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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】ヒト血漿様培地
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20231221BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20231221BHJP
   C12N 5/09 20100101ALI20231221BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20231221BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
C12N5/071 ZNA
C12N5/078
C12N5/09
C12Q1/02
G01N33/48 M
【請求項の数】 67
(21)【出願番号】P 2019524430
(86)(22)【出願日】2017-11-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 US2017061377
(87)【国際公開番号】W WO2018089928
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-11-13
(31)【優先権主張番号】62/421,074
(32)【優先日】2016-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500482810
【氏名又は名称】ホワイトヘッド・インスティテュート・フォー・バイオメディカル・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】サバティーニ, デイビッド エム.
(72)【発明者】
【氏名】キャンター, ジェイソン
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-278980(JP,A)
【文献】特表2014-504609(JP,A)
【文献】特開2008-109866(JP,A)
【文献】特表2001-510851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00 - 5/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも9種のタンパク質構成性アミノ酸と、
1種または複数種のビタミンと、
1種または複数種の無機イオンと、
グルコースと、
4-ヒドロキシプロリン、アセチルグリシン、アルファ-アミノブチレート、ベタイン、カルニチン、シトルリン、オルニチン、タウリン、2-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシブチレート、アセテート、シトレート、ホルメート、ラクテート、マロネート、ピルベート、スクシネート、アセトン、クレアチン、クレアチニン、グルタチオン、グリセロール、尿素、ガラクトース、フルクトース、ヒポキサンチンおよび尿酸から選択される少なくとも10種の小有機化合物と
を含む、基礎培養培地であって、
20マイクロモル濃度(μM)の0.3から3倍の濃度の4-ヒドロキシプロリンを含み、
350μMの0.3から3倍の濃度の尿酸を含む、基礎培養培地。
【請求項2】
前記少なくとも10種の小有機化合物が、
4-ヒドロキシプロリン、アセチルグリシン、アルファ-アミノブチレート、ベタイン、カルニチン、シトルリン、オルニチン、タウリンから選択される少なくとも4種のアミノ酸またはアミノ酸誘導体と、
2-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシブチレート、アセテート、シトレート、ホルメート、ラクテート、マロネート、ピルベートおよびスクシネートから選択される少なくとも6種の小有機化合物と
を含む、請求項1に記載の基礎培養培地。
【請求項3】
前記少なくとも10種の小有機化合物が、4-ヒドロキシプロリン、アセチルグリシン、アルファ-アミノブチレート、ベタイン、カルニチン、シトルリン、オルニチンおよびタウリンから選択される少なくとも6種のアミノ酸またはアミノ酸誘導体を含む、請求項1または請求項2に記載の基礎培養培地。
【請求項4】
前記少なくとも10種の小有機化合物が、4-ヒドロキシプロリン、アセチルグリシン、アルファ-アミノブチレート、ベタイン、カルニチン、シトルリン、オルニチンおよびタウリンを含む、請求項1~3のいずれかに記載の基礎培養培地。
【請求項5】
前記少なくとも10種の小有機化合物が、2-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシブチレート、アセテート、シトレート、ホルメート、ラクテート、マロネート、ピルベートおよびスクシネートから選択される少なくとも8種の小有機化合物を含む、請求項1~4のいずれかに記載の基礎培養培地。
【請求項6】
前記少なくとも10種の小有機化合物が、アセトン、クレアチン、クレアチニン、グルタチオン、グリセロールおよび尿素から選択される少なくとも3種の小有機化合物を含む、請求項1~5のいずれかに記載の基礎培養培地。
【請求項7】
前記少なくとも10種の小有機化合物が、アセトン、クレアチン、クレアチニン、グルタチオン、グリセロールおよび尿素を含む、請求項1~6のいずれかに記載の基礎培養培地。
【請求項8】
前記少なくとも10種の小有機化合物が、ヒポキサンチン、尿酸または両方を含む、請求項1~7のいずれかに記載の基礎培養培地。
【請求項9】
前記少なくとも10種の小有機化合物が、ガラクトース、フルクトースまたは両方を含む、請求項1~8のいずれかに記載の基礎培養培地。
【請求項10】
前記少なくとも10種の小有機化合物が、2-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシブチレート、4-ヒドロキシプロリン、アセテート、アセトン、アセチルグリシン、アルファ-アミノブチレート、ベタイン、カルニチン、シトレート、シトルリン、クレアチン、クレアチニン、ホルメート、フルクトース、ガラクトース、グルタチオン、グリセロール、ヒポキサンチン、ラクテート、マロネート、オルニチン、ピルベート、スクシネート、タウリン、尿素および尿酸を含む、請求項1~9のいずれかに記載の基礎培養培地。
【請求項11】
前記少なくとも9種のタンパク質構成性アミノ酸が、グリシン、L-アラニン、L-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパルテート、L-システイン、L-グルタメート、L-グルタミン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リシン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-トレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、L-バリンおよびL-シスチンを含む、請求項1~10のいずれかに記載の基礎培養培地。
【請求項12】
前記1種または複数種のビタミンが、以下のビタミン:D-ビオチン、コリン、葉酸、ミオ-イノシトール、ナイアシンアミド、p-アミノ安息香酸、D-パントテン酸、ビタミンB6、リボフラビン、チアミンおよびビタミンB12のうち少なくとも8種を含む、請求項1~11のいずれかに記載の基礎培養培地。
【請求項13】
前記1種または複数種の無機イオンが、以下のイオン:Na、K、Ca2+、Mg2+、NH 、Cl、HCO 、PO 3-、SO 2-およびNO のうち少なくとも8種を含む、請求項1~12のいずれかに記載の基礎培養培地。
【請求項14】
前記培地中に存在する前記イオンの各々の濃度が、表1においてそのイオンについて列挙される濃度の±50%以内である、請求項13に記載の基礎培養培地。
【請求項15】
前記培地中に存在する前記イオンの各々の濃度が、表1においてそのイオンについて列挙される濃度の±25%以内である、請求項13に記載の基礎培養培地。
【請求項16】
前記培地中に存在する前記イオンの各々の濃度が、表1においてそのイオンについて列挙される濃度の±10%以内である、請求項13に記載の基礎培養培地。
【請求項17】
前記培地中に存在する前記イオンの各々の濃度が、表1においてそのイオンについて列挙される濃度である、請求項13に記載の基礎培養培地。
【請求項18】
前記1種または複数種の無機イオンが、Na、K、Ca2+、Mg2+、NH 、Cl、HCO 、PO 3-、SO 2-およびNO を含む、請求項1~17のいずれかに記載の基礎培養培地。
【請求項19】
前記1種または複数種の無機イオンが、無機塩として存在し、該無機塩のうち少なくとも6種が、CaCl、KCl、MgCl、MgSO、NaCl、NaHCO、NaHPO、Ca(NO・4HOおよびNHClから選択される、請求項1~18のいずれかに記載の基礎培養培地。
【請求項20】
表2中に列挙される前記基礎培養培地中に存在する各々の構成成分の濃度が、表2においてその構成成分について列挙される濃度の±50%以内である、請求項1~19のいずれかに記載の基礎培養培地。
【請求項21】
表2中に列挙される前記基礎培養培地中に存在する各々の構成成分の濃度が、表2においてその構成成分について列挙される濃度の±25%以内である、請求項1~20のいずれかに記載の培養培地。
【請求項22】
表2中に列挙される前記基礎培養培地中に存在する各々の構成成分の濃度が、表2においてその構成成分について列挙される濃度の±10%以内である、請求項1~21のいずれかに記載の基礎培養培地。
【請求項23】
表2中に列挙される前記基礎培養培地中に存在する各々の構成成分の濃度が、表2においてその構成成分について列挙される濃度で存在する、請求項1~22のいずれかに記載の基礎培養培地。
【請求項24】
表2中に列挙される各々の構成成分が、前記培地中に存在する、請求項1~23のいずれかに記載の基礎培養培地。
【請求項25】
1種または複数種の抗生物質、pH指示薬または両方をさらに含む、請求項1~24のいずれかに記載の基礎培養培地。
【請求項26】
請求項1~25のいずれかに記載の基礎培養培地を含む培養培地であって、血清または血清代用品をさらに含む培養培地。
【請求項27】
1%~20%の血清を含む、請求項26に記載の培養培地。
【請求項28】
1%~5%の血清または5%~10%の血清または10%~20%の血清を含む、請求項27に記載の培養培地。
【請求項29】
およそ10%の血清を含む、請求項27に記載の培養培地。
【請求項30】
前記血清が、ウシ胎仔血清である、請求項26から29のいずれかに記載の培養培地。
【請求項31】
前記血清が、透析された血清である、請求項26から30のいずれかに記載の培養培地。
【請求項32】
前記血清が、熱不活化血清である、請求項26から31のいずれかに記載の培養培地。
【請求項33】
請求項1から25のいずれかに記載の基礎培養培地または請求項26から32のいずれかに記載の培養培地の構成成分をまとめて含有する1つまたは複数の容器を含むキット。
【請求項34】
前記培養培地の複数の相互に適合性である構成成分を各々が含有する少なくとも2つの容器を含む、請求項33に記載のキット。
【請求項35】
前記培養培地を調製するための指示、該培養培地において細胞を培養するための指示または両方をさらに含む、請求項33または請求項34に記載のキット。
【請求項36】
請求項1から25のいずれかに記載の基礎培養培地または請求項26から32のいずれかに記載の培養培地を調製する方法であって、そのそれぞれの構成成分を組み合わせることを含む、方法。
【請求項37】
請求項1から25のいずれかに記載の基礎培養培地または請求項26から32のいずれかに記載の培養培地および1種もしくは複数種の哺乳動物細胞を含む組成物。
【請求項38】
前記哺乳動物細胞が、ヒト細胞を含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記細胞が、血液細胞を含む、請求項37または請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記細胞が、がん細胞を含む、請求項37から39のいずれかに記載の組成物。
【請求項41】
試験薬剤をさらに含む、請求項1から25のいずれかに記載の基礎培養培地、請求項26から32のいずれかに記載の培養培地、または請求項37から40のいずれかに記載の組成物。
【請求項42】
前記試験薬剤が、小分子である、請求項41に記載の基礎培養培地、培養培地または組成物。
【請求項43】
前記試験薬剤が、化学療法剤である、請求項41または請求項42に記載の基礎培養培地、培養培地または組成物。
【請求項44】
1種または複数種の哺乳動物細胞を培養する方法であって、請求項1から25のいずれかに記載の基礎培養培地、請求項26から32のいずれかに記載の培養培地、または請求項37から40のいずれかに記載の組成物を提供することと、該培養培地において1種または複数種の哺乳動物細胞を培養することとを含む、方法。
【請求項45】
前記1種または複数種の哺乳動物細胞が、ヒト細胞を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記1種または複数種の哺乳動物細胞が、血液細胞を含む、請求項44または請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記1種または複数種の哺乳動物細胞が、がん細胞を含む、請求項44から46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
前記培養培地に試験薬剤を添加することをさらに含む、請求項44から47のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
哺乳動物細胞集団または細胞系を特徴付ける方法であって、(a)請求項1から25のいずれかに記載の基礎培養培地または請求項26から32のいずれかに記載の培養培地中で哺乳動物細胞集団または細胞系の1種または複数種の細胞を培養することと、(b)該培養培地で培養された該細胞の表現型を検出すること、または該培養培地で培養された細胞を用いて実施したアッセイの結果を得ることとを含む、方法。
【請求項50】
(c)第2の培養培地において同一集団または細胞系に由来する1種または複数種の細胞を培養することと、(d)該第2の培養培地において培養された該細胞の表現型を検出すること、または該第2の培養培地において培養された該細胞を用いて実施したアッセイの結果を得ることと、(e)ステップ(b)において検出された前記表現型を、第2の培養培地で培養されている同一集団もしくは細胞系に由来する1種もしくは複数種の細胞の該表現型と比較すること、または該アッセイの結果を、第2の培養培地において培養されている同一集団もしくは細胞系に由来する1種もしくは複数種の細胞を用いて実施した同一アッセイの結果と比較することとをさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
ステップ(b)において得た前記表現型またはアッセイの結果と、ステップ(d)において得た前記表現型またはアッセイの結果との間の差を検出することを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記細胞を、前記培養培地において該細胞が培養される期間の一部またはすべての間、試験薬剤と接触させることを含む、請求項50から51のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
ステップ(b)において得た前記表現型またはアッセイの結果、およびステップ(d)において得た前記表現型またはアッセイの結果が、試験薬剤の存在下で培養された前記細胞または前記細胞系に由来する、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記第2の培養培地が、標準培養培地である、請求項50から53のいずれかに記載の方法。
【請求項55】
前記アッセイが、生存率アッセイ、増殖アッセイ、アポトーシスアッセイ、オートファジーアッセイ、レポーターアッセイまたは細胞毒性アッセイである、請求項49から54のいずれかに記載の方法。
【請求項56】
試験薬剤を特徴付ける方法であって、(a)前記試験薬剤の存在下で、請求項1から25のいずれかに記載の基礎培養培地または請求項26から32のいずれかに記載の培養培地において1種もしくは複数種の哺乳動物細胞を培養することと、(b)該細胞を用いて実施したアッセイの結果を得ることとを含む、方法。
【請求項57】
(c)前記試験薬剤の存在下で第2の培養培地において同一集団または細胞系に由来する1種または複数種の細胞を培養することと、(d)該第2の培養培地において培養した該細胞を用いて実施したアッセイの結果を得ることとをさらに含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記アッセイの結果を、前記試験薬剤の存在下で第2の培養培地において培養されている同一集団または細胞系に由来する1種または複数種の細胞を用いて実施した同一アッセイの結果と比較することをさらに含む、請求項56または請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記細胞を、前記試験薬剤と少なくとも24時間接触させることを含む、請求項57から58のいずれかに記載の方法。
【請求項60】
前記第2の培養培地が、標準培養培地である、請求項57から59のいずれかに記載の方法。
【請求項61】
前記試験薬剤の存在下で培養された前記細胞または前記細胞系から得た前記アッセイの結果と、前記試験薬剤の存在下で前記2の培養培地において培養された前記細胞または前記細胞系から得た前記アッセイの結果との間の差を検出することを含む、請求項58から60のいずれかに記載の方法。
【請求項62】
前記1種または複数種の細胞が、ヒト細胞を含む、請求項49から61のいずれかに記載の方法。
【請求項63】
前記1種または複数種の細胞が、血液細胞を含む、請求項49から62のいずれかに記載の方法。
【請求項64】
前記1種または複数種の細胞が、がん細胞を含む、請求項49から63のいずれかに記載の方法。
【請求項65】
前記アッセイが、生存率アッセイ、増殖アッセイ、アポトーシスアッセイ、オートファジーアッセイ、レポーターアッセイまたは細胞毒性アッセイである、請求項56から64のいずれかに記載の方法。
【請求項66】
前記試験薬剤が、小分子である、請求項56から65のいずれかに記載の方法。
【請求項67】
前記試験薬剤が、化学療法剤である、請求項56から66のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年11月11日に出願された米国仮特許出願第62/421,074号に対する優先権の利益を主張し、その全体が本明細書に参照により援用される。
【0002】
本発明は、National Institutes of healthの補助金第R01CA103866号およびR37AI047389号の下、政府援助によりなされた。米国政府は本発明における一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
伝統的な合成細胞培養培地は、生体液および組織抽出物などの天然培地よりも固有の変動性の少ない多量の培地に対する必要性に対応するように開発された(Freshney、2010年)。Eagleは、2つの細胞型の最小栄養要求量を定義する際に(Eagle、1955年a、1955年b)、50年超前に最初の標準化された合成培地の1種であるイーグル基礎培地(BME)を調合した(Eagle、1955年c)。その後すぐ、Eagleは、最小必須培地(MEM)を開発し(Eagle、1959年)、その後の10年以内に、DulbeccoおよびFreemanが、元々マウス胚細胞の培養のために、DMEM(ダルベッコの改変イーグル培地)を調合し(DulbeccoおよびFreeman、1959年)、Mooreおよび共同研究者が、血液細胞の培養のためにRPMI1640を開発した(Mooreら、1967年)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
いくつかの態様では、本開示は、哺乳動物細胞を培養するのに有用な細胞培養培地を提供する。いくつかの実施形態では、(a)少なくとも9種のタンパク質構成性アミノ酸と、(b)1種または複数種のビタミンと、(c)1種または複数種の無機イオンと、(d)グルコースと、(e)4-ヒドロキシプロリン、アセチルグリシン、アルファ-アミノブチレート、ベタイン、カルニチン、シトルリン、オルニチン、タウリン、2-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシブチレート、アセテート、シトレート、ホルメート、ラクテート、マロネート、ピルベート、スクシネート、アセトン、クレアチン、クレアチニン、グルタチオン、グリセロール、尿素、ガラクトース、フルクトース、ヒポキサンチンおよび尿酸から選択される少なくとも10種の小有機化合物とを含む基礎培養培地が、本明細書において記載される。いくつかの実施形態では、少なくとも10種の小有機化合物は、4-ヒドロキシプロリン、アセチルグリシン、アルファ-アミノブチレート、ベタイン、カルニチン、シトルリン、オルニチンおよびタウリンから選択される少なくとも4種のアミノ酸またはアミノ酸誘導体と、2-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシブチレート、アセテート、シトレート、ホルメート、ラクテート、マロネート、ピルベートおよびスクシネートから選択される少なくとも6種の小有機化合物とを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも10種の小有機化合物は、4-ヒドロキシプロリン、アセチルグリシン、アルファ-アミノブチレート、ベタイン、カルニチン、シトルリン、オルニチンおよびタウリンから選択される少なくとも6種のアミノ酸またはアミノ酸誘導体を含み、いくつかの実施形態では、2-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシブチレート、アセテート、シトレート、ホルメート、ラクテート、マロネート、ピルベートおよびスクシネートから選択される少なくとも4種の小有機化合物も含む。いくつかの実施形態では、少なくとも10種の小有機化合物は、4-ヒドロキシプロリン、アセチルグリシン、アルファ-アミノブチレート、ベタイン、カルニチン、シトルリン、オルニチンおよびタウリンを含み、いくつかの実施形態ではまた、2-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシブチレート、アセテート、シトレート、ホルメート、ラクテート、マロネート、ピルベートおよびスクシネートから選択される少なくとも6種の小有機化合物も含む。いくつかの実施形態では、少なくとも10種の小有機化合物は、2-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシブチレート、アセテート、シトレート、ホルメート、ラクテート、マロネート、ピルベートおよびスクシネートから選択される少なくとも8種の小有機化合物を含み、いくつかの実施形態ではまた、4-ヒドロキシプロリン、アセチルグリシン、アルファ-アミノブチレート、ベタイン、カルニチン、シトルリン、オルニチンおよびタウリンから選択される少なくとも4種(または少なくとも6種)のアミノ酸またはアミノ酸誘導体も含む。いくつかの実施形態では、少なくとも10種の小有機化合物は、アセトン、クレアチン、クレアチニン、グルタチオン、グリセロールおよび尿素から選択される少なくとも3、4、5または6種の小有機化合物を含み、いくつかの実施形態ではまた、上記の構成成分の組合せのいずれかも含む。
【0005】
いくつかの実施形態では、少なくとも10種の小有機化合物は、ヒポキサンチン、尿酸または両方を含み、いくつかの実施形態ではまた、上記の構成成分の組合せのいずれかを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、少なくとも10種の小有機化合物は、ガラクトース、フルクトースまたは両方を含み、いくつかの実施形態ではまた、上記の構成成分の組合せのいずれかを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、少なくとも10種の小有機化合物は、2-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシブチレート、4-ヒドロキシプロリン、アセテート、アセトン、アセチルグリシン、アルファ-アミノブチレート、ベタイン、カルニチン、シトレート、シトルリン、クレアチン、クレアチニン、ホルメート、フルクトース、ガラクトース、グルタチオン、グリセロール、ヒポキサンチン、ラクテート、マロネート、オルニチン、ピルベート、スクシネート、タウリン、尿素および尿酸を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、少なくとも9種のタンパク質構成性アミノ酸は、グリシン、L-アラニン、L-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパルテート、L-システイン、L-グルタメート、L-グルタミン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リシン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-トレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、L-バリンおよびL-シスチンを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、1種または複数種のビタミンは、以下のビタミン:D-ビオチン、コリン、葉酸、ミオ-イノシトール、ナイアシンアミド、p-アミノ安息香酸、D-パントテン酸、ビタミンB6、リボフラビン、チアミンおよびビタミンB12のうち少なくとも8、9、10または11種を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、1種または複数種の無機イオンは、以下のイオン:Na、K、Ca2+、Mg2+、NH 、Cl、HCO 、PO 3-、SO 2-、NO のうち少なくとも8、9または10種を含む。いくつかの実施形態では、培地中に存在する前記イオンの各々の濃度は、表1においてそのイオンについて列挙された濃度の約±50%以内である。いくつかの実施形態では、培地中に存在する前記イオンの各々の濃度は、表1においてそのイオンについて列挙された濃度の約±25%以内である。いくつかの実施形態では、培地中に存在する前記イオンの各々の濃度は、表1においてそのイオンについて列挙された濃度の約±10%以内である。いくつかの実施形態では、培地中に存在する前記イオンの各々の濃度は、表1においてそのイオンについて列挙された濃度の約±0.1%以内である。いくつかの実施形態では、前記イオンの各々は、培地中に存在する。
【0011】
いくつかの実施形態では、1種または複数種の無機塩は、CaCl、KCl、MgCl、MgSO、NaCl、NaHCO、NaHPO、Ca(NO・4HOおよびNHClから選択される少なくとも6、7、8または9種の無機塩を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、培地中に存在する表2中に列挙される構成成分の各々の濃度は、表2においてその構成成分について列挙される濃度の約±50%以内である。いくつかの実施形態では、培地中に存在する表2に列挙される構成成分の各々の濃度は、表2においてその構成成分について列挙される濃度の約±25%以内である。いくつかの実施形態では、培地中に存在する表2中に列挙される構成成分の各々の濃度は、表2においてその構成成分について列挙される濃度の約±10%以内である。いくつかの実施形態では、培地中に存在する表2中に列挙される構成成分の各々の濃度は、表2においてその構成成分について列挙される濃度の約±0.1%以内である。いくつかの実施形態では、表2中に列挙される構成成分の各々は、培地中に存在する。
【0013】
いくつかの実施形態では、培養培地は、1種または複数種の抗生物質、pH指示薬または両方を含む。
【0014】
いくつかの態様では、本明細書において記載される定義された構成成分の組合せのいずれかを含む培養培地が、本明細書において記載され、培養培地は、血清または血清代用品をさらに含む。いくつかの実施形態では、培養培地は、約1%~約20%の血清を含む。いくつかの実施形態では、培養培地は、約1%~約5%の血清または約5%~約10%血清または約10%~約20%の血清を含む。いくつかの実施形態では、培養培地は、およそ約10%の血清を含む。いくつかの実施形態では、血清は、ウシ胎仔血清である。いくつかの実施形態では、血清は、透析された血清である。いくつかの実施形態では、血清は、熱不活化血清である。
【0015】
いくつかの態様では、培養培地の構成成分をまとめて含有する1つまたは複数の容器を含むキットが本明細書において記載される。いくつかの実施形態では、キットは、培養培地の複数の相互に適合性である構成成分を各々が含有する少なくとも2つの容器を含む。いくつかの実施形態では、キットは、培養培地を調製するための指示、培養培地において細胞を培養するための指示または両方をさらに含む。
【0016】
いくつかの態様では、本明細書において記載されるような培養培地を調製する方法であって、そのそれぞれの構成成分を組み合わせることを含む方法が本明細書において記載される。
【0017】
いくつかの態様では、本明細書において記載される培養培地および1種または複数種の哺乳動物細胞を含む組成物が本明細書において記載される。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞は、ヒト細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、血液細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、がん細胞を含む。
【0018】
いくつかの態様では、本明細書において記載される培養培地または組成物は、試験薬剤を含む。いくつかの実施形態では、試験薬剤は、小分子である。いくつかの実施形態では、試験薬剤は、化学療法剤である。
【0019】
いくつかの態様では、本開示は、本明細書において開示される培養培地を使用して細胞を培養する方法を提供する。例えば、1種または複数種の哺乳動物細胞を培養する方法であって、本明細書において記載される培養培地または組成物を提供することと、培養培地において1種または複数種の哺乳動物細胞を培養することとを含む方法が本明細書において記載される。いくつかの実施形態では、1種または複数種の哺乳動物細胞は、ヒト細胞を含む。いくつかの実施形態では、1種または複数種の哺乳動物細胞は、血液細胞を含む。いくつかの実施形態では、1種または複数種の哺乳動物細胞は、がん細胞を含む。いくつかの実施形態では、方法は、培養培地に試験薬剤を添加することをさらに含む。
【0020】
いくつかの態様では、哺乳動物細胞集団または細胞系を特徴付ける方法であって、(a)本明細書において記載される培養培地中で哺乳動物細胞集団または細胞系の1種または複数種の細胞を培養することと、(b)培養培地で培養された細胞の表現型を検出すること、または培養培地で培養された細胞を用いて実施したアッセイの結果を得ることとを含む方法が、本明細書において記載される。いくつかの実施形態では、方法は、(c)第2の培養培地において同一集団または細胞系に由来する1種または複数種の細胞を培養することと、(d)第2の培養培地において培養された細胞の表現型を検出すること、または第2の培養培地において培養された細胞を用いて実施したアッセイの結果を得ることと、(e)ステップ(b)において検出された表現型を、第2の培養培地で培養されている同一集団もしくは細胞系に由来する1種もしくは複数種の細胞の表現型と比較すること、またはアッセイの結果を、第2の培養培地において培養されている同一集団もしくは細胞系に由来する1種もしくは複数種の細胞を用いて実施した同一アッセイの結果と比較することとをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、第1の培養培地で培養された細胞から得た表現型またはアッセイの結果と、第2の培養培地において培養された細胞から得た表現型またはアッセイの結果の間の差を検出することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、細胞を、培養培地において細胞が培養される期間の一部またはすべての間、試験薬剤と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、方法は、試験薬剤の存在下で培養培地において培養された細胞の表現型を、試験薬剤の存在下で第2の培養培地において培養されている同一集団もしくは細胞系に由来する細胞の表現型と比較すること、または試験薬剤の存在下で培養培地において培養された細胞を用いて実施したアッセイの結果を、試験薬剤の存在下で第2の培養培地において培養されている同一集団もしくは細胞系に由来する細胞を用いて実施した同一アッセイの結果と比較することを含む。いくつかの実施形態では、第2の培養培地は、標準培養培地である。いくつかの実施形態では、アッセイは、生存率アッセイ、増殖アッセイ、アポトーシスアッセイ、オートファジーアッセイ、レポーターアッセイまたは細胞毒性アッセイである。
【0021】
いくつかの態様では、試験薬剤を特徴付ける方法であって、(a)試験薬剤の存在下で、本明細書において記載される培養培地において1種または複数種の哺乳動物細胞を培養することと、(b)細胞を用いて実施したアッセイの結果を得ることとを含む方法が、本明細書において記載される。いくつかの実施形態では、方法は、(c)試験薬剤の存在下で第2の培養培地において同一集団または細胞系に由来する1種または複数種の細胞を培養することと、(d)第2の培養培地において培養した細胞を用いて実施したアッセイの結果を得ることとをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、アッセイの結果を、試験薬剤の存在下で第2の培養培地において培養されている同一集団または細胞系に由来する1種または複数種の細胞を用いて実施した同一アッセイの結果と比較することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、細胞を、試験薬剤と少なくとも約24時間接触させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、第2の培養培地は、標準培養培地である。いくつかの実施形態では、方法は、試験薬剤の存在下で第1の培養培地において培養された細胞から得たアッセイの結果と、試験薬剤の存在下で第2の培養培地において培養された細胞から得たアッセイの結果の間の差を検出することを含む。いくつかの実施形態では、1種または複数種の細胞は、ヒト細胞を含む。いくつかの実施形態では、1種または複数種の細胞は、血液細胞を含む。いくつかの実施形態では、1種または複数種の細胞は、がん細胞を含む。いくつかの実施形態では、アッセイは、生存率アッセイ、増殖アッセイ、アポトーシスアッセイ、オートファジーアッセイ、レポーターアッセイまたは細胞毒性アッセイである。いくつかの実施形態では、試験薬剤は、小分子である。いくつかの実施形態では、試験薬剤は、化学療法剤である。
