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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20231221BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20231221BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20231221BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20231221BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20231221BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20231221BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20231221BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20231221BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M10/0562
H01M10/0585
H01M50/403 A
H01M50/434
H01M50/46
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019131337
(22)【出願日】2019-07-16
(65)【公開番号】P2021015780
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 真大
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 圭太
(72)【発明者】
【氏名】山本 亮平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 郁奈
(72)【発明者】
【氏名】太田 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 真祈
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/123479(WO,A1)
【文献】特開2009-238739(JP,A)
【文献】特表2019-500739(JP,A)
【文献】特開2018-156908(JP,A)
【文献】特開2018-206727(JP,A)
【文献】特開2017-188441(JP,A)
【文献】特開2017-004783(JP,A)
【文献】特開2020-77571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00 -10/0587
H01M 4/00 - 4/62
H01M 50/40 -50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極(2)と、
前記第1電極上に積層されたセパレータ(3)と、
前記セパレータ上に積層された第2電極(4、402)と、を備えた単セル(11)を有し、
前記第1電極は、
ランタンジルコン酸リチウム及びLi原子、La原子、Zr原子以外の原子がドープされたランタンジルコン酸リチウムのうち1種または2種以上のLLZ系固体電解質を含み、細孔(211)を有する多孔質体(21)と、
前記細孔に保持された活物質(22)と、を有し、
前記多孔質体は60%以下の相対密度を有し、
前記セパレータは、
80%以上の相対密度を有し、
ランタンジルコン酸リチウム及びLi原子、La原子、Zr原子以外の原子がドープされたランタンジルコン酸リチウムのうち1種または2種以上のLLZ系固体電解質と、B原子、P原子及びSi原子のうち1種または2種以上とを含有しており、
前記多孔質体には、B原子、P原子及びSi原子のうち1種または2種以上が含まれており、前記多孔質体におけるB原子、P原子及びSi原子の含有量の合計は、前記セパレータにおけるB原子、P原子及びSi原子の含有量の合計よりも少ない、リチウムイオン二次電池(1、102)の製造方法であって、
前記LLZ系固体電解質と造孔材とを含む第1層と、前記LLZ系固体電解質とB原子、P原子、Si原子のうち1種または2種以上を含む焼結助剤とを含む第2層と、を重ね合わせて積層体を作製する積層工程と、
前記積層体を900℃以上1000℃以下の温度で焼結することにより、前記多孔質体と前記セパレータとを一体的に形成する共焼結工程と、を有する、リチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記セパレータにはB原子が含まれており、前記多孔質体にはP原子及びSi原子のうち1種または2種が含まれている、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法
【請求項3】
前記セパレータにはP原子が含まれており、前記多孔質体にはSi原子が含まれている、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法
