IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社シマノの特許一覧

特許7406986人力駆動車用のクラッチ機構および人力駆動車用のクラッチシステム
<>
  • 特許-人力駆動車用のクラッチ機構および人力駆動車用のクラッチシステム 図1
  • 特許-人力駆動車用のクラッチ機構および人力駆動車用のクラッチシステム 図2
  • 特許-人力駆動車用のクラッチ機構および人力駆動車用のクラッチシステム 図3
  • 特許-人力駆動車用のクラッチ機構および人力駆動車用のクラッチシステム 図4
  • 特許-人力駆動車用のクラッチ機構および人力駆動車用のクラッチシステム 図5
  • 特許-人力駆動車用のクラッチ機構および人力駆動車用のクラッチシステム 図6
  • 特許-人力駆動車用のクラッチ機構および人力駆動車用のクラッチシステム 図7
  • 特許-人力駆動車用のクラッチ機構および人力駆動車用のクラッチシステム 図8
  • 特許-人力駆動車用のクラッチ機構および人力駆動車用のクラッチシステム 図9
  • 特許-人力駆動車用のクラッチ機構および人力駆動車用のクラッチシステム 図10
  • 特許-人力駆動車用のクラッチ機構および人力駆動車用のクラッチシステム 図11
  • 特許-人力駆動車用のクラッチ機構および人力駆動車用のクラッチシステム 図12
  • 特許-人力駆動車用のクラッチ機構および人力駆動車用のクラッチシステム 図13
  • 特許-人力駆動車用のクラッチ機構および人力駆動車用のクラッチシステム 図14
  • 特許-人力駆動車用のクラッチ機構および人力駆動車用のクラッチシステム 図15
  • 特許-人力駆動車用のクラッチ機構および人力駆動車用のクラッチシステム 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】人力駆動車用のクラッチ機構および人力駆動車用のクラッチシステム
(51)【国際特許分類】
   F16D 41/36 20060101AFI20231221BHJP
   F16D 41/22 20060101ALI20231221BHJP
   B62M 6/55 20100101ALN20231221BHJP
【FI】
F16D41/36
F16D41/22
B62M6/55
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019238271
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021105442
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】増田 慎子
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-122501(JP,A)
【文献】特開2009-270702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 11/00-13/76
F16D 21/00-23/14
F16D 41/00-47/06
B62M 1/00-29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車用のクラッチ機構であって、
少なくとも1つの第1当接部を含み、予め定める軸線まわりに回転可能な第1回転体と、
少なくとも1つの第2当接部を含み、前記予め定める軸線まわりに回転可能な第2回転体と、
前記予め定める軸線まわりに回転可能な第3回転体と、を備え、
前記少なくとも1つの第1当接部は、第1動力伝達面と、第2動力伝達面と、を含み、
前記第1回転体が前記予め定める軸線まわりの第1回転方向に回転すると、前記少なくとも1つの第1当接部の前記第1動力伝達面が前記少なくとも1つの第2当接部に当接することによって、前記第2回転体が前記予め定める軸線に平行な方向に移動して、前記第2回転体と前記第3回転体とが接続されるように構成され、
前記少なくとも1つの第1当接部の前記第1動力伝達面が前記少なくとも1つの第2当接部に当接し、かつ、前記第2回転体と前記第3回転体とが接続された状態において、前記第1回転体が前記第1回転方向に回転すると、前記第1回転体の前記第1回転方向の回転力が前記第2回転体を介して前記第3回転体に伝達されるように構成され、
前記第1回転体が前記第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転すると、前記少なくとも1つの第1当接部の前記第2動力伝達面が前記少なくとも1つの第2当接部に当接することによって、前記第2回転体が前記予め定める軸線に平行な方向に移動して、前記第2回転体と前記第3回転体とが接続されるように構成され、
前記少なくとも1つの第1当接部の前記第2動力伝達面が前記少なくとも1つの第2当接部に当接し、かつ、前記第2回転体と前記第3回転体とが接続された状態において、前記第3回転体が前記第1回転方向に回転すると、前記第3回転体の前記第1回転方向への回転力が前記第2回転体を介して前記第1回転体に伝達されるように構成される、クラッチ機構。
【請求項2】
前記第1回転体が前記第1回転方向に回転し、前記第1回転体の前記第1回転方向の回転力が前記第2回転体を介して前記第3回転体に伝達されている状態において、前記第1回転方向への前記第2回転体の回転速度が、前記第1回転体の回転速度よりも高くなると、前記第1回転体から前記第2回転体への動力伝達を切断する、請求項1に記載のクラッチ機構。
【請求項3】
前記第1回転体が前記第1回転方向に回転し、前記第1回転体の前記第1回転方向の回転力が前記第2回転体を介して前記第3回転体に伝達されている状態において、前記第1回転方向への前記第2回転体の回転速度が、前記第1回転体の回転速度よりも高くなると、前記第2回転体は、前記予め定める軸線に平行な方向において、前記第3回転体から離れる方向に移動して、前記少なくとも1つの第1当接部の前記第1動力伝達面が少なくとも1つの第2当接部から離れることによって、前記第2回転体と前記第3回転体とが離れる、請求項2に記載のクラッチ機構。
【請求項4】
前記第3回転体の前記第1回転方向への回転力が前記第2回転体を介して前記第1回転体に伝達されている状態において、前記第1回転方向への前記第1回転体の回転速度が、前記第2回転体の回転速度よりも高くなると、前記第3回転体から前記第2回転体への動力伝達が切断される、請求項1から3のいずれか一項に記載のクラッチ機構。
【請求項5】
前記第3回転体の前記第1回転方向への回転力が前記第2回転体を介して前記第1回転体に伝達されている状態において、前記第1回転方向への前記第1回転体の回転速度が、前記第2回転体の回転速度よりも高くなると、前記第2回転体は、前記予め定める軸線に平行な方向において、前記第3回転体から離れる方向に移動して、前記少なくとも1つの第1当接部の前記第2動力伝達面が少なくとも1つの第2当接部から離れることによって、前記第2回転体と前記第3回転体とが離れる、請求項4に記載のクラッチ機構。
【請求項6】
前記第1回転体および前記第2回転体の一方は、前記予め定める軸線に関して径方向に突出する第1凸部を含み、
前記第1回転体および前記第2回転体の他方は、前記予め定める軸線に関して径方向に凹み、前記第1凸部を収容する第1凹部を含み、
前記第1凸部は、前記第1回転体および前記第2回転体の前記他方に近づくにつれて、前記予め定める軸線まわりの幅が細くなるテーパ形状を含み、
前記第1凹部は、前記第1回転体および前記第2回転体の前記一方に近づくにつれて、前記予め定める軸線まわりの幅が広がるテーパ形状を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のクラッチ機構。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第1当接部は、前記第1凸部に設けられ、
前記少なくとも1つの第2当接部は、前記第1凹部に設けられ、
前記第1動力伝達面は、前記予め定める軸線まわりにおける前記第1凸部の第1側面に設けられ、
前記第2動力伝達面は、前記予め定める軸線まわりにおける前記第1凸部の第2側面に設けられる、請求項6に記載のクラッチ機構。
【請求項8】
前記第1回転体は、前記第1側面または前記第2側面が前記第1凹部の内壁部と接触した状態で回転することによって、前記第2回転体を前記予め定める軸線に平行な方向に移動させるように構成される、請求項7に記載のクラッチ機構。
【請求項9】
前記予め定める軸線に平行な方向において、前記第2回転体を前記第1回転体に向かって付勢する付勢部材をさらに備える、請求項8に記載のクラッチ機構。
【請求項10】
前記第2回転体および前記第3回転体の少なくとも1つは、前記第2回転体と前記第3回転体とが接続された場合に、前記第2回転体と前記第3回転体との相対回転を規制する第1規制部を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のクラッチ機構。
【請求項11】
前記第1規制部は、前記第2回転体に設けられる少なくとも1つの第3当接部と、前記第3回転体に設けられる少なくとも1つの第4当接部と、を含む、請求項10に記載のクラッチ機構。
【請求項12】
前記第2回転体と前記第3回転体とが接続されていない状態において、前記第1回転体が前記第1回転方向に回転する場合に、前記第2回転体の前記予め定める軸線まわりの回転を規制する第2規制部、をさらに備える、請求項1から11のいずれか一項に記載のクラッチ機構。
【請求項13】
前記第2規制部は、前記予め定める軸線に平行な方向に突出する少なくとも1つの第2凸部、および、前記予め定める軸線に平行な方向に凹む少なくとも1つの第2凹部の少なくとも1つを含み、
前記第2回転体は、前記予め定める軸線まわりに回転すると、前記第2規制部に当接するように構成される少なくとも1つの第5当接部を含む、請求項12に記載のクラッチ機構。
【請求項14】
軸部材をさらに含み、
前記第1回転体、前記第2回転体および前記第3回転体は、前記予め定める軸線が貫通し、かつ、前記軸部材が配置される貫通孔をそれぞれ有し、
前記少なくとも1つの第2凸部および前記少なくとも1つの第2凹部は、前記軸部材に設けられる、請求項13に記載のクラッチ機構。
【請求項15】
前記第1回転体、前記第2回転体および前記第3回転体は、前記軸部材に対して回転可能に、前記軸部材に直接または間接的に支持される、請求項14に記載のクラッチ機構。
【請求項16】
前記第1回転体および前記第3回転体は、それぞれ前記軸部材にベアリングを介して支持される、請求項15に記載のクラッチ機構。
【請求項17】
前記少なくとも1つの第5当接部は、前記予め定める軸線に関して、前記少なくとも1つの第2当接部よりも径方向の内側に配置される、請求項16に記載のクラッチ機構。
【請求項18】
人力駆動車用のクラッチシステムであって、
請求項1から17のいずれか一項に記載のクラッチ機構と、
第3回転方向および前記第3回転方向とは反対の第4回転方向に回転可能な出力部を有するモータと、
前記モータを制御するように構成される制御部と、を備え、
