(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】中空構造体及び中空構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 3/08 20060101AFI20231221BHJP
B32B 3/26 20060101ALI20231221BHJP
B29D 22/00 20060101ALI20231221BHJP
B29C 69/00 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B32B3/08
B32B3/26 Z
B29D22/00
B29C69/00
(21)【出願番号】P 2020561460
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2019049432
(87)【国際公開番号】W WO2020129984
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2018235608
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】市野 勝久
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-526150(JP,A)
【文献】国際公開第2009/136489(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/079432(WO,A1)
【文献】特開2009-006556(JP,A)
【文献】米国特許第05034256(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 64/00-64/40,
67/00-67/08,
67/24,
69/00-69/02
B29D 1/00-29/10
B65D 6/00- 6/40,
81/00-81/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空構造体であって、前記中空構造体は、
中空構造を有する板材であって、第1スキン層と、コア層と、第2スキン層とをこの順に積層した積層体である板材と、
前記板材の端縁に沿って配置された樹脂成形部と、
を備え、
前記樹脂成形部は、
前記板材に接続された内縁と、
前記内縁の反対側の外縁と、
前記板材の端縁に沿って並ぶ複数の凹部であって、前記樹脂成形部の前記内縁よりも前記外縁に近い位置にある、複数の凹部と、を有し、
前記板材は、
厚さが一定の本体部と、
前記樹脂成形部に沿って延びる近接部
と、
前記本体部と前記樹脂成形部との間に配置される接続部であって、前記近接部を含む接続部と、
前記樹脂成形部と前記近接部との間にある、前記第1及び第2スキン層が前記コア層に当接した当接部と、
前記樹脂成形部の端縁を挟むように前記樹脂成形部の外面に現れる挟持部であって、前記樹脂成形部と前記近接部との間に位置する、挟持部と、を有し、
前記樹脂成形部の厚さは、前記本体部の厚さと等しいか、もしくは、前記本体部の厚さよりも薄く、
前記近接部において、前記第1及び第2スキン層
は互いに近づく方向に湾曲しており、
前記コア層は、第1シートを複数のセルを有するように成形した中空構造を有し、
前記第1及び第2スキン層は、前記コア層の両面にそれぞれ接合された第2及び第3シートであり、
前記凹部の底には、前記第2又は第3シートが露出しており、
前記当接部は、前記複数のセルが押し潰されるように、前記第1シートが折れ重なった部分を含み、
前記当接部の厚さは、成形前の前記第1シートと、前記第2及び第3シートとを積層した場合の厚さよりも薄い、
中空構造体。
【請求項2】
中空構造体であって、前記中空構造体は、
中空構造を有する板材であって、第1スキン層と、コア層と、第2スキン層とをこの順に積層した積層体である板材と、
前記板材の端縁に沿って配置された樹脂成形部であって、前記板材の端縁に沿って並ぶ複数の凹部を有する、樹脂成形部と、
を備え、
前記板材は、
前記樹脂成形部に沿って延びる近接部と、
前記樹脂成形部と前記近接部との間にある、前記第1及び第2スキン層が前記コア層に当接した当接部と、を有し、
前記近接部において、前記第1及び第2スキン層は互いに近づく方向に湾曲しており、
前記コア層は、第1シートを複数のセルを有するように成形した中空構造を有し、
前記第1及び第2スキン層は、前記コア層の両面にそれぞれ接合された第2及び第3シートであり、
前記凹部の底には、前記第2又は第3シートが露出しており、
前記当接部は、前記複数のセルが押し潰されるように、前記第1シートが折れ重なった部分を含み、
前記当接部の厚さは、成形前の前記第1シートと、前記第2及び第3シートとを積層した場合の厚さよりも薄く、
前記凹部の深さは、前記近接部より浅く、前記第1及び第2スキン層の厚さ以上である、
中空構造体。
【請求項3】
中空構造体の製造方法であって、前記中空構造体は、
中空構造を有する板材であって、第1スキン層と、コア層と、第2スキン層とをこの順に積層した積層体である板材と、
前記板材の端縁に沿って配置された樹脂成形部と、
を備え、
前記樹脂成形部は、
前記板材に接続された内縁と、
前記内縁の反対側の外縁と、
前記板材の端縁に沿って並ぶ複数の凹部であって、前記樹脂成形部の前記内縁よりも前記外縁に近い位置にある、複数の凹部と、を有し、
前記板材は、
厚さが一定の本体部と、
前記樹脂成形部に沿って延びる近接部と、
前記本体部と前記樹脂成形部との間に配置される接続部であって、前記近接部を含む接続部と、
前記樹脂成形部と前記近接部との間にある、前記第1及び第2スキン層が前記コア層に当接した当接部と、
前記樹脂成形部の端縁を挟むように前記樹脂成形部の外面に現れる挟持部であって、前記樹脂成形部と前記近接部との間に位置する、挟持部と、を有し、
前記樹脂成形部の厚さは、前記本体部の厚さと等しいか、もしくは、前記本体部の厚さよりも薄く、
前記製造方法は、
第1シートを成形して前記複数のセルを有する板状の前記コア層を形成することと、
前記コア層の両面にそれぞれ第2シートと第3シートとを接合して中空構造を有する積層体を形成することと、
前記積層体を第1金型及び第2金型によって挟んで、前記第1金型と前記第2金型との間に、前記積層体の端縁に沿って成形空間を画定することと、
