(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】亀裂検知ラベルセット
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20231221BHJP
G09F 3/00 20060101ALI20231221BHJP
H01Q 9/28 20060101ALI20231221BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G06K19/077 304
G06K19/077 200
G09F3/00 Q
H01Q9/28
H01Q1/38
(21)【出願番号】P 2020054276
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2023-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2019157019
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110217
【氏名又は名称】TOPPANエッジ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】521475989
【氏名又は名称】川崎車両株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】松保 諒
(72)【発明者】
【氏名】宮本 格
(72)【発明者】
【氏名】都成 大輔
(72)【発明者】
【氏名】西村 武宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 與志
【審査官】田名網 忠雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-146339(JP,A)
【文献】特開2007-271362(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0060615(US,A1)
【文献】特開2017-161250(JP,A)
【文献】特開2000-057290(JP,A)
【文献】特開2011-090444(JP,A)
【文献】特開2013-205903(JP,A)
【文献】特開2011-227668(JP,A)
【文献】国際公開第2006/114821(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/077
G09F 3/00
H01Q 9/28
H01Q 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着体に貼着されて前記被着体に生じた亀裂を検知する亀裂検知ラベルセットであって、
前記亀裂の検知箇所を跨いで貼着される第1のラベルと、
前記第1のラベルと電気的に接合された状態で前記被着体に貼着される第2のラベルとを有し、
前記第1のラベルは、
両端が開放された金属配線層と、
前記金属配線層の一方の面に積層された非導電性接着層とを有し、
前記第2のラベルは、
ベース基材と、
前記ベース基材の一方の面に積層された非導電性接着層と、
前記ベース基材に形成された通信用アンテナ及び2本の補助配線と、
前記ベース基材に前記通信用アンテナ及び補助配線と接続されて配置され、前記金属配線層の導通状態を前記補助配線を介して検出し、その検出結果を前記通信用アンテナを介して非接触送信する検出手段とを有し、
前記2本の補助配線のそれぞれは、前記検出手段と接続された端部とは反対側の端部が表出した接合部となり、
前記金属配線層の両端と、前記2本の補助配線の前記接合部とが電気的に接合される、亀裂検知ラベルセット。
【請求項2】
請求項1に記載の亀裂検知ラベルセットにおいて、
前記第1のラベルは、前記金属配線層に、一つの側縁部から他の側縁部に向かって延び、前記他の側縁部に達する前に終端するスリットが形成されている、亀裂検知ラベルセット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の亀裂検知ラベルセットにおいて、
前記第2のラベルは、前記ベース基材と前記非導電性接着層との間のうち、少なくとも前記通信用アンテナ及び前記検出手段に対向する領域に、非導電性部材が介在している、亀裂検知ラベルセット。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の亀裂検知ラベルセットにおいて、
