(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】金属調加飾フィルム、金属調製品
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
B32B15/08 H
(21)【出願番号】P 2021148603
(22)【出願日】2021-09-13
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000235783
【氏名又は名称】尾池工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤座 義広
【審査官】馳平 憲一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-116782(JP,A)
【文献】国際公開第2020/059255(WO,A1)
【文献】特開2019-51633(JP,A)
【文献】特開昭53-134877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、アンカー層と、インジウム蒸着層と、プライマー層と、をこの順で有し、
前記プライマー層は、黒色染料を含み、
入射角が60°における鏡面光沢度(GS60°)と、入射角および受光角が45°におけるL*値(L*45)との割合(GS60°/L*45)は、75以上である、金属調加飾フィルム。
【請求項2】
前記プライマー層における黒色染料の添加量は、20~75質量%である、請求項1記載の金属調加飾フィルム。
【請求項3】
前記アンカー層は、染料または顔料を含み、
前記染料または顔料は、黒色、グレーまたは有彩色の染料または顔料である、請求項1または2記載の金属調加飾フィルム。
【請求項4】
前記プライマー層は、前記インジウム蒸着層が形成された面と反対側の面に、さらに、接着層が設けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載の金属調加飾フィルム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の金属調加飾フィルムを用いた、金属調製品。
【請求項6】
前記金属調製品は、容器、筐体または車両用内外装部材である、請求項5記載の金属調製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属調加飾フィルム、金属調製品に関する。より詳細には、本発明は、曇りの抑制された優れた金属光沢を示し、たとえば三次元構造物にアウトモールド成形された際に、充分なシェード・ハイライト特性が得られる金属調加飾フィルム、金属調製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、三次元成形性を備える加飾シートが開発されている(たとえば特許文献1)。特許文献1に記載の加飾シートは、プライマー層において添加する着色剤として、たとえば、顔料、染料などを使用することができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の加飾シートは、金属蒸着層としてインジウムを採用し、着色剤として一般的な顔料を使用する場合において、インジウム蒸着層の海島構造の島同士の間に顔料が入り込みにくい。また、加飾シートは、プライマー層の着色剤として黒色を選択しないと、インジウムの島の周囲で散乱する光を吸収できずに、反射光が散乱性を有してしまう。その結果、加飾シートは、得られる金属光沢が曇りを有する。このような加飾シートは、三次元構造物にアウトモールド成形されると、シェード・ハイライト特性が得られにくい。
【0005】
本発明は、このような従来の発明に鑑みてなされたものであり、曇りの抑制された優れた金属光沢を示し、たとえば三次元構造物にアウトモールド成形された際に、充分なシェード・ハイライト特性が得られる金属調加飾フィルム、金属調製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討した結果、金属蒸着層としてインジウムを採用し、プライマー層として黒色染料を配合することにより、インジウム蒸着層の海島構造の島同士の間に黒色染料が添加された樹脂が入り込み、これにより、インジウムの島が散在していることによる散乱効果を抑制することができ、曇りの抑制された優れた金属光沢を示し得ることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、上記課題を解決する本発明の金属調加飾フィルム、金属調製品には、以下の構成が主に含まれる。
【0007】
(1)基材と、アンカー層と、インジウム蒸着層と、プライマー層と、をこの順で有し、前記プライマー層は、黒色染料を含み、入射角が60°における鏡面光沢度(GS60°)と、入射角および受光角が45°におけるL*値(L*45)との割合(GS60°/L*45)は、75以上である、金属調加飾フィルム。
【0008】
このような構成によれば、金属調加飾フィルムは、インジウム蒸着層の海島構造の島同士の間に黒色染料が添加された樹脂が入り込む。これにより、金属調加飾フィルムは、インジウムの島が散在していることによる散乱効果を抑制することができ、曇りの抑制された優れた金属光沢を示し得る。このような金属調加飾フィルムは、たとえば三次元構造物にアウトモールド成形された際に、充分なシェード・ハイライト特性が得られる。
【0009】
(2)前記プライマー層における黒色染料の添加量は、20~75質量%である、(1)記載の金属調加飾フィルム。
【0010】
このような構成によれば、金属調加飾フィルムは、インジウム蒸着層の海島構造の島同士の間に黒色染料が添加された樹脂が入り込みやすい。これにより、金属調加飾フィルムは、より曇りの抑制された優れた金属光沢を示し得る。さらに、金属調加飾フィルムは、プライマー層に適量の樹脂が添加されていることにより、成形性においても、より優れる。
