(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】歯ブラシ用アタッチメント
(51)【国際特許分類】
A46B 15/00 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
A46B15/00 K
(21)【出願番号】P 2019233341
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】金丸 直史
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-253234(JP,A)
【文献】登録実用新案第3069266(JP,U)
【文献】特開2005-185649(JP,A)
【文献】特開2017-060662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B 15/00
A61C 17/22-17/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯ブラシに着脱自在に装着される歯ブラシ用アタッチメントであって、
歯磨きのブラッシングに関する情報を保持する保持部と、
前記保持部に保持された前記ブラッシングに関する情報を出力する制御部と、
前記制御部から出力された前記ブラッシングに関する情報の音を出力するスピーカユニットと、
前記歯ブラシが長軸方向に着脱自在に装着可能な装着部と、
前記スピーカユニットを収容し、前記長軸方向で前記歯ブラシの尾部側の壁面に前記スピーカユニットのスピーカ口が位置する第1構造体と、
前記第1構造体を収容する第2構造体と、
を有し、
前記第1構造体は硬質樹脂で形成され、
前記第2構造体は軟質樹脂で形成され、
前記装着部は、前記第2構造体に設けられていることを特徴とする歯ブラシ用アタッチメント。
【請求項2】
前記第1構造体における前記スピーカ口よりも音放射方向と逆側の空間の容積をV(cm
3)とし、前記スピーカ口の口径をL(mm)とすると、
3≦V≦9
1.25×L
3/1000≦V≦2.75×L
3/1000
の関係を満足する、
請求項
1に記載の歯ブラシ用アタッチメント。
【請求項3】
前記スピーカ口の口径Lは、12mm以上、18mm以下である、
請求項
2に記載の歯ブラシ用アタッチメント。
【請求項4】
前記空間の前記長軸方向の長さは、10mm以上、15mm以下であり、
前記空間の前記長軸方向と直交する方向の長さは、15mm以上、25mm以下であるとともに、前記スピーカ口が配置された壁面の位置を最小として音放射方向と逆側に向かうに従って、漸次拡径する、
請求項
2または3に記載の歯ブラシ用アタッチメント。
【請求項5】
前記第2構造体を形成する前記軟質樹脂の硬度は、ショアA硬度90以下である、
請求項
1から4のいずれか一項に記載の歯ブラシ用アタッチメント。
【請求項6】
前記壁面には、複数の貫通孔が形成されており、
前記壁面と前記スピーカ口との間に前記貫通孔を水密に封止する封止部材が設けられている、
請求項
1から5のいずれか一項に記載の歯ブラシ用アタッチメント。
【請求項7】
前記ブラッシング時の前記歯ブラシに関する所定の物理量を検出する検出部と、
前記検出部が検出した前記所定の物理量を記憶する記憶部と、
を有する、
請求項1から
6のいずれか一項に記載の歯ブラシ用アタッチメント。
【請求項8】
携帯情報端末と通信可能な通信部を有する、
請求項
7に記載の歯ブラシ用アタッチメント。
【請求項9】
前記制御部は、前記携帯情報端末と通信可能なときに、前記検出部が検出した前記所定の物理量を前記通信部を介して前記携帯情報端末に出力し、
前記携帯情報端末と通信不能なときに、前記検出部が検出した前記所定の物理量を前記記憶部に記憶させるとともに、前記ブラッシングに関する情報の音を前記スピーカユニットから出力させる、
請求項
8に記載の歯ブラシ用アタッチメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシ用アタッチメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
齲蝕や歯周病の予防には適切なブラッシングが必要であるが、小児の場合は、きちんとした磨き方を知らなかったり、大人の場合も、磨き癖などがあり、使用者単独でレベルの高い歯みがきスキルを習得することは困難であった。
【0003】
近年、Iot技術の台頭により、スマートフォン等の携帯情報端末の画面に表示された部位をブラッシングする時の動きをセンサーで取得し、得られたデータを携帯情報端末に転送し、ブラッシング位置やブラッシングストロークを算出することで、歯みがきスキルを評価できる、所謂スマート歯ブラシが開発導入されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、歯ブラシに関する物理量を検出するセンサ部と、検出された物理量を示す無線信号を送信する無線送信部と、挿入された歯ブラシの把持部後端側を保持する保持部とを有する歯ブラシ用アタッチメントが開示されている。
【0005】
特許文献1に記載された歯ブラシ用アタッチメントは、保持部において歯ブラシの把持部後端側に装着された状態で歯ブラシでブラッシングすることにより、センサ部により検出された物理量を示す無線信号を、例えばBluetooth(登録商標)通信によりアプリを起動した携帯情報端末(スマートフォン等)の外部に送信することができる。そのため、特許文献1に記載されたアタッチメントを用いた場合には、歯磨き中でも、手元から離れた位置で無線信号を受信して、その無線信号から得られるユーザの歯磨き行動に基づく指示によって歯磨きを行うことができる。
【0006】
特許文献1に記載された歯ブラシ用アタッチメントを子供向けの歯ブラシに用いる場合、子供自身の携帯情報端末を所持しているとは限らず、歯磨きのためにアプリを常に起動させることは難しい。そこで、アプリを起動させることなく稼働する動作モードも有する歯ブラシ用アタッチメントが求められる。
【0007】
特許文献2には、歯ブラシ用アタッチメントと携帯情報端末とが一定の時間内で接続がされなかった時に、アプリを用いることなく歯ブラシ用アタッチメントが起動できる動作モードに自動的に切り換わる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第6465122号公報
