(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】加熱装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/265 20060101AFI20231221BHJP
H05B 3/02 20060101ALI20231221BHJP
H01L 21/26 20060101ALN20231221BHJP
【FI】
H01L21/265 602B
H05B3/02 A
H01L21/265 603D
H01L21/26 J
(21)【出願番号】P 2019121169
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2022-04-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】302054866
【氏名又は名称】日新イオン機器株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503442640
【氏名又は名称】ヒメジ理化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】小野田 正敏
(72)【発明者】
【氏名】後藤 亮介
(72)【発明者】
【氏名】清水 一男
(72)【発明者】
【氏名】岸本 康広
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-130677(JP,A)
【文献】特開2011-190511(JP,A)
【文献】特開2003-142037(JP,A)
【文献】特開平11-185935(JP,A)
【文献】特開2014-199764(JP,A)
【文献】特開2005-101228(JP,A)
【文献】特開平07-224382(JP,A)
【文献】特開平04-218670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/265
H05B 3/02
H01L 21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を加熱する基板加熱装置であって、
前記基板を収容する真空チャンバと、
前記真空チャンバの内部に差し込まれたヒータとを備え、
前記ヒータが、
前記真空チャンバの壁部を貫通して、真空雰囲気内に設けられ
、一端開口及び他端開口が封止された管状体と、
前記管状体の
封止された内部
空間に収容されるとともに、一部が真空チャンバ内に配置された電熱線と、
前記電熱線が接続された端子部とを有し、
前記端子部が、前記真空チャンバの外部に配置されており、
前記管状体の
前記封止された内部
空間に設けられ、前記電熱線が発する光のうち前記端子部に向かう光の少なくとも一部を遮蔽する光漏れ抑制部材をさらに備え
、
前記光漏れ抑制部材は、前記封止された内部空間を隔てるように設けられていることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記管状体が、前記壁部に形成された貫通孔を貫通するとともに、当該管状体の外周面に環状シール部材が設けられており、
前記電熱線のうち、前記真空チャンバ内に配置されている部分の発熱量に比べて、前記貫通孔を貫通する部分の発熱量の方が低いことを特徴とする請求項1記載の加熱装置。
【請求項3】
前記電熱線のうち、前記真空チャンバ内に配置されている部分の電気抵抗に比べて、前記貫通孔を貫通する部分の電気抵抗の方が低いことを特徴とする請求項2記載の加熱装置。
【請求項4】
前記管状体内における前記光漏れ抑制部材の位置が、前記壁部の内壁面の高さから前記環状シール部材が設けられている高さまでの間である、請求項2又は3記載の加熱装置。
【請求項5】
前記管状体のうち、前記壁部を貫通する部分の内周面に内側に突出する突起部が設けられており、
