(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】ガスケット
(51)【国際特許分類】
F16J 15/08 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
F16J15/08 H
(21)【出願番号】P 2019161339
(22)【出願日】2019-09-04
【審査請求日】2022-07-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100198856
【氏名又は名称】朝倉 聡
(72)【発明者】
【氏名】田渕 尚紀
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-165365(JP,U)
【文献】特表2010-522304(JP,A)
【文献】実開昭60-073966(JP,U)
【文献】特開2020-193674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板からなる平坦な本体部と、
前記本体部を貫通し流体の流路の一部を構成する開口部と、
前記本体部を貫通し締結用のボルトを挿通させる複数のボルト挿通部と、
前記本体部から突出し前記金属板の厚み方向に伸びる複数の爪部と、
を含むガスケットであって、
前記開口部の周囲に形成される環状のビード部と、
前記ボルト挿通部とは異なる位置で前記ビード部を取り囲むように前記本体部に形成される複数の貫通孔と、
を有し、
前記爪部は、前記貫通孔の周縁の一部から連続して伸び
、前記本体部及び前記爪部とのなす角度が90°未満となるように折り曲げられ、装着対象となる相手部材の側壁面に前記爪部を弾性変形した状態で当接させて装着され、相手部材からの脱落を防止する、ガスケット。
【請求項2】
前記貫通孔の周縁の前記一部は、前記貫通孔の周縁における前記本体部の外縁側に位置
する部分である、請求項1に記載のガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板を用いたガスケットに関し、特に、装着対象となる相手部材からの脱落を防止するための構造を持つガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
金属板を用いたガスケットは、高温、高圧等の条件下で使用される各種シール部品として、自動車などの様々な分野で広く利用されている。近年、自動車の低燃費化や低エミッション化に伴い、排気再循環(Exhaust Gas Recirculation:EGR)機構等の配管が増えてきており、上記ガスケットの使用箇所も増加している。配管の取り回しが複雑になると、その組立工程において、装着対象となる相手部材へのガスケットの組付けが困難な状況が生じ得る。
【0003】
このような状況に対して、相手部材からの脱落を防止するための構造を持つガスケットは有効である。例えば、特許文献1には、ガスケットの周縁から突出させて係止部を形成し、その係止部を取り付け対象のフランジの周縁に係合させるようにしたガスケットの仮止め装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、金属板を用いたガスケットでは、流体を通過させる開口部の周囲にビード部が形成されることが多い。ガスケットの使用時には、ビード部が2つの相手部材の間で圧縮されてシールラインが形成される。シールラインにおける面圧分布は、ガスケットのシール性能に影響を及ぼす重要なパラメータの一つである。従来のガスケットは、面圧分布の均一化を図ることによりシール性能を向上させる余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、面圧分布の均一化を図ることでシール性能を向上させることが可能なガスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によると、金属板からなる平坦な本体部と、本体部を貫通し流体の流路の一部を構成する開口部と、本体部を貫通し締結用のボルトを挿通させる複数のボルト挿通部と、本体部から突出し金属板の厚み方向に伸びる複数の爪部と、を含むガスケットが提供される。このガスケットは、開口部の周囲に形成される環状のビード部と、ボルト挿通部とは異なる位置でビード部を取り囲むように本体部に形成される複数の貫通孔と、を有している。このガスケットにおける爪部の基端部分は、貫通孔の周縁の一部から連続して伸び、前記本体部及び前記爪部とのなす角度が90°未満となるように折り曲げられ、装着対象となる相手部材の側壁面に前記爪部を弾性変形した状態で当接させて装着され、相手部材からの脱落を防止する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一側面によれば、面圧分布の均一化を図ることでシール性能を向上させることが可能なガスケットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態におけるガスケットの斜視図である。
