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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 21/06 20060101AFI20231221BHJP
   F25D 21/08 20060101ALI20231221BHJP
   F25D 21/10 20060101ALI20231221BHJP
   F25B 47/02 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
F25D21/06 Q
F25D21/08 B
F25D21/06 J
F25D21/10 A
F25D21/08 D
F25B47/02 A
F25B47/02 H
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019226343
(22)【出願日】2019-12-16
(65)【公開番号】P2021096015
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100205785
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100203297
【弁理士】
【氏名又は名称】橋口 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【弁理士】
【氏名又は名称】梶井 良訓
(72)【発明者】
【氏名】角谷 彰規
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-112574(JP,A)
【文献】特開2015-183863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 21/06
F25D 21/08
F25D 21/10
F25B 47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵部を含む筐体と、
前記貯蔵部を冷却する第1冷却器を含む冷却部と、
前記貯蔵部を冷却する第1冷却制御と、前記第1冷却制御と比べて高い温度帯または高い気圧帯のもとで前記貯蔵部を冷却する第2冷却制御とを交互に繰り返す第1制御モードで前記冷却部を制御可能な制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1冷却器または前記第1冷却器とは異なる第2冷却器に関する除霜を行う除霜時間の少なくとも一部が前記第1冷却制御の実行時間と重なり得る場合に、前記除霜の開始タイミングまたは前記除霜の終了タイミングを調整し、
前記制御部は、前記除霜の開始時点から終了時点までの除霜時間帯と、前記第1冷却制御の開始時点から終了時点までの実行時間帯とを比較し、前記除霜時間帯の少なくとも一部が前記第1冷却制御の実行時間帯と重なる場合に、前記除霜時間帯が前記第1冷却制御の実行時間帯と重ならないように前記除霜の開始タイミングを調整する、
冷蔵庫。
【請求項2】
貯蔵部を含む筐体と、
前記貯蔵部を冷却する第1冷却器を含む冷却部と、
前記貯蔵部を冷却する第1冷却制御と、前記第1冷却制御と比べて高い温度帯または高い気圧帯のもとで前記貯蔵部を冷却する第2冷却制御とを交互に繰り返す第1制御モードで前記冷却部を制御可能な制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1冷却器または前記第1冷却器とは異なる第2冷却器に関する除霜の開始タイミングから前記第1冷却制御が開始されるまでの残り時間が、予め定められた時間未満である場合に前記除霜の開始タイミングまたは前記除霜の終了タイミングを調整する、
冷蔵庫。
【請求項3】
前記予め定められた時間は、前記除霜を行う除霜時間を含み、
前記制御部は、前記除霜の開始タイミングから前記第1冷却制御が開始されるまでの残り時間が、前記除霜時間未満である場合に前記除霜の開始タイミングまたは前記除霜の終了タイミングを調整する、
請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記制御部は、前記除霜の開始タイミングからの前記除霜時間と、前記残り時間とを比較し、前記除霜の終了前に前記第1冷却制御の開始されることが予測される場合に、前記第1冷却制御の終了後に前記除霜が行われるように、前記除霜の開始タイミングまたは前記除霜の終了タイミングを調整する、
請求項3に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1冷却制御の実行中に前記除霜の開始タイミングとなる場合に、前記第1冷却制御の実行中に前記除霜が行われないように前記除霜の開始タイミングを前記第1冷却制御の終了よりも後に遅らせる、
請求項1または2に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記制御部は、前記第2冷却制御の実行中において、前回の除霜運転の終了タイミングからの経過時間と過去の除霜運転に基づく除霜間隔とから導出した次の前記除霜の開始タイミングが次の前記第1冷却制御の実行中となることが予測される場合、または前記除霜の開始時刻から終了時刻までの除霜時間帯の少なくとも一部が次の前記第1冷却制御の開
始時刻から終了時刻までの実行時間帯と重なる場合に、前記除霜の開始タイミングを早める、
請求項に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記制御部は、次の前記除霜の開始タイミングが次の前記第1冷却制御の実行中となる場合、または次の前記除霜時間帯の少なくとも一部が次の前記第1冷却制御の実行時間帯と重なる場合に、前記第2冷却制御の終了前に除霜が完了するように前記除霜の開始タイミングを早める、
請求項に記載の冷蔵庫。
【請求項8】
貯蔵部を含む筐体と、
前記貯蔵部を冷却する第1冷却器を含む冷却部と、
前記貯蔵部を冷却する第1冷却制御と、前記第1冷却制御と比べて高い温度帯または高い気圧帯のもとで前記貯蔵部を冷却する第2冷却制御とを交互に繰り返す第1制御モードで前記冷却部を制御可能な制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1冷却器または前記第1冷却器とは異なる第2冷却器に関する除霜を行う除霜時間の少なくとも一部が前記第1冷却制御の実行時間と重なり得る場合に、前記除霜の開始タイミングまたは前記除霜の終了タイミングを調整し、
前記制御部は、前記第2冷却制御の実行中において、前回の除霜運転の終了タイミングからの経過時間と過去の除霜運転に基づく除霜間隔とから導出した次の前記除霜の開始タイミングが次の前記第1冷却制御の実行中となる場合、または前記除霜の開始時刻から終了時刻までの除霜時間帯の少なくとも一部が次の前記第1冷却制御の開始時刻から終了時刻までの実行時間帯と重なる場合に、前記除霜の開始タイミングを次の前記第1冷却制御の終了よりも後に遅らせる、
冷蔵庫。
【請求項9】
貯蔵部を含む筐体と、
前記貯蔵部を冷却する第1冷却器を含む冷却部と、
前記貯蔵部を冷却する第1冷却制御と、前記第1冷却制御と比べて高い温度帯または高い気圧帯のもとで前記貯蔵部を冷却する第2冷却制御とを交互に繰り返す第1制御モードで前記冷却部を制御可能な制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1冷却器または前記第1冷却器とは異なる第2冷却器に関する除霜を行う除霜時間の少なくとも一部が前記第1冷却制御の実行時間と重なり得る場合に、前記除霜の開始タイミングまたは前記除霜の終了タイミングを調整し、
前記制御部は、前記第2冷却制御の実行中に前記除霜を開始する条件が満たされた場合に前記除霜を開始し、前記除霜が終了する前に前記第2冷却制御から前記第1冷却制御に切り替わる場合に前記除霜を中断するように前記除霜の終了タイミングを調整すると共に、前記第1冷却制御の終了後に前記除霜が再開されるように前記除霜の開始タイミングを調整する、
冷蔵庫。
【請求項10】
貯蔵部を含む筐体と、
前記貯蔵部を冷却する第1冷却器を含む冷却部と、
前記貯蔵部を冷却する第1冷却制御と、前記第1冷却制御と比べて高い温度帯または高い気圧帯のもとで前記貯蔵部を冷却する第2冷却制御とを交互に繰り返す第1制御モードで前記冷却部を制御可能な制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1冷却器または前記第1冷却器とは異なる第2冷却器に関する除霜を行う除霜時間の少なくとも一部が前記第1冷却制御の実行時間と重なり得る場合に、前記除霜の開始タイミングまたは前記除霜の終了タイミングを調整し、
