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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】表面処理基材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 28/00 20060101AFI20231221BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
C23C28/00 A
C23C26/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020025645
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2021130839
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】阿部 惟
(72)【発明者】
【氏名】川村 智
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-004773(JP,A)
【文献】特開2014-029288(JP,A)
【文献】特開2018-182043(JP,A)
【文献】特開2013-004619(JP,A)
【文献】特開2016-199779(JP,A)
【文献】特開2010-242136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 26/00-30/00
B22F 1/00-8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に金属ナノ粒子を吸着させる金属ナノ粒子吸着工程と、
前記金属ナノ粒子が吸着した前記基材の表面にトリアジンチオール化合物を含む溶液を接触させて、前記金属ナノ粒子の表面に前記トリアジンチオール化合物を結合させ、前記金属ナノ粒子及び前記トリアジンチオール化合物を含み、他の基材と接合可能とする接合層を形成する接合層形成工程と、
を含む表面処理基材の製造方法。
【請求項2】
前記接合層は、前記金属ナノ粒子の上に前記トリアジンチオール化合物が堆積している請求項1に記載の表面処理基材の製造方法。
【請求項3】
前記金属ナノ粒子の平均粒径は0.5nm~150nm以下である請求項1又は2に記載の表面処理基材の製造方法。
【請求項4】
前記金属ナノ粒子は、Cuナノ粒子を含む請求項1~3の何れか一項に記載の表面処理基材の製造方法。
【請求項5】
前記トリアジンチオール化合物が、6-(3-トリエトキシシリルプロピルアミノ)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールである請求項1~4の何れか一項に記載の表面処理基材の製造方法。
【請求項6】
前記金属ナノ粒子吸着工程及び前記接合層形成工程を、繰り返し行う請求項1~5の何れか一項に記載の表面処理基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス、セラミックス、合成樹脂等、材料や物性等が異なる材料からなる基材同士を接合する技術が、自動車、電気製品等の様々な分野において、製品の軽量化、多様化、低価格化のため、広く要求されている。
【0003】
異なる材料からなる基材同士を接合する方法として、化学エッチングやレーザーにより基材の表面を粗化する方法、接着剤を塗布する方法、カップリング剤を用いて基材を表面処理する方法等が知られている。中でも、カップリング剤を用いて基材を表面処理する方法は、カップリング剤で基材を表面処理して形成される処理層が数nmと薄く、基材の全面を表面処理しても導電性を阻害せず、化学結合による強固な接合が行える等の利点を有している。
【0004】
このようなカップリング剤を用いて基材を表面処理する方法として、例えば、金属ナノ粒子と、金属ナノ粒子を修飾するアルコキシシラン化合物とから構成された修飾金属ナノ粒子を用い、修飾金属ナノ粒子上に金属を形成し、基材と修飾金属ナノ粒子とを共有結合させることにより、基材上に配線層を形成する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-199779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の修飾金属ナノ粒子では、アルコキシシラン化合物のようにシランカップリング剤を用いて金属ナノ粒子の表面改質を行っているため、修飾金属ナノ粒子が配置される基材がシランカップリング剤の反応点となるヒドロキシ基や活性面又は反応性官能基等を有していない場合には、シランカップリング剤が基材表面に十分吸着できない場合がある。そのため、用いる基材の種類によっては、金属ナノ粒子のシランカップリング剤による表面処理効果が得られない可能性がある。
