(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】部品供給装置および部品実装装置
(51)【国際特許分類】
H05K 13/02 20060101AFI20231221BHJP
H05K 13/04 20060101ALI20231221BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H05K13/02 E
H05K13/04 A
H01L21/52 F
(21)【出願番号】P 2020076840
(22)【出願日】2020-04-23
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 博之
(72)【発明者】
【氏名】中川 大和
【審査官】寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/208069(WO,A1)
【文献】特開2012-222010(JP,A)
【文献】特開平11-004098(JP,A)
【文献】特開平02-301197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/02
H05K 13/04
H01L 21/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品供給用のパレットを搬送する搬送部と、該搬送部により部品の供給位置に搬送された前記パレットを保持する保持部とを備える部品供給装置であって、
供給対象の前記パレットが、ウエハ部品がシートに貼着されたウエハパレットとトレイ部品がトレイに載置されたトレイパレットとのいずれであるかを判定する判定部と、
供給対象の前記パレットが前記トレイパレットであると判定された場合には、前記ウエハパレットであると判定された場合よりも、前記搬送部による搬送動作と前記保持部による保持動作とが低速で行われるように前記搬送部と前記保持部とを制御する制御部と、
を備える部品供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の部品供給装置であって、
前記搬送部は、把持用のアクチュエータの駆動により前記パレットの端部を把持する把持部を備え、前記パレットを把持した前記把持部を引出用のアクチュエータの駆動により前記供給位置に向けて引き出すように構成されており、
前記保持部は、クランプ用のアクチュエータの駆動により前記パレットをクランプして保持するように構成されており、
前記制御部は、前記トレイパレットであると判定された場合には、前記ウエハパレットであると判定された場合よりも、低速で駆動するように前記各アクチュエータを制御する
部品供給装置。
【請求項3】
請求項2に記載の部品供給装置であって、
前記搬送部は、前記把持用のアクチュエータが流体圧により駆動するシリンダであり、該シリンダが高速で駆動するように流体を供給する第1状態と低速で駆動するように流体を供給する第2状態とを切り替える把持用の切替部を備え、
前記保持部は、前記クランプ用のアクチュエータが流体圧により駆動するシリンダであり、該シリンダが高速で駆動するように流体を供給する第1状態と低速で駆動するように流体を供給する第2状態とを切り替えるクランプ用の切替部を備え、
前記制御部からの共通の切替信号により、前記把持用の切替部と前記クランプ用の切替部とが、前記第1状態と前記第2状態とを切り替えるように構成されている
部品供給装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の部品供給装置であって、
前記搬送部は、前記パレットの端部を把持する把持部を備え、前記把持部の高さを調整可能であると共に前記パレットを把持した前記把持部を前記供給位置に向けて引き出すように構成されており、
前記パレットの前記端部の高さ位置を検出するセンサを備え、
前記制御部は、前記センサにより検出された前記端部の高さ位置に基づいて前記把持部の高さを調整して把持するように前記搬送部を制御する
部品供給装置。
【請求項5】
請求項4に記載の部品供給装置と、
前記供給位置に供給された前記部品の上面に吸着部材を押し当てて、該吸着部材の吸着により前記部品を採取して基板に実装する実装部と、
を備え、
前記センサにより検出された前記端部の高さ位置に基づいて前記吸着部材の押し当て時の高さを調整する
部品実装装置。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の部品供給装置と、