前記管状体の内部に設けられて前記突起部に支持されるとともに、前記電熱線に取り付けられた支持部材をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至4のうち何れか一項に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記管状体が、一端部及び他端部が前記壁部を貫通するとともに、前記一端部及び前記他端部から折れ曲がって前記真空チャンバ内に配置される長尺部を有するものであることを特徴とする請求項1乃至5のうち何れか一項に記載の加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基板を加熱する加熱装置としては、特許文献1に示すように、真空チャンバの外部にヒータを設けるとともに、真空チャンバに形成した窓越しに基板を加熱するように構成されたものがある。
【0003】
これよりも加熱効率の向上を図る方法として、例えばハロゲンランプヒータ等の棒状のヒータを真空チャンバの内部に差し込むことが考えられる。
【0004】
ところが、ヒータ全体を真空チャンバ内に差し込んだ場合、ヒータを構成する電熱線の光により端子部が高温に加熱されて、端子部を構成するモリブデン箔やモリブデン棒などが熱膨張してしまい、端子部を覆う石英管に内側から応力が加わり、端子部を破損させる恐れがある。又、上述の熱膨張により端子部と石英管との間に隙間が生じると、その隙間からハロゲン等のガスがリークして、端子部の周りで放電が生じる恐れがある。
【0005】
このことから、ヒータを真空チャンバ内に差し込んで加熱効率の向上を図ったとしても、ハロゲンガス等のリークによる放電や端子部の破損の恐れが生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上記の課題を解決すべくなされたものであり、真空チャンバ内にヒータを差し込みつつ、電熱線の光により端子部が加熱されてしまうことを抑制することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る加熱装置は、基板を加熱するものであって、前記基板を収容する真空チャンバと、前記真空チャンバの内部に差し込まれたヒータとを備え、前記ヒータが、前記真空チャンバの壁部を貫通して、真空雰囲気内に設けられた管状体と、前記管状体の内部に収容されるとともに、少なくとも一部が真空チャンバ内に配置された電熱線と、前記電熱線が接続された端子部とを有し、前記端子部が、前記真空チャンバの外部に配置されていることを特徴とするものである。
【0009】
このように構成された加熱装置であれば、端子部が真空チャンバの外部に配置されているので、電熱線から端子部に向かう光を真空チャンバの壁面で遮ることができ、ヒータを真空チャンバ内に差し込みつつ、電熱線の光により端子部が加熱されてしまうことを抑制することができる。
これにより、ヒータ全体を真空チャンバの外部に配置する場合に比べて、加熱効率を向上させつつも、ヒータ全体を真空チャンバ内に配置したときに懸念されたガスリークによる放電の恐れはない。また、仮に端子部を真空チャンバ内に配置した場合、ガスリークが生じなくても端子部の近傍で放電が生じ得るところ、上述した加熱装置であれば、端子部が真空チャンバの外部に配置されているので、そのような放電の懸念もない。
【0010】
さらに、仮に端子部を真空チャンバ内に配置した場合、端子部に接続されるリード線なども真空チャンバ内に配置されるので、このリード線などに起因する不純物が真空チャンバ内に生じ得るところ、本発明に係るヒータであれば、端子部が真空チャンバの外部に配置されているので、端子部に接続されるリード線も真空チャンバの外部に配置されることになり、リード線などに起因する真空チャンバ内での不純物の発生を防ぐことができる。
【0011】
そのうえ、仮に端子部を真空チャンバ内に配置して、真空チャンバを大気開放する場合、端子部が高温に加熱されると酸化されやすくなり、酸化に伴う膨張によって端子部の封止箇所が破損する恐れがあるところ、上述した加熱装置であれば、電熱線の光により端子部が加熱されてしまうことを抑制することができるので、端子部の酸化が抑制され、封止箇所の破損の恐れも低減することができる。
【0012】
前記管状体が、前記壁部に形成された貫通孔を貫通するとともに、当該管状体の外周面に環状シール部材が設けられており、前記電熱線のうち、前記真空チャンバ内に配置されている部分の発熱量に比べて、前記貫通孔を貫通する部分の発熱量の方が低いことが好ましい。
