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特許7406937磁気共鳴イメージング装置及びコイルユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置及びコイルユニット
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20231221BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20231221BHJP
   G01R 33/36 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
A61B5/055 355
A61B5/055 374
G01N24/00 530B
G01N24/00 580C
G01R33/36
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019145690
(22)【出願日】2019-08-07
(65)【公開番号】P2021023674
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】副島 和幸
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-017741(JP,A)
【文献】実開平06-023503(JP,U)
【文献】特開2016-016051(JP,A)
【文献】特開2014-230610(JP,A)
【文献】特開2019-017494(JP,A)
【文献】特開平06-070910(JP,A)
【文献】特開昭63-082647(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0200898(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00
G01R 33/20-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルユニットと、前記コイルユニットから出力される信号を受信し信号処理を行う受信回路と、を具備する磁気共鳴イメージング装置であって、
前記コイルユニットは、少なくとも一つのRFコイルエレメントと、前記少なくとも一つのRFコイルエレメントから出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する少なくとも一つのA/D変換器と、固有の機器特性に関する情報を記憶する記憶部と備え、前記デジタル信号と前記固有の機器特性に関する情報とを関連付けて出力し、
前記受信回路は、前記デジタル信号と関連付けられた前記固有の機器特性に関する情報を用いて、前記コイルユニットから出力された前記デジタル信号を補正する、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記固有の機器特性に関する情報として、仕様又は製造誤差に起因する特性に関する情報を記憶する請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記記憶部は、前記固有の機器特性に関する情報として、ゲイン値、位相のずれの少なくとも一つに関する補正値を記憶する請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記受信回路は、ダイレクトデジタルシンセサイザを用いて前記デジタル信号を補正する請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記受信回路は、同一の経路を経由して前記デジタル信号と前記固有の機器特性に関する情報とを受信する請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記コイルユニットは、少なくとも一つの可変ゲインアンプをさらに備え、
前記記憶部は、前記少なくとも一つの可変ゲインアンプのそれぞれに対応した前記固有の機器特性に関する情報を記憶する、
請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記コイルユニットは、少なくとも一つのログアンプをさらに備え、
前記記憶部は、前記少なくとも一つのログアンプのそれぞれに対応した前記固有の機器特性に関する情報を記憶する、
請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記コイルユニットは、前記デジタル信号と前記固有の機器特性に関する情報とを、無線又は有線により前記受信回路に送信する請求項1乃至7のうちいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記コイルユニットは、前記デジタル信号と前記固有の機器特性に関する情報とを関連付けし前記受信回路に送信するインタフェース回路をさらに備える請求項1乃至7のうちいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
コイルユニットと、前記コイルユニットから出力される信号を受信し信号処理を行う受信回路と、を具備する磁気共鳴イメージング装置であって、