前記成形空間内に溶融した樹脂を流入させることと、
前記成形空間内で前記溶融した樹脂を固化させて、前記端縁に沿って前記樹脂成形部を成形することと、
を含み、
前記第1金型及び前記第2金型の各々は、互いに対向する位置に、前記成形空間を画定する第1突出部及び第2突出部を有し、
前記第2突出部の突出長さは、対応する前記第1突出部の突出長さよりも短く、
前記第1突出部は、前記当接部を成形するための平坦な頂面と、前記近接部を成形するように前記頂面から内縁に向けて滑らかに延びる湾曲面と、を有し、
前記第2突出部は前記挟持部を成形するための湾曲面を有し、
前記第1金型の前記第1突出部が前記第2金型の前記第1突出部との間に形成する隙間の厚さは、成形前の前記第1シートと、前記第2及び第3シートを積層した場合の厚さよりも薄く、
前記成形空間を画定することは、前記第1金型の前記第1突出部と前記第2金型の前記第1突出部とが互いの間に位置する前記コア層を押し潰すことを含み、
前記第1金型及び前記第2金型のうち少なくとも一方は、前記複数の凹部を成形するよう
に、前記成形空間内に突出する複数の押さえ突部を有し、
前記各押さえ突部は、前記積層体の前記端縁を押さえるための先端面を有する、製造方法。
【請求項4】
中空構造体の製造方法であって、
第1シートを成形して複数のセルを有する板状のコア層を形成することと、
前記コア層の両面にそれぞれ第2シートと第3シートとを接合して中空構造を有する積層体を形成することと、
前記積層体を第1金型及び第2金型によって挟んで、前記第1金型と前記第2金型との間に、前記積層体の端縁に沿って成形空間を画定することと、
前記成形空間内に溶融した樹脂を流入させることと、
前記成形空間内で前記溶融した樹脂を固化させて、前記端縁に沿って樹脂成形部を成形することと、
を含み、
前記第1金型及び前記第2金型の各々は、互いに対向する位置に、前記成形空間を画定する第1突出部を有し、
前記第1突出部は、平坦な頂面と、前記頂面から内縁に向けて滑らかに延びる湾曲面と、を有し、
前記第1金型の前記第1突出部が前記第2金型の前記第1突出部との間に形成する隙間の厚さは、成形前の前記第1シートと、前記第2及び第3シートを積層した場合の厚さよりも薄く、
前記成形空間を画定することは、前記第1金型の前記第1突出部と前記第2金型の前記第1突出部とが互いの間に位置する前記コア層を押し潰すことを含み、
前記第1金型及び前記第2金型のうち少なくとも一方は、前記樹脂成形部に前記端縁に沿って並ぶ複数の凹部を成形するように、前記成形空間内に突出する複数の押さえ突部を有し、
前記押さえ突部の突出長さは、前記第1突出部の突出長さより短く、かつ、前記第2シートの厚さ及び前記第3シートの厚さ以上であり、
前記押さえ突部は、前記積層体の前記端縁を押さえるための先端面を有する、製造方法。
【請求項5】
前記第2シート及び前記第3シートの前記先端面に接している部分が前記溶融した樹脂の熱で溶けないように、前記成形空間内に前記溶融した樹脂を流入させるときの前記第1金型及び前記第2金型の温度は、前記溶融した樹脂の温度よりも低く設定される、
請求項
3又は4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記押さえ突部の突出長さは、前記第2シートの厚さ及び前記第3シートの厚さよりも長い、
請求項
3に記載の製造方法。
【請求項7】
前記コア層は、
前記第2シートに接する第1壁と、
前記第3シートに接する第2壁と、
前記第1壁と前記第2壁との間に延びる複数の隔壁であって、前記複数のセルを画定する隔壁と、を有し、
前記複数の隔壁のうち少なくとも一部は二層構造を有し、
前記成形空間を画定することは、
前記第1金型の前記第1突出部と前記第2金型の前記第1突出部とが互いの間に位置する二層構造の前記隔壁を押し潰すことを含む、
請求項
3~6のうちいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記成形空間を画定することは、前記第1金型及び前記第2金型が、前記溶融した樹脂を流入させるためのゲートを画定することを含み、
前記ゲート、前記押さえ突部及び前記
第1突出部を含む断面を見た場合に、前記押さえ突部は、前記成形空間内で前記ゲートと前記
第1突出部との間に位置し、かつ、前記
第1突出部よりも前記ゲートに近い位置に配置される、
請求項
3~7のうちいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、中空構造体及び中空構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、典型的な軽量折畳みコンテナを開示している。
【0003】
図13に示すように、典型的な軽量折畳みコンテナ70は、あおり板71を備えている。あおり板71は、外枠72と、外枠72に接合されたプラスチックダンボール73とを有する。上記公報は、外枠72にプラスチックダンボール73を接合する方法として、インサート成形を例示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
外枠72をインサート成形する時に、注入した樹脂がプラスチックダンボール73の内部に流入することがある。樹脂がプラスチックダンボール73の内部に過度に流入すると、外枠72の成形に必要な樹脂の量が足りなくなることがある。そうすると、外枠72の一部が形状不良になったり、中空構造であるあおり板71の重量が予め規定された重量より大きくなったりする虞がある。
【0006】
本開示の目的は、樹脂成形部が好適に形成された、軽量な中空構造体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る中空構造体は、中空構造を有する板材であって、第1スキン層と、コア層と、第2スキン層とをこの順に積層した積層体である板材と、前記板材の端縁に沿って配置された樹脂成形部と、を備える。前記板材は、前記樹脂成形部に沿って延びる近接部を有する。前記近接部において、前記第1及び第2スキン層のうち少なくとも一方は、他方に近接するように曲がっている。
【0008】
