(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】液体検出装置及び建物
(51)【国際特許分類】
E04D 13/04 20060101AFI20231221BHJP
G01F 23/00 20220101ALI20231221BHJP
【FI】
E04D13/04 Z
G01F23/00 D
(21)【出願番号】P 2020048212
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【氏名又は名称】太田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】前川 敏晴
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-070092(JP,A)
【文献】特開2007-105684(JP,A)
【文献】特開平11-190676(JP,A)
【文献】特開平05-219639(JP,A)
【文献】特開2010-172879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/04
G01F 23/00
G01N 27/12
G01M 3/04
G01M 11/00
G01W 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に溶解する物質と、
前記物質を押圧する押圧機構と、
前記物質を収容し、内部に前記液体を導入可能な、導入孔を有する、収容部と、
前記液体を吸取り可能な吸液材と、を備え、
前記吸液材は、一端が、前記導入孔から前記収容部の前記内部に収容されて、前記物質に接触している、液体検出装置。
【請求項2】
前記一端とは反対側の他端は、当該液体検出装置の使用状態において、前記導入孔よりも下側に位置する、請求項
1に記載の液体検出装置。
【請求項3】
前記導入孔の周囲を覆うカバー部をさらに備える、請求項
1又は2に記載の液体検出装置。
【請求項4】
前記カバー部の内壁は、前記収容部の外壁から所定の距離以上離間するように形成されている、請求項
3に記載の液体検出装置。
【請求項5】
当該液体検出装置の使用状態において、前記物質の下端または前記吸液材の下端を、床面から所定の高さに維持する支持部をさらに備える、請求項1から
4のいずれか一項に記載の液体検出装置。
【請求項6】
前記押圧機構の変位に基づいて報知を行う報知部をさらに備える、請求項1から
5のいずれか一項に記載の液体検出装置。
【請求項7】
前記報知部は、前記押圧機構が所定の距離以上変位した場合に、作動する報知機構により構成される、請求項
6に記載の液体検出装置。
【請求項8】
前記報知部は、当該液体検出装置が設置された建物の排水系統が閉塞されていることを報知する、請求項
6又は
7に記載の液体検出装置。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか一項に記載の液体検出装置を備える建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は液体検出装置及び建物に関する。
【背景技術】
【0002】
パラペットを有する屋根には、雨水等を排水するためのドレインが設けられている。しかしながら、ドレインがゴミ等により閉塞されると屋根に水が溜まり、この状態を長期間放置しておくと、漏水の可能性が高まる。一方で、パラペットを有する屋根の状態を外部から認識することは容易ではない。
【0003】
このような事情に対し、従来、雨水を排出する排水系統の異常を検知するシステムが知られている。例えば、特許文献1には、センサの検知結果に基づいて排水系統の閉塞状態を判定し、判定結果を報知するシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたシステムのように、排水系統の閉塞状態の検出を、電気回路を含む電気的設備を用いて行う場合、当該電気回路等に劣化が生じることにより、電気的設備を点検したり更新したりする必要が生じ得る。また、電気回路を用いたシステムを建物に導入する場合、電気回路の設置位置まで電力系統を引いてくる必要があり、手間がかかる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、電気回路を用いずに液体を検出可能な液体検出装置及び建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る液体検出装置は、液体に溶解する物質と、
前記物質を押圧する押圧機構と、
