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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】電動作業機
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20231221BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20231221BHJP
   H01L 23/40 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B25F5/00 C
H05K7/20 F
H05K7/20 D
H01L23/40 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019129233
(22)【出願日】2019-07-11
(65)【公開番号】P2021013977
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中本 明弘
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特許第6392013(JP,B2)
【文献】実開平05-021488(JP,U)
【文献】特許第4992532(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00
H05K 7/20
H01L 23/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータへの通電経路に設けられ、前記モータの通電状態を制御するように構成された1個の第1の半導体素子を備えるスイッチング回路と、
前記通電経路の一部を形成すると共に、前記スイッチング回路が搭載される回路基板と、
前記回路基板が固定されるように構成された金属製のケースと、
前記回路基板および前記ケースのそれぞれに当接するように構成された放熱シートと、
を備え、
前記回路基板は、前記スイッチング回路が搭載される第1面と、前記放熱シートに当接する第2面と、前記第1面から前記第2面にかけて貫通する複数の第1貫通穴を備える第1穴群と、前記通電経路のうち少なくとも一部を形成する導電性材料であると共に前記スイッチング回路に電気的に接続される基板配線と、を備え、
前記第1穴群は、前記回路基板のうち前記スイッチング回路の配置領域に備えられ、
前記基板配線は、前記回路基板のうち、前記第1面上に形成された第1配線部と、前記第2面上に形成された第2配線部と、前記複数の第1貫通穴のそれぞれの内面に形成された複数の第3配線部と、を備え、
前記スイッチング回路は、前記基板配線に接続され、
前記放熱シートは、前記基板配線に当接しており、
前記第1配線部と前記第2配線部とは、前記複数の第3配線部を介して接続されている、
電動作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の電動作業機であって、
前記複数の第1貫通穴のそれぞれの内部に配置された複数の充填材を備える、
電動作業機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電動作業機であって、
前記スイッチング回路は、さらに、前記モータへの通電経路に設けられ、前記モータの通電状態を制御するように構成された1個の第2の半導体素子を備え、
前記基板配線は、前記第1の半導体素子および前記第2の半導体素子のそれぞれに電気的に接続されるとともに、前記モータに接続される第1接続部を備え、
前記第1の半導体素子および前記第2の半導体素子は、前記回路基板の前記第1面に垂直方向から見たときに、前記第1接続部を挟み込むように配置されている、
電動作業機。
【請求項4】
請求項3に記載の電動作業機であって、
前記ケースは、前記回路基板の前記第2面に対向する基板対向面を備え、
さらに、前記ケースは、前記基板対向面において、前記回路基板に向けて張り出した対向張出部を備え、
前記放熱シートは、前記回路基板および前記対向張出部に当接するように構成されている、
電動作業機。
【請求項5】
請求項4に記載の電動作業機であって、
前記対向張出部は、前記回路基板のうち前記第1の半導体素子の搭載領域に向けて張り出した第1張出部と、前記回路基板のうち前記第2の半導体素子の搭載領域に向けて張り出した第2張出部と、を備え、
前記放熱シートは、前記第1の半導体素子の搭載領域と前記第1張出部との間に配置された第1シートと、前記第2の半導体素子の搭載領域と前記第2張出部との間に配置された第2シートと、を備える、
電動作業機。
【請求項6】
請求項3から請求項5のうちいずれか1項に記載の電動作業機であって、
前記スイッチング回路は、さらに、前記モータへの通電経路に設けられ、前記モータの通電状態を制御するように構成された1個の第3の半導体素子と、前記モータへの通電経路に設けられ、前記モータの通電状態を制御するように構成された1個の第4の半導体素子と、を備え、
前記基板配線は、前記第3の半導体素子および前記第4の半導体素子のそれぞれに電気的に接続されるとともに、前記モータに接続される第2接続部を備え、
前記第3の半導体素子および前記第4の半導体素子は、前記回路基板の前記第1面に垂直方向から見たときに、前記第2接続部を挟み込むように配置されており、
前記回路基板において、前記第1の半導体素子、前記第1接続部、前記第2の半導体素子の配置領域と、前記第3の半導体素子、前記第2接続部、前記第4の半導体素子の配置領域とは、互いに隣接して配置されている、
電動作業機。
【請求項7】
請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載の電動作業機であって、
前記回路基板は、前記第1面から前記第2面にかけて貫通する複数の第2貫通穴を備える第2穴群を備え、
前記第2穴群は、前記回路基板のうち前記スイッチング回路の配置領域に隣接する素子隣接領域に設けられ、
前記基板配線は、前記複数の第2貫通穴のそれぞれの内面に形成された複数の第4配線部を備え、
前記第1配線部と前記第2配線部とは、前記複数の第4配線部を介して電気的に接続されている、
電動作業機。
【請求項8】
請求項7に記載の電動作業機であって、
前記回路基板は、前記素子隣接領域において、前記第2穴群が形成された穴形成領域と、前記第2穴群が形成されない穴非形成領域と、を備える、
電動作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子と、回路基板と、ケースと、放熱シートと、を備える電動作業機が知られている(特許文献1)。
電動作業機において、半導体素子を用いてモータの通電状態を制御するにあたり、半導体素子で発生した熱量をケースの外部に放出するために、半導体素子とケースとのそれぞれに当接する放熱シートを備える構成が知られている。これにより、半導体素子の熱量を放熱シートを介してケースに熱伝導することで、半導体素子を冷却できる。
【0003】
