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特許7406906粘着ロール自動巻きクリーナー、及びこれを用いた玩具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】粘着ロール自動巻きクリーナー、及びこれを用いた玩具
(51)【国際特許分類】
   A47L 25/00 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
A47L25/00 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020024806
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2021129605
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-12-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示日 :令和元年9月7日 展示会名:第63回 高崎市児童生徒発明くふう展 開催場所:群馬県高崎市末広町23-1 高崎市少年科学館 公開者 :久保 晃市 出品内容:出品内容は、展示作品名「巻量自動調整!パタロールカー」であり、2つのリールを用いた粘着ロールクリーナーにおいて、粘着力の低下を捉えて自動的にテープの繰り出し量より巻き取り量を減らすように工夫した展示品である。〔刊行物等〕 展示日 :令和元年10月26日 展示会名:第90回 群馬県創意くふう作品展 開催場所:群馬県前橋市亀里町884番地1 群馬県立群馬産業技術センター 多目的ホール 公開者 :久保 晃市 出品内容:出品内容は、展示作品名「巻量自動調整!パタロールカー」であり、2つのリールを用いた粘着ロールクリーナーにおいて、粘着力の低下を捉えて自動的にテープの繰り出し量より巻き取り量を減らすように工夫した展示品である。
(73)【特許権者】
【識別番号】719008209
【氏名又は名称】久保 哲治
(72)【発明者】
【氏名】久保 晃市
(72)【発明者】
【氏名】久保 哲治
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-327912(JP,A)
【文献】実開昭64-033971(JP,U)
【文献】特開2006-296695(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0084969(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0254017(US,A1)
【文献】米国特許第10154773(US,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0038611(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L25/00-25/12
A47L11/00-11/40
A47L13/00-13/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のリールと、第2のリールと、
前記第1のリールとの間で回転を伝達可能な、第1の回転伝達体を備え、一方向に制動力を有する第1のブレーキユニットと、
前記第2のリールとの間で回転を伝達可能な、前記第1の回転伝達体とは回転数の異なる第2の回転伝達体を備え、一方向に制動力を有する第2のブレーキユニット、または第2のリールが摺動可能な程度の制動力を有するテープ押さえと、
粘着ロールクリーナーの筐体に対して回転可能に支持される支持部を備え、所定の条件において、前記第1のリールの回転数が一方向回転と他方向回転とで異なるように、回転数を調節する第1の制御部を備える巻取量調節部と
を有する粘着ロール制御ユニット。
【請求項2】
前記第1のリールとの間で回転を伝達可能な、第3の回転伝達体を備え、一方向に制動力を有する第3のブレーキユニットと、
前記第2のリールとの間で回転を伝達可能な、前記第3の回転伝達体とは回転数の異なる第4の回転伝達体を備え、一方向に制動力を有する第4のブレーキユニットと、
を有し、
前記第1の回転伝達体に対する前記第2の回転伝達体の回転比と、
前記第3の回転伝達体に対する前記第4の回転伝達体の回転比とは、
大小関係が逆である
請求項1に記載の粘着ロール制御ユニット。
【請求項3】
前記巻取量調節部には、前記支持部を挟んで前記第1の制御部との反対側に第2の制御部を有し、
記巻取量調節部とともに、前記支持部を中心に180度回転可能な、
請求項2に記載の粘着ロール制御ユニット。
【請求項4】
前記第1のリールに装着される第1の粘着テープ巻回体を床面から浮かせたときに、前記第2のリールに装着される第2の粘着テープ巻回体を接地させないように回転抑制部をもつ、
請求項1から3のいずれか一項に記載の粘着ロール制御ユニット。
【請求項5】
前記第1のリールに装着される第1の粘着テープ巻回体と前記巻取量調節部とをそれぞれ接地させた状態において、
前記巻取量調節部は、前記巻取量調節部の回転中心から接地面に下ろした垂線に対して第2のリール側に変曲点を有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の粘着ロール制御ユニット。
【請求項6】
前記第1のリールに装着される粘着テープ巻回体は、床面に近い側から粘着テープを引き出されるように装着される、
請求項1から5のいずれか一項に記載の粘着ロール制御ユニット。
【請求項7】
前記第1のリールと前記第2のリールとの回転方向が異なる、
請求項1からのいずれか一項に記載の粘着ロール制御ユニット。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一項に記載の粘着ロール制御ユニットを有する、
粘着ロールクリーナー。
【請求項9】
前記第2のリールに装着される巻芯に対して粘着面を内向きにして巻かれる粘着テープの裏面に、弾性をもって接するように設けられた前記テープ押さえを有する、
請求項7に記載の粘着ロール制御ユニットを備えた粘着ロールクリーナー。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項に記載の粘着ロール制御ユニットに、
玩具の筐体と、車輪またはボール脚とを設けた
粘着ロールクリーナーを兼ねる玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状に巻回された粘着テープの粘着面を、床やカーペット等に押し当てて転がすことで、塵や髪の毛を付着させて掃除する粘着ロールクリーナーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、掃除に用いる紙テープの粘着面が汚れた際に、使用者が適宜紙テープを破り剥がして、新しい粘着面を出して使う粘着ロールクリーナーがあった。その破り剥がすという手間を省くために、2つ以上のリールを有し、使用している粘着面の粘着力が無くなったときでも、粘着テープを破り剥がさないで連続的に使用できる粘着ロールクリーナーがいくつか考案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、二本の平行なローラ支持軸と巻取ロールとを備え、それぞれの芯軸間に粘着テープを掛け渡すように粘着テープ巻回体を装着した粘着テープロールが開示されている。これによると、同文献における繰出ロールAが掃除に利用され、巻取ロールBが使用済みの粘着テープを収容する構造になっている。これを実現するため、ロールAとBとが回転連動させるための歯車を有している。
【0004】
一方、特許文献2では、複数の支持ローラと粘着テープ巻回体とを備え、一方の支持ローラから他方の支持ローラへとわたるように粘着テープが巻回されており、さらに側板に設けられた支点Sが床に接触することで、前進時と後退時とで床面に接触する粘着テープ巻回体を切り替えるクリーナが開示されている。
【0005】
このような一定距離を往復運動させるクリーナでは、粘着テープのほぼ同じ範囲に粘着力が無くなるほど塵が付着したら、一方向への前進工程が終わったときに、そのまま持ち上げてから、カーペットの掃除開始位置へと下ろして再び前進工程から始めるという動作を行うとことで、まだ塵のついていない新しい粘着テープの部分で掃除をすることが開示されている(特許文献2の段落0021を参照)。
【0006】
さらに、特許文献3には、粘着テープの弛みを防止するため、径の大小が異なる2組のプーリーを備えつつ、スリップ部を有する粘着テープクリーナーが開示されている。
【0007】
特許文献4には、内蔵されている掃除用具が粘着ロールペーパーではなく、ロールブラシである点で本願発明と異なるが、スポーツカーのような外観の筐体を有する、自走式のハンディークリーナーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5836524号
【文献】特開平7-327912号
