(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】無線システム及び無線システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
H01Q 3/08 20060101AFI20231221BHJP
H01Q 7/00 20060101ALI20231221BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20231221BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20231221BHJP
H04B 5/02 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H01Q3/08
H01Q7/00
H02J50/10
H02J50/80
H04B5/02
(21)【出願番号】P 2019067477
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-03-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】守田 淳
(72)【発明者】
【氏名】行正 浩二
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-136099(JP,A)
【文献】特開2014-110664(JP,A)
【文献】特開2008-211487(JP,A)
【文献】特開2012-104971(JP,A)
【文献】特開2018-113577(JP,A)
【文献】特開2019-047449(JP,A)
【文献】特表2015-528273(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106026410(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 3/08
H01Q 7/00
H02J 50/10
H02J 50/80
H04B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1アンテナと、
電磁界により前記第1アンテナと結合可能な第2アンテナと、
第1の軸周りに、前記第1アンテナと前記第2アンテナとの少なくとも一方を回転させ
る第1回転制御手段と、
前記第1の軸と略直交する第2の軸周りに、前記第1アンテナと前記第2アンテナとの
少なくとも一方を回転させる第2回転制御手段とを有し、
前記第1アンテナは第1の輪の形状の少なくとも一部を成し、
前記第1の軸は前記第1の輪の略中心を通り、
前記第2アンテナは第2の輪の形状の少なくとも一部を成し、
前記第2の軸は前記第2の輪の略中心を通り、
前記第1回転制御手段による回転または前記第2回転制御手段による回転において、
前記第1アンテナと前記第2アンテナとの所定の位置関係が維持されることを特徴とする無線システム。
【請求項2】
前記第1アンテナと前記第2アンテナとは、前記第1の軸方向の視点又は前記第2の軸方向の視点において少なくとも一部が重なることを特徴とする請求項1に記載の無線システム。
【請求項3】
前記第1回転制御手段は、前記第1アンテナと前記第2アンテナとの少なくとも一方を全周回転させることができ、
前記第2回転制御手段は、前記第1アンテナと前記第2アンテナとの少なくとも一方を全周回転させることができることを特徴とする請求項1又は2に記載の無線システム。
【請求項4】
前記第1アンテナと前記第2アンテナとの間での電磁界結合に基づく無線電力伝送を制御する送電制御手段を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の無線
システム。
【請求項5】
前記第1アンテナと前記第2アンテナとの間での電磁界結合に基づく無線データ通信を制御する通信制御手段を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の無線システム。
【請求項6】
前記無線システムは、第3アンテナと、電磁界により前記第3アンテナと結合可能な第4アンテナとを有し、
前記第1回転制御手段は、前記第1の軸周りに、前記第3アンテナと前記第4アンテナとの少なくとも一方を回転させ、
前記第2回転制御手段は、前記第2の軸周りに、前記第3アンテナと前記第4アンテナとの少なくとも一方を回転させることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の無線システム。
【請求項7】
前記第3アンテナは、前記第1の軸上の位置を略中心とする第3の輪の形状の少なくとも一部を成し、
前記第4アンテナは、前記第2の軸上の位置を略中心とする第4の輪の形状の少なくとも一部を成すことを特徴とする請求項6に記載の無線システム。
【請求項8】
前記第1アンテナと前記第3アンテナとは同一の基板に設置され、
前記第2アンテナと前記第4アンテナとは同一の基板に設置されることを特徴とする請求項6又は7に記載の無線システム。
【請求項9】
前記第1アンテナと前記第2アンテナとの間での電磁界結合により伝送させる信号と逆位相の信号を、前記第3アンテナと前記第4アンテナとの間での電磁界結合により伝送させることで、差動伝送による無線データ通信を制御する通信制御手段を有することを特徴とする請求項6乃至8の何れか1項に記載の無線システム。
【請求項10】
前記第1アンテナと前記第2アンテナとの間での電磁界結合に基づく無線データ通信を制御する通信制御手段と、
前記第3アンテナと前記第4アンテナとの間での電磁界結合に基づく無線電力伝送を制御する送電制御手段を有することを特徴とする請求項6乃至8の何れか1項に記載の無線
システム。
【請求項11】
前記第1アンテナは、撮影装置の第1部分に含まれ、