本開示の一態様に係る中空構造体の製造方法は、第1シートを成形して複数のセルを有する板状のコア層を形成することと、前記コア層の両面にそれぞれ第2シートと第3シートとを接合して中空構造を有する積層体を形成することと、前記積層体を第1金型及び第2金型によって挟んで、前記第1金型と前記第2金型との間に、前記積層体の端縁に沿って成形空間を画定することと、前記成形空間内に溶融した樹脂を流入させることと、前記成形空間内で前記溶融した樹脂を固化させて、前記端縁に沿って樹脂成形部を成形することと、を含む。前記第1金型及び前記第2金型のうち少なくとも一方は、前記成形空間内に突出する押さえ突部を有し、前記押さえ突部は、前記積層体の前記端縁を押さえるための先端面を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】
図1の中空構造体が備える板材の分解斜視図。
【
図4A】インサート成形用の金型装置及び積層体の断面図。
【
図4B】
図4Aの金型装置で積層体を挟み込んだ状態を示す断面図。
【
図4C】
図4Bの金型装置内に樹脂を流入させた状態を示す断面図。
【
図5A】
図4Aの積層体が有する位置決め用貫通孔を示す断面図。
【
図5B】
図5Aの位置決め用貫通孔を介して金型装置内で位置決めされた積層体の一部を示す断面図。
【
図5C】
図5Bの金型装置内に樹脂を流入させた状態を示す断面図。
【
図6】第1変更例に係る、金型装置及び積層体の断面図。
【
図7】第1変更例の成形された第1シートを折り畳んでいる途中の状態を示す斜視図。
【
図9】第2変更例に係る、金型装置及び積層体の断面図。
【
図10】第2変更例の成形された第1シートの斜視図。
【
図11】
図10の第1シートを折り畳んでいる途中の状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
明細書および請求の範囲において、「第1」、「第2」などの用語は、同様な構成要素を区別するために使用するものであり、必ずしも特定の連続する、または時系列に従った順番を表すために使用するのではない。
【0011】
明細書及び/または特許請求の範囲に開示された全ての特徴は、当初の開示の目的のために、ならびに、実施形態及び/または特許請求の範囲における特徴の組み合わせから独立して特許請求の範囲に記載の発明を限定する目的のために、互いに別個にかつ独立して開示されることを意図したものである。
【0012】
開示された実施形態は、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではなく、同等の機能または同じ機能を果たす別個の実施形態の特徴は、補正された請求項の範囲内で開示された実施形態間で交換することができる。端点による数値範囲の列挙は、その範囲内のすべての数を含む。例えば、1から5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5を含む。
【0013】
中空構造体の実施形態を説明する。
【0014】
図1及び
図2に示すように、中空構造体10は、中空構造を有する板材11と、樹脂成形部50とを有する。板材11の平面形状は、例えば矩形である。板材11は、少なくとも一部の端縁が、樹脂成形部50と一体化している。樹脂成形部50は、後述するように板材11をインサート成形することによって形成される。中空構造体10は、第1面と、第1面の反対側の第2面とを有する。中空構造体10は、第1面及び第2面の各々に開口するように、樹脂成形部50に間隔を空けて並ぶ複数の凹部51を有する。各凹部51は、例えば、共に円形の開口及び底を有する穴である。
【0015】
図2に示すように、板材11は、2つのスキン層20と、2つのスキン層20に挟まれたコア層30とを備える。すなわち、板材11は、第1スキン層20と、コア層30と、第2スキン層20とをこの順に積層した積層体である。板材11は、厚さが一定の本体部13と、本体部13の端縁に沿って延びる接続部14とを有する。樹脂成形部50の厚さSは、本体部13の厚さTと実質的に等しい。
【0016】
接続部14は、近接部21、当接部22及び挟持部23のうち少なくとも一つを含む。挟持部23は板材11の端縁である。挟持部23は、樹脂成形部50の端(内縁)を挟むように、樹脂成形部50の外面に現れている。当接部22は、近接部21と挟持部23との間に配置するとよい。
【0017】
近接部21、当接部22及び挟持部23の各々は、樹脂成形部50に沿って帯状に延びる。近接部21、当接部22及び挟持部23は、本体部13の外縁の全周に亘って延びる連続的なループであってもよいし、本体部13の外縁の一部に沿って延びていてもよい。
【0018】
近接部21において、第1及び第2スキン層20のうち少なくとも一方は、他方に近接するように曲がっている。本実施形態の近接部21において、第1及び第2スキン層20は、互いに近づく方向に湾曲している。
【0019】
より詳細には、近接部21は、本体部13の外面につながる第1湾曲面と、当接部22の外面につながる第2湾曲面と、第1及び第2湾曲面の間に延びる傾斜面とを有する。第1及び第2湾曲面は、板材11の外方に向けて凸となるように湾曲してもよいし、板材11の内方に向けて凹むように湾曲していてもよい。
【0020】
当接部22は、近接部21よりも板材11の外縁に近い位置、より詳細には、樹脂成形部50に隣接する位置にある。すなわち、当接部22は、樹脂成形部50と近接部21との間にある。当接部22において、第1及び第2スキン層20はコア層30に当接している。当接部22は、近接部21の全周に亘って延びていてもよい。当接部22は、近接部21の外面につながる第3湾曲面と、挟持部23の外面につながる第4湾曲面と、第3及び第4湾曲面の間に延びる傾斜面とを有する。
【0021】
挟持部23は、2つのスキン層20で樹脂成形部50を挟み込んだ部分である。挟持部23は、当接部22の全周を囲むように配置されてもよい。挟持部23は、当接部22の外面につながる第5湾曲面と、第5湾曲面につながる傾斜面とを有する。すなわち、近接部21、当接部22及び挟持部23は、湾曲面を介して滑らかに連続している。
【0022】
近接部21において、2つのスキン層20は互いの間に隙間を空けて配置されている。この隙間、すなわち2つのスキン層20同士の離間距離は、数ミリメートル(例えば、3mm)以下の範囲である。
【0023】
当接部22において、2つのスキン層20の間に挟まれたコア層30は潰れているので、当接部22は中空構造を有さない。当接部22は、樹脂成形部50との間に隙間がないように直接に隣接していてもよいし、樹脂成形部50との間に若干の距離(例えば、本体部13におけるスキン層20の厚さに相当する距離、または、本体部13の厚さに相当する距離)をあけて配置されていてもよい。
