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特許7407061コンテナにおける扉の開閉機構およびそれを備えるコンテナ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】コンテナにおける扉の開閉機構およびそれを備えるコンテナ
(51)【国際特許分類】
   B65D 88/12 20060101AFI20231221BHJP
   E06B 3/38 20060101ALI20231221BHJP
   E05F 17/00 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B65D88/12 X
E06B3/38
E05F17/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020079098
(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公開番号】P2021172400
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】519273315
【氏名又は名称】合同会社箱一
(73)【特許権者】
【識別番号】519225635
【氏名又は名称】株式会社ボクスティクス
(74)【代理人】
【識別番号】110002778
【氏名又は名称】弁理士法人IPシーガル
(72)【発明者】
【氏名】増永 路人
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特表平04-503203(JP,A)
【文献】中国実用新案第206502229(CN,U)
【文献】特開平10-053295(JP,A)
【文献】米国特許第05823630(US,A)
【文献】特開2011-173623(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0794488(KR,B1)
【文献】実開昭57-127781(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 88/12
B65D 88/54
B65D 90/54
E06B 3/38
E05F 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面壁、側面壁、底面壁により箱形に形成されてなるコンテナの、少なくとも1つの側面壁に形成された開口部を開放又は閉止するよう該開口部に設けられる開閉機構において、
前記開閉機構は、前記開口部を開放又は閉止するよう該開口部の上端又はその近傍に、上下方向に回動可能に支持される外扉と、前記外扉から内側へ所定距離空けた底面壁に上下方向に回動可能に支持される内扉と、を有し、
前記外扉は、前記開口部の外側を開放又は閉止するもので、その上端縁が、前記開口部の上端又はその近傍の側面壁に回動可能に支持され、かつ下端側が自由端部となるよう構成され、
前記内扉は、前記開口部の内側を開放又は閉止するもので、前記外扉が前記開口部を閉止している状態において、前記内扉が外方に回動すると、その上端縁が前記外扉の内面に当接する位置に設けられ、その下端縁が底面壁に回動可能に支持され、かつ上端側が自由端部となるよう構成され、
前記内扉よりも内側に、磁石を備える支持部材を突設することによって、前記支持部材が前記内扉の上端部を吸着して前記内扉を起立した状態で保持するよう構成されていること
を特徴とするコンテナにおける開閉機構。
【請求項2】
前記開口部は、
前記側面壁の下端部4分の1から9分の1を占めるように形成されていること
を特徴とする請求項に記載の開閉機構。
【請求項3】
前記開口部は、
その内側の開口寸法が前記コンテナの側面壁の下端部の7分の1から9分の1を占めるように形成され、
前記内扉は、
前記内扉と前記磁石との間で発生する磁力による吸着力と前記コンテナの内圧とに応じて前記支持部材に当接又は離間するよう構成され、
前記内扉と前記磁石とは、前記コンテナの内圧が300kgf未満である場合に前記内扉が前記支持部材に当接し、前記コンテナの内圧が300kgf以上となった際に前記内扉が前記支持部材から離間するように構成されていること
を特徴とする請求項に記載の開閉機構。
【請求項4】
前記内扉は、
前記内扉の、前記外扉の内面における当接位置と前記外扉の回動を支持する支持軸の中心との間の距離が、前記内扉の、前記外扉の内面における当接位置と前記外扉の下端縁との間の距離の2分の1以下になるよう構成されていること
を特徴とする請求項に記載の開閉機構。
【請求項5】
前記外扉は、
下記式
