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特許7407034走行経路設定装置、走行経路を設定する方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】走行経路設定装置、走行経路を設定する方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20231221BHJP
   B60W 30/12 20200101ALI20231221BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20231221BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/12
B60W40/06
G01C21/34
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020048913
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021149515
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100166648
【弁理士】
【氏名又は名称】鎗田 伸宜
(72)【発明者】
【氏名】田村 祥
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-077295(JP,A)
【文献】特開2018-173304(JP,A)
【文献】国際公開第2019/021437(WO,A1)
【文献】特開2019-053596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60W 30/12
B60W 40/06
G01C 21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の走行経路を設定する走行経路設定装置であって、
地図データが示す走行環境を第1走行環境として取得し、前記移動体に搭載のセンサにより検出された走行環境を第2走行環境として取得する取得手段と、
前記第1走行環境と前記第2走行環境とに基づいて前記移動体の走行経路を設定する設定手段と、を備え、
前記設定手段は、前記第1走行環境と前記第2走行環境との一致度が基準を満たさない場合において、前記移動体が現に走行可能な走行面である走行可能面であって前記センサにより検出された走行可能面が狭くなるときには、該走行可能面の境界線に基づいて前記走行経路を設定し、
道路の幅方向両側方について区分線が特定され、かつ、一側方の区分線が2つに分岐しており、他側方の区分線と、該2つに分岐した区分線のうち前記他方側の区分線の側の一方との距離が第1基準値より小さい場合には、前記設定手段は、前記第1走行環境に基づいて前記走行経路を設定する
ことを特徴とする走行経路設定装置。
【請求項2】
前記設定手段は、前記一致度が前記基準を満たす場合には、前記第1走行環境に基づいて前記走行経路を設定する
ことを特徴とする請求項1記載の走行経路設定装置。
【請求項3】
前記移動体の進行方向前方における道路の幅方向内側への前記境界線の突出態様を評価する評価手段と、
前記評価の結果に基づいて前記走行可能面が狭くなると判定する判定手段と、を更に備える
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の走行経路設定装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記進行方向の視点において、前記境界線が前記移動体と重なるように突出していた場合に前記走行可能面が狭くなると判定する
ことを特徴とする請求項3記載の走行経路設定装置。
【請求項5】
前記取得手段は、前記移動体の進行方向前方において道路上に設けられた区分線及び/又は該道路の物理的境界を前記センサにより特定することで前記第2走行環境を取得し、
前記道路の幅方向一側方について区分線が特定され且つ他側方について前記物理的境界が特定されている場合には、前記設定手段は、前記走行経路を該特定された区分線側に偏らせて設定する
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項記載の走行経路設定装置。
【請求項6】
