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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】電動作業機
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20231221BHJP
   A01D 34/78 20060101ALI20231221BHJP
   H02P 29/024 20160101ALI20231221BHJP
【FI】
B25F5/00 C
B25F5/00 H
A01D34/78
H02P29/024
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019110374
(22)【出願日】2019-06-13
(65)【公開番号】P2020104248
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2022-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2018242996
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中本 明弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 均
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-073006(JP,A)
【文献】特開2018-015865(JP,A)
【文献】特開2014-136297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00
A01D 34/78
H02P 29/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動作業機であって、
モータと、
前記電動作業機の状態を示す状態情報を出力するように構成された情報出力回路と、
特定のプログラムに基づくソフトウェア処理によってモータ制御処理を実行するように構成された制御回路であって、前記モータ制御処理は、前記情報出力回路から出力された前記状態情報が前記モータを駆動可能であることを示していることに応じて、前記モータの駆動を許可する処理を含む、制御回路と、
ソフトウェア処理を用いることなくハードウェア処理により動作するように構成された駆動停止回路であって、前記情報出力回路から出力された前記状態情報が前記モータを停止すべきであることを示していることに応じて、前記モータ制御処理の実行状態にかかわらず前記モータを停止するように構成された駆動停止回路と、
を備え、
前記状態情報は、前記電動作業機の状態を示す物理量を含み、
前記情報出力回路は、前記物理量を検出し、その検出した物理量を示す検出情報を出力するように構成された検出回路を含み、
前記モータ制御処理は、前記検出回路から出力された前記検出情報が示す前記物理量が第1の許容範囲に含まれていることに応じて、前記モータを駆動するための駆動指令を出力する処理を含み、
前記駆動停止回路は、前記検出回路から出力された前記検出情報が示す前記物理量が第2の許容範囲に含まれていないことに応じて、前記制御回路から前記駆動指令が出力されていても前記モータを停止するように構成された第1の停止回路を含み、
前記第1の停止回路は、前記検出回路から出力された前記検出情報が示す前記物理量が前記第2の許容範囲に含まれていないことに応じて停止信号を出力するように構成されており、
前記電動作業機は、さらに、
前記制御回路から前記駆動指令が入力されるように構成された駆動回路であって、前記駆動指令が入力されることに応じて前記モータへ電力を供給して前記モータを駆動するように構成された駆動回路と、
前記制御回路から前記駆動回路へ前記駆動指令を伝送するように構成された駆動ラインと、
を備え、
前記第1の停止回路は遮断スイッチを備え、
前記遮断スイッチは、
前記駆動ライン上に設けられ、
前記駆動ラインを導通または遮断するように構成され、
前記停止信号が入力されるように構成され、
前記停止信号が入力された場合に前記駆動ラインを遮断することにより前記駆動回路への前記駆動指令の入力を遮断して前記モータを停止させる、
ように構成されている、
電動作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の電動作業機であって、
前記第2の許容範囲は、前記第1の許容範囲を含み、前記第1の許容範囲よりも広い、電動作業機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電動作業機であって、
さらに、前記電動作業機の使用者によってオン操作又はオフ操作が行われるように構成された操作部を備え、
前記制御回路は、前記モータ制御処理において、前記操作部において前記オン操作が行われた場合に前記駆動指令を出力し、前記操作部において前記オフ操作が行われた場合に前記駆動指令の出力を停止するように構成されており、
前記第1の停止回路は、前記操作部において前記オン操作が行われた以後に前記モータを停止させた場合、前記モータを停止させた後に、前記検出回路から出力された前記検出情報が示す前記物理量が前記第2の許容範囲に含まれるようになっても、少なくとも前記操作部において前記オフ操作が行われるまでの間は、前記モータを停止させるように構成されている
電動作業機。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の電動作業機であって、
さらに、前記モータを駆動するための電力を出力するバッテリを備え、
前記状態情報は、前記バッテリの状態を示すバッテリ情報を含み、
前記情報出力回路は、前記バッテリ情報を出力するように構成されたバッテリ情報出力回路を含み、
前記駆動停止回路は、前記バッテリ情報出力回路から出力された前記バッテリ情報が前記バッテリの異常を示していることに応じて、前記バッテリから前記モータへの電力の供給を遮断するように構成された第2の停止回路を含む、
電動作業機。
【請求項5】
電動作業機であって、
モータと、
前記電動作業機の状態を示す状態情報を出力するように構成された情報出力回路と、
特定のプログラムに基づくソフトウェア処理によってモータ制御処理を実行するように構成された制御回路であって、前記モータ制御処理は、前記情報出力回路から出力された前記状態情報が前記モータを駆動可能であることを示していることに応じて、前記モータの駆動を許可する処理を含む、制御回路と、
ソフトウェア処理を用いることなくハードウェア処理により動作するように構成された駆動停止回路であって、前記情報出力回路から出力された前記状態情報が前記モータを停止すべきであることを示していることに応じて、前記モータ制御処理の実行状態にかかわらず前記モータを停止するように構成された駆動停止回路と、
を備え、
前記状態情報は、前記電動作業機の状態を示す物理量を含み、
前記情報出力回路は、前記物理量を検出し、その検出した物理量を示す検出情報を出力するように構成された検出回路を含み、
前記モータ制御処理は、前記検出回路から出力された前記検出情報が示す前記物理量が第1の許容範囲に含まれていることに応じて、前記モータを駆動するための駆動指令を出力する処理を含み、
前記駆動停止回路は、前記検出回路から出力された前記検出情報が示す前記物理量が第2の許容範囲に含まれていないことに応じて、前記制御回路から前記駆動指令が出力されていても前記モータを停止するように構成された第1の停止回路を含み、
前記第1の停止回路は、前記検出回路から出力された前記検出情報が示す前記物理量が前記第2の許容範囲に含まれていないことに応じて停止信号を出力するように構成されており、
前記制御回路は、前記停止信号が入力されるように構成され、前記停止信号が入力された場合は前記駆動指令を出力しないように構成されており、
前記制御回路は、疑似異常発生信号を出力するように構成されており、
前記検出回路は、前記疑似異常発生信号が入力されることに応じて、実際の前記物理量にかかわらず、前記第2の許容範囲に含まれない前記物理量に対応した前記検出情報を出力するように構成されており、
前記制御回路は、
特定の診断タイミングで前記疑似異常発生信号を出力する出力処理と、
前記出力処理により前記疑似異常発生信号を出力している間に前記停止信号が入力されないことに応じて異常状態を記憶する記憶処理と、
を実行し、
前記制御回路は、前記異常状態が記憶されている場合は、前記駆動指令を出力しないように構成されている
電動作業機。
【請求項6】
電動作業機であって、
モータと、
前記電動作業機の状態を示す状態情報を出力するように構成された情報出力回路と、
特定のプログラムに基づくソフトウェア処理によってモータ制御処理を実行するように構成された制御回路であって、前記モータ制御処理は、前記情報出力回路から出力された前記状態情報が前記モータを駆動可能であることを示していることに応じて、前記モータの駆動を許可する処理を含む、制御回路と、
ソフトウェア処理を用いることなくハードウェア処理により動作するように構成された駆動停止回路であって、前記情報出力回路から出力された前記状態情報が前記モータを停止すべきであることを示していることに応じて、前記モータ制御処理の実行状態にかかわらず前記モータを停止するように構成された駆動停止回路と、
を備え、
前記電動作業機は、さらに、
前記モータを駆動するための第1の電力を出力するように構成された第1バッテリを含む第1バッテリパックと、
前記モータを駆動するための第2の電力を出力するように構成された第2バッテリを含む第2バッテリパックと、
前記第1バッテリパック及び前記第2バッテリパックを着脱可能に構成された装着部と、
前記装着部に装着された前記第1バッテリパックにおける前記第1バッテリと前記装着部に装着された前記第2バッテリパックにおける前記第2バッテリとを直列に接続するように構成された直列接続配線と、
を備え、
前記状態情報は、前記第1バッテリの状態を示す第1バッテリ情報、および前記第2バッテリの状態を示す第2バッテリ情報を含み、
前記情報出力回路は、前記第1バッテリパックに設けられて前記第1バッテリ情報を出力するように構成された第1出力回路、および前記第2バッテリパックに設けられて前記第2バッテリ情報を出力するように構成された第2出力回路を含み、
前記駆動停止回路は、前記第1出力回路から出力された前記第1バッテリ情報が前記第1バッテリの異常を示していること及び/または前記第2出力回路から出力された前記第2バッテリ情報が前記第2バッテリの異常を示していることに応じて、前記第1バッテリおよび前記第2バッテリから前記モータへの前記第1の電力及び前記第2の電力の供給を遮断するように構成された第2の停止回路を含む、
電動作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、AD変換器を備えた電動工具であって、AD変換器が正常に作動するか否かを自ら診断する自己診断機能を備えた電動工具が開示されている。自己診断機能を備えることで、電動工具の信頼性を向上させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-58244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動工具の信頼性は、高ければ高いほど好ましい。特に、電動工具の高機能化、内部構成の複雑化が進むと、電動工具の信頼性はより高いレベルで要求され得る。
本開示の1つの局面は、電動作業機の信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の1つの局面における電動作業機は、モータと、情報出力回路と、制御回路と、駆動停止回路と、を備える。
情報出力回路は、前記電動作業機の状態を示す状態情報を出力する。制御回路は、特定のプログラムに基づくソフトウェア処理によってモータ制御処理を実行する。モータ制御処理は、情報出力回路から出力された状態情報がモータを駆動可能であることを示していることに応じて、モータの駆動を許可する処理を含む。駆動停止回路は、ソフトウェア処理を用いることなくハードウェア処理により動作する。駆動停止回路は、情報出力回路から出力された状態情報がモータを停止すべきであることを示していることに応じて、モータ制御処理の実行状態にかかわらずモータを停止する。
【0006】
このように構成された電動作業機では、同じ状態情報が、ソフトウェア処理とハードウェア処理の双方によって監視される。そして、ハードウェア処理によってモータが停止された場合は、ソフトウェア処理においてモータの駆動が許可されてもモータは駆動されない。そのため、電動作業機の信頼性を向上させることが可能となる。
【0007】
状態情報は、電動作業機の状態を示す物理量を含んでいてもよい。情報出力回路は、物理量を検出し、その検出した物理量を示す検出情報を出力するように構成された検出回路を含んでいてもよい。モータ制御処理は、検出回路から出力された検出情報が示す物理量が第1の許容範囲に含まれていることに応じて、モータを駆動するための駆動指令を出力する処理を含んでいてもよい。駆動停止回路は、検出回路から出力された検出情報が示す物理量が第2の許容範囲に含まれていないことに応じて、制御回路から駆動指令が出力されていてもモータを停止するように構成された第1の停止回路を含んでいてもよい。
【0008】
なお、「検出情報が示す物理量が第1の許容範囲に含まれていること」は、「状態情報がモータを駆動可能であることを示していること」の1つ(一形態)であってもよい。また、「検出情報が示す前記物理量が第2の許容範囲に含まれていないこと」は、「状態情報がモータを停止すべきであることを示していること」の1つ(一形態)であってもよい。また、第1の停止回路が「制御回路から駆動指令が出力されていてもモータを停止する」ことは、駆動停止回路が「モータ制御処理の実行状態にかかわらずモータを停止する」ことの1つ(一形態)であってもよい。
【0009】
このように構成された電動作業機では、同じ物理量が、ソフトウェア処理とハードウェア処理の双方によって監視される。そして、ソフトウェア処理およびハードウェア処理の双方で、物理量が適正な範囲内にあることが認められた場合に、駆動指令に基づいてモータが駆動される。そのため、電動作業機の信頼性を向上させることが可能となる。
【0010】
電動作業機は、さらに、駆動回路を備えていてもよい。駆動回路は、制御回路から駆動指令が入力されるように構成され、駆動指令が入力されることに応じてモータへ電力を供給してモータを駆動するように構成されていてもよい。そして、第1の停止回路は、駆動回路への駆動指令の入力を遮断することによってモータを停止させるように構成されていてもよい。
【0011】
このように構成された電動作業機では、第1の停止回路は、検出回路から出力された検出情報が示す物理量が第2の許容範囲に含まれていない場合に、モータを容易に停止させることができる。
【0012】
第1の停止回路は、検出回路から出力された検出情報が示す物理量が第2の許容範囲に含まれていないことに応じて停止信号を出力するように構成されていてもよい。制御回路は、停止信号が入力されるように構成され、停止信号が入力された場合は駆動指令を出力しないように構成されていてもよい。
【0013】
このように構成された電動作業機では、制御回路において、検出回路から出力された検出情報が示す物理量が第1の許容範囲に含まれていると判断されても、第1の停止回路から停止信号が入力された場合は、駆動指令が出力されない。そのため、電動作業機の信頼性をより高めることが可能となる。
【0014】
制御回路は、疑似異常発生信号を出力するように構成されていてもよい。検出回路は、疑似異常発生信号が入力されることに応じて、実際の物理量にかかわらず、第2の許容範囲に含まれない物理量に対応した検出情報を出力するように構成されていてもよい。制御回路は、出力処理と、記憶処理とを実行してもよい。出力処理は、特定の診断タイミングで疑似異常発生信号を出力する処理を含んでいてもよい。記憶処理は、出力処理により疑似異常発生信号を出力している間に停止信号が入力されないことに応じて異常状態を記憶する処理を含んでいてもよい。制御回路は、異常状態が記憶されている場合は、駆動指令を出力しないように構成されていてもよい。
【0015】
このように構成された電動作業機では、疑似異常発生信号を出力することによって、第1の停止回路が適正に動作するか否かを確認することができる。そのため、電動作業機の信頼性をより高めることが可能となる。
【0016】
第2の許容範囲は、第1の許容範囲を含み、第1の許容範囲よりも広くてもよい。このように構成された電動作業機では、物理量が第1の許容範囲に含まれなくなった場合に、ハードウェア処理によって(つまり第1の停止回路によって)物理量が第2の許容範囲に含まれていないことが認められるよりも先に、ソフトウェア処理によって(つまり制御回路によって)駆動指令を停止させることができる。
【0017】
電動作業機は、さらに、電動作業機の使用者によってオン操作又はオフ操作が行われるように構成された操作部を備えていてもよい。制御回路は、モータ制御処理において、操作部においてオン操作が行われた場合に駆動指令を出力し、操作部においてオフ操作が行われた場合に駆動指令の出力を停止してもよい。第1の停止回路は、操作部においてオン操作が行われた以後にモータを停止させた場合、そのモータを停止させた後に、検出回路から出力された検出情報が示す物理量が第2の許容範囲に含まれるようになっても、少なくとも、操作部においてオフ操作が行われるまでの間は、モータを停止させるように構成されていてもよい。
【0018】
このように構成された電動作業機では、物理量が第2の許容範囲に含まれなくなったことによりモータが停止された場合は、仮にその後に物理量が再び第2の許容範囲に含まれるようになっても、モータを駆動させるためには使用者が操作部をいったんオフ操作する必要がある。そのため、一旦停止したモータが不意に駆動されることが抑制され、使用者にとって使い勝手の良い電動作業機を提供することが可能となる。
【0019】
電動作業機は、さらに、モータを駆動するための電力を出力するバッテリを備えていてもよい。状態情報は、バッテリの状態を示すバッテリ情報を含んでいてもよい。情報出力回路は、バッテリ情報を出力するように構成されたバッテリ情報出力回路を含んでいてもよい。駆動停止回路は、バッテリ情報出力回路から出力されたバッテリ情報がバッテリの異常を示していることに応じて、バッテリからモータへの電力の供給を遮断するように構成された第2の停止回路を含んでいてもよい。