【0007】
本発明の一態様は、基材に対して表面処理効果を安定して発揮することができる表面処理基材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る表面処理基材の製造方法の一態様は、基材の表面に金属ナノ粒子を吸着させる金属ナノ粒子吸着工程と、前記金属ナノ粒子が吸着した前記基材の表面にトリアジンを含む溶液を接触させて、前記金属ナノ粒子の表面に前記トリアジンを結合させ、前記金属ナノ粒子及び前記トリアジンを含む接合層を形成する接合層形成工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様に係る表面処理基材の製造方法は、基材に対して表面処理効果を安定して発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る表面処理基材の製造方法を示すフローチャートである。
図2】表面処理基材の製造方法の工程の一部の説明図である。
図3】表面処理基材の製造方法の工程の一部の説明図である。
図4】表面処理基材の表面にCuナノ粒子を吸着させた状態の一例の説明図である。
図5】表面処理基材の製造方法の工程の一部の説明図である。
図6】表面処理基材の表面にトリアジン系化合物を堆積させた状態の一例の説明図である。
図7】表面処理基材の製造方法の工程の一部の説明図である。
図8】実施例3-1~3-5、比較例3-1~3-5の結合強度の試験結果を示す。
図9】実施例4-1の表面粗さの試験結果を示す。
図10】比較例4-1の表面粗さの試験結果を示す。
図11】比較例4-2の表面粗さの試験結果を示す。
図12】実施例5-1の接合層の一部の断面図である。
図13】実施例5-2の接合層の一部の断面図である。
図14】実施例5-3の接合層の一部の断面図である。
図15】比較例5-1の接合層の一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の符号を付して、重複する説明は省略する。また、図面における各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。本明細書において数値範囲を示すチルダ「~」は、別段の断わりがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0012】
<表面処理基材の製造方法>
本発明の実施形態に係る表面処理基材の製造方法について説明する。図1は、本実施形態に係る表面処理基材の製造方法を示すフローチャートである。図1に示すように、本実施形態に係る表面処理基材の製造方法は、アルカリ脱脂工程(ステップS11)、熱処理工程(ステップS12)、Cuナノ粒子吸着工程(ステップS13)、洗浄工程(ステップS14)、接合層形成工程(ステップS15)及び洗浄乾燥工程(ステップS16)を含む。
【0013】
以下、各工程について図2図7に基づいて説明する。図2図7は、本実施形態に係る表面処理基材の製造方法の各工程の一部の説明図である。
【0014】
アルカリ脱脂工程(ステップS11)では、図2に示すように、板状の基材10Aを容器11中のアルカリ水溶液12に浸漬して、基材10Aをアルカリ脱脂する。基材10Aはアルカリ水溶液12と接触することで、基材10Aの表面に付着している有機物、加工油、研磨剤等が除去されると共に、基材10Aの表面に存在する水酸基が減少して活性面が増大する。これにより、基材10Aの表面が洗浄され、基材10Aの表面の親水性を高めることができる。
【0015】
基材10Aとして、低反応性基材、難接着性基材等を用いることができる。なお、基材10Aは、板状としているが、柱状や筒状等の他の形状でもよい。
【0016】
低反応性基材としては、例えば、金属、合金、セラミックス等の無機材料からなる基材等が挙げられる。
【0017】
難接着性基材としては、例えば、合成樹脂等の有機材料からなる基材等が挙げられる。
【0018】
アルカリ水溶液としては、アンモニア水溶液等の公知のアルカリ水溶液を用いることができる。
【0019】
アルカリ水溶液は、基材10Aの表面に付着している有機物、加工油、研磨剤等の除去性能を向上させるため、アルカリ水溶液の温度を、例えば、50℃~80℃に加熱してもよい。
【0020】
基材10Aは、アルカリ水溶液に数十秒~5分間、浸漬していればよい。
【0021】
熱処理工程(ステップS12)では、アルカリ脱脂された基材10B等を容器21中の水溶液に浸漬して熱処理して洗浄する。
【0022】
熱処理温度は、適宜調整可能であり、例えば、100℃~150℃とすることが好ましい。また、加熱時間は、適宜調整可能であり、例えば、5分~30分とすることができる。
【0023】