【0024】
板材11のスキン層20及びコア層30について説明する。
【0025】
図2及び
図3に示すように、板材11のコア層30は、複数の円柱状のセルCと、これらセルCを連結するように延びる連結壁33とを含む。コア層30は、第1面及び第2面を有する。第2面は、連結壁33が画定する外面である。複数のセルCは、所定の間隔で並んでいる。
図2及び
図3において、コア層30の第1面に積層されたスキン層20を第1スキン層20といい、コア層30の第2面に積層されたスキン層20を第2スキン層20という。各セルCは円盤状の端壁31と円筒状の区画壁32とによって画定される。端壁31は、第1面を画定する。区画壁32は、端壁31の外縁と連結壁33とを接続する。各セルCは、第2スキン層20に向けて開口している。各セルCの開口は、第2スキン層20によって閉じられる。
【0026】
スキン層20及びコア層30は、熱可塑性樹脂製である。スキン層20及びコア層30を構成する熱可塑性樹脂は、従来周知のものであってその材質は特に限定されない。熱可塑性樹脂の例は、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂、アクリル樹脂、またはポリブチレンテレフタレート樹脂である。スキン層20とコア層30とは、同じ材質であることが好ましい。本実施形態のスキン層20とコア層30とは、いずれもポリプロピレン樹脂製である。
【0027】
板材11の厚さは、特に限定されないが、例えば、3mm~7mmである。コア層30が有する端壁31、区画壁32、及び、連結壁33の各々の厚さは、例えば、0.1mm~0.5mmである。スキン層20の厚さは、例えば、0.3mm~0.6mmである。
【0028】
中空構造体10の製造方法について説明する。
【0029】
中空構造体10の製造方法は、積層体形成工程と、位置決め工程と、インサート工程とを有する。積層体形成工程では、板材11となる積層体19を形成する。位置決め工程では、インサート工程に先だって、積層体19の位置決めをする。インサート工程では、積層体19の縁に沿って樹脂成形部50を成形する。積層体形成工程は、位置決め工程及びインサート工程に先だって、位置決め工程及びインサート工程とは別の場所であらかじめ実施しておくこともできる。
【0030】
(積層体形成工程)
第1ロールシートから第1シートを引き出す。引き出された第1シートを加熱し、複数の円柱状の窪みを有するロール(図示省略)に接触させた状態で、ロールに対して真空引きする。これにより、複数の窪みの形状が第1シートに転写される。この複数の窪みにより、第1シートに複数のセルCが形成される。複数のセルCを有する第1シートはコア層30となる。
【0031】
次に、第2ロールシートから第2シート20を引き出す。引き出された第2シートを加熱して溶融させ、溶融した第2シート20をコア層30の第1面(複数のセルCの端壁31)に所定時間接触させる。これによって、第2シート20をコア層30に溶着させる。コア層30に接合された第2シート20は第1スキン層20となる。
【0032】
さらに、第3ロールシートから第3シート20を引き出す。引き出された第3シート20を加熱して溶融させ、溶融した第3シート20をコア層30の第2面(連結壁33)に所定時間接触させる。これによって、第3シート20をコア層30に溶着させる。コア層30に接合された第3シート20は第2スキン層20となる。以上の工程により、中空構造のコア層30を有する積層体19が形成される。
【0033】
第1~第3ロールシートは、材質が同じでもよいし、異なっていてもよい。第1~第3ロールシートが同じ材質の場合、1のロールシートから第1~第3シートの少なくとも二つを引き出してもよい。第2及び第3シート20をコア層30に接合する工程は、同時に行ってもよいし、別々に行ってもよい。
【0034】
図4Aに示すように、インサート工程で使用されるインサート成形用の金型装置60は、第1金型である固定金型61と、第2金型である可動金型62とを備える。金型61,62は、平面視において、板材11の外縁に対応する形状(例えば矩形)を有する。
【0035】
図4Aに示す断面で見ると、金型61,62の各々は、互いに対向する位置に、1以上の突出する部分を有する。各金型61,62が複数の突出する部分を有する場合、これら突出する部分は、各金型61,62内の同一平面から突出する。
【0036】
各金型61,62は、例えば、同一平面から突出する、第1突出部63、第2突出部64及び複数の押さえ突部65を有する。第1突出部63及び第2突出部64は、接続部14を成形するための型である。複数の押さえ突部65により、複数の凹部51が形成される。
【0037】
第1突出部63及び第2突出部64は、平面視において連続的なループを形成するように、帯状に延びる。本実施形態の第1突出部63及び第2突出部64は、平面視において矩形の閉じたループを形成する。
【0038】
各第2突出部64は、対応する第1突出部63と滑らかに連続している。各第2突出部64の突出長さは、対応する第1突出部63の突出長さよりも短い。各第1突出部63は、当接部22を成形するための平坦な頂面を有する。各第1突出部63は、さらに、近接部21を成形するために、頂面から内縁に向けて滑らかに延びる湾曲面を有する。各第2突出部64は挟持部23を成形するための湾曲面を有する。
【0039】
各金型61,62が有する複数の押さえ突部65は、対応する第1及び第2突出部63,64から離れた位置にある。これら押さえ突部65の突出長さは、対応する第2突出部64の突出高さと実質的に等しい。各押さえ突部65は実質的に円柱状の形状を有する。各押さえ突部65は、積層体19の端縁を押さえるための平坦な先端面を有してもよい。
【0040】
(インサート工程)
図4Bに示すように、インサート工程では、まず、金型61と金型62との間で積層体19を位置決めする。この位置決め工程については後述する。
【0041】
続いて、可動金型62を固定金型61に向けて移動させる。これにより、金型61,62は、互いの間に樹脂を成形するための成形空間Pを画定する。このとき、金型61,62は、互いの間に積層体19を挟み込む。
【0042】
