(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】検体抽出容器および検体検査キット
(51)【国際特許分類】
G01N 1/10 20060101AFI20231221BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G01N1/10 N
G01N1/10 V
G01N33/48 E
(21)【出願番号】P 2020010165
(22)【出願日】2020-01-24
【審査請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2019011626
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】加藤 博之
(72)【発明者】
【氏名】大河原 貴光
【審査官】目黒 大地
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0353919(US,A1)
【文献】特開2013-107673(JP,A)
【文献】特開2012-037501(JP,A)
【文献】特開2013-167509(JP,A)
【文献】特開2009-042081(JP,A)
【文献】特開2000-191010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/10- 1/34
33/38-33/98
B65D 35/44-35/54
39/00-55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂上部が開口し、検体抽出液が収容された容器本体と、試料を前記容器本体から注出するためのノズル本体と、を含む、検体抽出容器であって、
前記容器本体に装着されて前記開口を塞ぐ蓋部材を備え、
前記蓋部材は、
前記頂上部を覆うように前記容器本体に固定され、検体採取部材が前記容器本体内に挿入されることを許容する開口部を備えた固定部と、
前記開口部を覆うように前記固定部に係脱可能に係止され、この係止位置と当該係止位置から反転するように展開した展開位置とに亘って変位可能となるように前記固定部に連結された可動部と、
前記開口部を閉鎖するとともに、前記係止位置から前記展開位置への前記可動部の展開操作に伴い変位して前記開口部を開放する栓部と、を備え
、
前記ノズル本体は、前記可動部が前記展開位置に配置された状態において前記固定部に係止可能に設けられ、
前記可動部及び前記ノズル本体は、各々ヒンジを介して前記固定部に連結されている、ことを特徴とする検体抽出容器。
【請求項2】
請求項
1に記載の検体抽出容器において、
前記可動部は、前記栓部を保持しかつ当該栓部に下向きの外力が作用したときに当該栓部を脱落させるように当該栓部を保持する栓保持部を備え、
前記栓部及び前記固定部には、前記展開操作に伴い互いに係合して、前記栓部に対して前記下向きの外力を付与する係合部が各々備えられている、ことを特徴とする検体抽出容器。
【請求項3】
請求項
2に記載の検体抽出容器において、
前記栓部は、前記検体採取部材の先端を挿入可能な上下方向に延在する有底筒状を成し、かつ、内周面に凹凸部を備えている、ことを特徴とする検体抽出容器。
【請求項4】
請求項1に記載の検体抽出容器において、
前記可動部と前記栓部とが一体に設けられている、ことを特徴とする検体抽出容器。
【請求項5】
頂上部が開口し、検体抽出液が収容された容器本体と、試料を前記容器本体から注出するためのノズル本体と、を含む、検体抽出容器であって、
前記容器本体の頂上部に装着される蓋部材を備え、
前記蓋部材は、
前記頂上部の開口を塞ぐように前記容器本体に固定された固定部と、
前記固定部に係脱可能に係止され、この係止位置と当該係止位置から反転するように展開した展開位置とに亘って変位可能となるように前記固定部に連結された可動部と、を備え、
前記固定部には、前記係止位置から前記展開位置への前記可動部の展開操作に伴い当該固定部の他の部分から引き裂かれて、当該固定部に、検体採取部材が前記容器本体内に挿入されることを許容する開口部を形成する開口形成部が設けられ、
前記ノズル本体は、前記可動部が前記展開位置に配置された状態において前記固定部に係止可能に設けられ、
前記可動部及び前記ノズル本体は、各々ヒンジを介して前記固定部に連結されている、ことを特徴とする検体抽出容器。
【請求項6】
請求項1~
5の何れか一項に記載の検体抽出容器と、この検体抽出容器のノズル本体から注出される試料の検査、判定を行うテストプレート
と、
検体を採取するための検体採取部材と、を含み、
前記検体採取部材は、軸状を成しかつその長手方向の途中部分にその他の部分よりも変形し易い変形部を備えている、ことを特徴とする検体検査キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染症に感染しているか否かなどを検査するための検体検査キットに用いられる検体抽出容器、及び当該検体抽出容器を備えた検体検査キットに関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザなどの感染症に感染しているか否かを検査するための検体検査キットが知られている。検体検査キットは、検体抽出液が予め収容された検体抽出容器と、テストプレートとからなり、咽頭・鼻腔ぬぐい液、鼻汁等の生体由来の検体を採取した綿棒を検体抽出容器に挿入して検体抽出液に検体を混和させ、この検体抽出液を試料としてテストプレートに滴下させて、イムノクロマト法により、その反応を確認するというものである。
【0003】
検体検査キットに用いられる検体抽出容器の一例が特許文献1に開示されている。この検体抽出容器は、検体抽出液が収容された容器本体と、その口部に装着された蓋体とを備えている。蓋体は、前記口部を塞ぐ中栓と、この中栓にヒンジを介して連結されたノズル筒とを備え、検体抽出液を濾過するためのフィルタがノズル筒の内側に挿着された構成を有する。中栓の頂部には、開口用突起が突設されている。
【0004】
この検体抽出容器の使用方法は次の通りである。まず、ヒンジを支点としてノズル筒を展開し(回転させ)、開口用突起を露出させる。次に、この開口用突起を押し倒して中栓の頂部に開口部を形成し、この開口部を通じて綿棒を容器本体に挿入し、検体を検体抽出液に混和させて試料を生成する。その後、ノズル筒を容器本体に装着し直し、検体抽出容
器を上下逆さまにしてノズル筒の先端からテストプレートに試料を滴下させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の検体抽出容器によれば、開口用突起を押し倒して中栓の頂部に開口部を形成するまでは検体抽出液が密封されている。そのため、使用前に誤って検体が検体抽出液に混入することや、検体混和前の検体抽出液がフィルタに浸潤することが防止されるという利点がある。
【0007】
しかしながら、検体を検体抽出液に混和させるためには、ノズル筒を展開して開口用突起を露出させ、さらに、小さな開口用突起を押し倒して中栓の頂部に開口部を形成するという些か煩雑な作業が必要になる。開口用突起は、指先で押し倒すことが可能であるが、例えばインフルエンザの流行時など、医療機関等で多数の検体を検査する場合には、指先が痛くなって作業が苦痛になる場合がある。特許文献1には、検体抽出容器にノズル筒の先端を封止する封止キャップが設けられ、この封止キャップを取り外して開口用突起に被着し、封止キャップと共に開口用突起を押し倒すことが記載されている。直接的な言及はないが、封止キャップを、開口用突起を押し倒すための治具として用いることで、上記のような不都合を解消しようとする狙いがあると推察される。しかし、ノズル筒の先端から一旦封止キャップを取り外し、これを開口用突起に被着して当該開口用突起を押し倒すとなると、中栓の頂部に開口部を形成するための作業はさらに煩雑なものになる。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みて成されたものであり、容器本体内に検体抽出液を密閉しつつ、より簡単かつ速やかに当該容器本体を開封できる検体抽出容器を提供すること、また、より効率的に検体検査を行うことができる検体検出キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面に係る検体抽出容器は、頂上部が開口し、(検体から検査対象物を抽出するための)検査用抽出液が収容された容器本体と、試料を前記容器本体から注出(滴下)するためのノズル本体と、を含む、検体抽出容器であって、前記容器本体に装着されて前記開口を塞ぐ蓋部材を備え、前記蓋部材は、前記頂上部を覆うように前記容器本体に固定され、(スワブ等の)検体採取部材が前記容器本体内に挿入されることを許容する開口部を備えた固定部と、前記開口部を覆うように前記固定部に係脱可能に係止され、この係止位置と当該係止位置から反転するように展開した展開位置とに亘って変位可能となるように前記固定部に連結された可動部と、前記開口部を閉鎖するとともに、前記係止位置から前記展開位置への前記可動部の展開操作に伴い変位して前記開口部を開放する栓部と、を備えている、ことを特徴とするものである。