{(外扉の質量)×(重力加速度)}≧[{(内扉が支持される支持軸の位置と被搬送物の荷重による力がかかる位置との間の距離)×(外扉が支持される支持軸の位置と内扉から力が加えられる位置との間の距離)×(被搬送物の荷重によりかかる力)}/{(内扉が支持される支持軸の位置と外扉の内面と当接する位置との間の距離)×(外扉が支持される支持軸の位置と外扉の下端部との間の距離)}]×(被搬送物の荷重に基づき内扉に加えられる力)
を満たすように構成されていること
を特徴とする請求項に記載の開閉機構。
【請求項6】
前記開口部は、
後妻側の側面壁に形成されていること
を特徴とする請求項1~のいずれかに記載の開閉機構。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載の開閉機構を備えること
を特徴とするコンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンテナに関するものである。
より具体的には、被搬送物、特に粉粒体を、安全に積載・貯蔵することを可能にする扉の開閉機構及びそれを備えるコンテナに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ウッドペレットなどの粉粒体の搬送方法として、箱型のコンテナを利用したバルクコンテナによる搬送方法がある。
【0003】
このようなバルクコンテナによる搬送は、例えば、車両に搭載された箱型コンテナに内袋を設置し、この内袋に粉粒体を充填して行われ、粉粒体は、目的地に到着した後、箱型コンテナを、傾斜装置を有する積載台上に搭載し、上記箱型コンテナを傾斜させ、傾斜時に上記内袋の下端となる位置に設けられた粉粒体排出口より排出される。
【0004】
このようなコンテナの一例が、特許文献1に開示されている。
【0005】
例えば、実開昭63-131992号公報(特許文献1)においては、スムーズに貨物を排出させることができ、その排出の際に側方から貨物がこぼれるおそれがなく、また貨物の排出作業を安全に行うことができるバルクコンテナが提案されている。
【0006】
このバルクコンテナは、リアパネルの下方に下端を回動自在に止着した開閉扉を設け、
該開閉扉の上方にウインチで巻取自在のワイヤーの端部を固定し、
上記開閉扉の側部とこれに対応する開口部の側部との間に貨物のこぼれ防止用キャンバスを設け、
さらに下端が床部の開閉扉側に回動自在に止着されて上記開閉扉を水平に開いたときに該開閉扉の内側面と床面とを掛け渡す案内板を設けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実開昭63-131992号公報(実用新案登録請求の範囲,図1~3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1に記載されたバルクコンテナなどの粉粒体の搬送用の箱型コンテナでは、充填された被搬送物としての粉粒体は、常に開閉扉に当接し、その荷重に基づく押圧力で開閉扉を押圧するため、特に開閉扉の閉鎖のロックを行うことを忘れた場合において、開閉扉の自由端部から粉粒体が漏れ出すおそれがある、という問題があった。
したがって、安全性の面において、さらなる改善が求められる。
【0009】
この発明はかかる現状に鑑み、被搬送物、特に粉粒体を、コンテナの扉(開閉扉)から漏れることがないか又は極めて高い確率で抑制して、安全に積載・貯蔵することを可能にする扉の開閉機構及びそれを備えるコンテナを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の請求項1に記載の発明は、
上面壁、側面壁、底面壁により箱形に形成されてなるコンテナの、少なくとも1つの側面壁に形成された開口部を開放又は閉止するよう該開口部に設けられる開閉機構において、
前記開閉機構は、前記開口部を開放又は閉止するよう該開口部の上端又はその近傍に、上下方向に回動可能に支持される外扉と、前記外扉から内側へ所定距離空けた底面壁に上下方向に回動可能に支持される内扉と、を有し、
前記外扉は、前記開口部の外側を開放又は閉止するもので、その上端縁が、前記開口部の上端又はその近傍の側面壁に回動可能に支持され、かつ下端側が自由端部となるよう構成され、
前記内扉は、前記開口部の内側を開放又は閉止するもので、前記外扉が前記開口部を閉止している状態において、前記内扉が外方に回動すると、その上端縁が前記外扉の内面に当接する位置に設けられ、その下端縁が底面壁に回動可能に支持され、かつ上端側が自由端部となるよう構成され、
前記内扉よりも内側に、磁石を備える支持部材を突設することによって、前記支持部材が前記内扉の上端部を吸着して前記内扉を起立した状態で保持するよう構成されていること
を特徴とするコンテナにおける開閉機構である。
