(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】防火サッシ
(51)【国際特許分類】
E06B 5/16 20060101AFI20231221BHJP
E06B 3/38 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B3/38
(21)【出願番号】P 2020146327
(22)【出願日】2020-08-31
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184066
【氏名又は名称】宮崎 恭
(72)【発明者】
【氏名】今井 裕一
(72)【発明者】
【氏名】大垣 博範
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-63652(JP,A)
【文献】特開2019-15103(JP,A)
【文献】特開2016-61020(JP,A)
【文献】特開2017-8583(JP,A)
【文献】特開2000-154685(JP,A)
【文献】実開昭63-188050(JP,U)
【文献】特開2011-153419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00-11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、障子と、障子の上框を枠体の上枠に拘束するオペレータ装置を、備え、
オペレータ装置は、上枠に固定される枠側開閉部材と上框に固定される框側開閉部材を有し、
障子の上框は、中空部を有し、長手方向の複数箇所において、屋内側面に裏板を介して框側開閉部材が固定されており、
枠体の上枠は、中空部を有するとともに屋内側見付壁を有し、屋内側見付壁の屋内側面の長手方向の複数箇所に、断面略L字型の裏板を介して枠側開閉部材が固定されており、
上框及び上枠の中空部内には、補強部材が配置されておらず、
断面略L字型の裏板は、屋内側壁及び上壁を有し、上壁が上枠の内周面に固定され、屋内側壁が上枠の屋内側見付壁の屋外側面に沿って配置されており、
上枠の内周面で断面略L字型の裏板の上壁の屋外側には、加熱膨張材が配置されている防火サッシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防火サッシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者がオペレータ装置を操作することによって外倒し開閉のできる外倒し窓が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外倒し窓においても、防火性能が求められるが、特に単純な構成によって防火性能を高めることができれば、施工性や経済性を高めることができる。
【0005】
本発明は、過剰な補強部材等を配置することなく、簡単な構成で防火性能を高めることができる防火サッシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態は、枠体と、障子と、障子の上框を枠体の上枠に拘束するオペレータ装置を、備え、オペレータ装置は、上枠に固定される枠側開閉部材と上框に固定される框側開閉部材を有し、障子の上框は、中空部を有し、長手方向の複数箇所において、屋内側面に裏板を介して框側開閉部材が固定されており、枠体の上枠は、中空部を有するとともに屋内側見付壁を有し、屋内側見付壁の屋内側面の長手方向の複数箇所に、断面略L字型の裏板を介して枠側開閉部材が固定されており、上框及び上枠の中空部内には、補強部材が配置されておらず、断面略L字型の裏板は、屋内側壁及び上壁を有し、上壁が上枠の内周面に固定され、屋内側壁が上枠の屋内側見付壁の屋外側面に沿って配置されており、上枠の内周面で断面略L字型の裏板の上壁の屋外側には、加熱膨張材が配置されている防火サッシである。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態によれば、簡単な構成で防火性能を高めることができる防火サッシを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態の防火サッシの内観図の一例である。
【
図2】一実施形態の防火サッシの竪断面図の一例である。
【
図3】一実施形態の防火サッシの横断面図の一例である。
【
