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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】車両内装部材の取付装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 3/02 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
B60N3/02 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019195643
(22)【出願日】2019-10-28
(65)【公開番号】P2021066411
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-06-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宗春
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/040872(WO,A1)
【文献】特開2006-151047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内装部材を、車体のパネルに取り付ける取付装置であって、
表裏方向へ貫通するよう形成された保持孔を有するベース部材と、
対向配置した2つの取付片の一端が繋がるように形成され、両取付片の他端側を前記保持孔に配置して前記ベース部材に組み付けられると共に、該取付片の一端側を、前記パネルの表裏方向に貫通する取付孔に表側から差し込んで該パネルに取り付けられる取付部材と、
前記取付部材における両取付片の他端側から該両取付片の間に差し込まれて、両取付片の相対的に近づく変位を規制した状態で、前記ベース部材に取り付けられる保持部材と、
を備え、
前記取付部材は、各取付片の他端に設けられ、他方の取付片と反対側へ延出するフランジ部を有し、
前記ベース部材は、
前記保持孔の内壁面から突出するように設けられ、前記ベース部材に対する前記取付部材の裏側へ向けた移動を規制するように、前記フランジ部と引っ掛かる段部と、
前記段部よりも表側に位置して前記保持孔の内壁面から突出するように設けられ、前記ベース部材に対する前記取付部材の表側へ向けた移動を規制するように、前記フランジ部と引っ掛かる規制部と、を有し
前記フランジ部は、前記取付部材を前記ベース部材に取り付けた際に前記内壁面に相対する端縁に、前記内壁面との間に隙間を形成する凹部が設けられている
ことを特徴とする車両内装部材の取付装置。
【請求項2】
前記保持孔における前記フランジ部の先端に相対する内壁面には、前記凹部が間に位置するように、複数の前記規制部が前記表裏方向に直交する方向へ互いに離して設けられて
いる請求項1記載の車両内装部材の取付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アシストグリップなどの車両内装部材を取り付けるための取付装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の車内において、アシストグリップは、U字状に形成された板バネ状のクリップと、このクリップの対向する平行部の間に差し込まれる脚部を有するキャップとを備えた取付装置によって、車体のパネルに対して着脱可能に取り付けられる(例えば、特許文献1参照)。取付装置は、アシストグリップに連結する基台に設けられた開口部に、クリップにおける平行部の開放端側を差し込んで、平行部に設けられた段部を、開口部の開口縁に引っ掛けて、クリップを基台に組み付けている。次に、クリップのU字状に屈曲された先端側をパネルの取付孔に差し込み、クリップに設けた抜け止め爪を取付孔の開口縁に引っ掛ける。そして、キャップの脚部をクリップの対向する平行部の間に挿入することで、平行部の変形が脚部で規制されて、クリップによるパネルへの掛止状態が保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5465978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のアシストグリップは、基台に設けられた内側縁部に、クリップにおける平行部の先端に設けられた段部が引っ掛かることで、基台に対するクリップの後方(車体側)への移動を規制している。また、クリップにおける平行部の段部から延設された延設部の中央部を外側へ切り起こして形成した係止爪が、基台に設けられた開口状の被係止部に引っ掛かることで、基台に対するクリップの前方(車室側)への移動を規制している。このように、引用文献1のクリップは、延設部や係止爪を形成するために、複雑でかつ大型化してしまう。
