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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】熱成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/46 20060101AFI20231221BHJP
   B29C 51/10 20060101ALI20231221BHJP
   B29C 51/12 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B29C51/46
B29C51/10
B29C51/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021146957
(22)【出願日】2021-09-09
(65)【公開番号】P2023039704
(43)【公開日】2023-03-22
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】304050369
【氏名又は名称】株式会社浅野研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高井 章伍
(72)【発明者】
【氏名】寺本 一典
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-105451(JP,A)
【文献】特開2002-229043(JP,A)
【文献】特開2002-361726(JP,A)
【文献】特開2005-028649(JP,A)
【文献】特開2005-081605(JP,A)
【文献】特開2018-176725(JP,A)
【文献】特開2019-166735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 43/00 - 43/28
B29C 51/00 - 51/46
B29C 70/40
B32B 37/10
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
模様の印刷された樹脂シートを金型に賦形する、又は前記樹脂シートを基材に接着する熱成形機において、
前記樹脂シートを位置決め保持し搬送する枠体と、
前記樹脂シートを撮像する撮像手段と、
前記枠体の前記金型に対する位置を変更する位置調整手段と、を備え、
前記樹脂シートの成形前に、
前記枠体に固定された前記樹脂シートの前記模様を、前記撮像手段で撮像して成形前画像を得て、
前記樹脂シートの成形後に、
前記金型を用いて前記樹脂シートを成形した成形品の前記模様を、前記撮像手段で撮像して成形後画像を得て、
前記枠体の位置を調整する前記位置調整手段に用いるデータに、前記成形前画像を用いて事前に決められた基準位置からのズレ量を検出し得られた第1情報に、前記成形後画像を用いて前記基準位置からのズレ量を検出して得られた第2情報を加味して用いること、
を特徴とする熱成形機。
【請求項2】
請求項1に記載の熱成形機において、
前記撮像手段が、第1撮像手段と第2撮像手段を含み、
前記第1撮像手段は、加熱を行う加熱位置にある前記樹脂シートを撮像するよう設けられて、
前記第2撮像手段は、前記金型で成形する成形位置にある前記樹脂シートを撮像するよう設けられ、
前記第1撮像手段にて、前記成形前画像を撮像し、前記第2撮像手段にて、前記成形後画像を撮像すること、
を特徴とする熱成形機。
【請求項3】
請求項1に記載の熱成形機において、
前記撮像手段は、前記金型で成形する成形位置にある前記樹脂シートを撮像するように設けられること、
を特徴とする熱成形機。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の熱成形機において、
前記成形後画面を用いて、前記成形品の良否のチェックを行うこと、
を特徴とする熱成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、模様が印刷された樹脂シートを用いて精度の高い成形品を作ることのできる熱成形機する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
