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特許7406998回転機械の支持装置、支持方法および回転機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】回転機械の支持装置、支持方法および回転機械
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/28 20060101AFI20231221BHJP
   F02C 7/20 20060101ALI20231221BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20231221BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20231221BHJP
   F01D 25/24 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
F01D25/28 C
F02C7/20 Z
F01D25/00 X
F02C7/00 D
F01D25/24 J
F01D25/24 R
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020008600
(22)【出願日】2020-01-22
(65)【公開番号】P2021116700
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼沢 伸
(72)【発明者】
【氏名】近藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】音羽 貴史
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-270646(JP,A)
【文献】国際公開第2016/072473(WO,A1)
【文献】特開昭58-035208(JP,A)
【文献】特開平03-074504(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第00777598(GB,A)
【文献】特開2005-002995(JP,A)
【文献】特開2011-043103(JP,A)
【文献】特開2010-180778(JP,A)
【文献】国際公開第2013/121603(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 13/00-15/12
F01D 23/00-25/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心が水平に沿って配置されて軸受により回転可能に支持された回転体と、前記回転体を覆い外側のフランジ部が固定の基礎の上に据え付けられる車室と、を有する回転機械であって、前記車室が高中圧車室と低圧車室とを連結部で連結してなり、前記回転体が前記高中圧車室と前記低圧車室との外側において前記軸受により回転可能に支持されている、回転機械に設けられ、
前記基礎と前記低圧車室の前記フランジ部との間に介在されて前記フランジ部の上下方向の位置を変える可変機構を有し、
前記可変機構は、前記高中圧車室および前記低圧車室に連続して配置される前記回転体の軸方向の中央部であって前記低圧車室が前記高中圧車室と連結される連結部側に設けられる、回転機械の支持装置。
【請求項2】
前記可変機構は、
前記基礎側の第一部材と、
前記フランジ部側の第二部材と、
前記第一部材と前記第二部材との上下方向の距離を相対的に変える可変部と、
を有する、請求項1に記載の回転機械の支持装置。
【請求項3】
前記基礎の上に水平に配置された台板が固定され、当該台板の上に前記フランジ部が添え付けられており、
前記可変機構は、前記基礎と前記台板との間に設けられている、請求項1または2に記載の回転機械の支持装置。
【請求項4】
前記低圧車室における前記回転体の軸方向の端部にて、前記低圧車室の前記フランジ部を前記基礎側に固定する固定部をさらに備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の回転機械の支持装置。
【請求項5】
軸心が水平に沿って配置されて軸受により回転可能に支持された回転体と、前記回転体を覆い外側のフランジ部が固定の基礎の上に据え付けられる車室と、を有する回転機械であって、前記車室が高中圧車室と低圧車室とを連結部で連結してなり、前記回転体が前記高中圧車室と前記低圧車室との外側において前記軸受により回転可能に支持されている、回転機械に設けられ、前記基礎と前記低圧車室の前記フランジ部との間に介在されて前記フランジ部の上下方向の位置を変える可変機構を有し、前記可変機構は、前記高中圧車室および前記低圧車室に連続して配置される前記回転体の軸方向の中央部であって前記低圧車室が前記高中圧車室と連結される連結部側に設けられる支持装置を用いた回転機械の支持方法であって、
前記回転機械の起動時に前記高中圧車室および前記低圧車室が真空引きされて前記低圧車室に掛かる荷重で前記フランジ部の位置が下がった場合、前記可変機構により前記フランジ部の位置を上げる、回転機械の支持方法。
