IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東海理化電機製作所の特許一覧

<>
  • 特許-車両用心電検出装置 図1
  • 特許-車両用心電検出装置 図2
  • 特許-車両用心電検出装置 図3
  • 特許-車両用心電検出装置 図4
  • 特許-車両用心電検出装置 図5
  • 特許-車両用心電検出装置 図6
  • 特許-車両用心電検出装置 図7
  • 特許-車両用心電検出装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】車両用心電検出装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/304 20210101AFI20231221BHJP
   B62D 1/06 20060101ALI20231221BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20231221BHJP
   A61B 5/26 20210101ALI20231221BHJP
   A61B 5/277 20210101ALI20231221BHJP
   A61B 5/305 20210101ALI20231221BHJP
【FI】
A61B5/304
B62D1/06
B60N2/90
A61B5/26 100
A61B5/26 200
A61B5/277
A61B5/305
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020047345
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021145812
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山中 雄介
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特許第7156621(JP,B2)
【文献】特開2008-237379(JP,A)
【文献】特開2014-124438(JP,A)
【文献】特開2012-040241(JP,A)
【文献】特表2018-524116(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0354027(US,A1)
【文献】特開2013-027414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が接触する位置に各々設けられ、前記位置に接触した乗員との間で静電容量結合される一対の電極と、
前記一対の電極の差動電圧を検出する検出部と、
各々が前記一対の電極の一方を構成し、互いに電気的に絶縁されている第1電極部及び第2電極部と、
前記一対の電極の前記一方のみと前記検出部との間に設けられ、該電極との接続状態を切替える切替部と、
を含み、
前記一対の電極のうち前記第1電極部及び前記第2電極部を備える前記一方の電極は、乗員が着座する車両用シートに設けられ、
前記切替部は、前記第1電極部を前記検出部に接続し前記第2電極部を接地する接続状態と、前記第1電極部を接地し前記第2電極部を前記検出部に接続する接続状態とに切替える車両用心電検出装置。
【請求項2】
乗員が接触する位置に各々設けられ、前記位置に接触した乗員との間で静電容量結合される一対の電極と、
前記一対の電極の差動電圧を検出する検出部と、
各々が前記一対の電極の一方を構成し、互いに電気的に絶縁されている第1電極部及び第2電極部と、
前記一対の電極の前記一方のみと前記検出部との間に設けられ、該電極との接続状態を切替える切替部と、
を含み、
前記第1電極部及び前記第2電極部は、各々複数の小電極部を有し、前記第1電極部の小電極部と前記第2電極部の小電極部とが交互に配置されて乗員に対向可能にされており、
前記切替部は、前記第1電極部を前記検出部に接続し前記第2電極部を接地する接続状態と、前記第1電極部を接地し前記第2電極部を前記検出部に接続する接続状態とに切替える車両用心電検出装置。
【請求項3】
前記第1電極部及び前記第2電極部は、各々複数の小電極部を有し、前記第1電極部の小電極部と前記第2電極部の小電極部とが交互に配置されて乗員に対向可能にされている請求項1に記載の車両用心電検出装置。
【請求項4】
乗員の帯電状態が除電の必要な状態か否かを判定するための帯電情報を検出する帯電情報検出部と、
前記検出部により前記差動電圧が検出される際、前記帯電情報検出部により検出された帯電情報に基づき、乗員が帯電して除電が必要と判断される場合に、接続状態を切替えるように前記切替部を制御する制御部と、
を更に含む請求項1から請求項3の何れか1項に記載の車両用心電検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用心電検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の車両用心電計測システム1では、乗員の臀部に接する位置にシートセンサ11を設け、乗員の右肩に接する位置にシートセンサ13を設けている。また、車両用心電計測システム1では、乗員が左手でステアリング33を把持する位置に内側電極3及び外側電極7を設け、乗員が右手でステアリング33を把持する位置に内側電極5及び外側電極9を設けており、内側電極3、5及び外側電極7を接地し、外側電極9に2.5V(Hi)の電位を与えている。
【0003】