図4】一実施形態の防火サッシの上枠付近の竪断面図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一実施形態の防火サッシについて、建物壁面の上方位置に形成される開口部に配置される外倒し窓の例を用いて、図面を参考にして説明する。
本実施形態の防火サッシは、
図1に示すように、建物壁面の上方位置に形成される開口部に配置される枠体1と、枠体1内に配置される障子2を備えており、オペレータ装置6を操作することで障子2を開閉することのできる外倒し窓である。
【0010】
枠体1は、上枠11,下枠12及び左、右竪枠13,14を枠組みしてなり、建物開口部に配置されている。
障子2は、上框21、下框22、左竪框(召合框)23及び右竪框(戸先框)24を四周に組んで、その内周に複層ガラス等のパネル体25を取り付けて形成されている。
【0011】
障子2は、下框22が枠体1の下枠12に対して左右に離間した複数箇所(二か所)において丁番7(
図2参照)によって外倒し開閉自在に支持されており、上框21と枠体1の上枠11との間には、左右に離間した複数箇所(二か所)において、障子2を開閉操作するとともに、障子2の閉鎖状態を維持するオペレータ装置6が配置されている。
障子2の左右竪框23,24と枠体1の左右竪枠13,14との間には、ダンパー装置9(
図3参照)が配置されており、障子2のスムーズな開閉を補助している。
【0012】
(枠体の構成)
枠体1の上枠11は、アルミ合金等の金属材料からなり、
図2に示すように、屋外側に中空部111aを有し建物開口部の上部内周面に固定される上枠本体部111と、上枠本体部111の屋内側から下方に延設される屋内側見付壁112と、樹脂材料からなり、上枠本体部111の屋内側に取り付けられるアングル部113を有している。
【0013】
上枠11の中空部111a内には、補強部材は配置されておらず、屋内側見付壁112の屋外側面から上枠本体部111の内周面にかけて、屋内側壁811a及び上壁811bを有する断面略L字型の裏板811が配置されており、上壁811bが上枠本体部111の内周面にビス止め固定されている。
【0014】
上枠11の屋内側見付壁112の屋内側面には、長手方向の複数箇所においてオペレータ装置6の枠側開閉部材61が配置されており、断面略L字型の裏板811の屋内側壁811aを介してビス止め固定されている。
【0015】
上枠本体部111の中空部111aは、屋外側に向けて気密材s111が配置されている。また、屋内側見付壁112は、下端部が屋外側に屈曲して屋外側に向かって延びており、屋外側の先端部には、屋外側に向けて気密材s112が配置されている。
【0016】
枠体1の下枠12は、アルミ合金等の金属材料からなり、
図2に示すように、屋外側に形成される屋外側中空部121aと、屋外側中空部121aの屋内側に連続し内周に立ち上がる屋内側中空部121bを有し建物開口部の下部内周面に固定される下枠本体部121と、樹脂材料からなり、下枠本体部121の屋内側に取り付けられるアングル部123を有している。
【0017】
下枠12の屋外側中空部121a及び屋内側中空部121bの内部には、補強部材は配置されておらず、屋外側中空部121aの上面に丁番7の枠側部材71が裏板821を介して固定されており、屋内側中空部121bの屋外側面に屋外側に向けて気密材s121が配置されている。
【0018】
枠体1の左、右竪枠13,14は、
図3に示すように、ほぼ同様の構成をしているので、ここでは右竪枠14を参考にして竪枠について説明する。
【0019】
右竪枠14は、アルミ合金等の金属材料からなり、建物開口部の右部内周面に固定される略平板状に形成された右竪枠本体部141と、右竪枠本体部141の屋内側内周面から内周方向に突設される屋内側見付壁142と、右竪枠本体部141の屋外側内周面から内周方向に突設される屋外側見付壁143と、樹脂材料からなり、右竪枠本体部141の室外側端に固定されるアングル部144を有している。
【0020】
右竪枠14の下方位置において、右竪枠本体部141の内周面で屋内側見付壁142の屋内側に、ダンパー装置9の下端を支持する枠側ブラケット91が裏板841を介して固定されている。
右竪枠14の屋内側見付壁142の先端部の屋外側面には、屋外側に向けて気密材s141が配置されている。
【0021】
(障子の構成)
障子2の上框21は、アルミ合金等の金属材料からなり、