前記第2アンテナは、前記撮影装置の第2部分に含まれ、
前記通信制御手段は、前記撮影装置により取得された画像データを伝送する前記無線データ通信を制御することを特徴とする請求項5又は10に記載の無線システム。
【請求項12】
前記第1アンテナが設置されたベース部と、
前記第1回転制御手段による制御により前記ベース部に対して前記第1の軸周りに回転可能な第1回転部と、
前記第2アンテナが設置された第2回転部であって、前記第2回転制御手段による制御により前記第1回転部に対して前記第2の軸周りに回転可能な第2回転部とを有することを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の無線システム。
【請求項13】
第1アンテナと、電磁界により前記第1アンテナと結合可能な第2アンテナとを有する無線システムの制御方法であって、
第1の軸周りに、前記第1アンテナと前記第2アンテナとの少なくとも一方を回転させる第1回転制御工程と、
前記第1の軸と略直交する第2の軸周りに、前記第1アンテナと前記第2アンテナとの少なくとも一方を回転させる第2回転制御工程とを有し、
前記第1アンテナは第1の輪の形状の少なくとも一部を成し、
前記第1の軸は前記第1の輪の略中心を通り、
前記第2アンテナは第2の輪の形状の少なくとも一部を成し、
前記第2の軸は前記第2の輪の略中心を通り、
前記第1回転制御
工程による回転または前記第2回転制御
工程による回転において、
前記第1アンテナと前記第2アンテナとの所定の位置関係が維持されることを特徴とす
る制御方法。
【請求項14】
前記第1回転制御工程は、前記第1アンテナと前記第2アンテナとが前記第1の軸方向
の視点又は前記第2の軸方向の視点において少なくとも一部重なる状態を保ちながら、前記第1アンテナと前記第2アンテナとの少なくとも一方を前記第1の軸周りに回転させ、
前記第2回転制御工程は、前記第1アンテナと前記第2アンテナとが前記第1の軸方向の視点又は前記第2の軸方向の視点において少なくとも一部重なる状態を保ちながら、前記第1アンテナと前記第2アンテナとの少なくとも一方を前記第2の軸周りに回転させることを特徴とする請求項1
3に記載の制御方法。
【請求項15】
前記第1アンテナと前記第2アンテナとの間での電磁界結合に基づく無線電力伝送を制御する送電制御工程を有することを特徴とする請求項1
3又は1
4に記載の制御方法。
【請求項16】
前記第1アンテナと前記第2アンテナとの間での電磁界結合に基づく無線データ通信を制御する通信制御工程を有することを特徴とする請求項1
3又は1
4に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁界結合により近接無線通信を行う通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、近接させた複数のアンテナ間での電磁界結合により、機器の可動部におけるデータ通信や送電を無線で行う近接無線通信システムが提案されている。可動部におけるデータ通信等を無線で行うことにより、データ通信等を有線で行う場合よりも可動範囲を拡大することができ、さらにケーブルの摩耗などによる不具合を回避できる。
【0003】
特許文献1には、回転動作を行う監視カメラの回転部とベース部の間におけるデータ通信及び送電をアンテナにより無線化することで、カメラのパン方向における回転動作の可動範囲を拡大することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術において、データ通信を行うアンテナ対や送電を行うアンテナ対は、単一の軸周り(パン方向)にしか回転しない。そのため、例えばカメラのチルト方向の可動範囲を拡大させることはできない。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み、複数のアンテナの間での電磁界結合を保ちつつ、当該複数のアンテナを2以上の軸周りに相対回転させられるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る無線システムは、例えば以下の構成を有する。すなわち、第1アンテナと、電磁界により前記第1アンテナと結合可能な第2アンテナと、第1の軸周りに、前記第1アンテナと前記第2アンテナの少なくとも一方を回転させる第1回転制御手段と、前記第1の軸と略直交する第2の軸周りに、前記第1アンテナと前記第2アンテナの少なくとも一方を回転させる第2回転制御手段とを有し、前記第1アンテナは第1の輪の形状の少なくとも一部を成し、前記第1の軸は前記第1の輪の略中心を通り、前記第2アンテナは第2の輪の形状の少なくとも一部を成し、前記第2の軸は前記第2の輪の略中心を通り、前記第1回転制御手段による回転または前記第2回転制御手段による回転において、前記第1アンテナと前記第2アンテナとの所定の位置関係が維持される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数のアンテナの間での電磁界結合を保ちつつ、当該複数のアンテナを2以上の軸周りに相対回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】通信システムのシステム構成例を示す図である。
【
図3】通信システムの回転動作の例を示す図である。
【
図4】通信システムのシステム構成例を示す図である。
【
図6】無線データ通信を行うための送信部と受信部の構成例を示す図である。
【
図7】無線データ通信を行うためのカプラ形状の例を示す図である。
【
図8】無線データ通信の信号波形のシミュレーション結果を示す図である。
【
図10】無線データ通信を行うためのカプラ形状の例を示す図である。
【
図11】無線データ通信の信号波形のシミュレーション結果を示す図である。
【