前記制御部が前記出力部を前記第3回転方向に回転するように前記モータを制御することによって、前記第1回転体が前記第1回転方向に回転し、前記第2回転体と前記第3回転体とが接続されて、前記モータの回転力が前記第3回転体に伝達され、
前記制御部が前記出力部を前記第4回転方向に回転するように前記モータを制御することによって、前記第1回転体が前記第2回転方向に回転して、前記第2回転体と前記第3回転体とが接続されるように構成される、クラッチシステム。
【請求項19】
人力駆動車用のクラッチシステムであって、
第3回転方向および前記第3回転方向とは反対の第4回転方向に回転可能な出力部を有するモータと、
予め定める軸線まわりに回転可能な第1回転体と、
前記予め定める軸線まわりに回転可能な第2回転体と、
前記モータを制御するように構成される制御部と、
前記制御部が前記出力部を前記第3回転方向に回転するように前記モータを制御することによって前記第1回転体が回転することにともなって、前記第1回転体が前記予め定める軸線に平行な方向に前記第2回転体に対して相対移動して、前記第1回転体と前記第2回転体とが接続されて、前記モータの回転力が前記第1回転体から前記第2回転体に伝達されるように構成され、
かつ、前記制御部が前記出力部を前記第4回転方向に回転するように前記モータを制御することによって前記第1回転体が回転することにともなって、前記第1回転体が前記予め定める軸線に平行な方向に前記第2回転体に対して相対移動して、前記第1回転体と前記第2回転体とが接続されて、前記第2回転体の前記第3回転方向への回転力が前記第1回転体を介して前記モータに伝達されるように構成されるクラッチ機構と、を備える、クラッチシステム。
【請求項20】
前記クラッチ機構は、前記第1回転体が前記第1回転方向に回転している状態において、前記第1回転方向への前記第2回転体の回転速度が、前記第1回転体の回転速度よりも高くなると、前記第1回転体から前記第2回転体への動力伝達を切断する、請求項18に記載のクラッチシステム。
【請求項21】
前記モータは、前記モータの前記第3回転方向への回転力が前記第1回転体から前記第2回転体に伝達される場合、前記人力駆動車に推進力を付与するように構成される、請求項18から20のいずれか一項に記載のクラッチシステム。
【請求項22】
前記モータは、前記第2回転体から前記第1回転体を介して前記モータに前記第3回転方向の回転力が伝達される場合、発電するように構成される、請求項18から21のいずれか一項に記載のクラッチシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人力駆動車用のクラッチ機構および人力駆動車用のクラッチシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されている人力駆動車は、クラッチ機構と、クラッチ機構を切り替えるための切替用モータを含む。
特許文献1のクラッチ機構は、クラッチ機構を切り替えるために、クラッチ機構によって伝達される動力とは異なる動力が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-158695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的の1つは、クラッチ機構によって伝達される動力を用いて伝達状態を切り替え可能な人力駆動車用のクラッチ機構および人力駆動車用のクラッチシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1側面に従うクラッチ機構は、人力駆動車用のクラッチ機構であって、少なくとも1つの第1当接部を含み、予め定める軸線まわりに回転可能な第1回転体と、少なくとも1つの第2当接部を含み、前記予め定める軸線まわりに回転可能な第2回転体と、前記予め定める軸線まわりに回転可能な第3回転体と、を備え、前記少なくとも1つの第1当接部は、第1動力伝達面と、第2動力伝達面と、を含み、前記第1回転体が前記予め定める軸線まわりの第1回転方向に回転すると、前記少なくとも1つの第1当接部の前記第1動力伝達面が前記少なくとも1つの第2当接部に当接することによって、前記第2回転体が前記予め定める軸線に平行な方向に移動して、前記第2回転体と前記第3回転体とが接続されるように構成され、前記少なくとも1つの第1当接部の前記第1動力伝達面が前記少なくとも1つの第2当接部に当接し、かつ、前記第2回転体と前記第3回転体とが接続された状態において、前記第1回転体が前記第1回転方向に回転すると、前記第1回転体の前記第1回転方向の回転力が前記第2回転体を介して前記第3回転体に伝達されるように構成され、前記第1回転体が前記第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転すると、前記少なくとも1つの第1当接部の前記第2動力伝達面が前記少なくとも1つの第2当接部に当接することによって、前記第2回転体が前記予め定める軸線に平行な方向に移動して、前記第2回転体と前記第3回転体とが接続されるように構成され、前記少なくとも1つの第1当接部の前記第2動力伝達面が前記少なくとも1つの第2当接部に当接し、かつ、前記第2回転体と前記第3回転体とが接続された状態において、前記第3回転体が前記第1回転方向に回転すると、前記第3回転体の前記第1回転方向への回転力が前記第2回転体を介して前記第1回転体に伝達されるように構成される。
第1側面のクラッチ機構によれば、第1回転体と第2回転体との接続状態、および、第2回転体と第3回転体との接続状態と、動力が伝達されるように構成される第1回転体または第3回転体の回転方向と、に応じて第1回転体と第3回転体との間の回転力の伝達方向を切り替えられる。このため、クラッチ機構によって伝達される動力を用いて伝達状態を切り替えできる。
【0006】
本開示の第1側面に従う第2側面のクラッチ機構において、前記第1回転体が前記第1回転方向に回転し、前記第1回転体の前記第1回転方向の回転力が前記第2回転体を介して前記第3回転体に伝達されている状態において、前記第1回転方向への前記第2回転体の回転速度が、前記第1回転体の回転速度よりも高くなると、前記第1回転体から前記第2回転体への動力伝達を切断する。
第2側面のクラッチ機構によれば、第1回転体の第1回転方向の回転力が第2回転体を介して第3回転体に伝達されている状態において、第1回転方向への第2回転体の回転速度に応じて、第1回転体から第2回転体への動力伝達を切断できる。
【0007】
本開示の第2側面に従う第3側面のクラッチ機構において、前記第1回転体が前記第1回転方向に回転し、前記第1回転体の前記第1回転方向の回転力が前記第2回転体を介して前記第3回転体に伝達されている状態において、前記第1回転方向への前記第2回転体の回転速度が、前記第1回転体の回転速度よりも高くなると、前記第2回転体は、前記予め定める軸線に平行な方向において、前記第3回転体から離れる方向に移動して、前記少なくとも1つの第1当接部の前記第1動力伝達面が少なくとも1つの第2当接部から離れることによって、前記第2回転体と前記第3回転体とが離れる。
第3側面のクラッチ機構によれば、少なくとも1つの第1当接部の第1動力伝達面が少なくとも1つの第2当接部から離れることによって、第2回転体と前記第3回転体とが離れるため、第1回転体から第2回転体への動力伝達を切断できる。
【0008】
本開示の第1から第3側面のいずれか1つに従う第4側面のクラッチ機構において、前記第3回転体の前記第1回転方向への回転力が前記第2回転体を介して前記第1回転体に伝達されている状態において、前記第1回転方向への前記第1回転体の回転速度が、前記第2回転体の回転速度よりも高くなると、前記第3回転体から前記第2回転体への動力伝達が切断される。
第4側面のクラッチ機構によれば、第3回転体の第1回転方向への回転力が第2回転体を介して第1回転体に伝達されている状態において、第1回転方向への第1回転体の回転速度に応じて、第3回転体から第2回転体への動力伝達を切断できる。
【0009】
本開示の第4側面に従う第5側面のクラッチ機構において、前記第3回転体の前記第1回転方向への回転力が前記第2回転体を介して前記第1回転体に伝達されている状態において、前記第1回転方向への前記第1回転体の回転速度が、前記第2回転体の回転速度よりも高くなると、前記第2回転体は、前記予め定める軸線に平行な方向において、前記第3回転体から離れる方向に移動して、前記少なくとも1つの第1当接部の前記第2動力伝達面が少なくとも1つの第2当接部から離れることによって、前記第2回転体と前記第3回転体とが離れる。
第5側面のクラッチ機構によれば、少なくとも1つの第1当接部の第2動力伝達面が少なくとも1つの第2当接部から離れることによって、第2回転体と第3回転体とが離れるため、第3回転体から第2回転体への動力伝達を切断できる。
【0010】
本開示の第1から第5側面のいずれか1つに従う第6側面のクラッチ機構において、前記第1回転体および前記第2回転体の一方は、前記予め定める軸線に関して径方向に突出する第1凸部を含み、前記第1回転体および前記第2回転体の他方は、前記予め定める軸線に関して径方向に凹み、前記第1凸部を収容する第1凹部を含み、前記第1凸部は、前記第1回転体および前記第2回転体の前記他方に近づくにつれて、前記予め定める軸線まわりの幅が細くなるテーパ形状を含み、前記第1凹部は、前記第1回転体および前記第2回転体の前記一方に近づくにつれて、前記予め定める軸線まわりの幅が広がるテーパ形状を含む。
第6側面のクラッチ機構によれば、第1回転体が予め定める軸線まわりに回転すると、第1凸部に含まれるテーパ形状と第1凹部に含まれるテーパ形状とによって、第1回転体から第2回転体に予め定める軸線まわりの力と、予め定める軸に平行な方向への力と、を伝達できる。
【0011】
本開示の第6側面に従う第7側面のクラッチ機構において、前記少なくとも1つの第1当接部は、前記第1凸部に設けられ、前記少なくとも1つの第2当接部は、前記第1凹部に設けられ、前記第1動力伝達面は、前記予め定める軸線まわりにおける前記第1凸部の第1側面に設けられ、前記第2動力伝達面は、前記予め定める軸線まわりにおける前記第1凸部の第2側面に設けられる。
第7側面のクラッチ機構によれば、第1回転体が予め定める軸線まわりに回転すると、テーパ形状を含む第1凸部に設けられる第1動力伝達面とテーパ形状を含む第1凹部に設けられる第2動力伝達面とが当接することによって、第1回転体から第2回転体に予め定める軸線まわりの力と、予め定める軸に平行な方向への力と、を伝達できる。
【0012】
本開示の第7側面に従う第8側面のクラッチ機構において、前記第1回転体は、前記第1側面または前記第2側面が前記第1凹部の内壁部と接触した状態で回転することによって、前記第2回転体を前記予め定める軸線に平行な方向に移動させるように構成される。
第8側面のクラッチ機構によれば、第1回転体の第1側面または第2側面が第1凹部の内壁部と接触した状態で回転することによって、第1凹部のテーパ形状に沿って第2回転体を予め定める軸線に平行な方向に移動できる。
【0013】
本開示の第8側面に従う第9側面のクラッチ機構において、前記予め定める軸線に平行な方向において、前記第2回転体を前記第1回転体に向かって付勢する付勢部材をさらに備える。