この車両用心電計測システム1では、乗員が右手でステアリング33を保持して乗員の右手により内側電極5と外側電極9とが導通して外側電極9の電位がLoとなると、シートセンサ11からシートセンサ13に切替えて、乗員の心電の計測を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-027414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、乗員の着衣などが静電気等により帯電した場合、シートセンサ11、13にコモンモードノイズ等が生じて、心電波形の検出精度が低下するが、乗員の着衣等が接触するシートセンサ11、12を接地状態とすることで、乗員の着衣等から静電気を漏洩させることができる。これにより、心電波形におけるコモンモードノイズ等の低減を図ることができる。
【0006】
しかしながら、シートセンサ11、13を接地状態とすると、心電波形の検出が不能となり、高精度の心電波形の検出においては改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記事実を鑑みて成されたものであり、乗員の着衣などが帯電した場合にも、心電波形の検出精度を向上できる車両用心電検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様の車両用心電検出装置は、乗員が接触する位置に設けられた一対の電極と、前記一対の電極の差動電圧を検出する検出部と、前記一対の電極の一方に設けられ、互いに電気的に絶縁されていると共に各々が乗員に接触される第1電極部及び第2電極部と、前記第1電極部及び前記第2電極部と前記検出部との間に設けられ、前記第1電極部を前記検出部に接続し前記第2電極部を接地する接続状態と、前記第1電極部を接地し前記第2電極部を前記検出部に接続する接続状態とに切替える切替部と、を含む。
【0009】
第2の態様の車両用心電検出装置は、第1の態様の車両用心電検出装置において、乗員の帯電状態が除電の必要な状態か否かを判定するための帯電情報を検出する帯電情報検出部と、前記帯電情報検出部により検出された帯電情報に基づき、乗員が帯電して除電が必要と判断される場合に、接続状態を切替えるように前記切替部を制御する制御部と、を更に含む。
【0010】
第3の態様の車両用心電検出装置は、第1又は第2の態様の車両用心電検出装置において、前記一対の電極のうち前記第1電極部及び前記第2電極部を備える電極は、乗員が着座する車両用シートに設けられている。
【0011】
第4の態様の車両用心電検出装置は、第1から第3の何れか1の態様の車両用心電検出装置において、前記第1電極部及び前記第2電極部は、各々複数の小電極部を有し、前記第1電極部の小電極部と前記第2電極部の小電極部とが交互に配置されて乗員に対向可能にされている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の態様の車両用心電検出装置では、検出部が、乗員が接触する位置に設けられた一対の電極の差動電圧を検出する。
【0013】
ここで、一対の電極の一方には、互いに電気的に絶縁されていると共に各々が乗員に接触される第1電極部及び第2電極部とが設けられている。また、切替部は、第1電極部を検出部に接続し第2電極部を接地する接続状態と、第2電極部を検出部に接続し第1電極部を接地する接続状態とに切替える。
【0014】
これにより、第1電極部及び第2電極部の一方により運転者から静電気を漏洩させながら、第1電極部及び第2電極部の他方を用いて一対の電極の間の差動電圧を検出できるので、心電波形の検出精度を向上できる。また、運転者から静電気を漏洩させるために心電波形の検出が中断するのを抑制できる。
【0015】
第2の態様の車輛用心電検出装置では、帯電情報検出部が、乗員の帯電状態が除電の必要な状態か否かを判定するための帯電情報を検出する。制御部は、帯電情報検出部により検出された帯電情報に基づき、乗員が帯電して除電が必要と判断される場合に、接続状態を切替えるように切替部を制御する。
【0016】
これにより、乗員からの除電が必要と判断される場合に、それまで接地状態とされていた第1電極部又は第2電極部を用いて心電波形の検出を行うことができるので、乗員からの除電が必要と判断される場合に、心電波形の検出精度が低下するのを抑制できる。
【0017】
第3の態様の車両用心電検出装置では、一対の電極のうち車両用シートに設けられる電極に、第1電極部及び第2電極部を設けている。これにより、車両用シートに着座した乗員からの除電が必要と判断される場合に、乗員の着衣等から効果的に静電気を除去できて、心電波形の検出精度が低下するのを抑制できる。
【0018】
第4の態様の車両用心電検出装置では、第1電極部及び第2電極部の各々が、複数の小電極部を有し、第1電極部の小電極部と第2電極部の小電極部とが交互に配置されて乗員に対向可能にされている。このため、乗員の心臓位置に対する第1電極部及び第2電極部の各々の位置を同様にできて、心電波形の検出に用いる電極を第1電極部と第2電極部との間で切替えても、心電波形の検出精度が変化するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態に係る車両用心電計測装置の概略構成図である。
図2】車両用心電検出装置の主要部を示すブロック図である。
図3】シート電極の平面図である。
図4】本実施形態に係る心電検出処理の流れ図である。
図5】正常な心電波形と異常な心電波形との切替わりを示す概略図である。
図6】心臓に対する心電波形を示す概略図である。
