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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】電気手術器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20231221BHJP
   A61B 18/18 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
A61B18/14
A61B18/18 100
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020566770
(86)(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 EP2019063488
(87)【国際公開番号】W WO2019228927
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-11
(31)【優先権主張番号】1808810.4
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512008495
【氏名又は名称】クレオ・メディカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CREO MEDICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック,クリストファー・ポール
(72)【発明者】
【氏名】バーン,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】シャー,パラブ
【審査官】神ノ田 奈央
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/202737(WO,A1)
【文献】特表2017-534408(JP,A)
【文献】特開2011-251116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
A61B 18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気手術器具であって、
マイクロ波エネルギー及び無線周波エネルギーを伝達するための同軸給電ケーブルであって、内部導体、外部導体、及び前記内部導体と前記外部導体とを分離する誘電材料を有する、前記同軸給電ケーブルと、
前記マイクロ波エネルギー及び前記無線周波エネルギーを受け取るために、前記同軸給電ケーブルの遠位端に配置された放射先端であって、
縦方向に伸長する誘電体と、
前記誘電体の表面に配置された遠位電極及び近位電極であって、前記縦方向に伸長する誘電体の中間部分によって前記縦方向で互いから物理的に分離される、前記遠位電極及び前記近位電極と、
前記縦方向に伸長する誘電体の前記中間部分に取り付けられ、前記内部導体に電気的に接続された同調素子であって、前記同調素子が前記誘電体の前記中間部分内に取り付けられた導電体を備える同調素子と
を備える、前記放射先端とを備え、
前記遠位電極が、前記内部導体に電気的に接続され、
前記近位電極が、前記外部導体に電気的に接続され、
前記遠位電極及び前記近位電極が、前記無線周波エネルギーを送達するためのアクティブ電極及びリターン電極として構成され、
前記放射先端が前記マイクロ波エネルギーを放出するためのアンテナとして動作できる、前記電気手術器具。
【請求項2】
前記遠位電極が、前記誘電体の前記表面上に第1の導電リングを含む、請求項1に記載の電気手術器具。
【請求項3】
前記近位電極が、前記誘電体の前記表面上に第2の導電リングを含み、
前記内部導体が、前記第2の導電リングを通過する導体を介して前記遠位電極に接続される、請求項1に記載の電気手術器具。
【請求項4】
前記内部導体が前記誘電体を通って伸長し、
前記内部導体が、前記内部導体から半径方向に伸長する導電性接続素子によって前記遠位電極に電気的に接続される、請求項1または請求項2に記載の電気手術器具。
【請求項5】
前記近位電極及び前記遠位電極が同じ寸法を有する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電気手術器具。
【請求項6】
前記外部導体が前記近位電極で終端する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電気手術器具。
【請求項7】
前記導電体が、前記誘電体の中に伸長する前記内部導体の一部分の回りに取り付けられたスリーブである、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電気手術器具。
【請求項8】
前記同調素子が、前記遠位電極及び前記近位電極の縦方向分離に満たない縦方向長さを有する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電気手術器具。
【請求項9】
前記誘電体が、前記外部導体の遠位端を越えて伸長する前記誘電材料の突出部分を備える、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電気手術器具。
【請求項10】
前記同調素子が、前記誘電材料の前記突出部分内に取り付けられる、請求項9に記載の電気手術器具。
【請求項11】
前記縦方向に伸長する誘電体の前記中間部分が、前記誘電材料の前記突出部分の上に取り付けられた絶縁カラーを備える、請求項9または請求項10に記載の電気手術器具。
【請求項12】
前記遠位電極、前記中間部分、及び前記近位電極の外面が前記放射先端に沿って同一平面上にある、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の電気手術器具。
【請求項13】
前記同調素子が、前記アンテナの結合効率を改善するキャパシタンスを導入するように選択された寸法を有する、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の電気手術器具。
