(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】レンズ制御装置、その制御方法
(51)【国際特許分類】
G02B 7/28 20210101AFI20231221BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20231221BHJP
G03B 13/36 20210101ALI20231221BHJP
G02B 7/34 20210101ALI20231221BHJP
H04N 23/67 20230101ALI20231221BHJP
【FI】
G02B7/28 N
G03B15/00 Q
G03B13/36
G02B7/34
H04N23/67
(21)【出願番号】P 2019214500
(22)【出願日】2019-11-27
【審査請求日】2022-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2019153205
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】本宮 英育
(72)【発明者】
【氏名】横関 誠
(72)【発明者】
【氏名】石井 和憲
(72)【発明者】
【氏名】加藤 篤
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-009001(JP,A)
【文献】特開2014-228592(JP,A)
【文献】特開2018-036507(JP,A)
【文献】特開2017-146469(JP,A)
【文献】特開2018-036509(JP,A)
【文献】特開平05-142463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/28 - 7/40
G02B 7/02 - 7/16
G03B 15/00
G03B 13/36
H04N 5/222- 5/257
H04N 23/00
H04N 23/40 -23/76
H04N 23/90 -23/959
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デフォーカス量を検出する焦点検出手段と、
前記デフォーカス量に基づいてフォーカスレンズを移動させる制御を行う制御手段であって、加速制御、等速制御、減速制御の3つの速度制御パターンを持つ制御手段と、
前記焦点検出手段による検出結果に基づいて前記加速制御の要否を判定する判定手段と、
前記フォーカスレンズの駆動の速度設定メニューを、ユーザーが設定するための設定手段と、を有
し、
前記判定手段は、前記速度設定メニューと焦点距離に応じて変化する等速速度が所定値未満の場合に、加速制御モードの可否判定のためのデフォーカス量の所定値を算出する処理を行い、前記焦点検出手段により検出されたデフォーカス量が、前記加速制御モードの可否判定のための所定値より小さい場合は、加速制御は不必要と判定することを特徴とするレンズ制御装置。
【請求項2】
前記焦点検出手段は、撮影光学系の異なる瞳領域を通過した光束を光電変換して生成された一対の焦点検出用の信号に基づいて前記デフォーカス量を検出することを特徴とする請求項1に記載のレンズ制御装置。
【請求項3】
前記焦点検出手段は、1つのマイクロレンズに対して複数の光電変換素子を有し当該マイクロレンズが二次元状に配列されている撮像素子から出力された焦点検出用の信号に基づいて前記デフォーカス量を検出することを特徴とする請求項
1に記載のレンズ制御装置。
【請求項4】
デフォーカス量を検出する焦点検出工程と、
前記デフォーカス量に基づいてフォーカスレンズを移動させる制御を行う制御工程であって、加速制御、等速制御、減速制御の3つの速度制御パターンを持つ制御工程と、
前記焦点検出工程による検出結果に基づいて前記加速制御の要否を判定する判定工程と
、
前記フォーカスレンズの駆動の速度設定メニューを、ユーザーが設定するための設定工程と、を有
し、
前記判定工程では、前記速度設定メニューと焦点距離に応じて変化する等速速度が所定値未満の場合に、加速制御モードの可否判定のためのデフォーカス量の所定値を算出する処理を行い、前記焦点検出工程により検出されたデフォーカス量が、前記加速制御モードの可否判定のための所定値より小さい場合は、加速制御は不必要と判定することを特徴とするレンズ制御装置の制御方法。
【請求項5】
請求項
4に記載の制御方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーカスレンズの駆動を制御するレンズ制御装置に関する。また、その制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カメラにおいて、フォーカスレンズを含む撮影光学系を通過した視差を有する一対の光束を撮像素子が受光して光電変換した一対の像信号に基づいて焦点検出を行う位相差検出式の焦点検出が一般に知られている。特許文献1によれば、焦点検出結果から動体や被写体の変更を検知し、追従AF制御とピント送りAF制御とを切り替え、ボケの発生を抑えたレンズ駆動を実現している。ピント送りAF制御においては、焦点検出結果に応じて、レンズを駆動させて合焦位置まで移動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、合焦時の減速制御のみ言及されており、レンズの駆動開始時やレンズ駆動中の制御に関しては言及されていない。よって、AF開始から停止までの制御が滑らかとは言えない。
【0005】
そこで、本発明は、従来技術と比較して、レンズの加速制御をコントロールすることで、安定性重視のレンズ駆動と、応答性重視のレンズ駆動の両方を提供することを目的とする。また、その制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の技術的特徴として、デフォーカス量を検出する焦点検出工程と、前記デフォーカス量に基づいてフォーカスレンズを移動させる制御を行う制御工程であって、加速制御、等速制御、減速制御の3つの速度制御パターンを持つ制御工程と、前記焦点検出工程による検出結果に基づいて前記加速制御の要否を判定する判定工程と、前記フォーカスレンズの駆動の速度設定メニューを、ユーザーが設定するための設定工程と、を有し、前記判定工程では、前記速度設定メニューと焦点距離に応じて変化する等速速度が所定値未満の場合に、加速制御モードの可否判定のためのデフォーカス量の所定値を算出する処理を行い、前記焦点検出工程により検出されたデフォーカス量が、前記加速制御モードの可否判定のための所定値より小さい場合は、加速制御は不必要と判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来技術と比較して、レンズの加速制御をコントロールすることで、安定性重視のレンズ駆動と、応答性重視のレンズ駆動の両方を提供することを目的とする。また、その制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態におけるカメラ及びレンズの構成を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態における撮像面位相差検出方式の画素構成を説明する図である。
