(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】光電変換装置、放射線撮像システム、光電変換システム、移動体
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20231221BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H01L27/146 A
H01L31/10 A
(21)【出願番号】P 2019145392
(22)【出願日】2019-08-07
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】篠原 真人
【審査官】脇水 佳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-322739(JP,A)
【文献】国際公開第2018/185587(WO,A1)
【文献】特開2001-111020(JP,A)
【文献】特開2018-107409(JP,A)
【文献】特開昭60-052067(JP,A)
【文献】特開昭57-001274(JP,A)
【文献】国際公開第2016/157910(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H04N 25/59
H01L 31/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が入射する第1面を有する半導体基板に光電変換部を備える光電変換装置であって、
前記光電変換部は、
光に基づく信号電荷を収集する第1導電型の第1半導体領域と、
前記第1面から見て前記第1半導体領域よりも深い位置に配されるウエルと、
前記半導体基板の深さ方向に延在し、前記ウエルに所定の電位を供給する、前記第1導電型とは反対の第2導電型の接続領域とを有し、
前記ウエルは、
前記接続領域が延在する深さに配された、前記第2導電型の第2半導体領域と、
前記第1面から見て前記接続領域および前記第2半導体領域よりも深い位置に配された前記第2導電型の第3半導体領域と、
前記第2半導体領域と前記第3半導体領域の間に配され、前記第1導電型の半導体領域を形成するために用いられるドーパントが、前記第2導電型の半導体領域を形成するために用いられるドーパントよりも多く含まれる第4半導体領域とを有し、
前記第4半導体領域は空乏化していない領域を有し、前記第4半導体領域の主たるキャリアが、前記第2導電型の半導体領域の多数キャリアと同じ導電型のキャリアであることを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
光が入射する第1面を有する半導体基板に光電変換部を備える光電変換装置であって、
前記光電変換部は、
光に基づく信号電荷を収集する第1導電型の第1半導体領域と、
前記第1面から見て前記第1半導体領域よりも深い位置に配されるウエルと、
前記半導体基板の深さ方向に延在し、前記ウエルに所定の電位を供給する、前記第1導電型とは反対の第2導電型の接続領域とを有し、
前記ウエルは、
前記接続領域が延在する深さに配された、前記第2導電型の第2半導体領域と、
前記第1面から見て前記接続領域および前記第2半導体領域よりも深い位置に配された前記第2導電型の第3半導体領域と、
前記第2半導体領域と前記第3半導体領域の間に配され、前記第1導電型の半導体領域を形成するために用いられるドーパントが、前記第2導電型の半導体領域を形成するために用いられるドーパントよりも多く含まれる第4半導体領域とを有し、
前記第4半導体領域の、前記半導体基板の深さ方向の幅が、前記第4半導体領域におけるデバイ長の0.8倍以上であって前記デバイ長の4倍以下であることを特徴とする光電変換装置。
【請求項3】
前記ウエルは、前記第1面から見て前記第3半導体領域よりも深い位置に配され、前記第2半導体領域、前記第3半導体領域よりもドーパント密度が高い、前記第2導電型の第5半導体領域と、
前記第3半導体領域と前記第5半導体領域の間に配され、前記第1導電型の半導体領域を形成するために用いられるドーパントが注入された第6半導体領域とを有し、
前記第4半導体領域と、前記第6半導体領域のそれぞれが、前記半導体基板の深さ方向の幅が、各々の半導体領域のデバイ長の0.8倍以上であって前記デバイ長の4倍以下であることを特徴とする請求項2に記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記第4半導体領域、前記第6半導体領域の少なくとも一方の半導体領域の、前記半導体基板の深さ方向の幅が、前記一方の半導体領域におけるデバイ長の2倍以上であって前記デバイ長の3倍以下であることを特徴とする請求項3に記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記第4半導体領域、前記第6半導体領域のそれぞれが、前記半導体基板の深さ方向の幅が、各々の半導体領域におけるデバイ長の2倍以上であって前記デバイ長の3倍以下であることを特徴とする請求項4に記載の光電変換装置。
【請求項6】
前記第1面から見て前記第1半導体領域よりも深い位置に配された前記第1導電型の第7半導体領域と、
前記接続領域は、
前記半導体基板の表面部に設けられた、前記第2導電型の第8半導体領域の一部と、
前記第7半導体領域および前記第8半導体領域よりも深い位置に配された前記第2導電型の第9半導体領域の一部とを含み、
前記第8半導体領域と前記第9半導体領域は、前記第7半導体領域と平面視で見て重なる領域を有し、
前記第7半導体領域は、平面視において前記第1半導体領域と重なる幹部と、前記幹部から延伸し、平面視において前記第8半導体領域および前記第9半導体領域と重なる複数の枝部と、を有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項7】
前記第1半導体領域にゲートが接続された、前記第2導電型のトランジスタと、
前記トランジスタのソース及びドレインの少なくとも一方に電圧を供給する電圧供給回路とを有し、
前記電圧供給回路は、前記ソース及び前記ドレインのうちの少なくとも一方に、前記第1半導体領域に蓄積された前記信号電荷が第1の蓄積量のときに前記トランジスタのゲート容量が第1の容量となり、前記第1半導体領域に蓄積された前記信号電荷が前記第1の蓄積量よりも多い第2の蓄積量のときに前記ゲート容量が前記第1の容量よりも大きい第2の容量となる電圧を供給することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項8】
放射線を可視光に変換するシンチレータをさらに備え、
前記シンチレータから入射する前記可視光に基づいて生成される電荷が前記第1半導体領域に収集されることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項9】
請求項8に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置にて得られた画像信号を処理する制御装置とを有する放射線撮像システム。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置から出力される信号を処理する信号処理部と
を有することを特徴とする光電変換システム。
【請求項11】
移動体であって、
請求項1~8のいずれか1項に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置からの信号に基づく視差画像から、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段と、
