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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】操作装置及び操作装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01H 25/04 20060101AFI20231221BHJP
   H01H 25/06 20060101ALI20231221BHJP
   H01H 11/00 20060101ALI20231221BHJP
   H01H 19/02 20060101ALI20231221BHJP
   H01C 10/14 20060101ALI20231221BHJP
   H01C 10/16 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H01H25/04 G
H01H25/06 A
H01H11/00 P
H01H11/00 L
H01H19/02 C
H01C10/14 R
H01C10/16 R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020025552
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2021131945
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】岡西 紀昌
(72)【発明者】
【氏名】下村 尚登
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 和彦
(72)【発明者】
【氏名】清野 史崇
(72)【発明者】
【氏名】本間 均
(72)【発明者】
【氏名】小川 明紀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一彦
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-116084(JP,A)
【文献】特開2019-098522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 25/04
H01H 25/06
H01H 11/00
H01H 19/02
H01C 10/14
H01C 10/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾倒操作可能なレバーと、
前記レバーの傾倒操作により回動軸を中心に回動するアクチュエータと、
前記アクチュエータの回動により回動する回動部材と、
貫通穴が設けられた基板と、
前記基板の一部を覆い、前記基板と一体となっているカバーと、
を有し、
前記基板の貫通穴の縁は、前記カバーの樹脂層により覆われており、
前記回動部材は、前記樹脂層を縁とする前記カバーの貫通穴の内側に入れられた状態で回動し、
前記樹脂層には、前記貫通穴の貫通方向に伸びる複数の溝が設けられていることを特徴とする操作装置。
【請求項2】
前記溝の端には、前記樹脂層の厚さが徐々に厚くなるテーパ部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の操作装置。
【請求項3】
前記カバーの前記テーパ部が設けられている面において、前記テーパ部に凹部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の操作装置。
【請求項4】
前記基板には、前記貫通穴の周囲に抵抗体パターンが設けられており、
前記抵抗体パターンと、前記回動部材の一部とが接触している状態で、前記回動部材が回動することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の操作装置。
【請求項5】
傾倒操作可能なレバーと、前記レバーの傾倒操作により回動軸を中心に回動するアクチュエータと、前記アクチュエータの回動により回動する回動部材と、貫通穴が設けられた基板と、前記基板の一部を覆い、前記基板と一体となっているカバーと、を有し、前記基板の前記貫通穴の縁は、前記カバーの樹脂層により覆われており、前記回動部材は、前記樹脂層を縁とする前記カバーの前記貫通穴の内側に入れられた状態で回動し、前記樹脂層には、前記貫通穴の貫通方向に伸びる複数の溝が設けられている、操作装置の製造方法であって、
前記基板を第1の金型および第2の金型により挟み、前記基板の貫通穴に、前記第2の金型に設けられ前記基板の貫通穴の縁に向かって延びる突起部を周囲に有する凸部を入れ、前記基板の貫通穴の縁と前記金型に設けられた突起部とを接触させ位置合わせをする工程と、
