(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】蓄電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20231221BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
H02J7/00 A
H01M10/48 P
(21)【出願番号】P 2019132861
(22)【出願日】2019-07-18
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000217491
【氏名又は名称】ダイヤゼブラ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲石 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】中林 久志
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-077139(JP,A)
【文献】特開2018-050457(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0120385(US,A1)
【文献】国際公開第2013/014930(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0226268(US,A1)
【文献】特開2012-210077(JP,A)
【文献】特開2015-31674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00-7/12
7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いにSOH(State Of Health)の異なる複数の蓄電池と、
前記複数の蓄電池それぞれのSOHを特定するためのSOH情報を受け、当該SOH情報
に基づいて、前記複数の蓄電池について個別のSOH同士を相対比較し、前記複数の蓄電池の互いのSOHの差が減少するように、当該複数の蓄電池の充放電を制御する充放電制御部とを備え
、
前記充放電制御部は、前記SOH情報の取得および前記複数の蓄電池についての個別のSOH同士の相対比較をリアルタイムで実施することと、当該相対比較の結果に基づいて前記複数の蓄電池の互いのSOHの差が減少するように該複数の蓄電池の充放電を制御することを繰り返し実行する繰り返し制御を実行するように構成されている
ことを特徴とする蓄電システム。
【請求項2】
前記充放電制御部による前記複数の蓄電池の充放電制御は、前記複数の蓄電池のSOHの差が所定の閾値以上になった場合に、当該複数の蓄電池の互いのSOHの差が減少するように前記複数の蓄電池を充放電させる制御を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項3】
前記充放電制御部は、前記複数の蓄電池の中で、相対的にSOHの高い蓄電池から優先的に充放電させる
ことを特徴とする請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項4】
前記SOH情報は、前記蓄電池の内部抵抗、前記蓄電池の充放電履歴、前記蓄電池の電圧値、前記蓄電池の電流値の群から選択される1又は複数の情報である
ことを特徴とする請求項1に記載の蓄電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の蓄電池を有する蓄電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の蓄電池充放電セットをDCバスラインに並列に接続した太陽光発電システムにおいて、それぞれの蓄電池セットを一定時間ごとに切り替えて動作させることで、各セット内の蓄電池の寿命の均等化を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、既存の蓄電システムに、蓄電池を増設する場合、既設の蓄電池と、増設された蓄電池とでは、SOH(State Of Health)が互いに異なる場合がある。そうすると、特許文献1のように、一定時間ごとに充放電させる蓄電池を切り替えると、蓄電池の寿命が各蓄電池で互いに異なり、一方の蓄電池が先に寿命を迎えることで、蓄電システムとしての充放電効率が低下する恐れがある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る蓄電システムは、互いにSOH(State Of Health)の異なる複数の蓄電池と、前記複数の蓄電池それぞれのSOHを特定するためのSOH情報を受け、当該SOH情報を基に前記複数の蓄電池の互いのSOHの差が減少するようにそれぞれの前記蓄電池の充放電を制御する充放電制御部とを備えている、ことを特徴とする。
