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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】貨幣処理装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/24 20190101AFI20231221BHJP
   G07D 11/50 20190101ALI20231221BHJP
   G07D 11/20 20190101ALI20231221BHJP
【FI】
G07D11/24
G07D11/50
G07D11/20
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020037563
(22)【出願日】2020-03-05
(65)【公開番号】P2021140451
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水島 慶克
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/021156(WO,A1)
【文献】特開平08-123996(JP,A)
【文献】特開2013-012127(JP,A)
【文献】特開平07-249152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 11/24
G07D 11/50
G07D 11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨幣を収納する、少なくとも一の収納部と、
前記収納部内の貨幣を装置から取り出すために、前記収納部内の貨幣を回収する回収部と、
前記収納部と前記回収部とをつなぐ搬送路に設けられかつ、貨幣を識別する識別部と、
前記収納部から前記回収部への貨幣の回収処理において、前記回収部に収納されている貨幣の在高が不確定になった場合、前記回収部に、貨幣の少なくとも一部を繰り出させ、前記識別部に、前記回収部が繰り出した貨幣を識別させかつ、識別結果に基づいて、前記回収部に収納されている貨幣の在高を確定する精査処理を行わせる制御部と、を備え
前記制御部は、前記精査処理の際に、前記回収部が繰り出した貨幣を、前記識別部の識別後に前記収納部に収納させる、貨幣処理装置。
【請求項2】
貨幣を収納する、少なくとも一の収納部と、
前記収納部内の貨幣を装置から取り出すために、前記収納部内の貨幣を回収する回収部と、
前記収納部と前記回収部とをつなぐ搬送路に設けられかつ、貨幣を識別する識別部と、
前記収納部から前記回収部への貨幣の回収処理において、前記回収部に収納されている貨幣の在高が不確定になった場合、前記回収部に、貨幣の少なくとも一部を繰り出させ、前記識別部に、前記回収部が繰り出した貨幣を識別させかつ、識別結果に基づいて、前記回収部に収納されている貨幣の在高を確定する精査処理を行わせる制御部と、を備え
前記制御部は、前記回収部の入口において貨幣の詰まりが生じた場合に、前記回収部が収納している貨幣が不確定になったと判断する、貨幣処理装置。
【請求項3】
前記収納部は、金庫の中に設けられ、
前記回収部は、前記金庫の外において、前記貨幣処理装置に対し着脱自在に装着される、請求項1又は2に記載の貨幣処理装置。
【請求項4】
前記識別部は、前記回収処理の際に、貨幣の記番号を読み取り、
前記識別部が読み取った記番号を、前記回収部への前記貨幣の収納順に記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記精査処理の際に、
前記識別部に、前記回収部が繰り出した貨幣の記番号を読み取らせ、
前記読み取った記番号と、前記記憶部が記憶している記番号の情報とに基づいて、貨幣の繰り出し後に前記回収部に残っている貨幣の在高を確定する、請求項1~3のいずれか1項に記載の貨幣処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記回収処理の際に、前記回収部に、金種の異なる貨幣を混合収納させ、
前記識別部は、前記回収処理の際に、貨幣の金種を識別し、
前記識別部が識別した金種を、前記回収部への前記貨幣の収納順に記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記精査処理の際に、
前記識別部に、前記回収部が繰り出した貨幣の金種を識別させ、
前記識別した金種と、前記記憶部が記憶している金種の情報とに基づいて、貨幣の繰り出し後に前記回収部に残っている貨幣の在高を確定する、請求項1~3のいずれか1項に記載の貨幣処理装置。
【請求項6】
前記回収部内の貨幣が不確定となった時点で、前記回収部内の貨幣の精査処理を実施するか否かの指示を受け付ける操作部を備える、
請求項1~のいずれか1項に記載の貨幣処理装置。
【請求項7】
前記回収部内の貨幣が不確定となった時点で、前記収納部から前記回収部への貨幣の回収処理を、精査処理を実行した上で再開するか、精査処理を実行せずに再開するか、の設定をあらかじめ決定しておく設定部を備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の貨幣処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記精査処理の際に、前記回収部が繰り出した貨幣を、前記識別部の識別後に前記収納部に収納させる、請求項に記載の貨幣処理装置。
【請求項9】
前記収納部は、複数の収納部を含み、
前記制御部は、前記精査処理の際に、前記回収部が繰り出した貨幣を、前記複数の収納部のうち、当該貨幣を繰り出した前記収納部に収納させる、請求項に記載の貨幣処理装
置。
【請求項10】
貨幣を一時的に保留する一時保留部をさらに備え、
前記制御部は、前記精査処理の際に、前記識別部がリジェクト貨幣と識別した貨幣を、前記一時保留部に収納させる、請求項1~8のいずれか1項に記載の貨幣処理装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記回収部の入口において貨幣の詰まりが生じた場合に、前記回収部が収納している貨幣が不確定になったと判断する、請求項1に記載の貨幣処理装置。
【請求項12】
前記収納部は、複数の収納部を含み、