【0022】
いくつかの態様では、本開示は、物質、例えば、治療剤の有効性に影響を及ぼし得る代謝産物を同定する方法を提供する。
【0023】
いくつかの態様では、本開示は、哺乳動物細胞において、UMPシンターゼ(UMPS)の活性をモジュレートする方法であって、細胞を、尿酸レベルをモジュレートする薬剤と接触させることを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、薬剤は、尿酸レベルを高め、それによって、UMPSの活性を低減する。いくつかの実施形態では、薬剤は、尿酸レベルを低下させ、それによってUPMSの活性を増加させる。いくつかの実施形態では、哺乳動物被験体に尿酸調節剤を投与する。
【0024】
いくつかの態様では、がんを処置することを必要とする被験体においてがんを処置する方法であって、被験体に、(a)5-フルオロウラシル(5-FU)または5-FUプロドラッグの一方または両方、および(b)尿酸低下剤を投与し、その結果、被験体が5-FUおよび尿酸低下剤の両方に曝露される、例えば、その結果、5-FUまたは5-FUプロドラッグならびに尿酸低下剤が、活性および/または効果において重複することを含む方法が、本明細書において記載される。いくつかの実施形態では、尿酸低下剤はウリカーゼである。いくつかの実施形態では、尿酸低下剤は、尿酸排泄剤であり、必要に応じて、プロベネシド、ベンズブロマロンまたはスルフィンピラゾンである。いくつかの実施形態では、尿酸低下剤は、アンプロジピン(amplodipine)、アトルバスタチン、フェノフィブラート、グアイフェネシンまたはレシヌラドである。いくつかの実施形態では、5-FUプロドラッグは、テガフールまたはカペシタビンである。いくつかの実施形態では、方法は、5-FUまたは5-FUプロドラッグを、尿酸低下剤が投与されている被験体に投与することを含む。
【0025】
特許または出願ファイルはカラーで作成される少なくとも1つの図面を含有する。カラー図面付きの本特許または特許出願公開のコピーは、請求し必要な料金を支払えば役所(the Office)から提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1-1】図1Aは、成人ヒト血漿中の指示成分と比べてBME、MEM、DMEM、およびRPMI 1640の指示成分の相対濃度のヒートマップを描いている(log変換倍数変化)。培地中に存在しない成分は非存在として示される。種々の従来の培地中のすべての代謝産物の濃度については表4を参照されたい。図1Bは、培養およびin vivoの細胞が曝露される異なる代謝環境を描く概略図である。図1Cは、ヒト血漿様培地(HPLM)の成分を描いている。緑色の箱形で描かれている成分の濃度は成人ヒト血漿中の成分の濃度を反映している。HPLMの詳細な調合は表2に示されている。図1Dは、ヒト血漿中の指示成分と比べて表示されている培地およびマウス血漿中の指示成分の相対濃度のヒートマップを描いている(log変換倍数変化)。N/D、倍数変化値は決定できなかった。RPMI+IFS:5mMのグルコースおよび10%のIFSを有するRPMI 1640。RPMI+dIFS:5mMのグルコースおよび10%の透析IFSを有するRPMI 1640。HPLM+dIFS:10%の透析IFSを含有するHPLM。*以下の代謝産物:アセテート、アセトン、システイン、ホルメート、ガラクトース、グルタチオン、およびマロネートは使用した代謝産物プロファイリング法では培地試料中で容易に検出されなかった。図1Eは、RPMI+IFS(濃い灰色)、RPMI+dIFS(薄い灰色)、またはHPLM+dIFS(緑色)で培養された6種の血液がん細胞系の比成長速度を描いている(平均±SD、n=3)(左)。比成長速度(μ)は自然log変換成長曲線を使用して計算した(右)。細胞系は以下の血液がん;K562(慢性骨髄性白血病)、KMS12BM(多発性骨髄腫)、NOMO1(急性骨髄性白血病)、P12-Ichikawa(T細胞性急性リンパ芽球性白血病)、SEM(B細胞性急性リンパ芽球性白血病)、SUDHL4(B細胞リンパ腫)を表す。
図1-2】同上。
図1-3】同上。
【0027】
図2-1】図2Aは、RPMI+IFS(上の6列)での培養またはRPMI+dIF (下の6列)での培養と比べたHPLM+dIFSでの培養に続く相対的細胞内代謝産物濃度のヒートマップを描いている。それぞれの群内では、代謝産物は上の6列の平均log変換倍数変化により分類される(n=3)。N/D、代謝産物は培地の1つまたは複数での培養に続いて容易に検出されなかったために、倍数変化値は決定できなかった。ヒートマップに含まれるためには、代謝産物は6つの細胞系のうちの少なくとも4つで倍数変化が測定されなければならなかった。代謝産物略字については表6を参照されたい。図2Bは、RPMI+IFS(青色)での培養またはRPMI+dIFS(赤色)での培養と比べた、HPLM+dIFSでの培養に続く表示された方程式により計算された場合のエネルギー充足値を描いている(平均±SD、n=3)。図2Cは、RPMI+IFS(青色)での培養またはRPMI+dIFS(赤色)での培養と比べた、HPLM+dIFSでの培養に続く細胞内GSH/GSSG比を描いている(平均±SD、n=3、p<0.05)。図2Dは、RPMI+IFS(青色)での培養またはRPMI+dIFS(赤色)での培養と比べた、HPLM+dIFSでの培養に続く細胞内ラクテート/ピルベート比を描いている(平均±SD、n=3、p<0.05)。
図2-2】同上。
【0028】
図3-1】図3Aは、解糖系から分岐する経路へのおよびピルベートへのグルコース由来の13Cの取り込み、ならびにTCAサイクルへの取り込みを含む、ピルベートおよびアセチル-CoAからのグルコース由来炭素の種々の運命を描いている概略図である。G1P:グルコース1-ホスフェート。G6P:グルコース6-ホスフェート。F6P:フルクトース6-ホスフェート。DHAP:ジヒドロキシアセトンホスフェート。GPC:グリセロホスホコリン。PDH:ピルビン酸デヒドロゲナーゼ。LDH:乳酸デヒドロゲナーゼ。GPT:アラニンアミノトランスフェラーゼ。図3Bは、RPMI+IFS(濃い灰色)またはHPLM+dIFS(緑色)での細胞の培養に続く3つの13C(M3)で標識されたピルベートの割合を描いている(平均±SD、n=3)(左)。LC/MSベースの代謝産物プロファイリングにより測定したRPMI+IFSおよびHPLM+dIFSにおけるピルベートの濃度(n=4)(右)。図3Cは、RPMI+IFS(濃い灰色)またはHPLM+dIFS(緑色)での細胞の培養に続く2つの13C(M2)で標識されたシトレートの割合を描いている(平均±SD、n=3;p<0.0001)。図3Dは、RPMI+IFS(濃い灰色)またはHPLM+dIFS(緑色)での細胞の培養に続く6つの13C(M6)で標識されたF6P/G1Pの割合を描いている(平均±SD、n=3;p<0.0001)。図3Eは、RPMI+IFS(濃い灰色)またはHPLM+dIFS(緑色)での細胞の培養に続く3つの13C(M3)で標識されたアラニンの割合を描いている(平均±SD、n=3;p<0.0001)。図3Fは、RPMI+IFS(濃い灰色)またはHPLM+dIFS(緑色)での細胞の培養に続く3つの13C(M3)で標識されたGPCの割合を描いている(平均±SD、n=3;p<0.0001)。
図3-2】同上。
図3-3】同上。
【0029】
図4-1】以下の図は、RPMI+IFS(青色)またはRPMI+dIFS(赤色)での培養と比べた、HPLM+dIFSでの培養に続くカルバモイルアスパルテート(図4A)、ジヒドロオロテート(図4B)、オロテート(図4C)、およびオロチジン(図4D)の相対的細胞内存在量を示している(平均±SD、n=3;すべてのバーについてp<0.0001)。図4Eは、デノボピリミジン合成経路を描く概略図である。NT:ヌクレオチダーゼ。RPMI+IFS(青色)またはRPMI+dIFS(赤色)での培養と比べた、HPLM+dIFSでの細胞の培養に続くCTP(図4F)およびUTP(図4G)の相対的細胞内存在量(平均±SD、n=3;p<0.05)。
図4-2】同上。
図4-3】同上。
【0030】
図5-1】図5Aは、最小HPLMの組成(上)および指示されたドロップアウト調合物を生成するためにHPLM+dIFSから除去される成分のリスト(下)を描いている。図5Bは、完全HPLM+dIFSでの培養と比べてそれぞれのHPLM+dIFS誘導体または最小HPLM(MH)での細胞の培養に続くオロテート(上)およびオロチジン(下)の相対的細胞内存在量を描いている(平均±SD、n=3)。HPLM+dIFS誘導体の数指定はパネルAでの数指定に一致する。図5Cは、LC/MSベースの代謝産物プロファイリングにより測定した場合のRPMI+IFSおよびHPLM+dIFSにおける尿酸の濃度を描いている(n=4)。尿酸は使用した代謝産物プロファイリング法ではRPMI+dIFSにおいて容易に検出できなかった。したがって、RPMI+dIFSについての指示された濃度は、培地試料における最小検出の濃度におおよそ一致している。図5Dは、RPMI+IFS、RPMI+dIFS、またはHPLM+dIFSでの細胞の培養に続く尿酸の細胞内濃度を描いている(平均±SD、n=3)。図5Eは、標準HPLM+dIFSでの細胞の培養と比べた、漸増濃度の尿酸を含有するHPLM+dIFSでのK562細胞の培養に続くオロテートおよびオロチジンの相対的細胞内存在量を描いており(平均±SD、n=3)、標準HPLM+dIFSは350μMの尿酸を含有する。図5Fは、RPMI+IFSでの細胞の培養と比べた、350μMの尿酸を補充されたRPMI+IFSでの細胞の培養に続くオロテート、オロチジン(左)(平均±SD、n=3;すべてのバーについてp<0.0001)、およびUTP(平均±SD、n=3;p<0.05)(右)の相対的細胞内存在量を描いている。図5Gは、尿酸を欠くHPLM+dIFSでの細胞の培養と比べた、350μMの尿酸(緑色)または350μMの尿酸9-メチル尿酸(methyluric acid)(9-MUA)(白色)を含有するHPLM+dIFSでのK562細胞の培養に続くカルバモイルアスパルテート、ジヒドロオロテート、オロテート、およびオロチジンの相対的細胞内存在量を描いている(平均±SD、n=3)。図5Hは、尿酸の血漿濃度に影響を及ぼす経路を描いている概略図である;1:糸球体濾過(70%)、2:分泌(10%)、3:再吸収(90%)、4:排泄(30%)(BobulescuおよびMoe、2012年)。大半の哺乳動物とは対照的に、ヒトおよび多くの高等霊長類はウリカーゼ(UOX)活性を欠き、この活性は尿酸をアラントインに変換する(左)。LC/MS代謝産物プロファイリングにより測定した場合のマウス血漿における尿酸およびアラントインの濃度(n=4)。ヒトメタボロームデータベースでの注釈付きの値から計算したヒト血漿中の尿酸の平均濃度。他の場所(KandarおよびZakova、2008年)で報告されたヒト血漿中のアラントインの濃度(右)。
図5-2】同上。
図5-3】同上。
図5-4】同上。
【0031】
図6-1】図6Aは、二機能性UMPシンターゼ(UMPS)のそれぞれのドメインが触媒する反応を描いている概略図である。OPRT:オロチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ。ODC:OMPデカルボキシラーゼ。図6Bは、アロプリノールリボヌクレオチド(上)および6-アザ-UMP(下)によるUMPSのODCドメインの競合阻害を描いている概略図である。ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)はアロプリノールのそのリボヌクレオチド誘導体への変換を触媒し、ウリジン-シチジンキナーゼ(UCK)は6-アザウリジンの6-アザ-UMPへの変換を触媒する。図6Cは、指示された濃度での組換えUMPS(WTまたはY37A、R155A変異体)とその基質オロテートおよびPRPPのインキュベーションに続くOMP(左)およびUMP(右)の定量を描いている(平均±SD、n=3)。WT:野生型。図6Dは、UMPS活性アッセイへの漸増濃度の6-アザ-UMPまたはビヒクルの添加に続くOMP(左)およびUMP(中央)の相対的存在量を描いている(平均±SD、n=3)。図6Eは、UMPS活性アッセイへの漸増濃度の尿酸またはビヒクルの添加に続くOMP(左)およびUMP(中央)の相対的存在量を描いている(平均±SD、n=3)。尿酸によるUMPSのODCドメインの競合阻害を描いている概略図(右)。図6Fは、UMPS活性アッセイへの9-メチル尿酸、アラントイン、アロプリノール、6-アザウリジン、尿酸、またはビヒクルの添加に続くOMP(左)およびUMP(右)の相対的存在量を描いている(平均±SD、n=3)。
図6-2】同上。
【0032】
図7-1】図7Aは、5-フルオロウラシル(5-FU)の代謝を描いている概略図である(上)。5-FUはその細胞傷害性効果を媒介する種々のフルオロヌクレオチド誘導体に変換される。フルオロウリジントリホスフェート(FUTP)およびフルオロデオキシウリジントリホスフェートは、それぞれRNAおよびDNA内への誤取り込みにより細胞死をもたらす。フルオロデオキシウリジンモノホスフェート(FdUMP)は、チミジル酸シンターゼ(TYMS)の阻害により細胞死をもたらす(Longleyら、2003年)。描かれている酵素は、ウリジンホスホリラーゼ(UPP)、ウリジン-シチジンキナーゼ(UCK)、チミジンホスホリラーゼ(TYMP)、チミジンキナーゼ(TK)、およびリボヌクレオチドレダクターゼ(RRM)である。指示されている他の代謝産物は、フルオロウリジン(FUR)、フルオロウリジンモノホスフェート(FUMP)、フルオロウリジンジホスフェート(FUDP)、フルオロデオキシウリジン(FUDR)、およびフルオロデオキシウリジンジホスフェート(FdUDR)である。UMPSのOPRTドメインはFUMPへの5-FUの直接変換を触媒する(下)。図7Bは、UMPSのOPRTドメインがOMPへのオロテートのおよびFUMPへの5-FUの変換を触媒することを示す概略図である。RPMI+IFS(濃い灰色)、RPMI+dIFS(薄い灰色)、またはHPLM+dIFS(緑色)で培養された場合の、5-FU(図7C)またはドキソルビシン(図7D)に対するNOMO1細胞の用量応答(平均±SD、n=9)。データポイントは、それぞれが3つの技術的複製物からなる3つの独立した生物学実験の平均である(左プロット)。RPMI+IFS(濃い灰色)、RPMI+dIFS(薄い灰色)、またはHPLM+dIFS(緑色)で培養された場合の、NOMO1細胞における5-FU(図7C)またはドキソルビシン(図7D)のEC50。水平バーは、3つの独立した生物学実験の平均を示している;*p<0.001;ns:有意でない(右プロット)。HPLM+IFS(緑色)または尿酸を欠くHPLM+dIFS(青色)で培養された場合の、5-FU(図7E)またはドキソルビシン(図7F)に対するNOMO1細胞の用量応答(平均±SD、n=9)。データポイントは、それぞれが3つの技術的複製物からなる3つの独立した生物学実験の平均である(左プロット)。HPLM+IFS(緑色)または尿酸を欠くHPLM+dIFS(青色)で培養された場合の、NOMO1細胞における5-FUまたはドキソルビシンのEC50。水平バーは、3つの独立した生物学実験の平均を示している;p<0.001;ns:有意でない(右プロット)。図7Gは、20μMの5-FUで処置され、HPLM+dIFS(緑色)または尿酸を欠くHPLM+dIFS(青色)で24時間培養されたNOMO1細胞における5-FU(左)、FdUMP(中央)、およびFUMP(右)の細胞内存在量を描いている(平均±SD、n=3)。ND:検出されず。図7Hは、5-FUにより引き起こされる細胞傷害性の尿酸媒介拮抗作用の提唱される機序を描いている。いかなる理論にも縛られたくはないが、UMPSのOPRTドメインまたはUPPおよびUCKの連続作用は5-FUをFUMPに変換することができるので、5-FU感受性に対する尿酸の影響はおそらく所与の細胞型がOPRT媒介合成を介してFUMPを生み出す程度に依存している。
図7-2】同上。
図7-3】同上。
図7-4】同上。
【0033】
図8】RPMI+IFS図8A)、RPMI+dIFS図8B)、およびHPLM+dIFS図8C)で培養される細胞についてのグルコースの正味の消費速度(q、グルコース)対ラクテートの正味の分泌速度(q、ラクテート)(両軸について平均±SEM、n=3)。正味の交換速度を計算するのに使用した方程式については実施例の部の方法を参照されたい。ポイントはGraphPad Prismにプロットし、線形回帰式を使用して適合させた。
【0034】
図9】RPMI+IFS(青色)またはRPMI+dIFS(赤色)での細胞の培養と比べた、HPLM+dIFSでの細胞の培養に続くATP(図9A)およびGTP(図9B)の相対的細胞内存在量(平均±SD、n=3)。
【0035】
図10図10Aは、RPMI+IFS(青色)またはRPMI+dIFS(赤色)での細胞の培養と比べた、HPLM+dIFSでの細胞の培養中のオロテートの相対的正味の分泌速度を描いている(平均±SEM、n=3;すべてのバーについてp<0.05)。正味の交換速度を計算するのに使用した方程式については実施例の部の方法を参照されたい。図10Bは、RPMI+IFS(濃い灰色)、RPMI+dIFS(薄い灰色)、またはHPLM+dIFS(緑色)での細胞の培養中のオロチジン(q)の正味の分泌速度を描いている(平均±SEM、n=3;p<0.05)。KMS12BM以外の指示された細胞系では、オロチジンの正味の分泌は、RPMI+IFSまたはRPMI+dIFSでの細胞の培養中1つまたは複数の生物学的複製物では容易に検出されなかった。正味の交換速度を計算するのに使用した方程式については実施例の部の方法を参照されたい。
【0036】
図11-1】図11Aは、尿酸を欠くHPLM+dIFSでの細胞の培養と比べた、HPLM+dIFS(緑色)でのまたは尿酸を欠き漸増濃度のアロプリノールを含有するHPLM+dIFS(オレンジ色)でのK562細胞の培養に続くカルバモイルアスパルテート、ジヒドロオロテート、オロテート、およびオロチジンの相対的細胞内存在量を描いている(平均±SD、n=3)。図11Bは、漸増濃度の尿酸を含有するHPLM+dIFSでのまたは尿酸を欠き漸増濃度のアロプリノールを含有するHPLM+dIFSでのK562細胞の培養に続くOMPの細胞内存在量を描いている(平均±SD、n=3)。図11Cは、標準HPLM+dIFS(350μMの尿酸を含有している)での細胞の培養と比べた、700μM尿酸を含有するHPLM+dIFSでのまたは尿酸を欠き漸増濃度のアロプリノールを含有するHPLM+dIFSでのK562細胞の培養に続くUTPの相対的細胞内存在量を描いている(平均±SD、n=3)。図11Dは、尿酸を欠き漸増濃度のアロプリノールを含有するHPLM+dIFSでの培養に続く代表的K562試料から指示された保持時間の間の347.0398の質量/電荷数比(m/z)でピークを示している抽出イオンクロマトグラム(負イオン化モード)を描いている。ピークは、IMP(黒色略図)および推定アロプリノールリボヌクレオチド(赤色略図)に一致している(上)。アロプリノールリボヌクレオチド(赤色ボックス)およびIMP(黒色ボックス)についての化学構造、これらは同一のm/zを共有するが、保持時間が異なる(下)。
図11-2】同上。
【0037】
図12図12Aは、OMPとの複合体におけるヒトUMPSのOPRTドメインの活性部位を描いており(黄色)(タンパク質データバンクエントリー2WNS、鎖AおよびB);表示されている残基は他の場所(Zhangら、2013年)で報告されている活性部位を含む。操作されたUMPSバリアントでは残基はアラニンに変異されている(太字)。図12Bは、1:M.W.標準;2:野生型UMPS-3xFLAG;3:UMPS(Y37A、R155A)-3xFLAGを描いている。
【0038】
図13図13Aは、RPMI+IFS(青色)またはRPMI+dIFS(赤色)での細胞の培養と比べた、HPLM+dIFSでのSW620細胞の培養に続くオロテートの相対的細胞内存在量を描いている(平均±SD、n=3;両方のバーについてp<0.0001)。HPLM+IFS(緑色)または尿酸を欠くHPLM+dIFS(青色)で培養された場合の5-FU(図13B)またはドキソルビシン(図13C)に対するSW620細胞の用量応答(平均±SD、n=9)。データポイントは、それぞれが3つの技術的複製物からなる3つの独立した生物学実験の平均である(左)。HPLM+IFS(緑色)または尿酸を欠くHPLM+dIFS(青色)で培養された場合の、SW620細胞における5-FUまたはドキソルビシンのEC50。水平バーは、3つの独立した生物学実験の平均を示している;p<0.005;ns:有意でない(右プロット)。
【発明を実施するための形態】
【0039】
I.培養培地調合物
いくつかの態様では、本開示は、広く使用される哺乳動物細胞培養培地の組成が身体の外側の哺乳動物細胞の生存および増殖のために必要な栄養分を提供するように設計されながら、in vivoでの栄養状態を不十分にしか反映しないという認識に関する。いくつかの態様では、本開示は、哺乳動物細胞表現型に対しておよびアッセイにおける哺乳動物細胞の挙動に対して重大な効果を有する、ヒト血液において見出される特定の代謝産物の培養培地中の存在に関する。例えば、培養培地中のこのような代謝産物の存在は、公知または潜在的な治療剤などの外因性物質に対する細胞の応答を有意に変更し得る。
【0040】
いくつかの態様では、本開示は、培養におけるヒト細胞の生存および増殖を支持し、細胞がin vivoで曝露される条件を、従来の培養培地よりも密接に反映する環境を提供する細胞培養培地を提供する。本明細書において記載される培養培地は、ヒト血液中に通常存在する種々の代謝産物を含む。このような代謝産物はまた、血液の液体部分(血漿)および血液を凝固させた後に残存する血液の液体部分(血清)中にも存在する。いくつかの実施形態では、代謝産物の濃度は、血漿および血清において同一またはおよそ同一であり得る。いくつかの実施形態では、1種または複数種の代謝産物の濃度は、血漿と血清との間で異なる場合もある。いくつかの実施形態では、血液、血漿および血清中の代謝産物の濃度は、等価と考えられ、交換可能に使用される。「代謝産物」とは、本明細書で使用される場合、代謝の中間体および産物を指す。いくつかの実施形態では、培養培地は、従来の培養培地では見出されない1種または複数種の代謝産物を含む。「従来の培養培地」とは、少なくとも、市販されている細胞培養培地を含む、細胞培養において広く使用される、または広く使用されている培養培地を指す。従来の培養培地の例としては、例えば、イーグル基礎培地(BME)(Eagle、1955年c)、最小必須培地(MEM)(Eagle、1959年)、ダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)、ロズウェルパーク記念研究所(RPMI)1640、ハム栄養混合物(例えば、F10、F12)、培地199、マッコイ5aおよびそれらの混合物、例えば、DMEM/F10、DMEM/F12が挙げられる。例えば、Freshney、2010年を参照のこと。このような培養培地は、通常、成長因子およびホルモンなどのさらなる支持物質(supportive substance)を提供するように動物血清が補給される。当業者ならば、同様に従来のものと考えられる、当技術分野で公知のこのような従来の培養培地のいくつかの変形形態があることは理解する。例えば、従来の培養培地はまた、通常の調合物と比較して、Advanced RPMIおよびAdvanced DMEM(ThermoFisher)などの、血清補給が低減された(例えば、約50%~90%低減された)、哺乳動物細胞の培養を可能にする上記の培地のいずれかの改変版も含む。従来の培養培地の混合物は、約10%~約90%の第1の培地を含み、残部は、第2の培地から構成され得る。いくつかの実施形態では、混合物は、約50:50混合物である。
【0041】
本明細書において記載される細胞培養培地は、水性ベースである、すなわち、培地は、水、例えば、脱イオン水、蒸留水中にいくつかの成分を含む。ある特定の実施形態では、培地は、乾燥粉末および/または凍結された構成成分から再構成され得る。
【0042】
用語「成分」とは、化学的または生物学的起源に関わらず、細胞の生存もしくは増殖を維持または促進するために細胞培養培地において使用され得る、あるいは存在する量で細胞の生存および典型的には、増殖と少なくとも相反しない任意の化合物を指す。用語「構成成分」および「成分」は、交換可能に使用され、すべてこのような化合物を指すものとする。本開示が、特定の成分または成分の群を記載する場合には、このような成分または成分の群は、ある特定の実施形態では、特に断りのない限り、または文脈から明確に明らかでない限り、本明細書において記載される任意のその他の成分または成分の組合せと一緒に培地中に存在し得ると理解されるべきである。
【0043】
「細胞培養」または「培養」とは、人工の、in vitro環境における細胞の維持を意味する。しかし、用語「細胞培養」は、一般的な用語であり、個々の細胞の培養だけでなく、組織、オルガノイド、臓器または臓器系の培養も包含するように使用され得るということは理解されるべきであり、それらに対して、用語「組織培養」、「オルガノイド培養」、「臓器培養」、「臓器系培養」または「器官型培養」も使用され得る。
【0044】
いくつかの態様では、(a)少なくとも9種のタンパク質構成性アミノ酸と、(b)1種または複数種のビタミンと、(c)1種または複数種の無機塩と、(d)グルコースと、(e)4-ヒドロキシプロリン、アセチルグリシン、アルファ-アミノブチレート、ベタイン、カルニチン、シトルリン、オルニチン、タウリン、2-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシブチレート、アセテート、シトレート、ホルメート、ラクテート、マロネート、ピルベート、スクシネート、アセトン、クレアチン、クレアチニン、グルタチオン、グリセロール、尿素、ガラクトース、フルクトース、ヒポキサンチンおよび尿酸から選択される少なくとも10種の小有機化合物とを含む基礎培養培地が、本明細書において記載される。いくつかの実施形態では、培養培地は、上記の群から選択される少なくとも5種の小有機化合物を含む。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「基礎培養培地」または「基礎培地」とは、タンパク質構成性アミノ酸と、糖(複数可)(概して、グルコース)、水溶性ビタミンおよびイオンを含有するが、成長因子およびホルモンを欠き、概して、種々様々な哺乳動物細胞の生存率および増殖を支持する完全培養培地を生成するために、血清またはこのような支持物質のその他の供給源を補給した細胞培養培地を指す。本開示が単数または複数の培養培地を指す場合には、特に断りのない限り、または文脈から明確に明らかでない限り、単数または複数の培養培地は、基礎培養培地であり得るということは理解されるべきである。
【0046】
培養培地は、タンパク質合成前駆体として働き得るアミノ酸(「タンパク質構成性アミノ酸」)を含む。特に断りのない限り、L-またはD-アミノ酸として存在し得る本明細書において言及されるアミノ酸は、L-アミノ酸であると理解される。ある特定の実施形態では、培養培地中に含まれ得るタンパク質構成性アミノ酸としては、L-アラニン、L-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-システイン、L-グルタミン酸、L-グルタミン、グリシン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リシン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-トレオニン、L-トリプトファン、L-チロシンおよびL-バリンが挙げられる。いくつかの実施形態では、これらのアミノ酸のすべては、培養培地中に存在する。いくつかの実施形態では、これらのアミノ酸のすべておよびシスチンは、培養培地中に存在する。あるいは、いくつかの実施形態では、必須アミノ酸のみが培養培地中に含まれる。ヒト細胞などのある特定の哺乳動物細胞は、生存するために適切な量の9種のアミノ酸を有さなくてはならない。これらのいわゆる「必須」アミノ酸は、これらの細胞がその他の前駆体から合成することができない。しかし、システインは、メチオニンに対する必要性を部分的に満たし得(それらは両方とも硫黄を含有する)、チロシンは、フェニルアラニンの代用と部分的になり得る。このような必須アミノ酸としては、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン(および/またはシステイン)、フェニルアラニン(および/またはチロシン)、トレオニン、トリプトファンおよびバリンが挙げられる。いくつかの実施形態では、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン(および/またはシステイン)、フェニルアラニン(および/またはチロシン)、トレオニン、トリプトファンおよびバリンならびに1種または複数種のさらなるタンパク質構成性アミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11種)の非必須タンパク質構成性アミノ酸)が培養培地中に存在する。いくつかの実施形態では、培地は、少なくとも必須アミノ酸に加えてシスチンを含む。シスチンは、システインの酸化された二量体形態であり、式(SCHCH(NH)COH)を有する。シスチンは、システインに容易に還元されることができ、本開示の目的上、タンパク質構成性アミノ酸と考えられる。
【0047】
ある特定の実施形態では、1種または複数種のアミノ酸は、少なくとも部分的にペプチド(例えば、ジペプチドまたはトリペプチド)として提供され得る。例えば、いくつかの実施形態では、グルタミンは、少なくとも部分的にL-アラニル-L-グルタミン(Life TechnologiesによってGlutaMAX(商標)-Iとして販売される)として提供され得る。ある特定の実施形態では、本開示の培養培地は、構成成分としてジペプチドまたはトリペプチドを含有しない。
【0048】
ある特定の実施形態では、培養培地は、ビオチン(例えば、D-ビオチン)、コリン、葉酸、ミオ-イノシトール、ナイアシンアミド、p-アミノ安息香酸、D-パントテン酸、ビタミンB6、リボフラビン、チアミンおよびビタミンB12から選択される1種または複数種のビタミンを含む。ある特定の実施形態では、培養培地は、前記ビタミンのうち少なくとも6、7、8、9、10種または11種すべてを含む。ある特定の実施形態では、培養培地は、少なくともコリン、葉酸、ミオ-イノシトール、ナイアシンアミド(niacinamde)、ビタミンB6、リボフラビンおよびチアミンを含む。ある特定の実施形態では、培養培地は、ビオチン(例えば、D-ビオチン)、コリン、葉酸、ミオ-イノシトール、ナイアシンアミド、p-アミノ安息香酸、D-パントテン酸、ピリドキシン、ピリドキサール リボフラビン、チアミンおよびビタミンB12を含む。
【0049】
ビタミンB6とは、生物システムにおいて相互変換され得る化学的に同様の化合物の群を指す。これらは、ピリドキシン(PN)、ピリドキシン5’-ホスフェート(PNP)、ピリドキサール(PL)、ピリドキサール5’-ホスフェート(PLP)、ピリドキサミン(PM)およびピリドキサミン5’-ホスフェート(PMP)を含む。ある特定の実施形態では、培養培地中のビタミンB6は、これらの化合物のいずれかまたはその組合せであり得る。例えば、ある特定の実施形態では、ビタミンB6は、ピリドキシンである。ある特定の実施形態では、ビタミンB6は、ピリドキサールである。ある特定の実施形態では、培地は、ピリドキシンおよびピリドキサールの両方を含有する。ビタミンB12とは、コリン環と呼ばれる平面テトラピロール環の中心に位置するコバルトを含有する化学的に同様の化合物のクラスを指す。これらは、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、メチルコバラミンおよびアデノシルコバラミンを含む。ビタミンB12は、これらの化合物のいずれかまたはその混合物として提供され得る。
【0050】
培養培地は、種々の無機イオンまたは有機イオンのいずれかを含み得る。いくつかの実施形態では、培養培地は、以下のイオン:Na、K、Ca2+、Mg2+、NH 、Cl、HCO 、PO 3-、SO 2-、NO のうち少なくとも7種(すなわち、7、8、9種または10種すべて)を含む。イオンは、塩の形態で供給され得る。成分として使用され得る例示的な塩は、本明細書において記載されている。いくつかの実施形態では、1種または複数種のイオンは、少なくとも一部は、対イオンが無機イオンである塩として供給される。例えば、いくつかの実施形態では、Mg2+のすべては、MgClおよびMgSOとして供給される。いくつかの実施形態では、1種または複数種のイオンは、少なくとも一部は、対イオンが小有機分子である塩として供給される。例えば、いくつかの実施形態では、Naイオンの一部は、無機ナトリウム塩(例えば、NaCl)として供給され、Naイオンの一部は、酢酸ナトリウムとして供給される。
【0051】
ある特定の実施形態では、培養培地の構成成分は、上記のイオン(すなわち、Na、K、Ca2+、Mg2+、NH 、Cl、HCO 、PO 3-、SO 2-、NO )のうちいずれか1種または複数種の、表1においてこのようなイオン(複数可)について列挙される濃度(複数可)の0.3から3倍の間、例えば、表1においてこのようなイオン(複数可)について列挙される濃度の約0.5~約2倍、例えば、表1においてこのようなイオン(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約0.67~約1.5倍、表1においてこのようなイオン(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±30%以内、表1においてこのようなイオン(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±20%以内、表1においてこのようなイオン(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±10%以内、表1においてこのようなイオン(複数可)について列挙される濃度(複数可)の±約5%以内、表1においてこのようなイオン(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±2%以内または表1においてこのようなイオン(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±1%以内である濃度を提供するように選択される。ある特定の実施形態では、培養培地の構成成分は、表1においてこのようなイオン(複数可)について列挙されるとおりである、培地中に存在する前記イオンのうちいずれか1種または複数種の濃度を提供するように選択される。