【文献】特開2011-167324号
【文献】特開2014-213146号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献のいずれにおいても、単に往復運動を繰り返すだけでは、粘着力の低下を捉えて自動的に新しい粘着面に更新することはできない。
本発明の課題は、2つのリールに粘着テープを掛け渡して連続的に使用する粘着ロールクリーナーにおいて、粘着テープの弛みの問題を解消することと、掃除に用いる側の粘着テープの粘着力の低下に応じて自動的に粘着面を更新することができる、粘着ロール自動巻きクリーナーを提供することである。
【0010】
また、使用法が簡単であれば、子供でも扱えるクリーナーへの展開も考えられるので、子供などが遊びながら掃除できるクリーナー兼玩具への適用の可能性も模索する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明にあっては、
第1のリールと、第2のリールと、
前記第1のリールとの間で回転を伝達可能な、第1の回転伝達体を備え、一方向に制動力を有する第1のブレーキユニットと、
前記第2のリールとの間で回転を伝達可能な、前記第1の回転伝達体とは回転数の異なる第2の回転伝達体を備え、一方向に制動力を有する第2のブレーキユニットと、
を有することを特徴とする。
【0012】
好ましくは、前記第1のリールとの間で回転を伝達可能な、第3の回転伝達体を備え、一方向に制動力を有する第3のブレーキユニットと、
前記第2のリールとの間で回転を伝達可能な、前記第3の回転伝達体とは回転数の異なる第4の回転伝達体を備え、一方向に制動力を有する第4のブレーキユニットと、
を有し、
前記第1の回転伝達体に対する前記第2の回転伝達体の回転比と、
前記第3の回転伝達体に対する前記第4の回転伝達体の回転比とは、
大小関係が逆であるように構成するとよい。
【0013】
好ましくは、粘着ロールクリーナーの筐体に対して回転可能に支持される支持部を備え、
所定の条件において、前記第1のリールの回転数が一方向回転と他方向回転とで異なるように、回転数を調節する第1の制御部を備える巻取量調節部を有するとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、2つのリールに粘着テープを掛け渡して連続的に使用する粘着ロールクリーナーにおいて、粘着テープの弛みの問題を解消することができる。掃除に用いるローラ側の粘着テープの粘着力の低下に応じて自動的に粘着面を更新することができるので、粘着力について人が判断することを減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態を示す概略分解図である。
図2】粘着ロール制御ユニットの側面投影図である。
図3図2におけるA-A断面図である。
図4】床面に対する巻取量調節部7の接地角が変わったときの模式図である。
図5】実施例における、原理説明図である。
図6】実施例における、粘着テープ巻回体を取り替えるときの図である。
図7】回転伝達体の変形例である。
図8】一実施形態の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
始めに本発明の技術思想を説明する。次に本発明における各要素およびその原理を説明し、実施例を説明する。
【0017】
特許文献1では、回転連動する繰出ロールAと巻取ロールBとの間に掛け渡した粘着テープの弛みを防止するため、2つの薇を有している。しかし、過剰な張力がかかった際にどのように力を逃がすのかが不明である(同文献の図3であれば、多少の騒音や歯こぼれを許容するなら歯車の空滑りが可能かもしれない。)し、歯車を使っている点でどうしても静粛性が悪いと予想される。
【0018】
一方、特許文献2は、前後往復運動によって粘着面を繰り返し使えるという点では特許文献1と共通しているが、側板に設けられた支点Sが床に接触することで、前進時と後退時とで用いる粘着テープ巻回体を切り替えるところが異なる。
上記切り替えによって、常に進行方向側の粘着テープ巻回体を巻取方向に回転させるため、他方の粘着テープ巻回体はテープを引き出されるようにして強制的に回転する。すなわち、特許文献2に記載の発明は、2つのローラとの間に別途回転動力伝達用の歯車を設けなくてもよいという点で利点があると思われる。
【0019】
また、ブレーキシュー(同文献図5の符号23)というものを有しており、いわゆるワンウェイクラッチのような働きをする。これにより、掃除中の前後の往復運動時に粘着テープの弛みを防止することができる。
【0020】
しかしこの構成では、一方のローラを掃除用にして床等につけ、他方のローラを床に付けないように収容しておくという使い方はできない。また、この構成では、非進行方向側の粘着テープ巻回体が、テープを引き出されるのにまかせて成り行きで回転するだけであって、2つのリール間に渡された粘着テープに強いテンションをかけることはできない。
【0021】
また、特許文献1~2ともに原理的に実現できない事柄として、掃除に用いているローラ側の粘着テープの粘着力の低下を自動的に捉えて粘着面を更新することはできないということが言える。
【0022】
このような、一定距離を往復運動させるクリーナーでは、粘着テープのほぼ同じ範囲に粘着力が無くなるほど塵が付着したら、一方向への前進工程が終わったときに、そのまま持ち上げてから、カーペットの掃除開始位置へと下ろして再び前進工程から始めるという動作を行わなければ、まだ塵のついていない新しい粘着テープの部分で掃除をすることができないからである。
【0023】
すなわち、単に往復運動を繰り返すだけでは、通常は粘着テープの巻き取り量と引き出し量とが同じになるだけであり、自動的に新しい粘着面に更新されるわけではない。
そうすると、使用者が粘着テープの粘着力を判断して、その都度、新しい粘着面に更新するための動作を意識的に行わなければならないということが一つの課題になると言える。
【0024】
また、使用者の行動の癖によっては、逆に粘着力がなくなった古い面を引き出してしまう場合があるし、まだ十分に粘着力があるのに新しい粘着面に更新してしまうという問題も考えられる。
【0025】
従って、特許文献2に記載のクリーナは、粘着テープを自動的に巻き取ってゆくことができると書かれているものの、本当の意味での自動巻きではない。
【0026】
また、特許文献3には、粘着テープの弛みを防止するため、径の異なる2組のプーリーを備えつつ、スリップ部(同文献の図7の符号17等を参照)を有する粘着テープクリーナーが開示されている。
【0027】
この構造であれば、粘着テープ巻回体の巻き始めから巻き終わりまでにおける、第一リールのテープ最外半径および第二リールのテープ最外半径が変化しても対応できると考えられる。また、余分な力がかかった場合にはスリップを生じさせることで不具合を避けることが可能と思われる。
【0028】
ただ、同文献の発明に係るクリーナーを動作させるためには、スリップ部のようにスリップ可能な部分は必須であると思われるが、単にスリップ可能であれば良いわけではなく、一方向に対してのみ空回りしやすい構造がどこかになければ、原理的にはきちんと動作させることが難しいと思われる。
【0029】
そして、同文献においても、単に往復運動を繰り返すだけでは、粘着力の低下を検知して自動的に新しい粘着面に更新することはできない。
すなわち、特許文献1から3を組み合わせても、粘着テープの粘着力の低下を自動的に捉えて粘着面を更新する粘着ロールクリーナーは容易に想到できるものではないと思われる。
【実施例
【0030】
以下、本発明における各要素およびその原理を説明し、実施例を説明する。図1は、一実施形態の概略分解図である。模式的にわかりやすくするため、軸、シャフト等を省略して描いているが、一例としては、図2図3の、第1~3の軸(8,9,10)、及び第1~2の中空シャフト81、91のように構成してもよい。図2は粘着ロール制御ユニットの側面投影図である。図3は、図2におけるA-A断面である。なお、一例として粘着ロール制御ユニットの写真を図8のEに示す。個々のパーツおよび位置関係等については適宜詳述する。
【0031】
(原理説明1:一方向ブレーキユニットの構成)
実施形態を説明するにあたり、本発明に用いられるブレーキユニットの実施形態の一例、およびその原理を説明する。なお、一例としてブレーキユニットの写真を図8のHに示す。
図1の符号3~6は、ブレーキユニットの一実施形態の斜視図である。第1のブレーキユニット3は、第1の回転体31に、帯状体32を巻いた構造をしている。
【0032】
第1の回転体31は、例えばペットボトルキャップの主面中央に直径4.8mmの第1の穴11を空けたものである。第1の回転体31の一実施形態としては、該ペットボトルキャップを用いて説明するが、これに限られることなく、必要な機能を実現できる適当な部材および材質を用いてよい。
【0033】
第1の帯状体32は、前記ペットボトルキャップの側周面の短手方向の幅に近い幅をもった帯状にして、長さは前記ペットボトルキャップの側周面の円周方向における1周分の長さ以上~2周程度とした。