【0011】
この発明の請求項2に記載の発明は、
請求項に記載の開閉機構において、
前記開口部は、
前記側面壁の下端部4分の1から9分の1を占めるように形成されていること
を特徴とするものである。
【0012】
この発明の請求項3に記載の発明は、
請求項に記載の開閉機構において、
前記開口部は、
その内側の開口寸法が前記コンテナの側面壁の下端部の7分の1から9分の1を占めるように形成され、
前記内扉は、
前記内扉と前記磁石との間で発生する磁力による吸着力と前記コンテナの内圧とに応じて前記支持部材に当接又は離間するよう構成され、
前記内扉と前記磁石とは、前記コンテナの内圧が300kgf未満である場合に前記内扉が前記支持部材に当接し、前記コンテナの内圧が300kgf以上となった際に前記内扉が前記支持部材から離間するように構成されていること
を特徴とするものである。
【0013】
この発明の請求項4に記載の発明は、
請求項に記載の開閉機構において、
前記内扉は、
前記内扉の、前記外扉の内面における当接位置と前記外扉の回動を支持する支持軸の中心との間の距離が、前記内扉の、前記外扉の内面における当接位置と前記外扉の下端縁との間の距離の2分の1以下になるよう構成されていること
を特徴とするものである。
【0014】
この発明の請求項5に記載の発明は、
請求項に記載の開閉機構において、
前記外扉は、
下記式を満たすように構成されていること
を特徴とするものである。
【0015】
{(外扉の質量)×(重力加速度)}≧[{(内扉が支持される支持軸の位置と被搬送物の荷重による力がかかる位置との間の距離)×(外扉が支持される支持軸の位置と内扉から力が加えられる位置との間の距離)×(被搬送物の荷重によりかかる力)}/{(内扉が支持される支持軸の位置と外扉の内面と当接する位置との間の距離)×(外扉が支持される支持軸の位置と外扉の下端部との間の距離)}]×(被搬送物の荷重に基づき内扉に加えられる力)
【0016】
この発明の請求項6に記載の発明は、
請求項1~のいずれかに記載の開閉機構において、
前記開口部は、
後妻側の側面壁に形成されていること
を特徴とするものである。
【0017】
この発明の請求項7に記載の発明は、
請求項1~のいずれかに記載の開閉機構を備えること
を特徴とするコンテナである。
【発明の効果】
【0018】
この発明にかかる開閉機構は、上面壁、側面壁、底面壁により箱形に形成されてなるコンテナの、少なくとも1つの側面壁に形成された開口部を開放又は閉止するよう該開口部に設けられるものであって、前記開口部を開放又は閉止するよう該開口部の上端又はその近傍に、上下方向に回動可能に支持される外扉と、前記外扉から内側へ所定距離空けた底面壁に上下方向に回動可能に支持される内扉と、を有するもので、前記内扉を、前記外扉が前記開口部を閉止している状態において、前記内扉が外方に回動すると、その上端縁が前記外扉の内面に当接する位置に設けられるよう構成したものである。
したがって、この開閉機構によれば、コンテナ内に充填された被搬送物は、前記内扉に当接し、その荷重に基づく押圧力で前記内扉を押圧するが、前記外扉に当接することがなく、前記外扉が押圧されることもないので、前記外扉の自由端部から被搬送物が漏れることがないか又は極めて高い確率で抑制される。
よって、この開閉機構を備えるコンテナによれば、被搬送物を、安全に積載・貯蔵することが可能となる。
この効果は、被搬送物が粉粒体である場合において顕著である。
【0019】
前記開閉機構において、前記外扉を、前記開口部の外側を開放又は閉止するため、その上端縁が前記開口部の上端又はその近傍の側面壁に回動可能に支持され、かつ下端側が自由端部となるよう構成するとともに、前記内扉を、前記開口部の内側を開放又は閉止するため、その下端縁が底面壁に回動可能に支持され、かつ上端側が自由端部となるよう構成し、前記内扉よりも内側に、磁石を備える支持部材を突設することによって、前記支持部材が前記内扉の上端部を吸着して前記内扉を起立した状態で保持するよう構成することができる。
【0020】
なお、この発明において、前記外扉は、前記開口部の外側を開放又は閉止するもので、その上端縁が、前記開口部の上端又はその近傍の側面壁に回動可能に支持され、かつ下端側が自由端部となるよう構成され、前記内扉は、前記開口部の内側を開放又は閉止するもので、前記外扉が前記開口部を閉止している状態において、前記内扉が外方に回動すると、その上端縁が前記外扉の内面に当接する位置に設けられ、その下端縁が底面壁に回動可能に支持され、かつ上端側が自由端部となるよう構成され、前記内扉よりも内側に、磁石を備える支持部材を突設することによって、前記支持部材が前記内扉の上端部を吸着して前記内扉を起立した状態で保持するよう構成されている。