【
図3】本実施形態における動画撮影処理を示すフローチャートである。
【
図4】本実施形態の第一の実施形態におけるAF再起動判定を示すフローチャートである。
【
図5】本実施形態におけるピント送りAF処理を示すフローチャートである。
【
図6】本実施形態におけるレンズ駆動速度設定処理を示すフローチャートである。
【
図7】本実施形態におけるレンズ駆動量設定処理を示すフローチャートである。
【
図8】本実施形態における動体判定方法を示すフローチャートである。
【
図9】本実施形態におけるフォーカスモードの判定を示すフローチャートである。
【
図10】本実施形態におけるフォーカスモードに関する図である。
【
図11】本実施形態における追従モードAF処理を示すフローチャートである。
【
図12】本実施形態における速度制御モード判定処理を示すフローチャートである。
【
図13】本実施形態における速度制御のパラメータ設定処理を示すフローチャートである。
【
図14】本実施形態における加速制御モードの可否判定処理を示すフローチャートである。
【
図15】本実施形態における速度制御モード変化とデフォーカス量の変化を示す図である。
【
図16】本実施形態における速度制御モードの状態遷移図を示す図である。
【
図17】本実施形態における速度メニューによる設定ゲインの変化を示す図である。
【
図18】本実施形態における速度メニューによる加速時間の変化を示す図である。
【
図19】本実施形態における焦点距離と速度メニューによる等速速度の変化を示す図である。
【
図20】本実施形態における速度メニューによる減速曲線係数の変化を示す図である。
【
図21】本実施形態における焦点距離による減速開始デフォーカス量の変化を示す図である。
【
図22】本実施形態におけるデフォーカス量が取得できない場合の減速制御を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
[第一の実施形態]
[レンズ10及びカメラ20の構成]
図1は、本発明の第一の実施形態におけるレンズ及びレンズ交換式のカメラ本体の構成を示すブロック図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態はレンズ10及びカメラ20から構成されており、レンズ全体の動作を統括制御するレンズ制御部106と、カメラ全体の動作を統括するカメラ制御部212が情報を通信している。
【0012】
まず、レンズ10の構成について説明する。レンズ10は、ズームレンズ101、絞り102、フォーカスレンズ103、ズームレンズ駆動部100、絞り駆動部104、フォーカスレンズ駆動部105、レンズ制御部を106、レンズ操作部107を備えている。ズームレンズ101、絞り102及びフォーカスレンズ103は本実施形態の撮影光学系である。ズームレンズ101は、ズーム駆動部100によって駆動される。レンズ制御部106はズーム駆動部100を介してズームレンズ101を制御することで、後述する撮像素子201へ結像する被写体の像倍率を制御する。絞り102は、絞り駆動部104によって駆動される。レンズ制御部106は絞り駆動部104を介して絞り102を制御することで、後述する撮像素子201への入射光量を制御する。フォーカスレンズ103はフォーカスレンズ駆動部105によって駆動される。レンズ制御部106はフォーカスレンズ駆動部105を介してフォーカスレンズ103の位置を制御することで、後述する撮像素子201に結像する焦点の位置を制御する。レンズ操作部107を介してユーザの操作があった場合には、レンズ制御部106がユーザ操作に応じた制御を行う。レンズ制御部106は、後述するカメラ制御部212から受信した制御命令・制御情報に応じて絞り駆動部104やフォーカスレンズ駆動部105の制御を行う。また、レンズ制御部106はレンズ制御情報をカメラ制御部212に送信する。
【0013】
次に、カメラ20の構成について説明する。カメラ20はレンズ10の撮影光学系を通過した光束から撮像信号を取得できるように構成されている。
【0014】
撮像素子201はCCDやCMOSセンサにより構成されている。撮影光学系を通ってきた光束は撮像素子201の受光面上に結像し、フォトダイオードによって入射光量に応じた信号電荷に光電変換される。各フォトダイオードに蓄積された信号電荷は、カメラ制御部212の指令に従ってタイミングジェネレータ215から与えられる駆動パルスに基づいて信号電荷に応じた電圧信号として撮像素子201から順次読み出される。
【0015】
撮像素子201は、撮像面位相差式の焦点検出を行うために、一つの画素部に2つのフォトダイオード(光電変換素子)を有している(
図2下)。光束をマイクロレンズ(不図示)で分離し、この2つのフォトダイオードで互いに視差を有する光束を受光することで、撮像用とAF用の2つの信号が取り出せるようになっている。撮像素子201には、マイクロレンズが二次元状に配列されている。言い換えると、撮影光学系の異なる瞳領域を通過した光束を光電変換して生成された一対の焦点検出用の信号(A、B)を用いることにより撮像面位相差AFを実現できる。2つのフォトダイオードの信号を加算した信号(A+B)が撮像信号であり、個々のフォトダイオードの信号(A、B)がAF用の2つの(一対の)像信号になっている。AF用信号を基に、後述するAF信号処理部204で2つの像信号に対して相関演算を行い、像ずれ量や各種信頼性情報を算出する。
【0016】
撮像素子201から読み出された撮像信号及びAF用信号はCDS/AGC/ADコンバータ202に入力され、リセットノイズを除去する為の相関二重サンプリング、ゲインの調節、信号のデジタル化を行う。CDS/AGC/ADコンバータ202は、撮像信号を画像入力コントローラ203に、AF用の信号をAF信号処理部204にそれぞれ出力する。
【0017】
画像入力コントローラ203は、CDS/AGC/ADコンバータ202から出力された撮像信号をSDRAM209に格納する。SDRAM209に格納した画像信号は、バス21を介して、表示制御部205によって表示部206に表示される。また、撮像信号の記録を行うモードのときには、記録媒体制御部207によって記録媒体208に記録される。また、バス21を介して接続されたROM210にはカメラ制御部212が実行する制御プログラム及び制御に必要な各種データ等が格納されている。フラッシュROM211には、ユーザ設定情報等のカメラ20の動作に関する各種設定情報等が格納されている。
【0018】
AF信号処理部204はCDS/AGC/ADコンバータ202から出力されたAF用の2つの像信号を基に、相関演算を行い、像ずれ量、信頼性情報(二像一致度、二像急峻度、コントラスト情報、飽和情報、キズ情報等)を算出する。算出した像ずれ量と、信頼性情報をカメラ制御部212へ出力する。また、カメラ制御部212は、取得した像ずれ量や信頼性情報を基に、これらを算出する設定の変更をAF信号処理部204に通知する。例えば、像ずれ量が大きい場合に相関演算を行う領域を広く設定したり、コントラスト情報に応じてバンドパスフィルタの種類を変更したりする。
【0019】
