、
前記第1トップ層および前記第2トップ層との間に位置する意匠層と、を備え、
前記第1トップ層と前記第2トップ層とが互いに接触しておらず、
前記第2トップ層は、アクリル樹脂を含むベース層と、前記ベース層を被覆した被覆層と、を有し、
前記被覆層は、前記ベース層と前記意匠層との間に位置する、加飾フィルム。
【請求項7】
電離放射線硬化性樹脂の硬化物を含む第1トップ層と、
前記第1トップ層と積層された透明な第2トップ層と、
前記第1トップ層および前記第2トップ層との間に位置する意匠層と、
前記第2トップ層と積層され、熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂層と、を備え、
前記第2トップ層は、前記意匠層と前記熱可塑性樹脂層との間に位置し、
前記第1トップ層と前記第2トップ層とが互いに接触しておらず、
前記第2トップ層は、アクリル樹脂を含むベース層と、前記ベース層を被覆した被覆層と、を有し、
前記被覆層は、前記ベース層と前記意匠層との間に位置する、加飾フィルム。
【請求項8】
前記第1トップ層は、第1層と、前記第1層の一部分と積層された第2層と、を有し、
前記第1層及び前記第2層は、この順で、前記意匠層と積層され、
前記第1層の光沢度は、前記第2層の光沢度と異なる、請求項1、4~7のいずれか一項に記載の加飾フィルム。
【請求項9】
前記第1トップ層は、複数の凸部を有する盛上層を更に有し、
前記複数の凸部は間隔をあけて配置され、
前記凸部の厚みは、5μm以上50μm以下である、請求項に記載の加飾フィルム。
【請求項10】
第1トップ層によって構成される表面が凹凸を有する、請求項1、4~7のいずれか一項に記載の加飾フィルム。
【請求項11】
前記第2トップ層に積層された第2意匠層を更に備え、
前記第2トップ層は、前記意匠層と前記第2意匠層との間に位置する、請求項1、4~7のいずれか一項に記載の加飾フィルム。
【請求項12】
請求項1、4~7のいずれか一項に記載された加飾フィルムと、
前記加飾フィルムと積層され、熱可塑性樹脂を含む樹脂部と、を備える、加飾成形品。
【請求項13】
請求項12に記載された加飾成形品を備え、
前記第2トップ層は、前記第1トップ層及び前記意匠層を貫通する穴から露出する、加飾表示部品。
【請求項14】
前記第2トップ層は、前記第1トップ層及び前記意匠層に設けられた穴から露出して前記加飾表示部品の表面を形成する、請求項13に記載の加飾表示部品。
【請求項15】
請求項1、4~7のいずれか一項に記載された加飾フィルムと、射出成形によって形成される樹脂部と、を接合して加飾成形品を作製する工程と、
レーザーエッチングによって前記第1トップ層および前記意匠層を部分的に除去し、表面の一部分を前記第2トップ層によって形成する、工程と、を備える、加飾表示部品の製造方法。
【請求項16】
前記加飾成形品を作製する工程において、前記加飾フィルムを収容したキャビティ内に加熱した熱可塑性樹脂を供給して前記加飾成形品を作製する、請求項15に記載の加飾表示部品の製造方法。
【請求項17】
前記加飾フィルムを予備成形して変形させる工程を更に備え、
予備成形された前記加飾フィルムが前記キャビティ内に収容される、請求項16に記載の加飾表示部品の製造方法。
【請求項18】
前記加飾フィルムを作製する工程を更に備え、
前記加飾フィルムを作製する工程は、第2トップ層上に印刷によって前記意匠層を形成する工程と、前記意匠層上に電離放射線硬化性樹脂を含む組成物を塗布して硬化させる工程と、を有する、請求項15に記載の加飾表示部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾フィルム、加飾成形品、加飾表示部品、加飾表示システム、加飾表示部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(JP2002-46145A)に開示されているように、印刷が施された加飾部と、印刷が施されていない非加飾部と、を有する加飾フィルムが知られている。特許文献1の加飾フィルムは、射出成形によって形成される樹脂部と接合され、樹脂部とともに加飾表示部品を構成する。特許文献1において、加飾表示部品は光源に対面して配置される。光源からの光によって加飾シートが背面から照明される。このとき、非加飾部のパターンに対応したパターンでの表示が行われる。
【0003】
特許文献1では、インサート成形によって加飾表示部品を製造している。この例において、加飾部及び非加飾部を有した加飾フィルムをインサート成形に用いられる型に対して位置決めする必要がある。また、特許文献1の製造方法に代え、加飾表示部品は、予め成形された樹脂部に対して加飾フィルムを貼り付けることによっても製造され得る。しかしながら、この製造方法においても、加飾フィルムを樹脂部に対して位置決めする必要がある。加飾フィルム及び樹脂部の位置関係が適切でない場合、加飾表示部品に期待した意匠性も得られない。
【発明の開示】
【0004】
本開示は、加飾表示部品の意匠性の改善を目的とする。
【0005】
本開示の一実施の形態による第1の加飾フィルムは、
レーザーエッチングを施される加飾フィルムであって、
電離放射線硬化性樹脂の硬化物を含む第1トップ層と、
前記第1トップ層と積層された透明な第2トップ層と、
前記第1トップ層および前記第2トップ層との間に位置する意匠層と、を備える。
【0006】
本開示の一実施の形態による第2の加飾フィルムは、
電離放射線硬化性樹脂の硬化物を含む第1トップ層と、
前記第1トップ層と積層された透明な第2トップ層と、
前記第1トップ層および前記第2トップ層との間に位置する意匠層と、
前記第2トップ層と積層され、熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂層と、を備え、
前記第2トップ層は、前記意匠層と前記熱可塑性樹脂層との間に位置する。
【0007】
本開示の一実施の形態による加飾成形品は、
本開示の一実施の形態によるいずれかの加飾フィルムと、
前記加飾フィルムと積層され、熱可塑性樹脂を含む樹脂部と、を備える。
【0008】
本開示の一実施の形態による第1の加飾表示部品は、
本開示の一実施の形態による加飾成形品を備え、
前記第2トップ層は、前記第1トップ層及び前記意匠層を貫通する穴から露出する。
【0009】
本開示の一実施の形態による第2の加飾表示部品は、
加飾フィルムと、
加飾フィルムと積層され、熱可塑性樹脂を含む樹脂部と、を備え、
前記加飾フィルムは、
電離放射線硬化性樹脂の硬化物を含む第1トップ層と、
前記第1トップ層と積層された透明な第2トップ層と、
前記第1トップ層および前記第2トップ層との間に位置する意匠層と、を含み、
前記第2トップ層は、前記意匠層と前記樹脂部との間に位置し、
前記第2トップ層は、前記第1トップ層及び前記意匠層を貫通する穴から露出する。
【0010】
本開示の一実施の形態による加飾表示システムは、
本開示の一実施の形態による第1又は第2の加飾表示部品と、
前記加飾表示部品に光を照射する光源と、を備える。
【0011】
本開示の一実施の形態による加飾表示部品の製造方法は、
本開示の一実施の形態による加飾フィルムと、射出成形によって形成される樹脂部と、を接合して加飾成形品を作製する工程と、
レーザーエッチングによって前記第1トップ層および前記意匠層を部分的に除去し、表面の一部分を前記第2トップ層によって形成する、工程と、を備える。
【0012】
本開示によれば、加飾表示部品の意匠性を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、一実施の形態を説明する図であって、加飾システムの一例を概略的に示す斜視図である。
図2図2は、図1の加飾表示システムを正面から示す平面図であり、光源の消灯時を示している。
図3図3は、図1の加飾表示システムを正面から示す平面図であり、光源の点灯時を示している。
図4図4は、図1の加飾表示システムを示す部分断面図である。
図5図5は、図4に示された加飾フィルムの製造方法の一例を示す図である。
図6図6は、図4に示された加飾フィルムの製造方法の一例を示す図である。
図7図7は、図4に示された加飾フィルムの製造方法の一例を示す図である。
図8図8は、図4に示された加飾フィルムの製造方法の一例を示す図である。