前記距離情報に基づいて前記移動体を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置、放射線撮像システム、光電変換システム、移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
光を光電変換することによって信号電荷を生成する光電変換部を備える光電変換装置が知られている。
【0003】
光電変換部に求められる特性として、高い光検出効率と、高い飽和電荷量が挙げられる。
【0004】
特許文献1に記載の固体撮像装置は、光電変換部のウエル構造を検討したものである。光によって発生した信号電荷の収集効率を高める、すなわち高感度化されたウエル構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光電変換部の高感度化には、ウエルをさらに深くすることが考えられる。しかし、ウエルを深く設ける場合、当該ウエルに電位を与えることが困難になる傾向がある。
【0007】
信号電荷を蓄積する蓄積領域に効率よく収集するため。ウエルにおいて、基板の深さ方向のポテンシャル勾配を設けることが考えられる。また、ウエルを深くするには、注入するイオンの価数を増やすことによって、イオン注入における加速エネルギーを増加させる方法がある。このような深いウエルを形成する場合、ウエルに適切なポテンシャル勾配を設けることに技術的な課題がある。
【0008】
本発明は、ウエルを深化させた場合においても、製造プロセスの困難化を抑制しながら適切なポテンシャル勾配をウエルに形成することができる構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の課題を鑑みて為されたものであり、一の態様は、光が入射する第1面を有する半導体基板に光電変換部を備える光電変換装置であって、前記光電変換部は、光に基づく信号電荷を収集する第1導電型の第1半導体領域と、前記第1面から見て前記第1半導体領域よりも深い位置に配されるウエルと、前記半導体基板の深さ方向に延在し、前記ウエルに所定の電位を供給する、前記第1導電型とは反対の第2導電型の接続領域とを有し、前記ウエルは、前記接続領域が延在する深さに配された、前記第2導電型の第2半導体領域と、前記第1面から見て前記接続領域および前記第2半導体領域よりも深い位置に配された前記第2導電型の第3半導体領域と、前記第2半導体領域と前記第3半導体領域の間に配され、前記第1導電型の半導体領域を形成するために用いられるドーパントが、前記第2導電型の半導体領域を形成するために用いられるドーパントよりも多く含まれる第4半導体領域とを有し、前記第4半導体領域は空乏化していない領域を有し、前記第4半導体領域の主たるキャリアが、前記第2導電型の半導体領域の多数キャリアと同じ導電型のキャリアであることを特徴とする光電変換装置である。
【0010】
また、一の態様は、光が入射する第1面を有する半導体基板に光電変換部を備える光電変換装置であって、前記光電変換部は、光に基づく信号電荷を収集する第1導電型の第1半導体領域と、前記第1面から見て前記第1半導体領域よりも深い位置に配されるウエルと、前記半導体基板の深さ方向に延在し、前記ウエルに所定の電位を供給する、前記第1導電型とは反対の第2導電型の接続領域とを有し、前記ウエルは、前記接続領域が延在する深さに配された、前記第2導電型の第2半導体領域と、前記第1面から見て前記接続領域および前記第2半導体領域よりも深い位置に配された前記第2導電型の第3半導体領域と、前記第2半導体領域と前記第3半導体領域の間に配され、前記第1導電型の半導体領域を形成するために用いられるドーパントが、前記第2導電型の半導体領域を形成するために用いられるドーパントよりも多く含まれる第4半導体領域とを有し、前記第4半導体領域の、前記半導体基板の深さ方向の幅が、前記第4半導体領域におけるデバイ長の0.8倍以上であって前記デバイ長の4倍以下であることを特徴とする光電変換装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、ウエルを深化させた場合においても、製造プロセスの困難化を抑制しながら適切なポテンシャル勾配をウエルに形成することができる構造が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図5】光電変換部のウエルにおける電荷密度と電位を示す図
【
図6】光電変換部のウエルのドーパント密度の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に述べる実施形態では、光電変換装置の一例として、撮像装置を中心に説明する。ただし、実施形態は、撮像装置に限られるものではなく、光電変換装置の他の例にも適用可能である。光電変換装置の他の例として、測距装置(焦点検出やTOF(Time Of Flight)を用いた距離測定等の装置)、測光装置(入射光量の測定等の装置)などがある。
【0014】
また、以下に述べる実施形態中に記載される半導体領域、ウエルの導電型や注入されるドーパントは一例であって、実施形態中に記載された導電型、ドーパントのみに限定されるものでは無い。実施形態中に記載された導電型、ドーパントに対して適宜変更できるし、この変更に伴って、半導体領域、ウエルの電位は適宜変更される。
【0015】
(第1実施形態)
本実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は本実施形態を表す光電変換装置の回路図である。
図1では、3つの光電変換単位1を示している。光電変換単位1は、撮像装置の場合には画素と呼ぶことがある。この例に限られず、さらに多くの光電変換単位1を備えても良い。光電変換単位1は、光電変換部であるフォトダイオード(PD)2と、信号蓄積電極3、トランジスタ4を有する。トランジスタ4はスイッチ動作を行うMOSトランジスタとしている。また、光電変換装置は、走査回路5を有する。走査回路5は各光電変換単位1のトランジスタ4のゲート電極に、配線6を介して制御信号(パルス信号)を供給する。この制御信号によって、トランジスタ4のオン、オフが制御される。
【0017】
光電変換装置は、増幅器8を有する。増幅器8と、各トランジスタ4は信号出力線7を介して接続されている。増幅器8の非反転入力ノードには、配線9を介して、所定の電位Vrefが供給される。また、増幅器8の出力ノードは出力線11に接続される。増幅器8の出力ノードと、反転入力ノードとの間の帰還経路に、積分容量10と、トランジスタ12が設けられている。トランジスタ12は、制御線13から供給される制御信号によって、オン、オフが制御される。
【0018】
増幅器8、積分容量10によって、電荷積分回路が形成される。
【0019】
トランジスタ12がオフしている状態で、トランジスタ4がオンすることによって、PD2に蓄積された信号電荷が、積分容量10で積分される。この積分容量10で積分された信号電荷に対応する信号レベルの信号が、出力線11に出力される。信号出力線7の電位は実際上Vrefに固定されているので、PD2の信号電荷が読み出された時点でPD2は電位Vrefにリセットされる。その後、トランジスタ4がオンしている状態でトランジスタ12がオンすることによって、積分容量10の電荷がリセットされ、出力線11は電位Vrefとなる。
【0020】
走査回路5によって順次、各光電変換単位1のトランジスタ4が順次オンする。これにより、各光電変換単位1のPD2に蓄積された信号電荷が出力される。
【0021】
図2は
図1におけるPD2の平面レイアウト図である。また、
図3は、
図2に示したA、Bを通る線に沿った断面図である。
図2、
図3を参照しながら説明する。なお、
図2、
図3では、
図1で説明した部材と同じ部材には、
図1で付した符号と同じ符号を使用している。
【0022】
図2において、PD2として示した矩形領域に光が入射する。PD2は、第1導電型であるN型の半導体領域14(第1半導体領域)を有する。半導体領域14は、光電変換によって生じた信号電荷を収集する収集領域である。半導体領域14は、PD2において第1方向(
