(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 80/00 20180101AFI20231221BHJP
G16H 50/20 20180101ALI20231221BHJP
G16H 20/00 20180101ALI20231221BHJP
【FI】
G16H80/00
G16H50/20
G16H20/00
(21)【出願番号】P 2019085964
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2022-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】植田 竜太
(72)【発明者】
【氏名】西 康二郎
【審査官】森田 充功
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-503017(JP,A)
【文献】特開2004-295588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザのヘルスケアに関する情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記ヘルスケアに関する情報に基づいて、推論を行う推論部と、
前記推論部による推論結果の値に対して閾値処理をすることにより、登録医療機関へ前記推論結果を通知するかを判定する判定部であって、
前記判定部は、前記ヘルスケアに関する情報に
前記登録医療機関の受診歴が含まれる場合に、前記
登録医療機関の受診歴が含まれない場合の閾値よりも大きい閾値を用いて前記閾値処理を行い、
前記判定部による判定結果に基づいて、前記推論結果を通知すると判定された登録医療機関がある場合には、該登録医療機関に、前記推論結果と共に、前記推論結果を取得するために用いられた前記情報が蓄積されている記憶部へのアクセス用のコードを通知する通知部と、を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記登録医療機関に加え、さらに別の登録者へ前記推論結果を通知するかを判定することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記推論部は、機械学習に基づく推論手段により推論を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記推論部による推論結果が、尤度であることを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記推論部による推論結果の値に応じて、前記推論結果を、通知するかを判定することを特徴とする請求項3または4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記推論部がリカレントニューラルネットワーク(RNN)に基づくモデルに基づいて推論を行うことを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記ヘルスケアに関する情報に前記
登録医療機関の受診歴が含まれる場合に、前記ヘルスケアに関する情報と前記
登録医療機関が定めた期待値との差分に基づいて前記推論結果を通知するかを判定することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記推論部におけるリカレントニューラルネットワークは、前記ヘルスケアに関する情報に基づいて、前記ヘルスケアに関する情報より以後の推移を予測することを特徴とする請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記判定部は、前記ヘルスケアに関する情報に前記
登録医療機関の受診歴が含まれる場合に、前記リカレントニューラルネットワークによる値と、前記
登録医療機関が定めた期待値との差分とに基づいて、前記推論結果を通知するかを判定することを特徴とする請求項6または8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
情報処理装置によって実行される情報処理方法であって、
ユーザの医療機関の受診歴に関する情報を含むヘルスケアに関する情報を取得するステップと、
前記取得された前記ヘルスケアに関する情報に基づいて、推論を行うステップと、
前記推論結果の値に対して閾値処理することにより、登録医療機関へ前記推論結果を通知するかを判定するステップであって、
前記ヘルスケアに関する情報に
前記登録医療機関の受診歴が含まれる場合に、前記
登録医療機関の受診歴が含まれない場合の閾値よりも大きい閾値を用いて前記閾値処理を行い、