前記接合部は、当該接合部が設けられた領域内にて前記ベース基材を露出させる形状である、亀裂検知ラベルセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被着体に貼着されて被着体に生じた亀裂を検知する亀裂検知ラベルセットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被着体となる構造物の亀裂を検知するために、非接触通信が可能なRFIDラベルが利用されている。このようなRFIDラベルにおいては、被着体に貼着された状態で被着体に亀裂が生じた場合にアンテナや配線が断線することになることを利用して、アンテナや配線の導通状態に基づいて、被着体に亀裂が生じているかどうかが判断されている。特許文献1には、周波数が互いに異なる2つのアンテナを用い、被着体に亀裂が生じた場合に一方のアンテナが断線することを利用してその周波数の変化を検出することで被着体に亀裂が生じているかどうかを検知する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような被着体としては、ラベルが貼着される貼着面が金属からなる場合がある。その場合、被着体の亀裂によって導通状態が変化するアンテナや配線が被着体と導通してしまうと、被着体に亀裂が生じたことを正確に検知することができなくなってしまう。そのため、亀裂を検知できる対象が限定されてしまうことになる。また、被着体のラベルが貼着される貼着面に塗膜が積層されている場合であっても、塗膜が局所的に薄くなっていたり、経年劣化等で塗膜が剥離していたりする場合がある。その場合においても、アンテナや配線と被着体とが導通してしまい、被着体に亀裂が生じたことを正確に検知することができなくなってしまうことになる。
【0005】
また、特許文献1に開示されたものにおいては、被着体に亀裂が生じた場合に断線するアンテナが、ガラスやプラスチックなどの誘電体からなる被覆材で覆われているが、ガラスやプラスチックを被覆材として用いた場合、被着体に生じた亀裂が、例えば、亀裂幅が100μm程度の微小な亀裂の場合、亀裂に追従して被覆材が破断し難い。そのため、被着体に生じた亀裂が検知されたときには、既に被着体の劣化がかなり進行した状態となっており、被着体に亀裂が生じたことを早期に検知することができず、亀裂の発生への対応が手遅れとなってしまう虞がある。
【0006】
さらに、上述したようにアンテナや配線の導通状態を非接触通信するためには、通信用アンテナとそれに接続されたICチップとからなる非接触通信手段を有する構成となるため、亀裂の検知箇所の近傍に非接触通信手段を設置するのに十分なスペースが必要であり、亀裂の検知箇所の近傍に障害物が存在する場合、ラベル自体を貼着することができないという問題点がある。また、亀裂の検知箇所の近傍に、金属体等のように、非接触通信を妨害する障害物がある場合、アンテナや配線の導通状態を正確に非接触通信することができず、被着体に亀裂が生じたことを正確に検知することができなくなってしまうという問題点がある。
【0007】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、亀裂の検知箇所の近傍に障害物が存在する場合でも、被着体に亀裂が生じたことを正確にかつ早期に検知することができる亀裂検知ラベルセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、
被着体に貼着されて前記被着体に生じた亀裂を検知する亀裂検知ラベルセットであって、
前記亀裂の検知箇所を跨いで貼着される第1のラベルと、
前記第1のラベルと電気的に接合された状態で前記被着体に貼着される第2のラベルとを有し、
前記第1のラベルは、
両端が開放された金属配線層と、
前記金属配線層の一方の面に積層された非導電性接着層とを有し、
前記第2のラベルは、
ベース基材と、
前記ベース基材の一方の面に積層された非導電性接着層と、
前記ベース基材に形成された通信用アンテナ及び2本の補助配線と、
前記ベース基材に前記通信用アンテナ及び補助配線と接続されて配置され、前記金属配線層の導通状態を前記補助配線を介して検出し、その検出結果を前記通信用アンテナを介して非接触送信する検出手段とを有し、
前記2本の補助配線のそれぞれは、前記検出手段と接続された端部とは反対側の端部が表出した接合部となり、
前記金属配線層の両端と、前記2本の補助配線の前記接合部とが電気的に接合される。
【0009】
上記のように構成された本発明においては、第1のラベルが被着体の亀裂の検知箇所を跨いで貼着された状態で被着体に亀裂が生じると、亀裂に追従して第1のラベルが破断し、第1のラベルに設けられた金属配線層が断線する。この際、第1のラベルは、金属配線層と金属配線層の一方の面に積層された非導電性接着層とから構成され、非導電性接着層によって被着体に貼着されることで、亀裂に追従して第1のラベルが破断しやすくなっているとともに、被着体の貼着面が金属からなるものであっても、被着体と金属配線層とが導通することはない。第1のラベルの金属配線層の導通状態は、第2のラベルの検出手段にて2本の補助配線を介して検出され、第2のラベルの通信用アンテナを介して非接触送信されることになるが、2本の補助配線のそれぞれが、検出手段と接続された端部とは反対側の端部が表出した接合部となっており、この接合部が金属配線層の両端と電気的に接合されることで、金属配線層と検出手段とが補助配線を介して電気的に接続されることになるため、被着体の亀裂の検知箇所の近傍に障害物等が存在する場合でも、その配置に応じた形状及び金属配線層のパターンを有する第1のラベルを用いれば、通信用アンテナ及び検出手段を有する第2のラベルを、障害物によって通信や物理的な障害を受けない領域に貼着することができる。
