(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】光学積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20231221BHJP
H10K 71/10 20230101ALI20231221BHJP
【FI】
G02B5/30
H10K71/10
(21)【出願番号】P 2019231313
(22)【出願日】2019-12-23
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慎也
(72)【発明者】
【氏名】出▲崎▼ 光
【審査官】加藤 範久
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-019172(JP,A)
【文献】特開2018-009150(JP,A)
【文献】特開2019-060964(JP,A)
【文献】国際公開第2015/046399(WO,A1)
【文献】特開2018-116306(JP,A)
【文献】特開2015-084074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
H10K 50/00-99/00
B32B 7/023
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学積層体の製造方法であって、
前記光学積層体は、光学フィルムと、活性エネルギー線硬化性接着剤の硬化物層である硬化接着剤層と、重合性液晶化合物の硬化物層を含む位相差層とをこの順に備え、
前記製造方法は、
前記光学フィルムと、活性エネルギー線硬化性接着剤層と、前記位相差層とを、前記活性エネルギー線硬化性接着剤層と前記位相差層とが接するように積層する工程と、
下記(1)~(2):
(1)30℃以上の温度で2時間以上保持する、
(2)振動の周波数が5Hz以上であり、振動の振幅が0.5mm以上である振動条件下、5℃以上の温度で2時間以上保持する
のいずれか1以上を満たす条件下で保持する工程と、
前記活性エネルギー線硬化性接着剤層を硬化させて前記硬化接着剤層を形成する工程と、
をこの順に含む、光学積層体の製造方法。
【請求項2】
前記光学フィルムが直線偏光子を含む、請求項1に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項3】
前記積層工程において、前記光学フィルムと、活性エネルギー線硬化性接着剤層と、前記位相差層とを、前記直線偏光子と前記活性エネルギー線硬化性接着剤層とが接するように積層する、請求項2に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項4】
光学フィルムと、活性エネルギー線硬化性接着剤の硬化物層である硬化接着剤層と、重合性液晶化合物の硬化物層を含む位相差層とをこの順に備え、
前記硬化接着剤層と前記位相差層とは接しており、
前記位相差層における前記硬化接着剤層側の表面は、下記(a)~(d):
(a)算術平均粗さSaが0.065μm以上0.150μm以下である、
(b)二乗平均平方根高さSqが0.085μm以上である、
(c)界面の展開面積比Sdrが0.2%以上である、
(d)二法平均平方根傾斜Sdqが0.065以上である
の
すべてを満たす、光学積層体。
【請求項5】
前記光学フィルムが直線偏光子を含む、請求項4に記載の光学積層体。
【請求項6】
前記直線偏光子と前記硬化接着剤層とが接している、請求項5に記載の光学積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体の製造方法に関し、光学積層体にも関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置等の画像表示装置では、金属電極による外光反射の防止等を目的として、偏光子(直線偏光子)と位相差層とを組み合わせた光学積層体(楕円偏光板)が用いられることがある。例えば特開2018-017996号公報(特許文献1)には、紫外線硬化性接着剤層を介して偏光子と重合性液晶化合物から形成される位相差層とを積層し、紫外線照射によって該接着剤層を硬化させて、楕円偏光板を製造することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
偏光子を含む光学フィルム等と重合性液晶化合物から形成される位相差層とを活性エネルギー線硬化性接着剤又は粘着剤を用いて接着することにより作製した従来の光学積層体は、曲率半径が徐々に小さくなるように湾曲させていくと、比較的大きな曲率半径の段階であっても、上記位相差層に微細な皺(以下、「皺欠陥」ともいう。)を生じやすい傾向にあった。湾曲可能、さらには折り曲げ可能な画像表示装置などへの適用を考慮した場合、上記光学積層体には、小さな曲率半径で湾曲させても皺欠陥を生じにくいことが求められる。
【0005】
本発明は、光学フィルムと重合性液晶化合物の硬化物層を含む位相差層とを備える光学積層体であって、小さな曲率半径で湾曲させても皺欠陥を生じにくい光学積層体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に示す光学積層体の製造方法及び光学積層体を提供する。
〔1〕 光学積層体の製造方法であって、
前記光学積層体は、光学フィルムと、活性エネルギー線硬化性接着剤の硬化物層である硬化接着剤層と、重合性液晶化合物の硬化物層を含む位相差層とをこの順に備え、
前記製造方法は、
前記光学フィルムと、活性エネルギー線硬化性接着剤層と、前記位相差層とを、前記活性エネルギー線硬化性接着剤層と前記位相差層とが接するように積層する工程と、
下記(1)~(3):
(1)30℃以上の温度で2時間以上保持する、
(2)振動条件下で2時間以上保持する、
(3)48時間以上保持する
のいずれか1以上を満たす条件下で保持する工程と、
前記活性エネルギー線硬化性接着剤層を硬化させて前記硬化接着剤層を形成する工程と、
をこの順に含む、光学積層体の製造方法。
〔2〕 光学積層体の製造方法であって、
前記光学積層体は、光学フィルムと、活性エネルギー線硬化性接着剤の硬化物層である硬化接着剤層と、重合性液晶化合物の硬化物層を含む位相差層とをこの順に備え、
前記製造方法は、
基材フィルムと、これに接して積層される前記位相差層とを含む積層体を用意する工程と、
50m/分以上の剥離速度で前記位相差層から前記基材フィルムを剥離する工程と、
前記基材フィルムを剥離した後の前記位相差層の剥離面に、活性エネルギー線硬化性接着剤層を介して光学フィルムを積層する工程と、
前記活性エネルギー線硬化性接着剤層を硬化させて前記硬化接着剤層を形成する工程と、
をこの順に含む、光学積層体の製造方法。
〔3〕 前記光学フィルムが直線偏光子を含む、〔1〕又は〔2〕に記載の光学積層体の製造方法。
〔4〕 前記積層工程において、前記光学フィルムと、活性エネルギー線硬化性接着剤層と、前記位相差層とを、前記直線偏光子と前記活性エネルギー線硬化性接着剤層とが接するように積層する、〔3〕に記載の光学積層体の製造方法。
〔5〕 光学フィルムと、活性エネルギー線硬化性接着剤の硬化物層である硬化接着剤層と、重合性液晶化合物の硬化物層を含む位相差層とをこの順に備え、
前記硬化接着剤層と前記位相差層とは接しており、
前記位相差層における前記硬化接着剤層側の表面は、下記(a)~(d):
(a)算術平均粗さSaが0.065μm以上である、
(b)二乗平均平方根高さSqが0.085μm以上である、
(c)界面の展開面積比Sdrが0.2%以上である、
(d)二法平均平方根傾斜Sdqが0.065以上である
のいずれか1以上を満たす、光学積層体。
〔6〕 前記光学フィルムが直線偏光子を含む、〔5〕に記載の光学積層体。
〔7〕 前記直線偏光子と前記硬化接着剤層とが接している、〔6〕に記載の光学積層体。
【発明の効果】
【0007】