を備えるものである。
【0008】
また、本発明の液体検出装置は、前記物質を収容し、内部に前記液体を導入可能な、導入孔を有する、収容部をさらに備えることが好ましい。
【0009】
また、本発明の液体検出装置は、前記液体を吸取り可能な吸液材をさらに備え、前記吸液材は、一端が、前記導入孔から前記収容部の前記内部に収容されて、前記物質に接触していることが好ましい。
【0010】
また、本発明の液体検出装置において、前記一端とは反対側の他端は、当該液体検出装置の使用状態において、前記導入孔よりも下側に位置することが好ましい。
【0011】
また、本発明の液体検出装置は、前記導入孔の周囲を覆うカバー部をさらに備えることが好ましい。
【0012】
また、本発明の液体検出装置において、前記カバー部の内壁は、前記収容部の外壁から所定の距離以上離間するように形成されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の液体検出装置は、当該液体検出装置の使用状態において、前記物質の下端または前記吸液材の下端を、床面から所定の高さに維持する支持部をさらに備えることが好ましい。
【0014】
また、本発明の液体検出装置は、前記押圧機構の変位に基づいて報知を行う報知部をさらに備えることが好ましい。
【0015】
また、本発明の液体検出装置において、前記報知部は、前記押圧機構が所定の距離以上変位した場合に、作動する報知機構により構成されることが好ましい。
【0016】
また、本発明の液体検出装置において、前記報知部は、当該液体検出装置が設置された建物の排水系統が閉塞されていることを報知することが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る建物は、上述の液体検出装置を備えるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電気回路を用いずに液体を検出可能な液体検出装置及び建物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る液体検出装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す液体検出装置による液体検出の方法を説明する図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る液体検出装置の概略構成を示す図である。
【
図4】
図3に示す液体検出装置による液体検出の方法を説明する図である。
【
図5】
図3に示す液体検出装置による液体検出の方法を説明する図である。
【
図6】本発明の第3実施形態に係る液体検出装置の概略構成を示す図である。
【
図7】
図6に示す液体検出装置が備える検出部の外観斜視図である。
【
図8】
図6に示す液体検出装置が備える検出部の断面図である。
【
図9】
図6に示す液体検出装置が液体を検出した状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、各図において共通する構成には同一の符号を付している。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る液体検出装置1の概略構成を示す図である。
図1に示すように、第1実施形態に係る液体検出装置1は、液体に溶解する物質(以下、単に「溶解物質」とも称する)2と、溶解物質2を押圧する押圧機構3と、を備える。溶解物質2は、常温で固体の物質である。本明細書では、溶解物質2は、液体としての水に溶解する固体の物質であるとして、以下説明する。例えば、溶解物質2は、砂糖又は食塩等とすることができる。しかしながら、溶解物質2は、ここに記載した例に限られず、液体に溶解する適宜の物質とすることができる。従って、液体についても水に限られない。溶解物質2は、液体に対する溶解度に基づき適宜の物質を選択することが好ましい。本明細書では、液体が水であり、溶解物質2が砂糖であるとして、以下説明する。
【0022】
図1に示す例において、液体検出装置1は、床面4上に設置(載置)されている。床面4は、例えば建物の屋上やバルコニー等であってよい。
図1に示す例では、液体検出装置1は、溶解物質2が床面4に接触するように載置されている。
図1に示す例では、押圧機構3は、溶解物質2の上部に配置され、矢印で示すように、床面4の方向に溶解物質2を押圧している。押圧機構3は、任意の態様で溶解物質2を押圧することができる。押圧機構3は、例えば内部にバネ機構を有し、バネ機構が備えるバネの弾性力により、溶解物質2を押圧することができる。