【請求項14】
前記放射先端が誘電チョークをさらに含む、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の電気手術器具。
【請求項15】
生体組織を治療するための電気手術システムであって、前記電気手術システムが、
マイクロ波エネルギー及び無線周波エネルギーを供給するように構成された電気手術発生器と、
前記電気手術発生器から前記マイクロ波エネルギー及び前記無線周波エネルギーを受け取るように接続された、請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の電気手術器具と、を備える、前記電気手術システム。
【請求項16】
患者の体内へ挿入するための可撓性挿入コードを有する外科用スコーピングデバイスをさらに備え、
前記可撓性挿入コードがその長さに沿って通る器具チャネルを有し、
前記電気手術器具が、前記器具チャネル内に嵌合する寸法で作られる、請求項15に記載の電気手術システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的組織を切除するために生体組織にマイクロ波エネルギー及び/または無線周波エネルギーを送達するための電気手術器具に関する。プローブは、内視鏡またはカテーテルのチャネルを通して挿入される場合もあれば、腹腔鏡手術または観血手術で使用される場合もある。器具は、肺の応用例または胃腸の応用例で使用される場合もあるが、このようなものに制限されない。
【背景技術】
【0002】
電磁(EM)エネルギー、ならびに特にマイクロ波エネルギー及び無線周波(RF)エネルギーは、体内組織を切断する、凝固させる、及び切除するその能力のために電気外科手術では有用であることが判明している。通常、体内組織へEMエネルギーを送達するための装置は、EMエネルギー源を含む発生器、及び組織にエネルギーを送達するための、発生器に接続された電気手術器具を含む。従来の電気手術器具は、多くの場合、患者の体の中に経皮的に挿入されるように設計されている。しかしながら、例えば標的部位が動いている肺または胃腸(GI)管の薄壁部分にある場合、体内で経皮的に器具を位置付けることは困難である場合がある。他の電気手術器具は、気道または食道もしくは結腸の管腔などの体内のチャネルを通すことができる外科用スコーピングデバイス(例えば、内視鏡)によって標的部位に送達される場合がある。これにより、低侵襲治療が可能になり、患者の死亡率を下げ、術中及び術後の合併症の発生率を下げることができる。
【0003】
マイクロ波EMエネルギーを使用する組織切除は、生体組織がおもに水で構成されているという事実に基づいている。人間の柔らかな臓器組織は、通常、70%から80%水分を含んでいる。水の分子は、恒久的な電気双極子モーメントを有し、分子全体に電荷の不均衡が存在することを意味する。この電荷不均衡により、時間とともに変化する電場の印加により生成される力に応えて分子は移動し、その電気双極子モーメントを印加された電場の極性に合わせるように、分子が回転することを引き起こす。マイクロ波の周波数では、高速分子振動は、摩擦加熱をもたらし、結果として生じる熱の形をとる場エネルギーの散逸をもたらす。これは誘電加熱として知られている。
【0004】
この原理は、局所化した電磁場のマイクロ波周波数での印加によって、標的組織の中の水の分子が急速に加熱され、組織凝固及び細胞死を生じさせるマイクロ波アブレーション治療で利用される。肺及びその他の体組織における様々な状態を治療するために、マイクロ波放射プローブを使用することが知られている。例えば、肺において、マイクロ波放射線は、喘息を治療し、腫瘍または病変を切除するために使用できる。
【0005】
RF EMエネルギーは、生体組織の切断及び/または凝固のために使用できる。RFエネルギーを使用した切断の方法は、電流が(細胞のイオン含有物、つまりナトリウム及びカリウムによって支援されて)組織基質を通過するにつれ、組織全体での電子の流れに対するインピーダンスが熱を発生させるという原理に基づいて動作する。純正弦波が組織基質に印加されると、細胞内では、組織の水分を蒸発させるほど十分な熱が発生する。したがって、細胞膜によって制御できない細胞の内圧の大きな上昇があり、細胞破壊につながる。これが広域にわたって発生すると、組織が横に切断されたことが分かる。
【0006】
RF凝固は、より効率的ではない波形を組織に印加することにより作用し、それにより蒸発する代わりに、細胞含有物は約65℃まで加熱される。これは、乾燥によって組織を完全に乾燥させ、血管壁の中のタンパク質及び細胞壁を構成するコラーゲンも変性させる。タンパク質を変性させることは、凝固カスケードに対する刺激として機能するため、凝血が強化される。同時に、細胞壁の中のコラーゲンは、棒状の分子からコイルに変性され、このことが血管を収縮させ、大きさを縮小させ、クロットにアンカーポイントを与え、詰まる領域をより小さくする。RFエネルギーを使用して組織を切断する、または凝固させるための既知のシステムは、多くの場合、患者の標的組織の中に針電極を挿入すること、及び患者の皮膚表面上にリターン電極を設置することを伴う。第1の電極及びリターン電極は、ともにRF信号発生器に接続される。RFエネルギーは次いで第1の電極に印加される場合があり、このことが標的組織の加熱及び切除/凝固を生じさせる場合がある。リターン電極は、RFエネルギーが患者の体から漂遊RFエネルギーを取り除くためにRFエネルギーのための帰還路を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
最も一般的には、本発明は、1対の縦方向に間隔をあけて配置された電極が、効果的な双極RFアブレーション及び/または凝固と、器具先端の回りで抑制される場の形状を有するマイクロ波アブレーションの両方を可能にするために中間同調素子と結合される、マイクロ波エネルギーと無線周波(RF)エネルギーの両方を送達するための電気手術器具を提供する。
【0008】