【0010】
この検体抽出容器によると、使用時までは、容器本体の内部に通じる前記開口部が栓部で閉鎖されて検体抽出液が密封される。そのため、使用前に誤って検体が検体抽出液に混入することが防止される。しかも、使用時には、前記固定部に係止されている可動部を当該係止位置から展開位置へ変位させれば、これに伴い(連動して)栓部による前記開口部の閉鎖状態が解除される。つまり、可動部を係止位置から展開位置に変位させるだけのワンタッチ操作で前記開口部を開放することができる。そのため、検体抽出液が収容された容器本体をより簡単かつ速やかに開封し、検体を採取したスワブなどの検体採取部材を容器本体内に挿入することが可能となる。
【0011】
上記の検体抽出容器において、前記ノズル本体は、前記可動部に一体に備えられているものであってもよい。
【0012】
この態様によれば、検体を採取した検体採取部材を、前記開口部を通じて容器本体に挿入して検体を検体抽出液に混和させた後、可動部を係止位置にリセットすれば、そのまま前記開口部を通じてノズル本体から試料を滴下させることが可能となる。
【0013】
その場合、前記可動部及び前記固定部の少なくとも一方は、前記開口部が開放された後、当該開放状態が維持されるように前記栓部の変位を規制する規制部を備える構成とされる。
【0014】
この態様によれば、開口部の開放状態が良好に維持されるので、ノズル本体からの試料の滴下を円滑に行わせることが可能となる。
【0015】
上記一の局面に係る検体抽出容器において、前記可動部は、前記栓部を保持しかつ当該栓部に下向きの外力が作用したときに当該栓部を脱落させるように当該栓部を保持する栓保持部を備え、前記栓部及び前記固定部に、前記展開操作に伴い互いに係合して、前記栓部に対して前記下向きの外力を付与する係合部が各々備えられているものであってもよい。
【0016】
この態様によれば、可動部を係止位置から展開位置に変位させると、栓部側の係合部が固定部側の係合部に下から当接(係合)して栓部に下向きの外力が作用し、この外力により栓部が可動部(栓保持部)から容器本体内に脱落する。この栓部の脱落により、前記開口部が開放される。
【0017】
この場合、前記栓部は、前記検体採取部材の先端を挿入可能な上下方向に延在する有底筒状を成し、かつ、内周面に凹凸部を備えているのが好適である。
【0018】
この態様によれば、前記開口部を通じて容器本体に挿入した検体採取部材、例えば綿棒を用いた場合は、その先端(綿球)を栓部の内側に挿入して凹凸部に押し当てることで、検体抽出液への検体の混和を促進させることができる。また、綿棒と共に栓部を動かして検体抽出液を撹拌することでも、検体抽出液への検体の混和を促進させることができる。
【0019】
前記一局面に係る検体抽出容器においては、前記可動部と前記栓部とが一体に設けられているものであってもよい。
【0020】
この態様によれば、可動部を係止位置から展開位置に変位させると、可動部と一体に栓部が変位し、この変位により前記開口部が開放される。
【0021】
本発明の他の一局面に係る検体抽出容器は、頂上部が開口し、検体抽出液が収容された容器本体と、試料を前記容器本体から注出するためのノズル本体と、を含む、検体抽出容器であって、前記容器本体の頂上部に装着される蓋部材を備え、前記蓋部材は、前記頂上部の開口を塞ぐように前記容器本体に固定された固定部と、前記固定部に係脱可能に係止され、この係止位置と当該係止位置から反転するように展開した展開位置とに亘って変位可能となるように前記固定部に連結された可動部と、を備え、前記固定部には、前記係止位置から前記展開位置への前記可動部の展開操作に伴い当該固定部の他の部分から引き裂かれて、当該固定部に、検体採取部材が前記容器本体内に挿入されることを許容する開口部を形成する開口形成部が設けられている、ことを特徴とするものである。
【0022】
この検体抽出容器によると、使用時までは、蓋部材の固定部によって容器本体の開口が塞がれて検体抽出液が密閉されている。そのため、使用前に誤って検体が検体採取部材に混入することが防止される。しかも、使用時には、前記固定部に係止されている可動部を当該係止位置から展開位置へ変位させれば、これに伴い(連動して)開口形成部が固定部のそれ以外の部分から引き裂かれて当該固定部に開口部が形成される。つまり、可動部を係止位置から展開位置に変位させるだけのワンタッチ操作で前記開口部を形成することができる。そのため、検体抽出液が収容された容器本体をより簡単かつ速やかに開封し、検体を採取したスワブなどの検体採取部材を容器本体内に挿入することが可能となる。
【0023】
この場合、前記ノズル本体は、前記可動部に一体に備えられているものであってもよい。
【0024】
この態様によれば、検体を採取した検体採取部材を、前記開口部を通じて容器本体に挿入して検体を検体抽出液に混和させた後、可動部を係止位置にリセットすれば、前記開口部を通じてノズル本体から試料を滴下させることが可能となる。
【0025】
なお、前記ノズル本体が、前記可動部に一体に備えられていない態様では、前記ノズル本体は、前記可動部が前記展開位置に配置された状態において前記固定部に係止可能に設けられている。
【0026】
つまり、この態様では、固定部に係止されている可動部をノズル本体に付け替えることにより、ノズル本体からの試料の滴下が可能となる。
【0027】
この場合、前記可動部及び前記ノズル本体は、各々ヒンジを介して前記固定部に連結されているのが好適である。
【0028】
この態様によれば、固定部に対してノズル本体がヒンジを介して連結されているので、可動部からノズル本体への付け替えが容易で、また、ノズル本体の紛失を防止することができる。
【0029】
一方、本発明の一局面に係る検体検査キットは、上述した何れかの態様の検体抽出容器と、この検体抽出容器のノズル本体から注出される試料の検査、判定を行うテストプレートと、を含むものである。
【0030】
上記各態様の検体抽出容器によれば、上述の通り、検体抽出液が収容された容器本体をより簡単かつ速やかに開封し、検体を採取したスワブなどの検体採取部材を容器本体内に挿入することが可能となる。そのため、当該検体抽出容器を備える上記検体検査キットによれば、より効率的に検体検査を行うことが可能となる。
【0031】
上記検体検査キットは、検体を採取するための検体採取部材をさらに含み、前記検体採取部材は、軸状を成しかつその長手方向の途中部分にその他の部分よりも変形し易い変形部を備えているのが好適である。
【0032】
この構成によれば、試料生成後、検体採取部材をその変形部のところで変形させながら容器本体に押し込むことにより、試料生成後の検体採取部材を容器本体に収容した状態でノズル本体から試料を滴下させ、その後、検体採取部材をそのまま容器本体と共に廃棄することが可能となる。従って、検査従事者等の二次感染や汚染を予防することが可能となる。また、液体試料が生成されていることが視覚的に明確になるため、試料生成を忘れたまま検査が進められることを回避することが可能となる。
【0033】
