(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】開口部の保護装置および防護ネットの設置方法
(51)【国際特許分類】
G21C 13/00 20060101AFI20231221BHJP
E04G 21/24 20060101ALI20231221BHJP
E04G 21/32 20060101ALI20231221BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20231221BHJP
G21C 19/07 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G21C13/00 600
E04G21/24 A
E04G21/32 A
E04H9/14 F
G21C19/07 100
(21)【出願番号】P 2020022493
(22)【出願日】2020-02-13
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 勇司
(72)【発明者】
【氏名】宮島 啓輔
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-047222(JP,U)
【文献】特開平10-140845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/07
G21F 5/12
G21F 9/36
G21C 13/00-13/02
E04H 9/14
E04G 21/24
E04G 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に開口する開口部と、
枠形状をなすフレームの内側にネットが設けられる防護ネットと、
前記防護ネットを前記開口部が被覆される閉止位置と前記開口部が開放される退避位置との間を移動自在な防護ネット移動装置と、
を備
え、
前記防護ネット移動装置は、前記閉止位置と前記退避位置との間に配置されるガイドレールと、前記防護ネットに設けられて前記ガイドレールに沿って移動自在なガイド部材と、前記ガイド部材を前記ガイドレールにガイドされるガイド位置と前記ガイドレールから離間する離間位置とに移動可能なガイド部材移動装置とを有し、
前記ガイド部材移動装置は、一端部が前記防護ネットに回動自在に支持されて他端部に前記ガイド部材が装着されるアームを有する、
開口部の保護装置。
【請求項2】
水平方向に開口する開口部と、
枠形状をなすフレームの内側にネットが設けられる防護ネットと、
前記防護ネットを前記開口部が被覆される閉止位置と前記開口部が開放される退避位置との間を移動自在な防護ネット移動装置と、
を備
え、
前記防護ネット移動装置は、前記閉止位置と前記退避位置との間に配置されるガイドレールと、前記防護ネットに設けられて前記ガイドレールに沿って移動自在なガイド部材と、前記ガイド部材を前記ガイドレールにガイドされるガイド位置と前記ガイドレールから離間する離間位置とに移動可能なガイド部材移動装置とを有し、
前記防護ネット移動装置は、前記防護ネットに対して前記ガイド部材を昇降する昇降装置を有する、
開口部の保護装置。
【請求項3】
水平方向に開口する開口部と、
枠形状をなすフレームの内側にネットが設けられる防護ネットと、
前記防護ネットを前記開口部が被覆される閉止位置と前記開口部が開放される退避位置との間を移動自在な防護ネット移動装置と、
を備
え、
前記防護ネット移動装置は、前記閉止位置と前記退避位置との間に配置されるガイドレールと、前記防護ネットに設けられて前記ガイドレールに沿って移動自在なガイド部材と、前記ガイド部材を前記ガイドレールにガイドされるガイド位置と前記ガイドレールから離間する離間位置とに移動可能なガイド部材移動装置とを有し、
前記防護ネット移動装置は、前記防護ネットを前記ガイドレールに沿って移動可能な駆動装置を有する、
開口部の保護装置。
【請求項4】
水平方向に開口する開口部と、
枠形状をなすフレームの内側にネットが設けられる防護ネットと、
前記防護ネットを前記開口部が被覆される閉止位置と前記開口部が開放される退避位置との間を移動自在な防護ネット移動装置と、
を備
え、
前記防護ネット移動装置は、前記閉止位置と前記退避位置との間に配置されるガイドレールと、前記防護ネットに設けられて前記ガイドレールに沿って移動自在なガイド部材と、前記ガイド部材を前記ガイドレールにガイドされるガイド位置と前記ガイドレールから離間する離間位置とに移動可能なガイド部材移動装置とを有し、