【0011】
(3)前記アンカー層は、染料または顔料を含み、前記染料または顔料は、黒色、グレーまたは有彩色の染料または顔料である、(1)または(2)記載の金属調加飾フィルム。
【0012】
このような構成によれば、金属調加飾フィルムは、任意の色彩のカラーメタリックを実現し得る。
【0013】
(4)前記プライマー層は、前記インジウム蒸着層が形成された面と反対側の面に、さらに、接着層が設けられている、(1)~(3)のいずれかに記載の金属調加飾フィルム。
【0014】
このような構成によれば、金属調加飾フィルムは、種々の基材に貼り付けて用いることができ、塗装よりも簡易かつ安全な方法で、金属光沢感を付与することができる。
【0015】
(5)(1)~(4)のいずれかに記載の金属調加飾フィルムを用いた、金属調製品。
【0016】
このような構成によれば、金属調製品は、たとえば上記した金属調加飾フィルムを三次元構造物にアウトモールド成形する場合に、充分なシェード・ハイライト特性が得られる。
【0017】
(6)前記金属調製品は、容器、筐体または車両用内外装部材である、(5)記載の金属調製品。
【0018】
このような構成によれば、金属調製品は、充分なシェード・ハイライト特性が得られるため、容器、筐体または車両用内外装部材といった金属調製品において好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、曇りの抑制された優れた金属光沢を示し、たとえば三次元構造物にアウトモールド成形された際に、充分なシェード・ハイライト特性が得られる金属調加飾フィルム、金属調製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、プライマー層に黒色染料も黒色顔料も添加していないサンプルの模式図である。
【
図2】
図2は、プライマー層に黒色染料を添加したサンプルの模式図である。
【
図3】
図3は、プライマー層に黒色顔料を添加したサンプルの模式図である。
【
図4】
図4は、L*値の角度の定義を説明するための模式図である。
【
図5】
図5は、比較例5および実施例8の金属調加飾フィルムを用いた金属調製品の外観写真である。
【
図6】
図6は、比較例5および実施例8の金属調加飾フィルムを用いた金属調製品の外観写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<金属調加飾フィルム>
本発明の一実施形態の金属調加飾フィルムは、基材と、アンカー層と、インジウム蒸着層と、プライマー層と、をこの順で有する。プライマー層は、黒色染料を含む。入射角が60°における鏡面光沢度(GS60°)と、入射角および受光角が45°におけるL*値(L*45)との割合(GS60°/L*45)は、75以上である。本実施形態の金属調加飾フィルムによれば、曇りの抑制された優れた金属光沢を示し得る。このような金属調加飾フィルムは、たとえば三次元構造物にアウトモールド成形された際に、充分なシェード・ハイライト特性が得られる。なお、シェード・ハイライト特性とは、正反射成分が強く、拡散反射成分が弱い特性をいう。これにより、正反射部分がより明るく、それ以外の影の部分がより暗くなり、優れた陰影加飾効果を実現し得る。以下、それぞれについて説明する。
【0022】
(基材)
基材は特に限定されない。一例を挙げると、基材は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等からなる。
【0023】
基材の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、基材の厚みは、1.0~300μmであることが好ましい。基材の厚みが上記範囲内であることにより、金属調加飾フィルムは、耐擦傷性、耐摩耗性が優れる。
【0024】
基材は、所望の表面加工が施されたものが使用されてもよい。表面加工は特に限定されない。一例を挙げると、表面加工は、マット加工、サテン加工、エンボス加工、ヘアライン加工等である。また、基材の表面(アンカー層が形成される面とは反対の面)に、各種コーティング(フッ素加工、ハードコート加工等)、転写等の表面加工が施されてもよい。これにより、基材の表面には、各種意匠性や機能性が付与され得る。
【0025】
(アンカー層)
アンカー層は、基材とインジウム蒸着層との密着性を向上させるために設けられる。
【0026】
アンカー層は特に限定されない。一例を挙げると、アンカー層は、基材との密着性がよく、かつ、インジウム蒸着層を構成するインジウムの受理性がよい原料であればよく、アクリル系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン-マレイン系酸樹脂、塩素化PP系樹脂等である。アンカー層は、たとえば、主剤であるポリオール系樹脂に、イソシアネート系化合物を硬化剤として添加したものであってもよい。
【0027】
アンカー層の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、アンカー層の厚みは、0.1~3μmが好ましい。アンカー層の厚みが上記範囲内であることにより、金属調加飾フィルムは、基材とインジウム蒸着層との密着性が優れる。
【0028】
アンカー層は、着色剤や金属顔料が付与されることにより、意匠性が付与されてもよい。たとえば、着色剤としてイエロー顔料が配合されることにより、金属調加飾フィルムは、金色の外観を表現し得る。着色剤の種類や含有量は、所望する金属調の外観に応じて適宜調整され得る。また、アンカー層は、帯電防止剤等が配合されることにより、帯電防止効果などの機能性が付与されてもよい。
【0029】
アンカー層は、染料または顔料を含んでもよい。また、染料または顔料は、黒色、グレーまたは有彩色の染料または顔料であることが好ましい。アンカー層がこれらの染料または顔料を含むことにより、金属調加飾フィルムは、任意の色彩のカラーメタリックを実現し得る。