積層体19は、2つの第1突出部63で挟まれた部分が押し潰される。これにより、近接部21と当接部22とが形成される。2つの第1突出部63は、成形空間Pを画定する。
【0043】
成形空間Pを画定したときに、2つの第1突出部63の間に形成される隙間の厚さは、特に限定されないが、成形前の第1シートと、第2及び第3シートとを重ねた場合の厚さ寸法と実質的に同一か、あるいは、それより薄くすることができる。ただし、この隙間が薄すぎると、板材11の強度が低下する。そのため、積層体19は、コア層30内に樹脂が流入しない程度に、すなわちコア層30内に隙間が残らない程度に、押し潰すとよい。
【0044】
成形空間P内のコア層30は、第2突出部64及び押さえ突部65で挟まれることによって、圧縮される。特に、コア層30の当接部22に隣接する部分では、区画壁32が他の部分よりも大きく座屈する。このとき、成形空間P内の積層体19の厚さは、成形空間P外にある積層体19(本体部13)の厚さよりも薄くなる。
【0045】
図4Cに示すように、2つの金型61,62は、成形空間Pを画定すると同時に、溶融状態の樹脂を流入させるためのゲート66を画定する。ゲート66は成形空間Pに連通している。ゲート66、押さえ突部65及び第1突出部63を含む断面であって、積層体19の端縁と直交する断面を見た場合に、押さえ突部65は、成形空間P内でゲート66と第1突出部63との間に位置し、かつ、第1突出部63よりもゲート66に近い位置に配置される。
【0046】
溶融状態の樹脂は、ゲート66を通じて成形空間P内に流入され、第1突出部63に向かって流れる。このとき、金型61,62の温度は、溶融した樹脂の温度よりも低くなるように、例えば、流水により一定範囲の温度に保たれている。成形空間P内に配置された積層体19の部分は、金型61,62に接している第2及び第3シート(スキン層)20の部分(押さえ突部65の先端面に接する部分を含む)を除いて、溶融した樹脂の熱によって溶融する。すなわち、金型61,62及び溶融した樹脂の温度は、押さえ突部65の先端面に接している第2及び第3シート20の部分が、溶融した樹脂の熱で溶けないように、設定される。
【0047】
積層体19は、流入された樹脂がある程度固化するまで、成形空間P内で保持される。これにより、成形空間P内には、積層体19の縁に沿って、樹脂成形部50が成形される。その後、金型61,62から積層体19及び樹脂成形部50を取り外す。これにより、樹脂成形部50内と一体化された板材11が形成される。
【0048】
図1、
図2および
図4Dに示すように、第1突出部63及び第2突出部64によって、板材11には接続部14、すなわち、近接部21、当接部22及び挟持部23が形成される。
【0049】
具体的には、板材11における第1突出部63同士で挟み込まれた部分は、当接部22になる。当接部22に隣接した位置には、近接部21が形成される。当接部22においては、1または複数の層が不規則に折れ重なることにより、部分的に隙間が生じることがある。
【0050】
帯状の当接部22の幅は、特に限定されない。ただし、当接部22の幅が広いと、強度が低下して、樹脂成形部50の自重で垂れ下がることがある。そのため、当接部22の幅は狭い方がよい。例えば、当接部22の幅は、樹脂成形部50の幅、本体部13の厚さ、または凹部51の幅(直径)より狭くてもよい。
【0051】
樹脂成形部50は、複数の押さえ突部65を抜いた跡である、複数の凹部51を有する。各凹部51の底、すなわち、押さえ突部65の先端面が接していた部分には、成形空間P内で溶けずに残った第2及び第3シート20が露出している。
【0052】
次に、金型装置60内で積層体19を位置決めする位置決め工程について説明する。
【0053】
位置決め工程に先だって、
図5Aに示すように、積層体19に、その外縁に沿って、複数の位置決め用貫通孔12を形成しておく。
【0054】
図5Bに示すように、固定金型61は、成形空間P内に突出する複数の位置決め用凸部67を有する。積層体19の各位置決め用貫通孔12に、対応する位置決め用凸部67を挿通することによって、積層体19を固定金型61内で位置決めする。位置決め用貫通孔12及び位置決め用凸部67の位置及び数は、適宜変更することができる。この位置決め後に、可動金型62を固定金型61に向けて移動させる。
【0055】
図5Cに示すように、積層体19を位置決めした状態で、溶融状態の樹脂を成形空間P内に流入させる。樹脂成形部50には、位置決め用凸部67を抜いた跡である穴が形成される。この穴の底には、溶融後に固化した樹脂が露出している。
【0056】
以上の製造工程を経ることによって、板材11と樹脂成形部50とを有する中空構造体10が得られる。
【0057】
中空構造体10は、任意の用途に使用できる。複数のセルCは、円柱形に限らず、例えば、円錐形、接頭円錐形、接頭円錐形の接頭同士を合せた形状、三角柱形、またはハーモニカ形状であってもよい。中空構造体10は、複数のセルCを含む中空構造を有するため、軽量で断熱性に優れている。中空構造体10は、これらの特性が要求される用途に好適に用いることができる。また、中空構造体10は樹脂成形部50を備えるため、軽量で強度が高く、且つ、中空部分が密封されている。そのため、断熱効果及び止水効果がある。そのため、中空構造体10は、例えば食品を運搬する折り畳みコンテナに用いることができる。
【0058】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0059】
(1)近接部21における2つのスキン層20離間距離は、本体部13における2つのスキン層20の離間距離よりも短い。そのため、インサート成形時に、溶融した樹脂が板材11(積層体19)の内部、すなわち2つのスキン層20の間に流入することを抑制することができる。仮に、溶融した樹脂が板材11の内部に流入すると、樹脂成形部50を形成するべき樹脂が不足して、樹脂成形部50に意図しない凹凸が生じることがある。その点、本実施形態では、樹脂の板材11への流入を抑制することによって、樹脂成形部50を好適に形成しつつ、中空構造体10を軽量化することができる。
【0060】
(2)近接部21では、2つのスキン層20の両方が互いに近づく方向に湾曲している。これにより、2つのスキン層20のうち、一方のみが他方のスキン層20に近づく方向に湾曲している場合と比べて、1つのスキン層20に応力が集中しないようにすることができる。