前記制御部は、前記回収処理の際に、前記複数の収納部のそれぞれから繰り出された貨幣を、前記回収部へ収納させる、請求項1~11のいずれか1項に記載の貨幣処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、貨幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、貨幣処理装置が記載されている。この貨幣処理装置は、金庫外収納部(つまり、回収カセット)を備えている。回収カセットは、金庫筐体の外で、装置本体に対し取り付け、及び、装置本体から取り外しが可能である。回収カセットは、金庫筐体内の収納部が繰り出した貨幣を収納する。回収カセットは、回収処理に用いることができる。担当者が回収カセットを装置本体から取り外すことによって、貨幣を回収できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/021156号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回収カセットへ貨幣を収納する回収処理の最中に、回収カセットの入口において貨幣の詰まりが発生した場合を考える。操作者は、詰まっている貨幣を回収カセットの入口から手で取り除く。この際に、回収カセットに収納をしたと貨幣処理装置が判断している貨幣を、操作者が取り除いてしまう場合がある。どの貨幣までが回収カセットの中に収納されたかを特定することは難しい。違算を回避するために、貨幣処理装置は、回収カセットに収納されている貨幣の在高を不確定にする。
【0005】
担当者が詰まった貨幣を取り除いた後、貨幣処理装置は、回収処理を再開する。しかしながら、回収処理が完了した後の回収カセットに収納されている貨幣の在高は、不確定のままである。
【0006】
従来の運用においては、「回収カセットの貨幣の在高が不確定である」旨の情報を、回収伝票に付していた。尚、回収伝票は、回収処理の完了時に貨幣処理装置が発行する伝票であって、この回収伝票は、回収カセットと共に、回収先へ送られる。回収先において、担当者は、回収伝票に付属している情報に基づいて、在高が未確定の回収カセットに収納されている貨幣を数え直さなければならない。
【0007】
また、回収カセットの中の貨幣の在高が不確定であることは、貨幣処理装置が払い出した貨幣の数が不確定であることと等価であるため、貨幣処理装置に収納されている貨幣の在高も不確定になってしまう。貨幣処理装置の貨幣の在高が不確定になると、貨幣処理装置の貨幣の在高を確定させるための精査処理が必要になる。精査処理は、貨幣処理装置の貨幣を数え直す処理であるため、一般的に精査処理には長時間を要する。
【0008】
ここに開示する技術は、回収処理の最中に、回収部の中の貨幣の在高が不確定になった場合に生じる不都合を解消する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ここに開示する技術は、貨幣処理装置に係る。貨幣処理装置は、
貨幣を収納する、少なくとも一の収納部と、
前記収納部内の貨幣を装置から取り出すために、前記収納部内の貨幣を回収する回収部と、
前記収納部から前記回収部への貨幣の回収処理において、前記回収部に収納されている貨幣の在高が不確定になった場合、前記回収部に、貨幣の少なくとも一部を繰り出させ、前記識別部に、前記回収部が繰り出した貨幣を識別させかつ、前記識別結果に基づいて、前記回収部に収納されている貨幣の在高を確定する精査処理を行わせる制御部と、を備える。
【0010】
この構成によると、回収処理時に回収部の貨幣の在高が不確定になった場合でも、在高を確定できる。
前記貨幣処理装置において、前記制御部は、前記精査処理の際に、前記回収部が繰り出した貨幣を、前記識別部の識別後に前記収納部に収納させる。
回収部が繰り出した貨幣を装置の外へ払い出さないため、精査処理及び、その後の回収処理を適切に実行できる。
別の貨幣処理装置において、前記制御部は、前記回収処理の最中に、前記回収部の入口において貨幣の詰まりが生じた場合に、前記回収部が収納している貨幣が不確定になったと判断する。
【0011】
前記収納部は、金庫の中に設けられ、
前記回収部は、前記金庫の外において、前記貨幣処理装置に対し着脱自在に装着される、としてもよい。
【0012】
こうすることで、金庫外に設けられた回収部を用いて金庫内の貨幣を回収できる。
【0013】
前記識別部は、前記回収処理の際に、貨幣の記番号を読み取り、
前記貨幣処理装置は、前記識別部が読み取った記番号を、前記回収部への前記貨幣の収納順に記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記精査処理の際に、
前記識別部に、前記回収部が繰り出した貨幣の記番号を読み取らせ、
前記読み取った記番号と、前記記憶部が記憶している記番号の情報とに基づいて、貨幣の繰り出し後に前記回収部に残っている貨幣の在高を確定する、としてもよい。
【0014】
記憶部に記憶されている記番号の情報を利用することにより、回収部の中の貨幣の一部を繰り出せば、回収部に残っている貨幣の在高を確定できる。
【0015】
前記制御部は、前記回収処理の際に、前記回収部に、金種の異なる貨幣を混合収納させ、
前記識別部は、前記回収処理の際に、貨幣の金種を識別し、
前記貨幣処理装置は、前記識別部が識別した金種を、前記回収部への前記貨幣の収納順に記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記精査処理の際に、
前記識別部に、前記回収部が繰り出した貨幣の金種を識別させ、
前記識別した金種と、前記記憶部が記憶している金種の情報とに基づいて、貨幣の繰り出し後に前記回収部に残っている貨幣の在高を確定する、としてもよい。
【0016】
記憶部に記憶されている金種の情報を利用することにより、回収部の中の貨幣を全て繰り出さなくても、回収部に残っている貨幣の在高を確定できる。
【0017】
前記貨幣処理装置は、前記回収部内の貨幣が不確定となった時点で、前記回収部内の貨幣の精査処理を実施するか否かの指示を受け付ける操作部を備える、としてもよい。
【0018】
操作者は、精査処理の実行、及び、非実行を選択できる。
【0019】
前記貨幣処理装置は、前記回収部内の貨幣が不確定となった時点で、前記収納部から前記回収部への貨幣の回収処理を、精査処理を実行した上で再開するか、精査処理を実行せずに再開するか、の設定をあらかじめ決定しておく設定部を備える、としてもよい。
【0020】
操作者は、精査処理の実行、及び、非実行を、予め設定することができる。これにより、操作者は、回収処理時において、貨幣処理機付近に、待機しておく必要がなくなる。
【0023】
前記収納部は、複数の収納部を含み、
前記制御部は、前記精査処理の際に、前記回収部が繰り出した貨幣を、前記複数の収納部のうち、当該貨幣を繰り出した前記収納部に収納させる、としてもよい。
【0024】
回収元の収納部に貨幣を収納するため、精査処理を適切に行うことができる。
【0027】
前記貨幣処理装置は、貨幣を一時的に保留する一時保留部をさらに備え、
前記制御部は、前記精査処理の際に、前記識別部がリジェクト貨幣と識別した貨幣を、前記一時保留部に収納させる、としてもよい。