前記ガイド部材は、前記ガイドレールの上面を転動する第1車輪と、前記ガイドレールの左右の側面を転動する一対の第2車輪とを有する、
開口部の保護装置。
【請求項5】
水平方向に開口する開口部と、
枠形状をなすフレームの内側にネットが設けられる防護ネットと、
前記防護ネットを前記開口部が被覆される閉止位置と前記開口部が開放される退避位置との間を移動自在な防護ネット移動装置と、
を備
え、
複数の前記防護ネットを有し、複数の前記防護ネットは、前記退避位置で鉛直方向に重なって配置され、前記閉止位置で前記開口部を被覆するように移動方向にずれて配置される、
開口部の保護装置。
【請求項6】
水平方向に開口する開口部と、
枠形状をなすフレームの内側にネットが設けられる防護ネットと、
前記防護ネットを前記開口部が被覆される閉止位置と前記開口部が開放される退避位置との間を移動自在な防護ネット移動装置と、
を備
え、
前記開口部は、原子炉建屋の内部に設けられて原子燃料が冷却水に浸漬される燃料プールである、
開口部の保護装置。
【請求項7】
前記原子炉建屋は、内部に原子炉と前記燃料プールとの間にガイドレールが配置され、前記ガイドレールに燃料取替装置が移動自在に支持されると共に、前記防護ネットが移動自在に支持される、
請求項6に記載の開口部の保護装置。
【請求項8】
防護ネットを開口部が被覆される位置に移動する防護ネットの設置方法であって、
退避位置にある前記防護ネットのガイド部材をガイドレールの上方に移動する工程と、
前記ガイド部材を下降して前記ガイドレール上に配置すると共に前記防護ネットを上昇させる工程と、
前記防護ネットを前記ガイドレールに沿って移動して前記開口部を被覆する閉止位置に移動する工程と、
を有する防護ネットの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、開口部を防護ネットにより保護する開口部の保護装置および防護ネットの設置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントにおいて、原子炉建屋の外壁にブローアウトパネルが設けられる。ブローアウトパネルは、主蒸気管などが破損して原子炉建屋の内部圧力が高くなったとき、その圧力により開放され、原子炉建屋の内部の圧力を低下させる。一方で、ブローアウトパネルは、原子炉建屋の一般壁よりも相対的に強度が低く、竜巻などが発生すると、飛来物がブローアウトパネルを貫通するか、または、開放されているときにその開口部を通して原子炉建屋の内部に侵入するおそれがある。そのため、ブローアウトパネルに防護ネットを装着している。このような防護ネットとしては、例えば、下記特許文献に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第2579751号公報
【文献】特公昭56-40229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の防護ネットは、軟弱なネットをガイドレールやワイヤなどにより移動自在に支持し、ネットにより開口などを被覆するものである。そのため、ネットの剛性が低くなり、外部からの飛来物を受け止めることができず、十分な安全性を確保することができないという課題がある。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、安全性の向上を図る開口部の保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示の開口部の保護装置は、水平方向に開口する開口部と、枠形状をなすフレームの内側にネットが設けられる防護ネットと、前記防護ネットを前記開口部が被覆される閉止位置と前記開口部が開放される退避位置との間を移動自在な防護ネット移動装置と、を備える。
【0007】
また、本開示の防護ネットの設置方法は、防護ネットを開口部が被覆される位置に移動する防護ネットの設置方法であって、退避位置にある前記防護ネットのガイド部材をガイドレールの上方に移動する工程と、前記ガイド部材を下降して前記ガイドレール上に配置すると共に前記防護ネットを上昇させる工程と、前記防護ネットを前記ガイドレールに沿って移動して前記開口部を被覆する閉止位置に移動する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の開口部の保護装置および防護ネットの設置方法によれば、安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態の開口部の保護装置を表す概略平面図である。