この場合、半導体素子は、回路基板に対向する面とは反対側の面が放熱シートに当接する状態で備えられる。つまり、この半導体素子は、回路基板に対向する面とは反対側の面で放熱するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-015867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、半導体素子は、回路基板に対向する面とは反対側の面で放熱する構成に限られることはなく、回路基板に対向する面で放熱する構成を採る場合がある。
このように半導体素子が回路基板に対向する面で放熱する構成の場合には、上記の電動作業機のように、半導体素子から放熱シートを介してケースへ至る熱伝導経路を構成できず、半導体素子を十分には冷却できない可能性がある。
【0006】
そこで、本開示の一局面においては、半導体素子が回路基板に対向する面で放熱する構成であっても、半導体素子を冷却できる電動作業機を提供できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一局面における電動作業機は、モータと、スイッチング回路と、回路基板と、ケースと、放熱シートと、を備える。
モータは、当該電動作業機の動力源である。スイッチング回路は、第1の半導体素子を備える。第1の半導体素子は、モータへの通電経路に設けられ、モータの通電状態を制御する。回路基板は、通電経路の一部を形成すると共に、スイッチング回路が搭載される。ケースは、金属製であり、回路基板が固定される。放熱シートは、回路基板およびケースのそれぞれに当接する。
【0008】
回路基板は、第1面と、第2面と、第1穴群と、基板配線と、を備える。第1面は、スイッチング回路が搭載される面である。第2面は、放熱シートに当接する面である。第1穴群は、複数の第1貫通穴を備える。複数の第1貫通穴の各々は、第1面から第2面にかけて貫通する穴である。基板配線は、通電経路のうち少なくとも一部を形成する導電性材料であると共にスイッチング回路に電気的に接続される。
【0009】
第1穴群は、回路基板のうちスイッチング回路の配置領域に備えられる。
基板配線は、第1配線部と、第2配線部と、複数の第3配線部と、を備える。第1配線部は、回路基板のうち第1面上に形成されている。第2配線部は、回路基板のうち第2面上に形成されている。複数の第3配線部は、複数の第1貫通穴のそれぞれの内面に形成されている。第1配線部と第2配線部とは、複数の第3配線部を介して接続されている。
【0010】
この電動作業機においては、基板配線のうち複数の第3配線部が、回路基板の第1面から第2面にかけての熱伝導経路を形成する。つまり、電動作業機は、スイッチング回路から基板配線(詳細には、第1配線部、複数の第3配線部、第2配線部)および放熱シートを介してケースに至る熱伝導経路を備える。複数の第3配線部は、導電性材料であるため、回路基板そのものに比べて熱伝導性能に優れている。
【0011】
このため、電動作業機は、複数の第3配線部を介した熱伝導経路を備えることで、回路基板の第1面から第2面にかけての熱伝導性能が向上するため、スイッチング回路の第1半導体素子で発生した熱量は、回路基板を介して効率よくケースに伝わる。よって、本開示の電動作業機は、スイッチング回路から回路基板を介してケースに至る熱伝導経路を備えることで、第1半導体素子が回路基板に対向する面で放熱する構成であっても、第1半導体素子を冷却できる。
【0012】
次に、上述の電動作業機は、複数の第1貫通穴のそれぞれの内部に配置された複数の充填材を備えてもよい。
この電動作業機は、複数の充填材を介した熱伝導経路を形成できるため、複数の第1貫通穴のそれぞれの内部に空洞を有する構成に比べて、第1面から第2面にかけての熱伝導性能が向上する。なお、複数の充填材は、導電性材料であってもよいし、絶縁材料であってもよい。
【0013】
次に、上述の電動作業機においては、スイッチング回路は、さらに、モータへの通電経路に設けられ、モータの通電状態を制御するように構成された第2の半導体素子を備えてもよい。基板配線は、第1の半導体素子および第2の半導体素子のそれぞれに電気的に接続されるとともに、モータに接続される第1接続部を備えてもよい。第1の半導体素子および第2の半導体素子は、回路基板の板面に垂直方向から見たときに、第1接続部を挟み込むように配置されてもよい。
【0014】
この電動作業機においては、第1の半導体素子、第2の半導体素子、第1接続部が上記のように配置されることで、これらが互いに離れて配置される構成に比べて、第1の半導体素子と第1接続部との距離、および第2の半導体素子と第1接続部との距離をそれぞれ短縮できる。これにより、この電動作業機は、回路基板における通電経路(基板配線)の占有面積を縮小できるため、回路基板の小型化を図ることができる。
【0015】
次に、上述の電動作業機においては、ケースは、回路基板の第2面に対向する基板対向面を備え、さらに、ケースは、基板対向面において、回路基板に向けて張り出した対向張出部を備えてもよい。放熱シートは、回路基板および対向張出部に当接してもよい。
【0016】
この電動作業機は、ケースが対向張出部を備えることで、ケースが対向張出部を備えない場合に比べて、回路基板からケースまでの距離を短縮することができる。このため、電動作業機は、回路基板から放熱シートを介してケースに至る熱伝導経路を短縮でき、この熱伝導経路での熱伝導効率を向上できる。
【0017】
次に、上述の電動作業機においては、対向張出部は、第1張出部と、第2張出部と、を備えてもよい。第1張出部は、回路基板のうち第1の半導体素子の搭載領域に向けて張り出してもよい。第2張出部は、回路基板のうち第2の半導体素子の搭載領域に向けて張り出してもよい。
【0018】
放熱シートは、第1シートと、第2シートと、を備えてもよい。第1シートは、第1の半導体素子の搭載領域と第1張出部との間に配置されてもよい。第2シートは、第2の半導体素子の搭載領域と第2張出部との間に配置されてもよい。
【0019】
この電動作業機によれば、第1張出部と第2張出部との間、および、第1シートと第2シートとの間に、隙間空間を設けることができる。この隙間空間は、部品の配置空間として利用できる。部品としては、例えば、第1接続部や第1接続部に接続されるケーブルなどが挙げられる。
【0020】
次に、上述の電動作業機においては、スイッチング回路は、さらに、モータへの通電経路に設けられ、モータの通電状態を制御するように構成された第3の半導体素子と、モータへの通電経路に設けられ、モータの通電状態を制御するように構成された第4の半導体素子と、を備えてもよい。基板配線は、第3の半導体素子および第4の半導体素子のそれぞれに電気的に接続されるとともに、モータに接続される第2接続部を備えてもよい。
【0021】
第3の半導体素子および第4の半導体素子は、回路基板の第1面に垂直方向から見たときに、第2接続部を挟み込むように配置されてもよい。回路基板において、第1の半導体素子、第1接続部、第2の半導体素子の配置領域と、第3の半導体素子、第2接続部、第4の半導体素子の配置領域とは、互いに隣接して配置されてもよい。
【0022】
この電動作業機は、回路基板において、第3の半導体素子と第2接続部との距離、および第4の半導体素子と第2接続部との距離のそれぞれを、第1の半導体素子、第1接続部、第2の半導体素子の場合と同様に、短縮できる。
【0023】