第1の帯状体32の素材は、ティッシュ箱を構成する厚さ0.5mm程度の紙を用いたが、これに限らず、必要な機能を実現する厚さ、幅、長さ、材質であればよく、紙でなくてもよい。
【0034】
第1のブレーキユニット3は、第1の帯状体32の一端を前記ペットボトルキャップの側周面に固定し、湾曲している該側周面の長手方向に沿うように巻いて構造をしている。
例えば、前記第1の帯状体32の一端(以下、固定端と呼ぶ。)を前記側周面に対して1cm程度接着している。前記第1の帯状体32の他端(以下、自由端と呼ぶ。)は固定されておらず、変形可能である。
【0035】
これはブレーキユニットの一例であり、所望の機能を実現できる適当なもので代替してもよい。例えば特許文献2に記載のブレーキシュー等を用いてもよいし、ピニオンギアを用いたワンウェイホイール等に置き換えてもよい。
【0036】
第2~4の回転体41,51,61、および第2~4の帯状体42,52,62も上記と同様に構成してよい。
第2~4のブレーキユニット4,5,6も、第1のブレーキユニット3と同様に構成してよい。
【0037】
(原理説明1の2:ブレーキユニットのメカニズム)
前記ブレーキユニットの動作原理を説明する。図2では、第1のリール1に設けられた第1の被制動部12に、第1のブレーキユニット3を収容している。第1の帯状体32は、図2の紙面に向かって時計回りに巻かれている。第1の帯状体32の自由端は、第1の被制動面13に接している。
【0038】
図2において、第1のブレーキユニット3を図2の紙面に向かって時計回り(以下、特に断りがない限り、この方向を時計回りとし、別の図においても図2の方向との対応関係を考慮して読む。)に回転させると、第1の帯状体32の固定端も時計回りに回転させられる。第1の帯状体32は、内側から広がる。その結果、第1の帯状体32の自由端と被制動面13との接触応力が強くなり、ついには摺動できなくなる。(この状態を、ロックした状態、またはブレーキがかかった状態とも言う。)
【0039】
この現象は、例えば、巻いたカレンダーの内側の紙を広げる方向に滑らせると、紙同士の接触応力が強くなり、限界まで広げるとそれ以上動かすことができなくなることを想像すれば理解しやすい。
【0040】
ここで、第1のブレーキユニット3をさらに時計回りに回転させると、第1のブレーキユニット3の回転動力が第1のリール1に伝わるので、第1のリール1も時計回りに回転する。
このようにして、第1のブレーキユニット3と、第1のリール1とは、回転動力を伝達できる状体になる。
【0041】
なお、第1のブレーキユニット3を時計回りに回転させるのではなく、第1のリール1を反時計周りに回転させる場合であっても、上記同様にロックした状態になる。これは、第1のリールから見れば、第1のブレーキユニット3が相対的に時計回りしているわけであり、視点の問題に過ぎない。しかし、以降の説明においてこの視点は重要であり、誤解や混乱を生じやすいので念のため記しておく。
【0042】
一方、第1のブレーキユニット3を反時計回りに回転させると、固定端も反時計回りに回転し、それに引っ張られて第1の帯状体32が内側に巻かれるため、第1の帯状体32の自由端と第1の被制動面13との接触応力が弱くなり、ロック状態が解除される。
【0043】
ロックが解除された状態で、さらに第1のブレーキユニット3を反時計回りに回転させると、第1の帯状体32の自由端と第1の被制動面13とがほとんど抵抗なく摺動する。すなわち、第1のブレーキユニット3と第1のリールとは回転同期せず、空回りすることになる。
【0044】
この現象は、筒状の賞状ケースに入れた賞状が取り出しづらい時に、賞状の内側を巻くことで紙同士の接触応力が弱くなり、賞状ケースと賞状とが簡単に空回りするようになることを想像すれば理解しやすい。
【0045】
このように、第1のブレーキユニット3は、一方向回転において第1のリール1に回転動力を伝達し、または第1のリール1の回転動力を受けて同期回転するものであり、他方向回転ではロック状態を解除するものである。
【0046】
なお、ブレーキユニットは、いわゆるワンフェイクラッチ等とは異なり、スリップを許容するものであってもよい。例えば、歯車とラッチを組み合わせたワンウェイクラッチの場合、歯が欠ける等しない限り、回転抑制方向へ空回りすることはできない。これに対し、例えば第1の帯状体32を用いた第1のブレーキユニット3の場合、回転抑制方向であっても、一定以上の強い負荷がかかった場合にはスリップ可能にすることができる。
【0047】
また、第1の帯状体32は、長さを調整することで、回転方向が切り替わったときにどの程度の回転でロックがかかるかなどといった遊びを適宜設定することができる。
【0048】
なお、上記は帯状体を用いたブレーキユニットで説明したが、これをピニオンギア、ワンウェイホイール、ワンウェイクラッチ、一方向ブレーキなどに置き換えた場合であっても、一定の負荷がかかったときに空回り可能な構成を設けてスリップ可能にしてもよい。
【0049】
さらには、ブレーキユニットがスリップを許容しない構成であっても、別のところでスリップさせる(例えばゴムベルトが滑るなど。)か、応力を緩和したり逃がしたりすることで不具合を解消できるもの(例えば薇を用いるなど。)を使ってもよい。
【0050】
ただ、本願の原理説明で用いた前記ブレーキユニットであれば、複雑な機構を設けずともこれらの機能をひとまとめで実現できるので、故障が少ない、部品点数が少ない、低コストに提供できるなどといった点で優位性がある。
【0051】
(原理説明2:粘着力自動判定装置、およびメカニズム。)
実施形態を説明するにあたり、粘着テープの粘着力の低下を捉え、これに応じて動作を変更するメカニズムを実現する構成例、およびその原理を説明する。
図2および図4は、一実施形態の側面透視図である。図5は原理説明図である。説明の都合上、図1~4において、紙面に向かって左側を「前」、右側を「後」とする。
【0052】
本発明にかかる粘着ロールクリーナーを床やカーペット等に置いた場合、始めは例えば図2のようになる。符号Gは床面などであり、巻取量調節部7がこれに接している。第3の軸10は、巻取量調節部7と筐体100とに設けられた穴を通っている。巻取量調節部7には、第1の軸8、第2の軸9が設けられている。第1の軸8、第2の軸9は、それぞれ第1のリールの第1の穴11、第2のリールの第1の穴21に通されている。
【0053】
筐体100を、手などを用いて床面側へ押しつけると、その荷重の一部は車輪などに分散されるが、一部は第3の軸10にかかり、さらに巻量調節部7に伝わる。筐体100自体の重さや粘着テープ巻回体の重さなども同様である。そのため巻量調節部7は床面Gに押しつけられる。
【0054】
このとき、手の力でも自然の重力でもよいが、何らかの力によって筐体100が前の方に移動すると、巻取量調節部7は反時計回り(上記で定義した図2の紙面に対する「時計回り」の反対回りであり、他の図面、他の視点でもこれと対応付けて考える。特に断りがない限り、以降も同様とする。)に回転する力を受ける。
【0055】
巻取量調節部7がそのように回転すると、巻取量調節部7に設けられた第1の軸8はこれに伴って下方に変位する力を受け、第1のリール、及び第1の粘着テープ巻回体17も下方へと押される。第1の粘着テープ巻回体17と床面Gとが接した場合、第1の粘着テープ巻回体17はそのまま床面Gへと押しつけられる。
【0056】
粘着テープ巻回体17が床面等に接していない場合、巻取量調節部7は反時計回りに回転する。図4に示すように、巻取量調節部7の一部を構成する第1の制御部72の点Pから点Qまでの辺は、筐体100が床面から所定の距離にあるときに、床面に接するようにカーブしており、どの点から始めても自然に回転する形状であると好ましい(図4において点線で示した、床面に対する仮想の円と、点P、Qを参照。)。
【0057】
なお、これにより、粘着テープの使い始めから使い終わりまで、粘着テープ巻回体の直径の変化に対応することができるので、第1の粘着テープ巻回体17の厚みが減っても所望の動作ができるという効果を有する。
【0058】
さらに、点Qからみて点Pを過ぎた辺については、曲率を小さく変えているが、これは巻量調節部7の回転しすぎを防止する効果を有する。
【0059】
筐体100を床面側に押しつけながら、さらに前方向に押し進めると、巻取量調節部7には反時計回りの回転力がかかり続ける。ここで、巻取量調節部7は実際に回転していなくてもよい。巻取量調節部7に回転力がかかっていることで、支持部71の前側の穴に通された第1の軸8には床面G方向への荷重がかかる。結果的に粘着テープ巻回体17には床面方向への荷重がかかり続ける。
【0060】
図2の場合、粘着テープはS字に装着されているので、筐体100を前方向に動かすと、粘着テープの新しい面を繰り出すようにしながら、かつ、上述のように第1の軸8にかかる荷重により、第1の粘着テープ巻回体17が床面に押しつけられながら回転することになる。このようにすることで、粘着テープを用いて適切に床面等を掃除する機能を実現できる。
【0061】
次に、筐体100を後側に動かす場合を説明する。筐体100の進行方向を前から後ろへ切り替えると、巻量調節部7は時計回りの回転力を受ける。このとき、実際に時計回りに回転するかどうかは、粘着テープの粘着力等の条件による。
