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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】爪やすり
(51)【国際特許分類】
   A45D 29/04 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
A45D29/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023178401
(22)【出願日】2023-10-16
【審査請求日】2023-10-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001454
【氏名又は名称】株式会社貝印刃物開発センター
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日向 紘平
(72)【発明者】
【氏名】石川 慎二
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第203986612(CN,U)
【文献】独国特許出願公開第102007060897(DE,A1)
【文献】中国実用新案第2211739(CN,Y)
【文献】特開昭62-057512(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0319276(KR,Y1)
【文献】中国実用新案第202552643(CN,U)
【文献】特開平09-308522(JP,A)
【文献】米国特許第02540625(US,A)
【文献】米国特許第04683898(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D29/04-29/14
B23D67/00-71/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面(2)および該表面の反対面となる裏面(3)を有し、相対する二組の二辺で構成された四つの辺(4a~4d)および該四つの辺によって構成される四つの角部(5a~5d)を有した板状部材(1)により構成され、
前記板状部材のうち前記四つの辺によって囲まれる内側に前記表面と前記裏面を貫通する指入れ穴(6)が形成されていると共に、前記表面と前記裏面の少なくとも一方には、前記相対する二組の二辺のうちの一組の二辺それぞれに沿い、かつ、前記四つの角部を含むようにやすり部(7、7a~7d)が形成されており、
前記板状部材は、前記相対する二組の二辺のうち一方の組の二辺(4a、4c)が前記板状部材の中心(O)を通る第1直線(L1)を対称線として線対称とされていると共に、前記相対する二組の二辺のうち他方の組の二辺(4b、4d)も前記中心を通り前記第1直線に直交する第2直線(L2)を対称線として線対称とされ、かつ、前記一方の組の二辺の方が前記他方の組の二辺よりも長く、前記第1直線に沿う方向が長手方向、前記第2直線に沿う方向が短手方向とされており、
前記指入れ穴は、前記第1直線に沿う方向を長軸、前記第2直線に沿う方向を短軸とする楕円形状とされていて、
前記やすり部は、前記一方の組の二辺のうちの一辺(4a)の両側に位置する両角部(5a、5d)に繋がって形成された部分(7a、7c)と、前記一方の組の二辺のうちの他の一辺(4c)の両側に位置する両角部(5b、5c)に繋がって形成された部分(7b、7d)とを有している、爪やすり。
【請求項2】
前記四つの角部における各角部は、R形状とされている、請求項1に記載の爪やすり。
【請求項3】
前記四つの辺は、それぞれが各辺の両端よりも内側の方が相対する二辺同士の間隔が広くなる曲線とされている、請求項1に記載の爪やすり。
【請求項4】
前記四つの辺がそれぞれR形状とされていると共に、前記四つの角部もR形状とされていて、前記四つの辺のR形状の曲率半径よりも前記四つの角部のR形状の曲率半径の方が小さくされており、
前記四つの角部における各角部は、該各角部のうちR形状とされた部分の両端位置での各接線が交差する角度が鈍角となっている、請求項に記載の爪やすり。
【請求項5】
前記板状部材は、前記表面が前記他の組の二辺から前記第2直線に近づくほど膨らみ、前記裏面が前記他の組の二辺から前記第2直線に近づくほど凹んだ湾曲形状とされている、請求項1ないしのいずれか1つに記載の爪やすり。
【請求項6】
前記やすり部は、前記表面と前記裏面の両面に形成されており、
前記表面に形成された前記やすり部は、前記一方の組の二辺のうちの一辺に沿う位置に形成された第1やすり部(7a)と、前記一方の組の二辺のうちの他の一辺に沿う位置に形成された第2やすり部(7b)とを有して構成され、
前記裏面に形成された前記やすり部は、前記一方の組の二辺のうちの一辺に沿い、かつ、前記第1やすり部に対向して形成された第3やすり部(7c)と、前記一方の組の二辺のうちの他の一辺に沿い、かつ、前記第2やすり部に対向して形成された第4やすり部(7d)とを有して構成されている、請求項に記載の爪やすり。
【請求項7】
前記第1やすり部と前記第2やすり部とが異なる粗さとされており、
前記第3やすり部と前記第4やすり部とが異なる粗さとされている、請求項に記載の爪やすり。
【請求項8】
前記第1やすり部と前記第3やすり部の粗さが揃えられており、