図9図9は、図4に示された加飾表示部品の製造方法の一例を示す図であって、予備成形を説明する図である。
図10図10は、図4に示された加飾表示部品の製造方法の一例を示す図であって、予備成形を説明する図である。
図11図11は、図4に示された加飾表示部品の製造方法の一例を示す図であって、予備成形を説明する図である。
図12図12は、図4に示された加飾表示部品の製造方法の一例を示す図であって、予備成形を説明する図である。
図13図13は、図4に示された加飾表示部品の製造方法の一例を示す図であって、インサート成形を説明する図である。
図14図14は、図4に示された加飾表示部品の製造方法の一例を示す図であって、インサート成形を説明する図である。
図15図15は、図4に示された加飾表示部品の製造方法の一例を示す図であって、インサート成形を説明する図である。
図16図16は、図4に示された加飾表示部品の製造方法の一例を示す図であって、インサート成形を説明する図である。
図17図17は、図4に示された加飾表示部品の製造方法の一例を示す図であって、レーザーエッチングを説明する図である。
図18図18は、図4と同様の断面を示す断面図であって、加飾フィルムの一変形例を示す図である。
図19図19は、図4と同様の断面を示す断面図であって、加飾フィルムの他の変形例を示す図である。
図20図20は、図4と同様の断面を示す断面図であって、加飾フィルムの更に他の変形例を示す図である。
図21図21は、図4と同様の断面を示す断面図であって、加飾フィルムの更に他の変形例を示す図である。
図22図22は、図4と同様の断面を示す断面図であって、加飾フィルムの更に他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の一実施の形態は、次の[1]~[22]に関する。
【0015】
[1] レーザーエッチングを施される加飾フィルムであって、
電離放射線硬化性樹脂の硬化物を含む第1トップ層と、
前記第1トップ層と積層された透明な第2トップ層と、
前記第1トップ層および前記第2トップ層との間に位置する意匠層と、を備える、加飾フィルム。
【0016】
[2] 前記第2トップ層は、前記レーザーエッチングによって前記第1トップ層および前記意匠層を部分的に除去した後に、前記第1トップ層とともに表面を形成する、[1]の加飾フィルム。
【0017】
[3] 前記第2トップ層と積層され、熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂層を更に備え、
前記第2トップ層は、前記意匠層と前記熱可塑性樹脂層との間に位置する、[1]又は[2]の加飾フィルム。
【0018】
[4] 電離放射線硬化性樹脂の硬化物を含む第1トップ層と、
前記第1トップ層と積層された透明な第2トップ層と、
前記第1トップ層および前記第2トップ層との間に位置する意匠層と、
前記第2トップ層と積層され、熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂層と、を備え、
前記第2トップ層は、前記意匠層と前記熱可塑性樹脂層との間に位置する、加飾フィルム。
【0019】
[5] 前記熱可塑性樹脂層の厚みは、100μm以上1000μm以下である、[3]又は[4]の加飾フィルム。
【0020】
[6] 前記第2トップ層は、アクリル樹脂を含む、[1]~[5]のいずれかの加飾フィルム。
【0021】
[7] 前記第2トップ層は、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体を含むベース層と、前記ベース層を被覆した被覆層と、を有し、
前記被覆層は、前記ベース層と前記意匠層との間に位置する、[1]~[6]のいずれかの加飾フィルム。
【0022】
[8] 前記第2トップ層は、アクリル樹脂を含むベース層と、前記ベース層を被覆した被覆層と、を有し、
前記被覆層は、前記ベース層と前記意匠層との間に位置する、[1]~[6]のいずれかの加飾フィルム。
【0023】
[9] 前記第1トップ層は、第1層と、前記第1層の一部分と積層された第2層と、を有し、
前記第1層及び前記第2層は、この順で、前記意匠層と積層され、
前記第1層の光沢度は、前記第2層の光沢度と異なる、[1]~[8]のいずれかの加飾フィルム。
【0024】
[10] 前記第1トップ層は、複数の凸部を有する盛上層を更に有し、
前記複数の凸部は間隔をあけて配置され、
前記凸部の厚みは、5μm以上50μm以下である、[9]の加飾フィルム。
【0025】
[11] 本開示の一実施の形態による加飾フィルムにおいて、第1トップ層によって構成される表面が凹凸を有する、[1]~[10]のいずれかの加飾フィルム。
【0026】
[12] 前記第2トップ層に積層された第2意匠層を更に備え、
前記第2トップ層は、前記意匠層と前記第2意匠層との間に位置する、[1]~[11]のいずれかの加飾フィルム。
【0027】
[13] [1]~[12]のいずれかの加飾フィルムと、
前記加飾フィルムと積層され、熱可塑性樹脂を含む樹脂部と、を備える、加飾成形品。
【0028】
[14] [13]の加飾成形品を備え、
前記第2トップ層は、前記第1トップ層及び前記意匠層を貫通する穴から露出する、加飾表示部品。
【0029】
[15] 加飾フィルムと、
加飾フィルムと積層され、熱可塑性樹脂を含む樹脂部と、を備え、
前記加飾フィルムは、
電離放射線硬化性樹脂の硬化物を含む第1トップ層と、
前記第1トップ層と積層された透明な第2トップ層と、
前記第1トップ層および前記第2トップ層との間に位置する意匠層と、を含み、
前記第2トップ層は、前記意匠層と前記樹脂部との間に位置し、
前記第2トップ層は、前記第1トップ層及び前記意匠層を貫通する穴から露出する、加飾表示部品。
【0030】
[16] 前記第2トップ層は、前記第1トップ層及び前記意匠層に設けられた穴から露出して前記加飾表示部品の表面を形成する、[14]又は[15]に記載の加飾表示部品。
【0031】
[17] 前記樹脂部の厚みは、前記第2トップ層の厚みより大きい、[14]~[16]のいずれかの加飾表示部品。
【0032】
[18] [14]~[17]のいずれかの加飾表示部品と、
前記加飾表示部品に光を照射する光源と、を備える、加飾表示システム。
【0033】
[19] [1]~[12]のいずれかの加飾フィルムと、射出成形によって形成される樹脂部と、を接合して加飾成形品を作製する工程と、
レーザーエッチングによって前記第1トップ層および前記意匠層を部分的に除去し、表面の一部分を前記第2トップ層によって形成する、工程と、を備える、加飾表示部品の製造方法。
【0034】
[20] 前記加飾成形品を作製する工程において、前記加飾フィルムを収容したキャビティ内に加熱した熱可塑性樹脂を供給して前記加飾成形品を作製する、[19]の加飾表示部品の製造方法。
【0035】
[21] 前記加飾フィルムを予備成形して変形させる工程を更に備え、
予備成形された前記加飾フィルムが前記キャビティ内に収容される、[20]の加飾表示部品の製造方法。
【0036】
[22] 前記加飾フィルムを作製する工程を更に備え、
前記加飾フィルムを作製する工程は、第2トップ層上に印刷によって前記意匠層を形成する工程と、前記意匠層上に電離放射線硬化性樹脂を含む組成物を塗布して硬化させる工程と、を有する、[19]~[21]の加飾表示部品の製造方法。
【0037】
以下、図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。また、図面間で、縮尺および縦横の寸法比等が異なることもある。
【0038】
本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「直交」、「同一」等の用語や長さの値等については、厳密な意味に限定されることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈する。
【0039】
本明細書において、「フィルム」、「シート」及び「板」等の用語は、呼称の違いのみに基づいて互いから区別されない。例えば「加飾フィルム」は、加飾シート又は加飾板と呼ばれる部材等と呼称の違いのみにおいて区別され得ない。
【0040】