第9側面のクラッチ機構によれば、付勢部材によって予め定める軸線に平行な方向において、第2回転体を第1回転体に向かって付勢できる。
【0014】
本開示の第1から第9側面のいずれか1つに従う第10側面のクラッチ機構において、前記第2回転体および前記第3回転体の少なくとも1つは、前記第2回転体と前記第3回転体とが接続された場合に、前記第2回転体と前記第3回転体との相対回転を規制する第1規制部を含む。
第10側面のクラッチ機構によれば、第1規制部によって第2回転体と第3回転体との間において回転力が好適に伝達される。
【0015】
本開示の第10側面に従う第11側面のクラッチ機構において、前記第1規制部は、前記第2回転体に設けられる少なくとも1つの第3当接部と、前記第回転体に設けられる少なくとも1つの第4当接部と、を含む。
第11側面のクラッチ機構によれば、少なくとも1つの第3当接部と少なくとも1つの第4当接部とが当接することによって第2回転体と第3回転体との間において回転力が好適に伝達される。
【0016】
本開示の第1から第11側面のいずれか1つに従う第12側面のクラッチ機構において、前記第2回転体と前記第3回転体とが接続されていない状態において、前記第1回転体が前記第1回転方向に回転する場合に、前記第2回転体の前記予め定める軸線まわりの回転を規制する第2規制部、をさらに備える。
第12側面のクラッチ機構によれば、第2規制部が第2回転体の予め定める軸線まわりの回転を規制することによって、第1回転体が第1回転方向に回転する場合に、第2回転体の第1回転方向への回転が抑制されるので、第2回転体が予め定める軸線に平行な方向に移動しやすくなり、第2回転体と第3回転体とが接続されやすくなる。
【0017】
本開示の第12側面に従う第13側面のクラッチ機構において、前記第2規制部は、前記予め定める軸線に平行な方向に突出する少なくとも1つの第2凸部、および、前記予め定める軸線に平行な方向に凹む少なくとも1つの第2凹部の少なくとも1つを含み、前記第2回転体は、前記予め定める軸線まわりに回転すると、前記第2規制部に当接するように構成される少なくとも1つの第5当接部を含む。
第13側面のクラッチ機構によれば、第5当接部が第2規制部に当接することによって、第2回転体の予め定める軸線まわりの回転が規制される。このため、第1回転体が第1回転方向に回転する場合に、第2回転体の第1回転方向への回転を抑制できる。
【0018】
本開示の第13側面に従う第14側面のクラッチ機構において、軸部材をさらに含み、前記第1回転体、前記第2回転体および前記第3回転体は、前記予め定める軸線が貫通し、かつ、前記軸部材が配置される貫通孔をそれぞれ有し、前記少なくとも1つの第2凸部および前記少なくとも1つの第2凹部の少なくとも1つは、前記軸部材に設けられる。
第14側面のクラッチ機構によれば、第5当接部が、軸部材に設けられる少なくとも1つの第2凸部および少なくとも1つの第2凹部の少なくとも1つに当接することによって、第2回転体の予め定める軸線まわりの回転が規制される。
【0019】
本開示の第14側面に従う第15側面のクラッチ機構において、前記第1回転体、前記第2回転体および前記第3回転体は、前記軸部材に対して回転可能に、前記軸部材に直接または間接的に支持される。
第15側面のクラッチ機構によれば、軸部材によって第1回転体、第2回転体および第3回転体を好適に支持できる。
【0020】
本開示の第15側面に従う第16側面のクラッチ機構において、前記第1回転体および前記第3回転体は、それぞれ前記軸部材にベアリングを介して支持される。
第16側面のクラッチ機構によれば、ベアリングによって第1回転体および第3回転体を軸部材に対して回転可能に安定して支持できる。
【0021】
本開示の第16側面に従う第17側面のクラッチ機構において、前記少なくとも1つの第5当接部は、前記予め定める軸線に関して、前記少なくとも1つの第2当接部よりも径方向の内側に配置される。
第17側面のクラッチ機構によれば、予め定める軸線に関して、予め定める第5当接部を少なくとも1つの第2当接部材よりも径方向の内側に配置できる。
【0022】
本開示の第18側面に従うクラッチシステムは、人力駆動車用のクラッチシステムであって、第1から第17側面のいずれか1つに記載のクラッチ機構と、第3回転方向および前記第3回転方向とは反対の第4回転方向に回転可能な出力部を有するモータと、前記モータを制御するように構成される制御部と、を備え、前記制御部が前記出力部を前記第3回転方向に回転するように前記モータを制御することによって、前記第1回転体が前記第1回転方向に回転し、前記第2回転体と前記第3回転体とが接続されて、前記モータの回転力が前記第3回転体に伝達され、前記制御部が前記出力部を前記第4回転方向に回転するように前記モータを制御することによって、前記第1回転体が前記第2回転方向に回転して、前記第2回転体と前記第3回転体とが接続されるように構成される。
第18側面のクラッチシステムによれば、モータを制御することによって、クラッチ機構によって伝達される動力を用いて伝達状態を切り替えできる。
【0023】
本開示の第19側面に従うクラッチシステムは、人力駆動車用のクラッチシステムであって、第3回転方向および前記第3回転方向とは反対の第4回転方向に回転可能な出力部を有するモータと、予め定める軸線まわりに回転可能な第1回転体と、前記予め定める軸線まわりに回転可能な第2回転体と、前記モータを制御するように構成される制御部と、前記制御部が前記出力部を前記第3回転方向に回転するように前記モータを制御することによって前記第1回転体が回転することにともなって、前記第1回転体が前記予め定める軸線に平行な方向に前記第2回転体に対して相対移動して、前記第1回転体と前記第2回転体とが接続されて、前記モータの回転力が前記第1回転体から前記第2回転体に伝達されるように構成され、かつ、前記制御部が前記出力部を前記第4回転方向に回転するように前記モータを制御することによって前記第1回転体が回転することにともなって、前記第1回転体が前記予め定める軸線に平行な方向に前記第2回転体に対して相対移動して、前記第1回転体と前記第2回転体とが接続されて、前記第2回転体の前記第3回転方向への回転力が前記第1回転体を介して前記モータに伝達されるように構成されるクラッチ機構と、を備える。
第19側面のクラッチシステムによれば、モータを制御することによって、クラッチ機構によって伝達される動力を用いて伝達状態を切り替えできる。
【0024】
本開示の第18側面に従う第20側面のクラッチシステムにおいて、前記クラッチ機構は、前記第1回転体が前記第1回転方向に回転している状態において、前記第1回転方向への前記第2回転体の回転速度が、前記第1回転体の回転速度よりも高くなると、前記第1回転体から前記第2回転体への動力伝達を切断する。
第20側面のクラッチシステムによれば、第1回転方向への第1回転体の回転速度と、第1回転方向へ第2回転体との回転速度との相対回転の速度に応じて、第1回転体から第2回転体への動力伝達を切断できる。
【0025】
本開示の第18から第20側面のいずれか1つに従う第21側面のクラッチシステムにおいて、前記モータは、前記モータの前記第3回転方向への回転力が前記第1回転体から前記第2回転体に伝達される場合、前記人力駆動車に推進力を付与するように構成される。
第21側面のクラッチシステムによれば、モータによって人力駆動車に推進力を付与できる。
【0026】
本開示の第18から第21側面のいずれか1つに従う第22側面のクラッチシステムにおいて、前記モータは、前記第2回転体から前記第1回転体を介して前記モータに前記第3回転方向の回転力が伝達される場合、発電するように構成される。
第22側面のクラッチシステムによれば、第2回転体から第1回転体を介してモータに第3回転方向の回転力が伝達される場合、発電できる。
【発明の効果】
【0027】
本開示の人力駆動車用のクラッチ機構および人力駆動車用のクラッチシステムは、クラッチ機構によって伝達される動力を用いて伝達状態を切り替えできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施形態の人力駆動車用のクラッチ機構を含む人力駆動車のハブを含む人力駆動車の一部を示す図。
図2図1の人力駆動車用のクラッチ機構の斜視図。
図3達状態において、図2のD2-D2線に沿う断面図。
図4】第1伝達状態または第2伝達状態において、図2のD2-D2線に沿う断面図。
図5図2のクラッチ機構の分解斜視図。
図6図2の第1回転体を第2方向の下流側から見た斜視図。
図7図3の第2回転体を第1方向の下流側から見た斜視図。
図8図3の第2回転体を第2方向の下流側から見た斜視図。
図9図2の第3回転体を第1方向の下流側から見た斜視図。
図10】実施形態の人力駆動車用のクラッチシステムを含む人力駆動車の電気的な構成を示すブロック図。
図11図10の制御部によって実行され、クラッチ機構の伝達状態を切り替える処理のフローチャート。
図12図2のクラッチ機構の動力の伝達状態を切り替える場合の各回転体を示す第1模式図。
図13図2のクラッチ機構の動力の伝達状態を切り替える場合の各回転体を示す第2模式図。
図14図2のクラッチ機構の動力の伝達状態を切り替える場合の各回転体を示す第3模式図。
図15図2のクラッチ機構の動力の伝達状態を切り替える場合の各回転体を示す第4模式図。
図16図2のクラッチ機構の動力の伝達状態を切り替える場合の各回転体を示す第5模式図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<実施形態>
図1から図16を参照して、実施形態の人力駆動車用のクラッチシステム10および人力駆動車用のクラッチ機構30について説明する。人力駆動車は、少なくとも1つの車輪を有し、少なくとも人力駆動力によって駆動できる乗り物である。人力駆動車は、例えばマウンテンバイク、ロードバイク、シティバイク、カーゴバイク、ハンドバイク、および、リカンベントなど種々の種類の自転車を含む。人力駆動車が有する車輪の数は限定されない。人力駆動車は、例えば1輪車および3輪以上の車輪を有する乗り物も含む。人力駆動車は、人力駆動力のみによって駆動できる乗り物に限定されない。人力駆動車は、人力駆動力だけではなく、電気モータの駆動力を推進に利用するイーバイク(E-bike)を含む。イーバイクは、電気モータによって推進が補助される電動アシスト自転車を含む。以下、実施形態において、人力駆動車を、電動アシスト自転車として説明する。
【0030】
クラッチシステム10は、クラッチ機構30と、モータ12と、制御部14と、を備える。
【0031】