【文献】特開2017-60662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2に記載された歯ブラシ用アタッチメントでは、携帯情報端末と接続がされなかった時に歯磨情報とアタッチメント情報とを記憶部に記憶させるだけであり、歯磨きに関する指示が得られるものではない。
【0010】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、単独で稼働する際にも歯磨きに関する指示が得られる歯ブラシ用アタッチメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様に従えば、歯ブラシに着脱自在に装着される歯ブラシ用アタッチメントであって、歯磨きのブラッシングに関する情報を保持する保持部と、前記保持部に保持された前記ブラッシングに関する情報を出力する制御部と、前記制御部から出力された前記ブラッシングに関する情報の音を出力するスピーカユニットと、を有することを特徴とする歯ブラシ用アタッチメントが提供される。
【0012】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシ用アタッチメントにおいて、前記歯ブラシが長軸方向に着脱自在に装着可能な装着部と、前記スピーカユニットを収容し、前記長軸方向で前記歯ブラシの尾部側の壁面に前記スピーカユニットのスピーカ口が位置する第1構造体とを有することを特徴とする。
【0013】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシ用アタッチメントにおいて、前記第1構造体における前記スピーカ口よりも音放射方向と逆側の空間の容積をV(cm3)とし、前記スピーカ口の口径をL(mm)とすると、3≦V≦9、1.25×L3/1000≦V≦2.75×L3/1000の関係を満足することを特徴とする。
【0014】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシ用アタッチメントにおいて、前記スピーカ口の口径Lは、12mm以上、18mm以下であることを特徴とする。
【0015】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシ用アタッチメントにおいて、前記空間の前記長軸方向の長さは、10mm以上、15mm以下であり、前記空間の前記長軸方向と直交する方向の長さは、15mm以上、25mm以下であるとともに、前記スピーカ口が配置された壁面の位置を最小として音放射方向と逆側に向かうに従って、漸次拡径することを特徴とする。
【0016】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシ用アタッチメントにおいて、前記第1構造体を収容する第2構造体を有し、前記第1構造体は硬質樹脂で形成され、前記第2構造体は軟質樹脂で形成されていることを特徴とする。
【0017】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシ用アタッチメントにおいて、前記第2構造体を形成する前記軟質樹脂の硬度は、ショアA硬度90以下であることを特徴とする。
【0018】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシ用アタッチメントにおいて、前記装着部は、前記第2構造体に設けられていることを特徴とする。
【0019】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシ用アタッチメントにおいて、前記壁面には、複数の貫通孔が形成されており、前記壁面と前記スピーカ口との間に前記貫通孔を水密に封止する封止部材が設けられていることを特徴とする。
【0020】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシ用アタッチメントにおいて、前記ブラッシング時の前記歯ブラシに関する所定の物理量を検出する検出部と、前記検出部が検出した前記所定の物理量を記憶する記憶部とを有することを特徴とする。
【0021】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシ用アタッチメントにおいて、携帯情報端末と通信可能な通信部を有することを特徴とする。
【0022】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシ用アタッチメントにおいて、前記制御部は、前記携帯情報端末と通信可能なときに、前記検出部が検出した前記所定の物理量を前記通信部を介して前記携帯情報端末に出力し、前記携帯情報端末と通信不能なときに、前記検出部が検出した前記所定の物理量を前記記憶部に記憶させるとともに、前記ブラッシングに関する情報の音を前記スピーカユニットから出力させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、単独で稼働する際にも歯磨きに関する指示が得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態を示す図であって、歯ブラシ10と当該歯ブラシ10に装着されたアタッチメント1とを示す外観斜視図である。
【
図2】歯ブラシ10の先端側を示す部分側面図である。
【
図4】YZ平面と平行な面におけるアタッチメント1の断面図である。
【
図5】XZ平面と平行な面におけるアタッチメント1の断面図である。
【
図9】アタッチメント1が停止状態からスイッチ部51が押下された際の動作を示すフローチャートである。
【
図10】第1動作モードが選択されたときの動作を示すフローチャートである。
【
図11】第2動作モードが選択されたときの動作を示すフローチャートである。
【
図12】第1動作モードまたは第2動作モードのときにスイッチ部51が押下されたときの動作を示すフローチャートである。
【
図13】変形例の歯ブラシ10の先端側を示す部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の歯ブラシ用アタッチメントの実施の形態を、
図1ないし
図13を参照して説明する。本実施形態では、手動式の歯ブラシに歯ブラシ用アタッチメントが着脱自在に設けられる構成を例示して説明する。また、本実施形態では、歯ブラシ用アタッチメントが外部機器である携帯情報端末と通信を行う構成を例示して説明する。
【0026】
なお、以下の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0027】