図7】変形例に係る車両用心電計測装置の概略構成図である。
図8】シート電極の他の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る車両用心電検出装置を詳細に説明する。
図1には、本実施形態に係る車両用心電検出装置10が概略構成図にて示され、図2には、車両用心電検出装置10の主要部の概略構成がブロック図にて示されている。なお、本実施形態において接地(接地状態)とは、車両の車体等を接地極(GND)とし、接地極に電気的に接続された状態であり、接地極との間が低インピーダンスとされた状態を含む。
【0021】
図1及び図2に示すように、車両用心電検出装置10は、ステアリング電極12、シート電極14、シート電極16、バッファ部18、及び心電波形生成装置20を備えている。車両用心電検出装置10は、ステアリング電極12及びシート電極14、16が車両の乗員としての運転者が接触(近接)する位置に設けられている。車両用心電検出装置10では、ステアリング電極12及びシート電極16が一対の電極を構成しており、ステアリング電極12及びシート電極16は、運転者が近接することで、運転者との間で容量結合する静電容量結合型のコンデンサを形成する。
【0022】
ステアリング電極12は、車両の操舵に用いられるステアリング体としてのステアリングホイール22に配置されており、ステアリングホイール22は、運転者に把持される。ステアリング電極12は、ステアリングホイール22の略全周(リム部の周方向の略全域かつリム部におけるステアリングホイール22の略全周)にわたって設けられており、皮革等の絶縁性の加飾部材によって被覆されている。
【0023】
これにより、運転者がステアリングホイール22を把持することで、運転者の手がステアリング電極12に近接され、運転者の手とステアリング電極12との間に容量結合が生じてコンデンサが形成される。ステアリング電極12は、心電波形生成装置20に電気的に接続されており、心電波形生成装置20は、運転者の手が近接することによりステアリング電極12から心臓の心拍における電気活動に伴うイオン電流変化(交流電流)を電流信号として検出する。なお、ステアリング電極12は、ステアリングホイール22の車両直進状態において運転者の右手が近接される領域の電極と左手が近接される領域の電極とに分けられていてもよい。
【0024】
シート電極14、16は、運転者が着座する車両用シート24に設けられており、シート電極14、16は、車両用シート24に着座した運転者の心臓位置よりも下側の車両用シート24のシートクッション24Aに配置され、シートカバー(図示省略)に被覆されている。シート電極14、16は、運転者が車両用シート24に着座することで、運転者の着衣及びシートカバーを介して運転者の臀部が近接される。
【0025】
シート電極14、16は、一方のシート電極16が心電波形生成装置20に電気的に接続され、他方のシート電極14が接地されている。心電波形生成装置20は、運転者が近接することでシート電極16から運転者の心臓の心拍における電気的活動に伴うイオン電流変化(交流電流)の電流信号を検出する。
【0026】
なお、図1では、シート電極16が運転者の左臀部に近接されるようにシート電極14、16を車幅方向(運転者の左右方向)に配列した例を示しているが、シート電極14、16の配列はこれに限らない。シート電極14、16は、車両前後方向(運転者の前後方向)に配列されていてもよく、或いはこれらの方向と異なる方向に配列されてもよい。また、シート電極16は、ステアリング電極12に近接される運転者の手に対して運転者の心臓を挟む位置に近接されればよく、車両用シート24に着座した運転者の心臓位置よりも下側に近接されればよい。ここから、シート電極16は、車両用シート24のシートバック24B等に配置されていてもよい。
【0027】
図1及び図2に示すように、バッファ部18は、バッファ回路26、28を備える。バッファ回路26は、ステアリング電極12と心電波形生成装置20との間に設けられており、バッファ回路26は、ステアリング電極12からの信号をバッファして心電波形生成装置20に出力する。また、バッファ回路28は、シート電極16と心電波形生成装置20との間に設けられており、バッファ回路28は、シート電極16からの信号をバッファして心電波形生成装置20に出力する。
【0028】
心電波形生成装置20は、検出部を構成する差動増幅器30、フィルタ増幅部32、及び信号処理部34を備えている。心電波形生成装置20は、ステアリング電極12及びシート電極16から入力される信号(電流信号)に基づいて運転者の心電波形を生成する。
【0029】
差動増幅器30は、2つの入力端子の一方にステアリング電極12側が接続され、他方にシート電極16側が接続されており、差動増幅器30は、2つの入力信号の差動電圧(差動信号)を検出して、フィルタ増幅部32に出力する。具体的には、差動増幅器30は、ステアリング電極12から入力される信号とシート電極16から入力される信号との差分を一定係数で増幅して出力する。
【0030】
フィルタ増幅部32は、差動増幅器30の出力信号(差動信号)を増幅すると共に、予め定めたフィルタを用いて予め定めた範囲の周波数の信号に変換する処理(フィルタ処理)等を行い、処理結果を信号処理部34に出力する。予め定めたフィルタとしては、例えば、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ等のフィルタを適宜適用する。また、本実施形態においてフィルタ増幅部32には、A/D変換器(図示省略)が設けられており、フィルタ増幅部32は、アナログ信号をデジタル信号に変換する処理(A/D変換処理)及びフィルタ処理等を行った処理結果を信号処理部34に出力する。