【0030】
染料は特に限定されない。一例を挙げると、染料は、アゾ(モノアゾ、ジスアゾ等)染料、アゾ-メチン染料、アントラキノン系染料キノリン染料、ケトンイミン染料、フルオロン染料、ニトロ染料、キサンテン染料、アセナフテン染料、キノフタロン染料、アミノケトン染料、メチン染料、ペリレン染料、クマリン染料、ペリノン染料、トリフェニル染料、トリアリルメタン染料、フタロシアニン染料、インクロフェノール染料、アジン染料、ピラゾロン染料およびこれらの混合物等である。
【0031】
顔料は特に限定されない。一例を挙げると、顔料は、干渉マイカ顔料、ホワイトマイカ顔料、グラファイト顔料などの光輝性顔料;黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック、マンガンフェライト、二酸化チタンなどの無機着色顔料;カオリン、クレー、シリカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウムなどの体質顔料;等である。
【0032】
染料または顔料の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、染料または顔料の含有量は、アンカー層中、2.0質量%以上であることが好ましく、4.0質量%以上であることがより好ましい。また、染料または顔料の含有量は、アンカー層中、15.0質量%以下であることが好ましく、10.0質量%以下であることがより好ましい。染料または顔料の含有量が上記範囲内であることにより、金属調加飾フィルムは、任意の色彩のカラーメタリックを実現しやすい。
【0033】
(インジウム蒸着層)
インジウム蒸着層において、インジウムは、酸化物、窒化物として含まれてもよい。本実施形態の金属調加飾フィルムは、金属蒸着層がインジウム蒸着層であることにより、成形加工時に白化等の外観不良を生じにくく、成形加工性が優れる。その結果、金属調加飾フィルムは、種々の三次元形状に加工されやすい。
【0034】
また、インジウム蒸着層は、各種非金属、金属、金属酸化物および金属窒化物を含んでもよい。非金属、金属等は特に限定されない。一例を挙げると、非金属は、アモルファスカーボン(DLC)およびその複合体、金属等は、金、銀、白金、スズ、クロム、ケイ素、チタン、亜鉛、アルミニウムおよびマグネシウム等の金属、その酸化物、その窒化物である。
【0035】
インジウム蒸着層におけるインジウムの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、インジウムの含有量は、インジウム蒸着層中、95質量%以上であることが好ましく、98質量%以上であることがより好ましい。インジウムの含有量は、100質量%であってもよい。インジウム蒸着層は、不可避的に含まれるインジウム以外の不純物を含んでいてもよい。
【0036】
本実施形態のインジウム蒸着層は、海島構造(いわゆる不連続構造)を有する。これにより、インジウム蒸着層は、たとえば、アルミニウム蒸着層等の他の一般的な金属蒸着層と比較して、成形加工等により、3次元的に延伸されても優れた金属光沢を得ることができる。海島構造において、島の部分はインジウムが存在する領域であり、海の部分はインジウムが存在しない領域である。本実施形態の金属調加飾フィルムは、後述するプライマー層の黒色染料を含む樹脂が、インジウム蒸着層の海島構造の島同士の間に入り込む。その結果、金属調加飾フィルムは、インジウムの島が散在していることによる散乱効果を抑制することができ、曇りの抑制された優れた金属光沢を示し得る。
【0037】
インジウム蒸着層の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、インジウム蒸着層の厚みは、10nm以上であることが好ましく、15nm以上であることがより好ましい。また、インジウム蒸着層の厚みは、80nm以下であることが好ましく、60nm以下であることがより好ましい。インジウム蒸着層の厚みが上記範囲内であることにより、インジウム蒸着層は、金属光沢と成形性とを両立されやすい。なお、本実施形態において、インジウム蒸着層の厚みは、島構造であるインジウム蒸着層の断面積(略扇形断面の面積)と、同横幅で、かつ、同面積となる長方形を想定した場合の高さと考えてもよい。なお、本実施形態のインジウム蒸着層の厚みは、蛍光X線分析法(XRF)を用いて、定量分析により求めた値である。
【0038】
(プライマー層)
プライマー層は、本実施形態の金属調加飾フィルムに優れた三次元成形性を付与し、複雑な表面形状を有する金属調製品の形状に充分に追従し得る金属調加飾フィルムとするために設けられる。
【0039】
金属調加飾フィルムの三次元成形性をより高める点から、プライマー層は、ガラス転移点が-20℃~100℃の樹脂の硬化物を含むことが好ましい。なお、本実施形態において、ガラス転移点(Tg)は、JIS K 7121-1987に基づき、示差走査熱量測定(DSC)によって測定し得る。
【0040】
ガラス転移点(Tg)が-20℃~100℃の樹脂の含有量は、プライマー層を構成する樹脂中、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。プライマー層を形成する樹脂は、ガラス転移点(Tg)が-20℃~100℃の樹脂のみであってもよい。
【0041】
ガラス転移点(Tg)が-20℃~100℃の樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、ガラス転移点(Tg)が-20℃~100℃の樹脂は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等であり、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等であることが好ましく、ポリエステル系樹脂であることがより好ましい。