図1は、歯ブラシ10と当該歯ブラシ10に装着されたアタッチメント(歯ブラシ用アタッチメント)1とを示す外観斜視図である。
図2は、歯ブラシ10の先端側を示す部分側面図である。
【0028】
[歯ブラシ10]
まず、歯ブラシ10について説明する。歯ブラシ10としては、アタッチメント1が装着可能であれば、歯ブラシ10の形状、大きさ、材質等に特に制限はない。本実施形態の歯ブラシ10は、一例として、幼児用である。 歯ブラシ10は、ハンドル体11と、ブラシ部12と、を有する。ハンドル体11は、ヘッド部14と、ネック部15と、把持部16とを有する。ハンドル体11は、硬質樹脂で形成されている。
【0029】
なお、以下の説明では、後述するアタッチメント1の載置面73aと直交する方向であり、歯ブラシ10におけるハンドル体11の略長軸方向をZ方向とし、植毛面21aに対してブラシ部12が延びる方向をX方向とし、Z方向及びX方向と直交する方向をY方向として適宜用いる。
【0030】
ヘッド部14の植毛面21aには、ブラシ部12が植設されている。
ネック部15は、ヘッド部14と把持部16とを接続する部分である。Y方向におけるネック部15の幅は、ヘッド部14及び把持部16の幅よりも狭くなるように構成されている。X方向におけるネック部15の厚さは、例えば、ヘッド部14の厚さと同じ厚さにすることができる。
把持部16は、歯ブラシ10の使用者が手で掴む部分である。
【0031】
上記硬質樹脂の具体例としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリアセタール(POM)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、セルロースプロピオネート(CP)、ポリアリレート、ポリカーボネート、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂(AS)等を例示することができる。上記硬質樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0032】
[アタッチメント1]
次に、アタッチメント1について説明する。
図3は、アタッチメント1の分解斜視図である。
アタッチメント1は、第1構造体40と第2構造体70とを有している。
第1構造体40は、電池41、基板42、スピーカユニット43、スピーカフィルム(封止部材)44、筐体45、キャップ46及びコネクタキャップ47を有している。
【0033】
図4は、YZ平面と平行な面におけるアタッチメント1の断面図である。
図5は、XZ平面と平行な面におけるアタッチメント1の断面図である。
図4及び
図5に示されるように、筐体45は、硬質樹脂で形成され、Z方向に視たときに略円形の底壁部48及び略円筒状の側壁部49に囲まれた収容空間50を有している。収容空間50は、-Z側に開口している。収容空間50には、スピーカフィルム44、スピーカユニット43、基板42及び電池41が底壁部48側(-Z側)から順次収容されている。
【0034】
図6は、筐体45を+Z側から視た平面図である。
図7は、第1構造体40の外観斜視図である。
図4及び
図6に示されるように、側壁部49は、中心に対して外側に凸形状に湾曲する外周面を有している。また、側壁部49の+X側には、
図5に示すように、内側に凹んだ凹部58が設けられている。凹部58は、Y方向に延びる溝状に形成されている。
図7に示されるように、凹部58には、側壁部49をX方向に貫通する孔部59が形成されている。
【0035】
図4及び
図5に示されるように、筐体45の底壁部48には、収容空間50に向けて+Z側に延びる保持面62が形成されている。
図6に示すように、保持面62は、Z軸と平行な軸周りに環状に形成されている。
【0036】
保持面62に囲まれた領域には、スピーカユニット43が保持される。スピーカユニット43は、スピーカ口43aを底壁部48における収容空間50に臨む壁面64に対向させた状態で筐体45に設けられている。底壁部48においてスピーカ口43aと対向する領域には、複数の貫通孔63が形成されている。貫通孔63は、スピーカ口43aから-Z側に放射された音を通過させる。
【0037】
スピーカフィルム44は、複数の貫通孔63を覆って壁面64に貼設されている。スピーカフィルム44は、壁面64とスピーカ口43aとの間に設けられている。スピーカフィルム44は、貫通孔63を水密に封止して、貫通孔63から筐体45の内部に水が浸入することを抑制する。スピーカフィルム44は、薄膜で形成されているため、スピーカユニット43のスピーカ口43aは、Z方向に関してほぼ壁面64に位置する。
【0038】
スピーカユニット43が単体で音を発生する場合、スピーカ口43aの音放射方向と逆側(+Z側)から逆位相の波形の音波が回り込み、音波が相殺され音圧が極端に小さくなる。本実施形態では、スピーカ口43aの背面側(+Z側)を第1構造体40で包囲することで、音波の回り込みを抑制している。
【0039】
また、第1構造体40において、スピーカ口43aよりも音放射方向と逆側(+Z)の空間(以下、単に空間と称する)の容積が小さすぎると低音の出力が小さくなる。一方、空間の容積が大きすぎると高音の出力が不十分になるとともに、第1構造体40が大きくなりすぎて、歯ブラシ10に装着した際の操作性を低下させる。
【0040】
そのため、本実施形態の第1構造体40においては、スピーカ口43aよりも音放射方向と逆側(+Z)の空間の容積をV(cm3)とし、スピーカ口43aの口径をL(mm)とすると、下式(1)、(2)を満足することにより、歯ブラシ10に装着した際の操作性向上と高音域から低音域の十分な音出力とを図っている。なお、空間の容積Vとは、筐体45の内側の壁面で構成される空間の容積である。
【0041】
3≦V≦9 …(1)
1.25×L3/1000≦V≦2.75×L3/1000 …(2)
【0042】
スピーカ口43aの口径Lとしては、12mm以上、18mm以下であることが好ましい。スピーカ口43aの口径Lが12mm未満の場合には、必要な音圧レベルが得られない可能性がある。また、スピーカ口43aの口径Lが18mmを超えると、第1構造体40が大型化して操作性を低下する。
【0043】
第1構造体40における空間のZ方向の長さとしては、10mm以上、15mm以下であることが好ましい。また、第1構造体40における空間のX方向の長さ、Y方向の長さとしては15mm以上、25mm以下であることが好ましい。第1構造体40における空間のX方向の長さ、Y方向の長さは、壁面64(スピーカ口43a)の位置を最小として、+Z側に向かうに従って、漸次拡径している。換言すると、第1構造体40における空間のXY平面と平行な面の面積は、+Z側に向かうに従って、漸次大きくなっている。