【0005】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、簡単な構造の取付部材であっても、車体への取り付け時にベース部材から外れ難くできる車両内装部材の取付装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係る車両内装部材の取付装置は、
車両内装部材を、車体のパネルに取り付ける取付装置であって、
表裏方向へ貫通するよう形成された保持孔を有するベース部材と、
対向配置した2つの取付片の一端が繋がるように形成され、両取付片の他端側を前記保持孔に配置して前記ベース部材に組み付けられると共に、該取付片の一端側を、前記パネルの表裏方向に貫通する取付孔に表側から差し込んで該パネルに取り付けられる取付部材と、
前記取付部材における両取付片の他端側から該両取付片の間に差し込まれて、両取付片の相対的に近づく変位を規制した状態で、前記ベース部材に取り付けられる保持部材と、を備え、
前記取付部材は、各取付片の他端に設けられ、他方の取付片と反対側へ延出するフランジ部を有し、
前記ベース部材は、
前記保持孔の内壁面から突出するように設けられ、前記ベース部材に対する前記取付部材の裏側へ向けた移動を規制するように、前記フランジ部と引っ掛かる段部と、
前記段部よりも表側に位置して前記保持孔の内壁面から突出するように設けられ、前記ベース部材に対する前記取付部材の表側へ向けた移動を規制するように、前記フランジ部と引っ掛かる規制部と、を有していることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車両内装部材の取付装置によれば、簡単な構造の取付部材であっても、車体への組み付け時にベース部材から外れ難くできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例に係る取付装置を備えたアシストグリップを示す概略斜視図である。
図2】実施例の取付装置を備えたアシストグリップを示す側面図である。
図3】実施例のベース部材を示し、(a)は裏面図であり、(b)は表側から見た斜視図であり、(c)は裏側から見た斜視図である。
図4】実施例の取付部材を示し、(a)は平面図であり、(b)は側面図であり、(c)は斜視図である。
図5】実施例の保持部材を示し、(a)は平面図であり、(b)は側面図であり、(c)は斜視図である。
図6】(a)はベース部材への取付部材の組み付けを説明する縦断面図であり、(b)は取付部材が組み付けられたベース部材への保持部材の組み付けを説明する縦断面図である。
図7】(a)はベース部材への取付部材の組み付けを説明する横断面図であり、(b)は取付部材が組み付けられたベース部材への保持部材の組み付けを説明する横断面図である。
図8】実施例に係る取付装置の車体への取り付けを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明に係る車両内装部材の取付装置につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお、実施例では、車両内装部材として、車両の車室に設置されるアシストグリップを挙げて説明している。
【実施例
【0010】
図1に示すように、実施例に係るアシストグリップ20は、グリップ本体(車両内装部材本体)22と、このグリップ本体22の端部のそれぞれに設けられた取付装置24とを備えている。図2に示すように、アシストグリップ20は、取付装置24によって車体のパネル(取付対象)10に対して、車室の壁面を構成する壁材14を挟んで取り付けられる。アシストグリップ20は、取付装置24に対してグリップ本体22が支持軸26(図2(b)参照)で支持されて、パネル10の表側に重ねて配置されて壁材14に沿う収納姿勢(図2(a)の実線)と壁材14から立ち上がる使用姿勢(図2(b)の二点鎖線)との間で、グリップ本体22が姿勢変位する。
【0011】
以下の説明において、アシストグリップ20は、パネル10への取り付け状態を基準として方向を指称し、具体的には、車室へ向く側を表といい、車両外側へ向く側を裏という。また、アシストグリップ20において、車両の前後に離間して配置されるグリップ本体22の両端の離間方向(支持軸26の軸方向)を左右方向といい、車室側から見て左右を指称する。アシストグリップ20は、左右方向に延在する支持軸26で取付装置24に支持されたグリップ本体22の把持部分が収納姿勢で取付装置24より上方に配置され、グリップ本体22を収納姿勢から下方へ姿勢変位して使用姿勢とされる。
【0012】