【0010】
また、第1のラベルの金属配線層に、一つの側縁部から他の側縁部に向かって延び、前記他の側縁部に達する前に終端するスリットが形成されていれば、被着体に亀裂が生じた場合に、金属配線層が亀裂に追従して断線しやすくなる。
【0011】
また、第2のラベルが、ベース基材と非導電性接着層との間のうち、少なくとも通信用アンテナ及び検出手段に対向する領域に、非導電性部材が介在していれば、通信用アンテナ及び検出手段と被着体との間隔を非導電性部材によって広げることができ、被着体が金属からなるものであっても、金属配線層の導通状態を非接触送信する際に被着体の影響が及びにくくすることができる。
【0012】
また、接合部が、接合部が設けられた領域内にてベース基材を露出させる形状であれば、金属配線層の両端と接合部との接合強度が向上する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被着体に亀裂が生じた場合に断線する金属配線層を有する第1のラベルと、金属配線層の導通状態を非接触送信する通信用アンテナ及び検出手段を有する第2のラベルとが別体として構成され、これらが電気的に接合される構成としたため、亀裂の検知箇所の近傍に障害物が存在する場合でも、被着体に亀裂が生じたことを正確にかつ早期に検知することができる。
【0014】
また、第1のラベルの金属配線層に、一つの側縁部から他の側縁部に向かって延び、前記他の側縁部に達する前に終端するスリットが形成されているものにおいては、被着体に亀裂が生じた場合に、金属配線層が亀裂に追従して断線しやすくすることができる。
【0015】
また、第2のラベルが、ベース基材と非導電性接着層との間のうち、少なくとも通信用アンテナ及び検出手段に対向する領域に、非導電性部材が介在しているものにおいては、通信用アンテナ及び検出手段と被着体との間隔を非導電性部材によって広げることができ、被着体が金属からなるものであっても、金属配線層の導通状態を非接触送信する際に被着体の影響が及びにくくすることができる。
【0016】
また、接合部が、接合部が設けられた領域内にてベース基材を露出させる形状であるものにおいては、金属配線層の両端と接合部との接合強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の亀裂検知ラベルセットの実施の一形態を示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)はRFラベル単体の上面図、(d)は検知ラベル単体の上面図である。
【
図2】
図1に示した亀裂検知ラベルセットの被着体への貼着方法を説明するための側面図である。
【
図3】
図1に示した亀裂検知ラベルセットの被着体への貼着方法を説明するための上面図である。
【
図4】
図1に示した亀裂検知ラベルセットが
図2及び
図3に示したように台車に貼着された状態において検知エリアに亀裂が生じた際の作用を説明するための図である。
【
図5】
図1に示した亀裂検知ラベルセットを用いて台車に生じた亀裂を検知するためのシステムの一例を示す図である。
【
図6】
図5に示したシステムにおいて
図1に示した亀裂検知ラベルセットを用いて台車に生じた亀裂を検知する方法を説明するためのフローチャートである。
【
図7】
図1に示した検知ラベルの配線層にスリットを設けたことによる効果を説明するための図である。
【
図8】本発明の亀裂検知ラベルセットの他の実施の形態を示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)はRFラベル単体の上面図、(d)は検知ラベル単体の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の亀裂検知ラベルセットの実施の一形態を示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)はRFラベル20単体の上面図、(d)は検知ラベル10単体の上面図である。
【0020】
本形態は
図1に示すように、検知ラベル10とRFラベル20とが導電性接着層30によって貼着されて構成された亀裂検知ラベルセット1である。
【0021】