図2における縦方向)に延在している。半導体領域14は、後述するが半導体基板の表面に接して設けられている。
【0023】
台形状のN型の半導体領域15(第7半導体領域)は、
図3に示すように、半導体領域14よりも入射面F1から見て深い位置に設けられた半導体領域である。半導体領域15は、光電変換によって生成された信号電荷を蓄積する、埋め込み型の蓄積領域である。
【0024】
N型の半導体領域15は、2つの半導体領域14の各々に対応してそれぞれ設けられている。半導体領域15は、平面視において、対応する半導体領域14と、第1導電型とは反対の第2導電型であるP型の半導体領域16とに重なっている。具体的には、半導体領域15の各々は、平面視において半導体領域14と重なる領域に設けられた幹部と、平面視において半導体領域16と重なる領域に設けられた複数の枝部142と、を有する。複数の枝部142は、幹部から第1の方向と交差する第2の方向(
図2においてA-B線に平行な方向)に平行な両方向に櫛歯状に延伸している。枝部142の幅は、幹部から遠ざかるほどに狭くなっている。
【0025】
PD2のうち、半導体領域14とその近傍以外の領域には、P型の半導体領域16(第8半導体領域)が半導体基板の表面部に接するように設けられている。
【0026】
半導体領域17は、PD2の外周部およびPD2の中央部の一部に形成される。半導体領域17は、複数のPD2同士を電気的に分離するとともに、半導体領域16と、
図3に示したP型のウエル31とを電気的に導通させる。半導体領域16と、半導体領域17によって、ウエル31に電位を供給する接続領域が形成される。なお、
図3に示すように、半導体領域22(第9半導体領域)、23-1の一部は、半導体領域17と重なる。
【0027】
金属配線19は、接続部18を介して半導体領域14に接続される。半導体領域14、半導体領域15、接続部18、金属配線19によって、信号蓄積電極3が構成されている。
【0028】
金属配線19は、
図1におけるトランジスタ4のソース部に接続される。
【0029】
図3において低ドナー密度のN型の半導体基板20が設けられている。本実施例ではP型のウエル31は、
図2の平面図においてPD部2の全域に渡って形成される。P型のウエル31を構成する複数のP型半導体領域の中で、P型半導体領域21(第5半導体領域)が最も深くに設けられている。また、P型のウエル31は、ウエル31におけるもっとも浅いP型半導体領域としてP型半導体領域22を有する。P型のウエル31は、その半導体領域21と、P型半導体領域22との間の深さにおいて、3層のP型半導体領域23(23-1、23-2、23-3を含む)を有する。P型半導体領域23-2は、半導体領域17が深さ方向に延在する深さに配された第2半導体領域である。P型半導体領域23-3は半導体領域17よりも深い位置に配された第3半導体領域である。なお、深さは半導体基板の入射面である第1面F1を基準にしている。
【0030】
P型の半導体領域21、22、23-1、23-2、23-3のそれぞれは、ドナーが主領域であるドナー主領域24、25によって分離されている。これらのドナー主領域(分離層)はP型半導体領域を形成するためにイオン注入されるアクセプタよりも、N型半導体基板に含まれるドナーがドーパントとして多く含まれている層である。ドナー主領域24は、ドナー主領域24-1、24-2を含み、ドナー主領域25は、ドナー主領域25-1、25-2を含む。ドナー主領域24-1は第4半導体領域であり、ドナー主領域24-2は第6半導体領域である。
【0031】
本実施形態では、低密度のN型の半導体基板20に対し、アクセプタを注入することによって、P型の半導体領域のそれぞれを形成する。一方、ドナー主領域24、25は、N型の半導体基板20が有するドナーに対して、さらなるドナーの注入を行わずに設けることができる。また、別の例として、ドナー主領域24、25にドナーを注入するようにしても良く、その場合には、アクセプタよりもドナーを多く含む領域となるように形成される。後述するが、ドナー主領域24は、P型の半導体領域の多数キャリアであるホールを、主たるキャリアとして含む。ドナー主領域25は、空乏化するか、またはホールを主たるキャリアとして持ちうる。
【0032】
図4は
図3におけるC-D線に沿ったドーパントプロファイルを示している。
図4では、
図3と同じ部位には同一の番号を付している。各半導体領域のドーパント密度は一定ではないので平均をとって述べることにする。また各層のドーパントはアクセプタ、ドナー両方を含みうるが、アクセプタのほうが多い場合はP型、ドナーのほうが多い場合はN型とし、両者の差分をその層のドーパント密度とする。
【0033】
まず、P型半導体領域21のドーパント密度はP型ウエルの中ではもっとも密度が高く、例えば5E15cm-3である。なお、「E」は10のべき乗を示す。つまり、E15は、10の15乗を示している。P型半導体領域22、P型半導体領域23はほぼ同じドーパント密度であり、例えば6E14cm-3である。N型に対応するドーパントが主領域となるドナー主領域24、25のドーパント密度は、例えば2E14cm-3である。
【0034】
P型半導体領域22、23-1、23-2、23-3、24-1、24-2、25-1、25-2の各層の幅はほぼ同じであり、本実施例では一例として約0.6ミクロンとしている。
図4に示したようにP型半導体領域22からドナー主領域24-2までの、P型半導体領域(アクセプタ主領域)とドナー主領域が深さ方向で見て交互に形成されたアクセプタ、ドナー交互層の構造全体の厚さは、約4.8ミクロンとなる。
【0035】
通常、P型半導体とN型半導体が接すると、その接合部にはビルトイン・ポテンシャルが生じる。典型的には、ビルトイン・ポテンシャルの値は700meV程度である。一方、本実施形態におけるアクセプタ、ドナー交互層ではそのような通常のPN接合のような数百meVに及ぶビルトイン・ポテンシャルを形成する性質は持たない。アクセプタ、ドナー交互層におけるポテンシャルの凹凸は熱エネルギーkT程度、すなわち常温で26meV程度となる。ここでkはボルツマン定数、Tは絶対温度である。よって全体が一様な低ドーパント密度を有する半導体に近い性質を有する。
【0036】
このことを説明するため、まず
図5(a)のように電荷密度ρが位置xに対して周期
2dのコサイン曲線で表されるような場合を考える。電荷密度の最大値と最小値は素電荷をqとしてそれぞれqNm、-qNmとすると、
ρ=qNm・cos(π/d・x) (式1)
である。なお、電荷密度が正である幅dの領域の平均電荷密度は2qNm/π、電荷密度が負である幅dの領域の平均電荷密度は、-2qNm/πである。
【0037】
電気学におけるガウスの法則より、この時の電界強度Eはx方向をプラスとして
E=d・qNm/(πε)・sin(π/d・x) (式2)
が導かれる。ここでεは半導体の誘電率である。
【0038】
これより、位置xにおける電位Vは
V=d
2・qNm/(π
2ε)・[cos(π/d・x)―1]+V1 (式3)
である。V1は基準電位をどうとるかによる定数であり、式を簡単化するためV0=d
2・qNm/(π
2ε)、V0=V1とすると、
V=V0・cos(π/d・x) (式4)
が得られる。(式4)が表すVは
図5(b)に示している。
【0039】
ここで本実施形態におけるアクセプタ、ドナー交互層の電位の凹凸を上記式より算出する。
【0040】
まず、P型ドーパントすなわちアクセプタは負イオンであるのでその密度を負の値に、N型ドーパントすなわちドナーは正イオンなのでその密度を正の値として、このアクセプタ、ドナー交互層の平均ドーパント密度を求めると
(―6E14cm-3×4+2E14cm-3×4)÷8=―2E14cm-3と計算される。