【0042】
ポリエステル系樹脂は、ポリエステルポリオール等である。ポリウレタン系樹脂は、ポリエステルウレタンポリオール、アクリルウレタンポリオール等である。ポリアクリル系樹脂は、アクリルポリオール等である。ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレンポリオール、ポリプロピレンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等である。
【0043】
プライマー層は、ガラス転移点(Tg)が-20℃~100℃の上記樹脂と硬化剤との硬化物により形成されていることが好ましく、ガラス転移点(Tg)が-20℃~100℃のポリオール樹脂と、イソシアネート化合物等からなる硬化剤とによって得られる、反応硬化型のウレタン樹脂により形成されていることがより好ましい。ガラス転移点(Tg)が-20℃~100℃のポリオール樹脂は、上記で例示したポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、またはポリオレフィン系樹脂である上記のポリオール等である。
【0044】
イソシアネート化合物は特に限定されない。一例を挙げると、イソシアネート化合物は、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、キシレン-1,4-ジイソシアネート、キシレン-1,3-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニル-4,4’-ジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート;1,4-ジイソシアナトブタン、1,5-ジイソシアナトペンタン、1,6-ジイソシアナトヘキサン(1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、HDI)、1,6-ジイソシアナト-2,2,4-トリメチルヘキサン、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸メチル(リジンジイソシアネート)などの脂肪族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート等である。
【0045】
硬化剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、硬化剤の含有量は、プライマー層を形成する上記樹脂100質量部に対して、1~15質量部であることが好ましく、3~10質量部であることがより好ましい。
【0046】
本実施形態のプライマー層は、黒色染料を含む。黒色染料は特に限定されない。一例を挙げると、黒色染料は、アゾ(モノアゾ、ジスアゾ等)染料、アゾ-メチン染料、アントラキノン系染料キノリン染料、ケトンイミン染料、フルオロン染料、ニトロ染料、キサンテン染料、アセナフテン染料、キノフタロン染料、アミノケトン染料、メチン染料、ペリレン染料、クマリン染料、ペリノン染料、トリフェニル染料、トリアリルメタン染料、フタロシアニン染料、インクロフェノール染料、アジン染料およびこれらの混合物等である。
【0047】
黒色染料の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、黒色染料の含有量は、プライマー層中、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。また、黒色染料の含有量は、プライマー層中、75質量%以下であることが好ましい。黒色染料の含有量が上記範囲内であることにより、金属調加飾フィルムは、インジウム蒸着層の海島構造の島同士の間に黒色染料が充分に入り込み、金属調加飾フィルムは、より曇りの抑制された優れた金属光沢を示し得る。そして、金属調加飾フィルムは、成形性も優れる。
【0048】
図1は、プライマー層に黒色染料も黒色顔料も添加していないサンプルの模式図である。
図2は、プライマー層に黒色染料を添加したサンプルの模式図である。
図3は、プライマー層に黒色顔料を添加したサンプルの模式図である。なお、
図1~
図3では、説明の明瞭化のため、アンカー層1、インジウム蒸着層2、プライマー層3のみが図示されている。
【0049】
図1に示されるように、インジウム蒸着層2は、アンカー層1上に、たとえば、真空蒸着法により設けられる。そのため、インジウムの島構造(島の部分2a)の突出部分は、プライマー層3側に形成されると考えられる。そうすると、基材側から入射した入射光(入射光L1)は、インジウムの島の部分2aの底の部分(アンカー層1とインジウム蒸着層2との界面付近)で正反射(正反射光L2)、および、拡散反射(拡散反射光L3)するとともに、プライマー層3に黒色染料も黒色顔料も添加していないサンプルにおいては、インジウムの島の部分2aの突出部分(断面が略扇形形状の部分)においても拡散反射(拡散反射光L3)すると考えられる。そして、この拡散反射光の一部は、隣接するインジウムの島の部分2aの突出部分でも拡散反射を起こし、いわゆる多重拡散反射を引き起こすと考えられる。これが、シェード・ハイライト特性の劣化、すなわち、シェード(影)の部分が充分に暗くならずに、曇りとして視認されていると推察される。なお、最終製品では、製品は、基材側から観察される。
【0050】
一方、
図2に示されるように、プライマー層3に黒色染料を添加したサンプルにおいては、黒色染料を添加した樹脂Rがインジウムの島の部分2aの突出部分の周囲にも充分に回り込む。その結果、インジウムの島の部分2aの突出部分において、拡散反射が起こりにくく(拡散反射光が黒色染料を添加した樹脂で吸収されるため)、シェード(影)の部分が充分に暗くなり、シェード・ハイライト特性が優れると推察される。
【0051】
なお、
