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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】振動型モータ及び駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/04 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
H02N2/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019149801
(22)【出願日】2019-08-19
(65)【公開番号】P2021035079
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】阿部 遼
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-236522(JP,A)
【文献】特開2016-201906(JP,A)
【文献】特開2016-226163(JP,A)
【文献】特開平09-065668(JP,A)
【文献】特開2017-198925(JP,A)
【文献】特開2012-070618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動子と、
摩擦部材と、
前記振動子と前記摩擦部材とを加圧接触させる加圧手段と、
前記摩擦部材を保持する保持部材と、
前記摩擦部材を前記保持部材に固定する固定手段と、を備え、
前記振動子を振動させることで、前記振動子と前記摩擦部材とが相対移動する振動型モータであって、
前記摩擦部材は、前記振動子と接触する領域を含む第1の領域と、前記保持部材に保持される領域を含む第2の領域とを有し、前記相対移動の方向における両端に前記第2の領域が配置されるとともに前記第2の領域の間に前記第1の領域が配置されていて、
前記摩擦部材が前記固定手段によって固定される位置は、前記加圧手段の加圧方向から見て前記相対移動の方向と平行で前記第1の領域を通る直線上にあり
前記第1の領域の前記相対移動の方向及び前記加圧手段の加圧方向の両方と直交する方向における寸法は、前記第2の領域の前記直交する方向における寸法よりも小さいことを特徴とする振動型モータ。
【請求項2】
前記第1の領域の前記直交する方向における寸法は、前記第2の領域の前記直交する方向における寸法よりも、前記第1の領域の前記加圧手段の加圧方向における寸法に近いことを特徴とする請求項1に記載の振動型モータ。
【請求項3】
前記保持部材は、前記摩擦部材と当接する当接部を有し、
前記当接部の前記直交する方向における寸法は、前記第2の領域の前記直交する方向における寸法よりも大きく、
前記当接部は、前記相対移動の方向において前記固定手段の位置よりも前記第1の領域に近い位置に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の振動型モータ。
【請求項4】
前記摩擦部材は、前記相対移動の方向において前記摩擦部材が前記固定手段によって固定される位置よりも端側に、前記摩擦部材の共振周波数を調整するための調整部を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の振動型モータ。
【請求項5】
前記保持部材を補強する補強部材を備え、
前記補強部材は、前記加圧方向において前記第1の領域と重なる第3の領域と、前記加圧方向において前記第2の領域と重なる第4の領域とを有し、
前記第3の領域の前記直交する方向における寸法は、前記第4の領域の前記直交する方向における寸法よりも小さく、
前記第4の領域の前記直交する方向における寸法は、前記第2の領域の前記直交する方向における寸法よりも大きいことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の振動型モータ。
【請求項6】
前記第2の領域は、前記相対移動の方向において前記第1の領域から離れるほど前記直交する方向における寸法が大きくなる変化部を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の振動型モータ。
【請求項7】
前記変化部は、前記直交する方向における寸法が連続的に変化していることを特徴とする請求項6に記載の振動型モータ。
【請求項8】