前記第2やすり部と前記第4やすり部の粗さが揃えられている、請求項に記載の爪やすり。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、爪やすりに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、爪やすりは、やすり部が形成された長板状の本体部の一端にグリップ部が配設された構成とされている(例えば、特許文献1参照)。使用時には、ユーザがグリップ部を手で握り、やすり部を爪に押し当てるか、もしくは爪をやすり部に押し当てることで爪の研削を行う。長板状の本体部は平板もしくは平板を折曲げた湾曲板とされ、表面側にやすり部を設けた構造とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平7-30905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の爪やすりは、長板状の本体部の一端にグリップ部を配設した構造であるため、やすり部やグリップ部が細く、グリップしにくい。このため、使用時に取り回ししにくく、爪からやすり部が外れやすくて的確に爪を削ることが難しい。また、やすり部のうち本体部の長辺に位置する部分では爪の両端の側爪甲縁、つまり皮膚との境界近傍の爪を削ることが困難である。本体部の先端にやすり部を設けたとしてもグリップから離れた先端で削ることになるのに加えて尖った先端で削ることになるので、やすり部が爪の周囲の肉に当たって引っ掛り、爪の細部まで的確に削ることが難しい。
【0005】
本開示は、取り回ししやすく、爪の細部まで的確に削ることができる爪やすりを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の爪やすりは、表面(2)および該表面の反対面となる裏面(3)を有し、相対する二組の二辺で構成された四つの辺(4a~4d)および該四つの辺によって構成される四つの角部(5a~5d)を有した板状部材(1)により構成されている。板状部材のうち四つの辺によって囲まれる内側に表面と裏面を貫通する指入れ穴(6)が形成されていると共に、表面と裏面の少なくとも一方には、相対する二組の二辺のうちの一組の二辺それぞれに沿い、かつ、四つの角部を含むようにやすり部(7、7a~7d)が形成されている。また、板状部材は、相対する二組の二辺のうち一方の組の二辺(4a、4c)が板状部材の中心(O)を通る第1直線(L1)を対称線として線対称とされていると共に、相対する二組の二辺のうち他方の組の二辺(4b、4d)も中心を通り第1直線に直交する第2直線(L2)を対称線として線対称とされ、かつ、一方の組の二辺の方が他方の組の二辺よりも長く、第1直線に沿う方向が長手方向、第2直線に沿う方向が短手方向とされている。そして、指入れ穴は、第1直線に沿う方向を長軸、第2直線に沿う方向を短軸とする楕円形状とされていて、やすり部は、一方の組の二辺のうちの一辺(4a)の両側に位置する両角部に繋がって形成された部分(7a、7c)と、一方の組の二辺のうちの他の一辺(4c)の両側に位置する両角部に繋がって形成された部分(7b、7d)とを有している。
【0007】
このような爪やすりとすることで、幅のある外形にでき、使用時に取り回し易く、やすり部を使用して爪を研削する際にヤスリ部が爪から外れにくくできる。また、指入れ穴を設けているため、指入れ穴内に指の一部を入れ、指入れ穴の内壁面に指が接するようにして爪やすりを持つようにすると、グリップし、より安定して爪やすりを持つことができる。よって、取り回しやすく、爪の細部まで的確に削ることができる爪やすりにできる。また、指入れ穴を楕円形のように角部がない形状とすることで、指入れ穴の内周壁に力が加わるように爪やすりを持っても、指に加わる荷重を均等化できる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、四つの角部における各角部は、R形状とされている。このように、四つの角部をR形状とすることで、爪をやすり部で削る際に、角部が皮膚などに引っ掛かることを抑制できるし、四つの角部が尖った状態の場合よりも、皮膚に当たった際の感触を柔らかくすることができる。
【0010】
例えば、請求項に記載したように、四つの辺については、それぞれが各辺の両端よりも内側の方が相対する二辺同士の間隔が広くなる曲線とすることができる。その場合、請求項に記載の発明のように、四つの辺がそれぞれR形状とされていると共に、四つの角部もR形状とされていて、四つの辺のR形状の曲率半径よりも四つの角部のR形状の曲率半径の方が小さくされており、四つの角部における各角部は、該各角部のうちR形状とされた部分の両端位置での各接線が交差する角度が鈍角となる構成とすることができる。
【0011】
請求項に記載の発明では、板状部材は、表面が他の組の二辺から第2直線に近づくほど膨らみ、裏面が他の組の二辺から第2直線に近づくほど凹んだ湾曲形状とされている。
【0012】
このように、爪やすりを湾曲形状として反らせることで、やすり部のやすり面を様々な爪の形に対応した曲面にできる。
【0015】