図3に示されるように、プライマー層3に黒色顔料P1を添加したサンプルについて、一般的な顔料の粒径は小さくても40nm~50nmである。そのため、インジウムの島構造(島の部分2a)同士の間に黒色顔料P1が充分に入り込めない。その結果、拡散反射が起こり、シェード・ハイライト特性の劣化、すなわち、シェード(影)の部分が充分に暗くならずに、曇りとして視認されると推察される。
【0052】
以上より、優れたシェード・ハイライト特性を得るためには、黒色染料を含むプライマー層は、インジウムの島構造(島の部分)が突出している側に設けることが好ましいと考えられる。
【0053】
なお、プライマー層は、上記黒色染料のほか、金属調加飾フィルムの色彩を整えたり、意匠性を向上する等を目的として、着色剤をさらに含んでもよい。このような着色剤は、たとえば、各種顔料、染料等であり、チタン白(酸化チタン)、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルーなどの無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルーなどの有機顔料または染料、アルミニウム、真鍮などの鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛などの鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等である。
【0054】
プライマー層の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、プライマー層の厚みは、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましい。また、プライマー層の厚みは、3μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。
【0055】
(接着層)
接着層は、被着体に、金属調加飾フィルムを貼り合わせるために設けられる。また、接着層は、プライマー層の表面のうち、インジウム蒸着層が形成された面と反対側の面に設けられ得る層である。
【0056】
本実施形態において、接着層は、任意である。すなわち、接着層は、上記したプライマー層に設けられてもよく、プライマー層が接着層の機能を兼ねる場合には省略されてもよい。本実施形態の金属調加飾フィルムは、接着層が設けられることにより、種々の基材に貼り付けて用いることができ、塗装よりも簡易かつ安全な方法で、金属光沢感を付与することができる。一方、プライマー層が接着層の機能を兼ねることにより接着層が省略される場合、金属調加飾フィルムは、コストが削減され得る。
【0057】
接着層は特に限定されない。一例を挙げると、接着層は、各種接着剤、粘着剤、感圧粘着剤(PSA:Pressure Sensitive Adhesive)等からなる。接着剤は特に限定されない。一例を挙げると、接着剤は、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、ウレタン変性ポリエステル樹脂系、ポリエステル樹脂系、エポキシ樹脂系、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)系、ビニル樹脂系(塩ビ、酢ビ、塩ビ-酢ビ共重合樹脂)、スチレン-エチレン-ブチレン共重合体樹脂系、ポリビニルアルコール樹脂系、ポリアクリルアミド樹脂系、ポリアクリルアミド樹脂系、イソブチレンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、SBR、NBR、シリコーンゴム等の樹脂からなる。これらの樹脂は、適宜、溶剤に溶解されて使用されてもよく、無溶剤で使用されてもよい。
【0058】
接着層の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、接着層の厚みは、10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましい。また、接着層の厚みは、60μm以下であることが好ましく、55μm以下であることがより好ましい。接着層の厚みが上記範囲内であることにより、得られる金属調加飾フィルムは、接着時の外観および接着性がさらに優れる。
【0059】
接着層は、上記着色剤のほか、金属顔料が付与されることにより、意匠性が付与されてもよい。また、接着層は、帯電防止剤等が配合されることにより、帯電防止効果などの機能性が付与されてもよい。これにより、接着層は、貼り合わせ適性が向上し得る。
【0060】
金属調加飾フィルム全体の説明に戻り、本実施形態の金属調加飾フィルムは、入射角が60°における鏡面光沢度(GS60°)と、入射角および受光角が45°におけるL*値(L*45)との割合(GS60°/L*45)が、75以上であればよく、82以上であることが好ましく、85以上であることがより好ましい。このような割合(GS60°/L*45)を示す金属調加飾フィルムは、より曇りの抑制された優れた金属光沢を示し得る。本実施形態において、入射角が60°における鏡面光沢度(GS60°)は、アピアランスアナライザー(Rhopoint IQ-S、Rhopoint社製)を使用して、金属調加飾フィルム表面に対して、入射角60°から光を照射して、正反射光を受光することにより測定し得る。また、入射角および受光角が45°におけるL*値(L*45)は、多角度分光光度計(MA-T6、エックスライト社製)を使用して、金属調加飾フィルムの表面に対して光源からの光を45°の入射角で入射させ、受光器の受光角を45°に設置して金属調加飾フィルムの表面からの反射光を受光器で受光させてL*値を算出することにより測定し得る。ここで、受光角45°とは、金属調加飾フィルムの表面における法線方向からの傾斜角が45°であることを意味する。入射角45°とは、受光角45°の方向に対し、金属調加飾フィルムの表面における法線方向に向かって45°傾斜した方向、すなわち、金属調加飾フィルムの表面における法線方向を意味する。