図1および図2に示すように、取付装置24は、グリップ本体22を姿勢変位可能に支持するベース部材28と、一端側がパネル10に設けられた取付孔12に取り付けられると共に、それより他端側がベース部材28に組み合わせられる取付部材30とを備えている。また、取付装置24は、ベース部材28に取り付けられて、取付部材30のベース部材28への組み付け状態を保持する保持部材32を備えている。グリップ本体22の一端部を支持する取付装置24とグリップ本体22との間には、グリップ本体22を収納姿勢に向けて付勢する付勢手段としてのトーションばね34が組み込まれている。また、グリップ本体22の他端部を支持する取付装置24とグリップ本体22との間には、収納姿勢と使用姿勢との間の姿勢変位を制動する制動手段としてのダンパー36が組み込まれている。なお、グリップ本体22の左右の端部に設けられる取付装置24の構成は、前述した付勢手段と制動手段との違いを除いて基本的に同じなので、片方のみを以下に説明する。
【0013】
図3に示すように、ベース部材28は、表裏方向に貫通する保持孔40を内側に有する筒状本体38と、筒状本体38から下方へ延出する一対の腕部42,42とを備えている。一対の腕部42,42は、左右に離して設けられ、左右方向に貫通する軸通孔42aがそれぞれ形成されている。ベース部材28は、軸通孔42aに嵌め合わされた支持軸26を介して、グリップ本体22を回動可能に支持している。なお、実施例のベース部材28は、ガラス繊維を充填した6-ナイロン等の剛性の高い樹脂材料からなる樹脂成形品が用いられている。図2に示すように、ベース部材28は、パネル10に表裏に貫通する取付孔12に、表裏方向へ貫通するよう形成された保持孔40を整合させて、筒状本体38の裏面をパネル10の表面に当てた状態で配置される。
【0014】
図3に示すように、ベース部材28は、保持孔40が左右方向に長い略矩形状の開口形状に形成され、保持孔40における上下に対向する内壁面のそれぞれに、該内壁面から内側へ突出する保持段部(段部)44を備えている。保持段部44は、左右に分かれて左右方向中央部をあけるように配置されており、左右の保持段部44,44の間に、挿通部46が設けられている。また、保持段部44は、表裏方向に貫通する保持孔40において表裏方向中間部に配置されている。筒状本体38において、保持段部44および挿通部46は、保持孔40を挟んで上下対称な関係で設けられている(図3(a)参照)。
【0015】
図3に示すように、ベース部材28は、保持孔40における左右に対向する壁面(保持孔40において保持段部44が設けられた壁面と直交する壁面)のそれぞれに、該壁面から突出する抜止受部48を備えている。抜止受部48は、保持孔40において上下方向中央部に配置されている。抜止受部48は、保持孔40の表裏方向中間部から保持孔40の裏側開口にかけて延在している。筒状本体38において、抜止受部48は、保持孔40を挟んで左右対称な関係で設けられている(図3(a)および(c)参照)。
【0016】
図3に示すように、ベース部材28は、保持孔40における上下に対向する内壁面のそれぞれに、該内壁面から内側へ突出する規制部50を備えている。図3および図8に示すように、規制部50は、筒状本体38において保持段部44よりも表側に配置されている。実施例の規制部50は、保持段部44から表裏方向へ、取付部材30の後述するフランジ部54の板厚よりわずかに大きく離して配置されている。規制部50は、側面視で略直角三角形状に形成された突起であって、表側に向く面が表側から裏側に向かうにつれて内壁面から離れるように斜めに延びる斜面であると共に、裏側へ向く面が内壁面に対して直角または直角に近い角度で延びる立面になっている(図8参照)。規制部50は、筒状本体38の内壁面からの突出寸法が、保持段部44の筒状本体38の内壁面からの突出寸法よりも小さく形成されている(図6,図8参照)。
【0017】
図7に示すように、規制部50は、左右2つの保持段部44,44と表裏方向にずらして、左右の保持段部44,44の間の挿通部46の表側に配置されている。規制部50は、保持孔40において保持段部44よりも左右方向中央部に形成されている。取付装置24は、部材を組み立てた際に、規制部50を、取付部材30の後述する掛止部56からの表側への延長線の近くになるように配置している(図7(a)参照)。筒状本体38における保持孔40を形成する内壁面のそれぞれには、左右方向に離して2つの規制部50,50が設けられている。左右方向に並ぶ2つの規制部50,50は、取付部材30の掛止部56の左右幅と同じ又はわずかに大きく離して配置されている。なお、筒状本体38において規制部50は、保持孔40を挟んで上下対称な関係で設けられている(図3(a)参照)。ベース部材28は、保持段部44が保持孔40に組み付けた取付部材30の後述するフランジ部54に干渉し、規制部50が取付部材30の後述する掛止部56および挟持部58に干渉しない一方でフランジ部54に干渉するように設定されている。
【0018】