前記筐体は、前記貯蔵部を含む第1貯蔵室と、前記第1貯蔵室よりも設定温度帯が低い第2貯蔵室とを含み、
前記第1冷却器は、前記第1貯蔵室を冷却し、
前記第2冷却器は、前記第2貯蔵室を冷却し、
前記制御部は、前記第2冷却器に関する除霜を行う除霜時間の少なくとも一部が前記第1冷却器による前記第1冷却制御の実行時間と重なり得る場合に、前記第2冷却器に関する前記除霜の開始タイミングを調整する、
冷蔵庫。
【請求項11】
貯蔵部を含む筐体と、
前記貯蔵部を冷却する第1冷却器を含む冷却部と、
前記貯蔵部を冷却する第1冷却制御と、前記第1冷却制御と比べて高い温度帯または高い気圧帯のもとで前記貯蔵部を冷却する第2冷却制御とを交互に繰り返す第1制御モードで前記冷却部を制御可能な制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1冷却器または前記第1冷却器とは異なる第2冷却器に関する除霜を行う除霜時間の少なくとも一部が前記第1冷却制御の実行時間と重なり得る場合に、前記除霜の開始タイミングまたは前記除霜の終了タイミングを調整し、
前記筐体は、前記貯蔵部を含む第1貯蔵室と、前記第1貯蔵室よりも設定温度帯が低い第2貯蔵室とを含み、
前記第1冷却器は、前記第1貯蔵室を冷却し、
前記第2冷却器は、前記第2貯蔵室を冷却し、
前記制御部は、
前記第1冷却器による前記第1貯蔵室の冷却と、前記第2冷却器による前記第2貯蔵室の冷却とを交互に行い、
前記貯蔵部を一定の温度帯で冷却する第2制御モードで前記冷却部を制御可能であり、前記第2制御モードが実行中に前記第1冷却器の除霜を行う場合、第1終了条件が満たされることで前記第1冷却器の除霜を終了し、
前記第1制御モードが実行中に前記第1冷却器の除霜を行う場合、前記第2貯蔵室の冷却が行われている間に前記第1終了条件が満たされた場合であっても、前記第1終了条件とは異なる第2終了条件が満たされない場合、次の前記第1貯蔵室の冷却開始以前に設定される所定のタイミングまで前記除霜を継続する、
冷蔵庫。
【請求項12】
前記第1終了条件は、前記第1冷却器の温度が閾値温度以上になることであり、
前記第2終了条件は、前記除霜が閾値時間以上行われることである、
請求項11に記載の冷蔵庫。
【請求項13】
貯蔵部を含む第1貯蔵室と、前記第1貯蔵室よりも設定温度帯が低い第2貯蔵室とを有した筐体と、
前記第1貯蔵室を冷却する第1冷却器と、前記第2貯蔵室を冷却する第2冷却器とを含む冷却部と、
前記第1冷却器による前記第1貯蔵室の冷却と、前記第2冷却器による前記第2貯蔵室の冷却とを交互に行い、前記貯蔵部を冷却する第1冷却制御と、前記第1冷却制御と比べて高い温度帯または高い気圧帯のもとで前記貯蔵部を冷却する第2冷却制御とを交互に繰り返す第1制御モードと、前記貯蔵部を一定の温度帯で冷却する第2制御モードとで前記冷却部を制御可能な制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第2制御モードが実行中に前記第1冷却器の除霜を行う場合、第1終了条件が満たされることで前記第1冷却器の除霜を終了し、前記第1制御モードが実行中に前記第1冷却器の除霜を行う場合、前記第2貯蔵室の冷却が行われている間に前記第1終了条件が満たされた場合であっても、前記第1終了条件とは異なる第2終了条件が満たされない場合、次の前記第1貯蔵室の冷却開始以前に設定される所定のタイミングまで前記除霜を継続する、
冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵室よりも低い温度に冷却されるチルド室を備えた冷蔵庫が知られている。チルド室は、発酵食品や生鮮食品などの食品を低温で凍らない温度で保存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-102320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばチルド室のような貯蔵部の冷却制御中に除霜制御が行われることで、冷却制御の適切性の低下を招くことがあり得る。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、より適切な冷却制御を行うことができる冷蔵庫を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の冷蔵庫は、筐体と、冷却部と、制御部とを持つ。前記筐体は、貯蔵部を含む。前記冷却部は、前記貯蔵部を冷却する第1冷却器を含む。前記制御部は、前記貯蔵部を冷却する第1冷却制御と、前記第1冷却制御と比べて高い温度帯または高い気圧帯のもとで前記貯蔵部を冷却する第2冷却制御とを交互に繰り返す第1制御モードで前記冷却部を制御可能である。前記制御部は、前記第1冷却器または前記第1冷却器とは異なる第2冷却器に関する除霜を行う除霜時間の少なくとも一部が前記第1冷却制御の実行時間と重なり得る場合に、前記除霜の開始タイミングまたは前記除霜の終了タイミングを調整する。また、前記制御部は、前記除霜の開始時点から終了時点までの除霜時間帯と、前記第1冷却制御の開始時点から終了時点までの実行時間帯とを比較し、前記除霜時間帯の少なくとも一部が前記第1冷却制御の実行時間帯と重なる場合に、前記除霜時間帯が前記第1冷却制御の実行時間帯と重ならないように前記除霜の開始タイミングを調整する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の冷蔵庫を示す正面図。
図2図1中に示された冷蔵庫のF2-F2線に沿う断面図。
図3】実施形態の冷凍サイクル装置の構成を示す図。
図4】実施形態の冷蔵庫の機能構成の一部を示すブロック図。
図5】実施形態の特別チルドの制御モードが実行される場合のチルド室および主冷凍室の温度変化を示す図。
図6】実施形態の第1実施例を説明するための図。
図7】実施形態の第2実施例を説明するための図。
図8】実施形態の第3実施例を説明するための図。
図9】実施形態の第4実施例を説明するための図。
図10】実施形態の第5実施例を説明するための図。
図11】実施形態の第6実施例を説明するための図。
図12】実施形態の変形例における冷蔵庫の機能構成の一部を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の冷蔵庫を、図面を参照して説明する。以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。本明細書では、冷蔵庫の正面に立つユーザから冷蔵庫を見た方向を基準に、左右を定義している。また、冷蔵庫から見て冷蔵庫の正面に立つユーザに近い側を「前」、遠い側を「後ろ」と定義している。
【0009】
本明細書で「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。また、本明細書で「XXまたはYY」とは、XXとYYのうちいずれか一方の場合に限定されず、XXとYYの両方を含んでもよい。「XX」および「YY」は、任意の要素(例えば任意の情報)である。
【0010】
本明細書における「平均温度」は、「中心温度」と読み替えられてもよい。「中心温度」は、対象となる温度帯の最大値(または上限値)と最小値(または下限値)とを足して2で割った値である。ただし、「中心温度」は、例えば、後述する低温冷却制御と高温冷却制御との切り替え時に生じ得る外れ値などは除外して算出されてもよい。また、明細書における「時間」は、単なる時の長さだけでなく、「時点」、または、ある時点(例えば、開始時刻)から他の時点(例えば、終了時刻)との間に挟まれた「時間帯」の意味が含まれてもよい。
【0011】
(実施形態)
[1.冷蔵庫の全体構成]
図1から図12を参照し、実施形態の冷蔵庫1について説明する。まず、冷蔵庫1の全体構成について説明する。
【0012】
図1は、冷蔵庫1を示す正面図である。図2は、図1中に示された冷蔵庫1のF2-F2線に沿う断面図である。図1および図2に示すように、冷蔵庫1は、例えば、筐体10、複数の扉11、複数の棚12、複数の容器13、流路形成部品14、冷却部15、および制御基板16を備えている。
【0013】
筐体10は、上壁21、下壁22、左右の側壁23,24、および後壁25を有する。上壁21および下壁22は、略水平に広がっている。左右の側壁23,24は、下壁22の左右の端部から上方に起立し、上壁21の左右の端部に繋がっている。後壁25は、下壁22の後端部から上方に起立し、上壁21の後端部に繋がっている。
【0014】