【0031】
信号処理部34は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを含むコンピュータで構成されている。
【0032】
信号処理部34には、波形生成部36が設けられており、信号処理部34では、CPUがメモリに予め記憶されたプログラムを実行することにより、波形生成部36の機能が実現される。波形生成部36は、フィルタ増幅部32から得られる信号を用いて、心電波形を生成して出力する。これにより、車両用心電検出装置10では、ステアリング電極12及びシート電極16の信号から心電波形が検出され、検出された心電波形が出力される。
【0033】
次に、車両用心電検出装置10に設けられたシート電極16、バッファ部18及び心電波形生成装置20について詳細に説明する。
【0034】
図2に示すように、バッファ回路26、28は、各々オペアンプOP、抵抗R、コンデンサCを含むブートストラップ(boot-strap)と呼ばれる正帰還回路で構成されている。これにより、バッファ回路26、28は、入力インピーダンスが超高インピーダンスとなり、前段の回路の影響が抑制されている。
【0035】
一方、運転者の着衣は、擦れることなどにより静電気が発生し易く、発生した静電気が溜まり易い。特に冬季などの空気が乾燥した時期では、大気中への静電気放電が生じ難く、計測対象とされる運転者の着衣にも静電気が溜まってしまう。車両用シート24に着座してシート電極16に近接している運転者の着衣が静電気により帯電していると、着衣等の静電気が心電波形のノイズ(誘導雑音)源となってしまう。
【0036】
ここで、図3には、本実施形態に係るシート電極16が平面図にて示されている。
図3に示すように、シート電極16は、第1電極部及び第2電極部としての電極部40、42を備えており、電極部40、42は、各々金属などの導電材料が用いられて薄肉(薄厚)に形成されている。
【0037】
電極部40、42には、各々帯状の基部44A、及び小電極部としての複数の枝電極部44Bが設けられている。枝電極部44Bは、各々所定長さの矩形状(帯状)とされ、基部44Aの幅方向の一端側において基部44Aの長手方向に沿って所定間隔で配置されており、枝電極部44Bは、各々基端が基部44Aに連結されて一体にされている。電極部40、42は、互いに隣接する枝電極部44Bの間の寸法が枝電極部44Bの幅寸法よりも僅かに広くされている。これにより、電極部40、42は、各々櫛歯形状に形成されており、電極部40、42は、運転者に対向される面の表面積が略同様にされている。
【0038】
シート電極16は、電極部40、42が互いに電気的に非接続状態とされ、電極部40、42の一方の枝電極部44Bが電極部40、42の他方の枝電極部44Bの間に配置されて、例えば、絶縁性のシート体(図3の破線参照)上に配列されて一体にされている。これにより、シート電極16は、電極部40の基部44Aと電極部42の基部44Aとの間において、電極部40の枝電極部44Bと電極部42の枝電極部44Bとが交互に配置されている。また、シート電極16は、車両用シート24に運転者が着座することで、運転者の臀部が電極部40、42の各々に近接される。
【0039】
図1及び図2に示すように、車両用心電検出装置10のバッファ部18には、切替部46が設けられている。切替部46は、第1スイッチ部48A及び第2スイッチ部48Bを備えており、第1スイッチ部48A及び第2スイッチ部48Bは、同様の構成とされて同期して動作される。第1スイッチ部48A及び第2スイッチ部48Bには、各々一次側(入力側)に一つの入力端子50Aが設けられ、二次側(出力側)に2つの(一対)の出力端子50B、50Cが設けられている。これにより、第1スイッチ部48A及び第2スイッチ部48Bでは、各々入力端子50Aの接続先が、出力端子50B、50Cの間で切替えられる。
【0040】
切替部46は、第1スイッチ部48Aの入力端子50Aにシート電極16の電極部40が接続され、第2スイッチ部48Bの入力端子50Aにシート電極16の電極部42が接続されている。また、切替部46は、第1スイッチ部48Aの出力端子50Bと第2スイッチ部48Bの出力端子50Cとがバッファ回路28(オペアンプOPの入力端子)に接続され、第1スイッチ部48Aの出力端子50Cと第2スイッチ部48Bの出力端子50Bとが接地されている(接地極GNDに接続されている)。
【0041】
これにより、シート電極16は、切替部46により電極部40、42の一方が高インピーダンス(超高インピーダンス)側となるバッファ回路28に接続され、電極部40、42の他方が低インピーダンスの接地状態(接地極GNDに接続された状態)にされる。また、シート電極16は、切替部46が操作されることで、電極部40、42の各々の接続先が、バッファ回路28と接地極GNDとの間で切替えられる。
【0042】
車両用心電検出装置10では、シート電極16の電極部40、42の一方が接地状態とされることで、シート電極16(接地された電極部40又は電極部42)を介して車両用シート24に着座した運転者の着衣から静電気が除去(除電)される。また、車両用心電検出装置10では、シート電極16の電極部40、42の他方がバッファ回路28に接続されることで、シート電極16(バッファ回路28に接続された電極部40又は電極部42)を用いた心電波形の生成が可能になる。
【0043】