Cuナノ粒子吸着工程(ステップS13)では、図3に示すように、洗浄した基材10Bを、室温で、容器21中の金属ナノ粒子であるCuナノ粒子20を含むCuナノ粒子分散液22に浸漬して、図4に示すように、基材10Bの表面にCuナノ粒子20を吸着させる。これにより、Cuナノ粒子20が表面に吸着した基材10Cが得られる。Cuナノ粒子吸着工程(ステップS13)では、基材10Bの表面にCuナノ粒子20を物理的に吸着させることで、基材10Bの表面を改質することができる。
【0024】
Cuナノ粒子20は、公知の銅微粒子を用いてもよいし、Cuナノ粒子20の表面をアルキルアミン等のアミン化合物からなる保護層で被覆した被覆Cu粒子として用いてもよい。
【0025】
Cuナノ粒子20が被覆Cu粒子である場合、Cuナノ粒子20の表面に形成される保護膜を形成するアルキルアミンとしては、分子内に一つのアミノ基を有するアルキルアミン(モノアミン)、分子内に二つのアミノ基を有するアルキルジアミンを用いることができる。アルキルアミンは、1種のアルキルアミンを使用しても良いが、複数のアルキルアミンを混合して使用してもよい。
【0026】
モノアミンとしては、例えば、2-エトキシエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、3-ブトキシプロピルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン等を用いることができる。
【0027】
アルキルジアミンとして、例えば、エチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N'-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、N,N'-ジエチルエチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N'-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、N,N'-ジメチル-1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン等が挙げられる。
【0028】
Cuナノ粒子分散液22に含まれるCuナノ粒子の濃度は、適宜設計可能であり、例えば、0.01wt%~2.00wt%としてもよい。
【0029】
基材10BのCuナノ粒子分散液22中への浸漬時間は、適宜設計可能であり、例えば、1分~10分とすることができる。
【0030】
基材10BをCuナノ粒子分散液22に浸漬させると、図4に示すように、Cuナノ粒子20は、基材10Bの表面、特に凹凸部分に存在する凹部に吸着する。そして、Cuナノ粒子20の粒子サイズに由来して生じる凝集力と、Cuナノ粒子20の分子間力と、Cuナノ粒子20の基材10Bへの融着とにより、基材10B上に強固に固定される。また、Cuナノ粒子が、銅微粒子表面にアルキルアミン含む保護膜が形成された被覆銅微粒子である場合には、保護膜を構成するアルキルアミンに含まれるアミノ基による硬化を含めて、Cuナノ粒子20は、基材10B上に強固に固定される。なお、Cuナノ粒子20はその大きさ及び凝集力により、遠心分離機による遠心力や超音波発生装置等による超音波等により物理的な衝撃を与えても脱離は殆ど生じない。
【0031】
Cuナノ粒子20の平均粒子径は、0.5nm~150nmであることが好ましく、1nm~100nmであることがより好ましく、3nm~70nmであることがさらに好ましい。Cuナノ粒子吸着工程(ステップS13)で、Cuナノ粒子20を基材10Bの表面に効率良くかつ安定に吸着させるには、Cuナノ粒子20の平均粒子径が小さく均一性が高いことと、溶剤に安定して分散(単分散)していることが重要である。Cuナノ粒子20の平均粒子径が、0.5nm~150nmであれば、Cuナノ粒子は低反応性基材11等の表面の凹凸部分に侵入し易くなると共に、ナノサイズの粒子の大きさに由来して生じる凝集力が発揮され易くなる。
【0032】
なお、平均粒子径は、公知の測定方法により求めることができ、有効径による体積平均粒径をいい、平均粒子径は、例えば、レーザ回折・散乱法、動的光散乱法、SEM画像から画像解析ソフトを使用して求める方法等によって測定される。
【0033】
洗浄工程(ステップS14)では、Cuナノ粒子20が吸着された基材10Cをヘキサン等の有機溶媒を用いて洗浄し、凝集粒子や余分なCuナノ粒子20を除去する。
【0034】
接合層形成工程(ステップS15)では、図5に示すように、Cuナノ粒子が吸着した基材10Cを容器31中の分子接合剤であるトリアジン系化合物30を含む処理液32に浸漬することで、基材10CにCuナノ粒子20及びトリアジン系化合物30を含む接合層40が形成された表面処理基材1が得られる。
【0035】