【請求項4】
前記セパレータにおけるLLZ系固体電解質の平均結晶粒径は、前記多孔質体におけるLLZ系固体電解質の平均結晶粒径よりも大きい、請求項1~3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法
【請求項5】
前記焼結助剤は、Li3BO3、B23、Li3PO4、Li4SiO4及びLi2SiO4のうち1種または2種以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車や電子機器のバッテリーとして、正極と負極との間に固体電解質を介在させた、いわゆる全固体電池が提案されている。例えば特許文献1には、稠密な電解質材料を含み、第一の面および該第一の面とは反対側の第二の面を有する稠密な中心層と、該稠密な中心層の該第一の面上に配置された第一の電極と、該稠密な中心層の該第二の面上に配置された第二の電極と、を含む電池が記載されている。また、特許文献1には、中心層の電解質材料と、第一の電極に含まれる第一の多孔質電解質材料と、第二の電極に含まれる第二の多孔質電解質材料とが同一であってもよい点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2019-500737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電池のように、中心層と多孔質電解質材料とが積層されている場合、例えば、電解質粒子及びバインダを含む中心層のグリーンシートと、電解質粒子、バインダ及び造孔材を含む多孔質電解質材料のグリーンシートとの積層体を焼結することにより、中心層と多孔質電解質材料とを一体的に形成することが可能である。
【0005】
しかし、特許文献1のように、中心層と多孔質電解質材料とが同一の電解質から構成されている場合、焼結中に、中心層及び多孔質電解質材料において、電解質粒子が同様に結晶成長する。そのため、焼結時の加熱温度を高くすると、多孔質電解質材料の細孔容積が電解質粒子の結晶成長によって小さくなり、電池の容量の低下を招きやすいという問題がある。一方、焼結時の加熱温度を低くすると、中心層や多孔質電解質材料内における電解質粒子同士の接合が不十分となり、電池の内部抵抗の増加を招きやすいという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、高い容量と、低い内部抵抗とを両立することができるリチウムイオン二次電池及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一参考態様は、第1電極(2)と、
前記第1電極上に積層されたセパレータ(3)と、
前記セパレータ上に積層された第2電極(4、402)と、を備えた単セル(11)を有し、
前記第1電極は、
ランタンジルコン酸リチウム及びLi原子、La原子、Zr原子以外の原子がドープされたランタンジルコン酸リチウムのうち1種または2種以上のLLZ系固体電解質を含み、細孔(211)を有する多孔質体(21)と、
前記細孔に保持された活物質(22)と、を有し、
前記多孔質体は60%以下の相対密度を有し、
前記セパレータは、
80%以上の相対密度を有し、
ランタンジルコン酸リチウム及びLi原子、La原子、Zr原子以外の原子がドープされたランタンジルコン酸リチウムのうち1種または2種以上のLLZ系固体電解質と、B原子、P原子及びSi原子のうち1種または2種以上とを含有しており、
前記多孔質体には、B原子、P原子及びSi原子のうち1種または2種以上が含まれており、前記多孔質体におけるB原子、P原子及びSi原子の含有量の合計は、前記セパレータにおけるB原子、P原子及びSi原子の含有量の合計よりも少ない、リチウムイオン二次電池(1、102)にある。
【0008】
本発明の態様は、前記の態様のリチウムイオン二次電池の製造方法であって、
前記LLZ系固体電解質と造孔材とを含む第1層と、前記LLZ系固体電解質と、B原子、P原子及びSi原子のうち1種または2種以上を含む焼結助剤とを含む第2層と、を重ね合わせて積層体を作製する積層工程と、
前記積層体を900℃以上1000℃以下の温度で焼結することにより、前記多孔質体と前記セパレータとを一体的に形成する共焼結工程と、を有する、リチウムイオン二次電池の製造方法にある。
【発明の効果】
【0009】
前記リチウムイオン二次電池における多孔質体には、ランタンジルコン酸リチウム(つまり、LLZ)及びLi原子、La原子、Zr原子以外の原子がドープされたLLZのうち1種または2種以上のLLZ系固体電解質が含まれており、セパレータには、LLZ系固体電解質と、B原子、P原子及びSi原子のうち1種または2種以上とが含まれている。B原子、P原子及びSi原子は、前記リチウムイオン二次電池の製造過程において使用する焼結助剤に含まれる原子である。
【0010】
リチウムイオン二次電池の製造過程において、前述した原子を含む焼結助剤を使用することにより、焼結中に多孔質体中のLLZ系固体電解質の結晶成長の過度の進行を抑制しつつ、セパレータ中のLLZ系固体電解質を十分に結晶成長させることができる。その結果、高い容量と、低い内部抵抗とを両立することができる。
【0011】
