(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】路面冠水推定装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
G08G1/00 J
(21)【出願番号】P 2019214584
(22)【出願日】2019-11-27
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】毛利 悠平
(72)【発明者】
【氏名】野間 碩
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 栄二
(72)【発明者】
【氏名】刀根川 浩巳
(72)【発明者】
【氏名】津村 健二
(72)【発明者】
【氏名】樋口 英嗣
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-081536(JP,A)
【文献】特開2021-068242(JP,A)
【文献】特開2018-022469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30、30/00-60/00
G01C 21/00-21/36、23/00-25/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両
の位置情
報に基づいて、前記車両が
特定の道路
を回避して他の道路を走行
する回
避行動をとったか否かを判定する回避行動有無判定部と、
前記車両が
前記回
避行動をとったと判定した場合、前記車両が走行を回避した道路である走行回避位置の周辺の天候情報および当該走行回避位置の周辺の冠水に関する路面冠水情報の少なくとも一方に基づいて、前記走行回避位置において冠水が発生しているか否かを推定する冠水推定部と、
を備え
、
前記回避行動有無判定部は、前記車両が過去の前記位置情報に基づいて特定される通常走行経路と異なる経路を走行した場合に、前記回避行動をとったと判定する、
路面冠水推定装置。
【請求項2】
車両の位置情報に基づいて、前記車両が特定の道路を回避して他の道路を走行する回避行動をとったか否かを判定する回避行動有無判定部と、
前記車両が前記回避行動をとったと判定した場合、前記車両が走行を回避した道路である走行回避位置の周辺の天候情報および当該走行回避位置の周辺の冠水に関する路面冠水情報の少なくとも一方に基づいて、前記走行回避位置において冠水が発生しているか否かを推定する冠水推定部と、
を備え、
前記回避行動有無判定部は、前記車両
と同じ目的地に向かう他の車両の位置情報に基づいて特定される合理的な経路と異なる経路を走行した場合、前
記回避行動をとったと判定する
、
路面冠水推定装置。
【請求項3】
前記回避行動有無判定部は、前記位置情報に基づいて、前記車両の位置のヒートマップ、または前記車両が走行する経路のパターンを学習し、当該学習したヒートマップまたはパターンが変化した場合、前
記回避行動をとったと判定する請求項1
または2に記載の路面冠水推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、路面冠水推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるエンジンから車輪に伝達されるトルクに基づいて、車両が冠水していない平坦な路面を走行している場合に当該車両に作用する理論的な加速度である理論加速度を求め、当該理論加速度と、車両に実際に作用する加速度である実加速度と、の差分が所定の閾値より大きい場合に、車両が走行している路面が冠水していると推定する技術が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の技術では、冠水している路面を車両が実際に走行しなければ、路面が冠水しているか否かを推定することができず、路面が冠水していることを車両の運転者が確認して、冠水している路面の走行を回避した場合、路面が冠水しているか否かを推定することが困難である。
【0005】