【0023】
次に、液体検出装置1による液体検出の方法について説明する。液体検出装置1は、
図1に示すように床面4上に載置されている。床面4を有する建物における排水系統が閉塞された状態で、例えば降雨等により、床面4上に水が溜まると、床面4上に載置されている液体検出装置1の溶解物質2が、床面4上に溜まった水に接触する。溶解物質2である砂糖は、接触した水に溶解し、体積が減少する。このとき、溶解物質2は、押圧機構3により押圧されているため、
図2に示すように、押圧機構3の、溶解物質2を押圧している本体部(
図2では押圧機構3の全体)が、押圧方向である床面4側の方向に変位する。この変位により、液体検出装置1が載置された床面4において、液体を検出することが可能となる。従って、例えば床面4を有する建物の居住者又は管理者等は、押圧機構3の位置の変位を観察することにより、液体が検出されているか否かを知ることができる。液体検出装置1は、電気回路を用いていないため、電気回路を用いることなく液体を検出することができる。
【0024】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態に係る液体検出装置11の概略構成を示す図である。
図3に示すように、第2実施形態に係る液体検出装置11は、液体に溶解する溶解物質12と、溶解物質12を押圧する押圧機構13と、を備える。
【0025】
溶解物質12は、第1実施形態の溶解物質2と同様であってよいため、ここでは詳細な説明を省略する。本実施形態でも、溶解物質12は、水に溶解する砂糖であるとして説明する。
【0026】
押圧機構13は、第1実施形態の押圧機構3と同様に、例えばバネ機構を有し、バネの弾性力により溶解物質12を押圧する。本実施形態では、押圧機構13は、後述する蓋部17と、蓋部17に固定されたピストン部13aとにより構成されている。本実施形態では、押圧機構13のピストン部13aが、溶解物質12に接触し、
図3に矢印で示すように、床面14の方向に溶解物質12を押圧している。
【0027】
本実施形態に係る液体検出装置11は、上述の蓋部17及びピストン部13aに加えて、溶解物質12を収容する収容空間15が形成されている収容部16をさらに備える。
【0028】
具体的には、収容部16の収容空間15の下端には、溶解物質12を支持する底面16aが設けられている。収容部16の収容空間15の上端は開放されており、上端開口が形成されている。蓋部17は、収容部16を覆うことができる上蓋として構成されている。本実施形態では、上蓋として構成された蓋部17の天板17aにおいて、蓋部17を収容部16にかぶせたときに収容空間15側(つまり
図3の下側)となる面に、ピストン部13aが取り付けられている。溶解物質12は、収容部16により形成される収容空間15に収容され、蓋部17の天板17aに取り付けられたピストン部13aにより押圧される。ピストン部13aは、収容部16の上端開口を通じて、収容空間15内の溶解物質12を収容部16の底面16a側に押圧する。
【0029】
収容部16は、内部に液体を導入可能な導入孔15aを有する。本実施形態では、収容部16の底面16aに貫通孔が形成されており、当該貫通孔が、導入孔15aとして機能する。なお、導入孔15aが形成される位置は、本実施形態で説明する位置に限られず、収容空間15の内部に液体を導入可能な収容部16の任意の位置に形成されてよい。
【0030】
液体検出装置11は、さらに、支持部60を備える。支持部60は、溶解物質12と液体との接触を、床面14から所定の高さに維持する。例えば、支持部60は、収容部16に取り付けられていてもよく、収容部16と一体として形成されていてもよい。支持部60は、例えば、床面14を有する建物に設けられたパラペットに設置(固定)可能に構成されていてよい。支持部60をパラペットに設置した状態で、床面14と収容空間15との距離、すなわち、本実施形態では床面14からの収容部16の底面16aまでの高さが、所定の高さH1に維持される。
【0031】
本実施形態において、液体検出装置11は、液体を吸取り可能な吸液材18をさらに備える。本実施形態では、吸液材18は、吸水可能な吸水材により構成される。吸液材18は、例えば不織布により構成されていてよい。
【0032】