また、前記リチウムイオン二次電池の製造方法においては、焼結後に多孔質体となる第1層と、焼結後にセパレータとなる第2層とを重ね合わせて積層体を作製する。この積層体を焼結することにより、多孔質体とセパレータとを一体的に形成することができる。第2層にはB原子、P原子及びSi原子のうち1種または2種以上を含む焼結助剤が含まれているため、焼結中に、多孔質体中のLLZ系固体電解質の結晶成長の過度の進行を抑制しつつ、セパレータ中のLLZ系固体電解質を十分に結晶成長させることができる。その結果、高い容量と、低い内部抵抗とを両立することができる。
【0012】
以上のごとく、上記態様によれば、高い容量と、低い内部抵抗とを両立することができるリチウムイオン二次電池及びその製造方法を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態1におけるリチウムイオン二次電池の要部を示す断面図である
図2図2は、実施形態2における、第1電極及び第2電極の両方に多孔質体を有するリチウムイオン二次電池の要部を示す断面図である。
図3図3は、実験例における試験体T12の多孔質体のSEM像である。
図4図4は、実験例における試験体T12のセパレータのSEM像である。
図5図5は、実験例における試験体T14の多孔質体のSEM像である。
図6図6は、実験例における試験体T14のセパレータのSEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
前記リチウムイオン二次電池及びその製造方法に係る実施形態について、図1を参照して説明する。リチウムイオン二次電池1は、第1電極2と、第1電極2上に積層されたセパレータ3と、セパレータ3上に積層された第2電極4と、を備えた単セル11を有している。第1電極2は、ランタンジルコン酸リチウム(LLZ)及びLi原子、La原子、Zr原子以外の原子がドープされたランタンジルコン酸リチウムのうち1種または2種以上のLLZ系固体電解質を含み、多数の細孔211を有する多孔質体21と、細孔211に保持された活物質22と、を有している。セパレータ3には、LLZ及びLi原子、La原子、Zr原子以外の原子がドープされたランタンジルコン酸リチウムのうち1種または2種以上のLLZ系固体電解質と、B原子、P原子及びSi原子のうち1種または2種以上とが含まれている。また、セパレータ3の相対密度は80%以上である。
【0015】
リチウムイオン二次電池1は、1個の単セル11を有していてもよいし、複数の単セル11を有していてもよい。例えば、本形態のリチウムイオン二次電池1は、1個の単セル11を有している。単セル11における第1電極2の表面及び第2電極4の表面には、それぞれ、集電体12が積層されている。これらの集電体12に付加や発電装置を接続することにより、リチウムイオン二次電池1への充電や放電を行うことができる。集電体12としては、例えば、金属箔や金属板等の導電体、ガラス等の絶縁体中にカーボンや導電性酸化物等の導電性粉末を分散させた複合材料等を使用することができる。
【0016】
図には示さないが、リチウムイオン二次電池1が複数の単セル11を有している場合、集電体12と単セル11とを交互に重ね合わせることにより、集電体12を介して複数の単セル11を電気的に接続することができる。例えば、集電体12の一方の面と第1電極2とが当接し、他方の面と第2電極4とが当接するようにして集電体12と単セル11とを重ね合わせることにより、複数の単セル11を直列に接続することができる。また、同種の電極2、4同士の間に集電体12が介在するようにして集電体12と単セル11とを重ね合わせることにより、複数の単セル11を並列に接続することができる。
【0017】
第1電極2は、正極であってもよいし、負極であってもよい。本形態の第1電極2は、具体的には正極である。
【0018】
また、第1電極2の形状は種々の態様をとり得る。例えば、本形態の第1電極2は、図には示さないが、多孔質体21によって形作られた長方形の板状を呈している。
【0019】
多孔質体21には、LLZと、Li原子、La原子、Zr原子以外の原子がドープされたランタンジルコン酸リチウムのうち1種または2種以上のLLZ系固体電解質が含まれている。すなわち、多孔質体21は、LLZ系固体電解質から構成されていてもよいし、LLZ系固体電解質と、LLZ系固体電解質以外の物質とが含まれていてもよい。
【0020】
孔質体21は、更に、B原子、P原子及びSi原子のうち1種または2種以上が含まれている。すなわち、リチウムイオン二次電池1の製造過程において、多孔質体21にこれらの原子を含む焼結助剤が添加されているそのため、多孔質体21を焼結する際の加熱温度をより低くし、リチウムイオン二次電池1の製造過程におけるエネルギーの消費量をより低減することができる。
【0021】
孔質体21中のB原子、P原子及びSi原子の含有量の合計は、セパレータ3中のB原子、P原子及びSi原子の含有量の合計よりも少ない。これにより、セパレータ3中のLLZ系固体電解質の結晶成長を促進するとともに、多孔質体21中のLLZ系固体電解質の過度の結晶成長をより確実に抑制することができる。その結果、多孔質体21の相対密度の上昇をより効果的に抑制し、リチウムイオン二次電池1の容量をより大きくすることができる。
【0022】