前記基板と前記第1の金型と前記第2の金型との隙間に樹脂材料を供給し、硬化させることにより、前記基板の貫通穴の縁と前記第1の金型と前記第2の金型との間に樹脂層を有するカバーを、前記基板と一体化させて形成する工程と、
を有することを特徴とする操作装置の製造方法。
【請求項6】
前記突起部の端には、突起部の高さが低くなる傾斜部が設けられており、
前記傾斜部が設けられている部分において、前記金型と前記基板の前記貫通穴の縁との間の空間が、前記樹脂材料が流れる流路となることを特徴とする請求項5に記載の操作装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作装置及び操作装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ゲーム機のコントローラ等においては、ジョイスティック等のレバーを傾倒することにより、操作情報を入力することのできる操作装置が用いられている。このような操作装置では、レバーを2次元方向に傾倒する操作の他、レバーを下に押すことによる操作が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-116084号公報
【文献】特開2013-242972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ゲーム機のコントローラ等を用いてゲームを行う場合には、レバーを傾倒する操作等が頻繁に行われる。操作装置には、導電体パターン及び抵抗体パターンの配線が形成された基板と、レバーを傾倒する操作に対応して回動する摺動子を有する回動部材が設けられており、基板の中央に設けられた円形の貫通穴に、回動部材の一部が入れられた状態で、基板に形成された導電体パターン及び抵抗体パターンと、回動部材に設けられた摺動子とが接触している。従って、レバーを傾倒する操作を行うことにより、レバーの傾倒する操作に連動して回動部材が回動し、基板に設けられた導電体パターン及び抵抗体パターンと、回動部材に設けられた摺動子との接触位置が変化し、摺動子を介して検出される抵抗の値が変化する。このような抵抗の変化を検出することにより、レバーの傾倒した角度を検出することができる。
【0005】
従って、レバーを操作する度に、基板に設けられた円形の貫通穴の内部で、回動部材が回動するが、回動部材が回動すると、回動部材が基板の貫通穴との接触部で摺動し、これにより基板等の摩耗粉が発生することがある。このように発生した摩耗粉が、基板の導電体パターン及び抵抗体パターンに付着すると、抵抗値が変化し、レバーが傾倒した角度を正確に検出することができない。
【0006】
このため、レバーを傾倒する操作により、基板の貫通穴において回動部材が回動しても、基板の摩耗粉が生じない操作装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施の形態の一観点によれば、傾倒操作可能なレバーと、前記レバーの傾倒操作により回動軸を中心に回動するアクチュエータと、前記アクチュエータの回動により回動する回動部材と、貫通穴が設けられた基板と、前記基板の一部を覆い、前記基板と一体となっているカバーと、を有し、前記基板の貫通穴の縁は、前記カバーの樹脂層により覆われており、前記回動部材は、前記樹脂層を縁とする前記カバーの貫通穴の内側に入れられた状態で回動し、前記樹脂層には、前記貫通穴の貫通方向に伸びる複数の溝が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
開示の操作装置によれば、レバーを傾倒する操作により、基板の貫通穴において回動部材が回動しても、基板の摩耗粉が生じることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態における操作装置の斜視図
図2】本実施の形態における操作装置の分解斜視図
図3】本実施の形態における操作装置の内部構造の斜視図
図4】本実施の形態における操作装置の第1の回転型可変抵抗器の斜視図
図5】本実施の形態における操作装置の第1の回転型可変抵抗器の動きの説明図
図6】本実施の形態における操作装置に用いられる基板の斜視図(1)
図7】本実施の形態における操作装置に用いられる基板の斜視図(2)
図8】本実施の形態における操作装置に用いられる基板の平面図
図9】本実施の形態における操作装置に用いられる基板の断面図
図10】本実施の形態における操作装置に用いられる回動部材の斜視図
図11】本実施の形態における操作装置に用いられる基板とカバーの斜視図(1)