光学フィルムと重合性液晶化合物の硬化物層を含む位相差層とを備える光学積層体であって、小さな曲率半径で湾曲させても皺欠陥を生じにくい光学積層体及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1における積層工程によって得られる積層体の層構成の一例を示す概略断面図である。
【
図2】光学積層体の層構成の一例を示す概略断面図である。
【
図3】実施形態2における準備工程で用意される積層体の層構成の一例を示す概略断面図である。
【
図4】直線偏光板の層構成の一例を示す概略断面図である。
【
図5】位相差積層体の層構成の一例を示す概略断面図である。
【
図6】光学積層体の層構成の他の例を示す概略断面図である。
【
図7】光学積層体の層構成のさらに他の例を示す概略断面図である。
【
図9】光学積層体における吸収軸及び遅相軸の方向を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<光学積層体の製造方法>
本発明に係る製造方法によって製造される光学積層体は、光学フィルムと、活性エネルギー線硬化性接着剤の硬化物層である硬化接着剤層(以下、単に「硬化接着剤層」ともいう。)と、重合性液晶化合物の硬化物層を含む位相差層(以下、単に「位相差層」ともいう。)とをこの順に備えるものである。
本発明に係る製造方法によって製造される光学積層体は、有機EL表示装置等の画像表示装置に好適に適用することができる。
【0010】
以下、図面を参照して本発明に係る光学積層体の製造方法の実施形態について説明する。以下に示す各実施形態は任意に組み合わされてもよい。図面はいずれも概略図であり、実際の寸法を表していないことがある。
以下に示す各実施形態において、各工程に用いるフィルム又は層として長尺物を用い、各工程を連続的に行ってもよいし、各工程に用いるフィルム又は層として枚葉物を用い、各工程を非連続的に行ってもよい。枚葉物は、長尺物から裁断したものであってよい。
【0011】
[実施形態1]
本実施形態に係る光学積層体の製造方法は、下記の工程を記載順に含む。
光学フィルムと、活性エネルギー線硬化性接着剤層と、重合性液晶化合物の硬化物層を含む位相差層とを、活性エネルギー線硬化性接着剤層と位相差層とが接するように積層する工程〔積層工程〕、
下記(1)~(3):
(1)30℃以上の温度で2時間以上保持する、
(2)振動条件下で2時間以上保持する、
(3)48時間以上保持する
のいずれか1以上を満たす条件下で保持する工程〔保持工程〕、及び
活性エネルギー線硬化性接着剤層を硬化させて硬化接着剤層を形成する工程〔硬化工程〕。
【0012】
〔1〕積層工程
図1は、本実施形態における積層工程によって得られる積層体の層構成の一例を示す概略断面図である。積層工程は、光学フィルム10と位相差層30とを、活性エネルギー線硬化性接着剤層20(以下、単に「接着剤層」ともいう。)を介して積層する工程である。本明細書において活性エネルギー線硬化性接着剤層とは、活性エネルギー線硬化性接着剤で構成される層をいう。活性エネルギー線硬化性接着剤としては、位相差層30及び光学フィルム10を接着する能力を有するものが用いられる。
【0013】
積層工程において、光学フィルム10と接着剤層20と位相差層30とは、接着剤層20と位相差層30とが接するように積層される。また、光学フィルム10と接着剤層20と位相差層30とは、好ましくは、光学フィルム10と接着剤層20とが接するように積層される。
【0014】
積層工程は、光学フィルム10の接着面及び位相差層30の接着面から選択される1以上の面に接着剤層20を形成し、接着剤層20を介して光学フィルム10と位相差層30とを積層することによって実施することができる。接着剤層20は、公知の塗工方法によって接着面に活性エネルギー線硬化性接着剤を塗工することによって形成できる。
積層工程によって得られる積層体において、接着剤層20の厚みは、通常0.5μm以上50μm以下であり、皺欠陥を抑制する観点、光学フィルム10と位相差層30との間の接着性の観点、及び得られる光学積層体の薄型化の観点から、好ましくは1μm以上30μm以下、より好ましくは2μm以上20μm以下である。
【0015】
光学フィルム10の接着面及び位相差層30の接着面から選択される1以上の面には、接着剤層20を形成する前に、あらかじめプラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理のような表面活性化処理を行ってもよい。この表面活性化処理により、光学フィルム10と位相差層30との接着性を高め得る。
【0016】
光学フィルム10は、単層構造のフィルムであってもよいし、多層構造のフィルムであってもよい。光学フィルム10としては、例えば、直線偏光板等を挙げることができる。本明細書において直線偏光板とは、少なくとも直線偏光子を含む光学素子であり、直線偏光子とその少なくとも一方の面に貼合される熱可塑性樹脂フィルム等とを含んでいてもよい。
光学フィルム10が直線偏光板である場合、積層工程によって得られる積層体において、好ましくは、直線偏光板に含まれる直線偏光子と接着剤層20とが接している。
光学フィルム10及び活性エネルギー線硬化性接着剤については、後掲の<光学積層体>の項でより詳細に説明する。
【0017】
位相差層30は、重合性液晶化合物の硬化物層を含み、該層の形成に用いる液晶化合物の種類に応じた光学異方性を示す。以下、この重合性液晶化合物の硬化物層を「位相差発現層」ともいう。
本明細書において位相差層30は、位相差発現層からなっていてもよいし、位相差発現層と配向層とを含んでいてもよい。
【0018】
積層工程において、接着剤層20を介して光学フィルム10と貼合される位相差層30には、積層工程の前にあらかじめ他の1又は2以上の層が積層されていてもよい。例えば、位相差層30と他の位相差層とを含む位相差層積層体をあらかじめ作製しておき、この位相差層積層体を接着剤層20を介して光学フィルム10に貼合してもよい。
位相差層、位相差発現層、配向層及び位相差層積層体等については、後掲の<光学積層体>の項でより詳細に説明する。
【0019】
〔2〕保持工程
保持工程は、積層工程によって得られた積層体を特定の条件下に保持する工程である。保持する際の具体的態様は特に制限されないが、上記特定の条件下に上記積層体を静置することが挙げられる。
【0020】
上記特定の条件下とは、下記(1)~(3):
(1)30℃以上の温度で2時間以上保持する、
(2)振動条件下で2時間以上保持する、
(3)48時間以上保持する
のいずれか1以上を満たす条件下である。
【0021】
上記積層工程及び保持工程を含む本実施形態に係る製造方法によれば、小さな曲率半径で湾曲させても皺欠陥を生じにくい光学積層体を製造することが可能となる。これは、次の理由によるものと推定される。
積層工程によって硬化前の接着剤層20に位相差層30が接触した状態となり、続く保持工程において上記特定の条件下でこの状態が保持される。硬化前の活性エネルギー線硬化性接着剤は、硬化後は位相差層30に対して接着力を発揮することから、位相差層30との間に相互作用が働くと認められる。位相差層30との間に相互作用が働く活性エネルギー線硬化性接着剤が上記特定の条件下で位相差層30に接触する状態が続くと、位相差層30の該接着剤との接触面(
図1に示される表面X)が荒れると考えられる。このような位相差層30の表面の荒れは、接着剤層20との密着力を向上させる。
上記密着力が向上すると、硬化接着剤層(硬化後の接着剤層)と位相差層30とは、光学積層体を湾曲させたときに一体となって変形するため、皺欠陥の発生が抑制されやすくなるものと考えられる。
本実施形態に係る製造方法は、得られる光学積層体において、後述する虹ムラを抑制するうえでも有利である。
【0022】
上記条件(1)における保持温度は30℃以上であり、皺欠陥の発生をより効果的に抑制する観点から、好ましくは35℃以上であり、より好ましくは38℃以上であり、さらに好ましくは40℃以上である。該保持温度は、通常55℃以下であり、保持工程を終了した後に水分の含有量の変化を少なくし得ることから、好ましくは50℃以下である。
【0023】
