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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】ディフューザ
(51)【国際特許分類】
   B01J 3/02 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
B01J3/02 M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020082385
(22)【出願日】2020-05-08
(65)【公開番号】P2021007935
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2019123711
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507182807
【氏名又は名称】クアーズテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 裕樹
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-140801(JP,A)
【文献】特開2011-173063(JP,A)
【文献】特開2010-234249(JP,A)
【文献】特表2013-523444(JP,A)
【文献】特開2017-42763(JP,A)
【文献】特開平7-323293(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130680(WO,A1)
【文献】特開2018-202302(JP,A)
【文献】特開2005-288385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する炭化ケイ素からなる製ディフューザエレメントと、
前記ディフューザエレメントを保持する導電性の保持部材と、
前記ディフューザエレメントと前記保持部材との間をシールする、導電性のガスケットと、
を備え、
前記ディフューザエレメントの静電気が、ガスケット、保持部材を介して除去されることを特徴とするディフューザ。
【請求項2】
円筒状のディフューザエレメントと、
前記ディフューザエレメントの一端部を閉塞する第1の保持部材と、
前記ディフューザエレメントの他端部を閉塞する、ガス導入用パイプが挿通する貫通孔を有する第2の保持部材と、
第2の保持部材、ディフューザエレメントの内部を挿通し、第1の保持部材と一端部が固定されるガス導入用パイプと、
を備え、
第2の保持部材が、接地された装置の壁面に取り付けられることにより、前記ディフューザエレメントの静電気が、ガスケット、保持部材を介して除去されることを特徴とする請求項1記載のディフューザ。
【請求項3】
前記ディフューザエレメントが、表面抵抗値10Ω/sq以下の炭化ケイ素の焼結体で形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたディフューザ。
【請求項4】
前記ガスケットが、ポリテトラフルオロエチレンに添加物を加えた導電性を有する材料で形成され、
前記保持部材が、金属で形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のディフューザ。
【請求項5】
前記ガスケットの表面抵抗値が10Ω/sq以下あることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のディフューザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディフューザに関し、例えば、半導体製造装置におけるロードロック、測長SEM、液晶基板の製造に用いられる減圧処理装置等(以下、処理装置という)におけるガス導入口に設置される、ディフューザに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体製造工程においては、処理装置内部を減圧し、減圧下で熱処理が行われている。そして、この熱処理が終了すると、前記処理装置内を減圧状態から大気圧まで戻し、前記半導体ウエハの取り出しがなされる。
このような半導体処理装置にあっては、処理されるウエハを外部から搬入、または処理されたウエハを外部へ搬出する際に、その処理装置内の雰囲気を外部雰囲気に合わせることになるため、通常、ガス排気口部とガス導入口部が設けられている。
【0003】
そして、これらガス導入口部、ガス排気口部によって、処理装置内の雰囲気ガスを排出して減圧状態にし、またガスを導入して減圧状態を解除するように構成されている。