Cuナノ粒子が吸着した基材10Cを処理液32に浸漬すると、図6に示すように、処理液32中のトリアジン系化合物30が基材10Cの表面及びCuナノ粒子20の表面に結合して、Cuナノ粒子20の上にトリアジン系化合物30が堆積して、膜状に積層する。これにより、複数のCuナノ粒子20の上方には、トリアジン系化合物30からなる分子接合膜が形成される。
【0036】
基材10Cを処理液32に浸漬して、トリアジン系化合物30と接触させることで、基材10Cの表面に吸着させたCuナノ粒子20がトリアジン系化合物30の反応点となってCuナノ粒子20とトリアジン系化合物30との結合を促進し、トリアジン系化合物30はCuナノ粒子20の表面に堆積する。そして、トリアジン系化合物30は、複数のCuナノ粒子20同士を跨ぐように積層する。また、Cuナノ粒子20から溶出したCuイオンがトリアジン系化合物30と結合することで、Cuナノ粒子20とトリアジン系化合物30との結合がさらに促進される。
【0037】
そのため、接合層40は、Cuナノ粒子20とトリアジン系化合物30とが強固に結合された一体膜となる。また、Cuナノ粒子20がトリアジン系化合物30との主な反応の起点となり、吸着するため、基材10Cを形成する材料を問わず、基材10Cの表面に接合層40を形成することができる。さらに、トリアジン系化合物30はCuナノ粒子20に強固に結合しているため、Cuナノ粒子20によるアンカー効果により、接合層40は基材10Cに密着させることができる。また、基材10C上に積層するトリアジン系化合物30は、Cuナノ粒子20を起点として隣接するCuナノ粒子20同士を跨ぐように略均一に拡散しながら堆積できるので、形成される接合層40の表面の厚みムラを抑えることができる。
【0038】
分子接合剤に含まれるトリアジン系化合物としては、トリアジンチオール化合物を用いることができる。トリアジンチオール化合物として、例えば、トリアジン環にチオール基(-SH基)又はチオール基のアルカリ金属塩がついたものを用いることができる。官能基の何れか一つは、ジブチルアミノ基、アニリノ基等の他の構造を有していてもよい。
【0039】
トリアジンチオール化合物の具体例としては、例えば、6-(3-トリエトキシシリルプロピルアミノ)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール(TES)、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTES)、トリエトキシビニルシラン(VITES)、3-(トリエトキシシリルプロピル)イソシアネート(ICNTES)、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-トリエトキシシリルプロピルアミノ-4-アジド-6-アジド-1,3,5-トリアジン、2-トリエトキシシリルプロピルアミノ-4-アミノエチルアミノ-6-アミノエチルアミノ-1,3,5-トリアジン、2-トリヒドロキシシリルプロピルアミノ-4-チオール-6-チオール-1,3,5-トリアジン、2-トリヒドロキシシリルプロピルアミノ-4-アジド-6-アジド-1,3,5-トリアジン、2-トリヒドロキシシリルプロピルアミノ-4-アミノエチルアミノ-6-アミノエチルアミノ-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-エトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)一1,3,5-トリアジン、2-(4-エトキシカルボニルナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(モノクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(ジクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-n-プロピル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(α,α,β-トリクロロエチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4-エポキシフェニル)-4、6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(p-クロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-〔1-(p-メトキシフェニル)-2,4-ブタジエニル〕-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-スチリル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(p-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(p-i-プロピルオキシスチリル)-4、