上記条件(1)における保持時間は、保持温度にも依存するが、通常2時間以上であり、皺欠陥の発生をより効果的に抑制する観点から、好ましくは3時間以上であり、より好ましくは4時間以上であり、さらに好ましくは5時間以上である。該保持時間は、保持温度にも依存するが、通常48時間未満で十分である。なお、該保持時間は48時間以上であってもよいが、この場合、保持工程は、条件(1)及び(3)を満たすこととなる。
【0024】
上記条件(2)における積層体に対する振動付与は、例えば、振動源に積層体を載置することにより行うことができる。振動源としては、一定の周期及び一定の振幅で振動することができるものであれば特に限定されるものではなく、振動発生器を用いてもよいし、例えば一定の回転数で回転することができる電動モーター等の回転機器を用いてもよいし、交流電流を通電することができるトランス等を用いてもよい。
該振動の周波数は、皺欠陥の発生を抑制する観点から、好ましくは5Hz以上であり、より好ましくは10Hz以上である。該振動の周波数は、積層体を構成する各層が互いに部分的に剥離する、いわゆる浮きの発生を抑制する観点から、好ましくは50Hz以下であり、より好ましくは40Hz以下である。
該振動の振幅は、皺欠陥の発生を抑制する観点から、好ましくは0.5mm以上であり、より好ましくは1mm以上である。該振動の振幅は、積層体を構成する各層が互いに部分的に剥離する、いわゆる浮きの発生を抑制する観点から、好ましくは30mm以下であり、より好ましくは10mm以下である。
【0025】
上記条件(2)における保持温度は特に制限されないが、通常5℃以上であり、皺欠陥の発生をより効果的に抑制する観点から、好ましくは10℃以上であり、より好ましくは15℃以上であり、さらに好ましくは20℃以上である。該保持温度は、30℃以上であってもよいが、この場合、保持工程は、条件(1)及び(2)を満たすこととなる。該保持温度は、通常55℃以下であり、保持工程を終了した後にも水分の含有量の変化を少なくし得ることから、好ましくは50℃以下である。
【0026】
上記条件(2)における保持時間は、保持温度にも依存するが、通常2時間以上であり、皺欠陥の発生をより効果的に抑制する観点から、好ましくは3時間以上であり、より好ましくは4時間以上であり、さらに好ましくは5時間以上である。該保持時間は、保持温度にも依存するが、通常48時間未満で十分である。なお、該保持時間は48時間以上であってもよいが、この場合、保持工程は、条件(2)及び(3)を満たすこととなる。
【0027】
上記条件(3)における保持温度は特に制限されないが、通常5℃以上であり、皺欠陥の発生をより効果的に抑制する観点から、好ましくは10℃以上であり、より好ましくは15℃以上であり、さらに好ましくは20℃以上である。該保持温度は、30℃以上であってもよいが、この場合、保持工程は、条件(1)及び(3)を満たすこととなる。該保持温度は、通常55℃以下であり、保持工程を終了した後にも水分の含有量の変化を少なくし得ること観点から、好ましくは50℃以下である。
【0028】
上記条件(3)における保持時間は、保持温度にも依存するが、通常48時間以上であり、皺欠陥の発生をより効果的に抑制する観点から、好ましくは54時間以上であり、より好ましくは66時間以上であり、さらに好ましくは72時間以上である。該保持時間は、保持温度にも依存するが、通常120時間以下で十分である。
【0029】
上記(1)~(3)のいずれの条件においても、積層体が保持される環境の相対湿度は、例えば20%RH以上80%RH以下であり、好ましくは30%RH以上70%RH以下である。
【0030】
〔3〕硬化工程
図2を参照して、本工程において、活性エネルギー線の照射により接着剤層20を硬化させて硬化接着剤層20aを形成することによって光学積層体を得ることができる。照射する活性エネルギー線の種類は、接着剤層20を構成する活性エネルギー線硬化性接着剤に含まれる硬化性成分の感応波長等に応じて適切に選択される。活性エネルギー線は、好ましくは紫外線である。
【0031】
[実施形態2]
本実施形態に係る光学積層体の製造方法は、下記の工程を記載順に含む。
基材フィルムと、これに接して積層される位相差層とを含む積層体を用意する工程〔準備工程〕、
50m/分以上の剥離速度で位相差層から基材フィルムを剥離する工程〔剥離工程〕、
基材フィルムを剥離した後の位相差層の剥離面に、活性エネルギー線硬化性接着剤層を介して光学フィルムを積層する工程〔積層工程〕、
活性エネルギー線硬化性接着剤層を硬化させて硬化接着剤層を形成する工程〔硬化工程〕。
【0032】
〔1〕準備工程
上述のように、位相差層30は位相差発現層(重合性液晶化合物の硬化物層)を含むものであり、位相差発現層からなっていてもよいし、位相差発現層と配向層とを含んでいてもよい。したがって、本工程において用意される、基材フィルムと、これに接して積層される位相差層とを含む積層体は、例えば、基材フィルム/配向層/位相差発現層の層構成を有していてもよいし、基材フィルム/位相差発現層の層構成を有していてもよい。
【0033】
図3は、本実施形態における準備工程で用意される積層体の層構成の一例を示す概略断面図である。
図3に示される積層体は、基材フィルム41/配向層32/位相差発現層31の層構成を有しており、位相差層30が位相差発現層31と配向層32とからなる例である。本工程において用意される積層体として、一つの市販品又は複数の市販品の組み合わせが用いられてもよい。
【0034】
本工程において用意される積層体は、基材フィルムと、これに接して積層される位相差層とを含んでいればよく、
図3の例に限定されるものではない。該積層体には、基材フィルム41及び位相差層30以外の他の1又は2以上の層が積層されていてもよい。例えば、基材フィルム41と位相差層30と他の位相差層とを含む位相差層積層体が本工程で用意されてもよい。
基材フィルム、位相差層、位相差発現層、配向層及び位相差層積層体等については、後掲の<光学積層体>の項でより詳細に説明する。
【0035】
〔2〕剥離工程
本工程は、50m/分以上の剥離速度で位相差層30から基材フィルム41を剥離する工程である。
剥離速度は、皺欠陥の発生をより効果的に抑制する観点から、好ましくは60m/分以上であり、より好ましくは70m/分以上であり、さらに好ましくは80m/分以上であり、特に好ましくは90m/分以上である。剥離速度は、通常150m/分以下であり、基材フィルムの破断防止の観点から、好ましくは120m/分以下である。
【0036】
基材フィルム41が剥離される積層体に対する基材フィルム41の剥離角度は、通常90度より大きく180度以下である。基材フィルム41の剥離をより容易にする観点から、剥離角度は、好ましくは120度以上180度以下である。
剥離角度とは、基材フィルム41が剥離されるときの積層体の面方向又は搬送方向と、剥離される基材フィルム41の面方向又は搬送方向とがなす角度をいう。
【0037】
準備工程で用意される積層体が基材フィルム41と配向層32と位相差発現層31とを有する場合において、基材フィルム41の剥離の際、基材フィルム41とともに配向層32が剥離される場合は、本工程により、積層体の表面に位相差発現層31の表面が露出する。配向層32が剥離されずに積層体側に残存する場合には、積層体の表面に配向層32の表面が露出する。
準備工程で用意される積層体が基材フィルム41と位相差発現層31とを有し、配向層32を有しない場合においては、本工程により、積層体の表面に位相差発現層31の表面が露出する。
【0038】
〔3〕積層工程
本工程は、基材フィルム41を剥離した後の位相差層30の剥離面(露出面)に、活性エネルギー線硬化性接着剤層(接着剤層)20を介して光学フィルム10を積層する工程である。本工程により、
図1に示される層構成と同様の層構成を得る。上記剥離面は、配向層32の表面又は位相差発現層31の表面であり得る。活性エネルギー線硬化性接着剤としては、位相差層30及び光学フィルム10を接着する能力を有するものが用いられる。
【0039】
積層工程において、光学フィルム10と接着剤層20と位相差層30とは、接着剤層20と位相差層30とが接するように積層される。また、光学フィルム10と接着剤層20と位相差層30とは、好ましくは、光学フィルム10と接着剤層20とが接するように積層される。
