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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】車両用ランプの制御方法及び制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/14 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
B60Q1/14 H
B60Q1/14 F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020179294
(22)【出願日】2020-10-27
(65)【公開番号】P2022070295
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】綿野 裕一
(72)【発明者】
【氏名】丸山 雄太
(72)【発明者】
【氏名】桂田 善弘
(72)【発明者】
【氏名】片岡 拓弥
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-029196(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0062534(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射する光の配光パターンとその照射光軸を変化させることが可能なランプユニットを備える車両用ランプと、カメラで撮像した画像から対象物を検出し、検出した対象物の位置情報に基づいて前記ランプユニットを制御する制御手段とを備える車両用ランプの制御装置において、前記制御手段は、対象物を検出するとともに検出した対象物に対して前記ランプユニットで光照射したときに生じるダークゾーンを検出するダークゾーン検出工程と、検出したダークゾーンを解消するダークゾーン制御工程を実行することが可能であり、前記ダークゾーン制御工程は、前記ランプユニットの配光パターンを制御する配光パターン制御工程と、前記ランプユニットの照射光軸を制御する照射光軸制御工程を含み、前記配光パターン制御工程と前記照射光軸制御工程を選択的に又は合一的に実行することを特徴とする車両用ランプの制御方法。
【請求項2】
前記制御手段は前記ダークゾーン検出工程において前記ダークゾーンの属性を検出することが可能であり、前記ダークゾーン制御工程は、検出したダークゾーンの属性に基づいて前記配光パターン制御工程のみを実行し、又は前記照射光軸制御工程のみを実行し、あるいは前記配光パターン制御工程と前記照射光軸制御工程の両工程を実行する請求項1に記載の車両用ランプの制御方法。
【請求項3】
前記配光パターン制御工程は対象物を含む領域を選択的に遮光するADB配光制御であり、前記照射光軸制御工程は前記照射光軸を上下方向に変化させるレベリング制御である請求項2に記載の車両用ランプの制御方法。
【請求項4】
前記ダークゾーンの属性は、対象物に対するダークゾーンの所定方向の長さ、又は当該ダークゾーンの長さの変化速度を含む請求項2又は3に記載の車両用ランプの制御方法。
【請求項5】
照射する光の配光パターンとその照射光軸を変化させることが可能なランプユニットを備える車両用ランプと、カメラで撮像した画像から対象物を検出し、検出した対象物の位置情報に基づいて前記ランプユニットを制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、対象物を検出するとともに検出した対象物に対して前記ランプユニットで光照射したときに生じるダークゾーンを検出する対象物検出部と、検出したダークゾーンに基づいて前記ランプユニットの配光パターンと照射光軸を選択的に又は合一的に制御するランプ制御部を備えることを特徴とする車両用ランプの制御装置。
【請求項6】
前記車両用ランプは前記ランプユニットの照射光軸を上下方向に変化させるレベリング装置を備え、前記ランプ制御部は当該レベリング装置を制御する請求項5に記載の車両用ランプの制御装置。
【請求項7】
前記ランプユニットは、所定のカットオフラインよりも下側領域を光照射する第1のランプユニットと、当該カットオフラインよりも上側領域を光照射する第2のランプユニットを備え、前記ランプ制御部は、前記レベリング装置により前記第1と第2のランプユニットの照射光軸を上下方向に制御し、かつ前記第2のランプユニットの配光パターンを制御する請求項6に記載の車両用ランプの制御装置。
【請求項8】
前記第2のランプユニットは、前記対象物が存在する領域への光照射を停止し、その他の領域への光照射を行なう配光制御が可能である請求項7に記載の車両用ランプの制御装置。
【請求項9】
前記第1のランプユニットはロービームランプユニットであり、前記第2のランプユニットはマイクロLED発光素子を光源とするADBハイビームランプユニットであり、当該マイクロLED発光素子を選択的に発光して配光パターンを制御する請求項8に記載の車両用ランプの制御装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の車両のヘッドランプに適用される車両用ランプの配光を制御する制御方法と制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車用ヘッドランプは、先行車や対向車あるいは歩行者(以下、対象物と称する)に対する眩惑を防止する一方で、自動車の前方領域の照明効果を高めたADB(Adaptive Driving Beam:配光可変)制御が採用されている。特許文献1では、カメラで撮像した画像から対象物が検出されたときに、当該対象物の位置を検出し、この検出した位置に基づいてランプユニットによる照明光の照射領域を制御するADB制御が行なわれている。
