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特許7406853コンピュータにより実行される法線ベクトルに基づく点群平滑化フィルタリング方法
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  • 特許-コンピュータにより実行される法線ベクトルに基づく点群平滑化フィルタリング方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】コンピュータにより実行される法線ベクトルに基づく点群平滑化フィルタリング方法
(51)【国際特許分類】
   G06V 10/34 20220101AFI20231221BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20231221BHJP
   G06V 20/64 20220101ALI20231221BHJP
【FI】
G06V10/34
G06T7/00 C
G06V20/64
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022539368
(86)(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-10
(86)【国際出願番号】 CN2020132683
(87)【国際公開番号】W WO2021129317
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-07-12
(31)【優先権主張番号】201911364489.X
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512000569
【氏名又は名称】華南理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】裴 海龍
(72)【発明者】
【氏名】李 明輝
【審査官】藤原 敬利
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-167671(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0070354(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109299739(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00 - 7/90
G06V 10/00 -20/90
G06V 30/418
G06V 40/16 、40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータにより実行される法線ベクトルに基づく点群平滑化フィルタリング方法であって、以下のステップを含むことを特徴とし、
ステップS1:オリジナル点群の外れ点を除去し、各点周辺の設定範囲内の点の個数を統計し、一定個数より少ない場合は、外れ点と見なして除外する:
ステップS2:離散点群セットに対して主成分分析を行って点ごとの法線ベクトルを推定し、すべての点の法線ベクトルを同じ方向に調整し、すなわち、法線ベクトルの第3成分Zがすべて0より大きくなるように調整する:
ステップS3:各点に対してそのK近傍を介して最小二乗法で1つの平面をフィッティングし、この平面モデルによりその点の法線ベクトルを取得して同方向に調整する:
ステップS4:フィッティング平面の法線ベクトルを用いて、前記ステップS2で算出した法線ベクトルを補正する:
ステップS5:当該点を補正後の法線ベクトル方向に沿って当該フィッティング平面上に投影し、すなわち、当該点の位置を補正後の法線ベクトルと当該フィッティング平面との交点位置に調整し、点群に対する平滑化の処理効果を達成する、
コンピュータにより実行される法線ベクトルに基づく点群平滑化フィルタリング方法。
【請求項2】
前記ステップS1において、外れ点を除去して各点周辺0.3mの範囲内に少なくとも3点を設定することを特徴とする請求項1に記載のコンピュータにより実行される法線ベクトルに基づく点群平滑化フィルタリング方法。