好ましくは、モータ12は、モータ12の第3回転方向R3への回転力が第1回転体32から第2回転体34に伝達される場合、人力駆動車に推進力を付与するように構成される。モータ12は、電気モータを含む。モータ12は、ペダルから後輪までの人力駆動力の動力伝達経路、および、前輪の少なくとも1つに回転を伝達するように構成される。ペダルから後輪までの人力駆動力の動力伝達経路には、後輪も含まれる。後輪および前輪の少なくとも1つにモータ12を設ける場合、モータ12は、ハブモータの一部を構成してもよい。本実施形態では、モータ12は、後輪に回転を伝達するように構成される。モータ12およびモータ12が設けられるハウジング12Aを含んで、ドライブユニット12Bが構成される。本実施形態では、ドライブユニット12Bは、ハブモータ70Aであり、ハウジング12Aは、後輪のハブ体70Bである。モータ12は、ハブモータ70Aの一部を構成する。ハブモータ70Aは、ハブ軸70Cと、回転体取付部70Dと、をさらに備える。ハブ軸70Cは、人力駆動車のフレーム72に着脱可能に支持される。ハブ軸70Cの軸方向の両端部のそれぞれは、それぞれフレーム72にファスナ74によって固定される。ファスナ74は、例えば、ナットを含む。ハブ軸70Cの軸方向の両端部の外周部には、例えば、ファスナ74が結合される雄ねじが形成される。回転体取付部70Dには、第1駆動回転体76が取付可能に構成される。回転体取付部70Dは、ハブ軸70Cの中心軸心まわりに、ハブ軸70Cに回転可能に支持される。ハブ体70Bは、ハブ軸70Cの中心軸心まわりに、ハブ軸70C回転可能に支持される。回転体取付部70Dは、好ましくは、ワンウェイクラッチを介して、ハブ体70Bに接続される。ワンウェイクラッチは、ローラクラッチ、スプラグ式クラッチ、または、爪ラチェット式クラッチを含む。回転体取付部70Dは、ハブ体70Bと一体回転するようにハブ体70Bに相対回転不能に接続されてもよい。ハブ軸70Cの中心軸心まわりにおける回転体取付部70Dの外周部には、第1駆動回転体76が連結される連結部を含む。連結部は、ハブ軸70Cの中心軸心に平行に延びる1または複数のスプラインを含む。第1駆動回転体76は、スプロケット、プーリ、または、ベベルギアを形成する。第1駆動回転体76は、環状に形成され、内周部が連結部のスプラインに結合される。第1駆動回転体76は、回転体取付部70Dに取り付けられた状態において、ハブ軸70Cの軸方向に移動しないようにロック部材78によって回転体取付部70Dに固定される。ハブ軸70Cの中心軸心まわりにおいて、ハブ体70Bの外周部には、スポークが取り付けられる。モータ12は、第3回転方向R3および第3回転方向R3とは反対の第4回転方向R4に回転可能な出力部12Cを有する。出力部12Cは、例えば、モータ12の出力軸を含む。モータ12は、例えば、ブラシレスモータである。モータ12は、出力部12Cに連結されるロータと、ステータと、をさらに含む。モータ12は、インナーロータ型のモータ、および、アウターロータ型のモータのいずれであってもよい。例えば、モータ12のステータは、例えば、ハブ軸70Cに設けられる。モータ12は、モータ12の回転軸心がハブ軸70Cの中心軸心に実質的に一致するように、ハブ体70Bに設けられる。モータ12は、モータ12の回転軸心がハブ軸70C中心軸心とは異なるように、ハブ体70Bに設けられてもよい。
【0032】
好ましくは、クラッチ機構30は、モータ12と人力駆動力の動力伝達経路との間のモータ駆動力伝達経路に設けられる。好ましくは、クラッチ機構30は、モータ12と人力駆動力の動力伝達経路との間における回転力の伝達状態を切り替えるように構成される。人力駆動力の動力伝達経路は、ハブ体70Bを含み、本実施形態では、クラッチ機構30は、モータ12とハブ体70Bとの間のモータ駆動力伝達経路に設けられる。
【0033】
好ましくは、クラッチ機構30は、ハウジング12Aの内部空間に設けられる。本実施形態では、クラッチ機構30は、ハブ体70Bの内部空間に設けられる。クラッチ機構30は、第1回転体32と、第2回転体34と、を備える。第1回転体32は、予め定める軸線C1まわりに回転可能である。第2回転体34は、予め定める軸線C1まわりに回転可能である。クラッチ機構30は、第1回転体32と、第2回転体34と、第3回転体36と、を備える。第3回転体36は、予め定める軸線C1まわりに回転可能である。本実施形態では、第1回転体32はモータ12の出力部12Cに接続され、第3回転体36はハブ体70Bに接続される。第1回転体32と、モータ12の出力部12Cとは、第1回転体32の両回転方向への回転力が第1回転体32に伝達されるように接続され、モータ12の出力部12Cの両回転方向への回転力が第1回転体32に伝達されるように接続される。第3回転体36と、ハブ体70Bとは、第3回転体36の両回転方向への回転力がハブ体70Bに伝達され、ハブ体70Bの両回転方向への回転力が第3回転体36に伝達されるように接続される。第1回転体32とモータ12の出力部12Cとは、直接的に接続されていてもよく、第1減速機を介して間接的に接続されていてもよい。ドライブユニット12Bは、第1減速機をさらに含んでいてもよい。第1減速機の入力部は、例えば、モータ12の出力部12Cに連結され、第1減速機の出力部は第1回転体32に接続される。第3回転体36とハブ体70Bとは、直接的に接続されていてもよく、第2減速機または増速機を介して間接的に接続されていてもよい。第2減速機の入力部または増速機の入力部は、例えば、第3回転体36に連結され、第2減速機の力部または増速機の出力部はハブ体70Bに接続される。第1減速機、第2減速機および増速機は、少なくとも1対の歯車を含んでいてもよく、少なくとも一対のプーリとベルトとを含んでいてもよく、少なくとも一対のスプロケットとチェーンとを含んでいてもよい。第1減速機、第2減速機および増速機の少なくとも1つは、遊星歯車機構を含んでいてもよい。第1回転体32は、第1減速機の一部を構成してもよい。第3回転体36は、第2減速機の一部、または、増速機の一部を構成してもよい。第1回転体32は、単一部材としてモータ12の出力軸と一体に形成されてもよい。第3回転体36は、単一部材としてハブ体70Bと一体に形成されてもよい。
【0034】
好ましくは、第1回転体32は、第1回転体32と接続される部材から回転力が伝達するように構成される。クラッチ機構30は、第1回転体32と接続される部材から第1回転体32に伝達される回転力を、第3回転体36と接続される部材側へ伝達する第1伝達状態を形成するように構成される。
【0035】
好ましくは、第3回転体36は、第3回転体36と接続される部材から回転力が伝達されるように構成される。クラッチ機構30は、第3回転体36と接続される部材から第3回転体36に伝達される回転力を、第1回転体32と接続される部材側へ伝達する第2伝達状態を形成するように構成される。
【0036】
好ましくは、クラッチ機構30は、第1回転体32と接続される部材および第3回転体36と接続される部材の一方からクラッチ機構30に伝達される回転力を、第1回転体32と接続される部材および第3回転体36と接続される部材の他方側へ伝達しない非伝達状態を形成するように構成される。
【0037】
好ましくは、クラッチ機構30は、軸部材38をさらに含む。好ましくは、軸部材38は、軸部材38の中心軸心が、ハブ軸70Cの中心軸心に平行になるようにハブ体70Bの内部空間に配置される。本実施形態では、軸部材38の中心軸心は、ハブ軸70Cの中心軸心と等しい。本実施形態では、軸部材38は、単一部材として、ハブ軸70Cと一体に形成される。軸部材38は、実質的に円柱形状または円筒形を有する。第1回転体32、第2回転体34および第3回転体36は、予め定める軸線C1が貫通し、かつ、軸部材38が配置される貫通孔32A,34A,36Aをそれぞれ有する。予め定める軸線C1は、軸部材38の中心軸心と等しい。好ましくは、第1回転体32、第2回転体34および第3回転体36は、軸部材38に対して回転可能に、軸部材38に直接または間接的に支持される。好ましくは、第1回転体32および第3回転体36は、それぞれ軸部材38にベアリング40,42を介して支持される。第1回転体32を支持するベアリング40は、玉軸受であってもよく、ころ軸受であってもよく、すべり軸受であってもよい。第回転体3を支持するベアリング42は、玉軸受であってもよく、ころ軸受であってもよく、すべり軸受であってもよい。
【0038】
好ましくは、第1回転体32および第2回転体34は、予め定める軸線C1に平行な方向Xから見て、少なくとも一部が重なるように配置される。好ましくは、第2回転体34および第3回転体36は、予め定める軸線C1に平行な方向Xから見て、少なくとも一部が重なるように配置される。好ましくは、第1回転体32および第3回転体36は、予め定める軸線C1に平行な方向Xから見て、少なくとも一部が重複するように配置される。予め定める軸線C1に平行な方向Xの一方を、第1方向X1とし、予め定める軸線C1に平行な方向Xの他方を、第2方向X2とする。予め定める軸線C1に平行な方向Xにおいて、第2回転体34は、少なくとも一部が第1回転体32と第3回転体36との間に配置される。
【0039】
第1回転体32は、予め定める軸線C1に平行な方向Xにおいて第1端部32Xと、第2端部32Yとを有する。第1回転体32は、貫通孔32Aを定義する第1部分32Bおよび第2部分32Cを有する。第1部分32Bは、第1回転体32のうちの第1端部32X側に設けられる。第2部分32Cは、第1回転体32のうちの第2端部32Y側に設けられる。第1部分32Bと第2部分32Cとは、予め定める軸線C1に平行な方向Xにおいて隣り合う。第1部分32Bの内周面は、実質的に円筒形に形成される。第2部分32Cの内周面は、実質的に円筒形に形成される。好ましくは、第1部分32Bの内径は、第2部分3Cの内径よりも小さい。第1部分32Bの内径は、第2部分3Cの内径以上であってもよい。第1部分32Bの内周部と第2部分3Cの内周部との間に、第1段差部32Dが形成される。第1段差部32Dは、予め定める軸線C1に関して径方向に延びる。ベアリング40は、第2部分32Cに囲まれる空間に配置される。ベアリング40は、第1段差部32Dに隣接して配置され、第1段差部32Dよって第1方向X1への移動が規制される。例えば、ベアリング40が、内輪体、外輪体および内輪体と外輪体との間に配置される転動体とを含む場合、外輪体が、第2部分3Cおよび第1段差部32Dに接触し、内輪体が軸部材38に接触する。ベアリング40がすべり軸受の場合、ベアリング40は、第2部分32Cに囲まれる空間ではなく、第1部分32Bの内周部と軸部材38との間に配置されてもよい。
【0040】
第2回転体34は、予め定める軸線C1に平行な方向Xにおいて第1端部34Xと、第2端部34Yとを有する。第2回転体34は、貫通孔34Aを定義する第1部分34Bおよび第2部分34Cを有する。第1部分34Bは、第2回転体34のうちの第1端部34X側に設けられ、第2部分34Cは、第2回転体34のうちの第2端部34Y側に設けられる。第1部分34Bと第2部分34Cとは、予め定める軸線C1に平行な方向Xにおいて隣り合う。第2部分34Cの内周面は、実質的に円筒形に形成される。好ましくは、第1部分34Bの内径は、第2部分34Cの内径よりも大きい。第1部分34Bの内径は、第2部分34Cの内径以下であってもよい。第1部分32Bの内周部と第2部分34Cの内周部とによって、第2段差部34Dが形成される。第2段差部34Dは、予め定める軸線C1に関して径方向に延びる。好ましくは、第1部分34Bに囲まれる空間に、第1回転体32の第2部分32Cの少なくとも一部が配置される。
【0041】