【0021】
なお、前記開口部については、前記コンテナの側面壁、好ましくは後妻側の側面壁の下端部に、より好ましくは、該側面壁の下端部4分の1から9分の1を占めるように形成することができる。
このような構成によって、被搬送物の搬出を、より容易に行うことが可能となる。
【0022】
前記開閉機構において、前記開口部を、その内側の開口寸法が前記コンテナの側面壁の下端部の7分の1から9分の1を占めるように形成し、前記内扉を、その縦幅が前記コンテナの縦幅の7分の1から9分の1になるよう構成するとともに、前記内扉と前記磁石との間で発生する磁力による吸着力と前記コンテナの内圧とに応じて前記支持部材に当接又は離間するよう構成し、前記内扉と前記磁石とを、前記コンテナの内圧が300kgf未満である場合に前記内扉が前記支持部材に当接し、前記コンテナの内圧が300kgf以上となった際に前記内扉が前記支持部材から離間するように構成することができる。
このような構成によって、前記コンテナを傾斜させて所定の角度にするだけで、前記開口部を開放することが可能となる。
【0023】
さらに、前記開閉機構において、前記内扉を、前記内扉の、前記外扉の内面における当接位置と前記外扉の回動を支持する支持軸の中心との間の距離が、前記内扉の、前記外扉の内面における当接位置と前記外扉の下端縁との間の距離の2分の1以下になるよう構成することができる。
このような構成によって、被搬送物の荷重に基づく押圧力は、前記外扉の下端部においては、本来伝えられる力よりも小さい力として、より確実に伝えられる。
したがって、開閉扉としての外扉の閉鎖のロックが容易となるので、積載・貯蔵された被搬送物を、容易かつ安全に排出することが可能となる。
【0024】
その際、前記外扉を、下記式を満たすように構成することができる。
このような構成によって、前記外扉の閉鎖のロックを、ロック手段を使用することなく、簡単かつ強固に行うことができる。
しかも、コンテナの、開閉扉に対向する側(後妻側の側面壁に開口部が形成されている場合には前妻側)を持ち上げて傾ける操作を行うだけで、前記外扉の閉鎖のロック解除と前記開口部の開放を行うことができるので、前記外扉の閉鎖のロック解除と前記開口部の開放を、極めて安全に行うことが可能となる。
【0025】
{(外扉の質量)×(重力加速度)}≧[{(内扉が支持される支持軸の位置と被搬送物の荷重による力がかかる位置との間の距離)×(外扉が支持される支持軸の位置と内扉から力が加えられる位置との間の距離)×(被搬送物の荷重によりかかる力)}/{(内扉が支持される支持軸の位置と外扉の内面と当接する位置との間の距離)×(外扉が支持される支持軸の位置と外扉の下端部との間の距離)}]×(被搬送物の荷重に基づき内扉に加えられる力)
【0026】
なお、前記開閉機構は、上面壁、側面壁、底面壁により箱形に形成されてなるコンテナの、少なくとも1つの側面壁に形成された開口部に設けることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】この発明にかかる開閉機構の一例として、コンテナの後妻側の側面壁に形成された開口部に設けられる開閉機構の例を示す正面図である。
図2図1のA-A’断面図である
図3】この発明にかかる開閉機構の要部の一例を示す説明図である。
図4図3に示す開閉機構のメカニズムを示す説明図であって、(A)は、コンテナが水平面に静置され、その開口部が内扉と外扉によって閉止されている状態を示すもので、(B)は、前記コンテナの内部に被搬送物が充填されている状態を示すもので、(C)は、前記コンテナが、その前妻側を上昇させて、角度10°程度で傾斜した状態にある場合を示すもので、(D)は、前妻側をさらに上昇させて、角度20°程度で傾斜した状態にある場合を示すもので、(E)は、前妻側をさらに上昇させて、角度30°程度で傾斜させ、被搬送物を完全に排出した状態を示すものである。
図5】この発明にかかるロック機構の要部の一例を示す説明図である。
図6】この発明にかかる開閉機構に設けられるロック機構のメカニズムを示す説明図であって、(A)は、被搬送物が充填されていないコンテナが水平面に静置され、かつ開口部が内扉と外扉によって閉止されている状態を示すもので、(B)は、コンテナの内部に被搬送物が充填されたことにより内扉が外方へ回動し、開口部を閉止している外扉の内面に当接した状態を示すもので、(C)は、前記コンテナが、その前妻側を上昇させて、角度10°程度で傾斜した状態にある場合を示すもので、(D)は、前妻側をさらに上昇させて、角度15°程度で傾斜した状態にある場合を示すもので、(E)は、前妻側をさらに上昇させて、角度20°程度で傾斜した状態にある場合を示すもので、(F)は、前妻側をさらに上昇させて、角度25°~30°程度で傾斜させ、被搬送物を完全に排出した状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、この発明にかかるコンテナの実施の一例を、添付の図面に基づいて具体的に説明する。