多孔質体21は、細孔211を有している。多孔質体21の細孔211内には、活物質22が保持されている。細孔211内には、活物質22の他に、導電助剤や前記LLZ系固体電解質とは異なる他の固体電解質、液体電解質等が保持されていてもよい。
【0023】
多孔質体21の細孔211は、例えば図1に示すように、連続気孔構造を有していてもよい。多孔質体21の相対密度、つまり、多孔質体21における、細孔211を除いた部分の密度に対する、細孔211を含む多孔質体21全体の見掛け密度の比率は、60%以下である。また、多孔質体21の形状を維持する観点からは、多孔質体21の相対密度は、例えば、30%以上とすることができる。
【0024】
なお、多孔質体21の相対密度は、FIB/SEM(つまり、収束イオンビーム/走査型電子顕微鏡)トモグラフィー法により得られる三次元再構成像に基づいて算出される値である。より具体的には、FIB装置による試料の加工とSEMによる加工面の観察とを繰り返し、複数のSEM像を取得する。これらのSEM像を画像解析ソフト上で再構成することにより、試料の三次元再構成像を得る。そして、得られた三次元再構成像に、多孔質体21とそれ以外との境界が損なわれないように二値化処理を施す。以上により得られた二値化像に基づいて算出した、多孔質体21の見掛けの体積に対するLLZ系固体電解質の体積と焼結助剤の体積との合計の比率を多孔質体21の相対密度とする。
【0025】
活物質22は、第1電極2の極性に応じて適宜選択することができる。例えば、第1電極2が正極である場合、第1電極2の活物質22としては、硫黄原子を含有する硫黄系活物質や、酸化物からなる酸化物系活物質を使用することができる。硫黄系活物質としては、具体的には、硫黄の単体や硫化リチウム(Li2S)、リチウムがドープされた硫黄等を使用することができる。酸化物系活物質としては、具体的には、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、LiNi1/3Mn1/3Co1/32、マンガン酸リチウム(LiMnO2)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)等を使用することができる。
【0026】
第1電極2が正極である場合、活物質22に硫黄原子が含まれていることが好ましい。この場合には、リチウムイオン二次電池1の容量をより大きくすることができる。本形態の活物質22は、具体的には、硫黄の単体である。
【0027】
なお、第1電極2が負極である場合、第1電極2の活物質22としては、金属リチウム、カーボン、Li4Ti512等を使用することができる。
【0028】
図1に示すように、セパレータ3は、第1電極2の多孔質体21と一体的に形成されている。セパレータ3の相対密度は、80%以上である。これにより、セパレータ3は、第1電極2と第2電極4との短絡を抑制することができる。第1電極2と第2電極4との短絡をより確実に抑制する観点から、セパレータ3の相対密度は、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
【0029】
セパレータ3には、LLZ及びLi原子、La原子、Zr原子以外の原子がドープされたLLZのうち1種または2種以上のLLZ系固体電解質と、B原子、P原子及びSi原子のうち1種または2種以上とが含まれている。すなわち、リチウムイオン二次電池1の製造過程において、セパレータ3にこれらの原子を含む焼結助剤が添加されていてもよい。これらの原子を含む焼結助剤は、リチウムイオン二次電池1の製造過程において多孔質体21及びセパレータ3を焼結する際にLLZ系固体電解質よりも先に溶融する。そして、焼結助剤の融液とLLZ系固体電解質とが接触することにより、LLZ系固体電解質の結晶成長を促進することができる。
【0030】
従って、リチウムイオン二次電池1の製造過程においてセパレータ3に焼結助剤を添加することにより、焼結中のセパレータ3におけるLLZ系固体電解質の結晶成長の速度を早くすることができる。その結果、多孔質体21中のLLZ系固体電解質の結晶成長の過度の進行を抑制しつつ、セパレータ3中のLLZ系固体電解質の結晶成長を促進することができる。
【0031】
LLZ系固体電解質の結晶成長を促進する効果を高める観点からは、融点の低い焼結助剤を使用することが好ましい。また、焼結助剤の融点は、B原子を含む焼結助剤が最も低く、P原子を含む焼結助剤、Si原子を含む焼結助剤の順に高くなる傾向がある。従って、セパレータ3中のLLZ系固体電解質の結晶成長を促進する観点からは、セパレータ3にB原子が含まれていることが最も好ましく、P原子が含まれていることが次に好ましい。
【0032】
また、リチウムイオン二次電池1の製造過程において多孔質体21にも焼結助剤を添加する場合、多孔質体21に使用する焼結助剤の融点は、セパレータ3に使用する焼結助剤の融点よりも高いことが好ましい。すなわち、セパレータ3にB原子が含まれている場合、多孔質体21には、P原子及びSi原子のうち1種または2種が含まれていることが好ましい。また、セパレータ3にP原子が含まれている場合、多孔質体21には、Si原子が含まれていることが好ましい。
【0033】