そこで、実施形態の課題の一つは、冠水地点を車両が走行していなくても、路面が冠水しているか否かを推定可能とする路面冠水推定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の路面冠水推定装置は、一例として、車両の走行に関する走行データおよび前記車両の位置情報の少なくとも一方に基づいて、前記車両が道路の走行を回避する行動をとったか否かを判定する回避行動有無判定部と、前記車両が道路の走行を回避する行動をとったと判定した場合、前記車両が走行を回避した道路である走行回避位置の周辺の天候情報および当該走行回避位置の周辺の冠水に関する路面冠水情報の少なくとも一方に基づいて、前記走行回避位置において冠水が発生しているか否かを推定する冠水推定部と、を備える。よって、一例として、車両が冠水地点を実際に走行していない場合でも、車両が走行を回避した走行回避位置が冠水地点であると推定することができる。
【0007】
また、実施形態の路面冠水推定装置は、一例として、前記回避行動有無判定部は、前記車両がいつも走行している経路と異なる経路を走行した場合に、前記車両が道路の走行を回避する行動をとったと判定する。よって、一例として、車両が冠水地点を実際に走行していない場合でも、車両が通常走行経路と異なる経路を走行した際に、車両が走行を回避した位置を冠水地点と判定することが可能となる。
【0008】
また、実施形態の路面冠水推定装置は、一例として、前記回避行動有無判定部は、前記車両が非合理的な迂回を行った場合、前記車両が道路の走行を回避する行動をとったと判定する。よって、一例として、車両が冠水地点を実際に走行していない場合でも、車両が非合理的な迂回を行った際に、車両が走行を回避した走行回避位置を冠水地点と判定することが可能となる。
【0009】
また、実施形態の路面冠水推定装置は、一例として、前記回避行動有無判定部は、前記位置情報に基づいて、前記車両の位置のヒートマップ、または前記車両が走行する経路のパターンを学習し、当該学習したヒートマップまたはパターンが変化した場合、前記車両が道路の走行を回避する行動をとったと判定する。よって、一例として、車両が冠水地点を実際に走行していない場合でも、複数の車両の位置のヒートマップ、または複数の車両が走行する経路のパターンが変化した際に、車両が走行を回避した走行回避位置を冠水地点と判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態にかかる路面冠水推定装置を適用した路面冠水推定システムの構成を説明する例示的かつ模式的な構成図である。
【
図2】
図2は、本実施形態にかかる道路情報提供装置における冠水地点の推定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用、結果、および効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能であるとともに、基本的な構成に基づく種々の効果や、派生的な効果のうち、少なくとも1つを得ることが可能である。
【0012】
図1は、本実施形態にかかる路面冠水推定装置を適用した路面冠水推定システムの構成を説明する例示的かつ模式的な構成図である。
【0013】
まず、
図1を用いて、本実施形態にかかる路面冠水推定システムの構成の一例について説明する。
【0014】
本実施形態にかかる路面冠水推定システムは、
図1に示すように、複数の車両Vと、道路情報提供装置2と、道路管理者端末RMと、を有する。複数の車両V、道路情報提供装置2、および道路管理者端末RMは、ネットワーク12を介して接続されている。
【0015】
車両Vは、
図1に示すように、加速度センサ102a、操作部105、および情報出力部106を有する。
【0016】
加速度センサ102aは、走行中に車両Vに作用する前後方向の加速度を検出する。加速度センサ102aには、例えば、車両Vの姿勢の検出や横滑りの検出等に用いられる加速度センサ、エアバックシステム等に用いられる衝撃検出用の加速度センサが利用可能である。
【0017】
操作部105は、車両Vの乗員による当該車両Vに対する各種操作を受け付ける。例えば、操作部105は、道路情報提供装置2で生成される路面冠水情報等の道路情報の取得を要求する取得要求を受け付ける。ここで、路面冠水情報は、車両Vが走行可能な道路のうち冠水している冠水地点に関する情報である。
【0018】
情報出力部106は、操作部105により受け付ける取得要求に応じて、道路情報提供装置2から受信する道路情報を、車両Vの乗員が視認可能な状態で表示したり、音声等で出力したりする表示部または音声出力部である。
【0019】