【0007】
上記態様によると、充放電制御部が、複数の蓄電池のSOHの差が減少するように、それぞれの蓄電池の充放電制御を行うので、互いにSOHの異なる蓄電池が接続された場合においても、充放電を進めるうちに、複数の蓄電池のSOHを徐々に近づけていくことができる。その結果、複数の蓄電池の充電終期を揃えるまたは互いに近づけることができるので、蓄電池を有効に活用することができる。また、蓄電池の管理及び蓄電システムの運用が容易になる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、互いにSOHの異なる蓄電池が接続された場合においても、充放電を進めるうちに、複数の蓄電池の劣化状態を徐々に近づけていくことができる。その結果、複数の蓄電池の充電終期を揃えるまたは互いに近づけることができるので、蓄電池の管理及び蓄電システムの運用が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用範囲あるいはその用途を制限することを意図するものではない。
【0011】
<蓄電システムの構成>
図1は、実施形態に係る蓄電システム及びその周辺の構成を示した図である。
【0012】
蓄電システム1は、パワーコンディショナ3と、パワーコンディショナ3に接続された複数の蓄電池ユニット2とを備えている。
図1では、互いにSOH(State Of Health)の異なる2つの蓄電池ユニット2が、パワーコンディショナ3に対して、直列に接続されている例を示している。なお、本実施形態において、「接続」とは、直接接続に限定されるのもではなく、電気的な接続全般を指すものとする。例えば、抵抗やリレー等の受動素子等を介して相互間が電気的に接続されているものを含む。
【0013】
蓄電池ユニット2は、蓄電池21と、蓄電池21に接続された双方向型のDC/DCコンバータ22と、DC/DCコンバータ22の動作を制御する制御部23とを備えている。蓄電池21からの出力電力は、DC/DCコンバータ22を介して外部に出力され、外部からの入力電力は、DC/DCコンバータ22を介して蓄電池21に充電される。なお、以下において、説明の便宜上、2つの蓄電池ユニット2を区別して説明する場合に、蓄電池ユニット2、蓄電池21、DC/DCコンバータ22、蓄電制御部23のそれぞれの符号について、一方の蓄電池ユニットでは、それぞれ、2a,21a,22a,23aの符号を付し、他方の蓄電池ユニットでは、それぞれ2b,21b,22b,23bの符号を付して説明する場合がある。
【0014】
蓄電制御部23は、例えば、マイクロコンピュータで実現することができ、メモリ(図示省略)に格納されたプログラム等に基づいて、蓄電池ユニット2を総合的に制御する機能を有する。蓄電制御部23は、後述するパワーコンディショナ3の統括制御部33に接続されており、統括制御部33からの充放電制御信号CSを受ける。蓄電制御部23は、上記プログラムや充放電制御信号CS等に基づいて、DC/DCコンバータ22の動作を制御することで、蓄電池21の充放電を制御する。
【0015】
パワーコンディショナ3は、双方向型の電力変換装置であり、DC/DCコンバータ31と、インバータ32と、統括制御部33とを備えている。パワーコンディショナ3は、蓄電池ユニット2から受けた電力を負荷82に供給したり、商用電源系統81に逆潮流したりするように構成されている。また、商用電源系統81から受けた電力を変換して、蓄電池ユニット2に供給するように構成されている。パワーコンディショナ3には、太陽光発電手段28が接続されていてもよく、太陽光発電手段28からの供給電力を負荷82に供給したり、蓄電池ユニット2に充電させたりする機能を有する。
【0016】
DC/DCコンバータ31は、直流入力をDC-DC変換して出力する。
図1では、DC/DCコンバータ31が太陽光発電手段28に接続されている例を示している。DC/DCコンバータ31の出力は、DCリンク線DCLを介してインバータ32に接続されている。インバータ32は、統括制御部33の制御、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)制御を受けて、DCリンク線DCLから供給される直流を交流に変換する。また、系統側から受けた交流を直流に変換してDCリンク線DCLに出力する。
図1の例では、蓄電池ユニット2にDC/DCコンバータ22が内蔵されているので、蓄電池ユニット2の出力は、直接DCリンク線DCLに接続されている。なお、DC/DCコンバータ31及びインバータ32の具体的な回路構成は、従来技術を適用することができるので、ここではその詳細説明を省略する。
