(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】建物
(51)【国際特許分類】
E04H 1/02 20060101AFI20231221BHJP
E04B 1/00 20060101ALI20231221BHJP
E04B 1/348 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
E04H1/02
E04B1/00 501A
E04B1/348 N
E04B1/348 V
(21)【出願番号】P 2020096406
(22)【出願日】2020-06-02
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 悠依
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-156718(JP,A)
【文献】特開平11-093395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00 - 1/36
E04H 1/00 - 1/14
E04F 17/00 - 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎上に配置された建物本体の一階から張り出した張出部と、
前記張出部の床部に設けられると共に当該床部の建物上方側と当該張出部の
下面と地表面
とで区画されかつ設置物を設置可能なスペース側とを連通する連通部と、
を有する建物。
【請求項2】
前記張出部は、前記建物本体と共に居住空間の一部を構成している、
請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記床部は、床面が平面状とされた一般部と、当該一般部に対して建物上方側に突出しかつ前記連通部が設けられた突出部と、を備えており、
前記突出部の下面と前記地表面との建物高さ方向の距離は、前記一般部の下面と当該地表面との建物高さ方向の距離よりも長い距離に設定されている、
請求項1又は請求項2に記載の建物。
【請求項4】
屋外側から見て前記張出部と前記地表面との間が遮蔽部で隠されている、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、張出しユニットに関する発明が開示されている。この張出しユニットは、建物の下階の一部を構成する建物ユニットから張出されており、この張出しユニットの床面は、建物ユニットの床面よりも建物下方側に位置している。そして、この床面は、勝手口への踏み段として機能している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の先行技術では、張出しユニット(張出部)の下面と地表面との間のスペースが利用されておらず、このスペースを有効に利用するという点において改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、張出部と地表面との間のスペースを有効に利用することができる建物を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る建物は、基礎上に配置された建物本体の一階から張り出した張出部と、前記張出部の床部に設けられると共に当該床部の建物上方側と当該張出部の地表面側とを連通する連通部と、を有している。
【0007】
第1の態様に係る建物では、建物本体の一階が基礎上に配置されており、当該一階からは、張出部が張り出している。このため、基礎を設けることができない地盤の上側にも建物の一部を配置することができる。
【0008】
ところで、張出部は基礎によって直接支持されていないため、張出部と地表面との間にはスペースが生じるものの、このスペースは、利用されなければデッドスペースとなる。また、このスペースに種々の機器や構造物を設置することが考えられるが、これらの設置物を扱うにあたって作業者が張出部と地表面との間に入るのは作業性等の観点において好ましくない。
【0009】
ここで、本態様では、張出部の床部に連通部が設けられており、当該連通部によって当該床部の上方側と当該張出部の地表面側とが連通されている。このため、張出部と地表面との間に入ることなく、当該張出部の床部側から当該張出部と当該地表面との間に設置された設置物を扱うことができる。
【0010】
第2の態様に係る建物は、第1の態様に係る建物において、前記張出部は、前記建物本体と共に居住空間の一部を構成している。
【0011】
第2の態様に係る建物では、張出部が建物本体と共に居住空間の一部を構成しており、当該居住空間側から当該張出部と地表面との間に設置された設置物を扱うことができる。
【0012】
第3の態様に係る建物は、第1の態様又は第2の態様に係る建物において、前記床部は、床面が平面状とされた一般部と、当該一般部に対して建物上方側に突出しかつ前記連通部が設けられた突出部と、を備えており、前記突出部の下面と前記地表面との建物高さ方向の距離は、前記一般部の下面と当該地表面との建物高さ方向の距離よりも長い距離に設定されている。
【0013】
第3の態様に係る建物では、張出部の床部が、一般部と突出部とを備えており、一般部は、床面が平面状とされており、突出部は、一般部に対して建物上方側に突出している。そして、突出部の下面と地表面との建物高さ方向の距離は、一般部の下面と当該地表面との建物高さ方向の距離よりも長い距離に設定されている。このため、突出部の建物下方側には、一般部の建物下方側に比し、建物高さ方向に大きい設置物を設置することが可能となる。また、突出部には、連通部が設けられており、当該突出部側から張出部の建物下方側に設置された設置物を扱うことができる。
【0014】
第4の態様に係る建物は、第1の態様~第3の態様の何れか1態様に係る建物において、屋外側から見て前記張出部と前記地表面との間が遮蔽部で隠されている。
【0015】