【請求項6】
前記回転機械は、前記基礎の上に水平に配置された台板が固定され、当該台板の上に前記フランジ部が添え付けられており、
前記可変機構により前記フランジ部の位置を上げた後の隙間にスペーサを設ける、請求項5に記載の回転機械の支持方法。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載の支持装置を備える、回転機械。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械の支持装置、支持方法および回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、タービンを予め工場で組立て、静止部であるケーシング(車室)と回転体であるロータとの間隙確認や調整がほぼ済んだ、完全な組立状態にして出荷する一体輸送組を行う、タービン組立輸送架台について記載されている。このタービン組立輸送架台は、ケーシングを支持するケーシング支持部と、ロータを支持するロータ支持部とを一体構成として備え、ケーシング支持部にその高さ調整を行うためのケーシング高さ調整機構を設けるとともに、前記ロータ支持部にその支持位置を調整するためのロータ位置調整機構を設け、タービンの水平度を保持した状態での組立ておよびその組立て後の固定状態での輸送を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4363799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転機械として、例えば蒸気タービンでは、性能を向上させるため、シール部での蒸気のリークを減らすように定格時のクリアランスを低減することが重要である。一方、起動時や停止中に、静止部と回転体が最も接近する状態であるピンチポイントを迎える場合には、ピンチポイントでの接触を回避できるように初期クリアランスを確保する必要がある。
【0005】
蒸気タービンの静止部である車室は、フート部(フランジ部)を有し、このフート部がメタル板である台板の上に据え付けられている。台板は、鉄筋コンクリートの基礎の上に固定されている。従って、車室は、基礎および台板に鉛直方向を支持されている。台板は、基礎の上にグラウトを介して水平を維持されてアンカーボルトで固定されている。フート部は、台板の上に調整ボルトで水平を調整されて据え付けられている。
【0006】
そして、例えばダウンフローの低圧蒸気タービンの車室は、起動時の真空引き後に内圧が低下して外圧の影響を受ける内外差圧により真空荷重が下向きに作用する。通常の設計想定では、フート部で支持されており、真空荷重に耐え得るように構成されている。しかし、基礎のコンクリートやグラウトの収縮により基礎と台板の間に隙間があった場合、真空荷重によってその隙間に応じて台板および車室のフート部が変形し、車室全体が沈み込むおそれがある。この沈み込み量は、ピンチポイントに悪影響を及ぼすレベルであり、この事象により、回転体と静止部の接触を生じると、性能が低下する可能性がある。
【0007】
本開示は上述した課題を解決するものであり、車室の上下動を抑えることのできる回転機械の支持装置、支持方法および回転機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本開示の一態様に係る回転機械の支持装置は、軸心が水平に沿って配置されて軸受により回転可能に支持された回転体と、前記回転体を覆い外側のフランジ部が固定の基礎の上に据え付けられる車室と、を有する回転機械に設けられ、前記基礎と前記フランジ部との間に介在されて前記フランジ部の上下方向の位置を変える可変機構を有する。
【0009】
また、本開示の一態様に係る回転機械の支持装置では、前記可変機構は、前記基礎側の第一部材と、前記フランジ部側の第二部材と、前記第一部材と前記第二部材との上下方向の距離を相対的に変える可変部と、を有することがよい。
【0010】
また、本開示の一態様に係る回転機械の支持装置では、前記基礎の上に水平に配置された台板が固定され、当該台板の上に前記フランジ部が添え付けられており、前記可変機構は、前記基礎と前記台板との間に設けられていることがよい。
【0011】
また、本開示の一態様に係る回転機械の支持装置では、前記可変機構は、前記車室における前記回転体の軸方向の中央部に設けられることがよい。
【0012】
また、本開示の一態様に係る回転機械の支持装置では、前記車室における前記回転体の軸方向の端部にて、前記車室の前記フランジ部を前記基礎側に固定する固定部をさらに備えることがよい。
【0013】
上述の目的を達成するために、本開示の一態様に係る回転機械の支持方法は、軸心が水平に沿って配置されて軸受により回転可能に支持された回転体と、前記回転体を覆い外側のフランジ部が固定の基礎の上に据え付けられる車室と、を有する回転機械に設けられ、前記基礎と前記フランジ部との間に介在されて前記フランジ部の上下方向の位置を変える可変機構を有する支持装置を用いた回転機械の支持方法であって、前記回転機械の運転時に前記車室に掛かる荷重で前記フランジ部の位置が下がった場合、前記可変機構により前記フランジ部の位置を上げる。