電気手術器具は、RFエネルギーとマイクロ波エネルギーの両方を使用し、生体組織を切断及び/または切除するために使用され得る。RFエネルギー及びマイクロ波エネルギーは、別々に(例えば、連続して)または組み合わせて印加されてよい。本発明の電気手術器具の優位点は、同じ器具を使用し、RFエネルギー及びマイクロ波エネルギーを別々にまたは同時に印加し得るので、外科手術中の器具の入れ替えに費やされる場合がある時間がより少ない点である。特に、本発明は、RFエネルギー及びマイクロ波エネルギーの印加を切り替えることまたは変えることによって、器具の機能または有効な処置量の迅速な変更を可能にする。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、マイクロ波エネルギー及び無線周波エネルギーを伝達するための同軸給電ケーブルであって、内部導体、外部導体、及び内部導体と外部導体とを分離する誘電材料を有する該同軸給電ケーブルと、マイクロ波エネルギー及び無線周波エネルギーを受け取るために同軸ケーブルの遠位端に配置された放射先端であって、縦方向に伸長する誘電体、誘電体の表面に配置された遠位電極及び近位電極であって、縦方向に伸長する誘電体の中間部分によって互いから物理的に分離される、遠位電極及び近位電極、ならびに縦方向に伸長する誘電体の中間部分に取り付けられた同調素子を含む放射先端と、を含む電気手術器具が提供され、遠位電極は内部導体に電気的に接続され、近位電極は外部導体に電気的に接続され、遠位電極及び近位電極が、無線周波エネルギーを送達するためのアクティブ電極及びリターン電極として構成され、放射先端はマイクロ波エネルギーを放出するためのアンテナ(例えば、ダイポールアンテナ)として動作できる。
【0010】
器具は、体内の標的組織を切除するために動作し得る。デバイスは、肺または子宮の組織の切除に特に適しているが、デバイスは他の器官の組織を切除するためにも使用し得る。標的組織を効率的に切除するために、放射先端は、可能な限り標的組織の近くに(及び多くの場合内側に)位置決めされる必要がある。(例えば、肺の中の)標的組織に達するために、デバイスは、通路(例えば、気道)を通して及び障害物の回りで誘導される必要がある場合がある。つまり、器具は、理想的には、可能な限り可撓性であり、小さい断面を有する。特に、デバイスは、狭くかつ曲がりくねっている場合がある細気管支などの狭い通路に沿って先端を誘導する必要がある場合がある、その先端近くで非常に可撓性である必要がある。
【0011】
近位電極及び遠位電極はそれぞれ外部導体及び内部導体に電気的に接続されているので、近位電極及び遠位電極は、双極RF電極としての機能を果たすために同軸給電ケーブルに沿って伝達されるRFエネルギーを受け取り得る。このようにして、近位電極及び遠位電極に無線周波エネルギーを伝達することによって、電極間にまたは電極の回りに位置する生体組織は、切除及び/または凝固され得る。さらに、近位電極と遠位電極との間の縦方向の間隔により、マイクロ波エネルギーが同軸給電ケーブルに沿って伝達されるとき、近位電極及び遠位電極はダイポールアンテナの極として動作できる。したがって、マイクロ波エネルギーが同軸給電ケーブルに沿って伝達されるとき、放射先端はマイクロ波ダイポールアンテナとして動作し得る。近位電極及び遠位電極の間隔は、使用されるマイクロ波周波数、及び標的組織によって引き起こされる負荷に依存する場合がある。
【0012】
したがって、放射先端の構成によって、RFエネルギーとマイクロ波エネルギーの両方を使用した組織の治療が可能になる。特に、本発明の電気手術器具により、第1の電極と第2の電極との間のRF凝固/切除を可能にするために、第2の電極に対する電気的な接続を維持しながら放射先端からのマイクロ波エネルギーを放出することが可能になる。いくつかの優位点は、RFエネルギーとマイクロ波エネルギーの両方を使用し、組織を切断し、切除する能力と関連付けられている。第1に、RFエネルギーまたはマイクロ波エネルギーを使用し、組織を切除するために器具を交換することは必要ではないので、外科手術中に時間を節約し得る。また、RFアブレーションとマイクロ波アブレーションを切り替える能力によって、電気手術器具の熱管理の改善も可能になる。これは、同軸給電ケーブル内のマイクロ波周波数での減衰EMエネルギーが、RF周波数でよりも大きい場合があるためである。結果として、マイクロ波エネルギーからRFエネルギーに切り替えると、同軸給電ケーブル内で散逸されるエネルギーがより少なくなり、同軸給電ケーブルの温度が下がり得る。
【0013】
RF組織切除/凝固中、局所的な電流経路が近位電極と遠位電極との間に(例えば、標的組織を介して)形成される場合がある。これにより、従来のRF単極電気手術システムの(例えば、リターンパッドでの加熱に起因する)リターンパッドで発生するであろう皮膚火傷のリスクを回避し得る。さらに、(遠隔リターンパッドを使用することと対照的に)局所的な電流路を作成することによって、患者の体内の迷走電流によるけがのリスクを低減し得る。また、双極RF構成は、リターンパッドへの接触が不十分または高インピーダンスであるためにエネルギーが発生しないまたはエネルギーが低下するリスクも低減する。RF組織切除中に起こる場合がある影響は、組織の中での加熱による標的組織のインピーダンスの上昇である。これにより、経時的なRFアブレーションの効果は低減する場合があり、これは「ドロップオフ」効果として知られている。したがって、マイクロ波アブレーションは、標的組織の中の温度上昇にあまり敏感ではない場合があるため、RFエネルギー送達をマイクロ波エネルギー送達に切り替えることによって、ドロップオフ効果を回避できる場合がある。また、RFアブレーションの有効性も、標的組織の中での血液または他の流体の流れ(灌流)によって影響を受ける場合があり、このことがRFエネルギーの加熱効果を弱める場合がある。マイクロ波アブレーションは、灌流の影響をより受けづらい場合があり、その結果RFエネルギーからマイクロ波エネルギーへ切り替えることにより、灌流の影響が懸念事項である場合に切除性能を高め得る。
【0014】