6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-フェニルチオ-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-ベンジルチオ-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、4-(o-ブロモ-p-N,N-(ジエトキシカルボニルアミノ)-フェニル)-2,6-ジ(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(ジブロモメチル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(トリブロモメチル)-1,3,5-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリブロモメチル)-1,3,5-トリアジン、2-メトキシ-4,6-ビス(トリブロモメチル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリメルカプト-1,3,5-トリアジン、2-ジブチルアミノ-4,6-ジメルカプト-1,3,5-トリアジン、2-アニリノ-4,6-ジメルカプト-1,3,5-トリアジン及びこれらのナトリウム塩等が挙げられる。これらの中でも、6-(3-トリエトキシシリルプロピルアミノ)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールのナトリウム塩である、6-(3-トリエトキシシリルプロピルアミノ)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールモノナトリウム塩(n-TES)、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールのナトリウム塩である、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールモノナトリウム塩(TTN)、MPTES、VITES、ICNTES、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを用いることが好ましく、n-TESがより好ましい。これらは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。なお、1,3,5-トリアジンは、s-トリアジンともいう。
【0040】
市販品としては、例えば、株式会社いおう化学研究所製の「n-TES」、「a-TES」、「p-TES」等が挙げられる。
【0041】
処理液32の加熱温度は、用いるトリアジン系化合物に応じて適宜設計可能であり、例えば、60℃~100℃とすることが好ましい。
【0042】
処理液32の加熱時間は、用いるトリアジン系化合物に応じて適宜設計可能であり、例えば、1分~10分とすることができる。
【0043】
接合層40の厚さは、1回の接合層40の形成で、好ましくは1nm~100nmとすることができ、より好ましくは5nm~50nmとすることができ、さらに好ましくは15nm~30nmとすることができる。
【0044】
接合層40の厚さは、上記のCuナノ粒子吸着工程(ステップS13)及び接合層形成工程(ステップS15)を複数回繰り返すことで、任意の厚さに調節することができる。
【0045】
洗浄乾燥工程(ステップS16)では、図7に示すように、基材10Cの表面に接合層40を有する表面処理基材1は、処理液32から取り出した後、水洗及び熱処理することにより残っている処理液32を除去して、回収される。
【0046】
熱処理温度は、適宜調整可能であり、例えば、100℃~150℃であることが好ましい。
【0047】
加熱時間は、適宜調整可能であり、例えば、5分~15分とすることができる。
【0048】
このように、本実施形態に係る表面処理基材の製造方法は、Cuナノ粒子吸着工程(ステップS13)及び接合層形成工程(ステップS15)を含み、Cuナノ粒子吸着工程(ステップS13)で基材10Bの表面にCuナノ粒子20を吸着させた後、接合層形成工程(ステップS15)で基材10Cの表面にCuナノ粒子20及びトリアジン系化合物30を含む接合層40を形成している。本実施形態に係る表面処理基材の製造方法を用いれば、接合層40の形成時に予め基材10Cの表面に吸着させたCuナノ粒子20の表面にトリアジン系化合物30を結合させているので、トリアジン系化合物30はCuナノ粒子20を介して基材10Cの表面に安定して設けることができる。よって、本実施形態に係る表面処理基材の製造方法によれば、基材10Dの表面処理効果を安定して発揮することができる。
【0049】
よって、本実施形態に係る表面処理基材の製造方法を用いれば、あらゆる基材に対する接合層40の成膜性を向上させることができるので、様々な基材の表面改質性能を安定して向上させることができる。