前記コイルユニットは、少なくとも一つのRFコイルエレメントと、前記少なくとも一つのRFコイルエレメントから出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する少なくとも一つのA/D変換器と、ゲイン値と位相のうちの少なくとも一つの補正に関する固有の情報を記憶する記憶部と備え、前記デジタル信号と前記補正に関する固有の情報とを関連付けて前記受信回路に出力し、
前記受信回路は、前記デジタル信号と関連付けられた前記補正に関する固有の情報を用いて、前記コイルユニットから出力された前記デジタル信号を補正する、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
磁気共鳴イメージング装置に内蔵される受信回路に信号を出力するコイルユニットであって、
前記コイルユニットは、少なくとも一つのRFコイルエレメントと、前記少なくとも一つのRFコイルエレメントから出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する少なくとも一つのA/D変換器と、固有の機器特性に関する情報を記憶する記憶部と備え、前記デジタル信号と前記固有の機器特性に関する情報とを関連付けて出力する、
コイルユニット。
【請求項12】
磁気共鳴イメージング装置に内蔵される受信回路に信号を出力するコイルユニットであって、
前記コイルユニットは、少なくとも一つのRFコイルエレメントと、前記少なくとも一つのRFコイルエレメントから出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する少なくとも一つのA/D変換器と、ゲイン値と位相のうちの少なくとも一つの補正に関する固有の情報を記憶する記憶部と備え、前記デジタル信号と前記補正に関する固有の情報とを関連付けて前記受信回路に出力する、
コイルユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置及びコイルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置は、例えば、磁気共鳴イメージング装置本体にあるアナログのスイッチマトリックスにおいて、コイルユニットで得られる複数チャネルのMR信号を間引いてチャネル数を減らす。間引きされたMR信号は、ゲインブロック、A/D変換器を経由してMRデータに変換される。ゲインブロックは、A/D変換における量子化誤差に耐えられるようにMR信号を増幅するゲイン調整の役割を有する。
【0003】
また、ゲインブロックでは、ゲインの設定値に応じて、ゲイン誤差や位相誤差がMRデータに発生するため、それらの誤差を補正する必要がある。誤差の補正は、例えば、ラーモア周波数帯域から周波数を下げるダウンコンバージョン時に補正される。ダウンコンバージョンと同時に、MRデータを実部と虚部に分離するIQ分離の処理を行うことも可能であり、IQ分離の処理を行う時に誤差の補正が行われるとも言える。
【0004】
近年、A/D変換器をコイルユニット内部に内蔵する磁気共鳴イメージング装置が開発されている。この様な磁気共鳴イメージング装置においても、ハードウェア毎の特性としてMRデータに発生するゲイン誤差、位相誤差を適切に補正する技術が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-193989号公報
【文献】特開2014-50712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、A/D変換器を内蔵するコイルユニットを用いた磁気共鳴イメージングにおいて、MRデータを適切に補正することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、コイルユニットから出力される信号を受信し信号処理を行う受信回路を具備する。前記コイルユニットは、少なくとも一つのRFコイルエレメントと、前記少なくとも一つのRFコイルエレメントから出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する少なくとも一つのA/D変換器と、機器特性に関する情報を記憶する記憶部と備え、前記デジタル信号と前記機器特性に関する情報とを関連付けて出力する。前記受信回路は、前記デジタル信号と関連付けられた前記機器特性に関する情報を用いて、前記コイルユニットから出力された前記デジタル信号を補正する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、局所用RFコイルユニットの構成を説明するための図である。
図3図3は、補正情報記憶部が記憶する補正情報としてのゲイン補正テーブルを例示した図である。
図4図4は、補正情報記憶部が記憶する補正情報としての位相補正テーブルを例示した図である。
図5図5は、補正情報記憶部が記憶する補正情報としての周波数特性テーブルを例示した図である。
図6図6は、受信回路の構成を説明するための図である。
図7図7は、磁気共鳴イメージング装置におけるMRデータ・補正情報の流れ、及び当該補正情報を用いたMRデータの補正処理を説明するための図である。
図8図8は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置との比較例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、磁気共鳴イメージング装置1は、静磁場磁石101、傾斜磁場コイル102、傾斜磁場電源103、寝台104、寝台制御回路105、全身RFコイルユニット106、送信回路107、局所用RFコイルユニットC1、受信回路109、シーケンス制御回路110、計算機システム120、高周波増幅装置100を備える。なお、磁気共鳴イメージング装置1に、人体等の被検体Pは含まれない。