図12】無線電力伝送と無線データ通信を行うためのアンテナの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[システム構成]
以下、図面を用いて本発明における実施形態について説明する。
図1に、本実施形態における通信システム100のシステム構成を示す。本実施形態では、パン方向とチルト方向に回転可能な撮影部を有する撮影装置であるネットワークカメラに通信システム100が実装された場合の例について説明する。この例において、通信システム100の各構成要素は、固定台110、回転支持台120、及び回転撮影部130の何れかに設置される。固定台110は、ネットワークカメラを壁や天井に設置するためのベース部であり、回転支持台120は、固定台110に対してパン方向に回転する回転部であり、回転撮影部130は、回転支持台120に対してチルト方向に回転する回転部である。
【0011】
固定台110は、電源111、制御部112、送電器113、送電アンテナ114、駆動部115、送信部116、受信部117、及び画像処理部118を有する。回転撮影部130は、受電器131、受電アンテナ132、撮影部133、駆動部134、受信部135、及び送信部136を有する。固定台110から回転撮影部130へは、回転撮影部130を動作させるための電力と、回転撮影部を制御するためのデータが伝送される。一方、回転撮影部130から固定台110へは、撮影部133により得られた画像データが伝送される。通信システム100は、送電アンテナ114と受電アンテナ132とを所定の位置関係(例えばアンテナ間の距離が略一定となる位置関係)を保つように支持するための構造を有する。通信システム100の構造の詳細については
図2等を用いて後述する。
【0012】
電源111は、システム全体を動作させるための電力を供給する。具体的には、電源111は、壁や天井に設置されている商用電源から取得した電力をシステム駆動用の電力に変換して、固定台110に設置される各構成要素へ電力を供給する。なお、電源111は電池から取得した電力を供給してもよい。制御部112は、送電器113、駆動部115、送信部116、受信部117、及び画像処理部118の動作を制御する。
【0013】
送電器113は、送電回路を有し、送電アンテナ114と受電アンテナ132との間での電磁界結合に基づく無線電力伝送を制御するための送電制御を行う。具体的には、送電器113はスイッチ回路を用いて、電源111から供給される直流電圧を電力搬送に適した周波数の交流電圧へ変換し、変換された電圧を送電アンテナ114へ印加する。なお、
図1では通信システム100が1対の送受電アンテナを有する例を示しているが、通信システム100は2対以上の送受電アンテナを有していてもよい。
【0014】
本実施形態における電磁界結合には、電界結合と磁界結合の両方が含まれる。すなわち、アンテナ間における無線電力伝送は、電界結合によって行われてもよいし、磁界結合によって行われてもよいし、電界結合と磁界結合の両方によって行われてもよい。磁界結合には電磁誘導及び磁界共鳴が含まれる。また、無線電力伝送はマイクロ波を利用した方式で行われてもよい。なお本実施形態では、送電アンテナ114と受電アンテナ132が導体からなるコイルであって、磁界結合による無線電力伝送が行われる場合を中心に説明する。
【0015】
駆動部115は、電源111から供給される電力から動力を得るモータ等を有し、制御部112からの指示に従って、固定台110に対して回転支持台120を回転させる回転制御を行う。なお、回転支持台120を回転させるための駆動部115が、回転支持台120に設置されていてもよい。また、駆動部115は、回転支持台120に対して固定台110を回転させてもよい。すなわち、固定台110と回転支持台120との少なくとも一方が相対的に回転すればよい。
【0016】
送信部116は、制御部112による制御に基づいて、回転撮影部130を制御するための制御データを受信部135へ送信する。受信部117は、回転撮影部130による撮影により得られた画像データを送信部136から受信する。送信部116及び受信部117を介したデータ通信は、有線で行われてもよいし無線で行われてもよい。データ通信が有線で行われる場合、送信部116と受信部135との間、及び受信部117と送信部136との間は、ケーブルにより接続される。データ通信が無線で行われる場合の構成については、
図7等を用いて後述する。また、送信部116と受信部135はスリップリングを介して接続されてもよい。
【0017】
画像処理部118は、受信部117が受信した画像データを取得し、画像認識や物体検出処理などの画像処理を行う。なお、受信部117が受信した画像データが通信システム100の外部の装置へ出力され、外部の装置において画像処理が行われてもよい。
【0018】
回転撮影部130は、受電器131、受電アンテナ132、撮影部133、駆動部134、受信部135、及び送信部136を有する。受電器131は、受電回路を有し、送電アンテナ114と受電アンテナ132との間での電磁界結合による無線電力伝送を制御するための制御を行う。具体的には、受電器131は、送電アンテナ114への電圧印加に応じて受電アンテナ132に生じた交流電圧を整流して直流電圧とし、回転撮影部130の各構成要素へ駆動電力を供給する。撮影部133は、受信部135が受信した制御データに応じた撮影モードで撮影することで、画像データを取得する。受信部135は、送信部116から送信された制御データを受信し、駆動部134や撮影部133へ制御データを出力する。送信部136は、撮影部133により取得された画像データを受信部117へ送信する。
【0019】