【0003】
このADB制御の一つの形態として、所要のカットオフラインを有するロービーム配光パターン(以下、Lo配光パターン)と、このLo配光パターンの上側領域を付加的に照明するADBハイビーム配光パターン(以下、AHi配光パターン)とを合成した配光を行なう形態が提案されている。この形態ではAHi配光パターンの一部、すなわち対象物を含む領域を選択的に遮光することにより、対象物に対する眩惑を防止する一方で可及的に広い領域を照明することが可能なADB制御が実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/135356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ADB制御では、対象物に対する眩惑の防止効果を高めるために、対象物を含む領域に対し所定のマージンを設け、対象物よりも幾分広い領域を遮光する配光制御が行われる。そのため、自車に対する対象物の位置が変化されたとき、特にADB制御の制御速度よりも高速で位置が変化されたときに、対象物の周囲の一部領域に光照射がされない暗部領域(以下、ダークゾーンと称する)が生じることがある。
【0006】
例えば、具体例については後述するが、Lo配光パターンとAHi配光パターンを合成したADB制御を行っている際に、自車と先行車との車間距離が長くなった場合には、先行車はLo配光パターンのカットオフラインよりも上側(遠方)の領域に移動される。そのため、AHi配光パターンの遮光領域と、Lo配光パターンのカットオフラインの上側領域との間の領域がダークゾーンとなる。このようなダークゾーンが生じると、先行車の一部や先行車の直ぐ後ろの領域を含む自車の前方領域を好適に照明することができなくなり自車の安全走行に好ましくない。
【0007】
本発明の目的は、ダークゾーンを解消した好適な配光制御を可能にした車両用ランプの制御方法と制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用ランプの制御方法は、照射する光の配光パターンとその照射光軸を変化させることが可能なランプユニットを備える車両用ランプと、カメラで撮像した画像から対象物を検出し、検出した対象物の位置情報に基づいてランプユニットを制御する制御手段とを備えた制御装置において、制御手段は、対象物を検出するとともに検出した対象物に対してランプユニットで光照射したときに生じるダークゾーンを検出するダークゾーン検出工程と、ダークゾーンを解消するダークゾーン制御工程を実行することが可能であり、ダークゾーン制御工程は、ランプユニットの配光パターンを制御する配光パターン制御工程と、ランプユニットの照射光軸を制御する照射光軸制御工程を含み、ダークゾーン検出工程においてダークゾーンを検出したときに、配光パターン制御工程と照射光軸制御工程を選択的に又は合一的に実行する。
【0009】
例えば、制御手段はダークゾーン検出工程においてダークゾーンの属性を検出することが可能であり、ダークゾーン制御工程では、検出したダークゾーンの属性に基づいて配光パターン制御工程のみを実行し、又は照射光軸制御工程のみを実行し、あるいは配光パターン制御工程と照射光軸制御工程の両工程を実行することが好ましい。
【0010】
本発明の車両用ランプの制御装置は、照射する光の配光パターンとその照射光軸を変化させることが可能なランプユニットを備える車両用ランプと、カメラで撮像した画像から対象物を検出し、検出した対象物の位置情報に基づいてランプユニットを制御する制御手段とを備えており、制御手段は、対象物を検出するとともに検出した対象物に対してランプユニットで光照射したときに生じるダークゾーンを検出する対象物検出部と、検出したダークゾーンに基づいてランプユニットの配光パターンと照射光軸を選択的に又は合一的に制御するランプ制御部を備える。
【0011】
例えば、車両用ランプはランプユニットの照射光軸を上下方向に変化させるレベリング装置を備え、ランプ制御部は当該レベリング装置を制御する構成とする。また、ランプユニットは、所定のカットオフラインよりも下側領域を光照射する第1のランプユニットと、当該カットオフラインよりも上側領域を光照射する第2のランプユニットを備えており、ランプ制御部は、レベリング装置により第1と第2のランプユニットの照射光軸を上下方向に制御し、かつ第2のランプユニットの配光パターンを制御する構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車両用ランプの制御方法及び制御装置によれば、ADB配光制御によってダークゾーンが生じた場合でも、ダークゾーンを解消した好適な配光制御が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】車両用ランプとその制御装置の実施形態の概念構成図。
図2】左ヘッドランプの縦断面図。
図3】左ヘッドランプの主要構成の概略斜視図。
図4】Lo配光パターンとAHi配光パターンのパターン図。
図5】AHiランプユニットの概略構成図。
図6】フロントカメラとランプカメラで撮像した画像の模式図。
図7】ADB制御とダークゾーンを説明する配光パターン図。
図8】ダークゾーンを説明する模式図。
図9】ダークゾーン制御のフロー図。
図10】ダークゾーン制御に基づく配光パターンの模式図。
図11】変形例のAHiランプユニットのAHi配光パターンのパターン図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明を自動車のヘッドランプに適用した車両用ランプとその制御装置の実施形態の概念構成図である。同図において自動車CARの車体前部の左右にそれぞれヘッドランプL-HL,R-HLが装備されている。これら左右のヘッドランプL-HL,R-HLは左右が対称の構成である。なお、以降において左右のヘッドランプを合せてヘッドランプHLと総称することもある。