【0011】
静磁場磁石101は、中空の円筒形状に形成された磁石であり、内部の空間に一様な静磁場を発生する。なお、円筒形状には、円筒の軸に直交する断面が楕円状となるものを含む。
【0012】
傾斜磁場コイル102は、中空の円筒形状に形成されたコイルであり、傾斜磁場を発生する。
【0013】
傾斜磁場電源103は、傾斜磁場コイル102に電流を供給する。
【0014】
寝台104は、被検体Pが載置される天板104a、全身用RFコイルユニット106を接続するためのコネクタポート104bを有する。寝台104は、寝台制御回路105による制御のもと、天板104aを、被検体Pが載置された状態で傾斜磁場コイル102の空洞内へ挿入する。コネクタポート104bには、局所用RFコイルユニットC1が接続される。
【0015】
寝台制御回路105は、計算機システム120による制御のもと、寝台104を駆動して天板104aを長手方向及び上下方向へ移動するプロセッサである。
【0016】
全身用RFコイルユニット106は、傾斜磁場コイル102の内側に配置され、少なくとも一つのRFコイルエレメントを有する。全身用RFコイルユニット106は、送信回路107から送信用高周波パルスの供給を受けて、少なくとも一つのRFコイルエレメントから高周波磁場を発生する。また、全身用RFコイルユニット106は、高周波磁場に励起されて被検体Pから発せられる磁気共鳴信号(以下、MR信号と称する)を受信する。
【0017】
送信回路107は、対象とする原子核の種類及び磁場の強度で決まるラーモア周波数に対応するRFパルスを全身用RFコイルユニット106に供給する。
【0018】
局所用RFコイルユニットC1は、被検体Pの撮像部位に応じた形状、大きさを有し、撮像部位に応じた位置に設置される。局所用RFコイルユニットC1は、高周波磁場に励起されて被検体Pから発せられるMR信号を受信する。局所用RFコイルユニットC1は、ケーブルを介して寝台104のコネクタポート104bに接続されており、コネクタポート104bを介して、受信したMR信号を受信回路109へ出力する。
【0019】
なお、図1においては、局所用RFコイルユニットC1が被検体Pの胸部や腹部に設置されるボディコイル(Body Coil)ユニットである場合を例示した。しかしながら、局所用RFコイルユニットC1には、被検体Pの頭部に設置されるヘッドコイルユニット、被検体Pの背側に設置されるスパインコイル(Spine Coil)ユニットといった様々な種類がある。局所用RFコイルユニットC1は、受信専用に限らず、送信と受信の兼用あるいは送信専用として利用することもできる。
【0020】
また、図1においては、一つの局所用RFコイルユニットC1を具備する磁気共鳴イメージング装置1を例示した。しかしながら、当該例に限定されず、磁気共鳴イメージング装置1は、コネクタポート104bの数だけ局所用RFコイルユニットを有することができる。従って、例えばコネクタポート104bの数を8個とした場合、磁気共鳴イメージング装置1は、最大8個(8種類)の局所用RFコイルユニットを具備することが可能である。実際の撮像においてどのような種類の局所用RFコイルユニットをいくつ配置するかについては、撮像の目的に応じて決定される。
【0021】
図2は、局所用RFコイルユニットC1の構成を説明するための図である。図2を参照しながら、局所用RFコイルユニットC1の構成についてさらに詳しく説明する。
【0022】
図2に示す様に、局所用RFコイルユニットC1は、少なくとも一つのRFコイルエレメントと、少なくとも一つのRFコイルエレメントから出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する少なくとも一つのA/D変換器と、機器特性に関する情報を記憶する記憶部と備え、デジタル信号と機器特性に関する情報とを関連付けて出力する。すなわち、局所用RFコイルユニットC1は、例えば、16個のRFコイルエレメント201~216、RFコイルエレメント毎に設けられたゲインブロック301~316、RFコイルエレメント毎に設けられたA/D変換器401~416、コイルユニットインタフェース回路5、補正情報記憶部6を具備している。
【0023】
RFコイルエレメント201~216は、撮像部位に応じた形状・大きさを有し、高周波磁場に励起されて被検体Pから発せられるMR信号を受信する。
【0024】
ゲインブロック301~316は、RFコイルエレメント201~216が受信したMR信号を増幅する可変増幅器(可変ゲインアンプ)を有する。後述するA/D変換器401~416の前段でMR信号を増幅することにより、A/D変換における量子化誤差の影響を抑える。
【0025】
A/D変換器401~416は、ゲインブロック301~316が出力するアナログ信号としてのMR信号を、デジタル信号としてのMRデータに変換する。
【0026】
コイルユニットインタフェース回路5は、寝台104のコネクタポート104bに接続され、例えば16個の独立した信号配線(16 lines)によりMRデータを磁気共鳴イメージング装置1の本体に送り出す。なお、本実施形態においては、RFコイルエレメント201~216の個数をチャネル数と呼び、RFコイルエレメント201~216のそれぞれに対応する信号伝送経路をチャネル1~チャネル16と呼ぶ。また、信号配線をラインとも呼ぶ。