【請求項3】
前記ステップS2において、離散点群セットに対して主成分分析を行って点ごとの法線ベクトルを推定することは、その過程として以下を含み、
ステップS21:法線推定問題を、所定点の近傍に確立された共分散行列の特徴量と特徴ベクトルを解く問題に変換する。1つの点集合S={P,P...P}を仮定し、この点集合内に所定点Pに対する共分散行列Cは、以下のように示され、
【数1】
ここで、Pは、所定点であり、
【数2】
は、この点集合の重心であり、
Cの特徴量と特徴ベクトルを計算し、特徴ベクトルは、空間中の1組の直交基底を構成し、最小特徴量に対応する特徴ベクトルは、所定点Pの法線に近似できる、
ことを特徴とする請求項2に記載のコンピュータにより実行される法線ベクトルに基づく点群平滑化フィルタリング方法。
【請求項4】
前記ステップS2において、すべての点の法線ベクトルを同じ方向に調整することは、その過程が以下であり、
ステップS22:法線を求めてそれを単位化して法線ベクトルを得、(X,Y,Z)とし、法線ベクトルのZ<0ならばその法線ベクトルを逆にし、Z>0ならばそのままにし、すなわち、法線ベクトルの第3成分Zがすべて0より大きくなるように調整して法線ベクトルを同方向にする、
ことを特徴とする請求項3に記載のコンピュータにより実行される法線ベクトルに基づく点群平滑化フィルタリング方法。
【請求項5】
前記ステップS3において、最小二乗法により平面をフィッティングして法線ベクトルを取得することは、その過程が以下であり、
平面方程式の一般式は、Ax+By+Cz+D=0,(C≠0)であり、
ここで、A、B、C、Dは、平面方程式の未知パラメータであり、すなわち、
【数3】
すなわち、z=ax+by+c、
ここで、a、b、cは、平面方程式の他の表現方法の未知パラメータであり、
K個の点の座標(x、y、z)(i=0,1,…,K-1)は、既知であり、上記平面方程式をフィッティング計算し、平面方程式を構築して最小二乗法で平面方程式の未知パラメータを解き、
平面方程式は、典型的な方程式方式のAX=Bと見なし、
ここで、
【数4】
平面方程式AX=Bの最小二乗解は、X=(A-1)*ABであり、
フィッティング平面方程式z=ax+by+cを求めることができ、この平面の法線は、(a,b,-1)であり、この法線を単位化すると法線ベクトルが得られ、それを以下のように同方向に調整し、
【数5】
法線ベクトルは、以下であり、
【数6】
ここで、NormalLenは、法線を単位化するための、法線のノルムであり、a、bは、先に求めた平面方程式のパラメータである、
ことを特徴とする請求項4に記載のコンピュータにより実行される法線ベクトルに基づく点群平滑化フィルタリング方法。
【請求項6】
前記ステップS4において、前記ステップS2で算出した法線ベクトルをフィッティング平面の法線ベクトルを用いて補正することは、その過程が以下であり、
前記ステップS2で算出した法線ベクトルをnorm1=(a1,b1,c1)、(c1>0)とし、
平面フィッティングによる法線ベクトルは、norm2=(a2,b2,c2)、(c2>0)であり、
法線ベクトル補正パラメータalphaを用いて法線ベクトルを補正して得られた補正後の法線ベクトルは、以下であり、
norm=(a,b,c)=norm1*(1-alpha)+norm2*alpha
ここで、norm1は、前記ステップS2でPCA計算による法線ベクトルであり、norm2は、平面フィッティングによる法線ベクトルであり、alphaは、法線ベクトル補正パラメータであり、平面フィッティングによる法線ベクトルが最終補正後の法線ベクトルに占める重みを表し、alphaは、デフォルトで1をとり、すなわち最終補正後の法線ベクトルが平面フィッティングによる法線ベクトルとなる、
ことを特徴とする請求項5に記載のコンピュータにより実行される法線ベクトルに基づく点群平滑化フィルタリング方法。
【請求項7】
前記ステップS5において、当該点を補正後の法線ベクトル方向に沿って当該フィッティング平面上に投影することは、その過程が以下であり、