【0062】
前述の、筐体100を前方向に動かした場合と逆で、第1の軸には床面から離れる方向に力がかかる。すなわち、第1の粘着テープ巻回体17を床面から引き剥がす方向に力が働く。
【0063】
筐体100をさらに後退させると、粘着テープと床面との接着力が強い場合には、粘着テープが床面から離れることなく掃除を続ける。
【0064】
ここで、第1の粘着テープ巻回体17は、第2の粘着テープ巻回体27に巻かれている使い古しの粘着テープを巻き戻すように動作する。掃除に用いている粘着面の粘着力が弱く、前述の、第1の粘着テープ巻回体17を床面から引き剥がそうとする力に負けた場合、巻取量調節部7は時計回りに回転し、第1の粘着テープ巻回体17は床面から離れる。すなわち、第1の粘着テープ巻回体を巻き戻さずに筐体100を後退させることになる。
【0065】
このような構成で、筐体100を前後に往復運動をさせると、自然に粘着テープの粘着力に応じて新しい粘着面を使うことになる。従来技術と異なり、使用者の癖などで前進と行進の距離が違う場合であっても対応可能である。また、いちいち筐体を持ち上げて初期位置に置いて掃除を再開するといった手間がなく、使用者が粘着ロールペーパーの更新を意識的に行う必要がなくなるという効果が得られる。
【0066】
(リバーシブルについて)
第1の制御部72と同様の形状をした第2の制御部73を、支持部71を挟んで反対側に設けてもよい。これにより、後述するように、粘着テープ巻回体を交換するときに一手間減らせるリバーシブル機構を実現できる。
【0067】
なお、巻取量調節部7の実施例の一つとして、支持部71、第1の制御部72、第2の制御部73を用いて説明したが、これらは別々の部品で作られている必要はなく、機能を実現できる構成であればよい。例えば71~73が一枚で構成される側板であってもよい。
【0068】
(原理説明3:弛み防止機構、およびそのメカニズム)
従来技術の、2つリールを用いた粘着テープ巻取り型の掃除装置をテストしてみたところ、テープの弛みを防止しようとするメカニズムが取り入れられていることはわかったが、テープの弛みを解消しきれず、最後まで安定して使い切れないという問題があることがわかった。
また、弛みが発生する都度、使用者がテープの弛みを解消するようにリールと巻芯とをずらしながら手で巻いてやるとか、粘着力の弱い面をいつまでも使わないようにするなどといったように、操作に特別な気を遣ってやる必要があることに気づいた。
【0069】
我々は、従来技術を鋭意研究した結果、往復運動における前後方向切り替え時にテープ弛みが生じるという問題があることを発見した。さらに、歯車のかみ合わせの遊びや、繰り出し側粘着テープ巻回体の直径と巻き取り側粘着テープ巻回体の直径との差に起因して、前後に往復運動をさせるたびに、粘着テープに弛みが生じてしまうことを発見した。
【0070】
例えば掃除用具にセットしたばかりの粘着テープ巻回体の最外直径は、巻取り側の粘着テープ巻回体の最外直径より大きい。これが、粘着テープが巻き取られていくに従って徐々に直径が変化し、巻き終わり頃には直径の大小関係が逆転する。従って、このような事象を十分考慮していない装置では、使用者が適宜テープの弛みを解消してやる必要があった。
【0071】
そこで、粘着テープ巻回体の直径の変化による弛みにも対応しつつ、前後往復運動の切り替え時の弛みも瞬時に解消するメカニズムを考案した。
【0072】
本願発明における基本的な弛み解消メカニズムを説明する。図3は、図2におけるA-A断面図である。図のように、第1のブレーキユニット3に第1の回転伝達体33を接着している。また、第2のブレーキユニット4に第2の回転伝達体43を接着している。第1の回転伝達体33および第2の回転伝達体43は、ここでは滑車またはプーリーと呼ばれるものを用いている。第1の回転伝達体33と第2の回転伝達体43とには共有のゴムベルトをかけている。
【0073】
今、図2および図3のように、第1のリール1に対して第1のブレーキユニット3が設けられているとき、第1のリール1を前方向に転がすと、第1のブレーキユニット3がロックして、第1の回転伝達体もこれに伴って同方向に回転し、この動力がゴムベルトを通じて第2の回転伝達体43にも伝えられる。
【0074】
第2の回転伝達体43の直径は、第1の回転伝達体33の直径よりも小さいので、第1の回転伝達体に対する第2の回転伝達体43の回転比は大きくなる。回転を続けると、第2の回転伝達体43の回転数は、第1の回転伝達体33の回転数よりも多くなる。すなわち、回転速度は速くなる。その結果、粘着ロールクリーナーを床面に置いた直後や、後退から前進に切り替えた直後などで粘着テープに弛みがあったとしても、その弛みは上記動作によりすぐに解消される。これが一実施形態に係る弛み解消手段の原理である。
【0075】
ここでは、回転伝達体33と回転伝達体43との直径の差を用いて説明したが、これに限られない。例えば間に別のプーリーを介するなどして、結果的に回転伝達体33と回転伝達体43との直径を同じにしてあっても、最終的な回転比が異なるのであれば利用可能である。また、回転比は、回転速度比、ギア比、変速比などといった別の言葉に置き換えても説明できるものであり、技術思想としては回転比のみに限られない。
【0076】
なお、後退時にも、上記と逆の回転で弛みを解消する機構を入れればよいが、互いの動作が悪影響しないようにする工夫が必要である。一つの方法としては、後退時に第2のリールに弱いブレーキをかけることである。リールを完全に止めるのではなく、ある程度の力で摺動可能な程度とする。
具体的には、第1の粘着テープ巻回体17が古いテープを巻き取りながら後退するときに、第2の粘着テープ巻回体27に巻かれている粘着テープを引き出そうとする力に負けて、成り行きで第2のリールが回転する程度の制動力を加えればよい。後述の実施形態でも説明するが、例えば図1のテープ押さえ101のようなものを用いてもよい。テープ押さえの一例としての写真を図8のGに示す。
【0077】
(第1の実施形態)
第1の実施形態は、
第1のリール1と、第2のリール2と、
第1のリール1との間で回転を伝達可能な、第1の回転伝達体33を備え、一方向に制動力を有する第1のブレーキユニット3と、
前記第2のリールとの間で回転を伝達可能な、前記第1の回転伝達体33とは回転数の異なる第2の回転伝達体43を備え、一方向に制動力を有する第2のブレーキユニット4と、
を有する粘着ロール制御ユニットである。
これにより、粘着ロールクリーナーの前進時における、粘着テープの弛みを抑制することができる。詳細は、前述した「原理説明1:一方向ブレーキユニットの構成」および「原理説明1の2:ブレーキユニットのメカニズム」にも書いてある。
【0078】
図2図3では、第1の軸8が第1の中空シャフト81内に通されているが、第3のブレーキユニット5を用いない場合には、第1の中空シャフト81を設けなくてもよい。第1のブレーキユニット3の回転中心に設けられた穴は、第1のブレーキユニット3が自由に回転できる程度に第1の軸8または第1の中空シャフト81の直径より十分大きければよい。
第1のリール1の第1の穴11、第2のブレーキユニット4の穴、および第2のリール2の第2の穴21についても同様である。
【0079】
一実施形態としては、図3のように、第1のブレーキユニット3は第1のリール1とともに第1の軸8に通されており、第1のリール1に設けられた第1の被制動部12に配置されている。第1のブレーキユニット3に設けられた第1の帯状体32は、丸められた状態で収容されており、その自由端は第1の被制動面13に接している。なお、第1の帯状体32は、第1の被制動部12に完全に収容されていることに限定されず、一部はみ出していてもよく、第1の被制動面13との間で制動力を発揮しうる状態であればよい。
【0080】
第1のリール1は、例えば材料にプラスチックを用いて成型されたものである。試作では、市販の粘着ロールクリーナーの小型タイプ(一般的には粘着テープの幅が16cmとなっているものが主流であり、それの半分の幅8cmタイプが市販されている。)用のロールクリーナー本体を分解して、それに使われているリールを用いた。第1のリール1の実施形態としてはこれに限られることなく、粘着テープ巻回体の巻芯を保持可能な外側面を有し、第1の軸8を通して回転可能とし、第1のブレーキユニット3と直接または間接的に接し、所定の条件のときに制動力を受けられる構造であればよい。
【0081】
第1の回転体31と第1の回転伝達体33とは、例えば接着剤81を介して接着されている。第2の回転体41と第2の回転伝達体43も同様である。なお、ここでは回転体と回転伝達体とを接着したものとして説明したが、これに限られることはなく、例えば回転体と回転伝達体とが一体成型されていてもよいし、係合、嵌合、噛合、ビス止めなどによって合わさっていてもよい。
【0082】