【0028】
精査処理時に発生したリジェクト貨幣を、正常貨幣と分けて収納できる。
【0030】
前記収納部は、複数の収納部を含み、
前記制御部は、前記回収処理の際に、前記複数の収納部のそれぞれから繰り出された貨幣を、前記回収部へ収納させる、としてもよい。
【0031】
回収部は、例えば金種の異なる貨幣を一括で回収できる。
【発明の効果】
【0032】
前記の貨幣処理装置は、回収処理の最中に、回収部の中の貨幣の在高が不確定になった場合に生じる不都合を解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、紙幣処理装置の構成例を示す図である。
図2図2は、紙幣処理装置の構成例を示すブロック図である。
図3図3は、回収処理の最中に、回収部の中の貨幣の在高が不確定になった場合の処理の遷移図の一部である。
図4図4は、回収処理の最中に、回収部の中の貨幣の在高が不確定になった場合の処理の遷移図の一部である。
図5図5は、精査処理における記番号の照合に関する説明図である。
図6図6は、図1とは異なる構成の紙幣処理装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、貨幣処理装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の説明は、貨幣処理装置の一例である。図1及び図2は、貨幣処理装置としての紙幣処理装置1を示している。紙幣処理装置1は、例えば銀行等の金融機関に設置される。紙幣処理装置1は、例えば銀行のテラーカウンターに設置される。紙幣処理装置1は、入金処理及び出金処理を含む各種の処理を実行する装置である。
【0035】
紙幣処理装置1は、前後方向に細長い形状を有している。紙幣処理装置1の前は、後述する入金口211、出金口221が形成されている部位を指す。紙幣処理装置1の後は、入金口211、出金口221が形成されている部位とは逆の部位を指す。
【0036】
紙幣処理装置1は、金融機関に設置する以外に、例えば小売店舗のバックオフィス等に設置して使用できる。
【0037】
(紙幣処理装置の全体構成)
図1は、紙幣処理装置1の内部の構造を示している。図2は、紙幣処理装置1の構成を示すブロック図である。紙幣処理装置1は、バラ紙幣の処理を行う。紙幣処理装置1は、上部の処理部11と、下部の金庫部13とを有している。
【0038】
処理部11は、上部筐体111によって構成されている。上部筐体111の中には、入金部21、出金部22、一時保留部24、識別部25、及び、搬送部4の一部が配設されている。
【0039】
金庫部13は、金庫筐体131によって構成されている。金庫筐体131の中には、複数の収納部31~34及び搬送部4の一部が配設されている。金庫筐体131は、収納部31~34を、所定以上のセキュリティレベルで防護する。具体的に金庫筐体131は、所定の厚み以上の金属板によって形成されている。金庫筐体131のセキュリティレベルは上部筐体111より高い。
【0040】
金庫筐体131は、図示は省略するが、その前部に扉を有している。操作者は、扉を開けると、収納部31~34を、金庫筐体131から前方へ引き出すことができる。尚、扉には、図示を省略する電子錠が設けられている。操作者が電子錠を解錠することにより、扉は開く。
【0041】
入金部21は、例えば入金処理の際に、入金対象の紙幣が投入される部分である。入金部21は、入金口211を有している。入金口211は、上部筐体111の前部において、上向きに開口している。操作者は、入金口211を通じて、入金部21に、紙幣を手で投入する。入金部21は、複数枚の紙幣を、重ねた状態で保持できる。入金部21は、紙幣を一枚ずつ紙幣処理装置1内に取り込む機構を有している。
【0042】
出金部22は、例えば出金処理の際に、紙幣が搬送される部分である。出金部22はまた、入金処理の際に発生したリジェクト紙幣が搬送される部分でもある。出金部22は、様々な用途に利用することが可能である。出金部22は、複数枚の紙幣を、重ねた状態で保持できる。出金部22は、出金口221を有している。出金口221は、装置の前部において上部筐体111に開口している。操作者は、出金部22に集積されている紙幣を、出金口221を通じて手で取り出すことができる。尚、出金口221に、開閉するシャッターを設けてもよい。
【0043】
一時保留部24は、例えば入金処理の際に、入金対象の紙幣を一時的に収納(保留)する。一時保留部24は、収納した紙幣を繰り出すことができる。一時保留部24は、図1の構成例においては、上部筐体111の中における前部において、出金部22の下方に配設されている。尚、一時保留部24の配設位置は、特定の位置に限定されない。
【0044】
一時保留部24は、テープ式の収納ユニットである。一時保留部24は、紙幣を、テープと共にドラムに巻き付けることによって、紙幣を収納する。テープ式の収納ユニットは、紙幣の収納時及び紙幣の繰出時において、紙幣の順番が入れ替わらないという利点を有している。また、テープ式の収納ユニットは、様々なサイズの紙幣を、混合状態で収納することができる、という利点も有している。一時保留部24は、テープ式の収納ユニットの、公知の構成を採用できる。
【0045】
識別部25は、後述する第1搬送路411に配設されている。識別部25は、第1搬送路411に沿って搬送される紙幣の一枚一枚について、少なくとも、真偽、金種及び正損を識別する。識別部25はまた、紙幣の記番号を取得する。
【0046】
識別部25はまた、紙幣の搬送異常を識別する。搬送異常とは、紙幣の搬送状態が予め定められた正常な搬送状態ではなく、紙幣の搬送方向に対する傾き角が、所定の許容角度よりも大きい斜行状態、及び/又は、連続して搬送される紙幣間の距離が、許容紙幣間距離よりも小さくなっている連鎖状態等を意味する。搬送異常の紙幣は、リジェクトされる。
【0047】
紙幣処理装置1は、第1収納部31、第2収納部32、第3収納部33、及び、第4収納部34を有している。第1収納部31、第2収納部32、第3収納部33、及び、第4収納部34は、金庫筐体131の中において、前後方向に並んでいる。
【0048】
第1~第4収納部31~34は、同じ構成を有している。これらの収納部31~34はそれぞれ、詳細な図示は省略するが、スタック式の収納装置である。スタック式の収納装置は、紙幣を重ねて収納する。第1~第4収納部31~34はまた、図示は省略するが、搬送機構を有している。搬送機構は、収納部の外から中へ紙幣を投入して、収納部内に紙幣を収納する。搬送機構はまた、収納部に収納している紙幣を、収納部の中から外へ投出する。
【0049】