【0044】
キャップ46は、硬質樹脂で形成され、筐体45に+Z側から装着されたときに収容空間50を閉塞する。キャップ46は、例えば、接着剤により筐体45に固定される。
【0045】
図8は、基板42の側面図である。
基板42は、スイッチ部51、検出部52、通信部53、コネクト部54、制御部55及び発光素子56を有している。
【0046】
スイッチ部51は、押されたときの動作状態及び押されている時間の長さに応じて動作モードが選択される(詳細は後述)。スイッチ部51は、基板42における+X側の端部に搭載されている。
図5に示されるように、スイッチ部51は、孔部59に臨んで設けられている。スイッチ部51は、孔部59と同軸に配置されている。スイッチ部51は、上記の外側に凸形状に湾曲する側壁部49の+X側に位置する外周面を仮想面60として、当該仮想面60よりも筐体45の内側に配置されている。スイッチ部51は、一例として、仮想面60よりも2~3mmの距離で筐体45の内側に配置されている。スイッチ部51は、孔部59を介して+X側から押されることにより、押下信号を制御部55に出力する。
【0047】
検出部52は、アタッチメント1が装着された歯ブラシ10に関する所定の物理量を検出する。歯ブラシ10に関する所定の物理量としては、例えば、ブラシ部12の向き、移動方向、移動速度等が挙げられる。検出部52は、例えば、加速度センサーを含む。加速度センサーとしては、例えば、3方向の加速度を検出する3軸加速度センサーを用いることができる。検出部52が検出した歯ブラシ10に関する所定の物理量は、制御部55に出力される。加速度センサーとしては、3方向の加速度と3方向の回転を検出する6軸加速度センサーを用いてもよい。
【0048】
通信部53は、制御部55の制御下で外部機器と通信(通信処理)する。通信部53が通信する外部機器としては、例えば、所定のアプリがインストールされたスマートフォン、タブレット、ノートパソコン等の携帯情報端末である。この場合の携帯情報端末は、上記アプリがインストールされ通信部53と通信が可能なデスクトップパソコンも含まれる。通信部53による携帯情報端末との通信方式としては、Bluetooth(登録商標)通信、Wifi通信が挙げられるが、他の通信規格で通信される構成であってもよい。
【0049】
コネクト部54は、
図1に示す給電用のケーブル57が接続されるコネクタである。ケーブル57としては、例えば、USBケーブルが挙げられるが、他の接続規格のケーブルであってもよい。ケーブル57及びコネクト部54を介して給電された電力は、不図示の蓄電部に蓄電される。
【0050】
発光素子56は、基板42における+X側の端部に孔部59に臨んで搭載されている。発光素子56は、制御部55の制御下で動作モード毎に設定された色の光を+X側に向けて発光する。発光素子56は、一例として、LED素子である。発光素子56としては、例えば、発光ダイオード等であってもよい。
【0051】
制御部55は、スイッチ部51が押されたときの稼働状態、及びスイッチ部51が押された時間の長さに応じて、検出部52が検出した歯ブラシ10に関する所定の物理量を検出後に即時(リアルタイム)に通信部53を介して携帯情報端末に送信し、携帯情報端末を介してナビゲーションを行う第1動作モードと、上記物理量を一時的にアタッチメント1内で単独で処理するとともに歯磨き時の簡易ナビゲーションを行わせる第2動作モードと、稼働中の第1動作モードまたは第2動作モードを強制終了させる第3動作モードとのうち、設定された動作モードを選択する。上記歯磨き時の簡易ナビゲーションは、上記物理量を用いたナビゲーションではなく、スピーカユニット43を介して音声(例えば、歯磨き時であることを連想させる音楽と、ブラッシング位置の指示等)を発生させることにより行われる。上記歯磨き時の簡易ナビゲーションは、基板42に搭載された保持部69に予め保持されている。保持部69は、例えば、メモリ(ROM)である。制御部55は、第2動作モードにおいて保持部から簡易ナビゲーションの情報を読み出してスピーカユニット43を介して出力させる(詳細は後述)。制御部55は、例えば、基板42に搭載された中央演算処理装置(CPU)である。上記検出部52、通信部53、制御部55は、電池41または蓄電部から給電される電力で動作する。
【0052】
コネクタキャップ47は、コネクト部54に着脱自在に装着されている。コネクタキャップ47は、コネクト部54に装着されたときに、当該コネクト部54を水密に封止する。コネクタキャップ47は、後述する軟質樹脂で形成されている。
【0053】
図4及び
図5に示されるように、第2構造体70は、-Z側(底部側)に設けられ第1構造体40(筐体45及びキャップ46)と水密に嵌合する嵌合凹部71と、嵌合凹部71よりも+Z側に設けられ歯ブラシ10が着脱自在に装着可能な装着部72と、スイッチ部51と対向する位置に設けられたスイッチ領域74とを有している。
【0054】
嵌合凹部71は、第1構造体40の外形の大きさ及び形状に嵌合可能な大きさ及び形状に形成されている。嵌合凹部71は、-Z側及び-X側に開口している。第2構造体70は、嵌合凹部71の-Z側の開口部の周囲に、下端部からXY平面に沿って延出し筐体45の底部に-Z側から係合して支持する係合部73を有している。係合部73は、貫通孔63を遮蔽しない位置で筐体45の底部を水密に封止する。
【0055】
係合部73の-Z側の面は、アタッチメント1を物体上に載置したときに接触する載置面73aである。係合部73に囲まれ、係合部73よりも+Z側の位置に筐体45の底部が露出している。第2構造体70の-X側の開口部には、コネクタキャップ47が嵌合する。
【0056】
スイッチ領域74は、第2構造体70においてスイッチ部51を含め凹部58及び孔部59と対向する領域である。第2構造体70は、スイッチ領域74の周囲では外側に凸形状に湾曲する側壁部49の外周面に倣って外側に凸形状に湾曲し、仮想面60と面一となるため内側に凹んだ凹部58と対向するスイッチ領域74は、隙間を介して凹部58を覆い、また、孔部59を水密に封止している。
【0057】
スイッチ領域74の内側には、スイッチ部51に向けて突出する突部75が設けられている。スイッチ領域74における突部75を除く厚さは、スイッチ領域74の周囲の厚さより薄く形成されている。
【0058】