【0061】
(3)樹脂成形部50の厚さSは、本体部13の厚さTと等しい。よって樹脂成形部50が板材11よりも厚い場合と比較して、複数の中空構造体10を隙間なく積み重ねることができる。
【0062】
(4)当接部22では、2つのスキン層20の間に隙間がほとんど無い。したがって、インサート成形時に、溶融した樹脂が板材11の内部、すなわち2つのスキン層20の間に流入することをより効果的に抑制することができる。
【0063】
(5)板材11の縁を樹脂成形部50と一体化することにより、中空構造の板材11の縁を封止することができる。これにより、板材11の内部に異物、例えば、水、液体または埃、ゴミが入り込むことを防止することができる。
【0064】
(6)樹脂成形部50は、その長手方向に並ぶ複数の凹部51を有する。これら凹部51は、インサート成形時に、押さえ突部65で積層体19を押圧するために残る跡である。この押圧により、インサート成形時にスキン層20が樹脂成形部50から浮き出ることが抑制される。これにより、樹脂成形部50の表面には、溶融により一体化された樹脂が現れるので、美観が保たれる。
【0065】
(7)挟持部23が樹脂成形部50の縁を挟んでいるので、板材11と樹脂成形部50との境界を、スキン層20(第2及び第3シート20)によって画定することができる。
【0066】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例に含まれる構成同士は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0067】
・本実施形態では、近接部21において、2つのスキン層20のうち一方のみが他方に近づく方向に湾曲していてもよい。また、近接部21において、スキン層20が本体部13に対して傾斜するように直線状に延びていてもよい。すなわち、近接部21及び当接部22が湾曲面を有さず、平坦な斜面である近接部21と、平面である本体部13及び当接部22とが、角を形成するように交差してもよい。
【0068】
・当接部22において、2つのスキン層20の間にコア層30が挟まれていなくてもよい。例えば、インサート工程で流入された樹脂の熱によって、2つのスキン層20とコア層30との境界が無くなり、2つのスキン層20同士が直接当接した状態になったり、第1~第3シートが一体化した状態になったりすることもある。
【0069】
・中空構造体10は、当接部22を備えなくてもよい。
【0070】
・近接部21及び当接部22は、板材11の端縁に沿って直線状に延びてもよいし、波形のように湾曲しつつ延びてもよい。
【0071】
・樹脂成形部50の厚さSは、本体部13の厚さTよりも薄くてもよいし、厚さTより厚くてもよい。
【0072】
・板材11のうち任意の領域が樹脂成形部50に埋設されていてもよく、板材11の全体が樹脂成形部50に埋設されていてもよい。板材11(積層体19)の全体を樹脂成形部50で埋設する場合には、積層体19の縁部を押し潰して近接部21(及び当接部22)を形成した後に、積層体19を金型装置60内に配置して樹脂成形部50をインサート成形してもよい。
【0073】
・板材11の端縁は、板材11の外縁に限定されない。例えば、板材11がその厚さ方向に貫通する貫通孔を有する場合、この貫通孔の周縁が板材11の端縁となる。この場合、貫通孔の周縁に沿って樹脂成形部50を成形したり、貫通孔の周縁に沿って近接部を配置したりするとよい。こうした貫通孔は、例えば、板材11の把手として使用することができる。
【0074】
・インサート成形用の金型装置60は、位置決め用凸部67に代えて、吸引口を有してもよい。この場合、金型装置60内に配置した積層体19を吸引口から吸引することによって、積層体19を金型装置60内で位置決めすることができる。
【0075】
・固定金型61及び可動金型62の配置は変更してもよい。例えば、積層体19の下方に可動金型62を配置し、積層体19の上方に固定金型61を配置してもよい。あるいは、固定金型61と可動金型62とが積層体19を左右から挟んでもよい。さらに、可動金型62が位置決め用凸部67を有してもよい。
【0076】
・押さえ突部65の形状は、変更することができる。例えば、押さえ突部65は角柱状であってもよいし、円錐状であってもよい。また、押さえ突部65は、第2突出部64と連続していてもよい。また、金型61,62のうち少なくとも一方に貫通孔を設け、この貫通孔に挿通した押圧部材を押さえ突部65としてもよい。
【0077】
・金型61,62の少なくとも一方は、第2突出部64及び押さえ突部65の少なくとも一方を有さなくてもよい。例えば、金型61,62が共に押さえ突部65を有さない場合、樹脂成形部50には複数の凹部51が形成されない。金型61,62のうちいずれか一方のみが押さえ突部65を有してもよい。この場合、凹部51は、中空構造体10の第1面または第2面のうちいずれか一方のみに形成される。
【0078】
・金型61,62の少なくとも一方は、第1突出部63を有さなくてもよい。例えば、金型61,62のうち一方が、他方に向けて突出する第1突出部63を有する場合、「2つの第1突出部63の間に形成される隙間」は、「第1突出部63が他方の金型との間に形成する隙間」になる。
【0079】
・スキン層20とコア層30とは異なる材質であってもよく、特に、異なる種類の熱可塑性樹脂を用いてもよい。例えば、PP製の板材の外縁を、エラストマー性の樹脂成形部と一体化した場合には、衝撃吸収効果を向上させることができる。そのため、中空構造体10を落としても破損し難くすることができる。
【0080】
・板材11(積層体19)の形成方法は変更することができる。例えば、2つのスキン層20とコア層30とは、接着剤層を介して接合されてもよい。コア層30は、例えば第1及び第2変更例(
図6~
図12参照)のように、ハニカム構造の複数のセルCを有してもよい。
【0081】
・板材11の平面形状は変形することができる。例えば、板材11の平面形状は、円形または楕円形でもよい。また、板材11は、平板ではなく、部分的に、または、全体として湾曲した板であってもよい。さらに、樹脂成形部50も板材11に沿った立体的な形状を有してもよい。この場合、中空構造体10を立体的な形状にすることができる。
【0082】