【0020】
なお、「バッテリ情報がバッテリの異常を示していること」は、「状態情報がモータを停止すべきであることを示していること」の1つ(一形態)であってもよい。また、第2の停止回路が「バッテリから前記モータへの電力の供給を遮断する」ことは、駆動停止回路が「モータ制御処理の実行状態にかかわらずモータを停止する」ことの1つ(一形態)であってもよい。
【0021】
このように構成された電動作業機では、同じバッテリ情報が、ソフトウェア処理とハードウェア処理の双方によって監視される。そして、ハードウェア処理によってバッテリからモータへの電力の供給が遮断された場合は、ソフトウェア処理においてモータの駆動が許可されてもモータは駆動されない。そのため、電動作業機の信頼性を向上させることが可能となる。
【0022】
電動作業機は、さらに、第1バッテリパックと、第2バッテリパックと、装着部と、直列接続配線とを備えていてもよい。第1バッテリパックは、モータを駆動するための第1の電力を出力するように構成されていてもよい。第2バッテリパックは、モータを駆動するための第2の電力を出力するように構成されていてもよい。装着部は、第1バッテリパック及び第2バッテリパックを着脱可能に構成されていてもよい。直列接続配線は、装着部に装着された第1バッテリパックにおける第1バッテリと、装着部に装着された第2バッテリパックにおける第2バッテリとを、直列に接続するように構成されていてもよい。
【0023】
状態情報は、第1バッテリの状態を示す第1バッテリ情報、および第2バッテリの状態を示す第2バッテリ情報を含んでいてもよい。情報出力回路は、第1出力回路と第2出力回路とを備えていてもよい。第1出力回路は、第1バッテリパックに設けられて第1バッテリ情報を出力するように構成されていてもよい。第2出力回路は、第2バッテリパックに設けられて第2バッテリ情報を出力するように構成されていてもよい。
【0024】
前記駆動停止回路は、第2の停止回路を含んでいてもよい。第2の停止回路は、第1出力回路から出力された第1バッテリ情報が第1バッテリの異常を示していること及び/または第2出力回路から出力された第2バッテリ情報が第2バッテリの異常を示していることに応じて、第1バッテリおよび第2バッテリからモータへの第1の電力及び第2の電力の供給を遮断するように構成されていてもよい。
【0025】
このように構成された電動作業機では、ハードウェア処理によってモータへの第1の電力及び第2の電力の供給が遮断された場合は、ソフトウェア処理においてモータの駆動が許可されてもモータは駆動されない。そのため、電動作業機の信頼性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態の電動作業機の斜視図である。
図2】実施形態の電動作業機の電気的構成を示す説明図である。
図3図2に示す電動作業機の一部を詳細に示す説明図である。
図4図4Aはトリガ操作部が引き操作されていないときのトリガスイッチ部の状態を示す説明図であり、図4Bはトリガ操作部が最大操作量よいも少ない一定操作量だけ引き操作されたときのトリガスイッチ部の状態を示す説明図であり、図4Cはトリガ操作部が最大操作量引き操作されたときのトリガスイッチ部の状態を示す説明図である。
図5】自己診断の第1の実行例を示すタイムチャートである。
図6】自己診断の第2の実行例を示すタイムチャートである。
図7】自己診断の第3の実行例を示すタイムチャートである。
図8】メイン処理を示すフローチャートである。
図9図8におけるS130のバッテリ状態処理の詳細を示すフローチャートである。
図10図8におけるS160のモータ制御処理の詳細を示すフローチャートである。
図11図8におけるS180の自己診断処理の詳細を示すフローチャートである。
図12図11におけるS410の自己診断履歴読み出し処理の詳細を示すフローチャートである。
図13図11におけるS420の自己診断実施処理の詳細を示すフローチャートである。
図14図11におけるS430の自己診断履歴書き込み処理の詳細を示すフローチャートである。
図15】トリガ検出機能診断処理を示すフローチャートである。
図16】トリガオフ検出チェック処理を示すフローチャートである。
図17】トリガオン検出チェック処理を示すフローチャートである。
図18】電動作業機の電気的構成の他の例を示す説明図である。
図19】電動作業機の電気的構成の他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(1)電動作業機の外観
図1に示す電動作業機1は、例えば、充電式刈払機として構成されている。充電式刈払機は、例えば草や小径木などを刈り払うために用いられる。図1に示すように、電動作業機1は、支持棹150と、ハンドル151と、カッタユニット160と、コントローラユニット165とを備える。
【0028】
支持棹150は、長尺円筒形状を備える。カッタユニット160は、支持棹150の第1端に設けられている。コントローラユニット165は、支持棹150の第2端に設けられている。
【0029】
カッタユニット160は、ハウジング161を備える。ハウジング161は、支持棹150の第1端に固定されている。ハウジング161の内部には、後述するモータ21(図2参照)が収容されている。
【0030】
ハウジング161は、回転刃162が着脱可能に構成されている。図1は、ハウジング161に回転刃162が装着された状態を示している。ハウジング161には、モータ21の回転を回転刃162に伝達する不図示の駆動機構が設けられている。これにより、モータ21が回転すると、その回転駆動力により回転刃162が回転する。
【0031】
コントローラユニット165は、ハウジング166を備えている。ハウジング166には、後述する制御回路23(図2参照)を含む各種回路が収容されている。ハウジング166は、第1バッテリパック5及び第2バッテリパック7を着脱可能に構成されている。
【0032】
ハンドル151は、支持棹150における長手方向の略中間部に設けられている。ハンドル151は、例えば、パイプがU字状に湾曲されて形成されている。ハンドル151の第1端には第1グリップ152が設けられ、ハンドル151の第2端には第2グリップ153が設けられている。第1グリップ152は、例えば電動作業機1の使用者の右手で把持され、第2グリップ153は、例えば電動作業機1の使用者の左手で把持される。
【0033】
第1グリップ152には、トリガ操作部20が設けられている。トリガ操作部20は、使用者によって引き操作される。引き操作とは、使用者の指などによってトリガ操作部20を第1グリップ152側へ引く操作、換言すれば、トリガ操作部20を第1グリップ152へ押し込む操作である。
【0034】
トリガ操作部20は、不図示の弾性部材によって、引き操作方向とは逆の操作解除方向へ付勢されている。そのため、トリガ操作部20は、使用者に引き操作されていない非操作状態では、図1に示すように、弾性部材の付勢力によってその大部分が第1グリップ152から突出している。一方、トリガ操作部20が使用者により引き操作されると、トリガ操作部20は、付勢力に抗して引き操作方向(即ち第1グリップ152側)へ移動し、その移動に応じて第1グリップ152内へ入っていく。
【0035】
第1グリップ152には、さらに、操作表示部170が設けられている。操作表示部170は、主電源スイッチ30と、表示パネル171とを備える。
主電源スイッチ30は、電動作業機1の主電源をオン又はオフにするために使用者により操作される。後述する制御回路23は、主電源スイッチ30が操作されることに応じて、電動作業機1の主電源をオン又はオフに設定する。
【0036】
本実施形態の主電源スイッチ30は、例えば、使用者により押し操作されている間だけオン状態にされて使用者が押し操作を解除するとオフ状態に復帰するいわゆるモーメンタリスイッチであってもよい。この場合、制御回路23は、主電源スイッチ30が押し戻し操作される度に、主電源をオン又はオフに交互に切り替えるようにしてもよい。押し戻し操作とは、主電源スイッチ30がオン状態にされてその後オフ状態に復帰される操作を示す。
【0037】
なお、主電源スイッチ30はどのようなスイッチでもよい。主電源スイッチ30は、例えば、使用者により押し操作される度にオン状態とオフ状態とが交互に切り替わるいわゆるオルタネートスイッチであってもよい。この場合、制御回路23は、主電源スイッチ30がオン状態にされている場合に主電源をオンに設定し、主電源スイッチ30がオフ状態にされている場合に主電源をオフに設定してもよい。また、主電源スイッチ30は、例えばスライド式のスイッチであってもよい。
【0038】
表示パネル171には、例えば主電源がオンに設定されているか否かを示す情報、或いは電動作業機1の各種状態を示す情報などの、各種の情報が表示される。表示パネル171は、どのような表示装置を備えていてもよい。表示パネル171は、例えば、液晶ディスプレイ、LEDなどを備えていてもよい。
【0039】
(2)電動作業機の電気的構成
図2及び図3を参照して、本実施形態の電動作業機1の電気的構成について説明する。なお、図3は、図2の一部(後述する制御回路23の右側)を抜粋してより詳細に図示したものである。図2に示すように、電動作業機1は、本体部3と、第1バッテリパック5と、第2バッテリパック7とを備える。なお、図2では、説明の便宜上、ハウジング161内のモータ21、ハウジング166内の各種回路、第1グリップ152に設けられたトリガ操作部20及び操作表示部170、などの、電動作業機1の各部に設けられた各種電気部品、各種回路などの集合体を、本体部3と称している。
【0040】
第1バッテリパック5は、バッテリ11と、バッテリ異常検出回路12とを備える。バッテリ11は、例えば、充電及び放電が可能な2次電池である。ただし、バッテリ11は、1次電池であってもよい。
【0041】
バッテリ異常検出回路12は、第1バッテリパック5を監視する。バッテリ異常検出回路12は、特定の放電指示期間中、異常を検出していない場合に、第1放電許可信号SA1を出力する。バッテリ異常検出回路12は、例えば、バッテリ11の状態を監視してもよい。より具体的には、バッテリ異常検出回路12は、例えば、バッテリ11の電圧値、バッテリ11から放電される電流の値、およびバッテリ11の温度のうちの少なくとも1つに基づいて、バッテリ11が異常であるか否かを判断してもよい。そして、バッテリ異常検出回路12は、バッテリ11が正常であると判断した場合は第1放電許可信号SA1を出力することによりバッテリ11が正常であることを示し、バッテリ11が異常であると判断した場合は第1放電許可信号SA1を出力しないことによりバッテリ11が異常であることを示してもよい。
【0042】
第1バッテリパック5には、本体部3から、後述するトリガ検出情報ST0が入力される。特定の放電指示期間は、例えば、トリガ検出情報ST0の論理レベルがHレベルである期間、即ち後述するトリガ操作部20がオン操作されている期間、であってもよい。
【0043】
第2バッテリパック7は、バッテリ16と、バッテリ異常検出回路17とを備える。第2バッテリパック7は、第1バッテリパック5と同様に構成されている。バッテリ異常検出回路17は、特定の放電指示期間中、第2バッテリパック7の異常を検出していない場合に、第2放電許可信号SA2を出力する。バッテリ異常検出回路17は、例えば、バッテリ16の状態を監視してもよい。より具体的には、バッテリ異常検出回路17は、例えば、バッテリ16の電圧値、バッテリ16から放電される電流の値、およびバッテリ16の温度のうちの少なくとも1つに基づいて、バッテリ16が異常であるか否かを判断してもよい。そして、バッテリ異常検出回路17は、バッテリ16が正常であると判断した場合は第2放電許可信号SA2を出力することによりバッテリ16が正常であることを示し、バッテリ16が異常であると判断した場合は第2放電許可信号SA2を出力しないことによりバッテリ16が異常であることを示してもよい。
【0044】
図2及び図3に示すように、本体部3は、トリガ操作部20と、モータ21と、モータ駆動回路22と、制御回路23と、主電源スイッチ30と、トリガスイッチ部26と、トリガ検出回路80と、過電圧検出回路50と、第1オフ検出回路39と、第2オフ検出回路49と、電流検出回路55と、過熱検出部60と、遮断ラッチ回路70と、表示パネル171とを備える。
【0045】
なお、本体部3には、不図示の電源回路が設けられている。電源回路は、電動作業機1に装着されている第1バッテリパック5又は第2バッテリパック7から入力されるバッテリ電圧から、一定電圧値を有する電源電圧を生成し、出力する。電源電圧は、不図示の制御電源ラインを介して、本体部3における各部へ供給される。当該各部は、電源回路から供給される電源電圧によって作動する。
【0046】
電源回路は、例えば、主電源がオン及びオフのどちらに設定されているかにかかわらず、バッテリ電圧が入力されている場合には電源電圧を出力するように構成されていてもよい。あるいは、電源回路は、主電源をオンに設定するための主電源スイッチ30の操作がなされた後、主電源がオフに設定されるまでの間に、電源電圧を出力するように構成されていてもよい。
【0047】
トリガスイッチ部26は、第1トリガスイッチ27と、第2トリガスイッチ28とを備える。第1トリガスイッチ27及び第2トリガスイッチ28は、トリガ操作部20が使用者により操作されることに連動してオン又はオフされる。
【0048】
第1トリガスイッチ27は、例えば、ノーマリーオープン型のスイッチである。第2トリガスイッチ28は、例えば、ノーマリークローズ型のスイッチである。トリガ操作部20がオフ操作されている時は、第1トリガスイッチ27はオフされ、第2トリガスイッチ28はオンされる。トリガ操作部20がオン操作されている時は、第1トリガスイッチ27はオンされて第2トリガスイッチ28はオフされる。
【0049】
本体部3は、さらに、抵抗器R1と、抵抗器R2と、NOT回路85とを備える。第1トリガスイッチ27の第1端は、グランドラインに接続され、第1トリガスイッチ27の第2端は、NOT回路85の入力端子に接続されている。第1トリガスイッチ27の第2端は、さらに、抵抗器R1を介して制御電源ラインに接続されている。
【0050】
第2トリガスイッチ28の第1端は、グランドラインに接続され、第2トリガスイッチ28の第2端は、トリガ検出回路80を介して制御回路23に接続されている。第2トリガスイッチ28の第2端は、さらに、抵抗器R2を介して制御電源ラインに接続されている。
【0051】
NOT回路85には、第1トリガスイッチ27の第2端の電圧が、二値信号として入力される。なお、二値信号とは、Highレベル(以下、「Hレベル」と略称する)及びLowレベル(以下、「Lレベル」と略称する)のうちのいずれかの論理レベルを示す信号である。NOT回路85は、入力される信号の論理レベルを反転させて出力する。
【0052】
ここで、トリガスイッチ部26のより具体的な構成について、図4A図4Cを参照して説明する。図4A図4Cに示すように、トリガスイッチ部26は、スイッチボックス100と、プランジャ101と、第1トリガスイッチ27と、第2トリガスイッチ28とを備える。プランジャ101は、トリガ操作部20に連結され、トリガ操作部20と連動する。
【0053】
第1トリガスイッチ27は、第1接点121と、第2接点122と、支持バネ123とを備える。第1接点121は、例えば、グランドラインに接続されている。第2接点122は、例えば、NOT回路85に接続されている。第2接点122は、不図示の回転軸を中心に回転可能に構成されている。支持バネ123は、第2接点122を、第1接点121に当接する方向へ付勢する。
【0054】
第2トリガスイッチ28は、第1電極111と、第2電極112と、基板113と、ブラシ114とを備える。ブラシ114は導体である。第1電極111及び第2電極112は、基板113上に設けられている。ブラシ114は、プランジャ101に設けられ、プランジャ101と共に移動される。第1電極111は、例えば、グランドラインに接続されている。第2電極112は、例えば、トリガ検出回路80に接続されている。
【0055】
プランジャ101は、使用者によりトリガ操作部20が引き操作されることに応じて、図4A図4Cにおける左方向、即ち前述の引き操作方向へ移動する。トリガ操作部20がオフ操作されている場合(使用者がトリガ操作部20に触れていない状態を含む)、プランジャ101は、不図示のバネの付勢力によって、図4Aに示す位置に支持される。この場合、第1トリガスイッチ27においては、第2接点122が、プランジャ101によって、支持バネ123の付勢力に抗して第1接点121から離れる方向へ回転移動されている。そのため、第1トリガスイッチ27はオフされている。
【0056】
一方、第2トリガスイッチ28は、第1電極111と第2電極112とが、ブラシ114を介して導通している。そのため、第2トリガスイッチ28はオンされている。
使用者がトリガ操作部20を引き操作すると、プランジャ101が、スイッチボックス100の内部へ移動する。これに伴い、第2トリガスイッチ28においては、ブラシ114がスイッチボックス100の内部へ移動していく。第1トリガスイッチ27においては、プランジャ101が第2接点122から徐々に離れていき、これに伴い、第2接点122が、支持バネ123の付勢力によって、第1接点121に近づいていく。
【0057】
プランジャ101の引き操作方向への移動が進んでいくと、例えば、図4Bに示すように、第2接点122が第1接点121に当接し、第1トリガスイッチ27がオンされる。プランジャ101の引き操作方向への移動がさらに進んでいくと、図4Cに示すように、ブラシ114が第1電極111から離れ、第2トリガスイッチ28がオフされる。前述のオン操作とは、図4Cに例示するように、第1トリガスイッチ27がオンされて第2トリガスイッチ28がオフされた状態になるようにトリガ操作部20が引き操作されることを意味する。使用者がトリガ操作部20の引き操作を解除すると、プランジャ101は、前述の弾性部材の付勢力によって、トリガ操作部20と共に、引き操作方向とは逆の操作解除方向へ移動し、図4Aに示す位置に戻る。
【0058】
トリガ検出回路80は、トリガ検出機能を備える。トリガ検出機能は、トリガスイッチ部26の状態に応じた情報を出力する機能である。具体的には、トリガ検出回路80は、第1トリガ情報ST1と、第2トリガ情報ST2と、トリガ判定情報STRとを出力する。
【0059】