【
図2】
図2は、開口部の保護装置の作動状態を表す概略平面図である。
【
図3】
図3は、防護ネット移動装置における上移動装置を表す平面図である。
【
図4】
図4は、防護ネット移動装置における上移動装置を表す正面図である。
【
図5】
図5は、防護ネット移動装置における下移動装置を表す平面図である。
【
図6】
図6は、防護ネット移動装置における下移動装置を表す正面図である。
【
図7】
図7は、防護ネット移動装置の変形例を表す側面図である。
【
図8】
図8は、防護ネット移動装置の変形例を表す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0011】
図1は、本実施形態の開口部の保護装置を表す概略平面図、
図2は、開口部の保護装置の作動状態を表す概略平面図である。
【0012】
[原子炉建屋]
図1および
図2に示すように、原子力発電プラントは、原子炉建屋の内部に原子炉格納容器101が設置され、原子炉格納容器101の内部に原子炉圧力容器に収容された原子炉(図示略)が配置される。また、原子炉建屋は、内部に原子炉格納容器101に隣接して燃料プール102と、機器仮置きプール103とが配置される。燃料プール102と機器仮置きプール103は、原子炉格納容器101に対して対称位置に配置される。すなわち、燃料プール102と原子炉格納容器101と機器仮置きプール103は、直線状に配置される。燃料プール102と機器仮置きプール103は、所定量の冷却水が貯留される。燃料プール102は、使用済燃料を冷却水に浸漬して冷却する。
【0013】
原子炉建屋は、内部に一対のガイドレール104が配置される。一対のガイドレール104は、燃料プール102と原子炉格納容器101と機器仮置きプール103との配列方向に沿って配置される。すなわち、一対のガイドレール104は、燃料プール102と原子炉格納容器101と機器仮置きプール103の両側に配置される。一対のガイドレール104は、燃料取替装置105が移動自在に支持される。燃料取替装置105は、原子炉格納容器101と燃料プール102との間で燃料を移動可能である。燃料取替装置105は、例えば、原子炉格納容器101内の使用済燃料を燃料プール102に移動したり、燃料プール102内の未使用燃料や使用済燃料を原子炉格納容器101に移動したりする。
【0014】
また、図示しないが、原子炉建屋は、外壁にブローアウトパネルが設けられる。ブローアウトパネルは、主蒸気管などが破損して原子炉建屋の内部圧力が高くなったとき、その圧力により開放され、原子炉建屋の内部の圧力を低下させる。竜巻などが発生すると、飛来物がブローアウトパネルから原子炉建屋の内部に侵入するおそれがある。
【0015】
[開口部の保護装置]
本実施形態の開口部の保護装置10は、ブローアウトパネルから飛来物が原子炉建屋の内部に侵入しても、飛来物が燃料プール102に落下しないようにすることで、燃料プール102の破損を防止するものである。
【0016】
開口部の保護装置10は、防護ネット11と、防護ネット移動装置12とを備える。開口部の保護装置10は、防護ネット移動装置12により防護ネット11を移動し、防護ネット11により開口部としての燃料プール102を被覆する。
【0017】
防護ネット11は、複数(本実施形態では、2個)設けられる。防護ネット11は、上防護ネット21と、下防護ネット22とを有する。上防護ネット21と下防護ネット22は、ほぼ同様の構成である。なお、防護ネット11は、2個に限らず、燃料プール102の広さや退避位置の広さなどに応じて1個、または、3個以上としてもよい。
【0018】
上防護ネット21と下防護ネット22は、フレーム21a,22aと、ネット21b,22bとを有する。フレーム21a,22aは、矩形の枠形状をなす。フレーム21a,22aは、例えば、H型鋼、I型鋼、山形鋼、溝形鋼、または、角筒鋼、円筒鋼などの複数の鉄骨を枠形状に組付けられて構成される。ネット21b,22bは、枠形状をなすフレーム21a,22aの内側に設けられる。ネット21b,22bは、例えば、ステンレス鋼や鉄などの金属材料により構成された金網である。金網は、ケーブルを格子形状に配置して構成される。なお、ネット21b,22bは、金属材料に限らず、合成樹脂繊維や天然繊維などの繊維網であってもよい。