【0052】
ある特定の実施形態では、培養培地の構成成分は、培地中に存在する前記イオンの各々の、表1においてこのようなイオン(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約0.3~約3倍、例えば、表1においてこのようなイオン(複数可)について列挙される濃度の約0.5~約2倍、例えば、表1においてこのようなイオン(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約0.67~約1.5倍、表1においてこのようなイオン(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±30%以内、表1においてこのようなイオン(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±20%以内、表1においてこのようなイオン(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±10%以内、表1においてこのようなイオン(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±5%以内、表1においてこのようなイオン(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±2%以内または表1においてこのようなイオン(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±1%以内である濃度を提供するように選択される。ある特定の実施形態では、培養培地の構成成分は、表1においてこのようなイオン(複数可)について列挙されるとおりである、培地中に存在する前記イオンの各々の濃度を提供するように選択される。
【表1】
【0053】
無機イオンを提供するために培養培地中に含まれ得る無機塩成分としては、それだけには限らないが、カルシウム塩(例えば、CaCl、Ca(NO・4HO)、カリウム塩(例えば、KCl、KSO)、マグネシウム塩(例えば、MgCl、MgSO)、ナトリウム塩(例えば、NaCl、NaHCO、NaHPO、NaSO)、アンモニウム塩(例えば、NHCl、NHHCO3、(NHSO)が挙げられる。いくつかの実施形態では、培養培地は、少なくとも1種のカルシウム塩、少なくとも1種のカリウム塩、少なくとも1種のマグネシウム塩、少なくとも1種のナトリウム塩および少なくとも1種のアンモニウム塩を含む。いくつかの実施形態では、培養培地は、CaCl、KCl、MgCl、MgSO、NaCl、NaHCO、NaHPO、Ca(NO・4HOおよびNHClから選択される少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種または9種の塩を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、培養培地は、1または複数の、表2中に列挙される小極性化合物を含む。このような化合物は、「極性代謝産物」または「小極性代謝産物」と呼ばれることもある。例えば、いくつかの実施形態では、培養培地は、少なくとも5種、例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26または27種の、表2中に列挙される小極性化合物を含む。培養培地中に存在し得る小極性化合物は、種々の非タンパク質構成性アミノ酸、アミノ酸誘導体、水溶性酸、糖、プリン代謝産物などを含む。
【0055】
培養培地中に存在し得る非タンパク質構成性アミノ酸としては、4-ヒドロキシプロリン、アセチルグリシン、アルファ-アミノブチレート、シトルリンおよびオルニチンが挙げられる。いくつかの実施形態では、上記の非タンパク質構成性アミノ酸のうち少なくとも3種、すなわち、3、4または5種が、培養培地中に存在する。少なくとも3種の非タンパク質構成性(proteionogenic)アミノ酸が、任意の組合せで存在し得る。
【0056】
培養培地中に存在し得るアミノ酸誘導体としては、ベタイン(トリメチルグリシン)、カルニチンおよびタウリンが挙げられる。いくつかの実施形態では、上記のアミノ酸誘導体のうち少なくとも1種、すなわち、1、2または3種が、培養培地中に存在する。2種またはそれよりも多いアミノ酸誘導体が存在する場合には、それらは任意の組合せで存在し得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、培養培地は、4-ヒドロキシプロリン、アセチルグリシン、アルファ-アミノブチレート、ベタイン、カルニチン、シトルリン、オルニチンおよびタウリンから選択される少なくとも4種、すなわち、4、5、6、7または8種の非タンパク質構成性アミノ酸またはアミノ酸誘導体を含む。少なくとも4種の非タンパク質構成性アミノ酸またはアミノ酸誘導体は、任意の組合せで存在し得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、培養培地は、2-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシブチレート、アセテート、シトレート、ホルメート、ラクテート、マロネート、ピルベートおよびスクシネートから選択される少なくとも6種(すなわち、6、7、8または9種)の小極性化合物を含む。本開示の目的上、2-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシブチレート、アセテート、シトレート、ホルメート、ラクテート、マロネート、ピルベートおよびスクシネートは、「群1の小極性代謝産物」と呼ばれることもある。少なくとも6種の群1の小極性代謝産物は、任意の組合せで存在し得る。いくつかの実施形態では、前記群1の小極性代謝産物のすべてが存在する。いくつかの実施形態では、前記群1の小極性代謝産物のうち任意の1種または複数種が、塩として、例えば、ナトリウム塩として提供され得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、培養培地は、アセトン、クレアチン、クレアチニン、グルタチオン、グリセロールおよび尿素からなる群から選択される1種または複数種の、例えば、少なくとも3種(すなわち、3、4、5または6種)の小極性化合物を含む。本開示の目的上、アセトン、クレアチン、クレアチニン、グルタチオン、グリセロールおよび尿素は、「群2の小極性化合物」と呼ばれることもある。少なくとも3種の群2の小極性化合物は、任意の組合せで存在し得る。いくつかの実施形態では、前記群2の小極性化合物のすべてが存在する。
【0060】
いくつかの実施形態では、培養培地は、少なくとも7種の群1の小極性代謝産物に加えて、前記群2の小極性化合物のうち少なくとも4種(すなわち、4、5または6種)を含む。いくつかの実施形態では、培養培地は、少なくとも3種の非タンパク質構成性アミノ酸に加えて、および/または少なくとも1種のアミノ酸誘導体に加えて、少なくとも4種の群2の小極性代謝産物および/または少なくとも7種の群1の小極性代謝産物を含む。いくつかの実施形態では、例えば、培養培地は、少なくとも7種の群1の小極性代謝産物、少なくとも4種の群2の小極性代謝産物、および4-ヒドロキシプロリン、アセチルグリシン、アルファ-アミノブチレート、ベタイン、カルニチン、シトルリン、オルニチンおよびタウリンから選択される少なくとも4種(すなわち、4、5、6、7もしくは8種)の非タンパク質構成性アミノ酸またはアミノ酸誘導体を含む。いくつかの実施形態では、培養培地は、少なくとも8種の群1の小極性代謝産物、少なくとも5種の群2の小極性代謝産物、および4-ヒドロキシプロリン、アセチルグリシン、アルファ-アミノブチレート、ベタイン、カルニチン、シトルリン、オルニチンおよびタウリンからなる群から選択される少なくとも4種(すなわち、4、5、6、7もしくは8種)の非タンパク質構成性アミノ酸またはアミノ酸誘導体を含む。いくつかの実施形態では、培養培地は、8または9種の群1の小極性代謝産物、5または6種の群2の小極性代謝産物、および4-ヒドロキシプロリン、アセチルグリシン、アルファ-アミノブチレート、ベタイン、カルニチン、シトルリン、オルニチンおよびタウリンから選択される7もしくは8種の非タンパク質構成性アミノ酸またはアミノ酸誘導体を含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、培養培地は、少なくとも1種のプリン代謝産物を含む。いくつかの実施形態では、プリン代謝産物(複数可)は、ヒポキサンチンおよび尿酸から選択される。いくつかの実施形態では、培地は、ヒポキサンチンおよび尿酸の両方を含む。タンパク質構成性アミノ酸、ビタミン、非タンパク質構成性アミノ酸(複数可)、アミノ酸誘導体、イオン、塩、群1の小極性代謝産物、群2の小極性代謝産物、糖および本明細書において記載されるその他の成分の組合せのいずれかに加えて、このようなプリン代謝産物(複数可)が存在し得る。
【0062】
ある特定の実施形態では、培養培地は、グルコースを含む。ある特定の実施形態では、培養培地中のグルコースの濃度は、約3mM~約20mM、例えば、約5mM~約10mM、例えば、約5mMである。
【0063】
ある特定の実施形態では、培養培地は、グルコースと、ガラクトース、フルクトースまたは両方などの1種または複数種のさらなる糖とを含む。ある特定の実施形態では、培養培地は、グルコースおよびガラクトースを含む。ある特定の実施形態では、培養培地は、グルコースおよびフルクトースを含む。ある特定の実施形態では、培養培地は、グルコース、ガラクトースおよびフルクトースを含む。ある特定の実施形態では、培養培地中のガラクトースの濃度は、約30μm~約120μm、例えば、約50μm~約80μm、例えば、約60μm、例えば、55μmから65μmの間、例えば、60μmである。ある特定の実施形態では、培養培地中のフルクトースの濃度は、約20μm~約80μm、例えば、約30μm~約60μm、例えば、約35μm~約45μm、例えば、約40μmである。
【0064】
タンパク質構成性アミノ酸、ビタミン、非タンパク質構成性アミノ酸(複数可)、アミノ酸誘導体、イオン、塩、群1の小極性代謝産物、群2の小極性代謝産物、プリン代謝産物および本明細書において記載されるその他の成分の組合せのいずれかに加えて、糖(複数可)が存在し得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、培養培地は、グルコースと、タンパク質構成性アミノ酸、ビタミン、非タンパク質構成性アミノ酸(複数可)、アミノ酸誘導体、イオン、塩、糖(複数可)および本明細書において記載されるその他の成分の組合せのいずれかとに加えて、2-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシブチレート、4-ヒドロキシプロリン、アセテート、アセトン、アセチルグリシン、アルファ-アミノブチレート、ベタイン、カルニチン、シトレート、シトルリン、クレアチン、クレアチニン、ホルメート、フルクトース、ガラクトース、グルタチオン、グリセロール、ヒポキサンチン、ラクテート、マロネート、オルニチン、ピルベート、スクシネート、タウリン、尿素および尿酸から選択される少なくとも20、21、22、23、24、25、26または27種の小有機化合物を含む。
【0066】
ある特定の実施形態では、培養培地は、表2においてこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約0.3~約3倍、例えば、表2においてこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度の約0.5~約2倍、例えば、表2においてこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約0.67~約1.5倍、表2においてこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±30%以内、表2においてこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±20%以内、表2においてこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±10%以内、表2においてこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±5%以内、表2においてこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±2%以内または表2においてこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±1%以内または表2においてこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)に対してほぼ同等である、いずれか1種または複数種の代謝産物の濃度を有する。いくつかの実施形態では、任意のこのような代謝産物は、正常成人ヒト血漿中のこのような代謝産物の濃度の最大約0.25、約0.5、約0.75、約1、約1.25、約1.5、約2、約2.5または約3倍の濃度で存在し得る。
【0067】
ある特定の実施形態では、培養培地は、表2においてこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約0.3~約3倍、例えば、表2においてこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度の約0.5~約2倍、例えば、表2においてこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約0.67~約1.5倍、表2においてこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±30%以内、表2においてこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±20%以内、表2においてこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±10%以内、表2においてこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±5%以内、表2においてこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±2%以内、表2においてこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±1%以内または表2においてこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)に対してほぼ同等である、培地中に存在する表2中に列挙される各代謝産物の濃度を有する。いくつかの実施形態では、培養培地は、正常成人ヒト血漿中のこのような構成成分の濃度の最大約0.25、約0.5、約0.75、約1、約1.25、約1.5、約2、約2.5または約3倍である、培地中に存在する表2中に列挙される各代謝産物の濃度を有する。
【0068】
ある特定の実施形態では、培養培地の重量オスモル濃度は、約260mOsm/kg~約320mOsm/kgである。ある特定の実施形態では、培地の重量オスモル濃度は、少なくとも約275mOsm/kg、少なくとも約280mOsm/kg、少なくとも約285mOsm/kg、少なくとも約290mOsm/kgまたは少なくとも約295mOsm/kgまたは最大約320mOsm/kgである。ある特定の実施形態では、重量オスモル濃度は、約285mOsm/kg~305mOsm/kgである。ある特定の実施形態では、重量オスモル濃度は、約290mOsm/kg~約300mOsm/kg、例えば、約295mOsm/kgである。
【0069】
いくつかの実施形態では、培養培地は、フェノールレッドなどの1種または複数種のpH指示薬を含み得る。いくつかの実施形態では、フェノールレッドは、表2中に列挙される濃度(複数可)の約0.3~約3倍、例えば、表2中に列挙される濃度の約0.5~約2倍の間、例えば、表2中に列挙される濃度の約0.67~1.5倍で、または表2中に列挙される濃度の約±30%、約±20%、約±10%、約±5%、約±2%、約±1%以内で、または表2中に列挙される濃度(複数可)に対してほぼ同等で、培地中に存在する。いくつかの実施形態では、フェノールレッドは、表2中に列挙される濃度の最大約0.25、約0.5、約0.75、約1、約1.25、約1.5、約2、約2.5または約3倍の濃度で存在し得る。いくつかの実施形態では、培地は、フェノールレッドを含まない。
【0070】
いくつかの実施形態では、培養培地は、培養の間に所望のpHを維持することを補助するために1種または複数種の緩衝剤を含み得る。迅速に成長する細胞では、培養培地の頻繁な、一定のまたは継続的な取り替えが、培地pHを回復させるのに役立ち得る。ある特定の実施形態では、緩衝剤は、重炭酸塩または2-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル]エタンスルホン酸(HEPES)である。
【0071】
ある特定の実施形態では、上記の成分の一部またはすべては、溶液中に一緒に混合される場合に、基礎培地を形成する。例えば、いくつかの実施形態では、培養培地は、表2中に開示される構成成分を表2中に列挙される濃度で含む。表2はまた、種々の構成成分の商業的な供給業者を列挙する。構成成分は任意の供給源から得ることができるということは理解されるべきである。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0072】
いくつかの態様では、本明細書において記載される細胞培養培地は、化学的に定義された基礎培地である。「化学的に定義された」とは、化学組成物内の種々の個々の構成成分の構造、化学式およびパーセンテージが公知であるか、またはそれを定義することができることを意味する。血清および組織抽出物は、すべての個々の構成成分が公知であるわけではないので、少なくとも部分的に化学的に定義されない。それらの公知の構成成分については、種々の構成成分の量および相対パーセンテージは、バッチごとに異なり得る(普通、異なる)。
【0073】
ある特定の実施形態では、本開示の基礎培地は、成長因子、ホルモンおよび脂質などの支持物質の供給源として働く血清によって補給されると、広範囲の哺乳動物細胞の増殖を支持する。いくつかの実施形態では、ウシ血清、例えば、ウシ胎仔血清または仔ウシ血清が使用され得る。その他の血清供給源としては、ウマおよびヒトが挙げられる。いくつかの実施形態では、基礎培地は、約5%~約20%血清、例えば、約7.5%~約15%血清、例えば、約10%血清(例えば、ウシ胎仔血清)が補給される。いくつかの実施形態では、血清は、熱不活化される。例えば、血清は、約56℃で約30分間(またはウマもしくはヒト血清については約25分間)加熱され得る。いくつかの実施形態では、血清は、熱不活化されない。
【0074】
いくつかの実施形態では、血清の代わりに、または血清に加えて、支持物質のその他の供給源が使用され得る。例えば、KnockOut(商標)Serum Replacement(ThermoFisher)またはBIT 9500(Stemcell Technologies)などの血清代替物、血小板溶解物、ウシ下垂体抽出物(BPE)などの動物抽出物またはそれらの組合せが使用され得る。いくつかの実施形態では、支持物質の供給源は、血清および動物抽出物の場合のように、少なくとも部分的に未定義であり得る。いくつかの実施形態では、支持物質は、その構造および量の点で定義され得る。例えば、公知の量で添加された個々の脂質または化学的に合成もしくは精製された組換えタンパク質(例えば、遺伝子操作された細菌または真菌によって産生された)は、定義された成分と考えられる。個々の定義された構成成分として、個々の定義された構成成分の混合物として、または血清もしくはその他の少なくとも部分的に未定義の物質の構成成分として基礎培地に添加され得る支持物質の例としては、インスリンまたはインスリン様成長因子、上皮成長因子、トランスフェリン、アルブミン、脂肪酸(例えば、リポ酸、リノール酸および/またはリノレン酸)、リン脂質およびコレステロールが挙げられる。いくつかの実施形態では、基礎培地は、支持物質を添加せずに、ある特定の哺乳動物細胞の増殖を支持し得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、血清、動物抽出物、成長因子、ホルモンおよび/または細胞生存率および増殖の支持に寄与し得るその他の物質を、本開示の基礎培地に添加してもよい。これらの構成成分は、基礎培地に個々に添加してもよく、または2種もしくはそれよりも多いこのような構成成分を混合して、例えば、保存溶液を形成してもよく、次いで、これを基礎培地に添加してもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、血清もしくは支持物質のその他のソース(複数可)を透析してもよく、またはそうでなければ、小極性代謝産物を除去するように処理してもよい。いくつかの実施形態では、約2,500~約5,000ダルトン、例えば、約3500ダルトンの分子量カットオフを有する透析膜を使用してもよい。透析は、表2中に列挙される少なくとも一部の極性代謝産物を含む少なくとも一部の小極性代謝産物が大部分除去されるように、十分に長い間実施してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、いずれか1種または複数種の極性代謝産物のレベルが、少なくとも約50%、少なくとも約75%またはそれよりも大きく低減され得る。いくつかの実施形態では、任意の特定の代謝産物の量が約50%~約99%低減される。ほとんどの血清タンパク質(例えば、アルブミン、トランスフェリン、インスリン、成長因子)およびこのようなタンパク質に結合している物質、例えば、脂質などのより大きな物質は、大部分保持される。いくつかの実施形態では、食塩溶液、例えば、緩衝食塩溶液、例えば、リン酸緩衝食塩水(PBS)を透析緩衝液として使用してもよい。いくつかの実施形態では、透析緩衝液は、約250mOsm/kg~約350mOsm/kg、例えば、約280mOsm/kg~約320mOsm/kgの重量オスモル濃度を有する。
【0077】
多数の細胞培養培地は、概して、それ自体細胞成長/増殖にとって必要ではないが、細菌および/または真菌などの望ましくない微生物の成長を阻害するために存在する1種または複数種の抗生物質を含有する。当業者ならば、細胞を培養するために培養培地が使用されようとするときに、またはその直前にその培養培地に抗生物質を添加してもよいということは理解している。抗生物質としては、種々の種の微生物、例えば、細菌(Bacillus属の種を含む)、放線菌属(actinomycetes)(Streptomycesを含む)および真菌によって産生され、その他の微生物を破壊またはその増殖を阻害する、比較的低分子量の天然および合成化学物質が挙げられる。天然抗生物質と構造および/または作用様式が類似の物質を化学的に合成してもよく、または半合成抗生物質を産生するために天然化合物を修飾してもよい。主要なクラスの抗生物質としては、(1)ペニシリン、セファロスポリンおよびモノバクタムを含むβ-ラクタム、(2)アミノグリコシド、例えば、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン(netilmycin)およびアミカシン、(3)テトラサイクリン、(4)スルホンアミドおよびトリメトプリム、(5)フルオロキノロン、例えば、シプロフロキサシン、ノルフロキサシンおよびオフロキサシン、(6)バンコマイシン、(7)例えば、エリスロマイシン、アジスロマイシン、タイロシンおよびクラリスロマイシンを含むマクロライド、ならびに(8)その他の抗生物質、例えば、ポリミキシン、クロラムフェニコールおよびリンコサミドがある。培養培地には、細菌、真菌および/またはウイルスの成長/増殖を阻害する1種または複数種の抗生物質が補給され得る。したがって、ある特定の実施形態では、培養培地は、1種または複数種の抗生物質を含む。ある特定の実施形態では、1種または複数種の抗生物質は、ペニシリン抗生物質を含む。ある特定の実施形態では、1種または複数種の抗生物質は、アミノグリコシド抗生物質を含む。ある特定の実施形態では、1種または複数種の抗生物質は、ベンジルペニシリンを含む。ある特定の実施形態では、1種または複数種の抗生物質は、ストレプトマイシンを含む。ある特定の実施形態では、培養培地は、ベンジルペニシリンおよびストレプトマイシンを含む。しかし、いくつかの実施形態では、培養培地は、抗生物質を実質的に含まない場合もある。いくつかの実施形態では、培養培地は、pH指示薬(複数可)、抗生物質(複数可)または両方以外の、検出可能な量で成人ヒト血液中に存在しない物質を実質的に含まない場合もある。
【0078】
いくつかの態様では、本開示は、従来の培養培地の改変版を提供する。従来の培地の改変版は、従来の培地と同一構成成分を同一量で含有し、1種もしくは複数種の群1の小極性代謝産物および/または1種もしくは複数種の群2の小極性代謝産物を成人ヒト血漿におけるその濃度の約0.3~約3倍の量でさらに含む。いくつかの実施形態では、従来の培養培地は、RPMI、DMEM、BME、MEM、IMDM、ハム栄養混合物(例えば、F10、F12)、培地199、マッコイ5aまたは2種もしくはそれよりも多いこのような培地の混合物である。いくつかの従来の培養培地の例示的調合は、表4に提供されている。表4中のすべての濃度は、特に断りのない限りマイクロモル濃度である。いくつかの実施形態では、1種または複数種の小極性代謝産物は、表2においてこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約0.5~約2倍、例えば、表2においてこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約0.67~約1.5倍、表2においてこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±30%以内、表2においてこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±20%以内、表2においてこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±10%以内、表2においてこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±5%以内、表2においてこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±2%以内または表2においてこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±1%以内または表2においてこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)に対してほぼ同等で存在する。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【0079】
いくつかの態様では、本開示は、尿酸は、成人ヒト血液中に存在するものの代表的なレベルでは、UMPSを阻害するという認識に関する。UMPSは、de novoピリミジン生合成経路の最後の2ステップを触媒して、UMPを生成する。如何なる理論にも束縛されることを望まないが、従来の培養培地と比較して増加したレベルの尿酸を含有する細胞培養培地において培養されたヒト細胞は、従来の培養培地において培養されたヒト細胞よりも、in vivoでのヒト細胞のUMPSレベルをより密接に反映するUMPS活性レベルを有し得る。いくつかの実施形態では、少なくとも約200μm、例えば、約200μm~約1mMである尿酸の濃度を有する細胞培養培地が、本明細書において記載される。いくつかの実施形態では、濃度は、約200μm~約700μm、例えば、約300μm~約400μm、例えば、約350μmである。培養培地は、少なくとも一部の哺乳動物細胞の生存率および増殖を支持するのに十分なタンパク質構成性アミノ酸と、無機イオンと、糖(複数可)(例えば、グルコース)と、ビタミンとを含む。いくつかの実施形態では、従来の培養培地に、選択された尿酸濃度を達成するのに適切な量の尿酸を補給することによって、培養培地を調製してもよい。例えば、RPMI、DMEM、BME、MEM、IMDM、ハム栄養混合物(例えば、F10、F12)、培地199、マッコイ5aまたはそれらの混合物がそのように補給され得る。いくつかの実施形態では、従来の培養培地と比較して増加したレベルの尿酸を含有する細胞培養培地を、ピリミジン生合成に関係する、および/またはピリミジン生合成に関与する酵素に対して作用する、もしくはその酵素によって作用される化合物に関係する研究において使用してもよい。
【0080】
ある特定の実施形態では、1種または複数種の培地構成成分を、同様の特性のその他の化学物質によって置換してもよい。1種または複数種の非必須/不必要な構成成分を有さないこのような改変培地は、本開示の範囲内にある。同様に、当業者ならば、必要な場合、特定の細胞型または適用のための任意の所与の構成成分の最適レベルを、例えば、その特定の構成成分の列挙された濃度または濃度の範囲に基づいて、またはそれから出発して、各構成成分の濃度の範囲(例えば、約10%、約25%、約50%、約75%、約100%高い、約2倍、約5倍、約10倍、約20倍、約50倍、約100倍、約200倍、約500倍、約1000倍高い、または約10%、約25%、約50%、約75%、約100%低い、約2倍、約5倍、約10倍、約20倍、約50倍、約100倍、約200倍、約500倍、約1000倍低い)を試験することによって、決定することができる。このような試験を行うことにおいて、最初の広範囲の濃度試験を、最初の実験の結果に基づいて、後で狭めてもよい。例えば、最初の試験について、目的の1つの構成成分の濃度を、表2において列挙される濃度の約10-3、約10-2、約10-1、約10倍、約100倍または約1000倍の濃度に変更してもよい。約10-2の試験が、所望の増殖を依然として支持し、約10-3が失敗する場合には、次に、最良の範囲を正確に指摘するために、試験の第2のラウンドにおいて約10-2と約10-3との間の約10倍の濃度差をさらに調査してもよい。したがって、具体的な細胞型または適用についてそのように最適化された培地もまた、本開示の範囲内である。
【0081】
当業者には容易に明らかとなろうが、所与の成分の濃度を、本明細書において開示された範囲を超えて増加または減少させることができ、増加または減少させた濃度の効果を決定できる。任意の具体的な細胞型または適用のために、Ham(Ham、Methods for Preparation of Media, Supplements and Substrata for Serum-Free Animal Culture、Alan R. Liss, Inc.、New York、3~21頁、1984年)およびWaymouth(Waymouth,C.、Methods for Preparation of Media, Supplements and Substrata for Serum-Free Animal Culture、Alan R. Liss, Inc.、New York、23~68頁、1984年)によって記載されたアプローチを使用して本培地調合の最適化を実施することができる。培地成分の最適最終濃度は、単一構成成分滴定研究(single component titration study)において実験による研究によって、または歴史的および現在の科学的文献の解釈によって同定できる。動物細胞を使用する単一構成成分滴定研究では、すべてのその他の構成要素および変数を一定に維持しながら、単一培地構成成分の濃度を変え、動物細胞の生存率、増殖または健康の継続に対する単一構成成分の効果を測定する。同様に、どの培地構成成分(複数可)が特定の細胞表現型または応答に関与する、またはそれに影響を及ぼすかを決定することは、所与の非必須構成成分を完全に省くことおよび/または目的の細胞表現型もしくは応答に対するこのような構成成分の種々の濃度の効果を試験することを含み得る、単一構成成分滴定研究を使用して実施できる。
【0082】
本明細書において言及されるある特定のビタミン、成長因子、ホルモンまたはサイトカインは、当技術分野で公知のように種々の形態(例えば、種々の天然に存在するまたは天然に存在しない形態)で存在することができ、互いの代用品として使用できるということは理解される。本出願が、特定のビタミン、成長因子、ホルモンまたはサイトカインが使用されることを明記する場合には、本開示は、同様の生物活性を有する、このようなビタミン、成長因子、ホルモンまたはサイトカインの任意の形態(あるいは生物学的に活性な形態を提供するように、細胞培養培地中で、または細胞内で修飾もしくは代謝され得る化合物(複数可))が使用される実施形態を包含すると理解されるべきである。同等の生物活性を提供するように、量を調整することができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、培地成分を液体キャリア中に溶解することができ、または種々の実施形態では乾燥形態で維持することができる。液体キャリア中に、本明細書において記載される好ましい濃度(すなわち、「1倍調合(1×formulation)」)で溶解する場合には、培地のpHを約7.0~7.6、例えば、約7.1~7.5、例えば、約7.2~7.4に調整してもよい。培地の重量オスモル濃度を、例えば、NaClを補給することによって上記の好ましい範囲に調整してもよい。液体キャリアの種類および成分を溶液に溶解するために使用される方法は、変えてもよく、当業者によって決定できる。概して、培地成分は任意の順序で添加することができる。
【0084】
細胞培養培地は、いくつかの成分から構成され、これらの成分は、培養培地毎に変わる。「1倍調合物(1×formulation)」は、使用濃度の細胞培養培地中に見出される一部のまたはすべての成分を含有する任意の水溶液を指すものとする。用語「1倍調合物」とは、例えば、細胞培養培地またはその培地の成分の任意のサブグループを指し得る。1倍溶液(1×solution)中の成分の濃度は、in vitroで細胞を維持または培養するために使用される細胞培養調合物において見出されるその成分の濃度とほぼ同一である。細胞のin vitro培養のために使用される細胞培養培地は、定義により1倍調合物である。いくつかの成分が存在する場合には、1倍調合物中の各成分は、細胞培養培地中のそれらの成分の濃度とほぼ同等の濃度を有する。例えば、RPMI-1640培養培地は、成分の中でもとりわけ、0.2g/L L-アルギニン、0.05g/L L-アスパラギンおよび0.02g/L L-アスパラギン酸を含有する。これらのアミノ酸の「1倍調合物」は、溶液中にほぼ同一濃度のこれらの成分を含有する。したがって、「1倍調合物」に言及する場合は、溶液中の各成分が、記載されている細胞培養培地において見出されるものと同じまたはほぼ同じ濃度を有することが意図される。種々の細胞培養培地の1倍調合物中の成分の濃度は、当業者に周知である。例えば、Freshney、2010年およびLiss、前掲を参照のこと。しかし、重量オスモル濃度および/またはpHは、特に、1倍調合物中により少ない成分が含有される場合には、培養培地と比較して1倍調合物において異なり得る。