【
図3】
図2のA-B-C切断線で上記ガスケットを切断した断面図である。
【
図4】上記ガスケットの爪部周辺の拡大断面図である。
【
図5】上記ガスケットの開口部周辺の拡大断面図である。
【
図6】上記ガスケットの素材形状を示す平面図である。
【
図7】一般的な爪付きガスケットの素材形状を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態におけるガスケットの斜視図である。また、
図2は、
図1のガスケットの平面図であり、
図3は、
図2のA-B-C切断線でガスケットを切断した断面図である。さらに、
図4は、
図1のガスケットが相手部材に挟まれた状態における爪部周辺の拡大断面図であり、
図5は、同状態における開口部周辺の拡大断面図である。
【0011】
図1乃至
図5に示すように、本実施形態のガスケット1は、例えば、本体部11、開口部12、一対のボルト挿通部13A,13B、ビード部14、4個の貫通孔15A,15B,15C,15D、および4個の爪部16A,16B,16C,16Dを含んで構成されている。
【0012】
本体部11は、例えば、ステンレス、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム合板等の金属板からなる。この本体部11は、装着対象となる2つの相手部材100,200(
図4および
図5)に対向(当接)する平坦な面11a,11b(
図3~
図5)を有する。本体部11の外縁11cは、相手部材100,200のシール面101,201の外縁に概ね対応している。つまり、本体部11の輪郭は、相手部材100,200の輪郭と概ね合わせられている。ただし、本体部11の外縁11cのうち、各爪部16A~16Dの後述する基端部分E(
図3および
図4)近傍に位置する部分は、相手部材100,200のシール面101,201の外縁よりも金属板の厚さtと同等かまたはそれ以上の長さだけ外方に張り出している。
【0013】
開口部12は、本体部11の略中央を貫通し、密封対象の流体の流路の一部を構成している。このガスケット1の開口部12の形状は、相手部材100,200の開口部102,202(
図5)の形状に対応する。ここでは一例として円形の開口部12を示したが、開口部12の形状はこれに限定されない。ガスケット1の開口部12と、相手部材100,200の開口部102,202とにより、密封対象の流体の流路が構成されている。
【0014】
一対のボルト挿通部13A,13Bは、相手部材100,200のボルト孔103,203(
図5)に対応させて、ここではガスケット1の開口部12を挟んで相対する位置にそれぞれ形成されている(
図2)。各ボルト挿通部13A,13Bの中心を結んだ直線上には、ガスケット1の開口部12の中心が位置している。ボルト挿通部13A,13Bには、ガスケット1を間に挟んだ状態の相手部材100,200(
図4および
図5)を一体に締結するための2本のボルトがそれぞれ挿通される。
図2の二点鎖線は、例えば、2本の六角穴付きボルトが各ボルト挿通部13A,13Bに挿通された場合の当該各ボルトの頭部の外形(平面視)を示している。
【0015】
ビード部14は、金属板へのエンボス加工により開口部12の周囲に形成される。このビード部14は、例えば、本体部11における開口部12の周縁から一定幅の部分を、金属板の厚み方向の一方(ここでは
図3において上方)に押し上げることで、本体部11に段差を設けたハーフビードとすることが可能である。このハーフビードの形状は、平面視で円形であり(
図2)、B-C切断線で切断した断面は段差形である(
図3)。ビード部14を形成するための金属板のエンボス加工は、例えば、後述する各貫通孔15A~15Dの形成が完了した後に実施される。なお、ここではビード部14の形状として上方に凸となる段差形の断面を有したハーフビードを例示したが、下方に凸となる段差形の断面を有したハーフビードとしてもよい。或いは、ハーフビードに代えて、図示は省略するが上方または下方に凸となる円弧形の断面を有したフルビードを適用することも可能である。
【0016】