【0061】
本実施形態において、鏡面光沢度(GS60°)を調整する方法は特に限定されない。一例を挙げると、鏡面光沢度(GS60°)は、インジウム蒸着層におけるインジウム蒸着層の厚みを変えることにより調整し得る。インジウム蒸着層の厚みが薄いと、アンカー層とインジウム蒸着層との界面付近において、インジウムの島構造の底の部分の割合が少なくなり、正反射成分が相対的に少なくなり、鏡面光沢度(GS60°)は下がる方向にシフトする傾向がある。一方、インジウム蒸着層の厚みが厚いと、アンカー層とインジウム蒸着層との界面付近において、インジウムの島構造の底の部分の割合が多くなり、正反射成分が相対的に多くなり、鏡面光沢度(GS60°)は上がる方向にシフトする傾向がある。
【0062】
本実施形態においてL*値(L*45)を上記範囲に調整する方法は特に限定されない。一例を挙げると、L*値(L*45)は、プライマー層中に添加する黒色染料の濃度を変えることにより調整し得る。黒色染料の濃度が低いと、プライマー層側に突出しているインジウムの島構造の突出部分における拡散反射光を吸収する割合が低下するため、シェード・ハイライト特性の劣化、つまり、シェード(影)の部分が充分に暗くならずに、曇りとして視認されてしまう方向にシフトする傾向がある。この場合、L*値(L*45)は大きくなる。一方、黒色染料の濃度が高いと、プライマー層側に突出しているインジウムの島構造の突出部分における拡散反射光を吸収する割合が増加するため、シェード・ハイライト特性の良化、つまり、シェード(影)の部分が充分に暗くなり、曇りとして視認されない方向にシフトする傾向がある。この場合、L*値(L*45)は小さくなる。
【0063】
鏡面光沢度(GS60°)は、正反射成分の強度と相関があり、L*値(L*45)は、拡散反射成分の強度と相関がある。この両者の割合であるGS60°/L*45の値は、正反射成分の強度が強く(GS60°の値が大きく)、および/または、拡散反射成分の強度が弱い(L*45の値が小さい)と大きくなる。一方、GS60°/L*45の値は、正反射成分の強度が弱く(GS60°の値が小さく)、および/または、拡散反射成分の強度が強い(L*45の値が大きい)と小さくなる。すなわち、GS60°/L*45の値は、シェード・ハイライト特性の指標となり得る。この値と、目視観察した際のシェード・ハイライト感の視認性とも相関が取れている。シェード・ハイライト感が優れるとは、外光が当たった際に、曇りが感じられにくいことを意味する。すなわち、シェード・ハイライト感が優れるとは、シェード(影)がより暗く、ハイライト(正反射)がより明るく、メリハリの利いた外観を示すことを意味する。
【0064】
以上、本実施形態の金属調加飾フィルムは、インジウム蒸着層の海島構造の島同士の間に黒色染料が添加された樹脂が入り込む。これにより、金属調加飾フィルムは、インジウムの島が散在していることによる散乱効果を抑制することができ、曇りの抑制された優れた金属光沢を示し得る。このような金属調加飾フィルムは、たとえば三次元構造物にアウトモールド成形された際に、充分なシェード・ハイライト特性が得られる。
【0065】
金属調加飾フィルムおよび金属調製品の製造方法は特に限定されない。一例を挙げると、金属調加飾フィルムは、上記した基材にアンカー層を形成する工程(アンカー層形成工程)、アンカー層にインジウム蒸着層を形成する工程(蒸着工程)、インジウム蒸着層にプライマー層を形成する工程(プライマー層形成工程)、および、プライマー層に接着層を形成する工程(接着層形成工程)を主に含む。なお、プライマー層が接着層を兼ねる場合には、接着層形成工程は省略されてもよい。
【0066】
・アンカー層形成工程
まず、準備された基材に対して、アンカー層が形成される。アンカー層の形成方法は特に限定されない。一例を挙げると、アンカー層は、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ホイラーコート、ディップコート、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、刷毛塗り、スプレーコート等の通常の塗布方法や転写コーティング法等により基材層上に付与することにより形成し得る。
【0067】
・蒸着工程
次いで、アンカー層上にインジウム蒸着層が形成される。インジウム蒸着層の形成方法は特に限定されない。一例を挙げると、蒸着方法は、従来公知の真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法、または、化学蒸着法等を適宜採用し得る。これらの中でも、生産性が高いという理由により、真空蒸着法によりインジウム蒸着層を設けることが好ましい。蒸着条件は、所望するインジウム蒸着層の厚みに基づいて、従来公知の条件が適宜採用され得る。なお、金属材料は、不純物が少なく、純度が99質量%以上であることが好ましく、99.5質量%以上であることがより好ましい。また、金属材料は、粒状、ロッド状、タブレット状、ワイヤー状あるいは使用するルツボ形状に加工したものであることが好ましい。金属材料を蒸発させるための加熱方法は、ルツボ中に金属材料を入れて抵抗加熱あるいは高周波加熱を行う方式や、電子ビーム加熱を行う方法、窒化硼素などのセラミック製のボードに金属材料を入れ直接抵抗加熱を行う方法など、周知の方法を用いることができる。真空蒸着に用いるルツボは、カーボン製であることが望ましく、アルミナやマグネシア、チタニア、ベリリア製のルツボであってもよい。
【0068】
・プライマー層形成工程