当該点の位置を補正後の法線ベクトルと当該フィッティング平面との交点位置に調整し、すなわち、点と平面との交点をその点の補正後の位置として求め、
このフィッティング平面の方程式は、前記ステップS3で得られ、
z=ax+by+c
補正後の法線ベクトルは、前記ステップS4で得られ、
(a,b,c
当該点の座標を(x,y,z)とすると、当該法線の方程式は、以下であり、
【数7】
当該法線と当該フィッティング平面との交点を求め、
【数8】
ここで、a、b、cは、補正後の法線ベクトルであり、a、b、cは、前記ステップS3で最小二乗法でフィッティングした平面方程式パラメータであり、x、y、zは、調整するオリジナル点座標であり、x、y、zは、法線ベクトルに基づくフィルタリング調整後の点の座標であり、オリジナル点群のこの点の位置を上述の法線ベクトルとフィッティング平面の交点位置に調整することで、点群に対する平滑化の処理効果を達成できる、
ことを特徴とする請求項6に記載のコンピュータにより実行される法線ベクトルに基づく点群平滑化フィルタリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザLidarスキャン計測分野に関し、特にコンピュータにより実行される法線ベクトルに基づく点群平滑化フィルタリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ技術、コンピュータ技術の急速な発展に伴い、機上レーザ測定は、高精度で信頼性の高い3次元データを効率的に取得する新技術となっている。
【0003】
それは、高精度の動的GPS差分測位、慣性航法、レーザ測距などの先進技術を集積しており、天候の影響が少なく、自動化の程度が高く、作図周期が短いなどの特徴を持つ。同技術は、複雑な物体表面の3次元点群情報を迅速、精確、非接触で取得でき、さらに実体の3次元再建を完了し、現在ではデジタル都市、地形計測、地理情報システム、医学工学、文化財保護、ロボットナビゲーションなどの各業界に広く応用されている。
【0004】
しかし、スキャン装置の物理的特性、スキャン環境、システム誤差、統合誤差の影響を受け、得られたオリジナル点群データは、ノイズに汚染されることが多い。オリジナル点群データを直接三角化してDEMを生成するのは、効果が低いため、点群に対して平滑化フィルタリング処理を行う必要がある。しかし、従来の方法では、十分な平滑化フィルタリング効果が得られない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、オリジナル点群データに対して平滑化処理を行うために、コンピュータにより実行される法線ベクトルに基づく点群平滑化フィルタリング方法を提案する。本発明は、典型的な平滑化フィルタリングとグリッドフィルタリングなどと区別する。本発明のフィルタリング方法は、点群数を減少させることなく、オリジナル点群位置を最適化し、平滑化の効果を達成する。この点群フィルタリング方法は、簡単で効果的を実現し、点群のオリジナルデータに対して平滑化処理を行うのに適しており、実用的価値が高い。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の技術手段によって達成される。
【0007】
コンピュータにより実行される法線ベクトルに基づく点群平滑化フィルタリング方法であって、以下のステップを含む。
S1:オリジナル点群の外れ点を除去し、各点周辺の設定範囲内の点の個数を統計し、一定個数より少ない場合は、外れ点と見なして除外する。
S2:離散点群セットに対して主成分分析(PCA)を行って点ごとの法線ベクトルを推定し、すべての点の法線ベクトルを同じ方向に調整する(すなわち、法線ベクトルの第3成分Zがすべて0より大きくなるように調整する)。
S3:各点に対してそのK近傍を介して最小二乗法で1つの平面をフィッティングし、この平面モデルによりその点の法線ベクトルを取得して同方向に調整する。
S4:フィッティング平面の法線ベクトルを用いて、S2で算出した法線ベクトルを補正する。
S5:当該点を補正後の法線ベクトル方向に沿って当該フィッティング平面上に投影し、すなわち、当該点の位置を補正後の法線ベクトルと当該フィッティング平面との交点位置に調整し、点群に対する平滑化の処理効果を達成する。