また、上記検体検査キットは、検体を採取するための軸状の検体採取部材をさらに含み、前記検体採取部材は、前記開口部が開放されかつ前記固定部に前記可動部が係止された状態の前記検体抽出容器に収容されることが可能な全長を有しているものであってもよい。
【0034】
この構成の場合も、試料生成後の検体採取部材を容器本体に収容した状態で試料を滴下させ、その後、検体採取部材をそのまま容器本体と共に廃棄することができる。そのため、上記と同様に、検査従事者等の二次感染や汚染を予防すること、および液体試料が生成されていることを視覚的に明確にすることが可能となる。
【発明の効果】
【0035】
以上の通り、上記の各態様に係る検体抽出容器によれば、検体抽出液を容器本体内に密閉しつつ、より簡単かつ速やかに開封することが可能となり、また、上記態様の検体検査キットによれば、より効率的に検体検査を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明に係る検体検査キットの斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る検体抽出容器の斜視図である。
【
図4】検体抽出容器の要部断面図(未開封時)である。
【
図5】検体抽出容器の要部断面図(開封時)である。
【
図6】検体抽出容器の要部断面図(リセット時)である。
【
図8】変形例に係る検体抽出容器の要部断面図(未開封時)である。
【
図9】変形例に係る検体抽出容器の要部断面図(リセット時)である。
【
図10】第2実施形態に係る検体抽出容器の要部断面図(未開封時)である。
【
図12】検体抽出容器の要部断面図(開封時)である。
【
図13】検体抽出容器の要部断面図(リセット時)である。
【
図14】第3実施形態に係る検体抽出容器の要部断面図(未開封時)である。
【
図16】検体抽出容器の要部断面図(開封時)である。
【
図17】検体抽出容器の要部断面図(リセット時)である。
【
図18】第4実施形態に係る検体抽出容器の断面図(未開封時)である。
【
図20】検体抽出容器の断面図(リセット時)である。
【
図21】第5実施形態に係る検体抽出容器の斜視図(検体抽出液封入前)である。
【
図22】検体抽出容器の断面図(未開封時)である。
【
図23】検体抽出容器の断面図(開封・ノズルセット時)である。
【
図24】検体抽出容器の使用方法の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0038】
[検体検査キットの説明]
図1は、本発明に係る検体検査キットの斜視図である。検体検査キット1は、検体採取用の綿棒2と、採取した検体を検体抽出液に混和させて液体試料を生成する検体抽出容器3と、前記試料について検体検査を行いその結果を表示するテストプレート4とを含む。綿棒2は、軸部2aとその先端に固定された球綿2bとを備えている。なお、当例では、本発明の「検体採取部材」として綿棒2を適用した例について説明するが、綿棒2以外の周知の軸状の採取部材を適用することも可能である。
【0039】
テストプレート4は、例えば免疫クロマトグラフ法を用いた周知の液体試料検査具であり、試料滴下窓部5a及び判定窓部5bを備えた偏平かつ細長な樹脂製の容器5の内部にテストストリップ6が収容されたものである。
【0040】
詳細図を省略するが、テストストリップ6は、容器5の長手方向に細長い形状を有し、その一端側から順にサンプルパッド、コンジュゲートパッド、メンブレンおよび吸収パッドを備えている。容器5の試料滴下窓部5aはサンプルパッドに対応する位置に、判定窓部5bはメンブレンに対応する位置に各々設けられてあり、試料滴下窓部5aからサンプルパッド上に前記試料を滴下すると、この試料がコンジュゲートパッドに浸透して当該パッドに担持された特異抗体(金コロイド、カラーラテックス等の物質で標識した抗体;着色標識)と反応しながらメンブレンに浸透して行き、試料に被測定物である抗原が存在していると、この抗原とメンブレンに固定された抗体とが抗原抗体反応を起こし、メンブレン上(判定窓部5b)に着色標識がシグナルとして現れるようになっている。
【0041】
検体抽出容器3は、上記の通り、採取した検体を検体抽出液と混和させ、被検査対象物質を抽出させた試料を作成するためのもので、検体抽出容器3から前記試料をテストプレート4の前記テストストリップ6(サンプルパッド)上に滴下させることもできる。その具体的な構成については後述する。
【0042】
上述した検体検査キット1の代表的な用途としては、インフルエンザウイルスの感染検査が挙げられる。しかし、本発明に係る検体検査キット1の具体的な用途は当該感染検査に限定されるものではない。従って、検体抽出容器3から滴下される試料を受けて検体検査を実行し、その結果を表示できるものであれば、容器5やテストストリップ6の具体的な構成は上記の構成に限定されるものではない。また、検体抽出液の組成も検査対象に応じて、適宜、目的の成分を抽出できる組成のものを用いることができる。
【0043】
[検体抽出容器の第1実施形態]
図2は、第1実施形態に係る検体抽出容器3A(3)の斜視図であり、
図3は、検体抽出容器3Aの断面図であり、
図4は、検体抽出容器3Aの要部拡大断面図である。何れの図の検体抽出容器3Aも未開封時の状態を示している。
【0044】
検体抽出容器3Aは、検体と共に試料を生成するための検体抽出液が予め収容された容器本体10と、その頂上部を覆うように容器本体10に装着されたノズル部材12とで構成されている。
【0045】
容器本体10は、頂上部が開口した透明又は半透明の上下方向に細長い有底円筒体であり、樹脂を含有する材料で形成されている。容器本体10の上端部の外周面には雄ねじ部22が設けられ、雄ねじ部22の直下にはスカート状の鍔部24が設けられている。容器本体10のうち、少なくとも鍔部24よりも下側の部分は、指圧によって容易に圧搾できる程度の可撓性を有している。
【0046】
ノズル部材12は、検体抽出容器3Aの使用前は、頂上部の開口を塞いで容器本体10の内部を密閉する蓋部材として機能し、使用時には、検体を含む検体抽出液(試料)を容器本体10からテストプレート4の所定の場所に滴下させるための滴下部材として機能するものである。すなわち、当例では、このノズル部材12が本発明の蓋部材に相当する。
【0047】
ノズル部材12は、容器本体10に固定される固定部30と、この固定部30にヒンジ部34を介して連結された可動部32と、中栓36(本発明の栓部に相当する)と、前記可動部32に固定されたノズル本体38とを備えている。ノズル部材12の各部のうち、固定部30、可動部32及びヒンジ部34は、同一の樹脂材料により一体に成型されている。
【0048】
固定部30は、天井壁44と、前記雄ねじ部22に螺合可能な雌ねじ部43を有する周壁42とを備えた有天円筒状を成し、容器本体10の頂上部を覆うように当該容器本体10に螺着されている。当例では、このように容器本体10に対して固定部30が螺着された装着構造が採用されているが、当該装着構造は、螺着式に限らず打栓式であってもよい。すなわち、例えば容器本体10に固定部30が外嵌され、当該容器本体10の外周に形成された突部に固定部30が係止されることにより抜け止めされた構造であってもよい。
【0049】
天井壁44の中央部には、上下方向に貫通する円形の開口部45(本発明の開口部に相当する)が形成されている。この開口部45は、検体を検体抽出液に混和させるために前記綿棒2を挿入するとともに、検体混和後の検体抽出液、すなわち液体試料を容器本体10から注出するための部分であり、綿棒2が、余裕を持って挿入されることが可能な直径を有している。この開口部45が、前記中栓36により閉鎖されている。
【0050】
天井壁44の下面には、前記開口部45の周囲において当該下面から下向きに伸びる断面円形のスリーブ部47が設けられている。スリーブ部47は容器本体10の内側に内嵌(嵌入)されており、これにより、スリーブ部47と容器本体10との間が液密にシールされている。
【0051】