顔検出部216は、撮像信号に対して公知の顔検出処理を施して、撮影画面内の人物の顔を検出する。その検出結果をカメラ制御部212に送信する。カメラ制御部212は、上記検出結果に基づき、撮影画面内の顔を含む領域に顔枠を追加するようにAF信号処理部204へ情報を送信する。ここで、顔検出部から複数の人物の顔を検出した場合には、顔の位置、顔のサイズ、もしくは撮影者の指示によって優先順位をつける主顔判定処理部があり、主顔判定処理部によって最も優先と判断された顔を主要な顔とする。例えば、撮影者の指示によって選択された顔が最も優先度が高く、続いて顔の位置が画面中央に近い程、そして、顔のサイズが大きい程優先度が高くなるように判定を行う。但し、顔を検出し、主要な顔を判定することができればこの方法に限らない。
【0020】
なお、顔検出処理としては、例えば以下の方法が開示されている。画像データで表される各画素の階調色から、肌色領域を抽出し、予め用意する顔の輪郭プレートとのマッチング度で顔を検出する方法や、周知のパターン認識技術を用いて、目、鼻、口等の顔の特徴点を抽出することで顔検出を行う方法である。本実施形態では、顔検出処理の方法については、上述した方法に限られず、どのような方法であってもよい。例えば、ニューラルネットに代表される学習アルゴリズムによって顔検出のための識別機能を構成する手法がある。また、顔検出部216は、被写体認識部の一種であり、ここでは人物の顔を検出する処理をしたが、動物の顔を検出するようにしてもよい。あるいは、人物や動物の顔だけでなく、瞳や胴体、身体全体を検出してもよい。また、別の被写体認識処理を行う場合にも適用できる。例えば、乗り物などの物体を検出してもよい。また、例えば、被写体認識部は、画像データの局所的な特徴量に応じて画像データの領域分割を行って、領域毎の特徴量によって被写体を認識するようにしてもよい。この場合、領域毎に認識した被写体をグループ化する。例えば、山や空、海、建物、人物、木、動物、道路、線路、砂浜、地面、乗り物、電柱などをそれぞれのグループとして、領域毎の被写体認識情報としてカメラ制御部212に送信する。
【0021】
追尾処理部217は、CDS/AGC/ADコンバータ202から出力された撮像信号から時刻の異なる画像を取得し、画像の特徴量を抽出し、特徴量が類似する領域を探索して追尾する。基準画像が登録されていない初期動作時には、カメラ操作部214による情報や顔検出部216の検出結果の情報を基に画像内の部分領域を基準画像とする。そして、基準画像から色情報を抽出し、追尾する被写体の特徴量として登録する。抽出した追尾対象被写体の特徴量を基に現在フレームにおける撮像信号の画像と基準画像とのマッチング処理を行う。各々の画像をマッチング処理により、現在フレームにおける撮像信号の画像において基準画像と最も相関度が高い領域を目的とする特定の領域とし抽出する。そして、相関度が高いか否かで追尾を継続するかどうかを判定する。また、相関度に基づく追尾の状態を信頼度として算出しカメラ制御部212に送り、AF制御のパラメータとして使用する。
【0022】
カメラ制御部212は、カメラ20内全体と情報をやり取りして制御を行う。カメラ20内の処理だけでなく、カメラ操作部214からの入力に応じて、電源のON/OFF、設定の変更、記録の開始、AF制御の開始、記録映像の確認等、ユーザが操作したさまざまなカメラ機能を実行する。また、先述したようにレンズ10内のレンズ制御部106と情報をやり取りし、レンズの制御命令・制御情報を送り、またレンズ内の情報を取得する。
【0023】
[動画撮影処理]
次に、本実施形態のカメラ20における動画撮影処理について
図3を用いて説明する。
【0024】
本実施形態においては動画記録スイッチを押下することで、動画の記録開始・停止を行うが、切り替えスイッチ等の他の方式によって記録開始・停止を行っても構わない。
【0025】
動画記録スイッチ等により動画の記録が指示されると、S301では、AF信号処理部204がAF領域算出処理を行いS302へ進む。AF領域算出処理は、撮像面上のどの領域から焦点検出に用いる信号を取得するかを設定する処理である。
【0026】
S302では、AF信号処理部204が焦点検出処理を行い、S303へ進む。焦点検出処理では、撮像面位相差式の焦点検出により、デフォーカス量及び信頼性情報を取得する。デフォーカス量は、前述の一対の像信号に基づく像ずれ量に基づいて検出する。本実施形態のデフォーカス量は、フォーカスレンズ103を至近方向と無限方向のいずれに、どれだけ駆動するよう制御すれば良いかを示す情報である。信頼性情報は、像ずれ量がどれだけ信頼できるのかを表わす指標である。信頼性は、像信号A、Bの2像の一致度fnclvl(以下、2像一致度と呼ぶ)と相関変化量の急峻性によって定義する事ができる。撮像面位相差式の焦点検出処理の詳細は、例えば特開2015-87704号公報に説明されている。
【0027】
S303では、ユーザが設定したフォーカスレンズ103の応答性設定を、カメラ制御部212がフォーカスレンズ103の駆動を制御するために参照する処理である。
【0028】
撮影設定の1つである応答性設定では、ユーザは例えばカメラのメニュー画面(不図示)において、撮影時のフォーカスレンズ103の駆動の応答性を選択することができる。応答性は、フォーカスレンズ103の駆動のレスポンスの速さの程度であり、応答性を示す指標の1つが、フォーカスレンズ103を駆動するまでの時間である応答時間の長短である。応答時間が長いほど、応答性は低く、応答時間が短いほど、応答性が高い。本実施形態の応答性設定では一例として、+3~-3の7段階から選択する。カメラ制御部212は、ユーザが選択した応答性に対応するフォーカスレンズ103の応答時間を参照し、S307の再起動までの時間や、S310の追従モードAF処理において被写体が切り替わった場合の合焦開始までの時間を変更する。
【0029】
S304では、カメラ制御部212が動体判定処理を行う。動体判定処理は、撮影している被写体の光軸方向の移動があるかをカメラ制御部212が判定する処理である。詳細は
図8を用いて後述する。
【0030】
S305では、設定すべきフォーカスモードをカメラ制御部212が判定する処理である。詳細は、
図9、
図10を用いて後述する。
【0031】
S306はS305で決定したフォーカスモードがデフォルトであるか否かをカメラ制御部212が判定し、デフォルトである場合は、S307に遷移する。
【0032】
S307はカメラ制御部212が行うAF再起動判定の処理である。詳細は
図4を用いて後述する。
【0033】
S306でフォーカスモードがデフォルトでない場合、S308に遷移する。
【0034】
S308において、フォーカスモードがピント送りモードであるとカメラ制御部212が判定した場合は、S309に遷移する。S309は、ピント送りモードのAF処理を行うようカメラ制御部212が制御する。詳細は、
図5を用いて後述する。S308でフォーカスモードがピント送りモードでない場合、S310に遷移する。S310では、追従モードのAF処理を行う。詳細は、
図11を用いて後述する。なお、本フローは、動画撮影を停止する指示があるまで繰り返し実行される。
【0035】
[フォーカスモードの概要]
各サブフローについて説明する前に、