図4(b)および(c)に示すように、取付部材30は、上下に対向配置された一対の取付片52,52を有し、両取付片52,52の一端(裏側の端)が繋がって側面視で略U字状に形成されている。取付部材30は、両取付片52,52が繋がる一端(裏側の橋(連結端))を支点として、両取付片52,52の他端(表側の端(開放端))が相対的に近づくように弾性変形可能に構成されており、開放端側の操作により両取付片52,52の間隔を縮小可能である。取付部材30は、両取付片52,52の開放端側を保持孔40に配置(収納)してベース部材28に組み合わせられ、このとき、両取付片52,52の連結端側が保持孔40の裏側開口から裏側へ突出するようになっている(図6(b),図7(a),図8参照)。そして、取付部材30は、筒状本体38から裏側へ突出する両取付片52,52の連結端側を、取付孔12に表側から差し込んでパネル10に取り付けられる(図2,図8参照)。なお、実施例の取付部材30は、所定形状で打ち抜き加工された1枚の金属板を折り曲げて、各部分が形成されている。
【0019】
図4に示すように、取付部材30は、取付片52の開放端に外方(他方の取付片52と反対側)に向けて延出するフランジ部54を備えている。各取付片52は、上または下に向くフランジ部54の端縁が、開放端側の末端になっている。取付部材30は、取付片52とフランジ部54とが繋がる外角部が曲面(R形状)になるように形成されており、実施例では金属板を折り曲げてフランジ部54を形成することで表側へ臨む外角部を曲面にしている。フランジ部54は、取付部材30の開放端側をベース部材28に組み付けた際に、保持段部44と規制部50との間に配置される(図6(b),図8参照)。取付部材30は、保持孔40に差し込んだ際に、上下のフランジ部54,54が上下の保持段部44にそれぞれ引っ掛かって、裏側への移動が規制される。また、取付部材30は、保持孔40に差し込んだ際に、上下のフランジ部54,54が上下の規制部50にそれぞれ引っ掛かって、表側への移動が規制される。
【0020】
フランジ部54は、取付部材30をベース部材28に取り付けた際に、上または下に向く端縁が、筒状本体38の内壁面とわずかな隙間をあけて配置される(図6(b),図8参照)、または内壁面と当たるように設定されている。図4(c)に示すように、フランジ部54には、取付部材30をベース部材28に取り付けた際に筒状本体38の内壁面に相対する端縁に、凹部54aが設けられている。凹部54aは、フランジ部54の左右方向中央部に設けられ、取付部材30をベース部材28に取り付けた際に、凹部54aが左右に並ぶ2つの規制部50,50の間に配置される。
【0021】
図4に示すように、取付部材30は、取付片52の連結端側(裏側)から開放端側(表側)に向かうにつれて他方の取付片52から離れるように延在する掛止部56を備えている。また、取付部材30は、掛止部56の先端部から開放端側(表側)へ延出するように設けられた挟持部58を備えている。図8(b)に示すように、取付部材30は、掛止部56の先端と挟持部58の先端部との間に取付孔12の開口縁を挟んで、パネル10に取り付けられる。
【0022】
図6および図8に示すように、掛止部56は、取付片52の連結端側に設けられ、取付片52から外方へ張り出すように斜めに延出している。上下の掛止部56,56は、裏側から表側へ向かうにつれて、互いに離れるように延在し、上下の掛止部56,56の先端の間隔が、取付孔12の上下寸法よりも大きくなるように設定されている(図2,図8参照)。掛止部56は、取付片52の連結端側に連なる根元を支点として、上下方向(一対の取付片52,52の対向方向)に弾性変形可能になっている。上下の掛止部56,56は、相対的に近づくように変形することで取付孔12を通過し、取付孔12を通過した後に弾性復帰することで先端が取付孔12の開口縁に相対して、パネル10の裏側に配置される。そして、取付部材30(取付装置24)は、掛止部56の先端が、取付孔12の裏側開口縁に引っ掛かって表側へ抜けないようになる。掛止部56は、取付片52において左右方向中央部に設けられ、取付部材30をベース部材28に組み合わせる際に、左右の規制部50,50および挿通部46を通って保持孔40の表側から裏側へ掛止部56が差し込まれる。
【0023】
図6および図8に示すように、挟持部58は、掛止部56に連ねて、掛止部56の先端部から開放端側へ延出するように設けられている。挟持部58は、掛止部56の先端部から対向する他方の取付片52側(内側)へ分岐して、先端部が取付片52の連結端側から開放端側に向かうにつれて他方の取付片52から離れる側(外側)へ延在するように形成されている。図4(c)および図8に示すように、挟持部58は、外側へ開口する凹状に折り曲げた鉤形状に形成されている。上下の挟持部58,58の先端部は、裏側から表側へ向かうにつれて、互いに離れるように延在し、上下の挟持部58,58の先端の間隔が、取付孔12の上下寸法よりも大きくなるように設定されている(図8参照)。挟持部58は、掛止部56と共にまたは掛止部56に連なる根元を支点として、上下方向(一対の取付片52,52の対向方向)に弾性変形可能になっている。上下の挟持部58,58は、先端部と掛止部56の先端との間の凹状部分にパネル10を収めるように構成されており、先端部がパネル10より表側に配置される。挟持部58は、取付片52において左右方向中央部に設けられ、取付部材30をベース部材28に組み合わせる際に、挿通部46を通って保持孔40の表側から裏側へ挟持部58が差し込まれる。