図2に示すように、筐体10は、例えば、内箱10a、外箱10b、および断熱部10cを有する。内箱10aは、筐体10の内面を形成する部材である。外箱10bは、筐体10の外面を形成する部材である。外箱10bは、内箱10aよりも一回り大きく形成されており、内箱10aの外側に配置されている。内箱10aと外箱10bとの間には、発泡ウレタンのような発泡断熱材を含む断熱部10cが設けられている。
【0015】
筐体10の内部には、複数の貯蔵室27が設けられている。複数の貯蔵室27は、例えば、冷蔵室27A、チルド室27AA、野菜室27B、製氷室27C、小冷凍室27D、および主冷凍室27Eを含む。本実施形態では、最上部に冷蔵室27Aが配置され、冷蔵室27Aの下方に野菜室27Bが配置され、野菜室27Bの下方に製氷室27Cおよび小冷凍室27Dが配置され、製氷室27Cおよび小冷凍室27Dの下方に主冷凍室27Eが配置されている。ただし、貯蔵室27の配置は、上記例に限定されず、例えば冷蔵室27Aの下方に製氷室27Cおよび小冷凍室27Dが配置され、製氷室27Cおよび小冷凍室27Dの下方に主冷凍室27Eが配置され、主冷凍室27Eの下方に野菜室27Bが配置されてもよい。筐体10は、各貯蔵室27の前面側に、各貯蔵室27に対して食材の出し入れを可能にする開口を有する。
【0016】
チルド室27AAは、例えば、冷蔵室27Aの一部の下方に設けられている。チルド室27AAは、例えば、棚や壁などにより少なくとも部分的に冷蔵室27Aに対して区画されている。チルド室27AAは、例えば、冷蔵室27Aよりも下方に位置して冷たい冷気が流入しやすいことや、冷蔵室27Aと比べて後述する冷蔵用冷却器41の近くに位置することで、冷蔵室27Aよりも低い温度に冷却される。本明細書では、チルド室27AAは、「貯蔵部」の一例である。冷蔵室27Aは、「第1貯蔵室」の一例である。製氷室27C、小冷凍室27D、および主冷凍室27Eの各々は、「第2貯蔵室」の一例である。
【0017】
筐体10は、第1仕切部28および第2仕切部29を有する。第1仕切部28および第2仕切部29は、例えば、それぞれ略水平方向に沿う仕切壁である。第1仕切部28は、冷蔵室27A(チルド室27AA)と野菜室27Bとの間に位置し、冷蔵室27A(チルド室27AA)と野菜室27Bとの間を仕切っている。一方で、第2仕切部29は、野菜室27Bと、製氷室27Cおよび小冷凍室27Dとの間に位置し、野菜室27Bと、製氷室27Cおよび小冷凍室27Dとの間を仕切っている。第2仕切部29は、例えば発泡断熱材を含み、断熱性を有する。第1仕切部28は、例えば合成樹脂などで形成されており、第2仕切部29よりも断熱性が小さい。
【0018】
複数の貯蔵室27の開口は、複数の扉11によって開閉可能に閉じられる。複数の扉11は、例えば、冷蔵室27Aの開口を閉じる左右の冷蔵室扉11Aa,11Ab、野菜室27Bの開口を閉じる野菜室扉11B、製氷室27Cの開口を閉じる製氷室扉11C、小冷凍室27Dの開口を閉じる小冷凍室扉11D、および主冷凍室27Eの開口を閉じる主冷凍室扉11Eを含む。
【0019】
複数の棚12は、冷蔵室27Aに設けられている。複数の容器13は、チルド室27AAに設けられたチルド室容器13A、野菜室27Bに設けられた第1および第2の野菜室容器13Ba,13Bb、製氷室27Cに設けられた製氷室容器(不図示)、小冷凍室27Dに設けられた小冷凍室容器13D、および主冷凍室27Eに設けられた第1および第2の主冷凍室容器13Ea,13Ebを含む。
【0020】
流路形成部品14は、筐体10内に配置されている。流路形成部品14は、第1ダクト部品31と、第2ダクト部品32とを含む。
【0021】
第1ダクト部品31は、筐体10の後壁25に沿って設けられ、鉛直方向に延びている。第1ダクト部品31は、例えば、野菜室27Bの下端部の後方から冷蔵室27Aの上端部の後方まで延びている。第1ダクト部品31と筐体10の後壁25との間には、冷気(空気)が流れる通路である第1ダクト空間D1が形成されている。第1ダクト部品31は、複数の冷蔵室冷気吹出口31aと、チルド室冷気吹出口31bと、冷気戻り口31cとを有する。複数の冷蔵室冷気吹出口31aは、チルド室27AAよりも上方において複数の高さ位置に分かれて設けられている。複数の冷蔵室冷気吹出口31aは、冷蔵室27Aに開口している。第1ダクト空間D1を流れる冷気は、冷蔵室冷気吹出口31aから冷蔵室27Aに吹き出される。チルド室冷気吹出口31bは、チルド室27AAに開口している。第1ダクト空間D1を流れる冷気は、チルド室冷気吹出口31bからチルド室27AAに吹き出される。冷気戻り口31cは、野菜室27Bに開口している。野菜室27Bを通った冷気は、冷気戻り口31cから第1ダクト空間D1に戻る。
【0022】
第2ダクト部品32は、筐体10の後壁25に沿って設けられ、鉛直方向に延びている。第2ダクト部品32は、例えば、主冷凍室27Eの後方から製氷室27Cおよび小冷凍室27Dの上端部の後方まで延びている。第2ダクト部品32と筐体10の後壁25との間には、冷気(空気)が流れる通路である第2ダクト空間D2が形成されている。第2ダクト部品32は、冷気吹出口32aと、冷気戻り口32bとを有する。冷気吹出口32aは、製氷室27Cおよび小冷凍室27Dに開口している。第2ダクト空間D2を流れる冷気は、冷気吹出口32aから製氷室27Cおよび小冷凍室27Dに吹き出される。冷気戻り口32bは、主冷凍室27Eに開口している。主冷凍室27Eを通った冷気は、冷気戻り口32bから第2ダクト空間D2に戻る。
【0023】
冷却部(冷却ユニット)15は、複数の貯蔵室27(冷蔵室27A、チルド室27AA、野菜室27B、製氷室27C、小冷凍室27D、および主冷凍室27E)を冷却する。冷却部15は、例えば、第1冷却モジュール40と、第2冷却モジュール45と、圧縮機49と、冷凍サイクル装置60(図3)とを含む。なお本明細書において「冷却する」とは、各貯蔵室27に対応する冷却器(後述する冷蔵用冷却器41または冷凍用冷却器46)に圧縮機49から冷媒が供給されている状態を意味する。ただし、本明細書で「冷却する」とは、後述する冷蔵用ファン43や冷凍用ファン48が駆動される場合に限定されない。例えば、「冷却する」とは、冷蔵用ファン43の駆動が停止された状態で後述する圧縮機49から冷蔵用冷却器41に冷媒が送られ、冷蔵用冷却器41とチルド室27AAとの間の伝熱によりチルド室27AAの温度が低下する場合なども含む。
【0024】
第1冷却モジュール40は、例えば、冷蔵用冷却器41と、冷蔵用ファン43とを含む。冷蔵用冷却器41は、第1ダクト空間D1に配置されている。冷蔵用冷却器41は、後述する圧縮機49により圧縮された冷媒が供給され、第1ダクト空間D1を流れる冷気を冷却する。冷蔵用冷却器41は、例えば、チルド室27AAに対応する高さに配置されている。冷蔵用冷却器41は、「第1冷却器」の一例である。
【0025】
冷蔵用ファン43は、例えば、第1ダクト部品31の冷気戻り口31cに設けられている。冷蔵用ファン43が駆動されると、野菜室27Bの空気が冷気戻り口31cから第1ダクト空間D1内に流入する。第1ダクト空間D1内に流入した空気は、第1ダクト空間D1内を上方に向けて流れ、冷蔵用冷却器41によって冷却される。冷蔵用冷却器41によって冷却された冷気は、複数の冷蔵室冷気吹出口31aから冷蔵室27Aに吹き出され、チルド室冷気吹出口31bからチルド室27AAに吹き出される。冷蔵室27Aおよびチルド室27AAに吹き出された冷気は、冷蔵室27Aおよびチルド室27AAをそれぞれ流れた後、例えば野菜室27Bを経由して、再び冷気戻り口31cに戻る。これにより、冷蔵室27A、チルド室27AA、および野菜室27Bを流れる冷気が冷蔵庫1内で循環され、冷蔵室27A、チルド室27AA、および野菜室27Bの冷却が行われる。
【0026】
一方で、第2冷却モジュール45は、例えば、冷凍用冷却器46と、冷凍用ファン48とを含む。冷凍用冷却器46は、第2ダクト空間D2に配置されている。冷凍用冷却器46は、後述する圧縮機49により圧縮された冷媒が供給され、第2ダクト空間D2を流れる冷気を冷却する。また、第2ダクト空間D2には、冷凍用冷却器46の除霜に用いられる除霜ヒータ46aが配置されている。冷凍用冷却器46は、「第2冷却器」の一例である。
【0027】
冷凍用ファン48は、例えば、第2ダクト部品32の冷気戻り口32bに設けられている。冷凍用ファン48が駆動されると、主冷凍室27Eの空気が冷気戻り口32bから第2ダクト空間D2内に流入する。第2ダクト空間D2内に流入した空気は、第2ダクト空間D2内を上方に向けて流れ、冷凍用冷却器46によって冷却される。冷凍用冷却器46によって冷却された冷気は、冷気吹出口32aから製氷室27C、小冷凍室27D、および主冷凍室27Eに流入する。製氷室27Cおよび小冷凍室27Dに流入した冷気は、製氷室27Cおよび小冷凍室27Dをそれぞれ流れた後、主冷凍室27Eを経由して、再び冷気戻り口32bに戻る。これにより、製氷室27C、小冷凍室27D、および主冷凍室27Eを流れる冷気が冷蔵庫1内で循環され、製氷室27C、小冷凍室27D、および主冷凍室27Eの冷却が行われる。