シート成形品は、例えば食材の包装容器や食品トレーとして広く使用される。このようなシート成形品は、熱成形機とシートトリミング装置を用いて製造され、熱成形機を用いて樹脂成形シートの成形する方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、成形装置及び成形方法に関する技術が開示されている。打抜手段に搬入されるシートS1に設けた目印を、目印検出手段を用いて検出する。具体的には撮像素子を多数配列したデジタルカメラを用いて撮像し、撮像された撮像素子に基づいて目印の位置を検出し、そのずれが基準外であると判断した場合に、シート製品の打ち抜きを休止している。
【0004】
特許文献2には、打抜装置及び打抜方法に関する技術が開示されている。印刷シート供給装置より供給される略一定の間隔により模様が印刷された連続状の樹脂シートを、成形タイミングにて動作を停止させつつ搬送する搬送手段と、成形タイミングに模様を順次撮像する撮像手段を備えている。撮像手段にて撮像された成形対象の模様の印刷ずれ量を取得して、取得した印刷ずれ量に基づいて基準模様に対応する基準位置から成形位置に対して上下型の位置合わせを成形位置補正手段にて行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-81605号公報
【文献】特許第5479763号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の技術では、模様が印刷された樹脂シートの精密な位置調整を行うことは困難である。特許文献1には、位置ズレを修正する方法までは言及されていないし、特許文献2では連続シートであることが前提として金型の位置の調整を行っている。しかしながら、高精度の位置決めを行った場合であっても加熱、成形を行うと位置ズレを生じるケースが確認されている。
【0007】
この原因として考えられるのが、印刷ズレの他に機械の状態の変化や作業誤差、成形時の金型の温度条件などである。特許文献1に記載の技術では印刷ズレが生じている場合にしか対応ができないため、結果的に高精度な成形品を得ることが難しい場合がある。
【0008】
そこで、模様が印刷された樹脂シートを精密に位置決めする方法を備えた熱成形機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の一態様による熱成形機は、以下のような特徴を有する。
【0010】
(1)模様の印刷された樹脂シートを金型に賦形する、又は前記樹脂シートを基材に接着する成形機において、
前記樹脂シートを位置決め保持し搬送する枠体と、
前記樹脂シートを撮像する撮像手段と、
前記枠体の前記金型に対する位置を変更する位置調整手段と、を備え、
前記樹脂シートの成形前に、
前記枠体に固定された前記樹脂シートの前記模様を、前記撮像手段で撮像して成形前画像を得て、
前記樹脂シートの成形後に、
前記金型を用いて前記樹脂シートを成形した成形品の前記模様を、前記撮像手段で撮像して成形後画像を得て、
前記枠体の位置を調整する前記位置調整手段に用いるデータに、前記成形前画像を用いて事前に決められた基準位置からのズレ量を検出し得られた第1情報に、前記成形後画像を用いて前記基準位置からのズレ量を検出して得られた第2情報を加味して用いること、
を特徴とする。
【0011】
上記(1)に記載の態様により、模様の印刷された樹脂シートを高精度に成形する成形品の製造が可能となる。これは、カメラなどの撮像手段を用いて所定の位置に模様があるかを成形前画像として得て、この成形前画像を用いて位置ズレを検出し、位置調整手段で位置調整をして成形を行うにあたって、成形後画像を用いた補正を行うからである。つまり、成形前と成形後の両方の画像を用いることで、より高精度な成形品を得ることが可能となる。
【0012】
例えば特許文献2に示される様な成形前の段階での位置ズレを、撮像手段による成形前画像として得たデータから確認した場合、印刷ズレなど一部の原因に対してしか確認できず、成形前画像を用いただけの位置調整では成形後の精度は成り行きということになってしまう。しかし、実際には熱影響や金型の形状特性から位置ズレなど模様の印刷位置とのズレが生じることがある。このため、そういった要因も含めて成形後の成形品の状態でのズレ量を求めて、そのことを参考にして位置調整手段に第2情報としてフィードバックする。こうして成形品の製作精度を向上させることに貢献する。