また、車両Vは、プロセッサやメモリ等といったハードウェアを有し、プロセッサがメモリに記憶されるプログラムを読み出して実行することによって、各種の機能モジュールを実現する。車両Vは、機能モジュールとして、
図1に示すように、位置情報取得部101、加速度取得部102、制御部103、送受信部104、駆動トルク取得部107等を含む。
【0020】
本実施形態では、位置情報取得部101、加速度取得部102、制御部103、送受信部104、および駆動トルク取得部107は、プロセッサがメモリに記憶されるプログラムを読み出して実行することにより実現されるが、これに限定するものではない。
【0021】
例えば、位置情報取得部101、加速度取得部102、制御部103、送受信部104、および駆動トルク取得部107は、独立したハードウェアにより実現することも可能である。また、位置情報取得部101、加速度取得部102、制御部103、送受信部104、および駆動トルク取得部107は、一例であり、同様の機能を実現できれば、各機能モジュールが統合されたり、細分化されたりしていても良い。
【0022】
位置情報取得部101は、車両Vの走行位置(現在位置)を示す位置情報を取得する。位置情報取得部101は、例えば、GPS(Global Positioning System)等によって車両Vの位置情報を取得する。または、位置情報取得部101は、車両Vに搭載されるナビゲーションシステム等の別のシステムによって取得される車両Vの位置情報を取得しても良い。
【0023】
加速度取得部102は、車両Vに作用する実効的な加速度(以下、実加速度と言う)を取得する。加速度取得部102は、例えば、車両Vに既設の加速度センサ102aによって検出される、車両Vの前後方向に作用する加速度を、実加速度として取得する。
【0024】
駆動トルク取得部107は、車両Vの駆動トルクを取得する。駆動トルク取得部107は、車両Vの駆動部(例えば、電動モータ、エンジン)から、車両Vの車輪に与えられる駆動トルクを取得する。
【0025】
制御部103は、車両V全体を制御する制御部の一例である。
【0026】
具体的には、制御部103は、後述する送信部104aを制御して、外部装置(例えば、道路情報提供装置、道路管理者端末RM)に対して各種情報を送信する。
【0027】
本実施形態では、制御部103は、車両Vの走行に関する走行データを生成する。そして、制御部103は、後述する送信部104aを制御して、当該生成した走行データ、および位置情報取得部101により取得される位置情報を、道路情報提供装置2に送信する。
【0028】
ここで、走行データは、車両Vの走行状態を示すデータである。本実施形態では、走行データは、加速度取得部102により取得される実加速度、駆動トルク取得部107により取得される駆動トルク、図示しない計時部(例えば、RTC:Real Time Clock)により計時される現在時刻、および車両Vが有するトラクションコントロールシステムによる駆動トルクの制御信号である駆動トルク制御信号(または、車両Vの車輪速)を示すデータである。
【0029】
また、本実施形態では、制御部103は、操作部105により受け付けた道路情報の取得要求を、後述する送信部104aを制御して、道路情報提供装置2に送信する。
【0030】
また、制御部103は、後述する受信部104bを制御して、外部装置(例えば、道路情報提供装置2や道路管理者端末RM)から、各種情報を受信する。本実施形態では、制御部103は、後述する受信部104bを制御して、道路情報提供装置2から、道路情報を受信する。
【0031】
また、制御部103は、道路情報提供装置2から受信する路面冠水情報等の道路情報を、情報出力部106へ出力する。
【0032】
さらに、制御部103は、操作部105により受け付けた各種操作に基づいて、車両Vを制御する。
【0033】
送受信部104は、ネットワーク12を介して接続される道路情報提供装置2や道路管理者端末RM等の外部装置との通信を司る通信部である。本実施形態では、送受信部104は、送信部104aおよび受信部104bを備える。
【0034】
送信部104aは、制御部103により生成される走行データや、位置情報取得部101により取得される位置情報を、ネットワーク12を介して、道路情報提供装置2に送信する。また、送信部104aは、操作部105により受け付ける道路情報の取得要求を、ネットワーク12を介して、道路情報提供装置2に送信する。
【0035】
