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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】搬送装置、搬送方法および搬送システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20231221BHJP
   B25J 9/06 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B25J9/06 D
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020089231
(22)【出願日】2020-05-21
(65)【公開番号】P2021184426
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小宮路 修
【審査官】三浦 みちる
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2009-0116431(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0020167(KR,A)
【文献】特開2002-261148(JP,A)
【文献】特開2003-197709(JP,A)
【文献】特開2020-027936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B25J 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送室の室内に固定され、基板が載置されるハンドと、少なくとも旋回動作によって前記ハンドを移動させるアームとをそれぞれ有する少なくとも4台のロボットと、
前記搬送室の室内に固定され、前記基板を少なくとも2枚載置可能であって前記少なくとも4台のロボットすべてが前記基板を授受可能な固定式バッファと
を備え、
前記少なくとも4台のロボットは、
上面視において、互いの前記旋回動作の旋回領域が重ならず、かつ、前記固定式バッファの周囲において前記基板を前記固定式バッファと授受可能な位置にそれぞれ配置されること
を特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記少なくとも4台のロボットは、
上面視において、時計回りに第1ロボット、第2ロボット、第3ロボットおよび第4ロボットの4台であり、
前記搬送室は、
上面視において矩形状であり、時計回りに第1側壁、第2側壁、第3側壁および第4側壁を有し、前記第1側壁の外側に前記第1ロボットおよび前記第2ロボットそれぞれの基板授受位置が、前記第2側壁の外側に前記第2ロボットおよび前記第3ロボットそれぞれの基板授受位置が、前記第3側壁の外側に前記第3ロボットおよび前記第4ロボットそれぞれの基板授受位置が、前記第4側壁の外側に前記第4ロボットおよび前記第1ロボットそれぞれの基板授受位置が、設けられること
を特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記基板授受位置は、
前記第4側壁の外側ではロードロック室の室内にあり、前記第1側壁、前記第2側壁および前記第3側壁の外側では前記基板の処理室の室内にそれぞれあること
を特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記固定式バッファは、
前記基板の載置中心が前記4台のロボットの各旋回領域で囲まれる領域の中心位置にあること
を特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記4台のロボットは、
前記旋回領域の大きさが同じであること
を特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記4台のロボットは、
鉛直向きに1自由度で水平向きに2自由度の3自由度のロボットであること
を特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記4台のロボットは、
水平向きに2自由度の2自由度のロボットであり、
前記固定式バッファは、
前記基板の載置位置を昇降させる昇降機構を有すること
を特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記固定式バッファは、
前記基板の載置領域が前記4台のロボットの各旋回領域の外側にあること
を特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項9】
前記固定式バッファは、
前記基板の載置領域の中心と前記4台のロボットの各旋回中心とをそれぞれ結ぶ線に沿って前記ハンドによって搬送される前記基板の移動軌跡の外側にバッファを支持する支柱を有すること
を特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項10】
前記固定式バッファは、
前記基板の載置領域および前記4台のロボットの各旋回領域の外側にバッファを支持する支柱を有すること
を特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項11】
前記固定式バッファは、
バッファにおける前記基板の載置領域と前記4台のロボットのうち隣り合うロボットの各旋回領域とに囲まれた外部領域にバッファを支持する支柱を有すること
を特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項12】
前記固定式バッファに載置される前記基板の有無を検出するセンサが対向する2つの側壁にそれぞれ設けられること
を特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項13】
前記固定式バッファは、
前記基板の載置領域の一部が、少なくともいずれか一つの前記ロボットの前記旋回領域と重なるように前記搬送室の上面に固定され、
前記ロボットは、
前記固定式バッファへの干渉を回避する非干渉動作を行うこと
を特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項14】
搬送室の室内に固定され、基板が載置されるハンドと、少なくとも旋回動作によって前記ハンドを移動させるアームとをそれぞれ有する少なくとも4台のロボットと、