【0013】
(2)(1)に記載の熱成形機において、
前記撮像手段が、第1撮像手段と第2撮像手段を含み、
前記第1撮像手段は、加熱を行う加熱位置にある前記樹脂シートを撮像するよう設けられて、
前記第2撮像手段は、前記金型で成形する成形位置にある前記樹脂シートを撮像するよう設けられ、
前記第1撮像手段にて、前記成形前画像を撮像し、前記第2撮像手段にて、前記成形後画像を撮像すること、
が好ましい。
【0014】
上記(2)に記載の態様により、(1)と同様に成形品の製作精度を向上することができる。これは、加熱位置にて第1撮像手段によって成形前画像を撮像し、成形位置にて第2撮像手段によって成形後画像を撮像している点で(1)と構成が異なるが、成形前画像と成形後画像の両方を用いて位置調整手段によって枠体の位置を調整する点では同じである為、同様の効果が得られる。
【0015】
(3)(1)に記載の熱成形機において、
前記撮像手段は、前記金型で成形する成形位置にある前記樹脂シートを撮像するように設けられること、
が好ましい。
【0016】
上記(3)に記載の態様により、成形位置にある樹脂シートの撮像を行う。(2)では異なる位置で撮像しているが、(3)では成形位置にある樹脂シートの模様を撮像して、成形前画像と成形後画像の両方を得ている。その結果、(1)に示す効果と同様に、成形品の製作精度を向上することができる。
【0017】
(4)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の熱成形機において、
前記成形後画面を用いて、前記金型で形成された前記成形品の良否のチェックを行うこと、
が好ましい。
【0018】
上記(4)に記載の態様により、成形後画像を用いて成形品の良否のチェックを行うことで、早い段階での成形品のNG検出を行うことができるため、その後に改めて検査工程を設けずとも良くなるので、製造工程を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態の、熱成形装置の概略図である。
図2】第1実施形態の、クランプ枠の模式平面図である。
図3】第1実施形態の、成形前の撮像の様子を示す模式図である。
図4】第1実施形態の、成形時の様子を示す模式図である。
図5】第1実施形態の、成形後の撮像の様子を示す模式図である。
図6】第1実施形態の、ズレ修正画面に関する模式図である。
図7】(a)第1実施形態の、成形前画像の撮影の様子を示す模式図である。(b)位置調整の様子を示す模式図である。(c)成形後画像の撮影の様子を示す模式図である。
図8】第2実施形態の、熱成形装置の概略図である。
図9】第2実施形態の、樹脂シートの加熱の様子を示す模式図である。
図10】第2実施形態の、成形時の様子を示す模式図である。
図11】第2実施形態の、成形後の撮像の様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、本発明に係る第1実施形態の熱成形機100の概略について説明をする。図1に、熱成形機100の概略図を示す。熱成形機100は、図1に示すように、熱板10と金型20とテーブル30等を筐体50に備える構成になっている。筐体50は上下に分かれる構造になっており、その間にクランプ枠40に保持された状態の樹脂シートSHが配置される。
【0021】
また、筐体50の外側にカメラ70を備えて、クランプ枠40に保持された樹脂シートSHを撮影するような位置に配置されている。熱成形機100は接続された制御装置80によって制御される。
【0022】
樹脂シートSHは熱可塑性の樹脂製のシート材であり、その表面には後述する模様が印刷されている。なお、JIS(日本工業規格)の包装用語によれば、厚さ250μm以上の薄板状の材料をシートとし、厚さ250μm未満をフィルムと規定しているが、本実施形態では区別せずに一律に樹脂シートSHと称する。
【0023】
樹脂シートSHを隔てて筐体50の上側に上側チャンバ51が設けられ、下側に下側チャンバ52が設けられている。上側チャンバ51には熱板10が昇降可能に設けられ、下側チャンバ52には金型20がテーブル30により昇降可能に設けられている。なお、熱板10やテーブル30の昇降機構は図示しないシリンダのような直動機構か、モータとボールネジを利用した直動機構などが考えられるが、要求仕様によって最適なものが選択される。