また、この電動作業機は、第1の半導体素子、第1接続部、第2の半導体素子の配置領域と、第3の半導体素子、第2接続部、第4の半導体素子の配置領域とが、互いに離れて配置される場合に比べて、回路基板における通電経路(基板配線)を短縮できる。これにより、この電動作業機は、回路基板における通電経路(基板配線)の占有面積を縮小できるため、回路基板の小型化を図ることができる。
【0024】
次に、上述の電動作業機においては、回路基板は、第2穴群を備えてもよい。第2穴群は、回路基板の第1面から第2面にかけて貫通する複数の第2貫通穴を備えてもよい。第2穴群は、回路基板のうちスイッチング回路の配置領域に隣接する素子隣接領域に設けられてもよい。基板配線は、複数の第2貫通穴のそれぞれの内面に設けられる複数の第4配線部を備えてもよい。第1配線部と第2配線部とは、複数の第4配線部を介して電気的に接続されてもよい。
【0025】
このように、スイッチング回路の配置領域とは異なる素子隣接領域に複数の第4配線部を備えることで、複数の第3配線部のみを備える場合に比べて、回路基板における第1面から第2面にかけての熱伝導経路をより多く確保でき、回路基板の第1面から第2面にかけての熱伝導性能が向上する。よって、この電動作業機は、スイッチング回路から回路基板を介して放熱シートに至る熱伝導経路での熱伝導量を増大できるため、スイッチング回路で発生した熱量をケースにより効率よく伝えることが可能となる。
【0026】
次に、上述の電動作業機においては、回路基板は、素子隣接領域において、第2穴群が形成された穴形成領域と、第2穴群が形成されない穴非形成領域と、を備えてもよい。
このような回路基板は、素子隣接領域(換言すれば、スイッチング回路の周囲領域)のうち、穴非形成領域に他部材を配置することができる。他部材は、例えば、回路基板における異なる地点どうしを電気的に接続するために敷設された回路配線などである。
【0027】
これにより、この電動作業機によれば、回路基板における他部材の配置状態(例えば、回路配線の敷設ルートなど)を決定するにあたり、素子隣接領域のうち穴非形成領域を含めた広い領域に他部材を配置できるため、他部材の配置状態の設計自由度が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本開示に係る電動作業機の外観を示す斜視図である。
図2】電動作業機の電気的構成を示すブロック図である。
図3】回路基板、ケースおよび放熱シートを備えるインバータ回路の外観を示す斜視図である。
図4】回路基板、ケースおよび放熱シートを備えるインバータ回路の分解斜視図である。
図5】第1配置領域~第6配置領域と、張出部と、放熱シートと、の相対位置を模式的に表した平面図である。
図6】回路基板、ケースおよび放熱シートを備えるインバータ回路の内部構成を模式的に表した断面図である。
図7】回路基板における、第1配置領域~第6配置領域と、貫通穴の配置領域と、張出部と、の相対位置を模式的に表した平面図である。
図8】第1配置領域および第1貫通穴群を模式的に示した説明図である。
図9】回路基板のうち、第1貫通穴群の形成領域における断面を表した模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
尚、本開示は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
【0030】
[1.第1実施形態]
[1-1.全体構成]
図1に示すように、本実施形態の電動作業機1は、所謂、電動ハンマドリルとして構成されている。
【0031】
より具体的には、電動作業機1は、モータハウジング2と、モータハウジング2の上方に位置するギアハウジング3と、ギアハウジング3の前方に位置するドリルチャック4と、ギアハウジング3の後方に位置する操作部5と、を備えている。
【0032】
モータハウジング2は、ドリルチャック4を回転駆動させる駆動力を発生する駆動モータM1(図2参照)を収容している。駆動モータM1は、電動作業機1の動力源である。駆動モータM1は、通電による電力供給により駆動する。
【0033】
ギアハウジング3は、駆動モータM1の駆動力をドリルチャック4に伝達するギア機構(図示せず)を収容している。また、ギアハウジング3には、ドリルチャック4の回転動作のモード(例えば、回転(ドリル)モードや打撃(ハンマ)モードなど)を電動作業機1の使用者が切替操作するための、モード切替スイッチ6が設けられている。
【0034】
ドリルチャック4は、当該ドリルチャック4の前端部に工具ビット(図示せず)を着脱自在に装着する装着機構(図示せず)を備えている。ドリルチャック4とギアハウジング3との間には、電動作業機1の下方向に向かって延出した棒状のグリップ部7が電動作業機1から取り外し可能に取り付けられている。このグリップ部7は、使用者が当該グリップ部7を一方の手で把持可能に成形されている。
【0035】
操作部5は、使用者が当該操作部5を他方の手で把持可能に成形されている。操作部5の前側には、使用者が駆動モータM1を駆動/停止させるためのトリガスイッチ8が設けられている。また、操作部5の上部には、駆動モータM1の回転方向(正転/逆転)を切り替えるための回転方向切替スイッチ9が設けられている。また、操作部5の下端部には、バッテリパック10が電動作業機1から離脱可能に装着されている。
【0036】
[1-2.電動作業機の電気的構成]
図2に示すように、電動作業機1は、バッテリセル101と、駆動モータM1と、インバータ回路11と、位置検出回路12と、速度指令回路13と、制御回路14と、を備えている。
【0037】
バッテリセル101は、図2では、1つのセルとして描かれているが、複数のセルが直列接続されて構成されている。
駆動モータM1は、周知のブラシレス直流(DC)モータとして構成されている。より具体的には、駆動モータM1は、複数(例えば2つ)の図示しない永久磁石を含むロータRTと、ロータRTを回転させるための3つのコイルであって、各々の一端が互いに接続された(つまり、Y結線された)コイルU,V,Wとを備えている。すなわち、駆動モータM1は、3相のブラシレスDCモータである。ただし、図2では、ロータRTがコイルU,V,Wの外側に描かれているが、図2は構造的な配置を示しているのではなく、単に電気的な接続関係を示している。
【0038】
本実施形態の駆動モータM1は、ロータRTがコイルU,V,Wの内側に配置されたインナーロータ型のブラシレスDCモータである。また、本実施形態の駆動モータM1は、所謂センサレスモータとして構成されており、ロータRTの回転位置を直接検出するセンサ(例えばホール素子など)を備えていない。なお、駆動モータM1は、センサレスモータに限られることは無く、ロータRTの回転位置を直接検出するセンサ(例えばホール素子など)を備えたセンサ有りモータとして構成されてもよい。
【0039】
インバータ回路11は、スイッチング回路111と、駆動回路112とを備えている。
スイッチング回路111は、バッテリセル101から駆動モータM1におけるコイルU,V,Wへの電力供給経路をON/OFFするように構成されている。
【0040】