【0015】
図1において、自動車CARのフロントウインドFWの内側にはフロントカメラFCAMが装備されており、自動車CARの前方の所要領域を所要のフレームレートで、かつ所要の解像度で撮像することが可能である。ここでは、フロントカメラFCAMは所定の焦点距離の撮像レンズを備えており、またその撮像素子は可視光領域から赤外光領域にわたる受光感度を備えており、昼間時や夜間時に対象物を高解像度で撮像することが可能である。
【0016】
前記フロントカメラFCAMは自動車の車両ECU(電子制御ユニット)100に接続されている。この車両ECU100は本発明における制御手段として構成されており、対象物検出部101とランプ制御部102とカメラ制御部103を備えている。対象物検出部101は、フロントカメラFCAMで撮像した画像を画像解析して対象物を検出する。また、後述するランプカメラLCAMで撮像した画像を画像解析して対象物を検出することも可能である。
【0017】
ランプ制御部102は検出された対象物に基づいて前記ヘッドランプHLの点灯と配光を制御するためのランプ制御信号を生成してヘッドランプHLに出力する。なお、車両ECU100は対象物検出部101において検出した対象物に基づいて自動車CARの車速や操舵、さらには運転補助を行なうための他の制御部を備えているが、これらの制御部は本発明との関連が少ないので、その説明は省略する。カメラ制御部103は前記フロントカメラFCAMと、後述するランプカメラLCAMを制御する。
【0018】
前記ヘッドランプHLは、図1に左ヘッドランプL-HLで代表して示すように、ロービームランプユニット(以下、Loランプユニット)LoLUと、ADB制御が可能なハイビームランプユニット(以下、AHiランプユニット)AHiLUと、ターンシグナルランプユニット(以下、TSランプユニット)TSLUと、クリアランスランプを兼ねるデイタイムランニングランプユニット(以下、DRランプユニット)DRLUとを含み、これらのランプユニットが一つのランプハウジング1に内装された複合型ヘッドランプとして構成されている。
【0019】
また、このランプハウジング1には、前記フロントカメラFCAMよりも高速のフレームレートで撮像を行なうランプカメラLCAMが内装されており、自動車CAMの前方領域、特にフロントカメラFCAMの撮像領域とほぼ同じ領域を撮像することが可能とされている。さらに、ランプハウジング1には、前記ランプ制御信号に基づいて前記各ランプユニットの発光(点灯)を駆動するランプ駆動モジュールLDMが内装されている。これらランプカメラLCAMとランプ駆動モジュールLDMは前記車両ECU100に接続されている。
【0020】
詳細な図示は省略するが、TSランプユニットTSLUとDRランプユニットDRLUはランプハウジング1に固定的に取り付けられている。一方、LoランプユニットLoLUとAHiランプユニットAHiLUとランプカメラLCAMは、ランプハウジング1内においてそれぞれの光軸、すなわち照射光軸と撮像光軸の方向が適宜に調整可能な状態で取り付けられている。
【0021】
図2図3はLoランプユニットLoLUとAHiランプユニットAHiLUとランプカメラLCAMの各光軸方向を調整するための構成を示す図であり、図2は左ヘッドランプL-HLの縦断面図、図3は概略斜視図である。これらの図において、ランプハウジング1は、前方を開口した容器状のランプボディ11と、このランプボディ11の開口に取り付けられた透光カバー12とを備えた構成である。そして、このランプボディ11に前記したようにDRランプユニットDRLUが固定的に取り付けられており、点灯したときに透光カバー12を透して光照射を行なうように構成されている。図2,3には表れないがTSランプユニットTSLUも同様の構成である。
【0022】
ランプハウジング1内において、LoランプユニットLoLUとAHiランプユニットAHiLUとランプカメラLCAMは傾動角の調整が可能なエイミングブラケット2に搭載されている。ただし、LoランプユニットLoLUとA-HiランプユニットAHiLUは、エイミングブラケット2とは別体に構成されたレベリングブラケット3に搭載されており、このレベリングブラケット3を介してエイミングブラケット2に支持されている。一方、ランプカメラLCAMはエイミングブラケット2に直接に搭載されており、このランプカメラLCAMの撮像光軸Acは当該エイミングブラケット2に対して所定の角度に向けられている。
【0023】
前記エイミングブラケット2は上下方向及び左右方向に傾動が可能なエイミング機構20によりランプボディ11に支持されている。このエイミング機構20では、エイミングブラケット2は一つの角部において支点部21によりランプボディ11に支持され、この支点部21の下方向の一部に上下エイミング調整部22が配設され、またこの支点部21の左方向の一部に左右エイミング調整部23が配設された構成とされている。支点部21と上下又は左右のエイミング調整部22,23は公知の構成が採用されているので詳細な説明は省略するが、例えばエイミングスクリューと、これに螺合されるエイミングナットで構成されている。このエイミングスクリューを治具等により操作することにより、エイミングブラケット2は支点部21を支点にして上下方向の前傾角度と水平方向の振れ角度が調整できる。
【0024】