【0040】
積層工程は、光学フィルム10の接着面及び位相差層30の接着面(剥離面)から選択される1以上の面に接着剤層20を形成し、接着剤層20を介して光学フィルム10と位相差層30とを積層することによって実施することができる。接着剤層20は、公知の塗工方法によって接着面に活性エネルギー線硬化性接着剤を塗工することによって形成できる。
積層工程によって得られる積層体において、接着剤層20の厚みは、通常0.5μm以上50μm以下であり、皺欠陥を抑制する観点、光学フィルム10と位相差層30との間の接着性の観点、及び得られる光学積層体の薄型化の観点から、好ましくは1μm以上30μm以下、より好ましくは2μm以上20μm以下である。
【0041】
光学フィルム10の接着面及び位相差層30の接着面(剥離面)から選択される1以上の面には、接着剤層20を形成する前に、あらかじめプラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理のような表面活性化処理を行ってもよい。この表面活性化処理により、光学フィルム10と位相差層30との接着性を高め得る。
【0042】
光学フィルム10は、単層構造のフィルムであってもよいし、多層構造のフィルムであってもよい。光学フィルム10としては、例えば、直線偏光板等を挙げることができる。 光学フィルム10が直線偏光板である場合、積層工程によって得られる積層体において、好ましくは、直線偏光板に含まれる直線偏光子と接着剤層20とが接している。
光学フィルム10及び活性エネルギー線硬化性接着剤については、後掲の<光学積層体>の項でより詳細に説明する。
【0043】
上記剥離工程及び積層工程を含む本実施形態に係る製造方法によれば、小さな曲率半径で湾曲させても皺欠陥を生じにくい光学積層体を製造することが可能となる。これは、次の理由によるものと推定される。
剥離工程において50m/分以上の剥離速度で位相差層30から基材フィルム41を剥離すると、剥離後の位相差層30の表面(剥離面)が荒れる。このような位相差層30の表面の荒れは、続く積層工程において該表面に接着剤層20を積層・接触させたときに接着剤層20との密着力を向上させる。
上記密着力が向上すると、硬化接着剤層(硬化後の接着剤層)と位相差層30とは、光学積層体を湾曲させたときに一体となって変形するため、皺欠陥の発生が抑制されやすくなるものと考えられる。
本実施形態に係る製造方法は、得られる光学積層体において、後述する虹ムラを抑制するうえでも有利である。
【0044】
本実施形態では、位相差層30の表面を粗面化するための手段として、基材フィルム41の剥離速度を制御している。粗面化するための他の手段としては、例えば、あらかじめ少なくとも一方の面が粗面化されている基材フィルムを用い、この粗面化された面に位相差層30を形成して、準備工程において用意される積層体としてもよい。
基材フィルム41の表面の粗面化は、該表面を摩擦する方法等により実施できる。
【0045】
〔4〕硬化工程
本工程において、活性エネルギー線の照射により接着剤層20を硬化させて硬化接着剤層20aを形成することによって、
図2と同様の層構成を有する光学積層体を得ることができる。本工程については、実施形態1の硬化工程についての記述が引用される。
【0046】
<光学積層体>
図2を参照して、本発明に係る光学積層体(以下、単に「光学積層体」ともいう。)は、光学フィルム10と、活性エネルギー線硬化性接着剤の硬化物層である硬化接着剤層20aと、位相差発現層(重合性液晶化合物の硬化物層)を含む位相差層30とをこの順に備える。
光学積層体は、有機EL表示装置等の画像表示装置に好適に適用することができる。
【0047】
光学積層体において、硬化接着剤層20aと位相差層30とは接している。光学積層体において、好ましくは、光学フィルム10と硬化接着剤層20aとは接している。
【0048】
光学積層体は、位相差層30における硬化接着剤層20a側の表面(
図2における表面Xa)が、下記(a)~(d):
(a)算術平均粗さSaが0.065μm以上である、
(b)二乗平均平方根高さSqが0.085μm以上である、
(c)界面の展開面積比Sdrが0.2%以上である、
(d)二法平均平方根傾斜Sdqが0.065以上である
のいずれか1以上を満たす。
【0049】
算術平均粗さSa、二乗平均平方根高さSq、界面の展開面積比Sdr及び二法平均平方根傾斜Sdqはいずれも面の粗さを表す指標であり、ISO 25178に準拠して、[実施例]の項に記載の方法によって測定される。
【0050】
本発明に係る光学積層体は、上記(a)~(d)のいずれか1以上を満たしているため、小さな曲率半径で湾曲させても皺欠陥を生じにくい。これは、位相差層30における硬化接着剤層20a側の表面の粗さにより硬化接着剤層20aと位相差層30との密着力が向上しており、したがって、硬化接着剤層20と位相差層30とは、光学積層体を湾曲させたときに一体となって変形するためであると考えられる。
【0051】
また、上記(a)~(d)のいずれか1以上を満たす光学積層体は、その光学フィルム10側の表面からみたときの反射光において虹ムラを抑制できる点で有利である。虹ムラを抑制できることは、光学積層体を有機EL表示装置等の画像表示装置に適用したときの該装置の視認性を向上させるうえで有利である。
上記(a)~(d)のいずれか1以上を満たす光学積層体が虹ムラを抑制できるのは、光学積層体の内部に入射した光が各層の界面で反射することによって生じる反射光同士の干渉を抑制できるためであると考えられる。
【0052】
上記(a)~(d)のいずれか1以上を満たす光学積層体は、上記<光学積層体の製造方法>の項に記載される本発明に係る製造方法によって好適に製造することができる。
【0053】
皺欠陥の発生及び虹ムラをより効果的に抑制する観点から、光学積層体は、好ましくは、上記(a)~(d)のいずれか2以上を満たし、より好ましくは、上記(a)~(d)のいずれか3以上を満たし、さらに好ましくは、上記(a)~(d)のすべてを満たす。
【0054】
上記(a)における算術平均粗さSaは、皺欠陥の発生及び虹ムラをより効果的に抑制する観点から、好ましくは0.067μm以上であり、より好ましくは0.070μm以上である。算術平均粗さSaは、通常0.200μm以下であり、光学積層体の内部ヘイズを小さくして透明性を確保し、光線透過率を保持する観点から、好ましくは0.150μm以下である。
【0055】
上記(b)における二乗平均平方根高さSqは、皺欠陥の発生及び虹ムラをより効果的に抑制する観点から、好ましくは0.087μm以上であり、より好ましくは0.090μm以上である。二乗平均平方根高さSqは、通常0.250μm以下であり、光学積層体の内部ヘイズを小さくして透明性を確保し、光線透過率を保持する観点から、好ましくは0.200μm以下である。
【0056】
上記(c)における界面の展開面積比Sdrは、皺欠陥の発生及び虹ムラをより効果的に抑制する観点から、好ましくは0.25%以上であり、より好ましくは0.3%以上である。界面の展開面積比Sdrは、通常1.20%以下であり、光学積層体の内部ヘイズを小さくして透明性を確保し、光線透過率を保持する観点から、好ましくは1.10%以下である。
【0057】
上記(d)における二法平均平方根傾斜Sdqは、皺欠陥の発生及び虹ムラをより効果的に抑制する観点から、好ましくは0.070以上であり、より好ましくは0.072以上である。二法平均平方根傾斜Sdqは、通常0.180以下であり、光学積層体の内部ヘイズを小さくして透明性を確保し、光線透過率を保持する観点から、好ましくは0.160以下である。
【0058】
以下、光学積層体を構成する又は構成し得る要素について説明する。
〔1〕光学フィルム
上述のように、光学フィルム10は、単層構造のフィルムであってもよいし、多層構造のフィルムであってもよい。
光学フィルム10としては、例えば、直線偏光板、直線偏光子等を挙げることができる。
【0059】
〔2〕直線偏光板