駆動部134は、受電器131から供給される電力から動力を得るモータ等を有し、受信部135が受信した制御データに従って、回転支持台120に対して回転撮影部130を回転させる回転制御を行う。回転支持台120がパン方向に回転し、回転撮影部130がチルト方向に回転することで、撮影部133は様々な方向を撮影することができる。なお、回転撮影部130を回転させるための駆動部134が、回転支持台120に設置されていてもよい。また、駆動部134は、回転撮影部130に対して回転支持台120を回転させてもよい。すなわち、回転支持台120と回転撮影部130との少なくとも一方が相対的に回転すればよい。
【0020】
なお、通信システム100の適用先は、本実施形態で説明するネットワークカメラに限定されない。例えば、
図1において固定台110に設置される構成要素がロボットアームのアーム部に実装され、
図1において回転撮影部130に設置される構成要素がロボットアームのハンド部に実装されてもよい。そして、ハンド部を動作させるための電力と制御データがアーム部からハンド部へ送信され、ハンド部が有するセンサにより得られたセンサデータがハンド部からアーム部へ送信されてもよい。また、
図1では通信システム100内で双方向の通信が行われる場合の例を示したが、これに限らず、単方向の通信が行われてもよい。
【0021】
[システムの物理構造]
図2を用いて、本実施形態における通信システム100の形状の例について説明する。
図2(a)は、固定台110を基準とする3次元の座標系200における斜視図であり、
図2(b)は座標系200のY軸方向から見た側面図であり、
図2(c)はZ軸方向から見た上面図である。なお、
図2においては見やすさのために、通信システム100の一部の構成要素を省略している。特に
図2(c)においては、送電アンテナ114と受電アンテナ132以外の構成要素を省略している。
【0022】
固定台110は、
図1に示した構成要素に加えて、回転機構201を有する。回転機構201は、駆動部115から得られる動力によって、回転支持台120をZ軸方向の軸周りに回転(パン方向に回転)させる。回転機構201による回転の軸は、送電アンテナ114が成す輪の略中心を通る。そのため、回転支持台120が回転しても、送電アンテナ114と受電アンテナ132とがZ軸方向から見て少なくとも一部重なった状態が維持される。なお、本実施形態におけるアンテナが成す「輪」とは、厳密な円形状のものに限定されず、例えば多角形形状や楕円形状などの閉曲線であってもよい。輪の形状が多角形である場合、輪の中心とはその重心の位置を指すものとする。また、アンテナの外周が成す輪の中心を回転軸としてもよいし、アンテナの内周が成す輪の中心を回転軸としてもよい。
【0023】
回転支持台120は、
図1に示した構成要素に加えて、回転機構202を有する。回転機構202は、駆動部134から得られる動力によって、回転機構201による回転の軸と略直交する軸周りに回転撮影部130を回転(チルト方向に回転)させる。回転機構202による回転の軸と回転機構201による回転の軸とが略直交することにより、回転撮影部130が回転しても、送電アンテナ114と受電アンテナ132とがZ軸方向から見て少なくとも一部重なった状態が維持される。なお、
図2では回転撮影部130が球形の場合の例を示しているが、回転撮影部130の形状はこれに限定されず、例えば卵形や涙形、円板形でもよい。
【0024】
ここで、通信システム100の回転動作の説明のために、回転座標系210を定める。回転座標系210においては、回転機構202による回転の軸の方向をX’軸方向とし、回転撮影部130の中心から撮影部133に向かう方向をZ’軸方向とし、Z’軸からX’軸への回転に応じて右ねじの進む方向をY’軸方向とする。
【0025】
受電アンテナ132は、回転機構201による回転の軸を囲むようなループを成す。また受電アンテナ132は、回転機構202による回転の軸を略中心とする輪の形状の一部(円弧形状)を成す。すなわち、X’軸方向から見て、受電アンテナ132は撮影部133の部分が途切れた輪の形状である。そのため、回転撮影部130が回転しても、送電アンテナ114と受電アンテナ132とがZ軸方向から見て少なくとも一部重なった状態が維持される。
【0026】
回転機構202は回転機構201に直接接続されず、回転支持台120を介して接続されており、回転機構201と回転機構202は独立して回転可能である。本実施形態では、受電アンテナ132が回転支持台120と共にZ軸方向の軸周りに全周回転(360度回転)可能であり、回転撮影部130と共にX‘軸方向の軸周りに全周回転可能であるものとする。ただしこれに限らず、回転支持台120と回転撮影部130の少なくとも何れかの回転可能な範囲が制限されていてもよい。また、通信システム100の回転機構は
図2に示す例に限定されない。例えば、回転機構は両支持でもよいし、片支持でもよい。また、回転機構は回転軸となる棒を有してもよいし、転がり軸受やすべり軸受を用いた回転機構であってもよい。すなわち、本実施形態における回転機構201および回転機構202の回転の軸は、回転動作の中心を表す概念であり、軸の位置に物理的なシャフトが存在してもしなくてもよい。
【0027】
また、受電アンテナ132の形状は
図2に示すものに限定されず、受電アンテナ132はX‘軸方向から見て輪の形状の少なくとも一部を成せばよい。例えば、受電アンテナ132はX’軸方向から見て、途切れていない輪の形状を成してもよいし、回転撮影部130の回転可能な範囲に応じた長さの弧形を成してもよい。また、
図2では受電アンテナ132が回転撮影部130の表面上に設定された場合の例を示しているが、これに限らず、受電アンテナ132が回転撮影部130の内部に設置されていてもよい。
【0028】
次に
図3を用いて、通信システム100の回転動作の例について説明する。
図3(a)及び
図3(b)は、
図2に示す状態から回転支持台120がZ軸方向の軸周りに回転した状態における側面図と上面図を示している。