トリガ検出回路80には、NOT回路85の出力信号が入力される。トリガ検出回路80には、さらに、第2トリガスイッチ28の第2端の電圧と、制御回路23から出力される第1疑似信号SF1とが入力される。
【0060】
トリガ検出回路80に入力された、第2トリガスイッチ28の第2端の電圧は、第2トリガ情報ST2として制御回路23へ出力される。第1疑似信号SF1は、制御回路23が後述するトリガ検出機能診断を実行する際に、制御回路23から出力される。
【0061】
第1トリガ情報ST1、第2トリガ情報ST2、トリガ判定情報STR、NOT回路85から入力される信号、及び第1疑似信号SF1は、いずれも、本実施形態では例えば二値信号である。
【0062】
第1トリガ情報ST1は、基本的には、第1トリガスイッチ27のオン又はオフの情報を示す。第2トリガ情報ST2は、第2トリガスイッチ28のオン又はオフの情報を示す。論理レベルがLレベルの第2トリガ情報ST2は、第2トリガスイッチ28がオンされていること、換言すればトリガ操作部20がオフ操作されていることを示す。論理レベルがHレベルの第2トリガ情報ST2は、第2トリガスイッチがオフされていること、換言すればトリガ操作部20がオン操作されていることを示す。
【0063】
トリガ検出回路80は、OR回路81と、AND回路82とを備える。OR回路81には、NOT回路85の出力信号と、第1疑似信号SF1とが入力される。
なお、第1疑似信号SF1は、詳しくは、論理レベルがHレベルの信号である。つまり、第1疑似信号SF1が出力される、とは、第1疑似信号SF1の論理レベルがHレベルになることを意味する。逆に、第1疑似信号SF1の論理レベルがLレベルである状態は、第1疑似信号SF1が出力されていない状態を意味する。このような、信号の論理レベルとその論理レベルが示す当該信号の出力状態との対応関係は、前述の第1放電許可信号SA1及び第2放電許可信号SA2、並びに後述する第3放電許可信号SA3、第4放電許可信号SA4、第1オフ検出信号SB1、第2オフ検出信号SB2、過電圧信号So1、過電流信号So2、第1過熱信号So31、第2過熱信号So32、第3過熱信号So33、第2疑似信号SF2、第3疑似信号SF31、第4疑似信号SF32、及び第5疑似信号SF33についても同様である。
【0064】
OR回路81は、入力される2つの信号の論理和を演算し、その演算結果を示す第1トリガ情報ST1を出力する。第1トリガ情報ST1は、制御回路23及びAND回路82に入力される。
【0065】
例えば、OR回路81に第1疑似信号SF1が入力されていない場合を想定する。この場合、第1トリガ情報ST1の論理レベルは、トリガ操作部20がオフ操作されている時はLレベルとなり、トリガ操作部20がオン操作されている時はHレベルとなる。つまり、第1トリガ情報ST1及び第2トリガ情報ST2のいずれも、論理レベルがLレベルの場合はトリガ操作部20がオフ操作されているトリガオフ状態を示し、論理レベルがHレベルの場合はトリガ操作部20がオン操作されているトリガオン状態を示す。
【0066】
一方、OR回路81に第1疑似信号SF1が入力されている場合は、トリガ操作部20の状態にかかわらず(即ち第1トリガスイッチ27の状態にかかわらず)第1トリガ情報ST1の論理レベルはHレベルとなる。つまり、OR回路81に第1疑似信号SF1を入力することにより、第1トリガ情報ST1を、トリガ操作部20がオン操作されている時と等価な状態にすることができる。
【0067】
AND回路82には、第1トリガ情報ST1と第2トリガ情報ST2とが入力される。AND回路82は、第1トリガ情報ST1と第2トリガ情報ST2との論理積を演算し、その演算結果を示すトリガ判定情報STRを出力する。トリガ判定情報STRは、遮断ラッチ回路70に入力される。論理レベルがLレベルのトリガ判定情報STRは、トリガオフ状態を示し、論理レベルがHレベルのトリガ判定情報STRは、トリガオン状態を示す。
【0068】
モータ21は、モータ駆動回路22からモータ駆動電力が入力されることにより回転駆動される。モータ21が回転すると、その回転駆動力が、不図示の駆動力伝達機構を介して、不図示の出力ツールへ伝達され、出力ツールが作動する。本実施形態のモータ21は、例えば、ブラシレスモータである。
【0069】
出力ツールは、電動作業機1に着脱可能であってもよい。出力ツールは、どのようなものであってもよい。出力ツールは、例えば、ドリルビット、ドライバビット、回転砥石、円形のノコ刃、などの、回転することにより被加工物を加工できるものであってもよい。あるいは、電動作業機1は、モータ21の回転が直線運動に変換されて出力されるように構成されていてもよい。
【0070】
電動作業機1は、さらに、第1給電ライン91と、第2給電ライン92と、主給電ライン93とを備える。第1給電ライン91の第1端は、第1バッテリパック5に接続され、バッテリ11の電圧が入力される。第1給電ライン91の第2端は、主給電ライン93の第1端に接続されている。
【0071】
第2給電ライン92の第1端は、第2バッテリパック7に接続され、バッテリ16の電圧が入力される。第2給電ライン92の第2端は、主給電ライン93の第1端に接続されている。
【0072】
主給電ライン93の第2端は、モータ駆動回路22に接続されている。主給電ライン93とグランドラインとの間には、コンデンサC0が接続されている。
第1バッテリパック5のバッテリ11の電力は、第1給電ライン91及び主給電ライン93を介してモータ駆動回路22に入力される。第2バッテリパック7のバッテリ16の電力は、第2給電ライン92及び主給電ライン93を介してモータ駆動回路22に入力される。
【0073】
モータ駆動回路22には、後述するように、バッテリ11の電力及びバッテリ16の電力のうちのいずれか一方が入力される。つまり、主給電ライン93には、バッテリ11の電圧及びバッテリ16の電圧のうちの何れか一方が入力される。主給電ライン93に入力される、バッテリ11の電圧又はバッテリ16の電圧のことを、以下、「入力バッテリ電圧」と称する。
【0074】
第1給電ライン91には、第1充電抑制回路31と、第1切替回路36とが設けられている。
第1切替回路36は、スイッチ部37と、AND回路38とを備える。スイッチ部37は、第1給電ライン91を導通又は遮断する。即ち、スイッチ部37がオンすると、第1給電ライン91における、スイッチ部37が設けられている部位が導通する。スイッチ部37がオフすると、第1給電ライン91における、スイッチ部37が設けられている部位が遮断され、バッテリ11からモータ21への電力の供給が遮断される。
【0075】
スイッチ部37は、AND回路38から出力される信号の論理レベルがHレベルの場合にオンし、AND回路38から出力される信号の論理レベルがLレベルの場合にオフする。
スイッチ部37は、どのように構成されていてもよい。本実施形態では、スイッチ部37は、例えば、nチャネルの金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)である。なお、後述するスイッチ部32,42,47も、どのように構成されていてもよく、本実施形態では例えばnチャネルのMOSFETである。
【0076】
AND回路38は、3つの信号入力端子を備え、信号入力端子の各々に、第1バッテリパック5から出力される第1放電許可信号SA1(Hレベルの信号)、制御回路23から出力される第3放電許可信号SA3(Hレベルの信号)、及び第2オフ検出回路49から出力される第2オフ検出信号SB2(Hレベルの信号)が入力されるように構成されている。AND回路38は、信号入力端子に入力される信号の論理積を演算し、その演算結果を示す信号をスイッチ部37のゲートへ出力する。
【0077】
AND回路38は、第1放電許可信号SA1、第3放電許可信号SA3及び第2オフ検出信号SB2がいずれも入力されている(即ちいずれもHレベルである)場合に、Hレベルの信号を出力する。AND回路38は、第1放電許可信号SA1、第3放電許可信号SA3及び第2オフ検出信号SB2のうちいずれか1つでも入力されていない(即ちいずれか1つでもLレベルである)場合は、Lレベルの信号を出力する。
【0078】
第2オフ検出信号SB2は、後述するように、第2充電抑制回路41のスイッチ部42及び第2切替回路46のスイッチ部47がいずれもオフされている場合に第2オフ検出回路49から出力される、Hレベルの信号である。スイッチ部42,47のうちいずれか1つでもオンされると、第2オフ検出信号SB2は出力されない。そのため、例えばスイッチ部47がオンされると、AND回路38に第2オフ検出信号SB2が入力されず、AND回路38の出力はLレベルとなってスイッチ部37はオフする。これにより、スイッチ部37,47が同時にオンされることが抑制される。
【0079】
第1充電抑制回路31は、スイッチ部32と、同期整流回路33とを備える。スイッチ部32は、第1給電ライン91を導通又は遮断する。即ち、スイッチ部32がオンされると、第1給電ライン91における、スイッチ部32が設けられている部位が導通する。スイッチ部32がオフされると、第1給電ライン91における、スイッチ部32が設けられている部位が遮断される。スイッチ部32は、同期整流回路33によってオン又はオフされる。
【0080】
第1充電抑制回路31において、スイッチ部32のゲートは、同期整流回路33に接続されている。スイッチ部32のソースは、第1バッテリパック5に接続されると共に、同期整流回路33に接続されている。スイッチ部32のドレインは、第1切替回路36におけるスイッチ部37のドレインに接続されている。
【0081】
同期整流回路33は、スイッチ部32のソースとドレインの間の電圧に基づいて、スイッチ部32をオン又はオフする。具体的には、スイッチ部32のソース-ドレイン間に存在する寄生ダイオードに、第1バッテリパック5から放電された電流が流れると、同期整流回路33は、その電流を検知してスイッチ部32をオンする。一方、同期整流回路33は、スイッチ部32をオンしている時に、第1バッテリパック5からの放電が停止されたこと、又は第1バッテリパック5への充電電流が流れていること、を検知した場合は、スイッチ部32をオフする。このような構成により、本体部3からバッテリ11へ電流が流れると、スイッチ部32がオフされてその電流が遮断され、バッテリ11の充電が抑制又は防止される。なお、同期整流回路33は、より具体的には、スイッチ部32のドレイン-ソース間の電圧値が所定の電圧値(例えば約30mV)となるように、スイッチ部32のゲート電圧を制御する。
【0082】
第2給電ライン92には、第2充電抑制回路41と、第2切替回路46とが設けられている。
第2切替回路46は、スイッチ部47と、AND回路48とを備える。スイッチ部47は、第2給電ライン92を導通又は遮断する。即ち、スイッチ部47がオンすると、第2給電ライン92における、スイッチ部47が設けられている部位が導通する。スイッチ部47がオフすると、第2給電ライン92における、スイッチ部47が設けられている部位が遮断され、バッテリ16からモータ21への電力の供給が遮断される。
【0083】
スイッチ部47は、AND回路48から出力される信号の論理レベルがHレベルの場合にオンし、AND回路48から出力される信号の論理レベルがLレベルの場合にオフする。
AND回路48は、3つの信号入力端子を備え、信号入力端子の各々に、第2バッテリパック7から出力される第2放電許可信号SA2(Hレベルの信号)、制御回路23から出力される第4放電許可信号SA4(Hレベルの信号)、及び第1オフ検出回路39から出力される第1オフ検出信号SB1(Hレベルの信号)が入力されるように構成されている。AND回路48は、信号入力端子に入力される信号の論理積を演算し、その演算結果を示す信号をスイッチ部47のゲートへ出力する。
【0084】
AND回路48は、第2放電許可信号SA2、第4放電許可信号SA4及び第1オフ検出信号SB1がいずれも入力されている(即ちいずれもHレベルである)場合に、Hレベルの信号を出力する。AND回路48は、第2放電許可信号SA2、第4放電許可信号SA4及び第1オフ検出信号SB1のうちいずれか1つでも入力されていない(即ちいずれか1つでもLレベルである)場合は、Lレベルの信号を出力する。
【0085】
第1オフ検出信号SB1は、後述するように、第1充電抑制回路31のスイッチ部32及び第1切替回路36のスイッチ部37がいずれもオフされている場合に第1オフ検出回路39から出力される、Hレベルの信号である。スイッチ部32,37のうちいずれか1つでもオンされると、第1オフ検出信号SB1は出力されない。そのため、例えばスイッチ部37がオンされると、AND回路48に第1オフ検出信号SB1が入力されず、AND回路48の出力はLレベルとなってスイッチ部47はオフする。これにより、スイッチ部37,47が同時にオンされることが抑制される。
【0086】
第2充電抑制回路41は、スイッチ部42と、同期整流回路43とを備える。スイッチ部42は、第2給電ライン92を導通又は遮断する。即ち、スイッチ部42がオンされると、第2給電ライン92における、スイッチ部42が設けられている部位が導通する。スイッチ部42がオフされると、第2給電ライン92における、スイッチ部42が設けられている部位が遮断される。スイッチ部42は、同期整流回路43によってオン又はオフされる。
【0087】
第2充電抑制回路41において、スイッチ部42のゲートは、同期整流回路43に接続されている。スイッチ部42のソースは、第2バッテリパック7に接続されると共に、同期整流回路43に接続されている。スイッチ部42のドレインは、第2切替回路46におけるスイッチ部47のドレインに接続されている。
【0088】
同期整流回路43は、スイッチ部42のソースとドレインの間の電圧に基づいて、スイッチ部42をオン又はオフする。具体的には、スイッチ部42のソース-ドレイン間に存在する寄生ダイオードに、第2バッテリパック7から放電された電流が流れると、同期整流回路43は、その電流を検知してスイッチ部42をオンする。一方、同期整流回路43は、スイッチ部42をオンしている時に、第2バッテリパック7からの放電が停止されたこと、又は第2バッテリパック7への充電電流が流れていること、を検知した場合は、スイッチ部42をオフする。このような構成により、本体部3からバッテリ16へ電流が流れると、スイッチ部42がオフされてその電流が遮断され、バッテリ16の充電が抑制又は防止される。なお、同期整流回路43は、より具体的には、スイッチ部42のドレイン-ソース間の電圧値が所定の電圧値(例えば約30mV)となるように、スイッチ部42のゲート電圧を制御する。
【0089】
第1給電ライン91における、第1充電抑制回路31と第1切替回路36との間は、第1オフ検出回路39に接続されている。第1オフ検出回路39は、第1充電抑制回路31のスイッチ部32及び第1切替回路36のスイッチ部37の両方がオフされていることを検知する。第1オフ検出回路39は、スイッチ部32及びスイッチ部37の両方がオフされている場合に、第1オフ検出信号SB1(Hレベルの信号)を出力する。第1オフ検出回路39は、スイッチ部32及びスイッチ部37のうちいずれか一方でもオンされている場合は、第1オフ検出信号SB1を出力しない。この場合、第1オフ検出回路39の出力ポートはLレベルとなる。
【0090】
第2給電ライン92における、第2充電抑制回路41と第2切替回路46との間は、第2オフ検出回路49に接続されている。第2オフ検出回路49は、第2充電抑制回路41のスイッチ部42及び第2切替回路46のスイッチ部47の両方がオフされていることを検知する。第2オフ検出回路49は、スイッチ部42及びスイッチ部47の両方がオフされている場合に、第2オフ検出信号SB2(Hレベルの信号)を出力する。第2オフ検出回路49は、スイッチ部42及びスイッチ部47のうちいずれか一方でもオンされている場合は、第2オフ検出信号SB2を出力しない。この場合、第2オフ検出回路49の出力ポートはLレベルとなる。
【0091】
モータ駆動回路22は、第1バッテリパック5又は第2バッテリパック7から入力される電力(以下、「バッテリ電力」と称する)を、前述のモータ駆動電力に変換して、モータ21へ出力する。モータ駆動電力は、例えば、三相電力である。
【0092】
具体的に、本実施形態のモータ駆動回路22は、例えば、不図示のインバータを含む。インバータは、並列接続されたU相スイッチペア、V相スイッチペア及びW相スイッチペアを含む。U相スイッチペア、V相スイッチペア及びW相スイッチペアの各々は、直列接続された2つの半導体スイッチング素子を備える。
【0093】
U相スイッチペア、V相スイッチペア及びW相スイッチペアは、それぞれ、モータ21に接続されている。U相スイッチペアは、モータ21へU相電圧を出力する。U相電圧は、U相スイッチペアにおける直列接続された2つの半導体スイッチング素子の接続点の電圧である。V相スイッチペアは、モータ21へV相電圧を出力する。V相電圧は、V相スイッチペアにおける直列接続された2つの半導体スイッチング素子の接続点の電圧である。W相スイッチペアは、モータ21へW相電圧を出力する。W相電圧は、W相スイッチペアにおける直列接続された2つの半導体スイッチング素子の接続点の電圧である。
【0094】
モータ駆動回路22は、駆動ライン90によって制御回路23と接続されている。モータ駆動回路22には、制御回路23から、駆動ライン90を介してモータ駆動指令SDが入力される。モータ駆動回路22にモータ駆動指令SDが入力されると、6個の半導体スイッチング素子の各々が、モータ駆動指令SDに従ってオン又はオフされ、これにより、前述のU相電圧、V相電圧及びW相電圧を含むモータ駆動電力が生成される。
【0095】
駆動ライン90には、遮断スイッチ29が設けられている。遮断スイッチ29は、駆動ライン90を導通又は遮断する。遮断スイッチ29がオンすると、制御回路23から出力されたモータ駆動指令SDが遮断スイッチ29を介してモータ駆動回路22へ入力される。遮断スイッチ29がオフされると、制御回路23からモータ駆動回路22へのモータ駆動指令SDの伝送が遮断される。
【0096】
遮断スイッチ29は、遮断ラッチ回路70から出力される遮断情報SSに応じてオン又はオフされる。即ち、遮断スイッチ29は、遮断情報SSの論理レベルが、指令許可を示すHレベルである場合にオンされる。遮断スイッチ29は、遮断情報SSの論理レベルが、指令遮断を示すLレベルである場合にオフされる。
【0097】
遮断スイッチ29は、どのように構成されていてもよい。遮断スイッチ29は、例えば、MOSFETであってもよい。