【0041】
また電荷は総体としてゼロであるから、ホールの平均密度は2E14cm-3である。
【0042】
この時、電位の凹凸が熱エネルギーに相当する程度に小さいとしてホールはアクセプタ、ドナー交互層全体に渡り、電子は無いとしている。そして、ホール密度はP型半導体領域22、24において平均3E14cm-3、N型ドーパントの主領域24、25において平均1E14cm-3となるように分布しているとする。この仮定が正しければ、仮定と矛盾しない結果が得られるはずである。
【0043】
そして、ホールおよびドーパントによる電荷分布をコサイン曲線で近似すれば、
図5のような電荷分布となる。
図5において電荷密度がプラスの領域はN型ドーパント主領域、電荷密度がマイナスの領域はP型半導体領域を示している。d=0.6ミクロン、平均密度=2/π・Nm=3E14cm
-3であるから、Nm=4.7E14cm
-3である。
【0044】
半導体はシリコンとし、その比誘電率=11.9とすると、V0=26mVと算出される。この値はちょうど常温におけるキャリアの熱エネルギー26meVに相当し、電位の凹凸が熱エネルギーに相当する程度に小さいという仮定と整合する。また、P型半導体領域の平均電位とN型ドーパントが主領域の平均電位との差が26meVである。よって、その平均ホール密度の比は、exp(26meV/kT)となる。常温においては26mVはkTとほぼ等しいので、自然対数の底eの値2.72程度となる。この値は仮定した3E14cm-3と1E14cm-3との比3に近く、この点でも仮定と整合する。よって、本実施形態のアクセプタ、ドナー交互層はその内部ポテンシャルの凹凸が常温での熱エネルギー26meV程度であって、アクセプタ密度が2E14cm-3という、一様でごく低密度のP型ウエルに近い性質を持つのである。
【0045】
本実施形態のように、アクセプタ、ドナー交互層の内部ポテンシャルの凹凸が熱エネルギー程度以下となるのは、以上の説明によってqV0≒<kT、すなわち
d2・q2Nm/(π2ε)≒<kT
書き換えれば、
d≒<(2π)1/2(ε/(q・2Nm/π)・kT/q)1/2 (式5)
となるが、(式5)の右辺はπ×(平均電荷密度2Nm/πのデバイ長)となっている。デバイ長はポテンシャル変化の解像限界を表している。(式5)のとおり、熱平衡状態において、デバイ長程度の厚さ(基板の深さ方向の幅)のドナー半導体領域を形成することでポテンシャルの凹凸はkT程度に留められる。
【0046】
アクセプタ、ドナー交互層のドナー主領域を考えた時、上下のP型半導体領域(アクセプタ主領域)に挟まれている。よって、d/2がデバイ長程度ならN型ドーパント主領域とP型半導体領域とのポテンシャル差がkT程度となるという物理的解釈が成り立ち、確かに(式5)もそうなることを示している。
【0047】
以上の(式5)において、Nmはドーパントによる固定電荷とキャリアによる電荷とを合わせた電荷密度であった。キャリアの電荷分布はポテンシャルにしたがって決まるので正確に求めることは簡単ではない。また、実際にはアクセプタ、ドナー交互層は整然としたドーパント密度を持つとは限らない。
【0048】
よって、実際の半導体デバイスをより考慮した、ド-パント密度と半導体領域の厚さとの関係づけを行う。
【0049】
まず、P型半導体領域とドナー主領域とは、ほぼ同じ厚さdを持つとする。またP型半導体領域のほうがドナー主領域よりも平均ドーパント密度が高くてN1という値を持ち、ドナー主領域はN2という平均ドーパント密度を持つとする。
【0050】
この時、(式5)を導出した議論に出てきたように、平均ホール密度は(N1-N2)/2である。このホールのP型半導体領域での密度はN型ドーパント主領域での密度の3倍とすると、P型半導体領域はN1密度のドーパントと、3/4(N1-N2)密度のホールにより、(N1+3N2)/4なる平均密度のマイナス電荷を有する。N型ドーパント主領域は(N1+3N2)/4なる平均密度のプラス電荷を有する。よってNav=(N1+3N2)/4なる電荷密度を定義し、この電荷密度に対するデバイ長LD=(ε/(qNav)・kT/q)1/2が決まる。
【0051】
LD≒<d≒<4LD (式6)
がdを規定する条件式である。実態的には、デバイ長LDに対して、厚さdはLDの0.8倍以上、4倍以下の値とすることによって、アクセプタ、ドナー交互層をP型ウエルと同様の特性を持たせることができると言える。
【0052】
LD≒<dであるのはLDよりdを狭くしても内部ポテンシャルの平坦さは変わらず、単に細かいアクセプタ、ドナー交互層を形成する困難さが増すだけだからである。また、(式5)の左辺は(2π)1/2LDで、約2.5LDであるが、(式6)でd≒<4LDであるのは、(式5)の導出での前提となった電荷密度の三角関数分布はせいぜい近似であり、電荷密度の分布形によって、結果が変動することを考慮している。またポテンシャルの凹凸が多少kTを超えても本発明が成り立つことも考慮している。電荷密度の分布によっては、厚さdをLDの2倍以上、3倍以下の値とすることも好適である。
【0053】
図6はアクセプタ、ドナー交互層のひとつの例を示したものである。
図6では、アクセプタ主領域をA、ドナー主領域をDとして示している。厚さd、平均ドーパント密度が場所によって異なった値を持っている。このような場合、例えば中央のN型ドーパント主領域の幅dを規定するLDの値は、中央のドナー主領域の平均ドーパントN2と、その層を挟む上下の2つのP型半導体領域の平均値としてのドーパント密度N1から決められる。ただし、P型半導体領域21と接するドナー主領域の厚さdを規定するLD値を決めるN1は、それと接する浅い側のP型半導体領域23の平均ドーパント密度を用いる。またもっとも浅いP型半導体領域22の厚さdを規定するLDを決めるN2は、その半導体領域と接する深い側のドナー主領域の平均ドーパント密度を用いる。
【0054】
このようにして、アクセプタ、ドナー交互層の各層の厚さdが(式6)を満たしているかどうか決まる。なお、P型半導体領域22、23およびドナー主領域24、25のすべてが(式6)を満たしているとは限らず、一部が(式6)を満たしていることもありうる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態によれば、(式6)を満足する厚さdを持つアクセプタ、ドナー交互層は、低いドーパント密度のP型ウエルと同様の特性を備える。
【0056】
ここで、比較例を説明する。
【0057】
図7は特許文献1において、
図3に示したP型半導体領域17が届かないような深い位置(4ミクロン程度)にP型ウエルを構成しようとした場合における、PDの深さ方向のドーパントの密度プロファイルである。
図3に示したP型ウエル31の最深層が深く、そのため高ドーパント密度にすることは、製造プロセス上の困難を伴う。このため、P型ウエル31にN型半導体領域15に向けたポテンシャル勾配を付けるために、P型半導体領域が一層浅くなるにつれてドーパント密度を例えば1/3ずつ薄くするように設定することを考える。一般的に、イオン注入工程の制御時間などの制約によって、半導体領域に注入できるイオン量に下限が存在する。したがって、この下限未満のイオン注入は困難である。よって、段階的にP型半導体領域のドーパント密度を低下させていくと、P型ウエル31にN型半導体領域15に向かう好適なポテンシャル勾配を付けるために充分なP型半導体領域の段数を設けることができなくなる。
【0058】
この結果、P型ウエル31のもっとも浅いP型半導体領域はN型半導体領域15に接するよりも深い位置になる。
【0059】
この結果、N型半導体領域15に信号電荷が蓄積され始める深さはN型半導体領域15のドーパントのピーク深さよりもさらに深い位置になる。よって、N型半導体領域15とP型ウエル31とのPN接合容量が小さい値になる。さらに、N型半導体領域15と表面のP型半導体領域16との間に形成されるPN接合容量も減少する。このことによって、光電変換部の飽和信号量が減少する。