直線偏光板は、少なくとも直線偏光子を含む光学素子であり、直線偏光子の少なくとも一方の面に貼合される熱可塑性樹脂フィルム等をさらに含んでいてもよい。直線偏光子とは、無偏光の光を入射させたとき、吸収軸に直交する振動面をもつ直線偏光を透過させる性質を有する光学素子をいう。
【0060】
直線偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール樹脂フィルムを配向させたものに、ヨウ素等の二色性色素を吸着配向させたものであってよい。直線偏光子は、単層のポリビニルアルコール樹脂フィルム(ポリビニルアルコール樹脂フィルムに含まれるポリビニルアルコール分子が配向したもの)に二色性色素が吸着配向したものであってもよく、基材フィルム上に二色性色素が吸着配向したポリビニルアルコール樹脂層を設けた二層以上の積層フィルムであってもよい。このような直線偏光子は、本技術分野で公知の種々の方法によって製造することができる。
単層のポリビニルアルコール樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向してなる直線偏光子の厚みは、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下である。
【0061】
直線偏光子は、重合性液晶化合物に二色性色素を配向させ、重合性液晶化合物を重合させた硬化膜であってもよい。該直線偏光子は、通常、熱可塑性樹脂フィルム等からなる基材フィルム、又はこの上に設けられた配向層上に、重合性液晶化合物及び二色性色素を含む組成物を塗工して乾燥し、紫外線等の活性エネルギー線照射により、塗工膜に含まれる重合性液晶化合物を重合させて硬化させることで得ることができる。このようにして得られた基材フィルムと直線偏光子(硬化膜)との積層体は、直線偏光板として用いることができる。
【0062】
上記の硬化膜を形成するための基材フィルムの厚みは特に限定されないが、一般には強度や取扱い性等の作業性の観点から、好ましくは1μm以上300μm以下であり、より好ましくは10μm以上200μm以下であり、さらに好ましくは30μm以上120μm以下である。
【0063】
直線偏光板において、直線偏光子の少なくとも一方の面に貼合される熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ノルボルネン系ポリマー等の環状ポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース及びセルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル系樹脂;ポリビニルアルコール及びポリ酢酸ビニル等のビニルアルコール系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルケトン系樹脂;ポリフェニレンスルフィド系樹脂;ポリフェニレンオキシド系樹脂、及びこれらの混合物、共重合物等から構成される樹脂フィルムが挙げられる。
上記樹脂のうち、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロースエステル系樹脂及び(メタ)アクリル酸系樹脂のいずれか又はこれらの混合物を用いることが好ましい。
なお、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種」を意味する。
【0064】
熱可塑性樹脂フィルムは、樹脂材料を1種又は2種以上を混合した単層であってもよく、2層以上の多層構造を有していてもよい。多層構造を有する場合、各層を構成する樹脂は互いに同じであってもよく異なっていてもよい。
熱可塑性樹脂フィルムには、任意の添加剤が添加されていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、及び着色剤等が挙げられる。
【0065】
熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、光学積層体の薄型化及びフレキシブル性の観点及び光学積層体の耐久性の観点から、好ましくは2μm以上300μm以下であり、より好ましくは5μm以上200μm以下であり、さらに好ましくは5μm以上100μm以下であり、なおさらに好ましくは5μm以上50μm以下であり、特に好ましくは5μm以上30μm以下である。
【0066】
熱可塑性樹脂フィルムは、接着層を介して直線偏光子に積層することができる。
接着層を形成する接着剤としては、例えば、水系接着剤、活性エネルギー線硬化性接着剤等が挙げられる。
水系接着剤としては、例えばポリビニルアルコール系樹脂水溶液、水系二液型ウレタン系エマルジョン接着剤等を挙げることができる。
活性エネルギー線硬化性接着剤は、紫外線等の活性エネルギー線を照射することによって硬化する接着剤であり、例えば重合性化合物及び光重合性開始剤を含むもの、光反応性樹脂を含むもの、バインダー樹脂及び光反応性架橋剤を含むもの等を挙げることができる。上記重合性化合物としては、光硬化性エポキシ系モノマー、光硬化性(メタ)アクリル系モノマー、光硬化性ウレタン系モノマー等の光重合性モノマーや、これらモノマーに由来するオリゴマー等を挙げることができる。上記光重合開始剤としては、紫外線等の活性エネルギー線を照射して中性ラジカル、アニオンラジカル、カチオンラジカルといった活性種を発生する物質を含むものを挙げることができる。
【0067】
直線偏光板は、上記以外の他のフィルム又は層をさらに含むことができる。他のフィルム又は層としては、直線偏光板の表面に積層されるプロテクトフィルム;直線偏光板の適宜の位置に配置される反射フィルム、半透過型反射フィルム、光学補償フィルム、防眩機能付きフィルム、位相差フィルム等が挙げられる。
【0068】
直線偏光板は、好ましくは、
図4に示されるような、直線偏光子の一方の面のみに熱可塑性樹脂フィルムを貼合した片保護偏光板である。直線偏光板が片保護偏光板であると、その厚みは薄いものであるので、結果として、光学積層体の厚みを薄くできる。そのため、例えば、本発明の光学積層体を備えた有機EL表示装置は、屈曲や折曲げ、巻回し等が可能なフレキシブル有機EL表示装置として適用しやすくなる。
光学フィルム10が片保護偏光板である場合、光学積層体において直線偏光子は、硬化接着剤層20aと接していることが好ましい。
【0069】
〔3〕硬化接着剤層
硬化接着剤層20aは、活性エネルギー線硬化性接着剤の硬化物層である。硬化接着剤層20aは、上述の積層工程において形成される活性エネルギー線硬化性接着剤層(接着剤層)20を硬化工程において硬化させることによって形成することができる。
該活性エネルギー線硬化性接着剤としては、上記〔2〕で述べた活性エネルギー線硬化性接着剤と同様のものを用いることができる。
【0070】
光学積層体において、硬化接着剤層20aの厚みは、通常0.5μm以上50μm以下であり、皺欠陥を抑制する観点、光学フィルム10と位相差層30との間の接着性の観点、及び得られる光学積層体の薄型化の観点から、好ましくは1μm以上30μm以下、より好ましくは2μm以上20μm以下である。
【0071】
〔4〕位相差層
位相差層30は、重合性液晶化合物の硬化物層である位相差発現層31を含み、配向層32をさらに含んでいてもよい。
【0072】
位相差発現層31は、重合性液晶化合物を用いて形成したものであり、この重合性液晶化合物としては公知のものを使用できる。重合性液晶化合物の種類は特に限定されず、棒状液晶化合物、円盤状液晶化合物、及びこれらの混合物を用いることができる。逆波長分散性の1/4波長板を形成するための重合性液晶化合物は棒状液晶化合物、例えば、特開2011-207765号公報に記載の重合性液晶化合物であることが好ましい。
【0073】
重合性液晶化合物及び溶剤、並びに必要に応じて各種添加剤を含む位相差発現層形成用組成物を、配向層32上に塗布して塗膜を形成し、この塗膜を硬化させることによって、重合性液晶化合物の硬化物層である位相差発現層31を形成することができる。あるいは、基材フィルム上に位相差発現層形成用組成物を直接塗布して塗膜を形成し、この塗膜を基材フィルムとともに延伸することによって位相差発現層31を形成してもよい。
