(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】ガス濃度測定システム及びガス濃度測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/41 20060101AFI20231221BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G01N27/41 325N
G01N27/416 331
G01N27/41 325P
G01N27/41 325Z
G01N27/41 325H
(21)【出願番号】P 2020020269
(22)【出願日】2020-02-10
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】天本 百合奈
(72)【発明者】
【氏名】中原 健
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-062262(JP,A)
【文献】特開2019-086338(JP,A)
【文献】特開昭62-150153(JP,A)
【文献】米国特許第06007697(US,A)
【文献】特開2015-212649(JP,A)
【文献】特開2018-132368(JP,A)
【文献】特開2010-048596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/41
G01N 27/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
限界電流式ガスセンサと、
前記限界電流式ガスセンサに接続されている電圧源と、
前記限界電流式ガスセンサに接続されている電流検出器と、
前記電流検出器に接続されているガス濃度演算器とを備え、
前記電圧源は、前記限界電流式ガスセンサに、第1電圧と、前記第1電圧より大きい第2電圧とを供給し、前記第1電圧は、第1ガスに対応する第1限界電流を前記限界電流式ガスセンサに発生させる電圧であり、前記第2電圧は、第2ガスに対応する第2限界電流を前記限界電流式ガスセンサに発生させる電圧であり、
前記電流検出器は、前記限界電流式ガスセンサに前記第1電圧を印加した時における前記限界電流式ガスセンサの第1限界電流値と、前記限界電流式ガスセンサに前記第2電圧を印加した時における前記限界電流式ガスセンサの第2限界電流値とを取得し、
前記ガス濃度演算器は、前記第2限界電流値と前記第1限界電流値との間の差分を取得する差分取得部と、前記差分に基づいて前記第2ガスの濃度を得るガス濃度取得部とを含み、
前記限界電流式ガスセンサは、複数の限界電流式ガスセンサ素子を含み、
前記電流検出器は、前記複数の限界電流式ガスセンサ素子にそれぞれ対応する複数の電流検出素子を含み、
前記複数の電流検出素子は、前記複数の限界電流式ガスセンサ素子に前記第1電圧を印加した時における前記複数の限界電流式ガスセンサ素子の第1の複数の限界電流値を取得し、
前記複数の電流検出素子は、前記複数の限界電流式ガスセンサ素子に前記第2電圧を印加した時における前記複数の限界電流式ガスセンサ素子の第2の複数の限界電流値を取得し、
前記差分は、前記第2の複数の限界電流値と前記第1の複数の限界電流値との間の差分の平均値である
、ガス濃度測定システム。
【請求項2】
前記電圧源は、前記限界電流式ガスセンサへ出力される電圧を、前記第1電圧と前記第2電圧との間で切り換え可能である、請求項
1に記載のガス濃度測定システム。
【請求項3】
限界電流式ガスセンサと、
前記限界電流式ガスセンサに接続されている電圧源と、
前記限界電流式ガスセンサに接続されている電流検出器と、
前記電流検出器に接続されているガス濃度演算器とを備え、
前記電圧源は、前記限界電流式ガスセンサに、第1電圧と、前記第1電圧より大きい第2電圧とを供給し、前記第1電圧は、第1ガスに対応する第1限界電流を前記限界電流式ガスセンサに発生させる電圧であり、前記第2電圧は、第2ガスに対応する第2限界電流を前記限界電流式ガスセンサに発生させる電圧であり、
前記電流検出器は、前記限界電流式ガスセンサに前記第1電圧を印加した時における前記限界電流式ガスセンサの第1限界電流値と、前記限界電流式ガスセンサに前記第2電圧を印加した時における前記限界電流式ガスセンサの第2限界電流値とを取得し、
前記ガス濃度演算器は、前記第2限界電流値と前記第1限界電流値との間の差分を取得する差分取得部と、前記差分に基づいて前記第2ガスの濃度を得るガス濃度取得部とを含み、
前記限界電流式ガスセンサは、複数の第1限界電流式ガスセンサ素子と複数の第2限界電流式ガスセンサ素子とを含み、
前記電流検出器は、前記複数の第1限界電流式ガスセンサ素子にそれぞれ対応する複数の第1電流検出素子と、前記複数の第2限界電流式ガスセンサ素子にそれぞれ対応する複数の第2電流検出素子とを含み、
前記複数の第1電流検出素子は、前記複数の第1限界電流式ガスセンサ素子に前記第1電圧を印加した時における前記複数の第1限界電流式ガスセンサ素子の第1の複数の限界電流値を取得し、
前記複数の第2電流検出素子は、前記複数の第2限界電流式ガスセンサ素子に前記第2電圧を印加した時における前記複数の第2限界電流式ガスセンサ素子の第2の複数の限界電流値を取得し、
前記差分は、前記第2の複数の限界電流値と前記第1の複数の限界電流値との間の差分の平均値である
、ガス濃度測定システム。
【請求項4】
前記電圧源は、前記第1電圧を前記複数の第1限界電流式ガスセンサ素子に供給する第1電圧供給器と、前記第2電圧を前記複数の第2限界電流式ガスセンサ素子に供給する第2電圧供給器とを含む、請求項
3に記載のガス濃度測定システム。
【請求項5】
前記差分取得部は、前記第1限界電流値に対応する第1信号と前記第2限界電流値に対応する第2信号とを増幅する増幅回路と、前記増幅回路で増幅された前記第1信号と前記増幅回路で増幅された前記第2信号との間の差分を出力する差分回路とを含む、請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載のガス濃度測定システム。
【請求項6】
前記第1ガスは、酸素であり、
前記第2ガスは、窒素酸化物(NO
x)である、請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載のガス濃度測定システム。
【請求項7】
限界電流式ガスセンサと、
前記限界電流式ガスセンサに接続されている電圧源と、
前記限界電流式ガスセンサに接続されている電流検出器と、
前記電流検出器に接続されているガス濃度演算器とを備え、
前記電圧源は、前記限界電流式ガスセンサに、第1電圧と、前記第1電圧より大きい第2電圧とを供給し、前記第1電圧は、第1ガスに対応する第1限界電流を前記限界電流式ガスセンサに発生させる電圧であり、前記第2電圧は、第2ガスに対応する第2限界電流を前記限界電流式ガスセンサに発生させる電圧であり、
前記電流検出器は、前記限界電流式ガスセンサに前記第1電圧を印加した時における前記限界電流式ガスセンサの第1限界電流値と、前記限界電流式ガスセンサに前記第2電圧を印加した時における前記限界電流式ガスセンサの第2限界電流値とを取得し、
前記ガス濃度演算器は、前記第2限界電流値と前記第1限界電流値との間の差分を取得する差分取得部と、前記差分に基づいて前記第2ガスの濃度を得るガス濃度取得部とを含み、
前記限界電流式ガスセンサは、固体電解質と、第1電極と、第2電極と、ガス導入路とを含み、
前記第1電極は、前記固体電解質上に設けられており、
前記第2電極は、前記固体電解質上に設けられており、
前記ガス導入路は、ガス入口と前記第1電極のうち前記固体電解質に対向している第1部分との間に延在しており、
前記第1電極は、第1多孔質金属電極であり、
前記ガス導入路は、前記第1電極の第1融点より高い第2融点を有する第1多孔質遷移金属酸化物で形成されており、前記第1多孔質遷移金属酸化物は、Ta
2O
5、TiO
2またはCr
2O
3である
、ガス濃度測定システム。
【請求項8】
電圧源から限界電流式ガスセンサに第1電圧を印加して、電流検出器を用いて前記限界電流式ガスセンサの第1限界電流値を取得することを備え、前記第1電圧は、第1ガスに対応する第1限界電流を前記限界電流式ガスセンサに発生させる電圧であり、
前記電圧源から前記限界電流式ガスセンサに前記第1電圧より大きい第2電圧を印加して、前記電流検出器を用いて前記限界電流式ガスセンサの第2限界電流値を取得することとを備え、前記第2電圧は、第2ガスに対応する第2限界電流を前記限界電流式ガスセンサに発生させる電圧であり、さらに、
前記第2限界電流値と前記第1限界電流値との間の差分を取得することと、
前記差分に基づいて前記第2ガスの濃度を得ることとを備え、
前記限界電流式ガスセンサは、複数の限界電流式ガスセンサ素子を含み、
前記電流検出器は、前記複数の限界電流式ガスセンサ素子にそれぞれ対応する複数の電流検出素子を含み、
前記第1限界電流値を取得することは、前記複数の限界電流式ガスセンサ素子に前記第
1電圧を印加して、前記複数の電流検出素子を用いて前記複数の限界電流式ガスセンサ素子の第1の複数の限界電流値を取得することであり、
前記第2限界電流値を取得することは、前記複数の限界電流式ガスセンサ素子に前記第2電圧を印加して、前記複数の電流検出素子を用いて前記複数の限界電流式ガスセンサ素子の第2の複数の限界電流値を取得することであり、
前記差分を取得することは、前記第2の複数の限界電流値と前記第1の複数の限界電流値との間の差分の平均値を取得することである
、ガス濃度測定方法。
【請求項9】
前記第1限界電流値を取得した後かつ前記第2限界電流値を取得する前に、前記限界電流式ガスセンサに印加する電圧を前記第1電圧から前記第2電圧に切り換える
、請求項
8に記載のガス濃度測定方法。
【請求項10】
電圧源から限界電流式ガスセンサに第1電圧を印加して、電流検出器を用いて前記限界電流式ガスセンサの第1限界電流値を取得することを備え、前記第1電圧は、第1ガスに対応する第1限界電流を前記限界電流式ガスセンサに発生させる電圧であり、
前記電圧源から前記限界電流式ガスセンサに前記第1電圧より大きい第2電圧を印加して、前記電流検出器を用いて前記限界電流式ガスセンサの第2限界電流値を取得することとを備え、前記第2電圧は、第2ガスに対応する第2限界電流を前記限界電流式ガスセンサに発生させる電圧であり、さらに、
前記第2限界電流値と前記第1限界電流値との間の差分を取得することと、
前記差分に基づいて前記第2ガスの濃度を得ることとを備え、
前記限界電流式ガスセンサは、複数の第1限界電流式ガスセンサ素子と複数の第2限界電流式ガスセンサ素子とを含み、
前記電流検出器は、前記複数の第1限界電流式ガスセンサ素子にそれぞれ対応する複数の第1電流検出素子と、前記複数の第2限界電流式ガスセンサ素子にそれぞれ対応する複数の第2電流検出素子とを含み、