天井壁44の上面には、前記開口部45の中心と同心円状に並びかつ各々当該上面から上向きに突出する円筒状の内側環状凸部48及び外側環状凸部49が設けられている。内側環状凸部48および前記スリーブ部47は、共に開口部45から径方向外側に離れた位置に設けられており、これにより、開口部45の周囲は、内側環状凸部48等の位置から内向きに突出する内鍔部46となっている。
【0052】
可動部32は、前記ヒンジ部34を介して前記固定部30に連結されており、固定部30の前記開口部45を覆うように当該固定部30に係止される係止位置P1(
図3に示す位置)と、この位置から反転するように展開されて前記開口部45を開放する展開位置P2(
図5参照)とに亘って変位可能となっている。
【0053】
可動部32は、周壁部52を有した概略筒状を成している。可動部32の内部は、開口部55を備えた仕切部54によって上下に仕切られている。具体的には、前記ノズル本体38が固定される上側のノズル装着部32aと、前記係止位置P1において、固定部30の頂上部に係止される被着部32bとに仕切られている。ノズル装着部32aと被着部32bとは、前記開口部55を介して互いに連通している。
【0054】
被着部32bの外径は、固定部30の外径と同等又はそれよも若干大きく、ノズル装着部32aの外径は、被着部32bの外径よりも小さく設定されている。そのため、周壁部52には、仕切部54の位置を境にして段差が形成されている。
【0055】
仕切部54の下面には、前記開口部55の周囲において当該下面から下向きに伸びる断面円形のスリーブ部56が設けられている。スリーブ部56は、固定部30の前記内側環状凸部48に外嵌しており、これにより、内側環状凸部48とスリーブ部56との間が液密にシールされている。
【0056】
ノズル装着部32aには、前記ノズル本体38が固定されている。ノズル本体38は、容器本体10から前記試料を注出するためのものであり、注出口60を有する先端部62と、その下端に繋がる円筒状の基端部64とを備え、これら先端部62と基端部64とが同一の樹脂材料により一体に成型された構造を有する。先端部62には、基端部64の内部空間と注出口60とを連絡する連通路66が形成されている。
【0057】
基端部64の内部には、濾過フィルタ68が保持されている。この濾過フィルタ68(以下、フィルタ68と略す)は、注出口60からの試料注出の際に、不要な固形物等の試料中の異物を除去するものである。
【0058】
基端部64は、前記ノズル装着部32a(周壁部52の内側)に内嵌されており、これにより、ノズル本体38が可動部32に固定されている。基端部64の外周面にはリング状の凸部64aが形成されており、この凸部64aがノズル装着部32aの周壁部52に形成されたリング状の凹部52aに嵌合している。これにより、ノズル本体38が可動部32に対して抜け止めされている。
【0059】
周壁部52の下端部であってその内壁面における周方向の複数の位置には、各々フック部52bが設けられている。フック部52bは、固定部30の前記外側環状凸部49に係脱可能な形状を有しており、
図4に示すように外側環状凸部49に係合することにより可動部32を固定部30に係止する。詳しくは、外側環状凸部49の外周面は断面山型の形状であり、フック部52bは、この外側環状凸部49の外周面の稜線部分を乗り越えることにより当該外側環状凸部49に係合するとともに、上下方向の外力を受けることにより当該稜線部分を乗り越え可能な形状を有している。これにより、フック部52bが当該外側環状凸部49に係脱可能となっている。
【0060】
中栓36は、検体抽出容器3の使用前において前記開口部45を閉鎖するものであり、これにより、容器本体10内の検体抽出液が気密状態に密封されている。
【0061】
図4に示すように、中栓36は、固定部30の前記内側環状凸部48に内嵌された円盤状の主栓部72と、この主栓部72の下面から下向きに延びる円筒部74と、主栓部72の上面から上向きに各々延びる複数の係止爪76とを備え、これら主栓部72、円筒部74及び係止爪76が同一の樹脂材料により一体に成型された構造を有する。
【0062】
主栓部72は、上記の通り内側環状凸部48に内嵌されており、よって、開口部45は、中栓36のうち当該主栓部72によって実質的に閉鎖されている。
【0063】
円筒部74は、前記開口部45を通じてスリーブ部47の内側に挿入されている。円筒部74の外径は、開口部45の内径よりも小さく、よって、これらの間には隙間が形成されている。円筒部74のうち前記開口部45の位置よりも下方、すなわち内鍔部46よりも下方の位置には鍔部74aが備えられている。
【0064】
鍔部74aの外径は、前記開口部45の内径よりも若干大きく形成されている。当該鍔部74aは、円筒部74の外周面から各々外向きに延びて周方向に並ぶ複数の板状の突出片によって構成されている。各突出片は可撓性を有しており、従って、鍔部74aも全体として可撓性を有していると言える。
【0065】
図7に示すように、前記複数の係止爪76は、主栓部72の中心回りに等間隔で配置されており、当例では、4個の係止爪76が主栓部72の中心回りに配置されている。各係止爪76は、上下方向に延びる可撓性を有した脚部76bと、その先端(上端)に形成された爪部76aとを備える。
【0066】
各係止爪76は、
図4に示すように、可動部32の前記仕切部54の開口部55に挿入されている。開口部55の内周面には、内側に突出する内鍔部55aが形成されており、各係止爪76の爪部76aは、当該鍔部55aの上方に位置している。爪部76aは、脚部76bから外向き(開口部55に対してその径方向外向き)に突出しており、これにより、各係止爪76と内鍔部55aとが上下方向に係合可能となっている。
【0067】
[検体抽出容器3Aの使用方法]
検体抽出容器3Aの使用前(未開封時)は、
図2~
図4に示すように、可動部32は、固定部30に係止された係止位置P1に配置されている。また、中栓36(主栓部72)が固定部30の内側環状凸部48に内嵌することにより、容器本体10が閉鎖、すなわち開口部45が閉鎖され、検体抽出液が密封された状態となっている。
【0068】
検体抽出容器3Aを使用するには、例えば容器本体10を一方の手で掴み、同じ手の親指で可動部32に力を加え、可動部32を係止位置P1から展開位置P2に変位させる(展開操作を行う)。なお、可動部32及び固定部30の側面(周面)のうち、ヒンジ部34とは反対側の部分(
図4では左側の部分)は、側面視で円弧状に切り掛かれた形状となっている。これにより、可動部32(被着部32b)には、下方から上方に向かって漸次径方向外側に迫り出す形状の指掛部52cが形成されている。従って、容器本体10を片手で掴んだまま、この指掛部52cに親指を添えて可動部32を押し上げることで、可動部32を容易に係止位置P1から展開位置P2に変位させることができる。
【0069】
このように可動部32の展開操作を行うと、その過程で可動部32が中栓36に係合し、
図5に示すように、中栓36が可動部32と共に展開位置P2に変位し、これにより中栓36が固定部30から引き抜かれる。詳しくは、可動部32の上方への変位に伴い、当該可動部32の内鍔部55aが中栓36の各係止爪76(爪部76a)に係合し、中栓36に上向きの外力が付与される。これにより、中栓36の主栓部72が固定部30の内側環状凸部48から引き抜かれるとともに、鍔部74aの変形を伴いながら円筒部74が開口部45の上方に引き抜かれ、開口部45が開放される。なお、開口部45(内鍔部46)の下縁部にはテーパ45aが形成されており、鍔部74aを当該テーパ45aに沿って円滑に変形させながら、円筒部74を開口部45から引き抜き得るようになっている。
【0070】
容器本体10の開放後、検体が採取された綿棒2の先端(綿球)を開口部45から容器本体10の内部に挿入し、綿棒2の先端を検体抽出液によく浸しながら撹拌する。これにより、検体を検体抽出液に混和させて液体試料を生成する。さらに、容器本体10の外側から当該容器本体10(鍔部24よりも下側の部分)と共に綿棒2の先端を圧搾することにより、綿棒2の検体を搾り出しながら容器本体10から綿棒2を抜き取る。綿棒2を抜き取った後、可動部32を展開位置P2から係止位置P1にリセットし、固定部30に係止する。
【0071】