前記搬送室の室内に固定され、前記基板を少なくとも2枚載置可能であって前記少なくとも4台のロボットすべてが前記基板を授受可能な固定式バッファと
を用い、
前記少なくとも4台のロボットは、
上面視において、互いの前記旋回動作の旋回領域が重ならず、かつ、前記固定式バッファの周囲において前記基板を前記固定式バッファと授受可能な位置にそれぞれ配置されており、
前記固定式バッファとの前記基板の授受をすべての前記ロボットに行わせること
を特徴とする搬送方法。
【請求項15】
搬送室と、
前記搬送室の室内に固定され、基板が載置されるハンドと、少なくとも旋回動作によって前記ハンドを移動させるアームとをそれぞれ有する少なくとも4台のロボットと、
前記搬送室の室内に固定され、前記基板を少なくとも2枚載置可能であって前記少なくとも4台のロボットすべてが前記基板を授受可能な固定式バッファと
を備え、
前記少なくとも4台のロボットは、
上面視において、互いの前記旋回動作の旋回領域が重ならず、かつ、前記固定式バッファの周囲において前記基板を前記固定式バッファと授受可能な位置にそれぞれ配置されること
を特徴とする搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、搬送装置、搬送方法および搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板を搬送するロボットを、減圧雰囲気化された搬送室内に配置し、搬送室の側壁に設けられた処理室に対して基板を搬送する搬送装置が知られている。
【0003】
たとえば、搬送室の側壁に設けられた複数の処理室に対し、リニアモータによる駆動によって搬送室内を移動する移動式ロボットで基板を搬送する基板処理装置が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-028179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来技術には、ロボットを移動式とすることによるコストの増加や、移動機構の複雑化による可用性の低下が懸念される。可用性が低下すると結果的に基板の搬送効率が低下してしまうため、処理前の基板および処理後の基板の搬送効率を向上させる観点からは改善の余地がある。
【0006】
実施形態の一態様は、基板の搬送効率を向上させることができる搬送装置、搬送方法および搬送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係る搬送装置は、少なくとも4台のロボットと、固定式バッファとを備える。少なくとも4台のロボットは、搬送室の室内に固定され、基板が載置されるハンドと、少なくとも旋回動作によって前記ハンドを移動させるアームとをそれぞれ有する。固定式バッファは、前記搬送室の室内に固定され、前記基板を少なくとも2枚載置可能であって前記少なくとも4台のロボットすべてが前記基板を授受可能である。前記少なくとも4台のロボットは、互いの前記旋回動作の旋回領域が重ならず、かつ、前記固定式バッファの周囲において前記基板を前記固定式バッファと授受可能な位置にそれぞれ配置される。
【0008】
実施形態の一態様に係る搬送方法は、少なくとも4台のロボットと、固定式バッファとを用い、前記固定式バッファとの基板の授受をすべての前記ロボットに行わせる。少なくとも4台のロボットは、搬送室の室内に固定され、基板が載置されるハンドと、少なくとも旋回動作によって前記ハンドを移動させるアームとをそれぞれ有する。固定式バッファは、前記搬送室の室内に固定され、前記基板を少なくとも2枚載置可能であって前記少なくとも4台のロボットすべてが前記基板を授受可能である。前記少なくとも4台のロボットは、上面視において、互いの前記旋回動作の旋回領域が重ならず、かつ、前記固定式バッファの周囲において前記基板を前記固定式バッファと授受可能な位置にそれぞれ配置される。
【0009】
実施形態の一態様に係る搬送システムは、搬送室と、少なくとも4台のロボットと、固定式バッファとを備える。少なくとも4台のロボットは、前記搬送室の室内に固定され、基板が載置されるハンドと、少なくとも旋回動作によって前記ハンドを移動させるアームとをそれぞれ有する。固定式バッファは、前記搬送室の室内に固定され、前記基板を少なくとも2枚載置可能であって前記少なくとも4台のロボットすべてが前記基板を授受可能である。前記少なくとも4台のロボットは、上面視において、互いの前記旋回動作の旋回領域が重ならず、かつ、前記固定式バッファの周囲において前記基板を前記固定式バッファと授受可能な位置にそれぞれ配置される。
【発明の効果】
【0010】
実施形態の一態様によれば、基板の搬送効率を向上させることができる搬送装置、搬送方法および搬送システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態に係る搬送システムの概要を示す上面模式図である。
図2図2は、搬送室の配置例を示す上面模式図である。
図3A図3Aは、搬送装置の上面模式図である。
図3B図3Bは、搬送装置の側面模式図である。
図4図4は、昇降機構を有する固定式バッファの側面模式図である。
図5A図5Aは、変形例に係る固定式バッファの上面模式図である。
図5B図5Bは、変形例に係る固定式バッファの側面模式図である。
図6図6は、基板を検出するセンサの配置例を示す上面模式図である。
図7A図7Aは、ロボットの構成例その1を示す上面模式図である。
図7B図7Bは、ロボットの構成例その2を示す上面模式図である。
図7C図7Cは、ロボットの構成例その3を示す上面模式図である。
図7D図7Dは、ロボットの構成例その4を示す上面模式図である。
図8図8は、搬送装置の構成を示すブロック図である。
図9図9は、搬送装置が実行する処理手順を示すフローチャートである。
図10図10は、双腕ロボットを配置した搬送室の上面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する搬送装置、搬送方法および搬送システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
また、以下に示す実施形態では、「直交」、「水平」、「鉛直」、「中心」、あるいは「対称」といった表現を用いるが、厳密にこれらの状態を満たすことを要しない。すなわち、上記した各表現は、製造精度、設置精度、処理精度、検出精度などのずれを許容するものとする。
【0014】