吸液材18は、一端18aが導入孔15aから収容空間15の内部に収容されて、溶解物質12に接触している。吸液材18は、一端18aが収容空間15の内部に収容された状態で収容空間15から垂れ下がっており、一端18aとは反対の他端18bが、収容空間15の外部に位置するように構成されている。本実施形態では、他端18bが、液体検出装置11の使用状態において、導入孔15aよりも下側に位置するように、吸液材18の長さが定められている。このようにすることで、導入孔15aの位置の高さに限らず、導入孔15aよりも下側の吸液材18の他端18bの高さの水位を検出できる。つまり、収容空間15の高さによらず、吸液材18を用いることで、検出可能な水位を調整できる。更に、吸液材18を用いることで、液体検出装置11が偶発的で一時的な水位上昇を誤って検出することを抑制できる。具体的には、本実施形態では、他端18bが、液体検出装置11の使用状態において、床面14から所定の高さH2に位置するように、吸液材18の長さが定められている。液体検出装置11の使用状態とは、液体検出装置11をパラペットに設置する等して、床面14における液体の検出が可能な状態を言う。偶発的で一時的な水位上昇により、吸液材18の他端18bが水に接触したとしても、吸液材18の他端18bから一端18aまで吸い上げるまで、所定の時間を要する。そのため、一時的な水位上昇では、吸液材18の他端18bから一端18aまで水が到達できないように、吸液材18の長さや吸水力などを調整すればよい。これにより、液体検出装置11が偶発的で一時的な水位上昇を誤って検出することを抑制できる。高さH2は、適宜定めることができ、例えば、5~10mmの範囲とすることが好ましい。高さH2を5mmよりも小さくした場合、例えば大雨の際の一時的な水位の上昇により吸液材18が液体を吸い取り、液体検出装置11が本来の検出対象としていない上述の偶発的で一時的な水位の上昇を誤って検出する可能性がある。例えば、排水系統が閉塞状態でなくとも、一時的に排水系統による排水能力を超える量の液体が床面14上に溜まることにより、液体検出装置11が液体を検出することとなる。逆に、高さH2を10mmよりも大きくした場合、偶発的で一時的な水位上昇ではなく、本来検出すべき水位上昇により床面14上に液体が溜まった場合の検出が遅れる可能性がある。
【0033】
本実施形態では、液体検出装置11は、導入孔15aと収容空間15から垂れ下がっている吸液材18との周囲を覆うカバー部19を備える。本実施形態において、カバー部19は、収容部16と一体として形成されている。具体的には、カバー部19は、収容部16の側壁16bが底面16aの位置で終端せず、鉛直方向下側に延設されることにより形成されている。カバー部19により、例えば降雨の際に、雨滴が、直接導入孔15aに接触したり、直接吸液材18に接触して吸収されたりすることを抑制できる。
【0034】
液体検出装置11は、報知部20を備える。報知部20は、押圧機構13の変位に基づいて報知を行う機構である。本実施形態では、報知部20は、トリガ部21と、標識部22と、標識固定部23とを含んで構成される。
【0035】
トリガ部21は、標識部22の変位を抑制する。標識部22は、後述するように第1方向(
図3から
図5では左方向)に付勢されており、トリガ部21は、この付勢による標識部22の変位を抑制する。本実施形態では、標識部22がトリガ部21に係合することにより、標識部22の変位が抑制されている。本実施形態において、トリガ部21は、押圧機構13に固定されている。具体的には、トリガ部21は押圧機構13の蓋部17の天板17aにおいて、ピストン部13aが取り付けられている側とは反対側(つまり
図3の上側)の面に固定されている。従って、トリガ部21は、押圧機構13の蓋部17の変位と一体となって変位する。
【0036】
標識部22は、居住者又は管理者等に、液体検出装置11により液体が検出されたことを示す標識である。標識部22の形状は特に限定されない。標識部22は、第1方向に付勢されている。第1方向は、適宜定めることができ、本実施形態では、
図3の左方向であるとする。標識部22は、例えばコイルバネ等の弾性部材の弾性力により付勢されていてよい。押圧機構13の蓋部17が所定の距離以上変位すると、これとともにトリガ部21が変位し、標識部22の変位が抑制されない状態となる。これにより、標識部22が第1方向に変位する。居住者又は管理者等は、標識部22が変位したか否かを観察することにより、液体が検出されているか否かを知ることができる。
【0037】
標識固定部23は、初期状態において標識部22を支持(固定)する。初期状態は、液体検出装置11が設置された当初の状態であり、吸液材18により吸液がされていない状態である。
【0038】
次に、液体検出装置11による液体検出の方法について説明する。液体検出装置11は、上述したように、支持部60を例えばパラペットに設置することによって、建物に設置される。床面14を有する建物における排水系統が閉塞された状態で、例えば降雨等により、床面14上に水が溜まり、やがて水面が床面14からH