前記レベリングブラケット3は、上下方向に傾動が可能なレベリング機構30により前記エイミングブラケット2に支持されている。このレベリング機構30では、レベリングブラケット3はその上縁部、ここでは上縁の左右2箇所においてそれぞれ支点部31,32によりエイミングブラケット2に支持されている。また、レベリングブラケット3の下縁の一部にはエイミングブラケット2に支持された前記レベリングアクチュエータLACTが連結されている。このレベリングアクチュエータLACTは、例えばレベリングスクリュー34を備える電気モータ33で構成されており、レベリングブラケット3の下縁の一部に取り付けられたレベリングナット35が螺合されている。レベリングアクチュエータLACTが回転駆動されたときにレベリングスクリュー34に螺合されているレベリングナット35が螺進され、これに伴ってレベリングブラケット3の下縁部が前後方向に移動されてその前傾角度が変化制御される。
【0025】
ここで、レベリング機構30の初期状態では、レベリングブラケット3のエイミングブラケット2に対する相対的な前傾角度は所定角度、例えば0度に設定されている。そして、この初期状態においては、レベリングブラケット3に搭載されているLoランプユニットLoLuとAHiランプユニットAHiLUの照射光軸Al,Aaは、それぞれランプカメラLCAMの撮像光軸Acと同一方向に向けられている。
【0026】
したがって、エイミング機構20によりエイミングブラケット2の傾動角度の調整を行なうことにより、LoランプユニットLoLUとAHiランプユニットAHiLUとランプカメラLCAMの各光軸Al,Aa,Acの方向を一括して調整することができる。また、レベリング機構30でレベリングブラケット3の前傾角度を変化させることにより、LoランプユニットLoLUとA-HiランプユニットAHiLUの光軸方向を同時に変化制御することができる。
【0027】
前記各ランプユニットについて簡単に説明する。TSランプユニットTSLUはLED(発光ダイオード)を光源とし、レンズを透してアンバー色の光を出射する構成である。このTSランプユニットTSLUは、ランプハウジング1内において車幅方向の外側に向けられた領域に配設されている。なお、TSランプユニットTSLUは、LED自身でアンバー色の光を発光する構成であってもよく、あるいはLEDで発光した白色光をアンバー色のインナーレンズを透して出射させる構成であってもよい。
【0028】
DRランプユニットDRLUは光源としての白色LEDと、透光性樹脂からなるライトガイド(導光体)で構成されており、白色LEDの光をライトガイドの長さ方向に導光し、かつヘッドランプHLの正面方向に向けられたライトガイドの側面を発光面として出射させる構成である。このDRランプユニットDRLUは、ライトガイド(符号は付していない)がランプハウジング1内の上縁に沿って車幅方向に延長配置されている。
【0029】
LoランプユニットLoLUは、図3に示したように、光源としての白色LED41の光をリフレクタ42で反射し、かつ当該光の一部をシェード43で遮光した上で照射レンズ44により前方に向けて照射する構成である。照射される光はシェード43により一部が遮光されるため、このLoランプユニットLoLUで照射する光の配光パターンは、図4に示すように、上縁に所要のカットオフラインCOLを有する配光パターン、いわゆるロービーム配光パターン(以下、Lo配光パターンと称する)PLoとなる。
【0030】
AHiランプユニットAHiLUは、図3に示したように、多分割LEDアレイ61と、この多分割LEDアレイ61で発光された光を前方に向けて投影する投影レンズ62を備えている。この多分割LEDアレイ61は、図5に示すように、多数のマイクロLED発光素子(以下、ピクセル素子と称する)61pがマトリクス状(枡目状)に配列された構成である。多分割LEDアレイ61は前記ランプ駆動モジュールLDMでの制御により個々のピクセル素子61pが選択的に発光され、発光されたピクセル素子61pの光により所要の発光パターンが形成される。この発光パターンを投影レンズ62により投影することにより、図4に示したように、前記Lo配光パターンPLoの上側領域に各ピクセル素子61pに対応した多数の単位照明領域uが合成されたADBハイビーム配光パターン(以下、AHi配光パターンと称する)PAHiが形成される。
【0031】
前記ランプカメラLCAMは少なくとも可視光領域を撮像するカメラで構成され、また前記フロントカメラFCAMと同じ焦点距離であるので、フロントカメラFCAMとほぼ同じ前方領域を撮像するように構成される。このランプカメラLCAMは前記したようにフロントカメラFCAMよりも高速のフレームレートで撮像を行なうことが可能である。その一方で、ランプカメラLCAMのコスト低減のために、その解像度はフロントカメラFCAMよりも低い構成とされている。このランプカメラLCAMは、図1に示したように、自動車に配備されているLIN(Local Interconnect Network)ライン104を介して前記車両ECU100に接続されている。
【0032】
前記ランプ駆動モジュールLDMは、車両ECU100からのランプ制御信号を受けて前記各ランプユニットTSLU,DRLU,LoLU,AHiLUの点灯を制御する機能と、AHiランプユニットAHiLUにおいて行われるAHi配光パターンのパターン形状を制御するために多分割LEDアレイ61を駆動制御する機能を備えている。
【0033】
以上の構成のヘッドランプHLは、ランプハウジング1が自動車CARの車体に取り付けられるとエイミング調整が実行される。このエイミング調整ではエイミング機構20の上下エイミング調整部22と左右エイミング調整部23を適宜に操作することにより、エイミングブラケット2の上下方向の角度と左右方向の角度が調整される。これにより、エイミングブラケット2に搭載されているLoランプユニットLoLUとAHiランプユニットLAHiLuの照射光軸Al,Aaの方向と、ランプカメラLCAMの撮影光軸Acの方向はそれぞれ車体に対して特定の方向に設定される。この特定の方向はフロントカメラFCAMの撮像光軸と一致されることが好ましい。また、初期状態においては、前記したようにレベリングブラケット3のエイミングブラケット2に対する相対的な前傾角度は0度に設定されており、LoランプユニットLoLuとAHiランプユニットAHiLUの照射光軸Al,Aaと、ランプカメラLCAMの撮像光軸Acは同一方向に向けられている。