図12】本実施の形態における操作装置に用いられる基板とカバーの斜視図(2)
図13】本実施の形態における操作装置に用いられる基板とカバーの平面図
図14】本実施の形態における操作装置に用いられる基板とカバーの裏面図
図15】本実施の形態における操作装置に用いられる基板とカバーの断面図
図16図11の要部拡大図
図17図13の要部拡大図
図18図15の要部拡大図(1)
図19図15の要部拡大図(2)
図20】本実施の形態における操作装置の変形例の断面図
図21】基板とカバーとを一体成形する形成方法の説明図(1)
図22】基板とカバーとを一体成形する形成方法の説明図(2)
図23】基板とカバーとを一体成形する形成方法の説明図(3)
図24】基板とカバーとを一体成形する形成方法の説明図(4)
図25】基板とカバーとを一体成形する形成方法の説明図(5)
図26】第2の金型の凸部の断面図
図27】基板とカバーとを一体成形する形成方法の説明図(6)
図28】基板とカバーとを一体成形する形成方法の説明図(7)
図29】基板とカバーとを一体成形する形成方法の説明図(8)
図30】基板とカバーとを一体成形する形成方法の説明図(9)
図31】基板とカバーとを一体成形する形成方法の説明図(10)
図32】基板とカバーとを一体成形する形成方法の説明図(11)
図33】基板とカバーとを一体成形する形成方法の説明図(12)
図34】基板とカバーとを一体成形する形成方法の説明図(13)
図35】基板とカバーとを一体成形する際に生じる成形バリの説明図
図36】本実施の形態における操作装置の変形例の形成方法の説明図
図37】本実施の形態における操作装置の変形例の説明図(1)
図38】本実施の形態における操作装置の変形例の説明図(2)
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施するための形態について、以下に説明する。尚、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。尚、本願においては、X1-X2方向、Y1-Y2方向、Z1-Z2方向を相互に直交する方向とする。また、X1-X2方向及びY1-Y2方向を含む面をXY面と記載し、Y1-Y2方向及びZ1-Z2方向を含む面をYZ面と記載し、Z1-Z2方向及びX1-X2方向を含む面をZX面と記載する。
【0011】
〔第1の実施の形態〕
第1の実施の形態における操作装置について、図1から図3に基づき説明する。本実施の形態における操作装置は、家庭用ゲーム機や無線操縦機等のコントローラとして使用することのできるものである。尚、図1は、本実施の形態における操作装置の斜視図であり、図2は、分解斜視図であり、図3は、上ケースを取り除いた状態の内部の斜視図である。
【0012】
本実施の形態における操作装置は、上ケース10、第1のアクチュエータ20、第2のアクチュエータ30、レバー40、コイルバネ50、第3のアクチュエータ60、下ケース70、第1の回転型可変抵抗器81、第2の回転型可変抵抗器82、プッシュスイッチ83等を有している。本願においては、コイルバネ50を弾性部材と記載する場合がある。
【0013】
上ケース10は、中央部分に開口部11を有しており、この開口部11から、傾倒操作可能なレバー40の操作部41等が挿通されており上ケース10の外に出ている。
【0014】
第1のアクチュエータ20は、Y1-Y2方向に長く形成されており、中央部分に開口部21が設けられており、開口部21のX1方向及びX2方向の両側が、レバー40と接触する構造となっている。また、第1のアクチュエータ20には、Y2側に軸部22が形成されており、レバー40の操作部41をX1-X2方向に傾倒する操作をすることにより、第1のアクチュエータ20がY1-Y2方向を軸に回動し、軸部22を介し、第1の回転型可変抵抗器81の摺動子が回動して、第1の回転型可変抵抗器81の抵抗との接触位置が変化して抵抗値が変化する。これにより、レバー40の操作部41をX1-X2方向に傾倒した情報が入力される。
【0015】
第2のアクチュエータ30は、X1-X2方向に長く形成されており、中央部分に開口部31が設けられており、開口部31のY1方向及びY2方向の両側が、レバー40の操作部41と接触する構造となっている。また、第2のアクチュエータ30には、X1側に軸部33、X2側に軸部32が形成されている。レバー40の操作部41をY1-Y2方向に傾倒する操作をすることにより、第2のアクチュエータ30がX1-X2方向を軸に回動し、軸部32を介し、第2の回転型可変抵抗器82の摺動子が回動して、第2の回転型可変抵抗器82の抵抗との接触位置が変化して抵抗値が変化する。これにより、レバー40の操作部41をY1-Y2方向に傾倒した情報が入力される。