【0008】
さらに、前記ステップS1において、外れ点を除去して各点周辺0.3mの範囲内に少なくとも3点を設定し、そうでなければ外れ点と見なして除外する。このパラメータは、場合によって調整可能である。
【0009】
さらに、前記ステップS2において、離散点群セットに対して主成分分析(PCA)を行って点ごとの法線ベクトルを推定することは、その過程として以下を含む。
S21:法線推定問題を、所定点の近傍に確立された共分散行列の特徴量と特徴ベクトルを解く問題に変換する。1つの点集合S={P,P...P}を仮定し、この点集合内に所定点Pに対する共分散行列Cは、以下のように示される。
【数1】
ここで、
【数2】
は、この点集合の重心である。Cの特徴量と特徴ベクトルを計算し、特徴ベクトルは、空間中の1組の直交基底を構成し、最小特徴量に対応する特徴ベクトルは、所定点Pの法線に近似できる。
【0010】
さらに、前記ステップS2において、すべての点の法線ベクトルを同じ方向に調整することは、その過程が以下である。
S22:法線を求めてそれを単位化して法線ベクトルを得、(X,Y,Z)とし、法線ベクトルのZ<0ならばその法線ベクトルを逆にし、Z>0ならばそのままにし、すなわち、法線ベクトルの第3成分Zがすべて0より大きくなるように調整して法線ベクトルを同方向にする。
【0011】
さらに、前記ステップS3において、最小二乗法により平面をフィッティングして法線ベクトルを取得することは、その過程が以下である。
平面方程式の一般式は、Ax+By+Cz+D=0,(C≠0)であり、
すなわち、
【数3】
すなわち、z=ax+by+c。
ここで、a、b、cは、平面方程式の他の表現方法の未知パラメータである。
一連のK(デフォルトでK=50とし、手動で設定可能である)個の点について、このK個の点の座標(x、y、z)(i=0,1,…,K-1)は、既知であり、上記平面方程式をフィッティング計算し、この方程式を構築して最小二乗法で平面方程式の未知パラメータを解く。
この方程式は、典型的な方程式方式のAX=Bと見なし、
ここで、
【数4】
この方程式AX=Bの最小二乗解は、X=(A-1)*ABであり、
このフィッティング平面方程式z=ax+by+cを求めることができ、この平面の法線は、(a,b,-1)であり、この法線を単位化すると法線ベクトルが得られ、それを以下のように同方向に調整する。
【数5】
法線ベクトルは、以下である。
【数6】
ここで、NormalLenは、法線を単位化するための、法線のノルムであり、a、bは、先に求めた平面方程式のパラメータである。
【0012】
さらに、前記ステップS4において、S2で算出した法線ベクトルをフィッティング平面の法線ベクトルを用いて補正することは、その過程が以下である。
S2で算出した法線ベクトルをnorm1=(a1,b1,c1)、(c1>0)とし、
平面フィッティングによる法線ベクトルは、norm2=(a2,b2,c2)、(c2>0)であり、
法線ベクトル補正パラメータalpha(デフォルトで1.0とし、修正後の法線ベクトルは、デフォルトでフィッティング平面の法線ベクトルをとる。このパラメータは、設定可能である)を用いて法線ベクトルを補正して得られた補正後の法線ベクトルは、以下である。
norm=(a,b,c)=norm1*(1-alpha)+norm2*alpha
ここで、norm1は、ステップS2でのPCA計算による法線ベクトルであり、norm2は、平面フィッティングによる法線ベクトルであり、alphaは、法線ベクトル補正パラメータであり、平面フィッティングによる法線ベクトルが最終補正後の法線ベクトルに占める重みを表し、alphaは、一般的にデフォルトで1をとり、すなわち最終補正後の法線ベクトルが平面フィッティングによる法線ベクトルとなる。
【0013】
さらに、前記ステップS5において、当該点を補正後の法線ベクトル方向に沿って当該フィッティング平面上に投影することは、その過程が以下である。
当該点の位置を補正後の法線ベクトルと当該フィッティング平面との交点位置に調整し、すなわち、点と平面との交点をその点の補正後の位置として求める。