一方、信号処理部34には、帯電情報検出部52及び制御部54が形成されている。信号処理部34では、CPUがメモリに予め記憶されたプログラムを実行することで帯電情報検出部52及び制御部54の機能が実現される。制御部54は、心電波形生成装置20の機能として設けられ、制御部54は、帯電情報検出部52の検出結果に基づいて切替部46を制御(切替操作)する。
【0044】
切替部46は、切替操作が行われることで、第1スイッチ部48A及び第2スイッチ部48Bの入力端子50Aの接続先を出力端子50B、50Cの間で切替える。これにより、シート電極16は、電極部40、42の接続先がバッファ回路28と接地極GNDとの間で切替えられ、電極部40がバッファ回路28に接続され電極部42が接地された状態と、電極部40が接地され電極部42がバッファ回路28に接続された状態とに切替えられる。
【0045】
帯電情報検出部52は、運転者の着衣等について除電する必要があるかを判断するための帯電情報を検出する。帯電情報としては、例えば、シート電極16の電極部40、42の一方を用いて心電波形を計測している際、計測した心電波形の可否を表す情報、又は心電波形のS/N比(信号雑音比)を表す情報が検出される。また、帯電情報としては、GPS(Global Positioning System)情報や、舵角、走行路等の情報を用いてもよい。或いは、帯電情報としては、温度や湿度等を検出することにより、静電気が発生しやすい環境か否かを検出してもよい。
【0046】
本実施形態において帯電情報検出部52では、フィルタ増幅部32の出力信号(差動増幅器30が出力する差動信号)から帯電情報を検出する。制御部54は、帯電情報検出部52によって検出された帯電情報から、運転者(運転者の着衣等)が除電の必要な帯電状態であるか否かを判定する。制御部54は、帯電情報から運転者が除電の必要な帯電状態であると判断される場合に、切替部46の切替操作を行う。
【0047】
車両用心電検出装置10では、切替部46が切替操作されることで、バッファ回路28の接続先、及び接地極GNDの接続先がシート電極16の電極部40と電極部42との間で切替えられる。これにより、車両用心電検出装置10では、運転者の着衣等からの静電気の除去を促進しながら、心電計測を継続できて、静電気に起因するノイズが抑制された心電波形を得ることが可能になる。
【0048】
次に、第1実施形態に係る車両用心電検出装置10による運転者の心電波形の検出処理を説明する。図4には、本実施形態に係る心電検出処理が流れ図にて示されている。
【0049】
車両用心電検出装置10による心電検出処理は、運転者が車両用シート24に着座してイグニッションスイッチ(エンジンスタートスイッチなどでもよい)がオン操作されることで処理が開始され、図4のフローチャートが実行される。また、車両用心電検出装置10では、イグニッションスイッチがオフされることで、心電波形の検出処理(図4のフローチャート)が終了する。なお、心電波形の検出処理の開始及び終了は、これに限らず車両用心電検出装置10に対するオン/オフ指示や、予め設定されたタイミングを適用できる。
【0050】
車両用心電検出装置10には、切替部46が設けられており、切替部46は、シート電極16の電極部40、42の一方(例えば、電極部42)を接地状態とし、電極部40、42の他方(例えば、電極部40)をバッファ回路28への接続状態としている。
【0051】
このため、車両用シート24に着座した運転者は、シート電極14及びシート電極16(電極部42)によって除電(静電気の除去)されると共に、バッファ回路28に接続されたシート電極16(電極部40)及びステアリング電極12による心電波形の検出が実行される。
【0052】
図4では、ステップ100において信号処理部34が心電波形を検出する。これと共に、ステップ102では、信号処理部34の帯電情報検出部52が帯電情報を検出する。
【0053】
次のステップ104では、帯電情報から運転者が除電の必要な帯電状態にあるか否かが判定される。運転者の除電が必要な帯電状態か否かの判定は、制御部54が帯電情報検出部52において検出される帯電情報に基づいて判定する。運転者が除電の必要な帯電状態ではないと判定された場合、ステップ104において否定判定されて、ステップ106に移行する。
【0054】
ステップ106では、信号処理部34が検出した心電波形を出力し、この後ステップ100に戻ることで、上述の処理を繰り返す。
【0055】
これに対し、帯電情報から運転者が除電の必要な帯電状態となっていると判定される場合、ステップ104において肯定判定されて、ステップ108に移行する。このステップ108では、制御部54が切替部46を制御して、第1スイッチ部48A及び第2スイッチ部48Bの切替操作を行う。
【0056】
これにより、車両用心電検出装置10では、バッファ回路28に接続されていたシート電極16の電極部40(又は電極部42)が接地極GNDに接続され、接地極GNDに接続されていたシート電極16の電極部42(又は、電極部40)がバッファ回路28に接続される。この後、ステップ100に戻ることで、上述の処理が繰り返される。
【0057】
ここで、切替部46の切替操作が行われることで、それまで接地極GNDに接続されることで接地状態とされていた電極部42(又は電極部40)がバッファ回路28に接続される。また、切替部46が操作されることで、それまでバッファ回路28に接続されて心電波形の検出に用いられた電極部40(又は電極部42)が接地状態にされる。
【0058】