図6は、可動部32を係止位置P1にリセットした状態を示している。この状態では、中栓36の円筒部74の先端(下端)が固定部30の開口部45に挿入されるものの、内鍔部46(開口部45の周縁部)に鍔部74aが引っ掛かるために、中栓36は完全な元の位置(
図4に示す位置)には戻らない。つまり、固定部30の内側環状凸部48に中栓36の主栓部72が内嵌されることはなく、よって、開口部45(容器本体10)の開放状態が実質的に維持される。
【0072】
このように、固定部30の内鍔部46は、開口部45が開放された後、この開放状態が維持されるように、中栓36の鍔部47aと係合して当該中栓36の変位を規制するものであり、よって当例では、この内鍔部46が本発明の「規制部」に相当する。
【0073】
可動部32を係止位置P1にリセットした後、検体抽出容器3を上下逆さまにし、ノズル本体38を通じて試料をテストプレート4に滴下する。すなわち、開口部45(容器本体10)が開放されているため、検体抽出容器3を上下逆さまにすると、容器本体10内の試料が開口部45、55を通じてノズル本体38に流れ込み、さらにフィルタ68及び連通路66を通じて注出口60から流出する。これにより、試料を検体抽出容器3からテストプレート4に滴下することができる。
【0074】
なお、
図4及び
図7に示すように、可動部32の仕切部54のうち、スリーブ部56よりも内側の領域の下面、詳しくは内鍔部55aを含む領域の下面には、開口部55を中心として放射状に伸びる複数の溝部55bが形成されている。これらの溝部55bは、検体抽出容器3を上下逆さまにした際に、可動部32の仕切部54と中栓36の主栓部72との間に、ノズル装着部32aと被着部32bとを連通させるための流路を形成するものである。この構成により、検体抽出容器3を上下逆さまにした際に仕切部54と主栓部72とが重なり合っても、容器本体10内の試料が開口部45、55を通じて確実にノズル本体38に流れ込むこととなる。
【0075】
[作用効果]
上述した検体抽出容器3Aによると、使用時までは、容器本体10の内部に通じる開口部45が中栓36で閉鎖されて検体抽出液が密封される。そのため、使用前に誤って検体が検体抽出液に混入することや、検体が混和されていない検体抽出液がフィルタ68に浸潤することが防止される。しかも、検体抽出容器3Aの使用時には、固定部30に係止されている可動部32を当該係止位置P1から展開位置P2へ変位させれば、これに伴い(連動して)中栓36による前記開口部45の閉鎖状態が解除される。つまり、可動部32を係止位置P1から展開位置P2に変位させるだけのワンタッチ操作で前記開口部45を開放することができる。従って、この検体抽出容器3Aによれば、容器本体10内に検体抽出液を密閉しつつ、使用時には、容器本体10を片手で簡単かつ速やかに開封し、検体を採取した綿棒2を容器本体10に挿入することが可能となる。
【0076】
特に、可動部32の被着部32bには、下方から上方に向かって漸次径方向外側に迫り出す形状の指掛部52cが形成されているため、上述した通り、容器本体10を把持し、この指掛部52cに親指を添えて可動部32を押し上げるようにすれば、可動部32を難なく係止位置P1から展開位置P2に変位させることができる。従って、多数の検体を検査する必要がある場合でも、指先が痛くなるといった不都合を伴うことなく効率良く検体検査を実施することが可能となる。
【0077】
なお、上述した検体抽出容器3Aについては、例えば、
図8に示すような構成を採用することも可能であり、このような構成によっても上記と同等の作用効果を奏する。
【0078】
図8は、変形例に係る検体抽出容器3A′の要部拡大断面図である。同図に示す検体抽出容器3A′(以下、変形例に係る容器3A′と略す)では、ノズル部材12(固定部30)の天井壁44には上記内鍔部46が設けられておらず、内側環状凸部48、開口部45及びスリーブ部47の内周面が面一に形成されている。
【0079】
中栓36は、内側環状凸部48の内側に内嵌されている点で
図4の検体抽出容器3Aと同じである。しかし、変形例に係る容器3A′の中栓36の主栓部72の外周面には、全周に亘って形成された環状突起からなる上下2つのシール部72aが設けられている。これらシール部72aが内側環状凸部48の内面に密接することで、開口部45が液密に閉鎖されている。
【0080】
また、変形例に係る容器3A′の中栓36には、
図4に示すような4つの係止爪76は設けられておらず、代わりにキノコ型(断面矢印形)の単一の係止部77が設けられている。具体的には、係止部77は、主栓部72の上面から上方に伸びる軸部77aと、その上端に設けられた円錐台部77bとを有しており、この円錐台部77bと可動部32の上記内鍔部55aとが係合可能となっている。なお、係止部77の具体的な形状は、上記内鍔部55aに係合可能な形状であればよく、例えば、断面T字型であってもよい。
【0081】
図9は、可動部32を展開位置P2に変位させ、その後、係止位置P1にリセットした状態を示している。同図に示すように、中栓36は、その主栓部72周囲のシール部72aが内側環状凸部48に引っ掛かり、完全な元の位置(
図8に示す位置)には戻らない。よって、開口部45(容器本体10)の開放状態が維持されることとなる。このように、固定部30の内側環状凸部48は、開口部45が開放された後、この開放状態が維持されるように、中栓36のシール部72aと係合して当該中栓36の変位を規制するものであり、よって、この変形例に係る容器3A′では、内側環状凸部48が本発明の「規制部」に相当する。
【0082】
[検体抽出容器の第2実施形態]
図10は、第2実施形態に係る検体抽出容器3B(3)の要部断面図(未開封時)であり、
図11は、組立前のノズル部材12の斜視図である。
【0083】
なお、第2実施形態に係る検体抽出容器3Bの基本的な構造は第1実施形態の検体抽出容器3Bと同等である。よって、第2実施形態に係る検体抽出容器3Bの以下の説明においては、第1実施形態の検体抽出容器3Bと共通部分については同一符号を付して説明を省略又は簡略し、主に第1実施形態の検体抽出容器3Aとの相違点について詳細に説明する。この点は、特に言及する場合を除き、後に説明する第3~第5の実施形態についても同様である。
【0084】
以下に説明する第2実施形態と第1実施形態との相違点は、ノズル部材12の構造にあり、より詳しくは、容器本体10の開口部45を閉鎖する中栓36の構造と、開口部45を開栓するための構造とにある。
【0085】
第2実施形態のノズル部材12では、中栓36は、開口部45を覆うシート状、又プレート状の主栓部82と、この主栓部82の周縁部に一体に設けられたリング状の係止片84とを備えている。主栓部82は、例えばアルミ層と樹脂層とを含むアルミラミネートフィルム、又は樹脂製フィルムの表面にアルミが蒸着されたアルミ蒸着フィルムで形成されており、円盤状の形状を有している。主栓部82は、固定部30の天井壁44の上面、詳しくは開口部45の周縁部に熱溶着されている。これにより、開口部45が中栓36(主栓部82)によって閉鎖されている。
【0086】
係止片84は、樹脂材料で形成されており、例えば熱溶着により主栓部82に一体に固定されている。なお、係止片84は、主栓部82と一体成型されたものであってもよい。この係止片84は、
図10に示すように、主栓部82の周縁部であって当該主栓部82の径方向においてヒンジ部34側とは反対側の位置に、当該係止片84の中心線がヒンジ部34を通るような起立姿勢で固定されている。
【0087】
一方、可動部32には、第1実施形態のスリーブ部56の代わりに、開口部55の周縁部において仕切部54の下面から垂下する側面視J字型のフック部57が設けられている。フック部57は、開口部55の周縁部であって当該開口部55の径方向においヒンジ部34側とは反対側の位置に、当該フック部57の先端が開口部55の径方向外側を向くように設けられている。これにより、
図10に示すように、フック部57の先端が中栓36の前記係止片84の内側に挿入されている。
【0088】