【0085】
「10倍調合物」とは、その溶液中の各成分が、細胞培養培地中の同じ成分よりも約10倍より濃縮されている溶液を指すものとする。例えば、RPMI-1640培養培地の10倍調合物は、成分の中でもとりわけ、2.0g/L L-アルギニン、0.5g/L L-アスパラギンおよび0.2g/L L-アスパラギン酸(上記の1倍調合物と比較して)含有し得る。「10倍調合物」は、いくつかのさらなる成分を、1倍培養培地において見出されるものの約10倍の濃度で含有し得る。容易に明らかとなるが、「25倍調合物」、「50倍調合物」、「100倍調合物」、「500倍調合物」および「1000倍調合物」は、1倍の細胞培養培地(1×cell culture medium)と比較して、それぞれ、成分を約25倍、約50倍、約100倍、約500倍または約1000倍の濃度で含有する溶液を示す。やはり、培地調合物および濃縮溶液の重量オスモル濃度およびpHは変わり得る。本明細書において培養培地の構成成分の濃度が言及される場合には、これらの濃度は、特に断りのない限りまたは文脈から明確に明らかでない限り、1倍調合物についてである。本開示はまた、10倍調合物、25倍調合物、50倍調合物、100倍調合物、250倍調合物、500倍調合物および1000倍調合物および1倍調合物から1000倍調合物の間の中間濃度を有するその他の調合物を提供する。成分が可溶性のままであり、安定のままであるという条件で、より高度に濃縮された調合物を作製することもできる。高濃度の培養培地構成成分を可溶化する方法を対象とする米国特許第5,474,931号を参照のこと。培養培地のある特定の構成成分は、上記の濃度のいずれかまたはより高濃度、例えば、2,500倍、5000、10000倍またはそれを超える濃度の溶液として調製され得る。
【0086】
培地成分が別個の濃縮溶液として調製される場合には、適切な(十分な)量の各濃縮物を、希釈剤と組み合わせて、1倍の培地調合物を産生する。概して、使用される希釈剤は、水であるが、ある特定の実施形態では、水性緩衝液、水性食塩溶液またはその他の水溶液を含むその他の溶液が使用され得る。
【0087】
本発明の培養培地は、通常、不要な汚染を防ぐために滅菌される。例えば、濃縮成分を混合した後に、約0.1~1.0μm孔径の低タンパク質結合メンブレンフィルター(例えば、Millipore、マサチューセッツ州、ベッドフォードから商業的に入手可能)を通す濾過によって滅菌を遂行して、滅菌培養培地を産生してもよい。あるいは、成分の濃縮されたサブグループをフィルター滅菌して、滅菌溶液として保存してもよい。次いで、これらの滅菌濃縮物を、無菌条件下で滅菌希釈剤と混合して、濃縮された1倍の滅菌培地調合物を産生できる。本培養培地の構成成分の多くは、熱不安定性であり、ほとんどの加熱滅菌法の間に達成される温度などによって不可逆的に分解されるので、オートクレーブ処理またはその他の高温ベースの滅菌方法は好まれない。
【0088】
当業者には容易に明らかとなるが、培養培地の構成成分の各々は、溶液中の1種または複数種のその他の構成成分と反応し得る。したがって、本発明は、本明細書において開示される調合物(例えば、表2中に列挙される構成成分を含む調合物)ならびにこれらの成分が組み合わされた後に形成される任意の反応混合物を包含する。
【0089】
本明細書において記載される培養培地は、Sigmaなどの種々の化学物質供給業者から別個に購入された個々の構成成分から作製できる。表2には、種々の供給業者の現在のカタログによるある特定の培地構成成分の製品番号が列挙されるが、構成成分は、異なる供給業者から得てもよく、または合成してもよいということは理解されるべきである。
【0090】
いくつかの実施形態では、複数の構成成分を含むある特定の市販の組成物を、好都合に混合し、さらなる構成成分を補給して、培養培地を作製してもよい。例えば、ある特定の実施形態では、培養培地は、本明細書において記載されるその他の構成成分(例えば、塩、アミノ酸、グルコース、極性代謝産物)を、本明細書において記載されるようなおよそのその対応する濃度に組み合わせた、RPMI 100Xビタミンミックス(Sigma R7256)を含み得る。
【0091】
いくつかの態様では、本開示は、細胞培養培地を作製する方法であって、本明細書において開示される構成成分を組み合わせて、本明細書において記載される培養培地のいずれかを形成することを含む方法を提供する。いくつかの態様では、本開示は、細胞培養培地を作製する方法であって、本明細書において開示される構成成分を組み合わせて、本明細書において記載される基礎培養培地のいずれかを形成することと、基礎培養培地に血清または支持物質の別の供給源を添加することとを含む方法を提供する。
【0092】
特に断りのない限り、本明細書で使用される場合、最大X%までの変形形態とは、列挙された値に関して±X%までの変形形態を意味する。例えば、列挙された値が100μMである場合には、25%までの変形形態は、値が、約75μM~約125μM(すなわち、約75~125μM)の範囲であり得ることを意味する。特に断りのない限り、値の範囲が開示される場合には、終点は範囲内に含まれる。終点が排除される実施形態および一方の終点が含まれ、もう一方の終点が排除される実施形態もまた提供される。さらに、特に断りのない限り、または文脈および当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表される値は、種々の実施形態において示された範囲内の任意の具体的な値または部分的な範囲、例えば、文脈が明確に別のことを示さない限り、範囲の下限の単位の10分の1までを想定することができるということは理解されるべきである。一連の数値が本明細書において示される場合には、本発明は、任意の介在する値、または最も低い値が最小として選択されてよく、最も大きい値が最大として選択されてよい、一連のものの中の任意の2つの値によって定義される範囲に関する実施形態を含むことも理解される。
【0093】
ある特定の構成成分は、塩、エステル、生物学的に活性な代謝産物または誘導体として、あるいは細胞によって、または培地中で代謝され、処理され、もしくは分解されて、本明細書において開示される特定の構成成分の生物学的に活性な形態をもたらす前駆体として提供され得ることは理解されたい。この文脈において「生物学的に活性な」とは、細胞培養培地中に存在する場合に細胞に対してその所望の効果を発揮する、構成成分の能力を指す。ある特定の化合物、例えば、ある特定の培地構成成分は、特定の幾何または立体異性形態で存在し得る。シス-およびトランス-異性体、E-およびZ-異性体、R-およびS-鏡像異性体、ジアステレオマー、(D)-異性体、(L)-異性体、(-)-および(+)-異性体、それらのラセミ混合物およびそれらのその他の混合物を含むこのような化合物は、特に断りのない限り、種々の実施形態において本開示によって包含される。ある特定の化合物は、多様なまたはプロトン化状態で存在してもよく、種々の立体配置を有してもよく、溶媒和物(例えば、水との(すなわち、水和物)もしくは一般的な溶媒との)として存在してもよく、および/または種々の結晶形態(例えば、多形)または種々の互換異性形態を有してもよい。このような代替プロトン化状態、立体配置、溶媒和物および形態を示す実施形態は、適用される場合には本開示によって包含される。
【0094】
本明細書において記載される培地は、液体もしくは固体粉末、または両方の組合せであり得る。いくつかの実施形態では、液体形態は、培地のすべての構成成分を含有し得る。あるいは、液体培地は、個々のパッケージが各々、その適切な状態で(温度、湿度など)保存され得るように、別個のパッケージとして貯蔵されてもよい。例えば、表2中に列挙された構成成分のほとんどまたはすべては、本開示の培地中にあるように望まれる場合は、単一溶液中に予め溶解され、適切な条件(例えば、約2~8℃、例えば、約4℃、暗所および乾燥した場所でなど)で貯蔵されてもよい。他の構成成分であって、その構成成分のための貯蔵条件で長期間にわたると不安定であり得る、またはその他の構成成分と低速度で反応し得る、または別の方法で別個のストックとしてより良好に維持され得る他の構成成分は、例えば、便宜上または好みによって、異なる条件のセット下(例えば、約-20℃または約-80℃など)で貯蔵してもよい。これらの別個に貯蔵された構成成分が、全培地を構成するために一緒にされるのは、使用の少し前または直前のみである。別個のパッケージは各々、別個に、または種々の濃縮ストック(例えば、2倍、5倍、10倍、100倍、1000倍など)として上市または販売されてもよい。
【0095】
同様に、培地または個々の構成成分は、水性培地(水など)を用いる再構成の際に、所望の培地またはその濃縮ストック(例えば、2倍、5倍または10倍など)をもたらす乾燥粉末の形態であり得る。いくつかの実施形態では、培地の少なくとも一部の構成成分は、液体/水性形態にある。いくつかの実施形態では、培地の少なくとも一部またはすべての構成成分は、固体/粉末形態にある。構成成分、例えば、保存溶液は、貯蔵温度(例えば、液体窒素、約-80℃、約-20℃、約4℃、室温または約20~25℃など)での安定性、光に対する感受性、水性または有機溶液中での自然半減期などを含む構成成分の特徴に従って適切に貯蔵されるべきである。いくつかの保存溶液は、好ましくは、新鮮なストックを維持するために定期的に再作製されてもよい。いくつかの実施形態では、1種または複数種の構成成分は、例えば、培地の使用者によって粉末またはより濃度の高い溶液から新たに調製されてもよく、液体として供給されるその他の構成成分に添加されてもよい。いくつかの実施形態では、例えば、グルコース、尿素および/または尿酸は新たに調製されてもよい。例示的な保存溶液を調製する方法は、実施例に記載されている(表7を参照のこと)。当業者ならば、多数のその他の同様のまたは同等の方法および保存溶液の濃縮物を使用してもよいということを理解する。いくつかの実施形態では、培地は、保存溶液、粉末または両方のセットとして、例えば、複数の個々の容器を含有するキットであって、各々の容器が、構成成分のうちの1種または複数種を含有する保存溶液または粉末を含有する、キットとして提供され得る。キットは、粉末として提供される構成成分を溶解するための1種または複数種の希釈剤を含み得る。
【0096】
1種または複数種の構成成分が、所望の適用のための培地の性能に対して実質的に影響を及ぼす(例えば、悪影響を及ぼす)ことがない程度に、培養培地は、ある特定の実施形態では、このような構成成分のうち1種または複数種を含み、その存在を許容する。基礎培地のある特定の実施形態において存在し得るさらなる構成成分の例としては、微量金属、親油性代謝産物およびビタミンが挙げられる。ある特定の実施形態では、本開示の培地は、これらのまたはその他の構成成分のうちいずれか1種または複数種を実質的に含まない場合もある。いくつかの実施形態では、培地は、1種または複数種の指定の構成成分を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、「実質的に含まない」とは、細胞成長および/または代謝に対して統計的に有意な効果を有さない少量の構成成分を指す。いくつかの実施形態では、「実質的に含まない」とは、液体が約0.01%v/v未満、約0.001%v/v未満または約0.0001%v/v未満または溶質が約0.01%w/v未満、約0.001%w/v未満または約0.0001%w/v未満であることを指す。いくつかの実施形態では、「実質的に含まない」とは、濃度が約0.001mg/L未満、約0.0001mg/L未満、約0.00001mg/L未満、約0.000001mg/Lまたは約0.0000001mg/L未満であることを指す。いくつかの実施形態では、「実質的に含まない」とは、濃度が約10nM未満、約1nM未満、約1μM未満、約10μM未満または約100μM未満であることを指す。いくつかの実施形態では、「実質的に含まない」とは、培地が物質を含んでいないことを指し、それは、物質が、培地に存在しない、または存在する場合には、バイオアッセイ、質量分析、NMR、クロマトグラフィーアッセイなどであり得る、物質についての最も高感度の技術的に認められたアッセイによる検出限界未満であることを意味する。
【0097】
いくつかの実施形態では、基礎培養培地は、少なくとも以下の微量金属:鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、リチウム(Li)、セレン(Se)、クロム(Cr)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、バナジウム(Vn)、モリブデン(Mo)、シリコン(Si)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびスズ(Sn)を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、1種または複数種のこのような微量金属は、基礎培地の構成成分として含まれてもよく、または基礎培地もしくは完全培地に添加されてもよい。微量金属は、種々の形態で、例えば、CuSO、ZnSO、FeSO、Fe(NO)、MnCl、NaSeO、NaSiO、(NHMo24、NHVO、NiSOもしくはSnClなどの塩の形態で提供されてもよい。いくつかの実施形態では、任意のこのような微量金属は、正常成人ヒト血漿中のこのような微量金属の濃度の最大約0.25、約0.5、約0.75、約1、約1.25、約1.5、約2、約2.5または約3倍の濃度で存在し得る。
【0098】
いくつかの実施形態では、基礎培養培地は、親油性代謝産物を実質的に含まない。本明細書で使用される場合、「親油性代謝産物」とは、以下:脂肪酸、コレステロール、コレステロールエステル、セラミド、ジグリセリド、ガングリオシド、グリセロホスホコリン、モノアシルグリセリド、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリンおよびトリグリセリドのうちいずれかの誘導体を含む、またはそれらである化合物を指す。いくつかの実施形態では、1種または複数種のこのような親油性代謝産物は、基礎培地の構成成分として含まれてもよく、または基礎培地もしくは完全培地に添加されてもよい。いくつかの実施形態では、任意のこのような親油性代謝産物は、正常成人ヒト血漿中のこのような親油性代謝産物の濃度の最大約0.25、約0.5、約0.75、約1、約1.25、約1.5、約2、約2.5または約3倍の濃度で存在し得る。
【0099】
いくつかの実施形態では、基礎培養培地は、ビオチン、コリン、葉酸、ミオ-イノシトール、ナイアシンアミド、p-アミノ安息香酸、D-パントテン酸、ビタミンB6、リボフラビン、チアミンおよびビタミンB12以外のビタミンを実質的に含まない。いくつかの実施形態では、基礎培養培地は、上記のビタミンのうち1種または複数種に加えて、1種または複数種のビタミンを含む。基礎培地の構成成分として含まれてもよい、または基礎培地もしくは完全培地に添加されてもよいさらなるビタミンとしては、例えば、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンK3、ビタミンEおよびビタミンAが挙げられる。いくつかの実施形態では、任意のこのようなビタミンは、正常成人ヒト血漿中のこのようなビタミンの濃度の最大約0.25、約0.5、約0.75、約1、約1.25、約1.5、約2、約2.5または約3倍の濃度で存在し得る。いくつかの実施形態では、1種または複数種の小極性代謝産物は、正常成人ヒト血漿中のこのようなビタミンの濃度の約0.5~約2倍で、例えば、表2においてこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約0.67~約1.5倍、正常成人ヒト血漿中のこのようなビタミンの濃度の約±30%以内、約±20%以内、約±10%以内または約±5%以内で存在する。
【0100】
いくつかの実施形態では、基礎培養培地は、本明細書において記載されるように存在し得るビタミン以外の、正常成人ヒト血液中で約6μM未満の通常の濃度を有する代謝産物を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、約6μM未満の正常成人ヒト血液中の濃度を有する1種または複数種の代謝産物は、基礎培地の構成成分として含まれてもよく、または基礎培地もしくは完全培地に添加されてもよい。ある特定の実施形態では、例えば、1種または複数種の指定の代謝産物を欠く培養培地で培養された細胞を、同一の培養培地であるが、正常成人ヒト血液中でその濃度が6μM未満である選択された代謝産物(複数可)が添加された培養培地で培養された細胞と比較することが、目的のものであり得る。このような比較は、本明細書において記載されるアッセイのいずれかを実施することおよび結果を比較することを含み得る。いくつかの実施形態では、任意のこのような代謝産物は、正常成人ヒト血漿中のこのような代謝産物の濃度の最大約0.25、約0.5、約0.75、約1、約1.25、約1.5、約2、約2.5または約3倍の濃度で存在し得る。
【0101】
ある特定の実施形態では、2-ヒドロキシグルタレート、アセチルアスパルテート、アセチルカルニチン、アセチルセリン、アコニテート、アラントイン、アミノアジペート、アルギニノスクシネート、非対称性ジメチルアルギニン、ベータ-アラニン、カルノシン、シチジン、デオキシシチジン、フマレート、キヌレニン、マレート、メチオニンスルホキシド、プソイドウリジン、リビトール、ソルビトール、チミジン、トリメチルリシン、ウラシル、ウリジン、キサンチンおよびキサントシンから選択される任意の1種または複数種の代謝産物は、基礎培地または完全培地において明確に含まれる場合も、明確に排除される場合もある。いくつかの実施形態では、前記リストの化合物の中の少なくとも1種のアミノ酸またはアミノ酸誘導体が含まれる。いくつかの実施形態では、プリン、ピリミジン、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたは化合物のリストに列挙されたこれらのうちいずれかの誘導体を含む少なくとも1種の化合物が含まれる。例えば、いくつかの実施形態では、培地は、ウリジンを、例えば、約2μM~約4μMの濃度で含む。例えば、ある特定の実施形態では、培養培地は、アセチルカルニチン、アルファ-ケトグルタレート、ウリジンおよびマレートのうち1種または複数種(例えば、2、3種またはすべて)を含有する。
【0102】
いくつかの実施形態では、任意のこのような代謝産物は、表3中に列挙されたこのような代謝産物の濃度の最大約0.25、約0.5、約0.75、約1、約1.25、約1.5、約2、約2.5または約3倍の濃度で存在し得る。ある特定の実施形態では、培養培地は、表3におけるこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約0.3~約3倍、例えば、表3におけるこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度の約0.5~約2倍、例えば、表3におけるこのような代謝産物について列挙される濃度の約0.67~約1.5倍、表3におけるこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±30%以内、表3におけるこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±20%以内、表3におけるこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±10%以内、表3におけるこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±5%以内、表3におけるこのような代謝産物について列挙される濃度の約±2%以内または表3におけるこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±1%以内または表3におけるこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)に対してほぼ同等である、任意の1種または複数種の代謝産物の濃度を有する。ある特定の実施形態では、培養培地は、表3におけるこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約0.3~約3倍の間、例えば、表3におけるこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度の約0.5~約2倍、例えば、表3におけるこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約0.67~約1.5倍、表3におけるこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±30%以内、表3におけるこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±20%以内、表3におけるこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±10%以内、表3におけるこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±5%以内、表3におけるこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±2%以内または表3におけるこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)の約±1%以内または表3におけるこのような代謝産物(複数可)について列挙される濃度(複数可)に対してほぼ同等である、または表3におけるこのような代謝産物について列挙される濃度に対して同等である、培地中に存在する表3中に列挙される各代謝産物の濃度を有する。
【表3-1】
【表3-2】
【0103】
ある特定の実施形態では、培養培地は、マレートを4μM~8μM、例えば、5μM~6μM、さらに、例えば、5μMの濃度で含有する。ある特定の実施形態では、培養培地は、アルファ-ケトグルタレートを、4μM~8μM、例えば、5μM~6μM、さらに、例えば、5μMの濃度で含有する。ある特定の実施形態では、培養培地は、アセチルカルニチンを、4μM~8μM、例えば、5μM~6μM、さらに、例えば、5μMの濃度で含有する。ある特定の実施形態では、培養培地は、ウリジンを、1μM~5μM、例えば、2μM~4μM、さらに、例えば、3μMの濃度で含有する。
【0104】
ある特定の実施形態では、基礎細胞培養培地は、以下の成長因子:EGF、FGF、IGF-1、IGF-2、PDGF、VEGF、コロニー刺激因子1(CSF-1)、コロニー刺激因子2(CSF-2)およびコロニー刺激因子2(CSF-3)のうちいずれか1種または複数種を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、1種または複数種の成長因子は、基礎培地または完全培地に添加されてもよい。いくつかの実施形態で、任意のこのような因子は、正常成人ヒト血漿中のこのような因子の濃度の最大約0.25、約0.5、約0.75、約1、約1.25、約1.5、約2、約2.5または約3倍の濃度で存在するように添加されてもよい。ある特定の実施形態では、基礎細胞培養培地は、成長因子を実質的に含まない。
【0105】
ある特定の実施形態では、基礎細胞培養培地は、以下のホルモン:コルチゾール、エストロゲン、成長ホルモン、インスリン、プロゲステロン、テストステロンおよびトリヨードチロニン(T3)のうちいずれか1種または複数種を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、1種または複数種のホルモンは、基礎培地または完全培地に添加されてもよい。いくつかの実施形態では、任意のこのようなホルモンは、正常成人ヒト血漿中のこのようなホルモンの濃度の最大約0.25、約0.5、約0.75、約1、約1.25、約1.5、約2、約2.5または約3倍の濃度で存在するように添加されてもよい。ある特定の実施形態では、基礎細胞培養培地は、ホルモンを実質的に含まない。
【0106】
血清またはその他の少なくとも部分的に未定義の物質(複数可)を含む培養培地のそれらの実施形態では、任意の1種または複数種の代謝産物、成長因子、ホルモンまたはその他の化合物は、培養培地中に、あるとすれば、基礎培地中に存在する量に加えて、血清またはその他の少なくとも部分的に未定義の物質(複数可)によって与えられる量で存在し得る。成長因子、ホルモンまたはその他のタンパク質は、組換えタンパク質であり得るか、または天然に存在する供給源から精製してもよい。ある特定の実施形態では、組換えヒトタンパク質を使用してもよい。
II.使用の方法
【0107】
さまざまな真核細胞のいずれかを培養するために、本明細書において記載される培養培地を使用してもよい。いくつかの実施形態では、本明細書において記載される組成物および/または方法において使用される細胞は、動物細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞は、霊長類細胞(ヒトまたは非ヒト霊長類)、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター)細胞またはイヌ、ネコまたはウシ細胞である。特定の目的のある特定の実施形態では、細胞は、ヒト細胞である。本明細書において言及されるかどうかに関わらず、特に断りのない限りまたは文脈から明確に明らかでない限り、細胞はヒト細胞であり得るということは理解されるべきである。
【0108】
細胞は、種々の実施形態において、初代細胞、不死化細胞、正常細胞、異常細胞、がん細胞、非がん細胞などであり得る。いくつかの実施形態では、細胞は、体細胞である。細胞は、目的の特定の組織または臓器を起源とするものであっても、特定の細胞型のものであってもよい。初代細胞は被験体から新たに単離されてもよく、培養で、制限された回数、例えば、1~5回継代されていてもよく、または培養で少数の集団倍加、例えば、1~5回集団倍加を起こしていてもよい。いくつかの実施形態では、細胞は、細胞の集団のメンバー、例えば、非不死化または不死化細胞系のメンバーである。いくつかの実施形態では、「細胞系」とは、培養で少なくとも10継代または少なくとも10回の集団倍加の間維持されている細胞の集団を指す。いくつかの実施形態では、細胞系は、単一細胞に由来する。いくつかの実施形態では、細胞系は、複数の細胞に由来する。いくつかの実施形態では、細胞系の細胞は、単一試料(例えば、腫瘍から得た試料)または個体に由来する細胞(複数可)に由来する。細胞は、例えば、約3ヶ月より長い(適宜継代しながら)または約25回の集団倍加よりも長い間、培養で長期増殖が可能である細胞系のメンバーであり得る。非不死化細胞系は、例えば、老化の前に、培養で約20~80回の間の集団倍加を起こすことが可能であり得る。不死化細胞系は、本質的に制限のない寿命を獲得している、すなわち、細胞系は、本質的に限界なく増殖可能と思われる。本明細書における目的上、培養で少なくとも約100回の集団倍加を起こしている、または起こすことが可能である細胞系が不死と考えられ得る。
【0109】
多数の細胞系が当技術分野で公知である。細胞系は、例えば、American Type Culture Collection(ATCC)、Coriell Cell Repositories、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen and Zellkulturen(German Collection of Microorganisms and Cell Cultures;DSMZ)、European Collection of Cell Cultures(ECACC)、Japanese Collection of Research Bioresources(JCRB)、理化学研究所、Cell Bank Australiaなどといった寄託機関または細胞バンクから得ることができる。上記の寄託機関および細胞バンクの紙面のおよびオンラインカタログは、参照により本明細書に組み込まれる。所望の場合には、細胞を、DNAフィンガープリント法(例えば、ショートタンデムリピート(STR)解析)または一塩基多型(SNP)解析(例えば、SNPアレイ(例えば、SNPチップ)もしくはシーケンシングを使用して実施され得る)などの当技術分野で公知の種々の方法のいずれかによって、単一個体または特定の細胞系に由来するかどうかを確認するために試験してもよい。
【0110】
ある特定の実施形態では、細胞は、足場依存性(anchorage dependent)であり、これは、細胞が、生存し、機能し、分裂するために安定な表面への接触および足場を必要とすることを意味する。ある特定の実施形態では、細胞は、足場非依存性であり、これは、細胞が、生存し、機能し、分裂するために安定な表面への接触および足場を必要としないことを意味する。足場非依存性細胞は、普通、足場依存性であるが、天然に、またはヒトの介入による操作の結果としてこのような依存を失った細胞型のものであり得る。
【0111】
ある特定の実施形態では、細胞は、血液細胞としても本明細書において言及される、血液学的細胞を含む。血液学的細胞は、骨髄系統およびリンパ系統の細胞を含む。骨髄系統細胞としては、それだけには限らないが、単球、マクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球および血小板が挙げられる。リンパ系統細胞としては、リンパ球、例えば、T細胞、B細胞およびナチュラルキラー細胞が挙げられる。T細胞は、CD4+ヘルパーT細胞(Th1、Th2およびTh17細胞を含む)、CD8+細胞傷害性T細胞および/またはキラーT細胞を含み得る。いくつかの実施形態では、血液学的細胞は、末梢血単核細胞を含む。いくつかの実施形態では、血液学的細胞は、樹状細胞を含む。ある特定の実施形態では、細胞は、血液学的がん細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、内皮細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、上皮細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、肝細胞、線維芽細胞、ケラチノサイト、メラノサイト、骨芽細胞、破骨細胞、軟骨細胞、ニューロン、グリア細胞、間葉系細胞または脂肪細胞を含む。
【0112】
ある特定の実施形態では、細胞は幹細胞を含む。幹細胞は、多能性幹細胞、例えば、胚幹細胞もしくは人工多能性幹(iPS)細胞であり得るか、または成体幹細胞、例えば、造血幹細胞、腸幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞、脂肪由来幹細胞もしくは内皮幹細胞などのより制限された発生能を有する幹細胞であり得る。いくつかの実施形態では、幹細胞は、複能性である。いくつかの実施形態では、幹細胞は、単能性である。
【0113】
ある特定の実施形態では、細胞は、正常な非がん細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、がん細胞を含む。がん細胞は、任意の種類のがん、例えば、本明細書において言及されるがんの種類のいずれかに由来し得る。いくつかの実施形態では、がん細胞は、遺伝子操作された細胞であり、これは、1種または複数種のがん遺伝子を非がん細胞に導入することによって、および/または非がん細胞において1種または複数種の腫瘍抑制細胞を不活化することによって生成することができる。例示的ながん細胞系は、実施例に記載されている。多数のその他のがん細胞系が当技術分野で公知である。いくつかの実施形態では、がん細胞系は、Cancer Cell Line Encyclopedia(CCLE)(Barretina,J.ら、(2012年)Nature 483巻:603~607頁;portals.broadinstitute.org/ccle/home)に含まれるものである。いくつかの実施形態では、がん細胞、例えば、がん細胞系は、ヒト腫瘍を起源とする。いくつかの実施形態では、がん細胞、例えば、がん細胞系は、非ヒト動物において生じる腫瘍を起源とする。いくつかの実施形態では、がん細胞、例えば、がん細胞系は、天然に生じるがん(すなわち、例えば、実験目的で、意図的に誘導されていない、または生成されていない腫瘍)を起源とする。いくつかの実施形態では、がん細胞は、血液学的がん細胞、例えば、白血病またはリンパ腫細胞を含む。いくつかの実施形態では、がん細胞は、癌細胞(carcinoma cell)または肉腫細胞を含む。いくつかの実施形態では、がん細胞は、がん幹細胞を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、細胞は、目的の疾患を有する被験体に由来する。細胞は、1つまたは複数の変異を有し得る、および/または疾患と関連する1つまたは複数の表現型を示し得る。当業者ならば、多数の疾患関連変異を承知している。多数のヒト遺伝子およびヒトにおいて生じる疾患関連変異の概要は、McKusick V. A.(1998年)Mendelian Inheritance in Man. A Catalog of Human Genes and Genetic Disorders、第12版、The Johns Hopkins University Press、Baltimore、Md.、およびNational Center for Biotechnology Information(NCBI)ウェブサイトで入手可能である、そのオンライン最新版Online Mendelian Inheritance in Man(OMIM)に提供されている。当業者ならば、種々の疾患、例えば、がんを引き起こし得る多数の孤発性変異を承知している。いくつかの実施形態では、目的の疾患を有する、および/または1つもしくは複数の疾患関連変異を有する被験体に由来する細胞は、疾患の細胞モデルとして働き得る。このような細胞は、例えば、疾患を研究するために、および/または潜在的治療剤を同定もしくは特徴付けるために、培養培地において培養し、使用してもよい。
【0115】