まず、実施形態に係る搬送システム1の概要について図1を用いて説明する。図1は、実施形態に係る搬送システム1の概要を示す上面模式図である。なお、図1は、搬送システム1を上方からみた模式図に相当する。
【0015】
図1では、説明をわかりやすくするために、鉛直上向きを正方向とするZ軸、搬送室100における隣り合った側壁100swにそれぞれ沿う向きをX軸およびY軸とする3次元の直交座標系を示している。かかる直交座標系は、以下の説明で用いる他の図面においても示す場合がある。なお、図1では、上面視において正方形状の搬送室100を示しているが、X軸に沿う長さまたはY軸に沿う長さのいずれかが他方よりも大きい矩形状とすることとしてもよい。
【0016】
図1に示すように、搬送室100の室内には、4台のロボット10と、基板Wを載置可能な固定式バッファ110とがそれぞれ固定される。ここで、搬送室100は、室内が減圧雰囲気である。また、以下では、ロボット10と、固定式バッファ110とをまとめて搬送装置5と呼ぶことがある。
【0017】
ロボット10は、固定式バッファ110等との間で基板Wの授受を行う基板搬送機構であり、たとえば、水平多関節ロボット(スカラロボット)である。具体的には、ロボット10は、基板Wが載置されるハンド12と、少なくとも旋回動作によってハンド12を移動させるアーム11とを備える。
【0018】
なお、本実施形態では、アーム11が第1アーム11aと第2アーム11bとを有する場合について説明するが、アーム11を構成するアーム数は1つでもよいし、3つ以上であってもよい。また、本実施形態では、ロボット10の台数が4台である場合について説明するが、ロボット10の台数を5台以上としてもよい。
【0019】
ここで、ロボット10は、搬送室100の室内に固定される「固定式ロボット」であり、搬送室100の室内を走行したり移動したりする「移動式ロボット」とは異なる。このように、ロボット10は、搬送室100の室内を移動しないので、ロボット10に対する給電が容易であり、搬送室100のクリーン化に寄与する。
【0020】
固定式バッファ110は、基板Wを一時的に保持するバッファである。固定式バッファ110は、少なくとも2枚の基板Wを載置することが可能であり、搬送室100の室内におけるすべてのロボット10との間で基板Wの授受が可能である。ここで、図1に示した固定式バッファ110には、基板授受位置WAを併せて示している。なお、「基板授受位置」を基板Wの「載置領域」と呼ぶ場合がある。
【0021】
つまり、少なくとも2枚の基板Wは、基板授受位置WAが重なるように多段で固定式バッファ110に保持される。ここで、「基板授受位置」とは、固定式バッファ110の正規位置で保持される基板Wの存在領域のことを指す。なお、本実施形態では、固定式バッファ110の段数が4段である場合について説明するが、段数は2段以上の任意の段数でよい。
【0022】
ここで、固定式バッファ110は、搬送室100の室内に固定される「固定式バッファ」であり、搬送室100の室内を走行したり移動したりする「移動式バッファ」とは異なる。このように、固定式バッファ110は、搬送室100の室内を移動しないので、搬送室100のクリーン化に寄与する。
【0023】
ところで、図1では、説明をわかりやすくするために、上面視における固定式バッファ110の外形を円で示しているが、外形を限定するものではない。つまり、固定式バッファ110における基板授受位置WAが図1に示した位置にあれば、固定式バッファ110の外形の形状は問わない。
【0024】
図1に示したように、各ロボット10は、上面視において、互いの旋回動作の旋回領域10rtが重ならず、かつ、固定式バッファ110の周囲において、基板Wを固定式バッファ110と授受可能な位置にそれぞれ配置される。ここで、「授受可能な位置」とは、基板Wを保持するロボット10が、固定式バッファ110の基板授受位置WAへ基板Wを搬送することができる程度に固定式バッファ110に近い位置にあることを指す。
【0025】
図1に示した場合では、固定式バッファ110の基板授受位置WAは、各ロボット10の旋回領域10rtのいずれとも重ならない。なお、固定式バッファ110の基板授受位置WAが、各ロボット10の旋回領域10rtと重なりを有する場合については図5A等を用いて後述することとする。
【0026】
また、図1に示した場合では、各ロボット10の旋回領域10rtの大きさがすべて同じである。このように、すべてのロボット10の旋回領域10rtの大きさを揃えることとすれば、同形式のロボットを用いることができるので、搬送装置5および搬送システム1のコストダウンを図ることが可能となる。なお、各ロボット10の旋回領域10rtは、それぞれ異なっていてもよい。すなわち、各ロボット10は、上面視において、互いの旋回領域10rtが重ならず、かつ、固定式バッファ110と基板Wの授受が可能であるという条件を満たせば、旋回領域10rtの大きさがすべて同じであることを要しない。
【0027】
また、図1に示した場合では、固定式バッファ110の基板授受位置WAにおける基板Wの載置中心CW(図3A参照)が、各ロボット10における各旋回領域10rtで囲まれた領域の中心位置にある。すなわち、固定式バッファ110を取り囲む4つの旋回領域10rtの各中心と、固定式バッファ110の載置中心CWとの距離は、それぞれ等しい。
【0028】
また、図1に示した場合では、各ロボット10は、搬送室100の対角線について対称な位置にそれぞれ配置されるとともに、搬送室100の各辺を等分する線についても対称な位置にそれぞれ配置される。このように、ロボット10および固定式バッファ110を配置することで、各ロボット10の教示情報を共有化したり、転用したりすることが容易となり、ロボット10の教示作業に要するコストを低減することが可能となる。
【0029】
このように、図1に示した搬送システム1および搬送装置5では、少なくとも4台のロボット10を固定式バッファ110の周囲に配置し、すべてのロボット10が固定式バッファ110と基板Wの授受を行うようにした。したがって、ロボットやバッファを、走行させたり移動させたりする場合に比べて搬送装置5の構成を簡略化することができるとともに、パーティクルの発生を抑制することができる。また、搬送室100の小型化を図ることができるので、搬送システム1の低コスト化を図ることができる。
【0030】
以下では、搬送室100とロボット10との位置関係、ロボット10と搬送室100の外部に設けられる基板授受位置WAとの位置関係についてさらに詳細に説明する。