【0024】
熱板10は、樹脂シートSHに対して非接触で輻射式加熱する機能を備えたものであるが、必要に応じて接触加熱式のものを用いることを妨げない。金型20は、樹脂シートSHに対して熱板10の反対側の位置に設けられており、樹脂シートSHを成形する型である。特に図示していないが、上側チャンバ51には上真空圧センサと上真空ポンプと上真空バブルが設けられていて、上側チャンバ51内の圧力を、制御装置80からの信号によって制御することが出来る。同様に、下側チャンバ52には下真空センサと下真空ポンプと下真空バブルが設けられていて、下側チャンバ52内の圧力を、制御装置80からの信号によって制御することが出来る。
【0025】
カメラ70は、筐体50の外部に設置されてクランプ枠40に保持された樹脂シートSHが成形位置にある時に撮像できるような位置に固定して設けられている。カメラ70で撮像されたデジタルデータは、制御装置80に送られる。撮像データの扱いについては後述する。なお用いられているカメラ70は、CCDカメラなど撮像して高解像度のデジタルデータを得られるものを用いている。
【0026】
図2に、クランプ枠40に関する模式的な平面図を示す。樹脂シートSHはクランプ枠40によって挟まれて保持される構造になっており、樹脂シートSHの表面には、模様Paが印刷されている。本実施形態では説明のために模様Paが格子状の線であるものとして説明するが、模様Paは濃淡がはっきりしエッジがしっかり判別出来るものであればどのような形状であっても適用が可能である。
【0027】
このような樹脂シートSHがクランプ枠40に保持された状態で、クランプ枠40は図示しない直動機構を組み合わせた構成を採用しているため、投入位置から成形位置に移動・調整する事が可能であり、θ方向への調整ができる。例えば、クランプ枠40の右側と左側でそれぞれ異なるサーボモータを用いた直動機構を備えて、左側又は右側に備えた支点を中心として回動可能な構成となっていれば、X方向への移動と調整及びθ方向への回転調整が可能となる。Y方向の位置調整もサーボモータを用いた直動機構などを備えて微調整を行うことの出来る構成であることが考えられる。要はクランプ枠40のX軸方向、Y軸方向及びθ方向への移動調整が可能な構成であれば良い。
【0028】
上記構成の熱成形機100は、以下に説明する手順で樹脂シートSHの成形を行う。
【0029】
図3に、成形前の撮像の様子について模式図で示す。図4に、成形時の様子について模式図で示す。図5に、成形後の撮像の様子について模式図で示す。なお、図3乃至図5では制御装置80は説明の都合上省略している。樹脂シートSHの成形は図1図3図4図5の順に行われる。
【0030】
まず、樹脂シートSHがクランプ枠40に保持され、図1に示すように筐体50の間に移動される。この状態で、図3に示すようにカメラ70で成形前画像P1を撮像する。この時点でクランプ枠40の位置修正を行う。詳細については後述する。
【0031】
図4で筐体50を閉じて、テーブル30を上昇させて金型20を樹脂シートSHに押し当てながら、上側チャンバ51に圧縮空気を供給し、下側チャンバ52から空気を抜いて真空状態にして成形を行う。その後、図5に示すように筐体50を開いてカメラ70にて成形品S1を撮像して成形後画像P2を得る。
【0032】
図6に、ズレ修正画面に関する模式図を示す。クランプ枠40の位置修正にあたっては、図2に示すように樹脂シートSHの表面に印刷された格子状の模様Paの様子が撮像された成形前画像P1のデータを用いる。基準とする模様Paを図6に示すように拡大して、直行する第1基準線L1及び第2基準線L2からのズレ量を計算する。修正画面は制御装置80に設けた図示しないディスプレイなどに表示する。
【0033】
ズレ量はX軸方向及びY軸方向のズレとθ方向の回転成分があるため、例えばパターンサーチ画像処理を行ってX軸方向及びY軸方向へのズレ量を検出し、回転サーチを行ってθ方向へのズレ量を検出するといった方法が考えられる。
【0034】
図7に、ズレチェックの流れについての説明を模式図にて示す。図7(a)は、成形前画像の撮影の様子を示す。図7(b)は、位置調整の様子を示す。図7(c)は、成形後画像の撮影の様子を示す。説明のために図6に示した模式図とは異なり、図7に示す模式図は円形のマークMkを利用する様子を示している。樹脂シートSHには、円形のマークMkと模様Pa2が印刷されている。図7(a)では、図示されないクランプ枠40に固定された樹脂シートSHが、成形位置に停止した状態でカメラ70にて成形前画像P1を得る。