第1収納部31、第2収納部32、及び、第3収納部33は、例えば、それぞれ異なる金種の紙幣を収納する。第1収納部31、第2収納部32、及び、第3収納部33は、入金処理時に、入金対象の紙幣を収納すると共に、出金処理時に、出金対象の紙幣を繰り出す。また、第4収納部34は、例えば、他の収納部に収納しない紙幣を収納する。第4収納部34はまた、例えば、他の収納部に収納できないオーバーフロー紙幣を収納する。第4収納部34は、入金対象の紙幣を収納する。第4収納部34は、出金処理時に紙幣の繰り出しを行わない。
【0050】
尚、金庫筐体131内における収納部の数、その構成、及び、その配置は、どのようなものであってもよい。
【0051】
搬送部4は、紙幣処理装置1内で、紙幣と紙幣との間に間隔を空けて、紙幣を一枚ずつ搬送する。搬送部4は搬送路を有している。搬送路は、図示は省略するが、多数のローラ、複数のベルト、これらを駆動するモータ、及び、複数のガイドの組み合わせによって構成されている。搬送部4は、例えば紙幣の長辺の縁を前にして、紙幣を搬送する。搬送部4は、紙幣の短辺の縁を前にして、紙幣を搬送してもよい。
【0052】
搬送部4は、上部筐体111内に設けられた第1搬送路411を有している。第1搬送路411は、ループ状に構成されている。第1搬送路411は、前後方向に伸びる上側路4111と、上側路4111に並列な下側路4112と、が、互いに接続されることによって、エンドレスに構成されている。上側路4111は、識別部25を通る。下側路4112は、識別部25を通らない。搬送部4は、紙幣を、第1搬送路411に沿って、図1における時計回り方向及び反時計回り方向に搬送する。
【0053】
第2搬送路412は、入金部21と第1搬送路411とを互いにつなぐ。第2搬送路412は、入金部21から第1搬送路411へ向かって、紙幣を搬送する。
【0054】
第3搬送路413は、出金部22及び一時保留部24と、第1搬送路411とを互いにつなぐ。第3搬送路413は、第1搬送路411から出金部22又は一時保留部24へ向かって、紙幣を搬送する。第3搬送路413と第1搬送路411との接続箇所には、図示しない分岐機構が設けられている。分岐機構は、紙幣の搬送先を変える。第3搬送路413は、出金部22及び一時保留部24のそれぞれに接続するよう途中で分岐している。
【0055】
第1~第4収納部31、32、33、34はそれぞれ、第4搬送路414を介して第1搬送路411に接続されている。四つの第4搬送路414はそれぞれ、上部筐体111と金庫筐体131とにまたがるように、上下方向に伸びていると共に、四つの第4搬送路414は、前後方向に並んでいる。各第4搬送路414は、第1搬送路411から各収納部31~34へ向かって、紙幣を搬送すると共に、各収納部31~34から第1搬送路411へ向かって、紙幣を搬送する。
【0056】
尚、図示は省略するが、第1搬送路411と、各第4搬送路414との接続箇所には、紙幣の搬送先を切り替える分岐機構が設けられている。
【0057】
第1~第4搬送路411~414における各所には、紙幣の通過を検知する通過センサが配設されている。搬送部4は、後述するコントローラー15からの指令を受けると共に、通過センサの検知信号に基づいて、搬送部4の各分岐機構を制御する。このことにより、紙幣は、所定の搬送先に搬送される。
【0058】
紙幣処理装置1は、金庫外収納部35を有している。金庫外収納部35は、金庫筐体131の外で、装置本体に対し、取り付け及び取り外し可能に構成されている(図1の白抜きの矢印参照)。金庫外収納部35は、着脱式の収納部である。金庫外収納部35は、後述するように、回収処理に利用されることから、回収カセットと呼ばれることもある。金庫外収納部35はまた、回収した紙幣を収納したまま搬送されるため、Secure Transfer Cassette(STC)と呼ばれることもある。金庫外収納部35は、紙幣を重ねて収納するスタック式の収納装置である。
【0059】
紙幣処理装置1は、金庫外収納部35を、装置本体に装着するための取付部36を有している。
【0060】
取付部36を通じて金庫外収納部35を装置本体に取り付けると、金庫外収納部35は、第5搬送路415及び第3搬送路413を介して、第1搬送路411に接続される。つまり、第5搬送路415は、第3搬送路413の途中から分岐している。第5搬送路415は、第1搬送路411から金庫外収納部35へ向かって、紙幣を搬送すると共に、金庫外収納部35から第1搬送路411へ向かって、紙幣を搬送する。
【0061】
紙幣処理装置1は、図2に示すように、制御部としてのコントローラー15を備えている。コントローラー15には、前述した、入金部21、出金部22、識別部25、搬送部4、一時保留部24、第1収納部31、第2収納部32、第3収納部33、第4収納部34、及び、取付部36が、それぞれ信号の授受可能に接続されている。取付部36は、金庫外収納部35が装置本体に取り付けられているときに、信号を出力する。金庫外収納部35が装置本体から取り外されれば、取付部36は信号を出力しない。コントローラー15は、取付部36からの信号に基づいて、金庫外収納部35が装置本体に取り付けられているか、装置本体から取り外されているかを判断することができる。
【0062】
紙幣処理装置1は、各種のデータ等を記憶する記憶部26、人が操作をする操作部27、及び、端末機29との間で通信を行うための通信部28を有している。記憶部26、操作部27、及び通信部28も、コントローラー15に信号の授受可能に接続されている。操作部27は、例えばタッチパネル式の表示装置によって構成してもよい。端末機29は、紙幣処理装置1を利用して行う各種の業務の実行のために、人が操作をする。
【0063】
コントローラー15は、操作部27が人によって操作されたときや、端末機29が人によって操作されたときに、各種の処理を実行するよう、入金部21、出金部22、識別部25、搬送部4、一時保留部24、第1収納部31、第2収納部32、第3収納部33、第4収納部34、及び、金庫外収納部35を制御する。
【0064】
コントローラー15は、設定部151を有している。設定部151は、紙幣の処理に関する様々な設定を行う。この設定には、後述する精査処理の実行及び非実行に関する設定が含まれる。
【0065】
(紙幣処理装置の動作)
以下、前述した構成の紙幣処理装置1が各種の処理を実行する際の動作について説明する。
【0066】
(入金処理)
紙幣処理装置1は、入金処理時に、紙幣を収納部の中に収納する。操作者は、入金対象の紙幣を、入金部21に投入する。入金部21は、紙幣を一枚一枚、装置内に取り込む。搬送部4は、紙幣を識別部25に搬送する。識別部25は、紙幣を識別する。搬送部4は、識別部25の識別結果に従って、紙幣を、第1収納部31、第2収納部32、第3収納部33、又は、第4収納部34へ搬送する。収納部31~34は、紙幣を収納する。尚、搬送部4は、識別部25がリジェクトと識別した紙幣を、出金部22へ搬送する。