検知ラベル10は、本願発明の第1のラベルとなるものである。検知ラベル10は、金属配線層となるメアンダ状の配線層11の一方の面の全面に非導電性接着層12が積層されて構成されている。配線層11は、銅箔等から構成され、両端が接合部15となって接合部15間を結ぶように一定の幅を具備してメアンダ状に延びている。配線層11には、非導電性接着層12も含めて表裏貫通したスリット13a,13bが形成されている。スリット13a,13bは、スリット13aが配線層11の一方の側縁部を始点として延び、スリット13bが配線層11の他方の側縁部を始点として延び、それらの終点側の端部が互いに繋がらない状態で空隙14を介して対向するように形成されている。配線層11の接合部15には、非導電性接着層12が積層された面とは反対側の面に導電性接着層30が積層されており、この導電性接着層30によって検知ラベル10にRFラベル20が貼着されている。
【0022】
RFラベル20は、本願発明の第2のラベルとなるものである。RFラベル20は、フィルム等から構成されたベース基材21の一方の面に、非導電性材料からなる保護層27及びスペーサー40が積層されるとともに、保護層27及びスペーサー40を覆うように非導電性接着層28が積層されて構成されている。ベース基板21の保護層27との積層面には、2つの通信用のアンテナ23及び2本の補助配線24が銅箔等によって形成されているとともに、これらアンテナ23及び補助配線24に接続されたICチップ22が搭載されている。
【0023】
ICチップ22は、本願発明における検出手段となるものである。ICチップ22は、2つのアンテナ端子(不図示)と、2つの亀裂検知用端子(不図示)とが設けられており、これらアンテナ端子及び亀裂検知用端子が設けられた面が搭載面となって、ベース基材21の保護層27との積層面に搭載されている。ICチップ22のアンテナ端子はそれぞれ、アンテナ23に接続されており、ICチップ22の亀裂検知用端子は、2本の補助配線24のそれぞれの一方の端部に接続されている。補助配線24は、ICチップ22と接続された端部から延び、反対側の端部が接合部25となっている。ICチップ22は、アンテナ23を介した非接触通信によって得た電力による電流を、補助配線24を介して配線層11に流すことで配線層11及び補助配線24の抵抗値を検出し、その抵抗値に基づいて配線層11の導通状態を検出し、その検出結果をデジタル情報に変換してアンテナ23を介して非接触送信する。ICチップ22としては、例えば、NXP社のUCODE G2iM+が挙げられる。
【0024】
ベース基材21には、保護層27及び非導電性接着層28も含めて表裏貫通したスリット26a,26bが、一つの端辺からこれに対向する端辺に向かって補助配線24を避けて形成されている。
【0025】
保護層27は、フィルム等から構成され、ベース基材21のアンテナ23及び補助配線24が形成された面に、補助配線24の接合部25が表出するように積層されている。
【0026】
スペーサー40は、本願発明における非導電性部材となるものである。スペーサー40は、例えば、発泡性アクリル樹脂等のように柔らかい非金属の材料から構成され、保護層27のベース基材21との積層面とは反対側の面のうち、アンテナ23及びICチップ22に対向する領域に積層されることで、ベース基材21と非導電性接着層28との間に介在している。
【0027】
このように構成された検知ラベル10とRFラベル20とは、RFラベル20の補助配線24の接合部25が表出しているため、この接合部25と、配線層11の両端部となる接合部15とが、接合部15上に積層された導電性接着層30によって貼着され、それにより、補助配線24と配線層11とが電気的に接合した状態となっている。
【0028】
以下に、上記のように構成された亀裂検知ラベルセット1の使用方法及びその際の作用について説明する。
【0029】
図2は、
図1に示した亀裂検知ラベルセット1の被着体への貼着方法を説明するための側面図であり、
図3は、
図1に示した亀裂検知ラベルセット1の被着体への貼着方法を説明するための上面図である。
【0030】
図1に示した亀裂検知ラベルセット1は、亀裂を検知する被着体に貼着される前の状態においては、
図2(a)に示すように、検知ラベル10とRFラベル20とは導電性接着層30によって貼着されておらずに別体となっており、検知ラベル10の表裏に剥離紙16a,16bが剥離可能に貼着されているとともに、RFラベル20の裏面に剥離紙29が剥離可能に貼着されている。
【0031】
その状態から亀裂検知ラベルセット1を用いて被着体の亀裂を検知する場合は、まず、検知ラベル10の剥離紙16bを剥離し、
図2(b)及び
図3(a)に示すように、被着体となる台車2のうち亀裂の検知箇所となる検知エリア2aを、配線層11のスリット13a,13bが形成された領域が跨ぐように検知ラベル10を非導電性接着層12によって貼着する。この際、検知ラベル10は銅箔からなる配線層11を有しているが、配線層11の台車2との貼着面の全面に非導電性接着層12が積層されているため、台車2の検知ラベル1の貼着面が金属からなるものである場合や、塗膜が薄くなっている場合であっても、配線層11が台車2と導通してしまうことが回避される。