・樹脂成形部50は、中空構造体10を回動させるための回動軸または回動軸の軸受けを備えてもよい。この場合、中空構造体10を折畳みコンテナの側板として利用することができる。また、樹脂成形部50は、例えばフックのような、別の部材に取り付けるための締結部を備えてもよい。この場合、締結部を介して中空構造体10を別部品、例えばより強度の高い部材と一体化させることにより、全体として強度を向上させてもよい。
【0083】
・樹脂成形部50は、板材11の縁の全体に亘って延びる閉じたループであってもよいし、板材11の縁の一部に沿って延びる開いたループであっても良い。
【0084】
・板材11と樹脂成形部50とは同じ色であってもよいし、異なる色であってもよい。板材11と樹脂成形部50の色が異なっていても、成形空間P内の第1~第3シートが溶けることなく残るのは凹部51の底のみである。樹脂成形部50の表面にスキン層20(第2及び第3シート20)が露出することがないので、外観が綺麗である。
【0085】
・当接部22と挟持部23との境界付近には、コア層30(第1シート)が溶け残ることがある。当接部22は、複数のセルCが押し潰されるように、第1シートが折れ重なって多層になった部分を含むことがある。こうした第1シートの一部は、注入された樹脂に直接触れないことがある。そうした第1シートの一部は、溶融した樹脂の熱によって溶かされることなく、当接部22に向けて押されて、当接部22の近くで溶け残る。この場合、溶けた樹脂は当接部22まで至らない。よって、コア層30が複数の層を含む場合、板材11内への樹脂の流入を抑制する効果が高い。溶け残ったコア層30(第1シート)は、挟持部23において第2及び第3シート20に挟まれているので、外部からは視認しにくい。すなわち、2つのスキン層20(第2及び第3シート20)によって樹脂成形部50の縁を挟むことにより、溶け残ったコア層30を隠すことができる。これにより、板材11内への樹脂の流入を抑制しつつ、板材11と樹脂成形部50との明瞭な境界を形成することができる。そのため、板材11の色が樹脂成形部50の色と異なっていても、両者の境界が乱れにくい。
【0086】
・当接部22の厚さ、すなわち、成形空間Pを画定したときの2つの第1突出部63の隙間の厚さは、成型前の第1シートと、第2及び第3シート20を重ねた厚さより薄くてもよい。この場合、当接部22は中空構造を有さないので、本体部13の内部に樹脂が流入することを抑制することができる。当接部22の厚さは、2つのスキン層20とコア層30の区画壁32とを重ねた厚さよりも薄くてもよい。区画壁32は、第1シートを真空引きするときに引き延ばされるため、第1シート、端壁31及び連結壁33よりも厚さが薄い。
【0087】
・
図6~
図8に示す第1変更例のように、コア層30がハニカム構造を有するようにしてもよい。第1変更例のコア層30は、
図7に示す、成形金型により成形された第1シート100を、
図8に示すように折り畳むことによって形成される。第1シート100は、シートの塑性を利用した真空成形法により成形することができる。
【0088】
図7に示すように、第1シート100は、複数の第1膨出部110及び複数の第2膨出部120を有する。膨出部110,120はX方向に帯状に延びる。第1膨出部110と第2膨出部120とは、X方向に垂直なY方向に交互に並んでいる。第1膨出部110と第2膨出部120とは、互いに反対方向に膨出している。第1膨出部110と第2膨出部120は、X方向に互いに1/2ピッチずつずれた位置にある。
【0089】
第1膨出部110は、第1膨出面110aと、一対の接続面110bと、一対の端面110cとを有する。第1膨出部110は、Y方向断面の形状が、正六角形を最も長い対角線で二分して得られる台形である。一対の端面110cは、折り畳み線Rの位置にある。端面110cと第1膨出面110aとのなす角度は約90゜である。
【0090】
第2膨出部120は、第2膨出面120aと、一対の接続面120bと、一対の端面120cとを有する。第2膨出部120は、Y方向断面の形状が、正六角形を最も長い対角線で二分して得られる台形である。一対の端面120cは、折り畳み線Qの位置にある。端面120cと第2膨出面120aとのなす角度は約90゜である。第2膨出部120のX方向の長さ、つまり、一対の端面120c間の長さは、第1膨出部110のX方向の長さ、つまり、一対の端面110c間の長さと同じである。第2膨出部120の端面120cは、第1膨出部110のX方向の中央に位置している。第1膨出部110の接続面110bと第2膨出部120の接続面120bは説明の便宜上分けているが、同じ構成を有する。
【0091】
図7に示す第1シート100は、折り畳み線R,Qに沿って順次折り畳まれる。第1シート100は、折り畳み線Rに沿って山折りされるとともに、折り畳み線Qに沿って谷折りされる。
【0092】
一つの第1膨出部110について見ると、X方向の中央部分に位置する折り畳み線Qで谷折りされて、X方向右側の第1膨出面110aとX方向左側の第1膨出面110aが互いに当接する。折り畳まれた第1膨出部110は、互いに当接した2つの第1膨出面110aが2層構造を構成する区画壁32aと、接続面110bが1層構造を構成する区画壁32bとを有する。隣り合う2つの端面110cは、面一をなすように並んで、第1壁34となる。
【0093】
一つの第2膨出部120について見ると、隣り合う2本の折り畳み線QのX方向中央に位置する折り畳み線Rで山折りされることにより、X方向右側の第2膨出面120aとX方向左側の第2膨出面120aとが互いに当接する。折り畳まれた第2膨出部120は、互いに当接した2つの第2膨出面120aが2層構造を構成する区画壁32(32a)と、接続面120bが1層構造を構成する区画壁32(32b)とを有する。隣接する2つの端面120cは、面一をなすように並んで、第2壁35となる。2層構造の区画壁32aは、互いに接合されていてもよい。
【0094】
・
図6に示すように、第1変更例の積層体19が金型61,62の間に挟まれたとき、2つの第1突出部63の間で、2つのスキン層20とコア層30とが押しつぶされる。その結果、当接部22は、2つのスキン層20に加えて、区画壁32(32a,32b)、第1壁34及び第2壁35のうちの一部または全部を含む。このように、コア層30が複数の層を含む場合、上述のように、本体部13内への樹脂の流入を抑制する効果が高い。特に、2層構造の区画壁32aは、樹脂が本体部13内への流入することをより効果的に抑制することができる。