方向の関係を図面間で明確にするため、いくつかの図面には、共通する符号を付した矢印により共通する方向を示している。矢印の先端側が、各方向の一側となる。図面の紙面に垂直な方向に沿って紙面から手前に向かう矢印を、例えば図2に示すように、円の中に点を設けた記号により示した。図面の紙面に垂直な方向に沿って紙面の奥に向かう矢印を、例えば図4に示すように、円の中に×を設けた記号により示した。
【0041】
図1図22は一実施の形態を説明する図である。図1は、加飾表示システムの一具体例を概略的に示す斜視図である。
【0042】
加飾表示部品20は加飾フィルム40を含んでいる。加飾フィルム40は意匠を表示する。加飾フィルム40は、加飾フィルム40によって表現される意匠を形成された意匠層60を含んでいる。図1図4に示すように、加飾表示部品20は、意匠部21及び表示部22を含んでいる。意匠部21は、意匠層60が設けられている領域である。意匠部21は、意匠層60によって意匠を表示する。図4に示されるように、加飾フィルム40は、意匠層60が存在しない非形成部42を含んでいる。表示部22は、非形成部42が位置する領域である。表示部22及び非形成部42は、意匠層60に設けられた穴43によって構成されている。
【0043】
図1に示すように、加飾表示システム10は、光源15及び加飾表示部品20を有している。光源15は、発光ダイオード(LED)や冷陰極管のような発光体でもよい。光源15は、発光体と、発光体からの光の配向を調整する光学部材と、を有してもよい。光源15は、面状に光を発光する面光源装置でもよい。図1及び図4に示すように、光源15は、加飾表示部品20によって第3方向D3から覆われている。光源15は、加飾フィルム40を観察する観察者から、加飾フィルム40によって隠蔽されている。図4に示すように、光源15は、加飾表示部品20の表示部22と第3方向D3に対面している。
【0044】
図2は、光源15が消灯している状態を示している。光源15が配置されている領域は、加飾表示部品20や加飾表示部品20の周囲に位置する部材等によって覆われていてもよい。光源15が配置された領域は、加飾表示部品20で覆われて暗くなる。このとき、加飾表示部品20の意匠部21は暗く観察される。したがって、加飾表示部品20は光源15を隠蔽し、表示部22は目立ちにくくなる。観察者は、加飾表示部品20の意匠部21に、加飾フィルム40によって表示される意匠を観察し易い。図示された例では、加飾フィルム40によって、木目柄が表現されている。
【0045】
図3は、光源15が点灯している状態を示している。加飾表示部品20の表示部22は可視光透過性を有している。したがって、光源15からの光は、意匠部21を透過する。これにより、観察者は、表示部22を明るく観察できる。すなわち、表示部22のパターンが表示される。図示された例において、十字、三角形および四角形が表示されている。
【0046】
本明細書で用いる「可視光透過性」とは、可視光透過率が、50%以上であることを意味し、好ましくは80%以上である。加飾表示部品に含まれる構成要素に対して用いられる「透明」とは、表示部22に可視光透過性を付与し得る透過性を有することを意味する。後述する第2トップ層55が透明であるとは、第2トップ層55によって部分的に構成される表示部22が可視光透過性を有していれば、該当する。「可視光遮光性」とは、可視光透過率が、5%以下であることを意味し、好ましくは1%以下である。可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定波長380nm~780nmの範囲内で1nm毎に入射角0°で測定したときの、各波長における全光線透過率の平均値として特定される。
【0047】
加飾表示システム10は、種々の用途に適用可能である。加飾表示システム10を、移動体の内装や外装に適用されてもよい。移動体とは、移動可能な装置である。移動体として、自動車、船、飛行機、鉄道車両、ドローン、ロボット等が例示される。一具体例として、加飾表示システム10は、自動車の内装や外装に適用されてもよい。加飾表示システム10は、建物の内装として、壁、扉、天井等に適用されてもよい。加飾表示システム10は、家具、家電製品等の各種装置に適用されてもよい。より具体的な例として、加飾表示システム10は机に適用されてもよい。加飾表示システム10冷蔵庫等の設備のケーシングに適用されてもよい。
【0048】
以下に詳細を説明する一実施の形態には、加飾表示部品20の意匠性を改善する工夫がなされている。より具体的には、表示部22が加飾表示部品20における適切な位置に配置されるといった工夫がなされている。本実施の形態では、加飾表示部品20の表示部22が適切な位置に配置され、これにより、加飾表示部品20の意匠性の劣化を回避できる。
【0049】
以下、図示された具体例を参照して一実施の形態を詳細に説明する。
【0050】
図1に示された加飾表示部品20は、大局的な観察において、シート状に広がっている。加飾表示部品20は、第1方向D1及び第2方向D2に広がっている。加飾表示部品20の構成要素32,40は、第3方向D3に積層されている。加飾フィルム40の構成要素50,60,55,70は第3方向D3に積層されている。すなわち、第3方向D3は積層方向である。図示された例において、第1方向D1、第2方向D2及び第3方向D3は互いに直交している。
【0051】
加飾表示部品20は、光源15と重ねて配置されている。図3に示されているように、加飾表示部品20は意匠部21及び表示部22を有している。表示部22は、光源15と第3方向D3に対面している。表示部22は可視光透過性を有している。光源15からの光で表示部22が照明されると、表示部22のパターンが明るく観察されるようになる。その一方で、加飾表示部品20は、意匠部21において意匠を表示する。すなわち、加飾表示部品20は、意匠部21において意匠を表示し、表示部22において特定のパターンを表示する。加飾表示部品20は、意匠部21において可視光遮光性を有していてもよい。この例によれば、光源15の点灯時に、表示部22のパターンに対応したパターンでの表示の鮮明さを向上できる。加飾表示部品20の第3方向D3への厚みを、0.5mm以上10mm以下としてもよい。
【0052】
表示部22のパターンは特に限定されない。表示部22のパターンは、光源15を点灯して表示したい対象に応じて適宜選択され得る。表示部22は、図形、デザイン、キャラクター、マーク、ピクトグラム、文字や数字などを表すパターンを有してもよい。
【0053】
図4に示すように、加飾表示部品20は、加飾フィルム40及び樹脂部32を有している。樹脂部32は、射出成形によって形成されてもよい。加飾フィルム40及び樹脂部32は、第3方向D3に積層されている。加飾フィルム40は、第1トップ層50、意匠層60及び第2トップ層55を有している。第1トップ層50、意匠層60及び第2トップ層55は、この順で第3方向D3に積層されている。また、図示された例において、加飾フィルム40は、熱可塑性樹脂層70を更に有している。熱可塑性樹脂層70は、加飾フィルム40を補強するバッカー層として機能する。熱可塑性樹脂層70は、第2トップ層55と第3方向D3に積層されている。熱可塑性樹脂層70は、第3方向D3において第2トップ層55と樹脂部32との間に位置する。
【0054】
第1トップ層50は、加飾表示部品20における、観察者側の表面を形成する。第1トップ層50は透明である。透明な第1トップ層50は、意匠層60の透過観察を可能にする。すなわち、観察者は、第1トップ層50を介して意匠層60によって表示される意匠を観察できる。第1トップ層50は、表面として要求される物性を有している。例えば、第1トップ層50は、耐擦傷性、耐摩耗性、耐薬品性、耐汚染性、耐光性、耐熱性、耐湿性の一以上において優れていてもよい。第1トップ層50の第3方向D3への厚みを、1μm以上1000μm以下としてもよい。
【0055】
第1トップ層50は、電離放射線硬化性樹脂の硬化物を含んでいる。電離放射線硬化性樹脂の硬化物とは、電離放射線硬化性樹脂を含む組成物を架橋により硬化させた物である。電離放射線硬化性樹脂は、電磁波または荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有する。電離放射線硬化性樹脂は、紫外線または電子線などを照射することにより、架橋して硬化する。電離放射線硬化性樹脂の硬化物とは、電離放射線硬化性樹脂を含む組成物を架橋により硬化させた物である。