【0027】
補正情報記憶部6は、MRデータの補正に利用する補正情報として、機器特性に関する情報を記憶するメモリである。ここで、機器特性に関する情報とは、例えば、RFコイルエレメント201~216から受信回路109までの信号伝送経路に存在するハードウェア機器の仕様又は製造誤差に起因して生じる特性である。機器特性に関する情報は、例えば、ゲインブロック301~316それぞれにおける、設定されたゲイン値と実際のゲイン値との間のずれ量である。また、例えば、ゲインブロック301~316それぞれに設定されるゲイン値ごとに定まる、ゲインブロックを経由する時に生じるMR信号の位相のずれ量である。さらに、例えば補正情報記憶部6は、ゲインブロック301~316の後段にフィルタを別途設ける場合には、当該フィルタが有する周波数特性を機器特性に関する情報として保持してもよい。周波数特性は、入力周波数に応じた挿入損失の違いを表している。
【0028】
図3は、補正情報記憶部6が記憶する機器特性に関する情報(以下、「補正情報」とも呼ぶ。)としてのゲイン補正テーブルTaを例示した図である。図4は、補正情報記憶部6が記憶する補正情報としての位相補正テーブルTbを例示した図である。図5は、補正情報記憶部6が記憶する補正情報としての周波数特性テーブルTcを例示した図である。これらの補正情報は、局所用RFコイルユニットC1ごとに、例えば工場出荷前に計測され、或いはメンテナンス時に新たに計測され、補正情報記憶部6に予め記憶される。
【0029】
図3に示したゲイン補正テーブルTaには、ゲインブロック301~316のそれぞれにおける、設定されるゲイン値と実際のゲイン値との間のずれ量が、設定されるゲイン値ごとに事前に登録されている。ゲイン補正テーブルTaを参照すると、例えば、ゲイン値が「0dB」に設定された場合、チャネル1(CH1)に対応するゲインブロック301の実際のゲイン値は「+0.3dB」になることが分かる。また、例えば、ゲイン値が「1dB」に設定された場合、チャネル2(CH2)に対応するゲインブロック302の実際のゲイン値は「-0.3dB」になることが分かる。
【0030】
図4に示した位相補正テーブルTbには、ゲインブロック301~316のそれぞれにおいてゲインブロックを経由する時に生じる、設定されるゲイン値ごとに定まるMR信号の位相のずれ量が、設定されるゲイン値ごとに事前に登録されている。位相補正テーブルTbを参照すると、例えば、ゲイン値が「0dB」に設定された場合、チャネル1(CH1)において、MR信号の位相が「+3度」ずれることが分かる。また、例えば、ゲイン値が「1dB」に設定された場合、チャネル2(CH2)においては、MR信号の位相が「-2度」ずれることが分かる。
【0031】
図5に示した周波数特性テーブルTcには、ゲインブロック301~316の後段に設けられるバンドパスフィルタにおける周波数特性が事前に登録されている。周波数特性テーブルTcを参照すると、例えば、MR信号の中心周波数が「123MHz」に設定された場合、チャネル1(CH1)に対応するバンドパスフィルタのゲインが「0.5dB」ずれることが分かる。また、例えば、MR信号の中心周波数が「123.001MHz」に設定された場合、チャネル2(CH2)に対応するバンドパスフィルタのゲインが「0.2dB」ずれることが分かる。
【0032】
図1に戻り、受信回路109は、局所用RFコイルユニットC1から出力されるMRデータに対して、ダウンコンバージョン処理、検波処理等の所定の信号処理を実行する。また、受信回路109は、機器特性に関する情報を用いて、局所用RFコイルユニットC1から出力されたデジタル信号としてのMRデータを補正する。
【0033】
図6は、受信回路109の構成を説明するための図である。図6に示す様に、受信回路109は、デジタル信号マトリックス109a、補正処理部109b01~109b32を有する。
【0034】
デジタル信号マトリックス109aは、局所用RFコイルユニットC1より寝台天板104aのコネクタポート104bを介して出力される128ライン分のMRデータから、必要な32ライン分のMRデータを選択する。例えば、デジタル信号マトリックス109aは、複数のRFコイルエレメントが出力するMR信号の中から必要なラインを選択し、必要に応じてMRデータを合成し、32ライン分のMRデータを出力する。なお、本実施形態においては、ラインとチャネルとが一対一で対応する場合を例としている。このため、デジタル信号マトリックス109aは、局所用RFコイルユニットC1から出力される128チャネル分のMRデータを、32チャネル分のMRデータに間引きする。
【0035】
補正処理部109b01~109b32は、デジタル信号マトリックス109aからそれぞれ対応するチャネルについてのMRデータ及び補正情報を受け取る。補正処理部109b01~109b32は、受け取った補正情報を用いて、対応するチャネルのMRデータを補正する。
【0036】
具体的には、補正処理部109b01~109b32は、それぞれダイレクトデジタルシンセサイザ(Direct Digital Synthesizer:DDS)109b01-1~109b32-1、検波器109b01-2~109b32-2を有する。
【0037】