第1の回転伝達体33と第2の回転伝達体43とには、共通するゴムベルトがかけられている。 図1図2図4では、ゴムベルトが8の字状、またはたすきがけと呼ばれるかけ方で掛けられているが、これに限られない。第1の回転伝達体33と第2の回転伝達体43とが、お互いに逆回転になるように別の回転伝達メカニズムを用いてもよい。例えば図7のようにシャフトドライブを用いてもよい。この図ではAとBの歯車は同軸のシャフトを通じて連動しており、同じ方向に回転するが、CとDの歯車は逆回転になっている。回転の方向を変えるには例えば冠歯車、かさ歯車、フェースギア等適当なものを使えばよい。
【0083】
第1の回転伝達体33と第2の回転伝達体43とプーリーを用いる場合、本実施例を実現できる程度の適当な大きさでプーリー比を決める。
プーリー比とは、一般的に、駆動側のプーリー径で従動側(被駆動)のプーリー径を除した値をいう。プーリー比が2の場合は従動側の回転数は2分の1になるが、トルクは2倍になる。1より大きい場合は減速し、1より小さい場合は増速を意味する。プーリー比を大きくしようとして、片方のプーリー径を小さくすると、ベルトの耐久性の低下や滑りが生じることがある。
【0084】
本実施例においては、条件によって駆動側と従動側が入れ替わるが、例えば第1の回転伝達体33が駆動側であるとき、第2の回転伝達体43は従動側である。粘着ロールクリーナーが前進するとき、第1のブレーキユニット3がロックし、第1の回転伝達体33を駆動させるとともに、第2の回転伝達体43に動力を伝えて粘着テープの弛みを抑止するように第2のリール2に動力を伝えることになる。
【0085】
ここで、プーリー比が1未満になるように設定するが、プーリー比があまりに小さいとトルクが弱く、粘着テープを第2リール側へ巻き取る力が不足する。結果的に、粘着テープは弛んでしまう。粘着テープが元々持つ粘着力の強さにもよるが、一実施形態のプーリー比としては1/2以上が望ましい。粘着テープが元々持つ粘着力の強さによっては、0.6以上の方が望ましい場合もある。
【0086】
一方、プーリー比が1未満であっても、これがあまりに大きいと、第1リールに対する第2リールの巻取り初動が遅くなるため、結果的に粘着テープは弛んでしまう。そこで、一実施形態のプーリー比としては0.8以下が望ましい。ただし、これは第2のブレーキユニット4を回転させたときに制動力が発生するまでの遊びの量にもよるのであって、遊びの少ないブレーキユニットを用いた場合には0.9程度でも構わない。
【0087】
まとめると、第1の回転伝達体33が駆動側となる場合のプーリー比は0.9~1/2が望ましく、より好ましくは0.8~0.6程度である。弛みが少ない範囲を適宜選んで設計する。
【0088】
ここでは、基本的な考え方としてプーリー比を用いて説明したが、回転伝達体がギアである場合にはギア比に置き換えてもよいし、回転比、回転速度比、変速比といった別の表現に置き換えることを妨げるものではない。簡単に説明するための都合上、回転数で説明することもある。この場合、一定の区切られた時間における一方の回転数と、他方の回転数を考えるものとするが、回転数が常にその値でなければならないわけではなく、スペック上(または設計上)の値をいうものとする。例えば粘着テープの弛みを解消した後にその状態をキープしたまま動作を続けた場合、2つの回転伝達体は同じ回転数になることがあり得るからである。
【0089】
また、後述する第3の回転伝達体53に対する第4の回転伝達体63のように、プーリー比が1より大きくなるように設計する場合もある。
第1のリール、第1の回転伝達体、第1のブレーキユニットそれぞれとの間では、直接または間接的に回転を伝達可能になっていればよく、間に他の部材等が入っていても、本実施形態の機能を損なわないのであれば構わない。
【0090】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、第1の実施形態において、
第1のリールとの間で回転を伝達可能な、第3の回転伝達体を備え、一方向に制動力を有する第3のブレーキユニットと、
第2のリール2との間で回転を伝達可能な、第3の回転伝達体53とは回転数の異なる第4の回転伝達体63を備え、一方向に制動力を有する第4のブレーキユニットと、
を有し、
第1の回転伝達体33に対する前記第2の回転伝達体43の回転比と、
第3の回転伝達体53に対する前記第4の回転伝達体63の回転比とは、
大小関係が逆である粘着ロール制御ユニットである。
第1の実施形態の構成に加えて上記構成を備えることで、後述するような効果を有する。
【0091】
図3に示すように、第3のブレーキユニット5は、第1の中空シャフト81の一端に接続されており、第3の回転伝達体53は、第1の中空シャフト81の他端に接続されている。すなわち、第3のブレーキユニット5は、位置的には第3の回転伝達体53から離れているものの、第1の中空シャフト81を介して第3の回転伝達体53を備えている。一例として、第3の回転伝達体53はプーリーである。第1の中空シャフト81は内部に第1の軸8を通すように配置されている。
【0092】
同様に、第4のブレーキユニット6は、第2の中空シャフト91の一端に接続されており、第4の回転伝達体63は、第2の中空シャフト91の他端に接続されている。すなわち、第4のブレーキユニット6は、第2の中空シャフト91を介して第4の回転伝達体63を備えている。一例として、第4の回転伝達体63はプーリーである。第2の中空シャフト91は内部に第2の軸9を通すように配置されている。
【0093】
本実施形態では、このように中空シャフトを介してブレーキユニット等を配置している。この構成には、部品を配置できる場所の関係上、簡単であるという効果がある。構造的に許すなら第1リールに対して第1のブレーキユニット3と第3のブレーキユニット5とを同じ側に配置しても構わない。
【0094】
第4の回転伝達体63は、第3の回転伝達体53に対してプーリー比が大きいか、または回転比が小さい、もしくは回転数が小さい。
すなわち、第1の回転伝達体33に対する前記第2の回転伝達体43の回転比と、第3の回転伝達体53に対する前記第4の回転伝達体63の回転比とは、大小関係が逆である。
【0095】
ここで、第3の回転伝達体53に対する第4の回転伝達体63のプーリー比は、1より大きくなるように設定するが、トルクや遊びとの関係で、
第3の回転伝達体53が駆動側となる場合のプーリー比は1.11~2が望ましく、より好ましくは1.25~1.66程度である。他の系およびテープの弛み具合などをみて適宜調整する。
【0096】
第3の回転伝達体53と第4の回転伝達体63とには、共通するゴムベルトがかけられている。 図1図2図4では、ゴムベルトが8の字状、またはたすきがけと呼ばれるかけ方で掛けられている。先に示した第1の回転体31、第1の回転伝達体33、第2の回転伝達体43との関係で共通する部分については説明を割愛する。
【0097】
(第2の実施形態の動作説明)
図5を用いて第2の実施形態の説明する。効率よく説明するため、ついでに第1の実施形態と、第3の実施形態の説明も一部含む。図5は、動作モードを、前進時と後退時、および掃除に用いている粘着テープ面の粘着力が十分か弱いかで4つの象限に分けた説明図である。所々先に説明した内容については省略する。
また、説明の便宜上、図5の各象限中で、S1、S2等といった符号を共通して用いているところがあるが、各象限の説明においては、各象限中に書かれているもので説明しているものとする。
なお、図5には巻取量調整部も描かれているが、これは第3の実施例以降で説明するので、第2の実施例の説明では省略している。
【0098】
図5の左上の象限を用いた説明)
先に説明した「原理説明1の2:ブレーキユニットのメカニズム」の原理も加味しつつ、図5の左上の象限で実施例を説明する。すなわち、掃除面にあたる粘着テープの粘着力が十分にある状態であって、粘着ロールクリーナーを紙面左方向に前進させる場合についてである。
【0099】
今、図5の符号S1の矢印に示すように、第1の粘着テープ巻回体17が反時計回りに回転すると、第1のブレーキユニット3に設けられた第1の帯状体32の自由端も反時計回りに動かされる。
その結果、第1のブレーキユニット3はロックした状態となり、S2に示すように、第1のブレーキユニット3も反時計回りに回転し始める。この動力はたすき掛けされたゴムベルトを通じて第2のブレーキユニット4に伝達する。
視覚的なわかりやすさのため、S1とS2の矢印は、回転数が同じ程度になるように描いている。
【0100】
ここで、第1の回転伝達体33に対する第2の回転伝達体43の回転比は大きくなるように設定されている。言い換えると、第1の回転伝達体33と第2の回転伝達体43とは回転数が異なり、第2の回転伝達体43の方の回転数が大きくなるように設定されている。すなわち、第2のブレーキユニット4は、S3のように時計回り、かつS2よりも回転数が多くなるように回転しようとする。ここで、S3の矢印の長さを大きくしているのは、S2に対して回転数が大きいことを視覚的にわかりやすくするためである。
【0101】
第2のブレーキユニット4は、ロック状態になり、S4のように第2の粘着テープ巻回体27を同方向、同回転数で回そうとする。
【0102】
粘着テープが弛んでいる場合には、第2の粘着テープ巻回体27が速く回ろうとすることによって弛みが解消される。
【0103】