前記供給位置で前記パレットから前記部品を採取して基板に実装する実装部と、
を備える部品実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、部品供給装置および部品実装装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の部品供給装置としては、複数のウエハ部品がウエハシートに貼着されたウエハパレットと、複数の部品がトレイに収容されたトレイパレットとを供給可能なものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、パレットの種類を判別してパレットを移動させ、ウエハパレットであればウエハシートを延伸してウエハ部品を突き上げ可能な状態でウエハパレットを保持し、トレイパレットであればトレイから部品を供給可能な状態でトレイパレットを保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した部品供給装置では、パレットの種類に応じてパレットを適切に保持することができるものの、パレットを移動させる際の動作速度については考慮されていない。このような部品供給装置では、生産効率を上げるために、できるだけ動作速度を高めて速やかに部品を供給することが求められる。しかしながら、トレイ内の部品は拘束されていないため、ウエハと同様に比較的速い動作速度で取り扱うと、トレイ内で部品が跳ねて姿勢不良が生じるおそれがあり、好ましくない。
【0005】
本開示は、ウエハパレットとトレイパレットとのそれぞれの供給動作を適切に行って効率よく部品を供給することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の部品供給装置は、
部品供給用のパレットを搬送する搬送部と、該搬送部により部品の供給位置に搬送された前記パレットを保持する保持部とを備える部品供給装置であって、
供給対象の前記パレットが、ウエハ部品がシートに貼着されたウエハパレットとトレイ部品がトレイに載置されたトレイパレットとのいずれであるかを判定する判定部と、
供給対象の前記パレットが前記トレイパレットであると判定された場合には、前記ウエハパレットであると判定された場合よりも、前記搬送部による搬送動作と前記保持部による保持動作とが低速で行われるように前記搬送部と前記保持部とを制御する制御部と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
本開示の部品供給装置は、供給対象のパレットがトレイパレットであると判定された場合には、ウエハパレットであると判定された場合よりも、搬送部による搬送動作と保持部による保持動作とが低速で行われるように制御する。これにより、トレイ部品が跳ねて姿勢不良となるのを抑えることができる。また、シートに貼着されるためにウエハ部品が跳ねるおそれのないウエハパレットは、供給動作を比較的高速で行うことになるから、速やかにウエハ部品を供給することができる。したがって、ウエハパレットとトレイパレットとのそれぞれの供給動作を適切に行って効率よく部品を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】部品実装システム10の構成の概略を示す斜視図。
【
図2】部品実装システム10の構成の概略を示す側面図。
【
図7】部品実装システム10の電気的な接続関係を示す説明図。
【
図8】パレット供給処理の一例を示すフローチャート。
【
図9】パレット部品実装処理の一例を示すフローチャート。
【
図10】トレイパレットTPの変形の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本開示を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、部品実装システム10の構成の概略を示す斜視図である。
図2は、部品実装システム10の構成の概略を示す側面図である。
図3は、ウエハパレットWPと把持部52の斜視図である。
図4は、トレイパレットTPの把持部52の斜視図である。
図5は、エア供給回路70の一例を示す回路図である。
図6は、保持装置60の構成の概略を示す構成図である。
図7は、部品実装システム10の電気的な接続関係を示す説明図である。なお、本実施形態において、
図1の左右方向がX軸方向であり、前後方向がY軸方向であり、上下方向がZ軸方向である。
【0011】