前記変化部は、前記直交する方向における寸法が段階的に変化していることを特徴とする請求項6に記載の振動型モータ。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の振動型モータと、
前記振動型モータによって移動する被駆動部材と、
を有することを特徴とする駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動子を振動させて推力を得る振動型モータ及び振動型モータを用いた駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラには、光学系を介して撮像面に結像する像のピントズレを補正する為に、ピントズレに応じて光学系の全部又は一部を移動することで合焦するレンズ駆動装置が搭載されている。近年、合焦動作の高速化や、高精度化、静粛化を目的として、超音波モータを駆動源とするレンズ駆動装置が注目されている。特に、被駆動体を直進方向に駆動することが可能なリニア型超音波モータは、制御性や駆動特性が優れており、レンズ駆動装置の駆動源として活用されている。
【0003】
超音波モータの課題の一つに、振動や異音の発生が挙げられる。超音波モータは、摩擦部材と加圧接触している振動子を高周波で振動させることで推力を得るが、摩擦部材の形状によって決まる共振周波数と駆動周波数が近いと摩擦部材の振動が励起され、可聴域の異音が発生してしまう。
【0004】
特許文献1では、摩擦部材の形状を変更することで摩擦部材の共振周波数を調整し、小型化したリニア型超音波モータ及び超音波モータを有する駆動装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-67983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1に記載された構成は、摩擦部材の共振周波数を調整することで共振周波数を避ける構成であるが振動を抑制する構成ではないので、摩擦部材の形状に制約があると摩擦部材の共振を避けるのが困難になる。また、モータのストロークが長くなると摩擦部材は振動しやすくなるため、共振を避ける設計自体の難易度が高くなるという課題がある。
【0007】
本発明の目的は、上記課題を鑑みてなされたもので、長ストローク化しても異音の発生を抑制可能な振動型モータ及び振動型モータを用いた駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る振動型モータは、振動子と、摩擦部材と、前記振動子と前記摩擦部材とを加圧接触させる加圧手段と、前記摩擦部材を保持する保持部材と、前記摩擦部材を前記保持部材に固定する固定手段と、を備え、前記振動子を振動させることで、前記振動子と前記摩擦部材とが相対移動する振動型モータであって、前記摩擦部材は、前記振動子と接触する領域を含む第1の領域と、前記保持部材に保持される領域を含む第2の領域とを有し、前記相対移動の方向における両端に前記第2の領域が配置されるとともに前記第2の領域の間に前記第1の領域が配置されていて、前記摩擦部材が前記固定手段によって固定される位置は、前記加圧手段の加圧方向から見て前記相対移動の方向と平行で前記第1の領域を通る直線上にあり、前記第1の領域の前記相対移動の方向及び前記加圧手段の加圧方向の両方と直交する方向における寸法は、前記第2の領域の前記直交する方向における寸法よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、長ストローク化しても異音の発生を抑制可能な振動型モータ及び振動型モータを用いた駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る撮像装置100のブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係る超音波モータ102を表す断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る超音波モータ102に含まれる振動子113の動作を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る超音波モータ102に含まれる摩擦部材114の形状及び保持機構を表す図である。
図5】本発明の実施形態に係る超音波モータ102に含まれる補強部材122の形状を表す図である。
図6】本発明の実施形態に係る固定筒125の構成を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、図面を用いて本発明の実施形態に係る駆動装置である撮像装置100について説明する。