【0034】
次に、ヘッドランプHLにおける点灯制御動作について説明する。自動車CARに配設されている図示を省略した各種スイッチがオンされると、車両ECU100のランプ制御部102からランプ制御信号がランプ駆動モジュールLDMに出力される。ランプ駆動モジュールLDMはこのランプ制御信号に基づいて、対応するランプユニットを点灯制御する。例えば、デイタイムランニングスイッチがオンされるとDRランプユニットDRLUを点灯制御する。ターンシグナルスイッチがオンされるとTSランプユニットTSLUを点灯制御する。さらに、ロービームスイッチがオンされるLoランプユニットLoLUを点灯し、図4に示したLo配光パターンPLoでの照明を行なう。
【0035】
ADBスイッチがオンされると、ランプ駆動モジュールLDMは車両ECU100からのランプ制御信号に基づいてLoランプユニットLoLUとAHiランプユニットAHiLUを点灯する。また、これと同時にランプ駆動モジュールLDMはランプ制御信号に基づいてAHiランプユニットAHiLUの多分割LEDアレイ61の発光制御を行い、選択的に発光されたピクセル素子61pにより発光パターンを形成し、この発光パターンを投影することにより図4に示したAHi配光パターンPAHiの配光制御を実行する。
【0036】
このAHi配光パターンPAHiの配光制御では、車両ECU100は対象物検出部101においてフロントカメラFCAMとランプカメラLCAMで撮像した各画像に基づいて対象物を検出する。すなわち、フロントカメラFCAMとランプカメラLCAMは、点灯されたLoランプユニットLoLUとAHiランプユニットAHiLUの照射光により照明された前方領域を撮像する。
【0037】
図6(a)は、フロントカメラFCAMで撮像した画像を模式的に示した図である。フロントカメラFCAMは高解像度であるので、撮像された対象物Obの形状の崩れは少なく、したがって対象物検出部101はこの画像から対象物Obの形状(外形)やサイズ等を高い精度で検出することが可能である。また、フロントカメラFCAMで撮像した画像から対象物Obを直接的に検出することが難しい場合には、画像中の輝度が高い高輝度部(同図の黒色部分)Hbを検出する。
【0038】
検出した高輝度部Hbは対象物が自発光した光によるもの、あるいは対象物で反射された光によるものである。そして、検出した高輝度部Hbの属性、例えば色、輝度(明るさ)、サイズ等を検出し、この属性を所定のテーブルを用いて対照することにより、当該高輝度部の対象物が他車両(先行車、対向車、自転車等)、歩行者、道路標識、あるいはその他のいずれであるかを検出する。例えば、輝度が所定の第1レベル以上である高輝度部は対象物の自発光に基づくものであるので他車両として検出できる。他車両の場合には高輝度部が白色であれば対向車であると検出し、高輝度部が赤色であれば先行車であると検出する。輝度が第1レベルよりも低い第2レベル以上の高輝度部は反射光に基づくものであるので、歩行者、道路標識として検出でき、あるいは自車で照明した路面であると検出できる。
【0039】
また、対象物検出部101はランプカメラLCAMで撮像した画像についても高輝度部Hbを検出する。図6(b)は、ランプカメラLCAMで撮像した画像を模式的に示した図である。ランプカメラLCAMはフロントカメラFCAMに比較して解像度が低いので撮像された対象物Obの画像に形状の崩れが生じることがあり、対象物Obを正確に検出することが難しいことがある。しかし、ランプカメラLAMはフロントカメラFCAMと光軸が同一方向に向けられているので、各カメラで撮像した画像は1対1で対応させることができる。したがって、ランプカメラLCAMで撮像した画像の高輝度部HbをフロントカメラFCAMで撮像した画像と対照することにより、当該高輝度部Hbの対象物Obを検出することが可能になる。さらに、ランプカメラLCAMはフロントカメラFCAMよりもフレームレートが高速であるので、対象物検出部101は撮像した画像の高輝度部Hbの経時的な位置変化を検出することにより、検出した対象物Obの位置変化を高速に検出することができる。
【0040】
さらに、対象物検出部101は検出した対象物Obの位置情報、すなわち自車から対象物Obまでの相対位置(方向、距離)と、対象物Obの位置変化を検出することも可能である。特に、ランプカメラLCAMはフロントカメラFCAMよりもフレームレートが高速であるので、対象物検出部101は撮像した画像の高輝度部Hbの経時的な位置変化を検出することにより、検出した対象物Obの位置情報を高速に検出することができる。
【0041】
車両ECU100では、対象物検出部101での検出が行われるとランプ制御部102は配光制御にかかわるランプ制御信号を生成してヘッドランプHLに出力する。このランプ制御信号の生成においては、対象物に対する照明光の明るさを制御するランプ制御信号を生成する。例えば検出した対象物が道路標識の場合には照明光は減光しないランプ制御信号を生成する。対象物が歩行者の場合には照明光を所定のレベルまで減光するランプ制御信号を生成する。対象物が他車両(先行車、対向車、自転車等)の場合には照明光を最大限に減光する制御信号、通常では遮光状態とするランプ制御信号を生成する。
【0042】