この処理装置内にガスを導入して減圧状態を解除する際、ガス導入口に設置されたディフューザを用い、圧力変動を緩和し、装置内のパーティクルの舞上がりを抑制している。
尚、このディフューザはブレイクフィルタと称されることもある。
【0004】
このディフューザについて、特許文献1に示されたディフューザを図4に示し、図4に基づいて説明する。尚、図3は、特許文献1に示された半導体処理装置の概略構成を示す。
図3に示すように、半導体処理装置20には、ガスを導入して減圧状態を解除するディフューザ30が設けられている。このように、前記ガス導入口に、ディフューザ30が設けられているため、開閉弁21を開けた瞬間の圧力変動を緩和でき、装置内のパーティクルの舞上がりを抑制できる。
また装置内の排気を行う場合には、排気用の開閉弁22と並列に微調整弁23が設けられているため、排気開始にあたって微調整弁23が操作されることで、スロー排気が実現される。尚、図中、符号Wは処理されるウエハである。
【0005】
前記ディフューザ30にあっては、図4に示すように、アルミナ製ディフューザエレメント31の両端が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製ガスケット33,34を介して,一対の金属製スペーサ(保持部材)32a、32bによって保持されている。
また、アルミナ製ディフューザエレメント31の内部には、通気パイプ35が設けられている。この通気パイプ35は、金属製中空状で周囲に多数の通気口34が穿設され、筒状体であり、スペーサ32a及びディフューザエレメント31を貫通している。
【0006】
そして、処理装置内の減圧状態を解除するには、開閉弁21を開放し、ガスがスペーサ32a側の通気パイプ35から導入され、更に通気口34及びディフューザエレメント31を介して処理装置内に導入され、処理装置内の減圧状態が解除される。
処理装置内に導入されるガスは、ガス流通の抵抗体として機能するディフューザエレメント31により、処理装置内へ流れ込む速度が減速され、処理装置内のパーティクルの舞上がりや結露の発生が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許5032937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前記したディフューザにおける、一対のスペーサ(保持部材)、通気パイプは、金属で形成されているため、導電性を有しているが、ディフューザエレメントはアルミナ製であるため、導電性を有していない。また、ガスケットもポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製であるため、導電性を有していない。金属製のディフューザも市販されているが、半導体製造装置内では、プラズマや腐食性ガス雰囲気が使用されることがあるため、金属製ディフューザよりも耐食性に優れるセラミックスであるアルミナ製が好まれる。
しかし、何かしらに起因して、ディフューザエレメントに静電気が帯電すると、前記静電気によって、空気中を浮遊するパーティクルがディフューザエレメント外周面に付着するという技術的課題があった。
【0009】
そして、このパーティクルが付着したディフューザを、処理装置内部に取り付けると、処理装置内部にパーティクルが持ち込まれることとなり、使用時におけるにパーティクルの舞い上がりを増大させることになる。
その結果、ディフューザによって処理装置内部の急激な気圧の変化や気流の変化を抑制しても、パーティクルの舞い上がりが多く、結果的に歩留まりを悪化させるという技術的課題があった。
【0010】
本発明者は、上記技術的課題を解決するために、十分な耐食性を有しながら静電気を帯電し難くなる、ディフューザの構成を鋭意研究し、本発明を完成するに至った。
即ち、ディフューザエレメントを、導電性を有するセラミックス製のエレメントとし、更にガスケットを、導電性を有するガスケットとし、スペーサ(保持部材)、通気パイプを、金属等導電性部材で形成することにより、帯電が抑制され、ディフューザエレメントにパーティクルが付着するのを抑制できることを知見し、本発明を完成した。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、パーティクルの付着を抑制できるディフューザを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するためになされた本発明にかかるディフューザは、導電性を有するセラミックス製ディフューザエレメントと、前記ディフューザエレメントを保持する導電性の保持部材と、前記ディフューザエレメントと前記保持部材との間をシールする、導電性のガスケットと、を備え、前記ディフューザエレメントの静電気が、ガスケット、保持部材を介して除去されることを特徴としている。
【0013】