【0014】
また、本開示の一態様に係る回転機械の支持方法では、前記回転機械は、前記基礎の上に水平に配置された台板が固定され、当該台板の上に前記フランジ部が添え付けられており、前記可変機構により前記フランジ部の位置を上げた後の隙間にスペーサを設けることがよい。
【0015】
上述の目的を達成するために、本開示の一態様に係る回転機械は、上述したいずれか1つに記載の支持装置を備えている。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、運転時の真空荷重により車室が沈み込む事象が生じた場合、可変機構によりフランジ部の上下方向の位置を変えることで、車室の沈み込みを直す。このため、その後の運転時に車室の沈み込むことを防止し、車室の上下動を抑えることができる。この結果、支持装置を備える回転機械では、初期クリアランスを小さく設定できるようになり、運転時(定格時)のクリアランスを低減でき、性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、回転機械の一例を示す概略側面図である。
図2図2は、回転機械の一例を示す概略平面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る支持装置を示す図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る支持装置の動作を示す図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る支持装置の動作を示す図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る支持装置の他の例を示す図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る支持装置の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0019】
図1は、回転機械の一例を示す概略側面図である。図2は、回転機械の一例を示す概略平面図である。
【0020】
本実施形態における回転機械は、蒸気タービン10を一例としている。図1図2に示す蒸気タービン10は、高中圧車室11および低圧車室12を有する。高中圧車室11と低圧車室12との連結部16(図2参照)は、図示しない伸縮継手を介して密封して連結されている。連結された高中圧車室11および低圧車室12には、翼列13が設けられたロータ17が収納されている。ロータ17の回転中心である軸心Cは、高中圧車室11と低圧車室12とが連結する水平方向に沿って延びて配置されている。この軸心Cの延びる方向を軸方向という。ロータ17は、軸方向の各端部が、高中圧車室11と低圧車室12との外側において軸受18により回転可能に支持されている。なお、翼列13およびロータ17を含み回転体という。
【0021】
高中圧車室11と、低圧車室12と、ロータ17を支持する軸受18とは、基礎19によって支持されている。基礎19は、鉄筋コンクリートで堅牢に構成され、例えば、発電所の建屋に固定されている。基礎19は、図2に示すように、高中圧車室11および低圧車室12の下側の一部が収納される凹部19Aが形成されている。低圧車室12は、凹部19Aに一部が収納され、外側に突出したフランジ部12Cを介して基礎19の上に据え付けられている。
【0022】
高中圧車室11は、高中圧上半車室11Aと高中圧下半車室11Bとの半割構造になっており、高中圧上半車室11Aと高中圧下半車室11Bとがボルトにより互いに締結されている。高中圧車室11は、高中圧下半車室11Bの外側に突出したフランジ部(図示せず)を介して基礎19の上に据え付けられている。
【0023】
低圧車室12は、低圧上半車室12Aと低圧下半車室12Bとの半割構造になっており、低圧上半車室12Aと低圧下半車室12Bとがボルトにより互いに締結されている。低圧車室12は、低圧下半車室12Bの外側に突出したフランジ部12Cを介して基礎19の上に据え付けられている。また、低圧下半車室12Bは、その下部が復水器(図示せず)に接続されている。
【0024】
このような蒸気タービン10において、起動時に高中圧車室11および低圧車室12が真空引きされる。低圧車室12は、下部が復水器に接続されており、真空引きにより内圧が低下して内外差圧により外圧の影響を受けて図1に示すように真空荷重Gが下向きに作用する。
【0025】
低圧車室12は、真空荷重Gに耐え得るように構成されている。低圧車室12は、図2に示すように、軸心Cを間においた両側にフランジ部12Cが形成されている。一方、低圧車室12のフランジ部12Cが据え付けられる基礎19は、図2に示すように、その上面19Bにメタル板からなる台板20が固定されている。台板20は、フランジ部12Cの形状に沿ってフランジ部12Cの下側の位置にて、基礎19の上面19Bに固定されている。
【0026】