第4の態様に係る建物では、建物の屋外側から見て、張出部と地表面との間に設置された設置物を遮蔽部によって隠すことができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、第1の態様に係る建物では、張出部と地表面との間のスペースを有効に利用することができるという優れた効果を有する。
【0017】
第2の態様に係る建物では、張出部と地表面との間に設置された設置物を扱うときに、天候等から受ける影響を低減することができるという優れた効果を有する。
【0018】
第3の態様に係る建物では、張出部と地表面との間に設置可能な設置物の種類を増やすことができるという優れた効果を有する。
【0019】
第4の態様に係る建物では、張出部と地表面との間のスペースを有効に利用しつつ、建物の外観品質を確保することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態に係る建物の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る建物の構成を模式的に示す分解斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係る建物の構成を模式的に示す側面図(
図1の3方向矢視図)である。
【
図4】第2実施形態に係る建物の構成を模式的に示す側面図である。
【
図5】第3実施形態に係る建物の構成を模式的に示す側面図である。
【
図6】第4実施形態に係る建物の構成を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
以下、
図1~
図3を用いて、本発明の第1実施形態に係る建物ついて説明する。本実施形態に係る「建物10」は、
図1に示されるように、「基礎12」と、基礎12の建物上方側に配置されて「建物本体14」の一階を構成する建物ユニット16と、建物ユニット16から建物10の桁行方向一方側に張り出した張出部としての「張出ユニット18」とを備えたユニット建物とされている。なお、各図において、建物10の桁行方向(以下、桁行方向と称する)を矢印Xで示し、建物10の梁間方向(以下、梁間方向と称する)を矢印Yで示し、建物10の高さ方向(以下、高さ方向と称する)を矢印Zで示している。
【0022】
張出ユニット18は、建物ユニット16に片持ち状態で設けられており、建物本体14と共に建物10の居住空間の一部を構成している。また、張出ユニット18の建物下方側には、基礎12が設けられておらず、張出ユニット18の下面18Aと「地表面20」との間には、スペース22が生じている。
【0023】
ここで、本実施形態では、張出ユニット18の「床部24」の建物上方側と張出ユニット18の地表面20側、すなわち下面18Aとが連通されている点に特徴がある。
【0024】
詳しくは、床部24には、床部24が高さ方向に貫通されることで、床部24の上面24Aと張出ユニット18の下面18Aとを連通する「連通部26」が設けられている。そして、連通部26は、カバー28(覆い部)で開閉可能とされている。なお、連通部26がカバー28で閉じられている状態において、カバー28の上面28Aの位置は、床部24の上面24Aと同一平面上に位置するように設定されている。
【0025】
一方、スペース22には、貯水タンク30やエアコンディショナの室外機32等の設置物が設置されている。そして、連通部26が開放されている状態において、張出ユニット18の屋内側から連通部26を介して室外機32等の取り扱いが可能とされている。
【0026】
また、
図2及び
図3にも示されるように、屋外側から見て張出ユニット18と地表面20との間、すなわちスペース22が「遮蔽部34、36」で隠されている。詳しくは、遮蔽部34は、スペース22の梁間方向一方側と梁間方向他方側とに配置されており、桁行方向に延在する本体部38と、本体部38を地表面20に対して支持する支持部40とを備えている。
【0027】
本体部38は、建物高さ方向に延在すると共に桁行方向に連なって配置された複数の羽板42を備えたルーバーとされており、本体部38の梁間方向一方側と他方側とでの通気が可能とされている。
【0028】
一方、スペース22の桁行方向一方側には、遮蔽部36が配置されており、この遮蔽部36は、梁間方向に延在する本体部44と、本体部44を地表面20に対して支持する支持部46とを含んで、基本的に遮蔽部34と同様の構成とされている。
【0029】
また、本体部44には、引違い戸48(開口部)が設けられており、引違い戸48が開放された状態において、遮蔽部36の桁行方向一方側から引違い戸48を介して室外機32等の取り扱いが可能とされている。
【0030】
さらに、遮蔽部34、36は、張出ユニット18及び地表面20に対して固定されておらず、所定の範囲において位置の変更が可能とされている。なお、本実施形態では、一例として、遮蔽部34、36は、張出ユニット18の外壁50の一部を構成する外壁材52よりも屋内側に配置されており、屋外側から見て張出ユニット18と地表面20との間に納まった状態となっている。
【0031】
<本実施形態の作用及び効果>
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0032】
本実施形態では、
図1に示されるように、建物本体14の一階を構成する建物ユニット16が基礎12上に配置されており、建物ユニット16からは、張出ユニット18が張り出している。このため、基礎12を設けることができない地盤の上側にも建物10の一部を配置することができる。
【0033】
ところで、張出ユニット18は基礎12によって直接支持されていないため、張出ユニット18と地表面20との間にはスペース22が生じるものの、このスペース22は、利用されなければデッドスペースとなる。また、このスペース22に種々の機器や構造物を設置することが考えられるが、これらの設置物を扱うにあたって作業者が張出ユニット18と地表面20との間に入るのは作業性等の観点において好ましくない。
【0034】