図2(a)に示すように、回転機構201による回転の結果、回転支持台120とともに回転機構202、回転撮影部130、受電アンテナ132、及び撮影部133がZ軸方向の軸周りに回転する。
図2(b)に示すように、回転支持台120が回転しても、Z軸方向から見て受電アンテナ132と送電アンテナ114とが少なくとも一部重なり、受電アンテナ132と送電アンテナ114は電磁界により結合できる。
【0029】
図3(c)及び
図3(d)は、
図3(a)及び
図3(b)に示す状態からさらに回転撮影部130がX‘軸方向の軸周りに回転した状態における側面図と上面図を示している。
図3(c)に示すように、回転機構202による回転の結果、回転撮影部130とともに受電アンテナ132と撮影部133がX‘軸方向の軸周りに回転する。
図3(d)に示すように、回転撮影部130が回転しても、Z軸方向から見て受電アンテナ132と送電アンテナ114とが少なくとも一部重なり、受電アンテナ132と送電アンテナ114は電磁界により結合できる。
【0030】
図3では回転動作によって変化する通信システム100の状態の一例を示しているが、他の回転状態においても同様に、受電アンテナ132と送電アンテナ114は電磁界において結合し、通信システム100は無線電力伝送を行うことができる。ただし、通信システム100は、受電アンテナ132と送電アンテナ114との間での電磁界結合による無線電力伝送を行えない状態を一時的に取り得るような構成であってもよい。
【0031】
[システム構造の変形例]
以上の説明では送電アンテナ114が固定台110に設置されるものとしたが、送電アンテナ114の配置はこれに限定されない。以下では、送電アンテナ114が回転支持台120に設置される変形例について説明する。
図4は、本変形例における通信システム100の構成を示す。以下では
図1に示した構成と異なる部分を中心に説明する。
図4において、送電器113、送電アンテナ114、送信部116、及び受信部117は、固定台110ではなく回転支持台120に設置される。
【0032】
図5を用いて、本変形例における通信システム100の形状について説明する。
図5(a)は斜視図であり、
図5(b)はY軸方向からみた側面図であり、
図5(c)はX軸方向から見た側面図である。なお
図5(c)において、送電アンテナ114と受電アンテナ132以外の構成要素は省略している。X‘軸方向における送電アンテナ114の位置と受電アンテナ132の位置は重なるため、回転機構202により回転撮影部130がX’軸周りに回転しても、送電アンテナ114と受電アンテナ132は電磁界により結合できる。
【0033】
なお、
図5に示す送電アンテナ114の位置は一例であり、これに限定されない。通信システム100は、送電アンテナ114がZ軸方向の軸周りに回転し、且つ受電アンテナ132がX‘軸周りに回転しても送電アンテナ114と受電アンテナ132との間の電磁界結合による無線電力伝送が可能であるような、他の構造を有していてもよい。
【0034】
[無線データ通信]
以上の説明では、通信システム100において無線電力伝送を行うための構成について説明した。一方、以下では通信システム100において無線データ通信を行うための構成について説明する。
図6(a)は、
図1に示す通信システム100において無線データ通信を実現するための、送信部116及び受信部135の構成を示す。なお、データ通信を無線化する場合に、固定台110から回転撮影部130への電力伝送は上述のように無線で行われてもよいし、有線で行われてもよい。電力伝送が有線で行われる場合、送電器113と受電器131とはケーブルで接続される。また、送電器113と受電器131がスリップリングを介して接続されてもよい。
【0035】
図6(a)に示すように、送信部116は送信回路603と送信カプラ604を有し、受信部135は受信回路605と受信カプラ606を有する。送信カプラ604及び受信カプラ606は、データ通信を行うための通信アンテナとして機能する導体である。送信回路603と受信回路605は、送信カプラ604と受信カプラ606との間の電磁界結合に基づく無線データ通信を制御する通信制御を行う。具体的には、送信回路603は、制御部112による制御に基づいて電気信号を生成し、電気信号を変調せずに伝送するベースバンド方式に従って送信カプラ604から受信カプラ606へ電気信号を送信する。受信回路605は、受信カプラ606を介して受信した電気信号を駆動部134や撮影部133へ出力する。
【0036】
図6(b)は、無線データ通信における信号波形を示す。送信回路603は、送信すべきデータに応じたデジタルの信号607を無変調で送信カプラ604に入力する。送信カプラ604への信号607の入力に応じて、受信カプラ606には電磁界結合により微分信号608が生じる。受信回路605は、受信カプラ606に生じた微分信号608を、閾値609を有する比較器を用いて処理することにより、デジタルの信号610を復元する。なお、本実施形態では送信回路603が出力する信号が”1”又は”0”で表される2値のデジタル信号であるものとして説明するが、これに限定されず、例えば電圧の離散量でデータを表現する2値以上の多値信号が用いられてもよい。
【0037】
なお、無線データ通信の方式はベースバンド方式に限定されず、例えば送信カプラ604から受信カプラ606へ送信される搬送波を、送信回路603により生成される電気信号により変調することで、搬送通信が行われてもよい。また、カプラ間における無線データ通信は、電界結合によって行われてもよいし、磁界結合によって行われてもよいし、電界結合と磁界結合の両方によって行われてもよい。また、以下では、送信カプラ604と受信カプラ606がそれぞれ1対の電極を有し、差動伝送によって無線データ通信が行われる場合を中心に説明する。差動伝送によれば、通信されるデータのノイズを抑制することができる。
【0038】
次に
図7を用いて、無線データ通信を行うためのカプラの形状の例について説明する。ここでは電力伝送が有線で行われるものとし、