このフィッティング平面の方程式は、S3で得られる。
z=ax+by+c
補正後の法線ベクトルは、S4で得られる。
(a,b,c
当該点座標を(x,y,z)とすると、当該法線方程式は、以下である。
【数7】
当該法線と当該フィッティング平面との交点を求める。
【数8】
ここで、a、b、cは、補正後の法線ベクトルであり、a、b、cは、ステップS3で最小二乗法でフィッティングした平面方程式パラメータであり、x、y、zは、調整するオリジナル点座標であり、x、y、zは、法線ベクトルに基づくフィルタリング調整後の点の座標であり、オリジナル点群のこの点の位置を上述の法線ベクトルとフィッティング平面の交点位置に調整することで、点群に対する平滑化の処理効果を達成できる。
【発明の効果】
【0014】
1)本発明の方法は、無人機搭載Lidarスキャン計測分野に適用し、安定性が高く、精度が高いという利点を有する。
2)本発明の方法は、新しい点群平滑化フィルタリング構想を提案し、各点を補正後の法線ベクトル方向に沿ってフィッティング平面に投影することにより良好な平滑化効果を達成でき、また、平面をフィッティングするのに必要なK近傍の大きさや法線ベクトル調整の重みを設定することができ、アルゴリズムが簡単で効率的である。
3)本発明の方法は、各地形領域、例えば荒地、草地などによく適用することができ、計算量が低く、後続の点群データの三角化及びDEM生成のために、必要な良い基礎となる。
4)本発明の方法は、典型的な平滑化フィルタリングとグリッドフィルタリング法などと区別し、本フィルタリング方法は、点群数を減少させることなく、オリジナル点群位置を最適化し、平滑化の効果を達成する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の法線ベクトルに基づく点群平滑化フィルタリング方法のフローチャートである。
図2】フィルタリング前のオリジナル点群効果図である。
図3】フィルタリング前のオリジナル点群三角化平面効果図である。
図4】法線ベクトルに基づくフィルタリング後の点群効果図である。
図5】法線ベクトルに基づくフィルタリング後の点群三角化平面効果図である。
図6】フィルタリング前の効果の比較図である。
図7】フィルタリング後の効果の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、法線ベクトルに基づく点群平滑化フィルタリング方法を開示する。
【0017】
過程は、以下である。まずオリジナル点群の外れ点を除去する。それから離散点群セットに対して主成分分析を行って点ごとの法線ベクトルを推定し、すべての点の法線ベクトルを同じ方向に調整する(すなわち法線ベクトルの第3成分Zがすべて0より大きくなるように調整する)。さらに各点についてそのK近傍を介して最小二乗法で1つの平面をフィッティングし、平面モデルによりその点の法線ベクトルを得て同方向に調整する。次にフィッティング平面の法線ベクトルを用いて、第1ステップで算出した法線ベクトルを補正する。最後にその点を補正後の法線ベクトルの方向に沿ってそのフィッティング平面上に投影し、すなわちその点の位置を補正後の法線ベクトルとそのフィッティング平面との交点位置に調整し、点群に対する平滑化の処理効果を達成することができる。ここで、K近傍パラメータ(デフォルト50)および法線ベクトル修正パラメータ(デフォルト1.0であり、すなわち修正後の法線ベクトルは、フィッティング平面の法線ベクトルをデフォルトとする)の両方を設定することができる。この点群フィルタリング方法は、簡単で平滑化効果が明らかであり、オリジナル点群をフィルタリングすることで後続の点群データの三角化及びDEM生成のために良い基礎となり、点群オリジナルデータに対して平滑化処理を行うのに適しており、高い実用的価値を持つ。
【0018】
以下、具体的な実施形態を参照しながら、本発明を更に具体的に詳細に記載する。しかし、本発明の実施形態は、これに限られない。
【0019】
本発明の法線ベクトルに基づく点群平滑化フィルタリング方法は、以下のステップで実現される。