【0050】
すなわち、ステンレス、アルマイト、Ni、Sn、Cr等の各種金属からなる基材(金属基材)の場合では、金属製基材の表面に一般的に耐食性の不働態皮膜を形成し、表面改質効果が低くなる。これは、主に、金属製基材の表面に生成される不働態皮膜の存在により、トリアジン系化合物30の反応点となる活性面の形成が困難となり、反応性が低くなることに起因している。また、不働態皮膜は王水や強酸の混酸処理等で除去しても、大気中の酸素により不働態皮膜が自己修復するため、金属性基材の表面に活性表面を得ることは困難である。これに対し、本実施形態に係る表面処理基材の製造方法を用いれば、シランカップリング剤等による表面改質が困難な金属製基材等に対しても、接合層40の安定して形成することができ、様々な基材に対して表面改質を安定して行うことができる。
【0051】
また、本実施形態に係る表面処理基材の製造方法を用いれば、接合層形成工程(ステップS15)で、トリアジン系化合物30を含む接合層40を形成する際、Cuナノ粒子20によるアンカー効果により、トリアジン系化合物30はCuナノ粒子20と強固に結合させ、接合層40は基材10Cに密着させることができるので、接合層40の基材10Cに対する接合強度を向上させることができる。
【0052】
さらに、本実施形態に係る表面処理基材の製造方法は、Cuナノ粒子吸着工程(ステップS13)及び接合層形成工程(ステップS15)でCuナノ粒子20を含むCuナノ粒子分散液22及びトリアジン系化合物30を含む処理液32にそれぞれ浸漬することで、接合層40を形成できるので、接合層40を簡易に形成することができる。
【0053】
本実施形態に係る表面処理基材の製造方法を用いれば、接合層40を、トリアジン系化合物30が複数のCuナノ粒子20同士を跨ぐようにして堆積させることができる。これにより、複数のCuナノ粒子20の上面に、トリアジン系化合物30が堆積した拡散層を形成することができるので、接合層40の厚さのムラを小さく抑え、接合層40の表面粗さを低減することができる。
【0054】
本実施形態に係る表面処理基材の製造方法は、Cuナノ粒子20の平均粒径を150nm以下とすることができる。これにより、基材10Bの表面の凹凸が大きい場合でも、凹凸の間に凹部にCuナノ粒子20は容易に入り込んで吸着できるので、トリアジン系化合物30をCuナノ粒子20を介して基材10Cに安定して結合して、接合層40を形成することができる。
【0055】
本実施形態に係る表面処理基材の製造方法は、金属ナノ粒子としてCuナノ粒子を用いることで、基材10Bに対して安定して吸着することができる。
【0056】
本実施形態に係る表面処理基材の製造方法は、Cuナノ粒子吸着工程(ステップS13)及び接合層形成工程(ステップS15)を、複数回繰り返し行うことができる。本実施形態に係る表面処理基材の製造方法によれば、n回目(nは1以上の整数)の接合層40の形成後、(n+1)回目のCuナノ粒子吸着工程(ステップS13)を行うことで、n回目の接合層形成工程(ステップS15)で形成された接合層40の上にCuナノ粒子20を吸着させることができる。その後、(n+1)回目の接合層形成工程(ステップS15)を行い、Cuナノ粒子20の表面にトリアジン系化合物30を堆積させることで、n回目の接合層40の上に(n+1)回目の接合層40をさらに形成することができる。また、Cuナノ粒子20は、基材10Cと同様、接合層40に対しても強固に吸着することができるため、それぞれの接合層40同士も強固に接合させることができる。よって、本実施形態に係る表面処理基材の製造方法によれば、Cuナノ粒子吸着工程(ステップS13)及び接合層形成工程(ステップS15)を複数回繰り返し行うことで、複数の接合層40の厚さを所望の厚さに容易に制御することができる。これにより、例えば、複数の接合層40による熱膨張係数等の制御を行うことができる。
【0057】
本実施形態に係る表面処理基材の製造方法により得られる表面処理基材1は、上述の通り、樹脂等の他の基材等に対して高い接着力を有するため、例えば、表面処理基材1を成形機等の金型にインサートして、樹脂材料と一体に成形することにより、表面処理基材1と樹脂材料の成形体とが接合したインサート成型品を容易に得ることができる。
【0058】
なお、本実施形態では、金属ナノ粒子として、Cuナノ粒子以外に、Au、Ag、Ni等の他の金属で構成されたナノ粒子を併用してもよいし、Au、Ag、Ni等の他の金属で構成されたナノ粒子のみを用いてもよい。
【実施例
【0059】
以下、実施例及び比較例を示して実施形態を更に具体的に説明するが、実施形態はこれらの実施例及び比較例により限定されるものではない。
【0060】
<実施例1>
[実施例1-1]
(表面処理基材の作製)