【0019】
防護ネット移動装置12は、防護ネット11(上防護ネット21、下防護ネット22)を一対のガイドレール104に沿って移動自在に支持する。防護ネット移動装置12は、防護ネット11を燃料プール102が被覆される閉止位置と、燃料プール102が開放される退避位置との間を移動自在に支持する。ここで、閉止位置とは、
図2に示すように、防護ネット11(上防護ネット21、下防護ネット22)が燃料プール102の上方に移動した位置であり、退避位置とは、
図1に示すように、防護ネット11(上防護ネット21、下防護ネット22)が機器仮置きプール103の上方に移動した位置である。
【0020】
防護ネット移動装置12は、上防護ネット21および下防護ネット22の側部に設けられる上移動装置31および下移動装置32を有する。上移動装置31は、上防護ネット21における移動方向(
図1および
図2の左右方向)に対する左右方向の両側に2個ずつ設けられる。片側に設けられる前後の上移動装置31は、所定間隔を空けて配置される。4個の上移動装置31は、同様の構成である。また、下移動装置32は、下防護ネット22における移動方向(
図1および
図2の左右方向)に対する左右方向の両側に2個ずつ設けられる。片側に設けられる前後の下移動装置32は、所定間隔を空けて配置される。4個の下移動装置32は、同様の構成である。また、上移動装置31と下移動装置32は、上防護ネット21と下防護ネット22に対する装着高さが相違するものの、基本的な構成は同様である。
【0021】
[防護ネット移動装置]
図3は、防護ネット移動装置における上移動装置を表す平面図、
図4は、防護ネット移動装置における上移動装置を表す正面図、
図5は、防護ネット移動装置における下移動装置を表す平面図、
図6は、防護ネット移動装置における下移動装置を表す正面図である。
【0022】
図3および
図4に示すように、防護ネット移動装置12を構成する上移動装置31および下移動装置32は、共通のガイドレール104と、ガイド部材41,61と、ガイド部材移動装置42,62とを有する。ガイド部材移動装置42,62は、アーム43,63を有する。また、上移動装置31および下移動装置32は、昇降装置44,64を有する。
【0023】
ガイドレール104は、燃料プール102や機器仮置きプール103に隣接した床面106に敷設される。ガイドレール104は、燃料プール102や機器仮置きプール103から所定距離だけ離間した位置に配置される。機器仮置きプール103とガイドレール104との間に支持台107が設けられる。支持台107は、少なくとも4か所設けられ、防護ネット11(上防護ネット21、下防護ネット22)が載置されて支持する。
【0024】
上移動装置31において、上防護ネット21は、フレーム21aの側面に水平をなしてブラケット51が固定される。アーム43は、長手方向の一端部がブラケット51に鉛直方向に沿う連結軸52により回動自在に支持される。アーム43は、水平方向に約90度だけ回動可能である。アーム43は、上防護ネット21のフレーム21aの側面に平行な格納位置と、上防護ネット21のフレーム21aの側面に直交する突出位置とに回動可能である。また、ブラケット51に複数(本実施形態では、2個)の位置決め孔51aが形成され、アーム43に複数(本実施形態では、2個)の位置決め孔43aが形成される。アーム43は、格納位置と突出位置にて、2個の位置決め孔43a,51aのうちの1個が一致し、各位置決め孔43a,51aに位置決めピン53を挿入することで、格納位置と突出位置に位置決め可能である。
【0025】
アーム43は、他端部の下面に鉛直方向に沿う支持ロッド54の上端部が固定される。支持ロッド54は、下端部に昇降装置44が装着される。昇降装置44は、例えば、油圧ジャッキであって、鉛直方向に沿って移動する駆動ロッド44aを有する。昇降装置44は、下端部にガイド部材41が装着される。ガイド部材41は、ハウジング55と、第1車輪56と、支持軸57とを有する。ハウジング55は、昇降装置44に固定され、第1車輪56は、ハウジング55内に配置され、支持軸57により回転自在に支持される。ガイド部材41の第1車輪56は、ガイドレール104の上面を転動自在である。
【0026】
図5および