装着部72は、Z方向に延び+Z側に開口する空洞で形成されている。装着部72の断面輪郭形状は、一例として、歯ブラシ10における把持部16の-Z側の断面輪郭形状に沿った形状である。装着部72の大きさは、空洞に挿入された歯ブラシ10の把持部16が軟圧入で着脱自在に保持される大きさに設定されている。
【0059】
図4及び
図5に示されるように、歯ブラシ10の長軸方向で装着部72よりも-Z側(すなわち、把持部16の尾部側)にスピーカユニット43が配置されている。第2構造体70において、装着部72よりも-Z側にスピーカユニット43が配置されているため、第2構造体70の外周面を把持した際にも、使用者の手がスピーカ口43a(貫通孔63)を塞ぐことを抑制できる。
【0060】
装着部72に把持部16が挿入されたときに、歯ブラシ10の正面側(ブラシ部12が設けられている側)は、スイッチ領域74が配置された側と同一である。すなわち、アタッチメント1において、スイッチ部51及びスイッチ領域74は、歯ブラシ10における正面側に配置されている。
【0061】
図4に示されるように、第2構造体70は、+X側から視たときにY方向両側の外形輪郭が、Z方向に延びる軸線を中心として線対称である。
図5に示されるように、第2構造体70は、+Y側から視たときにY方向両側の外形輪郭が、Z方向に延びる軸線を中心として非対称である。
【0062】
より詳細には、第2構造体70は、+Y側から視た側面視においてスイッチ部51が配置された正面側に凸形状に湾曲する第1曲面81が設けられている。また、第2構造体70は、正面側とは逆側の背面側(-X側)に凹形状に湾曲する第2曲面82と、背面側に突出する突起部83とを有している。第2曲面82は、突起部83よりも+Z側(上側)に設けられている。また、突起部83から第2構造体70の底部にかけて、背面側に凸形状に湾曲する第3曲面84が設けられている。コネクタキャップ47の表面は、第3曲面84と面一に形成されている。
【0063】
上記の第2構造体70は、軟質樹脂で形成されている。第2構造体70および上述したコネクタキャップ47を形成する軟質樹脂としては、例えば、ショア硬度Aが好ましくは、20以上90以下、より好ましくは、30以上70以下、さらに好ましくは、40以上、60以下のスチレン系エラストマーである。
このような軟質樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等のエラストマー樹脂を例示することができるが、中でもポリプロピレン(PP)との溶着性の観点からスチレン系エラストマーが好ましい。
筐体45を被覆する箇所の第2構造体70の厚さとしては、好ましくは0.5mm以上、5.0mm以下、より好ましくは、1.0mm以上、3.0mm以下、さらに好ましくは、1.2mm以上、1.8mm以下である。
【0064】
スピーカユニット43から放射される音の音圧が大きい場合、放射される音によって第1構造体40の筐体45自体が振動する。その結果、筐体45から発せられる残響が反作用となり、スピーカユニット43本来の振動に悪影響を及ぼすこととなり、スピーカ機能を十分に発揮できないことがある。そこで、本実施形態では、筐体45(第1構造体40)を軟質樹脂で形成された第2構造体70で被覆することにより、筐体45の振動が軟質樹脂により吸収される。その結果、筐体45の残響(反作用) が抑制されることにより、スピーカユニット43の本来の振動が十分発揮されることになる。結果として、スピーカユニット43から放射される音は、放射方向の波が支配的となり、大きな音を発生させることができる。従って、第2構造体70は、スピーカ口43aおよび貫通孔63を除いて筐体45を全て被覆していることが好ましい。
【0065】
第2構造体70による第1構造体40の被覆の割合が高いほど振動吸収効果が高くなることから、被覆の割合としては50%以上であることが好ましい。また、第2構造体70の重量が大きいほど振動吸収効果が高くなることから、第2構造体70の重量としては、歯磨きの操作性を確保できる範囲で重い方が好ましい。同様に、第2構造体70の厚さが大きいほど振動吸収効果が高くなることから、第2構造体70の厚さとしては、歯磨きの操作性を確保できる範囲で厚い方が好ましい。
【0066】
第1構造体40は、スピーカユニット43の安定的な支持、及び基板42等の保護の観点から硬質樹脂により形成される一方で、第1構造体40の振動を抑制するためには、内部損失の高い物質(軟質樹脂)からなる第2構造体70によって、第1構造体40の周囲に略密着するように包囲することが好ましい。さらに、第2構造体70は、歯ブラシ10の装着部72を有するため、歯ブラシ10の着脱に適度な硬度を有する軟質樹脂を用いることが好ましい。なお、第1構造体40の一部に軟質樹脂が含まれていたり、第2構造体70の一部に硬質樹脂が含まれていてもよい。
【0067】
上記構成のアタッチメント1は、装着部72に歯ブラシ10の把持部16を挿入することで歯ブラシ10に装着される。把持部16は、装着部72に軟圧入されるため、アタッチメント1を把持して歯磨きを行った際に歯ブラシ10がアタッチメント1から離脱することなく円滑にブラッシングを実施できる。
【0068】
また、アタッチメント1を把持する際には、例えば、ブラシ部12が設けられた正面側に位置する第1曲面81(スイッチ領域74)に親指を当て、背面側に位置する第2曲面82に人差し指を当てて第2構造体70を挟んだ状態で、第2構造体70の底面を中指で支えた状態でアタッチメント1を把持する。このように、三箇所で把持することにより、アタッチメント1を簡便、且つ、安定的に保持することができる。
【0069】
アタッチメント1を稼働する際には、親指でスイッチ領域74を背面側に押し込むことにより、突部75を介してスイッチ部51を押し込む。正面側の第2構造体70は、スイッチ領域74の周囲については硬質樹脂で形成された筐体45を覆っており容易に変形しないが、スイッチ領域74は凹部58との間に隙間が形成されており、背面側に変形しやすいため、スイッチ部51の位置を容易に認識することができる。
【0070】
また、スイッチ領域74は、周囲と比較して薄く形成されているため変形しやすく、小さな抵抗でスイッチ部51を押し込むことができる。
【0071】
例えば、子供がアタッチメント1を把持する際には、ブラシ部12が設けられた正面側に位置する第1曲面81(スイッチ領域74)に親指を当て、背面側に位置する第2曲面82に人差し指を当てて第2構造体70を挟んだ状態で、第2構造体70の底面を中指で支えることが簡便、且つ、安定的に保持する観点から好ましい。
【0072】