図2又は
図5に示した送電アンテナ114の位置に送信カプラ604が設置され、受電アンテナ132の位置に受信カプラ606が設置されるものとする。なお、データ通信と電力伝送の両方を無線で行う場合の構造については、
図12を用いて後述する。
【0039】
送信カプラ604は基板701のパターンとして構成された電極703と電極704を有し、受信カプラ606は基板702のパターンとして構成された電極705と電極706を有する。送信回路603は、差動伝送による無線データ通信を行うために、電極703に入力する信号と逆位相の信号を電極704に入力する。その入力に応じて、電磁界結合により、電極705と電極706には互いに逆位相の信号が伝送される。電極703は主に電極705と電磁界により結合し、電極704は主に電極706と電磁界により結合する。すなわち、各電極は無線データ通信を行うための通信アンテナとして機能する。
【0040】
電極703の中心と電極704が成す輪の中心とは略一致し、回転支持台120のZ軸方向の回転軸は電極704が成す輪の略中心を通る。そのため、回転支持台120と共に受信カプラ606がZ軸方向の軸周りに回転しても、電極703と電極705がZ軸方向から見て少なくとも一部重なった状態が維持され、電極704と電極706がZ軸方向から見て少なくとも一部重なった状態が維持される。
【0041】
また、電極705が成す輪の中心と電極706が成す輪の中心とは略一致し、回転撮影部130のX‘軸方向の回転軸は電極705が成す輪の略中心を通る。そのため、回転撮影部130と共に受信カプラ606がX’軸方向の軸周りに回転しても、電極703と電極705がZ軸方向から見て少なくとも一部重なった状態が維持され、電極704と電極706がZ軸方向から見て少なくとも一部重なった状態が維持される。すなわち、通信システム100は、送信カプラ604と受信カプラ606とが電磁界により結合した状態を保ちながら、パン方向とチルト方向に回転し、無線データ通信を行うことができる。
【0042】
なお、送信カプラ604が有する電極704は、輪の形状の少なくとも一部を成せばよい。例えば、電極704は弧形状であってもよいし、輪の半径方向のスリットを有していてもよい。また、電極703の形状も円形に限らず、電極703が輪の形状の少なくとも一部を成してもよい。同様に、受信カプラ606が有する電極705と電極706は、X‘軸方向から見て輪の形状の少なくとも一部を成せばよい。例えば、電極705及び電極706はX’軸方向から見て、途切れていない輪の形状を成してもよいし、回転撮影部130の回転可能な範囲に応じた長さの弧形を成してもよい。
【0043】
図8は、
図7に示した構成の送信カプラ604と受信カプラ606との間で伝送される信号のシミュレーション結果を示す。
図8(a)は送信カプラ604へ入力される信号の波形を示し、
図8(b)は受信カプラ606から出力される信号の波形を示す。
図8から分かるように、入力信号の立ち上り時と立ち下がり時に、対応する微分波形が受信カプラ606から出力される。また、受信カプラ606から出力される信号波形の一部分801などにリンギングが生じているが、入力信号の立ち上がりと立ち下がりに対応する微分波形の信号に対して振幅が十分に小さいことが分かる。具体的には、
図8(b)に示す信号のピークの電圧が45mV程度であるのに対し、リンギング部分の電圧は5mV程度である。そのため、
図8(b)に示す信号に対して適切な閾値(例えば25mV)の比較器による処理を行うことで、送信部116から送信されたデジタル信号を受信部135により復元することができる。
【0044】
以上では、送信部116と受信部135との間のデータ通信を無線化する構成について説明したが、受信部117と送信部136との間のデータ通信も同様に無線化できる。例えば、送信部136は、撮影部133による撮影に基づく画像データに応じた信号を、
図7に示す受信カプラ606と同様の構造のカプラに入力してもよい。そして受信部117は、送信カプラ604と同様の構造のカプラから出力される信号を受信してもよい。すなわち、
図7に示す受信カプラ606が送信側の通信アンテナとして機能し、送信カプラ604が受信側の通信アンテナとして機能してもよい。
【0045】
なお、通信システム100内における無線データ通信は、差動伝送に限定されず、シングルエンド伝送で行われてもよい。この場合、送信カプラ604は電極703と電極704の何れか一方のみを有し、受信カプラ606は電極705と電極706の何れか一方のみを有していてもよい。また、送信部116が電極703に信号を入力し、送信部136が電極706に信号を入力することで、通信システム100内における双方向通信が行われてもよい。また、通信システム100が有するカプラの数は上述の例に限定されない。
【0046】
[システム構造の変形例]
以上の説明では、送信カプラ604が有する電極と受信カプラ606が有する電極とがZ軸方向の視点において少なくとも一部重なることで電磁界結合を生じさせるものとしたが、カプラの位置関係はこれに限定されない。以下では、送信カプラ604が有する電極と受信カプラ606が有する電極とがX‘軸方向の視点において少なくとも一部重なることで電磁界結合を生じさせる変形例について説明する。
【0047】
図9は、本変形例における通信システム100の構造を示す。以下では
図2に示した構造と異なる部分を中心に説明する。
図9(a)は斜視図であり、
図9(b)はY軸方向から見た側面図である。
図9に示す構成において、回転撮影部130にはX‘軸周りの円周方向に幅が数ミリの溝901を形成され、溝901の内側の側面に受信カプラ606が設置される。また、回転機構201は筒状であり、その中を通るように軸903が固定台110に設置される。そして、軸903に巻かれる形で、受信カプラ606と対向するように送信カプラ604が設置される。