図10を用いて、本実施形態の各フォーカスモードの概要を説明する。本実施形態のフォーカスモードには、大きく分けて「デフォルトモード」「ピント送りモード」「追従モード」の3つのモードがある。
図10(A)は各フォーカスモード間の関係を示す図である。
図10(B)は各フォーカスモードのその種類と特徴を示した図である。
【0036】
各フォーカスモードの特徴について簡単に説明する。デフォルトモード(第1のモード、合焦停止モード)は、合焦停止時に他のフォーカスモードから遷移するモードである。
【0037】
ピント送りモード(第3のモード)は、フォーカスレンズ103の駆動速度と、フォーカスレンズ103を駆動する際の応答時間や駆動速度を、ユーザの指定に応じて設定し、当該設定に従って駆動するモードである。
【0038】
追従モード(第2のモード、焦点調節モード)は、被写体として動体が検出された際に、動体に追従した制御をさせるフォーカスモードであるため、フォーカスレンズ103の駆動速度は動体に合わせた速度に設定する。本実施形態では、動体に合わせたフォーカスレンズ103の駆動制御の一例として、カメラ制御部212は検出されたデフォーカス量に基づいてフォーカスレンズの駆動速度を可変に制御する。検出されたデフォーカス量が相対的に大きい場合は小さい場合と比較して、より速くフォーカスレンズを駆動するようカメラ制御部212が制御する。
【0039】
これらのフォーカスモードの遷移を、
図10(A)を用いて説明する。デフォルトモードにおいて、動体判定により被写体が動体であると判定されると、追従モードに遷移する(1005)。また、ピント送りモードにおいて、動体判定により被写体が動体であると判定された場合も、追従モードに遷移する(1004)。
【0040】
追従モードにおいて、被写体が変更されたと判定された場合は、ピント送りモードに遷移する(1003)。
【0041】
デフォルトモードから、動体判定では被写体が動体ではないと判定され、かつ、デフォーカス量が合焦範囲を超えたと判定された場合(AF再起動)にはピント送りモードに遷移する(1002)。
【0042】
ピント送りモード又は追従モードで、合焦停止判定により合焦したと判定された場合には、デフォルトモードに遷移する(1001,1006)。
【0043】
[動体判定処理]
次に、S304における動体判定処理について、
図8を用いて説明する。S801ではS302で算出したデフォーカス量をカメラ制御部212が取得する。また、カメラ制御部212はレンズ制御部106を介してフォーカスレンズ103の現在のレンズ位置を取得する。
【0044】
S802では、S801で取得したデフォーカス量と現在のレンズ位置から目標レンズ位置を算出する。この計算は、下記の式を用いる。
駆動量[パルス]=デフォーカス量[mm]÷レンズ敏感度[パルス/mm] (1)
目標レンズ位置[パルス]=現在レンズ位置[パルス]+駆動量[パルス] (2)
【0045】
この計算は、撮像素子201の撮像面でのボケ量(ここではデフォーカス量)をフォーカスレンズ103のレンズの駆動量に変換するものの一例である。フォーカスレンズ103の目標レンズ位置が算出できれば、上記の計算以外の算出方法でも良い。
【0046】
なお、被写体位置と対応するフォーカスレンズ103の位置が同じであっても、撮影条件によって算出されるデフォーカス量にはバラつきが発生する。このため、フォーカスレンズ103の目標レンズ位置の計算には、算出された実際の値としてのデフォーカス値と、3回分のデフォーカス量を平均したものの2つの値を用意する。また、フォーカスレンズ103の目標レンズ位置は実際の値と平均値の2パターンを算出する。
【0047】
S803では、フォーカスレンズ103の目標レンズ位置(実際の値/平均値)の無限方向または至近方向への連続性をカメラ制御部212が検出する。本実施形態では、無限側の方向をプラス方向、至近側の方向をマイナス方向とした場合に、無限方向/至近方向に連続して何回増加/減少したかをカウントする。
【0048】
S804では、連続回数の閾値を設定する処理である。本実施形態では、10回以上と設定することとする。
【0049】
S805は、連続回数が閾値を超えたか否かを判定する処理であり、閾値を超えた場合はS806に進み、そうでない場合は、S807に進む。
【0050】
S806は、被写体が動体であると判定された(動体判定がされた)場合の処理であり、動体判定フラグをオンにして、処理を終了する。一方、S807は動体判定がされなかったとき、または、追従モードに既に遷移している場合の処理であり、動体判定フラグをオフにして、処理を終了する。
【0051】
[フォーカスモード判定]
図9を用いて、フォーカスモードの判定処理の説明を行う。S901では、初期化済みか否かをカメラ制御部212が判定する。初期化されていない場合は、S902でフォーカスモードをピント送りモードに設定し、S903に進む。そうでない場合は、S902を経ずにS903に進む。なお、初期化処理は、撮影モードなどが切り替わった際に、その都度行う処理とする。
【0052】
S903では、フォーカスモードがデフォルトモードか否かの判定をカメラ制御部212が行い、デフォルトモードであった場合は、S904に進み、そうでない場合は、S909に進む。
【0053】
S904では動体判定フラグの有無をカメラ制御部212が判定し、動体判定フラグがオンであれば、S905に進み、フォーカスモードを追従モードに設定し制御を終了する。
【0054】
動体判定フラグがオンではない場合は、S906に進み、合焦停止判定フラグの有無をカメラ制御部212が判定する。合焦フラグがオフの場合はS907に進み、フォーカスモードをピント送りモードに設定し制御を終了する。そうでない場合は、S908でフォーカスモードをデフォルトモードに設定し制御を終了する。
【0055】
S909では、ピント送りモードかの判定をカメラ制御部212が行い、ピント送りモードである場合は、S910に進み、そうでない場合は、S915に進む。S910では、動体判定フラグの有無を判定し、動体判定フラグがオンであれば、S911に進み、フォーカスモードを追従モードに設定し制御を終了する。そうでない場合は、S912に進み、合焦停止判定フラグの有無をカメラ制御部212が判定し、合焦フラグがオフの場合はS913に進み、フォーカスモードをピント送りモードに設定し制御を終了する。そうでない場合は、S914でフォーカスモードをデフォルトモードに設定し制御を終了する。
【0056】
S915では、追従停止判定フラグの有無をカメラ制御部212が判定し、追従停止判定フラグがオフの場合はS916に進み、フォーカスモードを追従モードに設定し制御を終了する。そうでない場合は、S917でフォーカスモードをデフォルトモードに設定し制御を終了する。
【0057】
[AF再起動判定]
次に、
図3のS306でフォーカスモードがデフォルトモードであるとカメラ制御部212が判定した場合に行われるS307のAF再起動判定について、
図4のフローチャートを用いて説明する。AF再起動判定は、合焦してフォーカスレンズを停止している状態から、再度フォーカスレンズを駆動するかどうかの判定をカメラ制御部212が行う処理である。
【0058】