S1:オリジナル点群の外れ点を除去し、各点周辺の設定範囲内の点の個数を統計し、一定個数より少ない場合は、外れ点と見なして除外する。
S2:離散点群セットに対して主成分分析(PCA)を行って点ごとの法線ベクトルを推定し、すべての点の法線ベクトルを同じ方向に調整する(すなわち、法線ベクトルの第3成分Zがすべて0より大きくなるように調整する)。
S3:各点に対してそのK近傍を介して最小二乗法で1つの平面をフィッティングし、この平面モデルによりその点の法線ベクトルを取得して同方向に調整する。
S4:フィッティング平面の法線ベクトルを用いて、S2で算出した法線ベクトルを補正する。
S5:当該点を補正後の法線ベクトル方向に沿って当該フィッティング平面上に投影し、すなわち、当該点の位置を補正後の法線ベクトルと当該フィッティング平面との交点位置に調整し、点群に対する平滑化の処理効果を達成する。
【0020】
さらに、前記ステップS1において、外れ点を除去して各点周辺0.3mの範囲内に少なくとも3点を設定し、そうでなければ外れ点と見なして除外する。このパラメータは、場合によって調整可能である。
【0021】
さらに、前記ステップS2において、離散点群セットに対して主成分分析(PCA)を行って点ごとの法線ベクトルを推定することは、その過程として以下を含む。
S21:法線推定問題を、所定点の近傍に確立された共分散行列の特徴量と特徴ベクトルを解く問題に変換する。1つの点集合S={P,P...P}を仮定し、この点集合内に所定点Pに対する共分散行列Cは、以下のように示される。
【数9】
ここで、
【数10】
は、この点集合の重心である。Cの特徴量と特徴ベクトルを計算し、特徴ベクトルは、空間中の1組の直交基底を構成し、最小特徴量に対応する特徴ベクトルは、所定点Pの法線に近似できる。
【0022】
さらに、前記ステップS2において、すべての点の法線ベクトルを同じ方向に調整することは、その過程が以下である。
S22:法線を求めてそれを単位化して法線ベクトルを得、(X,Y,Z)とし、法線ベクトルのZ<0ならばその法線ベクトルを逆にし、Z>0ならばそのままにし、すなわち、法線ベクトルの第3成分Zがすべて0より大きくなるように調整して法線ベクトルを同方向にする。
【0023】
さらに、前記ステップS3において、最小二乗法により平面をフィッティングして法線ベクトルを取得することは、その過程が以下である。
平面方程式の一般式は、Ax+By+Cz+D=0,(C≠0)であり、
すなわち、
【数11】
すなわち、z=ax+by+c。
ここで、a、b、cは、平面方程式の他の表現方法の未知パラメータである。
一連のK(デフォルトでK=50とし、手動で設定可能である)個の点について、このK個の点の座標(x、y、z)(i=0,1,…,K-1)は、既知であり、上記平面方程式をフィッティング計算し、この方程式を構築して最小二乗法で平面方程式の未知パラメータを解く。
この方程式は、典型的な方程式方式のAX=Bと見なし、
ここで、
【数12】
この方程式AX=Bの最小二乗解は、X=(A-1)*ABである。
このフィッティング平面方程式z=ax+by+cを求めることができ、この平面の法線は、(a,b,-1)であり、この法線を単位化すると法線ベクトルが得られ、それを以下のように同方向に調整する。
【数13】
法線ベクトルは、以下である。
【数14】
ここで、NormalLenは、法線を単位化するための、法線のノルムであり、a、bは、先に求めた平面方程式のパラメータである。
【0024】
さらに、前記ステップS4において、S2で算出した法線ベクトルをフィッティング平面の法線ベクトルを用いて補正することは、その過程が以下である。
S2で算出した法線ベクトルをnorm1=(a1,b1,c1)、(c1>0)とし、
平面フィッティングによる法線ベクトルは、norm2=(a2,b2,c2)、(c2>0)であり、
法線ベクトル補正パラメータalpha(デフォルトで1.0とし、修正後の法線ベクトルは、デフォルトでフィッティング平面の法線ベクトルをとる。このパラメータは、設定可能である。)を用いて法線ベクトルを補正して得られた補正後の法線ベクトルは、以下である。
norm=(a,b,c)=norm1*(1-alpha)+norm2*alpha