【0048】
図10は、本変形例の構造におけるカプラ部分を拡大した図である。
図10(a)は斜視図であり、
図10(b)はX軸方向から見た側面図である。無線データ通信を差動伝送により行うために、送信カプラ604は電極1003と電極1004を有し、受信カプラ606は電極1005と電極1006を有する。電極1003は主に電極1006と電磁界により結合し、電極1004は主に電極1005と電磁界により結合する。
【0049】
電極1003の中心と電極1004が成す輪の中心とは略一致し、回転支持台120のZ軸方向の回転軸は電極1004が成す輪の略中心を通る。そのため、回転支持台120と共に受信カプラ606がZ軸方向の軸周りに回転しても、電極1003と電極1005がX‘軸方向から見て少なくとも一部重なり、且つ電極1004と電極1006がX’軸方向から見て少なくとも一部重なった状態が維持される。なお、回転支持台120の回転と共に軸903がZ軸周りに回転してもよい。
【0050】
また、電極1005が成す輪の中心と電極1006が成す輪の中心とは略一致し、回転撮影部130のX‘軸方向の回転軸は電極1005が成す輪の略中心を通る。そのため、回転撮影部130と共に受信カプラ606がX’軸方向の軸周りに回転しても、電極1003と電極1005がX‘軸方向から見て少なくとも一部重り、且つ電極1004と電極1006がX’軸方向から見て少なくとも一部重なった状態が維持される。すなわち、通信システム100は、送信カプラ604と受信カプラ606とが電磁界により結合した状態を保ちながら、パン方向とチルト方向に回転し、無線データ通信を行うことができる。
【0051】
なお、送信カプラ604が有する電極1003と電極1004は、輪の形状の少なくとも一部を成せばよい。すなわち、これらの電極は軸903の全周にわたって巻き付けられていなくてもよい。また、受信カプラ606が有する電極1005と電極1006は、X‘軸方向から見て輪の形状の少なくとも一部を成せばよい。例えば、電極1005及び電極1006はX’軸方向から見て、途切れていない輪の形状を成してもよいし、回転撮影部130の回転可能な範囲に応じた長さの弧形を成してもよい。
【0052】
図11は、
図10に示した構成の送信カプラ604と受信カプラ606との間で伝送される信号のシミュレーション結果を示す。
図11(a)は送信カプラ604へ入力される信号の波形を示し、
図11(b)は受信カプラ606から出力される信号の波形を示す。
図11から分かるように、入力信号の立ち上り時と立ち下がり時に、対応する微分波形が受信カプラ606から出力される。また、受信カプラ606から出力される信号波形の一部分1101などにリンギングが生じているが、入力信号の立ち上がりと立ち下がりに対応する微分波形の信号に対して振幅が十分に小さいことが分かる。具体的には、
図11(b)に示す信号のピークの電圧が12mV程度であるのに対し、リンギング部分の電圧は1mV程度である。そのため、
図11(b)に示す信号に対して適切な閾値(例えば10mV)の比較器による処理を行うことで、送信部116から送信されたデジタル信号を受信部135により復元することができる。
【0053】
なお、
図7を用いて説明したカプラの構造と同様に、
図10を用いて説明したカプラについても、通信の方向は限定されない。すなわち、
図10に示す受信カプラ606が送信側の通信アンテナとして機能し、送信カプラ604が受信側の通信アンテナとして機能してもよい。また、通信システム100内における無線データ通信がシングルエンド伝送で行われる場合、送信カプラ604は電極1003と電極1004の何れか一方のみを有し、受信カプラ606は電極1005と電極1006の何れか一方のみを有していてもよい。また、送信部116が電極1003に信号を入力し、送信部136が電極1005に信号を入力することで、通信システム100内における双方向通信が行われてもよい。
【0054】
以上では、
図9及び
図10を用いて、無線データ通信を実現するための通信アンテナとしての送信カプラ604と受信カプラ606の構造の変形例について説明した。ただし、この構造の適用先は通信アンテナに限定されず、無線電力伝送を実現するための送電アンテナ114及び受電アンテナ132の構造に上述の変形例を適用してもよい。
【0055】
[無線電力伝送と無線データ通信の併用]
図12を用いて、
図1に示す通信システム100において無線データ通信と無線電力伝送を併用するための、アンテナの形状の例について説明する。固定台110に設置される基板1301には、送電アンテナ114と、送信部116が有する送信カプラを構成する電極1304及び1305と、受信部117が有する受信カプラを構成する電極1306及び電極1307が、パターンとして配置される。回転撮影部130に設置される基板1302には、受電アンテナ132と、受信部135が有する受信カプラを構成する電極1309及び電極1310と、送信部136が有する送信カプラを構成する電極1311及び電極1312が配置される。
【0056】
図12に示すように、送電アンテナ114、電極1304、電極1305、及び電極1306はそれぞれ、Z軸方向から見て、回転支持台120の回転軸上の位置を略中心とする輪の形状の少なくとも一部をなす。また、受電アンテナ132、電極1309、電極1310、電極1311、及び電極1312はそれぞれ、X‘軸方向から見て、回転撮影部130の回転軸上の位置を略中心とする輪の形状の少なくとも一部を成す。なお、電極1307の形状も円形に限らず、例えば送電アンテナ114と同心円となるような輪の形状の一部を成してもよい。
【0057】