【0031】
図1に示したように、搬送室100の側壁100swは、時計回りに第1側壁100sw1、第2側壁100sw2、第3側壁100sw3および第4側壁100sw4である。第1側壁100sw1および第3側壁100sw3は互いに対向し、第2側壁100sw2および第4側壁100sw4は互いに対向する。
【0032】
また、ロボット10は、時計回りに第1ロボット10-1、第2ロボット10-2、第3ロボット10-3および第4ロボット10-4である。なお、第1ロボット10-1および第2ロボット10-2は第1側壁100sw1に対向して配置され、第3ロボット10-3および第4ロボット10-4は第3側壁100sw3に対向して配置される。また、第2ロボット10-2および第3ロボット10-3は第2側壁100sw2に対向して配置され、第4ロボット10-4および第1ロボット10-1は第4側壁100sw4に対向して配置される。
【0033】
また、各側壁100swは、各ロボット10に対向する位置に基板搬出入口に相当する開口101をそれぞれ有する。つまり、搬送室100は、各側壁100swあたり2つずつ、全体で計8つの開口101を有する。そして、各側壁100swの室外側には、各ロボット10が基板Wを授受する基板授受位置WAがそれぞれ設けられる。
【0034】
以下では、第1側壁100sw1の室外側にある第1ロボット10-1の基板授受位置WAを基板授受位置WA11、第1側壁100sw1の室外側にある第2ロボット10-2の基板授受位置WAを基板授受位置WA12のように記載する。ここで、「WA12」の「1」は側壁100swの番号を、「2」はロボット10の番号を、それぞれ示している。たとえば、第4側壁100sw4の室外側にある第4ロボット10-4の基板授受位置WAは基板授受位置WA44であり、第4側壁100sw4の室外側にある第1ロボット10-1の基板授受位置WAは基板授受位置WA41である。
【0035】
次に、図1に示した搬送システム1について、搬送室100の室外に処理室PCおよびロードロック室LLを配置した場合について説明する。図2は、搬送室100の配置例を示す上面模式図である。なお、図2では、図1と共通する構成については同一の符号を付し、既に説明した事項の説明を省略するか、簡単な説明にとどめることとする。また、図2では、処理室PCやロードロック室LLの正面に相当する中心線CLを示している。中心線CLは、側壁100swの法線のうち、処理室PCやロードロック室LLにおける基板W(破線の円参照)の中心を通る線(図2では、X軸またはY軸に沿う線)に相当する。
【0036】
図2に示すように、搬送室100における第1側壁100sw1、第2側壁100sw2および第3側壁sw3の外側には、減圧雰囲気にて基板Wに対する処理を行う処理室PCが2つずつ設けられる。ここで、処理室PCが基板Wに対して行う処理としては、CVD(Chemical Vapor Deposition)などの成膜処理や、エッチング処理などがある。なお、一般的に減圧雰囲気の環境を「真空」と呼ぶ場合もある。また、図2に示した処理室PCにおける2重線の辺は、図1に示した開口101に対応する。
【0037】
また、搬送室100における第4側壁100sw4の外側には、ロードロック室LLが2つ設けられる。ここで、ロードロック室LLは、減圧雰囲気と大気圧雰囲気との間で内圧を変動可能であり、減圧雰囲気の搬送室100における基板Wの出入口に相当する。
【0038】
このように、基板授受位置WA11、基板授受位置WA12、基板授受位置WA22、基板授受位置WA23、基板授受位置WA33および基板授受位置WA34は、各処理室PCの室内にそれぞれある。また、基板授受位置WA44および基板授受位置WA41は、各ロードロック室LLの室内にそれぞれある。
【0039】
また、各ロボット10は、各処理室PCあるいは各ロードロック室LLの正面にそれぞれ配置される。たとえば、第1ロボット10-1は処理室PC11およびロードロック室LL2の正面に、第2ロボット10-2は処理室PC12および処理室PC21の正面に、それぞれ配置される。また、第3ロボット10-3は処理室PC22および処理室PC31の正面に、第4ロボット10-4は処理室PC32およびロードロック室LL1の正面に、それぞれ配置される。
【0040】
つまり、搬送室100の第1側壁100sw1側には、ロードロック室LL2、処理室PC11、処理室PC12、処理室PC21、第1ロボット10-1および第2ロボット10-2が配置される。また、搬送室100の第3側壁100sw3側には、ロードロック室LL1、処理室PC32、処理室PC31、処理室PC22、第4ロボット10-4および第3ロボット10-3が配置される。
【0041】
このように、搬送装置5は、搬送室100の第1側壁100sw1側と、第3側壁100sw3側とで、基板Wの搬送経路を2系統としているので、基板搬送の可用性を高めることができる。つまり、第1側壁100sw1側または第3側壁100sw3側のいずれかのロボット10が停止した場合であっても基板処理を継続することができる。また、ロードロック室LL1またはロードロック室LL2のいずれかが停止した場合であっても基板処理を継続することができる。
【0042】
次に、図1および図2に示した搬送装置5について図3Aおよび図3Bを用いてさらに詳細に説明する。図3Aは、搬送装置5の上面模式図であり、図3Bは、搬送装置5の側面模式図である。ここで、図3Aおよび図3Bは、固定式バッファ110を床置き式とした場合に対応する。なお、固定式バッファ110を天吊り式とした場合については、図5Aおよび図5Bを用いて後述することとする。
【0043】
また、図3Aには、固定式バッファ110および4台のロボット10について、それぞれの基板Wの載置中心CWを併せて示している。なお、図3Aに示した矢印D1は、側面図である図3Bの視点向きをあらわしている。
【0044】
図3Aに示すように、固定式バッファ110は、4つの支柱111と、各支柱111から基板Wの載置中心CWへ向かって水平向きにそれぞれ突出した保持部112とを有する。各保持部112は先端側にパッド112aをそれぞれ有しており、パッド112aを介して基板Wを保持する。なお、固定式バッファ110は多段式であるが、各段の保持部112をまとめてバッファ112と呼ぶ場合がある。ここで、隣り合う保持部112の先端同士は、ハンド12が接触することなく昇降可能な程度に離れている。これにより、各ロボット10は、保持した基板Wを固定式バッファ110の基板授受位置WAへまっすぐに搬送し、基板Wを各バッファ112に載置することができる。