いくつかの実施形態では、細胞は、遺伝子改変された細胞を含む。遺伝子改変された細胞は、ゲノムの安定な修飾または安定な染色体外エレメントの導入ならびに転写もしくは翻訳の鋳型として働く外因性核酸が、細胞中に導入されているが、ゲノムの配列は修飾されず、核酸が複製されず、および/または細胞が分裂するにつれて経時的に失われる一時的な修飾を包含する。遺伝子改変された細胞を産生する方法は、当技術分野で周知である。例えば、いくつかの実施形態では、試験細胞は、目的のタンパク質またはRNAをコードする配列を含むベクターの導入によって最初の細胞集団から生成される。核酸またはベクターは、トランスフェクション、感染または当技術分野で公知のその他の方法によって細胞中に導入され得る。細胞による核酸またはベクターの取り込みを促進するために、細胞を適切な試薬(例えば、トランスフェクション試薬)と接触させてもよい。いくつかの実施形態では、遺伝子改変は、ベクターまたは核酸が導入された細胞の子孫によって遺伝されるように安定である。安定な遺伝子改変は、普通、細胞のゲノムDNAの変更、例えば、外因性核酸のゲノムへの挿入またはゲノムDNAの1つもしくは複数のヌクレオチドの欠失もしくは置換を含む。用語「遺伝子改変された」とは、元の遺伝子改変された細胞または細胞集団およびその子孫を指すことは理解される。したがって、本明細書において記載される方法において使用される遺伝子改変された細胞は、元の遺伝子改変された細胞の子孫であり得る。遺伝子改変は、例えば、導入遺伝子の導入、遺伝子ノックアウトおよびゲノム編集による、例えば、規則的な間隔でクラスター化された短鎖反復回文配列(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)/CRISPR関連タンパク質(CRISPR/Cas)技術、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)またはジンクフィンガーの使用による、ゲノムの安定な修飾を包含する。修飾としては、ゲノムのコーディングまたは非コーディング領域における挿入、置換、欠失および/または転位(translocation)を挙げることができる。いくつかの実施形態では、修飾は、エピトープタグまたは光学的に検出可能なシグナル(例えば、光の放出および/または吸収)を産生するタンパク質をコードする遺伝子を挿入することを含む。このようなタンパク質としては、例えば、ルシフェラーゼ(例えば、ホタル、ウミシイタケまたはガウシア(Gaussia)ルシフェラーゼまたはOplophorus gracilirostris由来のルシフェラーゼ酵素(NanoLuc[NL]))および緑色蛍光タンパク質(GFP)などの蛍光タンパク質が挙げられる。蛍光タンパク質の限定されない例としては、GFPおよびその誘導体、赤色、黄色およびシアン蛍光タンパク質などの異なる色の光を発する発色団を含むタンパク質が挙げられる。例示的な蛍光タンパク質としては、例えば、Sirius、Azurite、EBFP2、TagBFP、mTurquoise、ECFP、Cerulean、TagCFP、mTFP1、mUkG1、mAG1、AcGFP1、TagGFP2、EGFP、mWasabi、EmGFP、TagYPF、EYFP、Topaz、SYFP2、Venus、Citrine、mKO、mKO2、mOrange、mOrange2、TagRFP、TagRFP-T、mStrawberry、mRuby、mCherry、mRaspberry、mKate2、mPlum、mNeptune、mTomato、T-Sapphire、mAmetrine、mKeimaが挙げられる。例えば、GFPおよび多数のその他の蛍光タンパク質または発光タンパク質の考察については、Chalfie, M.およびKain, S R(編)Green fluorescent protein: properties, applications, and protocols(Methods of biochemical analysis、47巻)、Wiley-Interscience、Hoboken、N.J.、2006年および/またはChudakov, D Mら、Physiol Rev. 90巻(3号):1103~63頁、2010年を参照のこと。いくつかの実施形態では、遺伝子改変は、疾患関連変異を生成することまたは修正することを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変された細胞は、がん遺伝子またはキメラ抗原受容体、例えば、キメラT細胞受容体を発現する。例えば、細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞であり得る。
【0116】
いくつかの実施形態では、本開示の培養培地において培養された細胞は、特定の細胞型または細胞系の細胞の純粋な集団である。いくつかの実施形態では、集団は、少なくとも約80%純粋、例えば、少なくとも約85%、約90%、約95%、約99%またはそれを超えて純粋である。いくつかの実施形態では、特定の型の細胞を、例えば、細胞表面マーカー発現に基づいて単離または精製してもよい。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞の2種またはそれよりも多い識別可能な集団が共培養される。細胞は、異なる細胞型のものであり得る。いくつかの実施形態では、細胞は、がん細胞およびがん関連細胞(例えば、間質細胞)を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、2またはそれよりも多い型の免疫細胞、例えば、リンパ球の混合集団を含む。いくつかの実施形態では、別個のDNAバーコードを含む複数の細胞を、培地中で培養する。このような細胞は、異なる遺伝子改変(例えば、異なる遺伝子のノックアウト)を有し得る。
【0117】
細胞を、当技術分野で公知の標準培養技術を使用して培養してもよい。いくつかの実施形態では、細胞を、およそ5%~10%CO環境において維持してもよい。いくつかの実施形態では、細胞を、およそ2%~20%O環境において維持してもよい。一般に、哺乳動物細胞は、哺乳動物細胞を培養するために通常使用される範囲内の温度、例えば、約36~38℃、例えば、37℃で、培養物で維持してもよい。哺乳動物細胞はまた、より低いまたはより高い温度も許容し得ることは理解される。細胞は、懸濁物で培養しても、または接着細胞として表面上で培養してもよい。それらは、プラスチック、ガラスまたはその他の適した物質製であり得る、フラスコ、ボトル、ディッシュ、プレート、管などといった種々の種類の培養容器で培養してもよい。いくつかの実施形態では、このような容器の表面を、哺乳動物細胞培養に適したものにするように処理してもよい。いくつかの実施形態では、細胞を、例えば、4~9600ウェル、例えば、6、24、96、384または1536ウェルを有するマルチウェルプレートにおいて、培養培地で培養してもよい。
【0118】
いくつかの実施形態では、細胞を、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、プロテオグリカンなどといった1種または複数種の細胞外基質(ECM)構成成分を含む物質上またはその中で、培地中で培養してもよい。例えば、細胞をMatrigel(登録商標)中またはその上で培養してもよい。いくつかの態様では、細胞を3次元ヒドロゲルまたはスキャフォールドとして働き得るその他の材料中で培養してもよい。適した材料としては、例えば、動物ECM抽出物ヒドロゲル、タンパク質ヒドロゲル、ペプチドヒドロゲル、1種または複数種の非ポリペプチドポリマーを含むポリマーヒドロゲルなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、ヒドロゲルを産生するために、培養培地を1種または複数種のポリマーと混合し、使用してもよい。ある特定の実施形態では、所望の場合には、哺乳動物細胞を凍結するために、例えば、適した凍結保存剤(複数可)を添加した培養培地を使用してもよい。
【0119】
実施例にさらに詳細に記載されるように、本開示の培養培地において哺乳動物細胞を培養することは、複数の経路にわたって多数の代謝産物の細胞内存在量に影響を及ぼした。いくつかの態様では、本開示は、1種または複数種の代謝産物のレベルが、哺乳動物細胞がRPMI+10%IFS(RPMI+IFSとも呼ばれる)において培養された場合に存在するであろう、このような代謝産物(複数可)のレベルと比較して変更された、哺乳動物細胞の集団を提供する。
【0120】
いくつかの態様では、本開示は、培養培地において少なくとも約24時間培養されている哺乳動物細胞の集団を提供する。細胞が、少なくともその長さの時間前にその培養培地中に最初に入れられ、培地中での培養が、その時間から中断されずに継続している(適宜新鮮培地によって置換して)1種または複数種の細胞に由来する場合に、細胞の集団は、特定の培養培地において所与の長さの時間Xの間培養されていると考えられる。いくつかの実施形態では、本開示は、本開示の培養培地において、少なくとも約2、約3、約4、約5、約7、約14、約21または約28日間、またはそれを超える日数の間培養されている哺乳動物細胞の集団を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、本開示の培養培地において少なくとも1、2、3、5、10、15、20または25継代、またはそれを超える継代数の間培養されている哺乳動物細胞の集団を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、本開示の培養培地において、少なくとも1、2、3、5、10、15、20または25回の細胞倍加時間、またはそれを超える回数の細胞倍加時間の間培養されている哺乳動物細胞の集団を提供する。
【0121】
実施例に記載されるように、いくつかの実施形態では、本明細書において開示されるような培養培地において培養された細胞は、RPMI+IFSにおいて培養された同一細胞系の細胞よりも増加した細胞内レベルのカルバモイルアスパルテート、ジヒドロオロテート、オロテートおよび/またはオロチジンを有するとわかった。いくつかの態様では、本開示は、カルバモイルアスパルテート、ジヒドロオロテート、オロテートおよび/またはオロチジンの、細胞(複数可)がRPMI+IFSにおいて培養された場合のこのような代謝産物(複数可)の細胞内濃度(複数可)よりも少なくとも2倍高い(例えば、2倍~約1500倍の間で高い)細胞内濃度を有する、哺乳動物細胞または哺乳動物細胞集団を提供する。
【0122】
いくつかの態様では、本開示は、細胞(複数可)がRPMI+IFSにおいて培養される場合の尿酸の細胞内濃度(複数可)の少なくとも約2倍である(例えば、約2倍~約1500倍高い)尿酸の細胞内濃度を有する哺乳動物細胞または細胞集団を提供する。いくつかの態様では、本開示は、少なくとも約50μm、例えば、約50μm~約1500μm、例えば、約100μm~約500μm、約500μm~約1000μmまたは約1000μm~約1500μm、例えば、約1000μmまたは約1100μmである尿酸の細胞内濃度を有する哺乳動物細胞または細胞集団を提供する。
【0123】
いくつかの態様では、1種または複数種のアッセイが実施される哺乳動物細胞を培養するために、本開示の培養培地を使用してもよい。哺乳動物細胞を使用する多数のアッセイは、当技術分野で公知である。さまざまな目的のためにアッセイを使用してもよい。例えば、それらを使用して候補治療剤を同定してもよく、または活性について、例えば、潜在的治療活性もしくは毒性活性について、1種もしくは複数種の内因性遺伝子産物(例えば、タンパク質)もしくは生物学的経路の発現または活性に対する阻害または刺激効果について、薬剤を特徴付けてもよく、または目的の1種もしくは複数種の細胞表現型に影響を及ぼす遺伝子を同定してもよい。スクリーニングは、異なる撹乱を受けた細胞の集団または複数の個々の集団でアッセイを実施することを含み得る。撹乱は、例えば、種々の化合物に対する曝露および/または遺伝子改変であり得る。スクリーニングを実施して、細胞または遺伝子産物に対して目的の効果を有し得る薬剤(複数可)または遺伝子(複数可)を同定してもよい。目的の効果は、例えば、抗増殖効果、増殖促進効果、アポトーシス促進効果、抗アポトーシス効果、阻害効果、活性化効果などであり得る。いくつかの実施形態では、スクリーニングは、少なくとも約10、少なくとも約100、少なくとも約1,000、少なくとも約10,000またはそれよりも多い異なる試験薬剤または遺伝子改変を試験することを含む。アッセイは、全細胞で実施してもよく、または細胞から単離されたオルガネラ(例えば、ミトコンドリア、核)、細胞溶解物、タンパク質、RNAまたはその他の細胞の構成要素で実施してもよい。
【0124】
「薬剤」とは、本明細書で使用される場合、任意の物質、分子、超分子複合体、材料またはそれらの組合せもしくは混合物を指す。用語「薬剤」は、本明細書において「化合物」と交換可能に使用される。いくつかの態様では、薬剤は、化学式、化学構造または配列によって表され得る。薬剤の例としては、例えば、小分子、ポリペプチド、核酸(例えば、低分子干渉RNAなどのRNAi剤、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アプタマー)、脂質、多糖などが挙げられる。いくつかの実施形態では、薬剤は細胞透過性であり、例えば、細胞によって取り込まれ、細胞内で、例えば、哺乳動物細胞内で作用して生物学的効果をもたらす、通常の薬剤の範囲内のものである。「試験薬剤」とは、細胞に対するその効果に関して、または細胞との相互作用に関して、試験される予定の、または試験されている、または試験された任意の薬剤を指す。試験することは、細胞に対する試験薬剤の効果についての任意の種類の特徴付けまたは解析を含み得る。本明細書において記載される薬剤のいずれも、試験薬剤として使用してもよい。いくつかの実施形態では、試験薬剤は、培養培地の構成成分として本明細書において記載される化合物のいずれかではない。
【0125】
いくつかの実施形態では、薬剤は小分子である。本明細書で使用される場合、「小分子」とは、質量が約2キロダルトン(kDa)未満である有機化合物を指す。いくつかの実施形態では、小分子は、約1.5kDa未満または約1kDa未満である。いくつかの実施形態では、小分子は、約800ダルトン(Da)未満、約600Da未満、約500Da未満、約400Da未満、約300Da未満、約200Da未満または約100Da未満である。小分子は、少なくとも約50Daの質量を有することが多い。いくつかの実施形態では、小分子は、非ポリマーである。いくつかの実施形態では、小分子は、アミノ酸またはアミノ酸誘導体ではない。いくつかの実施形態では、小分子は、ヌクレオチドではない。いくつかの実施形態では、小分子は、糖類ではない。いくつかの実施形態では、小分子は、複数の炭素間結合を含有し、1個もしくは複数のヘテロ原子および/またはタンパク質との構造的相互作用(例えば、水素結合)にとって重要な1種もしくは複数種の官能基、例えば、アミン基、カルボニル基、ヒドロキシル基もしくはカルボキシル基、いくつかの実施形態では、少なくとも2種の官能基を含み得る。小分子は、1種または複数種の上記の官能基で必要に応じて置換されている、1個もしくは複数の環状炭素もしくは複素環式構造体および/または芳香族もしくは多環芳香族(polyaromatic)構造体を含むことが多い。小分子は、塩として提供され得る、電気的に中性の化合物ならびに多原子イオンの両方を包含するということが理解される。
【0126】
いくつかの実施形態では、薬剤は、承認された薬物である。「承認された薬物」とは、薬剤または組成物が、ヒトの処置のためにまたは獣医学的目的のために上市する、販売促進する、配送する、販売する、またはそうでなければ商業的に提供することを可能にするように、政府の規制機関(米国FDAまたはその他の管轄区において治療剤の承認に関して同様の権限を有する政府機関など)によって承認されている薬剤または組成物を意味する。
【0127】
いくつかの実施形態では、薬剤は、酵素モジュレーターまたは受容体モジュレーターである。「モジュレートする(modulate)」(および「モジュレートする(modulating)」、「モジュレートする(modulates)」などの関連用語)は、目的の分子、プロセス、経路または現象において、質的もしくは量的変化、変更または修飾を引き起こすあるいは促進することを意味する、「モジュレートする」は、目的の分子、プロセス、経路または現象のレベルまたは活性の増加または減少を引き起こすこと、例えば、目的の分子、プロセス、経路もしくは現象を阻害することまたは活性化することを包含する。
【0128】
いくつかの実施形態では、薬剤は、検出可能な標識を含む。本明細書で使用される場合、「検出可能な標識」とは、標識が付着される分子、例えば、小分子、核酸もしくはポリペプチドまたはその他の実体の検出を可能にする部分に組み込まれた少なくとも1つの元素、同位元素または官能基を有する部分を指す。標識は、直接付着されることもあれば(すなわち、結合によって)、テザーによって付着されることもある。標識は、任意の位置で、分子、例えば、小分子、ポリペプチドまたはその他の実体に付着されることもあれば、それらの中に組み込まれることもあるということが理解される。一般に、標識は、5つのクラス:a)それだけには限らないが、H、H、13C、14C、15N、18F、31P、32P、35S、67Ga,76Br、99mTc(Tc-99m)、111In、123I、125I、131I、153Gd、169Ybおよび186Reを含む放射活性または重同位元素であり得る同位元素部分を含有する標識、b)酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼなど)に結合され得る、抗体または抗原であり得る、免疫部分を含有する標識、c)着色した、発光、リン光または蛍光部分(例えば、蛍光標識フルオレセインイソチオシアネート(FITC)など)である標識、d)1つまたは複数の光親和性部分を有する標識、およびe)1つまたは複数の公知の結合パートナー(例えば、ビオチン-ストレプトアビジン、FK506-FKBP)のリガンドである標識のうちのいずれか1つ(または複数)の中に入り得る。ある特定の実施形態では、標識は、放射活性同位元素、例えば、検出可能な粒子、例えば、ベータ粒子を発光する同位元素を含む。ある特定の実施形態では、薬剤は、放射標識された糖、アミノ酸、プリン、ピリミジン、ヌクレオシドまたはヌクレオチドを含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、薬剤は、抗がん剤である。「抗がん剤」とは、がんの処置のために使用される、または開発中である薬剤を指す。このような薬剤としては、種々の小分子、タンパク質(例えば、モノクローナル抗体)ならびに養子細胞移入などの細胞療法が挙げられる。「抗がん剤」は、比較的非特異的な細胞傷害性薬剤または細胞増殖抑制剤、例えば、有糸分裂を阻害するもの(「化学療法剤」とも呼ばれる)ならびに細胞外成長シグナルをより選択的に遮断する薬剤(例えば、シグナル伝達の遮断剤)および古典的な内分泌ホルモン(主に、乳がんのエストロゲンおよび前立腺がんのアンドロゲン)に由来する成長促進シグナルの遮断剤を含む。化学療法剤としては、例えば、ナイトロジェンマスタード(例えば、クロラムブシル、クロルメチン、シクロホスファミド、イホスファミドおよびメルファラン)、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン、ホテムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン)などのアルキル化剤およびアルキル化様薬剤;白金剤(例えば、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、BBR3464、サトラプラチンなどのアルキル化様薬剤)、ブスルファン、ダカルバジン、プロカルバジン、テモゾロミド、チオTEPA、トレオスルファンおよびウラムスチン(uramustine);葉酸(例えば、アミノプテリン、メトトレキセート、ペメトレキセド、ラルチトレキセド)などの抗代謝産物;クラドリビン、クロファラビン、フルダラビン、メルカプトプリン、ペントスタチン、チオグアニンなどのプリン;カペシタビン、シタラビン、フルオロウラシル、フロクスウリジン、ゲムシタビンなどのピリミジン;タキサン(例えば、ドセタキセル、パクリタキセル)、ビンカ(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビン)、エポチロンなどの紡錘体毒/有糸分裂阻害剤;アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、ピクサントロンおよびバルルビシン)、Streptomycesの種々の種によって天然に産生された化合物(例えば、アクチノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、プリカマイシン)およびヒドロキシ尿素のような細胞傷害性/抗腫瘍抗生物質;カンプトテカ(camptotheca)(例えば、カンプトテシン、トポテカン、イリノテカン)およびポドフィルム(例えば、エトポシド、テニポシド)などのトポイソメラーゼ阻害剤が挙げられる。その他の抗がん剤としては、抗受容体チロシンキナーゼ抗体(例えば、セツキシマブ、パニツムマブ、トラスツズマブ)、抗CD20(例えば、リツキシマブおよびトシツモマブ)およびその他のもの、例えば、アレムツズマブ、ベバシズマブ、ゲムツズマブなどのがん治療のためのモノクローナル抗体;アミノレブリン酸、メチルアミノレブネート、ポルフィマーナトリウムおよびベルテポルフィンなどの光増感剤;チロシンおよび/またはセリン/トレオニンキナーゼ阻害剤、例えば、Abl、Kit、インスリン受容体ファミリーメンバー(複数可)、VEGF受容体ファミリーメンバー(複数可)、EGF受容体ファミリーメンバー(複数可)、PDGF受容体ファミリーメンバー(複数可)、FGF受容体ファミリーメンバー(複数可)、mTOR、Rafキナーゼファミリーメンバー、PI3キナーゼなどのホスファチジルイノシトール(PI)キナーゼ、PIキナーゼ様キナーゼファミリーメンバー、MEKキナーゼファミリーメンバー、JAKキナーゼファミリーメンバー、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)ファミリーメンバー、オーロラキナーゼファミリーメンバーの阻害剤が挙げられる。がんの処置のために上市されている、またはがんにおける少なくとも1つの第III相治験において有効性を示しているキナーゼ阻害剤としては、セジラニブ、クリゾチニブ、ダサチニブ、ダブラフェニブ、エルロチニブ、エベロリムス、ゲフィチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、ニロチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、トファシチニブ、テムシロリムス、トラメチニブ、バンデタニブおよび(amd)ベムラフィニブ(vemurafinib)が挙げられる。さらにその他の抗がん剤としては、成長因子受容体アンタゴニスト;レチノイド(例えば、アリトレチノインおよびトレチノイン)、アルトレタミン、アムサクリン、アナグレリド、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ(例えば、ペグアスパルガーゼ(pegasparagase))、ベキサロテン、デニロイキンジフチトクス、エストラムスチン、イクサベピロン、マソプロコール、ミトタンおよびテストラクトン、Hsp90阻害剤、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ、デランゾミブ、オプロゾミブ(oprozomib)およびマリゾミブ);血管新生阻害剤、例えば、ベバシズマブ(アバスチン)または可溶性VEGF受容体ドメインを含む薬剤(例えば、アフリベルセプト)などの抗血管内皮成長因子剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、アポトーシス促進剤(例えば、Bcl-2阻害剤(例えば、オバトクラックス、ナビトクラックス(navitoclax)、ゴシポール))などのアポトーシス誘導剤、Ras阻害剤;がんワクチン;チェックポイント阻害剤(例えば、免疫チェックポイント分子と結合するモノクローナル抗体、例えば、イピリムマブなどのCTLA4阻害剤、ニボルマブおよびペムブロリズマブなどのPD-1阻害剤、アテゾリズマブなどのPD-L1アンタゴニスト)などのその他の免疫調節性療法;がん遺伝子を標的にしたRNAi剤などが挙げられる。いくつかの抗がん剤は、複数の活性または作用の機序を有し、複数のカテゴリーもしくはクラスに分類され得る、またはさらなる作用の機序もしくは標的を有することは理解されよう。
【0130】
細胞生存率、増殖、遺伝子発現、タンパク質活性、形態学、遊走または任意のその他の細胞特性、プロセス、表現型または生物学的経路に対する薬剤または遺伝子改変の効果は、任意の適した方法を使用して測定できる。ある特定の実施形態では、細胞または細胞集団の生存および/または増殖を、細胞計数アッセイ(例えば、目視検査、自動化画像解析、フローサイトメーターなどを使用して)、複製アッセイ、細胞膜完全性アッセイ、細胞性ATPベースのアッセイ、ミトコンドリアレダクターゼ活性アッセイ、BrdU、EdUまたはH3-チミジン取り込みアッセイ、カルセイン染色、Hoechst Dye、DAPI、アクチノマイシンD、7-アミノアクチノマイシンDまたはヨウ化プロピジウムなどの核酸色素を使用するDNA含量アッセイ、例えば、レザズリン(AlamarBlueとして、または種々のその他の名称によって知られることもある)、MTT、XTTおよびCellTitre Gloなどの細胞代謝アッセイ、SRB(スルホローダミンB)アッセイなどのタンパク質含量アッセイ、核断片化アッセイ、細胞質ヒストン関連DNA断片化アッセイ(cytoplasmic histone associated DNA fragmentation assay)、PARP切断アッセイ、TUNEL染色またはアネキシン染色によって決定してもよい。いくつかの実施形態では、細胞生存または増殖を、細胞生存または増殖または細胞死を媒介する遺伝子産物をコードする1種または複数種の遺伝子、例えば、細胞周期または細胞死(例えば、アポトーシス)において役割を果たす、またはそれを調節する産物をコードする遺伝子の発現を測定することによって評価する。このような遺伝子の例としては、例えば、サイクリン依存性キナーゼ、サイクリン、BAX/BCL2ファミリーメンバー、カスパーゼなどが挙げられる。当業者ならば、細胞生存または増殖の指示薬として使用されるべき適切な遺伝子を選択できる。いくつかの実施形態では、細胞生存および/または増殖のアッセイは、細胞数、例えば、生存細胞数を決定でき、細胞生存自体と細胞増殖との間を明確に区別できず、例えば、アッセイ結果は、生存および増殖の組合せを反映し得る。いくつかの実施形態では、生存または増殖または細胞死(例えば、アポトーシスもしくは壊死)を具体的に評価できるアッセイを使用してもよい。
【0131】
いくつかの態様では、培養培地は、細胞代謝を解析することおよび/または細胞代謝産物もしくは代謝経路によって作用する、もしくはそれらと相互作用する薬剤を同定もしくは特徴付けることで、特定の使用を見出すことができる。従来の培養培地およびマウス血漿は、ヒト血漿の代謝産物組成を不十分にしか反映しない。実施例に記載されるように、従来の培地が行うよりもヒト血漿の代謝産物組成を良好に反映する本発明の培養培地(10%IFSを補給したHPLMとも呼ばれる)の実施形態における培養は、標準培地における培養と比較して細胞代謝に対して広範囲の効果を有していた。ピリミジン代謝に関与する代謝産物の細胞内存在量の変更が中でも最も有意であった。この効果を、尿酸まで確かめた。尿酸の血漿中濃度は、マウスおよびウシを含むほとんどのその他の哺乳動物においてよりもヒトにおいて最大で1桁大きい(Alvarez-LarioおよびMacarron-Vicente、2010年;Kratzerら、2014年;Wuら、1992年)。尿酸は、ヒト血漿中に存在する濃度では、de novoピリミジン生合成経路の最後の2ステップを触媒する酵素である、UMPシンターゼ(UMPS)の内因性阻害剤である。UMPSのその他の小分子阻害剤と同様に、尿酸は、オロテートの蓄積を誘導し、順に、その細胞傷害性効果を媒介する5-FUのフルオロヌクレオチド誘導体への代謝をアンタゴナイズする。開示された培養培地は、例えば、細胞代謝を研究し、環境的代謝組成物によって影響を受ける、新規腫瘍特異的傾向または代謝産物-薬物相互作用を同定することを可能にし得る。
【0132】
実施例に記載されるように、種々のヒト血液学的がんは、HPLM+dIFSにおいて、RPMI+IFSおよびRPMI+dIFSにおける速度と、一般的にはより遅いものの、それに匹敵する速度で増殖した。いずれかの理論に束縛されることを望むものではないが、in vivoでのヒト細胞増殖に対する薬剤の効果を予測することを目的としたアッセイは、開示された培養培地を使用して実施した場合に、従来の細胞培養培地におけるよりもより正確であり得る。
【0133】
いくつかの実施形態では、アッセイは、(i)1種または複数種の細胞内物質(例えば、代謝産物、RNA、タンパク質)のレベル、(ii)1種または複数種の物質(例えば、代謝産物、分泌タンパク質)の培地への分泌、(iii)酸化還元状態、(iv)グルコース利用、または(v)1種または複数種の代謝経路、細胞シグナル伝達経路または酵素の活性のレベルを測定することを含む。当業者ならば、代謝産物、RNAおよびタンパク質のレベルを検出または測定するために使用できる適切なアッセイを承知している。例えば、代謝産物を、質量分析(例えば、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーまたは質量分析を使用する分離が先行し得る)、核磁気共鳴(NMR)、イオン移動度スペクトロメトリー、電気化学的検出(HPLCと連結した)、Raman分光法または放射標識を使用して検出または測定してもよい。RNAは、ノーザンブロット、マイクロアレイ、nCounter技術、定量的逆転写PCRなどのハイブリダイゼーションおよび/または増幅を伴う方法を使用して、または遺伝子発現の一連の解析(SAGE)もしくはRNAシーケンシング(RNA-Seq)などのシーケンシングベースのアプローチによって、検出または測定してもよい。タンパク質は、検出されるべきタンパク質と結合する抗体を使用する免疫学的方法またはその他の親和性ベースの方法を使用して測定してもよい。タンパク質を検出および測定するために使用できる例示的な方法としては、例えば、免疫組織化学(IHC)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、Luminex(登録商標)アッセイプラットフォームなどのビーズベースのアッセイ、フローサイトメトリー、タンパク質マイクロアレイ、表面プラズモン共鳴アッセイ、免疫沈降、免疫ブロット(ウエスタンブロット)および質量分析が挙げられる。細胞で実施できる目的のその他のアッセイとしては、例えば、レポーターアッセイ、ChIP-chip、ChIP-Seq、バイサルファイトシーケンシングおよび染色体コンホメーション捕捉が挙げられる。いくつかの実施形態では、アッセイは、DNA修飾(メチル化など)、タンパク質修飾(例えば、ヒストン修飾またはタンパク質リン酸化)、転写またはDNA修復を検出することを含む。いくつかの実施形態では、アッセイは、試験薬剤の存在下で培養培地において培養された細胞を使用して実施し、結果を参照値と比較する。参照値は、同一アッセイを試験薬剤の不在下で同一の型の細胞を使用して実施するときに得られる結果であり得る。結果が参照値と異なる場合には、試験薬剤が、アッセイにおいて測定されている分子、経路またはプロセスのレベルもしくは活性に影響を及ぼすと結論づけてもよい。
【0134】
目的の代謝経路としては、2、3例を挙げると、例えば、解糖、酸化的リン酸化、プリン生合成、ピリミジン生合成、脂肪酸生合成が挙げられる。いくつかの実施形態では、培養培地において培養された細胞を使用して、グルコース代謝、脂質代謝、DNAまたはRNA合成および酸化的リン酸化に影響を及ぼし得る薬剤を同定または特徴付け得る。このようなプロセスの欠陥は、例えば、心血管疾患、糖尿病、アテローム性動脈硬化症およびメタボリックシンドロームを含む広範なヒト疾患に関与している。培養培地において培養された細胞を使用して、このような疾患の処置、例えば、このような疾患と関連している代謝的欠陥の修正において潜在的に有用であり得る薬剤を同定または特徴付け得る。
【0135】
目的の細胞シグナル伝達経路としては、例えばTGFβ、Wnt、BMP、Notch、Hedgehog、HGF-Met、EGF、IGF、PDGF、FGF、P38-MAPキナーゼ、Ras、PI3キナーゼ-Akt、SrcおよびNF-kB経路が挙げられる。いくつかの実施形態では、アッセイは、前記経路のうち1種または複数種を阻害または活性化する薬剤を同定することまたは特徴付けることを含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、アッセイは、アポトーシス、壊死、オートファジー、遊走、上皮-間葉系移行、T細胞活性化、T細胞エフェクター機能または細胞の任意の機能活性を検出することを含む。
【0137】
いくつかの実施形態では、培養培地における培養の間、またはその後に、細胞を検出可能な標識と接触させてもよい。いくつかの実施形態では、アッセイは、イメージングまたは蛍光活性化セルソーティングを含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、薬剤または薬剤の組合せを試験して、培養培地において培養された細胞を使用して、抗がん効果を有するかどうかを決定する、または抗がん効果を定量する。いくつかの実施形態では、抗がん効果は、がん細胞生存または増殖の阻害である。薬剤または薬剤の組合せによる細胞増殖または生存の阻害は、完全である場合も、完全ではない場合もあるということは理解される。例えば、細胞増殖は、細胞増殖の阻害または低減の1つと考えられる効果について、完全停止の状態に減少される場合も、減少されない場合もある。いくつかの実施形態では、「阻害」は、非増殖状態にある細胞(例えば、「静止状態」とも呼ばれるG状態にある細胞)の増殖を阻害することおよび/または増殖中の細胞(例えば、静止状態ではない細胞)の増殖を阻害することを含み得る。同様に、細胞生存の阻害は、壊死もしくはアポトーシスを引き起こすことまたはそれに寄与すること、および/あるいは細胞を死滅に対して感受性にするプロセス、例えば、アポトーシスもしくは壊死を起こす細胞の傾向を引き起こすことまたは増加させることなどによる、細胞(複数可)の死滅を指し得る。阻害は、参照レベル(例えば、対照レベル)の少なくとも約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%または約100%であり得る。いくつかの実施形態では、抗がん効果は、懸濁培養中で、または軟寒天もしくはメチルセルロースなどの半固体培地中でコロニーを形成する、あるいはポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)などの低付着表面で成長するがん細胞の能力の阻害である。いくつかの実施形態では、抗がん効果は、1種または複数種のがん細胞の、培養において腫瘍球を形成する能力の阻害である。がん細胞を、コロニー形成アッセイ、成長アッセイまたは腫瘍球形成アッセイに先立って、および/またはその間、培養培地において培養してもよい。いくつかの実施形態では、抗がん効果は、1種または複数種のがん細胞の、非ヒト哺乳動物、例えば、マウスに導入した後にin vivoでがんを形成する能力の阻害である。
【0139】