2の高さまで上昇すると、
図4に示すように、吸液材18の他端18bが、床面14上に溜まった水に接触する。すると、他端18bに接触した水が、吸液材18としての不織布に吸い取られる。吸液材18に吸い取られた水は、毛細管現象により吸液材18を伝って、他端18b側から一端18a側に移動し、導入孔15aから収容空間15の内部に導入される。これにより、収容空間15内に収容された溶解物質12と、吸液材18により吸い上げられた水とが接触し、溶解物質12が水に溶解する。水に溶解した溶解物質12は、不織布に含まれた水を伝って収容空間15の外部に流れ出る。本実施形態では、水に溶解した溶解物質12は、不織布に含まれた水を伝って下方に流出し、床面14上に溜まった水に流れ出る。これにより、収容空間15内に収容された溶解物質12の体積が減少する。収容空間15内の溶解物質12は、押圧機構13により押圧されているため、溶解物質12の体積が減少すると、押圧機構13及びトリガ部21が変位する。具体的には、
図4に示す例において、押圧機構13及びトリガ部21は、押し下げられる。そして、収容空間15内の溶解物質12の体積が所定量以上減少することにより、押圧機構13及びトリガ部21が所定の距離以上変位すると、
図5に示すように、トリガ部21と標識部22との係合が外れ、付勢されている標識部22が、付勢方向である第1方向(つまり
図5の左方向)に変位する。居住者又は管理者等は、標識部22が変位したことにより、液体が検出されたことを認識できる。
【0039】
このように、第2実施形態に係る液体検出装置11も、電気回路を用いていないため、電気回路を用いることなく液体を検出することができる。また、本実施形態に係る液体検出装置11によれば、支持部60により液体検出装置11を建物のパラペットに固定しているため、収容空間15に収容される溶解物質12の床面14からの高さを適宜定めることができる。本実施形態では、溶解物質12が収容空間15内に収容されており、導入孔15aから液体が収容空間15内に導入されるため、溶解物質12が導入孔15a以外の箇所で液体と接触することを防ぐことができる。さらに、本実施形態では、吸液材18により液体を他端18bから一端18aに吸い上げ、導入孔15aから液体を導入させる。そのため、上述したように、吸液材18の長さを調整することにより、液体を検出すべき液面の高さH2を適宜調整することができる。また、本実施形態では、吸液材18が液体を吸い上げて、吸い上げた液体に接触した溶解物質12の体積が減少し、押圧機構13及びトリガ部21が所定の距離以上変位することにより、液体が検出される。そのため、偶発的に一時的に液面の高さがH2を超えたとしても、すぐに液面の高さがH2を下回れば、押圧機構13及びトリガ部21が所定の距離以上変位していなければ、液体検出装置11によっては液体が検出されない。そのため、液体検出装置11によれば、偶発的で一時的な水位の上昇が誤検出されにくい。
【0040】
(第3実施形態)
図6は、本発明の第3実施形態に係る液体検出装置31の概略構成を示す図である。
図6に示す例では、液体検出装置31が、建物のパラペット51に設置(固定)された状態を示している。
図6に示すように、第3実施形態に係る液体検出装置31は、液体を検出する検出部40と、液体検出装置31を建物のパラペット51に固定する支持部41と、報知を行う報知部42とを備える。
【0041】
支持部41は、パラペット51の壁面51aに液体検出装置31を固定可能に構成されている。支持部41により、後述する検出部40に含まれる溶解物質32と、建物の床面34上の液体との接触が、床面34から所定の高さに維持される。
【0042】
図7は、液体検出装置31が備える検出部40の外観斜視図である。
図8は、液体検出装置31が備える検出部40の断面図であり、具体的には、
図7のA-A断面図である。
図7及び
図8に示すように、検出部40は、収容部36と蓋部37とを含んで構成されている。
図8に示すように、本実施形態の収容部36には、溶解物質32を収容する収容空間35が形成されている。具体的には、蓋部37は、収容部36を覆うことができる上蓋として構成されている。本実施形態では、上蓋として構成された蓋部37の天板37aにおいて、蓋部37を収容部36にかぶせたときに収容空間35側となる面に、ピストン部33aが取り付けられている。
【0043】