【0016】
尚、第2のアクチュエータ30は、レバー40のZ2側の幅が広くなっている部分を覆うように取り付けられており、第2のアクチュエータ30の開口部31には、操作部41が外に出るように、レバー40が入れられている。レバー40の操作部41をX1側及びX2側に傾倒した際に、レバー40は第2のアクチュエータ30の開口部31内を移動可能である。
【0017】
第1のアクチュエータ20は、第2のアクチュエータ30を覆うように取り付けられており、第1のアクチュエータ20の開口部21には、操作部41が外に出るように、レバー40が入れられている。レバー40の操作部41をY1側及びY2側に傾倒した際に、レバー40は第1のアクチュエータ20の開口部21内を移動可能である。
【0018】
従って、第1のアクチュエータ20は、Y1-Y2方向に沿った回動軸を中心に回動し、第2のアクチュエータ30は、X1-X2方向に沿った回動軸を中心に回動する。
【0019】
次に、第1の回転型可変抵抗器81についてより詳細に説明する。尚、第2の回転型可変抵抗器82も第1の回転型可変抵抗器81と同様の構造のものである。
【0020】
図4に示されるように、第1の回転型可変抵抗器81には、基板110、カバー120、回動部材130が設けられている。基板110とカバー120とはインサート成形等により一体に形成されており、基板110及びカバー120の円形の貫通穴に回動部材130が入れられている。基板110は、ガラスエポキシ樹脂等により形成された絶縁体基板により形成されており、絶縁体基板には、貫通穴の周囲に沿って導電体パターン及び抵抗体パターンの配線が設けられている。
【0021】
図5に示されるように、第1の回転型可変抵抗器81においては、回動部材130の中央部分に、第1のアクチュエータ20の軸部22が入り込んでおり、レバー40をX1側またはX2側に傾倒する操作を行うことにより、第1のアクチュエータ20はY1-Y2方向に沿った回動軸を中心として回動し、これに伴い、第1のアクチュエータ20の軸部22と接続されている回動部材130が回動する。回動部材130には、基板110の導電体パターン及び抵抗体パターンの上を摺動する摺動子が設けられている。摺動子は金属等の導電性を有する材料により形成されており、基板110の導電体パターンまたは抵抗体パターンと接触している。
【0022】
このように回動部材130を回動させることにより、回動部材130に設けられている摺動子と、基板110に設けられている導電体パターン及び抵抗体パターンとの接触位置が変化するため、導電体パターン及び抵抗体パターンと接触している摺動子を介して得られる抵抗値も変化し、レバー40の傾倒された角度を検出することができる。
【0023】
ところで、基板の貫通穴の縁と回動部材とが接触していると、回動部材を頻繁に回動させた場合、基板の貫通穴の縁と回動部材とが擦れ、基板の摩耗粉等が生じることがある。
【0024】
しかしながら、本実施の形態における操作装置では、基板110の貫通穴の縁が、樹脂材料により形成されたカバー120の一部により覆われており、基板110の貫通穴と回動部材130とが直接接触してはいない。
【0025】
より詳細に、本実施の形態における操作装置について説明する。図6から図9は、本実施の形態における操作装置の第1の回転型可変抵抗器81及び第2の回転型可変抵抗器82に用いられている基板110を示す。尚、図6は、基板110をY2側から見た斜視図であり、図7はY1側から見た斜視図であり、図8はY1側から見た平面図であり、図9はYZ面において切断した断面図である。基板110には、中央部分に円形の貫通穴111が設けられており、Y1側の面には、円形の貫通穴111の縁111aの形状に沿った同心円状の導電体パターン112及び抵抗体パターン113が形成されている。導電体パターン112には、電極端子115が接続されており、抵抗体パターン113の両端は、電極端子114、116が接続されている。
【0026】
回動部材130には、図10に示されるように、基板110の導電体パターン112及び抵抗体パターン113の上を摺動する摺動子131、132等が設けられている。摺動子131、132等は金属等の導電性を有する材料により形成されており、基板110の導電体パターン112または抵抗体パターン113と接触している。
【0027】
回動部材130を回動させることにより、回動部材130に設けられている摺動子131、132等と、基板110に設けられている導電体パターン112及び抵抗体パターン113との接触位置が変化する。これにより、導電体パターン112及び抵抗体パターン113と接触している摺動子131、132等を介して得られる抵抗値も変化するため、レバー40の傾倒された角度を検出することができる。