前記第1限界電流値を取得することは、前記複数の第1限界電流式ガスセンサ素子に前記第1電圧を印加して、前記複数の第1電流検出素子を用いて前記複数の第1限界電流式ガスセンサ素子の第1の複数の限界電流値を取得することであり、
前記第2限界電流値を取得することは、前記複数の第2限界電流式ガスセンサ素子に前記第2電圧を印加して、前記複数の第2電流検出素子を用いて前記複数の第2限界電流式ガスセンサ素子の第2の複数の限界電流値を取得することであり、
前記差分を取得することは、前記第2の複数の限界電流値と前記第1の複数の限界電流値との間の差分の平均値を取得することである
、ガス濃度測定方法。
【請求項11】
前記電圧源は、前記第1電圧を前記複数の第1限界電流式ガスセンサ素子に供給する第1電圧供給器と、前記第2電圧を前記複数の第2限界電流式ガスセンサ素子に供給する第2電圧供給器とを含み、
前記第1の複数の限界電流値を取得しながら、前記第2の複数の限界電流値を取得する、請求項
10に記載のガス濃度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス濃度測定システム及びガス濃度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平10-38845号公報(特許文献1)は、酸素(O2)と窒素酸化物(NOx)とを含む被測定ガス中の窒素酸化物(NOx)の濃度を測定するガスセンサを開示している。具体的には、このガスセンサは、第一の部屋と、第一の部屋に連通する第二の部屋とを有している。第一の部屋では、被測定ガスに含まれる酸素を除去して、被測定ガス中の酸素濃度を大幅に低下させる。酸素濃度を大幅に低下した被測定ガスが第二の部屋に流れ込む。第二の部屋では、被測定ガスに含まれるNOxは、窒素(N2)と酸素(O2)とに分解される。NOxから分解された酸素から得られる酸素イオンが固体電解質を伝導して、固体電解質に限界電流が流れる。この限界電流の大きさ(限界電流値)は、酸素イオンの量、すなわち、NOxの濃度に比例する。限界電流値から、被測定ガスに含まれるNOxの濃度が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されたガスセンサは、第一の部屋と第二の部屋とを有しているため、ガスセンサのサイズが大きい。本開示は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、より小型化されたガス濃度測定システム、及び、ガス濃度測定システムの小型化を可能にするガス濃度測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のガス濃度測定システムは、限界電流式ガスセンサと、限界電流式ガスセンサに接続されている電圧源と、限界電流式ガスセンサに接続されている電流検出器と、電流検出器に接続されているガス濃度演算器とを備える。電圧源は、限界電流式ガスセンサに、第1電圧と、第1電圧より大きい第2電圧とを供給する。第1電圧は、第1ガスに対応する第1限界電流を限界電流式ガスセンサに発生させる電圧である。第2電圧は、第2ガスに対応する第2限界電流を限界電流式ガスセンサに発生させる電圧である。電流検出器は、限界電流式ガスセンサに第1電圧を印加した時における限界電流式ガスセンサの第1限界電流値と、限界電流式ガスセンサに第2電圧を印加した時における限界電流式ガスセンサの第2限界電流値とを取得する。ガス濃度演算器は、第2限界電流値と第1限界電流値との間の差分を取得する差分取得部と、差分に基づいて第2ガスの濃度を得るガス濃度取得部とを含む。
【0006】
本開示のガス濃度測定方法は、電圧源から限界電流式ガスセンサに第1電圧を印加して、電流検出器を用いて限界電流式ガスセンサの第1限界電流値を取得することを備える。第1電圧は、第1ガスに対応する第1限界電流を限界電流式ガスセンサに発生させる電圧である。本開示のガス濃度測定方法は、電圧源から限界電流式ガスセンサに第1電圧より大きい第2電圧を印加して、電流検出器を用いて限界電流式ガスセンサの第2限界電流値を取得することを備える。第2電圧は、第2ガスに対応する第2限界電流を限界電流式ガスセンサに発生させる電圧である。本開示のガス濃度測定方法は、第2限界電流値と第1限界電流値との間の差分を取得することと、差分に基づいて第2ガスの濃度を得ることとを備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示のガス濃度測定システムによれば、ガス濃度測定システムをより小型化することができる。本開示のガス濃度測定方法によれば、ガス濃度測定システムの小型化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1のガス濃度測定システムの概略図である。
【
図2】実施の形態1のガス濃度測定システムの限界電流式ガスセンサ素子の一例を示す概略部分拡大断面図である。
【
図3】実施の形態1のガス濃度測定システムの差分取得部の一例の電気回路を示す図である。
【
図4】実施の形態1のガス濃度測定システム(限界電流式ガスセンサ素子)の電流-電圧特性を示す図である。
【
図5】実施の形態1のガス濃度測定システムのメモリに記憶されているデータテーブルの一例を示す図である。
【
図6】実施の形態1のガス濃度測定方法のフローチャートを示す図である。
【
図7】実施の形態1の限界電流式ガスセンサ及び比較例の限界電流式ガスセンサの限界電流値の温度係数のばらつきと、実施の形態1の限界電流式ガスセンサ及び比較例の限界電流式ガスセンサの応答時間のばらつきとを示す図である。
【
図8】限界電流式ガスセンサの限界電流値の温度係数の算出方法を示す図である。
【
図9】限界電流式ガスセンサの限界電流値の応答時間の算出方法を示す図である。
【
図10】実施の形態2のガス濃度測定システムの概略図である。
【
図11】実施の形態2のガス濃度測定方法のフローチャートを示す図である。
【
図12】実施の形態3のガス濃度測定システムの概略図である。
【
図13】実施の形態3のガス濃度測定方法のフローチャートを示す図である。
【
図14】実施の形態4のガス濃度測定システムの概略図である。
【
図15】実施の形態4のガス濃度測定方法のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態を説明する。なお、同一の構成には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0010】
(実施の形態1)
図1から
図5を参照して、実施の形態1のガス濃度測定システム1を説明する。ガス濃度測定システム1は、第1ガスと第2ガスとを含む被測定ガス4中の第2ガスの濃度を測定することができる。被測定ガス4は、例えば、自動車の排ガスである。第1ガスは、例えば、酸素(O
2)である。第2ガスは、例えば、窒素酸化物(NO
x)である。
【0011】
ガス濃度測定システム1は、限界電流式ガスセンサ2と、電圧源5と、電流検出器6と、ガス濃度演算器8と、メモリ9とを主に備える。
【0012】
限界電流式ガスセンサ2は、薄膜型限界電流式ガスセンサであってもよいし、バルク型限界電流式ガスセンサであってもよい。
図2を参照して、限界電流式ガスセンサ2の一例である薄膜型限界電流式ガスセンサの構成を説明する。
【0013】
限界電流式ガスセンサ2は、限界電流式ガスセンサ素子3を主に含む。限界電流式ガスセンサ2は、基板10と、ヒータ12と、絶縁層11,13とをさらに含んでもよい。
【0014】
基板10は、特に限定されないが、シリコン(Si)基板である。基板10の厚さは、例えば、2μm以下である。そのため、基板10の熱容量が小さくなって、ヒータ12の消費電力を低減させることができる。
【0015】
ヒータ12は、固体電解質20におけるイオン伝導を可能にするために、固体電解質20を加熱する。ヒータ12は、基板10上に設けられている。具体的には、ヒータ12は、絶縁層11を介して、基板10の上面上に形成されている。絶縁層11は、例えば、二酸化シリコン(SiO2)または酸化アルミニウム(Al2O3)で形成されている。ヒータ12は、絶縁層11上に設けられている。絶縁層11は、ヒータ12と基板10とを電気的に絶縁している。ヒータ12は、例えば、白金(Pt)薄膜ヒータまたはポリシリコン薄膜ヒータである。ヒータ12上に、絶縁層13が設けられている。ヒータ12は、絶縁層11と絶縁層13とによって挟まれている。絶縁層13は、例えば、二酸化シリコン(SiO2)または酸化アルミニウム(Al2O3)で形成されている。
【0016】
ヒータ12は、基板10の下面上に形成されてもよい。例えば、絶縁層11、ヒータ12及び絶縁層13で構成される積層体が、基板10の下面上に形成されてもよい。ヒータ12は、基板10に埋め込まれていてもよい。例えば、絶縁層11、ヒータ12及び絶縁層13で構成される積層体が、基板10に埋め込まれていてもよい。
【0017】
本実施の形態では、基板10の上面上に、少なくとも一つの限界電流式ガスセンサ素子3が形成されている。限界電流式ガスセンサ素子3は、ガス導入路16と、第1電極17と、固体電解質20と、第2電極27とを主に含む。限界電流式ガスセンサ素子3は、ガス排出路30と、絶縁膜32とをさらに含んでもよい。限界電流式ガスセンサ素子3は、絶縁層15,22,23,25,28をさらに含んでもよい。
【0018】
絶縁層13上に、絶縁層15が設けられている。絶縁層15は、例えば、五酸化タンタル(Ta2O5)層である。
【0019】
絶縁層13上に、絶縁層15を介して、ガス導入路16が設けられている。ガス導入路16は、ガス入口35と第1電極17のうち固体電解質20に対向している第1部分17dとの間に延在している。基板10の上面に沿う方向(
図2の左右方向)におけるガス導入路16の長さは、例えば、ガス導入路16の厚さの10倍以上である。基板10の上面に沿う方向(
図2の左右方向)におけるガス導入路16の長さは、例えば、第1電極17の厚さの10倍以上である。
【0020】
ガス導入路16は、第1電極17の第1融点より高い第2融点を有する第1多孔質遷移金属酸化物で形成されている。ガス導入路16は、第2電極27の第3融点より高い第2融点を有する第1多孔質遷移金属酸化物で形成されている。本明細書では、遷移金属は、国際純正・応用化学連合(IUPAC)の元素の長周期表における3族から11族までの元素を意味する。第1多孔質遷移金属酸化物は、例えば、五酸化タンタル(Ta2O5)、二酸化チタン(TiO2)または酸化クロム(III)(Cr2O3)である。
【0021】
固体電解質20におけるイオンの伝導を可能にするために、限界電流式ガスセンサ2は、ヒータ12を用いて、例えば、400℃以上750℃以下の高温で動作する。また、ガス導入路16は第1電極17の第1融点より高い第2融点を有する第1多孔質遷移金属酸化物で形成されている。そのため、限界電流式ガスセンサ2を高温で動作させると、第1電極17では空孔が凝集するのに対し、ガス導入路16では空孔が均一に分布したままである。そのため、ガス導入路16は、第1電極17よりも被測定ガス4を通しやすい。