道路の幅方向両側方について区分線が特定され、該特定された区分線間の距離が第2基準値より小さく且つ前記第1走行環境が示す区分線間の距離が該特定された区分線間の距離よりも第3基準値以上大きい場合には、前記設定手段は、前記第1走行環境に基づいて前記走行経路を設定する
ことを特徴とする請求項1から請求項の何れか1項記載の走行経路設定装置。
【請求項7】
道路の幅方向両側方について区分線が特定され、該特定された区分線間の距離が、前記第1走行環境が示す区分線間の距離より第4基準値以上大きい場合には、前記設定手段は、該特定された区分線に基づいて前記走行経路を設定する
ことを特徴とする請求項1から請求項の何れか1項記載の走行経路設定装置。
【請求項8】
前記走行経路設定装置は、走行制御装置であり、前記移動体を前記走行経路に沿って走行させる走行制御手段を更に備える
ことを特徴とする請求項1から請求項の何れか1項記載の走行経路設定装置。
【請求項9】
移動体の走行経路を設定する方法であって、
地図データが示す走行環境を第1走行環境として取得し、前記移動体に搭載のセンサにより検出された走行環境を第2走行環境として取得する工程と、
前記第1走行環境と前記第2走行環境とに基づいて前記移動体の走行経路を設定する工程と、を備え、
前記走行経路を設定する工程では、
前記第1走行環境と前記第2走行環境との一致度が基準を満たさない場合において、前記移動体が現に走行可能な走行面である走行可能面であって前記センサにより検出された走行可能面が狭くなるときには、該走行可能面の境界線に基づいて前記走行経路を設定し、
道路の幅方向両側方について区分線が特定され、かつ、一側方の区分線が2つに分岐しており、他側方の区分線と、該2つに分岐した区分線のうち前記他方側の区分線の側の一方との距離が第1基準値より小さい場合には、前記第1走行環境に基づいて前記走行経路を設定する
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
コンピュータに請求項記載の方法の各工程を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に走行経路設定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動運転等とも称される運転支援は、例えば、走行環境を検出するための複数のセンサを車両に設け、それらの検出結果に基づいて該車両の走行経路を設定することにより行われうる。特許文献1には、複数のセンサの検出結果を各センサの劣化度合いに基づいて演算することにより自車両位置を特定し、運転支援を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-36856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、地図データが示す走行環境を更に参照して運転支援を行うことが記載されている。しかしながら、特許文献1記載の運転支援には、複数のセンサにより検出された走行環境と、地図データが示す走行環境とを用いて更に適切なものとするのに改善の余地があり、同様のことが多様な移動体についても云える。
【0005】
本発明は、より適切な運転支援を実現することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの側面は走行経路設定装置に係り、前記走行経路設定装置は、
移動体の走行経路を設定する走行経路設定装置であって、
地図データが示す走行環境を第1走行環境として取得し、前記移動体に搭載のセンサにより検出された走行環境を第2走行環境として取得する取得手段と、
前記第1走行環境と前記第2走行環境とに基づいて前記移動体の走行経路を設定する設定手段と、を備え、
前記設定手段は、前記第1走行環境と前記第2走行環境との一致度が基準を満たさない場合において、前記移動体が現に走行可能な走行面である走行可能面であって前記センサにより検出された走行可能面が狭くなるときには、該走行可能面の境界線に基づいて前記走行経路を設定し、
道路の幅方向両側方について区分線が特定され、かつ、一側方の区分線が2つに分岐しており、他側方の区分線と、該2つに分岐した区分線のうち前記他方側の区分線の側の一方との距離が第1基準値より小さい場合には、前記設定手段は、前記第1走行環境に基づいて前記走行経路を設定する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、より適切な運転支援を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る車両の構成の一例を示す図である。