部品実装システム10は、基板Sに部品を実装する部品実装装置20と、システム全体を管理する管理装置80とを備える。
【0012】
部品実装装置20は、
図1,
図2,
図7に示すように、基板搬送装置22と、部品供給装置30と、ヘッド24と、移動装置26と、実装制御装置28とを備える。基板搬送装置22は、左右方向(X軸方向)に基板Sの搬入、固定および搬出を行うものである。基板搬送装置22は、前後方向(Y軸方向)に間隔を空けて設けられ左右方向に架け渡された1対のコンベアベルトにより、基板Sを搬送する。ヘッド24は、部品を採取して保持する1以上の吸着ノズル23が下面に取り外し可能に装着されており、吸着ノズル23を上下方向(Z軸方向)に移動させるZ軸アクチュエータ25(
図7参照)を備える。吸着ノズル23は、図示しない吸引ポンプと接続されており、部品の上面に押し当てられた状態で吸引ポンプからの負圧の作用で部品を吸着する。移動装置26は、ヘッド24が取り付けられたスライダをガイドレールに沿ってX軸方向とY軸方向とに移動させる。
【0013】
実装制御装置28は、周知のCPUやROM、RAMなどで構成されて管理装置80と通信可能に接続され、部品実装装置20の全体を制御する。実装制御装置28は、生産情報に基づいて基板搬送装置22やヘッド24、移動装置26などを制御する。
【0014】
部品供給装置30は、
図1,
図2,
図7に示すように、前方に扉32が取り付けられた本体31を備え、本体31の内部にマガジン34がセットされる。マガジン34は、詳細な図示は省略するが、前後方向に開放した直方体形状の筐体内に複数段のスロットが形成されており、各スロットにパレットPを前後方向に出し入れ可能となっている。本実施形態では、パレットPとして、
図3に示すウエハパレットWPと、
図4に示すトレイパレットTPとを使用可能である。ウエハパレットWPは、複数のウエハ部品Cwがシートに貼着されたウエハWが上面に固定されたものである。トレイパレットTPは、複数の収容部内にトレイ部品Ctが採取可能に収容されたトレイTが上面に固定されたものである。トレイパレットTPとウエハパレットWPは、若干厚みが異なったり形状が異なる箇所があるなど、構成の一部が異なる。トレイパレットTPのトレイ部品Ctは、ウエハパレットWPのウエハ部品Cwのようにシートに貼着されるものに比して、振動により跳ねて姿勢が変化しやすいものとなる。
【0015】
また、部品供給装置30は、昇降装置40と、搬送装置50と、保持装置60と、剥離装置65と、供給制御装置38とを備える。昇降装置40は、上下方向に延びる左右一対(図示省略)のボールネジ42と、ボールネジ42に取り付けられる保持台44と、ボールネジ42を回転させる昇降モータ46とを備える。昇降装置40は、昇降モータ46の駆動により左右一対のボールネジ42を同期をとりながら回転させることによって保持台44を上下方向に移動させてマガジン34を昇降させる。
【0016】
搬送装置50は、マガジン34内のパレットPを引き出して部品実装装置20の吸着ノズル23が吸着可能な部品供給位置まで搬送するものである。この搬送装置50は、把持部52と、昇降モータ55と、スライダ56と、移動モータ57と、スライドレール58とを備える。把持部52は、マガジン34内のパレットPの端部(後端部)を把持する一対の把持爪53と、把持爪53を上下方向に開閉動作させる把持シリンダ54とを備える。把持爪53は、
図3,
図4に示すように、パレットPの端部のうち幅方向(左右方向,X軸方向)における中央位置を把持するように構成されている。把持部52は、スライダ56に搭載されており、昇降モータ55によりスライダ56に対して上下方向に昇降して把持位置を調整可能に構成されている。スライダ56は、移動モータ57の回転軸に接続され前後方向に延びる図示しないボールネジの回転によって前後方向に移動可能に構成されている。スライドレール58は、左右方向にパレットPを搬送可能な間隔を空けて設けられ、前後方向に延びる1対のレールにより構成されている。搬送装置50は、パレットPの端部を把持した把持部52をスライダ56で後方に移動させることで、マガジン34内からパレットPを引き出してスライドレール58に沿って部品供給位置まで搬送する。
【0017】
保持装置60は、部品供給位置に搬送されたパレットPを保持するものであり、
図6,