第2構造体70を親指と人差し指とで挟むことを考慮すると、スイッチ領域74と第2曲面までの最短距離としては、25mm以上、30mm以下であることが好ましい。また、人差し指が第2曲面82から外れないことを考慮すると、突起部83からスイッチ領域74までの最短距離は28mm以上、40mm以下であることが好ましい。第2構造体70の底面を中指で支えた状態で親指がスイッチ領域74を介してスイッチ部51を押し込む際の力の加えやすさを考慮すると、底面からスイッチ領域74のZ方向中央部までの距離は、10mm以上、20mm以下であることが好ましい。また、第2構造体70を+Y側から視たときにY方向両側の外形輪郭が非対称となることを考慮すると、底面の背面側端部と突起部83とを結ぶ直線と底面とが交差する角度としては、90°を上回り、150°以下であることが好ましい。
【0073】
また、孔部59および凹部58の最大大きさとしては、7.0mm以上、11.0mm以下であることが好ましい。スイッチ部51の最大大きさが7mm未満の場合には、小さすぎて押し込みにくくなり操作性が低下する。スイッチ部51の最大大きさが11mmを超えた場合には、大きすぎて意図せずに押し込んでしまい的確なタイミングでの押し込みとならない可能性がある。
【0074】
続いて、歯ブラシ10が装着されたアタッチメント1を用いて歯磨きを実施する手順について、
図9乃至
図12を参照して説明する。
図9は、アタッチメント1が停止状態からスイッチ部51が押下された際の動作を示すフローチャートである。
図10は、第1動作モードが選択されたときの動作を示すフローチャートである。
図11は、第2動作モードが選択されたときの動作を示すフローチャートである。
図12は、第1動作モードまたは第2動作モードのときにスイッチ部51が押下されたときの動作を示すフローチャートである。
【0075】
図9に示されるように、稼働停止状態からスイッチ部51が押下されると(ステップS1)、制御部55はスイッチ部51が押下された時間を計測する(ステップS2)。制御部55は、スイッチ部51が押下された時間の長さが第1の範囲(例えば、0.01秒以上、0.5秒以下)であるかどうかを判断する(ステップS3)。制御部55は、スイッチ部51の押下時間長さが第1の範囲であれば第1動作モードを稼働させる(ステップS4)。一方、ステップS3において、スイッチ部51の押下時間長さが第1の範囲外であれば、制御部55はスイッチ部51の押下時間長さが第2の範囲(例えば、2.0秒以上、6.0秒以下)であるかどうかを判断する(ステップS5)。ステップS5において、スイッチ部51の押下時間長さが第2の範囲内であれば、制御部55は第2動作モードを稼働させる(ステップS6)。第1の範囲と第2の範囲との差が明確になるように、第1の範囲の最長値と第2の範囲の最短値との差は、2.0秒以上、6.0秒以下が好ましく、3.5秒以上、4.5秒以下であることがより好ましい。
【0076】
一方、ステップS5において、押下時間長さが第2の範囲から外れている場合、制御部55は、押下時間長さに対応する動作モードが設定されていないことからエラーを出力する(ステップS7)。
【0077】
制御部55は、上記ステップS4で第1動作モードを稼働させる際には、発光素子56に、一例として、第1動作モードに対応した青色光を発光させる。また、制御部55は、上記ステップS6で第2動作モードを稼働させる際には、発光素子56に、一例として、第2動作モードに対応した白色光を発光させる。発光素子56から発光された青色光または白色光は、孔部59を介してスイッチ領域74を内側から照明する。スイッチ領域74の厚さは、周囲の厚さよりも薄く形成されているため、発光された青色光または白色光は、少なくとも一部がスイッチ領域74を透過する。
【0078】
従って、使用者は、照明されたスイッチ領域74の色表示を視認することにより、スイッチ領域74を介してスイッチ部51を押し込んだ時間の長さに応じて設定された動作モードを容易に視認することが可能になる。すなわち、発光素子56及びスイッチ領域74は、選択された動作モードに対応する表示を色表示により行う表示部を構成する。
【0079】
[第1動作モード]
図10に示されるように、ステップS4で第1動作モードが選択されて稼働されると、制御部55は通信部53を介して携帯情報端末と通信し(ステップS8)、携帯情報端末にインストールされているアプリと接続可能か判断する(ステップS9)。このとき、携帯情報端末においてアプリが起動していない等の理由でアプリと接続できない場合、制御部55はエラーを出力する(ステップS10)。
【0080】
一方、ステップS9でアプリと接続できた場合、制御部55は、前回の歯磨き時に第2動作モードで蓄積した物理量の有無を判断するが(ステップS11)、このステップS11、S12については後述する。
【0081】
制御部55(アタッチメント1)と接続した後、アプリにおいては歯磨きに関するナビゲーションを開始する(ステップS13)。第1動作モードにおいては、携帯情報端末から発せられるナビゲーションに応じて使用者が実施する歯磨き(ブラッシング)時には、検出部52が検出した歯ブラシ10に関する物理量を制御部55は通信部53を介してアプリに送信する(ステップS14)。
【0082】
アプリは、アタッチメント1から送信された歯ブラシ10に関する物理量の解析結果から、例えば歯ブラシ10の姿勢、歯ブラシ10の動き(歯ブラシ10のブラシ部12の移動距離、移動速度、移動経路等)、ブラッシング角度(歯ブラシ10のブラシ面の歯牙や歯茎に対する接触の角度)、ブラッシング回数、ブラッシング位置(歯ブラシフィラメントの接している歯の部位)、ブラッシング圧(歯ブラシ10のブラシ面から歯牙等に与える応力値とその変化)などのパラメータを含む使用者の歯磨き行動を表す情報を生成して評価する。
【0083】
その後、アプリは、評価結果を反映させながらナビゲーションを継続する(ステップS15)。この後、歯磨きが終了し評価結果の告知等を行って第1動作モードが終了する(ステップS16)。
【0084】
[第2動作モード]
図11に示されるように、ステップS6で携帯情報端末と通信を行わずアタッチメント1が単独でナビゲーションを行う第2動作モードが選択されて稼働されると、制御部55は、音楽等を用いた簡易ナビゲーションを開始させる(ステップS17)。制御部55は、簡易ナビゲーションの情報(プログラム)を保持部69に保持しており、第2動作モードが稼働されると、保持したプログラムを起動して簡易ナビゲーションを実行させる。制御部55は、簡易ナビゲーションの音(音声)をスピーカユニット43から出力させる。