図2】車両の走行経路の設定方法の一例を示すフローチャートである。
図3A】走行環境の内容を説明するための模式図である。
図3B】走行環境の内容を説明するための模式図である。
図3C】走行環境の内容を説明するための模式図である。
図4】走行環境の他の一例を示す模式図である。
図5】走行環境の他の一例を示す模式図である。
図6】走行環境の他の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
(車両の構成例)
図1は、実施形態に係る車両1の構成例を示す。車両1は、走行部11、運転操作部12、走行環境検出部13、記憶部14および制御部15を備える。本実施形態においては、車両1は走行部11として一対の前輪および一対の後輪を備える四輪車とするが、車輪の数は本例に限られるものではなく、他の実施形態として、車両1は、二輪車、三輪車等であってもよい。或いは、走行部11は、無帯走行体(クローラー式)で構成されてもよい。
【0011】
運転操作部12は、車両1の運転操作(主に、加速、制動および操舵)を行うための運転操作機構であり、例えば、加速操作子、制動操作子、操舵操作子等を含む。加速操作子にはアクセルペダルが典型的に用いられ、制動操作子にはブレーキペダルが典型的に用いられ、操舵操作子にはステアリングホイールが典型的に用いられうる。これらの操作子の操作方式は本例に限られるものではなく、これらの操作子には、例えばレバー式、スイッチ式等、他の構成が採用されてもよい。
【0012】
走行環境検出部13は、走行環境を検出するための検出装置(或いは、車外の様子を監視するための監視装置)である。走行環境検出部13には、後述の運転支援の実現に必要な公知の車載センサが用いられ、その例としては、レーダ(ミリ波レーダ)、ライダ(LIDAR(Light Detection and Ranging))、撮像用カメラ等が挙げられる。走行環境検出部13は、単に検出部と称されてもよいし、或いは、監視部等と称されてもよい。走行環境検出部13が検出対象とする走行環境は、詳細については後述とするが、例えば、道路の物理的境界、道路上に設けられた区分線(例えば白線)等を含む。
【0013】
記憶部14は、後述の運転支援の実現に必要な地図データを記憶する。地図データは、本実施形態では予め用意されて記憶部14に記憶されているものとするが、他の実施形態として、外部通信により取得されて記憶部14に記憶されてもよいし或いは更新されてもよい。地図データは、本実施形態では後述の説明の理解の容易化のため、車両1の走行環境、例えば、道路の物理的境界、道路上に設けられた区分線等を示すものとするが、他の実施形態として、それらを所定の演算処理により取得可能とする間接的な情報であってもよい。
【0014】
制御部15は、車両1のシステム全体を制御するシステムコントローラであり、典型的には、CPU(中央演算装置)及びメモリを備えるECU(電子制御ユニット)で構成されうる。即ち、制御部15の機能は、コンピュータ上でプログラムを実行することにより実現可能である。多くの場合、制御部15は、相互通信可能な複数のECUにより構成されるが、単一のECUで構成されてもよい。ECUに代替して、ASIC(特定用途向け集積回路)等、公知の半導体装置が用いられてもよい。即ち、制御部15の機能は、ソフトウェア及びハードウェアの何れによっても実現可能である。
【0015】
一例として、制御部15は、走行環境検出部13の検出結果と、記憶部14の地図データとに基づいて運転操作部12の駆動制御を行うことにより、運転支援を実行可能である。ここでいう運転支援とは、制御部15が運転操作の一部/全部を実行することをいう。
【0016】
即ち、車両1は、動作モードとして、運転操作の主体がユーザ(運転者)である手動運転モードと、運転操作の主体が制御部15である運転支援モード(或いは、自動運転モード等とも称される。)と、を有する。例えば、手動運転モードにおいては、ユーザは運転操作部12を用いて運転操作を行う。
【0017】
一方、運転支援モードにおいては、制御部15は、走行環境検出部13の検出結果と、記憶部14の地図データとに基づいて運転支援を行い、ユーザにより設定された目的地まで車両1を走行させる。具体的には、制御部15は、車両1周辺の障害物(例えば、設置物、他車両、歩行者等、車両1の接触が回避されるべきオブジェクト)を回避するように車両1の走行経路を設定し、車両1が該走行経路に沿って走行するように走行部11の駆動制御を行う。即ち、本明細書でいう走行経路とは、目的地までの経路(広義の走行経路)の他、車両1が現に走行中の道路上において車両1が描くべき軌跡(狭義の走行経路)を含む。