DDS109b01-1~109b32-1は、基本的な役割として、例えば、ラーモラ周波数のRFパルスを生成した際のクロックと同期したクロックおよび位相値に基づいてデジタル信号を生成する。生成されたデジタル信号は、ダウンコンバージョン処理を行う際にローカル信号として用いられる。また、例えば、生成されたデジタル信号を直交位相となる2つのデジタル信号に分離して、デジタル信号マトリックス109aを介して局所用RFコイルユニットC1から送られてくるMRデータと乗算することにより直交検波を行う。直交検波の処理をIQ(In-phase Quadrature)分離とも呼ぶ。直交検波の結果、MRデータは実部と虚部とに分離される。
【0038】
DDS109b01-1~109b32-1は、局所用RFコイルユニットC1から送られてくる補正情報を用いて、生成するデジタル信号を変化させる。例えば、補正情報として位相のずれ量が取得される場合には、その位相のずれ量を補正するような位相値を用いて、DDS109b01-1~109b32-1はデジタル信号を生成する。また、例えば、補正情報としてゲインのずれ量が取得される場合には、DDS109b01-1~109b32-1は出力するデジタル信号の振幅を変化させる。デジタル信号の振幅が変化することにより、後述する検波器109b01-2~109b32-2で乗算された結果の出力が変化し、結果的にゲインのずれ量が補正される。
【0039】
検波器109b01-2~109b32-2は、対応するチャネルについて、デジタル信号マトリックス109aから出力されるMRデータとDDS109b01-1~109b32-1により生成されたデジタル信号とを乗算して、計算機インタフェース回路121へ送信する。
【0040】
なお、受信回路109は、ダウンコンバージョン処理、検波処理、周波数フィルタ処理以外にも、必要に応じて任意の信号処理を行うことが可能である。
【0041】
図1に戻り、シーケンス制御回路110は、計算機システム120から送信されるシーケンス情報に基づいて、高周波増幅装置100、傾斜磁場電源103、送信回路107および受信回路109を制御することによって、被検体Pの撮像を行う。シーケンス制御回路110は、プロセッサにより実現されるものとしても良いし、ソフトウェアとハードウェアとの混合によって実現されても良い。
【0042】
シーケンス情報とは、磁気共鳴イメージング装置1による検査で実行されるパルスシーケンスを定義する情報である。シーケンス情報には、傾斜磁場電源103が傾斜磁場コイル102に供給する電流の強さや電流を供給するタイミング、送信回路107が全身用RFコイルユニット106あるいは局所用RFコイルユニットC1~C8に送信するRFパルスの強さやRFパルスを印加するタイミング、受信回路109がMR信号を検出するタイミング等が定義される。
【0043】
また、シーケンス情報は、操作者によって指定された撮像条件、例えば、TR(繰り返し時間:Repetition Time)、TE(エコー時間:Echo Time)、スライス枚数、スライス厚、FOV(撮像視野:Field Of View)等、多数の撮像パラメータに情報に基づいて、計算機システム120によって生成されるものとする。
【0044】
高周波増幅装置100は、計算機システム120、シーケンス制御回路110および送信回路107等に接続され、計算機システム120から受信した命令又はシーケンス制御回路110から受信したシーケンス情報に基づいて、高周波信号を生成する。
【0045】
計算機システム120は、磁気共鳴イメージング装置1の全体制御、データ収集、および画像再構成などを行う。より詳細には、計算機システム120は、シーケンス制御回路110、高周波増幅装置100、および寝台制御回路105を制御する。計算機システム120は、計算機インタフェース回路121、記憶回路122、処理回路123、入力インタフェース124、およびディスプレイ125を有する。計算機システム120は、本実施形態における磁気共鳴イメージング装置1の制御システムの一例である。
【0046】
計算機インタフェース回路121は、シーケンス情報をシーケンス制御回路110へ送信し、シーケンス制御回路110からMRデータを受信する。また、計算機インタフェース回路121は、MRデータを受信すると、受信したMRデータを記憶回路122に格納する。
【0047】
記憶回路122は、各種のプログラムを記憶する。記憶回路122は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。なお、記憶回路122は、ハードウェアによる非一過性の記憶媒体としても用いられる。
【0048】
入力インタフェース124は、医師や診療放射線技師等の操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける。入力インタフェース124は、例えば、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード等によって実現される。入力インタフェース124は、処理回路123に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号に変換して処理回路123へと出力する。
【0049】
ディスプレイ125は、処理回路123による制御のもと、各種GUI(Graphical User Interface)や、MR(Magnetic Resonance)画像等を表示する。