【0085】
第2動作モードにおいては、簡易ナビゲーションに応じて使用者が実施する歯磨き(ブラッシング)時には、検出部52が検出した歯ブラシ10に関する物理量を図示しない記憶部が蓄積する(ステップS18)。すなわち、第2動作モードにおいては、検出された歯ブラシ10に関する物理量を反映させない状態でナビゲーションを実施する。この後、歯磨きが終了した旨の告知等を行って第2動作モードが終了する(ステップS19)。
【0086】
第2動作モードにおいて、蓄積された歯ブラシ10に関する物理量は、後に第1動作モードが稼働され、
図10に示したステップS9でアプリとの接続が確認された後に、アプリに送信される(ステップS12)。
【0087】
[第3動作モード]
上記第1動作モード、第2動作モードは、アタッチメント1が稼働停止状態のときにスイッチ部51が押下されて稼働したが、本実施形態のアタッチメント1は、第1動作モードまたは第2動作モードが稼働中にスイッチ部51が押し込まれると動作する第3動作モードを有する。
【0088】
図12に示されるように、ステップS20で第1動作モードまたは第2動作モードが稼働中にスイッチ部51が押下されると、制御部55は、スイッチ部51の押下時間を計測する(ステップS21)。制御部55は、スイッチ部51が押下された時間の長さが所定時間(例えば、1.0秒)以上かどうかを判断し(ステップS22)、ブラッシング時に意図せずにスイッチ部51を押下した等で押下時間が所定時間未満の場合は、スイッチ部51の押下情報をスルーして第1動作モードまたは第2動作モードを継続する。
【0089】
一方、ステップS22において計測したスイッチ部51の押下時間が所定時間以上の場合には、第3動作モードを稼働し、第1動作モードまたは第2動作モードでの稼働を強制終了する(ステップS25)。このように、第3動作モードを稼働することにより、不測の事態が生じても対応可能となる。
【0090】
なお、制御部55は、上記第3動作モードを稼働させる際には、発光素子56による発光を停止させる。これにより、スイッチ領域74への照明が停止して消灯されるため、使用者は、強制終了(第3動作モードが稼働)したことを容易に視認することが可能になる。
【0091】
以上のように、本実施形態のアタッチメント1では、保持されたブラッシングに関する情報をを出力するスピーカユニットとを有しているため、単独で稼働した際にも歯磨きに関する指示を得ることが可能になる。また、本実施形態のアタッチメント1では、第1構造体40における空間の容積V(cm3)と、スピーカ口43aの口径L(mm)とが上述の式(1)、(2)を満足しているため、低音域、中音域、高音域のそれぞれで十分な音圧と良好な操作性とを確保することができる。
【0092】
また、本実施形態のアタッチメント1では、軟質樹脂で形成された第2構造体70が硬質樹脂で形成された第1構造体40に被覆嵌合して収容しているため、
スピーカ口43aの音放射方向と逆側からの音波の回り込みを抑制しつつ、筐体45の振動を軟質樹脂により吸収して残響(反作用)を抑制することができる。その結果、本実施形態のアタッチメント1では、スピーカユニット43の本来の振動を十分に発揮させることが可能になる。
【0093】
また、本実施形態のアタッチメント1では、通信を行う携帯情報端末によるナビゲーションで歯磨きをする第1動作モード、またはアタッチメント1による単独のナビゲーションの下で歯磨きをする第2動作モードを少なくとも選択できるので、使用者の環境に応じた最適な歯磨きを選択することが可能になる。なお、上記実施形態では、スイッチ部51が押されている時間の長さに応じて、動作モードが選択される構成を例示したが、シングルクリック、ダブルクリックでの押し分けや押圧の違いによる押し分け、各動作モードに応じたスイッチ部を個別に設ける構成であってもよい。
【0094】
[実験例]
以下、上記のアタッチメントにおけるスピーカユニットについて行った音圧実験、音の聞こえやすさとアタッチメントの操作性に関する実験及び検出部の振動実験の実験例について説明する。
【0095】
[スピーカユニットの音圧実験]
[表1]に示されるように、スピーカユニット、第1構造体及び第2構造体を有するアタッチメントを実験例1のサンプルとした。スピーカユニット及び第1構造体を有し、第2構造体を有さないアタッチメントを実験例2のサンプルとした。スピーカユニットを有し、第1構造体及び第2構造体を有さないアタッチメントを実験例3のサンプルとした。
【0096】
<実験方法>
(i)各サンプルについて、スピーカユニットから20cmの距離に騒音計を設置した。
(ii)スピーカユニットからナビゲーション音声を1分間出力する。
(iii)1分間の平均音圧(db)を測定する。
【0097】
【0098】
[表1]に示されるように、スピーカユニットを第1構造体に保持した実験例1及び実験2のサンプルでは、逆位相の音波が遮断され、スピーカユニット単体の実験例3のサンプルと比較して音圧が増幅された。また、第2構造体が第1構造体を収容した実験例1のサンプルでは、第2構造体を有さない実験例2のサンプルに対してさらに音圧が増幅され、音出力機能を最大化できた。
【0099】
[スピーカ音の聴こえやすさとアタッチメントの操作性に関する実験]
[表2]、[表3]に示されるように、口径Lが12mm、13mm、14mm、15mm、16mm、17mm、18mmのスピーカ口と、容積Vが2cm3、4cm3、6cm3、8cm3、10cm3、12cm3、14cm3、16cm3、18cm3の第1構造体の空間との組み合わせのスピーカユニットに関して、低音域、中音域、高音域のそれぞれの聴こえやすさの測定、アタッチメントの操作性の測定、及びこれらの総合評価を実施した。なお、容積Vが2cm3の第1構造体の空間については、部品収納性について評価した。
【0100】
<実験方法>
(i)歯ブラシに装着したアタッチメントから出力される音声及びアタッチメントの操作性を専門家パネル(n=9)が評価した。
(ii)スピーカ口は、口径が15mmのものを用いた。
(iii)筐体の材質はABS樹脂とした。
【0101】
【0102】
【0103】