このように、多孔質体21中の焼結助剤の融点をセパレータ3中の焼結助剤の融点よりも高くすることにより、セパレータ3の結晶成長を促進するとともに、多孔質体21の過度の結晶成長をより確実に抑制することができる。その結果、多孔質体21の相対密度の上昇をより効果的に抑制し、リチウムイオン二次電池1の容量をより大きくすることができる。
【0034】
セパレータ3におけるB原子、P原子及びSi原子の含有量は、セパレータ3中のLa(ランタン)原子に対して12モル%以上65モル%以下とすることが好ましい。この場合には、セパレータ3中のLLZ系固体電解質の量を十分に確保してリチウムイオン伝導性を高めるとともに、焼結助剤による焼結促進の効果を得ることができる。
【0035】
セパレータ3に含まれるLLZ系固体電解質は、多孔質体21のLLZ系固体電解質と同一であってもよいし、異なっていてもよい。セパレータ3におけるLLZ系固体電解質の平均結晶粒径は、多孔質体21におけるLLZ系固体電解質の平均結晶粒径よりも大きいことが好ましい。この場合には、セパレータ3の相対密度をより高くするとともに、多孔質体21の相対密度をより低くすることができる。その結果、リチウムイオン伝導性をより向上させて内部抵抗をより低減することができる。さらに、細孔211内に貯蔵可能なリチウムの量をより多くしてリチウムイオン二次電池1の容量をより大きくすることができる。
【0036】
多孔質体21及びセパレータ3におけるLLZ系固体電解質の平均結晶粒径は、以下の方法により測定することができる。すなわち、まず、リチウムイオン二次電池1を多孔質体21とセパレータ3との積層方向に切断して断面を露出させる。この断面を走査型電子顕微鏡で観察し、SEM像を取得する。そして、SEM像内に存在する複数のLLZ系固体電解質の結晶について最大径を計測する。これらの最大径の平均値を、LLZ系固体電解質の平均結晶粒径とする。なお、平均結晶粒径の算出に用いるLLZ系固体電解質の結晶の数は特に限定されることはないが、平均結晶粒径の算出に用いる結晶の数を多くするほど正確な値を算出することができる。かかる観点から、平均結晶粒径の算出に用いるLLZ系固体電解質の結晶の数は、10個以上とすることが好ましく、20個以上とすることがより好ましい。
【0037】
セパレータ3における第1電極2が設けられた面と反対側の面には、第2電極4が積層されている。第2電極4は、第1電極2とは異なる極性を有している。つまり、第1電極2が正極として構成されている場合、第2電極4は負極として構成される。また、第1電極2が負極として構成されている場合、第2電極4は正極として構成される。
【0038】
第2電極4の構成は特に限定されることはない。例えば、第2電極4は、第1電極2の活物質22とは異なる活物質のみから構成されていてもよいし、第1電極2と同様に、多孔質体の細孔内に活物質が保持された構成であってもよい。
【0039】
第2電極4の活物質は、第2電極4の極性に応じて適宜選択することができる。例えば、本形態の第2電極4は、活物質としての金属リチウムからなるリチウム板である。
【0040】
次に、本形態のリチウムイオン二次電池1の製造方法を説明する。本形態のリチウムイオン二次電池1の製造方法は、焼結後に多孔質体21となる第1層と、焼結後にセパレータ3となる第2層とを重ね合わせて積層体を作製する積層工程と、積層体を700℃以上1050℃以下の温度で焼結することにより、多孔質体21とセパレータ3とを一体的に形成する共焼結工程と、を有している。
【0041】
積層工程において、第1層及び第2層を作製する具体的な方法は種々の態様を取りうる。例えば、積層工程の一態様においては、LLZ系固体電解質と、溶媒と、焼結助剤と、バインダとを含むセパレータ用混合物を調製した後、このセパレータ用混合物をシート状に成型することにより、第1層としてのグリーンシートを作製することができる。セパレータ用混合物に用いるLLZ系固体電解質としては、例えば、固体電解質の結晶を粉末状に粉砕したものを用いることができる。
【0042】
セパレータ用混合物に用いるLLZ系固体電解質の体積基準における累積50%粒子径(つまり、d50)は、1.0μm以下であることが好ましい。この場合には、第1層中のLLZ系固体電解質の表面積がより大きくなるため、焼結中のLLZ系固体電解質の結晶成長をより促進することができる。その結果、セパレータ3の相対密度をより高くすることができる。さらに、この場合には、第1層におけるピンホールなどの欠陥の形成を抑制しつつ、第1層の厚みを容易に薄くすることができる。その結果、得られるセパレータ3の厚みをより薄くすることができる。
【0043】
焼結助剤としては、B原子、P原子及びSi原子のうち1種または2種を含む無機化合物などを使用することができる。リチウムイオン二次電池1の容量をより大きくする観点からは、焼結助剤としては、Li3BO3、Li649、Li425、LiBO2、B23、Li3PO4、Li4SiO4及びLi2SiO3のうち1種または2種以上を使用することが好ましい。
【0044】
また、LLZ系固体電解質と、溶媒と、造孔材と、バインダとを含む電極用混合物を調製した後、この電極用混合物をシート状に成形することにより、第2層としてのグリーンシートを作製することができる。造孔材としては、例えば、アクリル樹脂の粉末などを使用することができる。なお、電極用混合物には、LLZ系固体電解質、溶媒、造孔材及びバインダのほかに、前述した焼結助剤が含まれていてもよい。