【0028】
圧縮機49は、例えば、冷蔵庫1の底部の機械室50に設けられている。圧縮機49は、貯蔵室27の冷却に用いられる冷媒ガスを圧縮する。圧縮機49により圧縮された冷媒ガスは、後述する凝縮器61などを経由して、冷蔵用冷却器41および冷凍用冷却器46に送られる。
【0029】
冷蔵用冷却器41の下方には、冷蔵用冷却器41からの除霜水を受ける冷蔵側水受部51が設けられている。冷蔵側水受部51は、排水パイプ52を介して、機械室50内に設けられた除霜水蒸発皿53に接続されている。冷蔵側水受部51で受けられた除霜水は、排水パイプ52を通って除霜水蒸発皿53に導かれて、除霜水蒸発皿53で蒸発する。
【0030】
冷凍用冷却器46の下方には、冷凍用冷却器46からの除霜水を受ける冷凍側水受部54が設けられている。冷凍側水受部54は、排水パイプ52を介して、機械室50内に設けられた除霜水蒸発皿53に接続されている。冷凍側水受部54で受けられた除霜水は、排水パイプ52を通って除霜水蒸発皿53に導かれて、除霜水蒸発皿53で蒸発する。なお、排水パイプ52は、冷蔵側水受部51で受けられた除霜水用と、冷凍側水受部54で受けられた除霜水用とで別々に設けられてもよい。
【0031】
制御基板16は、例えば、筐体10の上壁21に設けられている。本実施形態では、筐体10の上壁21の上面は、下方に向けて窪んだ凹部21aを有する。制御基板16は、凹部21aに配置されている。
【0032】
[2.冷凍サイクル装置]
上述のように構成された冷蔵庫1は、後述する制御部100によって制御される冷凍サイクル装置60によって冷却される。
【0033】
[2.1.冷凍サイクル装置の構成]
図3は、冷凍サイクル装置60の構成を示す図である。冷凍サイクル装置60は、冷媒の流れ順に、圧縮機49と、凝縮器61と、ドライヤ62と、三方弁63と、キャピラリーチューブ64,65と、冷蔵用冷却器41と、冷凍用冷却器46とが環状に接続されることにより構成される。圧縮機49の高圧吐出口には、凝縮器61とドライヤ62とが順に接続パイプ66を介して接続されている。ドライヤ62の吐出側には、三方弁63が接続されている。三方弁63は、ドライヤ62が接続される1つの入口と、2つの出口とを有している。三方弁63の2つの出口のうち、一方の出口には冷蔵側のキャピラリーチューブ64と冷蔵用冷却器41とが順に接続されている。冷蔵用冷却器41は、接続配管である冷蔵側サクションパイプ67を介して圧縮機49に接続されている。
【0034】
三方弁63の2つの出口のうち、他方の出口には、冷凍側のキャピラリーチューブ65と冷凍用冷却器46とが順に接続されている。冷凍用冷却器46は、接続配管である冷凍側サクションパイプ68を介して圧縮機49に接続されている。なお、冷凍用冷却器46と圧縮機49との間には、冷蔵用冷却器41からの冷媒が冷凍用冷却器46側に逆流しないための逆止弁69が設けられている。
【0035】
[2.2.冷凍サイクル装置の冷媒の流れ]
次に、冷凍サイクル装置60の冷媒の流れを説明する。まず、冷凍サイクル装置60を循環する冷媒は、圧縮機49により圧縮されて、高温、高圧のガス状冷媒となり、流路Aを流れる。このガス状冷媒は、凝縮器61により放熱されて、中温、高圧の液状冷媒となる。その後、ドライヤ62を通ることで汚れや水分などの不純物が取り除かれた液状冷媒は、三方弁63により絞り制御されながら、キャピラリーチューブ64(またはキャピラリーチューブ65)に入る。このとき、キャピラリーチューブ64(またはキャピラリーチューブ65)内の中温、高圧の液状冷媒は、冷蔵側サクションパイプ67(または冷凍側サクションパイプ68)内の冷媒と熱交換されながら減圧される。そして、減圧された冷媒は、冷蔵用冷却器41(または冷凍用冷却器46)を通過しながら蒸発することで、冷蔵用冷却器41(または冷凍用冷却器46)が冷却される。
【0036】
その後、低温、低圧のガス状となった冷媒は、冷蔵側サクションパイプ67(または冷凍側サクションパイプ68)に流入する。冷蔵側サクションパイプ67(または冷凍側サクションパイプ68)に流入した直後の冷媒ガスの温度は、-10℃前後と低温である。この冷媒ガスは、冷蔵側サクションパイプ67(または冷凍側サクションパイプ68)を通る間に、キャピラリーチューブ64(またはキャピラリーチューブ65)内の冷媒と熱交換されて、最終的には室温程度にまで昇温される。そして、この冷媒ガスが、圧縮機49に再び吸入されて、冷媒の循環が完了する。
【0037】
上記の冷凍サイクル装置60において、三方弁63は、制御部100(図4参照)によって制御され、流路Bおよび流路Cのうち例えば一方を選択する。流路Bは、冷媒を冷蔵用冷却器41に供給する流路である。流路Cは、冷媒を冷凍用冷却器46に供給する流路である。これら2つの流路B,Cは、合流点Dにおいて合流する。冷媒は、合流点Dから矢印Eの方向に流れて圧縮機49へと戻る。
【0038】
上記説明したように、制御部100は、三方弁63を制御することにより、冷媒の流路を流路Bと流路Cとを交互に切り替える。流路Bに冷媒が流れている時には、冷蔵温度帯の貯蔵室(冷蔵室27A、チルド室27AA、野菜室27B)が冷却される。流路Cに冷媒が流れている時には、冷凍温度帯の貯蔵室(製氷室27C、小冷凍室27D、主冷凍室27E)が冷却される。制御部100は、例えば、20分の間、流路Bに冷媒を流して、冷蔵温度帯の貯蔵室の冷却(いわゆる冷蔵運転)を行い、40分の間、流路Cに冷媒を流して、冷凍温度帯の貯蔵室の冷却(いわゆる冷凍運転)を行う。
【0039】
また、制御部100は、冷凍温度帯の貯蔵室が冷却されている間に、冷蔵用冷却器41の除霜を行い、冷蔵温度帯の貯蔵室が冷却されている間に、冷凍用冷却器46の除霜を行う。例えば、制御部100は、冷蔵用冷却器41の除霜として、冷蔵運転停止中(冷凍運転のみ行っている場合または圧縮機49を停止している場合)において、冷蔵用ファン43を駆動することにより、冷蔵用冷却器41に付着した霜を溶解および蒸発させ、冷蔵温度帯の貯蔵室に湿気を供給する。上記除霜には、冷蔵用ファン43を駆動させることで、冷蔵用冷却器41への着霜を抑制することも含まれる。
【0040】
また、制御部100は、冷凍用冷却器46の除霜として、冷凍運転停止中(冷蔵運転のみ行っている場合または圧縮機49を停止している場合)において、冷凍用ファン48を駆動または除霜ヒータ46aを通電させることにより、冷凍用冷却器46に付着した霜を溶解および蒸発させる。上記除霜には、冷凍用ファン48を駆動または除霜ヒータ46aを通電させることで、冷凍用冷却器46への着霜を抑制することも含まれる。以下、上述した除霜に関する制御を実行することを「除霜運転」と称する。冷蔵用冷却器41および冷凍用冷却器46に対する除霜運転の詳細については、後述する。
【0041】
[3.制御]
[3.1 制御に関する機能構成]
図4は、冷蔵庫1の機能構成の一部を示すブロック図である。制御基板16は、マイコンや時間計測などを行うタイマなどを有したコンピュータで構成される制御部100を備える。制御部100は、冷蔵庫1の全体を制御する。制御部100には、冷蔵用ファン43、冷凍用ファン48、圧縮機49、三方弁63、冷蔵室温度センサ110、チルド室温度センサ111、冷凍室温度センサ112、記憶部116、および操作パネル部150が接続されている。
【0042】
冷蔵室温度センサ110は、冷蔵室27Aに設けられ、冷蔵室27Aの空気温度を検出する。チルド室温度センサ111は、チルド室27AAに設けられ、チルド室27AAの空気温度を検出する。冷凍室温度センサ112は、例えば主冷凍室27Eに設けられ、主冷凍室27Eの空気温度を検出する。本明細書では、冷蔵室27Aの空気温度を「冷蔵室温度」と称し、チルド室27AAの空気温度を「チルド室温度」と称し、主冷凍室27Eの空気温度を「冷凍室温度」と称する場合がある。冷蔵庫1は、チルド室温度センサ111を省略し、冷蔵室温度センサ110の検出結果と、冷蔵室27Aの空気温度とチルド室27AAの空気温度との相関関係とに基づきチルド室27AAの空気温度を推定してもよい。
【0043】
記憶部116は、冷蔵庫1の運転に必要な情報を記憶する。
【0044】