【0024】
図5に示すように、保持部材32は、取付部材30における上下の取付片52,52の間に差し込まれる差込部62と、ベース部材28における保持孔40の表側開口を塞ぐ被覆部64とを備えている。保持部材32には、被覆部64の裏面から裏側へ向けて延出する差込部62が左右に離して2つ設けられている。保持部材32は、左右の差込部62,62の先端部(裏側の端部)の間に架設された先端連結部66と、左右の差込部62,62の表裏方向の中間部間に架設された中間連結部68とを備えている。先端連結部66の左右方向中央部には、裏側へ向けて延びる支持部70が設けられている。支持部70は、取付部材30と保持部材32とを組み付けた際に、取付部材30における上下の取付片52,52の連結端間に表裏方向へ貫通するように形成された支持孔30aに嵌まるようになっている。ここで、支持部70の先端は、支持孔30aよりもわずかに大きく形成されて、支持孔30aに嵌まった際に抜け難くなっている。図8に示すように、差込部62は、上下に対向する取付片52,52の間に差し込んで、取付片52における左右の縁部分を内側から支持する。保持部材32は、差込部62により取付片52の内側への変形を規制する状態であっても、掛止部56および挟持部58の内側への変位を許容する。なお、実施例の保持部材32は、ポリプロピレン(PP)等からなる樹脂成形品である。
【0025】
図5および図7に示すように、保持部材32は、差込部62の先端側に位置して、差込部62の外面から左右方向へ突出するよう形成された抜止部72を備えている。左右の差込部62,62に設けられた抜止部72は、右側の差込部62であれば右面から右方へ突出するように形成され、左側の差込部62であれば左面から左方へ突出するように形成され、互いに反対向きに突出している。保持部材32は、保持孔40に差し込んでベース部材28に組み付けた際に、保持孔40に設けられた抜止受部48に抜止部72が引っ掛かって、ベース部材28に対する表側への移動が規制される。保持部材32は、ベース部材28に組み付けた際に、被覆部64が保持孔40の表側の開口縁に当たると共に、抜止部72が抜止受部48に引っ掛かって、表裏方向に相対的に変位しないようになっている。
【0026】
次に、実施例に係る取付装置24の組み立てについて説明する。図6(a)および図7(a)に示すように、取付部材30の連結端側を先頭にして、ベース部材28の保持孔40に表側から差し込む。取付部材30は、掛止部56および挟持部58が取付片52よりも外方へ張り出しているが、保持孔40の内側に突出する保持段部44の間に設けられた挿通部46を通して、保持孔40に円滑に差し込むことができる。このとき、取付部材30は、フランジ部54が規制部50の斜面に案内されることで、上下に対向する取付片52,52が互いに近づくように変位して、これによりフランジ部54が規制部50を乗り越えて、保持段部44と規制部50との間に収まる(図7(a)の二点鎖線および図6(b)参照)。取付部材30は、保持段部44および規制部50にフランジ部54が引っ掛かることによって、ベース部材28に対する表裏方向の移動が規制された状態となる。また、取付部材30は、上下のフランジ部54,54の端縁が保持孔40を形成する上下の内壁面に挟まれて上下方向の移動が規制されると共に、保持孔40の左右の内壁面に挟まれて左右方向の移動が規制される。
【0027】
図6(b)および図7(b)に示すように、保持部材32の差込部62を保持孔40の表側から挿入し、差込部62を取付部材30における上下の取付片52,52の間に差し込む。そして、保持部材32の支持部70を取付部材30の支持孔30aに嵌めると共に、保持部材32の抜止部72をベース部材28の抜止受部48の裏面に引っ掛ける。これにより、保持部材32の被覆部64が筒状本体38の表側に被さって保持孔40を塞いだ状態で、ベース部材28および取付部材30に対して保持部材32が組み付けられる(図7(b)の二点鎖線および図8参照)。
【0028】