第3回転体36は、予め定める軸線C1に平行な方向Xにおいて第1端部36Xと、第2端部36Yとを有する。第3回転体36は、貫通孔36Aを定義する第1部分36B、第2部分36C、および、第3部分36Dを有する。第1部分36Bは、第3回転体36のうちの第1端部36X側に設けられ、第2部分36Cは、第3回転体36のうちの第2端部36Y側に設けられる。第3部分36Dは、第1部分36Bと第2部分36Cとの間に設けられる。第1部分36Bと第3部分36Dとは、予め定める軸線C1に平行な方向Xにおいて隣り合う。第2部分36Cと第3部分36Dとは、予め定める軸線C1に平行な方向Xにおいて隣り合う。第1部分36Bの内周面は、実質的に円筒形に形成される。第2部分36Cの内周面は、実質的に円筒形に形成される。第3部分36Dの内周面は、実質的に円筒形に形成される。好ましくは、第1部分36Bの内径は、第3部分36Dの内径よりも大きい。第1部分36Bの内周部と第3部分36Dの内周部の間に、第3段差部36Eが形成される。第3段差部36Eは、予め定める軸線C1に関して径方向に延びる。第3部分36Dの内径は、第2部分36Cの内径よりも大きい。第2部分36Cの内周部と第3部分36Dの内周部との間に、第4段差部36Fが形成される。第4段差部36Fは、予め定める軸線C1に関して径方向に延びる。
【0042】
好ましくは、第1部分36Bの内径は、第2回転体34の第1部分34Bおよび第2部分34Cの外径よりも大きい。好ましくは、第3部分36Dの内径は、第2回転体34の第2部分34Cの外径よりも大きい。好ましくは、第2部分36Cの内径は、第1回転体32の第1部分32Bの内径と等しい。
【0043】
好ましくは、第1部分36Bに囲まれる空間に、第1回転体32の第2部分32Cの少なくとも一部と、第2回転体34の第部分34の少なくとも一部とが配置される。第1部分36Bは、第2回転体34を予め定める軸線C1と平行な方向Xにガイドするように構成される。第1部分36Bの内周面によって、第2回転体34の第部分34がガイドされる。第3部分36Dに囲まれる空間に、第2回転体34の第2部分34Cの少なくとも一部が配置されてもよい。
【0044】
ベアリング42は、第4段差部36Fに隣接して配置され、第4段差部36Fよって第2方向X2への移動が規制される。第4段差部36Fには、ベアリング42の予め定める軸線C1まわりの外周部を支持する支持部36Gが設けられる。支持部36Gは、第4段差部36Fから第1方向X1に突出する。支持部36Gは、第2部分36Cの内周部に形成されてもよい。ベアリング42が、内輪体、外輪体および内輪体と外輪体との間に配置される転動体とを含む場合、外輪体が、支持部36Gおよび第4段差部36Fに接触し、内輪体が軸部材38に接触する
【0045】
本実施形態では、第1回転体32の第2端部32Yは、第2回転体34の第1部分34Bによって囲まれる空間に配置される。本実施形態では、第2回転体34の第1端部34Xの少なくとも一部は、第3回転体36の第1部分36Bによって囲まれる空間に配置される。本実施形態では、第2回転体34の第2端部34Yの少なくとも一部は、第3回転体36の第3部分36Dによって囲まれる空間に配置される。
【0046】
好ましくは、クラッチ機構30は、予め定める軸線C1に平行な方向Xにおいて、第2回転体34を第1回転体32に向かって付勢する付勢部材44をさらに備える。付勢部材44は、例えば、コイルばねを含む。付勢部材44は、板ばねを含んでいてもよく、ゴム部材を含んでいてもよい。付勢部材44は、例えば、第3回転体36の第1部分36Bに囲まれる空間に配置される。付勢部材44は、例えば、第3回転体36の第3段差部36Eと、第2回転体34の第1部分34Bの外周部との間に配置される。付勢部材44は、例えば、第3回転体36の第3段差部36Eと、第2回転体34の第1部分34Bの外周部とに接触して、予め定める軸線C1に平行な方向Xにおいて、第2回転体34と第3回転体36とを互いに離反する方向に付勢する。付勢部材44は、第2回転体34および第3回転体36の少なくとも1つに対して相対回転可能に設けられる。本実施形態では、付勢部材44は、コイルばねによって形成され、予め定める軸線C1まわりにおいて、第2回転体34の少なくとも一部を囲むように配置される。第2回転体34が第3回転体36から第1方向X1に最も離れる状態において、第2回転体34の予め定める軸線C1に平行な方向における第1端部34Xは、第1回転体32の外周部に接触して、第2回転体34の第1方向X1への移動が規制される。
【0047】
第1回転体32は、少なくとも1つの第1当接部46を含む。第2回転体34は、少なくとも1つの第2当接部48を含む。第1回転体32および第2回転体34は、第1当接部46および第2当接部48が互いに接触できるように配置される。
【0048】
第1回転体32および第2回転体34の一方は、予め定める軸線C1に関して径方向Yに突出する第1凸部50を含む。第1回転体32および第2回転体34の他方は、予め定める軸線C1に関して径方向Yに凹み、第1凸部50を収容する第1凹部52を含む。本実施形態では、第1回転体32は第1凸部50を含み、第2回転体34は第1凹部52を含む。第1凸部50は、例えば、予め定める軸線C1まわりにおいて、第1回転体32の第2部分32Cの外周部に設けられる。本実施形態では、第1回転体32に、複数の第1凸部50が設けられるが、第1凸部50は、1つのみ設けられてもよい。第1回転体32に、複数の第1凸部50が設けられる場合、好ましくは、予め定める軸線C1まわりに複数の第1凸部50が等間隔に配置される。本実施形態では、第1回転体32に、4つの第1凸部50が設けられ、予め定める軸線C1まわりに4つの第1凸部50が等間隔に配置される。第1凹部52は、例えば、予め定める軸線C1まわりにおいて、第2回転体34の第1部分34Bの内周部に設けられる。本実施形態では、第2回転体34に、複数の第1凹部52が設けられるが、第1凹部52は、1つのみ設けられてもよい。第2回転体34に、複数の第1凹部52が設けられる場合、好ましくは、予め定める軸線C1まわりに複数の第1凹部52が等間隔に配置される。本実施形態では、第2回転体34に、4つの第1凹部52が設けられ、予め定める軸線C1まわりに4つの第1凹部52が等間隔に配置される。
【0049】
第1凸部50は、第1回転体32および第2回転体34の他方に近づくにつれて、予め定める軸線C1まわりの幅が細くなるテーパ形状を含む。第1凹部52は、第1回転体32および第2回転体34の一方に近づくにつれて、予め定める軸線C1まわりの幅が広がるテーパ形状を含む。
【0050】
少なくとも1つの第1当接部46は、第1凸部50に設けられる。少なくとも1つの第2当接部48は、第1凹部52に設けられる。少なくとも1つの第1当接部46は、第1動力伝達面46Aと、第2動力伝達面46Bと、を含む。第1動力伝達面46Aは、予め定める軸線C1まわりにおける第1凸部50の第1側面50Aに設けられる。第2動力伝達面46Bは、予め定める軸線C1まわりにおける第1凸部50の第2側面50Bに設けられる。第1回転体32は、第1側面50Aまたは第2側面50Bが第1凹部52の内壁部と接触した状態で回転することによって、第2回転体34を予め定める軸線C1に平行な方向Xに移動させるように構成される。少なくとも1つの第2当接部48は、第3動力伝達面48Aと、第4動力伝達面48Bとを含む。好ましくは、第1側面50Aおよび第2側面50Bとは、予め定める軸線C1まわりにおいて、間隔をあけて配置される。第1側面50Aおよび第2側面50Bは、例えば、曲面を含む。予め定める軸線C1に関する径方向の外側から見て、第1側面50Aは、予め定める軸線C1における第1側面50Aの一端と他端とを結ぶ直線に対して凹む曲面を含んでいてもよい。予め定める軸線C1に関する径方向の外側から見て、第2側面50Bは、予め定める軸線C1における第2側面50Bの一端と他端とを結ぶ直線に対して凹む曲面を含んでいてもよい。第1側面50Aおよび第2側面50Bの少なくとも1つは、平面に形成されてもよい。
【0051】
第2回転体34および第3回転体36の少なくとも1つは、第2回転体34と第3回転体36とが接続された場合に、第2回転体34と第3回転体36との相対回転を規制する第1規制部54を含む。第1規制部54は、第2回転体34に設けられる少なくとも1つの第3当接部56と、第3回転体36に設けられる少なくとも1つの第4当接部58と、を含む。例えば、少なくとも1つの第3当接部56は、第2回転体34の外周部に設けられる。好ましくは、少なくとも1つの第3当接部56は、複数の第3当接部56を含む。複数の第3当接部56は、予め定める軸線C1まわりにおいて、第2回転体34の周方向に間隔をあけて、第2回転体34に設けられる。各第3当接部56は、例えば、第2回転体34の第2段差部34Dに設けられる。各第3当接部56は、第2方向X2に向かって第2段差部34Dから突出する凸部を含む。例えば、第4当接部58は、第3回転体36の内周部に設けられる。好ましくは、少なくとも1つの第4当接部58は、複数の第4当接部58を含む。複数の第4当接部58は、予め定める軸線C1まわりにおいて、第3回転体36の周方向に間隔をあけて、第3回転体36に設けられる。各第4当接部58は、例えば、第3回転体36の第3段差部36Eに設けられる。各第4当接部58は、第1方向X1に向かって第3段差部36Eから突出する凸部を含む。複数の第3当接部56は、好ましくは、予め定める軸線C1まわりに等間隔に配置される。複数の第4当接部58は、好ましくは、予め定める軸線C1まわりに等間隔に配置される。好ましくは、複数の第3当接部56の個数と、複数の第4当接部58の個数とは、等しい。本実施形態では、少なくとも1つの第3当接部56は、6個の第3当接部56を含み、少なくとも1つの第4当接部58は、6個の第4当接部58を含む。予め定める軸線C1に平行な方向Xにおいて、例えば、各第3当接部56の寸法は、各第4当接部58の寸法と実質的に等しい。予め定める軸線C1に平行な方向Xにおいて、各第3当接部56の寸法は、各第4当接部58の寸法よりも大きくてもよく、小さくてもよい。予め定める軸線C1に平行な方向Xにおいて、第2回転体34と第3回転体36とが近づくと、各第3当接部56は、第3回転体36の周方向において、隣り合う2つの第4当接部58の間に配置される。予め定める軸線C1に平行な方向Xにおいて、第2回転体34と第3回転体36とが近づき、各第3当接部56が、第3回転体36の周方向において、隣り合う2つの第4当接部58の間に配置される状態において、第3当接部56は、隣り合う2つの第4当接部58の間の予め定める範囲内において移動可能に構成される。予め定める軸線C1に平行な方向Xにおいて、第2回転体34と第3回転体36とが近づき、各第3当接部56が、第3回転体36の周方向において、隣り合う2つの第4当接部58の間に配置される状態において、第2回転体34と、第3回転体36とは、予め定める角度範囲内において相対回転可能である。複数の第3当接部56および複数の第4当接部58は、それぞれローレットによって構成されてもよい。複数の第3当接部56および複数の第4当接部58は、例えば、予め定める軸線C1に関して、実質的に垂直な面に設けられる。複数の第3当接部56および複数の第4当接部58は、予め定める軸線C1に関して径方向の内側に向かうにつれて、第1方向X1側に傾斜するように構成されてもよい。