前記判定結果に基づいて、前記推論結果を通知すると判定された登録医療機関がある場合には、該登録医療機関に、前記推論結果と共に、前記推論結果を取得するために用いられた前記情報が蓄積されているデータ集積部へのアクセス用のコードを通知するステップと、を有することを特徴とする情報処理方法。
【請求項11】
請求項10に記載の情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機関での受診を促すレベルについて判定する情報処置装置、情報処理方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者人口の増加や核家族の割合の増加から在宅医療に注目が集まっている。在宅医療では、被観察者の行動やバイタルデータ等のログを取得し、観察者に通知をすることで観察者が被観察者の行動や健康状態を認識することのできる技術がある。特許文献1には、血圧関連情報を取得し、取得した血圧関連情報により判定された健康状態によってアラートを通知する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、血圧関連情報から健康状態を判定し、判定結果に応じてアラートを通知する。しかしながら、アラートでは本人の健康状態がおおよそ把握できても、その判定の根拠に関連する情報が通知されなかった。ただ仮に観察者が被観察者の情報を取得したとしても、観察者が親族や、被観察者の友人等、医療に関する知識を有さない者であった場合に、取得した情報を基に医療機関での受診要否を判断することは困難であった。また、仮に被観察者の毎日のバイタルデータなどの情報をすべて医師等の有識者に送信するとしても、被観察者のプライバシーの観点や、医者など有識者による情報の選別に係るコストに鑑みても現実的でない。
【0005】
そこで、上記の課題を解決するために、識別器により実際の医療機関での受信を促すレベルに関するリスクを推論し、推論されたリスクレベルに基づいて適切な通知先を決定し、必要に応じて推論に係る情報を開示する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る情報処理装置は、以下の構成を備える。すなわち、ユーザのヘルスケアに関する情報を取得する取得部と、取得部により取得された情報に基づいて、推論を行う推論部と、推論部による推論結果に基づいて、登録医療機関へ推論結果を通知するかを判定する判定部と、判定部による判定結果に基づいて、推論結果を通知すると判定された登録医療機関がある場合には、該登録医療機関に、推論結果と共に、推論結果を取得するために用いられた情報が蓄積されている記憶部へのアクセス用のコードを通知する通知部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、識別器により推論されたリスクレベルに基づいて適切な通知先を決定し、適切な通知先に適切な情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第一の実施形態に係る情報処理装置の構成を示す図。
【
図2】第一の実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成を示す図。
【
図3】第一の実施形態に係る情報処理装置の処理手順を示すフローチャート。
【
図4】第一の実施形態に係る情報処理装置のリスクレベルと通知先の関係図。
【
図5】第三の実施形態に係る情報処理装置の処理手順を示すフローチャート。
【
図6】第四の実施形態に係る情報処理装置の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【実施例】
【0010】
<第1の実施形態>
本実施形態における情報処理装置は、取得部が被観察者(ユーザ)に関する情報を取得し、取得した情報に対し学習された識別器が推論を行い、推論の結果から判定部が通知先を選択する。
【0011】
本構成により、観察者が登録医療機関の検診をうける必要性が高い場合(リスクレベルが高い場合)には、医者等の有識者、あるいは医療機関に被観察者の情報を通知する。一方で、リスクが高くない場合には、被観察者(ユーザ)本人のみ、もしくは観察者を含めた通知先へと通知をする。なお、被観察者(ユーザ)に関する情報は、被観察者(ユーザ)により入力された情報でもよいし、日常生活からセンサ等を通して取得されたバイタルデータでも、過去の検診の結果を基にした情報でもよい。
【0012】
図1を用いて本実施形態に係る情報処理装置の構成を説明する。
図1は、情報処理装置全体の概略ブロック図である。本実施形態に係る情報処理装置100は、ユーザからの情報の入力を受け付ける入力部101と、入力部101からの情報及び、過去の検診の結果等を記憶装置105より取得する取得部102を有する。さらに取得した被験者に関する情報を基に推論部103は、リスクレベルを推論する。推論結果に基づいて判定部104は通知先を選択し、選択された通知先に対して通知部106が通知をする。