過電圧検出回路50、電流検出回路55、及び過熱検出部60は、5つの異常状態を検出するために設けられている。5つの異常状態は、過電圧状態、過電流状態、U相過熱状態、V相過熱状態、及びW相過熱状態を含む。
【0098】
過電圧状態とは、例えば、主給電ライン93を介してモータ駆動回路22に入力される入力バッテリ電圧の値(以下、「入力バッテリ電圧値」と称する)が、規定の正常電圧範囲よりも高い値になっている状態を示す。過電流状態とは、例えば、モータ駆動回路22を介してモータ21に流れる電流の値(以下、「モータ電流値」と称する)が、規定の正常電流範囲よりも高い値になっている状態を示す。
【0099】
U相過熱状態とは、例えば、後述するU相温度が、規定の正常温度範囲よりも高い値になっている状態を示す。V相過熱状態とは、例えば、後述するV相温度が、規定の正常温度範囲よりも高い値になっている状態を示す。W相過熱状態とは、例えば、後述するW相温度が、規定の正常温度範囲よりも高い値になっている状態を示す。
【0100】
過電圧検出回路50、電流検出回路55、及び過熱検出部60は、いずれも、後述するように、プログラムに基づくソフトウェア処理を行うことなく、ハードウェア処理にて、対応する異常状態を検出する。
【0101】
過電圧検出回路50は、入力バッテリ電圧値を検出し、検出した入力バッテリ電圧値に基づく情報を出力する。具体的には、過電圧検出回路50は、電圧信号SVを出力する。電圧信号SVは、入力バッテリ電圧値を示すアナログ信号である。
【0102】
過電圧検出回路50は、さらに、過電圧状態を検出する機能を備える。即ち、過電圧検出回路50は、入力バッテリ電圧値が、例えば、前述の正常電圧範囲よりも高い第1電圧閾値以上の場合に、過電圧状態が発生していることを示す、過電圧信号So1を出力する。
【0103】
また、過電圧検出回路50には、制御回路23から第2疑似信号SF2が入力される。第2疑似信号SF2は、制御回路23が後述する過電圧保護機能診断を実行する際に制御回路23から出力される。
【0104】
過電圧検出回路50は、例えば、図3に示すように構成されていてもよい。図3に示すように、過電圧検出回路50は、コンパレータ51と、バッファ52と、抵抗器R3,R4と、コンデンサC1と、ダイオードD1とを備える。ダイオードD1、抵抗器R3及び抵抗器R4は、この順に、主給電ライン93とグランドラインとの間に直列接続されている。コンデンサC1は、ダイオードD1のカソードとグランドラインとの間に接続されている。ダイオードD1及びコンデンサC1を含む回路は、いわゆるピークホールド回路として機能する。
【0105】
抵抗器R3と抵抗器R4の接続点の電圧が、電圧信号SVとして出力される。また、抵抗器R3と抵抗器R4の接続点の電圧は、コンパレータ51に入力される。コンパレータ51は、入力バッテリ電圧値が第1電圧閾値より低い場合は過電圧信号So1を出力せず、入力バッテリ電圧値が第1電圧閾値以上の場合に過電圧信号So1を出力するように構成されている。
【0106】
バッファ52は、第2疑似信号SF2が入力されるように構成されている。バッファ52の出力信号は、コンパレータ51に入力される。第2疑似信号SF2の電圧値は、過電圧検出回路50が正常であればコンパレータ51から過電圧信号So1が出力される値である。そのため、過電圧検出回路50が正常であれば、実際には過電圧状態が発生していなくても、第2疑似信号SF2が入力されると過電圧信号So1が出力される。つまり、第2疑似信号SF2は、疑似的に過電圧状態を発生させるための信号である。
【0107】
電流検出回路55はモータ電流値を検出し、検出したモータ電流値に基づく情報を出力する。具体的には、電流検出回路55は、電流信号SC及び過電流信号So2を出力する。電流信号SCは、モータ電流値を示すアナログ信号である。
【0108】
電流検出回路55は、さらに、過電流状態を検出する機能を備える。即ち、電流検出回路55は、モータ電流値が、例えば、前述の正常電流範囲よりも高い第1電流閾値以上の場合に、過電流状態が発生していることを示す、過電流信号So2を出力する。
【0109】
電流検出回路55は、例えば、図3に示すように構成されていてもよい。図3に示すように、電流検出回路55は、増幅回路57と、コンパレータ56と、抵抗器R5とを備える。抵抗器R5は、モータ電流が流れる通電経路に設けられ、モータ電流が流れる。よって、抵抗器R5の両端間には、モータ電流の値に応じた電圧が発生する。増幅回路57は、抵抗器R5の両端間の電圧を増幅する。
【0110】
増幅回路57により増幅された電圧は、電流信号SCとして出力される。また、増幅回路57により増幅された電圧は、コンパレータ56に入力される。コンパレータ56は、モータ電流値が第1電流閾値より低い場合は過電流信号So2を出力せず、モータ電流値が第1電流閾値以上の場合に過電流信号So2を出力するように構成されている。
【0111】
過熱検出部60は、モータ駆動回路22の温度を検出する。過熱検出部60は、より具体的には、図3に示すように、第1過熱検出回路61と、第2過熱検出回路62と、第3過熱検出回路63とを備える。
【0112】
第1過熱検出回路61は、モータ駆動回路22におけるU相スイッチペアの温度(以下、「U相温度」と称する)を検出する。U相温度は、具体的には、例えば、U相スイッチペアに含まれる2つの半導体スイッチング素子のうちの1つの温度であってもよい。この場合、U相温度は、2つの半導体スイッチング素子のうちどちらの温度であってもよく、例えば、2つの半導体スイッチング素子のうち、オンされる期間が相対的に長い方の温度であってもよい。
【0113】
第1過熱検出回路61は、検出したU相温度に基づく情報を出力する。具体的には、第1過熱検出回路61は、第1温度信号STM1及び第1過熱信号So31を出力する。第1温度信号STM1は、U相温度を示すアナログ信号である。
【0114】
第1過熱検出回路61は、さらに、U相過熱状態を検出する機能を備える。即ち、第1過熱検出回路61は、U相温度が、例えば、前述の正常温度範囲よりも高い第1U相温度閾値以上の場合に、U相過熱状態が発生していることを示す、第1過熱信号So31を出力する。
【0115】
また、第1過熱検出回路61には、制御回路23から第3疑似信号SF31が入力される。第3疑似信号SF31は、制御回路23が後述する第1過熱保護機能診断を実行する際に制御回路23から出力される。
【0116】
第1過熱検出回路61は、例えば、図3に示すように構成されていてもよい。図3に示すように、第1過熱検出回路61は、温度検出素子66と、コンパレータ67と、スイッチ68と、抵抗器R6とを備える。温度検出素子66は、前述のU相温度を検出できるように、U相温度の検出対象又はその近傍に設けられる。温度検出素子66は、本実施形態では例えば、負の抵抗温度特性を有するNTCサーミスタである。
【0117】
抵抗器R6と温度検出素子66は、この順で、制御電源ラインとグランドラインとの間に直列接続されている。スイッチ68は、抵抗器R6と温度検出素子66との接続点と、グランドラインとの間に接続されている。
【0118】
抵抗器R6と温度検出素子66との接続点の電圧は、第1温度信号STM1として出力される。また、抵抗器R6と温度検出素子66との接続点の電圧は、コンパレータ67に入力される。コンパレータ67は、U相温度が第1U相温度閾値より低い場合は第1過熱信号So31を出力せず、U相温度が第1U相温度閾値以上の場合に第1過熱信号So31を出力するように構成されている。
【0119】
スイッチ68は、第3疑似信号SF31が入力されていない通常時はオフされている。第3疑似信号SF3が入力されている間は、スイッチ68はオンする。スイッチ68がオンすると、コンパレータ67に入力される電圧は略0Vとなる。この場合、第1過熱検出回路61が正常であれば、コンパレータ67から第1過熱信号So31が出力される。つまり、実際にはU相過熱状態が発生していなくても、第3疑似信号SF31が入力されると、疑似的にU相過熱状態が発生する。
【0120】
第2過熱検出回路62及び第3過熱検出回路63は、本実施形態では、いずれも、温度検出素子66が設けられる位置を除き、第1過熱検出回路61と同じように構成されている。
【0121】
即ち、第2過熱検出回路62は、モータ駆動回路22におけるV相スイッチペアの温度(以下、「V相温度」と称する)を検出する。V相温度は、具体的には、U相温度と同様に、例えば、V相スイッチペアに含まれる2つの半導体スイッチング素子のうちの1つの温度であってもよい。第2過熱検出回路62は、検出したV相温度を示すアナログの第2温度信号STM2を出力する。
【0122】
第2過熱検出回路62は、さらに、V相過熱状態を検出する機能を備える。即ち、第2過熱検出回路62は、V相温度が、例えば、前述の正常温度範囲よりも高い第1V相温度閾値以上の場合に、V相過熱状態が発生していることを示す、第2過熱信号So32を出力する。
【0123】
また、第2過熱検出回路62には、制御回路23から第4疑似信号SF32が入力される。第4疑似信号SF32は、制御回路23が後述する第2過熱保護機能診断を実行する際に制御回路23から出力される。実際にはV相過熱状態が発生していなくても、第4疑似信号SF32が入力されると、疑似的にV相過熱状態が発生し、第2過熱信号So32が出力される。
【0124】
第3過熱検出回路63は、モータ駆動回路22におけるW相スイッチペアの温度(以下、「W相温度」と称する)を検出する。W相温度は、具体的には、U相温度と同様に、例えば、W相スイッチペアに含まれる2つの半導体スイッチング素子のうちの1つの温度であってもよい。第3過熱検出回路63は、検出したW相温度を示すアナログの第3温度信号STM3を出力する。
【0125】
第3過熱検出回路63は、さらに、W相過熱状態を検出する機能を備える。即ち、第3過熱検出回路63は、W相温度が、例えば、前述の正常温度範囲よりも高い第1W相温度閾値以上の場合に、W相過熱状態が発生していることを示す、第3過熱信号So33を出力する。
【0126】
また、第3過熱検出回路63には、制御回路23から第5疑似信号SF33が入力される。第5疑似信号SF33は、制御回路23が後述する第3過熱保護機能診断を実行する際に制御回路23から出力される。実際にはW相過熱状態が発生していなくても、第5疑似信号SF33が入力されると、疑似的にW相過熱状態が発生し、第3過熱信号So33が出力される。
【0127】
なお、第1U相温度閾値、第1V相温度閾値及び第1W相温度閾値は、全て同じ値であってもよいし、いずれか2つが同じ値であってもよいし、全て異なる値であってもよい。
遮断ラッチ回路70には、トリガ判定情報STRが入力される。また、遮断ラッチ回路70には、過電圧信号So1と、過電流信号So2と、第1過熱信号So31と、第2過熱信号So32と、第3過熱信号So33とが入力され得る。遮断ラッチ回路70は、これらの入力される情報及び各信号に基づいて、遮断情報SSを出力する。また、遮断ラッチ回路70は、異常検出情報Sorを出力する。
【0128】
遮断ラッチ回路70は、電動作業機1の状態が、モータ21を駆動させてもよい駆動許可状態である場合に、指令許可を示すHレベルの遮断情報SSを出力して遮断スイッチ29をオンする。一方、遮断ラッチ回路70は、電動作業機1の状態が、モータ21を駆動させるべきではない駆動禁止状態である場合に、指令遮断を示すLレベルの遮断情報SSを出力して遮断スイッチ29をオフする。
【0129】
駆動許可状態は、本実施形態では、トリガ判定情報STRがトリガオン状態を示していて、さらに、過電圧信号So1、過電流信号So2、第1過熱信号So31、第2過熱信号So32、及び第3過熱信号So33がいずれも入力されていない(つまり、前述の5つの異常状態のいずれも検出されていない)異常未検出状態であることを含む。
【0130】
駆動禁止状態は、本実施形態では、トリガ判定情報STRがトリガオフ状態を示しているか、又は、過電圧信号So1、過電流信号So2、第1過熱信号So31、第2過熱信号So32、及び第3過熱信号So33のうちの1つ以上が入力されている(つまり、前述の5つの異常状態のうちの1つ以上が検出されている場合)異常検出状態であることを含む。
【0131】
遮断ラッチ回路70は、さらに、遮断ラッチ機能を備える。遮断ラッチ機能は、トリガ操作部20がオン操作されている間に、異常未検出状態から異常検出状態に変化したことによって、遮断情報SSを、指令許可を示す情報から指令遮断を示す情報に変化させた場合に、その後再び異常未検出状態に変化したとしても、トリガ操作部20がオフ操作されるまでは、指令遮断を示す遮断情報SSの出力を継続させる機能である。
【0132】
遮断ラッチ回路70は、例えば、図3に示すように構成されていてもよい。図3に示すように、遮断ラッチ回路70は、第1フリップフロップ71と、OR回路72と、NOT回路73と、OR回路74と、第2フリップフロップ75と、AND回路76と、抵抗器R7,R8と、コンデンサC2,C3とを備える。第1フリップフロップ71及び第2フリップフロップ75は、本実施形態では、いずれもD型フリップフロップである。即ち、第1フリップフロップ71及び第2フリップフロップ75は、クロック入力端子に入力される信号の立ち上がりエッジ(即ちLレベルからHレベルへの論理レベルの変化)が発生する度に、その時データ入力端子に入力されている信号の論理レベルと同じ論理レベルの信号を出力端子から出力する。そして、次に再び立ち上がりエッジが発生するまでは、データ入力端子に入力される信号の論理レベルが変化しても出力端子から出力される信号の論理レベルは維持される。
【0133】
OR回路72には、過電圧信号So1と、過電流信号So2と、第1過熱信号So31と、第2過熱信号So32と、第3過熱信号So33とが入力され得る。OR回路72は、5つの入力信号の論理和を演算し、その演算結果を出力する。
【0134】
トリガ判定情報STRは、第1フリップフロップ71のクロック入力端子及びAND回路76に入力される。トリガ判定情報STRは、さらに、コンデンサC2を介してOR回路74に入力される。
【0135】
コンデンサC2とOR回路74との接続点と、グランドラインとの間には、抵抗器R8が接続されている。即ち、コンデンサC2及び抵抗器R8を含む回路は、トリガ判定情報STRを微分してOR回路74へ入力する微分回路として機能する。
【0136】
OR回路72の出力信号は、NOT回路73に入力されると共に、抵抗器R7を介してOR回路74に入力される。OR回路72の出力信号は、さらに、異常検出情報Sorとして制御回路23に入力される。
【0137】
抵抗器R7とOR回路74との接続点と、グランドラインとの間には、コンデンサC3が接続されている。即ち、抵抗器R7及びコンデンサC3を含む回路は、OR回路72の出力信号を積分してOR回路74へ入力する積分回路として機能する。OR回路74の出力信号は、第2フリップフロップ75のクロック入力端子に入力される。
【0138】
NOT回路73の出力信号は、第1フリップフロップ71及び第2フリップフロップ75のデータ入力端子に入力される。第1フリップフロップ71の出力信号及び第2フリップフロップ75の出力信号は、いずれも、AND回路76に入力される。
【0139】
このように構成された遮断ラッチ回路70は、例えば次のように動作する。例えば、トリガ判定情報STRの論理レベルが、トリガオフ状態を示すLレベルである場合を想定する。この場合、AND回路76の出力信号がLレベルになる。つまりこの場合、遮断情報SSは、指令遮断を示す。そのため、遮断スイッチ29はオフされる。
【0140】
また例えば、過電圧信号So1、過電流信号So2、第1過熱信号So31、第2過熱信号So32及び第3過熱信号So33のいずれもOR回路72に入力されていない場合を想定する。この場合、第1フリップフロップ71及び第2フリップフロップ75のデータ入力端子の論理レベルは、Hレベルとなる。
【0141】
このとき、トリガ判定情報STRの論理レベルがトリガオン状態を示すHレベルに変化したことを想定する。この場合、第1フリップフロップ71及び第2フリップフロップ回路75の入力端子に入力される信号に立ち上がりエッジが発生するため、第1フリップフロップ回路71及び第2フリップフロップ回路75の出力端子から出力される信号の論理レベルはHレベルになる。これにより、AND回路76の出力信号がHレベルになる。つまりこの場合、遮断情報SSは、指令許可を示す情報に変化する。そのため、遮断スイッチ29がオンされる。
【0142】
指令許可を示す遮断情報SSが出力されている時に、過電圧信号So1、過電流信号So2、第1過熱信号So31、第2過熱信号So32及び第3過熱信号So33のうちいずれか1つ以上がOR回路72に入力された場合を想定する。この場合、第2フリップフロップ75のデータ入力端子の論理レベルがLレベルとなり、その後、第2フリップフロップ75のクロック入力端子の論理レベルがHレベルになる。データ入力端子の論理レベルがLレベルになるタイミングからクロック入力端子の論理レベルがHレベルになるタイミングまでの時間差は、抵抗器R7及びコンデンサC3を含む積分回路の時定数に基づく。これにより、第2フリップフロップ75の出力信号がLレベルとなり、AND回路76の出力信号がLレベルとなる。つまりこの場合、遮断情報SSが、指令遮断を示す情報に変化する。そのため、遮断スイッチ29がオフされる。
【0143】
その後、異常が回復してOR回路72の入力端子がいずれもLレベルに変化したことを想定する。この場合、第1フリップフロップ71及び第2フリップフロップ75のデータ入力端子の論理レベルはHレベルに変化するが、トリガ判定情報STRがHレベルに維持されている間は、第1フリップフロップ71及び第2フリップフロップ75の出力信号は変化せず、遮断情報SSは指令遮断を示す情報に維持される。そのため、遮断スイッチ29も、オフされた状態に維持される。
【0144】
その後、トリガ操作部20がオフ操作され、再びオン操作されることを想定する。この場合、第1フリップフロップ71及び第2フリップフロップ75のクロック入力端子の論理レベルがLレベルに変化し、その後再びHレベルに変化する。そのため、第1フリップフロップ71及び第2フリップフロップ75の出力信号がHレベルに変化する。これにより、AND回路76の出力信号がHレベルに変化し、遮断情報SSは指令許可を示す情報に変化する。そのため、遮断スイッチ29はオンされる。
【0145】
このように、遮断ラッチ回路70は、ソフトウェア処理を行うことなく、ハードウェア処理にて、遮断情報SSを出力する機能及び遮断ラッチ機能を含む各種機能を達成する。