【0052】
好ましくは、クラッチ機構30は、第2規制部60、をさらに備える。第2規制部60は、第2回転体34と第3回転体36とが接続されていない状態において、第1回転体32が第1回転方向R1に回転する場合に、第2回転体34の予め定める軸線C1まわりの回転を規制する。
【0053】
第2規制部60は、予め定める軸線C1に平行な方向Xに突出する少なくとも1つの第2凸部60A、および、予め定める軸線C1に平行な方向Xに凹む少なくとも1つの第2凹部の少なくとも1つの少なくとも1つ、を含む。第2回転体34は、予め定める軸線C1まわりに回転すると、第2規制部60に当接するように構成される少なくとも1つの第5当接部62を含む。少なくとも1つの第2凸部60Aおよび少なくとも1つの第2凹部の少なくとも1つは、軸部材38に設けられる。第2規制部60は、軸部材38の外周部に設けられる。第2規制部60は、軸部材38とは別体に形成されるが、単一部材として軸部材38と一体に形成されてもよい。第2規制部60は、実質的に円筒形を有する。第2規制部60は、軸部材38と一体に回転するように軸部材38に取り付けられる。例えば、第2規制部60は、軸部材38に予め定める軸線C1と直交する方向に延びるファスナ部材38Bによって取り付けられる。ファスナ部材38Bは、ピンまたはボルトを含む。好ましくは、第2規制部60は、少なくとも一部が第1回転体32の第2部分32Cに囲まれる空間に配置される。第2規制部60は、予め定める軸線C1に平行な方向Xにおいてベアリング40と隣り合うように配置される。第2規制部60は、ベアリング40の第2方向X2への移動を規制する。例えば、ベアリング40が、内輪体、外輪体および内輪体と外輪体との間に配置される転動体とを含む場合、予め定める軸線C1に平行な方向Xにおいて、内輪体が、第2規制部60に接触する。少なくとも1つの第2凸部60Aは、好ましくは、複数の第2凸部60Aを含む。複数の第2凸部60Aは、予め定める軸線C1まわりに等間隔に配置される。本実施形態では、少なくとも1つの第2凸部60Aは、3つの第2凸部60Aを含む。少なくとも1つの第1凸部50が、複数の第1凸部50を含む場合、好ましくは、少なくとも1つの第2凸部60Aの数は、複数の第1凸部50の数よりも少ない。
【0054】
少なくとも1つの第5当接部62は、第2回転体34の内周部に設けられる。好ましくは、少なくとも1つの第5当接部62は、第2回転体34の第2部分34Cの内周部に設けられる。少なくとも1つの第5当接部62は、第2回転体34の内周部から、予め定める軸線C1に関する径方向の内側に突出する凸部62Aを含む。少なくとも1つの第5当接部62は、予め定める軸線C1に関して、少なくとも1つの第2当接部48よりも径方向の内側に配置される。少なくとも1つの第5当接部62は、好ましくは、複数の第5当接部62を含む。複数の第5当接部62は、予め定める軸線C1まわりに等間隔に配置される。少なくとも1つの第2凸部60Aが複数の第2凸部60Aを含み、少なくとも1つの第5当接部62が複数の第5当接部62を含む場合、好ましくは、複数の第2凸部60Aの個数は、複数の第5当接部62の個数と、等しい。
【0055】
クラッチ機構30は、第1回転体32が予め定める軸線C1まわりの第1回転方向R1に回転すると、少なくとも1つの第1当接部46の第1動力伝達面46Aが少なくとも1つの第2当接部48に当接することによって、第2回転体34が予め定める軸線C1に平行な方向Xに移動して、第2回転体34と第3回転体36とが接続されるように構成される。好ましくは、クラッチ機構30は、第1回転体32が予め定める軸線C1まわりの第1回転方向R1に回転すると、少なくとも1つの第1当接部46の第1動力伝達面46Aが少なくとも1つの第2当接部48の第3動力伝達面48Aに当接することによって、第2回転体34が予め定める軸線C1に平行な方向Xに移動して、第2回転体34と第3回転体36とが接続されるように構成される。クラッチ機構30は、少なくとも1つの第1当接部46の第1動力伝達面46Aが少なくとも1つの第2当接部48に当接し、かつ、第2回転体34と第3回転体36とが接続された状態において、第1回転体32が第1回転方向R1に回転すると、第1回転体32の第1回転方向R1の回転力が第2回転体34を介して第3回転体36に伝達されるように構成される。好ましくは、クラッチ機構30は、少なくとも1つの第1当接部46の第1動力伝達面46Aが少なくとも1つの第2当接部48の第3動力伝達面48Aに当接し、かつ、第2回転体34と第3回転体36とが接続された状態において、第1回転体32が第1回転方向R1に回転すると、第1回転体32の第1回転方向R1の回転力が第2回転体34を介して第3回転体36に伝達されるように構成される。第1回転体32の第1回転方向R1の回転力が第2回転体34を介して第3回転体36に伝達される状態を、第1伝達状態と記載する。
【0056】
クラッチ機構30は、第1回転体32が第1回転方向R1とは反対の第2回転方向R2に回転すると、少なくとも1つの第1当接部46の第2動力伝達面46Bが少なくとも1つの第2当接部48に当接することによって、第2回転体34が予め定める軸線C1に平行な方向Xに移動して、第2回転体34と第3回転体36とが接続されるように構成される。好ましくは、クラッチ機構30は、第1回転体32が第1回転方向R1とは反対の第2回転方向R2に回転すると、少なくとも1つの第1当接部46の第2動力伝達面46Bが少なくとも1つの第2当接部48の第4動力伝達面48Bに当接することによって、第2回転体34が予め定める軸線C1に平行な方向Xに移動して、第2回転体34と第3回転体36とが接続されるように構成される。クラッチ機構30は、少なくとも1つの第1当接部46の第2動力伝達面46Bが少なくとも1つの第2当接部48に当接し、かつ、第2回転体34と第3回転体36とが接続された状態において、第3回転体36が第1回転方向R1に回転すると、第3回転体36の第1回転方向R1への回転力が第2回転体34を介して第1回転体32に伝達されるように構成される。好ましくは、クラッチ機構30は、少なくとも1つの第1当接部46の第2動力伝達面46Bが少なくとも1つの第2当接部48の第4動力伝達面48Bに当接し、かつ、第2回転体34と第3回転体36とが接続された状態において、第3回転体36が第1回転方向R1に回転すると、第3回転体36の第1回転方向R1への回転力が第2回転体34を介して第1回転体32に伝達されるように構成される。第3回転体36の第1回転方向R1への回転力が第2回転体34を介して第1回転体32に伝達される状態を、第2伝達状態と記載する。
【0057】
クラッチ機構30は、第1回転体32が第1回転方向R1に回転している状態において、第1回転方向R1への第2回転体34の回転速度が、第1回転体32の回転速度よりも高くなると、第1回転体32から第2回転体34への動力伝達を切断する。第1回転体32が第1回転方向R1に回転し、第1回転体32の第1回転方向R1の回転力が第2回転体34を介して第3回転体36に伝達されている状態において、第1回転方向R1への第2回転体34の回転速度が、第1回転体32の回転速度よりも高くなると、第1回転体32から第2回転体34への動力伝達を切断する。第1回転体32から第2回転体34への動力伝達が切断される状態を、非伝達状態と記載する。
【0058】
第1回転体32が第1回転方向R1に回転し、第1回転体32の第1回転方向R1の回転力が第2回転体34を介して第3回転体36に伝達されている状態において、第1回転方向R1への第2回転体34の回転速度が、第1回転体32の回転速度よりも高くなると、第2回転体34は、予め定める軸線C1に平行な方向Xにおいて、第3回転体36から離れる方向に移動して、少なくとも1つの第1当接部46の第1動力伝達面46Aが少なくとも1つの第2当接部48から離れることによって、第2回転体34と第3回転体36とが離れる。好ましくは、第1回転体32が第1回転方向R1に回転し、第1回転体32の第1回転方向R1の回転力が第2回転体34を介して第3回転体36に伝達されている状態において、第1回転方向R1への第2回転体34の回転速度が、第1回転体32の回転速度よりも高くなると、第2回転体34は、予め定める軸線C1に平行な方向Xにおいて、第3回転体36から離れる方向に移動して、少なくとも1つの第1当接部46の第1動力伝達面46Aが少なくとも1つの第2当接部48の第3動力伝達面48Aから離れることによって、第2回転体34と第3回転体36とが離れる。
【0059】
第3回転体36の第1回転方向R1への回転力が第2回転体34を介して第1回転体32に伝達されている状態において、第1回転方向R1への第1回転体32の回転速度が、第2回転体34の回転速度よりも高くなると、第3回転体36から第2回転体34への動力伝達が切断される。
【0060】
第3回転体36の第1回転方向R1への回転力が第2回転体34を介して第1回転体32に伝達されている状態において、第1回転方向R1への第1回転体32の回転速度が、第2回転体34の回転速度よりも高くなると、第2回転体34は、予め定める軸線C1に平行な方向Xにおいて、第3回転体36から離れる方向に移動して、少なくとも1つの第1当接部46の第2動力伝達面46Bが少なくとも1つの第2当接部48から離れることによって、第2回転体34と第3回転体36とが離れる。好ましくは、第3回転体36の第1回転方向R1への回転力が第2回転体34を介して第1回転体32に伝達されている状態において、第1回転方向R1への第1回転体32の回転速度が、第2回転体34の回転速度よりも高くなると、第2回転体34は、予め定める軸線C1に平行な方向Xにおいて、第3回転体36から離れる方向に移動して、少なくとも1つの第1当接部46の第2動力伝達面46Bが少なくとも1つの第2当接部48の第4動力伝達面48Bから離れることによって、第2回転体34と第3回転体36とが離れる。
【0061】
制御部14は、予め定める制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。演算処理装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。演算処理装置は、相互に離れた複数の場所に設けられてもよい。制御部14は、1または複数のマイクロコンピュータを含んでいてもよい。好ましくは、ドライブユニット12Bは、記憶部16をさらに含む。記憶部16には、各種の制御プログラムおよび各種の制御処理に用いられる情報が記憶される。記憶部16は、例えば不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。不揮発性メモリは、例えば、ROM(Read-Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、および、フラッシュメモリの少なくとも1つを含む。揮発性メモリは、例えば、RAM(Random access memory)を含む。
【0062】