さらに、発明者は、RFエネルギーとマイクロ波エネルギーを切り替えることによって、器具の(「切除プロファイル」とも呼ばれる)放射プロファイルを変更することが可能であることに気付いた。言い換えると、電気手術器具によって切除される組織の体積の大きさ及び形状は、RFエネルギー及びマイクロ波エネルギーを切り替えることによって調整し得る。これにより、外科手術中に器具を交換する必要なしに、元の位置で切除プロファイルを変更できる場合がある。これは、エネルギー送達プロファイルの制御の1つの形である。さらに、近位電極、同調素子、及び遠位電極の物理的構成及び電気的構成の組み合わせは、近位電極及び遠位電極のない電気手術器具と比較して、マイクロ波エネルギーの放射プロファイルの形状を強化するために役立つ場合がある。特に、近位電極及び遠位電極は、放射先端の回りに放射エネルギーを集中させ、同軸給電ケーブルに沿って後方下方に延在する放射線尾部を低減するために役立つ場合がある。
【0015】
同軸給電ケーブルは、電気手術発生器に一端で接続可能である従来の低損失同軸ケーブルである場合がある。特に、内部導体は、同軸給電ケーブルの縦軸に沿って伸長する細長い導体である場合がある。例えば、第1の誘電材料は、内部導体がそれを通って伸長するチャネルを有する場合があるなど、誘電材料は、内部導体の回りに配置される場合がある。外部導体は、誘電材料の表面に配置される導電材料から作られるスリーブであってよい。同軸給電ケーブルは、ケーブルを絶縁し、保護するための外側保護シースをさらに含んでよい。いくつかの例では、保護シースは、組織がケーブルに付着するのを防ぐために付着防止材料から作られてよい、または付着防止材料で被覆されてよい。放射先端は、同軸給電ケーブルの遠位端に位置し、同軸給電ケーブルに沿って標的組織の中に伝達されるEMエネルギーを送達するために役立つ。放射先端は、同軸給電ケーブルに恒久的に取り付けられる場合もあれば、放射先端は、同軸給電ケーブルに取り外し可能に取り付けられる場合もある。例えば、コネクタは、放射先端を受け入れ、必要とされる電気接続を形成するように構成される同軸給電ケーブルの遠位端に設けられてよい。
【0016】
誘電体は、一般的に円筒形であってよい。遠位電極及び近位電極は、誘電体の円周方向の外面に配置されてよい。つまり、遠位電極及び近位電極は放射先端の表面に露出している。遠位電極は、放射先端の表面に配置される導電材料から作られたパッドを含んでよい。同様に、近位電極は、放射先端の表面に配置される導電材料のパッドを含んでよい。近位電極及び遠位電極は、任意の適切な形状を有してよく、その形状は、放射先端の所望の放射プロファイルを得るために選ばれてよい。遠位電極は、内部導体に直接的にまたは間接的に接続されてよい。例えば、遠位電極は、内部導体と遠位電極との間で伸長する中間導体を介して内部導体に接続されてよい。同様に、近位電極は、外部導体に直接的にまたは間接的に接続されてよい。外部導体は、近位電極で終端してよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、放射先端は、同軸給電ケーブルの遠位端から外部導体の一部分を取り除くことによって形成されてよい。近位電極が導電リングを含む場合、導電リングは外部導体の遠位端に形成されてよい。いくつかの例では、導電リングは、その遠位端で外部導体の露出部分によって形成されてよい。
【0018】
一例では、遠位電極は、誘電体の表面上に第1の導電リングを含んでよい。第1の導電リングは、例えば、放射先端の表面の回りに配置された導電材料のループであってよい。第1の導電リングは、それが電気手術器具の縦軸のほぼ中心に置かれるように配置されてよい。これにより、器具の縦軸の回りでの放射先端の放射プロファイルの対称性が改善され得る。いくつかの例では、第1の導電リングは、例えばそれが中空の円筒状導体によって形成される場合があるなど、円筒形の形状を有する場合がある。遠位電極の円筒形の形状は、器具の縦軸の回りで対称である放射プロファイルを生じさせるために役立つ場合がある。
【0019】
同様に、近位電極は、誘電体の表面上に第2の導電リングを含む場合があり、内部導体は、第2の導電リングを通過する導体を介して遠位電極に接続される。第2の導電リングは、例えば、放射先端の表面の回りに配置された導電材料のループであってよい。第2の導電リングは、それが電気手術器具の縦軸のほぼ中心に置かれるように配置されてよい。これにより、器具の縦軸の回りでの放射先端の放射プロファイルの対称性が改善され得る。第2の導電リングは、内部導体を遠位電極に接続するために導体が通過する通路を画定してよい。
【0020】
近位電極及び遠位電極は同じ寸法を有してよい。同じ長さの近位電極及び遠位電極を使用することは、2つの電極が、RFエネルギーを用いた切除中にほぼ同じ温度に留まることを確実にするのに役立つ場合がある。また、これは、切除が電極の一方のより近くで優先的に発生しないことを確実にするのにも役立つ場合があり、その結果より一様な切除プロファイルが達成され得る。
【0021】
遠位電極及び近位電極の縦方向の分離は、中間部分の長さを含む場合がある。したがって、遠位電極及び近位電極は、この長さにわたって互いから電気的に絶縁されてよい。遠位電極は、放射部分の遠位端により近い(例えば、器具の遠位先端により近い)場合がある。一方、近位電極は、放射先端の近位端により近い(例えば、同軸給電ケーブルの遠位端により近い)場合がある。
【0022】
誘電体は、外部導体の遠位端を越えて伸長する同軸ケーブルの誘電材料の突出部分を含んでよい。これにより、放射先端の構造は簡略化され、放射先端と同軸給電ケーブルとの間の境界でのEMエネルギーの反射が回避され得る。別の例では、同軸給電ケーブルの誘電材料とは異なる第2の誘電材料が、放射先端の誘電体を形成するために使用されてよい。第2の誘電材料は、マイクロ波エネルギーを標的組織に送達する効率を改善するために標的組織とのインピーダンス整合を改善するように選択されてよい。他の例では、放射先端は、所望されるように放射プロファイルを形作るために選択され、構成される異なる複数個の誘電材料を含んでよい。
【0023】