位相差発現層31の厚みは、通常0.1μm以上10μm以下であり、好ましくは0.2μm以上5μm以下である。
【0074】
位相差発現層形成用組成物は、上記した重合性液晶化合物及び溶剤の他に、重合開始剤、反応性添加剤、レベリング剤、重合禁止剤等を含んでいてもよい。重合性液晶化合物、溶剤、重合開始剤、反応性添加剤、レベリング剤、重合禁止剤等は、公知のものを適宜用いることができる。
位相差発現層形成用組成物及び位相差発現層に含まれていてもよいレベリング剤としては、例えば、有機変性シリコーンオイルを主成分とするレベリング剤、ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤、パーフルオロアルキル等のフッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤等を挙げることができる。主成分とは、レベリング剤に含まれる全成分のうち、最も配合量が多い成分をいう。位相差発現層形成用組成物におけるレベリング剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上5質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上3質量部以下である。
【0075】
位相差層30に含まれていてもよい配向層32は、その上に形成される液晶層に含まれる重合性液晶化合物を所望の方向に液晶配向させる配向規制力を有する層である。配向層32としては、配向性ポリマーで形成された配向性ポリマー層、光配向ポリマーで形成された光配向性ポリマー層、層表面に凹凸パターンや複数のグルブ(溝)を有するグルブ配向層を挙げることができる。
配向層32の厚みは、通常10nm以上500nm以下であり、好ましくは10nm以上200nm以下である。
【0076】
配向性ポリマー層は、配向性ポリマーを溶剤に溶解した組成物を基材フィルム41に塗布して溶剤を除去し、必要に応じてラビング処理を施して形成することができる。この場合、配向規制力は、配向性ポリマーの表面状態やラビング条件によって任意に調整することが可能である。
【0077】
光配向性ポリマー層は、光反応性基を有するポリマー又はモノマーと溶剤とを含む組成物を基材フィルム41に塗布し、偏光を照射することによって形成することができる。この場合、配向規制力は、光配向性ポリマー層では、光配向性ポリマーに対する偏光照射条件等によって任意に調整することが可能である。
【0078】
グルブ配向層は、例えば感光性ポリイミド膜表面にパターン形状のスリットを有する露光用マスクを介して露光、現像等を行って凹凸パターンを形成する方法、表面に溝を有する板状の原盤に、活性エネルギー線硬化性樹脂の未硬化の層を形成し、この層を基材フィルム41に転写して硬化する方法、基材フィルム41に活性エネルギー線硬化性樹脂の未硬化の層を形成し、この層に、凹凸を有するロール状の原盤を押し当てる等により凹凸を形成して硬化させる方法等によって形成することができる。
【0079】
基材フィルム41としては、上述の熱可塑性樹脂フィルムと同様の構成を有する樹脂フィルムを用いることができる。
基材フィルム41の厚みは特に限定されないが、一般には強度や取扱い性等の作業性の観点から、好ましくは1μm以上300μm以下であり、より好ましくは10μm以上200μm以下であり、さらに好ましくは30μm以上120μm以下である。
基材フィルム41には、任意の添加剤が添加されていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、及び着色剤等が挙げられる。
【0080】
〔5〕位相差層積層体
上述のように、光学積層体の製造方法に係る第1実施形態の積層工程及び第2実施形態の準備工程では、位相差層30として、位相差層30と他の位相差層とを含む位相差層積層体とを含む位相差層積層体を用いてもよい。
【0081】
図5は、位相差積層体の層構成の一例を示す概略断面図である。
図5に示される位相差積層体は、基材フィルム41、配向層32、位相差発現層31、接着層61、位相差発現層71、配向層72、基材フィルム42をこの順に含む。
図5に示される位相差積層体において、位相差発現層31及び配向層32が、光学積層体において光学フィルム10と硬化接着剤層20aを介して貼合される位相差層30となり得る。
図5に示される位相差積層体において、配向層32及び配向層72の少なくともいずれか一方を有していなくてもよい。
【0082】
図5に示される位相差積層体において、位相差発現層31と位相差発現層71との組み合わせは、例えば、1/2波長板と1/4波長板との組み合わせ、又は、逆波長分散性の1/4波長板とポジティブCプレートとの組み合わせである。
1/2波長板と1/4波長板との組み合わせである場合において、光学積層体において光学フィルム10により近い側に配置される位相差発現層31が1/2波長板であることが好ましい。
【0083】
光学積層体の製造方法に係る第1実施形態又は第2実施形態の積層工程において
図5に示される位相差積層体が使用される場合、該位相差積層体は、基材フィルム41が剥離された後に、接着剤層20を介して光学フィルム10に積層される。
図6は、光学積層体の製造方法に係る第1実施形態又は第2実施形態の積層工程において
図5に示される位相差積層体を使用したときに製造される光学積層体の層構成の一例を示す概略断面図である。
図6に示される光学積層体において、配向層32及び配向層72の少なくともいずれか一方を有していなくてもよい。
【0084】
図5に示される位相差積層体は、例えば、基材フィルム41/配向層32/位相差発現層31の層構成を有する積層体と、基材フィルム42/配向層72/位相差発現層71の層構成を有する積層体とを作製又は用意し、これらの積層体を接着層61を介して貼合することによって製造することができる。
【0085】
接着層61を形成する接着剤としては、例えば、水系接着剤、活性エネルギー線硬化性接着剤等が挙げられる。これらの接着剤としては、直線偏光子と熱可塑性樹脂フィルムとの貼合に用いることができる上述の接着剤と同様のものを用いることができる。
接着層61として、粘着剤層を用いることもできる。粘着剤層を形成する粘着剤組成物としては、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂等をベースポリマーとし、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物等の架橋剤を加えた組成物を挙げることができる。
【0086】
接着層61は、皺欠陥の発生をより効果的に抑制する観点から、好ましくは、紫外線硬化性接着剤等の活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化物層である。
【0087】
〔6〕粘着剤層
光学積層体は、粘着剤層をさらに含むことができる。
図7は、粘着剤層80を有する光学積層体の層構成の一例を示す概略断面図である。
図7に示される光学積層体は、例えば、
図6に示される光学積層体から基材フィルム42を剥離し、その剥離面に粘着剤層を積層することによって製造することができる。粘着剤層の外側の面にセパレートフィルムを積層してもよい。
【実施例】
【0088】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0089】
<実施例1>
(1)直線偏光板の作製
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素を吸着・配向させてなる一軸延伸フィルムである直線偏光子〔厚み:8μm〕を準備した。
上記直線偏光子の一方の面にポリビニルアルコール系接着剤を介して第1熱可塑性樹脂フィルムを積層するとともに、上記直線偏光子の他方の面に第2熱可塑性樹脂フィルムを積層し、一対の貼合ロール間に通して、第1熱可塑性樹脂フィルム/ポリビニルアルコール系接着剤層/直線偏光子/第2熱可塑性樹脂フィルムの層構成を有する積層体を得た。直線偏光子と第2熱可塑性樹脂フィルムとの間には接着剤は介在しておらず、第2熱可塑性樹脂フィルムは、剥離可能に直線偏光子に積層されている。