【0032】
次に、
図2(c)及び
図3(b)に示すように、台車2に貼着された検知ラベル10から剥離紙16aを剥離し、導電性接着層30を表出させる。
【0033】
次に、RFラベル20の剥離紙29を剥離し、
図2(d)及び
図3(c)に示すように、検知ラベル10における配線層11の接合部15と、RFラベル20における補助配線24の接合部25とが対向するように、台車2に貼着された検知ラベル10にRFラベル20を重ね合わせ、RFラベル20を非導電性接着層28によって台車2に貼着する。これにより、配線層11の接合部15と補助配線24の接合部25とが、配線層11の接合部15上に積層された導電性接着層30を介して貼着され、配線層11と補助配線24とが電気的に接合された状態となる。
【0034】
なお、上述したようにして亀裂検知ラベルセット1を台車2に貼着した後、台車2の亀裂検知ラベルセット1が貼着された領域に亀裂検知ラベルセット1を覆って保護用の塗料を塗布すれば、台車2を有する車両の走行時に亀裂検知ラベルセット1が台車2から剥離して段落してしまうことが回避されることになる。
【0035】
図4は、
図1に示した亀裂検知ラベルセット1が
図2及び
図3に示したように台車2に貼着された状態において検知エリア2aに亀裂が生じた際の作用を説明するための図である。
【0036】
図1に示した亀裂検知ラベルセット1が
図2及び
図3に示したように台車2に貼着された状態において検知エリア2aに亀裂が生じていない場合は、
図4(a)に示すように、配線層11は断線しておらず、配線層11が2つの接合部15間にて導通状態となっている。
【0037】
図1に示した亀裂検知ラベルセット1が
図2及び
図3に示したように台車2に貼着された状態において、
図4(b)に示すように、金属疲労や外部から加わる振動等によって台車2の検知エリア2aに亀裂2bが生じた場合、検知エリア2aに貼着された検知ラベル10には、亀裂2bを介して両側に引っ張られる力が加わる。すると、検知ラベル10の配線層11のうち検知エリア2aに対向する領域には、配線層11の一方の側縁部を始点として延びたスリット13aと、配線層11の他方の側縁部を始点として延びたスリット13bが、それらの終点側の端部が互いに繋がらない状態で空隙14を介して対向するように形成されているため、スリット13a,13bのそれぞれの終点側の端部から配線層11の空隙14の部分が亀裂2bに追従して非導電性接着層12とともに破断し、それにより、配線層11が2つの接合部15間にて断線して非導通状態となる。
【0038】
以下に、上述した作用を利用して台車2に生じた亀裂2bを検知する具体的な方法について説明する。
【0039】
図5は、
図1に示した亀裂検知ラベルセット1を用いて台車2に生じた亀裂2bを検知するためのシステムの一例を示す図である。
【0040】
図1に示した亀裂検知ラベルセット1を用いて台車2に生じた亀裂2bを検知するためのシステムとしては、
図5に示すように、亀裂検知ラベルセット1に対して非接触通信が可能な読取手段となるリーダライタ5と、リーダライタ5と有線または無線を介して接続された処理手段となる管理用パソコン6とを有するシステムが考えられる。なお、読取手段のみならず処理手段が内蔵されたハンディターミナルをリーダライタとして用いることも考えられ、その場合、管理用パソコンが不要となる。
【0041】
図6は、
図5に示したシステムにおいて
図1に示した亀裂検知ラベルセット1を用いて台車2に生じた亀裂2bを検知する方法を説明するためのフローチャートである。
【0042】
図1に示した亀裂検知ラベルセット1においては、リーダライタ5が亀裂検知ラベルセット1に近接され、リーダライタ5にて亀裂検知ラベルセット1が検出されると(ステップ1)、まず、リーダライタ5から、亀裂検知ラベルセット1に電力が供給されるとともに、配線層11の導通状態の検出及びその検出結果の送信をする旨の命令が亀裂検知ラベルセット1に対して送信される(ステップ2)。この際、保護層27のベース基材21との積層面とは反対側の面のうち、アンテナ23及びICチップ22と対向する領域に、非金属からなるスペーサー40が積層されているため、アンテナ23及びICチップ22と台車2との間隔をスペーサー40によって広げることができ、亀裂検知ラベルセット1が金属からなる台車2に貼着された場合でも、リーダライタ5にて亀裂検知ラベルセット1との間にて非接触通信を行う際に、台車2による影響が及びにくくすることができる。
【0043】