【0018】
尚、制御部15が、記憶部14から対応の地図データを適切に参照可能となるように、車両1には、GPS(Global Positioning System)用センサ等が設けられうる。
【0019】
以上の観点から、制御部15は、運転支援装置として機能し、その概念には、走行経路設定装置、走行制御装置等が包含される、と云える。ここでは説明の容易化のため、それらの機能は制御部15により実現されるものとするが、それらの機能を実現するユニットの一部/全部は個別に設けられてもよい。
【0020】
(走行経路の設定方法の例)
図2は、車両1の走行経路を設定するための方法の一例を示すフローチャートである。本フローチャートは、運転支援モードの開始に応じて主に制御部15により実行され、その概要は、記憶部14の地図データが示す走行環境と、走行環境検出部13の検出結果が示す走行環境と、に基づいて車両1の走行経路を設定する、というものである。
【0021】
ステップS1000(以下、単に「S1000」という。後述の他のステップについても同様とする。)では、記憶部14の地図データを参照し、地図データが示す走行環境(走行環境31とする。)を取得する。
【0022】
図3Aは、地図データが示す走行環境31の内容を示す(理解の容易化のため、上面模式図とする。)。即ち、走行環境31は、車両1が現に走行中の道路LDであって車両1進行方向前方の道路LDについての物理的境界311、及び、道路LD上に設けられた区分線312を含む。尚、実際には、物理的境界311および区分線312の一方が地図データとして登録されていない場合、地図データから欠落している場合等も考えられうるが、ここでは理解の容易化のため、それらの場合については考慮しないこととする。
【0023】
S1010では、走行環境検出部13により検出された走行環境(走行環境32とする。)を取得する。前述のとおり、走行環境検出部13の例としては、レーダ、ライダ、カメラ等の公知の車載センサが挙げられるが、これらの何れによっても走行環境32は取得可能である。
【0024】
図3Bは、走行環境検出部13により検出された走行環境32の内容を示す(理解の容易化のため、図3A同様、上面模式図とする。)。即ち、走行環境32は、道路LDにおける物理的境界321、及び、道路LD上に設けられた区分線322を含む。図3Bは、道路LD上において積雪が区分線322を覆うように道路LDの幅方向内側まで存在している状態を示す。尚、実際には、区分線322が道路LD上に設けられていない場合、道路LD上から消失している場合等も考えられうるが、ここでは理解の容易化のため、それらの場合については考慮しないこととする。
【0025】
S1020では、走行環境31及び32の一致度が基準を満たすか否かを判定し、より詳細には、物理的境界311及び321の一致度、並びに、区分線312及び322の一致度、に基づいて行われうる。上記基準は、例えば90%と設定されてもよいが、任意に調整可能であり、85%、95%等、他の値に設定されてもよい。また、物理的境界311及び321についての一致度の基準と、区分線312及び322についての一致度の基準とは、本実施形態では同一の値で設定されるものとするが、他の実施形態として互いに異なる値で設定されてもよい。
【0026】
図3Cは、図3A記載の走行環境31と、図3B記載の走行環境32とを重ね合わせた図を示す(区別のため、走行環境31は破線で示され、走行環境32は実線で示される。)。本例においては、道路LDにおける部分P1及びP2のうち、部分P2に積雪が存在しており、よって、走行環境31及び32の一致度は、部分P1では基準を満たしており、部分P2では基準を満たしていない、こととなる。
【0027】
上記S1020の判定の結果、走行環境31及び32の一致度が基準を満たす場合にはS1030に進み、そうでない場合(不一致の場合)にはS1040に進む。
【0028】
S1030では、走行経路を設定する。ここでは、走行経路は、走行環境31に基づいて設定されるものとする。走行環境31及び32のうち走行環境31(即ち地図データ)を用いることにより、走行経路の設定に要する演算時間を比較的短時間とすることが可能となり、該設定を比較的簡便に実現可能となる。尚、上記S1020にて走行環境31及び32の一致度が基準を満たすと判定されているため、走行環境32に基づいて設定されてもよい。
【0029】