クラッチシステム10は、好ましくは、モータ12の駆動回路18をさらに備える。駆動回路18と、制御部14とは、好ましくは、モータ12が設けられるハウジング12Aに設けられる。好ましくは、ドライブユニット12Bは、駆動回路18と、制御部14とをさらに含む。駆動回路18と、制御部14とは、例えば同一の回路基板に設けられてもよい。駆動回路18は、インバータ回路を含む。駆動回路18は、バッテリ20からモータ12に供給される電力を制御する。駆動回路18は、制御部14と有線接続または無線接続される。駆動回路18は、制御部14からの制御信号に応じてモータ12を駆動させる。
【0063】
好ましくは、クラッチシステム10は、バッテリ20を含む。バッテリ20は、1または複数のバッテリ素子を含む。バッテリ素子は、充電池を含む。バッテリ20は、制御部14に電力を供給する。バッテリ20は、好ましくは、制御部14と通信線または無線通信装置を介して通信可能に接続される。バッテリ20は、例えば電力線通信(PLC;power line communication)、CAN(Controller Area Network)、または、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)によって制御部14と通信可能である。
【0064】
好ましくは、モータ12は、第2回転体34から第1回転体32を介してモータ12に第3回転方向R3の回転力が伝達される場合、発電するように構成される。モータ12は、出力軸を回転させることによって発電する。モータ12が発電した電力は、例えば、バッテリ20に充電される。モータ12が発電した電力は、モータ12に接続されるキャパシタに蓄電されてもよく、人力駆動車用のコンポーネントに供給されてもよい。人力駆動車用のコンポーネントは、例えば、ランプ、電動変速機、電動サスペンション、および、電動シートポストの少なくとも1つを含む。
【0065】
好ましくは、制御部14は、人力駆動車の車速、クランクの回転速度、および、クランクに入力される人力駆動力の少なくとも1つに応じてモータ12を制御するように構成される。好ましくは、制御部14は、ブレーキの状態に応じてモータ12を制御するように構成される。好ましくは、クラッチシステム10は、車速センサ22、クランク回転センサ24、および、人力駆動力検出部26を含む。好ましくは、クラッチシステム10は、ブレーキセンサ28を含む。
【0066】
車速センサ22は、人力駆動車の車輪の回転速度に応じた情報を検出するように構成される。車速センサ22は、例えば、人力駆動車の車輪に設けられる磁石を検出するように構成される。車速センサ22は、例えば、車輪が1回転する間に、予め定める回数の検出信号を出力するように構成される。予め定める回数は、例えば、1である。車速センサ22は、車輪の回転速度に応じた信号を出力する。制御部14は、車輪の回転速度と、車輪の周長に関する情報とに基づいて人力駆動車の車速を算出できる。記憶部16には車輪の周長に関する情報が記憶される。車速センサ22は、例えばリードスイッチを構成する磁性リード、または、ホール素子を含む。車速センサ22は、人力駆動車のフレームのチェーンステイに取り付けられ、後輪に取り付けられる磁石を検出する構成としてもよく、フロントフォークに設けられ、前輪に取り付けられる磁石を検出する構成としてもよい。本実施形態において、車速センサ22は、車輪が一回転した場合に、リードスイッチが磁石を1回検出するように構成される。車速センサ22は、車輪に設けられる磁石を検出する構成に限らず、例えば、光学センサなどを含んで構成されてもよい。車速センサ22は、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部14に接続される。
【0067】
クランク回転センサ24は、クランクの回転速度に応じた情報を検出するように構成される。クランク回転センサ24は、例えば、人力駆動車のフレーム72に設けられる。クランク回転センサ24は、磁界の強度に応じた信号を出力する磁気センサを含んで構成される。周方向に磁界の強度が変化する環状の磁石が、クランク軸、クランク軸に連動して回転する部材、または、クランク軸から第2駆動回転体までの間の動力伝達経路に設けられる。第2駆動回転体は、スプロケット、プーリ、または、ベベルギアを形成する。クランク軸に連動して回転する部材は、モータ12の出力軸を含んでもよい。クランク回転センサ24は、クランク軸の回転速度に応じた信号を出力する。磁石は、クランク軸から第2駆動回転体までの人力駆動力の動力伝達経路において、クランク軸と一体に回転する部材に設けられてもよい。クランク軸と第2駆動回転体とは、相対回転しないように接続されてもよく、第1ワンウェイクラッチを介して接続されてもよい。例えば、磁石は、クランク軸と第2駆動回転体と相対回転しないように接続される場合、第2駆動回転体に設けられてもよい。クランク回転センサ24は、磁気センサに代えて光学センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、またはトルクセンサなどを含んでいてもよい。クランク回転センサ24は、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部14に接続される。
【0068】
人力駆動力検出部26は、トルクセンサ26Aを含む。トルクセンサ26Aは、人力駆動力によってクランクに与えられるトルクに応じた信号を出力するように構成される。トルクセンサ26Aは、例えば、人力駆動力の動力伝達経路に第1ワンウェイクラッチが設けられる場合、好ましくは、第1ワンウェイクラッチよりも動力伝達経路の上流側に設けられる。トルクセンサ26Aは、歪センサ、磁歪センサ、または、圧力センサなどを含む。歪センサは、歪ゲージを含む。トルクセンサ26Aは、動力伝達経路、または、動力伝達経路に含まれる部材の近傍に含まれる部材に設けられる。動力伝達経路に含まれる部材は、例えば、クランク軸、クランク軸と第1回転体32との間において人力駆動力を伝達する部材、クランクアーム、または、ペダルである。トルクセンサ26Aは、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部14に接続される。人力駆動力検出部26は、人力駆動力に関する情報を取得できればどのような構成であってもよく、例えば、ペダルに与えられる圧力を検出するセンサ、または、チェーンの張力を検出するセンサなどを含んでいてもよい。
【0069】
ブレーキセンサ28は、ブレーキの状態に関する情報を検出するように構成される。ブレーキの状態に関する情報は、ブレーキ装置の状態、ブレーキ操作装置の状態、および、ブレーキ装置とブレーキ操作装置とを接続するケーブルの状態、の少なくとも1つを含む。ブレーキ装置は、例えば、ディスクブレーキ装置、またはキャリパブレーキ装置などを含む。ブレーキセンサ28は、例えば、ブレーキ操作装置の操作に応じて、制御部14に信号を出力する。ブレーキセンサ28は、ブレーキ装置の可動部の移動量を検出するように構成されてもよく、ブレーキ操作装置のブレーキレバーの移動量を検出するように構成されてもよく、ブレーキ装置とブレーキ操作装置とを接続するケーブルの移動量を検出するように構成されてもよい。
【0070】
制御部14は、モータ12を制御するように構成される。クラッチ機構30は、制御部14が出力部12Cを第3回転方向R3に回転するようにモータ12を制御することによって、第1回転体32が第1回転方向R1に回転し、第2回転体34と第3回転体36とが接続されて、モータ12の回転力が第3回転体36に伝達される。クラッチ機構30は、制御部14が出力部12Cを第4回転方向R4に回転するようにモータ12を制御することによって、第1回転体32が第2回転方向R2に回転して、第2回転体34と第3回転体36とが接続されるように構成される。例えば、クラッチ機構30は、第3回転体36の回転が停止している状態において、制御部14が出力部12Cを第4回転方向R4に回転するようにモータ12を制御することによって、第1回転体32が第2回転方向R2に回転して、第2回転体34と第3回転体36とが接続される。
【0071】
クラッチ機構30は、制御部14が出力部12Cを第3回転方向R3に回転するようにモータ12を制御することによって、第1回転体32が予め定める軸線C1に平行な方向Xに第2回転体34に対して相対移動して、第1回転体32と第2回転体34とが接続されて、モータ12の回転力が第1回転体32から第2回転体34に伝達されるように構成され、かつ、制御部14が出力部12Cを第4回転方向R4に回転するようにモータ12を制御することによって、第1回転体32が予め定める軸線C1に平行な方向Xに第2回転体34に対して相対移動して、第1回転体32と第2回転体34とが接続されて、第2回転体34の第3回転方向R3への回転力が第1回転体32を介してモータ12に伝達されるように構成される。例えば、クラッチ機構30は、第3回転体36の回転が停止している状態において、制御部14が出力部12Cを第4回転方向R4に回転するようにモータ12を制御することによって、第1回転体32が予め定める軸線C1に平行な方向Xに第2回転体34に対して相対移動して、第1回転体32と第2回転体34とが接続されて、第2回転体34の第3回転方向R3への回転力が第1回転体32を介してモータ12に伝達されるように構成される。
【0072】
図11を参照して、クラッチ機構30の状態を切り替える処理について説明する。制御部14は、制御部14に電力が供給されると、処理を開始して図11に示すフローチャートのステップS11に移行する。制御部14は、図11のフローチャートが終了すると、電力の供給が停止されるまでは、予め定める周期後にステップS11からの処理を繰り返す。
【0073】
制御部14は、ステップS11において、第1伝達状態が要求されるか否かを判定する。制御部14は、第1伝達状態が要求される場合、ステップS12に移行する。第1伝達状態は、モータ12によって人力駆動車に推進力を付与すべき場合に要求される。第1伝達状態は、例えば、人力駆動力が予め定める閾値以上、かつ、人力駆動車の走行速度が予め定める速度以下の場合に要求される。
【0074】
制御部14は、ステップS12において、モータ12の出力部12Cを第3回転方向R3に回転するようにモータ12を制御し、処理を終了する。制御部14が、モータ12の出力部12Cを第3回転方向R3に回転するようにモータ12を制御することによって、例えば、クラッチ機構30が第2伝達状態または非伝達状態の場合、クラッチ機構30が第2伝達状態または非伝達状態から第1伝達状態に切り替えられる。
【0075】
制御部14は、ステップS11において、第1伝達状態が要求されない場合、ステップS13に移行する。制御部14は、ステップS13において、第2伝達状態が要求されるか否かを判定する。制御部14は、第2伝達状態が要求される場合、ステップS14に移行する。第2伝達状態は、モータ12によって人力駆動車に制動力を付与すべき場合、および、モータ12によって回生発電させる場合の少なくとも1つの場合に要求される。第2伝達状態は、例えば、ブレーキセンサ28がブレーキ操作装置の操作を検出する場合に要求される。
【0076】