図2に示すように、中空部21aと、中空部21aの内周に設けられた屋内側ガラス間口壁21b及び屋外側ガラス間口壁21cと、中空部21aの外周面屋外側から外周側に延設された屋外側見付壁21dを有している。
【0022】
上框21の屋内側ガラス間口壁21bの屋内側面には、長手方向の複数箇所においてオペレータ装置6の框側開閉部材62が裏板812を介してビス止め固定されている。上框21の中空部21a内には、補強部材は配置されていない。
【0023】
上框21の中空部21aの屋内側面には、上枠11の屋内側見付壁112に配置された気密材s112が当接し、上框21の屋外側見付壁21dには、上枠11の中空部111aの屋外側面に配置された気密材s111が当接することで、上枠11な内周面と上框21と外周面との間に二重の気密ラインを形成している。
【0024】
障子2の下框22は、アルミ合金等の金属材料からなり、
図2に示すように、中空部22aと、中空部22aの内周に設けられた屋内側ガラス間口壁22b及び屋外側ガラス間口壁22cと、中空部21aの外周面屋外側から外周側へ延設された屋外側見付壁22dを有している。
なお、本実施形態の防火サッシにおいては、障子2の上框21と下框22は、同一の断面形状に形成されている。
【0025】
下框22の中空部22aの下面には、丁番7の框側部材72が裏板822を介して固定されており、障子2は、丁番7を介して枠体1に外倒し開閉自在に支持されている。下框22の中空部22a内には、補強部材は配置されていない。
【0026】
下框22の中空部22aの屋内側面には、下枠12の屋内側の中空部121aに配置された気密材s121が当接し、下枠12の内周面と下框22と外周面との間に気密ラインを形成している。
【0027】
障子2の左、右竪框23,24は、
図3に示すように、ほぼ同様の構成をしているので、ここでは右竪框24を参考にして竪枠について説明する。
【0028】
障子2の右竪框24は、アルミ合金等の金属材料からなり、中空部24aと、中空部24aの内周に設けられた屋内側ガラス間口壁24b及び屋外側ガラス間口壁24cと、中空部24aの外周面屋外側から外周側へ延設された屋外側見付壁24dを有している。右竪框24の中空部24a内には、補強部材は配置されていない。
【0029】
右竪框24の高さ方向中央付近で中空部24aの屋内側面に、ダンパー装置9の上端を支持する框側ブラケット92が裏板842を介して固定されている。
【0030】
右竪框24の屋外側見付壁24dの外周端の屋内側面には屋内方向に向かって気密材s241が配置され、右竪枠14の屋外側見付壁143に当接するとともに、中空部24aの屋内側面に右竪枠14の屋内側見付壁142に配置された気密材s141が当接することで、右竪枠14の内周面と右竪框24と外周面との間に二重の気密ラインを形成している。
【0031】
以上のように、本実施形態の防火サッシは、閉鎖時には、障子2の下框22が長手方向の複数箇所において丁番7によって支持されているとともに、障子2の上框21が長手方向の複数箇所においてオペレータ装置6の枠側開閉部材61及び框側開閉部材62によって拘束されている。
【0032】
そして、枠側開閉部材61を固定するための裏板811が枠側開閉部材61を固定する屋内側壁811aと上枠11の内周面に固定する上壁811bとから構成されているので、裏板811によって上枠11の内周面を補強することができ、上枠11の中空部111aに補強部材を配置することなく、加熱膨張材を配置することで十分な防火性能を高め、施工性や経済性を向上させることができる。
【0033】
(防火構造)
本実施形態の防火サッシにおいては、枠体1及び障子2の適宜箇所に加熱膨張材を配置することで、さらに高い防火性能を備えている。以下、説明する。
【0034】
本実施形態の防火サッシは、
図2,
図4に示すように、上枠11の屋外側の内周面に、上枠11の下面と面一となるように加熱膨張材を配置するためのホルダ111bが形成されており、ホルダ111bには、加熱膨張材f11が配置されている。
【0035】
上枠11に形成されるホルダ111bは、ホルダ111bの係止片111c,111dが上枠11の下面と面一となるように上枠11の中空部111a内に埋め込まれるように形成されており、断面略L字型の裏板811を固定する際に邪魔になることがなく、また、寸法の大きな裏板811を配置することも可能であり、施工性を維持することができる。
【0036】