【0050】
処理回路123は、磁気共鳴イメージング装置1の全体制御を行う。具体的には、処理回路123は、入力インタフェース124を介して操作者から入力される撮像条件に基づいてシーケンス情報を生成し、生成したシーケンス情報をシーケンス制御回路110に送信することによって撮像を制御する。また、処理回路123は、撮像の結果としてシーケンス制御回路110から送られるMRデータを、上述した傾斜磁場により付与された位相エンコード量や周波数エンコード量に従って配列させる。配列されたMRデータはk空間データと称され、当該k空間データに例えばフーリエ変換などの再構成処理を行ってMR画像を生成する。処理回路123は、生成されたMR画像をディスプレイ125に表示させる制御を行う。
【0051】
なお、処理回路123によって実現される各機能は、CPUとしての処理回路123が制御プログラムを実行することにより実現される。しかしながら、当該例に限定されず、処理回路123によって実現される各機能の一部又は全部を、同様の各機能を実行するように設計された専用のハードウェア、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の半導体集積回路や従来の回路モジュール等によって実現するようにしてもよい。
【0052】
(MRデータ・補正情報の流れ及び補正処理)
次に、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1のMRデータ・補正情報の流れ、及び当該補正情報を用いたMRデータの補正処理について説明する。なお、以下においては、各チャネルのMRデータにつき、ゲインのずれ、位相のずれについて補正する場合を例とする。しかしながら、ゲインのずれ、位相のずれのうちいずれの項目を補正するかについては、設定により選択することができる。
【0053】
図7は、磁気共鳴イメージング装置1におけるMRデータ・補正情報の流れ、及び当該補正情報を用いたMRデータの補正処理を説明するための図である。
【0054】
図7においては、説明を具体的にするため、寝台104の8個のコネクタポート104bには、それぞれ局所用RFコイルユニットC1~C8が接続されている場合を例示している。しかしながら、必ずしもすべてのコネクタポートに局所用RFコイルユニットが接続されている必要はない。また、1つの局所用RFコイルユニットが複数のコイルユニットインタフェース回路を有していれば、1つの局所用RFコイルユニットが複数のコネクタポートに接続されている形態をとってもよい。さらに、局所用RFコイルユニットC1のRFコイルエレメント201~216の数は16個としているが、各局所用RFコイルユニットのRFコイルエレメントの数は幾つであってもよい。
【0055】
図7に示す様に、例えば局所用RFコイルユニットC1のRFコイルエレメント201~216のそれぞれによって受信されたMR信号は、各チャネルにおけるゲインブロック301~316によって増幅される。RFコイルエレメント201~216のそれぞれによって受信されたMR信号は、チャネル1~チャネル16に対応するMR信号となっている。ゲインブロック301~316によって増幅されたMR信号は、各チャネルにおけるA/D変換器401~416によってデジタル信号としてのMRデータに変換される。チャネル1~チャネル16に対応する16チャネル分のMRデータは、それぞれ補正情報記憶部6に記憶された補正情報と共に、コイルユニットインタフェース回路5及びコネクタポート104bを介して16本のラインによって、受信回路109に送り出される。
【0056】
他の局所用RFコイルユニットC2~C8についても、同様の処理により、MRデータ及び補正情報が受信回路109に送り出される。これにより、受信回路109に合計128チャネルのMRデータ及び補正情報が送り出される。
【0057】
128チャネル分のMRデータ及び補正情報は、デジタル信号マトリックス109aにおいて32チャネル分のMRデータ及び補正情報に間引かれる。32チャネル分のMRデータ及び補正情報は、補正処理部109b01~109b32に送り出される。すなわち、32チャネル分のMRデータ及び補正情報は、局所用RFコイルユニットC1から補正処理部109b01~109b32まで同じ経路で送られることになる。
【0058】
チャネル毎のMRデータは、補正処理部109b01~109b32において、ダウンコンバートされるとともに、補正情報を用いてゲインのずれ、位相のずれの少なくとも一つが補正される。なお、補正情報とは、ゲイン補正テーブルTa、位相補正テーブルTb、周波数特性テーブルTcを意味する。
【0059】
例えば、ゲインブロック301のゲイン値を0dBに設定し、ゲインブロック301の後段に設けられるフィルタの中心周波数を123MHzとして、チャネル1のMRデータと補正情報とが補正処理部109b01に送り出され、当該チャネル1のMRデータについて、ゲイン補正、位相補正を行う場合を想定する。係る場合には、図3に示したようにゲイン値が「0dB」に設定された場合のゲインブロック301におけるチャネル1のゲインのずれ量が「0.3dB」である。また、図4に示したようにゲイン値が「0dB」に設定された場合のゲインブロック301におけるチャネル1の位相のずれ量が「+3度」である。さらに、図5に示したようにゲインブロック301の後段に設けられるフィルタにおけるチャネル1のゲインのずれ量が「0.5dB」である。したがって、これらの3つの補正量に応じたデジタル信号が、DDS109b01-1において生成される。なお、処理の手順については、他のチャネルについても同様である。