なお、この発明は開示された実施例にのみ限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内において種々改良することができるものである。
【0029】
図1は、この発明にかかるコンテナ1の後妻側の正面図である。
前記コンテナ1を構成するコンテナ主体2は、特に図示しないが、上面壁3と長手側の一対の側面壁4,5と、短手側の一対の側面壁(前妻側の側面壁(図示せず)と後妻側の側面壁6)と、底面壁7とで、細長形の箱形に形成されてなるもので、国際海上コンテナの基準であるISO(国際標準化機構)やCSC(コンテナの安全に関する国際条約)に適合するように構成されている。
このコンテナ1が車両に搭載される場合には、前記コンテナ主体2の後妻側は、後部側に位置される。
【0030】
前記コンテナ主体2の後妻側の側面壁6には、図1に示すように、所要の大きさ(開口寸法)を有する開口部6aが設けられ、その開口部6aを開放又は閉止することができる開閉機構8が設けられている。
【0031】
前記開閉機構8は、図1及び2に示すように、前記開口部6aの出口側(外側)を開放又は閉止するため外側に向かって上下方向に回動するように設けられる外扉81と、この外扉81の内側に所定の間隔を存して配置され、かつ前記開口部6aの入口側(内側)を開放又は閉止するため外側に向かって上下方向に回動するように設けられる内扉82と、で構成されている。
なお、この実施例において、前記開閉機構8を構成する外扉81と内扉82は、いずれも使用時の強度保持や質量などの観点から金属材料で構成されているが、この発明の効果を損なわない限りにおいて、適当な材質を選択することができる。
【0032】
前記外扉81は、図1に示すように、平面視矩形状の板状体で構成されたもので、図2に示すように、その短手方向の一端側(図1~3において、上端縁)が前記開口部6aの出口側の上端又はその近傍の側面壁6に、側面視逆L字状のヒンジ(第1のヒンジ)81aを介して回動可能に支持され、他端側(図1~3において、下端側)が自由端部となるよう構成されている。
なお、符号81bは、ヒンジ81aの回動中心となる支持軸(第1の支持軸)である。
【0033】
図1及び2において、前記外扉81には、不用意に開放されることがないよう、この外扉81の閉鎖をロックするロック手段9が配設されている。
図1において、ロック手段9は、外扉81の近傍の側面壁4,5の間に延びて外扉81の閉鎖をロックする棒状のロッキングロッド9aと、このロッキングロッド9aに取付けられてロッキングロッド9の回動を操作することにより外扉81のロックとロック解除を行う操作ハンドル9bとから構成されたものである。
【0034】
なお、前記外扉81の周囲には、気密性を保つためパッキン10などが配設されている。
【0035】
前記内扉82は、前記外扉81よりも内側に、所定の距離を空けて配設されたもので、平面視矩形状の板状体で構成され、その短手方向の一端側(図2及び3において、下端縁)が底面壁7に、側面視く字状のヒンジ(第2のヒンジ)(図示せず)を介して回動可能に支持され、他端側(図1~3において、上端側)が自由端部となるよう構成されている。
したがって、コンテナ1内に充填された被搬送物は、前記内扉82に当接し、その荷重に基づく押圧力で前記内扉82を押圧するが、前記外扉81に当接することがなく、前記外扉81が押圧されることもないので、前記外扉81の閉鎖のロックをし忘れた場合であっても、前記外扉81の自由端部(図1~3において、下端側)から被搬送物が漏れることがないか又は極めて高い確率で抑制される。
なお、符号82aは、ヒンジ(第2のヒンジ)の回動中心となる支持軸(第2の支持軸)である。
【0036】
前記開口部6aの大きさ(開口寸法)については、コンテナの大きさなどに応じて適宜選択すればよく、特段の制限はないが、好ましくは、前記開口部6aは、これが形成される側面壁の下端部の4分の1から9分の1程度を占めるように形成される。
したがって、前記外扉81と内扉82については、前記開口部6aに対応する大きさになるよう構成すればよい。
【0037】
図2及び3において、前記開口部6aは、その出口側(外側)が前記側面壁6の外側下端部の4分の1から5分の1程度を占める一方、入口側(内側)が前記側面壁6の内側下端部の7分の1から9分の1程度を占めるように形成されている。