リーダライタ5から供給された電力が亀裂検知ラベルセット1にて得られるとともに、リーダライタ5から送信された命令が亀裂検知ラベルセット1を構成するRFラベル20のアンテナ23を介してICチップ22にて受信されると(ステップ3)、リーダライタ5から供給された電力によって補助配線24に電流が供給される。
【0044】
補助配線24には、上述したように導電性接着層30を介して検知ラベル10の配線層11が電気的に接合されているため、リーダライタ5から供給された電力によって補助配線24を介して配線層11に電流が供給される。
【0045】
ICチップ22においては、配線層11及び補助配線24の抵抗値が検出されることで、配線層11の導通状態が検出されることになる(ステップ4)。ここで、亀裂検知ラベルセット1が
図2及び
図3に示したように台車2に貼着され、台車2の検知エリア2aに亀裂が生じていない場合は、配線層11が破断していないことで配線層11の接合部15間が電気的に接続されて導通状態となっているため、ICチップ22においては、配線層11と補助配線24とからなる抵抗値が検出されることになる。
【0046】
ICチップ22においては、検出された抵抗値が、配線層11と補助配線24とからなる抵抗値である場合は、配線層11が導通状態にあると判断され、その判断結果が配線層11の導通状態の検出結果としてデジタル情報に変換されてアンテナ23を介してリーダライタ5に非接触送信される(ステップ5)。なお、配線層11が非導通状態となっている場合にICチップ22にて検出される抵抗値が、後述するようにほぼ無限大となることから、ICチップ22において、配線層11が導通状態にあると判断するための抵抗値として、配線層11と補助配線24とからなる抵抗値ではなく、一定の閾値以下のものを用いてもよい。
【0047】
一方、亀裂検知ラベルセット1が台車2に貼着され、
図4(b)に示したように台車2の検知エリア2aにて亀裂2bが生じている場合は、配線層11が破断することで、配線層11の2つの接合部15間が電気的に接続されていない状態となり、配線層11が非導通状態となっている。その状態においては、リーダライタ5から供給された電力によって配線層11に補助配線24を介して電流が供給されても、配線層11が非導通状態となっていることから配線層11には電流が流れず、それにより、ICチップ22において検出される抵抗値は、ほぼ無限大となる。
【0048】
ICチップ22においては、検出された抵抗値がほぼ無限大である場合は、配線層11が非導通状態になっている判断され、その判断結果が配線層11の導通状態の検出結果としてデジタル情報に変換されてアンテナ23を介してリーダライタ5に非接触送信される。なお、配線層11が非導通状態である場合にICチップ22にて検出される抵抗値がほぼ無限大となることから、ICチップ22において、配線層11が非導通状態であると判断するための抵抗値としてほぼ無限大ではなく、配線層11と補助配線24とからなる抵抗値よりも大きな一定の閾値以上のものを用いてもよい。
【0049】
このように、リーダライタ5においては、亀裂検知ラベルセット1にて検出された配線層11の導通状態を、アンテナ23を介して非接触送信させることになる。
【0050】
上記のようにして亀裂検知ラベルセット1からリーダライタ5に非接触送信された検出結果がリーダライタ5にて受信されると(ステップ6)、リーダライタ5にて受信された検出結果は管理用パソコン6に転送される(ステップ7)。
【0051】
リーダライタ5から転送されてきた検出結果が管理用パソコン6にて受信されると(ステップ8)、管理用パソコン6において、亀裂検知ラベルセット1からリーダライタ5に非接触送信され、管理用パソコン6に転送されてきた検出結果に基づいて、台車2の検知エリア2aに亀裂2bが生じているかが判断されることになる(ステップ9)。具体的には、リーダライタ5から管理用パソコン6に転送されてきた検出結果において、配線層11が導通状態である場合は台車2の検知エリア2aに亀裂2bが生じていないと判断され、配線層11が非導通状態である場合は台車2の検知エリア2aに亀裂2bが生じていると判断されることになる。
【0052】
このように構成された亀裂検知ラベルセット1は、例えば、鉄道車両の台車2において、台車2における亀裂検知に用いることができる。その場合、スペーサー40が発泡性アクリル樹脂等のように柔らかい材料から構成されていれば、鉄道車両が走行中に亀裂検知ラベルセット1が風で飛ばされたり振動で脱落したりした場合でも、亀裂検知ラベルセット1が人体等に当たることによる被害を小さくすることができる。
【0053】