図6に示すように、下移動装置32において、下防護ネット22は、フレーム22aの側面に水平をなしてブラケット71が固定される。アーム63は、長手方向の一端部がブラケット71に鉛直方向に沿う連結軸72により回動自在に支持される。アーム63は、水平方向に約90度だけ回動可能である。アーム63は、下防護ネット22のフレーム22aの側面に平行な格納位置と、下防護ネット22のフレーム22aの側面に直交する突出位置とに回動可能である。また、ブラケット71に複数(本実施形態では、2個)の位置決め孔71aが形成され、アーム63に複数(本実施形態では、2個)の位置決め孔63aが形成される。アーム63は、格納位置と突出位置にて、2個の位置決め孔63a,71aのうちの1個が一致し、各位置決め孔63a,71aに位置決めピン73を挿入することで、格納位置と突出位置に位置決め可能である。
【0027】
アーム63、他端部の下面に鉛直方向に沿う支持ロッド74の上端部が固定される。支持ロッド74は、下端部に昇降装置64が装着される。昇降装置64は、例えば、油圧ジャッキであって、鉛直方向に沿って移動する駆動ロッド64aを有する。昇降装置64は、下端部にガイド部材61が装着される。ガイド部材61は、ハウジング75と、第1車輪76と、支持軸77とを有する。ハウジング75は、昇降装置64に固定され、第1車輪76は、ハウジング75内に配置され、支持軸77により回転自在に支持される。ガイド部材61の第1車輪76は、ガイドレール104の上面を転動自在である。
【0028】
図1および
図2に示すように、防護ネット移動装置12を構成する上移動装置31および下移動装置32は、防護ネット11としての上防護ネット21および下防護ネット22をガイドレール104に沿って移動可能な上駆動装置45,46および下駆動装置65,66を有する。上駆動装置45は、一対のガイドレール104の長手方向の一端部側に配置され、上駆動装置46は、一対のガイドレール104の長手方向の他端部側に配置される。下駆動装置65は、一対のガイドレール104の長手方向の一端部側に配置され、下駆動装置66は、一対のガイドレール104の長手方向の他端部側に配置される。上駆動装置45,46は、それぞれケーブル47,48を介して上防護ネット21に連結される。下駆動装置65,66は、それぞれケーブル67,68を介して下防護ネット22に連結される。
【0029】
[防護ネット移動装置の変形例]
なお、防護ネット移動装置12を構成する上移動装置31および下移動装置32は、上述した構成に限定されるものではない。
図7は、防護ネット移動装置の変形例を表す側面図、
図8は、防護ネット移動装置の変形例を表す正面図である。
【0030】
防護ネット移動装置の変形例において、
図7および
図8に示すように、上移動装置31Aは、ガイド部材81を有する。支持ロッド54は、下端部に昇降装置44が装着される。昇降装置44は、下端部にガイド部材81が装着される。ガイド部材81は、ハウジング55と、複数(本実施形態では、5個)の第1車輪56と、支持軸57とを有する。ハウジング55は、昇降装置44に固定され、第1車輪56は、ハウジング55内に配置され、支持軸57により回転自在に支持される。
【0031】
ハウジング55は、左右の側面に水平なフランジ部82が固定される。フランジ部82は、ガイドレール104の長手方向に所定間隔を空けて配置される。フランジ部82は、鉛直方向に沿う支持軸83が装着され、支持軸83は、下部に第2車輪84が回転自在に支持される。第2車輪84は、ガイドレール104の左右両側に配置されると共に、ガイドレール104の長手方向に所定間隔を空けて配置される。そして、第1車輪56は、ガイドレール104の上面104aを転動自在であり、第2車輪84は、ガイドレール104の左右の側面104bを転動自在である。
【0032】
上防護ネット21(
図1参照)がガイドレール104に沿って移動するとき、第1車輪56がガイドレール104の上面104aを転動することで、上防護ネット21の荷重を支持する。このとき、左右の第2車輪84がガイドレール104の左右の側面104bを転動し、ガイドレール104を挟持することで、第1車輪56の左右方向に移動が阻止され、ガイドレール104の上面104aに対する第1車輪56の脱輪を防止することができる。
【0033】
なお、防護ネット移動装置の変形例を上移動装置31Aに適用して説明したが、下移動装置32に適用してもよい。
【0034】
[開口部の保護装置による防護ネットの設置方法]