【0067】
入金部21に投入された紙幣が全て、紙幣処理装置1内に取り込まれると、例えば端末機29が、入金金額を表示する。操作者が、端末機29を操作することによって、又は、操作部27を操作することによって入金処理が確定すれば、入金処理は終了する。コントローラー15は、収納部31~34に収納した紙幣に関するデータを、記憶部26に記憶させる。
【0068】
尚、入金処理時に、一時保留部24を利用する場合、搬送部4は、識別部25を通過した紙幣を、一時保留部24へ搬送する。一時保留部24は、紙幣を収納する。入金部21に投入された紙幣が全て紙幣処理装置1内に取り込まれた後、例えば端末機29が入金金額を表示する。操作者は、端末機29を操作することによって、又は、操作部27を操作することによって、入金処理の確定と入金処理のキャンセルとを選択できる。操作者が入金処理を確定した場合、搬送部4は、一時保留部24が繰り出した紙幣を、第1収納部31、第2収納部32、第3収納部33、又は、第4収納部34へ搬送する。収納部31~34は、紙幣を収納する。操作者が入金処理をキャンセルした場合、搬送部4は、一時保留部24が繰り出した紙幣を、例えば出金部22へ搬送する。入金対象の紙幣が返却される。
【0069】
コントローラー15は、入金処理を行っている最中に、記番号リストを作成する。記番号リストは、各収納部31~34へ収納した紙幣の記番号を、各収納部31~34への収納順に並べたリストである。コントローラー15は、入金処理中に、識別部25が読み取った紙幣の記番号を、逐次、記憶部26に記憶させる。これにより、記憶部26は、各収納部31~34への収納順に並んだ、紙幣の記番号のリストを記憶できる。作成された記番号リストは、後述するように、精査処理の実行の際に利用される。
【0070】
(出金処理)
紙幣処理装置1は、出金処理時に、紙幣を紙幣処理装置1の外へ投出する。第1~第3収納部31~33は、出金対象の紙幣を繰り出す。搬送部4は、紙幣を、識別部25に搬送する。識別部25は、紙幣の識別を行う。搬送部4は、識別後の紙幣を、出金部22へ搬送する。出金部22は、出金対象の紙幣を保持する。搬送部4は、識別部25が識別したリジェクト紙幣を、例えば第4収納部34へ搬送する。第4収納部34は、リジェクト紙幣を収納する。搬送部4は、リジェクト紙幣を、一時保留部24へ搬送してもよい。
【0071】
出金対象の紙幣が全て、出金部22に出金されれば、出金処理は終了する。コントローラー15は、出金部22へ払い出した紙幣に関するデータを、記憶部26から消去する。
【0072】
(補充処理)
紙幣処理装置1は、金庫外収納部35を利用して補充処理を行うことができる。つまり、金庫外収納部35は、補充用の紙幣を収納できる。金庫外収納部35を、装置本体に取り付けると、補充処理を開始することができる。
【0073】
補充処理が開始すると、金庫外収納部35は、紙幣を繰り出す。搬送部4は、紙幣を、第5搬送路415から、第3搬送路413を介して識別部25へ搬送する。識別部25は、識別を行う。
【0074】
搬送部4は、識別結果に応じて、紙幣を、第1~第3収納部31~33へ搬送する。収納部31~33は、紙幣を収納する。コントローラー15は、補充処理時に第1~第3収納部31~33に収納した紙幣に関するデータを、記憶部26に記憶させて管理する。記憶部26が記憶する記番号リストであって、第1~第3収納部31~33それぞれの記番号リストは、更新される。
【0075】
尚、補充処理は、入金部21を利用して実行することもできる。つまり、操作者は、入金対象の紙幣を入金部21に投入する。その後の紙幣の流れは、前述した入金処理時の紙幣の流れと、実質的に同じである。
【0076】
(回収処理)
紙幣処理装置1は、回収処理を、金庫外収納部35を利用して行うことができる。つまり、搬送部4は、回収対象の紙幣を、金庫外収納部35へ搬送する。
【0077】
具体的に、回収処理時に、第1~第4収納部31~34は、回収対象の紙幣を繰り出す。1回の回収処理において、回収対象の紙幣を繰り出す収納部は一つとは限らない。回収処理には、一つの収納部のみが、回収対象の紙幣を繰り出す場合、及び、複数の収納部のそれぞれが、回収対象の紙幣を繰り出す場合の両方がある。
【0078】
搬送部4は、収納部31~34から繰り出された紙幣を、識別部25へ搬送する。識別部25は、紙幣の識別を行う。搬送部4は、正常な紙幣を、第1搬送路411から、第3搬送路413及び第5搬送路415を介して金庫外収納部35へ搬送する。金庫外収納部35は、単一金種の紙幣、又は、複数金種の紙幣を保持する。搬送部4は、識別部25が識別したリジェクト紙幣を、例えば一時保留部24へ搬送する。一時保留部24は、リジェクト紙幣を一時的に収納する。回収処理の終了後、一時保留部24は、一時的に収納したリジェクト紙を繰り出し、搬送部4は、リジェクト紙幣を、元の収納部31~34へ搬送する。
【0079】
回収対象の紙幣が全て、金庫外収納部35へ収納されれば、回収処理が完了する。操作者は、金庫外収納部35を、取付部36から手で取り外し、金庫外収納部35を、所定の回収先へ送る。
【0080】
コントローラー15は、金庫外収納部35を用いた回収処理を行っている最中に、記番号リスト100を作成する(図5の左図参照)。この記番号リスト100は、金庫外収納部35へ収納した紙幣の記番号を、金庫外収納部35への収納順に並べたリストである。コントローラー15は、回収処理中に、識別部25が読み取った紙幣の記番号を、逐次、記憶部26に記憶させる。これにより、記憶部26は、記番号が金庫外収納部35の収納順に並んだ記番号リスト100を記憶できる。コントローラー15が作成する記番号リスト100は、後述するように、回収処理の最中に、金庫外収納部35が収納している紙幣の在高が不確定になった場合の精査処理において利用される。
【0081】
(回収処理中に、金庫外収納部の中の紙幣の在高が不確定になった場合の、紙幣処理装置の動作)
前述した金庫外収納部35を用いた回収処理を行っている最中に、金庫外収納部35の入口において紙幣の詰まりが発生した場合を考える。金庫外収納部35の入口において紙幣の詰まりが発生すると、紙幣処理装置1は動作を停止する。紙幣処理装置1は、回収処理を中断する。
【0082】
紙幣処理装置1が動作を停止した後、操作者は、入口において詰まっている紙幣を、手で取り除く。この際に、操作者は、金庫外収納部35に収納されたと紙幣処理装置1が判断している紙幣を、取り除いてしまう場合がある。この場合、紙幣処理装置1が認識している金庫外収納部35の紙幣の在高と、金庫外収納部35の中に実際に収納されている紙幣の在高とがずれてしまう。
【0083】