【0056】
電離放射線硬化性樹脂として、慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いてもよい。電離放射線硬化性樹脂として、紫外線の照射で硬化する紫外線硬化性樹脂や、電子線の照射で硬化する電子線硬化性樹脂を用いてもよい。また、電離放射線硬化性樹脂を含む組成物は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を含んでもよい。
【0057】
電離放射線硬化性樹脂を含む組成物は、加飾表示部品20の用途等に応じて第1トップ層50に要求される物性に応じ、添加剤を含んでもよい。添加剤として、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、光安定剤、レベリング剤、カップリング剤、可塑剤、着色剤等が例示される。
【0058】
電離放射線硬化性樹脂を含む組成物は、艶消剤を含んでもよい。艶消剤によって第1トップ層50の光沢度を調整できる。艶消剤として、シリカ粒子、炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、アルミナ粒子、ガラスバルーン粒子等の無機粒子や、ウレタンビーズ、アクリルビーズ、シリコーンビーズ、スチレンビーズ等の樹脂粒子が例示される。
【0059】
意匠層60には、意匠が形成されている。意匠層60は、図形、パターン、デザイン、色彩、絵、写真、キャラクター、マーク、ピクトグラム、文字や数字などの絵柄を、意匠として設けられてもよい。意匠層60は、背景を表示する意匠表現を行ってもよい。例えば、加飾表示システム10が設けられる周辺環境と加飾フィルム40を調和させることができる意匠として、木目調や大理石調の絵柄、金属調の質感、幾何学模様を、意匠層60が表示してもよい。意匠層60は、印刷によって形成されてもよい。意匠層60は、転写によっても形成されてもよい。意匠層60の第3方向D3への厚みを、1μm以上30μm以下としてもよい。
【0060】
意匠層60は、バインダー樹脂と、バインダー樹脂に分散した色材と、を有してもよい。色材は、顔料でもよく、染料でもよく、顔料と染料の組合せでもよい。バインダー樹脂として、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等が例示される。これらの材料は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0061】
図2図4に示すように、加飾フィルム40は、第1トップ層50及び意匠層60が設けられていない非形成部42を有する。第1トップ層50及び意匠層60には穴43が設けられている。非形成部42は穴43によって構成されてもよい。第1トップ層50及び意匠層60は、第2トップ層55の全面に積層されていない。第1トップ層50及び意匠層60は、第2トップ層55の一部分に積層されている。加飾フィルム40の非形成部42が位置する領域に、加飾表示部品20の表示部22が形成される。言い換えると、第1トップ層50及び意匠層60に穴43が設けられている領域に、加飾表示部品20の表示部22が形成される。表示部22において、第2トップ層55が露出している。表示部22において、第2トップ層55は、第1トップ層50とともに加飾表示部品20の表面を形成している。加飾表示部品20は、表示部22において可視光透過性を有している。第1トップ層50及び意匠層60が位置する領域に、加飾表示部品20の意匠部21が形成される。
【0062】
第2トップ層55は、透明であり、加飾表示部品20の表示部22に可視光透過性を付与する。第2トップ層55の可視光透過率は、50%以上としてもよい。第2トップ層55の第3方向D3に沿った厚みを、1μm以上としてもよく、5μm以上としてもよい。第2トップ層55の厚みに下限を設定することによって、後述のレーザーエッチングによって第2トップ層55に貫通穴が形成されることを抑制できる。第2トップ層55の第3方向D3に沿った厚みを、500μm以下としてもよく、300μm以下としてもよい。第2トップ層55の厚みに上限を設定することによって、加飾フィルム40の成形性を向上できる。
【0063】
第2トップ層55は、加飾表示部品20の表示部22における、観察者側の表面を形成する。第2トップ層55は、表面として要求される物性を有している。例えば、第2トップ層55は、耐擦傷性、耐摩耗性、耐薬品性、耐汚染性、耐光性、耐熱性、耐湿性の一以上において優れていてもよい。
【0064】
第2トップ層55は、フィルムでもよい。フィルムとしての第2トップ層55は、取り扱いしやすい。第2トップ層55は、樹脂フィルムでもよい。第2トップ層55は、成形性に優れる点において、熱可塑性樹脂を含むことが好ましく、熱可塑性樹脂によって構成されていることがより好ましい。熱可塑性樹脂として、アクリル樹脂、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(以下において、「ABS樹脂」とも呼ぶ)、塩化ビニル樹脂等が例示される。第2トップ層55は、これらの材料によって形成された層を二以上含んでもよい。
【0065】
自動車の内装材への適用において、第2トップ層55は、アクリル樹脂のフィルム、より具体的には、ポリメタクリル酸メチルのフィルムとしてもよい。ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂は、自動車に用いられる内装材の表面層として、要求される物性を有する。
【0066】
第2トップ層55は、加飾表示部品20の用途等に応じて第2トップ層55に求められる物性に応じ、添加剤を含んでもよい。添加剤として、耐摩耗性向上剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、着色剤等が例示される。第2トップ層55は、艶消剤を含んでもよい。艶消剤によって意匠層60の光沢度を調整できる。艶消剤として、シリカ粒子、炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、アルミナ粒子、ガラスバルーン粒子等の無機粒子や、ウレタンビーズ、アクリルビーズ、シリコーンビーズ、スチレンビーズ等の樹脂粒子が例示される。
【0067】
図4に二点鎖線で示すように、第2トップ層55は、ベース層55aと、ベース層55aを被覆した被覆層55bと、を有してもよい。図4に二点鎖線で示すように、被覆層55bは、第3方向D3において意匠層60とベース層55aとの間に位置している。被覆層55bは、加飾表示部品20の表示部22において、加飾表示部品20の表面を形成する。被覆層55bは、表面として要求される物性を有している。ベース層55aの材料として、良好な透明性を得る観点からアクリル樹脂が例示される。一方、ベース層55aは、成形性に優れた物性を有してもよい。ベース層55aの材料として、アクリル樹脂よりも成形性に優れたABS樹脂や塩化ビニル樹脂が例示される。
【0068】
ベース層55aは、フィルムでもよい。フィルムとしての第2トップ層55は、取り扱いしやすい。第2トップ層55は、樹脂フィルムでもよい。樹脂フィルムからなるベース層55a上に被覆層55bが形成されてもよい。
【0069】
被覆層55bは、熱可塑性樹脂および電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物を含んでもよい。電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との割合は、質量比で、電離放射線硬化性樹脂:熱可塑性樹脂=10:90~25:75でもよい。
【0070】
熱可塑性樹脂として、アクリル樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等が例示される。熱可塑性樹脂として、特にアクリル樹脂が好ましい。アクリル樹脂として、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が例示される。
【0071】
電離放射線硬化性樹脂は、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー及び多官能(メタ)アクリレートモノマーの一以上を含んでもよい。電離放射線硬化性樹脂は、分子中に重合性不飽和結合を有するオリゴマー、及び/又はモノマーを含んでもよい。