このように本形態においては、台車2に亀裂が生じた場合に断線する配線層11を有する検知ラベル10と、配線層11の導通状態を非接触送信するアンテナ23及びICチップ22を有するRFラベル20とが別体として構成され、これらが導電性接着剤30を介して電気的に接合される構成としたため、亀裂の検知箇所の近傍に障害物が存在する場合でも、作業現場等においてその配置に応じた形状及び配線層11のパターンを有する検知ラベル10を用いれば、アンテナ23及びICチップ22を有するRFラベル20を、障害物によって通信や物理的な障害を受けない領域に貼着することができ、台車2に亀裂が生じたことを正確にかつ早期に検知することができる。また、亀裂の検知箇所における障害物等の配置に応じた形状及び配線層11のパターンを有する検知ラベル10を用意することで、亀裂の検知箇所における障害物等の配置がどのようなものであっても、RFラベル20は一種類のものとすることができ、それにより、リーダライタとの間における非接触通信の通信特性がばらついてしまって共振周波数等を調整する作業が発生しにくくなる。また、検知ラベル10とRFラベル20とが、検知ラベル10の配線層11に積層された導電性接着層30を介して電気的に接合される構成であるため、検知ラベル10とRFラベル20とを作業現場で容易に接合することができる。
【0054】
ここで、配線層11にスリット13a,13bを設けたことによる効果について説明する。
【0055】
図1に示した亀裂検知ラベルセット1においては、台車2に発生する微小な亀裂(例えば100μm幅)に追従して配線層11が断線するためには、配線層11が微小な変位や力で断線する必要がある。
【0056】
一方、配線層11として金属箔を使用する場合、金属箔は、ある程度の幅(例えば6mm)を持った箔でないと、例えば、
図1に示した配線層11のようにメアンダ状に箔加工をすることが困難である。また、箔の幅が狭すぎると、検知ラベル10を台車2に貼着する際のハンドリングも悪く現実的でない。しかし、箔の幅が広がるにつれて配線層11の剛性が増し、微小な変位や力で断線できなくなってしまう。
【0057】
図7は、
図1に示した検知ラベル10の配線層11にスリット13a,13bを設けたことによる効果を説明するための図である。
【0058】
ここで、50mmの長さの銅箔を用い、その幅を変えて銅箔が破断する際の亀裂幅を測定したところ、
図7(a)に示すように、銅箔の幅が1mmであっても、膜厚が35μm、18μmのいずれの場合でも、400μm以下の幅の亀裂では銅箔が破断することはなく、そのため、400μm以下の幅の亀裂を検知することはできない。銅箔の幅が6mmの場合においては、2mmを超える幅の亀裂でも破断せずに検知することができない。
【0059】
一方、
図1に示した検知ラベル10のように空隙14を介してスリット13a,13bを形成した場合、台車2に亀裂2bが生じると、スリット13a,13bをきっかけとしてそのそれぞれの終点側の端部から空隙14の部分が亀裂2bに追従して破断し、50mmの長さ、6mm幅の銅箔を用いた場合では、
図7(b)に示すように、膜厚が18μmのものにおいては、空隙14の幅が1mmであれば、100μm前後の微細な幅の亀裂2bに追従するように破断することになる。
【0060】
このように、
図1に示した検知ラベル10のように空隙14を介してスリット13a,13bを形成することで、台車2に亀裂2bが生じた場合、スリット13a,13bのそれぞれの終点側の端部から空隙14の部分が亀裂2bに追従して破断し、微細な幅の亀裂でも検知することができる。なお、
図1に示した検知ラベル10のように、配線層11において、スリット13aが配線層11の一方の側縁部を始点として延びるとともに、スリット13bが配線層11の他方の側縁部を始点として延び、それらの終点側の端部が互いに繋がらない状態で空隙14を介して対向するように形成されているものでなくても、配線層11及び非導電性接着層12に、一つの側縁部から他の側縁部に向かって延び、他の側縁部に達する前に終端するスリットが形成されていれば、上記同様の効果を得ることができる。なお、上記の効果を得るためには、
図1に示したもののようにスリット13a,13bが配線層11と非導電性接着層12との表裏を貫通している必要はなく、少なくとも配線層11の表裏を貫通していればよい。ただし、スリット13a,13bが配線層11と非導電性接着層12との表裏を貫通していれば、
図4(b)に示したように検知エリア2aに亀裂2bが生じた場合、検知ラベル10が亀裂2bに追従して破断しやすくなる。また、スリット13a,13bを非導電性接着層12に形成しない場合は、配線層11の破断に伴って非導電性接着層12も破断しやすくするために、非導電性接着層12の材料や厚みを適宜調整することが考えられる。
【0061】