【0017】
統括制御部33(充放電制御部に相当)は、例えば、マイクロコンピュータで実現することができ、メモリ(図示省略)に格納されたプログラム等に基づいて、蓄電システム1の全体動作を制御する機能を有する。例えば、統括制御部33は、DC/DCコンバータ31や、蓄電池ユニット2の制御部23を制御することで、太陽光発電手段28や、蓄電池ユニット2からDCリンク線DCLに出力される電力量を制御したり、蓄電池ユニット2に充電される電力量を制御する機能を有する。
【0018】
<蓄電システムの動作>
以下において、蓄電システム1の動作について、
図2を参照しつつ説明する。以下の説明では、蓄電池ユニット2aが先に取り付られ、蓄電池ユニット2bが後付けされたものとして説明する。そして、その後付け時点おいて、蓄電池ユニット2aの蓄電池21aのSOHの値(以下、単にSOHともいう)の方が、蓄電池ユニット2bの蓄電池21bのSOHより低いものとする。
【0019】
本開示では、統括制御部33が、蓄電池21a,21bのSOHを特定するためのSOH情報を受け、SOH情報を基に、蓄電池21a,21bのSOHの差が減少するように、蓄電池21a,21bの充放電を制御する点に特徴がある。
【0020】
なお、SOH情報はSOHが特定できる情報であれば、特に限定されないが、蓄電池21の内部抵抗、充放電履歴、電圧値、電流値、SOC(State of charge)等が例示される。SOH情報を基にSOHを算出する方法は、特に限定されないが、例えば、容量(電荷量や仕事量)の維持率を用いる方式、抵抗(交流抵抗又は直流抵抗)の上昇率を用いる方式等を採用することができる。SOCの測定方法は、特に限定されないが、例えば、インピーダンス・トラック方式、電池セル・モデリング方式、クーロン・カウンタ方式、電圧測定方式等を採用することができる。
【0021】
図2のステップS1では、統括制御部33は、蓄電池21aのSOH情報を取得し、取得した情報に基づいてSOHを算出する。
【0022】
次に、ステップS2において、統括制御部33は、蓄電池21bのSOH情報を取得し、取得した情報に基づいてSOHを算出する。
【0023】
次のステップS3では、統括制御部33は、ステップS1,S2で算出された蓄電池21aのSOH及び蓄電池21bのSOHに基づいて、両蓄電池21a,21bのSOHの差が減少するように、それぞれの蓄電池ユニット2a,2bの蓄電制御部23a,23bに、蓄電池21a,21bの充放電制御信号CSを出力する。そして、充放電制御信号CSを受けた各蓄電制御部23a,23bが、それぞれ対応する蓄電池21a,21bの充放電を制御する。今回の例では、蓄電池21aのSOHの方が、蓄電池21bのSOHよりも低いので、統括制御部33は、蓄電池21bの方を優先して充放電させるように制御する。
【0024】
そして、ステップS1からS3の処理が繰り返し実施されることで、蓄電池21a,21bの互いのSOHの差が次第に減少し、かつ、その減少した状態が維持される。
【0025】
以上のように、本実施形態によると、互いにSOHが異なるような蓄電池を接続した場合においても、それらの蓄電池の寿命の終期を揃えることができる。すなわち、蓄電システム1全体として見た場合に、蓄電池21を有効に活用することができ、寿命の管理が容易になる。
【0026】
なお、統括制御部33は、蓄電池21aのSOHと、蓄電池21bのSOHとのチェックをリアルタイムで実施するようにしてもよいし、所定の期間毎にチェックするようにしてもよい。
【0027】
また、統括制御部33は、蓄電池21aのSOHと蓄電池21bのSOHとの差が所定のしきい値以上になった場合に、複数の蓄電池の互いのSOHの差が減少する制御を実施するようにしてもよい。
【0028】
なお、上記実施形態では、蓄電システム1が2つの蓄電池ユニット2を備える場合について説明したが、蓄電池ユニット2の数は特に限定されるものではない。例えば、蓄電システム1が3つ以上の蓄電池ユニット2を備える場合、統括制御部33は、
図2の場合と同様に、各蓄電池ユニット2の蓄電池21からそれぞれのSOH情報を取得し、そのSOH情報に基づいて、各蓄電池21のSOHの差が小さくなるように、それぞれの蓄電池ユニット2の充放電を制御するとよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によると、蓄電システムの複数の蓄電池において、互いのSOHが異なる場合においても、複数の蓄電池の充電終期を揃えるまたは互いに近づけることができるので、蓄電池の管理及び蓄電システムの運用が容易になり、極めて有用である。
【符号の説明】
【0030】
1 蓄電システム
2 蓄電池ユニット
21 蓄電池
22 第2蓄電池ユニット
33 統括制御部(充放電制御部)