いくつかの実施形態では、アッセイは、本明細書において開示される培養培地において培養された細胞の成長速度を測定することを含む。いくつかの実施形態では、細胞を、試験薬剤が添加されている培地で培養する。いくつかの実施形態では、アッセイは、試験薬剤が添加されている培地において培養された細胞を使用して試験薬剤のEC50を測定することを含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、アッセイを、培養培地において培養された細胞を使用して実施し、結果を、同一アッセイを、同一の型であるが、従来の培養培地(例えば、RPMI+IFS)において培養された細胞を使用して実施する場合に得られる結果と比較する。結果に相違がある場合には、試験薬剤(もしくはその活性)またはアッセイにおいて解析または試験されている細胞プロセス、特性、表現型もしくは生物学的経路は、環境の代謝組成物によって影響を受けると結論付けることができる。所望の場合には、試験薬剤、活性、細胞プロセス、特性、表現型または生物学的経路に影響を及ぼす特定の代謝産物(複数可)を、例えば、培養培地から1種もしくは複数種の代謝産物または代謝産物の群を体系的に省くこと、および得られた培養培地のうちどれが、効果をもはや示さない結果をもたらすかを決定することによって同定できる。特定の代謝産物または代謝産物の群を省くことが、効果を大幅にまたは完全に無効にする場合には、このような代謝産物(複数可)が効果の原因となっていると推測することができる。この方法を使用して、例えば、治療剤の有効性および/または毒性に影響を及ぼし得る代謝産物-薬物相互作用を同定することができる。
【0141】
いくつかの態様では、アッセイは、がん細胞に対する1種もしくは複数種の薬剤または遺伝子改変の効果を、非がん細胞(例えば、がん細胞と同一細胞型の非がん細胞)に対するこのような薬剤または遺伝子改変の効果と比較すること、あるいは2種もしくはそれよりも多い異なる型のがん細胞に対する1種もしくは複数種の薬剤または遺伝子改変の効果を比較することを含み得る。このような比較によって、例えば、腫瘍特異的傾向(がん細胞(もしくは特定のがんの型)中に存在する、または非がん細胞と比較してがん細胞においてより著しい脆弱性)を同定することができ、次いで、これを治療目的のために開発することができる。
【0142】
いくつかの実施形態では、培養培地において培養された細胞を、個別化医療のために使用してもよい。例えば、細胞を被験体から単離し、培地中で培養し、1種または複数種の治療剤の効果を試験するために、例えば、細胞を効果的に死滅させる薬剤または薬剤の組合せを同定するために使用してもよい。ある特定の実施形態では、細胞は、がん細胞を含み、本方法を使用して、被験体を処置するための適切な薬剤または薬剤の組合せを選択してもよい。用語「被験体」とは、細胞を単離することができるおよび/または薬剤を投与することができる個体に関連して本明細書で使用される場合、任意の動物を指す。ある特定の実施形態では、被験体は哺乳動物である。特定の目的のある特定の実施形態では、用語「被験体」とは、ヒトを指す。
【0143】
いくつかの実施形態では、本明細書において開示される培養培地において培養された細胞を細胞療法目的で使用してもよい。このような実施形態では、培養培地は、血清およびその他の少なくとも部分的に特徴付けられていない動物由来産物を含まないものであり得る。「細胞療法」とは、治療目的の被験体の身体への生存細胞の導入を指す。細胞は、自己または非自己であり得る。細胞療法は、養子免疫療法(T細胞などの免疫細胞が被験体中に導入される)、細胞または組織移植(例えば、再生医療目的の、例えば、幹細胞または前駆細胞療法)ならびにサイトカイン、ケモカインおよび成長因子などの可溶性因子を放出する能力を有する細胞の導入を包含する。いずれかの理論に束縛されることを望まないが、成人ヒト血液中に見出されるが、従来の培養培地中に存在しない小極性化合物を含有する培養培地において培養された細胞または組織は、ひとたびレシピエント中に導入されると遭遇する条件に、このような構成成分を欠く培地において培養された細胞または組織が行うよりも良好に適応し得る。いずれかの理論に束縛されることを望まないが、成人ヒト血液中に見出されるが、従来の培養培地中に存在しない小極性化合物を含有する培養培地において培養された細胞または組織は、ひとたびレシピエント中に導入されると、このような構成成分を欠く培地において培養された細胞または組織が行うよりも効率的に生存および/または機能し得る。
【0144】
いくつかの実施形態では、開示される培養培地において培養された細胞を、診断目的で使用してもよい。例えば、細胞を、障害、例えば、代謝障害を有すると疑われる被験体から得、培地で培養してもよく、その後、1種または複数種の細胞内または分泌された代謝産物のレベルを測定し、参照レベルと比較してもよい。参照レベルは、例えば、健常被験体に由来する対照細胞中に存在する、もしくはそれによって分泌されるこのような代謝産物(複数可)のレベルまたは特定の障害を有すると知られている被験体に由来する細胞中に存在する、もしくはそれによって分泌されるこのような代謝産物(複数可)のレベルであり得る。
【0145】
いくつかの実施形態では、培養培地において培養された細胞を使用して、治療上有用なタンパク質などの目的の産物を産生してもよい。
III.さらなる方法および組成物
【0146】
いくつかの態様では、尿酸は、de novoピリミジン生合成経路の最後の2ステップを触媒する酵素であるUMPシンターゼ(UMPS)の阻害剤として作用し得る。哺乳動物細胞においてUMPSの活性をモジュレートする方法であって、細胞を、細胞において尿酸レベルをモジュレートする薬剤と接触させることを含む方法が、本明細書において記載される。いくつかの実施形態では、方法は、細胞を、尿酸レベルを増加させ、それによって、UMPSを阻害する薬剤と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、方法は、細胞を、尿酸レベルを低下させ、それによってUMPSの活性を増加させる薬剤と接触させることを含む。また、哺乳動物被験体においてUMPSの活性をモジュレートする方法であって、尿酸レベルをモジュレートする薬剤を被験体に投与することを含む方法が、本明細書において記載される。いくつかの実施形態では、方法は、尿酸低下剤を被験体に投与し、それによって、UMPSの活性を増加させることを含む。いくつかの実施形態では、方法は、尿酸上昇剤を被験体に投与し、それによってUMPSの活性を低下させることを含む。
【0147】
いくつかの態様では、本開示は、細胞内代謝産物が、治療剤の活性に影響を及ぼし得るという洞察を提供する。例えば、代謝産物は、治療剤を阻害し、それによって、その有効性を低減し得る。代謝産物は、治療剤の活性に直接的(すなわち、それへの結合によって)または間接的に影響を及ぼし得る。間接的阻害は、代謝産物モジュレート、例えば、細胞内酵素の活性を阻害することに起因し得る。細胞内酵素は、治療剤に作用して、それをより活性な形態に変換するものであり得る。
【0148】
いくつかの態様では、治療剤の活性をモジュレートする方法であって、治療剤の活性に影響を及ぼす代謝産物の細胞内レベルをモジュレートすることを含む方法が、本明細書において記載される。いくつかの実施形態では、代謝産物は、治療剤の活性を増加させ、それによってその有効性を増大し、方法は、代謝産物のレベルを増加させることを含む。代謝産物のレベルは、例えば、代謝産物自体を投与すること、代謝産物の前駆体を投与すること、または代謝産物の排泄の低下もしくは代謝産物の産生の増加を引き起こす薬剤を投与することによって増加させることができる。いくつかの実施形態では、代謝産物は、治療剤の活性を低減し、それによって、その有効性を低減し、方法は、代謝産物のレベルを低下させることを含む。代謝産物のレベルは、例えば、排泄の増加もしくは代謝産物の産生の低下を引き起こす薬剤または代謝産物を分解する薬剤を投与することによって低下させることができる。治療剤の活性をモジュレートするある特定の方法は、本明細書において例示されており、ここでは、治療剤は、5-フルロウラシル(5-FU;CASレジストリー番号51-21-8)または5-FUプロドラッグであり、代謝産物は尿酸である。例えば、本明細書において記載されるように、尿酸は、UMPSを阻害する。UMPSを阻害することによって、尿酸は、オロテートの蓄積を誘導し、順に、その細胞傷害性効果を媒介する5-FUのフルオロヌクレオチド誘導体への代謝をアンタゴナイズする。例えば、オロテートは、UMPSのオロト酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(OPRT)ドメインによる、FUMPへのその直接変換について5-FUと競合する。したがって、尿酸は、ヒト血漿において見出される通常の濃度で、5-FUの活性を阻害する。しかし、開示された方法は、その他の治療剤および代謝産物に適用できる。いくつかの実施形態では、治療剤は、抗がん剤である。いくつかの実施形態では、治療剤は抗代謝産物である。いくつかの実施形態では、治療剤は、プリンアナログ、ピリミジンアナログ、ヌクレオシドアナログまたはヌクレオチドアナログである。
【0149】
ある特定の実施形態では、治療剤は、5-FUまたは5-FUプロドラッグである。用語「プロドラッグ」とは、本明細書で使用される場合、被験体への投与後に、薬理学的に活性な、またはより薬理学的に活性な化合物に変換される化合物を指す。5-FUは、それ自体プロドラッグである。5-FUおよび5-FUプロドラッグは、さまざまながんの処置において使用される。「がん」とは、制御できないほどに増殖し、正常身体組織に浸潤し、破壊する能力を有する、異常細胞(がん細胞)の発達によって特徴付けられる疾患のクラスを指す。用語「がん」は、本明細書において「腫瘍」または「新生物」と交換可能に使用されてもよく、被験体における特定の固形腫瘍塊またはがん細胞の群を指すために、ならびに疾患自体を指すために使用されてもよい。がんは、悪性固形腫瘍塊(例えば、癌、肉腫)の形成によって特徴付けられる疾患およびさらに検出可能な固形腫瘍塊がない場合もある白血病などの血液学的がんも含む。本明細書で使用される場合、用語「がん」は、それだけには限らないが、以下の型のがん:乳がん、胆道がん、膀胱がん、脳がん(例えば、神経膠芽腫(例えば、星状細胞腫)、髄芽腫);子宮頸がん;絨毛癌;結腸がん;子宮内膜がん;食道がん;胃がん;血液学的がん;ボーエン疾患およびパジェット疾患を含む上皮内新生物;肝臓がん(例えば、肝細胞癌);肺がん(例えば、気管支原性癌、小細胞肺がん(SCLC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、肺の腺癌);ホジキン疾患および非ホジキンリンパ腫を含むリンパ腫;神経芽細胞腫;黒色腫;眼のがん(例えば、眼球内黒色腫、網膜芽細胞腫);口腔がん(例えば、口腔扁平上皮癌);卵巣がん(例えば、上皮細胞、間質細胞、胚細胞または間葉系細胞から生じる);膵臓がん;前立腺がん;直腸がん;肛門がん;血管肉腫、消化管間質腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫および骨肉腫を含む肉腫;腎細胞癌およびウィルムス腫瘍を含む腎臓がん;基底細胞癌および扁平上皮がんを含む皮膚がん;セミノーマ、非セミノーマ(テラトーマ、絨毛癌)、間質腫瘍および胚細胞腫瘍などの胚性腫瘍(germinal tumor)を含む精巣がん;喉のがん(例えば、喉頭がん、咽頭がん、鼻咽頭がん、口腔咽頭がん)、甲状腺がん(例えば、甲状腺腺癌および髄様癌)を含む。「癌」とは、上皮細胞から生じるがんまたはそれから生じたと考えられるがんを指し、例えば、がんの細胞は、上皮細胞に典型的な種々の分子的、細胞的および/または組織学的特徴を有する。「血液学的がん」とは、造血系およびリンパ系組織のがんを指す。血液学的がんは、例えば、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、髄外形質細胞腫、骨髄異形成症候群および骨髄増殖性疾患などのその他の悪性形質細胞新生物を含む。白血病は、例えば、骨髄性白血病(例えば、急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML、急性骨髄性白血病(acute myelogenous leukemia)または急性非リンパ性白血病としても知られる)、急性前骨髄球性白血病(APL)、急性骨髄単球性白血病(AMMoL))、慢性骨髄性白血病(CML))およびリンパ性白血病(例えば、急性リンパ球性白血病(ALL、急性リンパ芽球性白血病とも呼ばれる)、慢性リンパ性白血病(CLL)およびヘアリー細胞白血病)を含む。リンパ腫は、例えば、非ホジキンリンパ腫(例えば、B細胞リンパ腫(例えば、マントル細胞リンパ腫、小B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症(リンパ形質細胞性リンパ腫としても知られる))、T細胞リンパ腫(例えば、未分化大細胞リンパ腫(例えば、ALK陽性またはALK陰性)、末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫)およびNK細胞リンパ腫)およびホジキンリンパ腫を含む。
【0150】
5-FUプロドラッグは、フルオロピリミジンカペシタビン(CASレジストリー番号154361-50-9)およびテガフール(CASレジストリー番号0017902-23-7)を含む。本開示のある特定の実施形態によれば、尿酸低下剤を被験体に投与することによって、哺乳動物被験体、例えば、ヒト被験体におけるフルオロピリミジン、例えば、5-FUの活性が増強される。本開示は、がんの処置を必要とする被験体を処置する方法であって、5-FU、5-FUプロドラッグまたは尿酸低下剤を被験体に投与することを含み、その結果、被験体が5-FUおよび尿酸低下剤の両方に曝露される方法を提供する。したがって、いくつかの態様では、本開示は、(i)5-FUまたは5-FUプロドラッグと、(ii)尿酸低下剤とを含む併用療法を提供する。「併用療法」とは、本明細書で使用される場合、被験体が同時に両方の薬剤に対して曝露されるような2種もしくはそれよりも多い薬剤の投与、および/またはいずれかの薬剤単独(または3種もしくはそれよりも多い薬剤の場合には、薬剤の任意の部分的組合せ)の投与に比べて全体的に改善された治療効果(増大された有効性、低減された副作用または両方であり得る)を薬剤が一緒に達成することを可能にする時間間隔内に、2種もしくはそれよりも多い薬剤の投与を指定する所定の投薬スキームに従う2種もしくはそれよりも多い薬剤の投与を指す。いくつかの実施形態では、2種またはそれよりも多い薬剤を、互いに24、48または72時間内に投与してもよい。いくつかの実施形態では、2種またはそれよりも多い薬剤を、互いに1、2または4週間以内に投与してもよい。いくつかの実施形態では、5-FUまたは5-FUプロドラッグおよび尿酸低下剤を、同一組成物中で投与する。いくつかの実施形態では、5-FUまたは5-FUプロドラッグおよび尿酸低下剤を、別個の組成物中で投与する。別個の組成物中で投与される場合には、いくつかの実施形態では、2種またはそれよりも多い薬剤を例えば、最大24、48または72時間以内に別々に、いくつかの実施形態では、最大1、2、3または4週間以内に別々に投与してもよい。いくつかの実施形態では、尿酸低下剤は、-FUまたは5-FUプロドラッグの投与の最大24、48または72時間前に少なくとも1回投与してもよく、逆もまた同じ。いくつかの実施形態では、尿酸低下剤は、-FUまたは5-FUプロドラッグの投与の最大1、2、3または4週間前に少なくとも1回投与してもよく、逆もまた同じ。各薬剤の複数回用量を投与してもよい(例えば、数週間または数ヶ月の期間にわたって)ということは理解されよう。いくつかの実施形態では、1回または複数回の一続きの処置を投与する。
【0151】
いくつかの実施形態では、がんは、肛門がん、乳がん、結腸直腸がん、食道がん、頭頸部がん、膵臓がん、胃がんおよび皮膚がんから選択される。
【0152】
いくつかの実施形態では、がんは、(例えば、尿酸による阻害の不在下で)少なくとも部分的にOPRT媒介性合成によってFUMPを生成するがん細胞を含む。例えば、いくつかの実施形態では、がんにおいて生成した(例えば、尿酸による阻害の不在下で)FUMPのうち少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%またはそれよりも多くが、OPRT媒介性合成によって生成される。
【0153】
いくつかの実施形態では、被験体をまた、5-FUバイオアベイラビリティを増加させる薬剤、例えば、酵素ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼの阻害剤(例えば、ウラシル、エニルウラシルもしくはギメラシル)および/または5-FU毒性を減少させる薬剤、例えば、酵素オロト酸ホスホリボシルトランスフェラーゼの阻害剤(例えば、オテラシル)を用いて処置してもよい。がんを処置する方法は、1種または複数種のこのような薬剤を被験体に投与することをさらに含み得る。当業者ならば、5-FUおよび5-FUプロドラッグが、通常、その他の抗がん剤と組み合わせて使用されるということを理解する。例えば、5-FUまたは5-FUプロドラッグは、フォリン酸(ロイコボリンとしても知られる)、オキサリプラチン(もしくはシスプラチンなどのその他の白金ベースの薬物)ならびに/またはイリノテカン、例えば、5-フルオロウラシル、ロイコボリンおよびイリノテカンと組み合わせて使用してもよい。がんを処置する方法は、1種または複数種のこのような薬剤を被験体に投与することをさらに含み得る。
【0154】
本明細書で使用される場合、被験体に関連して「処置」または「処置すること」は、障害(例えば、がん)の寛解、治癒および/または治癒の維持(すなわち、再燃(relapse)の予防もしくは遅延および/または再発(recurrence)の可能性の低減)を含む。障害が開始した後の処置は、障害および/もしくはその関連症状を低減する、寛解させるまたは完全に取り除くこと、それが悪化することを防ぐこと、進行の速度を減速すること、またはそれがひとたび最初に障害が排除されると再発すること(re-occurring)を防ぐこと(すなわち、再燃を防ぐこと)を目的とする。処置することは、障害に対してそれ自体では有益な効果を有さないこともあるが、障害に対して有益な効果を有する被験体に投与された第2の薬剤の有効性を増大させる薬剤の投与を包含する。
【0155】
尿酸レベルを増加させる薬剤と関連する本明細書において記載される組成物および/または方法のいずれかのいくつかの実施形態では、尿酸レベルを増加させる薬剤は、尿酸自体である。いくつかの実施形態では、尿酸レベルを低下させる薬剤は、尿酸排泄剤、キサンチンオキシダーゼ阻害剤またはウリカーゼである。
【0156】
尿酸低下剤と関連する本明細書において記載される組成物および/または方法のいずれかのいくつかの実施形態では、尿酸低下剤は、尿酸排泄剤である。尿酸排泄剤は、尿中への尿酸の排泄を増加させ、それによって、血液中の尿酸の濃度を低減する物質である。このような薬剤は、通常、腎臓において近位尿細管に対して作用し、ここで、尿から血液に戻る尿酸の吸収を妨げる。いくつかの実施形態では、尿酸排泄剤は、URAT1阻害剤、すなわち、尿酸輸送体1(URAT1)を阻害する化合物、遺伝子SLC22A12によってコードされ、普通、腎近位尿細管の頂端膜を越える尿細管細胞へのウレート(urate)の輸送において機能するタンパク質である。URAT1阻害剤としては、ロサルタン、レシヌラド(2-((5-ブロモ-4-(4-シクロプロピルナフタレン-1-イル)-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル)チオ)酢酸)(Miner, J.ら、(2016年)Arthritis Res Ther. 18巻(1号):214頁)、UR-1102(Ahn, SOら、(2016年)J Pharmacol Exp Ther. 357巻(1号):157~66頁)、プロベネシドおよびベンズブロマロンが挙げられる。いくつかの実施形態では、尿酸低下剤、例えば、URAT1阻害剤は、米国特許出願公開第2013/0202573号、同2014/0142185号、同2015/0203490号、同2015/0191463号、同2015/0322006号、同2016/0221970号および/または同2016/0250193号のいずれかに記載される化合物である。
【0157】
尿酸低下剤と関連する本明細書において記載される組成物および/または方法のいずれかのいくつかの実施形態では、尿酸低下剤は、尿酸の5-ヒドロキシイソウレートへの酸化を触媒する酵素である、ウリカーゼとも呼ばれる尿酸オキシダーゼ(UO)を含む。ウリカーゼは、天然供給源から精製できるか、または組換えによって産生できる。ラスブリカーゼ(商標名、米国ではElitek(登録商標)および欧州ではFasturtec)は、遺伝子改変されたSaccharomyces cerevisiae株によって産生された尿酸オキシダーゼの組換え版である。Aspergillus flavusの株からラスブリカーゼをコードするcDNAをクローニングした。ラスブリカーゼは、301個のアミノ酸長を有する同一ポリペプチドサブユニットの四量体タンパク質である。当業者ならば、その他の生物(例えば、その他の真菌、植物、非ヒト動物)に由来するウリカーゼを使用してもよいことを理解する。その承認された適応症のための、すなわち、腫瘍溶解およびその後の血漿尿酸の上昇をもたらすと予測される、抗がん療法を受けている白血病、リンパ腫および固形腫瘍悪性疾患を有する患者における血漿尿酸レベルの最初の管理のためのラスブリカーゼの推奨用量は、毎日の静脈内注入として最大5日間投与される0.20mg/kg/日である(Jena、2010年)が、いくつかの研究において、より短い処置期間(例えば、単回投与)、より少ない投与量または固定用量(例えば、3mg、6mg、7.5mg)が有効であるとわかった(例えば、Trifilio SM.(2006年)The effectiveness of a single 3-mg rasburicase dose for the management of hyperuricemia in patients with hematological malignancies has been described in Bone Marrow Transplant. 37巻:997~1001頁;McBride Aら(2013年) Comparative evaluation of single fixed dosing and weight-based dosing of rasburicase for tumor lysis syndrome has been described in Pharmacotherapy. 33巻(3号):295~303頁を参照のこと)。いくつかの実施形態では、本開示は、約10μg/kgから約0.2mg/kgの間の用量でウリカーゼを投与することを意図する。いくつかの実施形態では、本開示は、そうでなければその投与の候補ではない可能性がある被験体、例えば、腫瘍溶解および血漿尿酸の上昇を起こすと予測されない被験体へのウリカーゼの投与を意図する。
【0158】
いくつかの実施形態では、尿酸低下剤が、5-FUまたは5-FUプロドラッグと組み合わせて投与される被験体は、正常範囲を超える尿酸レベルを有する。いくつかの実施形態では、尿酸低下剤が、5-FUまたは5-FUプロドラッグと組み合わせて投与される被験体は、正常範囲内の尿酸レベルを有する。いくつかの実施形態では、尿酸低下剤が投与される被験体は、異常に高い尿酸レベルと関連する障害、例えば、痛風を患っていない。いくつかの実施形態では、尿酸低下剤は、被験体の血漿尿酸レベルを約5%から約95%の間、例えば、少なくとも約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%または約90%低減する量で投与される。いくつかの実施形態では、被験体の尿酸レベルは、約350μM未満、例えば、約300μM未満、約200μM未満、約150μM未満または約100μM未満に低減される。いくつかの実施形態では、血漿尿酸レベルは、薬物の投与の約24時間後に測定されたレベルであり得る。
【0159】
尿酸低下剤と関連する本明細書において記載される組成物および/または方法のいずれかのいくつかの実施形態では、尿酸低下剤は、キサンチンオキシダーゼ阻害剤を含む。用語「キサンチンオキシダーゼ阻害剤」とは、プリン代謝に関与する酵素であるキサンチンオキシダーゼの活性を阻害する物質を指す。キサンチンオキシダーゼの阻害は、尿酸の産生を低減する。いくつかの実施形態では、キサンチンオキシダーゼ阻害剤は、フェブキソスタットまたはトピロキソスタットを含む。いくつかの実施形態では、キサンチンオキシダーゼ阻害剤は、チアジアゾロピリミジン-5-オン(Sathisha KRら(2016年)Eur J Pharmacol. 776巻:99~105頁)、アリール-2H-ピラゾール誘導体(Sun ZGら(2015年)Chem Pharm Bull (Tokyo);63巻(8号):603~7頁)または2-アミノ-5-アルキリデン-チアゾール-4-オン(Smelcerovic Zら(2015年)Chem Biol Interact.2015年;229巻:73~81頁)、2-(インドール-5-イル)チアゾール誘導体(Song JUら(2015年)Bioorg Med Chem Lett. 25巻(6号):1254~58頁)または1-ヒドロキシ/メトキシ-4-メチル-2-フェニル-1H-イミダゾール-5-カルボン酸誘導体(Chen Sら(2015年)Eur J Med Chem. 103巻:343~53頁)を含む。好ましい実施形態では、キサンチンオキシダーゼ阻害剤は、UMPSを阻害しない。例えば、いくつかの実施形態では、キサンチンオキシダーゼ阻害剤は、UMPS、例えば、アロプリノールを阻害するプリンヌクレオチドを含まない。いくつかの実施形態では、キサンチンオキシダーゼ阻害剤は、オキシプリノールまたはチスプリン(tisupurine)を含まない。いくつかの実施形態では、キサンチンオキシダーゼ阻害剤は、プリンヌクレオチドを含まない。いくつかの実施形態では、尿酸低下剤は、キサンチンオキシダーゼ阻害剤を含まない。
【0160】
薬剤(例えば、5-FU、5-FUプロドラッグまたは尿酸低下剤)を、薬学的に許容されるキャリアまたはビヒクルなどと組み合わせて、適切な医薬組成物を作製してもよい。用語「薬学的に許容されるキャリアまたはビヒクル」とは、ともに製剤化される化合物の薬理学的活性を破壊しない非毒性キャリアまたはビヒクルを指す。当業者ならば、キャリアまたはビヒクルは、被験体への過度の毒性を引き起こさない化合物を送達するのに適切な量での投与に適合している場合に「非毒性」であるということを理解する。使用してもよい薬学的に許容されるキャリアまたはビヒクルとしては、それだけには限らないが、水、生理食塩水、Ringer溶液、酢酸ナトリウムまたは酢酸カリウム溶液、5%デキストロースなどが挙げられる。組成物は、適宜所望の製剤化のためにその他の構成成分を含み得る。
【0161】
医薬組成物は、それだけには限らないが、血管内(静脈内、動脈内)、筋肉内、皮下、脳内、髄腔内(intrathecal)、鼻腔内および肺などの非経口経路ならびに経口、舌下および直腸など消化管経路を含む任意の適した投与経路によって被験体に投与してもよい。いくつかの実施形態では、全身投与経路を使用してもよい。いくつかの実施形態では、障害によって冒された組織または臓器への局所投与を使用してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、腫瘍内投与を使用してもよい。
【0162】
化合物または組成物、例えば、医薬組成物を、有効量で被験体に使用または投与してもよい。いくつかの実施形態では、「有効量」とは、例えば、活性薬剤(または組成物)が投与される被験体において、目的の1つまたは複数の生物学的応答を誘発するのに十分な量を指す。当業者には明らかであるが、有効である絶対量は、生物学的エンドポイント、特定の活性薬剤、標的組織などといった因子に応じて変わり得る。当業者ならば、「有効量」は、単回用量で投与されてもよく、複数回用量の投与によって達成されてもよいということをさらに理解する。いくつかの実施形態では、有効量の尿酸低下剤は、被験体の血液尿酸レベルを少なくとも約10%または少なくとも約30μM低減するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量の尿酸低下剤は、がんを有する被験体において5-FUまたは5-FUプロドラッグの有効性を改善するのに十分な量であり得る。ある特定の実施形態では、例えば、血液学的がんまたは脳腫瘍についての、固形腫瘍における応答評価基準(Response Evaluation Criteria In Solid Tumors)(RECIST)ガイドライン(Therasse, P.ら、Journal of the National Cancer Institute、92巻(3号):205~216頁(2000年)または改訂RECISTガイドライン(バージョン1.1)(Eisenhauer, E.A.ら、Eur J Cancer. 45巻(2号):228~47頁(2009年))またはその他の一般に受け入れられたガイドラインを使用して定義されるような、がんを有する被験体の客観的応答を使用してもよい。例えば、アウトカムを完全奏効、部分奏効、進行性疾患または安定疾患として分類してもよい。
【0163】
一般に、適切な用量は、少なくとも部分的に薬剤の効力、投与経路などに応じて変わる。一般に、有効であり、十分に許容される用量範囲は、当業者によって選択することができる。このような用量は、当技術分野で公知の臨床試験を使用して決定することができる。必要に応じて、例えば、所定の望ましい応答が達成されるまでの漸増する用量の投与によって、用量を特定のレシピエントに合わせてもよい。所望の場合には、任意の特定の(particular)被験体のための特定の(specific)用量レベルを、用いられる特定の化合物の活性、処置されている特定の状態および/またはその重症度、年齢、体重、全身の健康、投与経路、任意の同時薬物療法を含む種々の因子に少なくとも部分的に基づいて選択してもよい。いくつかの実施形態では、有効量または用量は、約0.001mg/kg~約500mg/kg体重、例えば、約0.01~約100mg/kg体重の範囲である。用量は、体重よりも体表面積に基づいて算出してもよい。いくつかの実施形態では、固定用量を使用する。いくつかの実施形態では、固定用量は、例えば、約0.1mg~約1gの活性薬剤の範囲であり得る。
【0164】
当業者ならば、本発明は、目的を実施し、記載された目標および利点ならびに本明細書において固有の目標及び利点を得るように十分に適合されることを容易に理解する。本明細書における説明および実施例の詳細は、ある特定の実施形態の代表的なものであり、例示的なものであり、本発明の範囲に対する制限として意図されない。その中における修飾およびその他の使用は、当業者に想起される。これらの修飾は、本発明の趣旨内に包含される。様々な置換および改変を、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、本明細書に開示される本発明に行うことができるということは、当業者には容易に明らかである。
【0165】
本明細書および本特許請求の範囲において本明細書で使用される場合、冠詞「a(1つの)」、「an(1つの)」、および「the(その)」は、そうでないことが明確に示されていない限り、複数の指示対象を含むと理解されなければならない。反対に示されない限り、あるいは文脈から明らかでない限り、1つ、1つより多く、またはすべての群メンバーが、所与の産物またはプロセスに存在する、利用される、または他の方法でそれに関連する場合に、群の1つまたは複数のメンバー間に「または」を含む請求項または説明が満たされていると見なされる。本開示は、群の正確に1つのメンバーが、所与の産物またはプロセスに存在する、利用される、または他の方法でそれに関連する実施形態を提供する。本開示はまた、群メンバーのうち1つより多い、またはすべてが、所与の産物またはプロセスに存在する、利用される、または他の方法でそれに関連する実施形態も提供する。さらに、本開示は、特に断りのない限り、または矛盾もしくは不一致が生じることが当業者に明らかとならない限り、列挙された請求項のうちの1つまたは複数からの1つまたは複数の制限、要素、条項、説明用語などが、同一基本請求項に応じて(または任意のその他の請求項と関連するように)、別の請求項に導入されるすべてのバリエーション、組合せおよび並べ替えを提供するということは理解されるべきである。本明細書において記載されるすべての実施形態は、適切な場合には本明細書において記載されるすべての異なる態様に適用可能であるということが意図される。実施形態または態様または教示のいずれも、適切な場合には、このような実施形態(複数可)、態様(複数可)または教示(複数可)が本開示中に現れる場所に関わらず、1つまたは複数のその他のこのような実施形態または態様と自由に組み合わせることができるということも意図される。要素が、例えば、マーカッシュ群または同様の形式で一覧として示される場合には、要素の各サブグループも開示されており、任意の要素(複数可)が群から除去されてもよいということは理解されるべきである。一般に、本発明または本発明の態様が、特定の要素、特徴などを含むと言及される場合には、本発明のある特定の実施形態または本発明の態様は、このような要素、特徴などからなる、またはそれから本質的になるということは理解されなければならない。単純化の目的で、それらの実施形態は、すべての場合において、本明細書において非常に多数の語句で具体的に示されてはいない。指定の排除が本明細書において列挙されるかどうかに関わらず、任意の実施形態または態様が、請求項から明確に排除され得るということも理解されなければならない。例えば、任意の1種または複数種の構成成分、薬剤、障害、被験体またはそれらの組合せが排除され得る。
【0166】
請求項または説明が産物(例えば、物質組成(composition of matter))と関連する場合には、特に断りのない限り、または矛盾もしくは不一致が生じることが当業者に明らかとならない限り、本明細書において開示される方法のいずれかに従って、産物を作製または使用する方法、および本明細書において開示される目的のうちいずれか1つまたは複数のための産物を使用する方法が、適切な場合には本開示によって包含されるということは理解されなければならない。請求項または説明が方法と関連する場合には、特に断りのない限り、または矛盾もしくは不一致が生じることが当業者に明らかとならない限り、本方法の1つまたは複数のステップを実施するために有用な産物(複数可)、例えば、物質組成、デバイス(複数可)またはシステム(複数可)が、適切な場合には本開示によって包含されるということは理解されなければならない。
【0167】