より具体的には、スイッチング回路111は、6基のスイッチング素子Q1~Q6を備え、スイッチング素子Q1~Q6の各々は、周知のPower Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor(パワーMOSFET)である。パワーMOSFETは、大電流を取り扱うように設計されたMOSFETであり、通電制御に伴い熱量を発生する。本実施形態のパワーMOSFETは、回路基板に設置された場合に、回路基板に対向する面とは反対側の面で放熱する構成ではなく、回路基板に対向する面で放熱する構成である。
【0041】
そして、直列接続されたスイッチング素子Q1,Q2の組と、直列接続されたスイッチング素子Q3,Q4の組と、直列接続されたスイッチング素子Q5,Q6の組とが、バッテリセル101の正極と負極との間に並列接続されている。6基のスイッチング素子Q1~Q6は、駆動モータM1への通電経路に設けられ、駆動モータM1の通電状態を制御する。
【0042】
駆動モータM1のコイルUは、第1モータ接続配線131aを介して、スイッチング素子Q1,Q2の間の第1通電電極部132aに接続されている。駆動モータM1のコイルVは、第2モータ接続配線131bを介して、スイッチング素子Q3,Q4の間の第2通電電極部132bに接続されている。駆動モータM1のコイルWは、第3モータ接続配線131cを介して、スイッチング素子Q5,Q6の間の第3通電電極部132cに接続されている。
【0043】
駆動回路112は、制御回路14から入力される操作量信号に応じたデューティ比を有する複数のPWM信号を、これらスイッチング素子Q1~Q6のゲートにそれぞれ出力するように構成されている。
【0044】
位置検出回路12は、ロータRTが回転したときに、コイルU,V,Wの各々に誘起される誘起電力に基づいて、駆動モータM1のロータの回転位置を検出し、回転位置を示す回転位置信号を制御回路14に出力するように構成されている。
【0045】
速度指令回路13は、トリガスイッチ8の操作量に応じた、駆動モータM1の回転速度の目標値(目標速度)を示す目標速度信号を制御回路14に出力するように構成されている。
【0046】
制御回路14は、マイクロコンピュータとして構成され、少なくとも、CPU141と、ROM142と、RAM143と、入出力(I/O)インターフェイス144とを含んでいる。そして、制御回路14では、CPU141がROM142に記憶された各種プログラムに基づいて、各種処理を実行して、電動作業機1の各部を制御する。
【0047】
[1-3.インバータ回路の機械的構成]
インバータ回路11の機械的構成について説明する。
図3および図4に示すように、インバータ回路11は、回路基板121と、ケース123と、放熱シート125と、を備える。
【0048】
なお、以下の説明において、上下、左右、前後の各方向は、図3および図4における矢印で示す方向である。
回路基板121は、モータへの通電経路の一部を形成すると共に、各種の電子部品などが搭載される回路基板である。回路基板121には、少なくとも、6基のスイッチング素子Q1~Q6と、駆動回路112と、が搭載されている。6基のスイッチング素子Q1~Q6は、上述のスイッチング回路111を構成するスイッチング素子である。
【0049】
回路基板121は、3本のモータ接続配線131a,131b,131cのそれぞれの端部と電気的に接続されている。上述のとおり、第1モータ接続配線131aは、駆動モータM1のコイルUに接続されている。第2モータ接続配線131bは、駆動モータM1のコイルVに接続されている。第3モータ接続配線131cは、駆動モータM1のコイルWに接続されている。
【0050】
回路基板121は、6基のスイッチング素子Q1~Q6が搭載される第1面121aと、放熱シート125に当接する第2面121bと、を備える。
なお、回路基板121には、6基のスイッチング素子Q1~Q6および駆動回路112とは別に、他の部品も搭載されているが、図3および図4では他の部品の図示を省略している。他の部品は、例えば、抵抗素子やトランジスタなどの電気素子や、接続ケーブルが接続される接続端子などを含む。
【0051】
回路基板121は、4つの固定穴127を備えている。固定穴127は、固定ネジ133を挿通可能な大きさである。固定ネジ133は、回路基板121をケース123に固定するためのネジである。
【0052】
ケース123は、回路基板121が固定される金属製の筐体である。ケース123は、アルミニウムを用いて形成されている。ケース123は、例えば、鉄や銅等、他の種類の金属を用いて形成されてもよい。
【0053】
ケース123は、底部123aと、側壁部123bと、を備える。底部123aは、ケース123のうち、回路基板121の第2面121bと対向するように備えられた四角形の部分である。側壁部123bは、ケース123のうち、底部123aの外周縁部から上方向に延設された部分である。
【0054】
底部123aは、基板対向面123cと、張出部123dと、を備える。基板対向面123cは、回路基板121の第2面121bに対向する面である。張出部123dは、第1分離張出部123d1と、第2分離張出部123d2と、を備える。第1分離張出部123d1および第2分離張出部123d2は、それぞれ、基板対向面123cにおいて回路基板121に向けて張り出した部分である。
【0055】
第1分離張出部123d1は、ケース123に回路基板121が固定された場合に、回路基板121のうちスイッチング素子Q1,Q3,Q5に対応する位置に形成されている。第2分離張出部123d2は、ケース123に回路基板121が固定された場合に、回路基板121のうちスイッチング素子Q2,Q4,Q6に対応する位置に形成されている。
【0056】
ケース123は、4つのネジ穴123eを備える。4つのネジ穴123eは、それぞれ、底部123aに形成されている。4つのネジ穴123eの各々は、4つの固定ネジ133と螺合可能に構成されている。4つの固定ネジ133および4つのネジ穴123eは、4つの固定ネジ133のそれぞれが4つの固定穴127に挿通された状態で、回路基板121をケース123に固定するために備えられている。
【0057】
放熱シート125は、絶縁性および熱伝導性を有する材料(例えば、シリコーンなど)を用いて構成されている。放熱シート125は、回路基板121およびケース123のそれぞれに当接する状態で配置される。放熱シート125は、第1分離放熱シート125aと、第2分離放熱シート125bと、を備える。第1分離放熱シート125aおよび第2分離放熱シート125bは、それぞれ板状に形成されている。
【0058】
次に、回路基板121における6基のスイッチング素子Q1~Q6のそれぞれの配置領域について説明する。以下の説明では、回路基板121における6基のスイッチング素子Q1~Q6のそれぞれの配置領域を、第1配置領域AR1~第6配置領域AR6ともいう。
【0059】
図5に模式的に示すように、回路基板121の第1面121aに垂直な方向から見たときに、第1配置領域AR1および第2配置領域AR2は、第1通電電極部132aを挟み込むように配置されている。同様に、第3配置領域AR3および第4配置領域AR4は、第2通電電極部132bを挟み込むように配置されている。第5配置領域AR5および第6配置領域AR6は、第3通電電極部132cを挟み込むように配置されている。
【0060】