そして、上枠11に形成されるホルダ111bは、上枠11の内周面に固定される断面略L字型の裏板811の上壁811bよりも屋外側に形成されることで、屋外側からの火炎に対して素早く膨張し、上枠11に対するオペレータ装置6の枠側開閉部材61の固定部位を保護することができ、防火性能を高めることができる。
【0037】
また、本実施形態の防火サッシにおいては、上框21のガラス間口の屋外側に加熱膨張材f21が配置されている。
そのため、屋外側からの火炎に対して加熱膨張材f21が素早く膨張し、上框21に対するオペレータ装置6の框側開閉部材62の固定部位を保護するとともに、パネル体25の屋外側を保持するので、火災初期におけるパネル体25の落下等を抑制し、防火性能を高めることができる。
【0038】
また、本実施形態の防火サッシにおいては、
図2に示すように、下枠12の屋内側中空部121bの屋外側面に加熱膨張材f12が配置されている。
そのため、火災時に加熱膨張材f12が膨張することで、下枠12と下框22の間を閉塞するとともに、障子2を支持する丁番7を包み込んで火炎から保護することができるので、障子2の支持部分の溶融を抑制し、防火性能を高めることができる。
【0039】
また、本実施形態の防火サッシにおいては、
図3に示すように、左、右竪枠13,14の屋内側見付壁132,142の屋外側面に加熱膨張材f13,f14が配置されている。
そのため、火災時に加熱膨張材f13,f14が膨張することで、左、右竪枠13,14と左、右竪框23,24の間を閉塞し、防火性能を高めることができる。
【0040】
また、本実施形態の防火サッシにおいては、左、右竪框23,24のガラス間口の屋外側に加熱膨張材f23,f24が配置されている。
そのため、屋外側からの火炎に対して加熱膨張材f23,f24が素早く膨張し、パネル体25の屋外側を保持するので、火災初期におけるパネル体25の落下等を抑制し、防火性能を高めることができる。
【0041】
以上のように、本実施形態の防火サッシは、障子2の上框21を上枠11に拘束するオペレータ装置6の枠側開閉部材61を断面略L字型の裏板811によって上枠11の内周面に固定しているので、障子2の上框21を拘束するオペレータ装置6の枠側開閉部材61を火炎の届きにくい上枠11の内周面によって支持することができ、枠側開閉部材61の脱落を抑制することができる。
【0042】
そして、障子2の上框21を上枠11に拘束するオペレータ装置6の枠側開閉部材61及び框側開閉部材62をそれぞれ上枠11及び上框21に裏板811,812を介して固定するとともに、裏板811,812の屋外側に加熱膨張材f11,f21を配置することで、屋外からの火炎に対して加熱膨張材f11,f21が素早く膨張して枠側開閉部材61及び框側開閉部材62を火炎から保護することができる。
【0043】
さらに、上枠11に設けられる加熱膨張材f11を上枠11の中空部111a内に埋め込まれるように形成されるホルダ111bに配置することで、ホルダ111bが裏板811と干渉することなく、さまざまな大きさの裏板811を用いることでき、また、ホルダ111bが裏板811の固定の邪魔となることがなく、施工性を損なうことがない。
【0044】
以上の実施形態の防火サッシにおいて、障子2を開閉し、拘束するオペレータ装置6の枠側開閉部材61及び框側開閉部材62は、ワイヤー及び滑車を備えるものでもよいが、歯車やラチェット等を備える開閉手段を用いるものでもよく、上枠11に対して上框21を開閉し、拘束することができる手段であれば何ら限定されない。
【0045】
また、上枠11に配置される断面略L字型の裏板811は、枠側開閉部材61が固定される部位に合わせて配置される複数のピース状の部材でもよいが、上枠11の長手方向に沿って配置される長尺状の部材でもよい。
【0046】
以上、本実施形態の防火サッシを説明したが,本実施形態は、請求項に記載された発明を限定するものではなく,例示として取り扱われることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0047】
1 :枠体
11 :上枠
111 :上枠本体部
111a :中空部
111b :ホルダ
112 :屋内側見付壁
2 :障子
21 :上框
21a :中空部
21b :屋内側ガラス間口壁
21c :屋外側ガラス間口壁
6 :オペレータ装置
61 :枠側開閉部材
62 :框側開閉部材
811 :裏板
811a :屋内側壁
811b :上壁
812 :裏板
821 :裏板
f11,f21:加熱膨張材