貫通孔15A~15Dは、本体部11においてビード部14を取り囲むように形成されている。具体的には、本体部11におけるビード部14の周囲の複数の部位(ここでは4箇所)に、貫通孔15A~15Dがそれぞれ開口されている。これら4個の貫通孔15A~15Dからなる環状領域の内側に、円環状のビード部14が位置している。換言すると、貫通孔15A~15Dからなる環状領域と開口部12の周縁との間にビード部14が位置している。各貫通孔15A~15Dは、一対のボルト挿通部13A,13Bとは異なる位置に設けられており、締結用のボルト挿通部13A,13Bと区別して形成された孔である。また、4個の貫通孔15A~15Dのうちの少なくとも1つ(ここでは4個全部)の開口領域は、本体部11における各ボルトの締結力が作用する領域の一部を含んでいる。該各ボルトの締結力が作用する領域は、例えば、締結用のボルトの頭部とこれに当接する相手部材(100または200)との接触領域をボルトの軸方向に投影した本体部11上の領域(
図2の二点鎖線を参照)とすることができる。本実施形態のガスケット1では、各貫通孔15A,15Bの開口領域は、ボルト挿通部13Aに挿通されるボルトの締結力が作用する領域の一部をそれぞれ含んでいる。そして、各貫通孔15C,15Dの開口領域は、ボルト挿通部13Bに挿通されるボルトの締結力が作用する領域の一部をそれぞれ含んでいる。このような貫通孔15A~15Dの配置は、円環状のビード部14を取り囲みつつ、貫通孔15A,15Bがボルト挿通部13A側に寄せられ、貫通孔15C,15Dがボルト挿通部13B側に寄せられた配置となっている。なお、ここでは4個の貫通孔15A~15Dが形成される一例を示したが、少なくとも3個の貫通孔がビード部14を取り囲むように形成されていればよい。
【0017】
爪部16A~16Dは、本体部11から突出し金属板の厚み方向の一方(ここでは
図3において下方)に伸びている。各爪部16A~16Dは、各貫通孔15A~15Dの周縁の一部から連続して伸びている。換言すると、各爪部16A~16Dの基端部分E(
図3および
図4)は、各貫通孔15A~15Dの孔壁の一部にそれぞれ接続されている。各貫通孔15A~15Dの周縁(孔壁)の上記一部は、当該周縁における本体部11の外縁11c側に位置する部分とするのが好ましい。
【0018】
各爪部16A~16Dの形成方法は特に限定されないが、その一例としては、本体部11の外縁11cより内側の部分を打ち抜いて折り曲げることによって各爪部16A~16Dを形成することが可能である。具体的には、例えば、本体部11における各貫通孔15A~15Dが配置される部位、すなわち、ビード部14の周囲の4箇所の部位に対して、本体部11の外縁11c側に位置する部分を残した状態で打ち抜き加工が施される。そして、打ち抜き加工により各爪部16A~16Dの輪郭に合わせて形成された溝の内側の部位が、本体部11の外縁11c側に位置する部分を基端(中心)として回転され下向きに折り曲げられる。この折り曲げは、
図3の断面図で爪部16Aについて示したように、本体部11と爪部16Aとのなす角度(内角)θが90°未満となるようにして行われ、他の爪部16B~16Dについても爪部16Aと同様である。これにより、本体部11から下方に突出した矩形状の折り曲げ爪部16A~16Dが形成される。各爪部16A~16Dは、先端ほど本体部11の内側に近づくように傾斜している。また、各爪部16A~16Dの形成により本体部11に生じるそれぞれの孔を利用して、矩形状の貫通孔15A~15Dも形成される。したがって、爪部16A~16Dと貫通孔15A~15Dの形成位置は一致している。このようにして形成された各爪部16A~16Dは、各々の基端部分Eが各貫通孔15A~15Dの周縁の一部に接続されていることになる。つまり、本実施形態のガスケット1では、各爪部16A~16Dが各貫通孔15A~15Dの周縁の一部から連続して伸びており、かつ、各貫通孔15A~15Dの周縁の上記一部が貫通孔15A~15Dの周縁における本体部11の外縁11c側に位置する部分となっている。
【0019】
ここで、本体部11における貫通孔15A~15Dおよび爪部16A~16Dの配置構成について詳しく説明しておくと、
図1および
図2に示したガスケット1において、貫通孔15Aおよび爪部16Aと貫通孔15Cおよび爪部16Cとは、開口部12およびその周囲のビード部14を挟んで相対するように配置されている。また、貫通孔15Bおよび爪部16Bと貫通孔15Dおよび爪部16Dとは、開口部12およびその周囲のビード部14を挟んで相対するように配置されている。さらに、貫通孔15Aおよび爪部16Aと貫通孔15Bおよび爪部16Bとは、開口部12および一対のボルト挿通部13A,13Bの各中心を通る直線(