なお、回路基板121は、基板配線132(後述する図8図9などを参照)を備える。基板配線132は、回路基板121に備えられる配線であり、導電性材料(例えば、銅など)で構成されている。基板配線132は、例えば、バッテリパック10から6基のスイッチング素子Q1~Q6を介して駆動モータM1につながる通電経路の一部や、回路基板121に搭載された電気素子や接続端子などへの通電経路の一部や、駆動回路112につながる信号経路の一部などを構成する。
【0061】
第1通電電極部132aは、基板配線132のうち第1モータ接続配線131aに電気的に接続された部分である。第2通電電極部132bは、基板配線132のうち第2モータ接続配線131bに電気的に接続された部分である。第3通電電極部132cは、基板配線132のうち第3モータ接続配線131cに電気的に接続された部分である。
【0062】
次に、回路基板121における6基のスイッチング素子Q1~Q6のそれぞれの配置領域と、張出部123dと、放熱シート125と、の相対位置について説明する。
ケース123に回路基板121が固定された状況下において、回路基板121の第1面121aに垂直な方向から見たときに、第1分離張出部123d1は、第1配置領域AR1,第3配置領域AR3,第5配置領域AR5を包含するように形成されている。同様に、第2分離張出部123d2は、第2配置領域AR2,第4配置領域AR4,第6配置領域AR6を包含するように形成されている。つまり、張出部123dは、第1配置領域AR1~第6配置領域AR6を包含するように形成されている。
【0063】
第1分離放熱シート125aは、第1分離張出部123d1と同等の大きさに形成されている。第2分離放熱シート125bは、第2分離張出部123d2と同等の大きさに形成されている。つまり、第1分離放熱シート125aは、第1配置領域AR1,第3配置領域AR3,第5配置領域AR5を包含するように、回路基板121とケース123との間に配置されている。第2分離放熱シート125bは、第2配置領域AR2,第4配置領域AR4,第6配置領域AR6を包含するように、回路基板121とケース123との間に配置されている。つまり、放熱シート125は、第1配置領域AR1~第6配置領域AR6を包含するように、回路基板121とケース123との間に配置されている。
【0064】
次に、回路基板121をケース123に固定する手順について説明する。
回路基板121をケース123に固定する際には、まず、張出部123dに放熱シート125を配置する。詳細には、第1分離張出部123d1に第1分離放熱シート125aを配置するとともに、第2分離張出部123d2に第2分離放熱シート125bを配置する。
【0065】
その後、回路基板121を放熱シート125に積層するように、回路基板121をケース123の内部に配置する。次に、4個の固定ネジ133をそれぞれ4個の固定穴127に挿通した上で、4個の固定ネジ133をそれぞれネジ穴123eに螺合する。これにより、回路基板121がケース123に固定される。
【0066】
なお、4個の固定ネジ133の締め付けトルクは、回路基板121とケース123(詳細には、張出部123d)との間に挟持される放熱シート125が収縮する大きさである。例えば、締め付けトルクは、放熱シート125の厚さ寸法が、自由状態における0.75mmから0.50mmに縮小する大きさである。このように厚さ寸法が縮小するように放熱シート125を収縮させることで、放熱シート125における熱抵抗を低減でき、回路基板121からケース123への熱伝導効率を向上できる。
【0067】
上記のようにして回路基板121をケース123に固定した後、図6に示すように、回路基板121の周囲を覆うようにモールド材137をケース123の内部に充填する。ケース123の内部にモールド材137が充填されることで、回路基板121がケース123の内部に強固に固定される。モールド材137は、絶縁性を有する材料(例えば、ウレタン樹脂やエポキシ樹脂等)を用いて構成されている。図6では、回路基板121、ケース123および放熱シート125を備えるインバータ回路11のうち、スイッチング素子Q1およびQ2が配置される部位における内部構成を模式的な断面図として表している。
【0068】
張出部123dが第1分離張出部123d1と第2分離張出部123d2とに分離した構成であるため、ケース123は、第1分離張出部123d1と第2分離張出部123d2との間に、3本のモータ接続配線131a,131b,131cのそれぞれの端部を配置する空間を備えることができる。
【0069】
3本のモータ接続配線131a,131b,131cのそれぞれの端部は、回路基板121の第1面121aから第2面121bにかけて貫通した状態で、第2面121bにおける第1通電電極部132a,第2通電電極部132b,第3通電電極部132cのそれぞれに、ハンダ136を用いて電気的に接続されている。
【0070】
[1-4.回路基板の構成]
次に、回路基板121の構成について説明する。
図7図8図9に示すように、回路基板121は、基板配線132と、複数の貫通穴150と、を備えている。
【0071】
基板配線132は、6基のスイッチング素子Q1~Q6のそれぞれに電気的に接続されているとともに、3本のモータ接続配線131a,131b,131cを介して駆動モータM1に電気的に接続されている。
【0072】
複数の貫通穴150の各々は、第1面121aから第2面121bにかけて貫通する貫通穴である。
回路基板121は、複数の貫通穴150を備える貫通穴群を備える。回路基板121は、第1貫通穴群151と、第2貫通穴群153と、第3貫通穴群155と、第4貫通穴群157と、第5貫通穴群159と、第6貫通穴群161と、を備える。
【0073】
第1貫通穴群151は、第1左側穴群151aと、第1右側穴群151bと、を備える。第1左側穴群151aおよび第1右側穴群151bは、それぞれ、複数の貫通穴150を備える。
【0074】
同様に、第2貫通穴群153は、第2左側穴群153aと、第2右側穴群153bと、を備える。第3貫通穴群155は、第3左側穴群155aと、第3右側穴群155bと、を備える。第4貫通穴群157は、第4左側穴群157aと、第4右側穴群157bと、を備える。第5貫通穴群159は、第5左側穴群159aと、第5右側穴群159bと、を備える。第6貫通穴群161は、第6左側穴群161aと、第6右側穴群161bと、を備える。
【0075】
回路基板121の第1面121aに垂直な方向から見たときに、第1貫通穴群151は、第1配置領域AR1と重なり合う部分を備える。換言すれば、第1左側穴群151aおよび第1右側穴群151bは、それぞれ、第1配置領域AR1との重複部分が存在する位置に形成されている。
【0076】
図8に拡大して示すように、第1左側穴群151aは、重複領域151a1と、隣接領域151a2と、を備える。重複領域151a1は、第1左側穴群151aのうち第1配置領域AR1と重複する領域である。隣接領域151a2は、第1左側穴群151aのうち第1配置領域AR1とは重複しない領域である。また、隣接領域151a2は、第1配置領域AR1に隣接する領域である。
【0077】
第1右側穴群151bは、重複領域151b1と、隣接領域151b2と、を備える。重複領域151b1は、第1右側穴群151bのうち第1配置領域AR1と重複する領域である。隣接領域151b2は、第1右側穴群151bのうち第1配置領域AR1とは重複しない領域である。また、隣接領域151b2は、第1配置領域AR1に隣接する領域である。