請求項に記載の発明では、やすり部は、表面と裏面の両面に形成されており、表面に形成されたやすり部は、一方の組の二辺のうちの一辺に沿う位置に形成された第1やすり部(7a)と、一方の組の二辺のうちの他の一辺に沿う位置に形成された第2やすり部(7b)とを有して構成され、裏面に形成されたやすり部は、一方の組の二辺のうちの一辺に沿い、かつ、第1やすり部に対向して形成された第3やすり部(7c)と、一方の組の二辺のうちの他の一辺に沿い、かつ、第2やすり部に対向して形成された第4やすり部(7d)とを有して構成されている。
【0016】
このように、凸面とされる表面と凹面とされる裏面という異なった曲面にやすり部が備えられることになるため、表面側と裏面側とで異なる種類のやすり部を備えられる。このため、削りたい爪の場所に応じてやすり部の種類を使い分けして、より細やかに爪を削ることができる。
【0017】
請求項に記載の発明では、第1やすり部と第2やすり部とが異なる粗さとされており、第3やすり部と第4やすり部とが異なる粗さとされている。このように、表面と裏面の両方に2つずつ粗さの異なるやすり部を設ける場合、凸面とされる表面と凹面とされる裏面それぞれに2種類の粗さのやすり部を構成でき、表裏で合計4種類の粗さのやすり部を構成できる。このため、4種類のやすり部を使い分けて、より細やかに爪を削ることができる。
【0018】
また、やすり部の目の粗さが粗細2種類と凹凸面2種類の組合せで4種類のやすりがあり、更に角部が使用可能で、計5種類のやすりの使い訳が可能となる。そして、これらがハンドルも不要で厚さも小さく、コンパクトな形状に納まっている。このため、複数種類のやすりを準備することなく、これ1つで爪の手入れが可能となる。例えば、化粧ポーチに入れて携帯する場合もコンパクトで携帯しやすくできる。
【0019】
請求項に記載の発明では、第1やすり部と第3やすり部の粗さが揃えられており、第2やすり部と第4やすり部の粗さが揃えられている。このように、表裏で同じ側に位置するやすり部の粗さを揃えることで、表裏のどちらで削る場合にも、同じ側に粗さが揃ったやすり部があることを認識して爪を削れる。このため、爪やすりを裏返して削るときにやすり部の粗さの確認を行わなくても容易に爪を削ることができる。
【0020】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示の第1実施形態にかかる爪やすりを示した図であり、(a)は正面図、(b)は(a)の右側面図、(c)は背面図である。
図2図1(a)に示す爪やすりを右斜め前方から見た斜視図である。
図3】爪やすりの使用方法を説明する図である。
図4】爪やすりの使用方法を説明する図である。
図5】爪やすりの使用方法を説明する図である。
図6】爪やすりと刀の鐔を重ねて並べた図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下に説明する他の実施形態を含めて、各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0023】
(第1実施形態)
以下、図1図5を参照して本開示の第1実施形態にかかる爪やすり1について説明する。
【0024】
〔爪やすりの構成〕
図1図2に示す爪やすりは、ユーザが手に持って使用するもので、手足の指における爪の研削に用いられる。
【0025】
なお、本明細書に添付した図面中に、X軸、Y軸およびZ軸を示している。図1に示すように、爪やすりを正面から見たときの上下方向をX軸、X軸と直交する爪やすりの左右方向をY軸、X軸およびY軸に対して直交する爪やすりの厚み方向をZ軸と呼ぶ。また、爪やすりのうち図1(a)に表されている側を表側、図1(c)に表されている側を裏側とする。
【0026】
図1(a)~(c)に示すように、爪やすりは、湾曲した一部品の金属製の板状部材1により構成されている。板状部材1は、図1(a)に示すように表側の一面となる表面2と、図1(c)に示すように表面2の反対面であり裏側の一面となる裏面3を有している。そして、板状部材1は、正面から見て、相対する二組の二辺で構成された四辺4a~4dおよび該四辺4a~4dによって構成される四つの角部5a~5dを有する略四角形で構成されている。なお、ここでいう略四角形とは、各辺4a~4dのうちの隣り合う辺同士の間に角部5a~5dが構成されている形状を意味し、各辺4a~4dは直線でなくても良く、角部5a~5dも、直線同士が交差する角になっていなくても良い。
【0027】
具体的には、四辺4a~4dのうちX軸方向に伸びる一方の組の相対する二辺4a、4cは、Y軸方向に伸びる他方の組の相対する二辺4b、4dよりも長くされている。このため、板状部材1は、二辺4a、4cの方が二辺4b、4dよりも長くなる扁平の略四角形とされている。また、二辺4a、4cは、共に湾曲した曲線とされており、互いに、二辺4a、4cの両端よりも内側の方が略四角形の外側に向って、つまりY軸方向に沿って膨らむ曲線とされている。同様に、二辺4b、4dは、共に湾曲した曲線とされており、互いに、二辺4b、4dの両端よりも内側の方が略四角形の外側に向って、つまりX軸方向に沿って膨らむ曲線とされている。すなわち、相対する二辺4a、4cと相対する二辺4b、4dは、両端よりも内側の方が相対する二辺同士の間隔が広くなる曲線とされている。
【0028】