【0022】
ガス導入路16の第1充填率は、例えば、60%以下である。ガス導入路16の第1充填率は、例えば、45%以下であってもよい。第1多孔質遷移金属酸化物で形成されているガス導入路16は、例えば、遷移金属酸化物を斜方蒸着することによって得られる。第1多孔質遷移金属酸化物で形成されているガス導入路16は、遷移金属酸化物の粉末を焼結させることによって得られてもよく、ガス導入路16は、多孔質の遷移金属酸化物焼結体であってもよい。ガス導入路16は、単位時間当たりの固体電解質20への被測定ガス4の流量を制限する。
【0023】
ガス導入路16の第1充填率が減少して、ガス導入路16の空孔率が増加すると、被測定ガス4がガス導入路16を通りやすくなり、限界電流式ガスセンサ2の応答時間が短縮され得る。ガス導入路16の空孔率が増加すると、限界電流式ガスセンサ2の動作時に固体電解質20に発生する熱歪を、ガス導入路16で緩和することができる。限界電流式ガスセンサ2の限界電流値の温度係数のばらつきを減少させることができる。
【0024】
本明細書において、ある層の充填率は、以下のようにして算出される。当該層の反射スペクトルを得る。この反射スペクトルから当該層の光学厚さndを算出する。nは当該層の屈折率を表し、dは当該層の物理厚さを表す。それから、当該層のSEM断面像を取得する。当該層のSEM断面像から、当該層の物理厚さdを得る。当該層の光学厚さndと当該層の物理厚さdとから、当該層の屈折率nを得る。予め当該層の充填率が100%である場合の屈折率n100を得ておく。一般に、ローレンツ・ローレンツの式から、当該層の充填率は、(n2-1)/(n2+2)に比例することが分かる。そこで、(n100
2-1)/(n100
2+2)に対する(n2-1)/(n2+2)の比率を算出して、当該層の充填率が算出される。
【0025】
第1電極17は、ガス導入路16上に設けられている。第1電極17は、固体電解質20上に設けられている。特定的には、第1電極17は、基板10に対向する固体電解質20の第1面20a(固体電解質20の下面)上に設けられている。第1電極17の第1部分17dは、固体電解質20の第1面20aに対向している。第1電極17は、固体電解質20とガス導入路16との間に設けられている。第1電極17の第1部分17dは、第1電極17のうち、基板10の上面の法線方向において固体電解質20とガス導入路16との間に挟まれている部分である。第1電極17の第1部分17dは、固体電解質20の第1面20aに接してもよい。
【0026】
第1電極17は、第1多孔質金属電極である。そのため、第1電極17は、被測定ガス4を固体電解質20に向けて通しやすい。第1電極17の第1融点は、ガス導入路16を構成する第1多孔質遷移金属酸化物の第2融点より低い。第1電極17の第1融点は、ガス排出路30を構成する第2多孔質遷移金属酸化物の第4融点より低い。第1電極17は、例えば、白金(Pt)またはパラジウム(Pd)で形成されている。
【0027】
第1電極17の厚さは、例えば、0.1μm以上10μm以下である。第1電極17は、ガス入口35まで延在してもよい。基板10の上面に沿う方向(
図1の左右方向)における第1電極17の長さは、例えば、第1電極17の厚さの10倍以上である。そのため、限界電流式ガスセンサ2の高温での動作時に第1電極17の空孔が凝集すると、基板10の上面に沿う方向(
図2の左右方向)では第1電極17の被測定ガス4の透過率は大きく減少するが、第1電極17の厚さ方向(
図2の上下方向)では第1電極17の被測定ガス4の透過率は比較的高い。限界電流式ガスセンサ2の高温での動作時にガス導入路16は第1電極17よりも被測定ガス4を通しやすい。第1電極17がガス入口35まで延在していても、被測定ガス4は主にガス導入路16を流れる。
【0028】
固体電解質20は、第1電極17上に設けられている。固体電解質20は、基板10に対向している第1面20a(下面)と、第1面20aとは反対側の第2面20b(上面)とを含む。固体電解質20は、酸素イオン伝導体のようなイオン伝導体である。固体電解質20は、例えば、ZrO2、HfO2、ThO2またはBi2O3等の母材に、CaO、MgO、Y2O3またはYb2O3等が安定剤として添加されている酸素イオン伝導体である。特定的には、固体電解質20は、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)で形成されている。固体電解質20は、例えば、(La,Sr,Ga,Mg,Co)O3で形成されている酸素イオン伝導体であってもよい。固体電解質20は、ヒータ12によって加熱されることによって、イオン伝導性を有する。限界電流式ガスセンサ2の動作時に、固体電解質20は、ヒータ12を用いて、例えば、400℃以上750℃以下の温度で加熱される。
【0029】
固体電解質20は、例えば1μm以上10μm以下の厚さを有する薄膜であり、限界電流式ガスセンサ2は薄膜型限界電流式ガスセンサである。固体電解質20は、例えば100μm以上の厚さを有するバルクであってもよく、限界電流式ガスセンサ2はバルク型限界電流式ガスセンサであってもよい。
【0030】
絶縁層13と、ガス導入路16の側面と、第1電極17の側面と、固体電解質20の側面及び第2面20bの一部とに、絶縁層22が設けられている。絶縁層22は、例えば、五酸化タンタル(Ta2O5)層である。絶縁層22上に、絶縁層23が設けられている。絶縁層23は、例えば、二酸化シリコン(SiO2)層である。絶縁層22の側面上と絶縁層23上とに、絶縁層25が設けられている。絶縁層25は、例えば、二酸化チタン(TiO2)層である。絶縁層22、絶縁層23及び絶縁層25には、第1開口と第2開口とが設けられている。第1開口から、固体電解質20の第2面20bの一部が露出している。第2開口から、第1電極17が露出している。第2開口は、ガス入口35として機能する。第1電極17がガス入口35まで延在していない場合、第2開口から、ガス導入路16が露出している。
【0031】
第2電極27は、固体電解質20上に設けられている。特定的には、第2電極27は、固体電解質20の第2面20b(固体電解質20の上面)上に設けられている。第2電極27の第2部分27dは、固体電解質20の第2面20bに対向している。第2電極27の第2部分27dは、第2電極27のうち、基板10の上面の法線方向において固体電解質20の第2面20bに対向している部分である。第2電極27の第2部分27dは、固体電解質20の第2面20bに接してもよい。第2電極27は、固体電解質20とガス排出路30との間に設けられている。
【0032】
第2電極27は、第2多孔質金属電極である。そのため、第2電極27は、ガスをガス排出路30に向けて通しやすい。第2電極27の第3融点は、ガス導入路16を構成する第1多孔質遷移金属酸化物の第2融点より低い。第2電極27の第3融点は、ガス排出路30を構成する第2多孔質遷移金属酸化物の第4融点より低い。第2電極27は、例えば、白金(Pt)またはパラジウム(Pd)で形成されている。
【0033】
第2電極27は、絶縁層25上に設けられている。第2電極27は、絶縁層22、絶縁層23及び絶縁層25に設けられている第1開口内に設けられている。第2電極27の厚さは、例えば、0.1μm以上10μm以下である。第2電極27は、ガス出口36まで延在してもよい。基板10の上面に沿う方向(
図2の左右方向)における第2電極27の長さは、例えば、第2電極27の厚さの10倍以上である。そのため、限界電流式ガスセンサ2の高温での動作時に第2電極27の空孔が凝集すると、基板10の上面に沿う方向(
図2の左右方向)では第2電極27のガスの透過率は大きく減少するが、第2電極27の厚さ方向(
図2の上下方向)では第2電極27のガスの透過率は比較的高い。
【0034】
第2電極27上に、絶縁層28が設けられている。絶縁層28は、例えば、二酸化チタン(TiO2)層である。
【0035】
絶縁層28上に、ガス排出路30が設けられている。ガス排出路30は、ガス出口36と第2電極27のうち固体電解質20に対向している第2部分27dとの間に延在している。基板10の上面に沿う方向(
図2の左右方向)におけるガス排出路30の長さは、例えば、ガス排出路30の厚さの10倍以上である。基板10の上面に沿う方向(
図2の左右方向)におけるガス排出路30の長さは、例えば、第2電極27の厚さの10倍以上である。
【0036】
ガス排出路30は、第1電極17の第1融点より高い第4融点を有する第2多孔質遷移金属酸化物で形成されている。ガス排出路30は、第2電極27の第3融点より高い第4融点を有する第2多孔質遷移金属酸化物で形成されている。第2多孔質遷移金属酸化物は、五酸化タンタル(Ta2O5)、二酸化チタン(TiO2)または酸化クロム(III)(Cr2O3)である。
【0037】
固体電解質20におけるイオンの伝導を可能にするために限界電流式ガスセンサ2を高温で動作させると、第2電極27では空孔が凝集するのに対し、ガス排出路30では空孔が均一に分布したままである。そのため、ガス排出路30は第2電極27よりもガスを通しやすい。第2電極27がガス出口36まで延在していても、ガスは主にガス排出路30を流れる。
【0038】
ガス排出路30の第2充填率は、例えば、60%以下である。ガス排出路30の第2充填率は、例えば、45%以下であってもよい。第2多孔質遷移金属酸化物で形成されているガス排出路30は、例えば、遷移金属酸化物を斜方蒸着することによって得られる。第2多孔質遷移金属酸化物で形成されているガス排出路30は、遷移金属酸化物の粉末を焼結させることによって得られてもよく、ガス排出路30は、多孔質の遷移金属酸化物焼結体であってもよい。
【0039】
ガス排出路30の第2充填率が減少して、ガス排出路30の空孔率が増加すると、ガスがガス排出路30を通りやすくなり、限界電流式ガスセンサ2の応答時間が短縮され得る。ガス排出路30の空孔率が増加すると、限界電流式ガスセンサ2の動作時に固体電解質20に発生する熱歪を、ガス排出路30で緩和することができる。限界電流式ガスセンサ2の限界電流値の温度係数のばらつきを減少させることができる。
【0040】
絶縁膜32は、第1電極17の第1部分17dと、固体電解質20と、第2電極27の第2部分27dとからなる積層体を覆っている。絶縁膜32は、ガス排出路30のうち第2電極27の第2部分27dに対向する部分をさらに覆っている。絶縁膜32は、第2電極27に対して基板10から遠位している。絶縁膜32は、さらに、絶縁層25上と、第2電極27の側面上と、絶縁層28の側面上とに設けられている。絶縁膜32は、例えば、二酸化シリコン(SiO2)層である。
【0041】