しかし、基礎19のコンクリートや、基礎19と台板20との間のグラウトの収縮により基礎19と台板20との間に隙間が生じた場合、真空荷重Gによってその隙間に応じて台板20およびフランジ部12Cが変形し、図1に矢印Aで示すように低圧車室12の一部が沈み込む事象が生じるおそれがある。この低圧車室12の沈み込みは、低圧車室12が高中圧車室11と連結される連結部16側で作用しやすい。このように低圧車室12が沈み込むと、連結部16側とは軸方向の反対側では、図1に矢印Bで示すように低圧車室12の一部が浮き上がる事象が生じるおそれがある。
【0027】
そこで、本実施形態では、このような回転機械である蒸気タービン10の事象を抑制し、低圧車室12の上下動を抑えることのできる支持装置を提供する。
【0028】
図3は、本実施形態に係る支持装置を示す図である。図4および図5は、本実施形態に係る支持装置の動作を示す図である。
【0029】
図3に示すように、支持装置1は、基礎19とフランジ部12Cとの間に介在されてフランジ部12Cの上下方向の位置を変える可変機構2を有する。
【0030】
可変機構2は、第一部材2Aと、第二部材2Bと、可変部2Cと、を有する。
【0031】
第一部材2Aは、板状に形成されて基礎19側に配置される。第一部材2Aは、基礎19において、台板20の下側に形成された凹所19Cの底部19Caに配置される。
【0032】
第二部材2Bは、フランジ部12C側に配置される。第二部材2Bは、押圧面2Baと、傾斜面2Bbと、を有する。押圧面2Baは、上方に向き水平な平坦面であってフランジ部12Cに沿って配置される。傾斜面2Bbは、押圧面2Baの下側で、水平に対して傾斜して平坦に設けられている。
【0033】
可変部2Cは、第一部材2Aと第二部材2Bとの上下方向の距離を相対的に変える。可変部2Cは、移動子2Caと、移動操作部2Cbと、を有する。移動子2Caは、第一部材2Aと第二部材2Bとの間に設けられている。移動子2Caは、第一部材2Aにおける上面である平坦な支持面2Acに対向して接触し得る平坦な底面2Caaと、第二部材2Bにおける傾斜面2Bbに対向して接触し得るように水平に対して傾斜する平坦な傾斜面2Cabと、を有している。従って、移動子2Caは、傾斜面2Cabが第二部材2Aの傾斜面2Bbに接触し、底面2Caaが第一部材2Aの支持面2Acに接触している状態で、第二部材2Aを支持する。また、移動子2Caは、傾斜面2Cabおよび傾斜面2Bbbが傾斜する方向に沿って相対的にスライド移動することで、第二部材2Aを上下方向に移動させる。このように、移動子2Caは、基礎19の凹所19Cに固定の第一部材2Aと、上下方向に移動可能な第二部材2Bとの間で、スライド移動により第二部材2Bを移動させる楔形状に形成されている。移動操作部2Cbは、移動子2Caをスライド移動させるためのもので、例えばボルトやアクチュエータが用いられる。
【0034】
このように構成された可変機構2は、図3に示すように、蒸気タービン10を組み立てて運転をしていない状態において、低圧車室12の荷重(自重)を受けないようにフランジ部12Cの下側に配置される。具体的には、可変機構2は、第一部材2Aが台板20の下側に形成された凹所19Cの底部19Caに配置され、第二部材2Bが台板20の下側に第二部材2Bの押圧面2Baが配置されている。
【0035】
そして、図4に示すように、例えば、基礎19のコンクリートや、基礎19と台板20との間のグラウト21の収縮により基礎19と台板20との間に隙間が生じた場合、真空荷重Gによってその隙間に応じて低圧車室12の一部が沈み込む事象が生じる。図4では、グラウト21が収縮した状態を示している。
【0036】
この事象が生じた場合、蒸気タービン10の運転を停止した状態で、図5に示すように、可変機構2の可変部2Cを操作して第一部材2Aと第二部材2Bとの上下方向の距離を相対的に変え、第二部材2Bの押圧面2Baで台板20を上方に持ち上げることで、台板20を図5に示すような水平な位置に戻すことができる。
【0037】
また、フランジ部12Cを組み立て時の位置に戻すと、フランジ部12Cが台板20から離れる。このため、図5に示すように、台板20が基礎19から離れた隙間にシムなどのスペーサ4を設ける。なお、スペーサ4を設けた場合、可変機構2により台板20を支持した状態を維持してもよく、可変機構2による台板20の支持を解いてもよい。図5に示すスペーサ4は設けなくてもよいが、この場合は可変機構2で台板20を支持した状態を維持する。
【0038】
図6は、本実施形態に係る支持装置の他の例を示す図である。図6に示すように、可変機構2は、基礎19とフランジ部12Cとの間に設けられてフランジ部12Cを上方に持ち上げるように構成されていてもよい。この場合、スペーサ4は、フランジ部12Cが台板20から離れた隙間に設けられる。このようにスペーサ4を設けた場合、可変機構2によりフランジ部12Cを支持した状態を維持してもよく、可変機構2によるフランジ部12Cの支持を解いてもよい。スペーサ4は設けなくてもよいが、この場合は可変機構2でフランジ部12Cを支持した状態を維持する。
【0039】