【0028】
本実施の形態における操作装置では、図11から図19に示されるように、基板110を覆うようにカバー120が取り付けられており、カバー120の樹脂層121が、基板110の貫通穴111の縁111aを覆っている。尚、図11は、基板110にカバー120が取り付けられている状態のものをY2側から見た斜視図であり、図12はY1側から見た斜視図であり、図13はY2側から見た平面図であり、図14はY1側から見た平面図であり、図15はYZ面において切断した断面図である。図16は、図11における貫通穴122の拡大図であり、図17は、図13における貫通穴122の拡大図であり、図18は、図15における貫通穴122のZ1側の拡大図であり、図19は、図18を更に拡大した図である。
【0029】
カバー120には、樹脂層121を縁とする貫通穴122が形成されている。基板110の貫通穴111の縁111aは、カバー120の樹脂層121により覆われており、貫通穴111の縁111aは露出していない。言い換えれば、貫通穴122は、基板110の貫通穴111の縁111a、つまり貫通穴111の内周面に設けられた、カバー120の一部である樹脂層121によって形成される。図16等に示されるように、カバー120の樹脂層121には、貫通穴111の貫通方向となるY1-Y2方向に沿った複数の溝123が形成されている。各々の溝123のY1側にはテーパ部124が設けられており、テーパ部124では、樹脂層121の厚さが、Y2側からY1側に向かうにつれ徐々に厚くなるように形成されている。図17に示されるように、貫通穴122のY2側から見た形状は、多角形、例えば、八角形であってもよい。貫通穴122の形状を多角形で形成することにより、回動部材130との接触する面積を減らすことができ、回動部材130を円滑に回動することができる。
【0030】
回動部材130は、樹脂層121により覆われたカバー120の貫通穴122の内側に入れられた状態で回動するが、回動部材130は、カバー120の貫通穴122の周囲の樹脂層121と接触し回動するため、回動部材130が基板110と接触することはない。このため、回動部材130が回動を繰り返した場合の基板110の摩耗粉の発生を抑制することができる。
【0031】
また、本実施の形態においては、図20に示されるように、テーパ部124のY1側の端部には、カバー120を成形する際に発生した成形バリが入り込むことができるように凹んだバリ逃げ凹部125が設けられていてもよい。カバー120を樹脂材料により成型する場合には、特に角の部分において樹脂による成形バリが発生する場合がある。このような成形バリが発生すると、バリと回動部材130とが接触して、回動部材130の回動の妨げとなる場合がある。
【0032】
本実施の形態においては、テーパ部124に、バリ逃げ凹部125を設けることにより、成形バリが発生しても、バリ逃げ凹部125に成形バリが入り込むことで、回動部材130の回動の妨げとなることを防ぐことができる。これにより、回動部材130の円滑な回動を確保することができる。
【0033】
(形成方法)
次に、基板110とカバー120とを一体化して形成する形成方法について説明する。本実施の形態においては、最初に基板110を作製し、作製した基板110を用いて、インサート成形により、基板110とカバー120とを一体に形成する。
【0034】
最初に、図21に示されるように、円形の貫通穴111が設けられた基板110を準備する。
【0035】
次に、図22から図25に示されるように、基板110を、基板110のY1側より第1の金型210、Y2側より第2の金型220により挟む。第1の金型210は、Y2側の面が平坦であり基板110のY1側の一方の面110aと接触している。第2の金型220には、中央部分に基板110の貫通穴111の内部に入り込む円柱状の凸部221が設けられている。図26に示されるように、円柱状の凸部221の側面の周囲には、基板110側、即ち、基板110の貫通穴111の縁111aに向かって延びる突起部222が設けられている。尚、図22は、凸部221において突起部222が設けられている部分で切断した断面図であり、図23は、凸部221において突起部222が設けられていない部分で切断した断面図である。図24は、図22の要部を拡大した図であり、図25は、図23の要部を拡大した図である。
【0036】
図26は、第2の金型220の凸部221をZX面に平行な面で切断した断面図である。基板110の貫通穴111に、第2の金型220の凸部221が入れられた状態では、基板110の貫通穴111の縁111aと、第2の金型220の凸部221の周囲の突起部222の先端とが接触する。