同軸ケーブルの内部導体は、遠位電極に電気接続を提供するために誘電体を通って外部導体の遠位端を越えて伸長してよい。内部導体は、内部導体から半径方向に伸長する導電性接続素子によって遠位電極に電気的に接続されてよい。導電性接続素子は、内部導体と遠位電極との間で接続される(例えば、溶接されるまたははんだ付けされる)1個の導電材料であってよい。導電性接続素子は、内部導体から側面方向に伸長し、それが(器具の縦方向に一致する)内部導体の縦方向に対して角度をつけた方向に伸長することを意味する。例えば、導電性接続素子は、内部導体に対して90°の角度を有している場合がある。導電性接続素子は、内部導体と遠位電極との間で伸長するいくつかの「分岐」(例えば、ワイヤ)を含んでよい。分岐は、器具の軸方向の対称性を改善するために、器具の縦軸の回りで対称的に配置されてよい。いくつかの例では、導電性接続素子は、接続の軸方向の対称性をさらに改善するために、内部導体の回りに配置され、内部導体と遠位電極との間で接続されたリングを含んでよい。
【0024】
同調素子は、誘電体の中間部分内に取り付けられた導電体を含んでよく、導電体は内部導体に電気的に接続されている。同調素子は、アンテナの結合効率を改善するためのキャパシタンスを導入するために選択された寸法を有してよい。内部導体が放射先端の中に伸長する場合、導電性同調素子は放射先端の中に伸長する内部導体の部分に位置決めされてよい。内部導体が中間導体によって遠位電極に接続されている場合、導電性同調素子は、中間導体上に配置されていてもよい。導電性同調素子は、組織から反射されるエネルギーの量を低減することによって標的組織の中へのEMエネルギーの結合効率を改善するために役立つ場合がある。導電体は、誘電体の中に伸長する内部導体の一部分の回りに取り付けられたスリーブであってよい。
【0025】
同調素子は、遠位電極及び近位電極の縦方向分離に満たない縦方向長さを有してよい。同調素子は、誘電材料の突出部分内に取り付けられる場合がある。
【0026】
縦方向に伸長する誘電体の中間部分は、誘電材料の突出部分の上に取り付けられた電気絶縁カラーを含んでよい。カラーは、遠位電極、中間部分、及び近位電極の外面が放射先端に沿って同一平面になるように構成されてよい。
【0027】
縦方向に伸長する誘電体の中間部分は、誘電材料の突出部分の上に取り付けられた電気絶縁性のカラーを含んでよい。カラーは、遠位電極、中間部分、及び近位電極の外面が放射先端に沿って同一平面になるように構成されてよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、放射先端は、誘電チョークをさらに含んでよい。誘電チョークは、放射先端で反射されて同軸給電ケーブルを下って戻るEMエネルギーの伝搬を低減するために、外部導体に対して(例えば、外部導体と近位電極との間に)取り付けられた1個の電気絶縁材料であってよい。これにより、放射先端の放射プロファイルが、同軸給電ケーブルに沿って伸長する量が低減され、強化された放射プロファイルが提供され得る。
【0029】
上述した電気手術器具は、完全な電気手術システムの一部を形成し得る。例えば、システムは、マイクロ波エネルギー及び無線周波エネルギーを供給するように構成された電気手術発生器と、電気手術発生器からマイクロ波エネルギー及び無線周波エネルギーを受け取るために接続された本発明の電気手術器具とを含んでよい。電気手術装置は、患者の体内への挿入のための可撓性挿入コードを有する外科用スコーピングデバイス(例えば、内視鏡)をさらに含んでよく、可撓性挿入コードは、その長さに沿って通る器具チャネルを有し、電気手術器具は、器具チャネル内に嵌合する寸法で作られる。
【0030】
本明細書では、「マイクロ波」は、400MHz~100GHzの周波数範囲を示すために幅広く使用され得るが、好ましくは1GHz~60GHzの範囲である。マイクロ波EMエネルギーの好ましいスポット周波数は、915MHz、2.45GHz、3.3GHz、5.8GHz、10GHz、14.5GHz、及び24GHzを含む。5.8GHzが好ましい場合がある。対照的に、本明細書は、例えば、最高で300MHzまでなど、少なくとも3桁低い周波数範囲を示すために、「無線周波数」または「RF」を使用する。好ましくは、RFエネルギーは、神経刺激を妨げるために十分高く(例えば、10kHzより大きい)、組織のブランチングまたは熱の拡散を妨げるために十分に低い(例えば、10MHzより低い)周波数を有する。RFエネルギーの好ましい周波数範囲は、100kHzと1MHzとの間であってよい。
【0031】
本明細書では、用語「近位」及び「遠位」は、治療部位からそれぞれより遠い、及びより近い電気手術器具の端部を指す。したがって、使用中、遠位端が、治療部位、つまり患者の中の標的部位により近いのに対し、電気手術器具の近位端は、RFエネルギー及び/またはマイクロ波エネルギーを提供するための発生器により近い。
【0032】
用語「導電性」は、本明細書では、文脈上他の意味に解釈する場合を除いて、電気的に導電性を意味するために使用される。
【0033】
以下で使用される用語「縦方向」は、同軸伝送回線の軸に平行な電気手術器具の長さに沿った方向を指す。用語「内部」は、器具の中心(例えば、軸)に半径方向により近いことを意味する。用語「外部」は、器具の中心(軸)から半径方向により遠いことを意味する。
【0034】
用語「電気手術」は、手術中に使用され、マイクロ波及び/または無線周波電磁(EM)エネルギーを利用する器具、装置、または道具に関して使用される。
【0035】
本発明の例は、添付図面に関して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の一実施形態である組織切除のための電気手術システムの概略図である。
図2】本発明の一実施形態である電気手術器具の概略側面図である。
図3図2の電気手術器具の概略断面側面図である。
図4】本発明の一実施形態である電気手術器具のためのシミュレーションされた放射プロファイルを示す図である。
図5】本発明の一実施形態ではない電気手術器具のシミュレーションされた放射プロファイル、及び本発明の一実施形態である電気手術器具のシミュレーションされた放射プロファイルを比較する図である。