図2に示したB-C切断線を延長した直線)を軸として線対称となるように配置されている。加えて、貫通孔15Cおよび爪部16Cと貫通孔15Dおよび爪部16Dとは、上記直線を軸として線対称となるように配置されている。
【0020】
次に、ガスケット1の相手部材100,200への装着について詳しく説明する。
本実施形態のガスケット1は、相手部材100,200への装着作業の際、
図4および
図5の拡大断面図に示したように、2つの相手部材100,200のうちの一方(ここでは、例えば相手部材100とする)の側壁面104に対して、各爪部16A~16Dをそれぞれ当接させるようにして、相手部材100のシール面101上の所定位置に装着(仮止め)される。
【0021】
各爪部16A~16Dは、前述したように本体部11とのなす角度θが90°未満となるように折り曲げられているので(
図3)、相手部材100への装着時には角度θが増大する方向に押し広げられる(
図4)。このとき、各爪部16A~16Dには元の状態に復帰しようとするばね力が働き、このばね力によって各爪部16A~16Dが側壁面104に接触して面圧を発生させる。側壁面104に対する各爪部16A~16Dからの押圧力は、前述したような各爪部16A~16Dの配置構成により、側壁面104にバランス良く作用する。これにより、ガスケット1は、相手部材100のシール面101上の所定位置に保持され、かつ、相手部材100からの脱落が防止される。
【0022】
上記のようにしてガスケット1が一方の相手部材100に装着(仮止め)された後は、他方の相手部材200が、相手部材100との間でガスケット1を挟むように装着される(
図4および
図5)。そして、2本のボルト(
図5では図示省略)を用いてガスケット1および2つの相手部材100,200が一体に締結される。これにより、ガスケット1のビード部14が圧縮される。なお、
図4および
図5に示したガスケット1および相手部材100,200の装着状態は、ボルトによる締め付け前(締結前)、すなわち、ビード部14が圧縮される前の状態である。ボルトによる締め付けによってビード部14が圧縮されると、そのビード部14の反力によって相手部材100,200のシール面101,201にシールラインがそれぞれ形成される。これらのシールラインによって相手部材100,200の各シール面101,201との間の隙間がシールされる。これにより、前述したガスケット1の開口部12と相手部材100,200の開口部102,202とにより構成される流路から外部への流体の漏出が防止される。
【0023】
ボルトによる締め付けによってビード部14が圧縮された状態では、ビード部14の形状(円環状)と本体部11の外形とが相似の関係にないので、本体部11に歪みが発生し得る。この歪みは、ビード部14の圧縮により形成される各シールラインにおける面圧分布を不均一にする一つの要因となる。本実施形態のガスケット1では、貫通孔15A~15Dがビード部14を取り囲むように本体部11に形成されており、これらの貫通孔15A~15Dによって、ビード部14の圧縮に伴って本体部11に発生し得る歪みの量が低減される。つまり、各貫通孔15A~15Dは、ビード部14の圧縮時における本体部11の歪みの逃がしとなる。このようなビード部14の圧縮に伴って本体部11に発生し得る歪みの低減効果は、前述したような4つの各貫通孔15A~15Dの配置構成を適用することでより効果的に実現され得る。
【0024】
したがって、本実施形態のガスケット1によれば、各爪部16A~16Dによって相手部材100への確実な装着(仮止め)が可能になると同時に、各貫通孔15A~15Dによってビード部14の圧縮に伴って本体部11に発生し得る歪みの低減が可能になる。これにより、各シールラインでの面圧分布の均一化を図ることができ、ガスケット1のシール性能が向上する。
【0025】
また、2本のボルトによって締め付けられたガスケット1の本体部11には、ボルトの締結力に起因する応力が各ボルト挿通部13A,13Bをそれぞれ中心にして作用する。これらの応力は、本体部11を伝播してビード部14にも作用する。このビード部14に作用する応力は、ボルト挿通部13A,13Bに近づくほど大きくなる。つまり、ボルトの締結力に起因して本体部11に作用する応力は、円環状のビード部14のうちの各ボルト挿通部13A,13Bに近い部分に集中し易くなる。この応力の集中は、ビード部14の圧縮により形成される各シールラインにおける面圧分布を不均一にするもう一つの要因となる。本実施形態のガスケット1では、各貫通孔15A~15Dの開口領域は、本体部11におけるボルトの締結力が作用する領域の一部を含んでいるので、上記本体部11に作用する応力の一部が各々の貫通孔15A~15Dによって吸収されるようになる。これにより、ビード部14の各ボルト挿通部13A,13Bに近い部分への応力の集中が緩和される。よって、各シールラインにおける面圧分布の均一性をさらに改善することができ、ガスケット1のシール性能が一層向上する。