収容部36は、内部に液体を導入可能な導入孔35aを有する。本実施形態では、収容部36は概略円筒形状に構成されており、一端側に、ピストン部33aを挿入するための挿入孔35bが形成され、他端側に、導入孔35aが形成されている。なお、導入孔35aが形成される位置は、本実施形態で説明する位置に限られず、収容空間35の内部に液体を導入可能な任意の位置に形成されてよい。
図8に示すように、導入孔35aの直径は、円筒形状の収容部36の内径よりも小さくなるように形成されていることが好ましい。これにより、後述するように収容空間35に収容される吸液材38が、導入孔35aから収容空間35の外部に抜け出ることを防止しやすくなる。
【0044】
液体検出装置31の検出部40は、液体に溶解する溶解物質32と、溶解物質32を押圧する押圧機構33と、を備える。
【0045】
溶解物質32は、第1実施形態の溶解物質2と同様であってよいため、ここでは詳細な説明を省略する。本実施形態でも、溶解物質32は、水に溶解する砂糖であるとして説明する。
【0046】
押圧機構33は、第1実施形態の押圧機構3と同様に、例えばバネ機構を有し、バネの弾性力により溶解物質32を押圧する。本実施形態では、押圧機構33は、蓋部37と、蓋部37に固定されたピストン部33aとにより構成されている。本実施形態では、押圧機構33のピストン部33aが、溶解物質32に接触し、床面34の方向に溶解物質32を押圧している。具体的には、溶解物質32は、収容部36により形成される収容空間35に収容され、ピストン部33aにより押圧される。
【0047】
本実施形態では、収容空間35内に、溶解物質32と吸液材38とが収容されている。具体的には、収容空間35内のうち、挿入孔35b側の空間に溶解物質32が収容され、導入孔35a側の空間に吸液材38が収容されている。
図8に示すように、吸液材38は、導入孔35aに隣接して配置されている。また、吸液材38と溶解物質32とは、収容空間35内において接触している。また、溶解物質32は、ピストン部33aと接触し、ピストン部33aにより押圧されている。つまり、溶解物質32は、収容部36により形成される収容空間35内で、ピストン部33aと吸液材38との間に挟み込まれた状態で押圧されている。
【0048】
吸液材38は、液体を吸取り可能な材料で構成されており、例えば不織布により構成されている。
【0049】
本実施形態では、収容部36はカバー部39を備える。カバー部39は、収容部36の外壁36aから径方向外側に突出するフランジ部39bと、このフランジ部39bの外縁から垂下しているカバー本体部39cと、を備える。カバー本体部39cは、収容部36の径方向外側に離間した位置で、収容部36の周囲を覆っている。そのため、カバー部39によれば、例えば雨滴などが直接導入孔35aに触れることを防止する。本実施形態では、
図7及び
図8に示すように、カバー部39は、収容部36の導入孔35aの周囲を覆うように形成されている。また、本実施形態では、カバー部39の内壁39aが、円筒形状の収容部36の外壁36aから、離間するように形成されている。これにより、カバー部39の外壁を伝う雨滴が、カバー部39の下端から内壁39aに回り込んだとしても、導入孔35aに到達し難くすることができる。特に、カバー部39の内壁39aは、円筒形状の収容部36の外壁36aから、所定距離以上離間するように形成されていることが好ましい。所定の距離は、水滴が滞留しない距離である。仮にカバー部39の内壁39aと収容部36の外壁36aとの距離が、所定の距離よりも近接している場合には、液体の表面張力により、水滴がカバー部39の内壁39aと収容部36の外壁36aとの間を伝って導入孔35aに到達する可能性がある。しかしながら、カバー部39の内壁39aと収容部36の外壁36aとの距離を、所定の距離以上とすることにより、このように水滴が導入孔35aに到達することを防止しやすくなる。
【0050】
蓋部37は、外壁から突設されている連結部37cを備える。連結部37cには、蓋部37の変位方向である押圧機構33の押圧方向に沿って貫通した開口37bが形成されている。連結部37cは、液体検出装置31の報知部42の一部を連結可能に構成されている。本実施形態では、報知部42の延在棒43が、開口37bに挿通された状態で連結部37cに固定される。
【0051】
報知部42は、押圧機構33の変位に基づいて報知を行う。具体的には、報知部42は、押圧機構33が所定の距離以上変位した場合に報知を行う。本実施形態では、報知部42は、押圧機構33が所定の距離以上変位した場合に機械的に作動する報知機構により構成されている。
【0052】