ここで、板状部材1が構成する略四角形の中心Oを通るX軸方向に平行な直線を第1直線L1とし、中心Oを通るY軸方向に平行な直線を第2直線L2とする。二辺4a、4cは、第1直線L1を対称線とした線対称とされ、第2直線L2との交点をそれぞれ点Pa、点Pcとして、点Pa、点Pcから辺4bや辺4dに近づくに連れて、第1直線L1との最短距離が徐々に近づく曲線とされている。本実施形態の場合、二辺4a、4cは、例えば第2直線L2と交差する内側部分とその両側の各角部5a~5dに繋がる両端部とで曲率半径を変化させた曲線とされ、内側部分が曲率半径80.0mm、両端部が曲率半径100mmとされたR形状、つまり円弧状の曲線とされている。
【0029】
一方、二辺4b、4dも、第2直線L2を対称線とした線対称とされ、第1直線L1との交点をそれぞれ点Pb、点Pdとして、点Pb、点Pdから辺4aや辺4cに近づくに連れて、第2直線L2との最短距離が徐々に近づく曲線とされている。本実施形態の場合、二辺4b、4dは、例えば曲率半径41.5mmとされたR形状とされている。
【0030】
そして、二辺4a、4cの方が二辺4b、4dよりも長くされていることから、第1直線L1と二辺4b、4dとが交差する点Pbから点Pdまでの寸法の方が、第2直線L2と二辺4a、4cとが交差する点Paから点Pcまでの寸法より大きくなっている。つまり、板状部材1は、第1直線L1に沿うX軸方向を長手方向、第2直線L2に沿うY軸方向を短手方向とする略四角形状とされている。例えば、板状部材1は、中心Oを通る位置において、長手方向の寸法が55.0mm、短手方向の寸法が40.0mmとされる。また、板状部材1の厚みは0.8mmとされ、一定厚とされている。
【0031】
四つの角部5a~5dは、各辺4a~4dのうち隣り合う辺同士の間に構成され、各辺4a~4dよりもさらに曲率が大きくされた曲線で構成されていて丸まっている。各角部5a~5dは、R形状とされ、各辺4a~4dが構成するR形状の曲率より大きな一定曲率で構成されている。本実施形態の場合、各角部5a~5dは、例えば曲率半径3.25mmとされたR形状、つまり円弧状とされている。なお、ここでは各角部5a~5dを一定曲率のR形状で構成しているが、必ずしも一定曲率でなくても良い。例えば、各角部5a~5dのうち隣り合う各辺4a~4dとの境界位置と、その境界位置よりも内側の部分とで曲率が変化していても構わない。また、辺4b、4dについても同様であり、第1直線L1と交差する内側部分とその両側の各角部5a~5dに繋がる両端部とで曲率半径が変化しても構わない。逆に、辺4a、4cについては、一定曲率とされていても良い。
【0032】
また、各辺4a~4dが外側に膨らむ曲線とされているため、各角部5a~5dは鋭角ではなく鈍角になっている。
【0033】
ここで、一般的に、四角形を含む多角形の角度は、角部を構成する隣り合う二辺のなす角度とされる。本実施形態でも、各角部5a~5dの角度は、各角部5a~5dを構成する隣り合う二辺のなす角度を意味するが、隣り合う二辺のうちの各角部5a~5dとの境界位置に接線を引き、その接線同士のなす角度で示される。各角部5a~5dは、隣り合う二辺が直接交差されることで構成されても良いし、本実施形態のように各辺4a~4dよりもさらに曲率が大きくされたR形状で構成されても良い。各角部5a~5dがR形状とされる場合でも、隣り合う二辺のうち各角部5a~5dとの境界位置に引いた接線が交わる角度が鈍角であれば、各角部5a~5dが鈍角で構成されていると言える。その場合、隣り合う二辺のうち各角部5a~5dとの境界位置に引いた接線よりも各角部5a~5dの輪郭が中心O側に位置した状態となる。
【0034】
また、板状部材1には、四つの辺4a~4bによって囲まれる内側に、表面2と裏面3を貫通する指入れ穴6が形成されている。指入れ穴6は、第1直線L1に沿う方向を長軸、第2直線L2に沿う方向を短軸とする楕円形状とされている。例えば、指入れ穴6の長径は36mmとされ、短径は17mmとされている。指入れ穴6の長半径と短半径の比、つまり楕円率については、指入れ穴6の両側に位置する2つの辺4a、4cの曲率に合せて設定してあり、楕円の輪郭が2つの辺4a、4cの形状に近付けられている。このため、板状部材1のうち2つの辺4a、4bと指入れ穴6との間に位置する部分は、第2直線L2から離れるほど徐々に幅が大きくなるものの、ほぼ同幅になっている。
【0035】
なお、板状部材1のうちの外側面や指入れ穴6の内壁面は、板状部材1の厚み方向となるZ軸方向において丸くされており、爪やすりを持ちやすくできると共に、持ったときの感触を柔らかくできる端面になっている。また、指入れ穴6の内壁面は、丸みがなくZ軸方向で直線になっていてもいい。
【0036】
さらに、図1(b)および図2に示すように、板状部材1は、表面2が2つの辺4b、4dから中心Oを通る第2直線L2に向うほど膨らみ、裏面3が2つの辺4b、4dから第2直線L2に向うほど凹んだ湾曲形状とされている。つまり、板状部材1は、表面2が凸面、裏面3が凹面となるように反っている。図1(b)に示すように、爪やすりを紙面右側から見たときに、板状部材1の板厚の中心での曲率半径が例えば80.0mmとなるように爪やすりを反らせてある。なお、本実施形態では、第1直線L1を通る断面において、板状部材1が構成する曲面の曲率半径を一定として爪やすりを反らせるようにしているが、板状部材1の全域において曲率半径を一定としなくても良い。例えば、板状部材1のうち第2直線L2のから近い側、例えば指入れ穴6が形成されている範囲内は一定の曲率半径で構成し、2つの辺4b、4dに近づくほど曲率半径を大きくしたり、XY平面に近付けたりしても良い。