S1040では、走行環境検出部13により検出された走行環境32に基づいて、道路LDについて、車両1が現に走行可能な走行面(以下、走行可能面)F1を評価する。この評価は、走行可能面F1の境界線についての道路LDの幅方向内側への突出態様に基づいて行われる。ここで、走行可能面F1は実質的に物理的境界321に基づいて画定されるため、走行可能面F1の境界線は物理的境界321に対応する。即ち、走行可能面F1の境界線は、区分線322に関わらず物理的境界321に基づいて特定される。
【0030】
S1050では、上記S1040での評価の結果に基づいて、走行可能面F1が狭くなるか否かを判定する。例えば、走行可能面F1の境界線の上記突出態様(道路LDの幅方向内側への突出態様)が基準を満たす場合、即ち、該幅方向内側への突出の大きさが所定量を超える場合には、走行可能面F1が狭くなると判定可能である。一例として、車両1進行方向の視点において(車両1進行方向で見たとき)、走行可能面F1の境界線が車両1と重なるように突出していた場合には、走行可能面F1が狭くなると判定可能である。換言すると、上記境界線の突出の先端が、車両1の一側方端(物理的境界321側の端)より車両1内側に位置し、又は、該一端と重なる場合には、走行可能面F1が狭くなると判定可能である。
【0031】
上記S1050により、走行可能面F1が狭くなると判定された場合にはS1060に進み、そうでない場合にはS1070に進む。
【0032】
S1060では、上記S1050にて狭くなると判定された走行可能面F1の境界線に基づいて、走行経路を設定する。
【0033】
S1070では、S1030同様、走行環境31に基づいて走行経路を設定する。
【0034】
本フローチャートによれば、地図データが示す走行環境31と、走行環境検出部13により検出された走行環境32とに基づいて車両1の走行経路が設定される。走行環境31及び32間の一致度が基準を満たす場合には、走行経路は、走行環境31(即ち地図データ)に基づいて設定され、それにより、該設定が比較的簡便に実現可能となる。一方、走行環境31及び32間の一致度が基準を満たさない場合(不一致の場合)において、走行環境検出部13により検出された走行可能面F1が狭くなるときには、走行経路の設定は、走行可能面F1の境界線(実質的に物理的境界321)に基づいて行われる。これにより、車両1は適切な走行経路に沿って走行可能となり(図3C、矢印A11参照)、即ち、制御部15は適切な運転支援を提供可能となる。
【0035】
また、図3C(付随的に図3A図3B)の例によれば、道路LDの幅方向一側方について区分線322が特定され且つ他側方について物理的境界321が特定されている。この例における他の態様として、走行経路は、走行環境31に関わらず、該特定された区分線322側に偏らせて設定されてもよい(図3C、矢印A12参照)。これにより、物理的境界321から離間した状態で車両1を走行させることが可能となる。
【0036】
(走行経路の設定方法の他の例)
記憶部14の地図データが示す走行環境31と、走行環境検出部13の検出結果が示す走行環境32とが不一致の場合(一致度が基準を満たさない場合)には、多様なケースが考えられうる。即ち、上記フローチャート(図2参照)では、物理的境界311および区分線312の双方が地図データとして予め登録されており且つ区分線322が道路LD上に予め設けられていることを前提としたが、実際には該前提が成立しない場合が考えられる。
【0037】
例えば、物理的境界311および区分線312の一方が、地図データとして登録されていない場合、地図データから欠落している場合等が考えられうる。或いは、区分線322が、そもそも道路LD上に設けられていない場合、道路LD上から消失している場合等も考えられうる。
【0038】
そのため、S1070(走行環境31及び32が不一致の場合であって、走行可能面F1が狭くならないと判定された場合)に代替して、幾つかの演算処理に基づいて走行経路の設定が行われうる。
【0039】
‐第1の例
図4は、走行環境32の他の一例として走行環境32bを、対応の走行環境(地図データが示す走行環境)31bと共に示す。走行環境32bによれば、道路LDの幅方向両側方について区分線322が特定されており、該特定された区分線322間の距離D52が基準値W1より小さい。この例としては、道路工事等によって区分線322が新たに設けられた一方で古い区分線322(区別のため区分線322xと図示する。)が残っている場合等が考えられる。基準値W1は、例えば2.0[m(メートル)]、2.5[m]等に設定されうる。