違算の発生を抑制するために、回収処理を行っている最中に、金庫外収納部35の入口において紙幣の詰まりが発生した場合、紙幣処理装置1は、金庫外収納部35に収納されている紙幣の在高は不確定になったと定める。回収処理後に金庫外収納部35に収納されている紙幣の在高は、紙幣処理装置1が払い出した紙幣の数、及び/又は、金額に対応する。回収処理後に金庫外収納部35に収納されている紙幣の在高が不確定であれば、紙幣処理装置1が払い出した紙幣の数、及び/又は、金額も不確定である。そのため、回収処理後の、紙幣処理装置1に残る紙幣の在高も不確定になる。より正確には、回収対象の紙幣を繰り出した収納部の在高が不確定になる。
【0084】
従来の紙幣処理装置は、操作者が詰まりの原因となった紙幣を取り除いた後、金庫外収納部の中に収納している紙幣の在高が不確定のまま、回収処理を再開していた。回収処理が完了した後も、金庫外収納部の中に収納している紙幣の在高は不確定のままである。在高が不確定の金庫外収納部は、回収先において改めて、収納している紙幣の数え直しを行う。また、紙幣処理装置において不確定となった収納部の精査処理も、別途行われる。精査処理は、収納部に収納されている紙幣を計数し直すことにより、当該収納部の中の紙幣の在高を確定させる処理である。
【0085】
これに対し、この紙幣処理装置1は、詰まりの原因となった紙幣が取り除かれた後、金庫外収納部35に収納されている紙幣の在高を確定させる精査処理を行った後、回収処理を再開する。これにより、回収処理後に、回収先において紙幣の数え直しを行うことが不要になる。
【0086】
次に、図3及び図4を参照しながら、回収処理中に、金庫外収納部35の中の紙幣の在高が不確定になった場合の、紙幣処理装置1の動作を説明する。
【0087】
図3のP1は、回収処理の最中の、紙幣処理装置1の動作を示している。P1において実線の矢印で示すように、第1~第4収納部31~34は、回収対象の紙幣を繰り出す。図例においては、第1収納部31が紙幣を繰り出している。搬送部4は、紙幣を識別部25へ搬送する。識別部25が識別を行った後、搬送部4は、紙幣を金庫外収納部35へ搬送する。金庫外収納部35は、紙幣を収納する。回収処理の最中に、コントローラー15は、金庫外収納部35に収納した紙幣に関する記番号リスト100を作成する。記憶部26は、記番号リスト100を記憶する。
【0088】
尚、搬送部4は、識別部25が識別したリジェクト紙幣を、P1に破線の矢印で示すように、一時保留部24へ搬送する。一時保留部24は、リジェクト紙幣を一時的に収納する。
【0089】
回収処理の最中に、金庫外収納部35の入口付近において紙幣の詰まりが生じると、紙幣処理装置1は動作を停止する。操作者は、詰まっている紙幣を、金庫外収納部35の入口から取り除く。
【0090】
図3のP2は、詰まっている紙幣が取り除かれた後の、紙幣処理装置1の動作を示している。詰まっている紙幣が取り除かれた後、コントローラー15は、搬送部4に、搬送路の途中に残っている紙幣を全て、出金部22へ搬送させる。搬送部4は、P2に破線の矢印で示すように、第5搬送路415及び第3搬送路413の中に残っている紙幣を先ず、第1搬送路411まで搬送する。その後、搬送部4は、第1搬送路411の途中に残っている紙幣、及び、第5搬送路415及び第3搬送路413から第1搬送路411へ搬送した紙幣を全て、出金部22へ搬送する(P2の実線の矢印参照)。操作者は、出金口221を通じて出金部22から紙幣を手で取り出す。紙幣処理装置1は、この紙幣を、紙幣処理装置1の外に払い出した紙幣として管理する。つまり、紙幣処理装置1は、紙幣処理装置1の中に収納している紙幣から除外する。紙幣処理装置1はまた、この紙幣を、金庫外収納部35に収納されていない紙幣として管理する。
【0091】
尚、前記とは逆に、搬送部4は、第1搬送路411の途中に残っている紙幣(但し、少なくとも第5搬送路415の中に残っている紙幣を除く)を先に、出金部22へ搬送してもよい。その後、搬送部4は、少なくとも第5搬送路415の中に残っている紙幣を、第1搬送路411まで搬送し、第1搬送路411へ搬送した紙幣を、出金部22へ搬送してもよい。
【0092】
図4のP3は、搬送路の途中に残っている紙幣を出金部22へ搬送した後の、紙幣処理装置1の動作を示している。紙幣処理装置1は、金庫外収納部35の精査処理を実行する。コントローラー15は、金庫外収納部35に、収納している紙幣を繰り出させる。コントローラー15はまた、搬送部4に、金庫外収納部35が繰り出した紙幣を、識別部25へ搬送させる。識別部25は、紙幣の識別を行う。搬送部4は、識別部25が正常紙幣と判断した紙幣を、元の収納部へ搬送する。図4の例では、回収対象の紙幣が第1収納部31に収納されていたため、P4に実線の矢印で示すように、搬送部4は、正常紙幣を第1収納部31へ搬送する。第1収納部31は、紙幣を収納する。回収対象の紙幣を繰り出した収納部は、金庫外収納部35の在高が不確定になったことに付随して、在高が不確定になった収納部である。回収対象の紙幣を繰り出していない収納部は、在高が確定のままの収納部である。金庫外収納部35が繰り出した紙幣は、在高が確定している収納部には収納しない。当該収納部の在高が不確定になってしまうためである。
【0093】
搬送部4は、精査処理時に識別部25が識別したリジェクト紙幣を、破線の矢印で示すように、一時保留部24へ搬送する。一時保留部24は、リジェクト紙幣を収納する。
【0094】
識別部25は、紙幣の識別と共に、紙幣の記番号の読み取りも行う。コントローラー15は、識別部25が読み取った記番号と、記憶部26が記憶している金庫外収納部35の記番号リスト100とに基づいて、金庫外収納部35に残っている紙幣を特定する。つまり、コントローラー15は、金庫外収納部35に全ての紙幣を繰り出させずに、一部の紙幣のみを繰り出させることにより、金庫外収納部35に収納されている紙幣の在高を確定する。このような精査処理を、部分精査処理と呼ぶ場合がある。
【0095】
ここで、スタック式の収納装置は、紙幣を収納する際に紙幣の順番が入れ替わる場合がある。記番号リストは、識別部25が記番号を読み取った順番に基づいて作成されている。金庫外収納部35において、紙幣の収納順が入れ替わっていれば、記番号リスト100における記番号の順番と、金庫外収納部35における、紙幣の実際の収納順とが一致しない。そのため、金庫外収納部35から紙幣を一枚だけ繰り出し、その記番号を特定して記番号リスト100と照合したとしても、金庫外収納部35に残っている紙幣を正確に特定できない。
【0096】
そこで、この紙幣処理装置1は、部分精査処理時に、複数枚の紙幣の記番号の照合を行う。このことにより、収納時に紙幣の順番が多少入れ替わっていても、コントローラー15は、記番号リスト100を用いて、一部の紙幣を繰り出した後に金庫外収納部35に残っている紙幣を正確に確定できる。コントローラー15は、少なくとも2枚の紙幣の記番号を、記番号リスト100と照合すればよい。以下において説明をする構成例において、コントローラー15は、5枚の紙幣の記番号を、記番号リストと照合する。