図6】本発明の一実施形態ではない電気手術器具の概略断面側面図である。
図7】本発明の実施形態である電気手術器具のシミュレーションされたリターンロスのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図に示されている実施形態は、原寸に比例して描かれていないことに留意されたい。
図1は、侵襲性の電気手術器具の遠位端にマイクロ波エネルギー及び無線周波エネルギーを供給できる完全な電気手術システム100の概略図である。システム100は、マイクロ波エネルギー及び無線周波エネルギーを制御可能に供給するための発生器102を含む。この目的に適した発生器は、参照により本明細書に援用されるWO第2012/076844号に説明される。発生器は、送達のための適切な電力レベルを決定するために器具から折り返し受信する反射信号を監視するように構成されてよい。例えば、発生器は、最適な供給電力レベルを決定するために、器具の遠位端で見られるインピーダンスを計算するように構成されてよい。発生器は、患者の呼吸周期に一致するように変調される一連のパルスで電力を送達するように構成されてよい。これにより、肺が収縮しているときに電力送達が行われるようになる。
【0038】
発生器102は、インタフェースケーブル104によってインタフェースジョイント106に接続される。必要とされる場合、インタフェースジョイント106は、例えば1つ以上の制御線またはプッシュロッド(図示せず)の縦方向(前後)の移動を制御するために、トリガ110を摺動することによって動作可能である器具制御機構を収容できる。複数の制御線がある場合、完全な制御を提供するために、インタフェースジョイントに複数の摺動トリガがある場合がある。インタフェースジョイント106の機能は、インタフェースジョイント106の遠位端から伸長する単一の可撓性シャフト112の中に、発生器102及び器具制御機構からの入力を結合することである。他の実施形態では、他の種類の入力がインタフェースジョイント106に接続されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、流体供給源はインタフェースジョイント106に接続されてよく、その結果流体が器具に送達されてよい。
【0039】
可撓性シャフト112は、内視鏡114の器具(作業)チャネルの全長を通して挿入できる。
【0040】
可撓性シャフト112は、内視鏡114の器具チャネルを通過し、内視鏡の管の遠位端で突出する(例えば、患者の内部)ように形作られる遠位アセンブリ118(図1では縮尺通りに描かれていない)を有する。遠位端アセンブリは、生体組織の中にマイクロ波エネルギー及び無線周波エネルギーを送達するための機能している先端を含む。先端の構成は、以下により詳細に説明する。
【0041】
遠位アセンブリ118の構造は、作業チャネルを通過するために適した最大外径を有するように構成されてよい。通常、内視鏡などの外科用スコーピングデバイスの中の作業チャネルの直径は、例えば、2.8mm、3.2mm、3.7mm、3.8mmのいずれか1つなど、4.0mm未満である。可撓性シャフト112の長さは、例えば2m以上など0.3m以上である場合がある。他の例では、遠位アセンブリ118は、シャフトが作業チャネルを通して挿入された後(及び器具コードが患者の中に導入される前)に可撓性シャフト112の遠位端で取り付けられてよい。代わりに、可撓性シャフト112は、その近位接続を行う前に遠位端から作業チャネルの中に挿入される場合がある。これらの構成では、遠位端アセンブリ118は、外科的スコーピングデバイス114の作業チャネルよりも大きい寸法を有することを許される場合がある。
【0042】
上記のシステムは、患者の体内に器具を導入する1つの方法である。他の技術も考えられる。例えば、器具は、カテーテルを使用し、挿入されてもよい。
【0043】
図2は、本発明の実施形態である電気手術器具200の遠位端の斜視図である。図3は、同じ電気手術器具200の断面側面図を示す。電気手術器具200の遠位端は、例えば、上述の遠位アセンブリ118に相当してよい。電気手術器具200は、マイクロ波エネルギー及びRFエネルギーを伝達するために、その近位端で(発生器102などの)発生器に接続可能である同軸給電ケーブル202を含む。同軸給電ケーブル202は、誘電材料208によって分離される内部導体204及び外部導体206を含む。同軸給電ケーブル202は、好ましくはマイクロ波エネルギーに対して低損失である。チョーク(図示せず)は、遠位端から反射されたマイクロ波エネルギーの誤差逆伝播を抑制し、したがってデバイスに沿った後方加熱を制限するために同軸給電ケーブル204上に設けられてよい。同軸ケーブルは、同軸ケーブルを保護するために外部導体206の回りに配置された可撓性外側シース210をさらに含む。外側シース210は、その周囲から外部導体206を電気的に絶縁するために絶縁材料から作られてよい。外側シース210は、組織が器具に付着するのを防ぐために、PTFEなどの付着防止材料から作られてよい、または付着防止材料で被覆されてよい。
【0044】
放射先端212は、同軸給電ケーブル202の遠位端に形成される。放射先端212は、同軸給電ケーブル202によって伝達されるマイクロ波エネルギー及びRFエネルギーを受け取り、生体組織にエネルギーを送達するように構成される。放射先端212は、放射先端212の近位端近くに位置する近位電極214を含む。近位電極214は、放射先端212の外面の回りに露出したリングを形成する中空の円筒状導体である。近位電極214は、同軸給電ケーブル202の外部導体206に電気的に接続される。例えば、近位電極214は、外部導体206に溶接またははんだ付けされてよい。近位電極214は、接続の軸方向の対称性を確実にするために、外部導体206の全周の回りに延在する物理的な接触領域によって外部導体206に電気的に接続されてよい。近位電極214は、同軸供給ケーブル202と同軸に配置され(つまり、円筒状の近位電極214の縦軸が、同軸供給ケーブル202の縦軸と位置合わせされ)、同軸給電ケーブル202の外径と一致する外径を有する。このようにして、近位電極は、同軸給電ケーブル202の外面と同一平面上にある。これにより、組織が近位電極214で引っかかるのを防ぎ得る。外部導体206は、近位電極214で終端する。つまり、外部導体206は、遠位方向で近位電極214を越えて伸長しない。いくつかの実施形態(図示せず)では、近位電極は、外部導体206の露出した遠位部分であってよい。