電極1304と電極1309、電極1305と電極1310、電極1306と電極1311、電極1307と電極1312が、それぞれZ軸方向の視点において少なくとも一部重なり、電磁界により結合する。また、送電アンテナ114と受電アンテナ132とがZ軸方向の視点において少なくとも一部重なり、電磁界により結合する。このような送受信カプラ間及び送受電アンテナ間の位置関係は、回転支持台120と共に基板1302がZ軸方向の軸周りに回転した場合も、回転撮影部130と共に基板1302がX‘軸方向の軸周りに回転した場合も、維持される。
【0058】
そして、送信部116と受信部135とが電磁界結合に基づく無線データ通信を制御し、受信部117と送信部136とが電磁界結合に基づく無線データ通信を制御し、送電器113と受電器131とが電磁界結合に基づく無線電力伝送を制御する。これにより、通信システム100は、パン方向とチルト方向の2軸周りに回転しながら、無線電力伝送及び双方向の無線データ通信を行うことができる。
【0059】
図12に示す構造において、電極1304、電極1305、及び電極1306は、つながったループを形成しないように半径方向のスリットを有している。これにより、無線電力伝送のために送電アンテナ114から生じる磁界に応じた電流が電極に流れることを抑制できるため、無線データ通信におけるノイズを低減でき、且つ無線電力伝送の効率を向上させることができる。ただし、例えば磁界結合を主として利用しない電力伝送(電界結合による電力伝送など)が行われる場合においては、電極がループを形成していてもよい。
【0060】
なお、
図12の例ではシステムの小型化のために同一基板上に電力伝送用のアンテナと送信カプラと受信カプラとが設置されているが、それらの少なくとも何れかが異なる基板に設置されていてもよい。また、電力伝送用のアンテナ及びデータ通信用のアンテナは、FR4基板に構成されていてもよいし、テフロン(登録商標)基板、セラミック基板、及びフレキ基板などに構成されていてもよい。また、アンテナが基板上に構成されずに、板状又は線状の導体のみで構成されていてもよい。
【0061】
また
図12の例では、Z軸方向から見て電力伝送用のアンテナの内側に送信カプラ及び受信カプラが配置されているが、これ限らず、送信カプラと受信カプラの少なくとも何れかが電力伝送用のアンテナの外側に配置されてもよい。また、
図12に示す構成において、送信カプラと受信カプラの配置を入れ替えてもよい。さらに、固定台110に受電器を設置し、回転撮影部130に送電器を設置して、
図12に示す送電アンテナ114と同様の形状のアンテナを受電用のアンテナとして利用し、受電アンテナ132と同様の形状のアンテナを送電用のアンテナとして利用してもよい。
【0062】
また、
図12に示す例では、基板1301を
図2の送電アンテナ114の位置に配置し、基板1302を
図2の受電アンテナ132の位置に配置するものとしたが、この構成に限定されない。例えば、
図5の送電アンテナ114の位置に基板1301を配置し、
図5の受電アンテナ132の位置に基板1302を配置してもよい。また、
図9の送信カプラ604の位置に送信カプラ、受信カプラ、及び送電アンテナを配置し、
図9の受信カプラ606の位置に送信カプラ、受信カプラ、及び受電アンテナを配置してもよい。
【0063】
以上説明したように、本実施形態に係る通信システム100は、第1の輪の形状の少なくとも一部を成す第1アンテナ(例えば送電アンテナ114又は送信カプラ604の電極)を有する。また通信システム100は、第2の輪の形状の少なくとも一部を成す第2アンテナであって、電磁界により第1アンテナと結合可能な第2アンテナ(例えば受電アンテナ132又は受信カプラ606の電極)を有する。さらに通信システム100は、第1の輪の略中心を通る第1の軸(例えばZ軸方向の軸)周りに、第1アンテナと第2アンテナとの少なくとも一方を回転させる駆動部115を有する。そして通信システム100は、第2の輪の略中心を通る第2の軸であって第1の軸と略直交する第2の軸(例えばX‘方向の軸)周りに、第1アンテナと第2アンテナとの少なくとも一方を回転させる駆動部134を有する。
【0064】
上記のような構成によれば、複数のアンテナの間での電磁界結合を保ちつつ、当該複数のアンテナを2以上の軸周りに相対回転させることができる。それにより、無線電力伝送、無線データ通信、又はその両方を行う通信システム100の可動範囲を拡大させることができる。
【0065】
また、上述した各構成の通信システム100は、例えば以下のような方法で製造することができる。まず、ベース部となる固定台110に対して、第1の軸周りに回転可能となるように回転支持台120を取り付ける。さらに、回転支持台120に対して、第1の軸と略直交する第2の軸周りに回転可能となるように回転撮影部130を取り付ける。また、第1アンテナを固定台110又は回転支持台120に設置する。そして、電磁界により第1アンテナと結合可能な第2アンテナを、回転撮影部130に設置する。このようにして製造された通信システム100を用いることで、上述したように、電磁界により結合する複数のアンテナを2以上の軸周りに相対回転させることができる。なお、各部材を取り付ける順番は上記の例に限定されず、変更可能である。
【0066】
本実施形態では通信システム100がパン方向とチルト方向の2軸周りに回転する場合について説明したが、回転の方向はこれに限定されない。例えば、
図5に示すようなアンテナ配置によれば、回転撮影部130がロール方向(Y‘軸方向)の軸周りに回転しても、アンテナ間の電磁界結合を維持できる。さらに、通信システム100は3以上の軸周りに回転してもよい。また、本実施形態ではアンテナが成す輪の中心を回転軸とした回転が行われるものとしたが、回転軸は輪の中心に限定されない。アンテナが回転してもアンテナ間の結合度が所定の範囲内に収まるような位置が回転軸であればよい。
【符号の説明】
【0067】
100 無線通信システム
110 固定台
114 送電アンテナ
132 受電アンテナ
120 回転支持台
130 回転撮影部
201 回転機構
202 回転機構