【0072】
上記オリゴマーとして、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートオリゴマーが好適であり、中でも分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)有する多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとして、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレートが例示される。
【0073】
電離放射線硬化性樹脂として使用される上記モノマーとして、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートモノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートモノマーとして、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0074】
熱可塑性樹脂層70は、加飾フィルム40に強度を付与する。熱可塑性樹脂層70の第3方向D3に沿った厚みを、100μm以上としてもよく、200μm以上としてもよく、350μm以上としてもよく、450μm以上としてもよい。加飾フィルム40の第3方向D3に沿った全体厚みが200μm以上となるように、300μm以上となるように、450μm以上となるように、475μm以上となるように、或いは、600μm以上となるように、熱可塑性樹脂層70の厚みを決定してもよい。熱可塑性樹脂層70の厚みは1000μm以下でもよい。熱可塑性樹脂層70は、透明であり、加飾表示部品20の表示部22に可視光透過性を付与する。熱可塑性樹脂層70の可視光透過率は、50%以上でもよい。
【0075】
熱可塑性樹脂層70は、成形性に優れる点において、熱可塑性樹脂を含むことが好ましく、熱可塑性樹脂によって構成されていることがより好ましい。熱可塑性樹脂として、アクリル樹脂、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂等が例示される。熱可塑性樹脂層70は、これらの層を二以上含んでもよい。
【0076】
図4に二点鎖線で示すように、熱可塑性樹脂層70は、本体部70a及び粘着層70bを有してもよい。この例では、粘着層70bによって、熱可塑性樹脂層70が第2トップ層55に接合する。本体部70aの材料として、上述した熱可塑性樹脂層70の材料を用いることができる。粘着層70bの材料を、例えばポリプロピレンやポリエチレン等の自己粘着性を有した材料としてもよい。
【0077】
なお、本件明細書において「粘着」と「接着」は区別されない。また、「接合」は、「粘着」、「接着」、「溶着」等を含む。
【0078】
樹脂部32は、加飾フィルム40に接合している。樹脂部32は、射出成形によって、加飾フィルム40に接合した状態で作製される。図示された例において、樹脂部32は熱可塑性樹脂層70に接合している。樹脂部32は、透明であり、加飾表示部品20の表示部22に可視光透過性を付与する。樹脂部32の可視光透過率は、50%以上でもよい。樹脂部32は、射出成形に適した熱可塑性樹脂によって構成される。樹脂部32の材料として、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ABS樹脂等が例示される。
【0079】
図1に示された加飾表示部品20は、大局的な観察において、シート状に広がっている。加飾表示部品20は、第1方向D1及び第2方向D2に広がっている。加飾表示部品20の構成要素32,40は、第3方向D3に積層されている。加飾フィルム40の構成要素50,60,55,70は第3方向D3に積層されている。すなわち、第3方向D3は積層方向である。図示された例において、第1方向D1、第2方向D2及び第3方向D3は互いに直交している。
【0080】
図1に示すように、加飾表示部品20は三次元形状を有している。より具体的には、加飾表示部品20は第1方向D1における両側において屈曲している。図示された例に限られず、加飾表示部品20は種々の形状を有することができる。図1に示された例において、樹脂部32は加飾表示部品20に沿って広がるシート状である。樹脂部32は、図示された例に限られず、加飾表示部品20とは無関係に延び出す部分、例えば加飾表示部品20を設置対象箇所に取り付けるための固定用爪等を有してもよい。
【0081】
次に、加飾表示部品20の製造方法の一例について説明する。
【0082】
以下に説明する方法では、最初に穴43が設けられていない加飾フィルム40を作製する。すなわち、作製される加飾フィルム40は、非形成部42を含んでいない。次に、加飾フィルムと射出成形によって形成される樹脂部32とを接合して加飾成形品30を作製する。その後、レーザーエッチングによって加飾フィルム40の第1トップ層50及び意匠層60を部分的に除去する。レーザーエッチングによって、加飾フィルム40に穴43が形成される。この穴43が非形成部42を構成する。このようにして、加飾表示部品20が作製される。この加飾表示部品20の観察者に対面する表面の一部分は、非形成部42を構成する穴43内に露出した第2トップ層55によって形成される。
【0083】
以下に説明する製造方法では、加飾フィルム40を収容したキャビティ92内に加熱した熱可塑性樹脂を供給して加飾成形品30を作製する。また、以下に説明する製造方法では、加飾フィルム40を予備成形して変形させ、変形した加飾フィルム40をキャビティ92内に収容する。各工程についてさらに詳述する。
【0084】
まず、第2トップ層55を形成するシートを用意する。第2トップ層55の材料や厚みは、上述した通りである。次に、図5に示すように、第2トップ層55上に印刷や転写等によって意匠層60を形成する。意匠層60の材料や厚みは、上述した通りである。その後、図6に示すように、意匠層60上に第1トップ層50を形成する。第1トップ層50は、電離放射線硬化性樹脂を含む組成物を意匠層60に塗布する。次に、意匠層60上の組成物に電離放射線を照射することによって組成物を硬化させる。これにより、電離放射線硬化性樹脂の硬化物からなる第1トップ層50が得られる。以上により、図6に示された積層体35が得られる。得られた積層体35は、第3方向D3に次の順で積層された第2トップ層55、意匠層60及び第1トップ層50を有している。
【0085】
その後、図7に示すように、積層体35の第2トップ層55上に熱可塑性樹脂層70を設ける。一例として、熱ラミネーションにより、シート状の熱可塑性樹脂層70を第2トップ層55に接合してもよい。この例において、まず、熱可塑性樹脂層70を形成する熱可塑性樹脂のシートを用意する。熱可塑性樹脂層70の材料や厚みは、上述した通りである。図8に示された例において、第1ロール81及び第2ロール82の間に、積層体35及び熱可塑性樹脂層70が搬送される。第1ロール81及び第2ロール82は、例えば内蔵された図示しない加熱装置によって、加熱されている。第1ロール81及び第2ロール82は、積層体35及び熱可塑性樹脂層70を互いに向けて押す。第1ロール81及び第2ロール82の間を通過する際、熱可塑性樹脂層70は、加熱されながら、積層体35に向けて押される。これにより、積層体35及び熱可塑性樹脂層70が溶着する。以上により、図7に示された加飾フィルム40が得られる。得られた加飾フィルム40は、第3方向D3に次の順で積層された熱可塑性樹脂層70、第2トップ層55、意匠層60及び第1トップ層50を有している。ただし、得られた加飾フィルム40に、穴43及び非形成部42は設けられていない。
【0086】
上述したように、熱可塑性樹脂層70が本体部70a及び粘着層70bを有していてもよい。粘着層70bを利用することで、積層体35及び熱可塑性樹脂層70の密着性を向上できる。
【0087】