このような構成であれば、管状態の外周面に設けられた環状シール部材により貫通孔を密閉して真空チャンバ内を気密に保ちつつ、貫通孔を貫通する部分の発熱量を低くしているので、環状シールへの熱影響を低減することができる。
【0013】
具体的な実施態様としては、前記電熱線のうち、前記真空チャンバ内に配置されている部分の電気抵抗に比べて、前記貫通孔を貫通する部分の電気抵抗の方を低くする態様が挙げられる。
【0014】
前記管状体の内部に設けられ、前記電熱線が発する光のうち前記端子部側に漏れ出る光を遮蔽する光漏れ抑制部材をさらに備えることが好ましい。
このような構成であれば、電熱線から端子部に向かう光をより多くを遮ることができ、電熱線の光により端子部が加熱されてしまうことをより効果的に抑制することができる。
【0015】
前記管状体内における前記光漏れ抑制部材の位置が、前記壁部の内壁面の高さから前記環状シール部材が設けられている高さまでの間であることが好ましい。
これならば、電熱線から端子部に向かう光のみならず、電熱線から環状シール部材に向かう光をも低減することができるので、環状シール部材の劣化も防ぐことができる。
【0016】
前記管状体のうち、前記壁部を貫通する部分の内周面に内側に突出する突起部が設けられており、前記管状体の内部に設けられて前記突起部に支持されるとともに、前記電熱線に取り付けられた支持部材をさらに備えることが好ましい。
このような構成であれば、電熱線が自重で垂れ下がってしまうことを抑制することができる。
【0017】
前記管状体が、一端部及び他端部が前記壁部を貫通するとともに、前記一端部及び前記他端部から折れ曲がって前記真空チャンバ内に配置される長尺部を有するものであることが好ましい。
このような構成であれば、管状体の一端部及び他端部に収容されるそれぞれの端子部を、真空チャンバの外部に配置することができる。
【発明の効果】
【0018】
このように構成した本発明によれば、真空チャンバ内にヒータを差し込みつつ、電熱線の光により端子部が加熱されてしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係るイオンビーム照射装置の全体構成を示す模式図。
【
図5】その他の実施形態に係るヒータの構成を示す模式図。
【
図6】その他の実施形態に係るヒータの構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明に係る加熱装置、及び、この加熱装置が組み込まれたイオンビーム照射装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
<<装置構成>>
本実施形態のイオンビーム照射装置100は、例えばフラットパネルディスプレイ等に用いられる基板WにイオンビームIBを照射し、イオンを基板W内に注入するイオン注入装置100である。ここでの基板Wは、概略矩形状の薄板であり、例えば、ガラス基板、単結晶シリコン基板、ポリシリコン基板、半導体基板、その他イオンビームIBが照射されるものである。なお、基板Wは、矩形状に限らず円形状など種々の形状のものであって良い。
【0022】
具体的にこのイオン注入装置100は、
図1に示すように、真空雰囲気で基板WにイオンビームIBが照射されて該基板Wが処理される処理室S1と、大気圧雰囲気又は真空雰囲気に切り替えられ、処理室S1を真空雰囲気に維持した状態で基板Wが出し入れされるとともに当該基板Wを収容するロック室S2と、処理室S1及びロック室S2の間にそれらに隣接して設けられて、真空雰囲気で処理室S1及びロック室S2の間で基板Wが搬送される搬送室S3とを備えている。このように、各部屋S1~S3は真空雰囲気に保たれる真空チャンバであり、各部屋S1~S3の接続部分にゲートバルブ等の真空弁を設けて、各部屋S1~S3を個別に真空状態に維持できるように構成してある。
【0023】
処理室S1には、図示しないイオン源から引出電極により引き出され、分析電磁石及び分析スリット等の図示しない質量分析系を通過したイオンビームIBが導入されるビーム導入口Hが設けられている。
【0024】
この処理室S1には、