受信部104bは、ネットワーク12を介して、道路情報提供装置2から送信される道路情報を受信する。
【0036】
次に、
図1を用いて、本実施形態にかかる路面冠水推定装置を適用した道路情報提供装置2の機能構成の一例について説明する。
【0037】
道路情報提供装置2は、例えば、エッジ、クラウド、車両Vと無線通信可能な基地局内に設けられる。道路情報提供装置2は、プロセッサやメモリ等といったハードウェアを有するパーソナルコンピュータにより構成される。
【0038】
具体的には、道路情報提供装置2は、送受信部111、データ取得部112、冠水判定部113、回避行動有無判定部114、冠水推定部115、および記憶部116を有する路面冠水推定装置の一例である。本実施形態では、道路情報提供装置2は、プロセッサがメモリに記憶されるプログラムを読み出して実行することによって、送受信部111、データ取得部112、冠水判定部113、回避行動有無判定部114、および冠水推定部115等の各種の機能モジュールを実現する。
【0039】
本実施形態では、送受信部111、データ取得部112、冠水判定部113、回避行動有無判定部114、および冠水推定部115等の各種の機能モジュールは、プロセッサがメモリに記憶されるプログラムを読み出して実行することにより実現されるが、これに限定するものではない。例えば、送受信部111、データ取得部112、冠水判定部113、回避行動有無判定部114、および冠水推定部115等の各種の機能モジュールは、独立したハードウェアにより実現することも可能である。また、送受信部111、データ取得部112、冠水判定部113、回避行動有無判定部114、および冠水推定部115等の各種の機能モジュールは、一例であり、同様の機能を実現できれば、各機能モジュールが統合されたり、細分化されたりしていても良い。
【0040】
記憶部116は、道路情報提供装置2が有するメモリにより実現され、後述する受信部111bにより受信する走行データおよび位置情報を記憶する記憶部の一例である。本実施形態では、記憶部116は、車両Vの識別情報と対応付けて、当該車両Vから受信する走行データおよび位置情報を記憶する。
【0041】
本実施形態では、記憶部116は、車両Vの識別情報と対応付けて、走行データおよび位置情報を記憶することにより、走行データおよび位置情報の送信元の車両Vを特定可能な状態で、走行データおよび位置情報を記憶しているが、車両Vの識別情報と対応付けずに、車両Vの走行データおよび位置情報を記憶することにより、送信元の車両Vの特定できない状態で、複数の車両Vの走行データおよび位置情報の集合を記憶しても良い。
【0042】
また、記憶部116は、車両Vの識別情報と対応付けて、車両Vがいつも走行している経路(例えば、通勤や通学で車両Vが走行している経路)を記憶する。
【0043】
また、記憶部116は、車両Vが走行可能な道路のうち路面が冠水している地点(以下、冠水地点と言う)を示す路面冠水情報を記憶する。
【0044】
さらに、記憶部116は、車両Vが走行可能な道路の天候情報(例えば、大雨、小雨)を記憶する。
【0045】
送受信部111は、ネットワーク12を介して接続される車両Vや道路管理者端末RM等の外部装置との通信を司る通信部である。本実施形態では、送受信部111は、送信部111aおよび受信部111bを備える。
【0046】
送信部111aは、車両Vが走行可能な道路のうち冠水地点を示す路面冠水情報を、ネットワーク12を介して、道路管理者端末RMや車両V等の外部機器に送信する。例えば、送信部111aは、複数の車両Vのうち冠水地点に向かう車両Vや、後述する受信部11bにより受信する取得要求の送信元の車両Vに対して、路面冠水情報等の道路情報を送信する。また、例えば、送信部111aは、路面の冠水を防止するインフラに対して、路面冠水情報を送信する。さらに、例えば、送信部111aは、浸水ハザードマップを生成する外部システムに対して、路面冠水情報を送信する。
【0047】
受信部111bは、ネットワーク12を介して、車両Vから、走行データや、位置情報、道路情報の取得要求等の各種情報を受信する。そして、受信部111bは、受信した走行データおよび位置情報を、記憶部116に書き込む。
【0048】
データ取得部112は、複数の車両Vのそれぞれの走行データおよび位置情報を取得する。本実施形態では、データ取得部112は、記憶部116から、車両Vの走行データおよび位置情報を取得する。
【0049】