S401では算出したデフォーカス量が所定値より小さいかどうかをカメラ制御部212が判断し、所定値未満である場合はS402へ進み、所定値以上である場合はS404へ進む。S401で設定するデフォーカス量の閾値は、主被写体が変わったときには再起動が行いやすく、主被写体が変わっていないときには再起動が不用意にかかりにくくすることを考慮した値とする。本実施形態では一例として、主被写体のボケが見えるようになる焦点深度の1倍を設定する。
【0059】
S402では算出した信頼性が所定より高い値かどうかを判断し、高い値を示す場合はS403へ進み、低い値を示す場合はS404へ進む。S402で設定する信頼性の閾値は、例えばデフォーカス方向を信頼するのが困難なほど信頼性が低い値を、主被写体が変わったと見なす値として設定する。このようにS401、S402で設定する閾値を用いて主被写体が変わったか否かを判断している。
【0060】
S403ではAF再起動カウンタをリセットし、S405へ進む。S404ではAF再起動カウンタを加算し、S405へ進む。上述したように、デフォーカス量が所定より大きい、または信頼性が所定より低い場合には、撮影している主被写体が変化している可能性がある為、S404でAF再起動カウンタを加算し、AFを再起動する準備を行う。検出したデフォーカス量が所定値未満であり、信頼性も高い状態を維持している場合は継続してフォーカスレンズを停止させておくためにS403でAF再起動カウンタをリセットする。
【0061】
次にS405では、AF再起動閾値を設定してS406へ進む。S405のAF再起動閾値設定は、S303で決定した応答時間を閾値としてカメラ制御部212が設定する。
【0062】
S405でAF再起動閾値を設定した後に進むS406では、AF再起動カウンタがAF再起動閾値以上かどうかを判断し、該当する場合はS407へ進み、該当しない場合は処理を終了する。S407では、合焦停止フラグをオフにし、AF再起動を行い、フォーカスレンズ駆動を再開するようカメラ制御部212が制御して処理を終了する。
【0063】
S406でAFの再起動をするにあたって、S404で加算したAF再起動カウンタがS405で設定した閾値より大きいかどうかをカメラ制御部212が判断する。
【0064】
[ピント送りモードのAF処理]
次に
図3のS309のAF処理について
図5のフローチャートを用いて説明する。ピント送りAF処理は、合焦停止していない状態でのフォーカスレンズの駆動及び、合焦停止の判定を行う処理である。
【0065】
S501では、デフォーカス量が焦点深度内であり、かつ信頼性が所定より良い値を示しているかどうかを判断し、この条件に該当する場合はS502へ進み、そうでない場合はS503へ進む。本実施形態では、S501で用いる閾値を焦点深度の1倍としているが、必要に応じて大きく設定したり、小さく設定したりしても構わない。
【0066】
S502では、カメラ制御部212が合焦停止フラグをオンにし、処理を終了する。
【0067】
S503では、カメラ制御部が速度制御モードを判定し、S504に進む。なお、速度制御モード判定処理については、
図12を用いて後述する。
【0068】
S504では、レンズ駆動速度設定を行い、S505に進む。なお、レンズ駆動速度設定処理については、
図6を用いて後述する。
【0069】
S505では、レンズ駆動を行い、制御を終了する。なお、レンズ駆動量設定処理には関しては、
図7を用いて後述する。
【0070】
[速度制御モードの概要]
まず、速度制御モードの概要について、
図15を用いて説明する。
【0071】
図15は、速度制御モード変化とデフォーカス量の変化のグラフである。縦軸が、デフォーカス量、横軸が時間である。
【0072】
速度制御モード(速度制御パターン)は下記の3つがある。
・加速制御モード
・等速制御モード
・減速制御モード
【0073】
1501は加速制御の継続時間(加速時間)、1502は等速制御の期間(等速時間)、1503は減速制御の期間(減速時間)を表している。1504は、レンズ駆動によるデフォーカス量の変化を表している。デフォーカス量が0の場合、合焦状態であることを意味している。
【0074】
上記の制御モードで、レンズの制御を行うために、下記5つの制御パラメータを使用している。
(i) 加速時間
(ii) 加速曲線
(iii)等速速度
(iv) 減速曲線
(v) 減速開始デフォーカス量
【0075】
図15は、上記のパラメータが、レンズのデフォーカス量の変化に対して、どのように影響するかを図示している。レンズ駆動において、重要となるのは、減速時間と等速時間と加速時間のバランスであり、減速時間が他の2つよりも比較的に長くなるように設定することが望ましい。
【0076】
次に、上記3つの速度制御モードの状態遷移について、
図16を用いて説明する。
【0077】
1601は、レンズの停止状態を示している。停止状態は、AF開始指示(1602)により加速制御モード(1603)に遷移する。加速制御モードは、閾値以上の時間経過(1604)により、等速制御モード(1605)に遷移する。等速制御モードは、デフォーカス量が閾値以下(1606)であれば、減速制御モード(1607)に遷移する。減速制御モードは、デフォーカス量が合焦範囲内(1608)に入っていれば、停止(1601)に遷移する。上記の説明したように、加速制御から、等速制御に遷移する場合は、時間をトリガに状態を遷移させ、等速制御から、減速制御に遷移する場合は、デフォーカス量をトリガに状態遷移をさせる。
【0078】
本来であれば、デフォーカス量をトリガに状態遷移を行うことが望ましい。しかし、AF開始時には、合焦までの距離が遠くボケていることがあるため、コントラストが低くなり、デフォーカス量が取得できない場合がある。仮に、デフォーカス量が取得できた場合であっても、デフォーカス量の取得の有無で加速制御の時間が変わってしまうと、レンズ制御が不安定な印象を与えてしまう。よって、加速制御の状態遷移は時間で管理することが望ましい。
【0079】
一方、減速制御は、合焦付近でのみ実行される制御であるため、ボケが比較的少なく、デフォーカス量が取得できることから、デフォーカス量による状態遷移を行う。
【0080】
以上説明したように、時間とデフォーカス量による状態遷移を行うことにより、被写体に寄らず、安定したAF制御が可能になる。
【0081】
[速度制御モード設定]
次に
図5のS503の速度制御モード判定について、
図12のフローチャートを用いて説明する。
【0082】
S1201では、速度制御に必要なパラメータを設定し、S1202に進む。速度パラメータ設定については、
図13を用いて説明する。S1202では、加速制御モードの可否を判定し、S1203に進む。加速制御モードの可否判定については、
図14を用いて後述する。S1203では、加速制御モードが必要か否か(要否)を判定し、必要である場合は、S1204に進み、必要でない場合は、S1207に進む。S1204では、加速時間を取得し、S1205に進む。S1205では、加速時間はS1303にて設定された閾値(所定時間)を超えているかを判定し、超えていない場合は、S1206に進む。超えている場合は、S1207に進む。
【0083】