【0045】
各支柱111は、各ロボット10の旋回領域10rtの外側に配置される。このため、各ロボット10は、旋回動作を行っても支柱111には接触しない。また、各ロボット10は、基板Wを固定式バッファ110との間で授受する動作を行っても支柱111には接触しない。たとえば、第1ロボット10-1は、基板Wを固定式バッファ110に載置する場合には、支柱111-1および支柱111-4の保持部112同士で挟まれる空間にハンド12を挿入したうえで、ハンド12を下降させることによって、基板Wをバッファ112に載置する。
【0046】
図3Bに示すように、固定式バッファ110は、搬送室100における床壁100fの床面100fiに固定される。また、ロボット10は、搬送室100における床壁100fの床面100fiに固定される。なお、固定式バッファ110は、図3Aに示したすべてのロボット10と基板Wの授受を行う。なお、図3Bに示したロボット10は、図3Aに示した第2ロボット10-2および第4ロボット10-4であり、第1ロボット10-1および第3ロボット10-3については記載を省略している。
【0047】
また、図3Bに示したように、固定式バッファ110は、多段式であり、各ロボット10は、固定式バッファ110の各段に対して基板Wの授受を行う。なお、図3Bには段数が4段の固定式バッファ110を示している。このように、固定式バッファ110を多段式とすることで、複数の基板Wの保持が可能となるので、基板搬送の効率化を図ることができる。
【0048】
以下では、ロボット10の構成についてさらに詳細に説明する。図3Bに示したように、ロボット10は、第1アーム11aと、第2アーム11bと、ハンド12と、昇降機構15と、フランジFと、ベース部Bとを備える。
【0049】
なお、ロボット10のベース部Bは、搬送室100における床壁100fを貫通して搬送室100の室外へ突出している。また、フランジFは、床壁100fの上面である床面100fiでロボット10を支持するとともに、搬送室100の気密性を保持する。このように、ロボット10のベース部Bを搬送室100から突出させることで、搬送室100の容積を削減することができる。また、搬送室100の室外からのロボット10への給電や、メンテナンス等のアクセスを容易に行うことができる。
【0050】
昇降機構15は、第1アーム11aの基端側を第1回転軸AH1まわりに回転可能に支持するとともに、昇降軸AVに沿って昇降する。なお、昇降機構15自体を第1回転軸AH1まわりに回転させることとしてもよい。第1アーム11aは、第2アーム11bの基端部を第2回転軸AH2まわりに回転可能に先端部で支持する。
【0051】
第2アーム11bは、ハンド12の基端部を第3回転軸AH3まわりに回転可能に先端部で支持する。ハンド12は、たとえば、図1図2に示したように、先端側が二股にわかれたフォーク部を有しており、上面側で基板Wを支持する。なお、ハンド12が複数の基板Wを多段に保持することとしてもよく、たとえば、同軸でそれぞれ旋回するハンド12を複数設けることとしてもよい。
【0052】
ここで、水平アームに相当する第1アーム11a、第2アーム11bおよびハンド12は、第1回転軸AH1、第2回転軸AH2および第3回転軸AH3まわりにそれぞれ独立して旋回することとしてもよい。また、第1回転軸AH1まわりの第1アーム11aの旋回に従動して第2アーム11bおよびハンド12が旋回することとしてもよい。
【0053】
それぞれ独立して旋回する場合の駆動源(アクチュエータ)は3つであり、従動して旋回する場合の駆動源は1つまたは2つとなる。なお、ロボット10は、昇降機構15の昇降用にもう1つの駆動源を要する。ここで、ロボット10の軸構成にはバリエーションがあるが、詳細については、図7A図7B図7Cおよび図7Dを用いて後述する。
【0054】
ところで、図3Aおよび図3Bでは、固定式バッファ110の高さが固定で、ロボット10がハンド12を昇降させる場合について説明した。しかしながら、ロボット10のハンド12を昇降させる代わりに固定式バッファ110を昇降させることとしてもよい。そこで、以下では、固定式バッファ110を昇降させる場合について図4を用いて説明することとする。
【0055】
図4は、昇降機構を有する固定式バッファ110の側面模式図である。なお、図4は、図3Bと同じ方向視の側面模式図に相当する。図4に示すように、固定式バッファ110の各支柱111は、昇降機構によって昇降する。なお、昇降機構としては図3Bに示したロボット10の昇降機構15と同様の機構を用いることができる。また、固定式バッファ110に昇降機構を設けたことに伴い、ロボット10の昇降機構15は省略される。なお、ロボット10の昇降機構15を省略せずにロボット10および固定式バッファ110の双方がそれぞれ昇降することとしてもよい。
【0056】
たとえば、第1ロボット10-1が基板Wを固定式バッファ110に載置する場合には、支柱111-1および支柱111-4の保持部112同士の隙間にハンド12を挿入した後に、固定式バッファ110が上昇することで基板Wをすくい取る。これにより、基板Wがバッファ112に載置される。なお、固定式バッファ110の異なる段に基板Wを載置する場合には、各段に対応するバッファ112の高さが各ロボット10のハンド12の高さに対応するように固定式バッファ110を昇降させればよい。
【0057】
次に、上面視において、固定式バッファ110の基板授受位置WAと、各ロボット10の旋回領域10rtとが重なりを有する場合について、図5Aおよび図5Bを用いて説明する。図5Aは、変形例に係る搬送装置5の上面模式図であり、図5Bは、変形例に係る搬送装置5の側面模式図である。ここで、図5Aおよび図5Bは、固定式バッファ110を天吊り式とした場合に対応する。
【0058】
このように、固定式バッファ110を天吊り式とすることで、固定式バッファ110は、各ロボット10と干渉しにくい。このため、上面視において、固定式バッファ110の基板授受位置WAと、各ロボット10の旋回領域10rtとが重なりを有していても構わない。したがって、図3Aおよび図3Bに示した場合と比べて搬送室100のフットプリントを小さくすることができる。なお、以下の説明では、図3Aおよび図3Bで既に説明した事項については省略するか、簡単な説明にとどめることとする。
【0059】