図7に示すように、サイドクランプ61と、クランプシリンダ62とを備える。サイドクランプ61は、クランプシリンダ62の駆動により上下方向に昇降可能に構成されている。サイドクランプ61は、部品供給位置の近傍で左右一対のスライドレール58の上方に延在するように配置されており、クランプシリンダ62の駆動で下降することによりスライドレール58との間でパレットPを挟持することで、パレットPの左右方向の端部をクランプする。なお、
図6では、反りなどの変形のないトレイパレットTPを例示する。部品実装装置20は、このトレイパレットTPが保持装置60で保持された状態でトレイ部品Ctを吸着ノズル23で吸着する場合、トレイ部品Ctの厚みに応じた基準押し込み量D0で吸着ノズル23を下降させ、トレイ部品Ctの上面に押し当てて吸着を行う。
【0018】
剥離装置65は、詳細な図示は省略するが、上下方向に昇降可能な押し上げピンを備え、部品供給位置にあるウエハパレットWPの下方から押し上げピンを上昇させる。剥離装置65は、シートに貼着された複数のウエハ部品Cwのうち吸着ノズル23の吸着対象のウエハ部品Cwを押し上げピンで押し上げることにより、吸着対象のウエハ部品Cwをシートから剥離させる。
【0019】
ここで、搬送装置50の昇降モータ55や移動モータ57は、例えばサーボモータが用いられる。また、搬送装置50の把持シリンダ54と保持装置60のクランプシリンダ62は、例えばエアシリンダが用いられる。部品供給装置30は、把持シリンダ54とクランプシリンダ62にエアを供給するエア供給回路70を備える。エア供給回路70は、
図5に示すように、供給路70a~70dと、スピードコントローラ(SC)72a~72dと、切替バルブ74,76とを備える。
【0020】
供給路70a,70bは、図示しないエア供給源からのエアを把持シリンダ54に供給する流路であり、供給路70c,70dは、エア供給源からのエアをクランプシリンダ62に供給する流路である。スピードコントローラ72a~72dは、例えば可変オリフィスなどによりエアの流量を調整可能に構成され、それぞれ供給路70a~70dに設けられている。供給路70bに設けられたスピードコントローラ72bは、供給路70aに設けられたスピードコントローラ72aよりも、エアの流量を小さくするように設定されている。また、供給路70dに設けられたスピードコントローラ72dは、供給路70cに設けられたスピードコントローラ72cよりも、エアの流量を小さくするように設定されている。切替バルブ74は、供給路70aと把持シリンダ54とを接続して把持シリンダ54が比較的高速の標準速度で駆動可能な第1状態と、供給路70bと把持シリンダ54とを接続して把持シリンダ54が標準速度よりも遅い低速で駆動可能な第2状態とを切替可能に構成されている。切替バルブ76は、供給路70cとクランプシリンダ62とを接続してクランプシリンダ62が比較的高速の標準速度で駆動可能な第1状態と、供給路70dとクランプシリンダ62とを接続してクランプシリンダ62が標準速度よりも遅い低速で駆動可能な第2状態とを切替可能に構成されている。切替バルブ74,76は、供給制御装置38から送信される共通の切替信号により作動して、第1状態と第2状態とを切り替えるように構成されている。
【0021】
部品供給装置30は、この他に、マガジン34内の各スロットにおけるパレットPの有無の検出やパレットPの厚みや反りなどの測定をするためのパレットセンサ36などを備える。パレットセンサ36は、例えば、マガジン34に対して一方側(例えば、後方側)に発光素子と受光素子とが設けられ、発光素子からマガジン34に向けて発光し、パレットPの幅方向(X軸方向)の中央部で反射した反射光を受光素子で受光可能に構成されている。パレットセンサ36は、受光素子で受光した光量の変化からパレットPの幅方向の中央部における下端位置と上端位置とを検出することで、パレットPの有無の検出や厚みの測定が可能である。また、パレットセンサ36は、反りなどないパレットPが各スロットに収容されている際の基準位置に対する下端位置や上端位置の変位から、パレットPの反りなどを測定可能である。なお、パレットセンサ36が、マガジン34を挟んで一方側と他方側(前方側と後方側)に一対の発光素子と受光素子とが設けられていてもよい。
【0022】
供給制御装置38は、周知のCPUやROM、RAMなどで構成されて管理装置80と実装制御装置28とに通信可能に接続され、部品供給装置30の全体を制御する。この供給制御装置38は、マガジン34の各スロットに収容されている各パレットPが供給可能な部品の情報をRAMに記憶している。また、供給制御装置38は、管理装置80や実装制御装置28からの指示に基づいて昇降装置40や搬送装置50、保持装置60、剥離装置65などを制御したり、パレットセンサ36からの検出信号を入力したりする。