次に、図9図12に示すように、加飾フィルム40を予備成形する。この予備成形では、加飾フィルム40を塑性変形させ、加飾フィルム40に所望の形状を付与する。予備成形によって加飾フィルム40は塑性変形する。加飾フィルム40は、熱可塑性樹脂層70によって大きな厚みを有している。したがって、加飾フィルム40は、予備成形後の形状を維持できる。予備成形後の加飾フィルム40は、目的とする加飾表示部品20の形状に近い形状を有する。図9図12に示された例において、予備成形として真空成形が実施されている。ただし、この例に限られず、予備成形として、圧空成形、TOM成形、曲げ成形等の種々の成形加工が実施されてもよい。また、切削等の機械加工を加飾フィルム40に対して行ってもよい。さらには、予備成形を省略してもよい。
【0088】
図示された加飾フィルム40の真空成形では、図9に示すように、加飾フィルム40を真空成形装置85のヒーター86により加熱して軟化させる。加飾フィルム40は真空成形装置85の金型87の近傍に配置されている。次に、図10に示すように、加飾フィルム40を金型87に設けられた多数の微小の孔(図示省略)から真空吸引する。これにより、加飾フィルム40は金型87に吸着される。結果として、加飾フィルム40を金型87の形状に合わせた形状に成形できる。すなわち、加飾フィルム40の形状は金型87に沿った形状となる。その後、加飾フィルム40の温度を低下させる。加飾フィルム40は成形後の形状で固化する。次に、図11に示すように、加飾フィルム40を金型87から取り出す。その後、図12に示すように、金型87から取り出された加飾フィルム40から不要な部分を除去する。
【0089】
図12に示された予備成形工程のトリミングまで、ロール・トゥ・ロールにより複数の加飾フィルム40が分離されていない長尺のシート状物として製造され得る。ロール・トゥ・ロールでの製造方法によれば、予備成形工程に長尺の加飾フィルム40を供給できる。したがって、歩留まりを改善でき、製造コストを低減できる。とりわけ、ロール版を用いた印刷により意匠層60を作製する場合、ロール版の径と最終製品の寸法との関係によらず、高歩留まりを実現できる。ただし、以上の説明と異なり、成形工程のトリミングまで、加飾フィルム40が枚葉で作製されてもよい。
【0090】
次に、予備成形された加飾フィルム40を用いて加飾成形品30を製造する。まず、図13に示すように、射出成形装置90を準備する。射出成形装置90は、成形型91を有している。成形型91は、第1型91A及び第2型91Bを含んでいる。第1型91A及び第2型91Bは、図13に示すように互いから離間でき、図14に示すように互いに接近できる。図14に示すように、第1型91A及び第2型91Bが互いに接触した閉型状態において、第1型91A及び第2型91Bの間にキャビティ92が形成される。成形型91は、キャビティ92に通じるゲート93を有している。ゲート93は、図示しない射出樹脂33の供給装置に接続している。ゲート93を通じてキャビティ92内に、射出樹脂33が供給される。第1型91A及び第2型91Bは、図示しないヒーターによって加熱され、高温に維持されている。
【0091】
図14に示すように、成形型91内のキャビティ92に加飾フィルム40を収容する。図示された例において、加飾フィルム40が第1型91Aに接触し、熱可塑性樹脂層70がキャビティ92内に露出するようにして、加飾フィルム40はキャビティ92内に配置される。次に図15に示すように、溶融した射出樹脂33が、ゲート93を介して、キャビティ92内に射出される。射出樹脂33は、キャビティ92内で冷却され、加飾フィルム40に溶着して固化する。固化した射出樹脂33から、加飾フィルム40の熱可塑性樹脂層70に接合した樹脂部32が得られる。樹脂部32の材料や厚みは、上述した通りである。
【0092】
その後、図16に示すように、第1型91A及び第2型91Bが互いから離間する。加飾フィルム40及び樹脂部32を含む加飾成形品30が、キャビティ92から取り出される。以上のようにして、加飾フィルム40及び樹脂部32を有する加飾成形品30が得られる。
【0093】
次に、加飾フィルム40に穴43を形成する。加飾フィルム40に穴43を設けることによって、加飾フィルム40に非形成部42を形成する。一例として図17に示すように、レーザー照射装置80を用いたレーザーエッチングにより、穴43及び非形成部42を形成してもよい。図17に示された例において、レーザー照射装置80から射出したレーザー光を、加飾成形品30の加飾フィルム40に照射する。図示された例において、レーザー光は、加飾フィルム40の第1トップ層50から加飾成形品30に入射する。レーザー照射装置80から加飾成形品30の第1トップ層50及び意匠層60までの距離に応じて、レーザー照射装置80から射出するレーザー光の集束位置を調整することによって、第1トップ層50及び意匠層60のみを除去できる。また、第2トップ層55がレーザー光に対して透過性を有することによって、第2トップ層55が除去されることを抑制できる。これにより、第2トップ層55を残存させながら、第1トップ層50及び意匠層60を除去できる。第1トップ層50及び意匠層60が除去されると、第2トップ層55が露出する。加飾フィルム40の穴43及び非形成部42において露出した第2トップ層55が、加飾表示部品20の表面を形成する。
【0094】
レーザーエッチングに用いられるレーザー光は、特に限定されない。種々の型式のレーザー光源から射出されるレーザー光を使用可能である。レーザーエッチングに用いられるレーザー光の波長も特に限定されない。レーザー光は、可視光域の波長を有していてもよく、赤外線域の波長を有していてもよい。好ましくは、意匠層60での吸収率が高く且つ第2トップ層55での吸収率が低いレーザー光を用いる。
【0095】
以上のレーザーエッチングにより、加飾フィルム40に穴43及び非形成部42を形成できる。これにより、加飾成形品30から加飾表示部品20を作製できる。このようにして作製された加飾表示部品20は、光源15とともに、図1図4に示された加飾表示システム10を構成する。図4に示すように、光源15は、加飾表示部品20の表示部22と第3方向D3に対面している。図3に示すように、光源15を点灯すると、光源15からの光が加飾表示部品20の表示部22を透過する。これにより、光源15が消灯した図2の状態と比較して、表示部22が明るく表示されるようになる。
【0096】
意匠層60を用いた加飾フィルム40の意匠表現により、周囲環境との調和や統一性を確保しながら、加飾表示システム10を設置できる。昨今では加飾表示システム10の適用範囲が急速に広がっており、加飾表示部品20を用いることによって、意匠性が重視される自動車の内装、建物の内装、家具、家電製品等に加飾表示システム10を適用できる。
【0097】
ところで、従来の加飾表示部品は、印刷が施された加飾部と、印刷が施されていない非加飾部と、を有する加飾フィルムをインサート成形に用いることによって、製造されていた。この従来例において、加飾部及び非加飾部を有した加飾フィルムを、インサート成形に用いられる型に対して位置決めする必要がある。インサート成形前に予備成形が行われる場合には、加飾部及び非加飾部を有した加飾フィルムを予備成形に用いられる装置に対して位置決めする必要がある。別の従来の製造方法として、予め成形された樹脂部に対して、加飾部及び非加飾部を有する加飾フィルムを貼り付けることによって、加飾表示部品が製造され得る。この従来例では、樹脂部に対して加飾フィルムを位置決めする必要がある。平坦な加飾フィルムを、当該加飾フィルムの非加飾部の位置を確認しながら、装置や樹脂部に対して位置決めすることは、容易ではない。位置決めが不十分であると、得られた加飾表示部品における表示部の位置がずれてしまう。結果として、意匠部による意匠表現が不十分となり、加飾表示部品の意匠性が損なわれる。また、加飾表示部品の表示部と光源の相対位置が不適切になることも想定される。この場合、光源からの光を有効に用いて表示部のパターンを適切に表示できなくなり、結果として、加飾表示部品の意匠性が劣化する。
【0098】
このような従来の不具合に対し、本実施の形態によれば、穴43及び非形成部42を形成前の加飾フィルム40が、予備成形およびインサート成形に用いられる。樹脂部32と接合した加飾フィルム40に対して穴43及び非形成部42を形成する。したがって、加飾フィルム40の柄を確認して、平坦な加飾フィルム40を真空成形装置85や射出成形装置90に位置決めする必要はない。加飾成形品30をレーザーエッチングする際に位置決めする必要があるが、加飾成形品30は成形加工を経ているため、三次元形状を有する加飾成形品30のレーザー照射装置80への位置決めを容易且つ高精度に実施できる。したがって、加飾成形品30の所望の領域から第1トップ層50及び意匠層60を高精度に除去できる。これにより、加飾成形品30の適切な位置に、第1トップ層50及び意匠層60の非形成部である表示部22を形成できる。結果として、期待した意匠性を安定かつ容易に加飾表示部品20に付与でき、加飾表示部品20の意匠性を向上できる。