図1に示されるように、電圧源5は、限界電流式ガスセンサ2(限界電流式ガスセンサ素子3)に接続されている。具体的には、電圧源5の負極は、限界電流式ガスセンサ2(限界電流式ガスセンサ素子3)の第1電極17に接続されている。電圧源5の正極は、限界電流式ガスセンサ2(限界電流式ガスセンサ素子3)の第2電極27に接続されている。電圧源5は、限界電流式ガスセンサ2(限界電流式ガスセンサ素子3)に、第1電圧V
1(
図3を参照)と、第1電圧V
1より大きい第2電圧V
2(
図3を参照)とを供給する。第1電圧V
1は、第1ガスに対応する第1限界電流を限界電流式ガスセンサ2(限界電流式ガスセンサ素子3)に発生させる電圧である。第2電圧V
2は、第2ガスに対応する第2限界電流を限界電流式ガスセンサ2(限界電流式ガスセンサ素子3)に発生させる電圧である。電圧源5は、限界電流式ガスセンサ2へ出力される電圧を、第1電圧V
1と第2電圧V
2との間で切り換え可能である。
【0042】
電流検出器6は、限界電流式ガスセンサ2(限界電流式ガスセンサ素子3)に接続されている。具体的には、電流検出器6は、限界電流式ガスセンサ2(限界電流式ガスセンサ素子3)の第1電極17と第2電極27に接続されている。ガス導入路16によって固体電解質20への被測定ガス4の流量が制限されているため、第1電極17と第2電極27との間の電圧を増加させても、固体電解質を通って第1電極17と第2電極27との間に流れる電流が一定となる。この一定の電流は、限界電流と呼ばれている。電流検出器6は、限界電流式ガスセンサ2(限界電流式ガスセンサ素子3)に第1電圧V
1を印加した時における限界電流式ガスセンサ2の第1限界電流値I
1(
図3を参照)と、限界電流式ガスセンサ2(限界電流式ガスセンサ素子3)に第2電圧V
2を印加した時における限界電流式ガスセンサ2の第2限界電流値I
2(
図3を参照)とを取得する。限界電流値は、限界電流式ガスセンサ2(限界電流式ガスセンサ素子3)の限界電流の大きさを意味する。
【0043】
限界電流式ガスセンサ2に第1電圧V1を印加している時に、第1ガスに起因する第1限界電流が限界電流式ガスセンサ2に流れる。第1限界電流値I1は、被測定ガス4(例えば、排ガス)に含まれる第1ガス(例えば、酸素(O2))の濃度に比例する。これに対し、第2電圧V2は第1電圧V1よりも大きいため、限界電流式ガスセンサ2に第2電圧V2を印加している時に、第2ガスに起因する限界電流に加えて、第1ガスに起因する第1限界電流も、限界電流式ガスセンサ2を流れる。第2限界電流値I2は、第1ガス(例えば、酸素(O2))の濃度に比例する第1限界電流値I1と、第2ガス(例えば、窒素酸化物(NOX))の濃度に比例する限界電流値との和で与えられる。
【0044】
ガス濃度演算器8は、電流検出器6に接続されている。ガス濃度演算器8は、差分取得部8aと、ガス濃度取得部8gとを含む。
【0045】
差分取得部8aは、第2限界電流値I
2と第1限界電流値I
1との間の差分ΔI(
図3を参照)を取得する。具体的には、差分ΔIは、第2限界電流値I
2から第1限界電流値I
1を差し引くことによって得られる。上記のとおり、第2限界電流値I
2は、第1ガス(例えば、酸素(O
2))の濃度に比例する第1限界電流値I
1と、第2ガス(例えば、窒素酸化物(NO
X))の濃度に比例する限界電流値との和で与えられる。そのため、第2ガス(例えば、窒素酸化物(NO
X))の濃度に比例する限界電流値は、第2限界電流値I
2から第1限界電流値I
1を差し引くことによって得られる。
【0046】
一例では、ガス濃度演算器8は、主に半導体材料で形成されている演算処理装置を含む。演算処理装置で、第2限界電流値I2と第1限界電流値I1との間の差分ΔIを算出するプログラムが実行される。差分取得部8aは、演算処理装置で実行されるプログラムの処理の一部である。このプログラムは、例えば、ROMまたはRAMのようなメモリ9に記憶されている。
【0047】
別の例では、
図4に示されるように、差分取得部8aは、電気回路で構成されてもよい。具体的には、差分取得部8aは、増幅回路40と、差分回路50と含んでもよい。増幅回路40は、限界電流式ガスセンサ2(限界電流式ガスセンサ素子3)に接続されている。増幅回路40は、第1限界電流値I
1に対応する第1信号と、第2限界電流値I
2に対応する第2信号とを増幅する。増幅回路40は、例えば、オペアンプ41と抵抗42とを含む。
【0048】
差分回路50は、増幅回路40で増幅された第1信号と増幅回路40で増幅された第2信号との間の差分電圧を出力する。差分回路50は、例えば、オペアンプ51と、抵抗52,53,54,55と、基準電圧56とを含む。差分回路50は、第1参照電圧61と第2参照電圧62とスイッチ63とをさらに含む。基準電圧56は、例えば、第1参照電圧61と第2参照電圧62との間の中間の電圧である。第1限界電流値I1を得るときに、スイッチ63は、第1参照電圧61に接続される。第2限界電流値I2を得るときに、スイッチ63は、第2参照電圧62に接続される。差分回路50は、増幅回路40によって増幅された第1信号に重畳する増幅回路40(例えば、オペアンプ41)の第1オフセット電圧と、増幅回路40によって増幅された第2信号に重畳する増幅回路40(例えば、オペアンプ41)の第2オフセット電圧とを互いに打ち消すことができる。
【0049】
ガス濃度取得部8gは、第2限界電流値I
2と第1限界電流値I
1との間の差分ΔIに基づいて第2ガスの濃度を得る。具体的には、ガス濃度取得部8gは、差分取得部8aとメモリ9とに接続されている。第2限界電流値I
2と第1限界電流値I
1との間の差分ΔIが、差分取得部8aからガス濃度取得部8gに入力される。第2ガスの種類も、ガス濃度取得部8gに入力される。例えば、第2ガスの種類はメモリ9に記憶されており、ガス濃度取得部8gはメモリ9から第2ガスの種類を読み出す。メモリ9には、第2ガス濃度の種類と、第2限界電流値I
2と第1限界電流値I
1との間の差分ΔIと、第2ガス濃度とが互いに対応づけられているデータテーブル9t(
図5を参照)が記憶されている。ガス濃度取得部8gは、データテーブル9tを参照して、第2ガスの種類と差分ΔIとに対応する第2ガスの濃度を得る。
【0050】
図6を参照して、実施の形態1のガス濃度測定方法を説明する。
本実施の形態のガス濃度測定方法は、第1ガスと第2ガスとを含む被測定ガス4を、限界電流式ガスセンサ2(限界電流式ガスセンサ素子3)に流入させる(S1)。被測定ガス4は、例えば、自動車の排ガスである。第1ガスは、例えば、酸素(O
2)である。第2ガスは、例えば、窒素酸化物(NO
x)である。被測定ガス4は、主にガス導入路16を通って、ガス入口35から第1電極17に流れる。ガス導入路16は、単位時間当たりの固体電解質20への被測定ガス4の流量を制限する。
【0051】
本実施の形態のガス濃度測定方法は、電圧源5から限界電流式ガスセンサ2(限界電流式ガスセンサ素子3)に第1電圧V1を印加して、電流検出器6を用いて限界電流式ガスセンサ2の第1限界電流値I1を取得すること(S2)を備える。第1電圧V1は、第1ガスに対応する第1限界電流を限界電流式ガスセンサ2(限界電流式ガスセンサ素子3)に発生させる電圧である。
【0052】
具体的には、電圧源5は、第1電極17と第2電極27との間に、第1電圧V1を印加する。第1電極17は、電圧源5の負極に接続されている。電圧源5は、第1電極17に電子を供給する。第1ガスは、第1電極17と固体電解質20との界面で電子を受け取って、第1ガスに含まれる第1元素の第1イオンに変換される。例えば、第1ガスは酸素(O2)であり、第1イオンは酸素イオン(2O2-)である。固体電解質20は、ヒータ12を用いて、例えば、400℃以上750℃以下の温度で加熱されている。固体電解質20は、第1イオンを、固体電解質20の第1面20aから固体電解質20の第2面20bに伝導させる。第1イオンの伝導に起因して、第1電極17と第2電極27との間に電流が流れる。
【0053】
ガス導入路16によって固体電解質20への被測定ガス4の流量が制限されているため、第1電極17と第2電極27との間の電圧を増加させても、第1電極17と第2電極27との間に流れる電流が一定となる。この一定の電流は、第1限界電流である。第1限界電流の大きさである第1限界電流値I1は、被測定ガス4に含まれる第1ガスの濃度に比例する。第1限界電流値I1は、電流検出器6で測定される。
【0054】
第2電極27は、電圧源5の正極に接続されている。電圧源5は、第2電極27から電子を奪う。第2電極27に到達した第1イオン(例えば、2O2-)は、第2電極27と固体電解質20との界面で電子を奪われて、ガス(例えば、O2)に変換される。ガスは、第2多孔質金属電極である第2電極27を通って、ガス排出路30に達する。ガス排出路30は、第2電極27よりもガスを通しやすい。ガスは、主にガス排出路30を通って、ガス出口36から放出される。
【0055】
本実施の形態のガス濃度測定方法は、電圧源5から限界電流式ガスセンサ2(限界電流式ガスセンサ素子3)に、第1電圧V1より大きい第2電圧V2を印加して、電流検出器6を用いて限界電流式ガスセンサ2の第2限界電流値I2を取得すること(S3)を備える。第2電圧V2は、第2ガスに対応する第2限界電流を限界電流式ガスセンサ2(限界電流式ガスセンサ素子3)に発生させる電圧である。
【0056】
具体的には、限界電流式ガスセンサ2(限界電流式ガスセンサ素子3)に印加する電圧を、第1電圧V1から第2電圧V2に切り換える。第2ガスが例えば窒素酸化物(NOX)であるとき、第1電極17は、窒素酸化物(NOx)の大部分を占める一酸化窒素NOを、窒素(N2)と酸素(O2)とに分解する。
【0057】
第1電極17は、電圧源5の負極に接続されている。電圧源5は、第1電極17に電子を供給する。酸素(O2)は、第1電極17と固体電解質20との界面で電子を受け取って、第2ガスに含まれる第2元素の第2イオンに変換される。例えば、第2イオンは酸素イオン(2O2-)である。固体電解質20は、ヒータ12を用いて、例えば、400℃以上750℃以下の温度で加熱されている。固体電解質20は、第2イオンを、固体電解質20の第1面20aから固体電解質20の第2面20bに伝導させる。第2イオンの伝導に起因して、第1電極17と第2電極27との間に電流が流れる。なお、第1ガスに含まれる第1元素の第1イオンと第2ガスに含まれる第2元素の第2イオンとは、ともに、固体電解質20を伝導し得る。第2ガスに含まれる第2元素の第2イオンは、第1ガスに含まれる第1元素の第1イオンと同じであってもよい。
【0058】
ガス導入路16によって固体電解質20への被測定ガス4の流量が制限されているため、第1電極17と第2電極27との間の電圧を増加させても、第1電極17と第2電極27との間に流れる電流が一定となる。第2電圧V2は第1電圧V1よりも大きいため、限界電流式ガスセンサ2(限界電流式ガスセンサ素子3)に第2電圧V2を印加している時に、第2ガスに起因する限界電流に加えて、第1ガスに起因する第1限界電流も、限界電流式ガスセンサ2を流れる。第2限界電流値I2は、第1ガス(例えば、酸素(O2))の濃度に比例する第1限界電流値I1と、第2ガス(例えば、窒素酸化物(NOX))の濃度に比例する限界電流値との和で与えられる。第2限界電流値I2は、電流検出器6で測定される。