【0040】
このような場合、走行経路は、走行環境31bに基づいて設定されるとよい(図中矢印A21参照)。これにより、不適切な走行環境32bに追従して運転支援が行われてしまうような事態を防止可能となる(図中矢印A22参照)。
【0041】
‐第2の例
図5は、走行環境32の他の一例として走行環境32cを、対応の走行環境(地図データが示す走行環境)31cと共に示す。走行環境32cによれば、道路LDの幅方向両側方について区分線322が特定されており、該特定された区分線322間の距離D62が基準値W2より小さい。また、走行環境31cによれば、区分線312間の距離D61が区分線322間の距離D62よりも基準値W3以上大きい。この例としては、前述の第1の例同様、道路工事等によって区分線322が新たに設けられた一方で古い区分線322(区別のため区分線322xと図示する。)が残っている場合等が考えられる。基準値W2は、基準値W1以上の値に設定され得、例えば2.5[m]等に設定されうる。基準値W3は、例えば0.4[m]等に設定されうる。
【0042】
このような場合、走行経路は、走行環境31cに基づいて設定されるとよい(図中矢印A31参照)。これにより、不適切な走行環境32cに追従して運転支援が行われてしまうような事態を防止可能となる(図中矢印A32参照)。
【0043】
‐第3の例
図6は、走行環境32の他の一例として走行環境32dを、対応の走行環境(地図データが示す走行環境)31dと共に示す。走行環境32dによれば、道路LDの幅方向両側方について区分線322が特定されており、該特定された区分線322間の距離D72が、走行環境31dが示す区分線312間の距離D71より基準値W4以上大きい。この例としては、道路工事等によって区分線322が新たに設けられた一方で地図データ(即ち区分線312)が更新されていない場合等が考えられる。基準値W4は、例えば0.5[m]等に設定されうる。
【0044】
このような場合、走行環境は、地図データが示す走行環境31dに関わらず、該特定された区分線322に基づいて設定されるとよい(図中矢印A41参照)。これにより、不適切な走行環境31dに追従して運転支援が行われてしまうような事態を防止可能となる(図中矢印A42参照)。
【0045】
即ち、走行環境31及び32が不一致の場合、それらのうち現に優先されるべき一方に基づいて走行経路が設定されるように、各事例を個別具体的に検討して、S1070の内容は変更されうる。ここで例示された基準値W1~W4は、各事例を個別具体的に検討して適切に設定される必要がある。よって、ここで示された基準値W1等は本例の数値に限られるものではない。
【0046】
以上の説明においては、理解の容易化のため、各要素をその機能面に関連する名称で示したが、各要素は、実施形態で説明された内容を主機能として備えるものに限られるものではなく、それを補助的に備えるものであってもよい。例えば、本明細書では典型例として車両1を例示して実施形態を述べたが、走行部11は無帯走行体で構成されてもよく、即ち、実施形態の内容は多様な移動体に適用可能と云える。
【0047】
(実施形態のまとめ)
第1の態様は走行経路設定装置(例えば15)に係り、前記走行経路設定装置は、移動体(例えば1)の走行経路を設定する走行経路設定装置であって、地図データが示す走行環境を第1走行環境(例えば31)として取得し、前記移動体に搭載のセンサ(例えば13)により検出された走行環境を第2走行環境(例えば32)として取得する取得手段(例えばS1000~S1010)と、前記第1走行環境と前記第2走行環境とに基づいて前記移動体の走行経路を設定する設定手段(例えばS1030、S1060~S1070)と、を備え、前記設定手段は、前記第1走行環境と前記第2走行環境との一致度が基準を満たさない場合において、前記移動体が現に走行可能な走行面である走行可能面であって前記センサにより検出された走行可能面(例えばF1)が狭くなるときには、該走行可能面の境界線に基づいて前記走行経路を設定する(例えばS1030)
ことを特徴とする。これにより、適切な運転支援を提供可能となり、移動体は適切な走行経路に沿って走行可能となる。
【0048】
第2の態様では、前記設定手段は、前記一致度が前記基準を満たす場合には、前記第1走行環境に基づいて前記走行経路を設定する(例えばS1030)
ことを特徴とする。これにより、走行経路の設定を比較的簡便に実現可能となる。
【0049】