【0045】
このようにして得られた多孔質体21のグリーンシートとセパレータ3のグリーンシートとを重ね合わせた後、熱圧着などの方法によって一体化することにより、積層体を得ることができる。
【0046】
また、積層工程の他の態様においては、LLZ系固体電解質と造孔材とを含む混合粉末を圧縮成形することにより、第1層としての圧粉体を作製する。この圧粉体上に、LLZ系固体電解質と焼結助剤とを含む混合粉末を配置して圧縮成形することにより、第1層上に第2層としての圧粉体を形成し、積層体を得ることができる。
【0047】
共焼結工程においては、積層工程において得られた積層体を、900℃以上1000℃以下の温度で加熱する。共焼結工程における加熱温度が前記特定の範囲である場合、LLZ系固体電解質よりも先に焼結助剤が溶融し、焼結助剤の融液が生じる。この焼結助剤の融液がLLZ系固体電解質と接触することにより、LLZ系固体電解質の結晶成長を促進させることができる。従って、前記特定の範囲の温度で加熱を行うことにより、セパレータ3中のLLZ系固体電解質の結晶成長を促進することができる。
【0048】
一方、多孔質体21の前駆体には、造孔材が含まれている。そのため、共焼結工程において、まず造孔材が消失し、細孔211が形成される。その後、多孔質体21の前駆体中のLLZ系固体電解質が結晶成長を開始する。このとき、多孔質体21の前駆体には、焼結助剤が含まれていないか、または、セパレータ3の前駆体よりも焼結助剤の効果が低くなるように構成されている。そのため、多孔質体21中のLLZ系固体電解質の結晶成長の速度は、セパレータ3中のLLZ系固体電解質に比べて遅くなる。
【0049】
従って、共焼結工程において、前記特定の範囲の温度で積層体を加熱することにより、多孔質体21中のLLZ系固体電解質の結晶成長の過度の進行を抑制しつつ、セパレータ3中のLLZ系固体電解質を十分に結晶成長させることができる。
【0050】
共焼結工程における加熱温度は、900℃以上である。これにより、前述した結晶成長の速度の大小関係を保ちつつ、多孔質体21及びセパレータ3の両方においてLLZ系固体電解質の結晶成長の速度をより早くすることができる。
【0051】
一方、共焼結工程における加熱温度が過度に高くなると、LLZ系固体電解質単独の状態で結晶成長が起こりやすくなる。そのため、多孔質体21中のLLZ系固体電解質の結晶成長が過度に進行し、リチウムイオン二次電池1の容量の低下を招くおそれがある。共焼結工程における加熱温度を1000℃以下とすることにより、かかる問題を回避することができる
【0052】
以上により、多孔質体21とセパレータ3とを一体的に形成することができる。そして、このようにして得られた多孔質体21の細孔211に活物質22を保持させるとともに、セパレータ3における、多孔質体21を有する側の背面に第2電極4を配置することにより、リチウムイオン二次電池1を形成することができる。
【0053】
多孔質体21の細孔211に活物質22を保持させる方法は、種々の態様を取りうる。例えば、細孔211内に活物質22そのものを充填することにより、細孔211内に活物質22を保持させてもよい。また、例えば、細孔211内に活物質22の前駆体を充填した後、加熱等の処理を行って前駆体を活物質22に変換することもできる。
【0054】
(実施形態2)
本形態においては、第2電極の他の態様を示す。なお、本形態以降において用いた符号のうち、既出の形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の形態におけるものと同様の構成要素等を表す。本形態のリチウムイオン二次電池102においては、多孔質体21を第1多孔質体21といい、第1電極2の活物質22を第1活物質22という。本形態の第1電極2は、第1活物質22が、リチウムがドープされた硫黄である以外は、実施形態1と同様の構成を有している。また、本形態のセパレータ3は、実施形態1と同様の構成を有している。
【0055】
本形態の第2電極402は、図2に示すように、LLZ系固体電解質を含み、細孔411を有する第2多孔質体41と、細孔411に保持された第2活物質42と、を有している。
【0056】
第2電極402における第2多孔質体41の具体的な構成は、第1電極2の第1多孔質体21と同様である。すなわち、第2多孔質体41は、LLZ系固体電解質から構成されていてもよいし、LLZ系固体電解質と、LLZ系固体電解質以外の物質とが含まれていてもよい。また、第2多孔質体41に含まれるLLZ系固体電解質は、第1多孔質体21やセパレータ3に含まれるLLZ系固体電解質と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0057】
また、第2多孔質体41には、更に、B原子、P原子及びSi原子のうち1種または2種以上が含まれていてもよい。すなわち、リチウムイオン二次電池1の製造過程において、第2多孔質体41にこれらの原子を含む焼結助剤が添加されていてもよい。この場合には、第2多孔質体41を焼結する際の加熱温度をより低くし、リチウムイオン二次電池102の製造過程におけるエネルギーの消費量をより低減することができる。
【0058】