【0059】
第2電極27は、電圧源5の正極に接続されている。電圧源5は、第2電極27から電子を奪う。第2電極27に到達した第2イオン(例えば、2O2-)は、第2電極27と固体電解質20との界面で電子を奪われて、ガス(例えばO2)に変換される。ガスは、第2多孔質金属電極である第2電極27を通って、ガス排出路30に達する。ガス排出路30は、第2電極27よりもガスを通しやすい。ガスは、主にガス排出路30を通って、ガス出口36から放出される。
【0060】
本実施の形態のガス濃度測定方法は、第2限界電流値I2と第1限界電流値I1との間の差分ΔIを取得すること(S4)を備える。上記のとおり、第2限界電流値I2は、被測定ガス4(例えば、排ガス)に含まれる第1ガス(例えば、酸素(O2))の濃度に比例する第1限界電流値I1と、被測定ガス4(例えば、排ガス)に含まれる第2ガス(例えば、窒素酸化物(NOX))の濃度に比例する限界電流値との和で与えられる。そのため、第2ガスの濃度に比例する限界電流値は、第2限界電流値I2から第1限界電流値I1を差し引くことによって得られる。すなわち、第2限界電流値I2と第1限界電流値I1との間の差分ΔIは、第2ガスの濃度に比例する。
【0061】
一例では、ガス濃度演算器8は、主に半導体材料で形成されている演算処理装置を含んでもよい。演算処理装置で、第2限界電流値I2と第1限界電流値I1との間の差分ΔIを算出するプログラムが実行されてもよい。このプログラムは、例えば、ROMまたはRAMのようなメモリ9に記憶されている。
【0062】
別の例では、
図4に示されるように、電気回路で構成されている差分取得部8aで、第2限界電流値I
2と第1限界電流値I
1との間の差分ΔIが取得されてもよい。具体的には、差分取得部8aは、増幅回路40と、差分回路50と含んでもよい。増幅回路40は、第1限界電流値I
1に対応する第1信号と、第2限界電流値I
2に対応する第2信号とを増幅する。増幅回路40は、例えば、オペアンプ41と抵抗42とを含む。
【0063】
差分回路50は、増幅回路40で増幅された第1信号と増幅回路40で増幅された第2信号との間の差分電圧を出力する。差分回路50は、例えば、オペアンプ51と、抵抗52,53,54,55と、基準電圧56とを含む。差分回路50は、第1参照電圧61と第2参照電圧62とスイッチ63とをさらに含む。基準電圧56は、例えば、第1参照電圧61と第2参照電圧62との間の中間の電圧である。第1限界電流値I1を得るときに、スイッチ63は、第1参照電圧61に接続される。第2限界電流値I2を得るときに、スイッチ63は、第2参照電圧62に接続される。差分回路50は、増幅回路40によって増幅された第1信号に重畳する増幅回路40(例えば、オペアンプ41)の第1オフセット電圧と、増幅回路40によって増幅された第2信号に重畳する増幅回路40(例えば、オペアンプ41)の第2オフセット電圧とを互いに打ち消すことができる。
【0064】
本実施の形態のガス濃度測定方法は、第2限界電流値I
2と第1限界電流値I
1との間の差分ΔIに基づいて第2ガスの濃度を得ること(S5)をさらに備える。具体的には、差分取得部8aで得られた第2限界電流値I
2と第1限界電流値I
1との間の差分ΔIが、差分取得部8aからガス濃度取得部8gに入力される。第2ガスの種類も、ガス濃度取得部8gに入力される。例えば、第2ガスの種類はメモリ9に記憶されており、ガス濃度取得部8gはメモリ9から第2ガスの種類を読み出す。メモリ9には、第2ガス濃度の種類と、第2限界電流値I
2と第1限界電流値I
1との間の差分ΔIと、第2ガス濃度とが互いに対応づけられているデータテーブル9t(
図5を参照)が記憶されている。ガス濃度取得部8gは、データテーブル9t(
図5を参照)を参照して、第2ガスの種類と差分ΔIとに対応する第2ガスの濃度を得る。
【0065】
本実施の形態のガス濃度測定システム1及びガス濃度測定方法の効果を説明する。
本実施の形態のガス濃度測定システム1は、限界電流式ガスセンサ2と、限界電流式ガスセンサ2に接続されている電圧源5と、限界電流式ガスセンサ2に接続されている電流検出器6と、電流検出器6に接続されているガス濃度演算器8とを備える。電圧源5は、限界電流式ガスセンサ2に、第1電圧V1と、第1電圧V1より大きい第2電圧V2とを供給する。第1電圧V1は、第1ガスに対応する第1限界電流を限界電流式ガスセンサ2に発生させる電圧である。第2電圧V2は、第2ガスに対応する第2限界電流を限界電流式ガスセンサ2に発生させる電圧である。電流検出器6は、限界電流式ガスセンサ2に第1電圧V1を印加した時における限界電流式ガスセンサ2の第1限界電流値I1と、限界電流式ガスセンサ2に第2電圧V2を印加した時における限界電流式ガスセンサ2の第2限界電流値I2とを取得する。ガス濃度演算器8は、第2限界電流値I2と第1限界電流値I1との間の差分ΔIを取得する差分取得部8aと、差分ΔIに基づいて第2ガスの濃度を得るガス濃度取得部8gとを含む。
【0066】
第2限界電流値I2は、被測定ガス4に含まれる第1ガスの濃度に比例する第1限界電流値I1と、被測定ガス4に含まれる第2ガスの濃度に比例する限界電流値との和で与えられる。第2ガスの濃度に比例する限界電流値は、第2限界電流値I2と第1限界電流値I1との間の差分ΔIである。ガス濃度測定システム1は差分ΔIを取得する差分取得部8aと差分ΔIに基づいて第2ガスの濃度を得るガス濃度取得部8gとを備えているため、第2ガスの濃度が得られる。そのため、ガス濃度測定システム1では、第1ガスを除去するための部屋が不要になる。ガス濃度測定システム1は、小型化され得る。
【0067】
本実施の形態のガス濃度測定システム1では、電圧源5は、限界電流式ガスセンサ2へ出力される電圧を、第1電圧V1と第2電圧V2との間で切り換え可能である。そのため、限界電流式ガスセンサ2が少なくとも一つの限界電流式ガスセンサ素子3を含んでいれば、第2ガスの濃度が得られる。ガス濃度測定システム1は、小型化され得る。
【0068】
本実施の形態のガス濃度測定システム1では、差分取得部8aは、増幅回路40と、差分回路50とを含む。増幅回路40は、第1限界電流値I1に対応する第1信号と、第2限界電流値I2に対応する第2信号とを増幅する。差分回路50は、増幅回路40で増幅された第1信号と増幅回路40で増幅された第2信号との間の差分ΔIを出力する。
【0069】
差分回路50は、増幅回路40によって増幅された第1信号に重畳する増幅回路40(例えば、オペアンプ41)の第1オフセット電圧と、増幅回路40によって増幅された第2信号に重畳する増幅回路40(例えば、オペアンプ41)の第2オフセット電圧とを互いに打ち消すことができる。より正確な第2ガスの濃度が得られる。
【0070】
本実施の形態のガス濃度測定システム1では、限界電流式ガスセンサ2(限界電流式ガスセンサ素子3)は、固体電解質20と、第1電極17と、第2電極27と、ガス導入路16とを含む。第1電極17は、固体電解質20上に設けられている。第2電極27は、固体電解質20上に設けられている。ガス導入路16は、ガス入口35と第1電極17のうち固体電解質20に対向している第1部分17dとの間に延在している。第1電極17は、第1多孔質金属電極である。ガス導入路16は、第1電極17の第1融点より高い第2融点を有する第1多孔質遷移金属酸化物で形成されている。第1多孔質遷移金属酸化物は、Ta2O5、TiO2またはCr2O3である。
【0071】
限界電流式ガスセンサ2(限界電流式ガスセンサ素子3)を高温で動作させても、第1多孔質遷移金属酸化物で形成されているガス導入路16の空孔はほとんど凝集しない。そのため、
図7に示されるように、限界電流式ガスセンサ2(複数の限界電流式ガスセンサ素子3)の限界電流値の温度係数のばらつきと複数の限界電流式ガスセンサ2(複数の限界電流式ガスセンサ素子3)の間の応答時間のばらつきとを減少させることができる。限界電流式ガスセンサ2を高温で動作させても、第1多孔質遷移金属酸化物で形成されているガス導入路16の空孔はほとんど凝集せず、ガス導入路16を通る被測定ガス4の流量はほとんど変化しない。そのため、
図7に示されるように、限界電流式ガスセンサ2の応答時間が短縮され得る。
【0072】
なお、
図7に示される比較例の限界電流式ガスセンサは、以下の点で、本実施の形態の限界電流式ガスセンサ2と異なっている。比較例の限界電流式ガスセンサは、第1多孔質遷移金属酸化物で形成されているガス導入路16と、第2多孔質遷移金属酸化物で形成されているガス排出路30とを備えていない。比較例の限界電流式ガスセンサでは、多孔質白金電極である第1電極17がガス導入路として機能し、多孔質白金電極である第2電極27がガス排出路として機能している。
【0073】
図8に示されるような以下の方法で、限界電流式ガスセンサの限界電流値の温度係数を算出した。比較例の限界電流式ガスセンサについて、複数のサンプルを製造した。本実施の形態の限界電流式ガスセンサ2について、複数のサンプルを製造した。各サンプルの温度Tを変化させながら、各サンプルの限界電流値I
Lを測定する。そして、温度Tの対数であるlog Tに対する限界電流値I
Lの対数であるlog I
Lの関係を、最小二乗法を用いて線形近似する。この近似線の傾きaを、限界電流式ガスセンサの限界電流値の温度係数として得る。
【0074】
図9に示されるような以下の方法で、限界電流式ガスセンサの応答時間t
rを算出した。比較例の限界電流式ガスセンサについて、複数のサンプルを製造した。本実施の形態の限界電流式ガスセンサ2について、複数のサンプルを製造した。各サンプルを被測定ガス4に曝す。時間t=0において、各サンプルに電圧源5を接続する。各サンプルから出力される電流値の時間変化(限界電流式ガスセンサの過渡応答)を測定する。各サンプルから出力される電流値が一定であるとみなすことができる期間の平均電流値が、各サンプルの限界電流値I
Lである。そして、時間t=0から、各サンプルから出力される電流値が限界電流値I
Lの1.1倍となるまでの時間を、各サンプルの応答時間t
rとして得る。
【0075】
本実施の形態のガス濃度測定方法は、電圧源5から限界電流式ガスセンサ2に第1電圧V1を印加して、電流検出器6を用いて限界電流式ガスセンサ2の第1限界電流値I1を取得すること(S2)を備える。第1電圧V1は、第1ガスに対応する第1限界電流を限界電流式ガスセンサ2に発生させる電圧である。本実施の形態のガス濃度測定方法は、電圧源5から限界電流式ガスセンサ2に第1電圧V1より大きい第2電圧V2を印加して、電流検出器6を用いて限界電流式ガスセンサ2の第2限界電流値I2を取得すること(S3)を備える。第2電圧V2は、第2ガスに対応する第2限界電流を限界電流式ガスセンサ2に発生させる電圧である。本実施の形態のガス濃度測定方法は、第2限界電流値I2と第1限界電流値I1との間の差分ΔIを取得すること(S4)と、差分ΔIに基づいて第2ガスの濃度を得ること(S5)とをさらに備える。