【0078】
図7に示すように、第1貫通穴群151と同様に、第2貫通穴群153(詳細には、第2左側穴群153a、第2右側穴群153b)は、第2配置領域AR2と重なり合う部分を備える。第3貫通穴群155(詳細には、第3左側穴群155a、第3右側穴群155b)は、第3配置領域AR3と重なり合う部分を備える。第4貫通穴群157(詳細には、第4左側穴群157a、第4右側穴群157b)は、第4配置領域AR4と重なり合う部分を備える。第5貫通穴群159(詳細には、第5左側穴群159a、第5右側穴群159b)は、第5配置領域AR5と重なり合う部分を備える。第6貫通穴群161(詳細には、第6左側穴群161a、第6右側穴群161b)は、第6配置領域AR6と重なり合う部分を備える。
【0079】
図7に示すように、ケース123に回路基板121が固定された状況下において、回路基板121の第1面121aに垂直な方向から見たときに、第1分離張出部123d1(図7では、点線で表す)は、第1貫通穴群151,第3貫通穴群155,第5貫通穴群159を包含する。上述のとおり、第1分離張出部123d1は、第1配置領域AR1,第3配置領域AR3,第5配置領域AR5を包含する。
【0080】
このため、スイッチング素子Q1,Q3,Q5のそれぞれで発生した熱量は、第1貫通穴群151,第3貫通穴群155,第5貫通穴群159を介して、第1分離放熱シート125aに熱伝導し、さらに、この熱量は、第1分離放熱シート125aから第1分離張出部123d1に熱伝導することで、ケース123に熱伝導する。
【0081】
同様に、第2分離張出部123d2(図7では、点線で表す)は、第2貫通穴群153,第4貫通穴群157,第6貫通穴群161を包含する。上述のとおり、第2分離張出部123d2は、第2配置領域AR2,第4配置領域AR4,第6配置領域AR6を包含する。このため、スイッチング素子Q2,Q4,Q6のそれぞれで発生した熱量は、第2貫通穴群153,第4貫通穴群157,第6貫通穴群161を介して、第2分離放熱シート125bに熱伝導し、さらに、この熱量は、第2分離放熱シート125bから第2分離張出部123d2に熱伝導することで、ケース123に熱伝導する。
【0082】
図9に拡大して示すように、基板配線132は、第1表面配線132d、第2表面配線132e、複数の貫通配線132fを備える。第1表面配線132dは、回路基板121のうち第1面121aに形成された配線である。第2表面配線132eは、回路基板121のうち第2面121bに形成された配線である。複数の貫通配線132fは、複数の貫通穴150のそれぞれの内面に形成された配線である。
【0083】
第1表面配線132dおよび第2表面配線132eは、複数の貫通配線132fを介して互いに電気的に接続されている。
第1表面配線132d、第2表面配線132e、複数の貫通配線132fは、第1貫通穴群151,第2貫通穴群153,第3貫通穴群155,第4貫通穴群157,第5貫通穴群159,第6貫通穴群161のそれぞれの領域に形成されている。換言すれば、第1貫通穴群151~第6貫通穴群161には、それぞれ、第1表面配線132d,第2表面配線132eおよび複数の貫通配線132fが形成されている。
【0084】
第1貫通穴群151の第1表面配線132dおよび第2表面配線132eは、第1左側穴群151aおよび第1右側穴群151bのそれぞれの領域に形成されている。第2貫通穴群153~第6貫通穴群161についても同様である。
【0085】
複数の貫通穴150の内部には、複数の貫通配線132fが形成されるとともに、複数の充填材163が充填されている。複数の充填材163は、絶縁性材料(例えば、シリカ、エポキシ樹脂など)で構成されている。なお、複数の充填材163の各々は、基板配線132と同様の導電性材料(例えば、銅)で構成してもよい。
【0086】
図7に示すように、回路基板121は、基板配線132とは別に、複数の回路配線134を備える。複数の回路配線134は、それぞれ、回路基板121における異なる地点どうしを電気的に接続するために敷設された配線である。複数の回路配線134は、導電性材料で構成されている。
【0087】
回路基板121は、第1配置領域AR1の周囲領域のうち、右側領域および左側領域に第1貫通穴群151の一部(詳細には、隣接領域151a2、隣接領域151b2)が形成され、前側領域および後側領域には貫通穴群(換言すれば、複数の貫通穴150)が形成されない構成である。第1配置領域AR1の周囲領域のうち前側領域および後側領域には、回路配線134が配置されている。
【0088】
第1配置領域AR1の周囲領域のみならず、第2配置領域AR2~第6配置領域AR6のそれぞれの周囲領域についても同様に、前側領域および後側領域には、回路配線134が配置されている。
【0089】
[1-5.効果]
以上説明したように、本実施形態の電動作業機1は、6基のスイッチング素子Q1~Q6と、回路基板121と、ケース123と、放熱シート125と、を備える。
【0090】
この電動作業機1においては、基板配線132のうち複数の貫通配線132fが、回路基板121の第1面121aから第2面121bにかけての熱伝導経路を形成する。つまり、電動作業機1は、6基のスイッチング素子Q1~Q6から基板配線132(詳細には、第1表面配線132d、複数の貫通配線132f、第2表面配線132e)および放熱シート125を介してケース123に至る熱伝導経路を備える。複数の貫通配線132fは、導電性材料であるため、回路基板121そのものに比べて熱伝導性能に優れている。
【0091】
このため、電動作業機1は、複数の貫通配線132fを介した複数の熱伝導経路を備えることで、回路基板121の第1面121aから第2面121bにかけての熱伝導性能が向上する。このため、6基のスイッチング素子Q1~Q6で発生した熱量は、回路基板121を介して効率よくケース123に伝わる。
【0092】
よって、電動作業機1は、6基のスイッチング素子Q1~Q6から回路基板121を介してケース123に至る熱伝導経路を備えることで、6基のスイッチング素子Q1~Q6が回路基板121に対向する面で放熱する構成であっても、6基のスイッチング素子Q1~Q6を冷却できる。
【0093】
次に、電動作業機1は、複数の貫通穴150のそれぞれの内部に配置された複数の充填材163を備える。これにより、電動作業機1は、複数の充填材163を介した熱伝導経路を形成できるため、複数の貫通穴150のそれぞれの内部に空洞を有する構成に比べて、第1面121aから第2面121bにかけての熱伝導性能が向上する。
【0094】
次に、電動作業機1においては、第1配置領域AR1および第2配置領域AR2は、回路基板121の板面に垂直方向から見たときに、第1通電電極部132aを挟み込むように配置されている。換言すれば、第1スイッチング素子Q1および第2スイッチング素子Q2は、回路基板121の板面に垂直方向から見たときに、第1通電電極部132aを挟み込むように配置されている。
【0095】
第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第1通電電極部132aが上記のように配置されることで、これらが互いに離れて配置される構成に比べて、第1スイッチング素子Q1と第1通電電極部132aとの距離、第2スイッチング素子Q2と第1通電電極部132aとの距離をそれぞれ短縮できる。これにより、電動作業機1は、回路基板121における通電経路(基板配線132)の占有面積を縮小できるため、回路基板121の小型化を図ることができる。