図1に示すように、基板Wを保持するホルダ10と、当該ホルダ10を移動させるホルダ移動機構20とが設けられている。
【0025】
ホルダ10は、プラテンと称されるものであり、ここでは複数(例えば4本)の櫛歯11が所定間隔で並んだ櫛形状をなすものである。
図1では、説明の便宜上、互いに異なる姿勢(後述する倒伏姿勢P及び起立姿勢Q)にある同一のホルダ10を図示してあるが、処理室S1には1つのホルダ10が設けられていても良いし、2つ以上のホルダ10が設けられていても良い。
【0026】
ホルダ移動機構20は、ホルダ10を、基板Wが載置される倒伏姿勢Pと、倒伏姿勢Pから起立した起立姿勢Qとの間で回転させ、起立姿勢Qにあるホルダ10を所定方向に走査させるものである。これにより、ホルダ10に保持された基板Wは、イオンビームIBを横切るように走査されてイオンビームIBが照射される。
【0027】
ここで、本実施形態のイオンビーム照射装置100は、
図1及び
図2に示すように、イオンビームIBが照射される基板Wを加熱する加熱装置200をさらに備えている。
【0028】
この加熱装置200は、ロック室S2たる真空チャンバS2と、真空チャンバS2に差し込まれたヒータ30とを備えており、この実施形態では
図2に示すように、複数本のヒータ30が真空チャンバS2の上壁部40を貫通して、真空チャンバS2内に吊り下げられている。
【0029】
より具体的に説明すると、
図2及び
図3に示すように、各ヒータ30は、一端部及び他端部が上壁部40を貫通するとともに、真空チャンバS2内で折れ曲がったコ字状をなすものであり、このヒータ30が複数本互いに平行に配置されている。
【0030】
各ヒータ30は、
図3に示すように、真空チャンバS2の上壁部40を貫通して設けられた管状体31と、管状体31の内部に収容されるとともに、少なくとも一部が真空チャンバS2の内部に配置された電熱線32と、電熱線32が接続される端子部33とを備えたものであり、具体的にはハロゲンランプヒータである。以下、各構成要素について説明する。
【0031】
[管状体31]
管状体31は、一端開口及び他端開口が封止されたガラス管であり、内部にはハロゲンガスが封入されている。この管状体31は、
図2及び
図3に示すように、上壁部40に形成された円形状の貫通孔40hを貫通して、真空チャンバS2の真空雰囲気内に設けられており、具体的には、コ字状をなし、一端部31a及び他端部31bが真空チャンバS2の上壁部40を貫通するとともに、一端部31a及び他端部31bから折れ曲がって真空チャンバS2内に位置する長尺部31cを有するものである。なお、一端部31a、他端部31b、及び長尺部31cは一体であり、長尺部31cは、真空チャンバS2に収容された基板Wの被加熱面と平行な状態で設けられた直管状をなすものである。
【0032】
管状体31の外周面には、真空チャンバS2の気密性を担保すべく、貫通孔40hを密閉するためのOリング等の環状シール部材6が設けられている。
【0033】
より詳細には、上壁部40の外壁面41(上面)には、貫通孔40hと連通する連通孔50hを有した取付部材50が例えばネジ等により取り付けており、この取付部材50の内周面に形成された環状凹部50xに上述した環状シール部材6が嵌まり込むことで、環状凹部50xと管状体31の外周面との間に環状シール部材6が介在し、貫通孔40hが密閉される。また、この環状シール部材6の取り付け位置(管状体31の外周面における高さ位置)に応じて、管状体31の真空チャンバS2内における高さ位置が決まる。
【0034】
[電熱線32]
電熱線32は、
図3に示すように、例えばタングステン等の導線をコイル状に巻回してなる発熱体であり、管状体31の管軸に沿って設けられている。
【0035】
ここでの電熱線32は、管状体31と同様にコ字状をなし、真空チャンバS2内に配置されている発熱部分321と、上壁部40の貫通孔40hを通過する貫通部分322とを有しており、発熱部分321の発熱量に比べて、貫通部分322の発熱量の方が低くなるように構成されている。
【0036】