【0097】
次に、部分精査処理における記番号の照合手順を説明する。前述したように、識別部25は、部分精査処理時に、金庫外収納部35から繰り出された紙幣の記番号を読み取る。識別部25が、記番号の読み取りを、5枚連続してできた場合、コントローラー15は、金庫外収納部35に、紙幣の繰り出しを停止させる。5枚分の紙幣に対応する5つの記番号は、記番号リスト100と照合する対象である対象グループを構成する。
【0098】
記番号の読み取り不能が発生した場合、又は、リジェクト紙幣が発生した場合、金庫外収納部35は、改めて、5枚の紙幣を繰り出し、識別部25は、各紙幣の記番号の読み取りを行う。尚、識別部25が、記番号における一部の桁の読み取りができない場合は、記番号の読み取りができたとみなす。
【0099】
5枚分の記番号の対象グループを決定すれば、コントローラー15は、対象グループと記番号リスト100とを照合する。コントローラー15は、記番号リスト100において、対象グループに対応するグループ(つまり、照合グループ)を決定する。対象グループに含まれる5枚の紙幣は、金庫外収納部35から繰り出した紙幣に対応する。照合グループに含まれる5枚の紙幣は、記番号リスト100において、金庫外収納部35から繰り出した紙幣と、金庫外収納部35に残っている紙幣との境界を示す。記番号リスト100において照合グループを特定すれば、コントローラー15は、金庫外収納部35に残っている紙幣を確定できる。
【0100】
図5を参照しながら、対象グループと記番号リストとの照合の手順を、具体的に説明する。図5の左図は、記番号リスト100を例示している。記番号リスト100における「12340」等は記番号である。図5の記番号リスト100において、上側の記番号は、収納順の上位の紙幣の記番号であり、図の下側の記番号は、収納順の下位の紙幣の記番号である。括弧内の数字は、金庫外収納部35における通し番号である。通し番号は、金庫外収納部35の収納枚数に対応する。図5の右側の記番号は、金庫外収納部35から繰り出された紙幣の記番号であって、識別部25が読み取った記番号である。図の上側の記番号は、金庫外収納部35から後から繰り出した紙幣の記番号であり、図の下側の記番号は、金庫外収納部35から先に繰り出した紙幣の記番号である。
【0101】
コントローラー15は、記番号リスト100に含まれる上位の記番号から順に、対象グループに含まれる各記番号を照合する。これによって、コントローラー15は、対象グループの中で、記番号リストにおいて最も上位となる記番号を特定できる。図例では「12348」が最上位の記番号である。
【0102】
次いで、コントローラー15は、決定した最上位の記番号に対し、4枚分だけ下位の記番号(ここでは、最下位の記番号と呼ぶ)を特定する。図例では「12344」が最下位の記番号である。その上で、コントローラー15は、この最下位の記番号と全桁が一致する記番号が、対象グループに含まれているか否かを判定する。コントローラー15はまた、記番号リストにおける、最上位の記番号と最下位の記番号とで挟まれた3つの記番号について、記番号の順番は問わずに対象グループ内の各記番号との照合を行う。コントローラー15は、この照合の際には、記番号の一部の桁のみ一致することを許容する。コントローラー15は、記番号の照合を、例えば3桁分マスクして行う。つまり、3桁分が一致しなくても、残りの桁が一致すれば、コントローラー15は、記番号が一致したと判定する。
【0103】
以上の手順により、コントローラー15は、同図に示すように、記番号リスト100上において、対象グループに含まれる記番号と一致する記番号が全て含まれる照合グループを特定する。コントローラー15は、記番号リスト100において、照合グループを含むそれよりも上位の記番号の情報を削除する。照合グループに含まれる記番号の紙幣は、金庫外収納部35から繰り出されているためである。こうして、記番号リスト100を更新することにより、コントローラー15は、金庫外収納部35に残っている紙幣を確定できる。つまり、コントローラー15は、金庫外収納部35の中の紙幣の在高を確定できる。
【0104】
部分精査処理は、金庫外収納部35の中の一部の紙幣を繰り出すだけで、金庫外収納部35の中の紙幣の在高を確定できる。精査処理に要する時間を短縮できるという利点がある。紙幣処理装置1は、中断した回収処理を、速やかに再開できる。
【0105】
尚、部分精査処理を行う代わりに、コントローラー15は、金庫外収納部35の中の紙幣を全て繰り出すことにより、金庫外収納部35が収納する紙幣の在高を確定させてもよい。以下において、この処理を、部分精査処理に対し、全精査処理と呼ぶ場合がある。
【0106】
部分精査処理又は全精査処理によって、金庫外収納部35の中の紙幣の在高を確定すれば、コントローラー15は、回収処理を再開する。コントローラー15は、回収処理と同時に、在高が不確定となった収納部の精査処理(つまり、部分精査処理)を実行する。
【0107】
図4のP4は、回収処理を再開した、紙幣処理装置1の動作を示している。P4において実線の矢印で示すように、第1~第4収納部31~34は、回収対象の紙幣を繰り出す。図例では、前述した精査処理時に紙幣を収納した第1収納部31が、回収対象の紙幣を繰り出している。第1収納部31は、在高が不確定となった収納部である。
【0108】
搬送部4は、紙幣を、識別部25へ搬送する。識別部25は、紙幣の識別及び記番号の読み取りを行う。コントローラー15は、前記と同様に、第1収納部31から繰り出された5枚分の紙幣の記番号からなる対象グループを決定する。対象グループが決定されれば、コントローラー15は、対象グループと第1収納部31の記番号リスト100と照合する。その照合によって、コントローラー15が、記番号リスト100において、対象グループに含まれる記番号と一致する記番号が全て含まれる照合グループを特定すれば、コントローラー15は、第1収納部31の中の紙幣の在高を確定できる。こうして、金庫外収納部35の在高が不確定になることに付随して、在高が不確定になった収納部の精査処理が完了する。尚、搬送部4は、第1収納部31から繰り出された紙幣を、金庫外収納部35へ搬送する。紙幣処理装置1は、回収処理の再開時に、回収処理と精査処理とを同時に行うため、処理に要する時間が節約できる。
【0109】
コントローラー15は、収納部に対する精査処理が完了した後も、回収対象の紙幣が全て、金庫外収納部35へ収納されるまで、回収処理を継続する(P4の実線の矢印参照)。尚、リジェクト紙幣は、P4に破線の矢印で示すように、一時保留部24に収納される。そして、回収対象の紙幣が全て、金庫外収納部35へ収納されれば、回収処理が完了する。