【0013】
以下、本実施形態に係る情報処理装置の各構成の詳細を説明する。
【0014】
(入力部101)
入力部101は、マウス、ポインタ、キーボード、マイク等を介して被観察者(ユーザ)のヘルスケアに関する生活情報の入力を行う。被観察者(ユーザ)が入力する生活情報には、例えば血圧や、脈拍、体温、歩数、食事、体調、症状等が挙げられる。また入力部はGUIを介さずとも、例えばウェアラブル端末等によって取得される脈拍、血圧や、体温、歩数等のバイタルデータが直接入力されてもよい。また、音声によって入力された情報をユーザによる入力としてもよい。尚、入力される情報は入力形式を問わない。入力部101により入力された生活情報は取得部102へと送信される。
【0015】
(取得部102)
取得部102は、入力部101から入力された生活情報に加え、さらに記憶装置105の登録情報も取得する。記憶装置105には、例えば過去に入力部を介して入力された被観察者(ユーザ)の生活情報の他に、既往歴や、病名、服用薬、身体情報等の登録情報が記憶されている。取得部が記憶装置105の登録情報をさらに参照することにより、ユーザの情報入力の手間を低減できる。取得部102により取得された情報は、推論部103へと送信される。
【0016】
(推論部103)
推論部103は、取得部102より取得された被観察者に関する情報(ヘルスケアに関する情報)を基に推論を実施する。推論部における識別器は機械学習を用いた識別器である。例えば、ベイジアンネットワークやサポートベクターマシン、ニューラルネットワークにより実現される。ここで、識別器を作成するためのフェーズである学習フェーズと、作成された識別器による推論フェーズに分けて説明する。以下では識別器は教師あり学習に基づいて推論を行うものとして詳述する。
【0017】
学習フェーズでは、識別器に識別能を取得させるために学習を行う段階を指す。まず、教師データの作成が必要であり、リスクレベルをラベルとし、被観察者(ユーザ)の情報を変数としたデータセットを作成する。そして作成されたデータセットに基づいて識別器の学習を行う。なお、ラベルに与える情報はリスクレベルを連続値で与えたものでも、離散値で与えたものでも構わない。被観察者(ユーザ)の情報は上述したバイタルデータ等である。
【0018】
またリスクレベルは、確認をしたい病名のそれぞれに対して学習させてもよいし、例えば高血圧と糖尿病などの相関関係が高いものをグループとして学習させてもよい。
【0019】
次に推論フェーズについて説明する。推論フェーズでは、学習フェーズで学習された識別器を用いて、入力データに対して出力を行う。出力値は学習時のラベルに対応した値を示す。ここで得られた出力値は判定部に送信される。尚、推論部103は、複数の症例のそれぞれに対して、推論を行う推論手段を有していてもよい。
【0020】
(判定部104)
判定部104は、推論部103によって推論されたリスクレベルに基づいて、予め登録された通知者(登録者)への通知の有無を決定する。
【0021】
(記憶装置105)
記憶装置105は、入力部101により入力された生活情報や推論部103の推論結果に加え、例えば既往歴や、病名、服用薬、身体情報等の情報が記憶されている。記憶部105は、情報処理装置100内にあっても、ネットワークを介して通信可能であれば、異なる情報処理装置内にあっても、クラウド上にあってもよい。
【0022】
(通知部106)
通知部106は、判定部104により判定されたリスクレベルに基づいて決定された通知者(登録者)に対して、推論部103による推論結果もしくはダイジェストを通知する。また、判定部104による判定の結果、登録医療機関への通知が必要である場合には、推論部103による推論結果もしくはダイジェストを通知する。さらに推論部103の推論に用いられた被観察者(ユーザ)の入力情報を記憶したデータ集積(データ集積部)を担う記憶部105へのアクセス用コードを通知する。
【0023】
つまり本発明に係る情報処理装置は、ユーザのヘルスケアに関する情報を取得する取得部102と、取得部102により取得された情報に基づいて、推論を行う推論部103を有する。さらに推論部103による推論結果に基づいて、登録医療機関へ推論結果を通知するかを判定する判定部104を有する。また判定部104による判定結果に基づいて、推論結果を通知すると判定された登録医療機関がある場合には、該登録医療機関に、推論結果と共に、推論結果を取得するために用いられた前記情報が蓄積されている記憶部へのアクセス用のコードを通知する通知部106を有することを特徴とする。推論結果としては、例えば、それぞれの症例へのリスクレベルである。また、ダイジェストとしては、例えば推論に係った相関の高い変数や、変数の推移、推論結果の推移などを情報として提供する。
【0024】
次に