【0076】
第2限界電流値I2は、被測定ガス4に含まれる第1ガスの濃度に比例する第1限界電流値I1と、被測定ガス4に含まれる第2ガスの濃度に比例する限界電流値との和で与えられる。第2ガスの濃度に比例する限界電流値は、第2限界電流値I2と第1限界電流値I1との間の差分ΔIである。本実施の形態のガス濃度測定方法は第2限界電流値I2と第1限界電流値I1との間の差分ΔIを取得すること(S4)と、差分ΔIに基づいて第2ガスの濃度を得ること(S5)とを備えているため、第2ガスの濃度が得られる。そのため、本実施の形態のガス濃度測定方法では、第1ガスを除去するための部屋が不要になる。本実施の形態のガス濃度測定方法は、ガス濃度測定システム1の小型化を可能にする。
【0077】
本実施の形態のガス濃度測定方法は、第1限界電流値I1を取得した後かつ第2限界電流値I2を取得する前に、限界電流式ガスセンサ2に印加する電圧を第1電圧V1から第2電圧V2に切り換える。そのため、限界電流式ガスセンサ2が少なくとも一つの限界電流式ガスセンサ素子3を含んでいれば、第2ガスの濃度が得られる。本実施の形態のガス濃度測定方法は、ガス濃度測定システム1の小型化を可能にする。
【0078】
(実施の形態2)
図10を参照して、実施の形態2に係るガス濃度測定システム1bを説明する。本実施の形態のガス濃度測定システム1bは、実施の形態1のガス濃度測定システム1と同様の構成を備えるが、以下の点で主に異なっている。
【0079】
本実施の形態では、限界電流式ガスセンサ2bは、複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3を含む。複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3は、互いに同じ構成を有している。具体的には、複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3は、各々、固体電解質20と、第1電極17と、第2電極27と、ガス導入路16とを含む。第1電極17は、固体電解質20上に設けられている。第2電極27は、固体電解質20上に設けられている。ガス導入路16は、ガス入口35と第1電極17のうち固体電解質20に対向している第1部分17dとの間に延在している。第1電極17は、第1多孔質金属電極である。ガス導入路16は、第1電極17の第1融点より高い第2融点を有する第1多孔質遷移金属酸化物で形成されている。第1多孔質遷移金属酸化物は、Ta2O5、TiO2またはCr2O3である。
【0080】
電流検出器6は、複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3にそれぞれ対応する複数の電流検出素子6a,6bを含む。複数の電流検出素子6a,6bは、複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3に第1電圧V1を印加した時における複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3の第1の複数の限界電流値を取得する。複数の電流検出素子6a,6bは、複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3に第2電圧V2を印加した時における複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3の第2の複数の限界電流値を取得する。
【0081】
差分取得部8aは、第2限界電流値I2と第1限界電流値I1との間の差分ΔIとして、第2の複数の限界電流値と第1の複数の限界電流値との間の差分の平均値を算出する。
【0082】
一例では、第2の複数の限界電流値と第1の複数の限界電流値との間の差分の平均値は、第2の複数の限界電流値の総和と第1の複数の限界電流値の総和との間の差分を、複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3の個数で割ることによって算出される。第2の複数の限界電流値の総和と第1の複数の限界電流値の総和との間の差分は、第2の複数の限界電流値の総和から第1の複数の限界電流値の総和を差し引くことによって得られる。
【0083】
別の例では、第2の複数の限界電流値と第1の複数の限界電流値との間の差分の平均値は、複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3の各々について、第2電圧V2を印加した時の限界電流値と第1電圧V1を印加した時の限界電流値との間の差分を算出し、それから、複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3のそれぞれの複数の差分の平均値を算出することによって算出される。複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3の各々について、第2電圧V2を印加した時の限界電流値と第1電圧V1を印加した時の限界電流値との間の差分は、第2電圧V2を印加した時の限界電流値から第1電圧V1を印加した時の限界電流値を差し引くことによって得られる。複数の差分の平均値は、複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3の複数の差分の総和を複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3の個数で割ることによって算出される。
【0084】
図11を参照して、実施の形態2に係るガス濃度測定方法を説明する。本実施の形態のガス濃度測定方法は、実施の形態1のガス濃度測定方法と同様のステップを備えるが、以下の点で主に異なっている。
【0085】
本実施の形態のガス濃度測定方法は、実施の形態1の第1限界電流値I1を取得すること(S2)として、電圧源5から複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3に第1電圧V1を印加して、複数の電流検出素子6a,6bを用いて複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3の第1の複数の限界電流値を取得すること(S2b)を備える。本実施の形態のガス濃度測定方法は、実施の形態1の第2限界電流値I2を取得すること(S3)として、電圧源5から複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3に第2電圧V2を印加して、複数の電流検出素子6a,6bを用いて複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3の第2の複数の限界電流値を取得すること(S3b)を備える。
【0086】
本実施の形態のガス濃度測定方法は、実施の形態1の第2限界電流値I2と第1限界電流値I1との間の差分ΔIを取得すること(S4)として、第2の複数の限界電流値と第1の複数の限界電流値との間の差分の平均値を取得すること(S4b)を備える。差分取得部8aが、第2の複数の限界電流値と第1の複数の限界電流値との間の差分の平均値を算出する。第2の複数の限界電流値と第1の複数の限界電流値との間の差分の平均値は、第2限界電流値I2と第1限界電流値I1との間の差分ΔIに相当する。
【0087】
一例では、第2の複数の限界電流値と第1の複数の限界電流値との間の差分の平均値は、第2の複数の限界電流値の総和と第1の複数の限界電流値の総和との間の差分を、複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3の個数で割ることによって算出される。第2の複数の限界電流値の総和と第1の複数の限界電流値の総和との間の差分は、第2の複数の限界電流値の総和から第1の複数の限界電流値の総和を差し引くことによって得られる。
【0088】
別の例では、第2の複数の限界電流値と第1の複数の限界電流値との間の差分の平均値は、複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3の各々について、第2電圧V2を印加した時の限界電流値と第1電圧V1を印加した時の限界電流値との間の差分を算出し、それから、複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3のそれぞれの複数の差分の平均値を算出することによって算出される。複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3の各々について、第2電圧V2を印加した時の限界電流値と第1電圧V1を印加した時の限界電流値との間の差分は、第2電圧V2を印加した時の限界電流値から第1電圧V1を印加した時の限界電流値を差し引くことによって得られる。複数の差分の平均値は、複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3の複数の差分の総和を複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3の個数で割ることによって算出される。
【0089】
本実施の形態のガス濃度測定システム1b及びガス濃度測定方法は、実施の形態1のガス濃度測定システム1及びガス濃度測定方法に加えて、以下の効果を奏する。
【0090】
本実施の形態のガス濃度測定システム1bでは、限界電流式ガスセンサ2bは、複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3を含む。電流検出器6は、複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3にそれぞれ対応する複数の電流検出素子6a,6bを含む。複数の電流検出素子6a,6bは、複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3に第1電圧V1を印加した時における複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3の第1の複数の限界電流値を取得する。複数の電流検出素子6a,6bは、複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3に第2電圧V2を印加した時における複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3の第2の複数の限界電流値を取得する。第2限界電流値I2と第1限界電流値I1との間の差分ΔIは、第2の複数の限界電流値と第1の複数の限界電流値との間の差分の平均値である。