本発明にかかるディフューザは、処理装置内の大気開放における時間を短縮させながらも気圧および気流の急激な変化を緩和することができるだけでなく、パーティクル付着抑制機能が高いため、処理装置内のパーティクル量も少なく抑えることができる。
具体的には、本発明のかかるディフューザは、ディフューザを構成するセラミックス製ディフューザエレメント、保持部材、ガスケットが導電性を有する材料で形成されているため、ディフューザエレメントに帯電した静電気が、ガスケット、保持部材を介して除去される。
即ち、本発明のかかるディフューザは、帯電し難く、パーティクルが静電気によって、ディフューザに付着するのを抑制できる。
【0014】
ここで、円筒状のディフューザエレメントと、前記ディフューザエレメントの一端部を閉塞する第1の保持部材と、前記ディフューザエレメントの他端部を閉塞する、ガス導入用パイプが挿通する貫通孔を有する第2の保持部材と、第2の保持部材、ディフューザエレメントの内部を挿通し、第1の保持部材の一端部が固定されるガス導入用パイプと、を備え、第2の保持部材が、接地された装置の壁面に取り付けられることにより、前記ディフューザエレメントの静電気が、ガスケット、保持部材を介して除去されることが望ましい。
このように、本発明にかかるディフューザにあっては、第2の保持部材が、接地された処理装置の壁面に取り付けられ、ディフューザエレメントの静電気がガスケット、保持部材を介して除去されるため、処理装置に設置された状態のディフューザの帯電が抑制される。
【0015】
また、前記ディフューザエレメントが、炭化ケイ素の焼結体で形成されていることが望ましい。
炭化ケイ素の焼結体は、耐食性、耐熱性、耐薬品性を有すると共に、適度な気孔率を有する三次元網目構造を有しているため、ガス流通の抵抗体として機能するディフューザエレメントに適している。
また、導電性があり、帯電し難い性質を有している。そのため、本発明にかかるディフューザのディフューザエレメントの材質としては、炭化ケイ素の焼結体であることが好ましい。
【0016】
また、前記ガスケットが、ポリテトラフルオロエチレンに添加物を加えた導電性を有する材料で形成され、前記保持部材が、金属で形成されていることが望ましい。
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は耐薬品性や非汚染性に優れおり半導体産業でも一般に用いられている。
このポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に、例えば、カーボンブラックあるいはカーボンナノチューブが含有するPTFEは、導電性を有するため、帯電し難く、本発明のガスケットとして好ましい。
また、保持部材が金属で形成されている場合には、高強度で、かつ導電性を有するため、帯電し難く、本発明の保持部材として好ましい。
【0017】
特に、前記ディフューザエレメントの表面抵抗値が10Ω/sq以下であり、かつ前記ガスケットの表面抵抗値が10Ω/sq以下あることが望ましい。
前記ディフューザエレメントの表面抵抗値が10Ω/sq以下であり、かつ前記ガスケットの表面抵抗値が10Ω/sq以下あるため、より適切に帯電を抑制できる。
尚、本発明のディフューザを処理装置に装着した際、ディフューザエレメントに帯電した静電気を、ガスケット、保持部材を介して除去することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、パーティクルの付着を抑制できるディフューザを提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明にかかるディフューザの一実施形態の概略構成を示す部分断面図である。
図2図2は、図1のディフューザを、処理装置に装着した状態を示す断面図である。
図3図3は、減圧装置(処理装置)の概略構成を示す図である。
図4図4は、従来のディフューザの概略構成を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係るディフューザを、図1に基づいて説明する。尚、図1は模式的なものであり、各要素の寸法や比率などが実際と異なる場合がある。
【0021】
図1に示されるように、ディフューザ1は、ディフューザエレメント2と、ディフューザエレメント2を保持する第1、第2の保持部材3,4と、ディフューザエレメント2と第1、第2の保持部材3,4との間をシールするガスケット5,6を備えている。
また、第2の保持部材4の中心部には貫通孔4aが形成されている。そして、ディフューザエレメント2の内部にガスを挿入するガス導入用パイプ7は、第2の保持部材4の貫通孔4aを挿通し、前記ディフューザエレメント2の内部を挿通するように構成されている。
【0022】