基材(SUS304、長さ24.5mm×幅6.8mm×高さ5mm)を60℃のアルカリ脱脂剤(「SK-144」、株式会社JCU)に2分間浸漬した後、基材を純水に浸漬することで基材表面の脱脂剤残りを洗浄した。その後、エアブローで基材表面の水滴を飛ばし、クリーンオーブン中で、120℃で15分間熱処理を行った。その後、熱処理した基材を、室温でCuナノ粒子(粒径:10~20nm)を含むCuナノ粒子分散液(Cuナノ粒子の濃度:0.1質量%、溶媒:ヘキサン(ヘキシルアミン0.5質量%添加)分散液、関東化学社製)に浸漬した。その後、ヘキサン溶液にて残っているヘキサンを除去した後、0.1質量%シランカプリング剤を含む処理液(シランカプリング剤:6-(3-トリエトキシシリルプロピルアミノ)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールモノナトリウム塩(n-TES)、シランカプリング剤の濃度:0.1質量%、溶媒:純水、液温:80℃)の中に5分間、浸漬した。その後、120℃で15分間、熱処理して乾燥させ、表面処理基材を得た。
【0061】
(接合層の形成の有無の評価)
得られた表面処理基材の表面を、XPS測定装置(PHI VersaProbe III、X線源: 単色化AlKα(1486.6eV)、角度:45°)で測定し、接合層の状態を評価した。評価結果を表1に示す。
【0062】
[実施例1-2~1-5]
実施例1-1において、シランカプリング剤の種類を以下の通り変更したこと以外は、実施例1-1と同様にして行った。評価結果を表1に示す。
(シランカプリング剤の種類)
・実施例1-2:3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTES)
・実施例1-3:トリエトキシビニルシラン(VITES)
・実施例1-4:3-(トリエトキシシリルプロピル)イソシアネート(ICNTES)
・実施例1-5:3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GLYTES)
【0063】
[比較例1-1~1-5]
実施例1-1~1-5において、基材をCuナノ粒子分散液に浸漬しなかったこと以外は、実施例1-1~1-5とそれぞれ同様にして行った。評価結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
表1より、実施例1-1~1-5は比較例1-1~1-5よりも、それぞれ、Si含有量及びSi膜厚が約1.3倍以上増大した。特に、実施例1-1及び1-2は比較例1-1及び1-2よりもSi膜厚が約3.6倍以上増大した。よって、基材の表面にCuナノ粒子を吸着させた後、トリアジン系化合物を結合させることで接合層の形成効率が向上することが確認された。特に、チオール基を持つトリアジン系化合物を結合させることで、接合層の形成効率がさらに向上することが確認された。
【0066】
<実施例2>
[実施例2-1]
(表面処理基材の作製)
実施例1-1において作製した表面処理基材を用いた。
【0067】
(各種基材に対する接合層の成形性の評価)
実施例1-1と同様に、得られた表面処理基材の表面を、XPS測定装置(PHI VersaProbe III、X線源: 単色化AlKα(1486.6eV)、角度:45°)で測定し、接合層の状態を評価した。評価結果を表2に示す。
【0068】
[実施例2-2~2-9]
実施例2-1において、基材の種類を以下の通り変更したこと以外は、実施例2-1と同様にして行った。評価結果を表2に示す。
(基材の種類)
・実施例2-2:リン青銅
・実施例2-3:黄銅
・実施例2-4:Agめっき
・実施例2-5:アルミマイト
・実施例2-6:アルミ合金
・実施例2-7:Niめっき
・実施例2-8:Snめっき
・実施例2-9:Snめっき
・実施例2-10:ABS樹脂
・実施例2-11:PBT樹脂
【0069】
[比較例2-1~2-11]
実施例2-1~2-11において、基材をCuナノ粒子分散液に浸漬しなかったこと以外は、実施例2-1~2-11とそれぞれ同様にして行った。評価結果を表2に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
表2より、実施例2-1~2-10は比較例2-1~2-10よりも、それぞれ、Si含有量又はSi膜厚が増大した。よって、基材が、SUS304、Al合金、アルマイト、Agめっき、Niめっき、Snめっき等のような低反応性基材や、ABS樹脂、PBT樹脂等のような樹脂基材のいずれの場合でも、基材の表面にCuナノ粒子を吸着させた後、トリアジン系化合物を結合させることで接合層の形成効率が向上することが確認された。なお、実施例2-2では比較例2-2よりもSiの含有量が減少しているが、これはSiが膜厚方向に広く分散していることによるためと考える。
【0072】
<実施例3>
[実施例3-1]
(表面処理基材の作製)
実施例1-1において作製した表面処理基材を用いた。