操作パネル部150は、各貯蔵室27の設定温度帯の切り替えや制御モードの切り替え(別の制御モードの開始)を指示するユーザの操作を受け付けるとともに、それらの設定内容や現在の運転状況を表示させる。操作パネル部150は、例えば、いわゆるタッチ式の操作パネル部であり、静電容量式スイッチによって構成されるタッチセンサを含む。なお、後述する制御モードの開始指示などは、操作パネル部150に限らず、ネットワークを通じたユーザの遠隔操作によって入力されてもよい。
【0045】
[3.2 基本運転]
次に、冷蔵庫1の基本運転について説明する。制御部100は、冷蔵庫1の基本運転として、「冷蔵運転」および「冷凍運転」を実行する。「冷蔵運転」とは、三方弁63が切り替えられて圧縮機49から冷蔵用冷却器41に液体冷媒が供給される運転である。なお上述したように、「冷蔵運転」は、冷蔵用ファン43が駆動される場合に限定されず、冷蔵用ファン43が停止している場合や、非常に低速で駆動される場合なども含む。一方で、「冷凍運転」とは、三方弁63が切り替えられて圧縮機49から冷凍用冷却器46に液体冷媒が供給される運転である。
【0046】
制御部100は、例えば、冷蔵運転と冷凍運転とを交互に行うことにより、冷蔵温度帯の貯蔵室27(冷蔵室27A、チルド室27AA、野菜室27B)と、冷凍温度帯の貯蔵室27(製氷室27C、小冷凍室27D、主冷凍室27E)とがそれぞれの設定温度帯に保たれるように、冷却部15を制御する。例えば、制御部100は、第1所定時間(例えば20分)に亘り冷蔵温度帯の貯蔵室27を冷却し、第2所定時間(例えば40分)に亘り冷凍温度帯の貯蔵室27を冷却することを交互に繰り返す。制御部100は、例えば、冷蔵室温度(またはチルド室温度)や冷凍室温度に基づくPID制御(Proportional Integral Differential Control)のようなフィードバック制御を行うことで、温度管理の主対象となる貯蔵室27の空気温度を設定温度帯の上限値と下限値との間に収める。
【0047】
ここで、冷蔵運転が行われる間は、冷蔵温度帯の貯蔵室27(冷蔵室27A、チルド室27AA、野菜室27B)の空気温度は低下するが、冷凍温度帯の貯蔵室27(製氷室27C、小冷凍室27D、主冷凍室27E)の空気温度は上昇する。一方で、冷凍運転が行われる間は、冷凍温度帯の貯蔵室27の空気温度は低下するが、冷蔵温度帯の貯蔵室27の空気温度は上昇する。このため、冷蔵温度帯の貯蔵室27の空気温度と、冷凍温度帯の貯蔵室27の空気温度は、それぞれ鋸歯状に上下することを繰り返す(図5参照)。冷凍サイクル装置60における冷蔵運転および冷凍運転は、後述する低温冷却制御の実施期間と高温冷却制御の実施期間の各々において、交互に繰り返される。
【0048】
[4. 制御モード]
次に、制御部100が実行可能ないくつかの制御モードについて説明する。後述するいくつかの制御モードのうち、「特別チルド」の制御モードは「第1制御モード」の一例であり、「通常チルド」は、「第2制御モード」の一例であるものとする。
【0049】
<通常チルド>
「通常チルド」の制御モードは、例えば、基本運転における冷蔵室27Aの冷却に付随してチルド室27AAの冷却が行われる制御モードである。すなわち、「通常チルド」の制御モードでは、検出された冷蔵室温度と、冷蔵室27Aの設定温度帯とに基づいて冷却部15が制御され、冷蔵室27Aおよびチルド室27AAの冷却が行われる。「通常チルド」の制御モードでは、チルド室温度は、例えば0~1℃を平均温度とする一定の温度帯に維持される。
【0050】
<特別チルド>
「特別チルド」の制御モードでは、チルド室27AAが低温温度帯で冷却される時間と、チルド室27AAが高温温度帯で冷却される時間とが交互に繰り返される。以下このような「特別チルド」について詳しく説明する。「特別チルド」の制御モードは、例えば、冷蔵室温度に代えて、チルド室温度に基づいて冷却部15が制御される。
【0051】
図5は、「特別チルド」の制御モードが実行される場合のチルド室27AAおよび主冷凍室27Eの空気温度の変化を示す図である。図5に示すグラフは、横軸に時間[時]を示し、縦軸にチルド室温度センサ111または冷凍室温度センサ112で検出された空気温度[℃]を示している。制御部100は、「特別チルド」の制御モードでは、チルド室27AAを第1温度帯Taで冷却する低温冷却制御と、チルド室27AAを第1温度帯Taよりも高い第2温度帯Tbで冷却する高温冷却制御とを交互に繰り返す。低温冷却制御は、「第1冷却制御」の一例である。高温冷却制御は、「第2冷却制御」の一例である。ここで、上述した冷蔵運転および冷凍運転における「冷却(冷凍サイクルにおける冷却)」は、冷却器(冷蔵用冷却器41または冷凍用冷却器46に冷媒が供給されることを意味する。これに対し、低温冷却制御および高温冷却制御における「冷却」は、第1温度帯Taまたは第2温度帯Tbに温度を維持するように冷蔵庫を運転することを意味する。このため、「低温冷却制御(第1冷却制御)と、高温冷却制御(第2冷却制御)とを交互に繰り返す」とは、低温冷却制御(第1冷却制御)において複数回の冷蔵運転が行われ、その後に高温冷却制御(第2冷却制御)において複数回の冷蔵運転が行われ、その後に低温冷却制御(第1冷却制御)において複数回の冷蔵運転が行われる場合なども含む。
【0052】
第1温度帯Taの平均温度は、例えば-5℃である。第1温度帯Taの平均温度は、氷点以下の温度であり、0℃未満の温度である。本実施形態では、第1温度帯Taの最大値は、0℃未満の温度である。第1温度帯Taは、チルド室27AAの食品の表面を微凍結させる温度である。第1温度帯Taは、「通常チルド」の温度帯よりも低い温度帯である。第1温度帯Taは、チルド室27AAの食品の真ん中の方まで氷結させるのではなく、表面のみに氷結した層を作ることができる温度帯である。低温冷却制御は、所定の実施時間Sa(例えば2時間)に亘り実施される。
【0053】
第2温度帯Tbは、高温冷却制御時のチルド室27AAの設定温度帯である。第2温度帯Tbの平均温度は、例えば+1℃である。第2温度帯Tbの平均温度は、氷点よりも高い温度であり、0℃以上の温度である。本実施形態では、第2温度帯Tbの最大値は、0℃以上の温度である。第2温度帯Tbは、「通常チルド」の温度帯よりも高い温度帯である。第2温度帯Tbは、チルド室27AAの食品の表面を作られた微凍結の層を融解させることができる温度である。高温冷却制御は、低温冷却制御の実施時間Saよりも長い所定の実施時間Sb(例えば7時間)に亘り実施される。
【0054】
このような「特別チルド」の制御モードによれば、所定の実施時間Sa(例えば2時間)の間、例えば-5℃を平均温度とする低温冷却制御と、所定の実施時間Sb(例えば7時間)の間、例えば+1℃を平均温度とする高温冷却制御とを交互に繰り返すことで、食品表面のみ微凍結することにより、食品の乾燥および酸化を抑制することができる。これにより、通常チルドと比べて食品の鮮度をより長く維持することができる。
【0055】
なお本明細書において「ある温度帯が別の温度帯よりも高い」とは、「ある温度帯の平均温度が、別の温度帯の平均温度よりも高い」という意味であり、「ある温度帯」の一部に「別の温度帯」の一部が重なる場合も含む。同様に、「ある温度帯が別の温度帯よりも低い」とは、「ある温度帯の平均温度が、別の温度帯の平均温度よりも低い」という意味であり、「ある温度帯」の一部に「別の温度帯」の一部が含まれている場合も含む。
【0056】
また、制御部100は、「特別チルド」の制御モードにおける主冷凍室27Eの制御として、図5に示すように、冷凍室温度センサ112によって検出された主冷凍室27Eの空気温度が-18℃以下となるように冷却制御を行う。
【0057】
[5. 除霜運転]
制御部100は、上述した通常チルドおよび特別チルドの制御モードの実行中において、除霜運転に関する所定の実行開始条件が満たされた場合、冷蔵用冷却器41または冷凍用冷却器46に対する除霜運転を実行する。除霜運転の実行開始条件としては、例えば、「前回の除霜が終了した時点から所定時間が経過したこと」、または「冷蔵用冷却器41または冷凍用冷却器46に付着した霜の影響により冷却性能が低下したと推定されたこと」などである。例えば、制御部100は、温度センサ(冷蔵室温度センサ110、チルド室温度センサ111、冷凍室温度センサ112)から冷却制御中の温度を計測し、基準に対する温度の変化傾向のずれ量が閾値以上となった場合に、冷却性能が低下したと推定する。
【0058】
制御部100は、上述した除霜運転の実行開始条件が満たされた場合に、対象の冷却器(冷蔵用冷却器41または冷凍用冷却器46)の除霜を行い、除霜運転の実行開始条件が満たされない場合には、除霜を行わない。例えば、冷蔵用冷却器41の除霜運転を行う場合には、制御部100は、冷蔵用冷却器41の温度を所定温度(例えば3℃)以上に上昇させ、その温度状態を所定時間継続させた後、元の温度に復帰させる復帰制御を行って、除霜運転を終了する。ここで、除霜を行う時間を「除霜時間」と称する。除霜時間は、例えば60分である。また、除霜の開始時点から終了時点までの時間帯を「除霜時間帯」を称する。