リチウムイオン二次電池1の製造過程において第2多孔質体41にも焼結助剤を添加する場合、第2多孔質体41中のB原子、P原子及びSi原子の含有量の合計は、セパレータ3中のB原子、P原子及びSi原子の含有量の合計よりも少ないことが好ましい。この場合には、セパレータ3中のLLZ系固体電解質の結晶成長を促進するとともに、第2多孔質体41中のLLZ系固体電解質の過度の結晶成長をより確実に抑制することができる。その結果、第2多孔質体41の相対密度の上昇をより効果的に抑制し、リチウムイオン二次電池1の容量をより大きくすることができる。
【0059】
同様の観点から、第2多孔質体41に使用する焼結助剤の融点は、セパレータ3に使用する焼結助剤の融点よりも高いことが好ましい。より具体的には、セパレータ3にB原子が含まれている場合、第2多孔質体41にはP原子及びSi原子のうち1種または2種が含まれていることが好ましい。また、セパレータ3にP原子が含まれている場合、第2多孔質体41には、Si原子が含まれていることが好ましい。
【0060】
第2多孔質体41は、細孔411を有している。第2多孔質体41の細孔411内には、第2活物質42が保持されている。細孔411内には、第2活物質42の他に、導電助剤やLLZ系固体電解質とは異なる他の固体電解質、液体電解質等が保持されていてもよい。
【0061】
第2多孔質体41の細孔411は、連続気孔構造を有していてもよい。第2多孔質体41の相対密度は、例えば、60%以下とすることができる。また、第2多孔質体41の形状を維持する観点からは、第2多孔質体41の相対密度は、例えば、30%以上とすることができる。なお、第2多孔質体41の相対密度は、第1多孔質体21の相対密度と同様に、FIB/SEM(つまり、収束イオンビーム/走査型電子顕微鏡)トモグラフィー法により得られる三次元再構成像に基づいて算出される値である。
【0062】
第2活物質42は、第1活物質22と同様に、第2電極402の極性に応じて適宜選択することができる。本形態の第2活物質42は、具体的には、金属リチウムである。
【0063】
また、本形態のリチウムイオン二次電池102は、積層工程において、第1多孔質体21の前駆体と、セパレータ3の前駆体と、第2多孔質体41の前駆体とを積層する以外は、実施形態1と同様の製造方法により作製することができる。第2多孔質体41の前駆体の作製方法は、第1多孔質体21の前駆体と同様である。
【0064】
本形態のリチウムイオン二次電池102は、実施形態1と同様の作用効果を奏することができる。
【0065】
(実験例)
本例では、共焼結工程における加熱温度や焼結助剤を種々変更してセパレータ3と多孔質体21とが積層された試験体を作製し、多孔質体21及びセパレータ3の相対密度を測定した。試験体の作製方法を以下に説明する。なお、相対密度の測定方法は、前述したとおりである。
【0066】
・試験体T1
試験体T1を作製するに当たっては、まず、LLZの粉末と、焼結助剤としてのLi3BO3と、造孔材としてのアクリル樹脂と、溶媒と、バインダとを含む電極用混合物を準備した。電極用混合物における焼結助剤の含有量は、LLZのLa(ランタン)原子に対するB原子のモル比が0.13となるように調節した。この電極用混合物を、アプリケータを用いてシート状に成形し、第1層としてのグリーンシートを作製した。第1層の厚みは、300μmとした。なお、Li3BO3の融点は820℃である。
【0067】
これとは別に、LLZの粉末と、焼結助剤としてのLi3BO3と、溶媒と、バインダとを含むセパレータ用混合物を準備した。セパレータ用混合物における焼結助剤の含有量は、LLZのLa原子に対するB原子のモル比が0.37となるように調節した。このセパレータ用混合物を、アプリケータを用いてシート状に成形し、第2層としてのグリーンシートを作製した。第2層の厚みは、300μmとした。
【0068】
このようにして形成した第1層と第2層とを所望の大きさに切断し、両者を重ね合わせて積層体を得た。この積層体に温間等方圧プレスを行い、2枚のグリーンシートを密着させた後、大気雰囲気中において表1に示す温度で加熱し、セパレータ3と多孔質体21とを一体的に形成した。以上により、試験体T1を得た。試験体T1における多孔質体21の相対密度及びセパレータ3の相対密度を表1に示す。
【0069】
・試験体T2~T4
試験体T2~T4の作製方法は、焼結助剤の種類及び添加量を表1に示すように変更した以外は、試験体T1と同様である。これらの試験体における多孔質体21の相対密度及びセパレータ3の相対密度を表1に示す。なお、試験体T2に使用した焼結助剤であるLi3PO4の融点は840℃である。また、試験体T3に使用した焼結助剤であるLi2SiO3の融点は1200℃である。
【0070】
・試験体T5
試験体T5の作製方法は、電極用混合物における焼結助剤の添加量をセパレータ用混合物における焼結助剤の添加量と同一にした以外は、試験体T1と同様である。試験体T5における多孔質体21の相対密度及びセパレータ3の相対密度を表1に示す。
【0071】
・試験体T6
試験体T6の作製方法は、電極用混合物及びセパレータ用混合物に焼結助剤を添加しない以外は、試験体T1と同様である。試験体T6における多孔質体21の相対密度及びセパレータ3の相対密度を表1に示す。
【0072】
・試験体T7~T10