S1206では、速度制御モードを加速制御モードに決定し、制御を終了する。S1207では、デフォーカスの信頼性が所定値αより悪いかを判定し、悪くない場合は、S1208に進み、悪い場合は、S1209に進む。
【0084】
S1208では、デフォーカス量を取得し、S1210に進む。
【0085】
S1209では、無限端までのデフォーカス量を取得し、S1210に進む。S1207~S1209の処理は、デフォーカスが取得できないような被写体の場合でも、減速制御を開始できるようにした特徴的な処理であり、
図22を用いて後述する。
【0086】
S1210では、取得したデフォーカス量が減速開始デフォーカス量の閾値以下であるかを判定し、以下である場合は、S1212に進み、以下でない場合は、S1211に進む。
【0087】
S1211では、速度制御モードを等速制御モードに決定し、制御を終了する。S1212では、速度制御モードを減速制御モードに決定し、制御を終了する。
【0088】
[デフォーカスが取得できない場合の減速制御]
次に、S1207~S1209の処理について、
図22を用いて説明する。
【0089】
図22は、デフォーカスが取得できない場合の減速制御の図である。縦軸が、デフォーカス量、横軸が時間である。
【0090】
2200は、理想的なデフォーカスの変化である。2201は、減速開始デフォーカス量を示している。2202は、レンズ端からのデフォーカス量が減速開始デフォーカス量と同じになる位置を示している。2203は、実際にデフォーカスが取得できる位置を示している。2204は、合焦位置を示している。2205は、レンズ端を示している。減速開始デフォーカス量に到達した場合に、デフォーカスが取得できるような被写体(コントラストが高い)であれば、2201に到達したときに、減速を開始できる。そのため、十分な減速時間が確保できる。しかし、デフォーカスが取得できないような被写体(コントラストが低い)の場合、例えば、2203のように、合焦位置2204付近でしかデフォーカスが取得できないと、十分な減速時間が確保できずに合焦してしまう。
【0091】
そこで、2202のように、レンズ端からのデフォーカス量が、減速開始デフォーカス量と一致した場合に、減速を開始することで、減速時間を確保できる。
【0092】
これにより、無限位置にコントラストが低い被写体がいるようなシーンにおいて効果がある。従来は、十分な減速ができないまま合焦停止していたが、レンズ端からのデフォーカス量を利用することで、従来よりも、合焦位置からある程度の至近側の位置から減速制御を開始することが可能になる。それにより、減速を開始してから停止までのレンズ制御において、すっとピントが合焦状態に移り変わる滑らかなフォーカス送り、見る人が心地よく感じるスムーズなAF動作を実現することができる。
【0093】
[速度制御のパラメータ設定]
次に
図12のS1201の速度制御のパラメータ設定について、
図13のフローチャートを用いて説明する。S1301では、焦点距離を取得し、S1302に進む。焦点距離として本実施形態ではレンズ制御部106を介して、ズームレンズ101から取得できるズームレンズの位置を取得する。S1302では、カメラ制御部212から速度メニューを取得し、S1303に進む。速度設定は、ユーザは例えばカメラのメニュー画面(不図示)において、撮影時のフォーカスレンズ103の駆動の速度を選択することができる。速度設定を変更することにより、フォーカスレンズ103の速度が変化し、加速時間、減速制御の時間などが変化し、合焦までの時間が変化する。
【0094】
以下、S1303~1307は、速度パラメータの設定処理の説明である。
【0095】
S1303では、第一のパラメータである加速時間を設定する処理を行い、S1304に進む。なお、第一のパラメータである加速時間設定については、
図18を用いて、後述する。S1304では、第二のパラメータである加速曲線を設定する処理を行い、S1305に進む。なお、第二のパラメータである加速曲線設定については、後述する。S1305では、第三のパラメータである等速速度を設定する処理を行い、S1306に進む。なお、第三のパラメータである等速速度設定については、
図19を用いて、後述する。S1306では、第四のパラメータである減速曲線を設定する処理を行い、S1307に進む。なお、第四のパラメータである減速曲線を設定する処理については、
図20を用いて、後述する。
【0096】
S1307では、第五のパラメータである減速開始のデフォーカス量を設定する処理を行い、パラメータ設定を終了する。なお、第五のパラメータである減速開始のデフォーカス量を設定する処理については、
図21を用いて、後述する。
【0097】
[制御パラメータのゲイン設定]
上記説明したパラメータは、焦点距離と速度メニューによってのみ、値が変化する。絞りやコントラストなどによって変化させていないことが特徴的である。
【0098】
まず、
図17を用いて、速度メニューによるゲインの変化を説明する。横軸が速度メニュー設定(+2~-7)であり、縦軸は、ゲインを示している。図からも分かるように、速度設定が速いとゲインが大きくなり、速度設定が低いとゲインは小さくなる。ゲインは、高速側と比較し、低速側の方を細かく設定しているのが特徴的である。
【0099】
[第一のパラメータ:加速時間を設定]
図18を用いて、加速時間ACCEL_TIMEの設定方法について説明する。横軸が速度設定メニューであり、縦軸は加速時間である。
【0100】
加速時間は、速度メニューによって、変化するパラメータである。速度メニュー設定の値が大きいと、加速時間が短くなり、値が小さいと加速時間は長くなる。なお、加速時間の変化の割合は、
図17の速度メニューのゲインを、基準の設定に対してかけることで変化させている。
【0101】
実際の制御では、加速時間のテーブルをあらかじめ作っておき、速度メニューからデータを参照し、加速時間ACCEL_TIMEを設定する。本実施形態の場合、速度を
図18のように設定したが、これは、一例であり、これに限ったものではない。
【0102】
[第二のパラメータ:加速曲線を設定]
加速曲線は、加速制御における速度の変化量(加速度ACCEL_SPD)によって決まる設定値である。
【0103】
加速度は、下記の式によって求める。
加速度ACCELSPD[mm/s2]=等速速度CONST_SPD[mm/s]/加速時間ACCEL_TIME[s] (3)
【0104】
実際に設定する速度は、下記の式によって求める。
設定速度SPD[mm/s]=加速経過時間ACCEL_TIME_P[s]×加速度ACCELSPD[mm/s2]” (4)
【0105】
本実施形態の場合、等速速度を加速時間で除算することで、一定の割合で増加するような加速度に設定したが、これは、一例であり、これに限ったものではない。
【0106】
[第三のパラメータ:等速速度を設定]
図19を用いて、等速速度CONST_SPDの設定方法について説明する。横軸が焦点距離であり、縦軸はレンズの駆動速度(等速速度)である。等速速度は、速度設定メニューと焦点距離によって変化する。1901が速度設定が+2のときのグラフであり、1902が速度設定が-7のときのグラフである。この等速速度の変化の割合は、