一連の数値が本明細書において示される場合には、一連の中の任意の2つの値によって定義される任意の介在する値または範囲に類似して関する実施形態、および最小値が最小としてとられ得、最大値が最大としてとられ得る実施形態が提供される。「少なくとも」、「最大」などの語句または同様の語句が、本明細書において一連の数に先行する場合には、文脈が明確に別を示さない限り、語句が、種々の実施形態において一覧中の各数に当てはまるということが理解されるべきである。例えば、「少なくとも1、2または3」は、種々の実施形態において「少なくとも1、少なくとも2または少なくとも3」を意味すると理解されなければならない。適切な場合には、ありとあらゆる妥当な下限および上限が明確に意図される。妥当な下限または上限は、例えば、利便性、費用、時間、労力、入手可能性(例えば、試料、薬剤または試薬の)、統計的考察などといった因子に基づいて当業者によって選択または決定することができる。いくつかの実施形態では、上限または下限は、特定の値から2、3、5または10倍だけ異なり得る。
【0168】
「およそ」または「約」は、特に断りのない限り、または文脈から明らかでない限り、いずれかの方向に(その数より大きいまたは小さい)1%の範囲内、またはいくつかの実施形態では、数の5%の範囲内、またはいくつかの実施形態では、数の10%の範囲内に入る数を一般的に含む(このような数が、あり得る値の100%を許されないほど超える場合を除く)。したがって、本明細書で使用される場合、「約」は、列挙された値よりも最大10%高いまたは10%低い値を含む。ある特定の実施形態では、「約」は、列挙された値の±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、±1%、±0.5%または±0.1%を示す。数値に「約」または「およそ」が前に置かれている各実施形態について、正確な値が列挙される実施形態が提供されている。数値に「約」または「およそ」が前に置かれていない各実施形態について、値に「約」または「およそ」が前に置かれている実施形態が提供されている。数値は、本明細書で使用される場合、数およびパーセンテージとして表される値も含む。
【0169】
反対のことが明確に示されない限り、1より大きい行為を含む本明細書において特許請求される任意の方法において、方法の行為の順序は、方法の行為が列挙されている順序に必ずしも制限されないが、本発明は、順序がそのように制限される実施形態を含むということは理解されなければならない。いくつかの実施形態では、方法を、個体または実体(entity)によって実施され得る。いくつかの実施形態では、方法がまとめて実施されるように、方法のステップを、2つもしくはそれより多い個体または実体によって実施され得る。いくつかの実施形態では、方法を、方法の1つ、1つより多いまたはすべてのステップを実施するように、要請または許可を出している別の個体または実体によって少なくとも部分的に実施され得る。
【0170】
特に断りのない限り、または文脈から明らかでない限り、本明細書において記載される任意の産物または組成物を「単離された」と考えてもよいということも理解されなければならない。
【0171】
本明細書において使用される節の見出しは、決して制限と解釈されてはならない。任意の節の見出しの下に示される主題は、本明細書において記載される任意の態様または実施形態に適用可能であり得ることは明確に意図される。
【0172】
本明細書における実施形態または態様は、本明細書において記載される任意の組成物、物品、キットおよび/または方法を対象とし得る。任意の1つもしくは複数の実施形態または態様を、適切な場合には、任意の1つもしくは複数のその他の実施形態または態様と自由に組み合わせることができるということが意図される。本明細書においていかなる場所でも用語の任意の説明または例示は、別に示されない、または明確に明らかでない限り、このような用語が本明細書において現れる場合はどこでも(例えば、このような用語が関連する任意の態様または実施形態において)適用され得るということは理解される。
【0173】
本明細書において記載されるすべての刊行物、特許、データベースおよびその他の参考文献は、その全文がこれにより参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0174】
(実施例1)
ヒト血漿の極性代謝産物組成を反映する細胞培養培地
公知の合成細胞培養培地、BME、MEM、DMEM、およびRPMI 1640はグルコース、アミノ酸、ビタミン、および塩をヒト血漿の濃度を大部分反映していない濃度で含有する(図1A)。これらの培地は、血漿の質量分析およびNMR分析により存在していることが明らかにされた追加の構成成分も欠く(Psychogiosら、2011年)。代わりに、基本培地は多くの場合、熱不活化したウシ胎仔血清(IFS)を補充され、この血清は未定義で多くの場合非説明の(unaccounted for)代謝産物のカクテル、ならびに細胞増殖に必要な成長因子およびホルモンを与える(Freshney、2010年)。したがって、細胞代謝に対する環境因子の影響はよく認識されている(Davidsonら、2016年;DeNicolaおよびCantley、2015年;Hensleyら、2016年;Maddocksら、2013年;Mayersら、2016年;PavlovaおよびThompson、2016年;Yunevaら、2012年)が、ヒト血漿の代謝産物組成をよりよく反映する培地中の培養細胞の疑問(interrogation)は大部分が未調査である(図1B)。
【0175】
健康な成人ヒト由来の血漿について報告されている濃度での代謝産物および塩イオンの定義済みのコレクションを有する培養培地(ヒト血漿様培地;HPLM)が本明細書で開示される。(Psychogiosら、2011年;Wishartら、2013年)。一部の無血清培地は完全に定義された配合表(recipe)を有するが、異なる細胞型の培養を支持するための成長因子の細心な仕立て方を必要とする場合が多い(Freshney、2010年)。したがって、公知の成長培地には、未知の濃度の極性代謝産物の添加を最小限に抑えつつ、広範囲な細胞の増殖に必要な成長因子およびホルモンを添加するために10%の透析IFSを有するHPLM(HPLM+dIFS)を補充した。HPLM+dIFSは本明細書では詳細に記載されているが、手短に言えば、HPLM+dIFSはグルコース、タンパク質構成性アミノ酸、塩、27の追加の極性代謝産物、10%の透析IFSおよびビタミンをRPMI 1640と同じ濃度で含有しており(図1C、表2);炭酸水素塩緩衝系を生理的pHで使用し、約295mOsm/kgの重量オスモル濃度を有する。
【0176】
RPMI 1640(本明細書ではRPMI)は正常な血液細胞ならびに血液がん細胞を培養するために使用される(Freshney、2010年;Mooreら、1967年)ので、この培地は細胞に対するHPLM+dIFSの効果を比較するための基準として使用した。2種類のRPMI調合物を使用し、それぞれが生理的グルコース(5mM)を有するが、10%のIFS(RPMI+IFS)または10%の透析IFS(RPMI+dIFS)のいずれかを補充した。代謝産物プロファイリングにより、IFSを透析すればその極性代謝産物のレベルが実質的に低減されることが確かめられた(図1D、表5Aおよび5B)。さらに、代謝産物プロファイリングにより、ウシ胎仔血清は成人ヒト血漿の代謝組成を反映するのが不十分であることも明らかにされた。なぜならば、10%のIFSをRPMIに添加しても多くの代謝産物についてヒト血漿中の報告されている値の10%の濃度が得られなかったからであった。同様に、マウス血漿中のグルコースおよび多くのアミノ酸の濃度はヒト血漿中のグルコースおよび多くのアミノ酸の濃度に大部分類似しているが、他の代謝産物の濃度は非常に異なっており、マウス血漿において、少なくとも3~10倍低い(例えば、カルニチンおよび尿酸)または少なくとも3~10倍高い(例えば、3-ヒドロキシブチレートおよびタウリン)例が挙げられる(図1D)。したがって、マウス腫瘍モデルは間質細胞および免疫細胞という文脈での代謝の研究には有用であるが、マウス血漿よりもHPLM+dIFSのほうがヒト血漿の極性代謝産物組成を密接に反映している。
【表5A-1】
【表5A-2】
【表5A-3】
*値はμMよりはむしろ正規化されたピーク面積を示しており;ヒートマップでは、倍数変化値はHPLMと比べて計算した。
表5Aおよび5Bにおけるすべての濃度は、他の方法で指示されていなければマイクロモル濃度である。
表5Aおよび5Bにおける平均および標準偏差値は4つの生物学的複製物から計算される。
N/D:検出されず
【0177】
表5Aにおいて、その濃度がN/Dとして列挙されている代謝産物では、培地試料中の最小検出の濃度に一致する濃度は、アルファアミノブチレートの場合を除いて、図1Dでのヒートマップのために使用した。これらの値は以下の通りである:2-ヒドロキシブチレート:0.4μM;3-ヒドロキシブチレート:2μM;アセチルグリシン:4μM;ベタイン:0.5μM;ヒポキサンチン:0.02μM;ピルベート:2μM;タウリン;4μM;尿酸:0.5μM。アルファアミノブチレートの最小検出濃度(20μM)は、RPMIへのその割り当てによりヒートマップのスケール限界内に収まる倍数変化値がもたらされる程度であった。したがって、混乱する解釈を回避するために比較はヒートマップから排除された。アセテート、アセトン、システイン、ホルメート、ガラクトース、グルタチオン、およびマロネートはHPLMの定義された構成成分であるが、本実験では培地試料について使用される代謝産物プロファイリング法では容易に検出することはできなかったことは留意するべきである。
【0178】
追加の代謝産物が、表5Bに示されるIFSまたはdIFSを含有する培地配合調合物において検出され定量された。これらの化合物はHPLMの(またはRMPIの)定義された構成成分ではないが、おそらくIFS/dIFSにより与えられ、したがって、図1Dのヒートマップには含まれていない。
【表5B-1】
【表5B-2】
【0179】
HPLM+dIFSはがん細胞増殖に必要な代謝産物を提供する。なぜならば、種々のヒト血液がんを表す6つの細胞系は、HPLM+dIFSにおいて、RPMI+IFSおよびRPMI+dIFSにおける速度より一般には低いが、それに匹敵する速度で増殖したからであった(図1E)。
(実施例2)
HPLMでの細胞の培養はその代謝ランドスケープおよびグルコース炭素の運命を広範囲に変える
【0180】
確立した培地での培養と比べて、ヒト血漿の代謝組成をよりよく模倣する培地で細胞を培養するほうが細胞代謝を変化させるという仮説を試験するため、HPLM+dIFSにおいて培養した細胞の代謝産物プロファイルをRPMI+IFSまたはRPMI+dIFSにおける代謝産物プロファイルと比較した。実際、HPLM+dIFSは、アミノ酸、脂質、およびヌクレオチド代謝を含む、複数の経路をわたる多くの代謝産物の細胞内存在量に有意に影響を与えた(図2A;略字については表6参照)。
【表6】
【0181】
アルギニン、アスパラギン、およびタウリンなどのいくつかの代謝産物では、違いは培地それ自体での違いを反映し、アスパルテートおよびラクテートなどの他の代謝産物では、違いは培地それ自体での違いを反映しなかった。大半のHPLM+dIFS誘導変化は試験した6つの細胞系すべてで共有されたが、一部は細胞系特異的であり、がんの不均一性(CantorおよびSabatini、2012年;Davidsonら、2016年;EasonおよびSadanandam、2016年;Hensleyら、2016年;Huら、2013年;Mayersら、2016年;Shaulら、2016年;Yunevaら、2012年)が環境条件に対する細胞応答にどのように影響をあたることができるかを明確に示していた。例えば、HPLM+dIFSは5つの細胞系でアルギニノスクシネート存在量を低減したが、P12-Ichikawa細胞ではアルギニノスクシネート存在量を増やした。同様に、HPLM+dIFSはK562、P12-Ichikawa、およびSUDHL4細胞においてのみフルクトース-6-ホスフェート/グルコース-1-ホスフェート(F6P/G1P)の劇的上昇を引き起こし、KMS12BM細胞においてのみオキソグルタレートを中程度低下させた。
【0182】
HPLM+dIFSでの培養はいかなる細胞系においてもエネルギー充足(Atkinson、1968年)に影響を与えない(図2B)が、ラクテート/ピルベートにより評価される場合、2つの酸化還元対:GSH/GSSG(図2C)およびNADH/NADの比への変化により反映される酸化還元状態に対する細胞系特異的効果を確かに有していた(Idoら、2004年;Williamsonら、1967年;Zhangら、2002年)(図2D)。
【0183】
最後に、HPLM+dIFSはグルコース消費とラクテート分泌速度の間の相関関係を有意に変化させず(図8)、HPLM+dIFSが大半のがん細胞に共通する好気性解糖表現型にはほとんど効果がないことを示唆していた(Hosiosら、2016年;Jainら、2012年)。
【0184】
グルコース利用を特に研究するため、[U-13C]-グルコースを含有するHPLM+dIFSにおける3つの細胞系(K562、NOMO1、およびP12-Ichikawa)の培養に続いて、いくつかの代謝産物の13C標識化パターンをRPMI+IFSまたはRPMI+dIFSでの13C標識化パターンと比較した(図3A)。興味深いことに、HPLM+dIFSはピルベートを約40μMの濃度で含有し、この濃度はRPMI+IFSの濃度の10倍を超えて高いが、3つの13C(M3)で標識されたピルベートの割合には影響を及ぼさなかった(図3B)。しかし、HPLM+dIFSは、TCAサイクルにおけるシトレートのM2標識化の低減により反映される、ピルベートの酸化により生み出されるグルコース由来アセチル-CoAの代謝には確かに影響を及ぼした(図3C)。
【0185】
メタボロームの場合と同様に、HPLM+dIFSはグルコース利用に対して細胞系依存性効果も有していた。最も顕著な一つは、K562細胞およびP12-Ichikawa細胞のみでのF6P/G1PのM6標識化の有意な低減であり(図3D)、これらの細胞がHPLM+dIFSで培養された場合、外因性グルコースを超える供給源がF6P/G1Pプールに寄与することが示唆される。さらに、HPLM+dIFSはアラニンを約620μM、RPMI+IFSのアラニンのほぼ5倍高い濃度で含有するが、2つの細胞系においてM3-アラニンの割合には影響を及ぼさなかった。しかし、HPLM+dIFSはP12-Ichikawa細胞においてアラニンのM3標識化を2分の1未満に低減し(図3E)、HPLM+dIFSがこれらの細胞におけるグルコース由来ピルベートの運命に影響を及ぼすことが明らかにされている。最後に、HPLM+dIFSは、K562細胞およびP12-Ichikawa細胞でのみグリセロホスホコリンのM3標識化も減少させ、HPLM+dIFSが、脂質合成のためのグルコース利用に細胞系特異的変化を誘導することが示唆される(図3F)。HPLM+dIFSで培養された細胞とRPMI+dIFSで培養された細胞を比べると、これらの変化もほぼすべてが観察されたが、ピルベートおよびアラニンなどのある特定の外因性代謝産物のレベルのより大きな不一致がその対応する13C標識化パターンに影響を与えた。
【0186】
まとめると、これらのデータにより、好気性解糖は本質的に影響を受けなかったが、HPLM+dIFSでの培養はRPMIでの培養と比べると、細胞の代謝ランドスケープに対して広範な効果を有したことが明らかにされている。これらの効果は、メタボローム、酸化還元状態、およびグルコース利用への広範囲な変更を含み、試験したすべての細胞系に共通であるまたは細胞系特異的であるのどちらかであった。
(実施例3)
HPLMの尿酸構成成分はデノボピリミジン生合成に対して著しい効果を有する
【0187】
RPMIでの培養と比べたHPLM+dIFSでの培養の最も有意な結果の一つはヌクレオチド代謝に関与する4つの代謝産物:カルバモイルアスパルテート、ジヒドロオロテート、オロテート、およびオロチジンの細胞内存在量の増加であった(図4A~D)。4つのうちのどれもいずれの培地でも検出できなかった。最初の3つは、UMPを生み出すデノボピリミジン生合成経路における中間体であり、オロチジンはOMPの脱リン酸化産物であり、OMPはこの経路におけるUMPの直接の前駆体である(図4E)。試験した6つの細胞系の4つにおいて、HPLM+dIFSでの培養は、UTPおよびCTPピリミジンヌクレオチドの細胞内レベルを40~60%低減した(図4F~G)が、プリンヌクレオチドに対しては類似の効果はなかった(図9)。いかなる理論にも束縛されることを望まないが、サルベージ経路活性の細胞系依存性寄与(EvansおよびGuy、2004年)またはピリミジンヌクレオチドプールの消費の変更は、HPLM+dIFSが、すべての細胞におけるピリミジンヌクレオチドの存在量を減少させない理由を説明し得る。
【0188】
HPLM+dIFSのどの成分(複数可)がデノボピリミジン合成経路に影響を及ぼすのかを判定するため、(1)アセトン、クレアチン、クレアチニン、ホルメート、フルクトース、ガラクトース、グルタチオン、グリセロール、およびヒポキサンチン;(2)非タンパク質構成性アミノ酸(8つの代謝産物);(3)水溶性酸(8つの代謝産物);(4)尿素;または(5)尿酸を欠くHPLM+dIFS誘導体においてK562細胞を培養した(図5A)。注目すべきことに、尿酸のみが観察された効果を媒介した。なぜならば、HPLM+dIFSから尿酸を除去するとオロテートおよびオロチジンレベルをRPMIにおいて(図3C~D)、またはドロップアウト調合物からまとめて欠けている27の構成成分を欠く最小HPLMにおいて培養した細胞のオロテートおよびオロチジンレベルまで低減したからである(図5B)。HPLM+dIFSは尿酸を、それぞれRPMI+IFSおよびRPMI+dIFSの濃度の40倍および少なくとも500倍高い濃度である、350mMで含有し(図5C)、重要なことに、その細胞内濃度は対応する培養培地での濃度を反映している(図5D)。K562細胞では、尿酸はオロテートおよびオロチジン存在量を用量依存的に増加させ(図5E)、試験したその最も高い濃度(700μM)ではOMPの検出可能な蓄積をもたらした。RPMI+IFSへの350μMの尿酸の添加もオロテートおよびオロチジンレベルを大いに上昇させたが、完全HPLM同様に、UTP存在量に対しては細胞系依存性効果を有していた(図5F)。最後に、密接に関係する分子9-メチル尿酸(9-MUA)はK562細胞に入ったが、デノボピリミジン生合成経路でのオロテート、オロチジン、またはその他の中間体のレベルを変えなかった(図5G)。
【0189】
ピリミジン代謝に対する尿酸の効果は、他の哺乳動物よりもヒト、チンパンジー、ゴリラ、および追加の高等霊長類でのほうが最大一桁高い血漿濃度の増加を示している(Alvarez-LarioおよびMacarron-Vicente、2010年;Kratzerら、2014年;Wuら、1992年)。マウスおよびウシを含む大半の哺乳動物種は肝臓酵素ウリカーゼを介して尿酸をアラントインまで代謝するが、ウリカーゼをコードする遺伝子(UOX)はヒト科動物の進化中に偽遺伝子化を介して不活化された(Kratzerら、2014年;Odaら、2002年;Wuら、1992年;1989年)。結果として、多くの高等霊長類では、アラントインではなく、尿酸がプリン異化の最終産物である(図5H)。さらに、マウスでは、約30μMの血漿尿酸濃度を有しており、大半のUOX欠損マウスは極度の高尿酸血症および腎症から生後4週間内に死亡することを考えると、ウリカーゼ活性は不可欠である(Wuら、1994年)。したがって、尿酸がデノボピリミジン生合成経路に影響を及ぼすという所見を、マウスで成長しているまたは従来の培地で培養された細胞を研究することによって見つけるのは困難だったと考えられる。
(実施例4)
尿酸はUMPSの直接の阻害因子である
【0190】
オロテートおよびオロチジンの細胞内レベルを上昇させることに加えて、HPLMは培地へのそれらの分泌も著しく増加させた(図10)が、これはオロト酸尿症およびオロチジン尿症(orotidinuria)を有する患者におけるこれらの代謝産物の高尿中排泄を暗示させる現象である。この障害は、UMPシンターゼ(UMPS)の遺伝的(Bailey、2009年;Foxら、1973年;Smithら、1961年;Suchiら、1997年)または薬理学的(Bonoら、1964年;Fallonら、1961年;Foxら、1970年;KelleyおよびBeardmore、1970年)阻害により引き起こすことが可能なので、HPLMの尿酸構成成分は細胞においてこの酵素の阻害をもたらし得る。UMPSは、デノボピリミジン生合成経路の最終の2ステップを触媒してUMPを生み出す二機能性2ドメイン酵素である(Jones、1980年)。第1のステップでは、オロチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(OPRT)ドメインがオロテートとPRPPからOMPを合成し、第2のステップでは、OMPデカルボキシラーゼ(ODC)ドメインがOMPをUMPに変換する(図6A)。
【0191】
尿酸がUMPSの阻害を引き起こし得るかどうかを判定するため、確立したUMPS阻害因子を研究して、確立したUMPS阻害因子が開示された細胞においてデノボピリミジン生合成経路に対して尿酸と類似する効果を有するかどうかを確かめた。小分子アロプリノールおよび6-アザウリジンは、それぞれアロプリノールリボヌクレオチドおよび6-アザ-UMPに変換されると(Bonoら、1964年;Handschumacher、1960年;KelleyおよびBeardmore、1970年;MurrellおよびRapeport、1986年)UMPSのODCドメインを競合的に阻害するプロドラッグである(図6B)。K562細胞では、アロプリノールはカルバモイルアスパルテート、ジヒドロオロテート、オロテート、オロチジン、およびOMPのレベルを用量依存的に増加させた(図11A~B)。さらに、試験したその最も高い濃度では、アロプリノールはこれらの細胞でのUTPの存在量もほぼ30%減少させた(図11C)。LC/MSベースの代謝産物プロファイリングを使用して、質量/電荷数比(m/z)がアロプリノールリボヌクレオチドの予想されたm/zに一致する種が検出され、その大きさは培地中のアロプリノールの濃度と相関していた(図11D)。重要なことに、この種は、その異なるクロマトグラフィー保持時間によりそのアイソマー、IMPと区別することができた。これらのデータは細胞内でのアロプリノールリボヌクレオチドへのアロプリノールの変換と一致している。しかし、推定尿酸リボヌクレオチドと一致する代謝産物ピークは検出されなかった。
【0192】
尿酸そのものがUMPSを直接阻害し得るのかどうかを調べるため、組換えUMPSおよびその基質、オロテートならびにPRPPを含有するin vitro UMPS活性アッセイを開発し、OMPおよびUMPのLC/MS検出を介してその活性を確かめた(図6C)。UMPS変異体(Y37A、R155A)は、ヒトUMPSのOPRTドメインの最近寄託された構造(タンパク質データバンクエントリー2WNS、鎖AおよびB)に基づいて設計されたが(図12)、活性がなくアッセイでは陰性対照として働いた。確立したODC阻害因子、6-アザ-UMPは、UMPSによるUMP産生を用量依存的に減少させ、50μMでは、UMPレベルを、ビヒクルを含有する反応物でのレベルの約3%まで低減した(図6D)。6-アザ-UMPはOMPの存在量も劇的に増加させたが、OMPの増加はUMPの減少と強く相関してはいなかった。いかなる理論にも束縛されることを望まないが、この結果はOPRT反応の公知の可逆性によるものである可能性がある(TrautおよびJones、1977年)。
【0193】
注目すべきことに、尿酸はUMPSによるUMP生成も用量依存的に阻害し、6-アザ-UMP同様、UMPの減少と完全に相関してはいない様式でOMPも増加させた(図6E)。尿酸は6-アザ-UMPほど強力ではなかった。なぜならば、1mMでは、尿酸はUMPレベルを、ビヒクルを含有する反応物でのレベルの約30%までしか低減できなかったからであった。しかしながら、重要なことに、尿酸は、培養細胞中でオロテートおよびオロチジンレベルを上昇させた濃度と一致する濃度でUMPSをin vitroで阻害した。最後に、アロプリノールおよび6-アザウリジンはUMPSを直接阻害せず、9-MUAもアラントインもUMPSを直接阻害しなかった(図6F)。
【0194】
したがって、尿酸は、ヒト血漿中に存在する濃度では、UMPSのODCドメインの直接阻害因子である。
(実施例5)
尿酸は5-フルオロウラシルの細胞傷害性と拮抗する
【0195】
5-フルオロウラシル(5-FU)は代謝拮抗物質薬であり、50年超前に開発されたが、数種類のがんの処置において依然として広く使用されている(Longleyら、2003年)。細胞中では、5-FUは、その細胞傷害性効果を媒介する種々のフルオロヌクレオチド誘導体に代謝される(図7A)。これらの中にはフルオロウリジントリホスフェート(FUTP)があり、これはRNA中に誤取り込みされると細胞死をもたらす。FUTP合成は、直接的にはUMPSのOPRTドメインにより、または間接的にはウリジンホスホリラーゼおよびウリジンキナーゼの連続活性を通じて、フルオロウリジンモノホスフェート(FUMP)への5-FUの変換から始まる(Longleyら、2003年)。以前の動態研究によれば、オロテートはOPRT活性によるFUMPへの5-FUの直接的変換を巡って5-FUと競合することが明らかにされている(ReyesおよびGuganig、1975年)(図7B)。これらの所見と一致して、アロプリノールリボヌクレオチドにより媒介されるUMPSのODCドメインの競合的阻害により誘導されるオロテート蓄積により、アロプリノールは、5-FUに対するある特定のがん細胞系の感受性を低減する(SchwartzおよびHandschumacher、1979年)。したがって、いかなる理論にも縛られたくはないが、尿酸は類似の機序を通じて5-FUに対する細胞の感受性に影響を及ぼし得る。
【0196】
実際、HPLM+dIFSにおいてNOMO1細胞を培養すると、がんの処置で一般的に使用されているDNA損傷薬剤であるドキソルビシンの効能に影響を及ぼさずに(図7D)、RPMI+IFSおよびRPMI+dIFSでの培養と比べて、5-FUのEC50をそれぞれ約5倍および約8倍まで減少させた(図7C)。さらに、HPLM+dIFSから尿酸だけを除去すると、再びドキソルビシン感受性に影響を及ぼさずに(図7F)、NOMO1細胞において5-FUのEC50はほぼ6分の1に低減された(図7E)。5-FUで処置され尿酸を欠くHPLM+dIFSにおいて培養された細胞では、FUMP、フルオロデオキシウリジンモノホスフェート(FdUMP)、ならびに5-FUが検出された(図7G)。尿酸含有HPLM+dIFSでの培養はFdUMPおよび5-FUの細胞内存在量にほとんど効果はなかったが、FUMPレベルを検出限界下まで低減させ、オロテートによるOPRT媒介FUMP合成の拮抗と一致していた(図7G)。
【0197】
5-FUはもはや血液がんの処置には使用されていないので、さらに臨床的に関連のあるがん細胞系(Longleyら、2003年)の5-FU感受性に対する尿酸の効果を研究した。6つの血液がん細胞系の場合と同様に、HPLM+dIFSにおいてSW620結腸直腸がん細胞系を培養すると、オロテートの細胞内存在量が増加し(図13A)、尿酸がこれらの細胞の5-FU感受性にも影響を及ぼし得ることを示していた。実際、HPLM+dIFSから尿酸だけを除去すると、SW620細胞の5-FU EC50はHPLM+dIFSでの培養と比べると3分の1に低減した(図S6B)が、ドキソルビシン感受性は影響を受けなかった(図13C)。
【0198】
したがって、ヒト血漿で見出される濃度では、内因性代謝産物の尿酸は、一般の化学療法薬に対するがん細胞の感受性に影響を及ぼし(図7H)、ウリカーゼの投与によるなどの血漿尿酸レベルを操作すれば(Jehaら、2004年)、OPRT媒介合成を介してFUMPを生み出すヒト腫瘍の5-FU感受性が改善され得ることが示唆される。
材料および方法
細胞系および試薬
【0199】
以下の細胞系、K562およびNOMO1はDr.James Griffin(Dana Farber Cancer Institute);P12-IchikawaはDr.Thomas Look(Dana Farber Cancer Institute);SUDHL4はDr.Margaret Shipp(Dana Farber Cancer Institute);ならびにKMS12BMおよびSEMはthe Cancer Cell Line Encyclopedia(Broad Institute)から快く提供していただいた。SW620細胞系はATCCより購入した。細胞系はマイコプラズマ汚染がないことが確かめられ(Freshney、2010年)、すべての細胞系の同一性はSTRプロファイリングにより認証された。SW620のSTRプロファイリングは評価した10の遺伝子座の2つにおいて極めて小さなバックグラウンドが明らかになった。
【0200】
5-フルオロウラシル(F6627)、6-アザウリジン(A1882)、アラントイン(05670)、アロプリノール(PHR1377)、ドキソルビシン(44583)、オロテート(O8402)、ホスホリボシルピロホスフェート(PRPP)(P8296)、UMP(U6375)はSigmaから入手し;6-アザ-UMP(sc-291171)および9-メチル尿酸(sc-362184)はSanta Cruz Biotechnologiesから入手し;[U-13]-D-グルコース(CLM-1396)およびフェニルアラニン-d(DLM-372)はCambridge Isotope Laboratoriesから入手した。
【0201】
HPLMの調合で使用した化合物の供給元およびカタログ番号は表7に収載している。HPLMで使用した化合物は、RPMIに加えて、表7に収載される1つまたは複数の化合物を含有する保存溶液として調製し、RPMIはビオチン、コリン、フォレート、ミオイノシトール、ナイアシンアミド、p-アミノベンゾエート、パントテナート、ピリドキシン、リボフラビン、チアミン、およびビタミンB-12を提供した。
【表7-1】
【表7-2】
プラスミドおよびプラスミド構築
【0202】
pDONR223-KRASV12およびpLJM1-eGFPはAddgeneから入手した(それぞれAddgene 31200および19319)。pDONR223-UMPSはHuman ORFeome 7.1由来であり、Dr.Susan Lindquistから快く提供していただいた。他のプラスミドはすべて下記の通りに構築した。
1.レンチウイルスプラスミドpLJC2の構築
【0203】
KRASV12遺伝子は、プライマーJC4/JC5を使用してpDONR223-KRASV12鋳型から増幅させ、AgeI-BamHIで消化し、pLJM1-eGFPにクローニングしてpLJM1-KRASV12-3xFLAGを生成した。プラスミドpLJC1-KRASV12は、QuickChange PCRを使用し、それぞれプライマーJC48/JC49およびJC50/JC51を用いて、pLJM1-KRASV12-3xFLAGの2つのNotI部位を除去して構築した。Rap2A遺伝子は、プライマーJC68/JC69を使用してpLJM1-Rap2A鋳型から増幅し、PacI-NotIで消化し、pLJC1-KRASV12-3xFLAGにクローニングしてpLJC1-Rap2A-3xFLAGを生成した。次に、Rap2A-3xFLAGをコードする配列をプライマーJC_LJC2-F/JC79を使用してpLJC1-Rap2A-3xFLAGから増幅し、AgeI-EcoRIで消化し、pLJM1-eGFPにクローニングしてpLJM1-Rap2A-3xFLAGを生成した。次に、プラスミドpLJC2-Rap2A-3xFLAGは、QuickChange PCRを使用し、それぞれプライマーJC48/JC49およびJC50/JC51を用いて、pLJM1-Rap2A-3xFLAGの2つのNotI部位を除去して構築した。
2.UMPSプラスミドの構築
【0204】
UMPS遺伝子はプライマーJC624/JC625を使用してpDONR223-UMPS鋳型から増幅し、PacI-NotIで消化し、pLJC2-Rap2A-3xFLAGにクローニングしてpLJC2-UMPS-3xFLAGを生成した。プラスミドpLJC2-UMPS(Y37A、R155A)-3xFLAGは、オーバラップ拡張PCR法に基づく2ステッププロトコルを使用して構築した。第1のステップでは、3つの断片を、以下のプライマー対:JC_LJC2-F/JC716、JC715/JC720、およびJC719/JC_LJC2-Rを使用してpLJC2-UMPS-3xFLAG鋳型から増幅した。第2のステップでは、3つの断片を、プライマーJC_LJC2-F/JC_LJC2_Rを含有する第2のPCRにプールし、次にPacI-NotIで消化し、pLJC2-UMPS-3xFLAGにクローニングした。
プライマー
【0205】
JC4:GCACCGGTTTAATTAACGCCACCATGGGCACTGAATATAAACTTGTGGTAGTTGG(配列番号1)
【0206】
JC5:CGCGGATCCTTATTACTTGTCATCGTCATCCTTGTAATCAATGTCATGATCTTTATAATCACCGTCATGGTCTTTGT(配列番号2)
【0207】
AGTCGCCTGCGGCCGCCATAATTACACACTTTGTCTTTGACTTC(配列番号3)
【0208】
JC48:CCACCGCACAGCAAGCAGCAGCTGATCTTCAGACC(配列番号4)
【0209】
JC49:GCTGCTTGATGCCCCAGACTGTGAGTTGCAACAG(配列番号5)
【0210】
JC50:CGAGACTAGCCTCGAGCAGCAGCCCCCTTCACCGAG(配列番号6)
【0211】
JC51:CCGCATCACCATGGTAATAGCGATGACTAATACG(配列番号7)
【0212】
JC68:CCGTTAATTAAAGGGACGATGCGCGAGTACAAAGTGGTGGTGCTG(配列番号8)
【0213】
JC69:CCCTTGCGGCCGCGCTGCCTCCTTGTATGTTACATGCAGAACAGC(配列番号9)
【0214】
JC_LJC2-F:TGTACGGTGGGAGGTCTATATAAG(配列番号10)
【0215】
JC79:CGGCGGGAATTCTTATTACTTGTCATCGTCATCCTTGTAATCAATGTCATG(配列番号11)
【0216】
JC624:CCGTTAATTAACGCGACAATGGCGGTCGCTCGTGCAGCTTTGGGGCCATTGGTGAC(配列番号12)
【0217】
JC625:CCCTTGCGGCCGCGCTGCCTCCAACACCAAGTCTACTCAAATACGCTTCCCAAGC(配列番号13)
【0218】
JC715:CTTTCCTCCCCCATCGCCATCGATCTGCGGGGC(配列番号14)
【0219】
JC716:GCCCCGCAGATCGATGGCGATGGGGGAGGAAAG(配列番号15)
【0220】
JC719:GTGCTGTTGGACGCCGAGCAGGGAGGCAAG(配列番号16)
【0221】
JC720:CTTGCCTCCCTGCTCGGCGTCCAACAGCAC(配列番号17)
【0222】
JC_LJC2-R:CCCTTTTCTTTTAAAATTGTGGATGAATACTGCC(配列番号18)
HPLMの設計
【0223】