試験体T7~T10の作製方法は、焼結助剤の種類及び添加量を表2に示すように変更した以外は、試験体T1と同様である。これらの試験体における多孔質体21の相対密度及びセパレータ3の相対密度を表2に示す。
【0073】
・試験体T11
試験体T11の作製方法は、電極用混合物に焼結助剤を添加しない以外は、試験体T1と同様である。試験体T11における多孔質体21の相対密度及びセパレータ3の相対密度を表2に示す。
【0074】
・試験体T12及び試験体T13
試験体T12及び試験体T13の作製方法は、焼結時の加熱温度を表2に示す温度とした以外は、試験体T11と同様である。これらの試験体における多孔質体21の相対密度及びセパレータ3の相対密度を表2に示す。
【0075】
・試験体T14
試験体T14の作製方法は、焼結助剤の添加量及び焼結時の加熱温度を表3に示すように変更した以外は、試験体T1と同様である。試験体T14における多孔質体21の相対密度及びセパレータ3の相対密度を表3に示す。
【0076】
また、試験体T12及び試験体T14については、以下の方法により、多孔質体21及びセパレータ3に含まれるLLZの平均結晶粒径及び試験体の電気伝導率の測定を行った。
【0077】
-平均結晶粒径-
試験体を多孔質体21とセパレータ3との積層方向に切断して断面を露出させた。この断面を走査型電子顕微鏡で観察し、倍率5000倍のSEM像を取得した。試験体T12における多孔質体21のSEM像を図3に、セパレータ3のSEM像を図4に示す。また、試験体T14における多孔質体21のSEM像を図5に、セパレータ3のSEM像を図6に示す。図3図6に示すように、多孔質体21及びセパレータ3中のLLZの結晶は粒状を呈しており、隣り合うLLZの結晶同士が互いに連なることにより一体化していた。
【0078】
これらのSEM像に存在するLLZの結晶のうち、無作為に選択した20個以上の結晶について最大径を計測した。そして、これらの最大径の平均値を、LLZの平均結晶粒径とした。表3に、試験体T12の多孔質体21、試験体T12のセパレータ3、試験体T14の多孔質体21及び試験体T14のセパレータ3のそれぞれにおけるLLZの平均結晶粒径を示す。
【0079】
-試験体の電気伝導率-
試験体の厚み方向における両端面に金ペーストを塗布した後、600℃で焼き付けを行い、端子を形成した。これらの端子を介してインピーダンス測定装置(ソーラトロン社製「1260A」)と試験体とを接続し、10μHz~32MHzの周波数範囲において電気抵抗値を測定した。以上により得られた電気抵抗値と、試験体の厚み方向における端面の面積と、試験体の厚みとを用いて電気伝導率を算出した。表3に、試験体T12及び試験体T14の電気伝導率を示す。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
表1に示すように、試験体T1~T4の製造過程においては、多孔質体21及びセパレータ3の両方に焼結助剤が使用されている。また、多孔質体21への焼結助剤の添加量は、セパレータ3への焼結助剤の添加量よりも少ない。そのため、これらの試験体においては、多孔質体21中のLLZの結晶成長を抑制しつつ、セパレータ3中のLLZの結晶成長を促進させることができた。
【0084】
一方、試験体T5においては、多孔質体21に含まれる焼結助剤の種類及び量とセパレータ3に含まれる焼結助剤の種類及び量とが同一であったため、多孔質体21中のLLZとセパレータ3中のLLZとが同様に結晶成長した。その結果、試験体T5においては、多孔質体21の細孔211が消失し、相対密度の上昇を招いた。
【0085】
試験体T6は、多孔質体21及びセパレータ3のいずれにも焼結助剤を用いなかったため、LLZの結晶成長が不十分となった。そのため、セパレータ3の相対密度が低くなった。
【0086】
表2に示すように、試験体T7~T10において多孔質体21に使用された焼結助剤の融点は、セパレータ3に使用された焼結助剤の融点よりも高い。そのため、これらの試験体においては、多孔質体21中のLLZの結晶成長を抑制しつつ、セパレータ3中のLLZの結晶成長を促進させることができた。
【0087】
試験体T11及び試験体T12は、セパレータ3のみに焼結助剤を使用したため、多孔質体21中のLLZの結晶成長を抑制しつつ、セパレータ3中のLLZの結晶成長を促進させることができた。
【0088】
試験体T13は、焼結時の加熱温度が過度に高かったため、多孔質体21中のLLZとセパレータ3中のLLZとが同様に結晶成長した。その結果、試験体T5においては、多孔質体21の細孔211が消失し、相対密度の上昇を招いた。
【0089】
表3に示す試験体T14は、焼結助剤の融点である830℃よりも低い温度で加熱を行ったため、焼結助剤の融液を十分に形成することができなかった。そのため、試験体T14は、セパレータ3中のLLZを十分に結晶成長させることができず、リチウムイオン伝導性の低下を招いた。
【0090】
本発明は上記各実施形態及び実験例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0091】
1、102 リチウムイオン二次電池
2 第1電極
21 多孔質体
211 細孔
22 活物質
3 セパレータ
4、402 第2電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6