このため、車両用心電検出装置10では、接地状態とされていることで静電気の除去に寄与していた電極部42(又は電極部40)が心電波形の検出に用いられるので、静電気の影響が除かれた心電波形の検出を行うことができる。また、それまで心電波形の検出に用いられていた電極部40(又は電極部42)により運転者の着衣からの除電を促進できる。
【0059】
これにより、車両用心電検出装置10では、運転者の帯電状態が除電の必要な状態となった際に、運転者の着衣の静電気除去を図りながら、適切な心電波形の検出ができ、高精度の心電波形を得ることが可能になる。
【0060】
また、シート電極16は、電極部40、42によって構成されており、電極部40、42の一方をバッファ回路28に接続し他方を接地極GNDに接続した状態と、電極部40、42の他方をバッファ回路28に接続し一方を接地極GNDに接続した状態とに切替えられる。このため、シート電極16を用いて心電波形の検出を行う際、静電気の影響が抑制された部分を用いることができるので、運転者の着衣等の静電気の影響が抑制された心電波形を検出できて、高精度の心電波形の検出が可能になる。
【0061】
一方、車両用心電検出装置10では、帯電情報検出部52が運転者の帯電状態が除電の必要な状態であることを検出する場合に、制御部54が帯電情報検出部52の検出結果から異常な心電波形(差動信号から得られる波形)か否かを判定する。
【0062】
例えば、図5に示すように、制御部54は、心電波形においてピーク値間の時間が予め設定された時間内か否かを判定する。制御部54は、例えば、ピーク値間の時間が短く、異常な心電波形と判定される場合に、切替部46を操作し、シート電極16の電極部を切替える。この際、制御部54は、シート電極16において心電波形の検出に用いている部分を接地状態にし、接地状態としている部分を用いて心電波形の検出が行われるようにしている。
【0063】
これにより、車両用心電検出装置10では、運転者の着衣を帯電させている静電気に起因するノイズの影響が抑制された適切な心電波形が得られるようにできる。なお、制御部54は、心電波形のピーク値が予め設定されたレベルを超えた場合や、ピーク値が予め設定されたレベルを超えた状態が所定時間を超えた場合に、心電波形に異常があると判断してもよい。
【0064】
帯電情報検出部52は、GPS情報や、車両を操作する際の舵角、車両の走行路等の情報を検出してもよく、温度や湿度等の車両又は車室内の環境情報を検出して、運転者の着衣等に静電気が発生し易い走行状態か環境かを示す情報を検出してもよい。例えば、車両が振動の多い走行路を走行している場合や、頻繁にステアリング操作(操舵)が行われている場合などは、運転者の着衣に擦れが生じて静電気が発生し易くなり、運転者の着衣等が除電の必要な帯電状態になり易い。
【0065】
制御部54は、帯電情報検出部52によって検出する車両の走行状態や車両の走行環境から運転者(の着衣等)に除電が必要な帯電状態となっているかを予測し、除電が必要な帯電状態となっていると予測される場合に、切替部46の切替操作を行うようにしてもよい。
【0066】
一方、図6に示すように、心電波形は、一般に、第1誘導波形、第2誘導波形、第3誘導波形、aVR誘導波形、aVL誘導波形、及びaVF誘導波形などが知られている。
【0067】
第1誘導波形は、心臓の左室の側壁を見る誘導波形であり、第2誘導波形は、心臓を心尖部から見る誘導波形であり、第3誘導波形は、右室側面と左室下壁を見る誘導波形である。また、aVR誘導波形は、右肩から心臓を見る誘導波形であり、aVL誘導波形は、左肩から見る誘導波形であり、aVF誘導波形は、心臓をほぼ真下から見る誘導波形である。
【0068】
心電波形は、心臓内の電気の流れを記録したものであり、例えば、心臓を挟んで電極を2つ取付けると心電波形が一つ得られる。心臓は、胸部の中央やや左側に位置し、心臓のあり、心尖部を下にして横に傾いた状態で存在する。心臓内の電気は、上部右心房に位置する洞結節からほぼ中央に存在する房室結節を介して心室の下部心尖部方向に向かって流れるため、電気軸としては左斜め下方向となる。この向きと同じ方向にマイナス電極とプラス電極を順に取付けると、心電波形は上向きになり、マイナス電極とプラス電極とを逆にすると、心電波形は下向きとなる。
【0069】
波形生成部36は、心臓を挟んだ電極として、ステアリング電極12とシート電極16とを用いて、2つの電極から得られる電流信号から第1~第3誘導波形を生成する。
【0070】
シート電極16は、運転者の左側臀部に近接するように車両用シート24のシートクッション24Aに配置されている。ここで、シート電極16の位置が、例えば車幅方向の右側(シート電極14側)に変わると、シート電極16の心臓に対する位置が変わって電気軸の方向が変わることで、ステアリング電極12とシート電極から検出される波形が変わってくる。
【0071】
この場合、電気軸の方向に影響するシート電極16の位置に応じ、フィルタ増幅部32から出力される波形と、各誘導方向から見た波形の対応関係を予め学習によって求めて記憶し、予め学習により求めた対応関係を用いて、フィルタ増幅部32から出力される波形から第1~第3誘導波形を生成する必要がある。この場合、例えば、係数や関数等を対応関係として適用して、フィルタ増幅部32から出力される波形から各方向の誘導波形を生成する必要がある。
【0072】
ここで、シート電極16には、各々が櫛歯状とされた電極部40、42が用いられている。このため、切替部46によりシート電極16の電極部が電極部40と電極部42との間で切替えられても、シート電極16の心臓に対する位置が変化して電気軸の方向が変化するのが抑制される。また、シート電極16は、電極部40の枝電極部44Bと電極部42の枝電極部44Bとが交互に配列されている。このため、シート電極16では、心電波形の検出に用いる電極が電極部40、42との間で切替えられても、心臓に対する位置が変化(電気軸の方向が変化)するのを効果的に抑制できる。