第2実施形態の検体抽出容器3Bの基本的な使用方法は、第1実施形態の検体抽出容器3Aの使用方法と基本的に同じである。すなわち、容器本体10を掴み、可動部32を係止位置P1から展開位置P2に変位させる。可動部32を係止位置P1から展開位置P2に変位させると、フック部57が中栓36の係止片84に係合し、
図12に示すように、中栓36が固定部30の天井壁44から引き剥がされる。これにより、開口部45が開放、すなわち容器本体10が開放される。
【0089】
容器本体10の開放後、検体が採取された綿棒2を容器本体10の内部に挿入して液体試料を生成し、可動部32を展開位置P2から係止位置P1にリセットする。この際、可動部32を係止位置P1にリセットしても、中栓36は既に天井壁44から引き剥がされているので、
図13に示すように、開口部45(容器本体10)の開放状態は維持される。従って、検体抽出容器3Bを上下逆さまにすれば、容器本体10内の試料が開口部45、55を通じてノズル本体38に流れ込み、これにより、ノズル本体38を通じてテストプレート4に試料を滴下することができる。
【0090】
なお、
図10~
図13では便宜上図示を省略しているが、第1実施形態と同様に、固定部30の天井壁44の上面であって中栓36の外側には内側環状凸部48が設けられおり、可動部32の仕切部54の下面には、内側環状凸部48に外嵌して当該内側環状凸部48との間を液密にシールするスリーブ部56が設けられている。これにより、ノズル本体38から試料を滴下させる際には、固定部30と可動部32との間が液密にシールされた状態で、開口部45、55が相互に連通するようになっている。
【0091】
以上のような第2実施形態の検体抽出容器3Bも、第1実施形態の検体抽出容器3Aと同等の作用効果を奏する。すなわち、使用時までは、容器本体10の内部に通じる開口部45が中栓36で閉鎖されて検体抽出液が密封される。そのため、使用前に誤って検体が検体抽出液に混入することや、検体が混和されていない検体抽出液がフィルタ68に浸潤することが防止される。また、検体抽出容器3Bの使用時には、容器本体10を片手で把持して、可動部32を係止位置P1から展開位置P2へ変位させるワンタッチ操作で前記開口部45を開放することができる。
【0092】
[検体抽出容器の第3実施形態]
図14は、第3実施形態に係る検体抽出容器3C(3)の要部断面図(未開封時)であり、
図15は、組立前のノズル部材12の斜視図である。
【0093】
第3実施形態のノズル部材12は、第1実施形態のような中栓36が固定部30の天井壁44に一体成型されている。すなわち、中栓36を含む固定部30と、可動部32と、ヒンジ部34とが同一の樹脂材料により一体成型されている。つまり、未開封の段階では、開口部45は未だ形成されておらず、従って、中栓36に対応する部分を開口形成部37と称する。
【0094】
固定部30の天井壁44の上面のうち開口形成部37とその他の部分との境界線の位置には、V溝からなる溝部44aが形成され、同じく天井壁44の下面のうち開口形成部37とその他の部分との境界線の位置にはV溝からなる溝部44bが形成されている。これらの溝部44a、44bは上下に対向しており、従って、天井壁44のうち溝部44a、44bの位置はそれ以外の部分よりも肉薄である。
【0095】
開口形成部37は、溝部44a、44bにより区画された平面視円形の区画部87と、この区画部87の周縁部に一体に設けられた係合部88とを備えている。係合部88は、区画部87の上面から上方に伸びる軸状の脚部88bとその先端(上端)に形成された球頭部88aとを備えており、脚部88bは可撓性を有している。係合部88は、区画部87の周縁部であって当該区画部87の径方向においてヒンジ部34側とは反対側の位置に、球頭部88aが天井壁44の中心に位置するようにややヒンジ部34側に傾いた姿勢で形成されている。
【0096】
第3実施形態の可動部32は、
図14に示すように、開口部55の内径とスリーブ部56の内径とが同等とされ、スリーブ部56の内側に、開口形成部37の係合部88(固定部側係合部88と称す)と係合可能な相手側係合部58(可動部側係合部58と称す)が設けられている。
【0097】
可動部側係合部58は、
図15に示すように、可動部32のスリーブ部56の内側をその径方向に横断するように設けられた一対のプレート状の係合片58a、58bからなる。各係合片58a、58bは、これらの間に隙間Gが形成されるようにスリーブ部56に一体成型されている。この隙間Gを通じて、固定部側係合部88の球頭部88aが当該可動部側係合部58の上方に配置されている。これにより、可動部32の変位(係止位置P1から展開位置P2への変位)に伴い可動部側係合部58と固定部側係合部88とが互いに係合するようになっている。
【0098】
なお、可動部側係合部58の前記隙間Gは、ヒンジ部34側から反対側(スリーブ部56の径方向においてヒンジ部34から離れる方向)に向かって先細りとなる平面視楔型の形状とされている。その理由は以下の通りである。
【0099】
固定部30、可動部32及びヒンジ部34は、上記の通り一体成型されるものであるが、成型時には、固定部30に対して可動部32が展開した状態でこれらが一体に成型され、その後、可動部32が固定部30の頂上部に係止されることで、
図14に示す状態に組み立てられる。この場合、隙間Gが平面視楔型の形状とされていることで、組み立て時には、固定部側係合部88の球頭部88aが可動部側係合部58の下方から上方に通過することが許容され、組み立て後は、可動部32の変位(係止位置P1から展開位置P2への変位)に伴い脚部88bが楔型の隙間Gの先端、すなわち隙間Gの狭い方に相対的に変位して、固定部側係合部88(球頭部88a)と可動部側係合部58(係合片58a、58b)とが確実に係合するようになっている。
【0100】
第3実施形態の検体抽出容器3Cの基本的な使用方法は、第1実施形態の検体抽出容器3Aの使用方法と基本的に同じである。すなわち、容器本体10を掴み、可動部32を係止位置P1から展開位置P2に変位させる。可動部32を係止位置P1から展開位置P2に変位させると、可動部側係合部58が固定部側係合部88に係合し、
図16に示すように、溝部44a、44bが形成された肉薄の部分に沿って開口形成部37(区画部87)が天井壁44から引き裂かれ、その結果、固定部30の頂上部(天井壁44)に、容器本体10の内外を連通させる開口部45が形成される。これにより、容器本体10が開放される。
【0101】
容器本体10の開放後、検体が採取された綿棒2を容器本体10の内部に挿入して液体試料を生成し、可動部32を展開位置P2から係止位置P1にリセットする。この際、可動部32を係止位置P1にリセットしても、開口形成部37は天井壁44から引き裂かれているので、
図17に示すように、開口部45を通じて容器本体10が開放された状態が維持される。従って、検体抽出容器3Cを上下逆さまにすれば、容器本体10内の試料が開口部45、55を通じてノズル本体38に流れ込み、これにより、ノズル本体38を通じてテストプレート4に試料を滴下することができる。
【0102】
以上のような第3実施形態の検体抽出容器3Cも、第1実施形態の検体抽出容器3Aと同等の作用効果を奏する。すなわち、使用時までは、開口部45が形成されていないため容器本体10内の検体抽出液が密封される。そのため、使用前に誤って検体が検体抽出液に混入することや、検体が混和されていない検体抽出液がフィルタ68に浸潤することが防止される。また、検体抽出容器3Cの使用時には、容器本体10を片手で把持して、可動部32を係止位置P1から展開位置P2へ変位させるワンタッチ操作で前記開口部45を形成して、容器本体10内を開放することができる。
【0103】
[検体抽出容器の第4実施形態]
図18は、第4実施形態に係る検体抽出容器3D(3)の要部断面図(未開封時)である。第4実施形態では、ノズル部材12が以下のような構成を有する。
【0104】
可動部32のスリーブ部56が固定部30の頂上部、すなわち天井壁44よりも下方まで延在してスリーブ部47に内嵌している。このスリーブ同士の嵌合により可動部32と固定部30との間が液密にシールされている。そのため、第4実施形態では、固定部30に第1実施形態のような内鍔部46は形成されておらず、開口部45の内径とスリーブ部47の内径とが同等とされている。また、第4実施形態では、可動部32の開口部55の内径とスリーブ部56の内径も同等とされている。