第2の粘着テープ巻回体27の巻きが追いついて弛みが解消された後は、第1の粘着テープ巻回体17と第2の粘着テープ巻回体27とは同じ回転数になる。
【0104】
ここで、一見すると、このまま同方向に回転させ続けると第1の回転伝達体33と第2の回転伝達体43との回転数差があるのに、2つの粘着テープ巻回体の回転数には差が無いため破綻するように思われるかもしれない。
しかし、実際には、第2のブレーキユニット4がロックしている状態かつ、第2のリール2よりも第2のブレーキユニット4の方を速く回転させるような力が働くときには、第2のブレーキユニット4とゴムベルトを介して動力伝達関係にある第1のブレーキユニット3は遅い回転になるため、ある瞬間においては第1のリール1との間でロックが解除され、空回りする。
そしてまたテープの弛みが生じたときにはロック状態となりテープの弛みを解消するように働く。
このようにして、粘着テープに対して常に一定のテンションをかけ続けることで粘着テープの弛みを防止する効果を有する。
【0105】
上記部分までは第1の実施形態を用いているが、第2の実施形態は、これに加えて、
第1のリール1との間で回転を伝達可能な、第3の回転伝達体53を備え、一方向に制動力を有する第3のブレーキユニット5と、
第2のリール2との間で回転を伝達可能な、第3の回転伝達体53とは回転数の異なる第4の回転伝達体63を備え、一方向に制動力を有する第4のブレーキユニット6と
を有している。
【0106】
この場合において、今、図3の符号S1の矢印に示すように、第1の粘着テープ巻回体17が反時計回りに回転すると、第3のブレーキユニット5に設けられた第3の帯状体52の自由端も反時計回りに動かされる。
その結果、第3のブレーキユニット5はロックした状態となり、S2’に示すように、第3のブレーキユニット5も反時計回りに回転し始める。この動力はたすき掛けされたゴムベルトを通じて第4のブレーキユニット4に伝達する。
視覚的なわかりやすさのため、S1’とS2’の矢印は、回転数が同じ程度になるように描いている。
【0107】
ここで、第3の回転伝達体53に対する第4の回転伝達体63の回転比は小さくなるように設定されている。言い換えると、第3の回転伝達体53と第4の回転伝達体63とは回転数が異なり、第4の回転伝達体63の方の回転数が小さくなるように設定されている。すなわち、第4のブレーキユニット6は、S3’のように時計回り、かつS2’よりも回転数が小さくなるように回転しようとする。ここで、S3’の矢印の長さを小さくしているのは、S2’に対して回転数が小さいことを視覚的にわかりやすくするためである。
【0108】
このとき、前述したように、第2の粘着テープ巻回体27は、S4のように回転している。従って、第2の粘着テープ巻回体27が第4のブレーキユニット6よりも速く回転しているとき、第4のブレーキユニット6はロック状態にならない。
第4のブレーキユニット6の回転数が小さいため、第2の粘着テープ巻回体27からの視点では、第4のブレーキユニット6は仮想のS4’のように相対的に逆回転しているからである。
従って前述の第1の実施例の機能を阻害しない。
【0109】
第2の実施形態について、前述では第1の巻回体17の回転S1から順に説明したが、第2の粘着テープ巻回体27の回転S4から考えた場合、S4の回転は第2のブレーキユニット4のロックを解除する方向である。
仮に、瞬間的にでも第2の粘着テープ巻回体27と第2のブレーキユニット4とが同じ回転数になった場合、第2のブレーキユニット4がロックした状態になることも考えられるが、この場合、ゴムベルトを介した動力伝達関係により、第1のブレーキユニット3をより速く回転させようとすることになる。しかし、実際には、第1のブレーキユニット3が第1の粘着テープ巻回体17よりも速く反時計回りすると、第1のブレーキユニット3のロックが外れるため、不具合は生じない。
従って、やはり前述の第1の実施例の機能を阻害しない。
【0110】
図5の右上の象限を用いた説明)
図5の右上の象限で実施例を説明する。すなわち、掃除面にあたる粘着テープの粘着力が十分にある状態であって、粘着ロールクリーナーを紙面右方向に後退させる場合についてである。
【0111】
今、図5のS1の矢印に示すように、第1の粘着テープ巻回体17が時計回りに回転すると、第1のブレーキユニット3に設けられた第1の帯状体32の自由端も反時計回りに動かされようとするが、実際には摺動するだけで第1のブレーキユニット3はロックしない。
【0112】
一方、第1の粘着テープ巻回体17と一続きで巻かれている第2の粘着テープ巻回体27は、第1の粘着テープ巻回体17が時計回りして粘着テープを巻き取っていくために、強制的に粘着テープを引き出されるように回転する。すなわち第2の粘着テープ巻回体27はS2のように回転するのであり、第1の粘着テープ巻回体17とは反対方向でほぼ同じ回転数で回転する。ほぼ同じというのは、第1の粘着テープ巻回体17と第1の粘着テープ巻回体17との現在の巻き数によって最外径が異なる場合があるからである。
【0113】
S2の回転は、第2のブレーキユニット4をロックする方向に働くので、第2のブレーキユニット4はS3のように反時計回りに回転する。
【0114】
S3の回転は、たすき掛けしたゴムベルトを介して第1のブレーキユニット3に伝えられるが、S4のように第2のブレーキユニット4よりも遅い回転で時計回りすることになる。第1のブレーキユニット3が時計回りに回ることは、本来第1のブレーキユニット3をロックする方向になるが、回転数がS1>S4なので、第1の粘着テープ巻回体17からの視点では、仮想のS5のように第1のブレーキユニット3は相対的に逆回りしている。従って第1のブレーキユニット3はロックされない。
【0115】
他方、第3のブレーキユニット5についてみてみると、第1の粘着テープ巻回体17が時計回りに回転することは、第1のブレーキユニット3をロックしない方向に作用する。
【0116】
第4のブレーキユニット6についてみてみると、第2の粘着テープ巻回体27が時計回りに回転することは、第4のブレーキユニット6をロックし、S3’のように反時計回りに回転させる方向に作用する。
【0117】
S3’の回転は、ゴムベルトを通じて動力伝達関係にある第3のブレーキユニット5を、S4’のように時計回りでより速く回転させる方向に作用する。しかし、実際には、第1の粘着テープ巻回体17が床面に接して回転しているので、第1のリール1の回転はそれに準じており、第3のブレーキユニット5が第1のリール1の回転速度を超えて回転することは阻害される。そのため、行き場を失ったエネルギーは、第3のブレーキユニット5やゴムベルト等に一時的に溜められる。
【0118】
この一時的に溜められたエネルギーは、(1)第1のリール1と第3のブレーキユニット5との間でスリップすることで解放されるか、(2)第1の粘着テープ巻回体17と床面との間でスリップすることで解放されるか、(3)第1の粘着テープ巻回体17が床面との位置関係で浮き上がることで回転して解放されるか(後述の第4の実施形態によって浮かされる場合を含む)、(4)第3のブレーキユニット5がロックしたまま、ゴムベルトを介して動力伝達関係にある第4のブレーキユニット6をより遅く回転させる方向でエネルギーを消費して、ある瞬間においては第2のリール2との間で第4のブレーキユニット6のロックを解除し空回りさせることによって解放される。
【0119】
ここで、(2)と(3)のモードは後退時の粘着テープ巻取量調節機能として働く効果を有する。すなわち、前進時よりも後退時の方の巻取量が小さくなる結果、床面等に当てられるべき粘着面が徐々に新しいものに変わっていく効果を有する。これは、床面等に当てられている粘着面の粘着力が弱くなるほど発生しやすい。
要は、床面に対する粘着テープの粘着力が強いときはユニット内でスリップするか力を蓄えるかされ、粘着力が弱いときは床面に対向するテープ面がスリップするといったことが起こる。ゆえに粘着力に応じた粘着面自動更新ロールクリーナーとして使うことができる。
【0120】
図5の左下の象限を用いた説明)
図5の左下の象限で実施例を説明する。すなわち、掃除の対象となる床面にあたる粘着テープの粘着力が弱い状態であって、粘着ロールクリーナーを紙面左方向に前進させる場合についてである。
【0121】
図5の左下の象限における各部位の動作は、基本的に左上の象限と同じである。床面にあたる粘着テープの粘着力が弱い場合、後退時から前進に切り替わるところで少し動作が異なるが、これは第3の実施形態を説明するところで説明する。
【0122】
(リバーシブル機能1)
なお、第2の実施形態は、粘着ロール制御ユニットを第3の軸を中心に180度回転させても使うことができる。
また、粘着テープ巻回体の交換の手間を減らせるようにする効果かある。
【0123】
図6のように、使用済の粘着テープを巻き取った巻回体を筐体から取り出せる位置に持ってくることができる。本実施例では、掃除面側で使っていた粘着テープが空になったとき、図6のh1のように、空の巻芯が天井に当たらない程度にしている。これにより、筐体を不必要に大きくせず、かつ粘着ロール制御ユニットを第3の軸を中心に180度以上回転可能にし、第1のリール1と第2のリール2との位置を入れ替え可能になるという効果を有する。