図17の速度メニューのゲインを、基準の設定に対してかけることで変化させている。等速速度は焦点距離によって変化し、広角側では遅く、望遠側では早く設定している。1903は焦点距離がある距離以上で、等速速度に上限の固定値を設定していることを意味している。この理由は、レンズの駆動速度には限界があるため、レンズの駆動速度の範囲内で収まるように設定している。
【0107】
1904は焦点距離がある距離以下で、等速速度に下限の固定値を設定していることを意味している。この理由は、等速速度を遅くしすぎてしまうと、合焦までの時間がかかってしまうため、レンズ駆動の滑らかさと合焦時間のバランスを重視し、下限を設定している。
【0108】
実際の制御では、等速速度CONST_SPDのテーブルをあらかじめ作っておき、速度メニューと焦点距離からデータを参照し、等速速度CONST_SPDを設定する。
【0109】
[第四のパラメータ:減速曲線を設定]
図20を用いて、減速曲線の設定方法について説明する。減速曲線の係数DECEL_PARAMは、速度メニューによって、変化するパラメータである。速度メニュー設定の値が大きいと、減速曲線の係数は小さくなり、値が小さいと減速曲線の係数は大きくなるように設定する。なお、減速曲線の係数の変化の割合は、
図17の速度メニューのゲインを、基準の設定に対してかけることで変化させている。
【0110】
実際の制御では、減速曲線の係数のテーブルをあらかじめ作っておき、速度メニューからデータを参照し、減速曲線の係数DECEL_PARAMを設定する。
【0111】
減速曲線の係数DECCEL_PARAMを使用した設定速度の算出は下記の式で行う。
設定速度SPD[mm/s]=デフォーカス量[mm]/(制御周期[s]×減速曲線の係数DECEL_PARAM) (5)
【0112】
このように、算出されたデフォーカス量を、減速曲線の係数DECEL_PARAMで除算することで、合焦までの距離に応じて、設定速度が減少し、滑らかな減速曲線になる
【0113】
本実施形態の場合、算出されたデフォーカス量を減速曲線の係数で除算することで、減速曲線を設定したが、これは、一例であり、これに限ったものではない。
【0114】
[第五のパラメータ:減速開始デフォーカス量を設定]
図21を用いて、減速開始デフォーカス量DECEL_THの設定方法について説明する。減速開始デフォーカス量は、下記の式で算出する。
【0115】
減速開始デフォーカス量DECEL_TH[um]=等速速度CONST_SPD[um/s]×(制御周期[s]×減速曲線の係数DECEL_PARAM) (6)
減速開始のデフォーカス量は、撮像面位相差の測距性能に影響されるため、できるだけ小さい値の方が望ましいが、小さい値に設定すると減速時間が短くなってしまうので、レンズ駆動の滑らかさが失われてしまう。減速開始デフォーカス量は、等速速度と減速曲線の係数に依存するパラメータであるため、等速速度と減速曲線の係数を調整し、レンズ駆動が滑らかに行われるように調整する必要がある。
【0116】
また、デフォーカス量が取得できたことをトリガに減速を開始する制御が一般的ではある。しかしながら、この制御の場合、被写体のコントラストに応じて、デフォーカス量が取得できる範囲が異なるため、AF制御(合焦制御)が安定的ではなくなる。よって、減速開始デフォーカス量は、コントラストが低い被写体でもデフォーカス量が取得できるような値に設定することで、AF制御の安定性を向上させている。
【0117】
[減速時間と加速時間の調整]
レンズ駆動を滑らかに行わせるためには、減速時間と加速時間のバランスが重要である。上記のパラメータから、加速時間と減速時間を算出し、加速時間<減速時間になるようなパラメータを設定することが望ましい。
【0118】
減速時間DECEL_TIMEは、下記の方法で算出できる。
【0119】
まず、減速速度で駆動した場合の合焦までの残りデフォーカス量は、下記の式で求まる。
【0120】
合焦までの残りデフォーカス量DEF_REMAIN[um]=減速開始デフォーカス量[um]-(制御周期[s]×減速速度[um/s]) (7)
次に、合焦までの残りデフォーカス量DEF_REMAIN[um]を用いて、
合焦までの残りデフォーカス量DEF_REMAIN′[um]=合焦までの残りデフォーカス量DEF_REMAIN[um]-(制御周期[s]×減速速度[um/s])
を再帰的に算出する。
【0121】
上記の合焦までの残りデフォーカス量DEF_REMAIN′[um]が0になる制御回数が減速時間DECEL_TIMEとなる。
【0122】
加速時間は、S1303で設定した加速時間ACCEL_TIMEを参照する。
【0123】
上記の時間が、加速時間ACCEL_TIME<減速時間DECEL_TIMEとなっていない場合は、各パラメータの調整を行う。
【0124】
さらに、減速曲線と加速曲線を比較したときに、加速曲線よりも、減速曲線の傾きが緩やかになるように各パラメータの調整を行うことも望ましい。
【0125】
[加速制御モードの可否判定]
次に
図12のS1202の加速制御モードの可否判定について、
図14のフローチャートを用いて説明する。この一連の制御は、ユーザがレンズ駆動の滑らかさよりも合焦時間を優先しているかを判定し、加速制御を省くことでユーザの狙い通りのレンズ制御を実現するための処理である。
【0126】
S1401では、等速速度を取得し、S1402に進む。等速速度CONST_SPDは、S1305にて設定された値を取得する。
【0127】
S1402では、等速速度CONST_SPDが閾値以上かを判定し、閾値未満の場合は、S1403に進み、そうでない場合はS1412に進み、加速制御は不必要と判断し、制御を終了する。本実施形態では、閾値を速度メニューが0のときの等速速度と設定している。
【0128】
なお、S1401~S1402の処理は、例えば、メニュー設定の+1や+2などの等速速度が速い場合に有効になる。これは、ユーザがレンズ駆動の滑らかさよりも合焦時間を優先している可能性が高いためである。
【0129】
S1403では、加速制御モードの可否判定のデフォーカス量を算出する処理を行い、S1404に進む。加速制御モードの可否判定のデフォーカス量は、S1307にて設定された減速開始デフォーカス量DECEL_THを取得する。
【0130】
S1404では、AF開始時のデフォーカス量が、加速制御モードの可否判定のデフォーカス量(減速開始デフォーカス量DECEL_TH)以上かを判定し、閾値以上の場合は、S1405に進む。そうでない場合はS1412に進み、加速制御は不必要と判断し、制御を終了する。
【0131】
なお、S1403~S1404の処理は、被写体までの距離の変化が小さいシーンにおいて効果がある。この理由は、デフォーカスの変化が小さい場合に加速制御から開始すると、すぐに、減速制御に遷移するため合焦までに時間がかかるからである。つまり、被写体を変更した場合、応答性が悪いような印象をユーザに与えてしまう可能性がある。
【0132】
S1405では、レンズ駆動の反転を検出する処理を行い、S1406に進む。レンズ駆動の反転は、デフォーカス量の符号が反転したか否かを検出する。
【0133】
S1406では、レンズ駆動の反転制御の有無を判定し、反転がない場合は、S1407に進む。反転がある場合はS1412に進み、加速制御は不必要と判断し、制御を終了する。