冠水判定部113は、車両Vの走行データが示す実加速度と、理論加速度と、の差分が、所定閾値以上であるか否かを判定する。そして、冠水判定部113は、実加速度と理論加速度との差分が所定閾値以上である場合、車両Vの走行位置が冠水地点であると判定する。さらに、冠水判定部113は、冠水地点と判定した車両Vの走行位置を示す情報を、路面冠水情報として、記憶部116に保存する。一方、冠水判定部113は、実加速度と理論加速度との差分が所定閾値未満である場合、車両Vの走行位置が冠水地点でないと判定する。
【0050】
ここで、理論加速度は、車両Vの走行データが示す駆動トルクに基づく車両Vの理論的な加速度である。具体的には、理論加速度は、冠水していない平坦な路面を、車両Vの走行データが示す駆動トルクによって車両Vが走行した場合の理論的な加速度である。また、所定閾値は、車両Vの走行位置が冠水している可能性があると判断する、実加速度と理論加速度との差分の閾値である。
【0051】
回避行動有無判定部114は、データ取得部112により取得される各車両Vの走行データおよび位置情報の少なくとも一方に基づいて、各車両Vが道路の走行を回避する行動をとったか否かを判定する。
【0052】
本実施形態では、回避行動有無判定部114は、各車両Vがいつも走行している経路(以下、通常走行経路と言う)と異なる経路を走行した場合に、車両Vが道路の走行を回避する行動をとったと判定する。これにより、車両Vが冠水地点を実際に走行していない場合でも、車両Vが通常走行経路と異なる経路を走行した際に、車両Vが走行を回避した位置(以下、走行回避位置と言う)を冠水地点と判定することが可能となる。
【0053】
具体的には、回避行動有無判定部114は、各車両Vの過去の位置情報に基づいて、通勤や通学等で車両Vがいつも走行する経路を通常走行経路として特定し、当該特定した通常走行経路を、記憶部116に記憶させる。その際、回避行動有無判定部114は、車両Vの通常走行経路と、当該通常走行経路を車両Vが走行する時間と、を対応付けて、記憶部116に記憶させても良い。
【0054】
ここで、いつも走行している経路は、例えば、車両Vが走行する経路のうち、予め設定された回数以上、走行した経路である。また、過去の位置情報は、データ取得部112により取得される最新の位置情報よりも前の位置情報である。
【0055】
そして、回避行動有無判定部114は、記憶部116から、道路の走行を回避する行動をとったか否かを判定する車両V(以下、対象車両Vと言う)の通常走行経路を読み出す。その際、回避行動有無判定部114は、記憶部116から、対象車両Vが道路を走行した時間と対応付けられる通常走行経路を読み出す。
【0056】
次いで、回避行動有無判定部114は、データ取得部112により取得される最新の位置情報に基づいて、対象車両Vが走行した経路を特定する。そして、回避行動有無判定部114は、特定した経路と、読み出した通常走行経路と、が異なる場合に、対象車両Vが道路の走行を回避する行動をとったと判定する。
【0057】
また、本実施形態では、回避行動有無判定部114は、車両Vが非合理的な迂回を行った場合に、車両Vが道路の走行を回避する行動をとったと判定する。これにより、車両Vが冠水地点を実際に走行していない場合でも、車両Vが非合理的な迂回を行った際に、車両Vが走行を回避した走行回避位置を冠水地点と判定することが可能となる。
【0058】
具体的には、回避行動有無判定部114は、記憶部116から、道路の走行を回避する行動をとったか否かを判定する対象車両Vと同じ目的地に向かう他の車両Vの位置情報を読み出す。次いで、回避行動有無判定部114は、読み出した他の車両Vの位置情報や、道路の種別(例えば、交通量の多い幹線道路、交通量の少ない支線道路)に基づいて、対象車両Vの目的地に向かう際の合理的な経路を特定する。
【0059】
次いで、回避行動有無判定部114は、データ取得部112により取得される最新の位置情報に基づいて、対象車両Vが走行した経路を特定する。そして、回避行動有無判定部114は、特定した経路と、合理的な経路と、が異なる場合に、対象車両Vが道路の走行を回避する行動をとったと判定する。例えば、回避行動有無判定部114は、対象車両Vの目的地に向かって、直線で向かう合理的な経路が存在するにも関わらず、大きく迂回する経路を対象車両Vが走行した場合に、対象車両Vが道路の走行を回避する行動をとったと判定する。
【0060】