図5Aに示すように、固定式バッファ110の基板授受位置WAと、4台のロボット10の旋回領域10rtとは、それぞれ重なりを有している。つまり、各ロボット10は、図3Aに示した場合よりも固定式バッファ110の載置中心CWに近づいている。このように、図5Aに示した搬送装置5では、4台のロボット10をコンパクトに配置することができるので、搬送室100のフットプリントを小さくすることができる。
【0060】
図5Bに示すように、固定式バッファ110は、搬送室100における上壁100cの上面100ciから吊り下げられる。一方、ロボット10は、床壁100fの床面100fiに固定されるので、昇降機構15を下降させることによってハンド12を最も低くした場合には、そもそも固定式バッファ110とは干渉しない。
【0061】
なお、昇降機構15を上昇させることによってハンド12を固定式バッファ110と干渉する高さとした場合には、ハンド12を固定式バッファ110から離れる向きにスライドさせる非干渉動作を行うことで、固定式バッファ110との干渉を回避することができる。
【0062】
次に、固定式バッファ110に載置される基板Wを検出するセンサの配置例について、図6を用いて説明する。図6は、基板Wを検出するセンサSの配置例を示す上面模式図である。なお、図6に示すセンサSの配置例は、固定式バッファ110が床置き式の場合であっても(図3B参照)、天吊り式である場合であっても(図5B参照)、搬送室100におけるセンサSの取り付け高さを変更することで、容易に対応することができる。
【0063】
図6に示すように、センサSは、搬送室100における対向する2つの側壁100swにそれぞれ設けられる。ここで、センサSは、たとえば、投光センサと受光センサとの組であり、一方のセンサSと、他方のセンサSとが対向する側壁100swにそれぞれ設けられる。なお、図6には一方のセンサSから他方のセンサSへ向かう矢印を示したが、かかる矢印は、光の向きをあらわしている。図6に示したように、センサSは、センサSからの光が遮られないように、固定式バッファ110の支柱111や、ロボット10の旋回領域10rtを避けた位置に設けられる。
【0064】
また、図6では、第2側壁100sw2および第4側壁100sw4にセンサSがそれぞれ設けられる場合を示したが、第1側壁100sw1および第3側壁100sw3にセンサSをそれぞれ設けることとしてもよい。また、第2側壁100sw2および第4側壁100sw4と、第1側壁100sw1および第3側壁100sw3とに、それぞれ一組のセンサSを設けることとしてもよい。また、図6では、第2側壁100sw2に投光センサを、第4側壁100sw4に受光センサをそれぞれ設ける場合を示したが、投光センサおよび受光センサを逆にしてもよい。
【0065】
ここで、センサSは、多段式である固定式バッファ110の各段における基板Wの有無をそれぞれ検出する。このようにするためには、たとえば、固定式バッファ110の各段における基板Wの高さに投光センサと受光センサとの組をそれぞれ配置することとすればよい。
【0066】
次に、ロボット10の構成例について、図7A図7Dを用いて説明する。図7A図7B図7Cおよび図7Dは、ロボット10の構成例その1、その2、その3およびその4を示す上面模式図である。
【0067】
図7Aに示したロボット10は、鉛直向きに1自由度で水平向きに2自由度の3自由度のロボットであるRθZロボット10Aである。なお、図7Aでは、昇降軸AVと、第1回転軸AH1とを同軸として示しているが、同軸でなくてもよい。水平アームである第1アーム11a、第2アーム11bおよびハンド12は、ハンド12の姿勢を保持したまま載置中心CWが第1回転軸AH1の放射方向に移動するように協調動作する。
【0068】
つまり、第1アーム11aを第1回転軸AH1まわりに旋回させる駆動力と伝達機構とによって、第2アーム11bは第2回転軸AH2まわりに、ハンド12は第3回転軸AH3まわりに、それぞれ従動して旋回する。なお、伝達機構としては、ベルト、ギア、リンク機構などがある。また、「載置中心CW」とは、ハンド12が正規位置で基板Wを保持した場合の基板Wの中心位置を指す。
【0069】
このように、RθZロボット10Aは、第1回転軸AH1、第3回転軸AH3および載置中心CWを通る直線の角度θを一定に保ったまま、第1回転軸AH1から載置中心CWまでの距離rを変化させる。ここで、角度θは、任意の角度とすることができる。このように、RθZロボット10Aは、鉛直向きに1自由度で水平向きに2自由度の3自由度のロボット10である。なお、以下では、RθZロボット10Aを単に「RθZロボット」と呼ぶ場合がある。
【0070】
RθZロボット10Aをロボット10として用いることで、ロボット10を4自由度以上とする場合よりも、ロボット10の低コスト化を図ることができる。なお、ロボット10としてRθZロボット10Aを用いる場合には、RθZロボット10Aは、処理室PCやロードロック室LLの正面に配置される。言い換えれば、ロボット10を処理室PCやロードロック室LLの正面に配置することで、ロボット10を3自由度のRθZロボットとすることができる。
【0071】
図7Bに示したロボット10は、鉛直向きに1自由度で水平向きに3自由度以上の4自由度以上のロボットである多自由度ロボット10Bである。なお、図7Bでは、昇降軸AVと、第1回転軸AH1とを同軸として示しているが、同軸でなくてもよい。水平アームである第1アーム11a、第2アーム11bおよびハンド12は、図7Aに示したRθZロボット10Aとは異なり、第1回転軸AH1、第2回転軸AH2および第3回転軸AH3まわりにそれぞれ独立して旋回する。
【0072】
このように、多自由度ロボット10Bは、水平向きについて少なくとも1つの冗長軸を有しているので、載置中心CWを任意の経路で移動させることができる。したがって、ロボット10として多自由度ロボット10Bを用いる場合には、多自由度ロボット10Bは、処理室PCやロードロック室LLの正面に配置されることを要しない。言い換えれば、ロボット10を処理室PCやロードロック室LLの正面に配置しなくとも、複数の処理室PCや複数のロードロック室LLに対して基板Wの授受を行うことができる。
【0073】
つまり、多自由度ロボット10Bをロボット10に含めることとすれば、搬送室100の各側壁100swに設けられる処理室PCの数よりも少なくしたり、ロードロック室LLの数よりも少なくしたりすることができる。
【0074】