【0045】
また、放射先端212は、放射先端212の遠位端にまたはその近くに位置する遠位電極216を含む。遠位電極216は、放射先端212の外面の回りに露出したリングを形成する中空の円筒状導体である。近位電極214と同様に、遠位電極216は、同軸給電ケーブル202と同軸に配置される。近位電極及び遠位電極214、216は、実質的に同じ形状及び大きさを有してよい。図2に示すように、近位電極及び遠位電極214、216は、電気手術器具200の縦方向に長さL1を有する。遠位電極216は、電気手術器具200の縦方向で、距離G分、近位電極214から離間される(図2を参照)。言い換えると、遠位電極216は、距離Gだけ、電気手術器具200の長さに沿ってさらに離れている。近位電極及び遠位電極214、216は、同軸給電ケーブル202の外径と同じである外径を有し、その結果、電気手術器具200は滑らかな外面を有する。
【0046】
(中空の円筒形の導体によって形成される)近位電極214は、内部導体204の遠位に突出する部分が通過する通路を画定する。このようにして、内部導体204は、放射先端212の中に伸長し、そこで遠位電極216に電気的に接続される。内部導体204は、内部導体206から半径方向に(つまり、外向きに)伸長する導体218を介して遠位電極216に電気的に接続される。導体218は、内部導体204の軸の回りに対称的に配置される1つ以上の分岐(例えば、ワイヤまたは他の可撓性導電素子)を含んでよい。代わりに、導体218は、内部導体204の回りに取り付けられ、内部導体204と遠位電極216との間で接続された導電ディスクまたは導電リングを含んでよい。内部導体204と遠位電極216との間の接続は、好ましくは、内部導体204によって画定された軸の回りで対称である。これは、放射先端212の回りの対称的な形状の場の形成を容易にすることができる。
【0047】
また、同軸給電ケーブル202の誘電材料208の一部分は、外部導体206の遠位端を越えて、近位電極214によって形成された通路を通って放射先端212の中に伸長する。このようにして、内部導体204及び近位電極214は、誘電材料208によって分離される。カラー220は、近位電極214と遠位電極216との間で放射先端212の回りに設けられる。カラー220は、誘電材料208を保護し、放射先端の外面が滑らかであることを確実にするために動作してよい。カラー220は、外側シース210と同じ材料で作られ、同じ機能を果たしてよい。
【0048】
放射先端212は、器具の遠位端に位置する尖った遠位先端222をさらに含む。遠位先端222は、放射先端212の標的組織の中への挿入を容易にするために尖っている場合がある。しかしながら、他の実施形態(図示せず)では、遠位先端は丸みを帯びていても、平らでもよい。遠位先端222は、例えば誘電材料208と同じ誘電材料から作られてよい。いくつかの実施形態では、遠位先端222の材料は、EMエネルギーを標的組織に送達する効率を改善するために、標的組織とのインピーダンス整合を改善するように選択されてよい。遠位先端222は、組織が遠位端に付着するのを防ぐために、付着防止材料(例えば、PTFE)から作られてよい、または付着防止材料で被覆されてよい。
【0049】
放射先端212は、同調素子224をさらに含む。同調素子224は、容量性リアクタンスを導入するために、近位電極214と遠位電極216との間で内部導体204に接続された電気的に導電性の素子である。この例では、導電性同調素子は円筒形であり、内部導体204と同軸に配置される。同調素子224は、縦方向の長さL2、及び外径X1を有する(図3を参照)。これらのパラメータは、以下に説明するマイクロ波アンテナとして動作するときに、器具の結合効率を改善する(つまり、反射信号を低減する)キャパシタンスを導入するために選択される場合がある。
【0050】
近位電極214及び遠位電極216は、それぞれ外部導体206及び内部導体204に電気的に接続されているので、近位電極214及び遠位電極216は、双極RF切断電極として使用し得る。例えば、遠位電極216はアクティブ電極の機能を果たす場合があり、近位電極214は、同軸給電ケーブル202に沿って伝達されるRFエネルギーのためのリターン電極の機能を果たす場合がある。このようにして、放射先端212の回りに配置された標的組織は、上述した機構を介してRFエネルギーを使用し、切断及び/または凝固されてよい。
【0051】
さらに、マイクロ波エネルギーが同軸給電ケーブル202に沿って伝達されるとき、放射先端212は、マイクロ波ダイポールアンテナとして動作してよい。特に、近位電極214及び遠位電極216は、マイクロ波周波数でダイポールアンテナの放射素子の機能を果たしてよい。したがって、放射先端構造は、高周波エネルギーとマイクロ波エネルギーの両方を標的組織に送達できるようにする。これにより、放射先端に伝達されるEMエネルギーの種類に応じて、無線周波エネルギー及びマイクロ波エネルギーを使用し、標的組織を切除する及び/または凝固させることができる。近位電極及び遠位電極214、216の円筒形の形状は、器具200の縦軸の回りで対称である放射プロファイルを生じさせるために役立つ場合がある。
【0052】
パラメータL1及びGによって決定された電極214、216の構成は、(所与のエネルギー波形及び局所的な組織特性に対して)所望の切除直径を提供するために事前に選択できる。円筒電極は、(縦方向デバイス軸の回りで)対称的な切除プロファイルを生じさせるために使用される。以下は、本発明の一実施形態である電気手術器具のために使用できる例の寸法である。つまり、L1及びL2は3mmであってよく、Gは5mmであってよく、X1は1.2mmであってよく、器具の外径は約1.9mmであってよく、近位電極及び遠位電極の内径は1.5mmであってよい。