【0091】
本実施の形態のガス濃度測定方法では、限界電流式ガスセンサ2bは、複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3を含む。電流検出器6は、複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3にそれぞれ対応する複数の電流検出素子6a,6bを含む。第1限界電流値I1を取得すること(S2)は、複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3に第1電圧V1を印加して、複数の電流検出素子6a,6bを用いて複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3の第1の複数の限界電流値を取得すること(S2b)である。第2限界電流値I2を取得すること(S3)は、複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3に第2電圧V2を印加して、複数の電流検出素子6a,6bを用いて複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3の第2の複数の限界電流値を取得すること(S3b)である。第2限界電流値I2と第1限界電流値I1との間の差分ΔIを取得すること(S4)は、第2の複数の限界電流値と第1の複数の限界電流値との間の差分の平均値を取得すること(S4b)である。
【0092】
本実施の形態のガス濃度測定システム1b及び本実施の形態のガス濃度測定方法では、第2の複数の限界電流値と第1の複数の限界電流値との間の差分の平均値に基づいて、第2ガスの濃度を得ている。複数の限界電流式ガスセンサ素子3,3の電流-電圧特性にばらつきがあっても、第2ガスの濃度を向上された精度で得ることができる。
【0093】
(実施の形態3)
図12を参照して、実施の形態3に係るガス濃度測定システム1cを説明する。本実施の形態のガス濃度測定システム1cは、実施の形態1のガス濃度測定システム1と同様の構成を備えるが、以下の点で主に異なっている。
【0094】
本実施の形態では、限界電流式ガスセンサ2cは、第1限界電流式ガスセンサ素子3aと、第2限界電流式ガスセンサ素子3bとを含む。第1限界電流式ガスセンサ素子3aと、第2限界電流式ガスセンサ素子3bとは、互いに同じ構成を有している。例えば、第1限界電流式ガスセンサ素子3aと、第2限界電流式ガスセンサ素子3bとは、各々、実施の形態1の限界電流式ガスセンサ素子3と同じ構成を有している。具体的には、第1限界電流式ガスセンサ素子3a及び第2限界電流式ガスセンサ素子3bは、各々、固体電解質20と、第1電極17と、第2電極27と、ガス導入路16とを含む。第1電極17は、固体電解質20上に設けられている。第2電極27は、固体電解質20上に設けられている。ガス導入路16は、ガス入口35と第1電極17のうち固体電解質20に対向している第1部分17dとの間に延在している。第1電極17は、第1多孔質金属電極である。ガス導入路16は、第1電極17の第1融点より高い第2融点を有する第1多孔質遷移金属酸化物で形成されている。第1多孔質遷移金属酸化物は、Ta2O5、TiO2またはCr2O3である。
【0095】
電流検出器6は、第1限界電流式ガスセンサ素子3aに対応する第1電流検出素子6cと、第2限界電流式ガスセンサ素子3bに対応する第2電流検出素子6dとを含む。第1電流検出素子6cは、第1限界電流式ガスセンサ素子3aに第1電圧V1を印加した時における第1限界電流式ガスセンサ素子3aの限界電流値を第1限界電流値I1として取得する。第2電流検出素子6dは、第2限界電流式ガスセンサ素子3bに第2電圧V2を印加した時における第2限界電流式ガスセンサ素子3bの限界電流値を第2限界電流値I2として取得する。
【0096】
特定的には、電圧源5は、第1電圧V1を第1限界電流式ガスセンサ素子3aに供給する第1電圧供給器5aと、第2電圧V2を第2限界電流式ガスセンサ素子3bに供給する第2電圧供給器5bとを含んでもよい。第1限界電流値I1(第1限界電流式ガスセンサ素子3aの限界電流値)を取得しながら、第2限界電流値I2(第2限界電流式ガスセンサ素子3bの限界電流値)を取得してもよい。
【0097】
図13を参照して、実施の形態3に係るガス濃度測定方法を説明する。本実施の形態のガス濃度測定方法は、実施の形態1のガス濃度測定方法と同様のステップを備えるが、以下の点で主に異なっている。
【0098】
本実施の形態のガス濃度測定方法は、実施の形態1の第1限界電流値I1を取得すること(S2)として、電圧源5(第1電圧供給器5a)から第1限界電流式ガスセンサ素子3aに第1電圧V1を印加して、第1電流検出素子6cを用いて第1限界電流式ガスセンサ素子3aの限界電流値を取得すること(S2c)を備える。第1限界電流式ガスセンサ素子3aの限界電流値は、第1限界電流値I1である。本実施の形態のガス濃度測定方法は、実施の形態1の第2限界電流値I2を取得すること(S3)として、電圧源5(第2電圧供給器5b)から第2限界電流式ガスセンサ素子3bに第1電圧V1を印加して、第2電流検出素子6dを用いて第2限界電流式ガスセンサ素子3bの限界電流値を取得すること(S3c)を備える。第2限界電流式ガスセンサ素子3bの限界電流値は、第2限界電流値I2である。
【0099】
特定的には、電圧源5は、第1電圧V1を第1限界電流式ガスセンサ素子3aに供給する第1電圧供給器5aと、第2電圧V2を第2限界電流式ガスセンサ素子3bに供給する第2電圧供給器5bとを含んでもよい。第1限界電流値I1(第1限界電流式ガスセンサ素子3aの限界電流値)を取得しながら、第2限界電流値I2(第2限界電流式ガスセンサ素子3bの限界電流値)を取得してもよい。
【0100】
本実施の形態のガス濃度測定システム1c及びガス濃度測定方法は、実施の形態1のガス濃度測定システム1及びガス濃度測定方法に加えて、以下の効果を奏する。
【0101】
本実施の形態のガス濃度測定システム1cでは、限界電流式ガスセンサ2cは、第1限界電流式ガスセンサ素子3aと第2限界電流式ガスセンサ素子3bとを含む。電流検出器6は、第1限界電流式ガスセンサ素子3aに対応する第1電流検出素子6cと、第2限界電流式ガスセンサ素子3bに対応する第2電流検出素子6dとを含む。第1電流検出素子6cは、第1限界電流式ガスセンサ素子3aに第1電圧V1を印加した時における第1限界電流式ガスセンサ素子3aの限界電流値を第1限界電流値I1として取得する。第2電流検出素子6dは、第2限界電流式ガスセンサ素子3bに第2電圧V2を印加した時における第2限界電流式ガスセンサ素子3bの限界電流値を第2限界電流値I2として取得する。そのため、第1ガスを除去するための部屋が不要になる。ガス濃度測定システム1cは、小型化され得る。
【0102】
本実施の形態のガス濃度測定システム1cでは、電圧源5は、第1電圧V1を第1限界電流式ガスセンサ素子3aに供給する第1電圧供給器5aと、第2電圧V2を第2限界電流式ガスセンサ素子3bに供給する第2電圧供給器5bとを含む。
【0103】
第1電圧供給器5a及び第2電圧供給器5bは、第1限界電流式ガスセンサ素子3aに第1電圧V1を供給しながら、第2限界電流式ガスセンサ素子3bに第2電圧V2を供給することを可能にする。第1限界電流値I1(第1限界電流式ガスセンサ素子3aの限界電流値)を取得しながら、第2限界電流値I2(第2限界電流式ガスセンサ素子3bの限界電流値)を取得することができる。そのため、第2ガスの濃度を測定する時間が短縮され得る。
【0104】
本実施の形態のガス濃度測定方法では、限界電流式ガスセンサ2cは、第1限界電流式ガスセンサ素子3aと第2限界電流式ガスセンサ素子3bとを含む。電流検出器6は、第1限界電流式ガスセンサ素子3aに対応する第1電流検出素子6cと、第2限界電流式ガスセンサ素子3bに対応する第2電流検出素子6dとを含む。第1限界電流値I1を取得すること(S2)は、電圧源5(第1電圧供給器5a)から第1限界電流式ガスセンサ素子3aに第1電圧V1を印加して、第1電流検出素子6cを用いて第1限界電流式ガスセンサ素子3aの限界電流値を取得すること(S2c)である。第2限界電流値I2を取得すること(S3)は、電圧源5(第2電圧供給器5b)から第2限界電流式ガスセンサ素子3bに第1電圧V1を印加して、第2電流検出素子6dを用いて第2限界電流式ガスセンサ素子3bの限界電流値を取得すること(S3c)である。そのため、第1ガスを除去するための部屋が不要になる。本実施の形態のガス濃度測定方法は、ガス濃度測定システム1cの小型化を可能にする。
【0105】
本実施の形態のガス濃度測定方法では、電圧源5は、第1電圧V1を第1限界電流式ガスセンサ素子3aに供給する第1電圧供給器5aと、第2電圧V2を第2限界電流式ガスセンサ素子3bに供給する第2電圧供給器5bとを含む。第1限界電流値I1(第1限界電流式ガスセンサ素子3aの限界電流値)を取得しながら、第2限界電流値I2(第2限界電流式ガスセンサ素子3bの限界電流値)を取得する。そのため、第2ガスの濃度を測定する時間が短縮され得る。
【0106】
(実施の形態4)
図14を参照して、実施の形態4に係るガス濃度測定システム1dを説明する。本実施の形態のガス濃度測定システム1dは、実施の形態1のガス濃度測定システム1と同様の構成を備えるが、以下の点で主に異なっている。
【0107】
本実施の形態では、限界電流式ガスセンサ2dは、複数の第1限界電流式ガスセンサ素子3aと複数の第2限界電流式ガスセンサ素子3bとを含む。複数の第1限界電流式ガスセンサ素子3aの各々と、複数の第2限界電流式ガスセンサ素子3bの各々とは、互いに同じ構成を有している。例えば、複数の第1限界電流式ガスセンサ素子3aと、複数の第2限界電流式ガスセンサ素子3bとは、各々、実施の形態1の限界電流式ガスセンサ素子3と同じ構成を有している。具体的には、複数の第1限界電流式ガスセンサ素子3a及び複数の第2限界電流式ガスセンサ素子3bは、各々、固体電解質20と、第1電極17と、第2電極27と、ガス導入路16とを含む。第1電極17は、固体電解質20上に設けられている。第2電極27は、固体電解質20上に設けられている。ガス導入路16は、ガス入口35と第1電極17のうち固体電解質20に対向している第1部分17dとの間に延在している。第1電極17は、第1多孔質金属電極である。ガス導入路16は、第1電極17の第1融点より高い第2融点を有する第1多孔質遷移金属酸化物で形成されている。第1多孔質遷移金属酸化物は、Ta2O5、TiO2またはCr2O3である。
【0108】