【0060】
さらに
図7の形態では、光電変換部をリセットする電圧Vresの値を低下させる必要も生じる。これにより、光電変換部の飽和信号量はさらに減少する。以下、説明する。
一般的にN型半導体領域15はリセット時には空乏化している。その時にPN接合に印加される逆バイアス電圧が電圧Vresである。
【0061】
例えば、光電変換部に蓄積された信号電荷を光電変換部から完全転送させる場合、電圧Vresは信号電荷を完全転送できる最大の電圧である。電圧Vresは、光電変換部の構造や電源電圧等によって決まる。しかるに、
図7のような光電変換部では、すでに述べたように信号電荷はN型半導体領域15のドーパントのピーク位置よりも深い位置で蓄積される。よって、信号転送路が形成される半導体表面から離れた深い所に信号電荷が蓄積される。このため、蓄積された信号電荷が光電変換部から完全転送しにくい状況となる。よって、電源電圧が同じ条件ならば、完全転送を行うためには電圧Vresの値を下げ、そして、下げた電圧Vresで空乏化するようにN型半導体領域15のドーパント密度を下げざるを得ない。この結果、光電変換部の飽和信号量は大きく下がることとなる。
【0062】
また、別の例として、上述した完全転送型でなく、
図1で説明したように、光電変換部の読み出しにおいて、一定のキャリアが光電変換部に残留する読み出しの形態もある。
図1に示した、光電変換部が電荷積分器を備える読み出し回路に接続されている形態は、その一例である。この場合の電圧Vresは電荷積分器の基準電位で決まる。
【0063】
この場合にもN型半導体領域15は空乏化している必要がある。なぜなら、N型半導体領域15に信号電荷が残るとPDリセット時(すなわち読み出し直後)のPD容量が大きくなる。このため、熱ノイズであるリセットノイズが大きくなるからである。しかるに、
図7のようにN型半導体領域15の下部に、さらに、低ドーパント密度のN型半導体領域が設けられている場合、この低ドーパント密度の領域に信号電荷がたまりやすくなる。よって、この低ドーパント密度の領域を空乏化させるために、電圧Vresは高くなる。しかし、リセットノイズを小さくするため、すなわちリセット時にこの低ドーパント密度の領域まで空乏化させるにはN型半導体領域15の空乏化電圧を下げることが求められる。そして、この低い電圧でも空乏化させるため、N型半導体領域15のドーパント密度を低くする。この結果、光電変換部の飽和信号量は大きく下がることとなる。
【0064】
なお、P型ウエルを深く形成する場合のP型ウエルの電位設定、および特許文献1に記載された、ウエルのP型半導体領域が離れていてN型半導体領域が間に形成される場合の問題について説明を加える。
【0065】
まず表面のP型半導体領域16の電位は、半導体表面部に形成された電源端子によって直接与えられることがある。P型ウエルの電位は表面のP型半導体領域16とP型ウエルとを電気的に接続するP型接続層によって、P型半導体領域16と同電位に設定される。このP型接続層は一般的には、隣接する光電変換部同士を電気的に分離する役割を有する。よって、光電変換部同士の分離領域に設けられることから、P型接続層はP型ウエルに比べて平面視で見た幅が狭い。このため、製造技術上、P型ウエルの最深層に達する深さにまでP型接続層を形成することはできず、P型接続層がP型ウエルと電気的に接続する領域は、P型ウエルの浅い部分までにとどまる。この状態で、特許文献1のように、P型ウエルの複数のP型半導体領域の間であって、P型接続層よりも深い位置に、空乏化するとされるN型半導体領域を設けたとする。すると、空乏化しているN型半導体領域より深いP型ウエルのP型半導体領域は、それより浅いP型ウエル層との電気的導通が途切れて電気的に浮遊状態となる。このような状態は、P型ウエルの深部が信号電荷の吸収層としての安定した動作は行えない。よって、深いP型ウエルにおいては実際上、P型ウエルの中間部に空乏化するN型半導体領域を設ける構造は、実使用上の課題が存在する。
【0066】
以上説明したように、4ミクロン程度かそれ以上に深いP型ウエルを形成する場合、特許文献1に記載の構造では、光電変換部に求められる特性である、低ノイズ、飽和電荷量、空乏化に困難さが生じる。
【0067】
本実施形態では、P型ウエル31において、ドナーの主領域24、25をホールが主たるキャリアとなるように構成している。ドナー主領域25は、ホールを主たるキャリアとして持つようにしてもよいが、次に述べるように空乏化している方が好適である。これにより、
図7のP型ウエルを形成するP型半導体領域数と同じ層数であってもN型半導体領域15まで接近したP型半導体領域22を備えることができる。そして、本実施形態のP型ウエル31は、一様でごく低密度のドーパント密度を持つP型ウエルに近い性質を持つ。よって、空乏層がP型ウエル31の深部まで伸び、
図4における、ドナー主領域25まで空乏化する。アクセプタ、ドナー交互層と、最深P型半導体領域21とのドーパントの密度比は実質的に大きい値となる。これにより、最深のP型半導体領域21においては信号電荷にとってポテンシャルバリアが形成される。したがって、入射光によって最深P型半導体領域21のドーパントピーク深さよりも浅い場所で発生した信号電子は速やかにN型半導体領域15に収集される。すなわち、高い量子効率(高感度化)を実現することができる。また、N型半導体領域15に、P型半導体領域22が接近しているため、N型半導体領域15に蓄積する信号電荷が
図7に比べて浅い領域で収集することができる。よって、表面のP型半導体領域16とN型半導体領域15とのPN接合容量を大きくすることができ、N型半導体領域15の大きな飽和信号量を確保できる。さらにドナー主領域24、およびそれに接するP型半導体領域23は空乏化せず、キャリアとしてホールが存在するように条件が設定される。よって、ドナー主領域24においてもホールが多数キャリアとして存在し、P型分離層17を通して最深P型拡散層21まで電気的導通がなされて、P型ウエルの電位設定がなされる。したがって光電変換部として安定な動作を実現することができる。
【0068】
(第2実施形態)
本実施形態について、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0069】
第2実施形態は、第1実施形態における
図1、
図2と同じ読み出し回路、平面レイアウト図を持つ。そして
図8は、
図2におけるC,D間の断面図である。
図8においてP型半導体領域26(第9半導体領域の別の一例)はN型半導体領域15の下部に設けられ、N型半導体領域15とPN接合を形成する。P型半導体領域26の平面レイアウトは、P型半導体領域16に電位を供給する端子を除き、P型半導体領域16と同じレイアウトとしている。つまり、平面視において、N型半導体領域14と重なる部分には、P型半導体領域26は設けられていない。また、
図3におけるP型半導体領域22が無い。ここで、
図8において
図3と同じ部品には同一の番号を付し、説明を省略している。
【0070】
図8の構造において、まずP型半導体領域26はN型半導体領域15に蓄積される信号電荷が深い側に蓄積されることを第1実施形態に比べてより強く防止する。
【0071】
また、P型半導体領域26は、空乏化せず中性領域となる部分を備える。この中性領域とN型半導体領域15とで大きなPN接合容量が形成される。この2つの効果によって第1実施形態に比べて、さらに大きい飽和信号量を持つことが可能となる。
【0072】
さらに平面視において、N型半導体領域14に重なる部分にはP型半導体領域26は設けられていない。また、さらに第1実施形態では設けられていたP型拡散層22もまた、設けられていない。このため、当該部分において、空乏層は第1実施形態よりもさらに深く、つまり、P型半導体領域17よりも深い領域まで伸びている。これにより、第1実施形態よりも、より深い領域で生成した信号電荷を収集することができるため、さらに高い量子効率(高感度化)を実現できる。