ここで、norm1は、ステップS2でPCA計算による法線ベクトルであり、norm2は、平面フィッティングによる法線ベクトルであり、alphaは、法線ベクトル補正パラメータであり、平面フィッティングによる法線ベクトルが最終補正後の法線ベクトルに占める重みを表し、alphaは、一般的にデフォルトで1をとり、すなわち最終補正後の法線ベクトルが平面フィッティングによる法線ベクトルとなる。
【0025】
さらに、前記ステップS5において、当該点を補正後の法線ベクトル方向に沿って当該フィッティング平面上に投影することは、その過程が以下である。
当該点の位置を補正後の法線ベクトルと当該フィッティング平面との交点位置に調整し、すなわち、点と平面との交点をその点の補正後の位置として求める。
このフィッティング平面の方程式は、S3で得られる。
z=ax+by+c
補正後の法線ベクトルは、S4で得られる。
(a,b,c
当該点座標を(x,y,z)とすると、当該法線方程式は、以下である。
【数15】
当該法線と当該フィッティング平面との交点を求める。
【数16】
ここで、a、b、cは、補正後の法線ベクトルであり、a、b、cは、ステップS3で最小二乗法でフィッティングした平面方程式パラメータであり、x、y、zは、調整するオリジナル点座標であり、x、y、zは、法線ベクトルに基づくフィルタリング調整後の点の座標であり、オリジナル点群のこの点の位置を上述の法線ベクトルとフィッティング平面の交点位置に調整することで、点群に対する平滑化の処理効果を達成できる。
【0026】
上述したように、本発明は、好適に実現される。
【0027】
本発明の実施形態は、上述した実施例に限定されるものではない。本発明の精神および原理から逸脱することなく、その他のいかなる変更、修飾、代替、組み合わせ、簡略化も、等価な置換形態であるべきであり、いずれも本発明の範囲に含まれる。
【0028】
(付記)
(付記1)
法線ベクトルに基づく点群平滑化フィルタリング方法であって、以下のステップを含むことを特徴とし、
S1:オリジナル点群の外れ点を除去し、各点周辺の設定範囲内の点の個数を統計し、一定個数より少ない場合は、外れ点と見なして除外する:
S2:離散点群セットに対して主成分分析を行って点ごとの法線ベクトルを推定し、すべての点の法線ベクトルを同じ方向に調整し、すなわち、法線ベクトルの第3成分Zがすべて0より大きくなるように調整する:
S3:各点に対してそのK近傍を介して最小二乗法で1つの平面をフィッティングし、この平面モデルによりその点の法線ベクトルを取得して同方向に調整する:
S4:フィッティング平面の法線ベクトルを用いて、ステップS2で算出した法線ベクトルを補正する:
S5:当該点を補正後の法線ベクトル方向に沿って当該フィッティング平面上に投影し、すなわち、当該点の位置を補正後の法線ベクトルと当該フィッティング平面との交点位置に調整し、点群に対する平滑化の処理効果を達成する、
法線ベクトルに基づく点群平滑化フィルタリング方法。
【0029】
(付記2)
前記ステップS1において、外れ点を除去して各点周辺0.3mの範囲内に少なくとも3点を設定することを特徴とする付記1に記載の法線ベクトルに基づく点群平滑化フィルタリング方法。
【0030】
(付記3)
前記ステップS2において、離散点群セットに対して主成分分析を行って点ごとの法線ベクトルを推定することは、その過程として以下を含み、
S21:法線推定問題を、所定点の近傍に確立された共分散行列の特徴量と特徴ベクトルを解く問題に変換する。1つの点集合S={P,P...P}を仮定し、この点集合内に所定点Pに対する共分散行列Cは、以下のように示され、
【数17】
ここで、Pは、所定点であり、
【数18】
は、この点集合の重心であり、
Cの特徴量と特徴ベクトルを計算し、特徴ベクトルは、空間中の1組の直交基底を構成し、最小特徴量に対応する特徴ベクトルは、所定点Pの法線に近似できる、
ことを特徴とする付記2に記載の法線ベクトルに基づく点群平滑化フィルタリング方法。
【0031】
(付記4)
前記ステップS2において、すべての点の法線ベクトルを同じ方向に調整することは、その過程が以下であり、