【0059】
ここで、「特別チルド」における制御モードでは、低温冷却制御と高温冷却制御とが交互に繰り返されるため、冷蔵用冷却器41または冷凍用冷却器46に関する除霜時間の少なくとも一部が低温冷却制御を実行する時間(以下、「実行時間帯」と称する)と重なり得ることがある。なお本明細書で「重なり得る」とは、除霜運転の実行開始条件が実際に満たされた時点で低温冷却制御が実行されている場合に限定されず、前回の除霜終了からの経過時間や上述の推定などに基づいて予想された将来の除霜運転(例えば次の除霜運転)の除霜時間と、将来の低温冷却制御とが重なると判定された場合などを含む。また、「重なり得る」とは、除霜運転の終了前に低温冷却制御の開始タイミングに到達することが予測されるなどを含む。
【0060】
冷蔵用冷却器41に関する除霜が行われている間は、冷蔵用冷却器41の温度が上昇する。このため、冷蔵用冷却器41に関する除霜時間の少なくとも一部が低温冷却制御の実行時間と重なると、冷温冷却制御においてチルド室温度が十分に低下せず、チルド室27AA内の食材に対して低温温度帯での冷却を行うことが難しくある場合がある。また、冷凍用冷却器46に関する除霜が行われている間であっても、冷蔵庫1内の伝熱によって冷蔵用冷却器41の温度が上昇する。このため、冷凍用冷却器46に関する除霜時間と低温冷却制御の実行時間とが重なる場合も、冷温冷却制御においてチルド室温度が十分に低下せず、チルド室27AA内の食材に対して低温温度帯での冷却を行うことが難しくある場合がある。
【0061】
そこで本実施形態では、制御部100は、冷蔵用冷却器41または冷凍用冷却器46に関する除霜時間の少なくとも一部が低温冷却制御の実行時間と重なり得る場合に、除霜の開始タイミングまたは除霜の終了タイミングを調整する制御を行う。「開始タイミングまたは終了タイミングを調整する」とは、開始タイミングと終了タイミングのうちいずれか一方を調整する場合に限定されず、開始タイミングと終了タイミングの両方を調整する場合を含んでもよい。また、「除霜の開始タイミングまたは終了タイミングを調整する」とは、除霜運転を中断する場合の終了タイミングや除霜運転を再開する場合の開始タイミングを調整することが含まれてもよい。
【0062】
なお、制御部100は、除霜時間の少なくとも一部が低温冷却制御の実行時間と重なり得る場合に代えて、除霜運転の開始タイミングから低温冷却制御が開始されるまでの残り時間が予め定められた時間未満である場合に、除霜運転の開始タイミングまたは除霜運転の終了タイミングを調整してもよい。「予め定められた時間」には、除霜時間が含まれてもよく、その他の時間が含まれてもよい。これにより、例えば、除霜時間が決められていない場合(例えば、温度が所定温度になるまで除霜を継続するような制御を行う場合)であっても、残り時間に応じて除霜運転のタイミングをより適切に調整することができる。また、除霜時間が決められている場合(例えば、除霜時間25分)であっても、予め定められた他の時間(例えば、40分)を用いて除霜運転のタイミングを調整することができる。
【0063】
以下、「特別チルド」の制御モードが実行される状況下における除霜運転のいくつかの実施例を説明する。以下の例では、主にチルド室27AAにおける冷蔵用冷却器41の除霜運転を中心として説明するものとする。なお以下の例における「冷蔵用冷却器41の除霜運転」は、「冷凍用冷却器46の除霜運転」と読み替えられてもよい。また以下の例では、除霜が行われる場合、各図において除霜運転に対応する時間帯でチルド室温度が上昇する。ただし説明の便宜上、除霜に起因するチルド室温度の上昇の図示は省略している。
【0064】
(第1実施例)
図6は、第1実施例を説明するための図である。図6の例では、上述した図5の上段に示したように、時間経過に伴うチルド室27AAの空気温度の変化と、冷却制御の切り替えの様子を示している。また、図6に示す時刻t1~t5は、時刻t1、t2、t3、t4、t5の順に到来する。
【0065】
第1実施例の制御部100は、例えば、除霜運転の開始タイミングからの除霜時間と、低温冷却制御が開始されるまでの残り時間とを比較し、残り時間が除霜時間未満である場合に、除霜運転の終了前に低温冷却制御が開始されると予測する。そして、制御部100は、除霜運転の終了前に低温冷却制御の開始タイミングに到達すると予測した場合に、低温冷却制御の終了後に除霜運転が行われるように、除霜運転の開始タイミングまたは除霜運転の終了タイミングを調整する。
【0066】
図6の例において、制御部100は、高温冷却制御中である時刻t1において、除霜運転の実行開始条件が満たされた場合に、時刻t1から高温冷却制御が終了する時刻t2までの残り時間A1を導出する。例えば、制御部100は、高温冷却制御の実行時間として予め定められた所定時間Sb(例えば、7時間)から、高温冷却制御の開始からタイマによりカウントされた時間を差し引くことで、残り時間A1を導出する。
【0067】
そして、制御部100は、残り時間A1が予め決められた除霜時間未満であるか否かを判定する。残り時間A1が除霜時間以上である場合、制御部100は、実行中の高温冷却制御の間に除霜運転を行う。一方で、残り時間A1が除霜時間未満である場合、制御部100は、現在実行中の高温冷却制御の実行中に除霜運転を行うことを中止し、除霜開始タイミングを次の高温冷却制御の開始時刻t3以降の時刻t4まで遅らせる。
【0068】
例えば、制御部100は、次々回の低温冷却制御の開始時刻t5が到来する前に、次の高温冷却制御の実行中に除霜運転が終了するように時刻t4を設定する。なお、低温冷却制御から高温冷却制御の切り替え時には、第1温度帯Taによりも高温の第2温度帯Tbに温度帯が移行する。このため、時刻t3直後は、冷蔵用冷却器41に圧縮機49から液体冷媒を供給しなくてもよい時間が比較的長く確保される。したがって、制御部100は、除霜運転を時刻t3直後に行うことで、除霜に起因するチルド室27AAの過度の温度上昇を抑制しつつ、適切な除霜を行うことができる。
【0069】
時刻t2の定義の一例は、制御部100によってチルド室27AAの冷却制御に関する設定温度帯が変更される時点である。ただし、時刻t2は、高温冷却制御から低温冷却制御への切り替え時刻と称されてもよい。言い換えると、時刻t2は、チルド室温度が第2温度帯Tbの下限値、または第1温度帯Taの上限値を実際に下回った時点と定義されてもよい。
【0070】
時刻t3の定義の一例は、制御部100によってチルド室27AAの冷却制御に関する設定温度帯が変更される時点である。ただし、時刻t3は、低温冷却制御から高温冷却制御への切り替え時刻と称されてもよい。言い換えると、時刻t3は、チルド室温度が第2温度帯Tbの下限値、または第1温度帯Taの上限値を実際に上回った時点と定義されてもよい。
【0071】
また、第1実施例において、制御部100は、除霜運転の開始タイミングからの除霜時間帯と、低温冷却制御の開始時点から終了時点までの実行時間帯とを比較し、除霜時間帯の少なくとも一部が低温冷却制御の実行時間帯と重なる場合に、除霜時間帯が低温冷却制御の実行時間帯と重ならないように除霜運転の開始タイミングを調整してもよい。除霜時間帯および実行時間帯は、それぞれが予めスケジューリングされた情報でもよく、記憶部116に記憶された実行履歴から取得してもよい。記憶部116には、冷蔵庫1の稼働履歴や過去の除霜運転ごとの実行履歴が記憶される。稼働履歴には、低温冷却制御および高温冷却制御の実行時間や実行間隔などが含まれる。実行履歴には、除霜開始タイミングや除霜終了タイミング、除霜時間、除霜運転時における除霜対象の温度変化などが含まれる。例えば、制御部100は、稼働履歴を参照して、過去の除霜時間の平均などから除霜時間帯を取得したり、実行間隔の情報を取得して、前回の低温冷却制御の終了時間と実行間隔とに基づいて次に実行される低温冷却制御の実行時間帯を取得したりする。
【0072】
上述した第1実施例によれば、除霜運転の実行途中で低温冷却制御に切り替わったり、除霜完了前に除霜運転を強制終了させることなく、より適切なタイミングで除霜運転を実行できる。したがって、低温冷却が不足したり、鮮度保持性能が低下することを抑制することができ、冷蔵庫1のより適切な冷却制御を行うことができる。
【0073】
(第2実施例)