また、本実施形態では、回避行動有無判定部114は、複数の車両Vの位置情報に基づいて、車両Vの位置のヒートマップ、または、車両Vが走行する経路のパターンを学習する。そして、回避行動有無判定部114は、学習したヒートマップまたはパターンが変化した場合に、車両Vが道路の走行を回避する行動をとったと判定する。これにより、車両Vが冠水地点を実際に走行していない場合でも、複数の車両Vの位置のヒートマップ、または複数の車両Vが走行する経路のパターンが変化した際に、車両Vが走行を回避した走行回避位置を冠水地点と判定することが可能となる。
【0061】
具体的には、回避行動有無判定部114は、機械学習等によって、記憶部116に記憶される複数の車両Vの位置情報に基づいて、車両Vの位置のヒートマップ、または車両Vが走行する経路のパターンを学習する。次いで、回避行動有無判定部114は、最新のヒートマップまたはパターンと、直近(例えば、10分前)または別日(例えば、前日、同じ曜日)のヒートマップまたはパターンと、を比較する。
【0062】
そして、回避行動有無判定部114は、最新のヒートマップまたはパターンと、直近または別日のヒートマップまたはパターンと、が異なる場合、車両Vが道路の走行を回避する行動をとったと判定する。例えば、回避行動有無判定部114は、ある交差点における車両Vの直進、右折、および左折のそれぞれの頻度または割合の変化量が、予め設定された閾値以上となった場合に、車両Vが道路の走行を回避する行動をとったと判定する。
【0063】
また、本実施形態では、回避行動有無判定部114は、各車両Vの走行データに基づいて、車両Vの進行方向が急激に変化したか否かを判断し、車両Vの進行方向が急激に変化したと判断した場合、車両Vが道路の走行を回避する行動をとったと判定する。例えば、回避行動有無判定部114は、直進している車両Vが急激なハンドル操作で進行方向が変わった場合や、車両Vの進行方向とは反対方向への実加速度(減速度)が急激に増加した場合、車両Vの車輪速が急激に落ちた場合等、車両Vが道路の走行を回避する行動をとったと判定する。
【0064】
本実施形態では、回避行動有無判定部114は、車両Vが通常走行経路と異なる経路を走行したか否か、車両Vが非合理的な迂回を行ったか否か、車両Vの位置のヒートマップまたは車両Vが走行する経路のパターンが変化したか否かの学習結果、および車両Vの進行方向が急激に変化したか否か等の4つの判定要件のうち、いずれか1つの判定要件を満たした場合に、車両Vが道路の走行を回避する行動をとったと判定しているが、これに限定するものではない。
【0065】
例えば、回避行動有無判定部114は、上記の4つの判定要件のうち、少なくとも2以上の判定要件を満たした場合に、車両Vが道路の走行を回避する行動をとったと判定することも可能である。これにより、車両Vが道路の走行を回避する行動をとったか否かの判定精度を向上させることができる。
【0066】
冠水推定部115は、回避行動有無判定部114によって車両Vが道路の走行を回避する行動をとったと判定された場合に、車両Vが走行を回避した道路(以下、走行回避位置と言う)の周辺の天候情報および当該走行回避位置の周辺の路面冠水情報の少なくとも一方に基づいて、走行回避位置において冠水が発生している否かを推定する。これにより、車両Vが冠水地点を実際に走行していない場合でも、車両Vが走行を回避した走行回避位置が冠水地点であると推定することができる。
【0067】
本実施形態では、冠水推定部115は、まず、車両Vの位置情報に基づいて、走行回避位置を特定する。例えば、冠水推定部115は、通常走行経路、合理的な経路、または、直近または別日のヒートマップまたはパターンに基づく車両Vが走行する頻度または割合が高い経路を、走行回避位置として特定する。
【0068】
次いで、冠水推定部115は、記憶部116から、特定した走行回避位置の周辺の天候情報を読み出す。さらに、冠水推定部115は、記憶部116から、特定した走行回避位置の周辺の路面冠水情報を読み出す。
【0069】
そして、冠水推定部115は、読み出した天候情報が降雨であること、または、路面冠水情報が冠水していることを示している場合、走行回避位置において冠水が発生していると推定する。一方、冠水推定部115は、読み出した天候情報が降雨でないことを示している場合、または、路面冠水情報が冠水していないことを示している場合、走行回避位置において冠水が発生していないと推定する。
【0070】