【0053】
図4は、本発明の一実施形態に係る電気手術器具のための標的組織の中の計算された放射プロファイルを示す。図4のパネルAは、400kHzでの(つまり、無線周波エネルギーの場合の)シミュレーションされた放射プロファイルを示し、図4のパネルBは、5.8GHzでの(つまり、マイクロ波エネルギーの場合の)シミュレーションされた放射プロファイルを示す。分かるように、両方の周波数で、放射プロファイルは、近位電極と遠位電極の間に、及び近位電極及び遠位電極の回りに延在する。マイクロ波エネルギーの放射プロファイル(パネルB)は、無線周波エネルギーの放射プロファイル(パネルA)よりもより球形である。対照的に、無線周波数の放射プロファイルはより細長い形状を有し、近位電極及び遠位電極の回りにより集中している。したがって、放射プロファイルは、マイクロ波エネルギーが放射先端に伝達されるのか、それとも無線周波エネルギーが放射先端に伝達されるのかに応じて変化する。これにより、放射先端に伝達されるエネルギーの種類に応じて、異なる切除体積(つまり、EMエネルギーによって切除される標的組織の体積)が生じる場合がある。したがって、例えば、切除体積は、マイクロ波エネルギー及び無線周波エネルギーを切り替えることによって制御され得る。
【0054】
図5は、電気手術器具のマイクロ波放射プロファイルが、近位電極及び遠位電極の存在によってどのように影響を受けるかを示す。図5のパネルAは、近位電極及び遠位電極を有していない電気手術器具の計算された放射プロファイルを示す。図5のパネルAの電気手術器具の構造は、図6に示されている。図6に示す電気手術器具600は、それが近位電極及び遠位電極を含まない点を除き、図2及び図3に示す構造に類似した構造を有する。実施形態の電気手術器具200と同様に、電気手術器具600は、誘電材料608によって分離される内部導体604及び外部導体606を有する同軸給電ケーブル602を含む。放射先端610は、同軸給電ケーブル602の端部に形成される。内部導体604及び誘電材料は、放射先端610の中に伸長するが、外部導体606は放射先端610で終端する。導電性同調素子612は、放射先端610の内部導体の上に設けられる。図5のパネルBは、(例えば、図2及び図3に示す構造と類似した)本発明の一実施形態に係る構造を有する電気手術器具の計算された放射プロファイルを示す。両方の放射プロファイルとも、5.8GHzのマイクロ波エネルギー周波数でのシミュレーションである。電気手術器具600に近位電極及び遠位電極が欠如していることを除いて、両方のシミュレーションで使用される電気手術器具の寸法は同じである。
【0055】
図5からわかるように、計算された放射線プロファイルの形状は、電気手術器具間で異なる。特に、本発明の実施形態に係る電気手術器具の放射プロファイル(パネルB)は、電気手術器具600の放射プロファイル(パネルA)と比較して形状がより球形である。図5の線で示されるように、本発明の実施形態に係る電気手術器具の放射線プロファイルは、放射線先端の回りにより集中している。対照的に、電気手術器具600の放射線プロファイルは、同軸給電ケーブルの一部分に沿って延在するより長い尾部を有する。この、放射プロファイルが同軸給電ケーブルを下方に延在することは、「ティアドロップ効果」と呼ばれる場合がある。したがって、電気手術器具で近位電極及び遠位電極を使用することは、ティアドロップ効果を低減するために役立つ。実施形態の電気手術器具の放射プロファイルは、それが、放射先端から離れて位置する組織を切除することを回避し得るという点で有利である場合がある。ティアドロップ効果は、実施形態の電気手術器具の放射先端に誘電チョークを含めることによってさらに低減され得る。例えば、誘電チョークは、近位電極と外部導体との間の(つまり、近位電極によって画定された通路の中の)放射先端に位置する1個の誘電材料であってよい。
【0056】
図7は、電気手術器具200のマイクロ波エネルギーの周波数に対するSパラメータ(「リターンロス」としても知られる)のシミュレーションされたプロットを示す。技術分野では周知であるように、Sパラメータは、インピーダンス不整合に起因するマイクロ波エネルギーのリターンロスの測度であり、したがってSパラメータは、標的組織と放射先端との間のインピーダンス不整合の程度を示す。Sパラメータは、方程式P=SPによって定義することができ、上式では、Pは組織に向かう器具の出力電力であり、Pは、組織から反射して戻された電力であり、SはSパラメータである。図6に示すように、Sパラメータは、5.8GHzで17.09dBであり、この周波数で組織から反射して戻されるマイクロ波エネルギーが非常に少なかったことを意味する。これは、5.8GHzの動作周波数でのインピーダンス整合が良好であり、マイクロ波エネルギーが、この周波数で放射先端から組織の中に効率的に送達されていることを示す。
【0057】
発明者らは、図2及び図3に示す構造に類似した構造を有する電気手術器具の体外試験を実施した。試験は、病的ブタ組織(食物連鎖に向かう肝臓)を使用し、実施された。標本は袋の中に密封され、試験前に37℃で水浴に入れられた。電気手術器具の遠位端は、次いで準備されていた組織標本の中に挿入された。RFエネルギー及びマイクロ波エネルギーが、次いで標本に送達された。RFエネルギーは、400kHzの周波数及び18Wの凝固波形を有し、91%のデューティーサイクルで66秒間印加された。マイクロ波エネルギーは、5.8GHzの周波数及び25Wの電力レベルを有し、120秒間連続波として印加された。
【0058】
結果として生じる切除ゾーンの測定が、次いで実施され、その結果を表1に示す。切除ゾーンの長さは、電気手術器具の縦方向のその測定された長さに相当する。切除ゾーンの幅は、縦方向に垂直な方向でのその幅に相当する。切除ゾーンの形状及び大きさが、上述したシミュレーションされた放射プロファイルと十分に相互に関連することが判明した。
【0059】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7