【0012】
図1は、撮像装置100のブロック図である。撮像装置100は、撮影光学系の一部であるレンズ101及びレンズ101を駆動する超音波モータ102を含む鏡筒103と、撮像素子104を有するカメラ本体105で構成されている。焦点検出手段106によって公知の位相差検出方式やコントラスト方式を用いて撮像素子104に結像される像の焦点状態が検出され、その焦点検出信号がCPUなどで構成される制御手段108に入力される。また、ホール素子やフォトインタラプターなどを用いた位置検出手段107によってレンズ101の現在位置が検出され、その位置検出信号が制御手段108に入力される。制御手段108はそれらの信号をもとに、鏡筒103に設けられたレンズ側CPUなどで構成される駆動手段109に制御信号を出力し、超音波モータ102を駆動する。これにより、撮像装置100は、超音波モータ102によってレンズ101を目標位置まで駆動し、ピントずれを補正することで良好な画像を撮影することができる。なお、撮像装置100にはその他の構成要件も含まれていてもよい。
【0013】
次に、本発明の実施形態に係る振動型モータである超音波モータ102の構成について図2図3を用いて説明する。図2は、超音波モータ102の構造を表す断面図であり、(a)は超音波モータ102の進行方向X及び加圧方向Zの両方と直交する方向Yから見た断面図、(b)は超音波モータ102の進行方向Xから見た断面図である。図3は、振動子113の動作を示す図である。
【0014】
超音波モータ102は、振動子113、摩擦部材114、摩擦部材114を保持する第1の保持部材111、振動子113を保持する第2の保持部材112、案内部115、加圧部116、連結部117で構成される。
【0015】
第1の保持部材111は、摩擦部材114及び第1の案内部材115aを保持する部材であり、鏡筒103(図1)に固定される概略板形状の部材である。第1の保持部材111には締結穴111aが設けられ、摩擦部材114を保持するようにビスなどの摩擦部材固定手段119により締結される。また、第1の保持部材111は、摩擦部材114と当接する当接部111bを備える。また、第1の保持部材111には、締結穴111c(図5)が設けられ、第1の案内部材115aを保持するように補強部材固定手段120(図5)で締結される。
【0016】
第2の保持部材112は、第1の振動子保持部材112a、第2の振動子保持部材112b、薄板112cで構成されている。第1の振動子保持部材112aは突起112aaを有し、振動子113の係合穴部113abと係合することで振動子113を保持する。第2の振動子保持部材112bは、第2の案内部材115b及び連結部材117を保持する。薄板112cは、加圧部116の加圧方向Zにおける剛性が進行方向X及び方向Yにおける剛性より低い弾性部材であり、第1の振動子保持部材112aと第2の振動子保持部材112bとを連結する。このような振動子保持構造により、薄板112cが変形することで加圧方向Zにおける振動子113と摩擦部材114との位置ずれを吸収し、振動子113及び摩擦部材114の安定した当接状態を維持し高効率で推力を発生させることができる。
【0017】
振動子113は、振動板113aと振動板113aに接着固定された圧電素子113bとで構成されている。図3に示すように、振動板113aには、圧電素子113bが接着固定される矩形の平板部の裏面側に2つの突起113aaが長手方向に並ぶように設けられている。また、振動板113aには、第1の振動子保持部材112aに固定するための係合部113abが平板部から進行方向Xの前後に延びるように形成されている。また、圧電素子113bには不図示のフレキシブル基板が電気的に接続されており、フレキシブル基板から特定の振幅及び位相差を有する電圧が圧電素子113bに印加されると、振動子113が変形して突起113aaの先端が楕円運動を行う。
【0018】
摩擦部材114は、振動子113に接触する部材であり、摩擦部材固定手段119によって第1の保持部材111に締結される。振動子113に電圧が印加され突起113aaが楕円運動すると、摩擦部材114との間に摩擦力が断続的に発生し、振動子113が摩擦部材114に対して相対移動する相対移動方向(進行方向)Xへの推力となる。この推力により第2の保持部材112が第1の保持部材111に対して相対的に移動することになる。
【0019】