プライマー層を形成する方法は特に限定されない。一例を挙げると、プライマー層は、上記樹脂を含むプライマー組成物を、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ホイラーコート、ディップコート、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、刷毛塗り、スプレーコート等の通常の塗布方法や転写コーティング法によりインジウム蒸着層上に付与することにより形成し得る。
【0069】
・接着層形成工程
接着層形成工程は、上記のとおり、任意の工程である。プライマー層の表面のうち、インジウム蒸着層が形成された面と反対側の面に、所望により、接着層が形成される(接着層形成工程)。接着層を形成する方法は特に限定されない。上記のとおり、接着層は、接着層を構成する樹脂溶液を、プライマー層上に塗布することにより形成してもよい。
【0070】
得られた金属調加飾フィルムを用いて、金属調製品が作製され得る。金属調製品は、たとえば、各種成形方法によって金属調加飾フィルムが成形(特にアウトモールド成形)されることにより製造され得る。成形方法は、金属調加飾フィルムの構成に基づき、適宜選択され得る。一例を挙げると、接着層を付与した金属調加飾フィルムは、真空成形、TOM(Three dimension Overlay Method)成形等によって成形される。TOM成形では、金属調加飾フィルムは、あらかじめ準備された被成形体(たとえば、樹脂、金属、ガラス、木材等)に付与され、熱により軟化されることにより、被成形体に追随するよう一体成形される。一方、真空成形では、金属調加飾フィルムは、ヒーターによって加熱され、軟化される。次いで、加熱された金属調加飾フィルムは、所望の3次元形状の金型に対して、真空吸引しながら押し付けられ、金属調製品の形状に追随するよう変形される。
【0071】
ほかにも、金属調加飾フィルムは、TOM成形、インラインラミネート等によって成形されてもよく、インサートインジェクション成形等によって成形されてもよい。
【0072】
このように、本実施形態の金属調製品は、上記した金属調加飾フィルムを用いた金属調製品である。上記のとおり、金属調加飾フィルムは、曇りの抑制された優れた金属光沢を示し得る。そのため、金属調加飾フィルムは、種々の物品に対して、簡便に充分なシェード・ハイライト特性を付与し、金属調製品を作製することができる。
【0073】
金属調製品は特に限定されない。一例を挙げると、金属調製品は、容器、筐体または車両用内外装部材である。
【0074】
すなわち、本実施形態の金属調加飾フィルムを用いた金属調製品によれば、充分なシェード・ハイライト特性を付与した、優れた意匠性を示す種々の車両用内外装部材が作製され得る。
【0075】
また、本実施形態の金属調加飾フィルムを用いた金属調製品によれば、充分なシェード・ハイライト特性を付与した、優れた意匠性を示す種々の容器が作製され得る。容器は、たとえば、化粧品の容器、飲料の容器等として好適である。
【0076】
さらに、本実施形態の金属調加飾フィルムを用いた金属調製品によれば、充分なシェード・ハイライト特性を付与した、優れた意匠性を示す種々の筺体が作製され得る。筺体は、たとえば、携帯電話等の通信機器、家電製品の筐体等として好適である。
【実施例】
【0077】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。なお、特に制限のない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0078】
<実施例1>
PCからなる基材(厚み75μm)を準備した。基材に対して、バーコーターを用いて、乾燥後1.3μmとなるようにアクリルポリオールとイソシアネート系塗材とを混合したアンカーコート剤溶液を塗工し、ついでそれを100℃で1分間乾燥させ、アンカー層を形成した。次いで、アンカー層に対して、真空蒸着法により、厚みが40nmとなるようにインジウム蒸着層を形成した。次いで、バーコーターを用いて、厚みが0.5μmであるプライマー層を形成した。プライマー層に含まれる黒色染料(N.BLACK X51、BASF社製)は75質量%であった。これとは別に、アクリル系粘着剤からなる粘着層(厚み25μm)付きセパレータ(PETフィルム)を準備した。プライマー層と粘着層(接着層)とが接するように貼り合わせ、接着層をプライマー層に転写させた後、セパレータを剥離し、実施例1の金属調加飾フィルムを作製した。
【0079】
<実施例2>
PMMAからなる基材(厚み75μm)に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、金属調加飾フィルムを作製した。
【0080】
<比較例1>
湿式めっき法によりCrめっきを施した一般的なCrめっき品を用意した。
【0081】
<比較例2>
プライマー層を設けなかった以外は、実施例1と同様の方法により、金属調加飾フィルムを作製した。
【0082】
<比較例3>
プライマー層を設けなかった以外は、実施例2と同様の方法により、金属調加飾フィルムを作製した。
【0083】
<比較例4>
プライマー層に黒色染料に代えて、黒色顔料として、スピネル構造のマンガンフェライト(平均粒子径:200nm、カラーインデックス:C.I.Pigment Black 26)を50質量%となるよう用いた以外は、実施例2と同様の方法により、金属調加飾フィルムを作製した。
【0084】
<比較例5>
プライマー層に黒色染料を配合しなかった以外は、実施例2と同様の方法により、金属調加飾フィルムを作製した。
【0085】
<比較例6>
プライマー層に含まれる黒色染料の濃度を10質量%に変更した以外は、実施例2と同様の方法により、金属調加飾フィルムを作製した。
【0086】
<実施例3>
プライマー層に含まれる黒色染料の濃度を20質量%に変更した以外は、実施例2と同様の方法により、金属調加飾フィルムを作製した。
【0087】
<実施例4>
プライマー層に含まれる黒色染料の濃度を30質量%に変更した以外は、実施例2と同様の方法により、金属調加飾フィルムを作製した。
【0088】
<実施例5>