制御回路23は、前述の電源回路から入力される電源電圧によって動作する。制御回路23は、CPU24及びメモリ25を含むマイクロコンピュータを備えている。メモリ25は、RAM、ROM、フラッシュメモリ等の半導体メモリを含んでもよい。メモリ25は、CPU24が電動作業機1の各種機能を達成するために読み込み、実行する各種プログラムやデータを記憶する。これら各種機能は、前述のようなソフトウェア処理に限るものではなく、その一部又は全部が、論理回路やアナログ回路等を組み合わせたハードウェアを用いて達成されてもよい。
【0146】
制御回路23には、第1トリガ情報ST1、第2トリガ情報ST2、トリガ判定情報STR、第1放電許可信号SA1、第2放電許可信号SA2、第1オフ検出信号SB1、第2オフ検出信号SB2、遮断情報SS、電圧信号SV、電流信号SC、第1温度信号STM1~第3温度信号STM3、及び異常検出情報Sorが入力される。制御回路23には、さらに、主電源スイッチ30から、使用者による主電源スイッチ30の操作を示す情報が入力される。
【0147】
制御回路23は、主電源スイッチ30から入力される情報に基づいて、電動作業機1の主電源をオン又はオフに設定する。本実施形態の主電源スイッチ30は、前述の通り例えばモーメンタリスイッチである。そのため、制御回路23は、主電源スイッチ30が前述の押し戻し操作される度に、主電源をオン又はオフに交互に切り替える。また、制御回路23は、制御回路23に入力される上述の各情報及び各信号に基づいて、各種の機能を達成する。
【0148】
また、本実施形態の制御回路23は、主電源をオンに設定した後、主電源スイッチ30が操作されなくても、トリガ操作部20が引き操作されない状態が規定時間継続したら、主電源をオフに設定する。
【0149】
制御回路23は、第1放電許可信号SA1及び第2放電許可信号SA2が共に入力されている場合、第3放電許可信号SA3及び第4放電許可信号SA4のうちの何れか一方を出力する。この場合、第1給電ライン91上のスイッチ部37又は第2給電ライン92上のスイッチ部47がオンされる。
【0150】
制御回路23は、第1放電許可信号SA1が入力されていて第2放電許可信号SA2が入力されていない場合は、第3放電許可信号SA3を出力して第4放電許可信号SA4を出力しない。この場合、第1給電ライン91上のスイッチ部37がオンされ、第2給電ライン92上のスイッチ部47はオフされる。
【0151】
制御回路23は、第2放電許可信号SA2が入力されていて第1放電許可信号SA1が入力されていない場合は、第4放電許可信号SA4を出力して第3放電許可信号SA3を出力しない。この場合、第2給電ライン92上のスイッチ部47がオンされ、第1給電ライン91上のスイッチ部37はオフされる。
【0152】
制御回路23は、主電源がオンに設定されている主電源オン期間中、トリガ操作部20がオン操作された場合、モータ駆動回路22へモータ駆動指令SDを出力することにより、モータ21を駆動する。
【0153】
制御回路23は、第1トリガ情報ST1及び第2トリガ情報ST2がいずれもトリガオン状態を示している(即ち論理レベルがHレベルである)場合に、トリガ操作部20がオン操作されたと判断して、モータ駆動指令SDを出力する。制御回路23は、第1トリガ情報ST1及び第2トリガ情報ST2のうちいずれか一方でもトリガオフ状態を示している(即ち論理レベルがLレベルである)場合は、トリガ操作部20がオフ操作されたと判断して、モータ駆動指令SDを出力しない。
【0154】
制御回路23は、第1バッテリパック5及び第2バッテリパック7へ、トリガ検出情報ST0を出力する。トリガ検出情報ST0は、トリガ操作部20がオン操作されているか否かを示す。制御回路23は、トリガ操作部20がオフ操作されていると判断している場合は、オフ操作されていることを示す、論理レベルがLレベルのトリガ検出情報ST0を出力する。制御回路23は、トリガ操作部20がオン操作されていると判断している場合は、オン操作されていることを示す、論理レベルがHレベルのトリガ検出情報ST0を出力する。なお、制御回路23に電源電圧が供給されず制御回路23が動作を停止している間は、トリガ検出情報ST0の論理レベルはLレベルに維持される。
【0155】
制御回路23は、主電源オン期間中、モータ駆動指令SDを出力した場合、モータ21を駆動したことを示すモータ駆動履歴をメモリ25に記憶する。
制御回路23は、異常検出機能を備える。異常検出機能は、具体的には、過電圧検出機能、過電流検出機能及び過熱検出機能を備える。これらの異常検出機能は、制御回路23において、CPU24が後述するメイン処理を実行することによって達成される。つまり、これらの異常検出機能は、ソフトウェアに基づいて達成される。
【0156】
過電圧検出機能は、前述の過電圧状態を検出する機能である。即ち、制御回路23は、過電圧検出回路50から入力された電圧信号SVが示す入力バッテリ電圧値に基づいて、過電圧状態を検出する。例えば、制御回路23は、入力バッテリ電圧値が、前述の正常電圧範囲よりも高い第2電圧閾値以上である場合に、過電圧状態が発生していると判断する。第2電圧閾値は、例えば、第1電圧閾値と同じ値であってもよいし、第1電圧閾値より大きくてもよいし、第1電圧閾値より小さくてもよい。
【0157】
過電流検出機能は、前述の過電流状態を検出する機能である。即ち、制御回路23は、電流検出回路55から入力された電流信号SCが示すモータ電流値に基づいて、過電流状態を検出する。例えば、制御回路23は、モータ電流値が、前述の正常電流範囲よりも高い第2電流閾値以上である場合に、過電流状態が発生していると判断する。第2電流閾値は、例えば、第1電流閾値と同じ値であってもよいし、第1電流閾値より大きくてもよいし、第1電流閾値より小さくてもよい。
【0158】
過熱検出機能は、より具体的には、第1過熱検出機能、第2過熱検出機能及び第3過熱検出機能を備える。
第1過熱検出機能は、前述のU相過熱状態を検出する機能である。即ち、制御回路23は、第1過熱検出回路61から入力された第1温度信号STM1が示すU相温度に基づいて、U相過熱状態を検出する。例えば、制御回路23は、U相温度が、前述の正常温度範囲よりも高い第2U相温度閾値以上である場合に、U相過熱状態が発生していると判断する。第2U相温度閾値は、例えば、第1U相温度閾値と同じ値であってもよいし、第1U相温度閾値より大きくてもよいし、第1U相温度閾値より小さくてもよい。
【0159】
第2過熱検出機能は、前述のV相過熱状態を検出する機能である。即ち、制御回路23は、第2過熱検出回路62から入力された第2温度信号STM2が示すV相温度に基づいて、V相過熱状態を検出する。例えば、制御回路23は、V相温度が、前述の正常温度範囲よりも高い第2V相温度閾値以上である場合に、V相過熱状態が発生していると判断する。第2V相温度閾値は、例えば、第1V相温度閾値と同じ値であってもよいし、第1V相温度閾値より大きくてもよいし、第1V相温度閾値より小さくてもよい。
【0160】
第3過熱検出機能は、前述のW相過熱状態を検出する機能である。即ち、制御回路23は、第3過熱検出回路63から入力された第3温度信号STM3が示すW相温度に基づいて、W相過熱状態を検出する。例えば、制御回路23は、W相温度が、前述の正常温度範囲よりも高い第2W相温度閾値以上である場合に、W相過熱状態が発生していると判断する。第2W相温度閾値は、例えば、第1W相温度閾値と同じ値であってもよいし、第1W相温度閾値より大きくてもよいし、第1W相温度閾値より小さくてもよい。
【0161】
なお、第2U相温度閾値、第2V相温度閾値及び第2W相温度閾値は、全て同じ値であってもよいし、いずれか2つが同じ値であってもよいし、全て異なる値であってもよい。
制御回路23は、モータ駆動指令SDを出力している間、上述の異常検出機能によっていずれかの異常を検出した場合、トリガ操作部20がオン操作されていても、モータ駆動指令SDの出力を停止してモータ21を停止する。この場合、モータ駆動中に異常を検出したことを示す異常駆動履歴をメモリ25に記憶する。
【0162】
(3)自己診断機能の説明
制御回路23は、自己診断機能を備える。自己診断機能は、複数の診断項目に対応した複数の自己診断を、規定順序に従って、特定の診断タイミング毎に1つずつ実行する機能である。
【0163】
本実施形態では、例えば、6種類の診断項目を備える。第1診断項目は、トリガ検出機能診断である。第2診断項目は、給電ライン機能診断である。第3診断項目は、第1過熱保護機能診断である。第4診断項目は、第2過熱保護機能診断である。第5診断項目は、第3過熱保護機能診断である。第6診断項目は、過電圧保護機能診断である。
【0164】
各診断項目の自己診断を実行する規定順序は、どのような順序であってもよい。本実施形態の規定順序は、例えば、1番目が第1診断項目、2番目が第2診断項目、3番目が第3診断項目、4番目が第4診断項目、5番目が第5診断項目、6番目が第6診断項目、である。第6診断項目の次は、第1診断項目に戻り、第1診断項目から再び上記順序で診断が実行される。
【0165】
各診断項目に対応した各自己診断の診断タイミングは、例えば、給電ライン機能診断を除き、主電源オフタイミングである。主電源オフタイミングとは、主電源がオフにされた時である。なお、主電源オフタイミングは、主電源がオフされた直後から一定時間経過するまでの間における任意のタイミングであってもよい。
【0166】
給電ライン機能診断を除く他の各自己診断の診断タイミングが主電源オフタイミングに設定されている理由の1つは、次の通りである。即ち、本実施形態の制御回路23は、自己診断の実行中にトリガ操作部20がオン操作されると自己診断を中断するように構成されている。トリガ操作部20がオンされる可能性が低いタイミングで自己診断が実行されれば、自己診断が中断される可能性も低くなる。主電源オフタイミングは、電動作業機1の使用者が、電動作業機1を用いた作業を終了したことを意思表示したタイミングであると考えられ、そのタイミングからしばらくの間はトリガ操作部20がオンされる可能性は低い。そこで、本実施形態では、給電ライン機能診断を除き、各自己診断の診断タイミングが主電源オフタイミングに設定されている。
【0167】
制御回路23は、主電源オフタイミングにおいて、その主電源オフタイミング直前の主電源オン期間(以下、「直前オン期間」と称する)中にモータ駆動履歴が記憶されていない場合(即ちモータ21が駆動されなかった場合)、又は、直前オン期間中に異常駆動履歴が記憶された場合(即ちモータ21が駆動中に異常が検出されて停止された場合)は、自己診断を実行しない。この場合、次の診断タイミングにおける診断項目は、今回実行しなかった診断項目に再び設定される。
【0168】
給電ライン機能診断の実行タイミングは、例えば、主電源オンタイミングである。主電源オンタイミングとは、主電源がオンされた時である。なお、主電源オンタイミングは、主電源がオンされた直後から一定時間経過するまでの間における任意のタイミングであってもよい。
【0169】
制御回路23は、診断項目毎に、自己診断を行った結果を示す自己診断履歴を、メモリ25に記憶する。具体的には、制御回路23は、診断の結果が異常を示すものであった場合は、自己診断履歴として異常判定を示す情報を記憶する。この場合、制御回路23は、次の主電源オンタイミングにおいて、今回と同じ診断項目の自己診断を再び実行する。制御回路23は、診断の結果が正常を示すものであった場合は、自己診断履歴として正常判定を示す情報を記憶する。
【0170】
制御回路23は、診断が正常に完了せずに中断された場合は、今回と同じ診断項目の自己診断を、その中断後に最初に到来する、当該診断項目に対応した正規の診断タイミングで、再び実行する。
【0171】
トリガ検出機能診断においては、制御回路23は、トリガ検出回路80及び遮断ラッチ回路70が正常に動作するか否かを診断する。具体的には、制御回路23は、トリガ検出回路80へ第1疑似信号SF1を出力することにより、第1トリガ情報ST1を疑似的にトリガオン状態を示す情報(即ちHレベル)にする。
【0172】
制御回路23は、第1疑似信号SF1を出力している間、制御回路23に入力される第1トリガ情報ST1、第2トリガ情報ST2及び遮断情報SSに基づいて、診断を実行する。トリガ検出機能診断が実行されるタイミングでは、主電源スイッチ30はオフされている。そのため、トリガ検出回路80及び遮断ラッチ回路70が正常ならば、第1疑似信号SF1が出力されると、第1トリガ情報ST1はHレベルとなり、第2トリガ情報ST2はLレベルとなり、遮断情報SSはLレベルとなるはずである。
【0173】
制御回路23は、上記各情報がいずれも適正な情報(即ち、第1トリガ情報ST1がHレベル、第2トリガ情報ST2及び遮断情報SSがLレベル)である場合、トリガ検出回路80及び遮断ラッチ回路70が正常に動作すると判断する。この場合、自己診断結果が正常であると判定し、正常判定を示す自己診断履歴をメモリ25に記憶する。
【0174】
制御回路23は、第1トリガ情報ST1が適正な情報ではない場合、トリガ検出回路80が正常に動作しないと判断する。この場合、自己診断結果が異常であると判定し、異常判定を示す自己診断履歴をメモリ25に記憶する。
【0175】
制御回路23は、遮断情報SSが適正な情報ではない場合、トリガ検出回路80又は遮断ラッチ回路70が正常に動作しないと判断する。この場合、自己診断結果が異常であると判定し、異常判定を示す自己診断履歴をメモリ25に記憶する。
【0176】
第2トリガ情報ST2が適正な情報ではない場合、制御回路23は、トリガ検出回路80が正常に動作しないと判断してもよいが、本実施形態では、診断を中断する。
給電ライン機能診断においては、制御回路23は、第1切替回路36及び第2切替回路46が正常に動作するか否かを診断する。
【0177】
具体的には、制御回路23は、第1バッテリパック5から第1放電許可信号SA1が入力されていない場合に、第3放電許可信号SA3を出力する。制御回路23は、第3放電許可信号SA3を出力している間に第1オフ検出回路39から第1オフ検出信号SB1が入力された場合(つまりスイッチ部32,37がいずれもオフである場合)、第1切替回路36が正常であると判断する。制御回路23は、第3放電許可信号SA3を出力している間に第1オフ検出回路39から第1オフ検出信号SB1が入力されなくなった場合は、第1切替回路36が正常ではないと判断する。
【0178】
制御回路23は、さらに、第2バッテリパック7から第2放電許可信号SA2が入力されていない場合、第4放電許可信号SA4を出力する。制御回路23は、第4放電許可信号SA4を出力している間に第2オフ検出回路49から第2オフ検出信号SB2が入力された場合(つまりスイッチ部42,47がいずれもオフである場合)、第2切替回路46が正常であると判断する。制御回路23は、第4放電許可信号SA4を出力している間に第2オフ検出回路49から第2オフ検出信号SB2が入力されなくなった場合は、第2切替回路46が正常ではないと判断する。
【0179】
制御回路23は、給電ライン機能診断において、正常ではないとの判断を行わなかった場合は、自己診断結果が正常であると判定し、正常判定を示す自己診断履歴をメモリ25に記憶する。制御回路23は、第1切替回路36及び第2切替回路46の何れか一方でも正常ではないと判断した場合は、自己診断結果が異常であると判定し、異常判定を示す自己診断履歴をメモリ25に記憶する。
【0180】
なお、給電ライン機能診断の診断タイミングが主電源オンタイミングに設定されている理由の1つは、次の通りである。即ち、第1バッテリパック5を例に挙げて説明すると、バッテリ異常検出回路12は、異常を検出していない場合、トリガ検出情報STOに基づいてトリガ操作部20がオン操作されたことを認識すると、その認識した時から一定期間、第1放電許可信号SA1を出力する。使用者の使用状況によっては、トリガ操作部20がオン操作されてから一定期間が経過するよりも先に主電源がオフされる可能性がある。つまり、第1放電許可信号SA1がまだ出力されている状態で主電源がオフにされる可能性がある。この場合、第1放電許可信号SA1が出力されているため、給電ライン機能診断を適正に実行できない。一方、主電源オンタイミングは、使用者がこれから電動作業機1を使用としている状態であって、第1放電許可信号SA1が出力されている可能性は低い。そこで、本実施形態では、給電ライン機能診断の診断タイミングが主電源オンタイミングに設定されている。
【0181】
第1過熱保護機能診断においては、制御回路23は、第1過熱検出回路61及び遮断ラッチ回路70が正常に動作するか否かを診断する。具体的には、制御回路23は、第1過熱検出回路61へ第3疑似信号SF31を出力することにより、U相過熱状態を疑似的に発生させる。制御回路23は、第3疑似信号SF31を出力している間、制御回路23に入力される第1温度信号STM1及び異常検出情報Sorに基づいて、診断を実行する。
【0182】
制御回路23は、第1温度信号STM1が示すU相温度が、特定のU相閾値以上であって、且つ、異常検出情報SorがHレベルである場合、第1過熱検出回路61及び遮断ラッチ回路70が正常に動作すると判断する。この場合、自己診断結果が正常であると判定し、正常判定を示す自己診断履歴をメモリ25に記憶する。なお、U相閾値は、どのような値であってもよい。U相閾値は、例えば、前述の正常温度範囲よりも高い特定の値であってもよい。U相閾値は、例えば、前述の第1U相温度閾値又は第2U相温度閾値と同じ値であってもよい。
【0183】
制御回路23は、第1温度信号STM1が示すU相温度が、U相閾値より低い場合、第1過熱検出回路61が正常に動作しないと判断する。この場合、自己診断結果が異常であると判定し、異常判定を示す自己診断履歴をメモリ25に記憶する。
【0184】
制御回路23は、第1温度信号STM1が示すU相温度がU相閾値以上(即ち第1過熱検出回路61が正常)である一方で、異常検出情報SorがLレベルである場合は、遮断ラッチ回路70が正常に動作しないと判断する。この場合、自己診断結果が異常であると判定し、異常判定を示す自己診断履歴をメモリ25に記憶する。
【0185】
第2過熱保護機能診断においては、制御回路23は、第2過熱検出回路62へ第4疑似信号SF32を出力する。そして、第2温度信号STM2及び異常検出情報Sorに基づき、第1過熱保護機能診断と同じ要領で、第2過熱検出回路62及び遮断ラッチ回路70が正常に動作するか否かを診断する。
【0186】
第3過熱保護機能診断においては、制御回路23は、第3過熱検出回路63へ第5疑似信号SF33を出力する。そして、第3温度信号STM3及び異常検出情報Sorに基づき、第1過熱保護機能診断と同じ要領で、第3過熱検出回路63及び遮断ラッチ回路70が正常に動作するか否かを診断する。