このガス導入用パイプ7は、金属製中空状で周囲に多数の導入口7cが設けられており、ガス導入用パイプ7から導入されたガスは、前記導入口7cからディフューザエレメント2の内部に導入される。
そして、ガスは、ガス流通の抵抗体としてのディフューザエレメント2を通過して、処理装置内に導入される。
【0023】
このガス導入用パイプ7の一端部にはネジ部7aが形成され、第1の保持部材3に螺合し、またこのガス導入用パイプ7の他端部にはネジ部7bが形成され、ナット部材8と螺合するように構成されている。
即ち、このガス導入用パイプ7の一端部を、ナット部材8、保持部材4の貫通孔4aを挿通し、更に前記ディフューザエレメント2の内部を挿通し、第1の保持部材3に螺合、固定する。一方、ガス導入用パイプ7の他端部を、ナット部材8と螺合、固定する。
【0024】
このように、第1の保持部材3に固定されたガス導入用パイプ7を、第2の保持部材4まで橋渡し、このガス導入用パイプ7をナット部材8に螺合させることにより、ディフューザエレメント2を、ガスケット5,6を介して、第1、第2保持部材3,4によって挟持、固定する。
【0025】
前記ディフューザエレメント2の外形は特に限定するものではないが、例えば、図1に示されるように、ディフューザエレメント2を円筒形状とした場合には、このディフューザエレメント2の一端部を保持する小径の略円板形状の第1の保持部材3と、このディフューザエレメント2の他端部を保持する大径の円板形状の第2の保持部材4によって、ディフューザエレメント2が保持される。
この構成では、ガスケット5,6は、ディフューザエレメント2とほぼ同一径のリング形状とすることが好ましく、ディフューザエレメント2と第1、第2の保持部材5,6との間の各々に挿入される。
【0026】
前記第2の保持部材4には、処理装置に設置する際に用いられる設置用貫通孔4aが設けられている。
また、前記第2の保持部材4が第1の保持部材3と比べて、大径に形成されているのは、処理装置との設置面積を大きくすることにより、処理装置に安定した設置状態になすと共に、前記ディフューザエレメント2の静電気を、第2の保持部材4を介して、より確実に除去するためである。
【0027】
前記第1、第2の保持部材3,4、ガス導入用パイプ7は、耐食性に優れたステンレスで形成される。尚、前記第1、第2の保持部材3,4、ガス導入用パイプ7の材質は、前記ステンレスに限定されるものではなく、ニッケル、銅の金属を用いても良い。ガス導入用パイプ7と保持部材3,4のいずれかとは一体的に製造されていても良い。なお、本発明のディフューザは、従来技術として記されている図4の形状であっても良いし、他の形状であっても良い。
【0028】
前記ディフューザエレメント2の材質としては、例えば炭化ケイ素(SiC)の焼結体が用いられる。炭化ケイ素の焼結体は、適度な気孔率を有する三次元網目構造を有しているとともに、導電性を備えているため、好ましい。例えば、特願2018-046604号に記された炭化ケイ素を適用することができる。
【0029】
このように炭化ケイ素の焼結体は、適度な気孔率を有する三次元網目構造により、抵抗体として機能し、大気開放時に気圧および気流の急激な変化を緩和することができる。
またこの炭化ケイ素の焼結体は導電性を備えているため、帯電が抑制され、静電気によるパーティクルの付着を抑制することができる。
尚、この炭化ケイ素の焼結体は、気孔率は35.0~55.0%、気孔径は3.0~9.0μmが好ましい。気孔率が35.0%未満、気孔径が3.0μm未満の場合には、圧力損失が大きく、ガス供給量が小さくなり、大気圧に達する時間が大幅に長くなるため、好ましくなく、気孔率が55.0%を越え、気孔径が9.0μm越える場合には、パーティクル舞上り防止性能が低下するため、好ましくない。
【0030】
前記ディフューザエレメントの導電性は、その表面抵抗値が10Ω/sq以下であり、好ましくは、前記ディフューザエレメントの表面抵抗値が10Ω/sq以下であることが好ましい。
この表面抵抗値は、例えば、炭化ケイ素成形体を2300℃近くの高温で焼成することで実現することができる。表面抵抗値が10Ω/sqを超える場合には、ディフューザが帯電しやすくなりパーティクルが付着してしまい、好ましくない。
【0031】
前記ガスケット5,6の材質は、例えば導電性PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)が好ましい。
PTFEは耐薬品性や非汚染性に優れおり、半導体産業でも一般に用いられているとともに、導電性PTFEは導電性を有するからである。
なお、導電性PTFEは、PTFEに対しカーボンブラックやカーボンナノチューブを添加することによって得ることができる。
【0032】
前記ガスケットの導電性は、その表面抵抗値が10Ω/sq以下あることが好ましく、前記ガスケットの表面抵抗値が10Ω/sq以下であることが好ましい。この表面抵抗値は、カーボンブラック量、あるいはカーボンナノチューブ量を変えることにより、調整することができる。