図2を用いて、情報処理装置100のハードウェア構成の一例を示す。ここでは入力部101、取得部102、推論部103、判定部104、通知部106で用いられている演算回路の具体的な構成例を示す。CPU1001は、主として各構成要素の動作を制御する。主メモリ1002は、CPU1001が実行する制御プログラムを格納したり、CPU1001によるプログラム実行時の作業領域を提供したりする。磁気ディスク1003は、オペレーティングシステム(OS)、周辺機器のデバイスドライバ、後述する処理等を行うためのプログラムを含む各種アプリケーションソフトを実現するためのプログラムを格納する。CPU1001が主メモリ1002、磁気ディスク1003に格納されているプログラムを実行することにより、
図1に示した情報処理装置100の機能(ソフトウェア)及び後述するフローチャートにおける処理が実現される。通知メモリ1004は、通知用データを一時記憶する。
【0025】
通知部106は、例えばCRTモニタや液晶モニタ等であり、通知メモリ1004からのデータに基づいて画像やテキスト等の表示を行う。入力部101におけるマウス1006や、キーボード1007、マウス1008は、ユーザによるポインティング入力および、キーボードや音声による文字列入力を受け付ける。上記各構成要素は共通バス1009により互いに通信可能に接続されている。
【0026】
なお、情報処理装置の各構成はそれぞれ別の装置として構成されてもよいし、一体となった1つの装置として構成されてもよい。また、情報処理装置の少なくとも一部の構成が一体となった1つの装置として構成されてもよい。
【0027】
(判定フロー)
次に、
図3のフローチャートを用いて、本実施形態における情報処理装置が行う全体の処理を説明する。
図3は、本実施形態における情報処理装置が行う処理の一例を示すフローチャートである。本実施形態では、CPU101がRAM103に格納されている各部の機能を実現するプログラムを実行することにより
図3に示す処理が実行される。
【0028】
(S31)
ステップS31において、入力部101は、ユーザの生活情報の入力を受け付ける。そして入力された生活情報を取得部102へと送信する。
【0029】
(S32)
ステップS32において、取得部102は、入力部101から入力された生活情報と、さらに必要であれば、記憶部105から被観察者における登録情報を取得する。登録情報は、例えば既往歴や、病名、服用薬、身体情報等の情報を含む。取得部102は入力部101から取得された情報と、記憶部105から取得した情報を、推論部103へと送信をする。
【0030】
(S33)
ステップS33において、推論部103は入力された情報を基に、リスクレベルを推論する。推論部103は、機械学習を用いた識別器によりリスクレベルを推論する。リスクレベルは、バイタルデータのそれぞれの異常値を学習させたものでも、症状ごとに対応するバイタルデータを学習させたものでもよい。または相関の高い症状をグループとして学習したものでもよい。以下では、例として高血圧緊急症のリスクを判定する識別器を基に述べる。高血圧緊急症は、血圧の異常高値のみならず、臓器の障害も発生するため降圧治療を開始する必要がある病態である。ただ、高血圧緊急症を疑った際にチェックすべき項目は多岐にわたるため、ディープラーニングに基づく識別器を用いて推論を行う。ディープラーニング技術のひとつであるリカレントニューラルネットワーク(RNN)は、時系列データに対して性能を発揮することが知られているため、ここではRNNを用いて、高血圧緊急症のリスクを推論する。高血圧緊急症は血圧の推移のみならず、過去の頭痛や嘔吐などの症状、呼吸困難、息切れなど複数の変数間で関連があることが知られている。RNNはそれぞれの変数の推移を入力として高血圧緊急症のリスクレベルを尤度で出力する。尤度は0から1の連続値で出力される。なお、識別器はRNNである必要はなく、他のニューラルネットワークに基づく手法でも、機械学習に基づく手法でも構わないし、病変ごとに異なる推論手段であってもよい。
【0031】
なお推論部103の出力は、リスクレベルをラベルとしたものでも、危険性を連続値で与えたものでもよい。危険性を連続値で与えた場合、出力に対して、閾値処理等を行いリスクレベルとして、判定部104に送信する。尚、上述のように学習された推論部103に代えて、例えば、以下の構成も可能である。ある患者さんの日々の血圧データに関して、特定の範囲内であればリスクレベルを低、その範囲を10%超えるとリスクレベルを中、20%超えるとリスクレベルを高など、予め数値条件でリスクレベルを決めておくものである。
【0032】
(S34)
ステップS34において、判定部104はあらかじめ登録しておいた通知先のそれぞれへの通知の有無を判定する。判定部104は推論部103の結果と、記憶部105に登録された通知先情報を参照する。