【0023】
管理装置80は、周知のCPUやROM、RAM、HDDなどで構成され、キーボードやマウスなどの入力デバイス82と、LCDなどのディスプレイ84とを備える。管理装置80は、基板Sの生産プログラムや実装する部品の情報などを含む生産情報を記憶している。基板Sの生産プログラムは、どの基板Sにどの部品を実装するか、また、そのように実装した基板Sを何枚作製するかなどを定めたプログラムをいう。管理装置80は、実装制御装置28と供給制御装置38とに通信可能に接続され、生産情報を送信する。
【0024】
以下は、こうして構成された部品実装システム10の動作の説明である。
図8はパレット供給処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、実装対象の部品を供給するためにパレットPを部品供給位置に移動させる際に供給制御装置38により実行される。この処理では、供給制御装置38は、まず、処理対象のパレットPをパレットセンサ36で検知してパレットPの厚みや反りを測定すると共に(S100)、パレットPの種類を識別する(S105)。なお、上述したようにトレイパレットTPとウエハパレットWPは構成の一部が異なるため、供給制御装置38は、パレットセンサ36による厚みの測定結果からパレットPの種類を識別可能である。次に、供給制御装置38は、識別したパレットPの種類がウエハパレットWPかトレイパレットTPかを判定する(S110)。
【0025】
供給制御装置38は、S110でウエハパレットWPであると判定すると、把持シリンダ54とクランプシリンダ62とをそれぞれ高速で駆動させるため、切替バルブ74,76をそれぞれ第1状態とする切替信号をエア供給回路70に出力する(S115)。これにより、把持シリンダ54とクランプシリンダ62とがそれぞれ高速の標準速度で駆動可能となる。次に、供給制御装置38は、把持部52の把持爪53がウエハパレットWPを高速で把持するように把持シリンダ54を制御し(S120)、把持部52を高速で移動させてウエハパレットWPをマガジン34内から引き出して搬送するように移動モータ57を制御する(S125)。ウエハパレットWPが部品供給位置まで搬送されると、供給制御装置38は、把持部52による把持を解除し、サイドクランプ61によりウエハパレットWPを高速でクランプするようにクランプシリンダ62を制御して(S130)、パレット供給処理を終了する。
【0026】
一方、供給制御装置38は、S110でウエハパレットWPでなくトレイパレットTPであると判定すると、把持シリンダ54とクランプシリンダ62とをそれぞれ低速で駆動させるため、切替バルブ74,76をそれぞれ第2状態とする切替信号をエア供給回路70に出力する(S135)。これにより、把持シリンダ54とクランプシリンダ62とが標準速度よりも低速で駆動可能となる。また、供給制御装置38は、S100の測定結果に基づいてパレットPを把持する高さ位置を調整するように昇降モータ55を制御する(S140)。S140では、供給制御装置38は、把持部52が把持する中心高さと、パレットPの端部の中心高さとが一致するように、把持部52の高さを昇降モータ55で調整する。これにより、把持部52がパレットPを把持する際に、パレットPの端部の中心高さとのずれによって、トレイパレットTPに与える衝撃を低減することができる。
【0027】
次に、供給制御装置38は、把持部52の把持爪53がトレイパレットTPを低速で把持するように把持シリンダ54を制御し(S145)、低速で把持部52を移動させてトレイパレットTPをマガジン34内から引き出して搬送するように移動モータ57を制御する(S150)。トレイパレットTPが部品供給位置まで搬送されると、供給制御装置38は、把持部52による把持を解除し、サイドクランプ61によりトレイパレットTPを低速でクランプするようにクランプシリンダ62を制御して(S155)、パレット供給処理を終了する。このように、供給制御装置38は、把持爪53がトレイパレットTPを把持する際の把持シリンダ54の駆動速度と、スライダ56がトレイパレットTPを搬送する際の移動モータ57の回転速度と、サイドクランプ61がトレイパレットTPをクランプする際のクランプシリンダ62の駆動速度をそれぞれ低速とする。このため、部品供給装置30は、トレイパレットTPに与える衝撃を低減することができるから、トレイT内のトレイ部品Ctが跳ねて姿勢不良となるのを抑えることができる。
【0028】