【0187】
過電圧保護機能診断においては、制御回路23は、過電圧検出回路50及び遮断ラッチ回路70が正常に動作するか否かを診断する。具体的には、制御回路23は、過電圧検出回路50へ第2疑似信号SF2を出力することにより、過電圧状態を疑似的に発生させる。制御回路23は、第2疑似信号SF2を出力している間、制御回路23に入力される電圧信号SV及び異常検出情報Sorに基づいて、診断を実行する。
【0188】
制御回路23は、電圧信号SVが示す入力バッテリ電圧値が、特定の電圧判定閾値以上であって、且つ、異常検出情報SorがHレベルである場合、過電圧検出回路50及び遮断ラッチ回路70が正常に動作すると判断する。この場合、自己診断結果が正常であると判定し、正常判定を示す自己診断履歴をメモリ25に記憶する。なお、電圧判定閾値は、どのような値であってもよい。電圧判定閾値は、例えば、前述の正常電圧範囲よりも高い特定の値であってもよい。電圧判定閾値は、例えば、前述の第1電圧閾値又は第2電圧閾値と同じ値であってもよい。
【0189】
制御回路23は、電圧信号SVが示す入力バッテリ電圧値が電圧判定閾値より低い場合、過電圧検出回路50が正常に動作しないと判断する。この場合、自己診断結果が異常であると判定し、異常判定を示す自己診断履歴をメモリ25に記憶する。
【0190】
制御回路23は、電圧信号SVが示す入力バッテリ電圧値が電圧判定閾値以上(即ち過電圧検出回路50が正常)である一方で、異常検出情報SorがLレベルである場合は、過電圧検出回路50が正常に動作しないと判断する。この場合、自己診断結果が異常であると判定し、異常判定を示す自己診断履歴をメモリ25に記憶する。
【0191】
(4)自己診断の実行例
次に、制御回路23による自己診断機能の実行例を、図5図7を参照して説明する。
まず、図5に示す第1の実行例について説明する。第1の実行例は、毎回の自己診断の結果がいずれも正常である場合を示している。また、第1の実行例では、時刻t1の時点において、次に実行すべき診断項目は第1診断項目に設定されている。
【0192】
第1の実行例では、図5に示すように、時刻t1で主電源がオンにされる。このとき、第1診断項目の診断タイミングは主電源オフタイミングであるため、第1診断項目の自己診断はまだ実行されない。
【0193】
時刻t1で主電源がオンされた後、モータ21が駆動されることなく時刻t2で主電源がオフされる。時刻t2は、第1診断項目の診断タイミングであるが、直前オン期間中にモータ21が駆動されなかったため、時刻t2では第1診断項目の自己診断は行われない。
【0194】
時刻t3で再び主電源がオンされた後、モータ21が異常停止されることなく正常に駆動され、その後時刻t4で主電源がオフされる。時刻t4では、前回実行されなかった第1診断項目の診断タイミングであることに基づき、第1診断項目の自己診断が実行される。第1の実行例は、時刻t4で開始された自己診断で正常との結果が得られた例を示している。
【0195】
時刻t5で再び主電源がオンされる。このとき、次に実行すべき診断項目が第2診断項目であって、その第2診断項目の診断タイミングが主電源オンタイミングであることに基づき、第2診断項目の自己診断が実行される。第1の実行例は、時刻t5で開始された自己診断で正常との結果が得られた例を示している。
【0196】
その後、時刻t6で主電源がオフされ、時刻t7で再び主電源がオンされる。このとき、次に実行すべき第3診断項目の診断タイミングは主電源オフタイミングであるため、第3診断項目の自己診断はまだ実行されない。
【0197】
時刻t7で主電源がオンされた後、モータ21が駆動される。ただし、モータ21が駆動されている間に異常検出機能によって異常が検出されたことにより、モータ21が停止される。その後時刻t8で主電源がオフされる。時刻t8は、本来、第3診断項目の診断タイミングである。しかし、時刻t8の直前オン期間において、異常が検出されたことによってモータ21が停止されたため、この診断タイミングでは第3診断項目の自己診断は行われない。第3診断項目の自己診断は、次の診断タイミングで実行される。
【0198】
その後、時刻t9で再び主電源がオンされる。このとき、次に実行すべき診断項目は、前回実行されなかった第3診断項目であり、その診断タイミングは主電源オフタイミングである。そのため、時刻t9では第3診断項目の自己診断はまだ実行されない。
【0199】
時刻t9で主電源がオンされた後、モータ21が異常停止されることなく正常に駆動され、時刻t10で主電源がオフされる。時刻t10では、第3診断項目の診断タイミングであることに基づき、第3診断項目の自己診断が実行される。第1の実行例は、時刻t10で開始された自己診断で正常との結果が得られた例を示している。
【0200】
その後、時刻t11で再び主電源がオンされる。このとき、次に実行すべき第4診断項目の診断タイミングは主電源オフタイミングであるため、第4診断項目の自己診断はまだ実行されない。
【0201】
時刻t11で主電源がオンされた後、モータ21が異常停止されることなく正常に駆動され、時刻t12で主電源がオフされる。時刻t12では、第4診断項目の診断タイミングであることに基づき、第4診断項目の自己診断が実行される。第1の実行例は、時刻t12で開始された自己診断で正常との結果が得られた例を示している。
【0202】
その後、時刻t13で再び主電源がオンされる。このとき、次に実行すべき第5診断項目の診断タイミングは主電源オフタイミングであるため、第5診断項目の自己診断はまだ実行されない。
【0203】
次に、図6に示す第2の実行例について説明する。第2の実行例は、異常との自己診断の結果が得られる場合を含む。また、第2の実行例では、第1の実行例と同様、時刻t1の時点においては、次に実行すべき診断項目が第1診断項目に設定されている。
【0204】
第2の実行例では、図6に示すように、時刻t1で主電源がオンにされ、その後モータ21が異常停止されることなく正常に駆動され、時刻t2で主電源がオフされる。時刻t2では、第1診断項目の診断タイミングであることに基づき、第1診断項目の自己診断が実行される。第2の実行例は、時刻t2で開始された自己診断で異常との結果が得られた例を示している。
【0205】
その後、時刻t3で再び主電源がオンされる。このとき、前回の自己診断において第1診断項目の診断結果が異常であったため、次に実行すべき診断項目は引き続き第1診断項目である。第1診断項目の診断タイミングは、本来、主電源オフタイミングである。しかし、前回の自己診断の結果が異常であったことに基づき、次に再び行われる第1診断項目の診断タイミングは、主電源オンタイミングとなる。よって、時刻t3の主電源オンタイミングで、第1診断項目の自己診断が再び実行される。第2の実行例は、時刻t3で開始された自己診断でも異常との結果が得られた例を示している。この場合、図6における時刻t3~t4に例示するように、トリガ操作部20がオン操作されてもモータ21は駆動されない。
【0206】
その後、時刻t4で主電源がオフされた後、時刻t5で再び主電源がオンされる。この場合も、時刻t3と同様、前回の第1診断項目の自己診断結果が異常であったことに基づき、時刻t5の主電源オンタイミングで、第1診断項目の自己診断が再び実行される。第2の実行例は、時刻t5で開始された自己診断でも異常との結果が得られた例を示している。この場合も、図6における時刻t5~t6に例示するように、トリガ操作部20がオン操作されてもモータ21は駆動されない。
【0207】
その後、時刻t6で主電源がオフされた後、時刻t7で再び主電源がオンされる。この場合も、時刻t3、t5と同様、前回の第1診断項目の自己診断結果が異常であったことに基づき、時刻t7の主電源オンタイミングで、第1診断項目の自己診断が再び実行される。第2の実行例は、時刻t7で開始された自己診断で正常との結果が得られた例を示している。この場合、図6における時刻t7~t8に例示するように、トリガ操作部20がオン操作されるとモータ21が駆動される。
【0208】
その後、時刻t8で主電源がオフされた後、時刻t9で再び主電源がオンされる。このとき、次に実行すべき診断項目が第2診断項目であって、その第2診断項目の診断タイミングが主電源オンタイミングであることに基づき、第2診断項目の自己診断が実行される。第2の実行例は、時刻t9で開始された自己診断で異常との結果が得られた例を示している。
【0209】
その後、時刻t10で主電源がオフされた後、時刻t11で再び主電源がオンされる。この場合、前回の自己診断において第2診断項目の診断結果が異常であったため、次に実行すべき診断項目は引き続き第2診断項目である。また、その診断タイミングは、前回の診断結果が異常であったことに基づき、主電源オンタイミングである。そこで、時刻t11の主電源オンタイミングで、第2診断項目の自己診断が再び実行される。第2の実行例は、時刻t11で開始された自己診断でも異常との結果が得られた例を示している。
【0210】
その後、時刻t12で主電源がオフされた後、時刻t13で再び主電源がオンされる。この場合も、時刻t11と同様、前回の第2診断項目の自己診断結果が異常であったことに基づき、時刻t13の主電源オンタイミングで、第2診断項目の自己診断が再び実行される。第2の実行例は、時刻t13で開始された自己診断では正常との結果が得られた例を示している。
【0211】
次に、図7に示す第3の実行例について説明する。第3の実行例は、自己診断が中断される場合を含む。また、第3の実行例では、第1の実行例と同様、時刻t1の時点においては、次に実行すべき診断項目が第1診断項目に設定されている。
【0212】
第3の実行例において、時刻t1~時刻t7までは、図5に示した第1の実行例と同様であるため、説明を省略する。時刻t7で主電源がオンされた後、モータ21が異常停止されることなく正常に駆動され、時刻t8で主電源がオフされる。時刻t8では、第3診断項目の診断タイミングであることに基づき、第3診断項目の自己診断が実行される。第3の実行例は、時刻t8における自己診断が、正常に完了する前に中断された例を示している。制御回路23は、自己診断の実行中に中断条件が成立すると、自己診断を中断する。中断条件は、どのような条件を含んでいてもよい。中断条件は、例えば、トリガ操作部20がオン操作されると成立してもよい。
【0213】
その後、時刻t9で再び主電源がオンされる。このとき、前回の自己診断において第3診断項目の自己診断が中断されたため、次に実行すべき診断項目は引き続き第3診断項目である。ただし、前回の自己診断結果が異常である場合とは異なり、診断タイミングは、規定の診断タイミングである。そのため、主電源がオフされる時刻t10の主電源オフタイミングで、第3診断項目の自己診断が実行される。第3の実行例は、時刻t10で開始された自己診断では正常との結果が得られた例を示している。なお、図7の時刻t9~t10に例示するように、前回の自己診断時にその自己診断が中断された場合は、次の主電源オン期間においては、モータ21の駆動は制限されず、トリガ操作部20がオン操作されるとモータ21が駆動される。時刻t11以降は、図5に示した第1の実行例と同じであるため、説明を省略する。
【0214】
(5)メイン処理
次に、制御回路23が実行するメイン処理について、図8図14を参照して説明する。制御回路23のCPU24は、主電源スイッチ30がオンされてから、主電源スイッチ30がオフされてその直後に後述するS180の自己診断処理が完了するまでの間、メモリ25に記憶されているメイン処理のプログラムに基づいてメイン処理を実行する。図5図7に例示した各実行例は、CPU24がメイン処理を実行することによって達成される。
【0215】
CPU24は、メイン処理を開始すると、S110で、タイムベースが経過したか判断する。タイムベースとは、制御周期を意味する。制御周期は、どのような時間であってもよい。S110では、前回S110からS120に移行した時からタイムベースが経過するまで待機する。そして、タイムベースが経過すると、S120に移行する。
【0216】
S120では、スイッチ操作検出処理を実行する。具体的には、第1トリガ情報ST1及び第2トリガ情報ST2に基づいて、電動作業機1の使用者によるトリガ操作部20の操作状態を検出する。そして、検出した操作状態に応じたトリガ検出情報ST0を、第1バッテリパック5及び第2バッテリパック7に出力する。
【0217】
S130では、バッテリ状態処理を実行する。バッテリ状態処理の詳細は、図9に示す通りである。即ち、バッテリ状態処理に移行すると、S210で、バッテリ通信処理を実行する。具体的には、第1バッテリパック5及び第2バッテリパック7と特定のデータ通信を行う。バッテリ通信処理には、第1バッテリパック5から出力される第1放電許可信号SA1を取得する処理、及び第2バッテリパック7から出力される第2放電許可信号SA2を取得する処理、が含まれる。
【0218】
S220では、放電許可設定処理を実行する。具体的には、S210のバッテリ通信処理にて第1放電許可信号SA1及び第2放電許可信号SA2の両方が取得された場合は、第3放電許可信号SA3及び第4放電許可信号SA4のうちの何れか一方を出力する。第1放電許可信号SA1のみが取得された場合は、第3放電許可信号SA3を出力する。第2放電許可信号SA2のみが取得された場合は、第4放電許可信号SA4を出力する。これにより、第3放電許可信号SA3が出力された場合は、第1切替回路36のスイッチ部37がオンして第1バッテリパック5からモータ駆動回路22へバッテリ電力が供給可能になる。第4放電許可信号SA4が出力された場合は、第2切替回路46のスイッチ部47がオンして第2バッテリパック7からモータ駆動回路22へバッテリ電力が供給可能になる。S220の放電許可設定処理が終了すると、S140(図8参照)に移行する。
【0219】
S140では、AD変換処理を実行する。具体的には、制御回路23に入力される各種のアナログ信号を、CPU24が処理可能なデジタル値にAD変換する。
S150では、異常検出処理を実行する。具体的には、前述の異常検出機能を実行する。即ち、過電圧検出回路50から入力された電圧信号SVに基づく過電圧検出機能、電流検出回路55から入力された電流信号SCに基づく過電流検出機能、第1過熱検出回路61から入力された第1温度信号STM1に基づく第1過熱検出機能、第2過熱検出回路62から入力された第2温度信号STM2に基づく第2過熱検出機能、及び第3過熱検出回路63から入力された第3温度信号STM3に基づく第3過熱検出機能、を実行する。
【0220】
S160では、モータ制御処理を実行する。モータ制御処理の詳細は、図10に示す通りである。図10に示すように、モータ制御処理に移行すると、S310で、制御回路23に入力されている第1トリガ情報ST1及び第2トリガ情報ST2に基づき、トリガ操作部20がオン操作されているか否か判断する。
【0221】
トリガ操作部20がオフ操作されている場合は、S350に移行する。トリガ操作部20がオン操作されている場合は、S320に移行する。S320では、S150の異常検出処理において、各検出機能のうちのいずれか1つでも異常が検出されたか否か判断する。いずれか1つでも異常が検出された場合は、S350に移行する。異常が検出されなかった場合は、S330に移行する。S320では、さらに、遮断情報SSが指令許可を示しているか否か判断する。遮断情報SSが指令許可を示している場合は、電動作業機1に異常が発生していないと判断してS330に移行する。遮断情報SSが指令遮断を示している場合は、電動作業機1に異常が発生していると判断してS350に移行する。
【0222】
S330では、後述する自己診断ステータスが「異常」に設定されているか否か判断する。自己診断ステータスが「異常」に設定されている場合は、S350に移行する。自己診断ステータスが「異常」に設定されていない場合は、S340に移行する。
【0223】
S340では、モータ駆動処理を実行する。具体的には、モータ駆動回路22を制御してモータ21を駆動するための各種パラメータを演算する。そして、演算した各種パラメータに応じたモータ駆動指令SDをモータ駆動回路22へ出力することにより、モータ21を駆動する。S340の処理後は、S170(図8参照)に移行する。
【0224】
S350では、モータ21にブレーキをかける必要があるか否か判断する。なお、S350に移行したということは、モータ21を停止させる必要があることを意味する。そのため、S350~S370の処理は、モータ21を適正に停止させるための処理である。
【0225】
S350では、例えば、不図示の回転センサから入力される、モータ21の回転状態を示す回転信号に基づいて、モータ21にブレーキをかける必要があるか否か判断する。例えば、モータ21が規定速度以上で回転しているなど、モータ21にブレーキをかける必要がある場合は、S360に移行する。S360では、ブレーキフラグをセットする。これにより、本メイン処理とは別に本メイン処理と並行してCPU24が実行しているブレーキ処理において、ブレーキフラグがセットされていることに応じて、ブレーキが実行される。S360の処理後はS170に移行する。
【0226】
S350で、例えばモータ21が既に停止しているなど、ブレーキをかける必要がない場合は、S370に移行する。S370では、ブレーキフラグをクリアする。これにより、前述のブレーキ処理において、ブレーキフラグがクリアされていることに応じて、ブレーキが停止される。S370の処理後はS170に移行する。上述のように、モータ制御処理においては、S320で異常がないと判断され、且つS330で自己診断ステータスが「異常」に設定されていない場合に、S340に移行して、モータ駆動指令SDが出力される。一方、S320で異常が判断されるか、又はS330で自己診断ステータスが「異常」に設定されている場合は、モータ駆動指令SDは出力されず、モータ21は駆動されない。
【0227】
S170では、表示処理を実行する。S170では、各種の情報を表示パネル171に表示する。
S180では、自己診断処理を実行する。自己診断処理の詳細は、図11に示す通りである。図11に示すように、自己診断処理に移行すると、S410で、自己診断履歴読み出し処理を実行する。自己診断履歴読み出し処理の詳細は、図12に示す通りである。
【0228】
図12に示すように、自己診断履歴読み出し処理に移行すると、S510で、メモリ25に直近に書き込まれた自己診断履歴、即ち前回実行した自己診断項目の自己診断履歴を既に読み出しているか否か判断する。なお、自己診断履歴は、図14に示す後述の自己診断履歴書き込み処理におけるS830又はS850でメモリ25に書き込まれる。