図7Cに示したロボット10は、図7Aに示したRθZロボット10Aの水平アームを双腕とする双腕ロボット10Cである。つまり、双腕ロボット10Cは、水平向きに2自由度のアームを双腕とし、さらに、鉛直向きに1自由度を有する。
【0075】
具体的には、2つの第1アーム11aの基端側は台座Pによって支持され、台座Pは、昇降軸AVに沿って昇降するとともに、回転軸AH0まわりに回転する。なお、図7Cには、図7Aに示したRθZロボット10Aの水平アームを双腕とする場合を示したが、図7Bに示した多自由度ロボット10Bの水平アームを双腕とすることとしてもよい。
【0076】
ここで、双腕における各腕のハンド12は、Z軸に沿う方向視で重なっている。各腕は、回転軸AH0、第3回転軸AH3および載置中心CWを通る直線の角度θを一定に保ったまま、回転軸AH0から載置中心CWまでの距離rを変化させる。なお、図7Cに示した双腕における各腕の上下関係を逆にすることとしてもよい。
【0077】
図7Dに示した双腕ロボット10Dは、図7Cに示した双腕ロボット10Cの変形例である。図7Dに示した双腕ロボット10Dは、昇降軸AVと、双腕における2つの第1回転軸AH1とを同軸とした点、台座Pを省略した点で、図7Cに示した双腕ロボット10Cとは異なる。
【0078】
ここで、双腕における各腕は、第1回転軸AH1、第3回転軸AH3および載置中心CWを通る直線の角度θを一定に保ったまま、回転軸AH0から載置中心CWまでの距離rを変化させる。このように、2つの第1回転軸AH1を同軸とし、台座Pを省略することで、双腕ロボット10Dのコンパクト化を図ることができ、搬送室100の容積を低減することが可能となる。なお、図7Dに示した双腕における各腕の上下関係を逆にすることとしてもよい。
【0079】
次に、図1に示した搬送装置5の構成について図8を用いて説明する。図8は、搬送装置5の構成を示すブロック図である。図8に示すように、搬送装置5は、ロボット10と、固定式バッファ110と、コントローラ20とを備える。また、ロボット10および固定式バッファ110は、コントローラ20に接続されている。なお、ロードロック室LLおよび処理室PCもコントローラ20に接続されており情報のやり取りが可能である。
【0080】
コントローラ20は、制御部21と、記憶部22とを備える。制御部21は、取得部21aと、動作制御部21bとを備える。記憶部22は、教示情報22aを記憶する。なお、図8には、説明を簡略化するために、1台のコントローラ20を示したが、複数台のコントローラ20を用いることとしてもよい。この場合、各コントローラを束ねる上位のコントローラを設けることとしてもよい。たとえば、ロボット10が接続されるコントローラと、固定式バッファ110が接続されるコントローラとを別体とし、各コントローラを束ねる上位のコントローラを設けることとしてもよい。
【0081】
ここで、コントローラ20は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。コンピュータのCPUは、たとえば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部21の取得部21aおよび動作制御部21bとして機能する。
【0082】
また、取得部21aおよび動作制御部21bの少なくともいずれか一つまたは全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
【0083】
また、記憶部22は、たとえば、RAMやHDDに対応する。RAMやHDDは、教示情報22aを記憶することができる。なお、コントローラ20は、有線や無線のネットワークで接続された他のコンピュータや可搬型記録媒体を介して上記したプログラムや各種情報を取得することとしてもよい。さらに、上記したように、コントローラ20を複数台のお互いに通信可能な装置として構成してもよく、上位または下位の装置と通信可能な階層式の装置として構成してもよい。
【0084】
制御部21は、ロードロック室LLや処理室PCからアクセス要求などのトリガ情報を取得するとともに、ロボット10の動作制御を行う。なお、固定式バッファ110が昇降機構を有する場合には、固定式バッファ110の動作制御も行う。以下の説明において、固定式バッファ110の動作制御を行う旨の記載は、固定式バッファ110が昇降機構を有している場合における昇降動作の動作制御のことを指す。なお、コントローラ20が複数台で構成される場合には、制御部21は、複数のコントローラ20間の同期をとる処理を併せて行うこととしてもよい。
【0085】
取得部21aは、ロードロック室LLや処理室PCからアクセス要求などのトリガ情報を取得する。そして、取得部21aは、取得した情報に基づき、ロボット10および固定式バッファ110の動作タイミングや動作内容を決定し、決定した動作タイミングや動作内容を動作制御部21bへ通知する。
【0086】
たとえば、取得部21aは、ロードロック室LLに外部から基板Wが搬入されたタイミングを取得し、取得したタイミングに基づいてロボット10および固定式バッファ110を協調動作させるように動作制御部21bへ指示する。また、取得部21aは、基板Wに対する処理が完了するタイミングを処理室PCから取得し、取得したタイミングに基づいてロボット10および固定式バッファ110を協調動作させるように動作制御部21bへ指示する。
【0087】
動作制御部21bは、取得部21aからの指示および教示情報22aに基づいてロボット10および固定式バッファ110を動作させる。また、動作制御部21bは、ロボット10および固定式バッファ110の動力源である回転式モータやリニアモータ等のアクチュエータにおけるエンコーダ値を用いつつフィードバック制御を行うなどしてロボット10および固定式バッファ110の動作精度を向上させる。
【0088】
教示情報22aは、ロボット10および固定式バッファ110へ動作を教示するティーチング段階で作成され、ロボット10等の動作経路を規定するプログラムを含んだ情報である。なお、図2等に示したように、線対称などの規則的な位置に各ロボット10を配置する場合には、教示データを共用したり、反転利用したりすることが可能となる。したがって、搬送装置5によれば、かかる教示データを含んだ教示情報22aの生成の手間とコストとを抑制することができる。
【0089】