【0099】
また、従来技術では次の不具合も生じていた。従来の製造方法において、加飾部及び非加飾部を有した加飾フィルムは、インサート成形時や樹脂部への貼り付け時に、伸びを生じる。伸びは、加飾表示部品の最終形状に応じており、通常不均一となる。伸びの不均一さや大きさに応じ、加飾フィルムの非加飾部の形状が変形する。したがって、従来の加飾表示部品では、樹脂部が複雑な三次元形状を有する場合、所望のパターンで表示を行うことが難しい。
【0100】
一方、本実施の形態によれば、樹脂部32に接合し樹脂部32の外面に沿って広がる加飾フィルム40に対し、レーザーエッチングによって穴43及び非形成部42を形成する。したがって、従来の加飾表示部品のように伸びの不具合は、本実施の形態において生じない。穴43及び非形成部42を所望の形状に形成でき、これにより、所望のパターンで表示できる。
【0101】
さらに、従来技術では次の不具合も生じていた。従来の加飾表示部品における印刷によって形成された加飾部の縁部は、微細に蛇行して不鮮明となる。このため、従来の加飾表示部品では、光源を点灯した際に観察される表示も不鮮明となり得る。
【0102】
一方、本実施の形態によれば、レーザーエッチングによって穴43及び非形成部42が形成される。したがって、非形成部42に繋がる第1トップ層50及び意匠層60の縁部を鮮明にできる。これにより、光源15を点灯した際に観察される表示も鮮明となる。
【0103】
さらに、従来技術では次の不具合も生じていた。従来の加飾表示部品では、ロール版を用いた印刷により加飾フィルムが作製され得る。得られた従来の加飾フィルムは、断裁前の長尺の状態において、一定の間隔をあけて非加飾部を有する。したがって、実際に作製される加飾表示部品の寸法によっては、従来の加飾フィルムの歩留まりは著しく低下し得る。
【0104】
一方、本実施の形態によれば、樹脂部32に接合した加飾フィルム40の所望の領域に穴43及び非形成部42を形成できる。したがって、加飾表示部品20の寸法によらず、加飾フィルム40の歩留まりを大幅に改善できる。
【0105】
図4に示すように、加飾表示システム10において、第1トップ層50が、意匠部21において、加飾表示部品20の表面を形成している。第1トップ層50は、電離放射線硬化性樹脂の硬化物を含む層であり、表面層として要求される物性を有している。図示された加飾表示システム10では、第2トップ層55が、表示部22において露出し加飾表示部品20の表面を形成している。したがって、加飾表示部品20の表面層として要求される物性を有した材料を用いて第2トップ層55を作製してもよい。第2トップ層55は、ベース層55a及び被覆層55bを有し、被覆層55bが加飾表示部品20の表面層として要求される物性を有してもよい。これらの例によれば、レーザーエッチング後に塗膜等の保護層を加飾表示部品20に設ける必要性を排除できる。
【0106】
一例として、アクリル樹脂、より具体的には、ポリメタクリル酸メチルによって、第2トップ層55や被覆層55bが形成されてもよい。ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂は、内装材の表面層として、例えば自動車に用いられる内装材の表面層として長年使用されてきた実績があり、内装材に要求される物性を有している。
【0107】
なお、レーザーエッチング後に塗膜等の保護層を加飾表示部品20に設けた場合、加飾表示部品20の表面は平坦化される。レーザーエッチング後に保護層を設けなくてよいことから、第1トップ層50によって、加飾表示部品20の表面を凹凸面にできる。これにともなって、意匠性改善のための更なる工夫を加飾表示部品20に適用できる。
【0108】
一例として、図18に示すように、第1トップ層50は、意匠層60と積層された第1層51と、第1層51の一部分と積層された第2層52と、を有してもよい。この例において、第2層52は、第1層51上の一部分に配置されている。第1層51及び第2層52は、この順で、意匠層60に積層されている。第1層51は、少なくとも一部分において、第2層52に被覆されず、加飾表示部品20の表面を形成し得る。第1層51及び第2層52は、異なる光沢度を有した層となっている。第1層51及び第2層52は、共に電離放射線硬化性樹脂の硬化物を含んでいる。第1層51の光沢度及び第2層52の光沢度は異なってもよい。例えば、上述した無機粒子や樹脂粒子等の艶消剤を第1層51及び第2層52が異なる添加量で含むことによって、第1層51の光沢度及び第2層52の光沢度を異なる値にできる。異なる種類の粒子を含むことによって、第1層51の光沢度及び第2層52の光沢度を異なる値にできる。第1層51が無機粒子を含み、第2層52が樹脂粒子を含んでもよい。第1層51及び第2層52が異なる平均粒子径の艶消剤を含むことによって、第1層51の光沢度及び第2層52の光沢度を異なる値にできる。第1層51の光沢度及び第2層52の光沢度を異なるようにするための上記した複数の手法の二以上を採用してもよい。第1層51の光沢度が第2層52の光沢度より高くてもよい。第2層52の光沢度が第1層51の光沢度より高くてもよい。光沢度は、JISZ8741に準拠して入射角度を20°として日本電色工業製の(光沢計VG7000)を用いて測定された値とする。例えば、意匠層60が木目柄を表示している場合、木目柄の導管部分により光沢度の低い第1層51が露出し、木目柄の導管以外の部分に光沢度の高い第2層52が設けられていてもよい。この例によれば、意匠層60によって表示される意匠に応じて第2層52を配置することにより、木目柄等の意匠を更に優れたものにできる。
【0109】
第1層51の十点平均粗さRzJISは0.7μm以上5μm以下でもよい。第2層52の十点平均粗さRzJISは2μm以上7μm以下でもよい。第2層52の十点平均粗さRzJISは、第1層51の十点平均粗さRzJISより大きくてもよい。第2層52の十点平均粗さRzJISは第1層51の十点平均粗さRzJISより大きく、第2層52の十点平均粗さRzJISと第1層51の十点平均粗さRzJISとの差が0.7μm以上でもよい。第1層51の十点平均粗さRzJIS及び第2層52の十点平均粗さRzJISを以上のように設定することによって、意匠性を向上できる。例えば、木目柄等の意匠層との組合せにおいて、人工的な印象を弱めて、自然な風合いを創出できる。十点平均粗さRzJISは、JIS B 0601:2001に規定された十点平均粗さとする。
【0110】
さらに、図19に示すように、加飾フィルム40が、第2層52に積層された盛上層53を更に有してもよい。盛上層53は、間隔をあけて配置された複数の凸部53aを有している。図示された例において、第2層52は、盛上層53と意匠層60との間に位置している。盛上層53は優れた触感を付与する。凸部53aの第3方向D3に沿った厚みは、優れた触感を付与する観点から、5μm以上でもよく、10μm以上でもよく、20μm以上でもよい。盛上層53の第3方向D3に沿った厚みは、優れた触感を付与する観点から、50μm以下としてもよい。
【0111】
図19に示された例において、盛上層53が第3方向D3における最表面側に位置しているが、この例に限られない。盛上層53は、第1層51と第2層52との間に位置してもよい。盛上層53は、第1層51と意匠層60との間に位置してもよい。図19に示された例において、盛上層53は、第1層51及び第2層52を含む第1トップ層50と組合せて用いられているが、一例に過ぎない。盛上層53は、単一の層からなる第1トップ層50と組合せて用いられてもよい。
【0112】
無機粒子を含む塗工液を印刷して凸部53aを形成することにより、盛上層53を作製してもよい。エンボス加工により凸部53aを形成することにより、盛上層53を作製してもよい。エンボス加工により凸部53aを形成する場合、凸部53aは、第1層51と一体的に形成されてもよい。