【0229】
S510で、自己診断履歴をすでに読み出している場合は、S420(図11参照)に移行する。自己診断履歴をまだ読み出していない場合は、S520に移行する。S520では、メモリ25から、直近のS830又はS850の処理でメモリ25に書き込んだ自己診断履歴を読み出す。
【0230】
S530では、読み出した自己診断履歴が正常判定を示す情報であるか否か判断する。読み出した自己診断履歴が正常判定を示す情報であった場合は、S540に移行する。S540では、今回実行すべき自己診断の診断項目を、前述の規定順序における、前回実行した診断項目の次の診断項目に設定する。S550では、自己診断ステータスを「未検査」に設定する。S550の処理後は、S420(図11参照)に移行する。なお、自己診断ステータスは、主電源がオフされる度又はオンされる度に、規定の初期値にリセットされる。
【0231】
S530で、読み出した自己診断履歴が正常判定を示す情報でなかった場合は、S560に移行する。S560では、読み出した自己診断履歴が異常判定を示す情報であるか否か判断する。読み出した自己診断履歴が異常判定を示す情報であった場合は、S570に移行する。S570では、今回実行すべき自己診断の診断項目を、今回読み出した自己診断履歴に対応した診断項目、即ち前回と同じ自己診断項目に設定する。
【0232】
S580では、自己診断ステータスを「異常」に設定する。ここで自己診断ステータスが「異常」に設定されると、以後、「異常」に設定されている状態が継続している間は、S330(図10参照)で肯定判定されてモータ21は駆動されない。
【0233】
S590では、自己診断要求フラグをセットする。なお、自己診断要求フラグは、主電源がオフされる度又はオンされる度にクリアされる。S590の処理後は、S420(図11参照)に移行する。
【0234】
S560で、読み出した自己診断履歴が異常判定を示す情報でなかった場合は、S600に移行する。この場合、例えば、前回の自己診断実行時に自己診断履歴が正常に書き込まれなかったこと、或いは、そもそも自己診断履歴がまだ書き込まれていないこと、などが考えられる。そこで、S600では、今回実行すべき自己診断の診断項目を、規定順序における初回(1番目)の診断項目に設定する。S610では、自己診断ステータスを「未検査」に設定する。S610の処理後は、S420(図11参照)に移行する。
【0235】
S420では、自己診断実施処理を実行する。自己診断実施処理の詳細は、図13に示す通りである。図13に示すように、自己診断実施処理に移行すると、S710で、自己診断開始条件が成立したか否か判断する。
【0236】
自己診断開始条件は、規定の診断タイミングによって異なる。即ち、規定の診断タイミングが主電源オンタイミングである診断項目(本実施形態では第2診断項目の給電ライン機能診断)の自己診断開始条件は、主電源オンタイミングが到来した場合に成立する。メイン処理が開始されるのは主電源がオンされた時であるため、メイン処理の開始後、今回実行すべき診断項目に設定された診断項目に対応した規定の診断タイミングが主電源オンタイミングである場合は、S710で、自己診断開始条件が成立したと判断される。
【0237】
規定の診断タイミングが主電源オフタイミングである診断項目の自己診断開始条件は、次の(i),(ii)が全て満たされた場合に成立する。
(i)主電源オフタイミングが到来したこと。
(ii)直前オン期間中にモータ駆動指令SDを一度でも出力しており(即ち、モータ21を一度でも駆動させており)、しかも、モータ21が異常停止されていないこと。
【0238】
なお、上記(ii)については、前述のモータ駆動履歴及び異常駆動履歴に基づいて判断できる。
S710で、自己診断開始条件が成立していない場合は、S730に移行する。自己診断開始条件が成立している場合は、S720に移行する。S720では、自己診断要求フラグをセットする。
【0239】
S730では、自己診断要求フラグがセットされているか否か判断する。自己診断フラグがセットされていない場合は、S430(図11参照)に移行する。自己診断フラグがセットされている場合は、S740に移行する。S740では、今回実行すべき診断項目として設定されている診断項目の自己診断を実施する。
【0240】
S740で自己診断が実施されるのは、基本的には、今回実行すべき診断項目についてS710で自己診断開始条件が成立し、S720で自己診断要求フラグがセットされた場合であり、自己診断開始条件が成立していない場合は実施されない。ただし、前回の自己診断において異常判定されたことにより今回も再び同じ診断項目を自己診断する場合は、図12のS590で自己診断要求フラグがセットされている。そのため、この場合は、自己診断開始条件が成立していなくても、S730で肯定判定されてS740で自己診断が実行される。S740における自己診断が終了した後は、S430(図11参照)に移行する。
【0241】
S430では、自己診断履歴書き込み処理を実行する。自己診断履歴書き込み処理の詳細は、図14に示す通りである。図14に示すように、自己診断履歴書き込み処理に移行すると、S810で、今回の診断項目の自己診断が終了したか否か判断する。自己診断が何らかの要因で中断された場合は、自己診断履歴書き込み処理を終了して、S110(図8参照)に移行する。
【0242】
今回の診断項目の自己診断が終了した場合は、S820に移行する。S820では、診断結果が正常であるか否か判断する。診断結果が正常である場合は、S830で、自己診断履歴をメモリ25に書き込む。具体的には、正常判定を示す情報を書き込む。S830では、さらに、自己診断ステータスを例えば「検査済み」に設定する。これにより、この時点で主電源がまだオフされていない場合は、以後、S330の処理では否定判定され、これによりモータ21が駆動される。S830の処理後は、S110(図8参照)に移行する。
【0243】
S820で、診断結果が正常ではない場合は、S840で、診断結果が異常であるか否か判断する。診断結果が異常でない場合は、何らかの要因で診断結果が正しく得られなかった可能性があるため、自己診断履歴を書き込むことなく、S110(図8参照)に移行する。
【0244】
診断結果が異常である場合は、S850で、自己診断履歴をメモリ25に書き込む。具体的には、異常判定を示す情報を書き込む。S850では、さらに、自己診断ステータスを「異常」に設定する。ここで自己診断ステータスが「異常」に設定されると、以後、「異常」に設定されている状態が継続している間は、S330(図10参照)で肯定判定されてモータ21は駆動されない。S850の処理後は、S110(図8参照)に移行する。
【0245】
(6)トリガ検出機能診断処理
第1診断項目のトリガ検出機能診断においてCPU24が実行するトリガ検出機能診断処理について、図15を参照して説明する。CPU24は、図13のS740において、設定されている自己診断項目がトリガ検出機能診断である場合、図15に示すトリガ検出機能診断処理を実行する。
【0246】
CPU24は、トリガ検出機能診断処理を開始すると、S1210で、第1疑似信号SF1(Hレベルの二値信号)を出力する。S1220では、第1トリガ情報ST1が、トリガ操作部20のオン操作を示しているか否か判断する。第1トリガ情報ST1が、トリガ操作部20のオン操作を示していない場合は、S1260で、診断結果が異常であると判断して、自己診断ステータスを「異常」に設定し、トリガ検出機能診断処理を終了する。第1トリガ情報ST1が、トリガ操作部20のオン操作を示している場合は、S1230に移行する。
【0247】
S1230では、第2トリガ情報ST2が、トリガ操作部20のオフ操作を示しているか否か判断する。第2トリガ情報ST2が、トリガ操作部20のオフ操作を示していない場合、トリガ検出回路80に異常が生じている可能性がある一方、使用者がトリガ操作部20をオン操作している可能性もある。そのため、第2トリガ情報ST2が、トリガ操作部20のオフ操作を示していない場合は、S1270で、現在実行中の第1診断項目のトリガ検出機能診断を中断する。
【0248】
S1230で、第2トリガ情報ST2が、トリガ操作部20のオフ操作を示している場合は、S1240に移行する。S1240では、遮断情報SSが指令遮断を示しているか否か判断する。遮断情報SSが指令遮断を示していない場合、即ち指令許可を示している場合は、S1260に移行し、診断結果が異常であると判断して、自己診断ステータスを「異常」に設定する。遮断情報SSが指令遮断を示している場合は、S1250に移行し、診断結果が正常であると判断して、自己診断ステータスを「正常」に設定し、トリガ検出機能診断処理を終了する。
【0249】
(7)トリガ検出機能の定期チェックについて
本実施形態の制御回路23は、前述のメイン処理を実行する一方、並行して、図16に示すトリガオフ検出チェック処理、及び図17に示すトリガオン検出チェック処理を実行する。
【0250】
トリガオフ検出チェック処理は、トリガ操作部20がオフ操作されていることを第1トリガ情報ST1及び第2トリガ情報ST2に基づいて適正に認識できるか否かを確認するための処理である。
【0251】
トリガオン検出チェック処理は、トリガ操作部20がオン操作されていることを第1トリガ情報ST1及び第2トリガ情報ST2に基づいて適正に認識できるか否かを確認するための処理である。
【0252】
なお、トリガオフ検出チェック処理は、上記のメイン処理に含まれていてもよい。例えば、図8のメイン処理において、メイン処理の開始後にまずトリガオフ検出チェックを行い、その後にS110に移行してもよい。
【0253】
トリガオン検出チェック処理についても、上記のメイン処理に含まれていてもよい。例えば、図10のモータ制御処理における、S330の処理よりも前に、トリガオン検出チェックを行うようにしてもよい。
【0254】
(7-1)トリガオフ検出チェック処理
制御回路23は、図16に示すトリガオフ検出チェック処理を、例えば、主電源がオンされる度に、そのオンされた直後に実行する。制御回路23は、トリガオフ検出チェック処理を開始すると、S1010で、第1疑似信号SF1の出力を停止する。なお、主電源がオンされた直後は、基本的には、第1疑似信号SF1は出力されていない。そのため、S1010の処理は、実質的には、第1疑似信号SF1が出力されていない状態をそのまま維持する処理となる。
【0255】
S1020では、第1トリガ情報ST1が、トリガ操作部20のオフ操作を示しているか否か判断する。第1トリガ情報ST1が、トリガ操作部20のオフ操作を示していない場合は、トリガ操作部20がオン操作された状態で主電源スイッチ30がオンされた可能性があるため、オフ操作を示すようになるまで、S1020の処理を繰り返す。
【0256】
S1020で、第1トリガ情報ST1が、トリガ操作部20のオフ操作を示している場合は、S1030に移行する。S1030では、第2トリガ情報ST2が、トリガ操作部20のオフ操作を示しているか否か判断する。第2トリガ情報ST2が、トリガ操作部20のオフ操作を示していない場合は、S1020に移行する。第2トリガ情報ST2が、トリガ操作部20のオフ操作を示している場合は、S1040に移行する。
【0257】
S1040~S1060の処理は、前述の図15のS1240~S1260と同じである。即ち、遮断情報SSが指令遮断を示していない場合は、S1060で自己診断ステータスを「異常」に設定し、遮断情報SSが指令遮断を示している場合は、S1050で自己診断ステータスを「正常」に設定する。
【0258】
(7-2)トリガオン検出チェック処理
制御回路23は、図17に示すトリガオン検出チェック処理を、例えば、第1トリガ情報ST1と第2トリガ情報ST2とに基づいてトリガ操作部20のオン操作を認識したときに実行する。
【0259】
制御回路23は、トリガオン検出チェック処理を開始すると、S1110で、図16のS1010と同様に、第1疑似信号SF1の出力を停止する。S1120では、第1トリガ情報ST1が、トリガ操作部20のオン操作を示しているか否か判断する。第1トリガ情報ST1が、トリガ操作部20のオン操作を示していない場合は、オン操作を示すようになるまで、S1120の処理を繰り返す。
【0260】
1120で、第1トリガ情報ST1が、トリガ操作部20のオン操作を示している場合は、S1130に移行する。S1130では、第2トリガ情報ST2が、トリガ操作部20のオン操作を示しているか否か判断する。第2トリガ情報ST2が、トリガ操作部20のオン操作を示していない場合は、S1120に移行する。第2トリガ情報ST2が、トリガ操作部20のオン操作を示している場合は、S1140に移行する。
【0261】
S1140では、遮断情報SSが指令許可を示しているか否か判断する。遮断情報SSが指令許可を示していない場合、即ち指令遮断を示している場合は、S1160に移行し、自己診断ステータスを「異常」に設定する。遮断情報SSが指令許可を示している場合は、S1150に移行し、自己診断ステータスを「正常」に設定する。
【0262】
(8)実施形態の効果
以上説明した実施形態によれば、以下の(a)~(h)の効果を奏する。
(a)本実施形態の電動作業機1では、入力バッテリ電圧値、モータ電流値、U相温度、V相温度及びW相温度、の各物理量が、それぞれ、制御回路23によるソフトウェア処理と、対応する回路によるハードウェア処理と、の双方によって監視される。
【0263】
即ち、例えばモータ電流値については、制御回路23によるソフトウェア処理によって、第2電流閾値に基づいて過電流状態が発生しているか否かが判断されると共に、電流検出回路55によるハードウェア処理によって、第1電流閾値に基づいて過電流状態が発生しているか否かが判断される。
【0264】
そして、物理量毎に、ソフトウェア処理及びハードウェア処理の双方で適正な範囲内にあることが認められた場合に、駆動回路22にモータ駆動指令SDが入力され、モータ21が駆動される。そのため、電動作業機1の信頼性を向上させることが可能となる。
【0265】
(b)ハードウェア処理によるモータ21の停止は、具体的には、遮断スイッチ29をオフしてモータ駆動回路22へのモータ駆動指令SDの伝送を遮断することにより達成される。そのため、ハードウェア処理によるモータ21の停止を容易に達成することが可能となる。
【0266】
(c)遮断ラッチ回路70から出力される遮断情報SSは、遮断スイッチ29に入力されるのに加えて、制御回路23にも入力される。そのため、制御回路23は、メイン処理において遮断情報SSを有効に利用することができる。
【0267】
(d)具体的には、制御回路23は、制御回路23が備える異常検出機能において異常が検出されていなくても、遮断情報SSが指令遮断を示している場合は、モータ駆動指令SDを出力しない。これより、電動作業機1の信頼性をより高めることが可能となる。
【0268】
(e)本実施形態の電動作業機1では、制御回路23が、第2疑似信号SF2、第3疑似信号SF31、第4疑似信号SF32、及び第5疑似信号SF33を個別に出力することによって、過電圧検出回路50、第1過熱検出回路61、第2過熱検出回路62及び第3過熱検出回路63がそれぞれ適正に動作するか否かを診断することができる。そのため、電動作業機1の信頼性をさらに高めることが可能となる。
【0269】
(f)同じ物理量に対してソフトウェア処理及びハードウェア処理の各々で用いられる閾値について、ソフトウェア処理で用いられる閾値よりもハードウェア処理で用いられる閾値を低く設定してもよい。このようにすることで、ハードウェア処理によって異常が検出されて遮断スイッチ29がオフされるよりも先に、ソフトウェア処理によってモータ駆動指令SDを停止させることができる。
【0270】
(g)遮断ラッチ回路70は、トリガ操作部20がオン操作された以後に、いずれかの異常状態が発生したことによって指令遮断を示す遮断情報SSを出力した場合、その後、その発生した異常状態が解除されても、トリガ操作部20がいったんオフ操作されるまでは、指令遮断を示す遮断情報SSの出力を継続する。
【0271】
つまり、異常状態が発生したことによりモータ21が停止された場合は、再びモータ21を駆動させるためには、使用者によるトリガ操作部20の操作(具体的には、いったんオフ操作してその後再びオン操作すること)を要する。そのため、異常状態発生によって一旦停止したモータ21がその後不意に駆動されることが抑制され、使用者にとって使い勝手の良い電動作業機1を提供することが可能となる。
【0272】
(h)本実施形態では、第1診断項目~第6診断項目における診断対象の回路のうちの少なくとも1つによって達成される、複数の機能の各々において、当該機能の誤作動を抑制するための二重の系統が構築されている。
【0273】
例えば、トリガ操作部20がオン操作されることに応じてモータ21を駆動するモータ駆動機能においては、モータ21が意図せず回転することを抑制するための二重の系統が構築されている。
【0274】
具体的には、モータ21は、第1のモータ駆動系統と第2のモータ駆動系統とが共に正常である場合に、正常に駆動又は停止される。第1のモータ駆動系統は、トリガスイッチ部26からトリガ検出回路80及び制御回路23を経て駆動ライン90に至る系統、即ち、トリガ操作部20がオン操作されることに応じて制御回路23がモータ駆動指令SDを出力する系統である。第2のモータ駆動系統は、トリガスイッチ部26からトリガ検出回路80、遮断ラッチ回路70を経て遮断スイッチ29へ至る系統、即ち、トリガ操作部20がオン操作されることに応じて遮断ラッチ回路70が遮断スイッチ29へ指令許可を示す遮断情報SSを出力する系統である。
【0275】
第1のモータ駆動系統において、例えば、トリガ操作部20がオン操作されていないにもかかわらず制御回路23からモータ駆動指令SDが誤出力されるような異常が生じたとしても、第2のモータ駆動系統が正常であれば、トリガ操作部20がオン操作されていない場合は遮断スイッチ29がオフされるため、モータ21は駆動されない。逆に、第2のモータ駆動系統において、例えば、トリガ操作部20がオン操作されていないにもかかわらず遮断スイッチ29がオンされるような異常が生じたとしても、第1のモータ駆動系統が正常であれば、トリガ操作部20がオン操作されていない場合は制御回路23からモータ駆動指令SDが出力されないため、モータ21は駆動されない。
【0276】
また例えば、第1切替回路36により第1給電ライン91を導通又は遮断する機能においては、第1切替回路36のスイッチ部37が誤ってオンされることを抑制するための二重の系統が構築されている。