【0073】
この深い空乏層は平面的にはN型半導体領域14と重なる位置に部分的に設けられる。ドナー主領域24のうち、平面的に見て少なくともP型半導体領域17と重なる領域では空乏化しておらず、第1実施形態と同じように多数キャリアとしてのホールが存在する。よって、半導体基板の表面部からP型半導体領域16に与えた電位が電気的導通によって最深のP型半導体領域21にも与えられる。よって第1実施形態と同じく安定した動作ができる。
【0074】
以上、第2実施形態により、第1実施形態に比べてさらに高い飽和電荷量、高感度、そして第1実施形態と同じように光電変換部の安定した動作を実現できる。
【0075】
(第3実施形態)
第3実施形態について、第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0076】
図9は本実施形態である撮像装置の単位画素を表す平面図である。
【0077】
単位画素は、N型半導体領域27、第2のN型半導体領域28を有する。また、単位画素は、第1転送ゲート29、第2転送ゲート30、N型浮遊拡散層(以下、FD)31を有する。第1転送ゲート29は、N型半導体領域27が蓄積した信号電荷のFD31への転送を制御する。第2転送ゲート30は、N型半導体領域28が蓄積した信号電荷のFD31への転送を制御する。
【0078】
また、単位画素は、画素トランジスタを備えるトランジスタ領域32を有する。トランジスタ領域32には、FD31をリセットするリセットトランジスタ、FD31の電位に基づく信号を出力する増幅トランジスタを有する。トランジスタ領域32には、FD31の容量値を変更するトランジスタや、単位画素からの信号の出力、非出力を切り替える選択トランジスタなどを配することもできる。
図9では、1つの単位画素を示しているが、撮像装置では、数千行、数千列にわたって複数の単位画素が配される。この複数の単位画素同士を分離するために、素子分離領域33が設けられている。
【0079】
また、単位画素が複数のN型半導体領域27、28を有することによって、焦点検出機能を実現するための位相差信号を取得することができる。
図10は
図9に示した線分E-Fに沿った断面図を表している。
図10において、N型半導体領域27、28の下方にP型半導体領域34を有する。このP型半導体領域34は、第2実施形態で示したP型半導体領域26と同じ機能を備える。第2実施形態のP型半導体領域26との差異は、本実施形態の平面的には画素部全体に渡っている。したがって、
図3のP型半導体領域22がN型半導体領域27、28により近接して配されたものともいえる。
【0080】
なお、
図10において
図8、
図9と同じ部品には同一の番号を付し、説明は省略する。P型半導体領域23とドナー主領域24とでアクセプタ、ドナー交互層を形成するのは第1実施形態、第2実施形態と同様である。
【0081】
N型半導体領域27、28のそれぞれの中央部はもっともポテンシャルの低い場所となる。したがって、N型半導体領域27、28とP型半導体領域34とは、その中央部でもっとも大きい逆バイアスがかかる。よって、P型半導体領域34のド-パント密度を適切に設定することによって、平面的に見てN型半導体領域27、28のそれぞれの中央部の位置でP型半導体領域34が深さ方向で貫くように空乏化する。このような構造ではN型半導体領域27、28はP型半導体領域34と大きなPN接合容量を持つので大きな飽和信号量を得ることが可能となる。また最深のP型半導体領域21の深さに至るまでに発生した信号電荷はP型半導体領域34の空乏化した部分を通って速やかにN型半導体領域27、28に集められるので高感度を実現できる。さらにドナー主領域24は空乏化せず、主たるキャリアとしてホールを有している。よって、画素部にある、異なる深さの複数のP型半導体領域は互いに電気的に導通する。表面のP型半導体領域16に与えた電位が画素部のP型半導体領域の中性領域全体に行き渡る。よって光電変換部の安定した動作を実現できる。
【0082】
この第3実施形態においてP型半導体領域34は第2実施形態のP型半導体領域26のように平面的に一部が設けられていない形態(代わりにN型半導体領域が存在する)であってもよい。この場合、P型半導体領域34が設けられていない領域は、N型半導体領域27、28の中央部付近とするのが好適である。
【0083】
以上より、第3実施形態によれば高飽和、高感度、安定した光電変換部の動作を実現することができる。
【0084】
(第4実施形態)
本実施形態は、光電変換部が蓄積した信号電荷量に応じて光電変換部に付加される容量値が変更される画素を有する光電変換装置である。なお、以下では適宜、第1実施形態で説明した符号を用いながら説明する。
【0085】
図11は、本実施形態の画素1の構成を示している。各画素1は、P型のMOSトランジスタMP1を有する。なお、トランジスタ4はN型のMOSトランジスタである。
【0086】
フォトダイオードのカソードは、P型MOSトランジスタMP1のゲート及びN型MOSトランジスタ4のソースに接続されている。P型MOSトランジスタMP1のソース及びドレインは、対応する列の電圧供給線111に接続されている。或いは、P型MOSトランジスタMP1のソース及びドレインのうちの一方を対応する列の電圧供給線111に接続し、他方を浮遊状態にしてもよい。
【0087】
各列の電圧供給線111は、電圧供給回路110に接続されている。電圧供給回路110は、
図12に示すように、演算増幅器AMPと、負荷抵抗RLと、抵抗R1,R2と、P型MOSトランジスタMP2と、を有する。抵抗R1,R2は、負荷抵抗RLよりも高抵抗の抵抗素子である。
【0088】
負荷抵抗RLの一方の端子は、電源電圧ノード(電圧VDD)に接続されている。負荷抵抗RLの他方の端子は、抵抗R2の一方の端子及びP型MOSトランジスタMP2のソースに接続されている。P型MOSトランジスタMP2のドレイン及びゲート、並びに、抵抗R1の一方の端子は、基準電圧ノード(電圧Vref)に接続されている。電圧Vrefは、演算増幅器42の非反転入力端子(+)に供給される電圧Vrefと同じである。抵抗R1の他方の端子及び抵抗R2の他方の端子は、演算増幅器AMPの非反転入力端子(+)に接続されている。換言すると、P型MOSトランジスタMP2のゲート及びドレインとソースとの間に、抵抗R1及び抵抗R2が直列に接続されている。そして、抵抗R1と抵抗R2との間の接続ノードが、演算増幅器AMPの非反転入力端子(+)に接続されている。演算増幅器AMPの反転入力端子(-)と出力端子とは短絡され、ボルテージフォロワ回路を形成している。演算増幅器AMPの出力端子は、電圧供給線111に接続されている。
【0089】
電圧供給回路110を構成する各素子のパラメータは、N型半導体領域14の信号電荷蓄積量がゼロから飽和電荷量に至る電位の変動範囲において、P型MOSトランジスタMP1がオフ状態からオン状態に切り替わるように、適宜設定される。
【0090】
P型MOSトランジスタMP1は、光電変換部PDからの信号電荷の読み出しを行った直後のリセット状態におけるN型半導体領域14の電圧においてオフ状態になるように、ソース及びドレインの電圧が設定されている。ここで、P型MOSトランジスタMP1は、低密度のN型半導体基板20或いはnウェルに形成されているため、オフ状態のときP型MOSトランジスタP1のゲート電極の下部の半導体層には幅の広い空乏層が形成され、ゲート容量は非常に小さくなる。したがって、N型半導体領域14に連なる寄生容量に起因して光電変換部PDのリセット時に生じるkTCノイズを十分に小さく抑えることができる。
【0091】