発熱部分321は、管状体31の長尺部31c内に設けられた部分であり、真空チャンバS2に収容された基板Wと平行に延びている。一方、貫通部分322は、管状体31の一端部31a及び他端部31b内に設けられた部分であり、発熱部分321の一端及び他端から端子部33に延びている。そして、発熱部分321の電気抵抗に比べて、貫通部分322の電気抵抗の方が低くなるようにしてあり、具体的には発熱部分321の線径に比べて、貫通部分322の線径の方が太くしてある。
【0037】
このように構成された電熱線32は、
図3に示すように、湾曲抑制機構34によって発熱部分321の湾曲が抑制されるとともに、垂れ下がり抑制機構35によって貫通部分322の垂れ下がりが抑制されている。
【0038】
湾曲抑制機構34は、管状体31の内周面に沿って設けられた支持部材たるサポートリング341が長尺部31c内の複数個所に配置されてなるものであり、各サポートリング341それぞれが、電熱線32の発熱部分321に取り付けられて、発熱部分321を長尺部31cの管軸に沿わせた状態で保持している。
【0039】
垂れ下がり抑制機構35は、管状体31の内周面に沿って設けられた支持部材たるサポートリング351が管状体31の一端部31a内及び端端部31b内の1又は複数個所に配置されてなるものであり、各サポートリング351それぞれが、電熱線32の貫通部分322に取り付けられて、貫通部分322が自重により垂れ下がることを抑制している。ここでの垂れ下がり抑制機構35は、管状体31の一端部31a及び他端部31bの内周面から内側に突出する突起部352を有し、この突起部352がサポートリング351を支持している。
【0040】
[端子部33]
端子部33は、上述した電熱線32が電気的に接続されるとともに、外部リード線Lが電気的に接続された給電端子部であり、外部リード線Lを介して供給された電力を電熱線32に伝えるものである。この端子部33に例えば100Vや200Vの直流電圧を供給する場合、断線時に電流が直ぐには止まらず、断線箇所にてアーク放電が起こり、管状体31を膨らましたり破裂させたりする恐れがあることから、端子部33には交流電圧を供給することが望ましい。ただし、端子部33に直流電圧を供給することを、本発明に係る加熱装置から除外するものではない。
【0041】
具体的に端子部33は、モリブデンからなる箔であり、管状体31の一端部31aに収容されて封止されるとともに、外部リード線Lとの接続箇所が絶縁物で挟み込まれている。
【0042】
然して、この端子部33は、
図3に示すように、真空チャンバS2の外部に配置されている。なお、ここでいう真空チャンバS2の外部とは、真空チャンバS2の上壁部40の内壁面42よりも外側であり、本実施形態では上壁部40の外壁面41のさらに外側に端子部33を配置している。
【0043】
より詳細に説明すると、端子部33は、真空チャンバS2が真空雰囲気に保たれている状態において、この真空雰囲気から隔てられた空間である大気圧雰囲気に配置されている。ここでの端子部33は、上述した発熱部分321から発せられた光が端子部33に直接届かない位置に設けられており、この光によって端子部33が加熱されてしまうことを抑制している。なお、端子部33は、モリブデンからなるものであり、例えば350℃以上になると、酸化が促進されて、管状体31との膨張係数の違いにより、管状体31の封止箇所などが破断する恐れがある。
【0044】
ここで、上述したように発熱部分321が発する光を端子部33に直接届かないような配置にしたとしても、その光の一部が、管状体31の内側を屈折・反射などすれば端子部33に届くこともあり、貫通部分322が光を発する場合には、その光も端子部33に届いてしまう。
【0045】
[光漏れ抑制部材37]
そこで、本実施形態のヒータ30は、
図4に示すように、管状体31の内部に設けられ、電熱線32が発する光のうち真空チャンバS2の内側から端子部33側に漏れ出る光の少なくとも一部を遮蔽する光漏れ抑制部材37をさらに備えている。
【0046】
この光漏れ抑制部材37は、遮光性を有する例えば金属製の板状のものであり、ここでは管状体31の内部空間を隔てるように設けられるとともに、これらの隔てた空間を連通するための通気部371が形成されている。
【0047】