付随的に、道路(例えばLD)上に設けられた区分線(例えば322)に関わらず該道路の物理的境界(例えば321)に基づいて前記境界線を特定する特定手段(例えばS1040)を更に備えうる。これにより、上記第1の態様等を適切に実現可能となる。
【0050】
第3の態様では、前記移動体の進行方向前方における道路の幅方向内側への前記境界線の突出態様を評価する評価手段(例えばS1040)と、前記評価の結果に基づいて前記走行可能面が狭くなると判定する判定手段(例えばS1050)と、を更に備える
ことを特徴とする。これにより、上記第1の態様等を適切に実現可能となる。
【0051】
第4の態様では、前記判定手段は、前記進行方向の視点において、前記境界線が前記移動体と重なるように突出していた場合に前記走行可能面が狭くなると判定する
ことを特徴とする。これにより上記判定を比較的簡便に実行可能となる。
【0052】
第5の態様では、前記取得手段は、前記移動体の進行方向前方において道路(例えばLD)上に設けられた区分線(例えば322)及び/又は該道路の物理的境界(例えば321)を前記センサにより特定することで前記第2走行環境を取得し、前記道路の幅方向一側方について前記区分線が特定され且つ他側方について前記物理的境界が特定されている場合には、前記設定手段は、前記走行経路を該特定された区分線側に偏らせて設定する
ことを特徴とする。これにより、上記場合における走行経路の設定が適切に行われる。
【0053】
第6の態様では、道路(例えばLD)の幅方向両側方について区分線(例えば322)が特定され、該特定された区分線間の距離(例えばD52)が第1基準値(例えばW1)より小さい場合には、前記設定手段は、前記第1走行環境に基づいて前記走行経路を設定する
ことを特徴とする。これにより、上記場合における走行経路の設定が適切に行われる。
【0054】
第7の態様では、道路(例えばLD)の幅方向両側方について区分線(例えば322)が特定され、該特定された区分線間の距離(例えばD62)が第2基準値(例えばW2)より小さく且つ前記第1走行環境が示す区分線間の距離(例えばD61)が該特定された区分線間の距離よりも第3基準値(例えばW3)以上大きい場合には、前記設定手段は、前記第1走行環境に基づいて前記走行経路を設定する
ことを特徴とする。これにより、上記場合における走行経路の設定が適切に行われる。
【0055】
第8の態様では、道路(例えばLD)の幅方向両側方について区分線(例えば322)が特定され、該特定された区分線間の距離(例えばD72)が、前記第1走行環境が示す区分線間の距離(例えばD71)より第4基準値(例えばW4)以上大きい場合には、前記設定手段は、該特定された区分線に基づいて前記走行経路を設定する
ことを特徴とする。これにより、上記場合における走行経路の設定が適切に行われる。
【0056】
第9の態様では、前記走行経路設定装置は、走行制御装置(例えば15)であり、前記移動体を前記走行経路に沿って走行させる走行制御手段(例えば11)を更に備える
ことを特徴とする。これにより、上記設定された走行経路に沿って運転支援が適切に実現される。
【0057】
第10の態様は、移動体の走行経路を設定する方法に係り、前記方法は、地図データが示す走行環境を第1走行環境(例えば31)として取得し、前記移動体に搭載のセンサ(例えば13)により検出された走行環境を第2走行環境(例えば32)として取得する工程(例えばS1000~S1010)と、前記第1走行環境と前記第2走行環境とに基づいて前記移動体の走行経路を設定する工程(例えばS1030、S1060~S1070)と、を備え、前記走行経路を設定する工程では、前記第1走行環境と前記第2走行環境との一致度が基準を満たさない場合において、前記移動体が現に走行可能な走行面である走行可能面であって前記センサにより検出された走行可能面(例えばF1)が狭くなるときには、該走行可能面の境界線(例えばS1030)に基づいて前記走行経路を設定する
ことを特徴とする。これにより、上記第1の態様同様のことを実現可能である。
【0058】
第11の態様はプログラムに係り、前記プログラムは、コンピュータに上述の方法の各工程を実行させる。これにより、上記第1の態様同様のことを実現可能である。
【0059】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1:車両(移動体)、13:走行環境検出部、15:制御部(走行経路設定装置)。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6