N型半導体領域14の電位は、N型半導体領域14に蓄積される信号電荷の量が増加するのに伴って低下していく。N型半導体領域14の電位が所定の電位を下回ると、P型MOSトランジスタMP1がオン状態になる。P型MOSトランジスタMP1がオン状態になると、P型MOSトランジスタMP1のゲート電極の直下のN型半導体基板12の表面部がP型反転して正孔(ホール)が溜まり、ゲート電極はゲート絶縁膜容量という大きな容量が接続された状態となる。したがって、光電変換部PDのpn接合容量は小さいものの、N型半導体領域14に結合されるこの大きなゲート容量によって、高い飽和電荷量を確保することができる。
【0092】
このように、光電変換部PDのカソード(N型半導体領域14)に蓄積される信号電荷量が第1の蓄積量であり、P型MOSトランジスタMP1がオフ状態にあるときのP型MOSトランジスタMP1のゲート容量が第1の容量である。
【0093】
N型半導体領域14に蓄積される信号電荷量が第1の蓄積量よりも多い第2の蓄積量の場合には、P型MOSトランジスタMP1はオン状態となる。このP型MOSトランジスタMP1がオン状態にある場合における、P型MOSトランジスタMP1のゲート容量は、第1の容量よりも大きい第2の容量となる。このとき、P型MOSトランジスタMP1のゲート電極の下のN型半導体基板の表面部は反転状態である。
【0094】
このような動作を実現するために、本実施形態では、P型MOSトランジスタMP1のソース及びドレインに印加される電圧を、電圧供給回路110によって以下のように設定する。
【0095】
電圧供給回路110が有するP型MOSトランジスタMP2は、画素1を構成するP型MOSトランジスタMP1と同一の構造を有している。すなわち、P型MOSトランジスタMP2の閾値電圧は、P型MOSトランジスタMP1の閾値電圧と同じである。なお、MOSトランジスタの構造が同一とは、MOSトランジスタの特性を規定するパラメータ、例えば、ゲート絶縁膜の膜厚、ゲート長、各部のドーパント密度等が同じであることを意味する。同じ基板上に同時に形成される同じ素子パラメータを有するMOSトランジスタは、製造上のばらつきを同じように受けるため、閾値電圧等の特性値を揃えることができる。
【0096】
P型MOSトランジスタMP2には、ゲート及びドレインに電圧Vrefが供給され、ソースに負荷抵抗RLを介して電圧VDDが供給されている。これにより、P型MOSトランジスタMP2はオン状態となっており、負荷抵抗RLを介してソース電流が流れる。抵抗R1、R2の抵抗値は、負荷抵抗RLを流れる電流のうち、一部がP型MOSトランジスタMP2のソース電流となり、残りが抵抗R2,R1を流れる電流となるように、負荷抵抗RLの抵抗値よりも高めに設定される。
【0097】
ここで、P型MOSトランジスタMP2の閾値電圧をVth(閾値電圧Vthは負電圧)とすると、P型MOSトランジスタMP2のソース電圧は、Vref-Vth+ΔVとなる。ΔVは、P型MOSトランジスタMP2の電流特性とソース電流値とによって決まる正の電圧値である。ここでは簡略化のため、ソース電流値が十分に小さく、電圧ΔVは無視できるものと仮定する。
【0098】
抵抗R1,R2の抵抗値をそれぞれR1,R2とすると、抵抗R1と抵抗R2との間の接続ノード、すなわち演算増幅器AMPの非反転入力端子の電圧は、Vref-Vth×(R1/(R1+R2))となる。例えば、電圧Vrefが1.0[V]、閾値電圧Vthが-0.8[V]、R1=R2であるとすると、電圧供給線111の電圧は1.4[V]となる。この電圧は、P型MOSトランジスタMP2のゲート及びドレインに所定の電圧を与えてオン状態にしたときのソースの電圧に応じた電圧である。
【0099】
光電変換部PDのN型半導体領域14は、その電位が電圧Vref(=1.0[V])にリセットされた状態から信号電荷の蓄積を開始する。この時点において、P型MOSトランジスタMP1のゲート-ソース間電圧VGSは、VGS=1.0[V]-1.4[V]=-0.4[V]である。P型MOSトランジスタMP1の閾値電圧VthはVth=-0.8[V]であるから、P型MOSトランジスタMP1はオフ状態である。したがって、P型MOSトランジスタMP1のゲート容量は小さい。
【0100】
N型半導体領域14の電位は、前述のように、N型半導体領域14に蓄積される信号電荷の量が増加するのに伴って低下していく。このとき、N型半導体領域14の電位が例えば0.6Vを下回る、すなわちゲート-ソース間電圧VGSが閾値電圧Vth(=-0.8V)より低くなると、P型MOSトランジスタMP1はオン状態になる。これにより、P型MOSトランジスタMP1のゲート容量は急激に大きくなり、光電変換部PDの飽和電荷量は十分に大きな値となる。
【0101】
MOSトランジスタの閾値電圧Vthは、製造条件のばらつきや動作温度によっても変動するが、P型MOSトランジスタMP1とP型MOSトランジスタMP2とを同一の構造とすることで、閾値電圧Vthの変動による影響を抑制することができる。
【0102】
電圧供給回路110の代わりに、例えば1.4Vの固定電圧を供給する電源を電圧供給線111に接続したとする。この場合、P型MOSトランジスタMP1の閾値電圧Vthが0.1V変動すると、P型MOSトランジスタMP1がオフ状態にある電位範囲は0.1V変動する。この点、本実施形態の電圧供給回路110を用いれば、P型MOSトランジスタMP1がオフ状態にある電位範囲は0.1[V]の半分の0.05[V]に抑制することができる。
【0103】
このように、本実施形態によれば、S/N比及びダイナミックレンジを向上した光電変換装置を実現することができる。
【0104】
(第5実施形態)
図13は第1~第4実施形態に記載した光電変換装置を放射線撮像システムに応用した例を示した図である。
【0105】
放射線撮像システムは、放射線撮像装置6040と、放射線撮像装置6040から出力される信号を処理するイメージプロセッサ6070とを備える。放射線撮像装置6040は、前述の各実施形態の光電変換装置を、放射線を撮像する装置として構成したものである。X線チューブ(放射線源)6050で発生したX線6060は患者あるいは被験者6061の胸部6062を透過し、放射線撮像装置6040に入射する。この入射したX線には被験者6061の体内部の情報が含まれている。放射線撮像装置6040は、入射したX線の波長を変換するシンチレータを有する。シンチレータは、典型的にはX線を可視光域の波長の光に変換する。放射線撮像装置6040は、上述した実施形態の光電変換装置を備えており、この光電変換装置には、シンチレータによって波長が変換された可視光が入射する。よって、上記の各実施形態の光電変換装置では、シンチレータから入射する可視光に対応する信号電荷を、N型の半導体領域14が収集することとなる。
【0106】
イメージプロセッサ(プロセッサ)6070は、放射線撮像装置6040から出力される信号(画像)を処理し、例えば、処理によって得られた画像信号に基づいて制御室のディスプレイ6080に画像を表示させることができる。
【0107】
また、イメージプロセッサ6070は、処理によって得られた信号を伝送路6090を介して遠隔地へ転送することができる。これにより、別の場所のドクタールームなどに配置されたディスプレイ6081に画像を表示させたり、光ディスク等の記録媒体に画像を記録したりすることができる。記録媒体は、フィルム6110であってもよく、この場合、フィルムプロセッサ6100がフィルム6110に画像を記録する。
【0108】
なお、本明細書に記載した光電変換装置は、可視光の像を撮像する撮像システムに応用することもできる。そのような撮像システムは、例えば光電変換装置と、光電変換装置から出力される信号を処理するプロセッサとを備えうる。該プロセッサによる処理は、例えば、画像の形式を変換する処理、画像を圧縮する処理、画像のサイズを変更する処理および画像のコントラストを変更する処理の少なくとも1つを含みうる。
【0109】