図9はパレット部品実装処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、パレットPが部品供給位置で保持されるなど実装の準備が整った状態で実装制御装置28により実行される。実装制御装置28は、まず、部品供給位置に搬送されたパレットPがウエハパレットWPであるか否かを判定する(S200)。実装制御装置28は、パレットPがウエハパレットWPであると判定すると、所定の押し込み量で吸着ノズル23を下降させてウエハ部品Cwを吸着するようにヘッド24(Z軸アクチュエータ25)を制御する(S205)。続いて、実装制御装置28は、吸着ノズル23に吸着したウエハ部品Cwを基板Sに実装するようにヘッド24と移動装置26とを制御する(S210)。なお、吸着ノズル23がウエハ部品Cwを吸着する際には、上述したように、剥離装置65の押し上げピンにより吸着対象のウエハ部品Cwが押し上げられる。所定の押し込み量は、押し上げられたウエハ部品Cwの上面に吸着ノズル23を押し当てることができるように定められている。そして、実装制御装置28は、ウエハパレットWPから実装すべき次のウエハ部品Cwがあるか否かを判定し(S215)、次のウエハ部品Cwがあると判定すると、S205に戻って処理を行い、次のウエハ部品Cwがないと判定すると、パレット部品実装処理を終了する。
【0029】
一方、実装制御装置28は、S200でパレットPがウエハパレットWPでなくトレイパレットTPであると判定すると、パレット供給処理のS100の測定結果に基づいて吸着ノズル23による押し込み量Dを補正する(S220)。ここで、上述したように、トレイパレットTPに反りが生じてなければ、基準押し込み量D0で吸着ノズル23を押し込むようにZ軸アクチュエータ25が制御される。しかし、トレイパレットTPに反りなどの変形が生じている場合がある。
【0030】
図10は、トレイパレットTPの変形の一例を示す説明図である。
図10では、トレイパレットTPが下側に凸状に反るように変形し、幅方向(左右方向)の中央部で変形量δが生じている場合を示す。部品供給装置30は、ウエハパレットWPとトレイパレットTPとを使用するために、剥離装置65による押し上げが可能に構成する必要があるから、保持装置60でトレイパレットTPの幅方向の端部を保持し、下面全体を支持することはない。このため、トレイパレットTPの反りの影響でトレイT内のトレイ部品Ctの高さも基準よりも下がるから、基準押し込み量D0で吸着ノズル23が押し込まれても、吸着不良が生じるおそれがある。そこで、実装制御装置28は、S220では、測定結果の変形量δに基づいて押し込み量Dが大きくなる方向に補正する。例えば、実装制御装置28は、測定位置からトレイ部品Ctの各吸着位置までの距離と、変形量δとに基づいて、各吸着位置における変形量を推定して押し込み量D即ち吸着時の吸着ノズル23の高さを補正する。
図10の例では、押し込み量D1,D2,D3の順に補正量が大きくなって大きな押し込み量となる。これにより、吸着ノズル23の押し込み不足による吸着不良を防止することができる。なお、トレイパレットTPが上側に凸状に反るように変形している場合、実装制御装置28は、測定結果の変形量δに基づいて押し込み量Dが小さくなる方向に補正する。これにより、吸着ノズル23の押し込み過ぎにより、トレイパレットTPの反発に伴うトレイ部品Ctの跳ねを抑えることができる。
【0031】
次に、実装制御装置28は、補正した押し込み量Dで吸着ノズル23を下降させてトレイ部品Ctを吸着するようにヘッド24(Z軸アクチュエータ25)を制御する(S225)。続いて、実装制御装置28は、吸着したトレイ部品Ctを基板Sに実装するようにヘッド24と移動装置26とを制御する(S230)。そして、実装制御装置28は、トレイパレットTPから実装すべき次のトレイ部品Ctがあるか否かを判定し、次のトレイ部品Ctがあると判定すると、S225に戻って処理を行い、次のトレイ部品Ctがないと判定すると、部品実装処理を終了する。
【0032】
ここで、本実施形態の構成要素と本開示の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の搬送装置50が搬送部に相当し、保持装置60が保持部に相当し、部品供給装置30が部品供給装置に相当し、パレット供給処理のS100,S110を実行する供給制御装置38が判定部に相当し、パレット供給処理のS115~S155を実行する供給制御装置38が制御部に相当する。把持シリンダ54が把持用のアクチュエータ(シリンダ)に相当し、移動モータ57が引出用のアクチュエータに相当し、クランプシリンダ62がクランプ用のアクチュエータ(シリンダ)に相当する。切替バルブ74が把持用の切替部に相当し、切替バルブ76がクランプ用の切替部に相当する。パレットセンサ36がセンサに相当する。吸着ノズル23が吸着部材に相当し、ヘッド24が実装部に相当し、部品実装装置20が部品実装装置に相当する。