【0110】
回収処理の完了後、操作者は、金庫外収納部35を、紙幣処理装置1から取り外し、所定の回収先へ送る。
【0111】
回収処理の完了後、金庫外収納部35の在高は確定していると共に、紙幣処理装置1の在高も確定している。紙幣処理装置1は、回収処理の完了後に、回収伝票を発行する。このときに、「金庫外収納部の中の貨幣の在高が不確定である」旨の情報は付されない。
【0112】
尚、回収処理の最中に、金庫外収納部35の中の紙幣の在高が不確定になった際に、コントローラー15は、操作者に対し、精査処理の実行の要否を選択させるようにしてもよい。操作者が操作部27、又は、端末機29を操作することによって、精査処理の実行が選択されれば、コントローラー15は、前述した部分精査処理(又は全精査処理)を実行した後、回収処理を再開する。
【0113】
これに対し、操作者が精査処理の非実行を選択すれば、コントローラー15は、前述した部分精査処理(又は全精査処理)を省略して、回収処理を再開する。精査処理を省略した場合、コントローラー15は、回収処理の完了後に、回収伝票に、「金庫外収納部の中の貨幣の在高が不確定である」旨の情報を付す。
【0114】
また、コントローラー15の設定部151は、操作者が操作部27又は端末機29を予め操作することに基づき、回収処理を中断した場合に、精査処理を行った上で回収処理を再開する第1モードか、又は、精査処理を行わずに回収処理を再開する第2モードか、を予め設定してもよい。コントローラー15は、設定部151の設定に従い、回収処理の最中に、金庫外収納部35の中の紙幣の在高が不確定になった際に、第1モード、又は、第2モードで、回収処理を再開する。
【0115】
尚、部分精査処理又は全精査処理によって、金庫外収納部35の中の紙幣の在高を確定した後、コントローラー15は、回収処理を再開せずに、処理を終了してもよい。金庫外収納部35の中の紙幣の在高は確定しているため、操作者は、当該金庫外収納部35を、紙幣処理装置1から取り外し、所定の回収先へ送ることができる。このような処理は、例えば、部分精査処理又は全精査処理の実行に時間を要したため、回収処理を全て完了させるだけの時間が確保できない場合に、有効である。
【0116】
尚、前記の説明では、回収処理を中断して部分精査処理を行っている際に、搬送部4は、金庫外収納部35が繰り出した紙幣を元の収納部へ搬送している。これに代えて、搬送部4は、金庫外収納部35が繰り出した紙幣を、識別部25が識別した後、一時保留部24へ搬送してもよい。この場合、一時保留部24は、正常紙幣及びリジェクト紙幣の両方を収納してもよい。
【0117】
部分精査処理時に紙幣を収納した一時保留部24は、部分精査処理が終了しかつ、再開した回収処理が完了した後、収納している紙幣を繰り出し、搬送部4は、繰り出された紙幣を、例えば第2出金部23へ搬送してもよい。つまり、部分精査処理時に金庫外収納部35から繰り出された紙幣は、紙幣処理装置1の外に払い出してもよい。操作者は、紙幣処理装置1の外に払い出された紙幣を、金庫外収納部35に収納している紙幣とは、別途管理する。
【0118】
尚、前記の構成では、コントローラー15は、紙幣の記番号を用いて、部分精査処理を行っている。これに限らず、コントローラー15は、紙幣の金種に基づいて、部分精査処理を行ってもよい。
【0119】
具体的に、複数の収納部31~33のそれぞれから、複数金種の紙幣を回収する回収処理では、金庫外収納部35が複数金種の紙幣を収納している。この場合、記憶部26は、金庫外収納部35に収納している紙幣の金種の情報を、その収納順に記憶している。記憶部26が記憶している金種の情報に基づくと、金庫外収納部35内における金種の変わり目は、金庫外収納部35の在高の特定に利用できる。
【0120】
コントローラー15は、部分精査処理を行う場合に、識別部25に、金庫外収納部35が繰り出した紙幣の金種を識別させる。コントローラー15は、識別部25が識別した金種と、記憶部26が記憶している金種の情報とに基づいて、金庫外収納部35に残っている紙幣の数を特定する。
【0121】
ここに開示する技術は、前述した構成の紙幣処理装置へ適用に限定されない。図6は、前記とは異なる構成の紙幣処理装置10を例示している。
【0122】
紙幣処理装置10は、一時保留部24の配設位置が、図1の紙幣処理装置1とは異なる。また、紙幣処理装置10は、第1出金部22及び第2出金部23の二つの出金部を備えている。
【0123】
一時保留部24は、上部筐体111の中における後方位置に配設されている。第6搬送路416は、一時保留部24と第1搬送路411とを互いにつなぐ。第6搬送路416は、第1搬送路411から一時保留部24へ向かって、紙幣を搬送すると共に、一時保留部24から第1搬送路411へ向かって、紙幣を搬送する。第6搬送路416と第1搬送路411との接続箇所には、図示しない分岐機構が設けられている。
【0124】
第1出金部22及び第2出金部23は、装置の前部において上下に重なっている。第1出金部22は、例えば出金処理の際に、紙幣が搬送される部分である。第1出金部22は、第1出金口221を有している。第1出金口221は、装置の前部において上部筐体111に開口している。
【0125】
第2出金部23は、例えば入金処理の際に発生したリジェクト紙幣が搬送される部分である。第2出金部23は、様々な用途に利用することが可能である。第2出金部23は、第2出金口231を有している。第2出金口231は、装置の前部において上部筐体111に開口している。操作者は、第2出金部23に集積されている紙幣を、第2出金口231を通じて手で取り出すことができる。
【0126】
第1出金部22及び第2出金部23は、第3搬送路413を介して、第1搬送路411に接続される。
【0127】
紙幣処理装置10は、前述した各種処理を実行する。紙幣処理装置10の動作は、前記紙幣処理装置1の動作に準ずる。
【0128】
尚、ここに開示する技術は、前述したようなバラ紙幣を処理する紙幣処理装置に限らない。ここに開示する技術は、硬貨処理装置に、適用してもよい。
【符号の説明】
【0129】
1 紙幣処理装置(貨幣処理装置)
10 紙幣処理装置(貨幣処理装置)
131 金庫筐体(金庫)
15 コントローラー(制御部)
151 設定部
22 出金部(リジェクト部)、第1出金部
23 第2出金部(リジェクト部)
24 一時保留部
25 識別部
26 記憶部
27 操作部
31 第1収納部
32 第2収納部
33 第3収納部
34 第4収納部
35 金庫外収納部(回収部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6