本実施形態の防護ネットの設置方法は、防護ネット11を燃料プール102が被覆される位置に移動するものであって、退避位置にある防護ネット11のガイド部材41,61をガイドレール104の上方に移動する工程と、ガイド部材41,61を下降してガイドレール104上に配置すると共に防護ネット11を上昇させる工程と、防護ネット11をガイドレール104に沿って移動して燃料プール102を被覆する閉止位置に移動する工程とを有する。
【0035】
図1に示すように、防護ネット11(上防護ネット21、下防護ネット22)は、機器仮置きプール103の上方に移動した退避位置にある。防護ネット11が退避位置にあるとき、上防護ネット21と下防護ネット22は、鉛直方向に重なって配置される。防護ネット移動装置12は、退避位置にある防護ネット11(上防護ネット21、下防護ネット22)を一対のガイドレール104に沿って移動し、燃料プール102が被覆される閉止位置に移動する。
【0036】
防護ネット11が退避位置にあるとき、竜巻が発生して飛来物がブローアウトパネルから原子炉建屋の内部に侵入するおそれがある。このとき、開口部の保護装置10により防護ネット11を閉止位置に移動し、燃料プール102の上方を被覆する。
【0037】
すなわち、
図3および
図4に示すように、防護ネット11は、退避位置にあるとき、上防護ネット21と下防護ネット22が鉛直方向に重なり合うと共に、床面106の複数の支持台107に載置される。また、上防護ネット21と下防護ネット22は、アーム43,63が上防護ネット21および下防護ネット22のフレーム21a,22aの側面に平行な格納位置に位置することで、ガイド部材41,61は、ガイドレール104から離間した離間位置に配置される。
【0038】
この状態から、作業者は、上防護ネット21の各アーム43を外側に90度だけ回動し、上防護ネット21のフレーム21aの側面に対して直交する突出位置に回動する。すると、各ガイド部材41は、ガイドレール104の上方に配置される。ここで、各昇降装置44により駆動ロッド44aを伸長すると、まず、各アーム43に対してガイド部材41が下降し、第1車輪56がそれぞれガイドレール104の上面に接触する。各昇降装置44により駆動ロッド44aをさらに伸長すると、次に、各アーム43の第1車輪56(ガイドレール104)に対して各アーム43が上昇する。すなわち、各アーム43が装着された上防護ネット21が上昇して下防護ネット22から離れる。
【0039】
そして、
図1に示すように、左右の上駆動装置45を駆動すると、各ケーブル47が巻き取られ、上防護ネット21がガイドレール104に沿って移動を開始する。上防護ネット21がガイドレール104に沿って所定距離だけ移動して停止すると、
図2に示すように、上防護ネット21は、燃料プール102の一部を被覆する閉止位置に設置される。
【0040】
また、
図5および
図6に示すように、作業者は、下防護ネット22の各アーム63を外側に90度だけ回動し、下防護ネット22のフレーム22aの側面に対して直交する突出位置に回動する。すると、各ガイド部材61は、ガイドレール104の上方に配置される。ここで、各昇降装置64により駆動ロッド64aを伸長すると、まず、各アーム63に対してガイド部材61が下降し、第1車輪76がそれぞれガイドレール104の上面に接触する。各昇降装置64により駆動ロッド64aをさらに伸長すると、次に、各アーム63の第1車輪76(ガイドレール104)に対して各アーム63が上昇する。すなわち、各アーム63が装着された下防護ネット22が上昇して支持台107から離れる。
【0041】
そして、
図1に示すように、左右の下駆動装置65を駆動すると、各ケーブル67が巻き取られ、下防護ネット22がガイドレール104に沿って移動を開始する。下防護ネット22がガイドレール104に沿って所定距離だけ移動して停止すると、
図2に示すように、下防護ネット22は、燃料プール102の一部を被覆する閉止位置に設置される。ここで、上防護ネット21と下防護ネット22は、閉止位置で一部が鉛直方向に重なるものの、移動方向にずれて配置されることで、燃料プール102の全部を被覆する。
【0042】
その後、竜巻が消失し、安全が確認されると、開口部の保護装置10により防護ネット11を閉止位置から退避位置に移動し、燃料プール102の上方を開放する。すなわち、
図1および