【0073】
これにより、車両用心電検出装置10では、シート電極16の電極部40、42の各々について、フィルタ増幅部32から出力される波形から各方向の誘導波形を生成するために係数や関数等の対応関係を変更する必要がない。
【0074】
〔変形例〕
次に本実施形態の変形例を説明する。
図7には、変形例に係る車両用心電検出装置10Aが概略構成図にて示されている。
【0075】
図7に示すように、車両用心電検出装置10Aは、帯電状態検出部としてのカメラ60及びカメラ60の撮影画像に対して所定の画像処理を行なう画像処理部62を備える点で、車両用心電検出装置10と相違する。
【0076】
車両用シート24に着座した運転者の体が動くことで運転者の体と着衣や着衣同士に擦れが生じて着衣等に静電気が発生して帯電することがある。ここで、カメラ60は、運転者が除電の必要な帯電状態となったか否かを判断するために運転者を撮像する撮像手段として用いられる。画像処理部62には、カメラ60が接続されており、画像処理部62は、カメラ60の撮影画像に対して所定の画像処理を行うことで帯電情報を取得する。なお、帯電情報は、カメラ60の撮影画像から取得される情報に限らず、運転者が着衣に静電気が溜まるような動作をしたか否かを判断できる情報であってもよい。この場合、例えば、帯電情報は、車両用シート24のシートクッション24Aなどに設けて運転者の体動による圧力変化を検出する圧力センサなどを用いて取得されてもよい。
【0077】
カメラ60は、車両用シート24に着座した運転者の体(衣服を着用した胴体部分)の動きの大きさを判別可能の映像の撮影が可能であればよい。カメラ60は、車室内において運転者が着座する車両用シート24の車両前側において運転者の腰部から上の部分(少なくとも両肩までの部分)を撮像領域に含まれるように配置されればよく、ルームミラーに設けられてもよく、インストルメントパネルやルーフのフロントウインドガラス側部分に設けられてもよい。
【0078】
画像処理部62は、信号処理部34に形成されており、信号処理部34は、CPUが予め記憶されたプログラムを実行することで画像処理部62の機能が実現される。画像処理部62は、例えば、カメラ60の撮影画像に対して画像処理を行うなどして運転者の胴体の輪郭を抽出し、抽出した輪郭の変化(移動量など)の大きさを帯電情報として取得し、取得した帯電情報を制御部54に出力する。
【0079】
制御部54は、画像処理部62から入力される帯電情報から、運転者が除電の必要な帯電状態となっているか否かを判定(予測)する。制御部54は、運転者が除電の必要な帯電状態となっていると判定すると、切替部46を操作(切替操作)する。
【0080】
このように構成されている車両用心電検出装置10Aでは、切替部46の切替操作が行われることで、それまで接地極GNDに接続されることで接地状態とされていた電極部42(又は電極部40)がバッファ回路28に接続され、それまでバッファ回路28に接続されて心電波形の検出に用いられた電極部40(又は電極部42)が接地状態にされる。
【0081】
このため、車両用心電検出装置10Aでは、シート電極16の電極部40、42の一方を接地状態としながら、電極部40、42の他方を用いて心電波形の検出を行うことができる。これにより、車両用心電検出装置10Aでは、運転者の帯電状態が除電の必要な状態となった際に、運転者の着衣の静電気除去を図りながら、適切な心電波形の検出ができ、高精度の心電波形を得ることが可能になる。
【0082】
また、車両用心電検出装置10Aでは、カメラ60によって撮影した運転者の撮影画像から帯電情報が検出され、検出された帯電情報に基づいて制御部54が運転者について除電の必要な帯電状態であるかを判定する。制御部54は、例えば、運転者の姿勢が大きく変化したり、比較的長い時間(例えば、数秒から数十秒の間で予め設定している時間)運転者の姿勢が小刻みに変化していたりした場合、運転者が除電の必要な帯電状態となっていると判定する。これにより、制御部54が切替部46を操作することで、運転者の着衣に溜まった静電気に起因するノイズの影響が抑制された適切な心電波形が得られるようにできる。
【0083】
なお、制御部54は、静電気の発生に影響する車両の走行状態、温度や湿度などの走行環境を含めて、運転者が除電の必要な帯電状態となっているかを判断するようにしてもよく、これにより、運転者の帯電状態をより的確に判断可能となる。
【0084】
なお、本実施形態及び変形例では、シート電極16とは別に、予め接地状態としているシート電極14を用いた。しかしながら、シート電極16において電極部40、42の一方が接地状態とされるので、シート電極14は省略されてもよい。
【0085】
一方、以上説明した本実施の形態及び変形例では、シート電極16に各々が櫛歯状に形成された電極部40、42を用いた、しかしながら、一対の電極の一方を形成する第1電極部及び第2電極部の構成はこれに限るものではない。図8には、第1電極部及び第2電極部により形成されている電極(シート電極)の一例が示されている。
【0086】
図8に示すように、シート電極16Aは、シート電極16に変えて用いることができる。このシート電極16Aは、第1電極部及び第2電極部としての電極シート70及び電極シート72を備えている。電極シート70、72は、各々導電性金属等の導電性材料が用いられて略矩形のシート状に形成されている。なお、電極シート70、72の形状は、配置される部分の形状に合わせたものであれば円形状や楕円形状などの他の形状であってもよい。