図4はリスクレベルと通知先および通知内容を関連づけて示した図である。ここでは、危険度が最も小さいものから順にリスクレベルC、リスクレベルB、リスクレベルAとしている。推論部103による推論の結果、リスクレベルがCだった場合、判定部104は、リスクレベルCに対応付けた、本人にのみ推論結果を通知することを決定する。一方で、リスクレベルがBであった場合は、判定部104は本人に加えてさらに家族にも推論結果を通知することを決定する。リスクレベルがAであると推論された場合には、判定部は本人と、家族のみならず、登録医療機関通知先として決定する。さらに推論結果を推論する際に用いられた入力情報等が記憶されている記憶部105へのアクセス用コードを登録医療機関に送信する。尚、リスクレベルの名称や、数、通知先、通知内容も可変であり本形態に限られない。
【0033】
(S35)
ステップ35において、通知部106は判定部104により判定された通知先に対して通知を行う。通知内容は、推論部103が推論した結果や、ダイジェストである。一方で、リスクレベルがAであった場合には、推論結果の通知先は、本人、家族に加え登録医療機関となる。そのため、登録医療機関等の有識者に対しては推論に用いられた情報や、その他の記憶部105に保存されている情報を開示する。開示の方法としては、前述のような記憶部105へのアクセス用コードであってもよいし、リスクレベルの決定に相関の高い変数に関しての情報をまとめた情報を推論結果に添付してもよい。もちろん、入力情報や登録情報を推論の結果として通知してもよい。通知手段は、通知先の対象者のコンピュータや携帯端末等問わない。
【0034】
推論部103による推論結果に基づいて判定部104が通知先と、通知内容を決定することにより、被観察者(ユーザ)側が享受できる効果として、被観察者(ユーザ)の監視にかかるストレスの低減が期待される。さらに、リスクレベルが高いAなどの場合は、予め登録医療機関に情報が開示されることにより、適切な診断と治療が可能になり、また登録医療機関受診に係るコストも軽減される。他方で、推論部103と判定部104により、通知の有無と、開示する情報が取捨選択されることにより、登録医療機関側の人的コストも削減され、登録医療機関に係るべき患者に対してより時間を割くことが可能になる。
【0035】
<第2の実施形態>
上述までは、推論部103が取得部から取得された情報を基に推論した推論結果を基に判定部104が通知先を決定する処理について述べた。本実施形態では、リスクレベルの決定をするしきい値を変更する場合について述べる。
【0036】
例えば、単純に学習された識別器や、統計的な手法による処理を用いてリスクレベルを判定する場合においては、一定の値を超えると判定部104によりリスクレベルが高く判定され、通知部106が登録医療機関を含めた通知先に通知をすることになる。しかしながら、仮に登録医療機関の受診の後でかつ、登録医療機関による適切な処置がなされた場合においても、入力される情報の特徴量が異常を示す値であれば、異常を示さなくなるまでは、登録医療機関にその情報が通知され続けられる可能性がある。また、その場合には、本発明の課題である被観察者(ユーザ)側と、登録医療機関側のコストの削減の効果が十分に得られない可能性がある。さらには、登録医療機関側が提供した薬剤等の効果が時間をかけて得られる場合においては、投薬後から短期間でリスクが判定され通知されることは好まれないことがある。
【0037】
そこで、本実施形態では登録医療機関の受診歴および、医者の承認をトリガーとして、リスクレベルを決定する閾値を高くする。識別器による出力値が連続値である場合には、推論部103はリスクレベルを決定する閾値を引き上げる。本構成により、登録医療機関の受診後であって、症状がさらに悪化している場合等においてリスクレベルがAであると推論部104によって推論される。本構成により、登録医療機関側は適切なケアに対して、不要な通知の回数を減少させることができる。一方で、識別器に対して生データを入力した場合には、推論部103は推論結果として高いリスクレベルを推論する。そのため、上述のように識別器による出力データに対しての閾値処理の値を変更する以外にも、例えば推論部103における識別器に対しての入力データの正規化を行うことによって推論結果の値を小さくすることができる。この構成を用いても上述の効果と同様の効果が期待される。
【0038】
本実施形態ではリスクレベルを判定する閾値を高く設定する、または入力データの加工をすることにより、リスクレベルの判定に係る条件を高く設定しながらも、被観察者(ユーザ)の容態が悪化した場合には、登録医療機関側が通知を受けることができる。
【0039】
なお、本実施形態の要諦は、被観察者(ユーザ)が適切なケアを受けている場合における通知の条件を変更することにある。そのため、例えば推論部103が推論を行う期間を長くする、通知部106による通知の頻度を減らす、もしくは判定部104における判定処理によるリスクレベルの判定を厳しくする等、方法は問わない。