案内部115は、摩擦部材114に対する振動子113の相対移動を案内するものであって、案内部材115e及び転動部材115fで構成される。さらに案内部材115eは、第1の案内部材115a及び第2の案内部材115bで構成され、転動部材115fは第1の転動部材115c、第2の転動部材115dで構成される。第1の案内部材115aは、締結穴115aaを有し、補強部材固定手段120によって第1の保持部材111に締結されることで第1の保持部材111に保持され、摩擦部材114に対して相対移動しない。また、第1の案内部材115aはV溝115abを有し、第1の転動部材115c及び第2の転動部材115dと当接する。第2の案内部材115bは、締結穴115baを有し、ビス等の固定手段121によって第2の振動子保持部材112bに締結されることで第2の保持部材112に保持され、振動子113とともに相対的に移動する。また、第2の案内部材115bは加圧部116と係合する係合部115bbを有し、加圧部116の加圧方向Zに付勢される。また、V溝115bc、115bdを有し、それぞれが第1の転動部材115c、第2の転動部材115dと当接する。第1の転動部材115cは、第1の案内部材115aのV溝115abと第2の案内部材115bのV溝115bcに挟持され、第2の転動部材115dは、第1の案内部材115aのV溝115abと第2の案内部材115bのV溝115bdに挟持される。この構成により、第1の案内部材115aによって第1の転動部材115c及び第2の転動部材115dの位置が、進行方向Xのみ移動できるように規制され、第2の案内部材115bも同様に進行方向Xのみ移動できるように規制される。また、転動部材115fが転動することで案内部材115eが低摩擦で相対的に移動することができる。以上の構成から、第1の案内部材115aに対して第2の案内部材115bが進行方向Xに案内されるため、第1の保持部材111に対して第2の保持部材112が進行方向Xへ案内される。なお、上記の構成は振動子113が移動する構成の一例であり摩擦部材114が移動する構成であってもよい。また、上記の構成は振動子113及び摩擦部材114の安定した当接状態を維持する構成の一例であり、例えば、第1の振動子保持部材112aと第2の振動子保持部材112bとを転動部材を介して連結する構成などでもよい。
【0020】
加圧部116は、弾性部材116a、第1の伝達部材116b、第2の伝達部材116c、第3の伝達部材116dで構成され、振動子113と摩擦部材114とを加圧接触させる加圧力を発生させる加圧機構である。弾性部材116aは、引っ張りバネであり、本実施形態では振動子113を囲む位置に4本配置される。なお、弾性部材116aの数はこれに限定されない。弾性部材116aの一方の端は第1の伝達部材116aの保持部116aaにかけられ、他方の端は第2の案内部材115bの係合部115bbにかけられることで、第1の伝達部材116bと第2の案内部材115bを互いに近づけるように加圧する。第1の伝達部材116bは、弾性部材116aを保持する保持部116aaを有し、第2の伝達部材116cへ加圧力を伝達する。第2の伝達部材116cは、第1の伝達部材116bと当接する円弧形状の当接部116caを有し、第1の伝達部材116bから伝達された加圧力を第3の伝達部材116dへ伝達する。当接部116caと第1の伝達部材116bが当接することで、製造ばらつきによって第1の伝達部材116bと第2の伝達部材116cとが傾いている場合でも効率よく加圧力を伝達することができる。第3の伝達部材116dは振動を吸収しやすいフェルトなどの弾性部材であり、振動子113と第2の伝達部材116cとに挟まれるように配置され、振動子113の振動が他の部材に伝搬することを軽減する。Z方向において、第1の伝達部材116b、第2の伝達部材116c、第3の伝達部材116d、振動子113、摩擦部材114、第1の案内部材115a、第1の転動部材115c及び第2の転動部材115d、第2の案内部材115bが積層されている。このような構成により、弾性部材116aの加圧力を各伝達部材を介して効率よく振動子113へ伝達し、振動子113と摩擦部材114とを加圧接触させている。なお、上記の構成は振動子113と摩擦部材114とを加圧接触させる構成の一例であり、弾性部材の位置や伝達部材の数など限定されない。
【0021】
連結部117は、振動子113及び摩擦部材114の相対移動により発生した推力を後述するレンズ保持部材118に伝達するためのものであって、第2の振動子保持部材112bに固定された部材である。なお、連結部117は第2の振動子保持部材112bに一体的に形成されていてもよい。
【0022】
摩擦部材固定手段119は、摩擦部材114を第1の保持部材111に締結するビス等の部材である。