【0124】
そして、本実施形態における粘着テープの交換方法は、次の通りである。
(1)使用済の粘着テープを巻き取った巻回体を抜き取った後、
(2)そこに新しい粘着テープ巻回体を装着する。
(3)次に、元々掃除用の粘着テープが巻かれていた側のリールには、粘着テープがなくなった空の巻芯が残っているので、これに新しい粘着テープの端を貼り付けるようにして巻き付ける。
この3ステップでテープ巻回体の交換作業は終了である。
【0125】
これに対し、従来の2リールタイプの製品は構造的にリバーシブルではなかったので、もう少し手間かかる。簡単に言えば、
(1)巻取り用のリールに付いている使用済の粘着テープ巻回体を取り外し、
(2)掃除側のリールに付いていた空の巻芯も取り外し、
(3)この空の巻芯を再利用して巻取り用のリールに装着し直し、
(4)その上で掃除用のリールに新品の粘着ロール巻回体を装着して、
(5)新しい粘着テープの端を掃除用リール側に付いている空の巻芯に巻き付ける
という工程が必要となる。
比較すると、従来技術では巻芯の取り外し工程と、装着工程とが1回ずつ多い。
従って、本実施形態では、粘着ロールクリーナーのユニットをリバーシブルにして使うことができ、粘着テープの交換手順が簡単という効果を有する。
【0126】
以上をまとめると、第2の実施形態は、粘着テープの弛みをよりしっかり解消できること、粘着ロールクリーナーの前進時と後退時とで粘着テープの巻量を変える効果を実現できること、リバーシブルにできること、粘着テープ交換を容易にできること、のいずれかの効果を発揮することができる。
【0127】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、第1の実施形態または第2の実施形態において、
粘着ロールクリーナーの筐体に対して回転可能に支持される支持部を備え、
所定の条件において、前記第1のリールの回転数が一方向回転と他方向回転とで異なるように、回転数を調節する第1の制御部を備える巻取量調節部を有する。
【0128】
これは、床面等に対する粘着テープ面の粘着力の低下に応じて巻取量が変化するもう一つのモードを実現するものである。
巻取量調節部を設けることで、粘着ロールクリーナーを後退方向で使用中に、粘着力の低下に応じて自動的に古いテープの巻き戻しを抑制することで、テープの巻取量を調節できるものであり、発明者らはこれを粘着力判定パタパタ機構と呼んでいる。
【0129】
筐体とは、粘着ロール制御ユニットを収容し、使用者がこれを床面等で動かすことによって掃除ができるよう取り回せるようにした外側部分である。
支持部71とは、第1のリール1を直接または間接的に支持する第1の軸8と、第2のリール2を直接または間接的に支持する第2の軸8とを有し、中央付近に第3の軸10を有し、第3の軸10を筐体100に設けられた穴に通すようにして、第3の軸10を中心に回転可能となっている支持部材である。
所定の条件とは、粘着ロールクリーナーの後退時に、巻量調整部7に働く力によって第1の粘着テープ巻回体17が床面等から離れる程度に、第1の粘着テープ巻回体17の、床面等に接する部分の粘着力が弱まった条件である。
【0130】
第1の制御部は、巻取量調節部7の一部であって、支持部71とは一体で形成されていても別々で構成されていてもよい。
図2に示すように、第1の制御部71は床面Gに接するようにして使用される。形状、動作、及び機能の詳細については後述する。
【0131】
図5の右下の象限を含めた説明)
ここまでに説明した図5の3つの象限に加え、右下の象限を用いて説明する。4つめの象限は、掃除の対象となる床面にあたる粘着テープの粘着力が弱い状態であって、粘着ロールクリーナーを紙面右方向に後退させる場合について描いた物ものある。
【0132】
今、図5の左下の象限から右下の象限へと遷る場合を考える。すなわち、床面と第1の粘着テープ巻回体17とが接している粘着面における粘着力が弱い場合であって、粘着ロールクリーナーが後退に転じる場合である。
【0133】
第1の制御部72と第1の粘着テープ巻回体17とが床面に接している状態から説明すると、第1の制御部72は床面との摩擦力により、前方向(紙面左側)への応力を受ける。この力は、第3の軸10を中心に巻量調整部7を時計回りに回転させようと働く。
【0134】
第1の粘着テープ巻回体17は床面に接している部分で前方向(紙面左側)への応力を受ける。この力は第1の粘着テープ巻回体17を時計回りに回転させようと働く。ここで、第1の粘着テープ巻回体17は、前進時よりは弱いものの、下方への圧力も受けている。筐体100を下方へと押しつける力が、第3の軸10にかかり、巻取量調節部7を介して第1の軸8にかかり、第1の軸8に支持されている第1のリールにかかるためである。
そのため、ある力のバランスにおいては、第1の粘着テープ巻回体17は時計回りに回転しながら、床面に粘着している粘着面を床から剥離しつつ、新たな粘着面を床に粘着させるという動作をしようとする。これで実際に動く場合は、図5の右上の象限のように第1の粘着テープ巻回体17が時計回りに回転しながら粘着テープを巻き取ってゆく。
【0135】
しかし、床面と第1の粘着テープ巻回体17とが接している粘着面における粘着力が弱く、前述の巻量調整部7を時計回りに回転させようと働く力に負ける場合は、図5の右下のように、第1の粘着テープ巻回体17は床面から離れた状態となる。
巻量調整部7は時計回りに少し回転し、巻量調整部7のやや右側で床に接したまま滑る(図4を参照)。この状態で安定して動作するための、好ましい第1の粘着テープ巻回体17の形態等については、第5、第6の実施形態にて述べる。
【0136】
このようにして、さらに粘着ロールクリーナーを後退させると、第1の粘着テープ巻回体17が床面に接しないまま後退することになる。これは、冒頭の方で述べた、問題を解決する。
すなわち、従来の、一定距離を往復運動させるクリーナでは、粘着テープのほぼ同じ範囲に粘着力が無くなるほど塵が付着したら、一方向への前進工程が終わったときに、そのまま持ち上げてから、カーペットの掃除開始位置へと下ろして再び前進工程から始めるという動作を行なわなければ、まだ塵のついていない新しい粘着テープの部分で掃除をすることができないという問題があったが、本実施形態ではその工程を自動的に行うことができるという効果を有する。
【0137】
次に、図5の右下の象限から左下の象限へと遷る場合を考える。この場合は、巻量調整部7が、接した床面等との摩擦力により反時計回りに回転することで、第1の粘着テープ巻回体17が着地し、図5の左下の象限に戻ことができる。その状態に戻りやすくするための好ましい第1の粘着テープ巻回体17の形態等については、第5、第6の実施形態にて述べる。
【0138】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、第3の実施形態において、
巻取量調節部7には、支持部71を挟んで第1の制御部72との反対側に第2の制御部73を有し、粘着ロール制御ユニットが、巻取量調節部7とともに、支持部71を中心に180度回転可能な、粘着ロール制御ユニットである。
【0139】
(リバーシブル機能2)
第2の実施形態のところでもリバーシブル機能について説明したが、ここでは、そのリバーシブル機能で巻取量調節部7もリバーシブルに利用可能にするものである。
好ましくは、第2の制御部73は、180度回転させたときに、第1の制御部72と同様の形状であるとよいが、第1の制御部72のように機能が実現できれば、形状は同じでなくてもよい。その他の効果で第2の実施形態と共通する部分については説明を割愛する。
【0140】
なお、テープ交換を容易にするために、粘着ロール制御ユニットを片持ち梁構造にしているが、これによって、強度を確保できない場合も考えられる。この不利を解消するためには、第3の軸8を通していない反対側の筐体側壁へ、嵌合部等を設けて、粘着ロール制御ユニット着脱可能に固定できるようにしてもよい。
【0141】
(第5の実施形態)
第5の実施形態は、第3の実施例または第4の実施例における、粘着ロールクリーナーを床面に当てて使用している際において、第1のリール1に装着される第1の粘着テープ巻回体17を床面から浮かせたときに、第2のリール2に装着される第2の粘着テープ巻回体27を接地させないように回転抑制部をもつ、粘着ロール制御ユニットである。
回転抑制部は、図4等で示される点Qより右側、本実施形態では粘着ロールクリーナーの後方側に第1の制御部72を延長した部分である。
【0142】
図4では、仮想の床面の図を複数描いてある。この図のように、床面に対する第1の制御部72の接触角度が変わってゆくと、第1の制御部72を延長した部分で床面と接し、これ以上第1の制御部72が回転することを抑制することができる。
これにより、第1の制御部72が必要以上に回転することがなくなり、第1の粘着ロール巻回体が不用意に筐体内部に接触して粘着してしまうことや、意図しない動作を防ぐことができる。
また、後ろ側にある第2の粘着テープ巻回体27が床に接することを防ぐことができる。第1の制御部72の回転し過ぎるによる、第2の粘着テープ巻回体とテープ押さえ101との接触が外れることも防止できる。