【0040】
<第3の実施形態>
登録医療機関の受診後、実施形態2では、リスクレベルの判定や通知する条件を変更することにより、被観察者(ユーザ)の容態が悪化した場合において通知をする構成について説明をした。
【0041】
本実施形態では、さらに被観察者(ユーザ)が登録医療機関の受診をした後の入力データの値が、登録医療機関側が予想した期待値と乖離(差分)が大きい場合に行う処理について
図5を基に述べる。
【0042】
(S51)
ステップS51において、ユーザが生活情報の入力を受け付ける。そして入力された生活情報を取得部102へと送信する。
【0043】
(S52)
ステップS52において、取得部102は、入力部から入力された生活情報と、記憶部105から被観察者(ユーザ)における登録情報(受診歴等)、さらに、登録医療機関が設定する情報を取得する。取得部102は取得した情報を、推論部103へと送信する。
【0044】
(S53)
ステップS53において、推論部103は、取得部102から取得された生活情報と、登録情報を取得する。そして、推論部103は登録医療機関が設定した投薬プランや、生活の改善によって得られる期待値を取得する。そして、被観察者(ユーザ)における生活情報と、登録医療機関が設定した情報を比較し、その差が一定以上である場合に判定部104は、リスクレベルAを設定する。そして、判定部104は、推論部103による差分の結果を受けて乖離(差分)を判定し、登録された通知先にリスクレベルに応じた通知先を決定する。
【0045】
(S54)
ステップS54は判定部104により判定された通知先に対して、乖離(差分)情報について通知をおこなう。尚、この形態は実施形態1や2と並列に用いられることも想定しており、通知内容として本形態の乖離(差分)結果を実施形態1や2の通知内容に盛り込んだ情報を通知してもよいし、それぞれの結果を別途、通知してもよい。
【0046】
本形態により、被観察者(ユーザ)および登録医療機関は、乖離(差分)が大きい場合に通知を受け取ることができ、受診により投薬の効果が予想に反して小さい場合には投薬プランの変更が可能になり、また、生活の改善を早期に促すことが可能となる。
【0047】
<第4の実施形態>
本実施形態では、識別器にリカレントニューラルネットワーク(RNN)を用いて予後予測をおこなう。RNNは自然言語処理や、音声の認識等の時系列データを入力として、推論を行うことができるモデルである。ここでは被観察者(ユーザ)が登録医療機関の受診をした際に、登録医療機関側は、一定期間後に目標とされる数値(期待値)を定める。つまり、RNNは、ヘルスケアに関する情報に基づいて、入力された情報より以後の推移を予測する。そして、一定期間後の期待値と、ディープラーニング(RNN)による予測結果を比較し、一定以上の乖離(差)がみられた場合において、登録医療機関に通知をする。本構成は、事前にリスクを推論することによって早期に被観察者(ユーザ)および登録医療機関にそのリスクを通知することができる。以下
図6を用いてステップごとに説明をする。
【0048】
(S61)
ステップS61において、入力部101はユーザから生活情報の入力を受け付ける。そして入力された情報を取得部102へと送信する。
【0049】
(S62)
ステップS62において、取得部102は、入力部から入力された生活情報に加えて、記憶部105から現在取得された生活情報よりも過去の生活情報のデータと、さらには、登録医療機関が予想した情報および登録者情報を取得する。
【0050】
(S63)
ステップS63において、S62により取得されたデータから、推論部103は受診歴を参照し登録医療機関受診後からの生活情報から入力部101により入力された生活情報までを識別器への入力とする。そして、識別器は、入力された生活情報より以後の生活情報の推移を予測した結果を連続値もしくは尤度で出力する。そして推論部103による出力を判定部104に送信する。
【0051】
(S64)
判定部104は、推論部103からの出力値と、登録医療機関が予想した期待値とを、時期を統一させ、差分を取得する。差分が一定以上である場合に乖離(差分)が大きいと判定し、リスクレベルを判定する。判定された結果に基づいて、判定部104は通知先と、通知内容を決定し、通知部106に送信する。
【0052】
(S65)
通知部106は、判定部104により判定された通知先に対して、乖離(差分)情報に対して通知を行う。
【0053】
本形態により、受診後の生活情報が登録医療機関側の期待値に対して、推移が大きく外れていると識別器により予測された場合、未然に医療ケアを行うことが可能となり、結果的に、被観察者(ユーザ)のストレスが軽減できる効果が期待される。尚、本形態も同様に他の形態と並列して推論、通知の何れかが実施されてもよい。