本実施形態では、冠水推定部115は、天候情報が降雨であること示している場合、または、路面冠水情報が冠水していることを示している場合に、走行回避位置において冠水が発生していると推定しているが、天候情報が降雨であることを示しかつ路面冠水情報が冠水していることを示している場合に、走行回避位置において冠水が発生していると推定しても良い。
【0071】
また、本実施形態では、冠水推定部115は、道路情報提供装置2内の冠水判定部113による冠水地点の判定結果に基づいて、走行回避位置において冠水が発生しているか否を推定しているが、道路情報提供装置2の外部装置(例えば、車両V)に設けられる冠水判定部113による冠水地点の判定結果に基づいて、走行回避位置において冠水が発生しているか否かを推定することも可能である。
【0072】
また、本実施形態では、冠水推定部115は、走行回避位置において冠水が発生していると推定した場合、走行回避位置を示す情報を、路面冠水情報として、記憶部116に保存する。
【0073】
本実施形態では、車両Vの外部装置(例えば、道路情報提供装置2)に路面冠水推定装置を設けた例について説明しているが、車両Vが、他の車両Vの走行データや位置情報を取得可能であれば、車両V内に路面冠水推定装置を設けることも可能である。また、道路管理者端末RMが、複数の車両Vの走行データおよび位置情報を取得可能であれば、道路管理者端末RM内に路面冠水推定装置を設けることも可能である。
【0074】
図2は、本実施形態にかかる道路情報提供装置における冠水地点の推定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0075】
次に、
図2を用いて、本実施形態にかかる道路情報提供装置2による冠水地点の推定処理の流れの一例について説明する。
【0076】
まず、データ取得部112は、記憶部116から、複数の車両Vのそれぞれの走行データおよび位置情報を取得する(ステップS201)。
【0077】
次いで、回避行動有無判定部114は、データ取得部112により取得される各車両Vの走行データおよび位置情報の少なくとも一方に基づいて、車両Vが道路の走行を回避する行動をとったか否かを判定する回避行動判定処理を実行する(ステップS202)。
【0078】
車両Vが道路の走行を回避する行動をとっていないと判定した場合(ステップS203:No)、道路情報提供装置2は、車両Vの走行回避位置が冠水地点か否かを判定する処理を終了する。
【0079】
一方、車両Vが道路の走行を回避する行動をとったと判定した場合(ステップS203:Yes)、冠水判定部113は、車両Vが走行を回避した走行回避位置の周辺を走行する車両Vの走行データに基づいて、当該車両Vの走行位置が冠水地点か否かを判定する(ステップS204)。そして、冠水判定部113は、冠水地点と判定した車両Vの走行位置を示す情報を路面冠水情報として記憶部116に保存する。
【0080】
冠水推定部115は、車両Vが走行を開始した走行回避位置の周辺の天候情報および記憶部116に記憶される路面冠水情報(走行回避位置の周辺の路面冠水情報)の少なくとも一方に基づいて、走行回避位置において冠水が発生しているか否かを推定する(ステップS205)。
【0081】
走行回避位置において冠水が発生していないと推定した場合(ステップS206:No)、冠水推定部115は、冠水以外の理由(例えば、渋滞)によって車両Vが走行回避位置の走行を回避したと判断する(ステップS207)。
【0082】
一方、走行回避位置において冠水が発生していると推定した場合(ステップS206:Yes)、冠水推定部115は、冠水によって車両Vが走行回避位置の走行を回避したと判断する(ステップS208)。
【0083】
このように、本実施形態にかかる道路情報提供装置2によれば、車両Vが冠水地点を実際に走行していない場合でも、車両Vが走行を回避した走行回避位置が冠水地点であると推定することができる。
【符号の説明】
【0084】
2 道路情報提供装置
101 位置情報取得部
102 加速度取得部
102a 加速度センサ
103 制御部
104,111 送受信部
104a,111a 送信部
104b,111b 受信部
105 操作部
106 情報出力部
107 駆動トルク取得部
112 データ取得部
113 冠水判定部
114 回避行動有無判定部
115 冠水推定部
116 記憶部
V 車両
RM 道路管理者端末