【0037】
そして、このような形状とされた板状部材1の表面2と裏面3のうちの相対する一組の辺4a、4cに沿って、4つの角部5a~5dを含むようにやすり部7が形成されている。やすり部7のうち表面2において、辺4aに沿う部分を第1やすり部7a、辺4cに沿う部分を第2やすり部7b、裏面3において、辺4aに沿う部分を第3やすり部7c、辺4cに沿う部分を第4やすり部7dという。
【0038】
第1、第3やすり部7a、7cは、表面2と裏面3それぞれにおいて、板状部材1のうち指入れ穴6と辺4aとの間に位置する部分の全域に形成されている。さらに、第1、第3やすり部7a、7cは、第2直線L2上における指入れ穴6と辺4aとの間の寸法を幅寸法として、ほぼ同幅のまま指入れ穴6の外側にも形成され、辺4b、4dに至るように形成されている。
【0039】
第2、第4やすり部7b、7dも、表面2と裏面3それぞれにおいて、板状部材1のうち指入れ穴6と辺4cとの間に位置する部分の全域に形成されている。さらに、第2、第4やすり部7b、7dも、第2直線L2上における指入れ穴6と辺4cとの間の寸法を幅寸法として、ほぼ同幅のまま指入れ穴6の外側にも形成され、辺4b、4dに至るように形成されている。
【0040】
このため、第1やすり部7aと第2やすり部7bは、やすり面が凸面で、X軸に沿う方向を長手方向として、指入れ穴6を挟んだY軸方向の両側に並べて配置されたレイアウトになる。また、第3やすり部7cと第4やすり部7dは、やすり面が凹面で、X軸方向に沿う方向を長手方向として、指入れ穴6を挟んだY軸方向の両側に並べて配置されたレイアウトになる。
【0041】
表面2側に形成された第1やすり部7aと第2やすり部7bは、それぞれ異なる番手、つまり異なる粗さのやすり面によって構成されている。裏面3側に形成された第3やすり部7cと第4やすり部7dも、それぞれ異なる番手のやすり面によって構成されている。そして、指入れ穴6に対して同じY軸方向の一方側の位置、つまり同じ辺4aに沿って形成された第1やすり部7aと第3やすり部7cは同じ番手のやすり面によって構成されている。同様に、指入れ穴6に対して同じY軸方向の他方側の位置、つまり同じ辺4cに沿って形成された第2やすり部7bと第4やすり部7dは同じ番手のやすり面によって構成されている。第1やすり部7aおよび第3やすり部7cのやすり面と第2やすり部7bおよび第4やすり部7dのやすり面の粗さについては任意に設定可能である。例えば、前者を後者よりも粗さが粗目のやすり面とすることで爪の粗研削用、後者を前者よりも粗さが細目のやすり面とすることで爪の仕上げ研削用とすることができる。これら第1~第4やすり部7a~7dを構成するやすり面については、例えばエッチング処理によって形成できる。また、例えば機械加工などの他の方法でやすり面を形成してもよい。
【0042】
なお、表面2のうち第1やすり部7aと第2やすり部7bとの間に位置する部分や、裏面3のうち第3やすり部7cと第4やすり部7dとの間に位置する部分は、鏡面のとされているが、文字や模様などを付けるスペースとして活用しても良い。
【0043】
〔爪やすりの使用方法〕
続いて、上記のように構成された爪やすりの使用方法について説明する。爪やすりに備えられた第1~第4やすり部7a~7dのどれを使用しても爪を研削できるが、ここでは一例を挙げて説明する。
【0044】
(1)爪甲を研削する場合
図3は、爪やすりを右手10で持ち、紙面向こう側の第3やすり部7cを使用して左手11の爪12を研削する場合を示している。上記したように、爪やすりに備えられた第1~第4やすり部7a~7dは、略四角形の板状部材1のうちの長辺となる2つの辺4a、4cに沿って形成されている。このため、図3に示すように、爪やすりを右手10で持って左手11の爪12を研削する場合に、爪甲12aの研削を行うのであれば、例えば略四角形の板状部材1のうちの短辺となる2つの辺4b、4dを指先で摘まむようにして持つ。このとき、使用する第3やすり部7cが右手10の外側に配置されて左手11側を向くように持つと使い勝手が良い。
【0045】
そして、図3における紙面向こう側の第3やすり部7cに爪甲12aを押し当て、右手10を動かし、図中破線矢印で示したように第3やすり部7cの長手方向に沿って爪やすりをストロークさせる。これにより、やすり面が凹面で構成された第3やすり部7cを用いて爪甲12aを粗研削することができる。
【0046】
粗研削を行う際に、凹面とされた第3やすり部7cだけでなく凸面とされた第1やすり部7aも使用したい場合には、第2直線L2を中心軸として爪やすりを回転させ、右手10で爪やすりを上下入れ替えて持つ。そして、第3やすり部7cを使用する場合と同様に、第1やすり部7aに対して爪甲12aを押し当てつつ、第1やすり部7aの長手方向に沿って爪やすりをストロークさせる。これにより、やすり面が凸面で構成された第1やすり部7aを用いて爪甲12aを粗研削することができる。
【0047】
一方、第4やすり部7dを使用して仕上げ研削を行いたい場合には、図3に示す状態から中心Oを中心軸として爪やすりを180°時計回りに回転させ、右手10で爪やすりを上下入れ替えて持つ。そして、第4やすり部7dに対して爪甲12aを押し当てつつ、第4やすり部7dの長手方向に沿って爪やすりをストロークさせる。これにより、やすり面が凹面で構成された第4やすり部7dを用いて爪甲12aを仕上げ研削することができる。さらに、第2やすり部7bを使用して仕上げ研削を行いたければ、第4やすり部7dを使用していた際に対して、第2直線L2を中心軸として爪やすりを回転させて使用すれば良い。