次に、図8(a)に示すように、ベース部材28、取付部材30および保持部材32を組み付けて構成した取付装置24を、パネル10に取り付ける。具体的には、取付部材30における両取付片52,52の連結端側を取付孔12に差し込むと、取付片52に設けられた掛止部56が取付孔12の開口縁に当たって自身の傾斜に案内されて内側へ変位する。取付部材30を掛止部56が取付孔12を通過するまで挿入すると、変位していた掛止部56が弾性により復帰して、掛止部56の先端が取付孔12の裏側開口縁に相対すると共に、挟持部58の先端部が取付孔12の表側開口縁に相対する。パネル10を掛止部56の先端と挟持部58の先端部との間に挟んで、取付装置24がパネル10に取り付けられる(図8(b)参照)。
【0029】
前述したように取付装置24をパネル10に取り付けるとき、取付部材30の掛止部56をパネル10に押し当てて変位させるため、取付部材30にベース部材28から表側へ外れようとする力が大きく働く。本開示の取付装置24は、取付部材30のフランジ部54がベース部材28の規制部50に引っ掛かることで、取付部材30のベース部材28に対する表側への移動を適切に規制することができる。従って、ベース部材28、取付部材30および保持部材32の組み付け状態を解除することなく、取付装置24をパネル10にスムーズに取り付けることができる。取付部材30は、取付片52とフランジ部54との間の表側に向く外角部が曲面であるので、取付部材30を表側から押してベース部材28に取り付ける際に作業者の作業負荷を軽減することができる。また、取付装置24は、フランジ部54が規制部50を乗り越え規定位置に配置されているか否かを、ベース部材28の表側から見て確認することができるので、ベース部材28に対して取付部材30を確実に組み付けることができる。
【0030】
取付部材30は、取付片52の表側の端部が複数回屈曲したり、取付片52の表側の端部に切り起こしを形成したりするなどの複雑な形状ではなく、取付片52の表側の端部から外方へ延出するフランジ部54を設けただけの簡単な形状である。従って、所定形状に打ち抜いた金属板を折り曲げる等によって取付部材30を作成する手間やコストを抑えることができる。また、取付部材30は、取付片52の表側の端部から外方へ延出するフランジ部54を設ける形状とすることで、取付片52の表側の端部が複数回屈曲したり、取付片52の表側の端部に切り起こしを形成する場合と比べて、表裏方向の寸法をコンパクトにすることができる。しかも、突起形状の規制部50は、ベース部材28を型成形する際にスライド型などの特殊な構造を用いることなく成形することができるので、型コストを抑えることができる。
【0031】
ベース部材28には、保持孔40において対向する内壁面のそれぞれに、2箇所の保持段部44,44が左右に間隔をあけて設けられると共に、規制部50が、左右の保持段部44,44と表裏方向にずらして保持段部44,44の間に設けられている。このようにすることで、ベース部材28を型成形する際にスライド型などの特殊な構造を用いることなく、保持段部44および規制部50を成形することができるので、型コストを抑えることができる。
【0032】
フランジ部54には、取付部材30をベース部材28に取り付けた際に内壁面に相対する端縁に、凹部54aが設けてある。このようにすることで、ベース部材28に取付部材30を組み付けた後に、取付部材30の凹部54aとベース部材28の内壁面との間に生じる隙間に工具を差し込んで、取付片52を変位させることができる。これにより、ベース部材28から取付部材30を取り外し易くすることができる。
【0033】
本開示の取付装置24によれば、ベース部材28における保持孔40の内壁面には、保持段部44と表裏方向の位置をずらして、2つの規制部50,50が左右方向(表裏方向に直交する方向)へ互いに離して設けられている。これにより、保持段部44と規制部50との間に取付部材30のフランジ部54を配置した際に、フランジ部54の中央部に形成した凹部54aが、左右の規制部50,50の間に位置することになる。従って、表側から凹部54aへアクセスする際に、規制部50が邪魔にならないようにすることができる。
【0034】
(変更例)
前述した構成に限らず、例えば以下のように構成してもよい。
(1)実施例では、車両内装部材としてアシストグリップを挙げたが、サンバイザーやルームランプなどの取り付けに用いる取付装置にも適用可能である。
(2)取付装置の組み立て順序は、実施例に限らず、取付部材と保持部材とを組み合わせた後に、取付部材および保持部材をベース部材に組み付ける順序であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 パネル,12 取付孔,20 アシストグリップ(車両内装部材),24 取付装置,
28 ベース部材,30 取付部材,32 保持部材,40 保持孔,
44 保持段部(段部),50 規制部,52 取付片,54 フランジ部,
54a 凹部
図1
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図7
図8