【0060】
(効果)
以上述べた様に、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1は、局所用RFコイルユニットC1から出力される信号を受信し信号処理を行う受信回路109を具備する。局所用RFコイルユニットC1は、少なくとも一つのRFコイルエレメント201~216と、少なくとも一つのRFコイルエレメント201~216から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する少なくとも一つのA/D変換器401~416と、補正情報として機器特性に関する情報を記憶する補正情報記憶部6と備え、デジタル信号と機器特性に関する情報とを関連付けて出力する。受信回路109は、機器特性に関する情報を用いて、局所用RFコイルユニットC1から出力されたデジタル信号を補正する。
【0061】
すなわち、例えば仕様又は製造誤差に起因して生じる特性であるゲイン、位相のずれを補正するための補正情報として、ゲイン補正テーブルTa、位相補正テーブルTb、周波数特性テーブルTcを、例えば工場出荷前において補正情報記憶部6に記憶しておく。磁気共鳴イメージング装置1において、寝台104のコネクタポート104bに接続された局所用RFコイルユニットC1に固有の補正情報が、例えば撮像時において、局所用RFコイルユニットC1から出力されるデジタル信号としてのMRデータと関連付けて受信回路109に送り出される。受信回路109は、局所用RFコイルユニットC1から受け取った補正情報を用いて、MRデータに対してゲイン補正、位相補正のうちの少なくともいずれかを実行することができる。
【0062】
従って、磁気共鳴イメージング装置本体に局所用RFコイルユニット毎の補正情報を予め記憶しておく必要性がないため、接続する局所用RFコイルユニットの出力するデジタル信号の位相やゲインの特性が変化したとしても、磁気共鳴イメージング装置1の受信回路109を改変する必要がない。
【0063】
また、MRデータと関連付けられた補正情報は、MRデータと同じ経路で受信回路109に送られる。従って、選択される経路によらず補正情報を受信回路109に送ることができる。
【0064】
(比較例)
図8は、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1との比較例を説明するための図である。図8を用いて、比較例としての磁気共鳴イメージング装置における補正情報を用いた補正処理について説明する。
【0065】
図8に示した比較例としての磁気共鳴イメージング装置においては、補正情報を記憶する補正情報記憶部6が、磁気共鳴イメージング装置の本体の受信回路109´に設けられている。また、局所用RFコイルユニットC1´~C8´は、補正情報を記憶する補正情報記憶部6を有していない。係る構成の場合、補正情報記憶部6は、コネクタポート104bに接続される全ての種類の局所用RFコイルユニットC1´~C8´の補正情報を、例えば工場出荷前に記憶しておく必要がある。しかしながら、局所用RFコイルユニットC1´~C8´の補正情報は、当該コイルユニットの固有の情報であり、例えば仕様又は製造誤差に起因して生じる特性についての情報である。このため、磁気共鳴イメージング装置本体に接続される可能性のある全ての局所用RFコイルユニットの補正情報を補正情報記憶部6に事前に記憶させておくのは、現実的に困難である。また、新たな局所用RFコイルユニットがコネクタポート104bに接続される際に、補正情報記憶部6に当該局所用RFコイルユニットに関する補正情報を記憶させるとなると、手間がかかり効率的ではない。
【0066】
上記比較例に対して、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1は、局所用RFコイルユニット側に補正情報を記憶する補正情報記憶部6を有している。そして、寝台104のコネクタポート104bに接続された局所用RFコイルユニットC1に固有の補正情報が、例えば撮像時において、局所用RFコイルユニットC1から出力されるデジタル信号としてのMRデータと関連付けて受信回路109に送り出される。従って、コネクタポート104bに接続される全ての種類の局所用RFコイルユニットの補正情報を、磁気共鳴イメージング装置本体側に事前に記憶しておく必要はない。また、新たな局所用RFコイルユニットをコネクタポート104bに接続する場合であっても、補正情報記憶部6に当該局所用RFコイルユニットに関する補正情報を、磁気共鳴イメージング装置本体側に記憶させる必要もない。
【0067】
(変形例1)
上記実施形態においては、局所用RFコイルユニットC1から引き出され寝台104のコネクタポート104bに接続される伝送経路としての16本のラインが、局所用RFコイルユニットC1が有する16個のRFコイルエレメントと一対一に対応付けられた場合を例として説明した。この様な例では、一つのラインが一つのチャネルに対応している。
【0068】
しかしながら、例えば局所用RFコイルユニットが64個のRFコイルエレメントを有する場合、コネクタポート104bが受け入れることが可能なラインの本数を上回ることになる。係る場合においては、当該64個のRFコイルエレメントを用いて取得された64チャネル分のMRデータを、周波数変調によって多重化したり、複数チャネル分の信号を加算したりすることで、16本のラインに集約する。