制御部14は、ステップS14において、モータ12の出力部12Cを第4回転方向R4に回転するようにモータ12を制御し、処理を終了する。制御部14が、モータ12の出力部12Cを第4回転方向R4に回転するようにモータ12を制御することによって、例えば、クラッチ機構30が第1伝達状態または伝達状態の場合、クラッチ機構30が第1伝達状態または非伝達状態から第2伝達状態に切り替えられる。制御部14は、ステップS14において、例えば、第2回転体と第3回転体とが接続されるために必要な回転量だけ、モータ12の出力部12Cを第4回転方向R4に回転するようにモータ12を制御する。制御部14は、ステップS14において、例えば、モータ12の出力部12Cを第4回転方向R4に回転するようにモータ12を制御した後、モータ12に流れる電流を検出し、モータ12に流れる電流に応じて、モータ12の駆動を停止するように構成されてもよい。制御部14は、ステップS14において、例えば、第2回転体と第3回転体とが接続されるために必要な時間だけ、モータ12の出力部12Cを第4回転方向R4に回転するようにモータ12を制御してもよい。
【0077】
制御部14は、ステップS13において、第2伝達状態が要求されない場合、処理を終了する。制御部14は、第1伝達状態および第2伝達状態の両方が要求されない場合、モータ12を第3回転方向R3および第4回転方向R4のいずれにも回転させるように制御する。これによって、非伝達状態が形成される。
【0078】
図12から図16を参照して、図11のステップS12において、伝達状態を切り替える場合のクラッチ機構30の動作について説明する。図12から図16において、複数の第3当接部56と複数の第4当接部58とは、相補的な形状を有するローレットによって構成される。複数の第3当接部56と複数の第4当接部58とが当接した状態では、第2回転体34と第3回転体36との予め定める軸線C1まわりにおける相対回転が阻止される。
【0079】
図12から図14を参照して、図11のステップS12において、非伝達状態から第1伝達状態に切り替えられる場合のクラッチ機構30の動作について説明する。
図12に示す非伝達状態の場合、第1規制部54の第3当接部56と第4当接部58とが接触していない。このため、第1回転体32と第3回転体36との相対回転が許容され、例えば、コースティング状態では、第3回転体36は第1回転方向R1に回転する。
【0080】
図12の非伝達状態において、制御部14によってモータ12が駆動し、第1回転体32が第1回転方向R1に回転すると、図13に示されるように、第1回転体32の第1動力伝達面46Aが第2回転体34の第3動力伝達面48Aを第1回転方向R1に押す。この場合、第1動力伝達面46Aが第3動力伝達面48Aを付勢部材44の付勢力に逆らって第2方向X2に押す。このため、予め定める軸線C1に平行な方向Xにおいて第2回転体34が第3回転体36に向かって移動する。図14に示されるように、第2回転体34が第3回転体36に向かって移動し、第1規制部54の第3当接部56と第4当接部58とが接触すると、第2回転体34と第3回転体36が一体に回転するようになる。このため、第1回転体32の第1回転方向R1の回転力が第2回転体34を介して第3回転体36に伝達される。
【0081】
図12および図14から図16を参照して、図11のステップS14において、第1伝達状態から第2伝達状態に切り替えられる場合のクラッチ機構30の動作について説明する。
図14の第1伝達状態において、制御部14によって、第1回転体32を第2回転方向R2に回転させるために、第1回転方向R1に回転している第1回転体32の回転速度を低下させ、第1回転体32の第1回転方向R1への回転速度が、第3回転体36の第1回転方向R1への回転速度よりも低くなると、図12に示されるように、第1回転体32の第1動力伝達面46Aが第2回転体34の第3動力伝達面48Aから離れ、付勢部材44の付勢力によって第2回転体34が第1方向X1に移動する。このため、クラッチ機構30は、非伝達状態になる。図15に示されるように、制御部14によってモータ12を制御して、第1回転体32が第2回転方向R2に回転すると、第2動力伝達面46Bが第2回転体34の第4動力伝達面48Bに接触し、第2回転体34を第2回転方向R2に押す。この場合、第2動力伝達面46Bが第4動力伝達面48Bを付勢部材44の付勢力に逆らって第2方向X2に押す。このため、予め定める軸線C1に平行な方向Xにおいて第2回転体34が第3回転体36に向かって移動する。図16に示されるように、第2回転体34が第3回転体36に向かって移動し、第1規制部54の第3当接部56と第4当接部58とが接触すると、第2回転体34と第3回転体36が一体に回転するようになる。このため、第3回転体36の第1回転方向R1の回転力が第2回転体34を介して第1回転体32に伝達される。
【0082】
図12から図14、および、図16を参照して、図11のステップS12において、第2伝達状態から第1伝達状態に切り替えられる場合のクラッチ機構30の動作について説明する。
図16の第2伝達状態において、制御部14によってモータ12を制御し、第1回転体32が第1回転方向R1に回転し、第1回転方向R1に回転している第1回転体32の回転速度を増加させ、第1回転体32の第1回転方向R1への回転速度が、第3回転体36の第1回転方向R1への回転速度よりもわずかに高くなると、図12に示されるように、第1回転体32の第2動力伝達面46Bが第2回転体34の第4動力伝達面48Bから離れ、付勢部材44の付勢力によって第2回転体34が第1方向X1に移動する。このため、クラッチ機構30は、非伝達状態になる。制御部14によってモータ12を制御して、第1回転体32が第1回転方向R1に回転し、第1回転体32の第1回転方向R1への回転速度が、第3回転体36の第1回転方向R1への回転速度よりも高くなると、図13に示されるように、第1回転体32の第1動力伝達面46Aが第2回転体34の第3動力伝達面48Aを第1回転方向R1に押す。この場合、第1動力伝達面46Aが第3動力伝達面48Aを付勢部材44の付勢力に逆らって第2方向X2に押す。このため、予め定める軸線C1に平行な方向Xにおいて第2回転体34が第3回転体36に向かって移動する。図14に示されるように、第1規制部54の第3当接部56と第4当接部58とが接触するまで第2回転体34が第3回転体36に向かって移動すると、第2回転体34と第3回転体36が一体に回転するようになる。このため、第1回転体32の第1回転方向R1の回転力が第2回転体34を介して第3回転体36に伝達される。
【0083】
図12図14、および、図15を参照して、図11のステップS14において、第1伝達状態から非伝達状態に切り替えられる場合のクラッチ機構30の動作について説明する。
図14の第1伝達状態において、制御部14によって、第1回転体32を第2回転方向R2に回転させるために、第1回転方向R1に回転している第1回転体32の回転速度を低下させ、第1回転体32の第1回転方向R1への回転速度が、第3回転体36の第1回転方向R1への回転速度よりも低くなると、図12に示されるように、第1回転体32の第1動力伝達面46Aが第2回転体34の第3動力伝達面48Aから離れ、付勢部材44の付勢力によって第2回転体34が第1方向X1に移動する。このため、クラッチ機構30は、非伝達状態になる。図12に示されるように、第3当接部56と第4当接部58とが離れると、第1回転体32と第3回転体36との相対回転が許容され、コースティング状態において、第1回転体32の回転が停止しても第3回転体36は第1回転方向R1に回転できる。
【0084】
第1回転体32および第3回転体36が第1回転方向R1に回転し、かつ、第3回転体36から第1回転体32に回転力が伝達されている場合、クラッチ機構30は、第3回転体36の第1回転方向R1の回転速度が第1回転体32の第1回転方向R1の回転速度以上の場合、第3回転体36の回転力を第1回転体32に伝達する。第1回転体32および第3回転体36が第1回転方向R1に回転し、かつ、第3回転体36から第1回転体32に回転力が伝達されている場合、クラッチ機構30は、第3回転体36の第1回転方向R1の回転速度が第1回転体32の第1回転方向R1の回転速度未満になると、第3回転体36の回転力を第1回転体32に伝達しない。例えば、図14の第1伝達状態において、第1回転方向R1への第2回転体34の回転速度が、第1回転体32の回転速度よりも高くなると、図12に示されるように、第1回転体32の第1動力伝達面46Aが第2回転体34の第3動力伝達面48Aから離れ、付勢部材44の付勢力によって第2回転体34が第1方向X1に移動する。このため、第1回転体32から第2回転体34への動力伝達が切断されるため、第1回転体32の回転力が第3回転体36へ伝達されない。
【0085】
<変形例>
実施形態に関する説明は、本開示に従う人力駆動車用のクラッチ機構および人力駆動車用のクラッチシステムが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本開示に従う人力駆動車用のクラッチ機構および人力駆動車用のクラッチシステムは、例えば以下に示される実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変形例において、実施形態の形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0086】
・クラッチ機構30は、人力駆動車の駆動力の伝達経路を含むコンポーネントであれば、いずれのコンポーネントに採用することもできる。例えば、クラッチ機構30は、人力駆動車のクランク軸を支持するドライブユニットに適用できる。
・軸部材38は、ハブ軸70Cとは別体に形成されてもよく、軸部材38の中心軸心は、ハブ軸70Cの中心軸心から離れて配置されてもよい。
【0087】
・第3回転体36の第1部分36Bに囲まれる空間に、第1回転体32の少なくとも一部が配置されてもよい。第3回転体36に、第2回転体34の第1方向X1への移動を阻止する規制部を設けてもよい。
【0088】
・第1動力伝達面46Aと第2動力伝達面46Bとは、1つの凸部にそれぞれ設けられるが、第1動力伝達面46Aが設けられる凸部は、第2動力伝達面46Bが設けられる凸部とは、異なっていてもよい。第3動力伝達面48Aと第4動力伝達面48Bとは、1つの凹部にそれぞれ設けられているが、第3動力伝達面48Aが設けられる凹部は、第4動力伝達面48Bが設けられる凹部とは、異なっていてもよい。
【0089】
本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0090】
10…クラッチシステム、12…モータ、12C…出力部、14…制御部、30…クラッチ機構、32…第1回転体、32A…貫通孔、46…第1当接部、46A…第1動力伝達面、46B…第2動力伝達面、34…第2回転体、34A…貫通孔、48…第2当接部、62…第5当接部、36…第3回転体、36A…貫通孔、38…軸部材、40…ベアリング、42…ベアリング、50…第1凸部、52…第1凹部、44…付勢部材、54…第1規制部、56…第3当接部、58…第4当接部、60…第2規制部、60A…第2凸部、62…第5当接部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16