【0105】
中栓36は、上方に開口した有底筒状の主栓部92と、その下端部外周に設けられた係合部94とを備え、これら主栓部92と係合部94とが同一の樹脂材料により一体成型された構造を有する。
【0106】
主栓部92は、可動部32側のスリーブ部56にその下側(先端側)から嵌入(内嵌)されている。より詳しくは、主栓部92は、その軸方向(上下方向)中間部分に鍔部92aを備えており、この鍔部92aがスリーブ部56の下端に当接する位置まで、当該スリーブ部56に嵌入されている。これにより、固定部30の前記開口部45が中栓36により閉鎖されている。正確には、開口部45が可動部32のスリーブ部56と中栓36とで閉鎖されている。
【0107】
主栓部92の下端部は。固定部30側のスリーブ部47の下端(先端)より下方に突出しており、この突出部分の外周に前記係合部94が設けられている。係合部94は、主栓部92の周囲に一定間隔で設けられた複数の係合片により構成されている。係合部94は、全体として円環状に形成されており、その外径は、スリーブ部47の内径よりも若干大きく設定されている。
【0108】
係合部94を構成する各係合片は、主栓部92に対して撓み変形可能に構成されており、これにより係合部94は、その外径がスリーブ部47の内径と同等又はそれよりも小さくなる状態と、スリーブ部47の内径よりも若干大きくなる状態とに拡縮可能となっている。その理由は以下の通りである。
【0109】
第4実施形態のノズル部材12は、固定部30、可動部32及びヒンジ部34が一体成型され、これに中栓36が組み込まれることで構成される。より詳しくは、固定部30に対して可動部32が展開した状態で固定部30、可動部32及びヒンジ部34が一体に成型され、可動部32側のスリーブ部56に中栓36(主栓部92)が嵌入される。その後、中栓36と共にスリーブ部56を固定部30側のスリーブ部47内に嵌入させながら、固定部30の頂上部に可動部32が係止されることにより、
図18示す状態にノズル部材12が組み立てられる。この際、係合部94を縮径させた状態でスリーブ部47を通過させ、当該通過後、係合部94をスリーブ部47の内径よりも大きい拡径状態に弾性復帰させることで、
図18示す状態にノズル部材12が組み立てられるようになっている。
【0110】
第4実施形態の検体抽出容器3Dの基本的な使用方法も、第1実施形態の検体抽出容器3Aの使用方法と基本的に同じである。すなわち、容器本体10を掴み、可動部32を係止位置P1から展開位置P2に変位させる。可動部32を係止位置P1から展開位置P2に変位させると、中栓36の係合部94がスリーブ部47の下端部に係合して中栓36に下向きの外力が働き、この外力により、
図19に示すように、中栓36が可動部32側のスリーブ部56から引き抜かれて容器本体10内に脱落する。この中栓36の脱落により、開口部45が開放される。すなわち、容器本体10が開放される。
【0111】
このように、中栓36の鍔部92a及び固定部30のスリーブ部47の下端部は、係止位置P1から展開位置P2への可動部32の展開操作に伴い互いに係合して中栓36に下向きの外力を付与するものであり、さらに、可動部32のスリーブ部47は、この外力により中栓36が脱落するように当該中栓36を保持する。よって当例では、中栓36の鍔部92a及びスリーブ部47の下端部が各々本発明の「係合部」に相当し、スリーブ部47が本発明の「栓保持部」に相当する。
【0112】
容器本体10の開放後、検体が採取された綿棒2を容器本体10の内部に挿入し、検体を検体抽出液に混和させる。この場合、容器本体10内に脱落した中栓36を利用することにより、検体抽出液への検体の混和を促進させることができる。すなわち、中栓36の主栓部92の内周面には、周方向に一定間隔で並んで上下方向に伸びる複数の突条からなる凹凸部92bが形成されている。従って、
図19中に仮想線(二点鎖線)で示すように、綿棒2の先端(綿球)を主栓部92の内側に差し込みその内周面に擦り付けることで、検体抽出液への検体の混和を促進させることができる。また、先端が主栓部92に差し込まれた中栓36を綿棒2と共に容器本体10内で上下動させることにより、検体抽出液を撹拌して検体抽出液への検体の混和を促進させることもできる。
【0113】
その後、可動部32を展開位置P2から係止位置P1にリセットする。この際、可動部32を係止位置P1にリセットしても、中栓36は既に容器本体10内に脱落しているので、
図20に示すように、開口部45(容器本体10)の開放状態が維持される。なお、開口部45の内側にはスリーブ部47が内嵌しているが、スリーブ部47は筒状であり容器本体10の内部と開口部55とを連通させているので、開口部45の開放状態は実質的に維持されている。従って、検体抽出容器3Dを上下逆さまにすれば、容器本体10内の試料が開口部45、55を通じてノズル本体38に流れ込み、これにより、ノズル本体38を通じてテストプレート4に試料を滴下することができる。
【0114】
以上のような第4実施形態の検体抽出容器3Dも、第1実施形態の検体抽出容器3Aと同等の作用効果を奏する。すなわち、使用時までは、容器本体10の内部に通じる開口部45が中栓36で閉鎖されて検体抽出液が密封される。そのため、使用前に誤って検体が検体抽出液に混入することや、検体が混和されていない検体抽出液がフィルタ68に浸潤することが防止される。また、検体抽出容器3Dの使用時には、容器本体10を片手で把持して、可動部32を係止位置P1から展開位置P2へ変位させるワンタッチ操作で前記開口部45を開くことができる。
【0115】
加えて、第4実施形態の検体抽出容器3Dによれば、上記の通り、中栓36を利用して検体抽出液への検体の混和を促進させることができるので、検体検査の精度を高める上でも有利となる、という利点もある。
【0116】
[検体抽出容器の第5実施形態]
図21は、第5実施形態に係る検体抽出容器3E(3)の斜視図、より詳しくは検体抽出液封入前の斜視図であり、
図22は、検体抽出液封入後、使用前(未開封時)の検体抽出容器3Eの断面図である。第5実施形態ではノズル部材12が以下のような構成を有する。
【0117】
第5実施形態のノズル部材12は、ノズル本体38が可動部32とは別体に設けられており、可動部32が係止位置P1と展開位置P2とに変位可能となるように、ヒンジ部34を介して固定部30に連結される一方で、ノズル本体38も独立して係止位置P1と展開位置P2とに変位可能となるように、ヒンジ部35を介して固定部30に連結されている。
【0118】
可動部32は、天井壁53と周壁部52とを備えた有天円筒状であり、天井部53の中央に、下方に膨出する膨出部からなる中栓36が一体成型された構成を有する。すなわち、第5実施形態では、可動部32に中栓36が一体に備えられている。
【0119】
中栓36は、可動部32が係止位置P1に配置されて、周壁部52のフック部52bが固定部30の外側環状凸部49に係止された状態(
図22に示す状態)で開口部45に内嵌され、当該開口部45を閉鎖するように形成されている。当例では、当該可動部32と固定部30とが本発明の「蓋部材」に相当する。
【0120】
ノズル本体38は、先端部62及び基端部64に加えて、基端部64の外周を囲む周壁部65を備えており、この周壁部65がヒンジ部35を介して固定部30に連結されている。周壁部65にはフック部65aが設けられている。このフック部65aは、可動部32のフック部52bと同様に、固定部30の外側環状凸部49に係脱可能な形状を有しており、外側環状凸部49に係合した状態(
図23参照)においてノズル本体38を固定部30に係止する。
【0121】
第5実施形態では、上記の通り、ノズル本体38が可動部32とは別体に設けられ、可動部32に中栓36が一体成型されているので、可動部32には、第1実施形態のようなノズル装着部32a、仕切部54、内鍔部55aなどは設けられていない。また、固定部30には、第1実施形態のような内鍔部46は設けられておらず、開口部45の内径とスリーブ部47の内径とは同等とされている。