【0277】
具体的には、第1切替回路36のスイッチ部37は、第1のオン許可系統と第2のオン許可系統とが共に正常である場合に、正常にオンされる。第1のオン許可系統は、第1バッテリパック5のバッテリ異常検出回路12からの第1放電許可信号SA1を制御回路23が受けることに応じて、制御回路23が、スイッチ部37をオンさせるために第3放電許可信号SA3を出力する系統である。なお、より詳しくは、制御回路23は、第1放電許可信号SA1に加えてさらに第2オフ検出信号SB2が入力されることに応じて第3放電許可信号SA3を出力する。第2のオン許可系統は、第1バッテリパック5のバッテリ異常検出回路12からの第1放電許可信号SA1が制御回路23を介さずに第1切替回路36に直接入力される系統である。
【0278】
第1のオン許可系統において、例えば、第1バッテリパック5のバッテリ異常検出回路12から第1放電許可信号SA1が入力されていないにもかかわらず制御回路23から第3放電許可信号SA3が出力されるような異常が生じたとしても、第2のオン許可系統が正常であれば、バッテリ異常検出回路12からAND回路38へLレベルの信号が入力されることによって、スイッチ部37はオンされない。これにより、バッテリ11からモータ21への電力の供給は遮断され、モータ21はバッテリ11の電力によっては駆動されない。
【0279】
逆に、第2のオン許可系統において、例えば、バッテリ異常検出回路12から第1放電許可信号SA1が入力されていないにもかかわらずAND回路38における第1放電許可信号SA1の入力端子がHレベルになるような異常が生じたとしても、第1のオン許可系統が正常であれば、制御回路23は第3放電許可信号SA3を出力しないため、スイッチ部37はオンされない。
【0280】
なお、第2切替回路46により第2給電ライン92を導通又は遮断する機能においても、第2切替回路46のスイッチ部47が誤ってオンされることを抑制するための二重の系統が構築されている。例えば、第2バッテリパック7のバッテリ異常検出回路17から第2放電許可信号SA2が入力されていないにもかかわらず制御回路23から第4放電許可信号SA4が出力されるような異常が生じたとしても、バッテリ異常検出回路17からAND回路48へLレベルの信号が入力されることによって、スイッチ部47はオンされない。これにより、バッテリ16からモータ21への電力の供給は遮断され、モータ21はバッテリ16の電力によっては駆動されない。
【0281】
第1切替回路36により第1給電ライン91を導通又は遮断する機能においては、第1切替回路36のスイッチ部37が誤ってオンされることを抑制するための、別の二重の系統も構築されている。
【0282】
具体的には、第1切替回路36のスイッチ部37は、第3のオン許可系統と第4のオン許可系統とが共に正常である場合に、正常にオンされる。第3のオン許可系統は、第2オフ検出回路49からの第2オフ検出信号SB2を制御回路23が受けることに応じて、制御回路23が、スイッチ部37をオンさせるために第3放電許可信号SA3を出力する系統である。なお、より詳しくは、制御回路23は、第2オフ検出信号SB2に加えて更に第1放電許可信号SA1が入力されることに応じて第3放電許可信号SA3を出力する。第4のオン許可系統は、第2オフ検出回路49からの第2オフ検出信号SB2が制御回路23を介さずに第1切替回路36に直接入力される系統である。
【0283】
第3のオン許可系統において、例えば、第2オフ検出回路49から第2オフ検出信号SB2が出力されていないにもかかわらず制御回路23から第3放電許可信号SA3が出力されるような異常が生じたとしても、第4のオン許可系統が正常であれば、スイッチ部37はオンされない。逆に、第4のオン許可系統において、例えば、第2オフ検出回路49から第2オフ検出信号SB2が出力されていないにもかかわらずAND回路38における第2オフ検出信号SB2の入力端子がHレベルになるような異常が生じたとしても、第3のオン許可系統が正常であれば、制御回路23は第3放電許可信号SA3を出力しないため、スイッチ部37はオンされない。
【0284】
また例えば、過電圧検出回路50による過電圧保護機能においては、過電圧状態が発生した場合にモータ21を適正に停止させるために、過電圧信号So1に応じて遮断ラッチ回路70が遮断スイッチ29をオフさせる第1の過電圧保護系統と、電圧信号SVに基づいて制御回路23が過電圧状態の発生を検出することに応じて制御回路23がモータ駆動指令SDを停止させる第2の過電圧保護系統とが構築されている。
【0285】
また例えば、電流検出回路55による過電流保護機能においては、過電流状態が発生した場合にモータ21を適正に停止させるために、過電流信号So2に応じて遮断ラッチ回路70が遮断スイッチ29をオフさせる第1の過電流保護系統と、電流信号SCに基づいて制御回路23が過電流状態の発生を検出することに応じて制御回路23がモータ駆動指令SDを停止させる第2の過電流保護系統とが構築されている。
【0286】
また例えば、第1過熱検出回路61による第1過熱保護機能においては、U相過熱状態が発生した場合にモータ21を適正に停止させるために、第1過熱信号So31に応じて遮断ラッチ回路70が遮断スイッチ29をオフさせる第1の過熱保護系統と、第1温度信号STM1に基づいて制御回路23がU相過熱状態の発生を検出することに応じて制御回路23がモータ駆動指令SDを停止させる第2の過熱保護系統とが構築されている。
【0287】
第2過熱検出回路62による第2過熱保護機能、及び第3過熱検出回路63による第3過熱保護機能においても、第1過熱保護機能と同様に、2系統の保護系統が構築されている。
【0288】
なお、本実施形態において、入力バッテリ電圧値、モータ電流値、U相温度、V相温度及びW相温度は、いずれも、本開示における状態情報(特に物理量)の一例に相当する。バッテリ異常検出回路12からAND回路38に入力される信号は、本開示における状態情報(特にバッテリ情報および第1バッテリ情報)の一例に相当する。バッテリ異常検出回路17からAND回路48に入力される信号は、本開示における状態情報(特にバッテリ情報および第2バッテリ情報)の一例に相当する。電圧信号SV、電流信号SC、第1温度信号STM1、第2温度信号STM2及び第3温度信号STM3は、いずれも、本開示における検出情報の一例に相当する。過電圧検出回路50、電流検出回路55,第1過熱検出回路61、第2過熱検出回路62及び第3過熱検出回路63は、いずれも、本開示における情報出力回路(特に検出回路)の一例に相当する。バッテリ11は本開示における第1バッテリの一例に相当する。バッテリ16は本開示における第2バッテリの一例に相当する。バッテリ異常検出回路12は本開示における情報出力回路(特にバッテリ情報出力回路及び第1出力回路)の一例に相当する。バッテリ異常検出回路17は本開示における情報出力回路(特にバッテリ情報出力回路及び第2出力回路)の一例に相当する。ハウジング166は本開示における装着部の一例に相当する。過電圧検出回路50、電流検出回路55,第1過熱検出回路61、第2過熱検出回路62及、第3過熱検出回路63、遮断ラッチ回路70及び遮断スイッチ29は、本開示における駆動停止回路(特に第1の停止回路)の一例に相当する。第1切替回路36及び第2切替回路46は、いずれも、本開示における駆動停止回路(特に第2の停止回路)の一例に相当する。第2電圧閾値未満の範囲、第2電流閾値未満の範囲、第2U相温度閾値未満の範囲、第2V相温度閾値未満の範囲及び第2W相温度閾値未満の範囲は、いずれも、本開示における第1の許容範囲の一例に相当する。第1電圧閾値未満の範囲、第1電流閾値未満の範囲、第1U相温度閾値未満の範囲、第1V相温度閾値未満の範囲及び第1W相温度閾値未満の範囲は、いずれも、本開示における第2の許容範囲の一例に相当する。モータ駆動指令SDは本開示における駆動指令の一例に相当する。モータ駆動回路22は本開示における駆動回路の一例に相当する。指令遮断を示す遮断情報SSは本開示における停止信号の一例に相当する。第2疑似信号SF2、第3疑似信号SF31、第4疑似信号SF32及び第5疑似信号SF33は、いずれも、本開示における疑似異常発生信号の一例に相当する。トリガ操作部20は本開示における操作部の一例に相当する。
【0289】
S740の処理は本開示における出力処理の一例に相当する。S830及びS850の処理はいずれも本開示における記憶処理の一例に相当する。
[他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0290】
(1)遮断スイッチ29は、どのようなスイッチであってもよい。遮断スイッチ29は、単一のスイッチではなく、複数の素子を備えた回路によって構成されていてもよい。
(2)過電圧信号So1、過電流信号So2、第1過熱信号So31、第2過熱信号So32及び第3過熱信号So33のうちのいずれか1つ以上が遮断ラッチ回路70に入力されてもよい。
【0291】
(3)遮断ラッチ回路70からラッチ機能を省いてもよい。具体的には、例えば、NOT回路73の出力信号が遮断スイッチ29に入力されてもよい。
(4)遮断ラッチ回路70に、トリガ判定情報STRが入力されなくてもよい。つまり、遮断スイッチ29は、過電圧信号So1、過電流信号So2、第1過熱信号So31、第2過熱信号So32及び第3過熱信号So33のうちのいずれかが出力された場合にオフされ、これら5つの信号がいずれも出力されていない場合は、トリガ操作部20の操作状態にかかわらずオンされてもよい。
【0292】
(5)異常が生じているか否かの判定を、1つの閾値に基づいて行うことは、一例である。例えば、正常と判定し得る許容範囲を設定し、検出された物理量がその許容範囲に含まれている場合に正常と判定し、検出された物理量がその許容範囲に含まれていない場合は異常と判定してもよい。
【0293】
例えば、U相温度に関し、制御回路23は、U相温度が第1の許容範囲(例えば第1の下限温度から第1の上限温度までの範囲)に含まれていればU相温度が正常であると判定し、U相温度が第1の許容範囲に含まれていない場合はU相温度が異常であると判定してもよい。
【0294】
この場合、第1過熱検出回路61は、U相温度が第2の許容範囲(例えば第2の下限温度から第2の上限温度までの範囲)に含まれていれば第1過熱信号So31を出力せず、U相温度が第2の許容範囲に含まれていない場合に第1過熱信号So31を出力するように構成されていてもよい。
【0295】
またこの場合、第2の許容温度は、第1の許容温度を完全に含み、第1の許容温度よりも広くてもよい。或いは、第2の上限温度を第1の上限温度より高くする一方、第2の下限温度は、第1の下限温度と同じとするか若しくは第1の下限温度よりも高くてもよい。また例えば、第2の下限温度を第1の下限温度より低くする一方、第2の上限温度は、第1の上限温度と同じとするか若しくは第1の上限温度よりも低くてもよい。
【0296】
(6)過電圧検出回路50、電流検出回路55、過熱検出部60、遮断ラッチ回路70及びトリガ検出回路80は、図2図3に示した回路構成とは異なっていてもよい。
(7)過電圧検出回路50、電流検出回路55、第1過熱検出回路61、第2過熱検出回路62及び第3過熱検出回路63のうち、いずれか4つ以下がなくてもよい。例えば、これら5つの検出回路のうち電流検出回路55のみが設けられている場合は、遮断ラッチ回路70からOR回路72を省いて、過電流信号So2がNOT回路73へ入力されるようにしてもよい。この場合において、ラッチ機能が不要であれば、過電流信号So2がNOT回路73へ入力され、NOT回路73の出力信号が遮断スイッチ29に入力されてもよい。
【0297】
(8)入力バッテリ電圧値、モータ電流値及び各相温度、とは異なる物理量を検出する検出回路が設けられていてもよい。そして、その検出回路についても、上述の各検出回路と同様に、物理量を検出する機能、物理量に基づいて異常を検出する機能を備えると共に、制御回路23が自己診断を行えるように構成されていてもよい。
【0298】
(9)電動作業機1は電流検出回路55の自己診断機能を備えていてもよい。具体的には、制御回路23は、過電流状態を擬似的に発生させるための第6疑似信号を電流検出回路55へ出力する機能を備えていてもよい。電流検出回路55は、第6疑似信号を受けると、電流信号SCが過電流状態を示す信号となるように構成されていてもよい。このような構成により、制御回路23は、第6疑似信号を出力した時の電流信号SCに基づいて、電流検出回路55が正常に動作するか否かを診断することができる。
【0299】
(10)上記実施形態の電動作業機1は、遮断情報SSと異常検出情報Sorとが個別に制御回路23へ入力されるように構成されているが、図18に示すように、遮断情報SSと異常検出情報Sorとの論理和が制御回路23へ入力されるように構成されてもよい。具体的には、図18に示すように、電動作業機1はOR回路95を備え、このOR回路95に、遮断情報SSと異常検出情報Sorとが入力されてもよい。そして、OR回路95の出力信号が制御回路23へ入力されてもよい。
【0300】
11)規定順序は、どのような順序であってもよい。診断項目毎に重みが設定されていてもよい。その場合、重みに応じて規定順序が決定されてもよい。より具体的には、重みが大きい診断項目ほど実行頻度が高くなるように規定順序が決定されてもよい。
【0301】
規定順序において、6種類の診断項目のうちの少なくとも1つが連続して配列されていてもよい。また、同じ1つの順に複数の診断項目が対応付けられてもよい。つまり、一度の診断タイミングで複数の診断項目の診断が順に又は並行して実行されてもよい。
【0302】
自己診断の実行順序は、規定順序に限らず、どのような順序であってもよい。例えば、ランダムに実行順序を決めてもよい。具体的には、例えば、電動作業機1は乱数発生器を備え、乱数発生器が発生する乱数に基づいて、次に実行する自己診断項目を決定してもよい。
【0303】
(12)本開示は、2つのバッテリパックにおける各バッテリを直列接続して各バッテリの電力をモータ側へ供給するように構成された電動作業機に対しても適用可能である。具体例を図19に示す。
【0304】
図19に示す電動作業機200において、本体部201は、図2に示した本体部3と比較して、以下の点で相違する。図19に示す本体部201は、直列接続配線202を備える。直列接続配線202は、ハウジング166に装着された第1バッテリパック5のバッテリ11とハウジング166に装着された第2バッテリパック7の第2バッテリ16とを直列接続する。より具体的には、直列接続配線202は、バッテリ16の正極とバッテリ11の負極とを接続する。これにより、本体部201には、バッテリ11の電圧とバッテリ16の電圧とが加算された電圧が入力される。
【0305】
これに伴い、本体部201は、図2に示した本体部3における、第2充電抑制回路41,第2切替回路46,第2オフ検出回路49,および第2給電ライン92が設けられていない。
【0306】
また、制御回路203は、トリガ操作部20がオン操作された場合、第1放電許可信号SA1および第2放電許可信号SA2が共に入力されていれば、第3放電許可信号SA3を出力する。第1放電許可信号SA1および第2放電許可信号SA2が共に入力されていない場合は、制御回路203は第3放電許可信号SA3を出力しない。
【0307】
また、制御回路203は、給電ライン機能診断においては、第1切替回路36が正常に動作するか否かを診断する。
そして、AND回路38における、図2に示した本体部3においては第2オフ検出回路49からの信号が入力されるように構成されていた入力端子には、バッテリ異常検出回路17からの信号が入力される。
【0308】
このように構成された電動作業機200においては、第1放電許可信号SA1、第2放電許可信号SA2および第3放電許可信号SA3がAND回路38に入力されている場合に、スイッチ部37が導通する。AND回路38に制御回路23から第3放電許可信号SA3が入力されても、AND回路38に第1放電許可信号SA1及び/または第2放電許可信号SA2が入力されていない場合(即ち、バッテリ11及び/またはバッテリ16が異常である場合)は、スイッチ部37は遮断され、バッテリ11及びバッテリ16からモータ21への電力の供給は遮断される。
【0309】
(13)本開示は、バッテリパックを1つ備え、その1つのバッテリパックから電力を受けて動作するように構成された電動作業機にも適用可能である。具体的には、例えば、図19に示した電動作業機200から第2バッテリパック7および直列接続配線202を省き、バッテリ11の負極をグランドラインに接続し、AND回路38に第1放電許可信号SA1および第3放電許可信号SA3が入力されるように構成してもよい。
【0310】
(14)本開示のモータは、ブラシレスモータとは異なるモータであってもよい。また、本開示の電動作業機は、バッテリ電力によって駆動される電動作業機に限定されず、交流電力が入力されてその交流電力によって駆動される電動作業機であってもよい。
【0311】
(15)本開示の技術は、刈払機以外の園芸用の電動作業機、石工用、金工用、木工用の電動工具などの、各種の電動作業機に適用することができる。より具体的には、本開示は、例えば電動ハンマ、電動ハンマドリル、電動ドリル、電動ドライバ、電動レンチ、電動グラインダ、電動マルノコ、電動レシプロソー、電動ジグソー、電動カッター、電動チェンソー、電動カンナ、電動釘打ち機(鋲打ち機を含む)、電動ヘッジトリマ、電動芝刈り機、電動芝生バリカン、電動刈払機、電動クリーナ、電動ブロア、電動噴霧器、電動散布機、電動集塵機、といった各種電動作業機に適用することができる。
【0312】
(15)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【符号の説明】
【0313】
1,200…電動作業機、3,201…本体部、5…第1バッテリパック、7…第2バッテリパック、11,16…バッテリ、12,17…バッテリ異常検出回路、20…トリガ操作部、21…モータ、22…モータ駆動回路、23,203…制御回路、24…CPU、25…メモリ、26…トリガスイッチ部、27…第1トリガスイッチ、28…第2トリガスイッチ、29…遮断スイッチ、30…主電源スイッチ、36…第1切替回路、37,47…スイッチ部、50…過電圧検出回路、60…過熱検出部、61…第1過熱検出回路、62…第2過熱検出回路、63…第3過熱検出回路、70…遮断ラッチ回路、80…トリガ検出回路、202…直列接続配線。
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