【0023】
以上の構成により、超音波モータ102は、印加される電圧によって振動子113と摩擦部材114の間で推力を発生させ、振動子113を保持する第2の保持部材112が第1の保持部材111に対して相対移動する。そして、発生した推力は伝達部117を介して被駆動部材であるレンズ保持部材118に伝達され、レンズ保持部材118を光軸方向(進行方向X)に移動させることができる。
【0024】
次に、図4を用いて、摩擦部材114の形状及び保持構造について説明する。図4は、摩擦部材114の形状を表す図であり、(a)はZ方向から見た図、(b)はY方向から見た図、(c)は摩擦部材114の図4(b)におけるA-A断面図である。また、(d)はZ方向から見た摩擦部材114及び第1の保持部材111の一部を拡大した図、(e)はZ方向から見た摩擦部材114の共振周波数調整のための形状を説明する図である。
【0025】
摩擦部材114は、図4(a)に示すように、振動子113と接触する領域を含む第1の領域114aと、摩擦部材固定手段119によって第1の保持部材111に固定される領域を含む第2の領域114bを備える。進行方向Xの両端に第2の領域114bは配置されていて、第1の領域114aは第2の領域114bの間に配置されている。また、第1の領域114aは、進行方向Xから見て摩擦部材固定手段119と重なって配置される。すなわち、摩擦部材114が摩擦部材固定手段119によって固定される位置は、第1の領域114aと進行方向Xに並んでいる。
【0026】
ここで、説明のため、振動子113と摩擦部材114との進行方向Xの寸法を長さ、加圧部116の加圧方向Zの寸法を厚み、進行方向X及び加圧方向Zの両方と直交する方向Yの寸法を幅と定義する。このとき、第1の領域114aの幅aは、第2の領域114bの幅bよりも小さい。また、摩擦部材114の厚みcは、第2の領域114bの幅bよりも第1の領域114aの幅aに近い寸法関係にある。第1の領域114aの幅が摩擦部材114の厚みに近い寸法関係になっていることで、第1の領域114aの断面は正方形に近い形状となる。この形状により、摩擦部材114は相対移動方向Xに平行な軸を中心とするねじれ方向θの剛性が高い構成となる。また、第2の領域114bの幅bが第1の領域114aの幅aよりも大きいことで、摩擦部材固定手段119によって固定される幅が大きくなり、ねじれ方向θを含む各方向について摩擦部材114の剛性が高い構成となる。なお、第2の領域114bの幅よりも第1の領域114aの幅が摩擦部材114の厚みに近い構成であれば、ねじれ方向θの剛性が高い構成となり、必ずしも第1の領域114aの幅が摩擦部材114の厚みと等しくなくてもよい。
【0027】
さらに、摩擦部材114は、図4(d)に示すように、第1の保持部材111の当接部111bと当接して保持される。当接部111bは、摩擦部材114の厚み方向Zにて摩擦部材114と当接する部分であり、位置精度が良好な付き当て面である。ここで、当接部111bの幅dは、第2の領域114bの幅bよりも大きい。また、当接部111bは、進行方向Xについて、第1の領域114aと摩擦部材固定手段119の間の位置に配置される。この当接部111bの形状および当接する位置により、摩擦部材114は進行方向Xに平行な軸を中心とするねじれ方向θの剛性がさらに高い構成となる。
【0028】
さらに、摩擦部材114は、図4(e)に示すように、調整部114cを有する。調整部114cは、摩擦部材114の第2の領域114bに含まれ、摩擦部材固定手段119よりも摩擦部材114の端側に配置される。調整部114cは摩擦部材114の長さを調整するための領域である。調整部114cの長さが変わると摩擦部材114の剛性が変化するため、調整部114cによって摩擦部材114が所定の剛性になるように調整をすることが可能になる。したがって、調整部114cの相対移動方向の長さを変更することで摩擦部材114の共振周波数を変更することができる。
【0029】
以上の構成から、本実施例の超音波モータ102は、摩擦部材114の剛性、特にねじれ方向の剛性が高い構成となり、かつ剛性を調整することが可能な構成となる。なお、本実施形態では、第2の領域114bにおける第1の領域114aから離れるほど幅が大きくなる変化部を連続的に幅が変化するテーパー形状としたが、段階的に幅が変化する形状などでもよい。
【0030】
次に、図5を用いて、摩擦部材114を補強する補強部材122の形状について説明する。図5は、第1の保持部材111、摩擦部材114、補強部材122の関係を表す図であり、摩擦部材114及び摩擦部材固定手段119は外形を点線で表している。