プライマー層に含まれる黒色染料の濃度を40質量%に変更した以外は、実施例2と同様の方法により、金属調加飾フィルムを作製した。
【0089】
<実施例6>
プライマー層に含まれる黒色染料の濃度を50質量%に変更した以外は、実施例2と同様の方法により、金属調加飾フィルムを作製した。
【0090】
<実施例7>
プライマー層に含まれる黒色染料の濃度を60質量%に変更した以外は、実施例2と同様の方法により、金属調加飾フィルムを作製した。
【0091】
<実施例8>
プライマー層に含まれる黒色染料の濃度を70質量%に変更した以外は、実施例2と同様の方法により、金属調加飾フィルムを作製した。
【0092】
<実施例9>
プライマー層に含まれる黒色染料の濃度を80質量%に変更した以外は、実施例2と同様の方法により、金属調加飾フィルムを作製した。
【0093】
<実施例10>
プライマー層に含まれる黒色染料の濃度を90質量%に変更した以外は、実施例2と同様の方法により、金属調加飾フィルムを作製した。
【0094】
実施例1~10および比較例1~6において得られた金属調加飾フィルムについて、以下の方法に従って、L*値および鏡面光沢度(GS)を測定した。また、成形性およびシェード・ハイライト特性を評価した。結果を表1に示す。
【0095】
<L*値>
L*値は、多角度分光光度計(MA-T6、エックスライト社製)を用いて、光源の入射角度を振って測定した。
図4は、L*値の角度の定義を説明するための模式図である。なお、正反射光の入射方向D2のL*値(L*0)は、当該装置では測定できないため、別途、グロス値を測定して正反射度合を測定した。角度の定義について、上記のとおり、受光器Pdの受光角は45°に設置(固定)した。受光角45°とは、金属調加飾フィルムFの表面における法線方向D1からの傾斜角Aが45°である。ここで、L*0とは、受光角45°に対する正反射光の入射方向、すなわち、受光角45°の方向から、金属調加飾フィルムFの表面における法線方向D1に向かって、90°回転させた角度の方向より光源LSからの光を入射させた時のL*値を意味する。言い換えると、L*0とは、受光角45°の方向を金属調加飾フィルムFの表面における法線方向D1に対して左右反転させた方向より光を入射させた時のL*値を意味する。そして、L*-15とは、L*0の方向から時計回りに15°回転させた方向より光を入射させた時のL*値を意味し、L*15とは、L*0の方向から反時計回りに15°回転させた方向より光を入射させた時のL*値を意味し、L*25とは、L*0の方向から反時計回りに25°回転させた方向より光を入射させた時のL*値を意味し、L*45とは、L*0の方向から反時計回りに45°回転させた方向より光を入射させた時のL*値を意味し、L*75とは、L*0の方向から反時計回りに75°回転させた方向より光を入射させた時のL*値を意味し、L*110とは、L*0の方向から反時計回りに110°回転させた方向より光を入射させた時のL*値を意味する。
【0096】
<鏡面光沢度>
鏡面光沢度(GS20°およびGS60°)は、アピアランスアナライザー(Rhopoint IQ-S、Rhopoint社製)を用いて測定した。GS20°については、光源の入射角20°(フィルムの法線方向に対して20°傾斜した角度から入射)に対する光源からの光のフィルムでの正反射方向におけるグロス値を測定した。GS60°については、光源の入射角60°(フィルムの法線方向に対して60°傾斜した角度から入射)に対する光源からの光のフィルムでの正反射方向におけるグロス値を測定した。
【0097】
<成形性>
成形性は、それぞれの積層フィルムを140℃雰囲気下で一軸方向に2倍延伸し(つかみ間隔:5cm)、以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
×:クラックが顕著に発生し、金属光沢が著しく低下した。
△:クラックが若干発生し、金属光沢が低下した。
○:クラックの発生は無いが、金属光沢が若干低下した。
◎:クラックの発生は無く、金属光沢を充分に維持することができた。
【0098】
<シェード・ハイライト特性>
室内のLED照明下で目視観察し、以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
×:陰影感が感じられなかった。
△:陰影感が感じられた(程度は中)。
○:陰影感が感じられた(程度は大)。
◎:陰影感が顕著に感じられた(程度は非常に大)。
【0099】
【0100】
表1に示されるように、実施例1~10の金属調加飾フィルムは、いずれも優れたシェード・ハイライト特性が得られた。特に、黒色染料の含有量が20~75質量%であった実施例1~8の金属調加飾フィルムは、成形性が優れていた。具体的には、
図5、
図6は、比較例5および実施例8の金属調加飾フィルムを用いた金属調製品の外観写真である。
図5は、室内のLED照明下で撮影された外観写真(日中の屋内外での見え方を想定)であり、
図6は、暗室でLEDを照射して撮影した外観写真(夜間に照明が当たった際の見え方を想定)である。
図5、
図6に示されるように、比較例5の金属調加飾フィルムを用いた金属調製品(左側)は、拡散反射によって曇った(白っぽい)外観であったのに対し、実施例8の金属調加飾フィルムを用いた金属調製品(右側)は、曇りが抑制された陰影のある(シェード・ハイライト特性が優れた)外観であった。
【0101】
なお、比較例1の金属調加飾フィルムは、Crめっきを採用していた。Crめっきは、メッキ廃液による環境負荷の問題が生じやすく、かつ、めっき工程が必要となるため、好ましくなかった。
【符号の説明】
【0102】
1 アンカー層
2 インジウム蒸着層
2a 島の部分
3 プライマー層
A 傾斜角
D1 法線方向
D2 正反射光の入射方向
F 金属調加飾フィルム
L1 入射光
L2 正反射光
L3 拡散反射光
LS 光源
P1 黒色顔料
Pd 受光器
R 樹脂