光漏れ抑制部材37は、管状体31の一端部31a及び他端部31bの内周面に形成した上述の突起部351に支持させてあり、ここでは管状体31内における光漏れ抑制部材37の位置を、真空チャンバS2の上壁部40の内壁面42の高さと略同一にしてある。なお、管状体31内における光漏れ抑制部材37の位置はこれに限らず、内壁面42の高さから、環状シール部材6が設けられている高さまでの間であることが望ましい。このように光漏れ抑制部材37を設ければ、電熱線32から端子部33に向かう光のみならず、電熱線32から環状シール部材6に向かう光をも低減することができ、環状シール部材6の劣化をも防ぐことができる。
【0048】
[冷却機構]
さらに本実施形態の加熱装置200は、
図3に示すように、環状シール部材6を冷却する冷却機構7を備えている。
この冷却機構7は、真空チャンバS2の上壁部40に形成されて冷却媒体が流れる内部流路7Lを有するものである。この内部流路7Lは、上壁部40に設けられて冷却媒体が導入される導入ポート7aと、上壁部40に設けられて冷却媒体が導出する導出ポート7b(
図2を参照)とを連通するものであり、例えば冷却媒体が導入ポート7aから導出ポート7bまで蛇行しながら流れるように構成されている。なお、ここでの冷却媒体は冷却水であるが、冷却媒体としては気体など種々のものを用いて構わない。
また、冷媒流路7Lを設ける場所は、
図3に示す場所に限らず、取付部材50や貫通孔40h近傍の上壁部40に設けられていてもよい。さらに、気体を冷却媒体とするならば、取付部材50の上方から環状シール部材6に向けて気体を送付する構成にしてもよい。
【0049】
<<作用効果>>
このように構成された加熱装置200によれば、ヒータ30の端子部33が、真空チャンバS2の外部に配置されているので、電熱線32から端子部33に向かう光を真空チャンバS2の上壁部40の内壁面42で遮ることができ、ヒータ30を真空チャンバS2内に差し込みつつ、電熱線32の光により端子部33が加熱されてしまうことを抑制することができる。
これにより、端子部33を真空チャンバS2内に配置する構成に比べて、端子部33の許容ワット数を高くすることができ、その分電熱線32の温度を上げれば、加熱効率を向上させることができるし、電熱線32への供給電力が同程度であれば、ヒータ30の寿命を向上させることができる。
【0050】
さらに、端子部33とともにリード線Lも真空チャンバS2の外部に配置されているので、リード線Lに起因する不純物が真空チャンバS2内に発生することを防ぐことができる。
【0051】
そのうえ、仮に端子部33を真空チャンバS2内に配置した場合、端子部33に取り付けられている絶縁物の近傍から、管状体31に封入されているハロゲンガスがリークしてしまい、端子部33の周りで放電が生じてしまう恐れがあるところ、本実施形態に係るヒータ30であれば、端子部33が真空チャンバS2の外部に配置されているので、上述したガスリークによる放電の恐れはない。
【0052】
加えて、電熱線32の貫通部分322の発熱量を低くしているので、環状シール部材6への熱影響を低減することができ、環状シール部材6の劣化を低減することができる。
【0053】
さらに加えて、発熱部分321や貫通部分322から発した光が端子部33側に漏れ出ることを抑制する光漏れ抑制部材37を設けてあるので、電熱線32から端子部33に向かう光をより多くを遮ることができ、電熱線32の光により端子部33が加熱されてしまうことをより効果的に抑制することができる。
【0054】
<<その他の実施形態>>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0055】
例えば、前記実施形態では、ヒータ30をロック室S2に設けた場合について説明したが、処理室S1にヒータ30を設けて基板Wを加熱しても良いし、搬送室S3にヒータ30を設けて基板Wを加熱しても良い。この場合、処理室S1や搬送室S3が、前記実施形態で述べた真空チャンバとなる。なお、倒伏姿勢Pにあるプラテンに保持されている基板Wを加熱する場合は、ヒータ30を処理室S1の上壁部40に設けることが好ましく、起立姿勢Qにあるプラテン10に保持された基板Wを加熱する場合は、ヒータ30を処理室S1の側壁部に設けることが好ましい。
【0056】