【0122】
この検体抽出容器3Eは、未開封時には、
図22に示すように、可動部32が係止位置P1において固定部30に係止され、これにより開口部45が中栓36により閉鎖される一方、ノズル本体38は展開位置P2に配置されている。
【0123】
検体抽出容器3Eを使用する際には、まず、可動部32を係止位置P1から展開位置P2に変位させる。これにより、開口部45が開放、すなわち容器本体10が開放される。この状態で、検体が採取された綿棒2を容器本体10の内部に挿入し、検体を検体抽出液に混和させて試料を生成する。
【0124】
その後、
図23に示すように、ノズル本体38を展開位置P2から係止位置P1にセットする。この際、固定部30の開口部45は既に開放されているので、ノズル本体38をセットした状態でも開口部45(容器本体10)の開放状態は維持される。従って、検体抽出容器3Bを上下逆さまにすれば、容器本体10内の試料が開口部45、55を通じてノズル本体38に流れ込み、これにより、ノズル本体38を通じてテストプレート4に試料を滴下することができる。
【0125】
以上のような第5実施形態の検体抽出容器3Eについても、使用時までは、容器本体10の内部に通じる開口部45が中栓36で閉鎖されて検体抽出液が密封される。そのため、使用前に誤って検体が検体抽出液に混入することや、検体が混和されていない検体抽出液がフィルタ68に浸潤することが防止される。また、検体抽出容器3Eの使用時には、可動部32を係止位置P1から展開位置P2へ変位させるワンタッチ操作で前記開口部45を開くことができる。また、医療機関等で多数の検査検体を処理する際の作業効率を高めるために、可動部32とノズル本体38とを異なる色にして、操作時の視認性を高めることもできる。
【0126】
[その他、変形例など]
以上、本発明の実施形態に係る検体抽出容器3(3A~3E)及び検体検査キット1について詳述したが、これら検体抽出容器3(3A~3E)及び検体検査キット1は本発明の好ましい実施形態の例示であって、検体抽出容器及び検体検査キットの具体的な構成は当該実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば以下のような構成を適用することも可能である。
【0127】
第5実施形態の検体抽出容器3Eでは、ノズル本体38がヒンジ部35を介して固定部30に連結されているが、ノズル本体38を固定部30から切り離した構成としてもよい。
【0128】
第5実施形態では、可動部32に中栓36が一体成型され、この中栓36が開口部45に内嵌されることにより当該開口部45が閉鎖される構造であるが、第5実施形態における開口部45の閉栓及び開栓構造として、例えば第1~第3実施形態の構造を適用することもできる。
【0129】
具体的には、第5実施形態の中栓36の代わりに、アルミラミネートフィルムなどで形成された主栓部(82)と係止片(84)とを有する中栓(36)を開口部45の周縁部に熱溶着することにより、当該開口部45を閉鎖する一方で、当該中栓(36)の係止片(84)に係合可能なフック部(57)を可動部32に設けておき、可動部32の展開操作に伴い、中栓(36)を固定部30から引き剥して開口部45を開放するように構成してもよい(第2実施形態の閉栓及び開栓構造を適用した例)。
【0130】
また、第5実施形態の中栓36の代わりに、V溝などの溝部(44a、44b)により区画され、かつ中栓側係合部(88)を備えた開口形成部(37)を天井壁44に一体成型しておく一方で、前記中栓側係合部(88)に係合可能な可動部側係合部58を可動部32に設けておき、可動部32の展開操作に伴い開口形成部(37)が天井壁44から引き裂かれることによって、開口部45が形成されるように構成してもよい(第3実施形態の閉栓及び開栓構造を適用した例)。
【0131】
第1実施形態では、検体抽出容器3Aの使用方法として、液体試料を生成した後、容器本体10から綿棒2を抜き取った状態で、検体抽出容器3Aからテストプレート4に試料を滴下する。しかし、検体抽出容器3の使用方法はこれに限定されない。例えば、
図24に示すように、綿棒2を容器本体10に挿入したままで検体抽出容器3Aからテストプレート4に試料を滴下するようにしてもよい。具体的には以下の通りである。
【0132】
まず、綿棒2の先端(綿球2b)を容器本体10の内部に挿入し、容器本体10の外側から当該容器本体10と共に綿棒2の先端を圧搾して液体試料を生成する(
図24(a))。
【0133】
次に、綿棒2を抜き取ることなく、可動部32を展開位置P2から係止位置P1にリセットし、可動部32を固定部30に係止する。この際、綿棒2に対してその軸方向に圧縮力を与え、検体抽出容器3Aに収まるように綿棒2(軸部2a)を湾曲或いは屈曲させる(
図24(b))。例えば、綿棒2の後端(上端)を栓部36の下面に当接させ、綿棒2を、栓部36を介して可動部32で容器本体10内に押し込みながら、可動部32を固定部30に係止する。この場合、第1実施形態の検体抽出容器3Aでは、栓部36の下面に上向きに凹む凹部が形成されているため、例えば綿棒2の後端をこの凹部に差し込みながら固定部30を操作することで、綿棒2を安定して押し込むことが可能となる。これにより綿棒2を検体抽出容器3Aに収容する。
【0134】
そして、綿棒2を収容したままで検体抽出容器3Aを上下逆さまにし、ノズル本体38から試料を滴下させる(
図24(c))。使用後は、綿棒2を収容したまま検体抽出容器3Aを廃棄する。
【0135】
このような検体抽出容器3Aの使用方法によれば、検体が付着した綿棒2を検体抽出容器3Aから取り出すことがない。そのため、検査従事者等の二次感染や汚染の予防になるという利点がある。
【0136】
また、綿棒2が検体抽出容器3Aに収容されていることで、検体抽出容器3A(容器本体10)が透明又は半透明である場合には、液体試料が生成されていることが視覚的に明確になる。そのため、試料生成を忘れたまま検査が進められるといった検査ミスの発生を回避できるという利点もある。
【0137】
なお、
図24に示す検体抽出容器3Aの使用方法では、上記の通り、綿棒2(軸部2a)を湾曲或いは屈曲させて検体抽出容器3Aに収容する必要がある。従って、綿棒2の軸部2aは、その途中部分にその他の部分よりも変形(湾曲又は屈曲)し易い変形部を有しているのが好適である。すなわち、本発明に係る検体採取部材は、軸状を成しかつその長手方向の途中部分にその他の部分よりも変形し易い変形部を備えているのが好適である。
【0138】
図24に示すような使用方法は、栓部36の構造上の違いによる綿棒後端の押し当て位置等が異なるだけで、基本的には第2~第5実施形態の検体抽出容器3B~3Eについても適用可能である。勿論、綿棒2以外の軸状の検体採取部材を適用する場合も同じである。
【0139】
なお、
図24に示す例では、綿棒2を変形(湾曲或いは屈曲)させることで、綿棒2を検体抽出容器3Aに収容するようにしている。しかし、例えば第4、第5実施形態の検体抽出容器3D、3Eのような構成の場合には、殆ど変形を伴うことなくそのまま検体抽出容器3D、3Eに収容可能な全長(軸部2aの末端から綿球2bの先端までの長さ)を有する綿棒2を適用してもよい。具体的には、可動部32(又はノズル本体38)を固定部30に係止した状態で、例えば容器本体10の内底面から濾過フィルタ68の下面までの寸法とほぼ同等の全長を有する綿棒2を適用してもよい。換言すれば、容器本体10の内底面から濾過フィルタ68の下面までの寸法が、綿棒2の全長よりも長くなるように検体抽出容器3Aを構成してもよい。これらの構成によれば、綿棒2を変形させることなく、もしくは僅かに撓ませる程度で難なく綿棒2を検体抽出容器3D、3Eに収容することが可能となる。この点は、綿棒2以外の軸状の検体採取部材を適用する場合も同じである。
【符号の説明】
【0140】
1 検体検査キット
2 綿棒(検体採取部材)
3、3A~3E 検体抽出容器
4 テストプレート
10 容器本体
12 ノズル部材(蓋部材)
30 固定部
32 可動部
34、35 ヒンジ部
36 中栓(栓部)
38 ノズル本体
45 開口部
60 注出口
68 濾過フィルタ