【0035】
そして、図7(b)に示すように、樹脂シートSHの位置を成形前画像P1のデータを用いて修正する。図7では、話を単純にする為にX軸方向に位置修正する様子を示している。金型の中心線CLに対して、マークMkの中心位置が「-X」方向にずれているため、「+X」方向にクランプ枠40の位置修正を行うことで位置修正を行う。そして、金型20を用いて樹脂シートSHの成形を行う。そして、図7(c)に示すように成形後に成形後画像P2をカメラ70にて撮影をして、成形品S1の品質を確認する。この場合においてずれが許容範囲内であれば良品として、ずれが許容範囲から外れた場合にはNG品として判定する。
【0036】
なお、図7(c)では、成形品S1がθ方向にずれが生じた状態で成形されたことを示している。こうして成形前画像P1のデータを用いて位置ずれ量を検出した後、成形後画像P2の情報を加味して位置調整データを作成し、必要に応じて駆動機構などを用いてクランプ枠40の位置を調整する。
【0037】
第1実施形態の熱成形機100は、上記構成であるため、以下に示すような作用及び効果を奏する。
【0038】
まず、成形品S1の形状精度を向上させることが可能になる。これは、模様Paの印刷された樹脂シートSHを、金型20を用いて成形する熱成形機100には、樹脂シートSHを位置決め保持し搬送する枠体(クランプ枠40)と、樹脂シートSHを撮像する撮像手段(カメラ70)と、クランプ枠40の金型20に対する位置を変更する位置調整手段とを備えている。
【0039】
そして、樹脂シートSHの成形前に、クランプ枠40に固定された樹脂シートSHの模様Paを、カメラ70で撮像して成形前画像P1を得て、樹脂シートSHの成形後に、金型20を用いて樹脂シートSHを成形した成形品S1の模様Paを、カメラ70で撮像して成形後画像P2を得る。
【0040】
そして、クランプ枠40の位置を調整する位置調整手段に用いるデータに、成形前画像P1を用いて事前に決められた基準位置からのズレ量を検出し得られた第1情報に、成形後画像P2を用いて基準位置からのズレ量を検出して得られた第2情報を加味して用いることを特徴とするからである。
【0041】
課題でも示したが、成形前画像P1を用いてクランプ枠40の位置調整をするだけでは、クランプ枠40に対する樹脂シートSHのズレと、クランプ枠40の停止位置に対する金型20のズレを修正することになる。しかしながら、模様Paが成形品S1の適切な位置に印刷されている状態を作り出すためには、経験的に熱板10による樹脂シートSHの軟化状況や外気温などの気温的パラメータや、金型20自身の形状的特性などにも影響されることが分かっていて、出来上がった成形品S1を見てどのようなずれが発生しているかを想定するしかなかった。
【0042】
しかしながら、クランプ枠40の位置を調整するにあたって、成形前画像P1だけでなく、金型20の上に置かれた状態の成形後画像P2の情報を加味することで、より形状精度を上げることが可能になる。具体的には、成形品S1の模様Paのズレが、成形前に起こっているのか、成形後に起こっているのかを把握するだけでも対応する方策は変わってくる。つまり、原因を切り分けられることで、より確実な位置調整が可能となる。
【0043】
また、この成形後画像P2を取得して成形品S1の状態を確認してNG品であるかを判断することで、成形品S1のNG品を後工程に流すことを防ぐことが可能となる。NG品の排除は作業者の手によってでも良いし、排出機能を設けても良い。また、早い段階で成形品S1のNG品の検出ができることで、ムダな工程を排除することが可能となる。すなわち、NG品の判定工程が不要となることで成形品S1の検査工程を省略する効果が期待出来る。
【0044】
具体例を単純化して説明すると、成形前画像P1を用いて第1基準線L1及び第2基準線L2と比較した時に角度θ1だけθ方向に回転ズレが生じていることを確認した場合、クランプ枠40をθ方向にマイナスθ1回転修正して成形を行う。そして成形後画像P2を用いて第1基準線L1及び第2基準線L2と比較した時に角度θ2ずれた状態で成形されることが分かれば、次にクランプ枠40の位置調整を行う際には「θ1+θ2」だけマイナス方向に回転修正することで、ズレのない成形品S1を得られる。