図2に示すように、左右の下駆動装置66を駆動し、各ケーブル68を巻き取り、下防護ネット22をガイドレール104に沿って移動し、下防護ネット22を退避位置に移動する。また、左右の上駆動装置46を駆動し、各ケーブル48を巻き取り、上防護ネット21をガイドレール104に沿って移動し、上防護ネット21を退避位置に移動する。そして、下防護ネット22を下降して支持台107に載置した後、アーム63を格納位置に回動する。続いて、上防護ネット21を下降して下防護ネット22に載置した後、アーム43を格納位置に回動する。
【0043】
なお、上述した説明では、上防護ネット21を退避位置から燃料プール102を被覆する閉止位置に移動した後、下防護ネット22を退避位置から燃料プール102を被覆する閉止位置に移動したが、この順序に限定されるものではない。上防護ネット21と下防護ネット22を同時に退避位置から燃料プール102を被覆する閉止位置に移動してもよい。また、上防護ネット21と下防護ネット22を異なる駆動装置45,65により移動したが、共通の駆動装置により移動できるように構成してもよい。例えば、駆動装置が上防護ネット21を牽引すると、上防護ネット21の係止部が下防護ネット22に係止し、上防護ネット21が下防護ネット22を牽引する。
【0044】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る開口部の保護装置は、燃料プール(開口部)102と、枠形状をなすフレーム21a,22aの内側にネット21b,22bが設けられる防護ネット11と、防護ネット11を燃料プール102が被覆される閉止位置と。燃料プール102が開放される退避位置との間を移動自在な防護ネット移動装置12とを備える。
【0045】
第1の態様に係る開口部の保護装置は、防護ネット11の必要時に、防護ネット移動装置12は、退避位置にある防護ネット11を燃料プール102が被覆される閉止位置に移動する。防護ネット11は、枠形状をなすフレーム21a,22aの内側にネット21b,22bが設けられて構成されることから、飛来物を受け止めて燃料プール102への衝突を阻止することができる。そのため、飛来物による燃料プール102の破損を防止することができ、安全性の向上を図ることができる。
【0046】
第2の態様に係る開口部の保護装置は、防護ネット移動装置12は、閉止位置と退避位置との間に配置されるガイドレール104と、防護ネット11に設けられてガイドレール104に沿って移動自在なガイド部材41,61,81と、ガイド部材41,61,81をガイドレール104にガイドされるガイド位置とガイドレール104から離間する離間位置とに移動可能なガイド部材移動装置42,62とを有する。これにより、防護ネット11の不要時に、ガイド部材移動装置42,62によりガイド部材41,61,81をガイドレール104から離間する離間位置と待機させ、防護ネット11の必要時に、ガイド部材移動装置42,62によりガイド部材41,61,81をガイドレール104にガイドされるガイド位置に移動する。そのため、防護ネット11の不要時に、ガイドレール104を他の目的に使用することができ、防護ネット11専用のガイドレールを不要とすることができる。
【0047】
第3の態様に係る開口部の保護装置は、ガイド部材移動装置42,62は、一端部が防護ネット11に回動自在に支持されて他端部にガイド部材41,61,81が装着されるアーム43,63を有する。これにより、ガイド部材移動装置42,62としてアーム43,63を用いることで、装置の簡素化を図ることができる。
【0048】
第4の態様に係る開口部の保護装置は、防護ネット移動装置12は、防護ネット11に対してガイド部材41,61,81を昇降する昇降装置44,64を有する。これにより、防護ネット11の必要時に、ガイド部材移動装置42,62によりガイド部材41,61,81をガイドレール104の上方に移動した後、昇降装置44,64を作動することで、ガイド部材41,61,81をガイドレールにガイドされるガイド位置に適切に移動することができる。
【0049】
第5の態様に係る開口部の保護装置は、防護ネット移動装置12は、防護ネット11をガイドレール104に沿って移動可能な駆動装置45,46,65,66を有する。これにより、防護ネット11を駆動装置45,46,65,66により容易に退避位置から閉止位置に移動させることができる。
【0050】