次に、図1に示した搬送装置5が実行する処理手順の一例について図9を用いて説明する。図9は、搬送装置5が実行する処理手順を示すフローチャートである。なお、図9では、説明をわかりやすくするために、ロボット10として第1ロボット10-1および第2ロボット10-2を例にあげて説明しているが、実際には4台のロボット10が固定式バッファ110へアクセスしつつ、それぞれ並行して動作することになる。
【0090】
図9に示すように、コントローラ20の動作制御部21bによって動作制御される第1ロボット10-1は、ロードロック室LL2から処理前の基板Wを取得すると(ステップS101)、取得した処理前の基板Wを固定式バッファ110へ搬送する(ステップS102)。また、コントローラ20の取得部21aが処理室PC12における基板Wに対する処理の完了通知を取得すると(ステップS103)、コントローラ20の動作制御部21bによって動作制御される第2ロボット10-2は、処理後の基板Wを処理室PC12から搬送室100へ搬入する(ステップS104)。
【0091】
つづいて、第2ロボット10-2は、搬送室100へ搬入した処理後の基板Wを固定式バッファ110へ搬送する(ステップS105)。また、第2ロボット10-2は、ステップS102において固定式バッファ110へ載置された処理前の基板Wを取得し(ステップS106)、取得した処理前の基板Wを搬送室100から処理室PC12へ搬出する(ステップS107)。これにより、処理室PC12における基板Wの入れ替えが完了する。
【0092】
また、第1ロボット10-1は、第2ロボット10-2によって固定式バッファ110に載置された処理後の基板Wを固定式バッファ110から取得するとともに(ステップS108)、処理後の基板Wを搬送室100からロードロック室LL2へ搬出し(ステップS109)、処理を終了する。
【0093】
なお、図9では、説明をわかりやすくするために、各処理が直列的に実行される場合を示したが、各ロボット10と、固定式バッファ110の各段との干渉が発生しない範囲で、各処理を並列的に行うこととしてもよい。
【0094】
次に、図2に示した搬送室100に配置される各ロボット10を双腕ロボットとした場合について図10を用いて説明する。図10は、双腕ロボットを配置した搬送室100の上面模式図である。なお、図10では、図2と共通する構成については同一の符号を付し、既に説明した事項の説明を省略するか、簡単な説明にとどめることとする。なお、図10では、各ロボット10が固定式バッファ110へ向かう姿勢をとった場合を示している。
【0095】
図10に示すように、第1ロボット10-1、第2ロボット10-2、第3ロボット10-3および第4ロボット10-4は、図7Dに示した双腕ロボット10Dである。双腕ロボット10Dは、各ロードロック室LL、各搬送室PC、および固定式バッファ110に対して2枚の基板Wの授受が可能となる。
【0096】
たとえば、第1ロボット10-1や第4ロボット10-4は、双腕における一方の腕でロードロック室LLから基板Wを取得するとともに、他方の腕でロードロック室LLへ基板Wを渡すことができる。また、各ロボット10は、双腕における一方の腕で処理室PCから処理後の基板Wを取得するとともに、他方の腕で処理室PCへ処理前の基板Wを渡すことができる。また、各ロボット10は、双腕における一方の腕で固定式バッファ110から基板Wを取得するとともに、他方の腕で固定式バッファ110へ基板Wを渡すことができる。
【0097】
なお、図10では、4台のロボット10すべてを双腕ロボット10Dとする場合について示したが、4台のうち少なくとも1台を双腕ロボット10Dとし、その他は単腕ロボットとすることとしてもよい。また、ロードロック室LLへアクセスする第1ロボット10-1および第4ロボット10-4を双腕ロボット10Dとし、第2ロボット10-2および第3ロボット10-3を単腕ロボットとすることとしてもよい。
【0098】
上述してきたように、実施形態に係る搬送装置5は、少なくとも4台のロボット10と、固定式バッファ110とを備える。少なくとも4台のロボット10は、搬送室100の室内に固定され、基板Wが載置されるハンド12と、少なくとも旋回動作によってハンド12を移動させるアーム11とをそれぞれ有する。固定式バッファ110は、搬送室100の室内に固定され、基板Wを少なくとも2枚載置可能であって少なくとも4台のロボット10すべてが基板Wを授受可能である。また、少なくとも4台のロボット10は、上面視において、互いの旋回動作の旋回領域10rtが重ならず、かつ、固定式バッファ110の周囲において基板Wを固定式バッファ110と授受可能な位置にそれぞれ配置される。
【0099】
このように、搬送装置では、少なくとも4台のロボットと、固定式バッファとを搬送室の室内に固定し、すべてのロボットがそれぞれ固定式バッファへアクセスしつつ、基板の搬送処理を行うこととした。このように、ロボットおよびバッファの双方を固定式とすることで、搬送装置の構成を簡略化することができるとともに、移動に伴うパーティクルの発生を抑制することができる。また、各ロボットの旋回領域が重ならないように各ロボットを配置するとともに、すべてのロボットがアクセス可能な位置に固定式バッファを配置することで、ロボットの非干渉動作を低減することができ、基板の搬送効率を向上させることが可能となる。
【0100】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 搬送システム
5 搬送装置
10 ロボット
10-1 第1ロボット
10-2 第2ロボット
10-3 第3ロボット
10-4 第4ロボット
10A RθZロボット
10B 多自由度ロボット
10C 双腕ロボット
10D 双腕ロボット
10rt 旋回領域
11 アーム
11a 第1アーム
11b 第2アーム
12 ハンド
15 昇降機構
20 コントローラ
21 制御部
21a 取得部
21b 動作制御部
22 記憶部
22a 教示情報
100 搬送室
100c 上壁
100ci 上面
100f 床壁
100fi 床面
100sw 側壁
100sw1 第1側壁
100sw2 第2側壁
100sw3 第3側壁
100sw4 第4側壁
101 開口
110 固定式バッファ
111 支柱
112 保持部(バッファ)
112a パッド
AH1 第1回転軸
AH2 第2回転軸
AH3 第3回転軸
AV 昇降軸
B ベース部
CL 中心線
CW 載置中心
F フランジ
LL ロードロック室
PC 処理室
S センサ
W 基板
WA 基板授受位置(載置領域)
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10