具体的には、本実施形態では、報知部42は、例えばバネの弾性力等によって第2方向に付勢されている標識部44と、標識部44を初期位置に固定する固定具と、を含んで構成されている。ここでは、第2方向は、パラペット51を挟んで検出部40が配置されている方向とは反対の方向である。液体検出装置31の検出部40は、建物の床面34における液体を検出できるように、パラペット51に対して内側に設置されるため、第2方向は、パラペット51を挟んで建物の外側の方向となる。初期位置は、液体検出装置31の初期状態における標識部44の位置であり、固定具により固定された状態(
図6参照)の位置である。
【0053】
固定具は、延在棒43と連動して変位するように構成されている。押圧機構33が所定の距離以上変位し、これに伴って延在棒43が所定の距離以上変位すると、固定具による標識部44の固定状態が解除されるように構成されている。固定具による標識部44の固定状態が解除されると、第2方向に付勢された標識部44が、第2方向に変位し、例えば
図9に示すように、パラペット51よりも建物の外側の方向に飛び出した状態となる。
【0054】
次に、液体検出装置31による液体検出の方法について説明する。本実施形態では、支持部41により、床面34からの導入孔35aの高さが、所定の高さとなるように、液体検出装置31がパラペット51に固定される。床面34を有する建物における排水系統が閉塞された状態で、例えば降雨等により、床面34上に水が溜まり、やがて水面が導入孔35aの高さに到達すると、水が導入孔35aから収容空間35内に導入され、導入された水が吸液材38に接触する。水は、吸液材38としての不織布に吸い取られる。吸液材38に吸い取られた水は、毛細管現象により吸液材38を伝って溶解物質32に接触し、溶解物質32が水に溶解する。水に溶解した溶解物質32は、不織布に含まれた水を伝って収容空間15の外部に流れ出る。これにより、収容空間35内に収容された溶解物質32の体積が減少する。収容空間35内の溶解物質32は、押圧機構33により押圧されているため、溶解物質32の体積が減少すると、押圧機構33が変位する。そして、収容空間35内の溶解物質32の体積が所定量以上減少することにより、押圧機構33が所定の距離以上変位すると、これに伴って延在棒43が所定の距離以上変位し、固定具による標識部44の固定状態が解除される。すると、第2方向に付勢された標識部44が、第2方向に変位し、パラペット51よりも建物の外側の方向に飛び出した状態となる。居住者又は管理者等は、標識部44が建物の外側に変位した状態を確認することにより、液体が検出されたことを認識できる。
【0055】
このようにして、第3実施形態に係る液体検出装置31によっても、電気回路を用いることなく液体を検出することができる。
【0056】
上記実施形態において、報知部42は、機械的に作動する報知機構により構成されていると説明した。しかしながら、報知部42は、必ずしも機械的に作動する報知機構により構成されていなくてもよい。報知部42は、例えば、音、光及び振動等により報知を行う機構により構成されていてもよい。この場合、上記第3実施形態における押圧機構33が所定の距離以上変位した場合、音、光又は振動の出力を開始するスイッチがオンの状態となり、音、光又は振動の出力が開始される。居住者又は管理者等は、音、光又は振動により、液体が検出されたことを認識できる。居住者、管理者等は、標識部44が建物の外側に出ることにより、当該部に近づかなくとも、例えば日常的な移動範囲内で、標識部44を視認することにより、液体が検出されたことを認識できる。
【0057】
報知部42は、液体検出装置31が設置された建物の排水系統が閉塞されていることを報知してもよい。例えば、報知部42は、音声ガイドにより、排水系統が閉塞されていることを報知してよい。例えば、報知部42は、排水系統が閉塞されている旨を文字によりディスプレイに表示することで、排水系統が閉塞されていることを報知してよい。この場合、居住者又は管理者等は、報知部42の報知により、排水系統が閉塞されていることを認識することができる。
【符号の説明】
【0058】
1、11、31:液体検出装置
2、12、32:溶解物質
3、13、33:押圧機構
4、14、34:床面
13a、33a:ピストン部
15、35:収容空間
15a、35a:導入孔
16、36:収容部
16a:底面
16b:側壁
17、37:蓋部
17a、37a:天板
18、38:吸液材
18a:一端
18b:他端
19、39:カバー部
20、42:報知部
21:トリガ部
22、44:標識部
23:標識固定部
35b:挿入孔
36a:外壁
37b:連結部
39a:内壁
39b:フランジ部
39c:カバー本体部
40:検出部
41:支持部
43:延在棒
51:パラペット
51a:壁面
60:支持部