(第6実施形態)
本実施例による光電変換システムについて、
図14を用いて説明する。
図14は、本実施形態による光電変換システムの概略構成を示すブロック図である。
【0110】
上記実施形態で述べた光電変換装置は、種々の光電変換システムに適用可能である。適用可能な光電変換システムの例としては、デジタルスチルカメラ、デジタルカムコーダ、監視カメラ、複写機、ファックス、携帯電話、車載カメラ、観測衛星などが挙げられる。また、レンズなどの光学系と撮像装置とを備えるカメラモジュールも、光電変換システムに含まれる。
図14には、これらのうちの一例として、デジタルスチルカメラのブロック図を例示している。
【0111】
図14に例示した光電変換システムは、撮像装置1004、被写体の光学像を撮像装置1004に結像させるレンズ1002、レンズ1002を通過する光量を可変にするための絞り1003、レンズ1002の保護のためのバリア1001を有する。レンズ1002及び絞り1003は、撮像装置1004に光を集光する光学系である。撮像装置1004は、上記のいずれかの実施形態の光電変換装置であって、レンズ1002により結像された光学像を画像データに変換する。
【0112】
光電変換システムは、また、撮像装置1004より出力される出力信号の処理を行う信号処理部1007を有する。信号処理部1007は、撮像装置1004が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換を行う。また、信号処理部1007はその他、必要に応じて各種の補正、圧縮を行って画像データを出力する動作を行う。信号処理部1007の一部であるAD変換部は、撮像装置1004が設けられた半導体基板に形成されていてもよいし、撮像装置1004とは別の半導体基板に形成されていてもよい。また、撮像装置1004と信号処理部1007とが同一の半導体基板に形成されていてもよい。
【0113】
光電変換システムは、更に、画像データを一時的に記憶するためのメモリ部1010、外部コンピュータ等と通信するための外部インターフェース部(外部I/F部)1013を有する。更に光電変換システムは、撮像データの記録又は読み出しを行うための半導体メモリ等の記録媒体1012、記録媒体1012に記録又は読み出しを行うための記録媒体制御インターフェース部(記録媒体制御I/F部)1011を有する。なお、記録媒体1012は、光電変換システムに内蔵されていてもよく、着脱可能であってもよい。
【0114】
更に光電変換システムは、各種演算とデジタルスチルカメラ全体を制御する全体制御・演算部1009、撮像装置1004と信号処理部1007に各種タイミング信号を出力するタイミング発生部1008を有する。ここで、タイミング信号などは外部から入力されてもよく、光電変換システムは少なくとも撮像装置1004と、撮像装置1004から出力された出力信号を処理する信号処理部1007とを有すればよい。
【0115】
撮像装置1004は、撮像信号を信号処理部1007に出力する。信号処理部1007は、撮像装置1004から出力される撮像信号に対して所定の信号処理を実施し、画像データを出力する。信号処理部1007は、撮像信号を用いて、画像を生成する。
【0116】
このように、本実施形態によれば、上記のいずれかの実施形態の光電変換装置を適用した光電変換システムを実現することができる。
【0117】
(第7実施形態)
本実施例の光電変換システム及び移動体について、
図15を用いて説明する。
図15は、本実施例の光電変換システム及び移動体の構成を示す図である。
【0118】
図15(a)は、車載カメラに関する光電変換システムの一例を示したものである。光電変換システム300は、撮像装置310を有する。撮像装置310は、上記のいずれかの実施例に記載の撮像装置100である。光電変換システム300は、撮像装置310により取得された複数の画像データに対し、画像処理を行う画像処理部312と、光電変換システム300により取得された複数の画像データから視差(視差画像の位相差)の算出を行う視差取得部314を有する。また、光電変換システム300は、算出された視差に基づいて対象物までの距離を算出する距離取得部316と、算出された距離に基づいて衝突可能性があるか否かを判定する衝突判定部318と、を有する。ここで、視差取得部314や距離取得部316は、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段の一例である。すなわち、距離情報とは、視差、デフォーカス量、対象物までの距離等に関する情報である。衝突判定部318はこれらの距離情報のいずれかを用いて、衝突可能性を判定してもよい。距離情報取得手段は、専用に設計されたハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアモジュールによって実現されてもよい。また、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって実現されてもよいし、これらの組合せによって実現されてもよい。
【0119】
光電変換システム300は車両情報取得装置320と接続されており、車速、ヨーレート、舵角などの車両情報を取得することができる。また、光電変換システム300は、衝突判定部318での判定結果に基づいて、車両に対して制動力を発生させる制御信号を出力する制御装置である制御ECU330が接続されている。また、光電変換システム300は、衝突判定部318での判定結果に基づいて、ドライバーへ警報を発する警報装置340とも接続されている。例えば、衝突判定部318の判定結果として衝突可能性が高い場合、制御ECU330はブレーキをかける、アクセルを戻す、エンジン出力を抑制するなどして衝突を回避、被害を軽減する車両制御を行う。警報装置340は音等の警報を鳴らす、カーナビゲーションシステムなどの画面に警報情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与えるなどしてユーザに警告を行う。
【0120】
本実施例では、車両の周囲、例えば前方又は後方を光電変換システム300で撮像する。
図15(b)に、車両前方(撮像範囲350)を撮像する場合の光電変換システムを示した。車両情報取得装置320が、光電変換システム300ないしは撮像装置310に指示を送る。このような構成により、測距の精度をより向上させることができる。
【0121】
上記では、他の車両と衝突しないように制御する例を説明したが、他の車両に追従して自動運転する制御や、車線からはみ出さないように自動運転する制御などにも適用可能である。更に、光電変換システムは、自車両等の車両に限らず、例えば、船舶、航空機あるいは産業用ロボットなどの移動体(移動装置)に適用することができる。加えて、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)等、広く物体認識を利用する機器に適用することができる。
【0122】
[変形実施形態]
本発明は、上記実施例に限らず種々の変形が可能である。
【0123】
例えば、いずれかの実施例の一部の構成を他の実施例に追加した例や、他の実施例の一部の構成と置換した例も、本発明の実施例である。
【0124】
また、上記実施形態に示した光電変換システムは、光電変換装置を適用しうる光電変換システム例を示したものであって、本発明の光電変換装置を適用可能な光電変換システムは
図14及び
図15に示した構成に限定されるものではない。
【0125】
なお、上記実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0126】
14、15 N型半導体領域
16、21、22、23 P型半導体領域
17 接続領域(P型半導体領域)
20 N型半導体基板
23 P型半導体領域(アクセプタ主領域)
24、25 ドナー主領域
31 P型ウエル