電流検出器6は、複数の第1限界電流式ガスセンサ素子3aにそれぞれ対応する複数の第1電流検出素子6cと、複数の第2限界電流式ガスセンサ素子3bにそれぞれ対応する複数の第2電流検出素子6dとを含む。複数の第1電流検出素子6cは、複数の第1限界電流式ガスセンサ素子3aに第1電圧V1を印加した時における複数の第1限界電流式ガスセンサ素子3aの第1の複数の限界電流値を取得する。複数の第2電流検出素子6dは、複数の第2限界電流式ガスセンサ素子3bに第2電圧V2を印加した時における複数の第2限界電流式ガスセンサ素子3bの第2の複数の限界電流値を取得する。
【0109】
差分取得部8aは、第2限界電流値I2と第1限界電流値I1との間の差分ΔIとして、第2の複数の限界電流値と第1の複数の限界電流値との間の差分の平均値を算出する。
【0110】
第一の例では、複数の第1限界電流式ガスセンサ素子3aの第1の数は、複数の第2限界電流式ガスセンサ素子3bの第2の数に等しい。この第一の例では、第2の複数の限界電流値と第1の複数の限界電流値との間の差分の平均値は、第2の複数の限界電流値の総和と第1の複数の限界電流値の総和との間の差分を算出し、それから、この差分を第1の数(または第2の数)で割ることによって算出される。第2の複数の限界電流値の総和と第1の複数の限界電流値の総和との間の差分は、第2の複数の限界電流値の総和から第1の複数の限界電流値の総和を差し引くことによって得られる。
【0111】
第二の例では、第2の複数の限界電流値と第1の複数の限界電流値との間の差分の平均値は、第2の複数の限界電流値の平均値から第1の複数の限界電流値の平均値を差し引くことによって算出される。第1の複数の限界電流値の平均値は、第1の複数の限界電流値の総和を複数の第1限界電流式ガスセンサ素子3aの第1の数で割ることによって得られる。第2の複数の限界電流値の平均値は、第2の複数の限界電流値の総和を複数の第2限界電流式ガスセンサ素子3bの第2の数で割ることによって得られる。第二の例では、複数の第1限界電流式ガスセンサ素子3aの第1の数は、複数の第2限界電流式ガスセンサ素子3bの第2の数に等しくてもよいし、第2の数と異なってもよい。
【0112】
電圧源5は、第1電圧V1を複数の第1限界電流式ガスセンサ素子3aに供給する第1電圧供給器5aと、第2電圧V2を複数の第2限界電流式ガスセンサ素子3bに供給する第2電圧供給器5bとを含んでもよい。第1限界電流値I1(第1の複数の限界電流値)を取得しながら、第2限界電流値I2(第2の複数の限界電流値)を取得してもよい。
【0113】
図15を参照して、実施の形態4に係るガス濃度測定方法を説明する。本実施の形態のガス濃度測定方法は、実施の形態1のガス濃度測定方法と同様のステップを備えるが、以下の点で主に異なっている。
【0114】
本実施の形態のガス濃度測定方法は、実施の形態1の第1限界電流値I1を取得すること(S2)として、電圧源5から複数の第1限界電流式ガスセンサ素子3aに第1電圧V1を印加して、複数の第1電流検出素子6cを用いて複数の第1限界電流式ガスセンサ素子3aの第1の複数の限界電流値を取得すること(S2d)を備える。本実施の形態のガス濃度測定方法は、実施の形態1の第2限界電流値I2を取得すること(S3)として、複数の第2限界電流式ガスセンサ素子3bに第2電圧V2を印加して、複数の第2電流検出素子6dを用いて複数の第2限界電流式ガスセンサ素子3bの第2の複数の限界電流値を取得すること(S3d)を備える。
【0115】
本実施の形態のガス濃度測定方法は、実施の形態1の第2限界電流値I2と第1限界電流値I1との間の差分ΔIを取得すること(S4)として、第2の複数の限界電流値と第1の複数の限界電流値との間の差分の平均値を取得すること(S4d)を備える。差分取得部8aが、第2の複数の限界電流値と第1の複数の限界電流値との間の差分の平均値を算出する。第2の複数の限界電流値と第1の複数の限界電流値との間の差分の平均値は、第2限界電流値I2と第1限界電流値I1との間の差分ΔIに相当する。
【0116】
第一の例では、複数の第1限界電流式ガスセンサ素子3aの第1の数は、複数の第2限界電流式ガスセンサ素子3bの第2の数に等しい。この第一の例では、第2の複数の限界電流値と第1の複数の限界電流値との間の差分の平均値は、第2の複数の限界電流値の総和と第1の複数の限界電流値の総和との間の差分を算出し、それから、この差分を第1の数(または第2の数)で割ることによって算出される。第2の複数の限界電流値の総和と第1の複数の限界電流値の総和との間の差分は、第2の複数の限界電流値の総和から第1の複数の限界電流値の総和を差し引くことによって得られる。
【0117】
第二の例では、第2の複数の限界電流値と第1の複数の限界電流値との間の差分の平均値は、第2の複数の限界電流値の平均値から第1の複数の限界電流値の平均値を差し引くことによって算出される。第1の複数の限界電流値の平均値は、第1の複数の限界電流値の総和を複数の第1限界電流式ガスセンサ素子3aの第1の数で割ることによって得られる。第2の複数の限界電流値の平均値は、第2の複数の限界電流値の総和を複数の第2限界電流式ガスセンサ素子3bの第2の数で割ることによって得られる。第二の例では、複数の第1限界電流式ガスセンサ素子3aの第1の数は、複数の第2限界電流式ガスセンサ素子3bの第2の数に等しくてもよいし、第2の数と異なってもよい。
【0118】
本実施の形態のガス濃度測定方法では、電圧源5は、第1電圧V1を複数の第1限界電流式ガスセンサ素子3aに供給する第1電圧供給器5aと、第2電圧V2を複数の第2限界電流式ガスセンサ素子3bに供給する第2電圧供給器5bとを含んでもよい。第1限界電流値I1(第1の複数の限界電流値)を取得しながら、第2限界電流値I2(第2の複数の限界電流値)を取得してもよい。
【0119】
本実施の形態のガス濃度測定システム1d及びガス濃度測定方法は、実施の形態1のガス濃度測定システム1及びガス濃度測定方法に加えて、以下の効果を奏する。
【0120】
本実施の形態のガス濃度測定システム1dでは、限界電流式ガスセンサ2dは、複数の第1限界電流式ガスセンサ素子3aと複数の第2限界電流式ガスセンサ素子3bとを含む。電流検出器6は、複数の第1限界電流式ガスセンサ素子3aにそれぞれ対応する複数の第1電流検出素子6cと、複数の第2限界電流式ガスセンサ素子3bにそれぞれ対応する複数の第2電流検出素子6dとを含む。複数の第1電流検出素子6cは、複数の第1限界電流式ガスセンサ素子3aに第1電圧V1を印加した時における複数の第1限界電流式ガスセンサ素子3aの第1の複数の限界電流値を取得する。複数の第2電流検出素子6dは、複数の第2限界電流式ガスセンサ素子3bに第2電圧V2を印加した時における複数の第2限界電流式ガスセンサ素子3bの第2の複数の限界電流値を取得する。第2限界電流値I2と第1限界電流値I1との間の差分ΔIは、第2の複数の限界電流値と第1の複数の限界電流値との間の差分の平均値である。
【0121】
本実施の形態のガス濃度測定システム1dでは、第2の複数の限界電流値と第1の複数の限界電流値との間の差分の平均値に基づいて、第2ガスの濃度を得ている。複数の第1限界電流式ガスセンサ素子3a及び複数の第2限界電流式ガスセンサ素子3bの電流-電圧特性にばらつきがあっても、第2ガスの濃度を向上された精度で得ることができる。
【0122】
本実施の形態のガス濃度測定システム1dでは、電圧源5は、第1電圧V1を複数の第1限界電流式ガスセンサ素子3aに供給する第1電圧供給器5aと、第2電圧V2を複数の第2限界電流式ガスセンサ素子3bに供給する第2電圧供給器5bとを含む。
【0123】
第1電圧供給器5a及び第2電圧供給器5bは、複数の第1限界電流式ガスセンサ素子3aに第1電圧V1を供給しながら、複数の第2限界電流式ガスセンサ素子3bに第2電圧V2を供給することを可能にする。第1限界電流値I1(第1の複数の限界電流値)を取得しながら、第2限界電流値I2(第2の複数の限界電流値)を取得することができる。そのため、第2ガスの濃度を測定する時間が短縮され得る。
【0124】
本実施の形態のガス濃度測定方法では、限界電流式ガスセンサ2dは、複数の第1限界電流式ガスセンサ素子3aと複数の第2限界電流式ガスセンサ素子3bとを含む。電流検出器6は、複数の第1限界電流式ガスセンサ素子3aにそれぞれ対応する複数の第1電流検出素子6cと、複数の第2限界電流式ガスセンサ素子3bにそれぞれ対応する複数の第2電流検出素子6dとを含む。第1限界電流値I1を取得すること(S2)は、複数の第1限界電流式ガスセンサ素子3aに第1電圧V1を印加して、複数の第1電流検出素子6cを用いて複数の第1限界電流式ガスセンサ素子3aの第1の複数の限界電流値を取得すること(S2d)である。第2限界電流値I2を取得すること(S3)は、複数の第2限界電流式ガスセンサ素子3bに第2電圧V2を印加して、複数の第2電流検出素子6dを用いて複数の第2限界電流式ガスセンサ素子3bの第2の複数の限界電流値を取得すること(S3d)である。第2限界電流値I2と第1限界電流値I1との間の差分ΔIを取得すること(S4)は、第2の複数の限界電流値と第1の複数の限界電流値との間の差分の平均値を取得すること(S4d)である。
【0125】
本実施の形態のガス濃度測定方法では、第2の複数の限界電流値と第1の複数の限界電流値との間の差分の平均値に基づいて、第2ガスの濃度を得ている。複数の第1限界電流式ガスセンサ素子3a及び複数の第2限界電流式ガスセンサ素子3bの電流-電圧特性にばらつきがあっても、第2ガスの濃度を向上された精度で得ることができる。
【0126】
本実施の形態のガス濃度測定方法では、電圧源5は、第1電圧V1を複数の第1限界電流式ガスセンサ素子3aに供給する第1電圧供給器5aと、第2電圧V2を複数の第2限界電流式ガスセンサ素子3bに供給する第2電圧供給器5bとを含む。第1の複数の限界電流値を取得しながら、第2の複数の限界電流値を取得する。そのため、第2ガスの濃度を測定する時間が短縮され得る。
【0127】
今回開示された実施の形態1から実施の形態4はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0128】
1,1b,1c,1d ガス濃度測定システム、2,2b,2c,2d 限界電流式ガスセンサ、3 限界電流式ガスセンサ素子、3a 第1限界電流式ガスセンサ素子、3b 第2限界電流式ガスセンサ素子、4 被測定ガス、5 電圧源、5a 第1電圧供給器、5b 第2電圧供給器、6 電流検出器、6a,6b 電流検出素子、6c 第1電流検出素子、6d 第2電流検出素子、8 ガス濃度演算器、8a 差分取得部、8g ガス濃度取得部、9 メモリ、9t データテーブル、10 基板、11,13,15,22,23,25,28 絶縁層、12 ヒータ、16 ガス導入路、17 第1電極、17d 第1部分、20 固体電解質、20a 第1面、20b 第2面、27 第2電極、27d 第2部分、30 ガス排出路、32 絶縁膜、35 ガス入口、36 ガス出口、40 増幅回路、41 オペアンプ、42 抵抗、50 差分回路、51 オペアンプ、52,53,54,55 抵抗、56 基準電圧、61 第1参照電圧、62 第2参照電圧、63 スイッチ。