【0026】
さらに、本実施形態のガスケット1では、4つの貫通孔15A~15Dがビード部14を取り囲むように本体部11に形成されていることで、ビード部14の形成時に本体部11に発生し得る反りも低減されるようになる。具体的に説明すると、ビード部14を形成するために金属板をエンボス加工する際、本体部11の平坦な面11a,11bに反りが発生し得る。そこで、金属板のエンボス加工に先立って、ビード部14の形成が予定されている部分を取り囲むように貫通孔15A~15Dを本体部11に形成しておく。これにより、ビード部14を実際に形成する際の金属板のエンボス加工により発生し得る反りが、先に形成しておいた各貫通孔15A~15Dによって低減されるようになる。
【0027】
ガスケット1の製造においては、脱落防止用の爪部16A~16Dを含めた製品の寸法管理が必要となる。このとき本体部11に反りが発生していると、爪部16A~16Dの寸法管理に加えて本体部11の反りの量も管理しなければならない。本実施形態のガスケット1によれば、各貫通孔15A~15Dによってビード部14の形成に伴って本体部11に発生し得る反りが低減されることで、爪部16A~16Dを含めた製品の寸法管理を容易に行うことができ、検査工数を削減することが可能になる。
【0028】
加えて、本実施形態のガスケット1では、各爪部16A~16Dが各貫通孔15A~15Dの周縁の一部から連続して伸びている構成としたことで、爪部16A~16Dを形成するためにガスケット1の素材(金属板)の外形形状(輪郭)を大きくするなどの必要がなく、原材料の有効利用が可能になる。加えて、各爪部16A~16Dの形成により本体部11に生じるそれぞれの孔を利用して貫通孔15A~15Dを形成するようにしているので、ガスケット1の製造を効率的に行うことが可能である。
【0029】
上記原材料の有効利用について
図6および
図7を参照して詳しく説明する。
図6は、本実施形態によるのガスケット1の素材形状を示す平面図であり、
図7は、一般的な爪付きガスケットの素材形状を示す平面図である。
図6および
図7の各素材形状を比較すると、
図7に示した一般的な爪付きガスケットでは、爪部を形成するためにガスケット素材に出っ張り形状が必要になり、金属板から打ち抜く際に無駄な箇所が多くなる。一方、
図6に示した本実施形態のガスケット1では、本体部11の外縁11cより内側の部分に爪部16A~16Dが配置されるため(
図6の破線で囲んだ部分を参照)、上記のような出っ張り形状は最小限に抑えられる。
【0030】
また、本実施形態のガスケット1では、各爪部16A~16Dが、各貫通孔15A~15Dの周縁における本体部11の外縁11c側に位置する部分から連続して伸びている。これにより、相手部材100に対してガスケット1の各爪部16A~16Dに対応させるための加工等を特に施すことなく、相手部材100の側壁面104に各爪部16A~16Dを当接させてガスケット1の仮止めを行うことが可能である。
【0031】
なお、上述した実施形態では、各爪部16A~16Dの突出方向とビード部14の突出方向とは互いに逆向きである場合を一例に挙げて説明したが、これに限らず同一方向でもよい。
【0032】
また、上述した実施形態では、各爪部16A~16Dが矩形の平板状に形成されているときとしたが、これに限らない。例えば、各爪部16A~16Dの先端部分が折り曲げられて湾曲され、その湾曲部分が内側に向けて突出するように形成されてもよい。このような湾曲部分が設けられることにより、各爪部16A~16Dと相手部材100の側壁面104との当接部位が湾曲部分の表面となるので、相手部材100の側壁面104が傷付けられるおそれがない。このように各爪部16A~16Dの形状は必要に応じて適宜に変更することが可能である。
【0033】
以上、本発明の好ましい実施形態およびその変形例について幾つか説明したが、本発明は上記実施形態に制限されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1…ガスケット、11…本体部、11a,11b…平坦な面、11c…外縁、12,102,202…開口部、13A,13B…ボルト挿通部、14…ビード部、15A~15D…貫通孔、16A~16D…爪部、E…基端部分、100,200…相手部材、101,201…シール面、103,203…ボルト孔、104…側壁面