【0090】
第1熱可塑性樹脂フィルム及び第2熱可塑性樹脂フィルムとしては下記のものを用いた。
・第1熱可塑性樹脂フィルム:日本製紙(株)製のクリアハードコートフィルムである商品名「COP20ST-HC」(環状ポリオレフィン系樹脂フィルム上にクリアハードコート層が形成されているフィルム、厚み:25μm)
・第2熱可塑性樹脂フィルム:富士フイルム(株)製のトリアセチルセルロース(TAC)フィルムである商品名「フジタック」(厚み:80μm)
【0091】
得られた積層体に対して、熱風乾燥機を用いて80℃、300秒間の加熱処理を行うことによりポリビニルアルコール系接着剤層を乾燥させて直線偏光板を得た。
【0092】
(2)位相差層積層体の作製
下記に示す位相差フィルム1及び2、並びに、活性エネルギー線硬化性接着剤1を用意した。
・1/2波長板である位相差フィルム1:富士フイルム(株)製の商品名「QL FILM QL AA 318」(厚み80μmのTACフィルムである基材フィルム1と、その上に形成される配向層1と、その上に形成される重合性液晶化合物の硬化物層(単層)である位相差発現層1(面内位相差値235nm)とから構成される総厚み2μmの位相差フィルム)
・1/4波長板である位相差フィルム2:富士フイルム(株)製の商品名「QL FILM QL AB 318」(厚み80μmのTACフィルムである基材フィルム2と、その上に形成される配向層2と、その上に形成される重合性液晶化合物の硬化物層(単層)である位相差発現層2(面内位相差値120nm)とから構成される総厚み1μmの位相差フィルム)
・活性エネルギー線硬化性接着剤1:カチオン重合性の紫外線硬化性高屈折率接着剤
【0093】
位相差フィルム1が有する位相差発現層1の表面及び位相差フィルム2が有する位相差発現層2の表面にコロナ処理を施した。これらの位相差フィルムのそれぞれのコロナ処理面に上記活性エネルギー線硬化性接着剤1をバーコータを用いて、接着剤層の硬化後の総厚みが1.5μmとなるように塗布した後、位相差フィルム1及び位相差フィルム2を重ね合わせ、一対の貼合ロール間に通して、基材フィルム1/配向層1/位相差発現層1/活性エネルギー線硬化性接着剤1の層/位相差発現層2/配向層2/基材フィルム2の層構成を有する積層体を得た。
【0094】
得られた積層体に対し、紫外線照射装置(ランプはフュージョンUVシステムズ社製の「Dバルブ」を使用〕を用いて積算光量が250mJ/cm2(UVB))となるように紫外線を照射することによって活性エネルギー線硬化性接着剤1の層を硬化させて、位相差層積層体を得た。
【0095】
(3)光学積層体1の作製
上記(1)で得られた直線偏光板が有する第2熱可塑性樹脂フィルムを剥離するとともに、上記(2)で得られた位相差層積層体が有する基材フィルム1を配向層1とともに25m/分の剥離速度で剥離した。基材フィルム1が剥離される位相差層積層体に対する基材フィルム1の剥離角度は180度とした。
第2熱可塑性樹脂フィルムの剥離によって露出した直線偏光子の表面及び基材フィルム1の剥離によって露出した位相差発現層1の表面にコロナ処理を施した。
なお、配向層1は、基材フィルム1とともに剥離除去された。
【0096】
直線偏光板及び位相差層積層体のそれぞれのコロナ処理面に活性エネルギー線硬化性接着剤2をバーコータを用いて、接着剤層の硬化後の総厚みが2μmとなるように塗布した後、直線偏光板及び位相差層積層体を重ね合わせ、一対の貼合ロール間に通して、第1熱可塑性樹脂フィルム/ポリビニルアルコール系接着剤層/直線偏光子/活性エネルギー線硬化性接着剤2の層/位相差発現層1/活性エネルギー線硬化性接着剤1の硬化物層/位相差発現層2/配向層2/基材フィルム2の層構成を有する積層体を得た。
【0097】
活性エネルギー線硬化性接着剤2としては下記のものを用いた。
・活性エネルギー線硬化性接着剤2:カチオン重合性の紫外線硬化性接着剤
【0098】
得られた積層体を恒温恒湿槽に入れ、温度40℃の環境下で5時間保持(静置)した(保持工程)。保持工程における相対湿度は55%RHであった(他の実施例及び比較例も同じ)。
【0099】
その後、積層体に対し、紫外線照射装置(ランプはフュージョンUVシステムズ社製の「Hバルブ」を使用〕を用いて積算光量が400mJ/cm2(UVB))となるように紫外線を照射することによって活性エネルギー線硬化性接着剤2の層を硬化させて、光学積層体1を得た。紫外線照射時の環境は、温度23℃相対湿度55%RHとした(他の実施例及び比較例も同じ)。
得られた光学積層体1は、直線偏光子の吸収軸PLに対する位相差発現層1(1/2波長板)の進相軸SL1の角度が75°であり、位相差発現層2(1/4波長板)の進相軸SL2の角度が15°であった。この光学積層体1は、円偏光板として機能するものであった。
【0100】
(4)光学積層体2の作製(光学積層体1への粘着剤層の積層)
下記に示すシート状粘着剤1を用意した。
・シート状粘着剤1:転写型ノンキャリアフィルム((メタ)アクリル系粘着剤層〔厚み:15μm〕と、その一方の面に積層される軽剥離性フィルムと、その他方の面に積層される重剥離性フィルムとを有する積層フィルム)
【0101】
上記(3)で得られた光学積層体1が有する基材フィルム2を配向層2とともに剥離するとともに、シート状粘着剤1が有する軽剥離性フィルムを剥離した。基材フィルム2の剥離によって露出した位相差発現層2の表面及び軽剥離性フィルムの剥離によって露出した粘着剤層の表面にコロナ処理を施した。
なお、配向層2は、基材フィルム2とともに剥離除去された。
【0102】
光学積層体1及びシート状粘着剤1を重ね合わせ、一対の貼合ロール間に通して、第1熱可塑性樹脂フィルム/ポリビニルアルコール系接着剤層/直線偏光子/活性エネルギー線硬化性接着剤2の硬化物層/位相差発現層1/活性エネルギー線硬化性接着剤1の硬化物層/位相差発現層2/粘着剤層/重剥離性フィルムの層構成を有する光学積層体2を得た。
【0103】
<実施例2>
保持工程において、積層体を恒温恒湿槽を内壁に貼付し、周波数10Hz、振幅1mmの振動環境下で5時間保持(静置)したこと以外は実施例1と同様にして光学積層体1を作製した。保持工程における温度環境は23℃であった。また、この光学積層体1を用いたこと以外は実施例1と同様にして光学積層体2を作製した。
【0104】
<実施例3>
保持工程において、積層体を恒温恒湿槽に入れ、温度23℃の環境下で3日間保持(静置)したこと以外は実施例1と同様にして光学積層体1を作製した。保持工程における相対湿度は55%RHであった。また、この光学積層体1を用いたこと以外は実施例1と同様にして光学積層体2を作製した。
【0105】
<実施例4>
(1)直線偏光板の作製
実施例1と同様にして直線偏光板を作製した。
【0106】
(2)位相差層積層体の作製
実施例1と同様にして位相差層積層体を作製した。
【0107】
(3)光学積層体1の作製
上記(1)で得られた直線偏光板が有する第2熱可塑性樹脂フィルムを配向層1とともに剥離するとともに、上記(2)で得られた位相差層積層体が有する基材フィルム1を90m/分の剥離速度で剥離した。基材フィルム1が剥離される位相差層積層体に対する基材フィルム1の剥離角度は180度とした。
これ以降は、保持工程を実施しなかったこと以外は実施例1と同様にして光学積層体1を作製した。
【0108】
(4)光学積層体2の作製(光学積層体1への粘着剤層の積層)
上記(3)で得られた光学積層体1を用いたこと以外は実施例1と同様にして光学積層体2を作製した。
【0109】
<比較例1>
保持工程において、積層体を恒温恒湿槽に入れ、温度23℃の環境下で5時間保持(静置)したこと以外は実施例1と同様にして光学積層体1を作製した。保持工程における相対湿度は55%RHであった。また、この光学積層体1を用いたこと以外は実施例1と同様にして光学積層体2を作製した。
【0110】
<比較例2>