このような構成によれば、前記内扉82は、その縦幅(図2及び3において、上下方向の幅)が前記コンテナの縦幅の7分の1から9分の1になるよう構成されているので、被搬送物の排出が完了した後に、前記内扉82を垂直に起立した状態に戻すことが極めて容易となる。
例えば、前記コンテナ1の高さが2600cm程度の場合において、前記内扉82の縦幅を、300~400cm程度にすることができる。
【0038】
図3において、前記開口部6aの、前記内扉82よりも内側の上端には、前記内扉82と当接して該内扉82の内方への回動を規制し、前記内扉82を、底面壁7に対して(図3において垂直に)起立した状態に保持するための支持部材6bが突設されている。
前記支持部材6bは、磁石Mを介して内扉82と当接するように構成され、図3に示すように、少なくとも前記内扉82と当接する面において、磁石Mを備えている。
一方、前記内扉82は、その少なくとも前記磁石Mが当接する部分が、前記内扉82と前記磁石Mとの間で発生する磁力によって前記支持部材6bに吸着されるよう磁性材料で構成されている。
したがって、前記支持部材6bは、前記内扉82の閉時には、磁石Mが、その磁力で前記内扉82を吸着するので、被搬送物が投入された状態であっても、前記内扉82を引き寄せて起立した状態で保持することができる。
なお、前記内扉82と前記磁石Mのそれぞれの当接面は、剛性ないし保持力の観点から、いずれも平滑面になるよう構成されている。
【0039】
前記磁石については、着磁されることにより磁性体を引き付ける性質を有するものを選択すればよく、特段の制限はない。
前記磁石として、例えば、ネオジウム磁石を選択することができる。
【0040】
図2及び3において、前記内扉82は、前記内扉82と前記磁石Mとの間で発生する磁力による吸着力と前記コンテナ1の内圧とに応じて、前記支持部材6bに当接又は離間するよう構成されている。
このような構成によれば、コンテナ1が静置され、かつ内扉82によって開口部6aが閉止されている状態で、コンテナ1内に被搬送物が充填されている場合には、コンテナ1の内部の圧力(内圧)は所定の値に維持されているので、前記磁石Mを、コンテナ1の内圧が前記内圧にあるときには、その磁力によって前記内扉82を吸着する一方、コンテナ1の内圧が前記内圧よりも高くなったときには、前記内扉82が前記支持部材6bから離間するよう構成すれば、前記内扉82は前記支持部材6bに当接する。
一方、コンテナ1を傾斜させて所定の角度(例えば30°程度)に達したときには、前記コンテナ1の内圧が上昇するので、前記内扉82が前記支持部材6bから離間し、その後のコンテナ1の更なる傾斜により外扉81も外側に回動して、前記開口部6aが開放される。
例えば、前記内扉82と前記磁石Mとを、前記コンテナ1の内圧が300kgf未満である場合に前記内扉82が前記支持部材6bに当接し、前記コンテナ1の内圧が300kgf以上となった際に前記内扉82が前記支持部材6bから離間するように構成することができる。
なお、前記内扉82を、前記内扉82と前記磁石Mとの間で発生する磁力による吸着力と被搬送物の荷重に基づく押圧力とに応じて、前記支持部材6bに当接又は離間するよう構成してもよい。
さらに、前記磁石Mについては、この発明の効果を損なわない限りにおいて、前記支持部材6bに対して、1又は複数配設することができる。
【0041】
かかる開閉機構8による動作の一例を、具体的に説明する。
【0042】
図4(A)において、コンテナ1は、その側面壁6に形成される開口部6aが、その出口側(外側)が側面壁6の外側下端部の4分の1から5分の1程度を占める一方、入口側(内側)が側面壁6の内側下端部の7分の1から9分の1程度を占めるように構成されている。
また、コンテナ1は、水平面に静置され、その開口部6aの外側が外扉81によって、内側が内扉82によって、それぞれ閉止されている状態にある。
なお、外扉81の閉鎖は、ロック手段9によってロックされている。
【0043】
図4(A)に示すように、開口部6aにおいて、内扉82よりも内側の上端には、支持部材6bが内方に向かって突設されている。
より具体的には、図4(A)において、前記支持部材6bは、側面視L字状の板状体からなるもので、下方に向かって突設されている。
内扉82は、支持部材6bによって、内方への回動が規制されるとともに、底面壁7に対して垂直に起立した状態で保持されている。
支持部材6bは、図4(A)に示すように、磁石Mを介して内扉82と当接するように構成されている、すなわち内扉82と当接する側に磁石Mを備えている。
【0044】
図4(B)において、コンテナ1は、ロック手段9のロックが解除され、その内部に被搬送物(図示せず)が充填され、その内部が所定の圧力に維持された状態にある。
なお、この実施例において、前記内圧は300kgf未満に設定されている。