前記ガスケットの前記表面抵抗値が10Ω/sqを超える場合には、ディフューザが帯電しやすくなりパーティクルが付着してしまい、好ましくない。
【0033】
次に、図1に示したディフューザ1を、処理装置に装着した状態を図2に示す。
この処理装置10は、例えば、ロードロック、測長SEM、液晶基板の製造に用いられる減圧処理装置等の処理装置であり、ディフューザ1は、ネジ等の固定手段12により、そのガス導入口10aに設置される。
このとき、ディフューザ1の第2の保持部材4が、アース線11によって接地された処理装置10の壁面に取り付けられることにより、前記ディフューザエレメント2の静電気は、ガスケット、保持部材を介して除去される。
また、接地された処理装置10の壁面に取り付けられたディフューザ1は、常に静電気が除去される状態にあるため、ディフューザの帯電が抑制され、パーティクルの付着が抑制される。
【0034】
上記のように、本発明にかかるディフューザ1は、導電性のディフューザエレメント2と、ディフューザエレメント2を保持する導電性の第1、第2の保持部材3,4と、ディフューザエレメント2と第1、第2の保持部材3,4との間をシールする導電性のガスケット5,6を備えるため、ディフューザ1の帯電が抑制され、パーティクルの付着が抑制される。
【0035】
一方、ガスは、ガス導入用パイプ7の導入口7cからディフューザエレメント2の内部に導入され、ガス流通の抵抗体としてのディフューザエレメント2を介して、処理装置内に導入される。その結果、処理装置内部の気圧および気流の急激な変化を緩和しつつ、減圧状態を解除でき、パーティクルの舞い上がりを抑制することができる。
【0036】
(実施例)
まず、平均粒径0.7μmの炭化ケイ素を用意する。この炭化ケイ素の100重量部に対し、バインダーとしてポリビニルアルコール(PVA)を1重量部加え、水とともに混合する。
その後、乾燥させたものを解砕し、CIP(Cold Isostatic Pressing)成形によって、円筒形状に成形する。この成形体を摂氏2300度で2時間加熱し、焼結させる。得られた焼結体を外径19mm、内径15mm、長さ37mmに加工し、ディフューザエレメントを形成した。このディフューザエレメント11の表面抵抗値を表1に示す。
表面抵抗は、日置電機株式会社製の抵抗計RM3548を用い、被測定物を2つの電極で挟むことで行った。ディフューザエレメントについては、両端部に銅箔を接触させ、電極はそれぞれ銅箔に接続した。
【0037】
ガスケットは、MC山三ポリマーズ株式会社製の導電性PTFEを用い、これを外径20.6mm、内径14mm、厚さ1.5mmに加工して用いた。このガスケットの表面抵抗値を表1に示す。また、ガス導入装置(ディフューザ)10の抵抗値も表1に示す。
ガスケットの表面抵抗は、前記装置でリング状のガスケットの遠い2ヶ所を電極で挟んで行った。
ディフューザの表面抵抗は、前記装置でディフューザの表面とガス導入パイプをそれぞれ電極で挟むことで行った。
【0038】
(比較例)
比較例として、ディフューザエレメントの素材は、Pall Corporation製の円筒形状のアルミナを用いた。寸法は、実施例と同じく、外径19mm、内径15mm、長さ37mmとした。得られた比較例のディフューザエレメントの表面抵抗値を表1に示す。
【0039】
ガスケットは、株式会社ワールドクリーンテック性のPTFEを用意し、これを外径20.6mm、内径14mm、厚さ1.5mmに加工して用いた。この比較例のガスケットの表面抵抗値を表1に示す。また、ディフューザの抵抗値も表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
上記のように、実施例では、ディフューザエレメント11の抵抗値は10Ω/sq以下であり、ガスケットの抵抗値は10Ω/sq以下であり、ディフューザ1の抵抗値も10Ω/sq以下である。
【0042】
以上のように本発明の実施形態に係るディフューザは、パーティクル付着抑制機能が向上するため、ディフューザに付着するパーティクルを抑制でき、処理装置内部に持ち込まれるパーティクルを抑制することができる。
なお、上記実施形態の説明では、ディフューザエレメントとして、円筒形状のものを用いているが、ディフューザエレメントの形状は、例えば円板形状などにすることも可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 ディフューザ
2 ディフューザエレメント
3 第1の保持部材
4 第2の保持部材
5 ガスケット
6 ガスケット
7 ガス導入用パイプ
8 ナット部材
10 処理装置
10a ガス導入口
11 アース線
図1
図2
図3
図4