一方、ランプ制御部102は、対象物の位置をAHi配光パターンPAHiの単位照明領域uに対応させ、対象物Obが含まれる単位照明領域uを判定する。この判定では、対象物の種類により、高輝度部を所定のマージンをもって囲む領域を対象物Obが含まれる領域として判定する。高解像度のフロントカメラの画像から対象物の形状、サイズが検出される場合には、この検出に基づいて単位照明領域を判定することができる。例えば、図7(a)に示すように、2つの赤色の高輝度部Hbが所要の間隔で検出された先行車Ob1の場合には、水平方向に2つの高輝度部を含む数nxと、鉛直方向に予め設定された係数kを乗じた数my(m=k・n)を検出し、このnx×myの単位照明領域を先行車Ob1が存在する領域とする。係数kは自動車の平均的な車幅寸法と車高寸法の比率である。図示は省略するが、2つの白色の高輝度部が所要の間隔で検出された対向車の場合もほぼ同じである。
【0043】
そして、ランプ制御部102で生成されたランプ制御信号はヘッドランプHLのランプ駆動モジュールLDMとレベリングアクチュエータLACTに出力される。ランプ駆動モジュールLDMは、このランプ制御信号に基づいてAHiランプユニットAHiLUの多分割LEDアレイ61の各ピクセル素子61pを個別に発光制御する。すなわち、対象物が存在していると判定された単位照明領域uに対応している多分割LEDアレイ61のピクセル素子61pを判定し、この判定したピクセル素子61pを消光、減光し、その他のピクセル素子61pを発光する制御を行う。
【0044】
この配光制御により、図7(a)に示したように、先行車Ob1が存在する単位照明領域uでは太枠で示すように対応するピクセル素子61pを消光して照明を行なわない遮光領域Asを形成する。これにより、この斜線で示す遮光領域AsではPAHi配光パターンPAHiでの照明が行なわれず、先行車Ob1に対する眩惑が防止される。また、図示は省略するが、歩行者等に対する遮光領域については、ピクセル素子61pを低光度で発光してもよく、歩行者に対しては眩惑を防止する一方で自車両の照明光による照明により歩行者を確認することができる。他の対象物の領域については、ピクセル素子61pは所定の光度で発光される。これにより、例えば、道路標識は自車両の照明光により明るく照明できる。
【0045】
図8に概略図を示すように、LoランプユニットLoLUにおいては、Lo配光パターンPLoのカットオフラインCOLは、自車CARの前方の所定距離に位置していると仮定された破線で示す先行車Ob1の車体後面の所要高さ位置となるように設定されている。自車CARの通常の走行に際してはAHi配光パターンPAHiでのADB制御が行なわれることにより、先行車Ob1を眩惑することがなく、またダークゾーンが発生しない。しかし、実線で示すように先行車Ob1の自車CARに対する相対位置が変化して車間距離が長くなると、カットオフラインCOLは先行車Ob1よりも手前の路面に位置されるようになり、先行車Ob1と自車CARとの間の路面の一部領域、特に先行車Ob1の直後の領域に照明が行なわれないダークゾーンDZ(交差斜線領域)が生じる。
【0046】
図7(a)の例では、図7(b)に示すように、先行車Ob1と自車との車間距離が長くなったような場合には、先行車Ob1はカットオフラインCOLよりも上側の領域に移動される。そのため、AHi配光パターンPAHiの遮光領域As(交差斜線領域)とカットオフラインCOLとの間、すなわちLo配光パターンPLoの上側の非照明領域の一部に斜線で示すダークゾーンDZが生じる。ランプ制御部102はこのダークゾーンDZに基づいてヘッドランプHLを制御し、ダークゾーン制御を実行する。
【0047】
図9はこのダークゾーン制御の概略のフロー図である。対象物検出部101は対象物を検出し、また同時にダークゾーンDZの検出を行なう(S1)。ダークゾーンDZは各カメラFCAM,LCAMの画像における暗黒部から検出される。ダークゾーンDZが検出されたとき(S2)には、さらにダークゾーンDZの属性が検出される(S3)。この属性として、ここでは図7(b)に示すように、ダークゾーンDZの長さ、すなわち撮像した画像におけるダークゾーンDZの上下方向の最大の長さ寸法(以下、D長と称する)として検出される。
【0048】
ダークゾーンDZの属性としてのD長が検出されると、ランプ制御部102はこのD長を基準長であるB長と比較する(S4)。このB長として、ここでは第1基準長B1と第2基準長B2を設定している(以下、B1長、B2長と称する)。B2長はB1長よりも長く設定されている。そして、ランプ制御部102はこのD長とB1長及びB2長を比較した情報(以下、D長情報と称する)を含めたランプ制御信号をヘッドランプHLに出力する。
【0049】
ヘッドランプHLでは、ランプ制御信号に基づいてランプ駆動モジュールLDMとレベリングアクチュエータLACTによる制御が行なわれる。特に、ランプ制御信号にD長情報が含まれているときには、ランプ駆動モジュールLDMとレベリングアクチュエータLACTにおける制御が行なわれる。すなわち、D長の情報に基づいてランプ駆動モジュールLDMによりAHiランプユニットでの配光パターンを制御し、あるいはレベリングアクチュエータLACによりレベリングブラケット3の傾動、すなわちLoランプユニットLoLUとAHiランプユニットAHiLUの照射光軸の方向を制御する。
【0050】
図9のステップS4において、D長がB1長よりも短い場合にはレベリングアクチュエータLACTによるレベリング制御を実行する(S5)。このレベリング制御は、レベリングブラケット3の前傾角度を低減してLoランプユニットLoLUとAHiランプユニットAHiLUの照射光軸を上方向に変化させる。このとき、AHiランプユニットAHiLUにおけるAHi配光パターンを変化する制御は行なわれない。
【0051】
これにより、図10(a)のように、Lo配光パターンPLoとAHI配光パターンPAHiが上方向に変化され、特にLo配光パターンPLoのカットオフラインCOLが上方向に変化される。その結果、カットオフラインCOLは先行車Ob1の車体下部に相当する位置に制御され、これよりも下方の領域、すなわち自車と先行車Ob1との間の路面のほぼ全領域が照明される状態になり、ダークゾーンDZが解消されてLo配光パターンPLoとAHi配光パターンPAHiによる好適な照明が確保される。