[表2]、[表3]に示されるように、第1構造体の空間容積Vが2cm3のサンプルでは、部品収納性が不良であるとともに、低音域の音声が聴こえづらい結果となった。また、第1構造体の空間容積Vが10cm3以上のサンプルでは、アタッチメントの操作性が十分ではない結果となった。そして、空間容積Vが4cm3で口径が12~15mmのサンプル、空間容積Vが6cm3で口径が13~16mmのサンプル、及び空間容積Vが8cm3で口径が15~18mmのサンプルでは、低音域、中音域、高音域のそれぞれの聴こえやすさ、アタッチメントの操作性のいずれについても良好な結果が得られた。すなわち、空間容積とスピーカ口の口径が上述した式(1)、(2)を満足することにより、低音域、中音域、高音域のそれぞれの聴こえやすさ、アタッチメントの操作性について良好な結果が得られることを確認できた。
また、上記の結果からは、空間容積Vが小さすぎると低音域が聴こえにくく、空間容積Vが大きすぎると高温域が聴こえにくくなるこという結果が得られた。
【0104】
[検出部の振動実験]
[表4]に示されるように、スピーカユニットを収容する第1構造体、第1構造体を収容する第2構造体を有しナビゲーションの音声を出力したアタッチメントを実験例4のサンプルとした。スピーカユニットを収容する第1構造体を有し、第2構造体を有さず、ナビゲーションの音声を出力したアタッチメントを実験例5のサンプルとした。スピーカユニットを収容する第1構造体を有し、第2構造体を有さず、ナビゲーションの音声を出力しないアタッチメントを実験例6のサンプルとした。
【0105】
<実験方法>
(i)各サンプルについて、二分間静置して検出部による検出情報を取得した。
(ii)(i)においては、ナビゲーションの音声を二分間出力し、その間の振動を検出した。
(iii)検出した振動データを専用ソフトにて解析して、重力方向加速度平均値(g)、重力方向加速度S.D.(振動)(g)を求めた。
【0106】
【0107】
[表4]に示されるように、ナビゲーションの音声を出力しない実験例6のサンプルに対して、ナビゲーションの音声を出力した実験例4、5のサンプルでは重力方向加速度S.D.が増幅した。また、第2構造体が第1構造体を収容した実験例4のサンプルでは、第2構造体を有さない実験例5のサンプルに対して重力方向加速度S.D.が減衰した(抑制された)。
【0108】
[歯ブラシ10の変形例]
上記実施形態では、ハンドル体11が硬質樹脂で形成される構成を例示したが、硬質樹脂および軟質樹脂で形成される構成であってもよい。
図13は、変形例の歯ブラシ10の先端側を示す部分側面図である。
【0109】
図13に示す歯ブラシ10は、ヘッド部14、ネック部15及び把持部16の一部を構成する硬質樹脂で形成された芯部材17を有する。
【0110】
ヘッド部14は、芯部材17の一部を形成するベース部材21と、ベース部材21を覆う軟質樹脂で形成された軟質部22とを有する。ベース部材21の植毛面21aには、ブラシ部12が植設されている。
【0111】
ネック部15は、芯部材17の構成要素である芯部25と、軟質部26とを有する。芯部25は、Z方向(ネック部15の延在方向)に延在し、かつネック部15を貫通する第1の部分31と、Z方向に延在し、一端が第1の部分31と一体にされると共に、把持部16の一部に配置された第2の部分32とを有する。
【0112】
第1の部分31は、Z方向において同じ太さとされている。第1の部分31は、ヘッド部14に-X側への外力が加わった際の曲げ強度が、ヘッド部14にY方向(+Y側または-Y側へ)の外力が加わった際の曲げ強度よりも大きく設定されている。例えば、XY平面と平行な第1の部分31の断面形状は、X方向を長径(長軸)方向とする楕円形状である。
【0113】
上記硬質樹脂の具体例としては、上記実施形態で説明した硬質樹脂を用いることができる。
上記軟質樹脂としては、例えば、その硬度が、JIS K 7215 ショア硬度Aが好ましくは、20以上90以下、より好ましくは、30以上70以下、さらに好ましくは、40以上、60以下である軟質樹脂を用いるとよい。
このような軟質樹脂としては、上述した第2構造体70を構成する軟質樹脂と同様の軟質樹脂を用いることができる。
【0114】
第1の部分31のX方向の曲げ強度がY方向の曲げ強度よりも大きいことにより、歯を磨く際、ネック部15は、ブラシ部12の先端を歯や歯間等に押し当てる際に力が加えられる方向に対して変形しにくく、ブラシ部12の先端をしっかりと歯や歯間等に押し当てることが可能になる。一方、第1の部分31のY方向の曲げ強度がX方向の曲げ強度よりも小さいことにより、外力が加わった際にネック部15においてY方向に折れ曲がることが可能となる。これにより、ヘッド部14の先端に加わる力を逃がすことが可能となるので、歯ブラシ10の使用者の口腔内が損傷することを抑制できる。
【0115】
把持部16は、歯ブラシ10の使用者が手で掴む部分であり、軟質樹脂2で構成されている。把持部16を軟質樹脂で構成することで、歯ブラシ10を口にくわえた状態で、歯ブラシ10の後端からヘッド部14の先端に向かう方向に強い外力が加えられた際、把持部16を変形させる(曲げる)ことが可能となる。これにより、ネック部15だけでなく、把持部16も曲がることで、歯ブラシ10の後端からヘッド部14の先端に向かう外力を、これとは異なる方向に逃がすことが可能となるので、歯ブラシ10の使用者の口腔内が損傷することを抑制できる。
【0116】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0117】
例えば、上記実施形態では、アタッチメント1が手動の歯ブラシ10に装着される構成を例示したが、この構成に限定されず、少なくともヘッド部が電気駆動される電動歯ブラシにも適用可能である。
【0118】
また、上記実施形態では、アタッチメント1が通信部53を有し携帯情報端末と通信可能である構成を例示したが、この構成に限定されず、アタッチメント1が通信部53を有さずに単独で稼働する構成であってもよい。アタッチメント1が単独で稼働する場合には、検出された歯ブラシ10に関する物理量を反映させたナビゲーションを実施する構成としてもよい。
【0119】
また、上記実施形態で例示した第1構造体40、第2構造体70を構成する素材は一例であり、他の素材を用いる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0120】
1…アタッチメント(歯ブラシ用アタッチメント)、 10…歯ブラシ、 40…第1構造体、 43…スピーカユニット、 43a…スピーカ口、 44…スピーカフィルム(封止部材)、 45…筐体、 48…底壁部、 51…スイッチ部、 52…検出部、 53…通信部、 56…発光素子(表示部)、 58…凹部、 59…孔部、 63…貫通孔、 64…壁面、 69…保持部、 70…第2構造体、 72…装着部、 73a…載置面、 75…突部、 81…第1曲面、 82…第2曲面、 83…突起部