【0095】
・
図9~
図12に示す第2変更例のように、コア層30がハニカム構造を有するように変更してもよい。第2変更例のコア層30は、
図10に示す、成形金型により成形された第1シート200を、
図11及び
図12に示すように折り畳むことによって形成される。
【0096】
図10に示すように、第1シート200には、平面領域210と膨出領域220とが第1シート200の長手方向(X方向)に交互に配置されている。平面領域210及び膨出領域220は、ともにY方向に沿って延びる。膨出領域220は、平面領域210と面一の基準面201と、基準面201からZ方向に膨出し、Y方向において膨出領域220の全体にわたって延びる第1膨出部221とを含む。第1膨出部221は、基準面201よりZ方向に膨出した第1膨出面202と、基準面201から第1膨出面202に向けて延びる接続面203と、を有する。第1膨出面202と接続面203とのなす角は90゜である。第1膨出部221のX方向の長さは、平面領域210のX方向の長さと等しく、かつ第1膨出部221の膨出高さの2倍である。
【0097】
膨出領域220は、第1膨出部221と一体形成された複数の第2膨出部222を含む。第2膨出部222は第1膨出部221の両側で互いに反対方向に延びているとともにY方向に並んでいる。各第2膨出部222は、基準面201より膨出した第2膨出面204と、基準面201から第2膨出面204まで斜めに延びる2つの傾斜面205と、第2膨出面204及び2つの傾斜面205と交差する端面206と、を有する。第2膨出面204は、第1膨出面202と面一をなす。各第2膨出面204は、Y方向に延びる第1膨出面202と直交するようにX方向に延びる。各第2膨出部222をX方向と直交する面で切った断面は、正六角形を最も長い対角線で二分して得られる台形である。第2膨出部222の膨出高さは第1膨出部221の膨出高さと等しい。また、Y方向に並ぶ第2膨出部222の間隔は、第2膨出面204の幅と等しい。
【0098】
図11及び
図12に示すように、第1シート200は、折り畳み線R,Qに沿って折り畳まれる。具体的には、第1シート200を、平面領域210と膨出領域220との折り畳み線Rにて谷折りするとともに、第1膨出部221の第1膨出面202と接続面203との折り畳み線Qにて山折りしてX方向に収縮する。そして、第1膨出部221の第1膨出面202と接続面203とが折り重なるとともに、第2膨出部222の端面206と平面領域210とが折り重なることによって、一つの膨出領域220に対して一つのY方向に延びる角柱状の区画体230が形成される。こうした区画体230がX方向に連続して形成されていくことにより中空板状のコア層30が形成される。
【0099】
第2変更例のコア層30は、第1膨出面202と接続面203とによって形成される第1壁36と、端面206と平面領域210とによって形成される第2壁37とを有する。第2変更例のセルCは、第1セルC1と、第2セルC2とを含む。第1セルC1は、隣り合う2つの区画体230の間に区画形成される六角柱形状の領域である。第2セルC2は、第2膨出部222が折り畳まれて区画形成される六角柱形状の領域である。傾斜面205と基準面201とが第1セルC1の区画壁32となる。第2膨出面204及び傾斜面205は第2セルC2の区画壁32となる。第2膨出面204同士の当接部位、及び基準面201同士の当接部位が形成する区画壁32は、2層構造を有する。
【0100】
・
図9に示すように、第2変更例の積層体19が2つの第1突出部63に挟まれると、2つのスキン層20とコア層30とが押しつぶされる。この場合、当接部22は、2つのスキン層20に加えて、コア層30を構成する複数の層を含む。このように、コア層30が複数の層を含む場合、板材11内への樹脂の流入を抑制する効果が高い。特に、第1シート200を折り畳んで形成した区画壁32は、二層構造を含むため、板材11内へ樹脂が流入することをより効果的に抑制することができる。
【0101】
・
図6及び
図9の変更例に示すように、複数の押さえ突部65は、金型61,62が挟み込む積層体19の外縁近くに配置してもよい。この場合、凹部51は、樹脂成形部50の外縁に接する位置または外縁の近くに形成される。言い換えると、樹脂成形部50は、板材11に接続された内縁と、内縁の反対側の外縁とを有し、複数の凹部51は、樹脂成形部50の内縁よりも外縁に近い位置にあってもよい。
【0102】
第2突出部64及び押さえ突部65で積層体19を押圧するとき、2つのスキン層20の外縁が互いに離れるように折れ曲がることがある。このように曲がったスキン層20が金型61,62に接触すると、接触した部分が不規則に溶け残ることがある。不規則に溶け残ったスキン層20が樹脂成形部50の表面に現れると、中空構造体10の美観が損なわれることがある。その点、押さえ突部65が積層体19の外縁または外縁近くを押さえると、スキン層20の折れ曲がりを抑制することができる。
【0103】
・押さえ突部65の突出長さ、すなわち凹部51の深さは、変更することができる。例えば、押さえ突部65の突出長さ(凹部51の深さ)は、一のスキン層20の厚さと同じまたはそれより長くてもよい。
【0104】
・
図6及び
図9の変更例に示すように、積層体19を金型装置60内に位置決めした状態で、各押さえ突部65の外縁(
図9では左端縁)から外方(
図9では左方)に延びる第2及び第3シート20(スキン層20)の長さよりも、各押さえ突部65の突出長さ(凹部51の深さ)の方が長くてもよい。この場合、押さえ突部65で押さえられた第2及び第3シート20が折れ曲がったり、折れ曲がった部分が溶け残ったりしたとしても、第2及び第3シート20が樹脂成形部50の表面に露出しない。
【0105】
・押さえ突部65の先端面の最大長さ(直径)、すなわち凹部51の開口長さ(直径)は、変更することができる。例えば、押さえ突部65の直径(凹部51の直径)は、セルCの直径(ハニカム構造の場合は、正六角形の最も長い対角線)よりも長くてもよい。
【0106】
第1及び第2変更例のように、第1シートを折り畳んでハニカム構造のコア層30を形成する場合、複数のセルCは、六角柱の形状が部分的にゆがんだり、直線状に並ばなかったりすることがある。したがって、金型61,62の各々が有する第1突出部63、第2突出部64及び押さえ突部65は、区画壁32の配置が一様でない領域を押すことがある。