【0037】
これにより、基板110の貫通穴111と第2の金型220の凸部221との位置合わせがなされる。尚、第2の金型220の凸部221に設けられた突起部222は、Y1側において突起の高さが低くなるように傾斜した傾斜部223が設けられている。
【0038】
図22から図25に示されるように、基板110の貫通穴111の縁111a、第1の金型210、第2の金型220とにより囲まれた空間230が形成されるが、突起部222を凸部221のY1の端部まで形成してしまうと、カバー120を形成するための樹脂材料をうまく流し込むことができない。このため、突起部222の、凸部221が突出する方向の端部(Y1方向の端部)に、傾斜部223を形成することにより、第1の金型210と、基板110の貫通穴111の縁111aと、傾斜部223との間に空間231を形成する。この空間231は、供給された樹脂材料が流れる流路となる。
【0039】
次に、図27から図30に示されるように、基板110の貫通穴111と第2の金型220との隙間となる空間230及び231等に樹脂材料を供給し、硬化させる。傾斜部223により形成される流路は、基板110の貫通穴111の縁111aに沿った円周に形成されるため、円周に形成された流路に沿って樹脂材料が流動することにより、基板110の貫通穴111の縁111aの全体を樹脂材料により覆うことができる。尚、図27は、この状態における突起部222が設けられている部分で切断した断面図であり、図28は、突起部222が設けられていない部分で切断した断面図である。図29は、図27の要部を拡大した図であり、図30は、図28の要部を拡大した図である。
【0040】
次に、図31から図34に示されるように、第1の金型210及び第2の金型220を取り外すことにより、一体に形成された基板110とカバー120とを取り出す。カバー120において溝123が形成されている部分には、テーパ部124が形成される。また、溝123が形成されていない部分には、基板110の貫通穴111の縁111aを覆う樹脂層121が形成される。尚、図31は、溝123が設けられている部分で切断した断面図であり、図32は、溝123が設けられていない部分で切断した断面図である。図33は、図31の要部を拡大した図であり、図34は、図32の要部を拡大した図である。
【0041】
ところで、カバー120を第1の金型210と第2の金型220とを用いて形成した場合、図35に示されるように、第1の金型210と第2の金型220との間において成形バリ124aが発生する場合がある。このような成形バリ124aが発生すると、成形バリ124aと回動部材130とが接触した場合に、回動部材130の円滑な回動が妨げられる。
【0042】
このため、本実施の形態においては、図36に示されるように、第1の金型210にバリ逃げ凹部125を形成するための突起部211が設けられていてもよい。図36に示されるように、第1の金型210の突起部211は、カバー120のテーパ部124が形成される部分に一部は入り込んでいる。
【0043】
このように、突起部211が設けられた第1の金型210を用いることにより、図37に示されるように、第1の金型210の突起部211が設けられている部分に対応した、バリ逃げ凹部125が形成される。従って、カバー120を形成する際に、成形バリ125aが発生したとしても、回動部材130を取り付ける際に、図38に示されるように、成形バリ125aは、カバー120に設けられたバリ逃げ凹部125に入り込むため、回動部材130との接触を抑制することができる。
【0044】
以上、実施の形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
10 上ケース
11 開口部
20 第1のアクチュエータ
21 開口部
22 軸部
30 第2のアクチュエータ
31 開口部
32 軸部
40 レバー
41 操作部
50 コイルバネ
60 第3のアクチュエータ
70 下ケース
71 底面部
81 第1の回転型可変抵抗器
82 第2の回転型可変抵抗器
83 プッシュスイッチ
110 基板
111 貫通穴
111a 縁
112 導電体パターン
113 抵抗体パターン
114、115、116 電極端子
120 カバー
121 樹脂層
122 貫通穴
123 溝
124 テーパ部
125 バリ逃げ凹部
130 回動部材
210 第1の金型
220 第2の金型
221 凸部
222 突起部
223 傾斜部
230 空間
231 空間
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