ヒトメタボロームデータベースは、血清メタボロームデータベース(Psychogiosら、2011年;Wishartら、2013年)と統合されると、少なくとも1つのヒト生物流体において検出され定量もされた命名されている2,192の代謝産物を含有する。この収集物から、以下の手作業で適用されるフィルタリング基準(filtering criteria):(1)正常な成人ヒト血液中の濃度が示されていなかった代謝産物;(2)脂肪酸、コレステロールならびに以下の:コレステロールエステル、セラミド、ジグリセリド、ガングリオシド、グリセロホスホコリン、モノアシルグリセリド(monoacylglyceride)、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン、およびトリグリセリドの誘導体を含む、親油性代謝産物;(3)正常成人ヒト血液中で少なくとも1つの参照源により表された場合<6μMの濃度を有する代謝産物;(4)正常成人ヒト血液中で1つの参照源だけにより示される濃度を有する代謝産物;ならびに(5)市販されていなかった代謝産物、の1つを満たす分子は除去した。ビタミンは培養中の細胞の栄養要件の1つであるが(Eagle、1955年)、大半が、本発明者らが設定した6μMの閾値を十分下回る注釈付きの血漿濃度を有していた。したがって、これらの代謝産物を取り除くよりはむしろ、HPLMにビタミンの市販の濃縮混合物をRPMI 1640の濃度と等価の濃度で補充した。さらに、銅および亜鉛などの微量元素も培養中の細胞には不可欠であるが、これらの元素はIFSでは、アルブミンおよびインスリンなどの輸送分子により十分な量で与えられることが多く、その必要なレベルを超えると細胞増殖にとって有害になる場合が多い(Sigma Media Expert)。したがって、微量元素はHPLMの定義された構成成分中に含めなかった。正常な成人ヒト血液について報告されている計算された平均値に類似する濃度でHPLMの調合物に含まれるタンパク質構成性アミノ酸、27の追加の極性代謝産物、および10の小イオンの最終リストを作成するために、非内在性化合物および気体の除去などの追加の改変も加えた。
細胞培養培地調合
【0224】
細胞は次の3つの培地において主に維持された。
【0225】
(1)RPMI+IFS:グルコースを欠くRPMI 1640(Thermo Fisher Scientific 11879020)で、本発明者らは、これに5mMのグルコース、10%の熱不活化ウシ胎仔血清(IFS)、ペニシリン、およびストレプトマイシンを添加した。
【0226】
(2)RPMI+dIFS:グルコースを欠くRPMI 1640(Thermo Fisher Scientific 11879020)で、本発明者らは、これに5mMのグルコース、10%の透析IFS、ペニシリン、およびストレプトマイシンを添加した。
【0227】
(3)HPLM+dIFS:HPLM(表2参照)で、本発明者らは、これに10%の透析IFS、RPMI 1640 100X ビタミン(Sigma R7256)、ペニシリン、およびストレプトマイシンを添加した。
【0228】
熱失活ウシ胎仔血清(Sigma F4135)は、SnakeSkin透析チュービング、3.5K MWCO、35mm(Thermo Fisher Scientific PI88244)を使用して、20倍体積のPBSに対して透析した。透析は9~12時間ごとに完全PBS交換をして4℃で48時間実行した。すべての培地は、ボトルトップ真空フィルター、セルロースアセテート膜、ポアサイズ0.45μm(Sigma CLS430514)を使用して無菌濾過した。
細胞培養条件
【0229】
すべての実験に先立って、細胞は少なくとも7日間目的の培地で成長させ順応させた。すべての細胞は37℃および5%COで維持した。
【0230】
成長曲線では、すべての細胞系は100,000細胞/mLの密度で播種し、25cmの長方形傾角ネック細胞培養フラスコ(rectangular canted neck cell culture flask)(Westnet430639)中12mLの培地で成長させた。細胞密度測定は径設定8~30μmのBeckman Z2コールターカウンターを使用して9~12時間ごとに記録した。
代謝産物プロファイリングおよび代謝産物存在量の定量
【0231】
LC/MSベースの分析はIon MaxソースおよびHESI IIプローブを備えたQExactiveベンチトップオービトラップ質量分析計上で実施し、この分析計はDionex UltiMate3000UPLC装置(Thermo Fisher Scientific)と連結されていた。外部質量較正は7日ごとに標準較正混合物を使用して実施した。アセトニトリルはLC/MS HyperGrade(EMD Millipore)であった。他の溶媒はすべてLC/MS Optimaグレード(Thermo Fisher Scientific)であった。
【0232】
培地および血漿の代謝産物プロファイリングでは、試料は50%のメタノール、30%のアセトニトリル、20%の水を、内部標準としての10ng/mLのフェニルアラニン-dと一緒に含有する溶液で1対40に希釈し、次に-80℃で保存した。5分間のボルテックスおよび21130gでの4℃、5分間の遠心分離に続いて、2μLのそれぞれの培地代謝産物試料を、2.1×20mmのガードカラムを備えたZIC-pHILIC 2.1×150mm分析カラム(両方とも5μm粒子サイズ、EMD Millipore)上に注射した。緩衝液Aは20mMの炭酸アンモニウム、0.1%の水酸化アンモニウム;緩衝液Bはアセトニトリルであった。クロマトグラフィー勾配は以下の通り:0~20分:80%から20%Bの直線勾配;20~20.5分:20%から80%Bの直線勾配;20.5~28分:80%Bでの保持であり、0.150mL/分の流速で流した。質量分析計はフルスキャンで操作し、極性切換モードはスプレー電圧を3.0kVに設定し、加熱キャピラリーは275℃に保持し、HESIプローブは350℃に保持した。シースガス流速は40ユニットに設定し、補助ガス流は15ユニットに設定し、スイープガス流は1ユニットに設定した。MSデータ取得は、分解能を70,000に設定し、AGC標的は10、最大注射時間20ミリ秒で、70~1000m/zの範囲で実施した。
【0233】
ホールセル試料の代謝産物プロファイリングでは、細胞はペレット状にし、次に6ウェルプレートにおいて3mLの新しい培養培地中200,000細胞/mLの密度で播種した。24時間のインキュベーション後、細胞は250gで5分間遠心分離し、1mLの氷冷0.9%無菌NaClに再懸濁し、再び250gで4℃、5分間遠心分離した。代謝産物は内部標準としての10ng/mLのフェニルアラニン-dを含有する80%メタノールの1mL溶液中に抽出した。ボルテックスを10分間および4℃で10分間、21130gで3分間遠心分離を行った後、試料を窒素ガス下で乾燥させた。乾燥試料は-80℃で保存し、次に100μLの水に再懸濁し;4μLのそれぞれの細胞試料を、培地試料をプロファイリングするために記載された通りにLC/MS分析のために注射した。すべての実験では、追加の培養複製物を同一にセットアップし、細胞数および体積を測定するために使用し、数と体積はそれぞれ8~30μmの径設定のBeckmanZ2コールターカウンターを使用して測定した。
【0234】
UMPS活性アッセイ試料の代謝産物プロファイリングでは、反応混合物は記載の通りに(UMPS活性アッセイ参照)抽出し、5μLのそれぞれの試料は、質量分析計はフルスキャン、負イオン化モードでのみ操作したことを除いて、培地試料をプロファイリングするために記載された通りにLC/MS分析のために注射した。
【0235】
種々の代謝経路および過程を包含するほぼ170の代謝産物のリストを作成した。ホワイトヘッド研究所代謝産物プロファイリングコア施設(the Whitehead Institute Metabolite Profiling core facility)により集められた化学標準物質のライブラリーから、本発明者らは、合わせればこのリストのほぼ90%を占める標準物質の6つのプールを構築した。標準物質はLC/MSにより確認して、その物質が予測されるm/z比でロバストなピークを生じることを確かめた。水中1mMのそれぞれの代謝産物を含有する、それぞれのプールの保存溶液を-80℃で保存した。それぞれの実施日に、これらのストックは水に連続希釈し、さらに適切な抽出溶液に1:10で希釈し、その後生体試料の所与のバッチと並行して処理した。
【0236】
代謝産物同定および定量は、10ppm質量精度ウィンドウおよび0.5分保持時間ウィンドウを使用してXCalibur QuanBrowser 2.2(Thermo Fisher Scientific)を用いて実施した。代謝産物の同一性を確かめるためおよび定量を可能にするため、代謝産物化学標準物質の前述のプールを使用した。典型的には、標準物質の最終濃度は10nM、100nM、1μM、10μM、および100μMであった。グルコースでは、化学標準物質溶液も125μMおよび250μMの濃度で作製した。ある特定の代謝産物では、化学標準物質は代謝産物同定のためだけに利用した。化学標準物質を欠く代謝産物では、ピーク同定は高信頼度ピーク割り当てに制限した(Smithら、2005年)。
【0237】
代謝産物抽出プロトコルは試料タイプにより異なっていたので、処理された試料中のフェニルアラニン-dの濃度は様々:化学標準物質プール(9ng/mL)、培地および血漿試料(9.75ng/mL)、ならびに細胞試料(100ng/mL)であった。したがって、所与のバッチのそれぞれの試料内のフェニルアラニン-dの生のピーク面積は先ずこれらの違いを説明するために正規化した。代謝産物を定量するため、本発明者らは先ずそれぞれの代謝産物の生のピーク面積をそれに対応する正規化されたフェニルアラニン-dピーク面積で除した。所与の化学標準物質の正規化された代謝産物ピーク面積から、次に本発明者らは、典型的にはr>0.95の二次ログ-ログ方程式に適合する対応する標準曲線を作成し、この標準曲線を使用してそれぞれの生物学的代謝産物抽出物における代謝産物の濃度を決定した。次に、特定のホールセルまたは培地/血漿抽出物中の代謝産物のモル総数を試料濃度および対応する試料体積から計算した。したがって、生体試料中の最終代謝産物濃度は、下の適切な方程式を使用して計算した:
【0238】
培地および血漿試料:標準曲線による濃度×40
【0239】
ホールセル試料:標準曲線による濃度×100/(細胞体積、μLで)
【0240】
標準曲線を使用して定量されなかった代謝産物では、正規化されたピーク面積を上の計算において使用した。
グルコース追跡
【0241】
細胞をペレット状にし、次に6ウェルプレートにおいて、5mMの[U-13C]-グルコースを含有する3mLの培養培地中200,000細胞/mLの密度で播種した。24時間のインキュベーション後、代謝産物抽出を上のホールセル試料について記載されたのと同様に実施した。
LC/MSのための5-FU処置
【0242】
NOMO1細胞をペレット状にし、次に6ウェルプレートにおいて、20μMの5-FUを含有する3mLの培養培地中200,000細胞/mLの密度で播種した。24時間のインキュベーション後、代謝産物抽出を上のホールセル試料について記載されたのと同様に実施した。
高度標的化メタボロミクス
【0243】
5-FU処置に続くホールセル試料におけるFdUMPおよびFUMPの高度標的化分析では、機器は上記の通りに運転したが、追加のtSIM(標的にされた選択イオンモニタリング)スキャンは負のイオン化モードであった。tSIM設定は以下の通りであった:分解能は70,000に設定し、AGC標的は10、および最大積算時間250ミリ秒であった。標的質量は325.0243(FdUMPに対応している)および341.0192(FUMPに対応している)であった。それぞれの標的質量周辺の単離ウィンドウは1.0m/zに設定した。
【0244】
UMPSアッセイ試料中のオロテート、PRPP、OMP、およびUMPでは、FdUMPおよびFUMPについて使用されるtSIMスキャンについて記載されたすべての設定は、最大積算時間が200ミリ秒であったこと以外は同一であり、標的質量は155.0088(オロテートに対応している)、323.0286(UMPに対応している)、367.0184(OMPに対応している)、および388.9445(PRPPに対応している)であった。
消費および分泌速度
【0245】
成長曲線構築で細胞密度を測定したそれぞれの時点で、小アリコートの培養物を慎重に取り出し、250gで4℃、5分間遠心分離し、上の培地試料および血漿試料について記載された通りに、得られた上清から代謝産物を抽出した。それぞれの成長曲線が完成すると、本発明者らは増殖の指数期の中間内に収まる時点を決定し、その時点で収集した馴化培地の代謝産物抽出をプロファイリングした。本発明者らは、並行して新鮮培地をプロファイリングし、所与の代謝産物についての特定の消費/分泌速度を単純化したモノーモデル、q=μ/YX/Sに従って入手し、この式はq=μ×V×(△M/△X)に展開し、そこではμは特定の成長速度であり、Vは培養体積であり、△M=代謝産物濃度tfinal-代謝産物濃度tinitial、および△X=細胞密度tfinal-細胞密度tinitialである。このようにして、本発明者らは、以下の代謝産物:グルコース、ラクテート、オロテート、およびオロチジンについてのqを計算した。
組換えUMPSの発現および免疫精製
【0246】
HEK-293T細胞のトランスフェクションでは、400万個の細胞を15cm培養皿に蒔いた。24時間後、ポリエチレンイミン法(Boussifら、1995年)を使用して、細胞に15μgのpLJC2-UMPS-3xFLAGまたはpLJC2-UMPS(Y37A、R155A)-3xFLAGをトランスフェクトした。48時間後、細胞を氷冷PBSで1回すすぎ、次に直ちに溶解緩衝液(1%のTritonX-100、40mMのTris-HCl pH7.5、100mMのNaCl、5mMのMgCl、1タブレットのEDTAを含まないプロテアーゼ阻害剤(Roche 11580800;25mL緩衝液あたり)、1タブレットのPhosStopホスファターゼ阻害剤(Roche 04906845001;10mL緩衝液あたり))で溶解した。細胞溶解物は21130gで、4℃、10分間の遠心分離により澄明にした。抗FLAG免疫沈澱では、FLAG-M2親和性ジェル(Sigma A2220)を溶解緩衝液で3回洗浄した。実験ごとに、次に、500μLの50/50スラリーの親和性ジェルを、5つの個々の15cm培養皿から収集した澄んだ溶解物のプールに添加し、4℃で3時間回転させながらインキュベートした。免疫沈澱に続いて、ビーズは溶解緩衝液で2回、500mMのNaClを含有する溶解緩衝液で3回洗浄した。次に、組換えタンパク質は、1mg/mLのFLAGペプチドを含有する溶解緩衝液に4℃で1時間溶出した。溶離液は100gで4℃、4分間遠心分離(BioRadマイクロバイオスピンカラム732-6204)により単離し、20ボリュームの保存緩衝液(40mMのTris-HCl pH7.5、100mMのNaCl、1.5mMのdTT)に対して緩衝液交換し(Amicon Untra 30K NMWL)、グリセロールと混合し(最終濃度15%v/v)、最後に液体窒素で瞬間凍結し-80℃で保存した。タンパク質試料はBradford試薬およびBSA標準を使用して定量し、12%のSDS-PAGEにより確認した。
UMPS活性アッセイ
【0247】
それぞれの精製UMPSバリアント(20~40nMの酵素)とオロテート(100μM)およびPRPP(300μM)との反応は、37℃で、全体積100μL中20mMのTris-HCl pH7.5、5mMのNaHPO、5mMのMgCl、2mMのdTT、100μMのEDTA((Hanら、1995年)から改作)および種々の濃度の推定阻害因子において実行した。20分間のインキュベーションに続いて、15μLアリコートの反応混合物を取り出して、代謝産物抽出のために85μLの氷冷80%メタノールに直ちに添加し、5分間ボルテックスし、21130gで、4℃、1分間遠心分離した。
【0248】
6-アザウリジン、6-アザ-UMP、9-メチル尿酸、アラントイン、アロプリノール、および尿酸の保存溶液を1MのNaOH中200mMで新たに作製し、適切に希釈すると、反応pHにほとんど影響はなかった。
【0249】
80%メタノール中で同様に調製されたUMP化学標準物質(最終濃度625nM、1.25μM、2.5μM、5μM、および10μM)のピーク面積を使用して、本発明者らは、一次方程式に適合する標準曲線を作成して、反応試料中のUMP濃度が最初のオロテート濃度の10%を超えないことを確実にした。OMPの化学標準物質は利用可能でなかった。
薬物処置アッセイ
【0250】
NOMO1細胞を、6ウェルプレートにおいて3mLの培養培地中16,667細胞/mLの密度で播種した。24時間のインキュベーション後、細胞は5-FU(100nM、1μM、10μM、100μM、または1mM)またはドキソルビシン(1.95nM、7.81nM、31.25nM、125nM、または500nM)で処置した。非処置の対照を含む、すべてのウェルは0.5%のDMSOを含有していた。薬物の添加に続いて、プレートを2分間穏やかに振盪させた。処置の4日後、それぞれのウェルからの200μLを白色の96ウェルプレート(Greiner)に移し、細胞生存率をCell Titer-Glo(Promega)を用いて評価した。発光はSpectraMax M5プレートリーダー(Molecular Devices)を用いて測定し、非処置の対照に対して正規化した。
【0251】
SW620細胞を2000細胞/ウェルの密度で播種し、24時間付着させておいた。5-FUおよびドキソルビシンをDMSOで調製し、HP D300複合ディスペンサーを使用して分注した。細胞生存率は処置後4日にCell Titer-Gloを用いて評価し、発光は上記の通りに測定した。
【0252】
用量応答値をGraphPad Prismにプロットし、One Site-Fit logIC50方程式を使用して適合させた。
マウス血漿の収集
【0253】
MIT施設内動物管理使用委員会は血液収集のための手順を承認した。マウスはホワイトヘッド研究所の特定病原体フリー動物施設において一定の固形飼料で維持し、血液収集前の18時間絶食させた。午前10時に、3.5ヶ月齢のC57Bl/6Jバックグラウンドのオス野生型マウス(n=4)の顔面静脈からヘパリン処理したチューブに100μLの血液を収集した。血漿を単離するため、収集した血液は850gで4℃、6分間遠心分離した。次に、血漿画分を新しいチューブに移し、上で培地試料について記載されたのと同様に代謝産物抽出を実施するために一定分量を取り出した。
統計分析
【0254】
p値はすべて、GraphPad Prism6において両側対応なしt-検定を使用して計算した。
参考文献
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
少なくとも9種のタンパク質構成性アミノ酸と、
1種または複数種のビタミンと、
1種または複数種の無機イオンと、
グルコースと、
4-ヒドロキシプロリン、アセチルグリシン、アルファ-アミノブチレート、ベタイン、カルニチン、シトルリン、オルニチン、タウリン、2-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシブチレート、アセテート、シトレート、ホルメート、ラクテート、マロネート、ピルベート、スクシネート、アセトン、クレアチン、クレアチニン、グルタチオン、グリセロール、尿素、ガラクトース、フルクトース、ヒポキサンチンおよび尿酸から選択される少なくとも10種の小有機化合物と
を含む、基礎培養培地。
(項目2)
前記少なくとも10種の小有機化合物が、
4-ヒドロキシプロリン、アセチルグリシン、アルファ-アミノブチレート、ベタイン、カルニチン、シトルリン、オルニチン、タウリンから選択される少なくとも4種のアミノ酸またはアミノ酸誘導体と、
2-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシブチレート、アセテート、シトレート、ホルメート、ラクテート、マロネート、ピルベートおよびスクシネートから選択される少なくとも6種の小有機化合物と
を含む、項目1に記載の基礎培養培地。
(項目3)
前記少なくとも10種の小有機化合物が、4-ヒドロキシプロリン、アセチルグリシン、アルファ-アミノブチレート、ベタイン、カルニチン、シトルリン、オルニチンおよびタウリンから選択される少なくとも6種のアミノ酸またはアミノ酸誘導体を含む、項目1または項目2に記載の基礎培養培地。
(項目4)
前記少なくとも10種の小有機化合物が、4-ヒドロキシプロリン、アセチルグリシン、アルファ-アミノブチレート、ベタイン、カルニチン、シトルリン、オルニチンおよびタウリンを含む、前記項目のいずれかに記載の基礎培養培地。
(項目5)
前記少なくとも10種の小有機化合物が、2-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシブチレート、アセテート、シトレート、ホルメート、ラクテート、マロネート、ピルベートおよびスクシネートから選択される少なくとも8種の小有機化合物を含む、前記項目のいずれかに記載の基礎培養培地。
(項目6)
前記少なくとも10種の小有機化合物が、アセトン、クレアチン、クレアチニン、グルタチオン、グリセロールおよび尿素から選択される少なくとも3種の小有機化合物を含む、前記項目のいずれかに記載の基礎培養培地。
(項目7)
前記少なくとも10種の小有機化合物が、アセトン、クレアチン、クレアチニン、グルタチオン、グリセロールおよび尿素を含む、前記項目のいずれかに記載の基礎培養培地。
(項目8)
前記少なくとも10種の小有機化合物が、ヒポキサンチン、尿酸または両方を含む、前記項目のいずれかに記載の基礎培養培地。
(項目9)
前記少なくとも10種の小有機化合物が、ガラクトース、フルクトースまたは両方を含む、前記項目のいずれかに記載の基礎培養培地。
(項目10)
前記少なくとも10種の小有機化合物が、2-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシブチレート、4-ヒドロキシプロリン、アセテート、アセトン、アセチルグリシン、アルファ-アミノブチレート、ベタイン、カルニチン、シトレート、シトルリン、クレアチン、クレアチニン、ホルメート、フルクトース、ガラクトース、グルタチオン、グリセロール、ヒポキサンチン、ラクテート、マロネート、オルニチン、ピルベート、スクシネート、タウリン、尿素および尿酸を含む、前記項目のいずれかに記載の基礎培養培地。
(項目11)
前記少なくとも9種のタンパク質構成性アミノ酸が、グリシン、L-アラニン、L-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパルテート、L-システイン、L-グルタメート、L-グルタミン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リシン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-トレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、L-バリンおよびL-シスチンを含む、前記項目のいずれかに記載の基礎培養培地。
(項目12)
前記1種または複数種のビタミンが、以下のビタミン:D-ビオチン、コリン、葉酸、ミオ-イノシトール、ナイアシンアミド、p-アミノ安息香酸、D-パントテン酸、ビタミンB6、リボフラビン、チアミンおよびビタミンB12のうち少なくとも8種を含む、前記項目のいずれかに記載の基礎培養培地。
(項目13)
前記1種または複数種の無機イオンが、以下のイオン:Na 、K 、Ca 2+ 、Mg 2+ 、NH 、Cl 、HCO 、PO 3- 、SO 2- およびNO のうち少なくとも8種を含む、前記項目のいずれかに記載の基礎培養培地。
(項目14)
前記培地中に存在する前記イオンの各々の濃度が、表1においてそのイオンについて列挙される濃度の±50%以内である、項目13に記載の基礎培養培地。
(項目15)
前記培地中に存在する前記イオンの各々の濃度が、表1においてそのイオンについて列挙される濃度の±25%以内である、項目13に記載の基礎培養培地。
(項目16)
前記培地中に存在する前記イオンの各々の濃度が、表1においてそのイオンについて列挙される濃度の±10%以内である、項目13に記載の基礎培養培地。
(項目17)
前記培地中に存在する前記イオンの各々の濃度が、表1においてそのイオンについて列挙される濃度である、項目13に記載の基礎培養培地。
(項目18)
前記1種または複数種の無機イオンが、Na 、K 、Ca 2+ 、Mg 2+ 、NH 、Cl 、HCO 、PO 3- 、SO 2- およびNO を含む、前記項目のいずれかに記載の基礎培養培地。
(項目19)
前記1種または複数種の無機イオンが、無機塩として存在し、該無機塩のうち少なくとも6種が、CaCl 、KCl、MgCl 、MgSO 、NaCl、NaHCO 、Na HPO 、Ca(NO ・4H OおよびNH Clから選択される、前記項目のいずれかに記載の基礎培養培地。
(項目20)
表2中に列挙される前記基礎培養培地中に存在する前記構成成分の各々の濃度が、表2においてその構成成分について列挙される濃度の±50%以内である、前記項目のいずれかに記載の基礎培養培地。
(項目21)
表2中に列挙される前記基礎培養培地中に存在する前記構成成分の各々の濃度が、表2においてその構成成分について列挙される濃度の±25%以内である、前記項目のいずれかに記載の培養培地。
(項目22)
表2中に列挙される前記基礎培養培地中に存在する前記構成成分の各々の濃度が、表2においてその構成成分について列挙される濃度の±10%以内である、前記項目のいずれかに記載の基礎培養培地。
(項目23)
表2中に列挙される前記基礎培養培地中に存在する前記構成成分の各々の濃度が、表2においてその構成成分について列挙される濃度で存在する、前記項目のいずれかに記載の基礎培養培地。
(項目24)
表2中に列挙される前記構成成分の各々が、前記培地中に存在する、前記項目のいずれかに記載の基礎培養培地。
(項目25)
1種または複数種の抗生物質、pH指示薬または両方をさらに含む、前記項目のいずれかに記載の基礎培養培地。
(項目26)
前記項目のいずれかに記載の基礎培養培地を含む培養培地であって、血清または血清代用品をさらに含む培養培地。
(項目27)
1%~20%の血清を含む、項目26に記載の培養培地。
(項目28)
1%~5%の血清または5%~10%の血清または10%~20%の血清を含む、項目27に記載の培養培地。
(項目29)
およそ10%の血清を含む、項目27に記載の培養培地。
(項目30)
前記血清が、ウシ胎仔血清である、項目26から29のいずれかに記載の培養培地。
(項目31)
前記血清が、透析された血清である、項目26から30のいずれかに記載の培養培地。
(項目32)
前記血清が、熱不活化血清である、項目26から31のいずれかに記載の培養培地。
(項目33)
項目1から25に記載の基礎培養培地または項目26から32に記載の培養培地の構成成分をまとめて含有する1つまたは複数の容器を含むキット。
(項目34)
前記培養培地の複数の相互に適合性である構成成分を各々が含有する少なくとも2つの容器を含む、項目33に記載のキット。
(項目35)
前記培養培地を調製するための指示、該培養培地において細胞を培養するための指示または両方をさらに含む、項目33または項目34に記載のキット。
(項目36)
項目1から25に記載の基礎培養培地または項目26から32に記載の培養培地を調製する方法であって、そのそれぞれの構成成分を組み合わせることを含む、方法。
(項目37)
項目1から25に記載の基礎培養培地または項目26から32に記載の培養培地および1種もしくは複数種の哺乳動物細胞を含む組成物。
(項目38)
前記哺乳動物細胞が、ヒト細胞を含む、項目37に記載の組成物。
(項目39)
前記細胞が、血液細胞を含む、項目37または項目38に記載の組成物。
(項目40)
前記細胞が、がん細胞を含む、項目37から39のいずれかに記載の組成物。
(項目41)
試験薬剤をさらに含む、項目1から25に記載の基礎培養培地、項目26から32に記載の培養培地、または項目37から40に記載の組成物。
(項目42)
前記試験薬剤が、小分子である、項目41に記載の基礎培養培地、培養培地または組成物。
(項目43)
前記試験薬剤が、化学療法剤である、項目41または項目42に記載の基礎培養培地、培養培地または組成物。
(項目44)
1種または複数種の哺乳動物細胞を培養する方法であって、項目1から25に記載の基礎培養培地、項目26から32に記載の培養培地、または項目37から40に記載の組成物を提供することと、該培養培地において1種または複数種の哺乳動物細胞を培養することとを含む、方法。
(項目45)
前記1種または複数種の哺乳動物細胞が、ヒト細胞を含む、項目44に記載の方法。
(項目46)
前記1種または複数種の哺乳動物細胞が、血液細胞を含む、項目44または項目45に記載の方法。
(項目47)
前記1種または複数種の哺乳動物細胞が、がん細胞を含む、項目44から46のいずれかに記載の方法。
(項目48)
前記培養培地に試験薬剤を添加することをさらに含む、項目44から47のいずれかに記載の方法。
(項目49)
哺乳動物細胞集団または細胞系を特徴付ける方法であって、(a)項目1から25に記載の基礎培養培地または項目26から32に記載の培養培地中で哺乳動物細胞集団または細胞系の1種または複数種の細胞を培養することと、(b)該培養培地で培養された該細胞の表現型を検出すること、または該培養培地で培養された細胞を用いて実施したアッセイの結果を得ることとを含む、方法。
(項目50)
(c)第2の培養培地において同一集団または細胞系に由来する1種または複数種の細胞を培養することと、(d)該第2の培養培地において培養された該細胞の表現型を検出すること、または該第2の培養培地において培養された該細胞を用いて実施したアッセイの結果を得ることと、(e)ステップ(b)において検出された前記表現型を、第2の培養培地で培養されている同一集団もしくは細胞系に由来する1種もしくは複数種の細胞の該表現型と比較すること、または該アッセイの結果を、第2の培養培地において培養されている同一集団もしくは細胞系に由来する1種もしくは複数種の細胞を用いて実施した同一アッセイの結果と比較することとをさらに含む、項目49に記載の方法。
(項目51)
前記第1の培養培地で培養された細胞から得た前記表現型またはアッセイの結果と、前記第2の培養培地において培養された細胞から得た前記表現型またはアッセイの結果との間の差を検出することを含む、項目49または項目50に記載の方法。
(項目52)
前記細胞を、前記培養培地において該細胞が培養される期間の一部またはすべての間、試験薬剤と接触させることを含む、項目49から51のいずれかに記載の方法。
(項目53)
前記試験薬剤の存在下で前記培養培地において培養された細胞の前記表現型を、前記試験薬剤の存在下で前記第2の培養培地において培養されている同一集団もしくは細胞系に由来する細胞の前記表現型と比較すること、または前記試験薬剤の存在下で前記培養培地において培養された細胞を用いて実施した前記アッセイの結果を、前記試験薬剤の存在下で前記第2の培養培地において培養されている同一集団もしくは細胞系に由来する細胞を用いて実施した同一アッセイの結果と比較することを含む、項目52に記載の方法。
(項目54)
前記第2の培養培地が、標準培養培地である、項目50から53のいずれかに記載の方法。
(項目55)
前記アッセイが、生存率アッセイ、増殖アッセイ、アポトーシスアッセイ、オートファジーアッセイ、レポーターアッセイまたは細胞毒性アッセイである、項目49から54のいずれかに記載の方法。
(項目56)
試験薬剤を特徴付ける方法であって、(a)前記試験薬剤の存在下で、項目1から25に記載の基礎培養培地または項目26から32に記載の培養培地において1種もしくは複数種の哺乳動物細胞を培養することと、(b)該細胞を用いて実施したアッセイの結果を得ることとを含む、方法。
(項目57)
(c)前記試験薬剤の存在下で第2の培養培地において同一集団または細胞系に由来する1種または複数種の細胞を培養することと、(d)該第2の培養培地において培養した該細胞を用いて実施したアッセイの結果を得ることとをさらに含む、項目56に記載の方法。
(項目58)
前記アッセイの結果を、前記試験薬剤の存在下で第2の培養培地において培養されている同一集団または細胞系に由来する1種または複数種の細胞を用いて実施した同一アッセイの結果と比較することをさらに含む、項目56または項目57に記載の方法。
(項目59)
前記細胞を、前記試験薬剤と少なくとも24時間接触させることを含む、項目56から58のいずれかに記載の方法。
(項目60)
前記第2の培養培地が、標準培養培地である、項目56から59のいずれかに記載の方法。
(項目61)
前記試験薬剤の存在下で前記第1の培養培地において培養された細胞から得た前記アッセイの結果と、前記試験薬剤の存在下で前記2の培養培地において培養された細胞から得た前記アッセイの結果との間の差を検出することを含む、項目56から60のいずれかに記載の方法。
(項目62)
前記1種または複数種の細胞が、ヒト細胞を含む、項目49から61のいずれかに記載の方法。
(項目63)
前記1種または複数種の細胞が、血液細胞を含む、項目49から62のいずれかに記載の方法。
(項目64)
前記1種または複数種の細胞が、がん細胞を含む、項目49から63のいずれかに記載の方法。
(項目65)
前記アッセイが、生存率アッセイ、増殖アッセイ、アポトーシスアッセイ、
オートファジーアッセイ、レポーターアッセイまたは細胞毒性アッセイである、項目56から64のいずれかに記載の方法。
(項目66)
前記試験薬剤が、小分子である、項目56から65のいずれかに記載の方法。
(項目67)
前記試験薬剤が、化学療法剤である、項目56から66のいずれかに記載の方法。
(項目68)
がんを処置することを必要とする被験体においてがんを処置する方法であって、該被験体に、(a)5-フルオロウラシル(5-FU)または5-FUプロドラッグの一方または両方、および(b)尿酸低下剤を投与し、その結果、該被験体が5-FUおよび尿酸低下剤の両方に曝露されることを含む、方法。
(項目69)
前記尿酸低下剤がウリカーゼである、項目68に記載の方法。
(項目70)
前記尿酸低下剤が、尿酸排泄剤であり、必要に応じて、該尿酸排泄剤が、プロベネシド、ベンズブロマロンまたはスルフィンピラゾンである、項目69に記載の方法。
(項目71)
前記尿酸低下剤が、アンプロジピン、アトルバスタチン、フェノフィブラート、グアイフェネシンまたはレシヌラドである、項目70に記載の方法。
(項目72)
前記5-FUプロドラッグが、テガフールまたはカペシタビンである、項目68から71のいずれかに記載の方法。
(項目73)
5-FUまたは5-FUプロドラッグを、尿酸低下剤が投与されている被験体に投与することを含む、項目68から72のいずれかに記載の方法。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図7-4】
図8
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図12
図13
【配列表】
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