【0096】
同様に、第3配置領域AR3および第4配置領域AR4は、第2通電電極部132bを挟み込むように配置されている。このため、第3スイッチング素子Q3と第2通電電極部132bとの距離、第4スイッチング素子Q4と第2通電電極部132bとの距離をそれぞれ短縮でき、回路基板121の小型化を図ることができる。また、第5配置領域AR5および第6配置領域AR6は、第3通電電極部132cを挟み込むように配置されている。このため、第5スイッチング素子Q5と第3通電電極部132cとの距離、第6スイッチング素子Q6と第3通電電極部132cとの距離をそれぞれ短縮でき、回路基板121の小型化を図ることができる。
【0097】
次に、電動作業機1においては、ケース123は、基板対向面123cから回路基板121に向けて張り出した張出部123dを備える。放熱シート125は、回路基板121および張出部123dに当接している。
【0098】
この電動作業機1は、ケース123が張出部123dを備えることで、ケース123が張出部を備えない場合に比べて、回路基板121からケース123までの距離を短縮することができる。このため、電動作業機1は、回路基板121から放熱シート125を介してケース123に至る熱伝導経路を短縮でき、この熱伝導経路での熱伝導効率を向上できる。
【0099】
次に、電動作業機1においては、張出部123dは、第1分離張出部123d1と、第2分離張出部123d2と、を備え、放熱シート125は、第1分離放熱シート125aと、第2分離放熱シート125bと、を備える。
【0100】
この電動作業機1によれば、第1分離張出部123d1と第2分離張出部123d2との間、および、第1分離放熱シート125aと第2分離放熱シート125bとの間に、隙間空間を設けることができる。この隙間空間は、3本のモータ接続配線131a,131b,131cのそれぞれの端部を配置する空間として利用できる。これにより、ケース123の内部空間を効率的に利用することができ、ケース123の小型化を図ることができる。
【0101】
次に、回路基板121において、「第1スイッチング素子Q1、第1通電電極部132a、第2スイッチング素子Q2の配置領域」と、「第3スイッチング素子Q3、第2通電電極部132b、第4スイッチング素子Q4の配置領域」とは、互いに隣接して配置されている。
【0102】
この電動作業機1は、これらの2つの配置領域どうしが互いに離れて配置される場合に比べて、回路基板121における通電経路(基板配線132)を短縮できる。これにより、電動作業機1は、回路基板121における通電経路(基板配線132)の占有面積を縮小できるため、回路基板121の小型化を図ることができる。
【0103】
また、電動作業機1においては、「第5スイッチング素子Q5、第3通電電極部132c、第6スイッチング素子Q6の配置領域」が、「第3スイッチング素子Q3、第2通電電極部132b、第4スイッチング素子Q4の配置領域」に隣接して配置されている。
【0104】
この電動作業機1は、これらの3つの配置領域どうしが互いに離れて配置される場合に比べて、回路基板121における通電経路(基板配線132)を短縮でき、回路基板121における通電経路(基板配線132)の占有面積を縮小できるため、回路基板121の小型化を図ることができる。
【0105】
次に、回路基板121は、第1左側穴群151aにおいて重複領域151a1および隣接領域151a2を備えるとともに、第1右側穴群151bにおいて重複領域151b1および隣接領域151b2を備える。つまり、回路基板121は、第1配置領域AR1と重複する領域(重複領域151a1、重複領域151b1)において、複数の貫通穴150および複数の貫通配線132fを備えると共に、第1配置領域AR1とは重複しない領域(隣接領域151a2、隣接領域151b2)においても、複数の貫通穴150(複数の第2貫通穴に相当)および複数の貫通配線132f(複数の第4配線部に相当)を備えている。
【0106】
このように、第1配置領域AR1とは別の領域(隣接領域151a2、隣接領域151b2。素子隣接領域に相当。)に貫通配線132f(複数の第4配線部に相当)を備えることで、第1配置領域AR1と重複する領域(重複領域151a1、重複領域151b1)にのみ貫通配線132fを備える場合に比べて、回路基板121における第1面121aから第2面121bにかけての熱伝導経路をより多く確保できる。
【0107】
これにより、電動作業機1は、回路基板121の第1面121aから第2面121bにかけての熱伝導性能が向上し、スイッチング素子Q1から回路基板121を介して放熱シート125に至る熱伝導経路での熱伝導量を増大できるため、スイッチング素子Q1で発生した熱量をケース123により効率よく伝えることが可能となる。
【0108】
次に、回路基板121は、第1配置領域AR1の周囲領域のうち、右側領域および左側領域に第1貫通穴群151の一部(詳細には、隣接領域151a2、隣接領域151b2)を配置し、前側領域および後側領域には貫通穴群(換言すれば、複数の貫通穴150)を配置しない構成である。このため、第1配置領域AR1の周囲領域のうち前側領域および後側領域には、回路配線134などを配置できる。
【0109】
第1配置領域AR1の周囲領域のみならず、第2配置領域AR2~第6配置領域AR6のそれぞれの周囲領域についても同様に、前側領域および後側領域には、回路配線134などを配置できる。
【0110】
これにより、回路基板121における回路配線134の敷設ルートを決定するにあたり、第1配置領域AR1~第6配置領域AR6のそれぞれ周囲領域のうち前側領域および後側領域を含めた広い領域に回路配線134を敷設できるため、敷設ルートの設計自由度が高まる。
【0111】
[1-6.文言の対応関係]
ここで、文言の対応関係について説明する。
スイッチング素子Q1~Q6がスイッチング回路の一例に相当する。
【0112】
重複領域151a1および重複領域151b1に形成される複数の貫通穴150が複数の第1貫通穴の一例に相当し、第1貫通穴群151のうち重複領域151a1および重複領域151b1に相当する部分が第1穴群の一例に相当し、重複領域151a1および重複領域151b1に形成される複数の貫通配線132fが複数の第3配線部の一例に相当する。
【0113】
第1スイッチング素子Q1が第1の半導体素子の一例に相当し、第2スイッチング素子Q2が第2の半導体素子の一例に相当し、第1通電電極部132aが第1接続部の一例に相当する。
【0114】
張出部123dが対向張出部の一例に相当し、第1分離張出部123d1が第1張出部の一例に相当し、第2分離張出部123d2が第2張出部の一例に相当する。第1分離放熱シート125aが第1シートの一例に相当し、第2分離放熱シート125bが第2シートの一例に相当する。
【0115】
第3スイッチング素子Q3が第3の半導体素子の一例に相当し、第4スイッチング素子Q4が第4の半導体素子の一例に相当し、第2通電電極部132bが第2接続部の一例に相当する。
【0116】