なお、本形態においては、検知ラベル10の配線層11に導電性接着層30が積層されており、この導電性接着層30を介して検知ラベル10とRFラベル20とが電気的に接合される構成を例に挙げて説明したが、RFラベル20の補助配線24の接合部25に導電性接着層30を積層しておき、その導電性接着層30を介して検知ラベル10とRFラベル20とが電気的に接合される構成としてもよい。また、検知ラベル10とRFラベル20とを導電性接着層30を介して電気的に接合するのではなく、熱や超音波による溶着によってこれらを電気的に接合することも考えられる。ただし、検知ラベル10とRFラベル20とを導電性接着層30を介して電気的に接合することで、検知ラベル10及びRFラベル20のそれぞれの接合面を簡単に固定しつつ電気的に接合することができ、さらに、導電性接着層30を検知ラベル10及びRFラベル20の接合面のいずれかに予め形成しておくことで、検知ラベル10とRFラベル20とをより簡単に接合することが可能となる。
【0062】
また、本形態においては、配線層11として銅箔を用いるものを例に挙げて説明したが、配線層11としては、銅箔以外の金属箔を用いたものであってもよい。配線層11として金属箔を用いた場合、導電性インク等で配線層11を形成した場合と比較して膜厚が均一であることで、検知ラベル10の貼着対象が立体形状等の場合でも、検知性能が安定する。特に、台車1の検知エリア2aは、鉄板の溶接箇所周辺が主であり、その周辺はほとんど立体形状である場合が多いので、金属箔であることが好ましい。
【0063】
また、本形態においては、配線層11の接合部15に導電性接着層30が積層されているものを例に挙げて説明したが、配線層11の非導電性接着層12が積層された面とは反対側の面の全面に導電性接着層30を積層してもよい。ただ、その場合、台車2に生じた亀裂2bに追従して配線層11が破断しにくくなるとともに、台車2を有する車両の走行に伴って生じる鉄粉等のごみが付着しやすくなってしまう。
【0064】
また、本形態においては、配線層11がメアンダ状であるものを例に挙げて説明したが、配線層11は、検知ラベル10が台車2の検知エリア2aに貼着された場合に、配線層11の両端の接合部15間の領域が検知エリア2aを跨ぐようになる形状であればよい。ただし、配線層11が、配線層11の両端の接合部15間を結ぶ方向に交差する方向に往復する線状のものであれば、亀裂を検知可能な領域を増やすことができる。
【0065】
また、検知ラベル10とRFラベル20とを導電性接着層30によって貼着する際の作業性を容易にするために、RFラベル20の検知ラベル10と重なる領域に、検知ラベル10の外形を視認可能となるような切り欠きを設けたり、RFラベル20自体の形状を、RFラベル20を検知ラベル10に重ね合わせた際に検知ラベル10の外形が視認可能となるようなものとすることが考えられる。
【0066】
(他の実施の形態)
図8は、本発明の亀裂検知ラベルセットの他の実施の形態を示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)はRFラベル120単体の上面図、(d)は検知ラベル10単体の上面図である。
【0067】
本形態は
図8に示すように、
図1に示したものに対してRFラベル120の構成が異なる亀裂検知ラベルセット101である。本形態におけるRFラベル120においては、補助配線24の端部の接合部125が、複数の正方形の導電領域が上下左右に規則的に配置されて構成されている。それにより、検知ラベル10とRFラベル120とが導電性接着層30によって貼着される際にRFラベル120の導電性接着層30に対向する領域には、正方形の導電領域とベース基材21が露出した正方形の領域とが交互に配された市松模様が存在することになる。なお、正方形の導電領域は、互いに電気的に接続されており、それにより、全ての導電領域が補助配線24と電気的に接続されている。
【0068】
このように構成された亀裂検知ラベルセット101においては、検知ラベル10とRFラベル120とが導電性接着層30によって貼着された際、接合部125が設けられた領域内において、導電性接着層30が、接合部125による導電領域のみならず、露出したベース基材21にも対向することになるため、ベース基材21を、上述したようにフィルム等の樹脂材料から構成すれば、導電性接着層30による接合強度を向上させることができる。
【0069】
なお、接合部125の形状は、複数の正方形の導電領域が上下左右に規則的に配置されて構成されたものに限らず、接合部125が設けられた領域内において、導電性接着層30が、接合部125による導電領域のみならず、露出したベース基材21にも対向するものであれば、メッシュ状やストライプ状等であってもよい。ただし、複数の導電領域の全てが補助配線24と電気的に接続されている必要がある。
【符号の説明】
【0070】
1,101 亀裂検知ラベルセット
2 台車
2a 検知エリア
2b 亀裂
5 リーダライタ
6 管理用パソコン
10 検知ラベル
11 配線層
11a 断線部
12,28 非導電性接着層
13a,13b,26a,26b スリット
14 空隙
15,25,125 接合部
16a,16b,29 剥離紙
20,120 RFラベル
21 ベース基材
22 ICチップ
23 アンテナ
24 補助配線
27 保護層
30 導電性接着層
40 スペーサー