【0087】
シート電極16Aは、絶縁材料が用いられて形成されたシート体74を介して電極シート70、72が重ねられて一体にされており、シート電極16Aは、電極シート70が運転者側とされて、電極シート70、シート体74及び電極シート72がこの順で積層されている。
【0088】
運転者側となる電極シート70には、複数の開口部70Aが形成されており、電極シート70には、複数の開口部70Aが縦横或いは斜めに配列されて市松模様状に形成されている。このため、電極シート70には、開口部70Aと小電極部とされる電極部70Bとが縦横及び斜めに交互に形成されている。また、電極シート70は、開口部70Aの面積(開口面積)の総和と、電極部70Bの面積の総和とが同様にされている。
【0089】
これにより、シート電極16Aでは、電極シート70の電極部70Bが運転者に対向されると共に、電極シート70の開口部70Aにおいて電極シート72が運転者に対向され、シート電極16Aは、電極シート70の部分(電極部70B)と電極シート72の部分が交互に配列されている。また、電極シート70、72は、運転者に対向される面積が同様にされている。なお、シート電極16Aは、電極シート72も電極シート70と同様の市松模様状に形成され、電極シート70の開口部70Aに電極シート72の電極部分が重なるように積層されていてもよい。
【0090】
シート電極16Aは、電極シート70、72の各々が切替部46に電気的に接続されており、例えば、電極シート70が第1スイッチ部48Aの入力端子50Aに接続され、電極シート72が第2スイッチ部48Bの入力端子50Aに接続される。
【0091】
これにより、シート電極16Aは、電極シート70、72の一方がバッファ回路28に接続され、電極シート70、72の他方が接地極GNDに接続される。また、シート電極16Aは、切替部46が操作されることで、電極シート70、72の各々の接続先がバッファ回路28と接地極GNDとの間で交互に切替えられる。
【0092】
このため、シート電極16Aは、切替部46が切替操作されること、接地状態とされて静電気の除去に寄与していた電極シート72(又は電極シート70)が心電波形の検出に用いられるので、静電気の影響が除かれた心電波形の検出を行うことができる。
【0093】
また、シート電極16Aは、それまで心電波形の検出に用いられていた電極シート72(又は電極シート70)により運転者の着衣からの除電を促進できる。これにより、シート電極16Aを用いた場合でも、運転者の帯電状態が除電の必要な状態となった際に、運転者の着衣の静電気除去を図りながら、適切な心電波形の検出ができ、高精度の心電波形を得ることが可能になる。
【0094】
ここで、シート電極16Aは、電極シート70の電極部分(電極部70B)と電極シート72の電極部分(電極シート70の開口部70Aに重なる部分)とが交互に配列されている。このため、切替部46により電極シート70、72の間でバッファ回路28への接続が交互に切替えられても、シート電極16Aの心臓に対する位置が変化して電気軸の方向が変化するのが抑制される。これにより、シート電極16Aは、心臓に対する位置が変化(電気軸の方向が変化)するのを効果的に抑制できる。
【0095】
なお、電極シート70、72の間では、運転者の臀部との間隔が少なからず異なる。このため、電極シート70、72の切替りが心電波形に影響することがあり、電極シート70、72の面積が異なる場合も、電極シート70、72の切替りが心電波形に影響することがある。ここから、電極シート70、72の切替りが心電波形に影響する場合、例えば、電極シート70、72の何れでも同様の心電波形が得られるように、切替部46の切替操作に合わせてバッファ回路28におけるバッファ係数等を変更するように制御部54が制御してもよい。
【0096】
また、シート電極16Aでは、電極シート70(又は電極シート70、72)を市松模様状に形成した。しかしながら、第1電極部及び第2電極部の形状はこれに限るものではない。第1電極部及び第2電極部は、各々が略矩形のシート状に形成されて、並べて配置されていてもよい。また、第1電極部(又は第1電極部と第2電極部)は、市松模様状に限らず、網目状(メッシュ状)などの他の模様形態となるように形成されていてもよい。
【0097】
また、以上説明した本実施形態及び変形例では、一対の電極のうちで運転者の臀部(心臓よりも下側)に近接する電極を、第1電極部及び第2電極部により形成した。しかしながら、ステアリング電極12を第1電極部及び第2電極部により形成してもよく、運転者の心臓よりも上側に近接する電極に第1電極部及び第2電極部を用いてもよい。これにより、運転者の手等に静電気が生じていても、心電検出を継続しながら運転者の手等の除電ができる。
【符号の説明】
【0098】
10、10A・・・車両用心電検出装置、12・・・ステアリング電極(一対の電極)、16、16A・・・シート電極(一対の電極)、40、42・・・電極部(第1電極部及び第2電極部)、44B・・・枝電極部(小電極部)、46・・・切替部、52・・・帯電情報検出部、54・・・制御部、60・・・カメラ(帯電情報取得部)、62・・・画像処理部(帯電情報取得部)、70、72・・・電極シート(第1電極部及び第2電極部)、70B・・・電極部(小電極部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8