また、前記実施形態のヒータ30は、ハロゲンランプヒータであったが、例えばカーボンヒータなど別のタイプのヒータを用いても良い。なお、カーボンヒータの具体的な実施態様としては、管状体31の内部には例えば窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを封入し、電熱線32としてカーボンフィラメントを使用したものなどが挙げられる。
【0057】
前記実施形態では、電熱線32の発熱部分321よりも貫通部分322の線径を太くしていたが、例えば発熱部分321と貫通部分322との素材を変えるなど、発熱部分321よりも貫通部分322の電気抵抗を低くする態様は前記実施形態に限られない。
【0058】
そのうえ、イオンビーム照射装置100としては、環状シール部材6への熱影響をさらに低減するべく、この環状シール部材6を例えば水冷などにより冷却する冷却機構を備えていても良い。かかる冷却機構としては、例えば真空チャンバS2の壁部の内部に冷却水などを通過させる流路を形成したものなどが挙げられる。
【0059】
さらに、前記実施形態では、管状体31の外周面に設けた環状シール部材6の位置に応じて、管状体31が真空チャンバS2内において位置決めされるように構成されていたが、
図5に示すように、管状体31の外周面に外側に突出する係止部8を設けて、この係止部8を例えば取付部材50や壁部の外壁面に係止させることで、管状体31が位置決めされるようにしても良い。
【0060】
加えて、ヒータ30が設けられている壁部の内壁面42に、ヒータ30からの熱を反射する反射板を設けることで、ヒータ30からの熱を反射板で反射させて基板Wに導くようにしても良い。これならば、基板Wをより効率良く加熱することができる。
【0061】
前記実施形態の管状体31は、一端部31a及び他端部31bから折れ曲がった直管状の長尺部31cを有していたが、長尺部31は、
図6(a)に示すように、一端部31aから他端部31bに亘って延びる円形状をなすものであっても良い。なお、ここでいう円形状とは、楕円形状や部分円弧状を含む形状である。
さらに、
図6(b)に示すように、一端部及び他端部が同じ側に配置されている場合、長尺部31は一端部及び他端部から折れ曲がることなく延びる直線状をなすものであっても良い。
【0062】
前記実施形態では、導線をコイル状に巻回してなる電熱線32の一部が真空チャンバ2S内に配置されている構成であったが、一対の端子部33を接続する導線のうち、真空チャンバS2内に配置された部分のみをコイル状にして、電熱線32の全体が真空チャンバS2内に配置された構成としても良い。
【0063】
さらに加熱装置200としては、管状体31が上壁部40に形成された貫通孔40hを貫通している状態において、管状体31の外周面と貫通孔31を形成する内周面との間の隙間を塞ぐシャッタ機構をさらに備えていても良い。
かかるシャッタ機構としては、例えば管状体31の外周面に沿った切欠きが形成されるとともに、管状体31を径方向から挟み込む一対のシャッタ部材を有し、これらのシャッタ部材が、上述した隙間を塞ぐ閉塞位置と、隙間を開放する位置との間で、上壁部40の内壁面42に沿って移動するように構成されたものを挙げることができる。
このような構成であれば、シャッタ部材を閉塞位置に移動させることにより、電熱線32から端子部33に向かう光をさらに遮蔽することができる。
なお、シャッタ機構で必ずしもシャッタ部材を移動する構成とする必要はない。一対のシャッタ部材で管状体31を径方向から挟み込んだ後、シャッタ部材を上壁部40の内壁面42に固定しておく構成としてもよい。
【0064】
前記実施形態の加熱装置200は、イオンビーム照射装置100の一部を構成するものであったが、真空チャンバS2内で基板を加熱する構成であれば、例えば真空蒸着装置など種々の装置に組み込んで用いても構わない。
【0065】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0066】
100・・・イオン注入装置(イオンビーム照射装置)
W ・・・基板
IB ・・・イオンビーム
S1 ・・・処理室
S2 ・・・ロック室
S3 ・・・搬送室
30 ・・・ヒータ
31 ・・・管状体
32 ・・・電熱線
321・・・発熱部分
322・・・貫通部分
33 ・・・端子部
37 ・・・光漏れ抑制部材