【0143】
(第6の実施形態)
第6の実施形態は、第3の実施例または第4の実施例において、第1のリール1に装着される第1の粘着テープ巻回体17と巻取量調節部7とをそれぞれ接地させた状態において、
巻取量調節部7は、巻取量調節部7の回転中心から接地面に下ろした垂線に対して第2リール2側に変曲点Qを有する、粘着ロール制御ユニットである。
【0144】
図4に示すように、第1の粘着テープ巻回体17と巻取量調節部7とをそれぞれ接地させた状態にすると、巻取量調節部7の回転中心である第1の軸8から真っ直ぐ垂線を下ろしたところが点Pになる。変曲点Qはこれより後方の第2リール2側にある。
【0145】
点PからQまでの辺は、第1の制御部72が円滑に回転できるよう円弧状になっている。これは、第1の粘着テープ巻回体17の直径が増減しても、変わりなく巻取量調節部7の機能を維持できるという効果がある。
【0146】
一方、P-Qより後ろ側は、P-Q区間とは曲率が変わっている。そのため点Qを変曲点と呼んでいる。このP-Qより後ろの部分は、いわゆるストッパーとしての役割を果たす。床につっかえることで巻取量調節部7の回転を抑制することで、第5の実施形態と同様の効果を奏する。
【0147】
ところで、本実施形態は、特許文献2の支点Sなどとは明確に違う部分である。同文献の支点Sは、二本の軸に直交する平面内での二本の軸の間隔を二等分する中心線上に下方に突出する支点である。また、支点Sを中心に、前後それぞれの粘着テープ巻回体を切り替えて床面に接触させて使用するものであるため、目的も機能も異なる。
【0148】
なお、P-Qより前側部分も曲率が変わっている。これは、後方の回転ストッパーよりは気にしないものの、第1の粘着テープ巻回体の直径が小さくなってきた場合などで、巻取量調節部7の回転しすぎを抑制する効果がある。
【0149】
(第7の実施形態)
第7の実施形態は、第3から第6の実施例における、第1のリール1に装着される第1の粘着テープ巻回体17が、床面に近い側から粘着テープを引き出されるように装着される、粘着ロール制御ユニットである。
【0150】
第3の実施形態以降で述べた、巻取量調節部7との組み合わせを考えると、このように配置するのが望ましい。図5を例にすれば、第1の粘着テープ巻回体17をこのようにセットすると、これまで説明してきた巻取量調節部7と協働して、新しいテープの引き出し量より、使用済みテープの巻き戻し量の方が少なくなるようにできるが。一方で、第1の粘着テープ巻回体17が、床面に遠い側から粘着テープを引き出されるように装着されていると、使用済みテープの方を多く巻き戻すという逆のことが起きてしまうからである。
【0151】
これは一見すると選択あるいは設計事項に過ぎないと思うかもしれない。しかし、巻取量調節部7を設けないのであれば、通常は特許文献2等にあるように、粘着テープは上側で掛け渡す方がよいと思われる。
発明者らは、実験により、粘着テープを下側から引き出せば、床面との接触面積が大きくなりがちで、場合によっては粘着テープが強固に床面に貼り付く結果、粘着テープの弛みを生じさせて、前側あるいは後ろ側の粘着テープ巻回体に弛んだテープが巻き込まれるといったリスクがあることを確認した。
この点、本実施例では全体を通じて後方の粘着テープ巻回体を常に床面から浮かせているため、こういった問題を回避しやすい。
【0152】
なお、本実施形態とそっくりに、筐体に対して粘着ロール制御ユニットの前後を入れ替えるパターンも考えられるが、この場合は、筐体のどちらを前と呼ぶかの違いに過ぎない。
【0153】
さらに別の形態を考えると、掃除用に使うリール側に巻取り用の巻芯をセットし、床から浮かせて筐体内に収容しておく側に新しい粘着テープ巻回体をセットしておくというパターンも考えられる。
この構造であれば、床面に接する側の粘着テープ巻回体は使用済み側であり、粘着テープを上側(床面とは反対側)に掛け渡すことも可能であり、このようにすれば本実施形態を回避可能である。
【0154】
しかし、この場合、わざわざ使用済みテープの巻回体の上に新しいテープを巻いて掃除をすることになるので、新しい粘着テープ巻回体を直接床に当てて掃除する場合と比べて、テープの皺や、塵や髪の毛等の巻き込みによる下地の凹凸のため、清掃性能がよくない。
また、第1のリールに付けた粘着テープ巻回体の粘着テープを上から引き出すと、筐体内の部位に不用意に接着して不具合を起こす場合がある。
【0155】
以上の通り、発明者らは鋭意研究した結果、本実施形態にたどり着いたのである。
【0156】
(第8の実施形態)
第8の実施形態は、第1の実施形態から第7の実施形態のいずれかにおいて、第1のリールと第2のリールとの回転方向が異なる、粘着ロール制御ユニットである。
【0157】
第8の実施形態も第7の実施形態と同様にして組み合わせを考えた物であり、同様の課題を解決できる。特にこれによって、たすき掛けのゴムベルト等との組み合わせで粘着テープの掛け渡し方をS字状にすることは、上述の課題解決以外にも、第2の粘着テープ巻回体27側に巻かれるテープがより上方に位置することで、掛け渡されている粘着テープの床面に対する不必要な粘着面積を減らし、弛みや巻き込みといった不具合を回避しやすいという効果がある。
【0158】
また、これにより、第2の粘着テープ巻回体27が巻き取った粘着テープの粘着面が内側に向くようになるため、筐体内に収容された粘着テープが誤って他の部材に接着することを防止できる。本実施形態は以上に述べたような課題を解決しつつ、所望の機能も実現させるうえで最良の実施形態であると考える。
【0159】
(第9の実施形態)
第9の実施形態は、第1から第8の実施形態のいずれかに記載の粘着ロール制御ユニットを有する、粘着ロールクリーナーである。
【0160】
(第10の実施形態)
第10の実施形態は、第8の実施形態において、第2のリール2に装着される第2の巻芯26に対して粘着面を内向きにして巻かれる粘着テープの裏面に、弾性をもって接するように設けられたテープ押さえ101を有する、ロールクリーナーである。
【0161】
第8の実施形態をさらに発展させ、図1のテープ押さえ101で第2の粘着テープ巻回体27を、摺動可能な程度に抑えることで、補助的にテープの弛みを防止することができる。
【0162】
図1のように、テープ押さえ101は、例えば筐体100内の天井に設け、キックばね102を有して押し当て用板を動かせるようにして、第2の粘着テープ巻回体27に当てる。
【0163】
テープ押さえの変形例として、テープそのものを押さえるのではなく、第2のリール2のどこかに接して制動するようなものであってもよい。
【0164】
(第11の実施形態)
第11の実施形態は、第3の実施形態から第9の実施形態のいずれかにおいて、粘着ロールクリーナーに、玩具の筐体と、車輪またはボール脚とを設けた玩具である。
【0165】
玩具の筐体は、例えば電車、車、飛行機といった乗り物や、犬、猫等の動物、その他子供が好きそうな物を模した筐体である。図8に、一実施形態の写真を示す。図8のA~Cは、バスあるいはワンボックスカーのような車をイメージしたものである。
【0166】
第3の実施形態から第9の実施形態のいずれかを活かして車型などの玩具にして提供すれば、使用者が粘着面を更新する動作を意識的に行う必要がなく、取り扱いが簡単なので、例えば子供などが遊びながら掃除できる簡単なクリーナーを提供することができる。
【0167】
このようにすれば、子供の遊ぶ運動エネルギーを掃除に利用することができるため、エコロジーな掃除用具を提供できる。人の遊ぶ力をついでに掃除に再利用することは、電気を使わないのでクリーンであり、省エネを意識して持続可能な社会への貢献をすることにも役立てる。
【産業上の利用可能性】
【0168】
絨毯の上などで使用することで掃除をすることができる。また、ミニカーや電車の玩具などと一体にすることで、子供が遊びながら掃除をするといった利用が考えられる。
【符号の説明】
【0169】
1、2…第1、第2のリール
(11、21……第1、第2の穴)
(12、22,14,24……第1、第2、第3、第4の被制動部)
(13、23,15、25……第1、第2、第3、第4の被制動面)
3………第1のブレーキユニット
(31……第1の回転体、32……第1の帯状体)
4………第2のブレーキユニット
(41……第2の回転体、42……第2の帯状体)
5………第3のブレーキユニット
(51……第3の回転体、52……第3の帯状体)
6………第4のブレーキユニット
(61……第4の回転体、62……第4の帯状体)
7………巻取量調節部
(71……支持部、72……第1の制御部、73……第2の制御部)
16、26……第1、第2の巻芯
17、27……第1、第2の粘着テープ巻回体
33、43、53、63……第1、第2、第3、第4の回転伝達体
8、9、10…第1、第2、第3の軸
81、91……第1、第2の中空シャフト
100…………筐体
101…………テープ押さえ
102…………キックばね
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8