【0031】
補強部材122は、本実施形態では第1の案内部材115aと同一の部材であり、摩擦部材114とともに第1の保持部材111に保持される。補強部材122は、図5に示すように、進行方向Xに長いI字形状をしていて、転動部材115fと当接する領域を含む第3の領域122aと、補強部材固定手段120によって第1の保持部材111に固定される領域を含む第4の領域122bとを備える。進行方向Xにおいて第4の領域122bは2か所あって、第3の領域122aは第4の領域122bの間に配置される。このとき、第3の領域122aの幅eは、第4の領域122bの幅fよりも小さい。また、加圧方向Zにおいて、補強部材122の第3の領域122aと摩擦部材114の第1の領域114aとが少なくとも一部で重なるとともに、補強部材122の第4の領域122bと摩擦部材114の第2の領域114bとが少なくとも一部で重なっている。この形状により、補強部材122の剛性によって第1の保持部材111の剛性が高くなるため、第1の保持部材111に保持される摩擦部材114のねじれ方向θの剛性がさらに高い構成となる。
【0032】
以上の構成から、本実施形態の超音波モータ102は、摩擦部材114の剛性、特にねじれ方向の剛性が高い構成となる。なお、本実施形態では第1の案内部材115aと補強部材122を同一の部材としたが、別部材で構成してもよい。
【0033】
次に、超音波モータ102でレンズ保持枠118を移動させる機構について図6を用いて説明する。図6は、超音波モータ102を実装した固定筒125を説明する図であり、(a)は固定筒125を正面から見た断面図、(b)は固定筒125の側面から見た図であり、それぞれ各構成の位置関係を概念的に表している。
【0034】
固定筒125は、筒形状であり、鏡筒103の内部にて、第1のレンズ案内部材123、第2のレンズ案内部材124、超音波モータ102を保持している。
【0035】
レンズ保持部材118は、筒形状であり、中心に焦点調節用のレンズ101を保持している。レンズ保持部材118には、第1のレンズ案内部材123が貫くように、丸穴118aが形成され、第2のレンズ案内部材124が当接するように、U溝118bが形成されている。また、レンズ保持部材118は、連結部材117を介して超音波モータ102と連結している。
【0036】
第1のレンズ案内部材123は、メインガイドバーであり、丸穴118aを介してレンズ保持部材118と当接する。第1のレンズ案内部材123により、レンズ保持部材118の進行方向Xに直交する方向の移動が規制される。
【0037】
第2のレンズ案内部材124は、サブガイドバーであり、U溝118bを介してレンズ保持部材118と当接する。第2のレンズ案内部材124により、レンズ保持部材118の、第1のレンズ案内部材123周りの回転移動が規制される。第1のレンズ案内部材123及び第2のレンズ案内部材124により、レンズ保持部材118は進行方向Xへ平行移動するように案内され、固定筒125に対して相対移動する。
【0038】
以上の構成によって、超音波モータ102によって発生する推力が連結部材117によってレンズ保持部材118に伝えられる。レンズ保持部材118は、第1のレンズ案内部材123及び第2のレンズ案内部材124によって進行方向X以外の方向への移動が規制されるため、レンズ101と一体となって進行方向Xに駆動される。したがって、振動子113及び摩擦部材114の発生した推力が連結部材117を介してレンズ101に伝達されて駆動することにより、焦点調節を行うことができる。
【0039】
以上のように、上記の実施形態では、摩擦部材の形状を工夫することで摩擦部材のねじれ方向θの剛性を高くし、長ストローク化しても異音の発生を抑制することができる。なお、上記の実施形態では、本発明を適用した振動型モータを用いる駆動装置の一例として撮像装置を説明したが、その他の駆動装置にも本発明は適用できるし、本発明を適用した振動型モータの駆動対象である被駆動部材はレンズ保持部材に限定されない。例えば、撮像装置が備える撮像素子を被駆動部材とする構成であってもよいし、顕微鏡などのステージを被駆動部材とする構成であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
100 撮像装置
102 超音波モータ
111 第1の保持部材
112 第2の保持部材
113 振動子
114 摩擦部材
119 摩擦部材固定手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6