保持工程を実施することになく、第1熱可塑性樹脂フィルム/ポリビニルアルコール系接着剤層/直線偏光子/活性エネルギー線硬化性接着剤2の層/位相差発現層1/活性エネルギー線硬化性接着剤1の硬化物層/位相差発現層2/基材フィルム2の層構成を有する積層体を得た後、すぐさま紫外線を照射することによって活性エネルギー線硬化性接着剤2の層を硬化させたこと以外は実施例1と同様にして光学積層体1を作製した。また、この光学積層体1を用いたこと以外は実施例1と同様にして光学積層体2を作製した。
【0111】
<比較例3>
(1)粘着剤層付直線偏光板の作製
実施例1と同様にして直線偏光板を作製した。
また、下記に示すシート状粘着剤2を用意した。
・シート状粘着剤2:転写型ノンキャリアフィルム((メタ)アクリル系粘着剤層〔厚み:5μm〕と、その一方の面に積層される軽剥離性フィルムと、その他方の面に積層される重剥離性フィルムとを有する積層フィルム)
【0112】
直線偏光板が有する第2熱可塑性樹脂フィルムを剥離するとともに、シート状粘着剤2が有する軽剥離性フィルムを剥離した。第2熱可塑性樹脂フィルムの剥離によって露出した直線偏光子の表面及び軽剥離性フィルムの剥離によって露出した粘着剤層の表面にコロナ処理を施した。
その後、直線偏光子の表面(コロナ処理面)に軽剥離性フィルムが剥離されたシート状粘着剤2をそのコロナ処理面側で積層して、第1熱可塑性樹脂フィルム/ポリビニルアルコール系接着剤層/直線偏光子/粘着剤層/重剥離性フィルムの層構成を有する粘着剤層付直線偏光板を得た。
【0113】
(2)位相差層積層体の作製
実施例1と同様にして位相差層積層体を作製した。
【0114】
(3)光学積層体1の作製
上記(1)で得られた粘着剤層付直線偏光板が有する重剥離性フィルムを剥離するとともに、上記(2)で得られた位相差層積層体が有する基材フィルム1を配向層1とともに25m/分の剥離速度で剥離した。基材フィルム1が剥離される位相差層積層体に対する基材フィルム1の剥離角度は180度とした。
重剥離性フィルムの剥離によって露出した粘着剤層の表面及び基材フィルム1の剥離によって露出した位相差発現層1の表面にコロナ処理を施した。
なお、配向層1は、基材フィルム1とともに剥離除去された。
【0115】
その後、粘着剤層付直線偏光板のコロナ処理面に位相差層積層体をそのコロナ処理面側で積層して、第1熱可塑性樹脂フィルム/ポリビニルアルコール系接着剤層/直線偏光子/粘着剤層/位相差発現層1/活性エネルギー線硬化性接着剤1の硬化物層/位相差発現層2/基材フィルム2の層構成を有する光学積層体1を得た。
【0116】
(4)光学積層体2の作製(光学積層体1への粘着剤層の積層)
上記(3)で得られた光学積層体1を用いたこと以外は実施例1と同様にして光学積層体2を作製した。
【0117】
[測定・評価]
(1)面粗さの測定
光学積層体2から直線偏光子の吸収軸を長さ方向とする長さ50mm(長辺)、幅15mmの矩形状の積層体片を切り出し、重剥離性フィルムを剥離して粘着剤層を露出させ、露出した粘着剤層でアクリル板(黒色)に貼り付けて試験片〔第1熱可塑性樹脂フィルム/ポリビニルアルコール系接着剤層/直線偏光子/活性エネルギー線硬化性接着剤2の硬化物層/位相差発現層1/活性エネルギー線硬化性接着剤1の硬化物層/位相差発現層2/粘着剤層/アクリル板(黒色)の層構成を有する。〕とした。この試験片に第1熱可塑性樹脂フィルム側から光を当てて、ISO 25178に準拠し、走査型白色干渉顕微鏡「VertScan」(日立はテクサイエンス社製)により層断面解析モードで、光学積層体1が有する位相差層(位相差発現層1)における直線偏光子側の表面の算術平均粗さSa、二乗平均平方根高さSq、界面の展開面積比Sdr、及び、二法平均平方根傾斜Sdqを測定した。結果を表1に示す。測定条件は以下のとおりであった。
カメラ :ソニー社製「XCL-32」
対物レンズ :5CTI
鏡胴 :1.0X
ズームレンズ:1X
光源 :530White
測定デバイス:ピエゾ
測定モード :Wave
【0118】
(2)皺欠陥の評価
光学積層体1から、直線偏光子の吸収軸を長さ方向とする長さ50mm(長辺)、幅15mm(短辺)の試験片(矩形)を切り出した。
図8に示すように、この試験片(S)を2つの短辺(S1)同士が互いに向き合うように湾曲させて長辺方向中央部に湾曲部(C)を形成し、この状態を保ちながら互いに平行に配置された2枚のガラス板(平板状)(G)の間に保持しながら、2枚のガラス板(G)の間隔を縮小することにより試験片の湾曲部の曲率直径(R)が10mmとなるまで狭める縮小工程と、次いで湾曲状態が解消するまで2枚のガラス板の間隔を拡げる拡張工程とを10回繰り返す10mm屈曲試験を行った。なお、試験片(S)の2つの短辺(S1)はそれぞれガラス板(G)に固定した。
10mm屈曲試験後に試験片に皺欠陥が生じなかった場合は、同じ試験片について更に屈曲部の曲率直径Rを5mmとすること以外は上記と同様に縮小工程と拡張工程とを10回繰り返す5mm屈曲試験を行った。
5mm屈曲試験後に試験片に皺欠陥が生じなかった場合は、同じ試験片について更に屈曲部の曲率直径Rを4mmとすること以外は上記と同様に縮小工程と拡張工程とを10回繰り返す4mm屈曲試験を行った。
4mm屈曲試験後に試験片に皺欠陥が生じなかった場合は、同じ試験片について更に屈曲部の曲率直径Rを3mmとすること以外は上記と同様に縮小工程と拡張工程とを10回繰り返す3mm屈曲試験を行った。
3mm屈曲試験後に試験片に皺欠陥が生じなかった場合は、同じ試験片について更に屈曲部の曲率直径Rを2mmとすること以外は上記と同様に縮小工程と拡張工程とを10回繰り返す2mm屈曲試験を行った。
【0119】
試験片における心棒への巻き掛け部分を目視にて観察し、皺欠陥の生じにくさを下記の基準に従って評価した。結果を表1に示す。
A:10mm屈曲試験からスタートし、2mm屈曲試験を終えても皺欠陥が認められない。
B:10mm屈曲試験からスタートし、3mm屈曲試験を終えても皺欠陥は認められなかったが、引き続き2mm屈曲試験を行うと、皺欠陥が発生した。
C:10mm屈曲試験からスタートし、4mm屈曲試験を終えても皺欠陥は認められなかったが、引き続き3mm屈曲試験を行うと、皺欠陥が発生した。
【0120】
なお、各試験片における直線偏光子の吸収軸(PL)、位相差発現層1の進相軸(SL1)及び位相差発現層2の進相軸(SL2)は、直線偏光子側から見て
図9に示すとおりであった。すなわち、第1熱可塑性樹脂フィルム側(直線偏光子側)から見て左回りを正(+)として、吸収軸(PL)は短辺に対して+135°、進相軸(SL1)は短辺に対して+60°、進相軸(SL2)は短辺に対して+120°であった。各試験片は円偏光板として機能するものである。
【0121】
(3)虹ムラの評価
光学積層体2から、縦100mm×横100mmのサイズの試験片(矩形)を切り出した。この試験片から重剥離性フィルムを剥離し、露出した粘着剤層を用いて平坦な黒色アクリル板に貼合した。また、光学積層体2の最上層である第1熱可塑性樹脂フィルム上に水膜を介してガラス板〔コーニング社製の無アルカリガラス「イーグルXG」、厚み0.7mm〕を積層し、評価用積層体とした。
【0122】
得られた評価用積層体を蛍光灯の点いた室内に置いた。蛍光灯の位置は、黒色アクリル板から250mmの高さとした。この状態で、蛍光灯からの光の反射光を評価用積層体の表面(ガラス板側の表面)側から目視で観察し、虹ムラの生じにくさを下記の基準に従って評価した。結果を表1に示す。蛍光灯からの光の反射光とは、光学積層体2の内部に入射した蛍光灯からの光が各層の界面で反射することによってガラス板側から出射する光を意味している。
A:反射光に虹ムラが認められない。
B:反射光にごくわずかに虹ムラが認められる。
C:反射光に虹ムラが認められる(Bよりも明確に虹ムラが認められる)。
【0123】
【符号の説明】
【0124】
10 光学フィルム、20 活性エネルギー線硬化性接着剤層(接着剤層)、20a 硬化接着剤層、30 位相差層、31,71 位相差発現層、32,72 配向層、41,42 基材フィルム、50 直線偏光子、51,61 接着層、52 熱可塑性樹脂フィルム、80 粘着剤層。