【0052】
このレベリング制御では、ランプ制御部102はランプカメラLCAMで撮像した画像から検出されるダークゾーンに基づいてレベリング制御にかかわるランプ制御信号を生成するので、高い精度でのレベリング制御が可能になる。すなわち、ランプカメラLCAMはフロントカメラFCAMよりも高速のフレームレートで撮像することができるので、対象物検出部101はダークゾーンの属性とその変化を高速に検出でき、ランプ制御部102はこの変化に対して高い応答性のランプ制御信号を生成し、レベリング制御を行なうことができる。なお、ランプカメラLCAMはフロントカメラFCAMに比較して解像度は低いが、先行車とダークゾーンの変化については撮像した画像における高輝度部ないし中輝度部の移動から求められるので、解像度が低くても属性の変化の検出には支障がない。
【0053】
また、このレベリング制御においては、レベリングブラケット3に搭載されているLoランプユニットLoLUとAHiランプユニットAHiLUのみが傾動され、エイミングブラケット2に搭載されているランプカメラLCAMが傾動されることはない。すなわち、ランプカメラLCAMはフロントカメラFCAMとともにその撮像光軸は自動車CARに対して特定された方向に固定されている。そして、この撮像光軸は前記したようにランプカメラLCAMで撮像した画像における基準となる位置であるので、レベリングブラケット3の傾動、すなわちLoランプユニットLoLUとAHiランプユニットAHiLuの傾動の影響を受けることがない。したがって、ランプカメラLCAMの撮像光軸がランプユニットと共に傾動される場合に比較して先行車やダークゾーンを検出する際の処理が簡略化され、より高速なレベリング制御が実現できる。
【0054】
さらに、ランプカメラLCAMは、LoランプユニットLoLUとAHiランプユニットAHiLUとほぼ同じ高さ位置に配設されているので、対象物の位置変化に伴ってランプカメラLCAMから先行車を見たときの撮像光軸の角度変化はLoランプユニットLoLUとAHiランプユニットAHiLUから先行車に光照射するときの角度変化と略同じである。したがって、ランプカメラLCAMで検出した高輝度部と中輝度部の位置変化量(移動量)を検出する際の処理がさらに簡略化され、より高速なレベリング制御が実現できる。
【0055】
レベリング制御においてLoランプユニットLoLUとAHiランプユニットAHiLUの照射光軸を制御する速度は、AHi配光パターンPAHiのパターン形状を変化制御するよりも低速であるが、D長がB1長よりも短い場合には、照射光軸を制御するためのレベリング制御に必要とされる時間は極短時間であるので、照射光軸の制御速度が低いことの影響は少なく、AHi配光パターンPAHiを変化制御するための処理に比較して高速に対応できる場合もある。
【0056】
一方、図9のステップS4において、D長がB1長よりも長くB2長よりも短い場合には、レベリング制御を行なわず、AHiランプユニットPAHiにおけるAHi配光パターンを変化する配光パターン制御を行なう(S6)。ランプ駆動モジュールLDMは、ランプ制御信号に基づいてAHiランプユニットAHiLUのAHi配光パターンPAHiの遮光領域Asを制御する。
【0057】
これにより、図10(b)に示すように、カットオフラインCOLは先行車Ob1の車体下部に相当する位置のままであるが、先行車Ob1の下方の領域、すなわち自車と先行車Ob1との間の路面の領域がAHi配光パターンPAHiによって照明される状態になり、ダークゾーンDZが解消されてLo配光パターンPLoとAHi配光パターンPAHiによる好適な照明が確保される。
【0058】
他方、図9のステップS4において、D長がB2長よりも長い場合には、レベリング制御と配光パターン制御を合一的に行なう。すなわち、レベリング制御と配光パターンの両方を同時に変化制御する(S7)。例えば、ダークゾーンDZを概念的に2つの領域に分割し、一方の領域についてはレベリング制御を行い、他方の領域については配光パターン制御を行なう。
【0059】
これにより、図10(c)に示すように、カットオフラインCOLは先行車Ob1の車体下部に近接する位置まで上方向に移動され、同時に先行車Ob1の下方の領域がAHi配光パターンPAHiによって照明される状態になり、ダークゾーンDZが解消されてLo配光パターンPLoとAHi配光パターンPAHiによる好適な照明が確保される。このように、レベリング制御とAHi配光パターンを合一的に制御することにより、ダークゾーン制御におけるトータルの制御時間が抑制され、制御の高速化が実現できる。
【0060】
なお、図面を参照しての説明は省略するが、ダークゾーンDZの属性としてD長の変化速度、すなわちD長の時間に対する長さの変化率を検出し、この変化速度に基づいてレベリング制御とAHi配光パターン制御を選択的あるいは合一的に行なうようにしてもよい。例えば、D長の変化速度が相対的に低い値のときにはレベリング制御のみを行ない、D長の変化速度が相対的に高い値のときにはレベリング制御とAHi配光パターン制御を合一的に行なうようにしてもよい。また、D長の変化速度が中間的な値のときにはAHi配光パターン制御のみを行なうようにしてもよい。
【0061】
以上の先行車に対するダークゾーン制御に際し、対象物検出部101において対向車が検出されているときにはダークゾーン制御を停止し、実質的なダークゾーン制御を行なわないようにしてもよい。これは、先行車の場合には自車との車間距離の変化は相対的に緩やかであるが、対向車の場合には自車との車間距離の変化が急であるため、先行車に対するダークゾーン制御を行なっているときに対向車が照明領域内にまで進入してくる可能いが高く、対向車を眩惑するおそれがあるためである。