このように、本実施形態の支持装置1は、軸心Cが水平に沿って配置されて軸受18により回転可能に支持されたロータ(回転体)17と、ロータ17を覆い外側のフランジ部12Cが固定の基礎19の上に据え付けられる低圧車室(車室)12と、を有する蒸気タービン(回転機械)10に設けられ、基礎19とフランジ部12Cとの間に介在されてフランジ部12Cの上下方向の位置を変える可変機構2を有する。
【0040】
従って、運転時の真空荷重Gにより低圧車室12が沈み込む事象が生じた場合、可変機構2によりフランジ部12Cの上下方向の位置を変えることで、低圧車室12の沈み込みを直す。このため、その後の運転時に低圧車室12が沈み込むことを防止し、低圧車室12の上下動を抑えることができる。この結果、支持装置1を備える蒸気タービン10では、初期クリアランスを小さく設定できるようになり、運転時(定格時)のクリアランスを低減でき、性能を向上できる。なお、可変機構2によるフランジ部12Cの上下方向の位置の可変は、低圧車室12の低圧上半車室12Aと低圧下半車室12Bとを締結し、かつロータ17を覆った状態で行うことができる。可変機構2を用いない場合は、低圧上半車室12Aと低圧下半車室12Bとの締結を外し、ロータ17を取り除いた状態として、低圧下半車室12Bをクレーンなどで持ち上げて沈み込みを補修しなければならない。従って、可変機構2によりフランジ部12Cの上下方向の位置を変えることで、補修作業の効率化を図ることができる。
【0041】
また、本実施形態の支持装置1では、可変機構2は、基礎19側の第一部材2Aと、フランジ部12C側の第二部材2Bと、第一部材2Aと第二部材2Bとの上下方向の距離を相対的に変える可変部2Cと、を有する。
【0042】
従って、この可変機構2により、フランジ部12Cの上下方向の位置を変えることを実施できる。
【0043】
また、本実施形態の支持装置1では、基礎19の上に水平に配置された台板20が固定され、当該台板20の上にフランジ部12Cが添え付けられており、可変機構2は、基礎19と台板20との間に設けられている。
【0044】
従って、可変機構2により、台板20を介してフランジ部12Cの上下方向の位置を変えることができる。
【0045】
また、本実施形態の支持装置1では、可変機構2は、低圧車室12におけるロータ17の軸方向の中央部に設けられる。具体的には、可変機構2は、図3に示すように、フランジ部12Cにおいて、低圧車室12が高中圧車室11と連結される連結部16側に配置される。
【0046】
従って、上述したように、低圧車室12の沈み込みは、低圧車室12が高中圧車室11と連結される軸方向の中央部である連結部16側で作用しやすいため、この中央部に可変機構2を設けることで、低圧車室12の沈み込むことを防止できる。
【0047】
また、本実施形態の支持方法は、蒸気タービン10の運転時に低圧車室12に掛かる荷重でフランジ部12Cの位置が下がった場合、可変機構2によりフランジ部12Cの位置を上げて低圧車室12に掛かる荷重の一部を受ける。
【0048】
従って、運転時に低圧車室12の沈み込むことを防止し、低圧車室12の上下動を抑えることができる。
【0049】
また、本実施形態の支持方法は、可変機構2によりフランジ部12Cの位置を上げた後の隙間にスペーサ4を設ける。
【0050】
従って、台板20に対するフランジ部12Cの据え付け状態を確保できる。
【0051】
図7は、本実施形態に係る支持装置の他の例を示す図である。
【0052】
図7に示すように、支持装置1は、上述した可変機構2に加え、低圧車室12におけるロータ17の軸方向の端部にて、低圧車室12のフランジ部12Cを基礎19側に固定する固定部3をさらに備える。
【0053】
固定部3は、固定ボルトとして構成され、フランジ部12Cを貫通し台板20にねじ込まれる。台板20は、上述したようにアンカーボルト22により基礎19に固定されているからフランジ部12Cは、固定部3により台板20を介して基礎19に固定される。
【0054】
また、固定部3の位置は、フランジ部12Cにおいて、低圧車室12が高中圧車室11と連結される連結部16側とは軸方向の反対側で軸心Cに交差して延びる第三部分12Ccに設けられる。
【0055】
上述したように、連結部16側とは軸方向の反対側では、上述したように低圧車室12の一部が浮き上がる事象が生じるおそれがある。従って、低圧車室12の浮き上がる部分を固定部3で固定することで、低圧車室12の浮き上がる事象が生じることも防止できる。
【符号の説明】
【0056】
1 支持装置
2 可変機構
2A 第一部材
2Aa 支持面
2B 第二部材
2Ba 押圧面
2Bb 傾斜面
2C 可変部
2Ca 移動子
2Caa 底面
2Cab 傾斜面
2Cb 移動操作部
3 固定部
4 スペーサ
10 蒸気タービン(回転機械)
11 高中圧車室
11A 高中圧上半車室
11B 高中圧下半車室
12 低圧車室
12A 低圧上半車室
12B 低圧下半車室
12C フランジ部
13 翼列
16 連結部
17 ロータ
18 軸受
19 基礎
19A 凹部
19B 上面
19C 凹所
19Ca 底部
20 台板
21 グラウト
C 軸心
G 真空荷重
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7