【0134】
なお、S1405~S1406の処理は、レンズの合焦動作中に、駆動方向とは逆の方向に被写体のピント位置が変更になった場合において効果がある。この理由は、レンズ駆動の反転時に、加速制御から開始すると合焦までに時間がかかるからである。つまり、被写体が変更になった場合、応答性が悪いような印象をユーザに与えてしまう可能性がある。
【0135】
S1407では、動体判定の結果を取得し、S1408に進む。動体判定の結果は動体判定フラグの結果を参照する。
【0136】
S1408では、被写体は動体かを判定し、動体と判定されなかった場合には、S1409に進む。動体の場合はS1412に進み、加速制御は不必要と判断し、制御を終了する。なお、S1407~S1408の処理は、被写体が動体のときに効果がある。この理由は、被写体が動体なので、レンズ駆動時に、加速制御から開始すると合焦までに時間がかかるからである。つまり、動体の速度が速い場合に、加速制御中は、被写体に合焦できないため、動体に対する応答性が悪いような印象をユーザに与えてしまう可能性がある。本実施形態のように被写体が動体であるという被写体情報に基づいて加速制御の要否を判定することで、動体に対する応答性が保たれる。
【0137】
S1409では、顔・追尾状態の結果を取得し、S1410に進む。顔・追尾状態の結果は顔検出部216、追尾処理部217によって検出された結果を取得する。
【0138】
S1410では、被写体は顔・追尾かを判定し、顔・追尾被写体と判定されなかった場合には、S1411に進み、加速制御モードは必要だと判定し、制御を終了する。顔・追尾被写体の場合はS1412に進み、加速制御は不必要と判断し、制御を終了する。
【0139】
なお、S1409~S1410の処理は、被写体が顔・追尾被写体のときに効果がある。この理由は、被写体が顔・追尾被写体の場合は、動体と同じく、被写体の速度が速い場合には、加速制御中に、被写体に合焦できないためである。本実施形態のように被写体が顔・追尾被写体であるという被写体情報に基づいて加速制御の要否を判定することで、顔・追尾被写体に対する応答性が保たれる。
【0140】
[レンズ駆動速度設定]
次に
図5のS504のレンズ駆動速度設定について、
図6のフローチャートを用いて説明する。
【0141】
S601では、フォーカスモードがピント送りモードであるかをカメラ制御部212が判断し、ピント送りモードである場合はS602へ進み、そうでない場合はS609へ進む。
【0142】
S602では、速度制御モードが、加速制御モードかをカメラ制御部212が判断し、加速制御モードの場合は、S603へ進み、そうでない場合はS605へ進む。
【0143】
S603では、加速経過時間ACCEL_TIME_Pを取得しS604へ進む。
【0144】
S604では、加速制御モードの速度設定を行い、制御を終了する。加速制御モードの速度は、加速経過時間ACCEL_TIME_Pと速度メニューから、S1304にて算出される設定速度SPDを設定する。
【0145】
S605では、速度制御モードが、等速制御モードかをカメラ制御部が判断し、等速制御モードの場合は、S606へ進み、そうでない場合はS607へ進む。
【0146】
S606では、等速制御モードの速度設定を行い、制御を終了する。等速制御モードの速度は、S1305において設定された等速速度CONST_SPDを設定する。
【0147】
S607では、デフォーカス量を取得しS608へ進む。
【0148】
S608では、減速制御モードの速度設定を行い、制御を終了する。減速制御モードの速度は、S1306において算出された設定速度SPDを設定する。
【0149】
S609では、フォーカスモードが追従モードのときの速度設定を行い、制御を終了する。追従モードのときの速度設定は、動体に追従させるために、速度設定は動体の速度に一致した速度を設定する。
【0150】
[レンズ駆動量設定処理]
次に
図5のS505のレンズ駆動量設定処理について
図7のフローチャートを用いて説明する。
【0151】
S701ではフォーカスモードがピント送りモードか判断し、ピント送りモードである場合は、S702へ進み、ピント送りモードでない(追従モードである)場合は、S707へ進む。
【0152】
S702では、速度制御モードが加速制御モードであるかを判定し、加速制御モードである場合は、S703に進み、そうでない場合はS705に進む。
【0153】
S703では、デフォーカス量から駆動方向を設定し、S704に進む。駆動方向の設定は、デフォーカス量から被写体の方向(至近/無限)を判定し、駆動方向を設定する。
【0154】
加速制御開始時には、被写体の方向が分かっていれば良く、合焦位置を特定できるような信頼性の高いデフォーカス量は必要ない。
【0155】
なお、低コントラスト被写体など、デフォーカス量の信頼性が低く駆動方向が判定できない場合は、至近方向に駆動させる至近優先方式や、現在のレンズ位置とレンズの無限端/至近端を比較し、距離が長い方に駆動させても良い。
【0156】
S704では、デフォーカス量を基に判定された駆動量、または、駆動方向を用いて、レンズ駆動を行い、レンズ駆動処理を終了する。
【0157】
S705では、速度制御モードが等速制御モードであるかを判定し、等速制御モードである場合は、S703に進み、そうでない場合はS706に進む。
【0158】
S706では、速度制御モードが減速制御モードの駆動量を設定し、S704へ進む。減速制御モードの駆動量は、デフォーカス量から合焦位置までの駆動量を算出する。
【0159】
減速制御開始時には、被写体の合焦位置を特定する必要がある。なぜならば、被写体の合焦近傍にレンズが駆動しているため、合焦位置を通り越さないように、レンズの目標位置を設定する必要がある。
【0160】
S707では、デフォーカス量から被写体の駆動量を予測して設定し、S704へ進む。
【0161】
[追従モードAF処理]
続いて
図11を用いて、追従モードAF処理の説明を行う。追従モードAF処理は、追従モード中のAF処理である。
【0162】
S1101は、追従停止判定処理である。この処理は、追従の停止を判定する処理であり、デフォーカス量の変化から追従被写体が停止したかの判定を行う。本発明の効果とは関係がないため、詳細は、特許文献1の
図14、
図15、
図16を参照することとし、ここでは説明を省略することとする。
【0163】
S1102において、追従停止か否かをカメラ制御部212が判定する。追従停止である場合は、S1104に進み、追従停止フラグをオンし、本フローの処理を終了するようカメラ制御部212が制御する。そうでない場合は、S1103に進み、追従停止フラグをオフにし、S1105に進む。
【0164】
S1105では、S504と同様のレンズ駆動速度設定を行い、S1106では、S505と同様のレンズ駆動量設定処理を行うようカメラ制御部212が制御して、本フローの処理を終了する。
【0165】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0166】
103 フォーカスレンズ
201 撮像素子
204 AF信号処理部
212 カメラ制御部