図7は、第2実施例を説明するための図である。図7に示す時刻t2、t3、t5は、図6と同様の時刻を示す。以降の図についても同様とする。第2実施例では、制御部100は、低温冷却制御の実行中に除霜運転の開始タイミングとなる場合に、低温冷却制御の実行中に除霜運転が行われないように除霜運転の開始タイミングを低温冷却制御の終了よりも後に遅らせる。低温冷却制御の終了とは、例えば、制御部100のタイマによりカウントされる所定時間Sa(例えば、2時間)のカウントが終わるタイミングである。
【0074】
例えば、制御部100は、除霜運転の実行開始条件が満たされた時刻t11が低温冷却制御の実行時間帯(時刻t2からt3までの期間)内である場合に、除霜開始タイミングを、低温冷却制御の終了時刻t3よりも後の時刻t12まで遅らせる。なお、制御部100は、次の低温冷却制御の開始時刻t5が到来する前に、次の高温冷却制御の実行中に除霜運転が終了するように時刻t12を設定する。例えば、制御部100は、除霜運転を時刻t3直後に行うことで、第1実施例と同様に、除霜に起因するチルド室27AAの過度の温度上昇を抑制しつつ、適切な除霜を行うことができる。
【0075】
上述した第2実施例によれば、低温冷却制御の実行中に除霜運転が開始されることが抑制される、除霜運転の影響により低温冷却が不足したり、鮮度保持性能が低下することを抑制することができ、冷蔵庫1のより適切な冷却制御を行うことができる。
【0076】
(第3実施例)
図8は、第3実施例を説明するための図である。第3実施例では、制御部100は、高温冷却制御の実行中において、前回の除霜運転の終了タイミングからの経過時間と過去の除霜運転に基づく将来予定される除霜運転の開始タイミングが次の低温冷却制御の実行中となることが予測される場合、または次の除霜運転における除霜時間帯の少なくとも一部が次の低温冷却制御の実行時間帯と重なることが予測される場合に、除霜運転の開始タイミングを早める。
【0077】
例えば、記憶部116には、冷蔵庫1の稼働履歴や過去の除霜運転ごとの実行履歴が記憶される。制御部100は、記憶部116に記憶された実行履歴に基づいて、ある除霜運転における除霜終了タイミングから、次の除霜運転の開始タイミングまでの期間(以下、「除霜間隔」と称する)を取得する。そして、制御部100は、前回の除霜の終了タイミングからの経過時間と、導出された除霜間隔とを比較し、次の除霜運転の開始タイミング(以下、「予測開始タイミング」と称する)を取得する。図8の例では、予測開始タイミングとして時刻t21が示されている。なお図8では、予想開始タイミングである時刻t21は、高温冷却制御の実行中に対応する時刻であるが、低温冷却制御の実行中に対応する時刻であってもよい。
【0078】
また、制御部100は、上述した手法に代えて(または加えて)、チルド室温度センサ111により継続的にチルド室27AAの温度を検出し、検出した温度の変化と、実行履歴に含まれる除霜制御前の時間の温度変化とを比較する。そして、制御部100は、温度変化と、除霜制御前の所定時間における温度変化との類似度が閾値以上である場合に、実行履歴に含まれる開始タイミングに基づいて、除霜運転の予測開始タイミングを導出してもよい。
【0079】
第3実施例では、制御部100は、時刻t21から高温冷却制御が終了する時刻t2までの時間A2を導出する。例えば、制御部100は、高温冷却制御の実行時間として予め定められた所定時間Sb(例えば、7時間)と、除霜運転の予測開始タイミングの時刻とに基づき、時間A2を導出する。
【0080】
そして、制御部100は、予定される除霜時間(例えば、60分)と時間A2とを比較し、高温冷却制御の実行中において、予測開始タイミングの時刻t21を基準にした除霜時間帯の少なくとも一部が次の低温冷却制御の実行時間帯と重なるか否かを判定する。例えば、制御部100は、除霜時間が時間A2以上である場合に除霜運転が次の低温冷却制御の実行時間帯と重なると判定し、除霜時間が時間A2未満である場合に、次の低温冷却制御の実行時間帯と重ならないと判定する。制御部100は、次の低温冷却制御の実行時間帯と重なると判定された場合には、時刻t21を早めた時刻t22から除霜運転を開始する。
【0081】
なお、制御部100は、時刻t22を設定する際には、予定される除霜時間(例えば、60分)に基づき、時刻t2に到来する前に除霜が完了するように、時刻t22を設定する。例えば、制御部100は、時刻t2に対して、除霜時間に所定時間を加算した時間だけ早めた時刻を時刻t22として設定してもよい。
【0082】
また、除霜時間帯が次の低温冷却制御の実行時間帯と重ならないと判定された場合、制御部100は、時刻t21において除霜運転を実行する。
【0083】
また、制御部100は、予想開始タイミングである時刻t21が低温冷却制御の実行中となることが予測される場合に、除霜運転の開始タイミングを早める。この場合、制御部100は、例えば、時刻t21を早めた時刻t22から除霜運転を開始する。
【0084】
上述した第3実施例によれば、次の除霜運転の開始タイミングや除霜時間に基づいて、除霜運転の開始タイミングまたは終了タイミングを調整することで、より適切なタイミングで除霜運転を実行することができる。
【0085】
(第4実施例)
図9は、第4実施例を説明するための図である。第4実施例では、制御部100は、上述した第3実施例と比較すると、除霜運転の開始タイミングを早めるのに代えて、除霜運転の開始タイミングを次の低温冷却制御の終了よりも後に遅らせる点で相違する。すなわち、第4実施例の制御部100は、高温冷却制御の実行中において、前回の除霜運転の終了タイミングからの経過時間と過去の除霜運転に基づく将来予定される除霜運転の開始タイミングが次の低温冷却制御の実行中となることが予測される場合、または次の除霜時間帯の少なくとも一部が次の低温冷却制御の実行時間帯と重なる場合に、除霜運転の開始タイミングを次の低温冷却制御の終了よりも後に遅らせる。予測開始タイミングの時刻t21の導出方法は、例えば第3実施例と同様である。
【0086】
例えば、制御部100は、高温冷却制御の実行中において、予測開始タイミングの時刻t21を基準にした除霜時間帯の少なくとも一部が次の低温冷却制御の実行時間帯と重なるか否かを判定する。そして、制御部100は、次の低温冷却制御の実行時間帯と重なると判定された場合には、除霜運転の開始タイミングを時刻t21から次の低温冷却制御の終了時刻t3よりも後の時刻t23に遅らせる。
【0087】
制御部100は、時刻t23を設定する際には、除霜時間に基づき、次の低温冷却制御の開始時刻t5が到来する前に、次の高温冷却制御の実行中に除霜運転が終了するように時刻t23を設定してもよい。例えば、制御部100は、除霜運転を時刻t3直後に行うことで、第1実施例と同様に、除霜に起因するチルド室27AAの過度の温度上昇を抑制しつつ、適切な除霜を行うことができる。
【0088】
また、除霜時間が次の低温冷却制御の実行時間と重ならないと判定された場合、制御部100は、時刻t21において除霜運転を実行する。
【0089】
上述した第4実施例によれば、次の除霜運転の開始タイミングや除霜時間に基づいて、除霜運転の開始タイミングまたは終了タイミングを調整することで、より適切なタイミングで除霜運転を実行することができる。
【0090】
(第5実施例)
図10は、第5実施例を説明するための図である。第5実施例では、制御部100は、高温冷却制御の実行中に除霜時間を開始する条件が満たされた場合に除霜運転を開始し、除霜運転が終了する前に高温冷却制御から低温冷却制御に切り替わる場合に除霜運転を中断し、低温冷却制御の終了後に除霜運転を再開する。
【0091】
ここで、図10に示す時刻t31の時点で除霜運転の実行開始条件が満たされたものとする。この場合、制御部100は、時刻t31の時点から除霜運転を開始する。また、除霜運転の終了条件(例えば、実行開始時点から60分経過)を満たす前に、低温冷却制御を実行する時刻t2が到来した場合、制御部100は、除霜運転を中断し、低温冷却制御を実行する。更に、制御部100は、低温冷却制御から高温冷却制御に切り替わった時刻t3から除霜運転を再開する。つまり、制御部100は、除霜運転を中断した場合には、低温冷却制御から高温冷却制御への切り替え時に、除霜開始条件を満たしていない場合であっても、除霜制御が実行(再開)される。なお、再開後の除霜運転の終了タイミング(時刻t32)は、中断前の除霜時間に応じて調整されてよい。例えば、制御部100は、中断前の除霜時間と再開後の除霜時間との和が、60分以上となるように再開後の除霜時間の終了タイミング(時刻t32)を設定する。
【0092】
上述した第5実施例によれば、低温冷却制御の開始時に除霜運転が終了していない場合には、除霜運転を中断し、高温冷却制御の開始後に除霜運転を再開することで、除霜運転の影響により低温冷却が不足したり、鮮度保持性能が低下することを抑制することができ、冷蔵庫1のより適切な冷却制御を行うことができる。