【0033】
以上説明した実施形態の部品供給装置30は、パレットPがトレイパレットTPの場合には、ウエハパレットWPの場合よりも搬送動作と保持動作とを低速で行う。これにより、部品供給装置30は、トレイパレットTPに与える衝撃を低減して、トレイ部品Ctが跳ねて姿勢不良となるのを抑えることができる。また、ウエハパレットWPの場合には、搬送動作と保持動作とを比較的高速の標準速度で行うから、速やかにウエハ部品Cwを供給することができる。
【0034】
また、供給制御装置38からの共通の切替信号の送信により、切替バルブ74,76が把持シリンダ54とクランプシリンダ62の駆動速度をまとめて切り替えるから、簡易な回路構成で適切な供給動作を行うことができる。
【0035】
また、部品供給装置30は、パレットPの高さ位置に基づいて把持部52の高さを調整するから、パレットPの変形により端部の高さが変化してもパレットPを適切に把持して、トレイパレットTPに与える衝撃をより低減することができる。
【0036】
また、部品供給装置30は、パレットPの高さ位置に基づいて吸着ノズル23の押し込み量Dを調整するから、トレイパレットTPに変形が生じていてもトレイ部品Ctを吸着ノズル23に適切に吸着させることができる。
【0037】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0038】
例えば、上述した実施形態では、パレットPの高さ位置に基づいて吸着ノズル23の押し込み量Dを調整したが、これに限られず、押し込み量Dを調整しなくてもよい。
【0039】
上述した実施形態では、パレットPの高さ位置に基づいて把持部52の高さを調整したが、これに限られず、把持部52の高さを調整することなく一定の高さ位置で把持してもよい。このようにする場合、昇降モータ55を備えない構成としてもよい。
【0040】
上述した実施形態では、供給制御装置38から切替バルブ74,76へ共通の切替信号が送信されたが、これに限られず、別々の切替信号が送信されるものとしてもよい。
【0041】
上述した実施形態では、把持爪53がトレイパレットTPを把持する際の把持シリンダ54の駆動速度と、スライダ56がトレイパレットTPを搬送する際の移動モータ57の回転速度と、サイドクランプ61がトレイパレットTPをクランプする際のクランプシリンダ62の駆動速度をそれぞれ低速としたが、これに限られるものではない。例えば、把持シリンダ54の駆動速度と、移動モータ57の回転速度とのうちいずれか一方のみを低速としてもよい。また、把持シリンダ54やクランプシリンダ62をエアシリンダとし移動モータ57をサーボモータとしたが、これに限られず、エアシリンダや油圧シリンダ、各種モータなど如何なるアクチュエータを用いてもよい。また、マガジン34からパレットPを引き出したがパレットPを押し出してもよいし、パレットPの後端部を掴んだが、パレットPの左右いずれかの側端部を掴んでもよい。パレットPを部品供給位置まで搬送して保持する構成であれば、如何なる構成としてもよく、搬送時に把持するものと部品供給位置で保持するものを共通の構成などとしてもよい。
【0042】
上述した実施形態では、パレットセンサ36の検知によりパレットPの種類を判定したが、これに限られるものではない。例えば、パレットPに種類の情報を示す識別情報(コードなど)が付されており、その識別情報を読み出してパレットPの種類を判定してもよい。あるいは、供給制御装置38は、マガジン34にパレットPが挿入された際に、スロットの位置とパレットPの種類の情報とを対応付けてRAMなどに記憶しておき、記憶した情報に基づいてパレットPの種類を判定してもよい。
【0043】
上述した実施形態では、実装制御装置28と供給制御装置38とを別々の制御装置としたが、これに限られず、共通の制御装置としてもよい。
【0044】