【0069】
例えば、64個のRFコイルエレメントを用いて取得された64チャネル分のMRデータを4チャネル単位で周波数変調により多重化する場合を想定する。係る場合には、ゲインブロック、A/D変換による処理を受けた64チャネル分のMRデータを、局所用RFコイルユニットに設けられた変調器により周波数変調し、例えば4チャネル単位で多重化して16個の合成データを生成し、16本のラインに割り当てる。受信回路109は、局所用RFコイルユニットから受け取った16ライン分の合成データを復調し64チャネルに対応したMRデータに分離する。受信回路109は、分離された各チャネルに対応するMRデータに対して、補正情報を用いた補正処理を実行する。
【0070】
また、例えば、64個のRFコイルエレメントを用いて取得された64チャネル分のMRデータを4チャネル単位で加算により合成する場合を想定する。係る場合には、局所用RFコイルユニットに設けられた加算器により、ゲインブロックによる増幅前のMRデータを例えば4チャネル単位で加算して16個の合成データを生成し、それぞれを16本のラインに割り当てる。そして、この16個の合成データは、それぞれゲインブロック301~316、A/D変換器401~416において処理された後、16個のMRデータとして補正情報と共に受信回路109に出力される。受信回路109は、局所用RFコイルユニットから受け取った16ライン分の合成データに対して、補正情報を用いた補正処理を実行する。
【0071】
(変形例2)
上記実施形態においては、補正情報を、撮像時において取得されたMRデータと同じタイミングで受信回路109に送る場合を例示した。しかしながら、受信回路109側が補正情報を取得するタイミングは、当該例に限定されない。
【0072】
例えば、局所用RFコイルユニットC1がコネクタポート104bに接続されたタイミングで、撮像の前に補正情報を受信回路109に送り出す構成であってもよい。
【0073】
また、補正情報について、局所用RFコイルユニットC1を識別するための情報(コイルID)と対応付けて、磁気共鳴イメージング装置1本体側において管理するようにしてもよい。係る構成において、過去に用いた補正情報の中に、現在接続された局所用RFコイルユニットC1のコイルIDが合致する補正情報が存在する場合には、局所用RFコイルユニットC1からの補正情報の受け取りを省略し、当該磁気共鳴イメージング装置1本体側の補正情報を利用するようにしてもよい。
【0074】
また、補正情報に作成された日時に関する情報を付帯しておき、磁気共鳴イメージング装置1本体側の補正情報の作成日時が局所用RFコイルユニットC1の補正情報記憶部6に記憶された補正情報の作成日時よりも古い場合には、局所用RFコイルユニットC1から新たな補正情報の受け取り、補正情報の更新を行うようにしてもよい。
【0075】
(変形例3)
上記実施形態にいては、補正情報がゲイン補正テーブルTa、位相補正テーブルTb、周波数特性テーブルTcである場合を例示した。しかしながら、局所用RFコイルユニットC1の補正情報記憶部6が記憶する補正情報は、上記例に限定されない。例えば、局所用RFコイルユニットC1が少なくとも一つのログアンプを有する場合には、各ログアンプで生じる非線形性を線形に戻すための補正値が定義されたテーブルを含めるようにしてもよい。
【0076】
(変形例4)
上記実施形態にいては、局所用RFコイルユニットC1から受信回路109へのMRデータ及び補正情報の転送を有線によって実現する場合を例示した。しかしながら、当該例に限定されず、局所用RFコイルユニットC1から受信回路109へのMRデータ及び補正情報の転送を、無線によって実現してもよい。
【0077】
本実施形態中の説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU (Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。
【0078】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、A/D変換器を内蔵するコイルユニットを用いた磁気共鳴イメージングにおいて、MRデータを適切に補正することができる。
【0079】
また、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0080】
1 磁気共鳴イメージング装置
5 コイルユニットインタフェース回路
6 補正情報記憶部
100 高周波増幅装置
101 静磁場磁石
102 傾斜磁場コイル
103 傾斜磁場電源
104 寝台
104a 寝台天板
104b コネクタポート
105 寝台制御回路
106 全身用RFコイルユニット
107 送信回路
109 受信回路
109a デジタル信号マトリックス
109b01~109b32 補正処理部
109b01-1~109b32-1 DDS
109b01-2~109b32-2 検波器
110 シーケンス制御回路
120 計算機システム
201~216 RFコイルエレメント
301~316 ゲインブロック
401~416 A/D変換器
C1~C8 局所用RFコイルユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8