磁石Mは、コンテナ1の内圧が前記圧力である場合には、内扉82を吸着し、コンテナ1の内圧が前記圧力よりも高くなった場合には、内扉82が離間するような磁力を有するよう構成されている。
したがって、図4(B)に示すように、コンテナ1が静置され、かつ内扉82によって開口部6aが閉止されている状態で、コンテナ1内に被搬送物が充填されているときには、内扉82と支持部材6bとが、内扉82と磁石Mとの間に働く磁力により当接し、内扉82は、起立した状態で開口部6aを閉止する。前記圧力で維持されている限り、その磁力によって内扉82を吸着するよう構成されている。
【0045】
図4(C)に示すように、コンテナ1を、開閉扉に対向する側(この実施例において前妻側)を上昇させることにより傾斜させていくと、コンテナ1の内圧が徐々に高くなっていく。
【0046】
さらにコンテナ1を傾斜させていき、コンテナ1の内圧が300kgf以上になると、図4(D)に示すように、内扉82は支持部材6bから離間して外扉81に当接する。
【0047】
この状態から、さらにコンテナ1を傾斜させると、被搬送物の荷重に基づく押圧力が内扉82を介して外扉81に伝えられると共に、コンテナ1の内圧がさらに高くなるので、図4(E)に示すように、外扉81が外側に回動し、その結果、開口部6aが開放され、被搬送物が排出される。
【0048】
前記内扉82については、図5に示すように、前記開口部6aが前記外扉81によって閉止されている状態にある場合において、外側に回動(傾倒)したときに、その上端縁(当接部82b)が前記外扉81の内面に当接するよう構成することができる。
前記当接の位置については、前記第1の支持軸81bの軸心と前記当接位置との間の距離が、前記外扉81の下端縁と前記当接位置との間の距離よりも小さくなるような位置にすることができるが、より好ましくは前記支持軸81bの軸心と前記当接位置との間の距離が、前記外扉81の下端縁と前記当接位置との間の距離の2分の1以下になるような位置が選択される。
このような構成によって、被搬送物の荷重に基づく押圧力が、外扉81の下端部(作用点)において、より小さい力として伝えられるようにすることが可能となるので、外扉の閉鎖のロックが容易になる。
すなわち、外扉の閉鎖のロックの支援が達成される。
この実施例において、前記内扉82は、外側に約10°回動(傾倒)したときに、その上端縁が前記外扉81の内面の上端近傍に当接するよう配設されている。
【0049】
かかる構成のロック機構のメカニズムについて以下に説明する。
【0050】
前記内扉82においては、該内扉82が支持される第2支持軸82a(具体的には、その軸心)が支点、被搬送物の荷重による力がかかる位置が力点、外扉81の内面と当接する位置(当接部82b)が作用点として機能する。
【0051】
この発明において、支点は、力点と作用点の外側かつ力点に近い位置にあるので、力点に加えられた小さな運動は、作用点において大きな運動となる。
したがって、作用点において、力点に加えられた被搬送物の荷重に基づく押圧力は、梃子の原理で減少し、これよりも小さい力として伝えられる。
具体的には、支点と力点の間の距離をd1、支点と作用点の間の距離をD1、力点に加えられた被搬送物の荷重に基づく押圧力をf1、作用点において伝えられる力をF1とすると、d1×f1=D1×F1(d1<D1)という関係が成立する。
【0052】
一方、前記外扉81においては、前記開口部6aの上端又はその近傍に配設され、かつ前記外扉81が支持される第1支持軸81a(具体的には、その軸心)が支点、前記内扉82から力が加えられる位置(外扉81の内面における前記内扉82との当接位置)が力点、前記外扉81の下端部が作用点として機能する。
【0053】
この発明において、支点は、力点と作用点の外側かつ力点に近い位置にあるので、力点に加えられた小さな運動は、作用点において大きな運動となる。
したがって、作用点において、力点に加えられた前記内扉82から伝えられた力は、梃子の原理で減少し、これよりも小さい力として伝えられる。
すなわち、被搬送物の荷重に基づく押圧力は、外扉81の作用点において、さらに小さい力として伝えられることになる。
具体的には、支点と力点の間の距離をd2、支点と作用点の間の距離をD2、力点に加えられた内扉82から伝えられた力をf2、作用点における力をF2とすると、d2×f2=D2×F2(d2<D2)という関係が成立する。
ここで、f2=F1であるから、(d2×d1×f1)/D1=D2×F2となる。
【0054】
したがって、前記開口部6aが閉止された状態においては、被搬送物の荷重に基づく押圧力f1が、梃子の原理によって減少して、前記外扉81の下端部(作用点)においては、外側に向かって押圧力f1の(d2×d1)/(D1×D2)の力F2で伝えられることになる。