ここで、本実施形態では、張出ユニット18の床部24に連通部26が設けられており、連通部26によって床部24の上方側と張出ユニット18の地表面20側とが連通されている。このため、張出ユニット18と地表面20との間に入ることなく、張出ユニット18の床部24側から張出ユニット18と地表面20との間に設置された室外機32等の設置物を扱うことができる。したがって、本実施形態では、張出ユニット18と地表面20との間のスペース22を有効に利用することができる。
【0035】
また、本実施形態では、張出ユニット18が建物本体14と共に居住空間の一部を構成しており、当該居住空間側から張出ユニット18と地表面20との間に設置された設置物を扱うことができる。このため、本実施形態では、張出ユニット18と地表面20との間に設置された設置物を扱うときに、天候等から受ける影響を低減することができる。
【0036】
さらに、本実施形態では、建物10の屋外側から見て、張出ユニット18と地表面20との間に設置された設置物を遮蔽部34、36によって隠すことができる。このため、本実施形態では、張出ユニット18と地表面20との間のスペース22を有効に利用しつつ、建物10の外観品質を確保することができる。
【0037】
<第2実施形態>
以下、
図4を用いて、本発明の第2実施形態に係る建物について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一構成部分については同一番号を付してその説明を省略する。
【0038】
本実施形態に係る「建物60」では、「遮蔽部62、64」が基本的に遮蔽部34、36と同様の構成とされているものの、遮蔽部62、64は、外壁50の屋外側に配置されている。また、遮蔽部62、64の上端部は、外壁材52の下端部よりも高さ方向上側に位置している。
【0039】
このような構成によれば、建物60の外観において、遮蔽部62、64と張出ユニット18との隙間を無くし、建物60の外観の向上に寄与する。
【0040】
<第3実施形態>
以下、
図5用いて、本発明の第3実施形態に係る建物について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一構成部分については同一番号を付してその説明を省略する。
【0041】
本実施形態に係る「建物70」では、「外壁材72」が建物下方側に延長されて、スペース22が外壁材72の建物下方側の部分で隠されている。つまり、本実施形態において、外壁材72は、遮蔽部として機能している。
【0042】
このような構成によれば、建物10の屋外側から見て、張出ユニット18と地表面20との間に設置された設置物を、遮蔽部34、36等を用いることなく隠すことができ、建物10の外観品質を確保しつつ、部品点数の削減に寄与する。
【0043】
<第4実施形態>
以下、
図6用いて、本発明の第4実施形態に係る建物について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一構成部分については同一番号を付してその説明を省略する。
【0044】
本実施形態に係る「建物80」では、張出部としての「張出ユニット82」の「床部84」が、「一般部84A」と、「突出部84B」とを備えている点に特徴がある。
【0045】
詳しくは、一般部84Aは、「床面84A1」が平面状とされており、突出部84Bは、一般部84Aに対して建物上方側に突出している。また、突出部84Bには、連通部26が設けられている。また、突出部84Bの「下面84B1」と地表面20との高さ方向の距離H1は、一般部84Aの「下面84A2」と地表面20との高さ方向の距離H2よりも長い距離に設定されている。
【0046】
このような構成によれば、張出ユニット82の床部84が、一般部84Aと突出部84Bとを備えており、一般部84Aは、床面84A1が平面状とされており、突出部84Bは、一般部84Aに対して建物上方側に突出している。そして、突出部84Bの下面18Aと地表面20との高さ方向の距離H1は、一般部84Aの下面84A2と地表面20との高さ方向の距離H2よりも長い距離に設定されている。
【0047】
このため、突出部84Bの建物下方側には、一般部84Aの建物下方側に比し、高さ方向に大きい設置物を設置することが可能となる。そして、本実施形態では、一例として、貯水タンク30や室外機32に比し、高さ方向の寸法が大きい屋外設置用の蓄電池86が突出部84Bの建物下方側に配置されている。また、突出部84Bには、連通部26が設けられており、突出部84B側から張出ユニット82の建物下方側に設置された蓄電池86を扱うことができる。したがって、本実施形態では、張出ユニット82と地表面20との間に設置可能な設置物の種類を増やすことができる。
【0048】
<上記実施形態の補足説明>
(1) 上述した実施形態では、スペース22の周囲に遮蔽部が配置されていたが、建物の仕様等に応じて、遮蔽部を設けない構成としてもよい。
【0049】
(2) また、上述した実施形態では、遮蔽部に開口部が設けられていたが、これに限らず、建物の仕様等に応じて、配管が通る挿通部等が遮蔽部に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0050】
(3) また、上述した実施形態では、遮蔽部がルーバーや外壁材を含んで構成されていたが、これに限らず、建物の仕様等に応じて、遮蔽部を厚いビニールシート等で構成してもよい。
【0051】
(4) 加えて、上述した実施形態では、建物が張出ユニットを備えたユニット建物とされていたが、これに限らない。例えば、本実施形態を適用可能な建物には、鉄骨軸組工法によって建築されると共に、建物本体に片持ち状態で設けられた張出部としてのバルコニーを備えた建物も含まれる。
【0052】
10 建物
12 基礎
14 建物本体
18 張出ユニット(張出部)
20 地表面
24 床部
26 貫通部
34 遮蔽部
36 遮蔽部
60 建物
62 遮蔽部
64 遮蔽部
70 建物
72 外壁材(遮蔽部)
80 建物
82 張出ユニット(張出部)
84 床部
84A 一般部
84A1 床面
84A2 下面
84B 突出部
84B1 下面