【0113】
以上に説明してきた一実施の形態において、加飾フィルム40は、レーザーエッチングを施される加飾フィルムであって、電離放射線硬化性樹脂の硬化物を含む第1トップ層50と、第1トップ層50と積層された透明な第2トップ層55と、第1トップ層50及び第2トップ層55との間に位置する意匠層60と、を有する。加飾成形品30は、加飾フィルム40と、加飾フィルム40と積層された樹脂部32と、を有する。加飾表示部品20は、加飾成形品30又は加飾フィルム40を有し、第2トップ層55は、第1トップ層50及び意匠層60の非形成部42を構成する穴43内に露出して加飾表示部品20の表面を形成する。加飾表示システム10は、加飾表示部品20と、加飾表示部品20に第1トップ層50とは反対側から光を投射する光源15と、を有する。また、以上に説明してきた一実施の形態において、加飾表示部品20の製造方法は、加飾フィルム40と射出成形によって形成される樹脂部32とを接合して加飾表示部品20を作製する工程と、レーザーエッチングによって第1トップ層50及び意匠層60を部分的に除去し、表面の一部分を第2トップ層55によって形成する、工程と、を有する。
【0114】
本実施の形態によれば、加飾フィルム40を樹脂部32と接合して加飾成形品30を作製できる。さらに、加飾成形品30にレーザーエッチングを施すことによって加飾表示部品20を製造できる。例えば三次元形状を有する加飾成形品30をレーザーエッチング装置に安定して容易に位置決めできる。したがって、加飾成形品30の所望の領域から、第1トップ層50及び意匠層60を高精度に除去できる。これにより、加飾成形品30の適切な位置に、第1トップ層50及び意匠層60の穴43及び非形成部42である表示部22を形成できる。結果として、期待した意匠性を安定かつ容易に加飾表示部品20に付与でき、加飾表示部品20の意匠性を向上できる。
【0115】
具体例を参照しながら一実施の形態を説明してきたが、上述の具体例が一実施の形態を限定しない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施でき、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加等を行うことができる。
【0116】
以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した具体例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用い、重複する説明を省略する。
【0117】
図20に示すように、加飾フィルム40が、第2トップ層55に積層された第2意匠層65を更に有してもよい。第2トップ層55は、第3方向D3において意匠層60と第2意匠層65との間に位置する。第2意匠層65は、意匠層60と同様の意匠を表示してもよい。ただし、第2意匠層65は、加飾表示部品20に表示部22に可視光透過性を付与し得るよう、透明である。第2意匠層65は、意匠層60と同様の材料を用いて、印刷や転写によって形成されてもよい。第2意匠層65は、木目調や大理石調の絵柄、金属調の質感、幾何学模様を表示してもよい。
【0118】
上述した具体例において、加飾フィルム40の予備成形後に、加飾フィルム40を用いたインサート成形が実施された。この例に変えて、予備成形を省略してもよい。この例において、平坦な加飾フィルム40をキャビティ92内に収容し当該キャビティ92内に溶融した射出樹脂33を供給して、加飾フィルム40に接合した樹脂部32を形成してもよい。このような射出成形は、サーモジェクト成形とも呼ばれる。この射出成形時に、加飾フィルム40をキャビティ92の形状に応じて変形させてもよい。
【0119】
盛上層53を有した加飾フィルム40をインサート成形する場合、凸部53aを収容する穴または凹部が形成されたマスキング層を用いてもよい。マスキング層を盛上層53に重ねた状態で加飾フィルム40をキャビティ92内に収容することによって、凸部53aが平坦化することを抑制できる。
【0120】
加飾フィルム40から熱可塑性樹脂層70を省略してもよい。例えば、上述の予備成形を省略する場合には、予備成形後の形状を維持する目的で熱可塑性樹脂層70を設ける必要がない。したがって、予備成形を省略する場合には、熱可塑性樹脂層70を省略してもよい。ただし、加飾フィルム40と樹脂部32との密着性を改善するため、図21に示すように、加飾フィルム40が、熱可塑性樹脂層70に代えて、ヒートシール層77を有してもよい。ヒートシール層77は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましく、熱可塑性樹脂によって構成されていることがより好ましい。例えば、熱可塑性樹脂のフィルムを第2トップ層55に加熱加圧することによって、第2トップ層55にヒートシール層77を溶着してもよい。ヒートシール層77は、好ましくは、第2トップ層55よりもガラス転移温度が低い層である。ヒートシール層77の材料として、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂等が例示される。
【0121】
図22に示すように、加飾フィルム40が、第3方向D3において、第2トップ層55及び意匠層60の間に位置する隠蔽層67を更に有してもよい。隠蔽層67は、バインダー樹脂と、バインダー樹脂中に分散したカーボンブラック等の暗色顔料と、を含む層である。隠蔽層67の可視光透過率は、意匠層60の可視光透過率よりも低くてよい。隠蔽層67は、可視光遮光性を有してもよい。隠蔽層67は、レーザーエッチング加工において照射されるレーザー光を、高い吸収率で吸収できる。これにより、レーザー光を照射される領域において、第1トップ層50、意匠層60及び隠蔽層67を安定して除去できる。形成された穴43は、第1トップ層50、意匠層60及び隠蔽層67を安定して貫通する。隠蔽層67におけるレーザー光の吸収率を高くすることによって、穴43内への残渣の残留を抑制できる。これにより、光源15が点灯した状態において、非形成部42の形状に対応した画像を明瞭に観察できる。また、隠蔽層67は意匠部21に残留しており、光源15の点灯時に、残留した隠蔽層67が光源からの光を吸収する。光源15が点灯した状態において、非形成部42以外からの光の射出が抑制されるので、非形成部42の輪郭を明瞭に表示できる。
【0122】
隠蔽層67は光吸収粒子を含んでもよい。光吸収粒子として、カーボンブラックが例示される。隠蔽層67中のカーボンブラックの含有量は、0.05g/m以上2g/m以下でもよく、0.05g/m以上1.5g/m以下でもよい。隠蔽層67中のカーボンブラックの含有量を0.05g/m以上とすることによって、レーザー光が隠蔽層67に安定して吸収され得る。これにより、第1トップ層50、意匠層60及び隠蔽層67を安定して除去できる。形成された穴43への残渣の残留を抑制できる。隠蔽層67中のカーボンブラックの含有量を2g/m以下とすることによって、形成される穴43の大きさが大きくなり過ぎることを抑制して、所望の領域に精度良く非形成部42を形成できる。
【0123】
レーザーエッチング加工時、レーザー光は、第1トップ層50を透過して意匠層60に入射する例を示した。この例に限られず、レーザー光は、第2トップ層55を透過して意匠層60又は隠蔽層67に入射してもよい。
【符号の説明】
【0124】
D1:第1方向、D2:第2方向、D3:第3方向、10:加飾表示システム、15:光源、20:加飾表示部品、21:意匠部、22:表示部、30:加飾成形品、32:樹脂部、33:射出樹脂、35:積層体、40:加飾フィルム、42:非形成部、43:穴、50:第1トップ層、51:第1層、52:第2層、53:盛上層、55:第2トップ層、55a:ベース層、55b:被覆層、60:意匠層、65:第2意匠層、67:隠蔽層、70:熱可塑性樹脂層、70a:本体部、70b:粘着層、77:ヒートシール層、80:レーザー照射装置、81:第1ロール、82:第2ロール、85:真空成形装置、86:ヒーター、87:金型、90:射出成形装置、91:成形型、91A:第1型、91B:第2型、92:キャビティ、93:ゲート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22