【0048】
なお、爪先は指13から外側に向けて膨らんだ凸の曲線になっていることが多く、爪12の幅全体を削る場合は裏面3側の凹面を使って効率よく削り、爪12の一部だけを削りたい場合は表面2の凸面を使うことにより部分的に削ることができる。ユーザの意図に合わせて使い分けることができる。
【0049】
(2)側爪甲縁を研削する場合
図4は、爪やすりを右手10で持ち、第4やすり部7dのうちの角部5cに位置する部分を使用して左手11の爪12の側爪甲縁12bにおける爪先側を研削する場合を示している。図4に示すように、側爪甲縁12bを研削する場合には、例えば角部5cを用いて爪12を研削する。すなわち、右手10の外側に辺4c、4dを向け、内側に辺4aを向けるようにして爪やすりを持つ。このとき、指入れ穴6に人差し指13aの一部を入れ、指入れ穴6の内壁面に人差し指13aが接し、親指13bが辺4aの近傍に接するようにして爪やすりを持つようにすると、グリップし、より安定して爪やすりを持つことができる。また、側爪甲縁12bを研削する際に角部5cに荷重を掛けやすくなる。さらに、中指13cの一部も指入れ穴6に入れ、人差し指13aや親指13bと共に爪やすりを掴むようにして、より力強く安定して爪やすりを持つことができる。側爪甲縁12bの中でも、特に図4で示された位置、つまり爪先側の皮膚と接している部分と接していない部分の境界位置が負荷点12cとなる。この負荷点12cで爪12を削る際に、角部5cを用いて削ることで、安定して爪やすりを持って使用することができ、側爪甲縁12bの爪先側の細かな所も安定して削ることができる。
【0050】
そして、側爪甲縁12bに第4やすり部7dのうちの角部5c近辺の部分を押し当て、側爪甲縁12bに沿って角部5cを細かく摺動させることで側爪甲縁12bを研削できる。これにより、側爪甲縁12bという研削し難い場所についても、角部5cに形成されている第4やすり部7dを用いて研削することができる。特に、本実施形態の爪やすりでは、角部5cを鈍角で構成しているため、角部5cが側爪甲縁12bの周囲の肉に当たっても引っ掛からず、爪12の細部まで的確に削ることが可能になる。
【0051】
さらに、本実施形態の爪やすりでは、角部5cが丸まっている。このため、角部5cが側爪甲縁12bの周囲の肉に当たっても滑らかに移動でき、より円滑に側爪甲縁12bを研削することが可能となる。
【0052】
また、図5は、爪やすりを右手10で持ち、第2やすり部7bのうちの角部5cに位置する部分を使用して左手11の爪12の側爪甲縁12bにおける爪先側を研削する場合を示している。この図に示すように、側爪甲縁12bを研削する場合には、第2やすり部7bのうちの角部5cを使用して爪12を研削しても良い。その場合、例えば右手10の外側に辺4dを向け、内側に辺4bを向けるようにして爪やすりを持つ。そして、指入れ穴6に人差し指13aの一部を入れ、指入れ穴6の内壁面に人差し指13aが接し、親指13bが辺4cの近傍に接するようにして爪やすりを持つようにすると、グリップし、より安定して爪やすりを持つことができる。このようにしても、図4の場合と同様の効果が得られる。
【0053】
なお、ここでは角部5cを用いて側爪甲縁12bを研削する場合を例に挙げたが、爪やすりを持ち替えれば、他の角部5a、5b、5dを用いて爪12の細部の研削を行うこともできる。そして、このように、各角部5a~5dを用いる場合も、第1~第4やすり部7a~7dという粗さと面の凹凸の異なる4種類のやすり面を適宜選択できるため、より細やかに爪12を研削することが可能となる。
【0054】
また、爪やすりの持ち方については任意であり、図4図5に示す持ち方に限らず、例えば角部5dから離れた辺4aに人差し指13aが接し、指入れ穴6の内壁面に親指13bの一部が入るようにして爪やすりを持つこともできる。さらに、指入れ穴6を使用せずに、辺4aと辺4cを掴むようにして爪やすりを持つこともできる。ユーザがより使い勝手の良い持ち方で爪やすりを持てば良いが、指入れ穴6を設けているため、より多様な持ち方が可能になると共に、指入れ穴6を使用してより爪12に近い位置で爪やすりを持つことが可能となり、より細かな作業が可能となる。
【0055】
〔爪やすりによる効果〕
(1)本実施形態の爪やすりは、相対する二組の二辺で構成された四つの辺4a~4dによって構成される四つの角部5a~5dを有する略四角形の板状部材1で構成されている。このように、略四角形状の爪やすりとすることで、幅のある外形にでき、使用時に取り回し易く、やすり部7を使用して爪12を研削する際に、やすり部7が爪12から外れにくくできる。また、本実施形態の爪やすりは、やすり部に別途ハンドル部を設ける構造ではないため、コンパクトな形状で持ちやすい。さらに、ハンドル付きの細長い爪やすりの場合は、使用時にやすり面から爪が外れてしまう場合があるが、本実施形態の爪やすりでは外れることがなく安定して使用することができる。
【0056】
また、爪やすりは、幅がある分、従来のような長板状の細い形状のものと比べて、使用時に力を加えても曲がりにくくできると共に、やすり部7が爪12から外れにくいため大きなストロークで研削することが可能となる。
【0057】