【0073】
(基材に対する接合強度の評価)
得られた表面処理基材の表面に樹脂基材1(ジェネラックス930MA)を接合し、引張試験機を用いて接合強度を測定し、評価した。評価結果を表3及び図8に示す。
【0074】
[実施例3-2~3-5]
実施例3-1において、樹脂基材の種類を以下の通り変更したこと以外は、実施例3-1と同様にして行った。評価結果を表3及び図8に示す。
(樹脂基材の種類)
・樹脂基材2:ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、「クラスティン(登録商標)S600F10 BK851(デュポン社製)」
・樹脂基材3:PBT樹脂、「トレコン(登録商標) 1101G-30(東レ社製)」
・樹脂基材4:PBT樹脂、「トレコン(登録商標) 1151WX01(東レ社製)」
・樹脂基材5:PBT樹脂、「ジェネラックス(登録商標) 7407 ED3002(ポリプラスチックス社製)」
【0075】
[比較例3-1~3-5]
実施例3-1~3-5において、基材に接合層を形成しなかったこと以外は、実施例3-1~3-5とそれぞれ同様にして行った。評価結果を表3及び図8に示す。
【0076】
【表3】
【0077】
表3及び図8より、実施例3-1~3-5は比較例3-1~3-5よりも、それぞれ、接合強度が120%以上向上した。よって、基材の表面にCuナノ粒子を吸着させた後、トリアジン系化合物を結合させることで形成した接合層は、基材に対して強固に結合することが確認された。したがって、本実施形態に係る表面処理基材を射出成形しても、接合層で凝集破壊が生じるまで接合層の基材に対する接合強度を上げることが可能となり、接合層は基材に対して基材と接合層との接合状態を維持できるだけの高い接合強度を有することができるといえる。
【0078】
<実施例4>
[実施例4-1]
(表面処理基材の作製)
実施例1-1において作製した表面処理基材を用いた。
【0079】
(表面粗さの評価)
非接触三次元表面粗さ測定機(タリサーフ CCI HD-XL、テーラーホブソン社製)を用いて測定した。Raは、99.0nmであり、Rzは0.51μmであった。測定結果を図10に示す。
【0080】
[比較例4-1]
実施例4-1において、基材に接合層を形成しなかったこと以外は、実施例4-1と同様にして行った。Raは、319.0nmであり、Rzは1.78μmであった。測定結果を図11に示す。
【0081】
[比較例4-2]
実施例4-1において、基材をCuナノ粒子分散液に浸漬しなかったこと以外は、実施例4-1と同様にして行った。Raは、276.0nmであり、Rzは1.52μmであった。測定結果を図12に示す。
【0082】
図10図12に示すように、実施例4-1は比較例4-1及び4-2よりも、Ra及びRzは小さかった。よって、基材の表面にCuナノ粒子を吸着させた後、トリアジン系化合物を結合させることで形成した接合層は、表面粗さを小さくできることが確認された。これは、Cuナノ粒子が基材の表面の凹凸を埋めているためといえる。
【0083】
<実施例5>
[実施例5-1]
(表面処理基材の作製)
実施例1-1において作製した表面処理基材を用いた。
【0084】
(接合層の膜厚の制御)
走査型電子顕微鏡(S4800、株式会社日立ハイテクノロジーズ)を用いて測定した。厚さは70nm~90nmであった。測定結果を図12に示す。
【0085】
[実施例5-2及び5-3]
実施例5-1において、接合層の形成回数を5回又は10回に変更したこと以外は、実施例5-1と同様にして行った。実施例5-2では、接合層の厚さは180nm~200nmであり、実施例5-3では、接合層の厚さは350nm~370nmであった。測定結果を図13及び図14に示す。
【0086】
[比較例5-1]
実施例5-1において、基材をCuナノ粒子分散液に浸漬しなかったこと以外は、実施例5-1と同様にして行った。測定結果を図15に示す。
【0087】
図12図15に示すように、実施例5-1~5-3は、形成した接合層の数が多くなるほど、接合層の厚さの和が大きくなった。よって、接合層の形成を複数回繰り返し行うことで、接合層の厚さの和を大きくすることができると共に、接合層の厚さムラを抑えて略均一に積層できることが確認された。よって、表面粗さを抑えつつ、複数の接合層を任意の厚さに容易に制御することができるといえる。
【0088】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更などを行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0089】
10A、10B、10C 基材
20 Cuナノ粒子
30 トリアジン系化合物
40 接合層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15