【0093】
(第6実施例)
図11は、第6実施例を説明するための図である。図6の例では、図5と同様にチルド室27AAおよび主冷凍室27Eの空気温度の変化を示している。第6実施例の制御部100は、冷凍用冷却器46に関する除霜時間の少なくとも一部が冷蔵用冷却器41による冷却制御の実行時間と重なり得ることを予測される場合に、冷凍用冷却器46に関する除霜の開始タイミングを調整する。
【0094】
図11の例では、時刻t41で、冷凍用冷却器46の除霜運転の実行開始条件が満たされたものする。時刻t41は、チルド室27AAに対する低温冷却制御の実行時間(時刻t2からt3までの期間)内である。したがって、制御部100は、除霜運転の開始タイミングを時刻t3より後の時刻t42になるように調整する。
【0095】
なお、制御部100は、除霜運転の終了タイミングがチルド室27AAに対する低温冷却制御の実行期間に含まれることが予測される場合にも、除霜運転の実行開始タイミングを時刻t42に調整する制御が実行される。
【0096】
上述した第6実施例によれば、冷凍用冷却器46における除霜運転の影響によって、冷蔵用冷却器41の低温冷却が不足したり、鮮度保持性能が低下することを抑制することができる。特に、特に冷凍用冷却器46の除霜には、除霜ヒータ46aが使用される場合があるため、上述した制御を行うことで、冷蔵庫1のより適切な冷却制御を行うことができる。
【0097】
(第7実施例)
第7実施例における制御部100は、第1制御モード(「特別チルド」の制御モード)と第2制御モード(「通常チルド」の制御モード)とによって、除霜運転の終了条件を異ならせて貯蔵部の冷却制御を行う。例えば、制御部100は、チルド室27AAを一定の温度帯で冷却する第2制御モードによる冷却制御の実行中に冷蔵用冷却器41の除霜運転を行う場合において、第1終了条件が満された場合には、冷蔵用冷却器41の除霜運転を終了する。第1終了条件とは、例えば、冷蔵用冷却器41の温度が閾値温度以上になることである。すなわち、第2制御モードが実行されている場合は、制御部100は、冷蔵用冷却器41の温度が閾値温度以上に上昇した場合、除霜運転の実行時間(経過時間)に関係なく、冷蔵用冷却器41の除霜を終了する。冷蔵用冷却器41の温度は、例えば冷蔵用冷却器41に取り付けられた温度センサにより検出される。
【0098】
一方で、制御部100は、第1制御モードによる冷却制御の実行中に冷蔵用冷却器41の除霜運転を行う場合には、冷凍運転(主冷凍室27Eの冷却)が行われている間に上記第1終了条件が満たされた場合であっても、第2終了条件が満たされない場合には、次の冷蔵運転(冷蔵室27A、チルド室27AAの冷却)の開始以前に設定される所定のタイミングまで冷蔵用冷却器41の除霜運転を継続する。第2終了条件は、第1終了条件とは異なる条件であり、例えば、除霜運転が閾値時間(例えば、60分)以上行われたことである。所定のタイミングとは、例えば、予め設定されたタイミング(例えば、第1終了条件が満たされてから所定時間が経過したタイミング)でもよく、第2終了条件が満たされるタイミングでもよい。例えば、所定のタイミングは、次の冷蔵運転の開始タイミングから所定時間手前のタイミングである。
【0099】
ここで、低温冷却制御と高温冷却制御を繰り返す第1制御モード(「特別チルド」の制御モード)は、温度帯が一定の第2制御モード(「通常チルド」の制御モード)と比べて冷蔵用冷却器41に付着する霜の量が多くなりやすい。このため、第1制御モードが実行されている場合は、第2制御モードが実行されている場合と比べて、念入りに除霜を行うことが望ましい場合がある。しかしながら、除霜の完了条件を冷蔵用冷却器41の温度のみで管理すると、霜の付き具合などに起因して除霜運転中に冷蔵用冷却器41の一部のみの温度が上昇し、その温度に基づいて除霜が完了すると、冷蔵用冷却器41の全体で見た場合に除霜が不十分な状態になることがあり得る。そのため上述した第7実施例によれば、制御部100が実行する制御モードに応じて終了条件を異ならせることで、第1制御モードが実行されている場合における冷蔵用冷却器41の除霜をより確実に行うことができる。これにより、冷蔵庫1のより適切な冷却制御を行うことができる。
【0100】
<変形例>
上述した実施形態では、制御部100は、低温温度帯での第1冷却制御と、高温温度帯での第2冷却制御とを交互に繰り返すことで、チルド室27AAの冷却を行ったが、筐体10の内部に設けられる複数の貯蔵室27のうち、チルド室27AA以外の貯蔵室に対して同様の冷却制御を行ってもよい。また、制御部100は、筐体10の内部に設けられる複数の貯蔵室27のうち、予め設定される二以上の貯蔵室(例えば、冷蔵室全体または冷凍室全体)に対して同様の冷却制御を行ってもよい。
【0101】
また、制御部100は、温度帯を異ならせた二つの冷却制御を交互に繰り返すことに代えて(または加えて)、気圧帯の異ならせた二つの冷却制御を交互に繰り返してもよい。
【0102】
図12は、変形例における冷蔵庫1の機能構成の一部を示すブロック図である。図12の例では、上述した図4に示す冷蔵庫1の機能構成と比較して、圧力ポンプ70を有する点で相違する。したがって、以下では、主に制御部100による圧力ポンプ70を用いた制御を中心に説明する。圧力ポンプ70は、例えば、チルド室27AAに隣接して設けられる。圧力ポンプ70は、例えば、制御部100の制御により、チルド室27AA内の気体をチルド室27AAの外部に排出する。また、圧力ポンプ70の駆動が停止された場合、チルド室27AAの周囲の隙間からチルド室27AA内に空気が流入し、チルド室27AAの気圧が上昇する。
【0103】
例えば、制御部100は、第1制御モードにおいて、圧力ポンプ70を用いてチルド室27AA内の気圧を第1気圧帯にして冷却を行う第1冷却制御と、第1貯蔵室内の気圧を第1気圧帯よりも高い気圧帯である第2の気圧帯にして冷却を行う第2冷却制御とを交互に繰り返す制御モードを実行する。なお本明細書において「ある気圧帯が別の気圧帯よりも高い」とは、「ある気圧帯の平均気圧が、別の気圧帯の平均気圧よりも高い」という意味であり、「ある気圧帯」の一部に「別の気圧帯」の一部が重なる場合も含む。同様に、「ある気圧帯が別の気圧帯よりも低い」とは、「ある気圧帯の平均温度が、別の気圧帯の平均温度よりも低い」という意味であり、「ある気圧帯」の一部に「別の気圧帯」の一部が含まれている場合も含む。気圧を変化させることで、氷点を異ならせることができるため、例えば、貯蔵対象や除霜による温度変化に応じて、より適切な冷却制御を行うことができる。
【0104】
また、変形例における制御部100は、冷蔵用冷却器41または冷凍用冷却器46に関する除霜時間の少なくとも一部が第1冷却制御の実行時間と重なり得る場合に、除霜の開始タイミングまたは除霜の終了タイミングを調整する。この場合、制御部100は、上述した実施例1から7のうち何れかを適用して除霜の開始タイミングまたは除霜の終了タイミングを調整する。
【0105】
上述した変形例によれば、気圧帯の異なる二つの冷却制御が交互に実行されるような場合、より適切な冷却制御を実行することができる。
【0106】
以上、いくつかの実施例および変形例について説明したが、各実施例および変形例は上記例に限定されない。各実施例および変形例で説明した概念の一部または全部は、それぞれ適宜組み合わせて実現されてもよい。
【0107】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、冷蔵庫は、貯蔵部を冷却する第1冷却制御と、第1冷却制御と比べて高い温度帯または高い気圧帯のもとで貯蔵部を冷却する第2冷却制御とを交互に繰り返す第1制御モードで冷却部を制御可能な制御部と、を備え、前記制御部は、第1冷却器または第1冷却器とは異なる第2冷却器に関する除霜を行う除霜時間の少なくとも一部が第1冷却制御の実行時間と重なり得る場合に、除霜の開始タイミングまたは除霜の終了タイミングを調整することで、より適切な冷却制御を行うことができる冷蔵庫を提供することができる。
【0108】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0109】
1…冷蔵庫、10…筐体、15…冷却部、27A…冷蔵室、27AA…チルド室(貯蔵部)、27E…主冷凍室、41…冷蔵用冷却器、43…冷蔵用ファン、46…冷凍用冷却器46…冷凍用ファン、49…圧縮機、70…圧力ポンプ、100…制御部
図1
図2
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図10
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図12