(2)また、爪やすりのうち各辺4a~4dに囲まれる内側に、表面2と裏面3を貫通する指入れ穴6を備えるようにしている。このように、指入れ穴6を設けているため、指入れ穴6内に指13の一部を入れ、指入れ穴6の内壁面に指13が接するようにして爪やすりを持つようにすると、グリップし、より安定して爪やすりを持つことができる。勿論、爪やすりを使用する際に、ユーザが4つの辺4a~4dと表面2および裏面3だけに指13が触れるようにして爪やすりを持つようにしても良いが、爪やすりの使用の仕方に応じて、指入れ穴6を利用することでグリップを向上させられる。
【0058】
また、板状部材1の各辺4a~4dの内側に指入れ穴6を備えた構造としているため、中心Oに対して爪やすりをどのような角度で持つ場合にも、指入れ穴6を使用してグリップを向上することが可能である。特に、指入れ穴6を楕円形としているため、爪やすりをどのような角度で持っても、指13が指入れ穴6に触れやすくなり、グリップさせやすくできる。
【0059】
さらに、指入れ穴6を楕円形のように角部がない形状としているため、指入れ穴6の内周壁に力が加わるように爪やすりを持っても、指13に加わる荷重を均等化できる。また、指入れ穴6を辺4a、4cに沿った形状にできるため、指入れ穴6を挟んだ両側において爪やすりの幅を確保できると共に、長手方向においてやすり部7の幅をほぼ同幅にできる。このため、指入れ穴6の両側において、やすり部を広い幅で構成できると共にほぼ同幅で辺4a、4cに反って伸びる形状にでき、爪やすりをより魅力的なデザインにできる。
【0060】
(3)爪やすりを構成する板状部材1の表面2と裏面3の少なくとも一方において、相対する二組の二辺のうちの一組の二辺となる辺4a、4cに沿い、かつ、鈍角とされた四つの角部5a~5dを含むようにやすり部7を形成している。
【0061】
この角部5a~5dのやすり部7を用いれば、側爪甲縁12bなどを削る場合に、やすり部7のうちの辺4a、4cに位置している部分で削るよりも、やすり部7が指13の肉に当たり難くなる。このため、側爪甲縁12bを含めて、爪12の外縁などの細かな場所についても良好に研削できるし、やすり部7が指13の肉に当たるという不具合を解消することもできる。また、四つの角部5a~5dが直角や鋭角とされる場合には、角部5a~5dのやすり面積が少なくなるため、やすり部7から爪がずれやすくなるし、広い範囲で均等に爪12を削ることが難しいが、四つの角部5a~5dを鈍角としているため、角部5a~5dのやすり面積を広くでき、爪12の細部を削りつつも広い範囲で均等に削ることが可能となる。
【0062】
また、四つの角部5a~5dをR形状としている。このため、爪12をやすり部7で削る際に角部5a~5dが爪12の周囲の皮膚などに引っ掛かることをさらに抑制できるし、四つの角部5a~5dが尖った状態の場合よりも、皮膚に当たった際の感触を柔らかくすることができる。
【0063】
(4)辺4a、4cが第1直線L1を対称線として線対称とされ、辺4b、4dが第2直線L2を対称線として線対称とされている。そして、爪やすりは、表面2が辺4b、4dから第2直線L2に向うほど膨らみ、裏面3が辺4b、4dから第2直線L2に向うほど凹んだ湾曲形状とされている。
【0064】
このように、爪やすりを湾曲形状として反らせることで、やすり部7のやすり面を様々な爪の形に対応した曲面にできる。また、湾曲形状とされることで机上から浮く部分ができるため、爪やすりを平坦な形状とする場合と比較して、机上から爪やすりを持ちやすくすることが可能となる。
【0065】
そして、爪やすりを湾曲形状としつつ、表面2に第1やすり部7aと第2やすり部7bを備えると共に、裏面3に第3やすり部7cと第4やすり部7dを備えるようにしている。
【0066】
このようにすれば、凸面とされる表面2と凹面とされる裏面3という異なった曲面にやすり部7が備えられることになるため、表面2側と裏面3側とで異なる種類のやすり部7を備えられる。このため、削りたい爪12の場所に応じてやすり部7の種類を使い分けして、より細やかに爪12を削ることができる。
【0067】
さらに、表面2に形成する第1やすり部7aと第2やすり部7bを異なる粗さで構成している。また、裏面3に形成する第3やすり部7cと第4やすり部7dを異なる粗さで構成している。
【0068】
このように、同じ面に異なる粗さのやすり部7を備えるようにすれば、爪やすりの表裏それぞれでユーザが使用したい粗さのやすり部7を使用して爪12を研削することができる。また、まずは粗さが粗目のやすり部7で粗研削を行い、その後に細目のやすり部7で仕上げ研削を行うこともできる。これにより、すべてを仕上げ研削で行う場合と比べて、仕上げるまでに掛る時間を短縮化することも可能となる。
【0069】
さらに、表面2と裏面3の両方に2つずつ粗さの異なるやすり部7を設ける場合、凸面とされる表面2と凹面とされる裏面3それぞれに2種類の粗さのやすり部7を構成でき、表裏で合計4種類の粗さのやすり部7を構成できる。このため、4種類のやすり部7を使い分けて、より細やかに爪を削ることができる。
【0070】
そして、第1~第4やすり部7a~7dを形成する構成において、同じ辺4aに沿って形成される第1やすり部7aと第3やすり部7cの粗さを揃え、同じ辺4cに沿って形成される第2やすり部7bと第4やすり部7dの粗さを揃えている。このように、爪やすりの表裏で同じ側に位置するやすり部7の粗さを揃えることで、表裏のどちらで削る場合にも、同じ側に粗さが揃ったやすり部7があることを認識して爪を削れる。このため、爪やすりを裏返して削るときにやすり部7の粗さの確認を行わなくても容易に爪12を削ることができる。