隣接領域151a2および隣接領域151b2に形成される複数の貫通穴150が複数の第2貫通穴の一例に相当し、第1貫通穴群151のうち隣接領域151a2および隣接領域151b2に相当する部分が第2穴群の一例に相当する。第1配置領域AR1の周囲領域が素子隣接領域の一例に相当し、隣接領域151a2および隣接領域151b2が素子隣接領域のうち穴形成領域の一例に相当し、隣接領域151a2および隣接領域151b2に形成される複数の貫通配線132fが複数の第4配線部の一例に相当する。
【0117】
第1配置領域AR1の周囲領域のうち、第1配置領域AR1の前側領域および後側領域が穴非形成領域の一例に相当する。
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0118】
(2a)上記実施形態では、6基のスイッチング素子Q1~Q6が回路基板に搭載される構成について説明したが、回路基板に搭載される半導体素子の個数は、上記の数値に限られることはない。例えば、モータが単相直流モータの場合には、電動作業機は、1個の半導体素子を備える構成であってもよい。あるいは、モータの構成に応じて、2個の半導体素子を備える構成であっても良いし、任意の個数の半導体素子を備える電動作業機に本開示を適用することが可能である。
【0119】
(2b)上記実施形態では、ケースが対向張出部(張出部123d)を備える構成について説明したが、ケースが対向張出部を備えない構成であってもよい。また、上記実施形態では、対向張出部が2個の張出部(第1分離張出部123d1、第2分離張出部123d2)を備える構成について説明したが、このような構成に限られることはない。例えば、対向張出部が1個の張出部のみを備える構成としても良いし、あるいは、対向張出部が3個以上の張出部を備える構成であってもよい。
【0120】
また、上記実施形態では、1つの張出部が複数の半導体素子(具体的には、スイッチング素子Q1、Q3、Q5)を包含する構成のケースについて説明したが、ケースは、このような構成に限られることはない。例えば、ケースは、1つの半導体素子に対応して1つの張出部を備える構成としてもよい。
【0121】
(2c)上記実施形態では、放熱シートが2つのシートを備える構成について説明したが、このような構成に限られることはない。例えば、放熱シートは、1個のシートのみで構成されてもよい。この場合、ケースに備えられる張出部が1個の場合には、1個の放熱シートをその張出部に応じた形状としてもよい。あるいは、ケースが複数の張出部を備える場合には、1個の放熱シートが複数の張出部の全てを覆うことができる形状としてもよい。
【0122】
また、放熱シートは、3個以上のシートを備える構成であってもよい。この場合、ケースに備えられる張出部が1個の場合には、3個以上のシートを1個の張出部の上に並べて配置してもよい。あるいは、ケースが3個以上の張出部を備える場合には、シートの個数を張出部の個数に対応させて、シートと張出部とが一対一の関係となる構成としてもよい。
【0123】
(2d)上記実施形態では、張出部(換言すれば、第1分離張出部123d1、第2分離張出部123d2)および放熱シート(換言すれば、第1分離放熱シート125a、第2分離放熱シート125b)の形状が四角形(長方形)である構成について説明したが、このような構成に限られることはない。例えば、張出部および放熱シートは、スイッチング回路を包含する形状であれば、円形、多角形、楕円形など、任意の形状を取りうる。
【0124】
(2e)上記実施形態では、回路基板として、スイッチング回路の配置領域(例えば、重複領域151a1、重複領域151b1)のみならず、スイッチング回路の配置領域とは別の素子隣接領域(隣接領域151a2、隣接領域151b2)にも貫通穴を備える構成の回路基板について説明したが、このような構成に限られることはない。例えば、回路基板は、スイッチング回路の配置領域のみに貫通穴を備えて、素子隣接領域には貫通穴を備えない構成であってもよい。
【0125】
(2f)上記実施形態では、スイッチング回路の配置領域(例えば、第1配置領域AR1など)の周囲領域のうち、右側領域および左側領域のそれぞれに第2穴群を備える構成について説明したが、このような構成に限られることはない。例えば、スイッチング回路の配置領域の周囲領域のうち、前側領域および後側領域のそれぞれに第2穴群を備える構成としてもよい。あるいは、スイッチング回路の配置領域の周囲領域(右側領域、左側領域、前側領域、後側領域)のうちいずれか1つの領域のみに第2穴群を備える構成としてもよい。あるいは、スイッチング回路の配置領域の周囲領域(右側領域、左側領域、前側領域、後側領域)のうちいずれか3つの領域のそれぞれに第2穴群を備える構成としてもよい。
【0126】
なお、回路基板は、スイッチング回路の配置領域の周囲領域(右側領域、左側領域、前側領域、後側領域)のうちいずれか1つの領域には第2穴群を備えない構成としてもよい。これにより、第2穴群を備えない領域については回路配線を敷設できるため、回路基板のうち回路配線を敷設できる領域を広く確保することができ、回路配線の敷設ルートの設計自由度が高まる。
【0127】
(2g)本開示を適用できる電動作業機は、電動ハンマドリルに限られることはなく、例えば、電動スクリュードライバ、電動ハンマ、電動ドリル、電動ドライバ、電動レンチ、電動レシプロソー、電動ジグソー、電動カッター、電動チェンソー、電動カンナ、電動鋲打ち機、電動釘打ち機、電動ヘッジトリマ、電動芝刈り機、電動芝生バリカン、電動刈払機、電動クリーナ、電動ブロア、電動グラインダ、電動インパクトドライバ、電動マルノコ、電動ハンマドライバ、等であってもよい。
【0128】
(2h)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合させたりしてもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、同様の機能を有する公知の構成に置き換えてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加または置換してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言のみによって特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0129】
1…電動作業機、121…回路基板、123…ケース、123a…底部、123c…基板対向面、123d…張出部、123d1…第1分離張出部、123d2…第2分離張出部、125…放熱シート、125a…第1分離放熱シート、125b…第2分離放熱シート、132…基板配線、132a…第1通電電極部、132b…第2通電電極部、132c…第3通電電極部、132d…第1表面配線、132e…第2表面配線、132f…貫通配線、134…回路配線、150…貫通穴、151…第1貫通穴群、151a…第1左側穴群、151b…第1右側穴群、153…第2貫通穴群、155…第3貫通穴群、157…第4貫通穴群、159…第5貫通穴群、161…第6貫通穴群、163…充填材、M1…駆動モータ、Q1~Q6…第1~第6スイッチング素子。
図1
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