よって、この発明においては、前記外扉81を、それほど強固ではないロック手段を用いる場合であっても、前記外扉81の閉鎖は確実にロックされる。
【0055】
なお、この実施例においては、前記外扉81の質量mは、重力加速度をgとしたとき、F2≦mgを満たすように設定されている。
したがって、通常時(コンテナが静置された状態にある場合)には、外扉81が被搬送物の荷重によって開くことがないので、この発明におけるコンテナは、外扉の閉鎖をロックするためのロック手段を必要としないか、又は外扉に比較的簡単なロック手段を取り付けるだけで済む。
したがって、作業者は、外扉(開閉扉)の前に立つことなく、コンテナの開閉扉に対向する側(この実施例において前妻側)を持ち上げて傾ける操作を行うだけで、前記外扉の閉鎖のロック解除と前記開口部の開放を行うことができるので、前記外扉の閉鎖のロック解除と前記開口部の開放を、極めて安全に行うことが可能となる。
【0056】
かかる構成のロック機構を備える開閉機構8による被搬送物の排出を、例えば、図6に示すように行うことができる。
図6(A)において、コンテナ1は、その側面壁6(この実施例において後妻側)に形成される開口部6aが、その出口側と入口側の両方で側面壁6の下端部の4分の1から5分の1程度を占めるように構成され、この開口部6aの外側を外扉81が、内側を内扉82が、それぞれ閉止している。
コンテナ1は、図6(A)に示すように、水平面に静置された状態にある。
【0057】
図6(A)に示すように、開口部6aにおいて、内扉82よりも内側の上端には、支持部材6bが内方に向かって突設されている。
より具体的には、図6(A)において、前記支持部材6bは、板状体からなるもので、下方に向かって突設されている。
内扉82は、支持部材6bによって、内方への回動が規制されるとともに、底面壁7に対して垂直に起立した状態で保持されている。
【0058】
図6(A)において、支持部材6bは、磁石Mを介して内扉82と当接するように構成されている、すなわち内扉82と当接する側に磁石Mを備えている。
この磁石Mは、その磁力によって内扉82を吸着するが、外扉81の閉鎖がロックされている状態で、上面壁3に設けられている投入口(図示せず)から被搬送物が投入され、コンテナ1内に充填されると、図6(B)に示すように、被搬送物の荷重に基づく押圧力によって内扉82が支持部材6bから離間するよう構成されている。
【0059】
図6(B)において、外扉81の下端部に対して内側から外側に向かってかかる被搬送物の荷重に基づく押圧力F2は、外扉81の質量をmとし、重力加速度をgとしたとき、F2≦mgを満たすように設定されているので、コンテナ1が水平面に静置された状態では、外扉81は、その閉鎖がロックされた状態にあるので、被搬送物の荷重によって開くことがない。
【0060】
その後、コンテナ1の、開閉扉に対向する側(この実施例において前妻側)を持ち上げていくと、図6(C)に示すように、コンテナ1の傾斜角度が約10°に達したときに外扉81は、その自重によって、外方(この実施例において後方側)に回動する。
【0061】
この状態から、さらにコンテナ1の、開閉扉に対向する側を持ち上げていけば、外扉81の回動に伴って開口部6aは開いていき、開口部6aが完全に開放されたときには、全ての被搬送物が排出される(図6(D)→図6(F))。
【0062】
なお、この実施例において、開閉機構8は、後妻側の側面壁6に形成した開口部6aに設けられているが、前記開口部については、後妻側の側面壁に限らず、コンテナ主体を構成する側面壁の少なくとも1つに対して、1又は複数形成することができ、この開口部のそれぞれに前記開閉機構を設けることができる。
【0063】
なお、この発明のコンテナは、ウッドペレットなどの粉粒体の搬送用として使用することが可能なものであるが、通常の貨物の搬送も当然可能なものである。
【産業上の利用可能性】
【0064】
この発明の開閉機構は、コンテナの開閉扉を構成する外扉から内側へ所定距離空けて内扉を設けることによって、コンテナ内に充填された被搬送物、特に粉粒体を、開閉扉(外扉)から漏れることがないか又は極めて高い確率で抑制して、安全に積載・貯蔵することを可能とするもので、あらゆるコンテナに利用することができるものである。
【符号の説明】
【0065】
1 コンテナ
2 コンテナ主体
3 上面壁
4 左側の側面壁
5 右側の側面壁
6 後妻側の側面壁
6a 開口部
6b 保持部材
7 底面壁
8 開閉機構
81 外扉
81a 第1のヒンジ
81b 第1の支持軸
82 内扉
82a 第2の支持軸
82b 当接部
9 ロック手段
9a ロッキングロッド
9b 操作ハンドル
10 パッキン
M 磁石
図1
図2
図3
図4
図5
図6