【0071】
また、爪やすりは、略四角形状の平板をプレスで湾曲させたのち、やすり部7を形成するためのエッチング処理を施すことで製造される。エッチング処理では、エッチングを行わない場所をマスクした状態で表面粗化のエッチングを行う。このとき、同じ辺4aに沿う第1やすり部7aと第3やすり部7cの粗さを揃え、同じ辺4cに沿う第2やすり部7bと第4やすり部7dの粗さを揃えれば、エッチングを行わない部分をマスクして爪やすりの表裏を裏返すだけで同時にエッチング処理を施せる。例えば、第1やすり部7aと第3やすり部7cを形成する際には、これら以外の部分をマスクしておき、エッチング処理により第1やすり部7aを形成したのち、爪やすりの表裏を裏返せば第3やすり部7cを形成できる。このように、爪やすりの製造工程の簡略化も図ることできる。
【0072】
(5)本実施形態の爪やすりは、略四角形状の板状部材1で構成され、中央に第1直線L1に沿って伸びる指入れ穴6が形成された形状、つまり、図6に示すように刀の鐔100を彷彿させる造形を有する。このため、爪やすりを日本古来の伝統的な造形にやすりとしての機能を統合した意匠性と機能性を兼ね揃えた製品にでき、使用していないときもオブジェとして用いることもできる。さらに、爪やすりを金属製としているため、爪やすりに重厚感と高い剛性を持たせられると共に、さらに刀の鐔100のイメージを持たせることができる。
【0073】
(他の実施形態)
本開示は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0074】
例えば、上記した爪やすりの使用方法は一例を記載したのであり、ユーザの使い勝手の良い方法で使用して構わない。特に、爪やすりは、湾曲面に対してやすり面を設けていることから、様々な角度に調整して爪12を研削することができるため、ユーザが自身の爪12の形状や手の大きさなどに応じて自身に適した方法で使用すれば良い。
【0075】
また、上記実施形態では、4つの角部5a~5dを同じ曲率で構成しているが、異なる曲率としても構わない。例えば、角部5a~5dのうち対角線の関係、もしくは第1直線L1を挟んで対称配置される2つずつを同じ曲率にすることができる。その場合、同じ粗さのやすり部7について2種類の異なる曲率の角部を構成することができる。
【0076】
また、上記実施形態では、指入れ穴6の一例を示したが、指入れ穴6の形状、寸法などについても一例を示したに過ぎない。指入れ穴6の形状については楕円形に限らず、例えば長軸が第1直線L1に沿い、短軸が直線L2に沿う長円形状など、他の形状とされていても良い。なお、指入れ穴6は、指13の一部が入る寸法であれば良く、指13が根元まで入り込む寸法である必要はない。
【0077】
また、第1~第4やすり部7a~7dについては、図1(a)などに示すように、各辺4a~4dよりも爪やすりの内側、つまり表面2および裏面3とそれらを繋ぐ端面との境界から離れるように形成しても良いし、その境界に接するように形成しても良い。第1~第4やすり部7a~7dを各辺4a~4dよりも爪やすりの内側に形成する場合には、角部5a~5dでの研削が可能となるように、表面2および裏面3と端面との境界から第1~第4やすり部7a~7dまでの距離を設定すれば良い。
【0078】
また、上記実施形態では、四つの辺4a~4dについて、それぞれが各辺の両端位置よりも内側の方が相対する二辺同士の間隔が広くなる曲線となるようにした。これに対して、爪やすりを正面から見て、四つの辺4a~4dすべてが直線となるようにしても良いし、一方の相対する二辺を曲線とし、他方の相対する二辺を直線としても良い。
【0079】
さらに、上記実施形態では、四つの角部5a~5dがすべて鈍角となるようにしているが、必ずしもすべてが鈍角でなくても良い。例えば、爪やすりを正面から見て、板状部材1が略菱形や略平行四辺形など、四つの辺4a~4dおよび四つの角部5a~5dを有する他の形状とされていても良い。
【符号の説明】
【0080】
1…板状部材、2…表面、3…裏面、4a~4d…辺、5a~5d…角部、6…指入れ穴、7…やすり部、7a~7d…第1~第4やすり部、10…右手、11…左手、12…爪、12a…爪甲、12b…側爪甲縁、13…指、13a…人差し指、13b…親指、100…鐔、L1…第1直線、L2…第2直線、O…中心
【要約】
【課題】取り回ししやすく、爪の細部まで的確に削ることができる爪やすりを提供する。
【解決手段】表面2および裏面3を有し、相対する二組の二辺で構成された四つの辺4a~4dおよび四つの角部5a~5dを有する略四角形の板状部材1で爪やすりを構成する。四つの辺4a~4dそれぞれが各辺の両端よりも内側の方が略四角形の外側に向って膨らむ曲線とされるようにし、四つの角部5a~5dを鈍角とする。さらに、板状部材1のうち四つの辺4a~4dによって囲まれる内側に表面2と裏面3を貫通する指入れ穴6を形成し、表面2と裏面3における辺4a、4cに沿い、かつ、四つの角部5a~5dを含むようにやすり部7を形成する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6