ここで、本開示の部品供給装置は、以下のように構成してもよい。例えば、本開示の部品供給装置において、前記搬送部は、把持用のアクチュエータの駆動により前記パレットの端部を把持する把持部を備え、前記パレットを把持した前記把持部を引出用のアクチュエータの駆動により前記供給位置に向けて引き出すように構成されており、前記保持部は、クランプ用のアクチュエータの駆動により前記パレットをクランプして保持するように構成されており、前記制御部は、前記トレイパレットであると判定された場合には、前記ウエハパレットであると判定された場合よりも、低速で駆動するように前記各アクチュエータを制御するものとしてもよい。こうすれば、トレイパレットの把持や引き出し、クランプする際に、それぞれのアクチュエータの速度を抑えてより適切な供給動作を行うことができる。
【0045】
本開示の部品供給装置において、前記搬送部は、前記把持用のアクチュエータが流体圧により駆動するシリンダであり、該シリンダが高速で駆動するように流体を供給する第1状態と低速で駆動するように流体を供給する第2状態とを切り替える把持用の切替部を備え、前記保持部は、前記クランプ用のアクチュエータが流体圧により駆動するシリンダであり、該シリンダが高速で駆動するように流体を供給する第1状態と低速で駆動するように流体を供給する第2状態とを切り替えるクランプ用の切替部を備え、前記制御部からの共通の切替信号により、前記把持用の切替部と前記クランプ用の切替部とが、前記第1状態と前記第2状態とを切り替えるように構成されているものとしてもよい。こうすれば、簡易な回路構成で適切な供給動作を行うことができる。
【0046】
本開示の部品供給装置において、前記搬送部は、前記パレットの端部を把持する把持部を備え、前記把持部の高さを調整可能であると共に前記パレットを把持した前記把持部を前記供給位置に向けて引き出すように構成されており、前記パレットの前記端部の高さ位置を検出するセンサを備え、前記制御部は、前記センサにより検出された前記端部の高さ位置に基づいて前記把持部の高さを調整して把持するように前記搬送部を制御するものとしてもよい。こうすれば、パレットの反りなどの変形によりパレットの端部の高さが変化しても、それに応じた位置でパレットを把持することができる。このため、端部を把持する際に、トレイパレットに与える衝撃をより低減することができる。
【0047】
本開示の第1の部品実装装置は、上述した構成の部品供給装置と、前記供給位置に供給された前記部品の上面に吸着部材を押し当てて、該吸着部材の吸着により前記部品を採取して基板に実装する実装部と、を備え、前記センサにより検出された前記端部の高さ位置に基づいて前記吸着部材の押し当て時の高さを調整することを要旨とする。本開示の第1の部品実装装置は、パレットの反りなどの変形によりパレットの端部の高さが変化しても、センサにより検出された端部の高さ位置に基づいて吸着部材の押し当て時の高さを調整することができる。このため、吸着部材の押し込み不足による吸着不良や、吸着部材の押し込み過ぎによるトレイパレットの反発に伴う部品の跳ねを抑えることができる。
【0048】
本開示の第2の部品実装装置は、上述したいずれかの構成の部品供給装置と、前記供給位置で前記パレットから前記部品を採取して基板に実装する実装部と、を備えることを要旨とする。本開示の第2の部品実装装置は、上述したいずれかの構成の部品供給装置を備えるから、上述した部品供給装置と同様に、ウエハパレットとトレイパレットとのそれぞれの供給動作を適切に行って効率よく部品を供給する効果を奏するものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本開示は、部品供給装置や部品実装装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 部品実装システム、20 部品実装装置、22 基板搬送装置、23 吸着ノズル、24 ヘッド、25 Z軸アクチュエータ、26 移動装置、28 実装制御装置、30 部品供給装置、31 本体、32 扉、34 マガジン、36 パレットセンサ、38 供給制御装置、40 昇降装置、42 ボールネジ、44 保持台、46 昇降モータ、50 搬送装置、52 把持部、53 把持爪、54 把持シリンダ、55 昇降モータ、56 スライダ、57 移動モータ、58 スライドレール、60 保持装置、61 サイドクランプ、62 クランプシリンダ、65 剥離装置、70 エア供給回路、70a~70d 供給路、72a~72d スピードコントローラ(SC)、74,76 切替バルブ、80 管理装置、82 入力デバイス、84 ディスプレイ、Ct トレイ部品、Cw ウエハ部品、D0~D4 押し込み量、P パレット、S 基板、T トレイ、TP トレイパレット、W ウエハ、WP ウエハパレット。