【0045】
もちろん、X軸方向及びY軸方向にもズレが生じる可能性があるが、この場合でも成形前画像P1と成形後画像Pを用いてクランプ枠40の位置調整を行うことで、高い精度の成形品S1を提供することが可能になる。そして、成形後画像P2の取得によって成形品S1のNG判定が可能となるため、後の工程で成形不良に関するNG判定を行う必要がなくなる。
【0046】
次に、本発明の第2実施形態について熱成形機100について説明する。第2実施形態の熱成形機100は、第1実施形態の熱成形機100と同じ構成の部分には、同じ符号を付して説明している。
【0047】
図8に、第2実施形態の熱成形装置の概略図を示す。図9に、樹脂シートの加熱の様子を模式図に示す。図10に、成形時の様子を模式図に示す。図11に、成形後の撮像の様子を模式図に示す。第2実施形態では、図8に示すように、熱板110が樹脂シートSHを加熱する場所は、成形する場所と異なる加熱位置St1として設けられている。加熱位置St1には第1カメラ71がクランプ枠40に保持された樹脂シートSHを撮像できる位置に配置されている。
【0048】
クランプ枠40は横行装置150にて移動され、加熱位置St1から成形位置St2へと移動させる。成形位置St2はテーブル30に載せられた金型20が下側昇降機130に載せられ、一方、上型140が固定された上側昇降機120と連動して型閉じをする。そして、その成形位置St2の様子を撮像するための第2カメラが設けられている。そして、これらの機器は制御装置80に接続されている。なお、制御装置80に関しては、図9乃至図11では省略している。
【0049】
まず、図8に示すように、クランプ枠40に保持された樹脂シートSHが横行装置150で運ばれて加熱位置St1に停止した状態で、第1カメラ71による撮像が行われて成形前画像P1を得る。そして、加熱位置St1にて移動してきた熱板110で樹脂シートSHが加熱された後、成形位置Stにクランプ枠40を移動させた後、位置調整手段を用いて金型20に対する位置を修正する。そして、図10に示すように成形位置St2にて樹脂シートSHを、金型20を用いて成形する。最後に、成形位置St2にて上側昇降機120を上昇させ、下側昇降機130を降下させた後、成形品S1を第2カメラ72にて撮像が行われて成形後画像P2を得る。
【0050】
上記構成の熱成形機100は、第1実施形態と同様に、成形前画像P1と成形後画像P2を用いてクランプ枠40の位置修正が行われる。この結果、第1実施形態と同様に第2実施形態の熱成形機100を用いることで、高い精度の成形品S1を提供することが可能になる。
【0051】
以上、本発明に係る熱成形機100に関する説明をしたが、本発明はこれに限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、第1実施形態及び第2実施形態の何れの場合も、樹脂シートSHの表面に印刷された模様Paを格子状の線として表現し、又別の事例として円形のマークMk(模様Paに相当)を用いている。しかしこの他にも、基準となる様々な形状の形、あるいや文字などを基準として選択することを妨げない。また、熱成形機100に用いる位置調整手段による位置調整は毎回行わずに、例えば熱成形機100の起動時や樹脂シートSHのロットが切り替わるときなど、ずれが発生しやすい特定のタイミングの時に行うような運用をしても良い。
【0052】
また、第1実施形態及び第2実施形態では、金型20に対する樹脂シートSHの表面に印刷された模様Paの位置を問題としているが、本発明は基材に接着層を有する樹脂シートSHを接着する被覆成形の場合にも適用が可能である。この場合は、金型20に対して基材を保持させ、その基材に対して接着層を有する樹脂シートSHを貼り合わせることとなるため、結果的に金型20に対する樹脂シートSHの表面に印刷された模様Paの位置が問題となる点では同じとなる。
【符号の説明】
【0053】
SH 樹脂シート
Pa 模様
P1 成形前画像
P2 成形後画像
10 熱板
20 金型
40 クランプ枠
70 カメラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11