S22:法線を求めてそれを単位化して法線ベクトルを得、(X,Y,Z)とし、法線ベクトルのZ<0ならばその法線ベクトルを逆にし、Z>0ならばそのままにし、すなわち、法線ベクトルの第3成分Zがすべて0より大きくなるように調整して法線ベクトルを同方向にする、
ことを特徴とする付記3に記載の法線ベクトルに基づく点群平滑化フィルタリング方法。
【0032】
(付記5)
前記ステップS3において、最小二乗法により平面をフィッティングして法線ベクトルを取得することは、その過程が以下であり、
平面方程式の一般式は、Ax+By+Cz+D=0,(C≠0)であり、
ここで、A、B、C、Dは、平面方程式の未知パラメータであり、すなわち、
【数19】
すなわち、z=ax+by+c、
ここで、a、b、cは、平面方程式の他の表現方法の未知パラメータであり、
このK個の点の座標(x、y、z)(i=0,1,…,K-1)は、既知であり、上記平面方程式をフィッティング計算し、この方程式を構築して最小二乗法で平面方程式の未知パラメータを解き、
この方程式は、典型的な方程式方式のAX=Bと見なし、
ここで、
【数20】
この方程式AX=Bの最小二乗解は、X=(A-1)*ABであり、
このフィッティング平面方程式z=ax+by+cを求めることができ、この平面の法線は、(a,b,-1)であり、この法線を単位化すると法線ベクトルが得られ、それを以下のように同方向に調整し、
【数21】
法線ベクトルは、以下であり、
【数22】
ここで、NormalLenは、法線を単位化するための、法線のノルムであり、a、bは、先に求めた平面方程式のパラメータである、
ことを特徴とする付記4に記載の法線ベクトルに基づく点群平滑化フィルタリング方法。
【0033】
(付記6)
前記ステップS4において、ステップS2で算出した法線ベクトルをフィッティング平面の法線ベクトルを用いて補正することは、その過程が以下であり、
ステップS2で算出した法線ベクトルをnorm1=(a1,b1,c1)、(c1>0)とし、
平面フィッティングによる法線ベクトルは、norm2=(a2,b2,c2)、(c2>0)であり、
法線ベクトル補正パラメータalphaを用いて法線ベクトルを補正して得られた補正後の法線ベクトルは、以下であり、
norm=(a,b,c)=norm1*(1-alpha)+norm2*alpha
ここで、norm1は、ステップS2でPCA計算による法線ベクトルであり、norm2は、平面フィッティングによる法線ベクトルであり、alphaは、法線ベクトル補正パラメータであり、平面フィッティングによる法線ベクトルが最終補正後の法線ベクトルに占める重みを表し、alphaは、デフォルトで1をとり、すなわち最終補正後の法線ベクトルが平面フィッティングによる法線ベクトルとなる、
ことを特徴とする付記5に記載の法線ベクトルに基づく点群平滑化フィルタリング方法。
【0034】
(付記7)
前記ステップS5において、当該点を補正後の法線ベクトル方向に沿って当該フィッティング平面上に投影することは、その過程が以下であり、
当該点の位置を補正後の法線ベクトルと当該フィッティング平面との交点位置に調整し、すなわち、点と平面との交点をその点の補正後の位置として求め、
このフィッティング平面の方程式は、ステップS3で得られ、
z=ax+by+c
補正後の法線ベクトルは、ステップS4で得られ、
(a,b,c
当該点座標を(x,y,z)とすると、当該法線方程式は、以下であり、
【数23】
当該法線と当該フィッティング平面との交点を求め、
【数24】
ここで、a、b、cは、補正後の法線ベクトルであり、a、b、cは、ステップS3で最小二乗法でフィッティングした平面方程式パラメータであり、x、y、zは、調整するオリジナル点座標であり、x、y、zは、法線ベクトルに基づくフィルタリング調整後の点の座標であり、オリジナル点群のこの点の位置を上述の法線ベクトルとフィッティング平面の交点位置に調整することで、点群に対する平滑化の処理効果を達成できる、
ことを特徴とする付記6に記載の法線ベクトルに基づく点群平滑化フィルタリング方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7