第6の態様に係る開口部の保護装置は、ガイド部材81は、ガイドレール104の上面104aを転動する第1車輪56,76と、ガイドレール104の左右の側面104bを転動する一対の第2車輪84とを有する。これにより、上防護ネット21が移動するとき、第1車輪56がガイドレール104の上面104aを転動し、左右の第2車輪84がガイドレール104の左右の側面104bを転動する。そのため、左右の第2車輪84がガイドレール104を挟持することで、第1車輪56の左右方向に移動が阻止され、ガイドレール104の上面104aに対する第1車輪56の脱輪を防止することができる。
【0051】
第7の態様に係る開口部の保護装置は、防護ネット11は、上防護ネット21と下防護ネット22を有し、上防護ネット21と下防護ネット22は、退避位置で鉛直方向に重なって配置され、閉止位置で燃料プール102を被覆するように移動方向にずれて配置される。これにより、防護ネット11を上防護ネット21と下防護ネット22から構成することで、退避位置での収容面積を小さくすることができ、装置のコンパクト化を図ることができる。
【0052】
第8の態様に係る開口部の保護装置は、防護ネット11は、原子炉建屋の内部に設けられて原子燃料が冷却水に浸漬される燃料プール102を被覆する。これにより、防護ネット11により燃料プール102の上方を被覆することができ、飛来物による燃料プール102の破損を防止することができ、安全性の向上を図ることができる。
【0053】
第9の態様に係る開口部の保護装置は、原子炉建屋は、内部に原子炉と燃料プール102との間にガイドレール104が配置され、ガイドレール104に燃料取替装置105が移動自在に支持されると共に、防護ネット11が移動自在に支持される。これにより、ガイドレール104を燃料取替装置105の移動と防護ネット11の移動に用いることができ、複数のガイドレールの敷設を不要として装置の小型化を図ることができる。
【0054】
第10の態様に係る防護ネットの設置方法は、防護ネット11を燃料プール(開口部)102が被覆される位置に移動するものであって、退避位置にある防護ネット11のガイド部材41,61,81をガイドレール104の上方に移動する工程と、ガイド部材41,61,81を下降してガイドレール104上に配置すると共に防護ネット11を上昇させる工程と、防護ネット11をガイドレール104に沿って移動して燃料プール102を被覆する閉止位置に移動する工程とを有する。
【0055】
第10の態様に係る防護ネットの設置方法は、防護ネット11の必要時に、退避位置にある防護ネット11を燃料プール102が被覆される閉止位置に移動する。そのため、防護ネット11は、飛来物を受け止めて燃料プール102への衝突を阻止することができる。そのため、飛来物による燃料プール102の破損を防止することができ、安全性の向上を図ることができる。
【0056】
なお、上述した実施形態にて、ガイド部材移動装置42,62として、アーム43,63を適用し、作業者が手動によりアーム43,63を回動することで、ガイド部材41,61,81をガイド位置と離間位置に回動可能としたが、この構成に限定されるものではない。例えば、駆動モータなどによりアーム43,63を自動で回動するように構成してもよい。また、ガイド位置にあるガイド部材41,61,81を上方に回動して離間位置に移動してもよい。
【0057】
また、上述した実施形態にて、上防護ネット21および下防護ネット22を上駆動装置45,46および下駆動装置65,66により牽引して移動可能としたが、この構成に限定されるものではない。例えば、第1車輪56,76や第1車輪を駆動モータにより駆動回転可能とし、上駆動装置45,46および下駆動装置65,66を自走式としてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 開口部の保護装置
11 防護ネット
12 防護ネット移動装置
21 上防護ネット
21a フレーム
21b ネット
22 下防護ネット
22a フレーム
22b ネット
31,31A 上移動装置
32 下移動装置
41,61,81 ガイド部材
42,62 ガイド部材移動装置
43,63 アーム
44,64 昇降装置
45,46 上駆動装置
47,8,67,68 ケーブル
51,71 ブラケット
52,72 連結軸
53,73 位置決めピン
54,74 支持ロッド
55,75 ハウジング
56,76 第1車輪
57,77 支持軸
65,66 下駆動装置
82 フランジ部
83 支持軸
84 第2車輪
101 原子炉格納容器
102 燃料プール
103 機器仮置きプール
104 ガイドレール
104a 上面
104b 側面
105 燃料取替装置
106 床面
107 支持台