【0062】
また、以上の説明は対象物としての先行車に対する制御であるが、対向車について生じるダークゾーンに対してもダークゾーン制御を行なうようにしてもよい。あるいは、その他の対象物に対してもダークゾーンが生じる場合には、同様にしてダークゾーン制御を行なうようにしてもよい。
【0063】
前記した実施形態は、LoランプユニットLoLUとAHiランプユニットAHiLUを備えた構成であるが、AHiランプユニットのみで構成されてもよい。例えば、図5に示したAHiランプユニットAHiLUの構成として、鎖線で示すように、複数個、例えば2つの多分割LEDアレイ61が上下に配置された構成としてもよい。この場合、各多分割LEDアレイ61で構成される各AHi配光パターンPAHiが上下に接して投影されるように、例えば投影レンズ62は上下に2つの焦点を有する複合型レンズとして構成されることが好ましい。これら2つの多分割LEDアレイ61を備えることにより、図11に示すように、上下に配列された2つのAHi配光パターンPAHiが合成された合成AHi配光パターンPAHicが形成される。この場合にはAHiランプユニットAHiLUのみがレベリングブラケット3に搭載され、レベリングアクチュエータLACTによりレベリング制御が行われることになる。
【0064】
このような合成AHi配光パターンPAHicでの照明においては、個々のピクセル素子の発光を選択的に制御することによりカットオフラインを有するロービーム配光パターンが形成される。そして、前記実施形態と同様にダークゾーンが発生したときには、ダークゾーンを解消する制御が行なわれる。すなわち、合成AHi配光パターンPAHicにおける配光パターンの制御と、AHiランプユニットAHiLUのレベリング制御のいずれか一方、又は両制御を合一的に行なう。例えば、ダークゾーンの一部を解消する配光パターンでの制御を行い、その不足分をレベリング制御により補完するようにしてもよい。あるいは、レベリング制御によるダークゾーン制御を行い、その不足分を配光パターン制御により補完するようにしてもよい。
【0065】
この場合においても、前記実施形態と同様に検出したダークゾーンの属性、すなわち、D長あるいはD長の変化速度に基づいて配光パターンの制御とレベリングの制御とを適宜に組み合わせたダークゾーン制御を行なうようにしてもよい。
【0066】
さらに、図示は省略するが、LoランプユニットとAHiランプユニットに代えて、光源の光をDMD(Digital Micromirror Device)で選択的に反射して配光制御を行うランプユニットで構成されてもよい。また、光を走査するスキャン型のランプユニットで構成されてもよい。これらで構成する場合でも、これらのユニットのみをレベリングブラケットに搭載してレベリング制御を行なうようにすればよい。
【0067】
なお、実施形態では、低コストに構成できる高速のフレームレートで低解像度のフロントカメラと、低コストに構成できる低速のフレームレートで高解像度のランプカメラの2台のカメラを備えている。これは、高速のフレームレートで高解像度のカメラは極めて高コストであるためである。仮に、高速のフレームレートで高解像度のカメラが低コストに得られるのであれば、1台のランプカメラのみで構成してもよい。あるいは、本発明においては、ランプカメラをランプ駆動モジュールに直接接続してもよく、このようにした場合にはランプカメラはフロントカメラと同程度のフレームレートのカメラで構成されてもよい。フレームレートが低速であっても、ランプカメラで撮像して得られる撮像信号をランプ駆動モジュールで処理してランプ配光制御を行なうことにより、実質的に高速な制御が可能になる。
【0068】
また、実施形態では、エイミングブラケットを用いてエイミング調整を行なっているが、ランプユニットとランプカメラを内装したランプハウジングの全体を自動車の車体に対してエイミング調整する構成のヘッドランプに適用してもよい。この場合には、エイミングブラケットは省略し、ランプカメラをランプハウジングに支持し、ランプハウジングに対して傾動するレベリングブラケットにランプユニットを搭載するようにすればよい。
【0069】
さらに、実施形態では、車両ECUに対象物検出部、ランプ制御部、カメラ制御部が設けられているが、ヘッドランプにランプECUが配設され、このランプECUに対象物検出部、ランプ制御部、カメラ制御部が設けられるようにしてもよい。あるいは、これらの一部が設けられるようにしてもよい。この場合、ランプECUは車両ECUに接続され、両ECUの間で各信号が送受するように構成されることが好ましい。
【符号の説明】
【0070】
HL(L-HL,R-HL)ヘッドランプ
LoLU Loランプユニット(ロービームランプユニット)
AHiLU AHiランプユニット(ADBハイビームランプユニット)
TSLU TSランプユニット(ターンシグナルランプユニット)
DRLU DRランプユニット(デイタイムランニングランプユニット)
FCAM フロントカメラ
LCAM ランプカメラ
LACT レベリングアクチュエータ
LDM ランプ駆動モジュール
Ob 対象物
Ob1 先行車
As 遮光領域
COL カットオフライン
DZ ダークゾーン
PLo Lo配光パターン
PAHi AHi配光パターン
Aa,Al 照射光軸
1 ランプハウジング
2 エイミングブラケット
3 レベリングブラケット
11 ランプボディ
12 透光カバー
20 エイミング機構
30 レベリング機構
100 車両ECU(制御手段)
101 対象物検出部
102 ランプ制御部
103 カメラ制御部




図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11